本発明の実施形態に係るモールド保持冶具(フィルム搬送冶具)1は、図1で示すように、枠体(モールド保持冶具本体部)3と、粘着剤(粘着層)5とを備えて構成されている。
枠体3は、たとえば金属で構成されており、剛体とみなせる程度の剛性を備えている。粘着剤5は、厚さ方向の一方の面に微細な転写パターン7が形成されているシート状(フィルム状)のモールド9を枠体3で保持するために設けられている。
なお、粘着剤5は、枠体3の表面の少なくとも一部に設けられているが、粘着剤5を枠体3に設けることに代えてもしくは加えてモールド9に設けてもよい。すなわち、モールド9を枠体3に設置する前の状態で、粘着剤5が、枠体3、モールド9の少なくともいずれかに設けられていればよい。
粘着剤5を介して枠体3に保持されているモールド9は、枠体3と一体化しており、剛体とみなせる程度になっており容易には変形しないようになっている。また、微細な転写パターン7は、モールド9の一部に設けられており、微細な転写パターン7が設けられていない部位が、粘着剤5に接している。
枠体3は環状(中空状)に形成されている。粘着剤5は、環状になってたとえば枠体3に設けられている。なお、粘着剤5が、必ずしも連続して環状になって設けられている必要は無く、点在して環状になっている等、他の形態で設けられていてもよい。
モールド9は、この外周の環状部位(外周部)11が、粘着剤5を介して枠体3に一体的に支持され設置されている。モールド保持冶具(モールド保持具)1に設置された状態では、モールド9は、平板状になっており、外周の環状部位11が粘着剤5を間にして枠体3に係合しており、外周の環状部位11の内側に位置する内側の部位13は、枠体3から離れ枠体3の内側で弛みの無い状態で張られている。微細な転写パターン7は、モールド9の内側の部位13に設けられている。
本発明の実施形態に係るモールド剥離装置15は、被成形体・モールド係合体21(図1(b)参照)から、モールド9を剥がす装置であり、図3等で示すように、係合体保持体17とローラ19とを備えて構成されている。
被成形体・モールド係合体21は、お互いが一体化しているモールド9と被成形体23とを備えてシート状に形成されている。
さらに説明すると、モールド9の厚さ方向の一方の面には微細な転写パターン7が形成されており、被成形体・モールド係合体21では、被成形体23の厚さ方向の一方の面に微細な転写パターン7を転写したことによってモールド9が被成形体23に貼り付いている。
また、被成形体・モールド係合体21では、被成形体23の厚さ方向とモールド9の厚さ方向とがお互いに一致しており、被成形体23にモールド9が重なっている。モールド9の微細な転写パターン7が形成されている面と被成形体23の微細な転写パターン25が転写された面とがお互いに密着している。
係合体保持体17には、被成形体・モールド係合体21が設置されるようになっている。係合体保持体17は、設置された被成形体・モールド係合体21をたとえば真空吸着によって保持するようになっている。
係合体保持体17が設置された被成形体・モールド係合体21を保持している状態では、被成形体・モールド係合体(保持済み被成形体・モールド係合体)21の被成形体23が係合体保持体17に接触しており、被成形体・モールド係合体21のモールド9は、被成形体23を間にして係合体保持体17とは反対側に位置している。
ローラ19は、係合体保持体17に設置されて保持されている被成形体・モールド係合体21のモールド9を、粘着剤27によりくっ付け(外周に)巻き取ることで、被成形体23から剥がすものである。
なお、粘着剤27は、円柱状のローラ19の外周(側面)に薄い膜状になって設けられている。また、粘着剤27でモールド9をくっつけて巻き取ることに代えてもしくは加えて、真空吸着によってモールド9をくっつけて巻き取るように構成されていてもよい。
また、モールド剥離装置15には、制御装置(CPUを備えた制御部)29が設けられている。
ローラ19は、制御装置29の制御の下、前述した巻き取りをするために、サーボモータ30等のアクチュエータによりモールド9の厚さ方向(図3の上下方向)に対して直交する所定の方向に直線的に移動するようになっている。
