JP5987684B2 - 光可逆変色性プレコート金属板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
前記樹脂皮膜は、光照射有無によって可逆的に有色または無色を呈するマイクロカプセルを、前記樹脂皮膜中の樹脂固形分100質量部に対して2〜30質量部の割合で含有しており、且つ、ポリエステル樹脂および架橋剤としてメラミン樹脂を、前記ポリエステル樹脂固形分100質量部に対して前記メラミン樹脂15〜35質量部の割合で含有しており、
前記樹脂皮膜の厚みが2μm以上であり、
光照射前後におけるJIS Z 8729に記載の色差ΔE*が5以上可逆的に変化する、ことを特徴とする光可逆変色性プレコート金属板に関する。
光照射有無に応じて可逆的に有色または無色を呈する光可逆変色性マイクロカプセルを配合した塗料を少なくとも1層以上、金属板の少なくとも一方の面上に塗布するステップと、
前記金属板を、前記ポリエステル樹脂の硬化開始温度よりも10℃以上高く、前記マイクロカプセルの殻材の溶融温度よりも10℃以上低い金属到達温度に加熱し、前記金属板上の塗料を硬化させて皮膜を形成するステップと、
を有する、光照射前後におけるJIS Z 8729に記載の色差ΔE*が5以上可逆的に変化する光可逆変色性プレコート金属板の製造方法に関する。
本発明は、金属板の少なくとも一方の面に、樹脂皮膜を1層以上有し、
前記樹脂皮膜は、光照射有無に応じて可逆的に有色または無色を呈するマイクロカプセルを、前記樹脂皮膜中の樹脂固形分100質量部に対して2〜30質量部の割合で含有しており、
前記樹脂皮膜の厚みが2μm以上であり、
光照射前後におけるJIS Z 8729に記載の色差ΔE*が5以上可逆的に変化する、
ことを特徴とする光可逆変色性プレコート金属板に関する。
前記金属板上に塗布した塗料を硬化させて皮膜を形成するステップと、
を有する、光照射前後におけるJIS Z 8729に記載の色差ΔE*が5以上可逆的に変化する光可逆変色性プレコート金属板の製造方法に関する。
前記金属板上に塗布した塗料硬化させて皮膜を形成するステップと、
を有する、光照射前後におけるJIS Z 8729に記載の色差ΔE*が5以上可逆的に変化する光可逆変色性プレコート金属板の製造方法にも関する。
下記に示した市販の金属板を用いた。
・溶融亜鉛めっき鋼板(GI): 板厚0.8mm、目付量30/30(g/m2)
・電気亜鉛めっき鋼板(EG): 板厚0.8mm、目付量20/20(g/m2)
・合金化溶融めっき鋼板(GA): 板厚0.8mm、目付量45/45(g/m2)
・溶融亜鉛−11%アルミニウム−3%マグネシウム−0.2%シリコンめっき鋼板(SD): 板厚0.8mm、目付量60/60(g/m2)
・SUS430(SUS): 板厚0.8mm
・銅板(Cu): 板厚0.8mm
供試材に用いる化成処理液として以下のものを作製した。
シランカップリング剤を5g/l、水分散シリカを1.0g/l、ジルコニウム化合物をジルコニウムイオンで0.5g/l、水系アクリル樹脂を25g/l含む水溶液を作製し、化成処理液とした。なお、シランカップリング剤にはγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、水分散シリカには日産化学社製「スノーテック−N」、ジルコニウム化合物には炭酸ジルコニルアンモニウム、水系アクリル樹脂にはポリアクリル酸を用いた。
日本ファインコーティングス社製のPCM用ポリエステル系プライマーであるFL641EUプライマーのクリア塗料を準備し、これにクロメートフリー防錆顔料であるテイカ社製のトリポリリン酸2水素アルミニウムの「K−WHITE #105」をクリア塗料の固形分100質量部に対して30質量部添加し、塗料用分散機を用いて攪拌する事で、供試材に用いるプライマー用塗料を調製した。
