JP5982095B2 - 新規金属タンパク質及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、新規金属タンパク質及びその製造方法に関するものである。より具体的には、本発明は、セレンとアポラクトフェリンとからなり、セレンがアポラクトフェリンに結合しているタンパク質、すなわち、セレン−ラクトフェリン及びその製造方法に関するものである。本発明のセレン−ラクトフェリンは、角結膜疾患、例えば、ドライアイ、乾性角結膜炎、点状表層角膜症、角膜びらん、又は角膜潰瘍等の予防又は治療に有用である。
角膜は厚さがおよそ1mmの透明で血管のない薄い組織であるが、上皮層、ボーマン膜、実質層、デスメ膜、及び内皮細胞層から成る非常に規則正しく微細な構造を有している。この角膜は眼球の最前面に位置し、外界からの光を網膜にある光受容体に導くための透過性と屈折力を有する高度に分化した組織であり、視覚にとって極めて重要であるとともに外界と直接接していることから、化学的な侵襲や微生物等の生物学的な侵襲等に対するバリアーとしても機能している。角膜の上皮層の上には、涙液層があり、眼を常に濡れた状態に保ち、眼瞼と結膜との癒着を防ぐと共に、角膜や結膜の生理的状態を維持させている。角膜上皮細胞は、基底部は円柱状であるが、表面にゆくにしたがって扁平になり、基底部で分裂した上皮細胞は次第に上部に移動し、最後は脱落して、涙液により運び去られる。角膜内皮細胞は細胞分裂をしないので、脱落しても再生されることはない。ドライアイ、角膜潰瘍、角膜上皮剥離、角膜炎等の種々の角膜疾患によって引き起こされる角結膜障害が、何らかの理由で修復が遅延したり、あるいは修復が行われずに遷延化すると角膜上皮のみならず、実質や内皮の構造や機能までも害され、視覚やバリアー機能に重大な影響を与える。反復性角膜びらん、遷延性角膜上皮欠損等の角結膜上皮疾患等はそのような疾患である。角結膜上皮障害の修復過程は角結膜上皮の細胞の移動による上皮欠損部の被覆と、それに続く細胞の分裂、分化によって正常な角結膜が再構築されていくものであり、角結膜上皮の修復に関わる因子も報告されつつある(例えば、非特許文献1参照)。
また、例えば、シェーグレン症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群、マイボーム腺機能不全、VDT(Visual Display Terminal)症候群等の一連の疾患に伴うドライアイや眼手術(白内障手術、角膜移植、屈折矯正手術)後のドライアイ、乾性角結膜炎、また、薬剤性角膜上皮障害、眼神経麻痺性角膜炎、糖尿病角膜症、アレルギー性結膜炎等でみられる、角膜上皮に生じる微細な点状の多発性上皮欠損である点状表層角膜症(SPK)等の角膜障害も、視覚やバリアー機能に重大な影響を与える(例えば、非特許文献2参照)。さらに従来より、コンタクトレンズ装用者等にも点状表層角膜症(SPK)等の角膜上皮障害が起こることが問題となっている(例えば、非特許文献3参照)。
角膜上皮創傷の治療剤としてはフィブロネクチン、EGF(Epidermal Growth Factor)、ヒアルロン酸等の成分がある。しかしながら、フィブロネクチンは患者自身の血漿から特殊な精製キットを用いて精製しなければならない血液製剤であり、手間がかかる上、患者の負担も大きいことから、臨床上十分には用いられていない。またEGFは角膜上皮細胞の分裂増殖作用を有するが、炎症を伴う場合や糖尿病性角膜症では、血管新生が発生する副作用が問題となり臨床上ほとんど用いられてはいない。
ヒアルロン酸はN−アセチル−D−グルコサミンとD−グルクロン酸を構成糖とする分子量数百万のグルコサミノグリカンで、保水効果を持つことからドライアイ患者に用いられている。ヒアルロン酸は角膜上皮細胞の接着、移動にも働くものの、上皮細胞の増殖効果は弱い。また、高濃度では粘度が高くなってしまう問題もある。
近年、角結膜疾患に対してセレノプロテインPやその断片を用いた治療法が提案されており、これらについては一定の角膜上皮障害治癒効果が報告されている(特許文献1参照)。しかしながら、セレノプロテインPは、血清中に存在することから大量に採取することが困難であり、しかも、組換えタンパク質に代表される遺伝子工学的手法による製造も困難であることから、工業的な大規模生産に不向きであるという問題点がある。