また、ローラ19は、制御装置29の制御の下、前述した巻き取りをするために、別のサーボモータ等のアクチュエータ(図示せず)により、前述した直線的な移動に同期して回転駆動するようになっている。
そして、初期状態から、ローラ19を別のアクチュエータで回転するとともにサーボモータ30で係合体保持体17の他端側に直線的に移動することで、被成形体・モールド係合体21のモールド9の巻き取りをするようになっている。
なお、初期状態では、図3で示すように、係合体保持体17に被成形体・モールド係合体21が設置され保持されており、係合体保持体17に保持されている被成形体・モールド係合体21の厚さ方向(図3の上下方向)での円柱状のローラ19の回転中心軸C1と被成形体・モールド係合体21との距離がローラ19の半径とほぼ等しくなっており、ローラ19の移動方向(図3の左右方向)でローラ19が係合体保持体17の一端側(図3の右側)で係合体保持体17の一端から離れている。
ローラ19でモールド9の巻き取りをしているときには、ローラ19がモールド9に対してころがり対偶をなしており、ローラ19とモールド9との間は滑りが発生していない。
なお、ローラ19がアクチュエータで回転駆動するのはなく、図3の左右方向での移動に応じてフリーの状態で回転するようにしてもよい。
被成形体・モールド係合体21のモールド9の外周部(環状部位)11は、図1等で示すように、被成形体23から突出している。被成形体・モールド係合体21は、前述したように、モールド9の突出している環状部位11が、粘着剤5を用いてモールド保持冶具1に保持されることで、モールド保持冶具1に一体的に設置されている。
また、モールド剥離装置15には、冶具保持体31が設けられており、冶具保持体31には、被成形体・モールド係合体21が設置されているモールド保持冶具1が設置され保持されるようになっている。なお、モールド保持冶具1には、被成形体・モールド係合体21が設置されているものとする。
モールド剥離装置15におけるモールド9の剥がしは、冶具保持体31にモールド保持冶具1が設置され保持されている状態で、被成形体・モールド係合体21からモールド9を剥がすだけでなく、モールド保持冶具1の粘着剤5のところでモールド9をモールド保持冶具1からも剥がすことでもなされるように構成されている。
また、モールド剥離装置15は、ベース体33を備えている。ローラ19は、ローラ支持体35に回転自在に支持されており、ローラ支持体35は、X軸スライドベース37に直線的に移動自在に支持されている。
X軸スライドベース37は、調整ライナ39を介してベース体33に一体的に設けられており、調整ライナ39の厚さを機械加工等により調整することで、X軸スライドベース37が係合体保持体17に対して接近しもしくは離反する方向(図3の上下方向)で位置決めされるように構成されている。
係合体保持体17は、X軸スライドベース37に対して接近しもしくは離反する方向(調整ライナ39の厚さ方向)で移動位置決め自在なようにベース体33に設けられている。また、係合体保持体17は、サーボモータ41(空気圧等のシリンダでもよい)等のアクチュエータによって、X軸スライドベース37に対して接近しもしくは離反する方向(図3の上下方向)で移動するようになっている。
そして、たとえば、モールド9の剥がしをするときのローラ19の押圧力を調整するために、制御装置29がサーボモータ41を制御し、係合体保持体17を図3の上下方向で移動位置決めするようになっている。
ここで、モールド保持冶具1とモールド剥離装置15とについてさらに詳しく説明する。
説明の便宜のために水平な一方向をX軸方向とし、水平な他の一方向であってX軸方向に対して直交する方向をY軸方向とし、X軸方向とY軸方向とに対して直交する上下方向をZ軸方向とする。
モールド保持冶具1の枠体3は、高さ(Z軸方向の寸法)の低い円筒状に形成されている。これにより、下端と上端には、図1等で示すように、リング状の平面(下面43、上面45)が形成されている。粘着剤5は、薄い膜状になっている上面45の全面に設けられている。
シート状のモールド9は、図1等で示すように、シート状の基材(モールド用基材)49と転写パターン形成体51とを備えて構成されている。