有機樹脂(A)(表1)、光可逆変色性顔料(B)(表2)、架橋剤(C)(表3)、酸化ケイ素(D)(表4)を表5に示す配合量で配合し、塗料用分散機を用いて攪拌する事で、供試材に用いる光可逆変色性皮膜を形成するための水系塗布溶液を作製した。
有機樹脂(F)(表6)、光可逆変色性顔料(G)(表7)、架橋剤(H)(表8)を表9に示す配合量で配合し、塗料用分散機を用いて攪拌した。その後、三井サイテック社製の酸性触媒「キャタリスト600」を5質量部添加し攪拌することで、供試材に用いる光可逆変色性皮膜を形成するための溶剤系塗布溶液を作製した。
東洋紡績社製のポリエステル樹脂である「バイロナール MD1100」に、架橋剤として三井サイテック社製のメラミン樹脂「サイメル 303」を添加し、クリア塗料を作製した。メラミン樹脂の添加量は、ポリエステル樹脂固形分100質量部に対して30質量部となるように添加した。さらに、必要に応じて、前記クリア塗料に、東洋インキ社製の水系着色剤「RED HR(赤色)」および「BLUE HG(青色)」をそれぞれポリエステル樹脂固形分100質量部に対して30質量部となる様に添加し、塗料用分散機を用いて攪拌する事で、有色の塗料を調製した。
東洋紡績社製の非晶性ポリエステル樹脂である「バイロン(登録商標) 270」を、有機溶剤(質量比でシクロヘキサノン:ソルベッソ150を1:1に混合したものを使用)に、樹脂固形分濃度が30質量%となるように溶解し、さらに架橋剤として三井サイテック社製のメラミン樹脂「サイメル(登録商標) 303」を添加し、クリア塗料を作製した。メラミン樹脂の添加量は、ポリエステル樹脂固形分100質量部に対して30質量部となるように添加した。さらに、必要に応じて、前記クリア塗料に、東洋インキ製の着色剤「CAB−440レッド(赤色)」および「CAB714ブルー(青色)」をそれぞれポリエステル樹脂固形分100質量部に対して30質量部となる様に添加し、塗料用分散機を用いて攪拌した。その後、三井サイテック社製の酸性触媒「キャタリスト600」を5質量部添加し攪拌することで、光可逆変色性を有さない溶剤系皮膜用塗料を調製した。
各金属板を、日本パーカライジング株式会社製ファインクリーナー4336を用いて、濃度20g/L、温度60℃の条件で2分間スプレー処理し、純水で30秒間水洗した後に乾燥したものを試験板とした。そして化成処理液をロールコーターにて金属板に塗布し、熱風乾燥炉で乾燥して化成処理皮膜層を得た。化成処理液の付着量は、乾燥皮膜全体の付着量が100mg/m2となるように塗装した。化成処理乾燥時の到達板温は60℃とした。化成処理皮膜の付着量は蛍光X線で測定した。
化成処理を施した金属板上に、所定の膜厚になるように、(4)で作製した光可逆変色性皮膜を形成するための水系塗料をロールコーターで塗装し、熱風炉にて乾燥焼付し、水冷することで供試材であるプレコート金属板を得た(本方法で作製したプレコート金属板を以降「1コート1ベーク」もしくは「1C1B」と称する)。ここでは、25℃から金属到達温度までの昇温時間は10秒とした。皮膜付着量は重量法によって測定した。
化成処理を施した金属板上に、プライマーを5μmとなるようにロールコーターで塗装し、熱風炉にて焼付乾燥し、水冷することでプライマー板を得た。
以下、本発明を評価する方法を詳細に説明する。
光照射前後の金属板の色調(L*,a*,b*)を、色彩色差計(コニカミノルタ社製「CR−400」)で測定した。光照射後の色調は、紫外線LEDライト(日亜化学工業社製「UV−LED375−41」)で金属板から30mmの位置から5秒間照射し、その後10秒間暗箱内に静置後に測色した。
ΔE*=((L* 2−L* 1)2+(a* 2−a* 1)2+(b* 2−b* 1)2)0.5
L*1、a*1、b*1:光照射前の測色値
L*2、a*2、b*2:光照射後の測色値