一方、ラクトフェリンは、主に哺乳動物の乳汁中に存在し、好中球、涙液、唾液、鼻汁、胆汁、精液などにも見出されている鉄結合性の糖タンパク質である。ラクトフェリンは、乳児の健康維持及び発育に重要なタンパク質であると共に、近年、抗菌作用及び抗バクテリア作用を有することが明らかになり、食品工業の他、様々な分野で利用されている。特に、眼科領域においては、涙液成分であるラクトフェリンをドライアイ治療用点眼剤の有効成分として使用することや、ラクトフェリンから鉄を除去したアポラクトフェリンを眼科用剤やコンタクトレンズ用組成物の有効成分として用いることが提案されている(特許文献2、3参照)。
ラクトフェリンは、分子量約80,000の鉄結合性の糖タンパク質であり、その三次元構造中には、1個の鉄と結合することができる、鉄結合ポケットが2つ存在する。ラクトフェリンの静菌(制菌)作用に関して、以下のように考えられている。すなわち、ラクトフェリンに存在する空の鉄結合性ポケットは、鉄に対するキレート作用を有するものであるが、当該作用によって、微生物の生育に必要とする鉄分が奪われ、その増殖が制限される。このため、生育の際に鉄分を強く要求する微生物が、ラクトフェリンの静菌(制菌)作用を受ける。このようなラクトフェリンの静菌(制菌)作用は、特に腸内環境において考察されている。このように、ラクトフェリンの静菌(制菌)作用に関して、同タンパク質中に存在する鉄結合性ポケットのキレート作用が注目されている。
しかしながら、一般的に、ラクトフェリンに存在する鉄結合性ポケットの鉄に対する結合性は、他のカチオンに対して2000倍程度高く、鉄に対して特異的であると考えられていたことから(非特許文献4)、従来、ラクトフェリン中の鉄を他の金属に置換した金属タンパク質は知られていなかった。さらに、本発明で述べるようなセレン−ラクトフェリンの眼部疾患に関わるような作用を類推することは難しく、実際に、そのような作用を見出した報告もない。
国際公開WO2006/137426号パンフレット 特許第4634809号公報 特開2007−137817号公報
Suzuki K et al.Progress in Retinal and Eye Research.,22,113-133 (2003) 大橋裕一 「2.点状表層角膜症」眞鍋禮三、木下茂、大橋裕一監修「角膜クリニック第二版」p36-43(2003)医学書院 濱野 光 日本コンタクトレンズ学会誌 37,1-6 (1995) Lonnerdal B et al.Am J Clin Nutr, 41, 550-559 (1985)
上記のように、従来から、角結膜疾患治療剤として様々なものが知られていたが、高い治療効果を有し、かつ、工業的大規模生産に適したものは知られておらず、このような点で更に優れた治療剤が望まれていた。また、ドライアイ、乾性角結膜炎、点状表層角膜症、角膜びらん、角膜潰瘍などの眼科障害に対しても、更に優れた治療剤が望まれていた。
本発明者らは、かかる課題に鑑み鋭意検討した結果、アポラクトフェリンにセレンが結合した金属タンパク質に角結膜障害に対する優れた治癒効果を見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(6)を提供するものである。
(1)セレン−ラクトフェリンである金属タンパク質。
(2)セレンが、アポラクトフェリン中に存在する鉄結合性ポケットに結合している(1)の金属タンパク質。
(3)上記(1)又は(2)に記載の金属タンパク質の製造方法であって、ラクトフェリン及び/又はアポラクトフェリンを含有する溶液に、セレン塩を添加する工程、及び得られた混合溶液を透析又は限外濾過に付する工程を含む前記製造方法。
(4)アポラクトフェリンを含有する溶液を用いる、(3)の方法。
(5)上記(4)の金属タンパク質の製造方法であって、アポラクトフェリンを、ラクトフェリンと酸とを含有する溶液を限外濾過膜に供給し、限外濾過を行う工程、及び前記限外濾過膜を透過しなかった溶液を回収する工程を含む方法により製造する前記製造方法。(6)上記(3)〜(5)のいずれかの方法により製造される、金属タンパク質。