また、シート状のモールド9は、可撓性を備えている。さらに説明すると、シート状のモールド9は、この厚さ方向に対して直交する方向の引張り力が加えられても弾性変形をほとんどせずほぼ剛体とみなせるが、紙幣等のように厚さ方向でめくれるような変形(厚さ方向に対して直交する方向に延伸している軸まわりのモーメントによる変形)を容易にするようになっている。したがって、モールド9は、引き剥がしのときに、被成形体23から容易にめくれあがるようになっている。
シート状のモールド用基材49は、たとえば、紫外線が透過可能なPET樹脂等の樹脂材料で板状に形成されている。
微細な転写パターン7が形成されている転写パターン形成体51は、たとえば、紫外線が透過可能な硬化した紫外線硬化樹脂(熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等の他の樹脂であってもよい。)で薄い膜状に形成されている。転写パターン形成体51は、この厚さ方向がモールド用基材49の厚さ方向と一致するようにして、シート状のモールド用基材49の厚さ方向の一方の面でモールド用基材49に一体に設けられている。
転写パターン形成体51の微細な転写パターン7は、転写パターン形成体51の表面(厚さ方向における一方の面であって、モールド用基材49に接している面とは反対の面)に形成されている。なお、転写パターン形成体51の微細な転写パターン7は、図示しないマスターモールドに形成されている微細な転写パターンを転写することで生成されたものである。
なお、微細な転写パターン7は、ピッチや高さが、たとえば可視光線の波長程度である凹凸で形成されている。
モールド用基材49は、たとえば、円形状(薄い円板状)に形成されている(図2参照)。図1(a)で示すように、モールド用基材49の直径D1は、枠体3の外径D3と等しくなっている。モールド9がモールド保持冶具1に設置され保持されている状態では、モールド用基材49は、厚さ方向が枠体3の高さ方向と一致し、中心が枠体3の中心と一致している。
転写パターン形成体51も、たとえば、円形状(薄い円板状)に形成されている。転写パターン形成体51の直径D5は、枠体3の内径D7よりも小さくなっている。モールド9がモールド保持冶具1に設置され保持されている状態では、転写パターン形成体51は、枠体3側の面(モールド用基材49の厚さ方向の一方の面;図1では下側の面)に設けられており、中心が枠体3の中心と一致している。
枠体3の上面45に設けられている粘着剤5の外径は、枠体3の外径D3と等しくなっており、粘着剤5の内径は、枠体3の内径D7と等しくなっている。
なお、粘着剤5の外径を、直径D9(枠体の外径D3よりも小さく内径D7よりも大きな直径)にして、モールド用基材49(モールド9)の外周の環状部位が、モールド9の外周からこの近傍にかけて枠体3に粘着されていないようにしてもよい。
また、モールド用基材49の外径寸法(直径)D1を枠体3の外径寸法D3よりも大きくして、モールド用基材49(モールド9)の外周の環状部位が、モールド9の外周からこの近傍にかけて枠体3に粘着されていないようにしてもよい。
シート状の被成形体23は、シート状の基材(被成形体用基材)53と被成形物55とを備えて構成されている(図1等参照)。
シート状の被成形体用基材53は、たとえば、PET樹脂等の樹脂材料で板状に形成されている。シート状のモールド9の微細な転写パターン7が転写される被成形物55は、たとえば、紫外線硬化樹脂(熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等の他の樹脂であってもよい。)で薄い膜状に形成されている。
被成形体用基材53も、たとえば、円形状(薄い円板状)に形成されている。被成形体用基材53の直径D11は、枠体3の内径D7よりも小さく、転写パターン形成体51の直径D5よりも大きくなっている。
被成形物55も、たとえば、円形状(薄い円板状)に形成されている。被成形物55は、厚さ方向が被成形体用基材53の厚さ方向と一致するようにして、シート状の被成形体用基材53の厚さ方向の一方の面(図1では上側の面)に設けられている。被成形物55の直径D13は、転写パターン形成体51の直径D5と同程度になっている。