[評点]
5: ΔE*が20以上
4: ΔE*が10以上、20未満
3: ΔE*が5以上、10未満
2: ΔE*が1以上、5未満
1: ΔE*が1未満
作製したプレコート金属板について、同じ板厚のスペーサーを複数枚間に挟んで180°折り曲げ加工(一般的にT曲げと呼ばれる加工)を実施し、更にT曲げ加工部の塗膜上にニチバン製セロテープ(登録商標)を貼り付け、セロテープ(登録商標)を剥がした後の塗膜剥離程度を調べた。折り曲げ加工は20℃雰囲気中で、スペーサー枚数を0、1、2、4枚として加工した(それぞれ0T、1T、2T、4T曲げと称する)。
[評点]
5: 0T曲げで剥離なし
4: 0T曲げで剥離あり、1T曲げで剥離なし
3: 1T曲げで剥離あり、2T曲げで剥離なし
2: 2T曲げで剥離あり、4T曲げで剥離なし
1: 4T曲げで剥離あり
供試材を太平理化工業製「ラビングテスター」に設置後、エタノール、トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサノンをそれぞれ含浸させた脱脂綿を49kPa(0.5kgf/cm2)の荷重で5回(往復)擦った後のプレコート金属板の外観を観察し、下記基準で評価した。評点3以上を好適とした。
[評点]
5: すべての溶剤で変色なし
4: 1種の溶剤で変色あり
3: 2種の溶剤で変色あり
2: 3種の溶剤で変色あり
1: すべての溶剤で変色あり
(i)平板部耐食性
端面及び裏面をシールした平板試験片について、JIS Z 2371に規定されている塩水噴霧試験(SST)を実施し、240時間後の白錆の発生率で評価した。耐食性評価基準を以下に示す。評点3以上を好適とした。
[評点]
5: 白錆発生無し
4: 白錆発生1%未満
3: 白錆発生1%以上5%未満
2: 白錆発生5%以上20%未満
1: 白錆発生20%以上
端面及び裏面をシールした平板試験片について、中央部に7mmエリクセン加工を施した後、JIS Z 2371に規定されている塩水噴霧試験(SST)を実施し、120時間後のエリクセン加工部の白錆発生率で評価した。耐食性評価基準を以下に示す。評点3以上を好適とした。
[評点]
5: 白錆発生無し
4: 白錆発生1%未満
3: 白錆発生1%以上5%未満
2: 白錆発生5%以上20%未満
1: 白錆発生20%以上
平板試験片について、紫外線LEDライト(日亜化学工業社製「UV−LED375−41」)で金属板から30mmの位置から1000時間照射し、その後1時間暗箱内に静置後に測色した。光照射前後の金属板の色調(L*,a*,b*)を、色彩色差計(コニカミノルタ社製「CR−400」)で測定した。
ΔE*=((L* 2’−L* 1’)2+(a* 2’−a* 1’)2+(b* 2’−b* 1’)2)0.5
L*1’、a*1’、b*1’:光照射前の測色値
L*2’、a*2’、b*2’:光照射後、暗室で1時間静置した後の測色値
[評点]
5: ΔE*が1未満
4: ΔE*が1以上、3未満
3: ΔE*が3以上、5未満
2: ΔE*が5以上、7未満
1: ΔE*が7以上
水系塗料における光可逆変色性マイクロカプセル量および膜厚の影響として、実施例1〜実施例8、11および比較例1〜比較例5、15に示す。
マイクロカプセル含有樹脂皮膜の樹脂種類の影響として、実施例1〜23に示す。いずれも、優れた光可逆変色性、加工密着性、耐溶剤性および耐食性を有していた。
ポリエステル樹脂の架橋剤として用いたメラミン樹脂比率の影響として、実施例1〜4および実施例12、実施例13に示す。いずれも、優れた光可逆変色性、加工密着性、耐溶剤性、耐食性および耐紫外線性を有していた。
PMTの影響として実施例8〜10、実施例21〜23および比較例6、7に示す。本発明のプレコート金属板(実施例8〜10および実施例21〜23)は、いずれも優れた光可逆変色性、加工密着性、耐溶剤性、耐食性および耐紫外線性を有していた。