被成形体23への転写が終了し、被成形体・モールド係合体21がモールド保持冶具1に設置され保持されている状態では、被成形体用基材53と被成形物55とは、厚さ方向が枠体3の高さ方向と一致し、中心が枠体3(モールド9)の中心と一致している。
被成形物55の微細な転写パターン25は、被成形物55の表面(厚さ方向における一方の面であって、被成形体用基材53に接している面とは反対の面)に形成されるようになっている。
被成形物55が紫外線硬化樹脂や熱硬化性樹脂である場合、モールド9の微細な転写パターン7が転写される前(図1(a)参照)の被成形物(未硬化の樹脂)55は、液体状もしくは流動体状になっている。図1(b)で示す転写がなされるときに、被成形物55が硬化し、転写終了時には、被成形物55は硬化している。
モールド剥離装置15は、前述したように、ベース体33を備えている。ベース体33は、矩形な平板状の下側ベース体57と、下側ベース体57とほぼ同形状に形成された上側ベース体59と円柱状の4本の支柱61とを備えて構成されている。
下側ベース体57、上側ベース体59は、厚さ方向がZ軸方向になっている。上側ベース体59は、下側ベース体57をZ軸上方向に所定の距離だけ移動したところに位置している。
支柱61は円柱状に形成されており、高さ方向がZ軸方向になるようにして、下側ベース体57、上側ベース体59の4隅の近傍で下側ベース体57、上側ベース体59の間に設けられている。なお、各支柱61の下端は下側ベース体57と一体化しており、各支柱61の上端は上側ベース体59と一体化している。
係合体保持体17は、たとえば、円板状に形成されており、厚さ方向がZ軸方向になるようにして、Z軸スライダ63を介して、下側ベース体57に支持されている。これにより、係合体保持体17は、制御装置29の制御の下、ベース体33に対してZ軸方向で移動位置決め自在になっている。
Z軸スライダ63は、Z軸スライドベース65とZ軸移動体67とを備えて構成されている。Z軸移動体67はリニアガイドベアリング69を介してZ軸スライドベース65に支持されている。また、Z軸移動体67はサーボモータ41と図示しないボールネジとによって、Z軸方向で移動位置決めされるようになっている。
Z軸スライドベース65はブラケット71を介して下側ベース体57に一体的に設けられており、係合体保持体17は、Z軸移動体67の上端でZ軸移動体67に一体的に設けられている。これにより、係合体保持体17は、ベース体33に対してZ軸方向で移動位置決め自在になっている。
係合体保持体17の上面は、平面になっており、この平面に被成形体23(被成形体用基材53の、被成形物55が設けられている面とは反対側の面)を接触させ、真空吸着によって被成形体23を保持するようになっている。なお、真空吸着は真空ポンプ73を用いてなされるようになっている。また、真空吸着がなされていることを確認するための真空計(真空度検出センサ)75も設けられている。
係合体保持体17は、Z軸方向では、下側ベース体57と上側ベース体59との間に位置している。Z軸方向から見ると、係合体保持体17の中心と下側ベース体57(上側ベース体59)の中心とはお互いに一致しており、係合体保持体17が4本の支柱61や下側ベース体57(上側ベース体59)の外周から離れて、4本の支柱61の内側に存在している。
冶具保持体31は、たとえば環状に形成されており、冶具保持体支持体77を介して、各支柱61に一体的に設けられている。環状の冶具保持体31は、この中心軸がZ軸方向に延伸しており、Z軸方向では、上昇端に位置している係合体保持体17とほぼ同じところに位置している。
冶具保持体31の内径D15は、枠体3の内径D7と同程度になっている。冶具保持体31には、浅い円柱状の凹部79が設けられている。凹部79の内径D17は、モールド保持冶具1(枠体3)の外径D3よりもごく僅かに大きくなっている。Z軸方向から見ると、冶具保持体31の中心軸と凹部79の中心と係合体保持体17の中心とがお互いに一致している。
また、係合体保持体17の外径D19は、被成形体用基材53(被成形体23)の直径D11とほぼ等しく、冶具保持体31の内径D15よりも小さくなっている。そして、係合体保持体17が上昇端に位置しているときには、係合体保持体17が、冶具保持体31の内側に位置している。
モールド保持冶具1を冶具保持体31に設置した状態では、モールド保持冶具1が、冶具保持体31の凹部79に嵌りこみ、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向でベース体33に対して位置決めされている。
また、冶具保持体31に設置されたモールド保持冶具1は、図示しないマグネット等の保持部によって、冶具保持体31に保持されている。
被成形体・モールド係合体21が保持されているモールド保持冶具1を冶具保持体31に設置し、係合体保持体17を上昇させてこの上面を被成形体23に面接触させた状態では、モールド9はX軸方向およびY軸方向に展開している薄い平板状になっており、Z軸方向では、モールド9の中心部で、モールド9、被成形体23、係合体保持体17が上から下にこの順でならんでおり、モールド9の外周の部位(環状部位)11で、モールド9、モールド保持冶具1、冶具保持体31が上から下にこの順でならんでいる。
また、被成形体・モールド係合体21が保持されているモールド保持冶具1を冶具保持体31に設置し、係合体保持体17を上昇させてこの上面を被成形体23に面接触させた状態をZ軸方向から見ると、すでに理解されるように、係合体保持体17の中心と、被成形体23の中心と、モールド保持冶具1の中心とがお互いに一致している。
ローラ19は、冶具保持体31の上方であって上側ベース体59の下側で、ローラ支持体35に回転自在に設けられている。ローラ19の回転中心軸C1は、Y軸方向に延びている。
ローラ支持体35は、X軸スライダ81を介して、上側ベース体59に支持されている。これにより、ローラ支持体35は、制御装置29の制御の下、ベース体33に対してX軸方向で移動位置決め自在になっている。
X軸スライダ81は、X軸スライドベース37とX軸移動体83とを備えて構成されている。X軸移動体83はリニアガイドベアリング(図示せず)を介してX軸スライドベース37に支持されている。また、X軸移動体83はサーボモータ30と図示しないボールネジとによって、X軸方向で移動位置決めされるようになっている。
X軸スライドベース37は調整ライナ39を間にして上側ベース体59に一体的に設けられている。調整ライナ39の厚さ(Z軸方向の寸法)を調整することで、ローラ19は、ベース体33に対してZ軸方向で位置の調整がなされるようになっている。
なお、Z軸方向での位置の調整がなされ被成形体・モールド係合体21が保持されているモールド保持冶具1が冶具保持体31に設置されている状態では、Z軸方向で、ローラ19の回転中心軸C1とモールド9との間の距離が、ローラ19の半径とほぼ等しくなっている。
ローラ19のY軸方向の寸法は、被成形体・モールド係合体21(モールド9)の外径よりも大きくなっており、被成形体・モールド係合体21が保持されているモールド保持冶具1が冶具保持体31に設置された状態では、Y軸方向で、ローラ19の中心と被成形体・モールド係合体21の中心とがお互いに一致している。
ローラ19は粘着処理がされている。すなわち、円柱状のローラ19の外周(側面)には、モールド9をくっつけるための粘着剤27が薄い膜状になって設けられている。
ローラ19の外周長(ローラ19の直径×円周率)の値は、被成形体・モールド係合体21(モールド9)の外径よりも大きくなっている。
そして、図3に示す初期状態から、ローラ19をX軸方向の一端側から他端側に移動することで、ローラ19が粘着剤27でモールド9をくっつけることで巻き取り、モールド9を被成形体・モールド係合体21とモールド保持冶具1とから剥がすようになっている(図4、図5参照)。
なお、上記剥がしをするときに、ローラ19のX軸方向の移動速度を制御する(変える)ようにしてもよい。たとえば、モールド9の種類に応じて、X軸方向の移動速度を変更したり、剥がし始めには、X軸方向の移動速度を遅くしておいて、その後次第に速くするようにしてもよい。
また、係合体保持体17をZ軸方向にごく僅かに移動することで、モールド9の剥がしをするときに、ローラ19と係合体保持体17とによる被成形体・モールド係合体21の挟み込み力(ローラ19の押圧力)を適宜変えるようにしてもよい。