光可逆変色性を有さない皮膜の影響として、実施例6、7、14および実施例25、26、28に示す。いずれも、優れた光可逆変色性、加工密着性、耐溶剤性、耐食性および耐紫外線性を有していた。
光可逆変色性を有さない着色皮膜の影響として、実施例25〜28および実施例29〜33に示す。いずれも、優れた光可逆変色性、加工密着性、耐溶剤性、および耐紫外線性を有していた。
光可逆変色性を有さない着色皮膜がある場合のPMTの影響として、実施例32および33に示す。実施例33は実施例32と比較してわずかにΔE*が低下した。一方、耐薬品性は低下しなかった。光可逆変色性を有さない着色層の影響により低PMTにおける耐薬品性が向上したと考えられる。
原板の影響として、実施例30および実施例34〜38に示す。原板は耐食性にもっとも影響を及ぼすと考えられるが、今回調査した評価方法ではいずれの原板を用いても差は見られなかった。
塗料種類の影響として、実施例1〜38と実施例39〜75に示す。いずれも、優れた光可逆変色性、加工密着性、耐溶剤性および耐食性を有しており、水系塗料を使用したもの(実施例1〜38)は溶剤系塗料を使用したもの(実施例39〜75)と光可逆変色性、加工密着性、耐溶剤性および耐紫外線性に関して、ほぼ同じ傾向を示した。
Claims (6)
- 金属板の少なくとも一方の面に、樹脂皮膜を1層以上有し、
前記樹脂皮膜は、光照射有無によって可逆的に有色または無色を呈するマイクロカプセルを、前記樹脂皮膜中の樹脂固形分100質量部に対して2〜30質量部の割合で含有しており、且つ、ポリエステル樹脂および架橋剤としてメラミン樹脂を、前記ポリエステル樹脂固形分100質量部に対して前記メラミン樹脂15〜35質量部の割合で含有しており、
前記樹脂皮膜の厚みが2μm以上であり、
光照射前後におけるJIS Z 8729に記載の色差ΔE*が5以上可逆的に変化する、
ことを特徴とする光可逆変色性プレコート金属板。 - 前記マイクロカプセル含有樹脂皮膜の層1の上に、光照射有無に応じて可逆的に有色または無色を呈するマイクロカプセルを含有しない皮膜の層2を少なくとも1層有することを特徴とする、請求項1に記載の光可逆変色性プレコート金属板。
- 前記マイクロカプセルの平均粒径をD、前記層1の厚みをT1、前記層2の厚みをT2とした場合、D<T1+T2であることを特徴とする、請求項2に記載の光可逆変色性プレコート金属板。
- 前記層2が着色層であり、前記層1と前記層2が重ね塗り効果により、光照射の有無に応じて2色以上を呈することを特徴とする請求項2または3に記載の光可逆変色性プレコート金属板。
- 光照射有無に応じて可逆的に有色または無色を呈する光可逆変色性マイクロカプセルを配合した塗料を少なくとも1層以上、金属板の少なくとも一方の面上に塗布するステップと、
前記金属板を、前記ポリエステル樹脂の硬化開始温度よりも10℃以上高く、前記マイクロカプセルの殻材の溶融温度よりも10℃以上低い金属到達温度に加熱し、前記金属板上の塗料を硬化させて皮膜を形成するステップと、
を有する、光照射前後におけるJIS Z 8729に記載の色差ΔE*が5以上可逆的に変化する光可逆変色性プレコート金属板の製造方法。 - 前記塗布するステップにおいて、前記光可逆変色性マイクロカプセルを配合した塗料を少なくとも1層以上と、前記マイクロカプセルを配合しない塗料を少なくとも1層以上、前記金属板の一方の面上に多層同時塗布して、前記マイクロカプセル含有樹脂皮膜の層1の上に、光照射有無に応じて可逆的に有色または無色を呈するマイクロカプセルを含有しない皮膜の層2を少なくとも1層形成する、請求項5に記載の光可逆変色性プレコート金属板の製造方法。
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