次に、モールド剥離装置15の動作を説明する。
まず、図3で示すような初期状態になっているものとする。初期状態では、モールド9から被成形体23への微細な転写パターン7の転写が終了し(図1(b)参照)、被成形体・モールド係合体21を保持しているモールド保持冶具1が、冶具保持体31に設置されており、係合体保持体17が上昇し被成形体・モールド係合体21を保持しており、係合体保持体17に保持されている被成形体・モールド係合体21の厚さ方向(Z軸方向)で、円柱状のローラ19の回転中心軸C1と被成形体・モールド係合体21との距離がローラ19の半径とほぼ等しくなっており、ローラ19の移動方向(X軸方向)でローラ19が係合体保持体17の一端側で係合体保持体17の一端から離れている。
上記初期状態から、ローラ19を回転しつつX軸方向の他端側に移動すると、ローラ19がモールド9を巻き始め(図4参照)、モールド9を被成形体23から剥がし始める。
ローラ19を回転しつつX軸方向の他端側に移動し終えると(図5参照)、モールド9の被成形体23(被成形体・モールド係合体21)からの剥がしが完了する。
この後、微細な転写パターン25(図1(c)参照)が形成された被成形体23の取り出し位置まで、係合体保持体17を下降し、係合体保持体17による被成形体23の保持を止め(被成形体23を開放し)、ロボット(図示せず)で、モールド9から離れ微細な転写パターン25が形成されている被成形体23を搬出する。また、ローラ19で巻き取ったモールド9を、ローラ19から剥がす。ローラ19から剥がしたモールド9を再使用してもよい。
モールド剥離装置15によれば、被成形体・モールド係合体21のモールド9をローラ19の粘着剤27によりくっ付け巻き取ることで被成形体23から剥がすので、モールド9に大きな力をかけることなく、X軸方向の一端から他端に向かってモールド9が被成形体23から徐々に剥がれ、転写によって被成形体23に形成された微細な転写パターン25がモールド9にくっ付いてしまうことや微細な転写パターン25の形状精度が悪化することが無くなり、被成形体23への微細な転写パターン7の転写不良(離型不良)の発生を無くすことができる。
また、モールド剥離装置15によれば、モールド9を剥離するローラ19の回転速度と移動速度とを適宜変更することで、離型不良の発生を一層無くすことができる。
さらに、モールド剥離装置15によれば、ばらつきの無い一定の条件で離型が行われるので、再現性が向上し、微細な転写パターン25が形成された被成形体23の品質が安定し、自動化に対応することが容易になり、スループットの短縮が可能になる。
また、モールド剥離装置15によれば、シート状のモールド9がモールド保持冶具1に設置されているので、モールド9の取り扱いがしやすくなっている。また、被成形体・モールド係合体21からのモールド9の剥がしをするときに、モールド保持冶具1の粘着剤5のところでモールド9がモールド保持冶具1から剥がされるで、被成形体・モールド係合体21とモールド保持冶具1とからのモールド9の剥がしが、従来のようにボルト等を用いてモールドを保持している場合に比べて著しく容易になっている。
また、モールド剥離装置15によれば、係合体保持体17がX軸スライドベース37に対してZ軸方向で移動位置決め自在になっているので、微細な転写パターン25が形成された被成形体23を搬出するときには、係合体保持体17を下降しておくことで、被成形体23の搬出がしやすくなっており、また、被成形体・モールド係合体21からのモールド9の剥がしをするときには、係合体保持体17の位置を微調整することで、係合体保持体17とローラ19とによる被成形体・モールド係合体21の挟み込み力(ローラ19でモールド9を剥がすときのローラ19の押圧力)を容易に調整することができ、離型不良の発生を一層無くすことができる。
モールド保持冶具1によれば、粘着剤5を用いてシート状のモールド9を保持しているので、従来のようにボルトを使用している態様に比べてモールド9の設置作業を簡素化することができ、設置工数を削減することができる。
そして、モールド9の設置工数を削減できることで、モールド9や被成形体23にパーティクルが付着するおそれを低減させることができる。
また、モールド保持冶具1によれば、モールド9の外周の環状部位11が粘着剤5を介して環状の枠体3に支持されるので、モールド9での弛みの発生を確実に防止することができる。
また、モールド9の外周の環状部位11の少なくとも一部が、モールド9の外周からこの近傍にかけて枠体3に粘着されていない構成にすれば、ローラ19によるモールド9の剥がしが一層容易になる。
ところで、モールド剥離装置15を次に示すように変形してもよい。
すなわち、ローラ19が、保持済み被成形体・モールド係合体(係合体保持体17に保持されている被成形体・モールド係合体)21のモールド9を押圧する方向とこの逆方向とに移動自在なっていてもよい(ローラ19の回転中心軸C1が係合体保持体17に対してZ軸方向で移動自在になっていてもよい)。
また、保持済み被成形体・モールド係合体21のモールド9を被成形体23から剥がすとき、ローラ19が、保持済み被成形体・モールド係合体21のモールド9を押圧する方向(下方向)に移動して被成形体・モールド係合体21のモールド9に接触し、弾性体(たとえば、図示しない圧縮コイルバネ、もしくは、図示しない空気圧シリンダ)を介して、被成形体・モールド係合体21のモールド9を押圧する付勢をするように構成されていてもよい。
上記変形例についてより詳しく説明すると、図3に示すローラ支持体35は、図示しない基端側部材と図示しない第1の先端側部材と図示しない第2の先端側部材とで構成されている。第1の先端側部材は、基端側部材の下側に位置しており、図示しないリニアガイドベアリングを介して基端側部材に支持されており、基端側部材に対してZ軸方向で移動するようになっている。
また、第1の先端側部材は、図示しないサーボモータ等のアクチュエータによって、制御装置29の制御の下、Z軸方向で移動位置決めされるようになっている。なお、第1の先端側部材の位置決めが、サーボモータを用いることなく手動でなされるような構成になっていてもよい。
第2の先端側部材は、第1の先端側部材の下側に位置しており、図示しないリニアガイドベアリングを介して第1の先端側部材に支持されている。
また、第2の先端側部材は、第1の先端側部材と第2の先端側部材との間に設けられている図示しない圧縮コイルバネによって下方に付勢されている。なお、第2の先端側部材は図示しないストッパによって、一定の位置よりも下側には、移動しないようになっている。ローラ19は、第2の先端側部材に回転自在に支持されている。
上述したように、ローラ19が弾性体を介してモールド9を付勢するように構成することで、ローラ19の押圧力を調整しやすくなる。たとえば、ローラ19に対する保持済み被成形体・モールド係合体21の位置がごく僅かにずれていても、弾性体によってローラ19の押圧力をほぼ一定の適宜の値にすることができる。
また、ローラ19が弾性体を介してモールド9を付勢する構成に代えて、ロードセル等の押圧力検出体を用いてローラ19がモールド9を押圧する力を制御するようにしてもよい。
すなわち、上述したように、ローラ19が、保持済み被成形体・モールド係合体21のモールド9を押圧する方向とこの逆方向とに移動自在なっていてもよい。
そして、保持済み被成形体・モールド係合体21のモールド9を被成形体23から剥がす場合、ローラ19が保持済み被成形体・モールド係合体21のモールド9を押圧する方向(下方向)に移動して保持済み被成形体・モールド係合体21のモールド9に接触し押圧するときの押圧力を、たとえば図示しないロードセルで検出し、この検出結果に応じて、ローラ19が保持済み被成形体・モールド係合体21のモールド9を押圧する力が制御されるように構成されてもよい。
上記変形例についてさらに詳しく説明すると、図3に示すローラ支持体35は、図示しない基端側部材と図示しない先端側部材とで構成されている。先端側部材は、基端側部材の下側に位置しており、図示しないリニアガイドベアリングを介して基端側部材に支持されており、基端側部材に対してZ軸方向で移動するようになっている。
また、先端側部材は、図示しないサーボモータ等のアクチュエータによって、制御装置29の制御の下、Z軸方向で移動位置決めされるようになっている。ローラ19は、先端側部材に回転自在に支持されている。
ロードセルは、先端側部材と基端側部材との間に設けられており、先端側部材と基端側部材とで挟まれている。そして、先端側部材と基端側部材とがロードセルを挟む力をロードセルで検出することで、ローラ19の押圧力を測定することができるようになっている。
上述したように、ロードセルでローラ19の押圧力を検出し、この検出結果に応じて、ローラ19がモールド9を押圧する力を制御するように構成すれば(ローラ19の押圧力をフィードバック制御すれば)、ローラ19の押圧力をより一層正確な値に近づけることができる。
また、モールド剥離装置15において、ローラ19が回転することで(自転して自走することで)、保持済み被成形体・モールド係合体21のモールド9を被成形体23から剥がすように構成してもよい。
このローラ19の自走によるモールド9の剥がしについて詳しく説明する。
図3で示す初期状態から、モールド9の剥がしをするときには、まず、X軸移動体83(ローラ支持体35、ローラ19)を、サーボモータ30を用いて図3の左方向に移動する。この移動のときには、ローラ19をX軸移動体83の移動に同期させて回転する。
X軸移動体83の上記移動は、ローラ19がモールド9に接触するまで行う。より精確には、X軸方向でローラ19の回転中心軸C1の位置が、被成形体・モールド係合体21(モールド9)の右端よりも僅かに左側(たとえば、モールド9の1/10程度の距離だけ左側)に位置するまで行う。
サーボモータ30によるローラ19の上記移動が終了したときには、モールド9の右端からこの近傍にかけての部位が、被成形体23から離れてローラ19に巻き取られている。
上記サーボモータ30を用いた移動が終了したときには、サーボモータ30によるX軸移動体83の駆動を停止する。すなわち、サーボモータ30の回転出力軸(図示せず)とX軸移動体83との接合を断つ(たとえば図示しない電磁クラッチを切ることで断つ)。これにより、X軸移動体83やローラ支持体35がX軸方向でフリーな状態になる。
続いて、ローラ19の回転駆動のみで、モールド9を巻き取りながら、ローラ19やローラ支持体35やX軸移動体83を図3の左側に移動する。この移動は、ローラ19がモールド9の総てを巻き取るまで行う。また、ローラ支持体35やX軸移動体83の左側への移動は、ローラ19がモールド9を巻き取りながら図3の左側に移動することにしたがってなされる。
なお、ローラ19の回転駆動力のみでモールド9を巻き取るときのローラ19の回転速度は一定になっているが、ローラ19の回転速度を適宜変更してもよい。
このように、ローラ19を自転させて自走させてモールド9を被成形体23から剥がすように構成すれば、モールド9をだぶつかせることなく、被成形体・モールド係合体21からモールド9を剥がすことができる。
すなわち、ローラ支持体35の移動とローラ19の回転とを同期させてモールド9を巻き取ると、ローラ19がローラ支持体35の移動にともなってつれ回りをするのであるが、ローラ支持体35の移動量に対するローラ19の回転角度量のごく僅かなずれ等により、モールド9がだぶつく等の不具合が発生するおそれがある。
そこで、ローラ支持体35のX軸方向での移動をフリーな状態にして、ローラ19を回転しモールド9に対し自走するようにすれば、上述したごく僅かなずれは無くなり、モールド9がだぶつく等の不具合が無くなるのである。
また、ローラ19の粘着剤や真空吸着が、保持済み被成形体・モールド係合体21のモールド9を巻き始める側の部位のみでなされ、保持済み被成形体・モールド係合体21のモールド9をローラ19にくっ付けるように構成されていてもよい。
すなわち、図3で示すモールド9の右端から、モールド9の直径D1(図3では、D17とほぼ同じ値)の1/5程度(1/10〜1/3の範囲でもよい)右に位置する箇所までの間の部位を、粘着剤や真空吸着によって、ローラ19にくっ付け(粘着や吸着し)、モールド9の他の部位が、ローラ19に巻かれて接触するだけで粘着や吸着がなされないようにしてもよい。
このように、ローラ19の粘着剤や真空吸着が、保持済み被成形体・モールド係合体21のモールド9を巻き始める側の部位のみでなされるようにすれば、被成形体・モールド係合体21からはがされてローラ19に巻き付いているモールド9の、ローラ19から剥がしやすくなる。