ラクトフェリンは、哺乳類の体液、例えば、乳汁中に多量に存在し、また、遺伝子工学的手法による生産も可能であることから、大量かつ容易に入手することができる。従って、これを原材料とする本発明のセレン−ラクトフェリンも、低コストで、工業的に大規模に生産することができる。また、本発明のセレン−ラクトフェリンは角結膜疾患に対し高い治療効果を有する。さらに、セレン−ラクトフェリンは抗菌作用を有するところ、製剤化にあたり防腐剤の量を減量することや、あるいは、防腐剤の使用自体を回避することも期待できるから、防腐剤に起因する副作用を軽減することができる。すなわち、本発明により、高い治療効果と安全性とを兼ね備え、かつ、工業的大規模生産に適した角結膜疾患治療剤を提供することができる。
図1は、本発明のセレン−ラクトフェリン中に含まれるセレン量を、原材料としてアポラクトフェリンを使用して製造した場合と、ラクトフェリンを使用して製造した場合とで比較した結果を示す。図1の(a)は透析膜を使用して、タンパク質中に取り込まれなかった過剰のセレンを除去した場合の結果を示し、(b)はUF膜を使用した場合の結果を示す。 図2は、本発明のセレン−ラクトフェリンによる角膜上皮障害の防止の程度をリン酸緩衝食塩水(PBS:phosphate buffered saline)と比較した結果を示すものである。図2の(a)は1%セレン−ラクトフェリンとの比較を、(b)は5%セレン−ラクトフェリンとの比較を示し、また、(c)は正常群における結果を示す。図中、縦軸は蛍光スコア値を示し、左側のカラムがPBS(コントロール)を投与した左眼の結果を示し、右側のカラム(図2の(a)及び(b))がセレン−ラクトフェリンを投与した右眼の結果を示す。 図3は、本発明のセレン−ラクトフェリンによる角膜上皮障害の防止の程度を同濃度のアポラクトフェリンと比較した結果を示すものである。図3の(a)〜(d)は、それぞれ、0.01%、0.1%、1%、5%の濃度のセレン−ラクトフェリンとこれと同濃度のアポラクトフェリンとの比較を示し、(e)は正常群における結果を示す。図中、縦軸は蛍光スコア値を示す。図中の(a)〜(d)の左側のカラムがアポラクトフェリンを投与した左眼の結果を示し、右側のカラムがセレン−ラクトフェリンを投与した右眼の結果を示す。また、図中の(e)の両カラムは、それぞれPBSを投与した左眼と右眼の結果を示す。
本発明にいう「セレン−ラクトフェリン」とは、セレンとアポラクトフェリンとからなる金属タンパク質であって、セレンがアポラクトフェリンに結合しているものを意味する。後述する実施例に記載のとおり、本発明のセレン−ラクトフェリンにおいては、セレンは透析や限外濾過により除去されるものではなく、溶液中のpHを強酸性にすることにより初めて除去されるものであるので、セレンはアポラクトフェリン中に単なる混合物の形態で存在するのではなく、ある強度をもってアポラクトフェリンと結合している。したがって、本発明のセレン−ラクトフェリンは、単なるセレンとアポラクトフェリンとの混合物とは区別されるものである。なお、本発明のセレン−ラクトフェリンにおいては、セレンとアポラクトフェリンは、アポラクトフェリン中の鉄結合ポケットのキレート作用によりセレンと結合していると考えられるが、本発明はこのような理論に束縛されるものではない。
本発明にいう「アポラクトフェリン」とは、ラクトフェリンから鉄を除去したものを意味する。また、本発明にいうアポラクトフェリンは、動物の体液、例えば乳汁中から得られる天然のラクトフェリンに由来するものでも、遺伝子工学的に合成されたものでもよく、その一部のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたものでも、アミノ酸の一部が欠失したものでも、数個のアミノ酸が付加されたものでもよい。
次に、本発明のセレン−ラクトフェリンの製造方法について詳述する。本発明のセレン−ラクトフェリンは、原料としてラクトフェリン及び/又はアポラクトフェリンを含有する溶液を使用し、これにセレン塩を添加することにより、セレンをアポラクトフェリンに結合させ、その後、前記溶液を透析又は限外濾過に付して、過剰のセレンを除去することにより製造することができる。本発明のセレン−ラクトフェリンは、理論に拘束されるものではないが、セレンがラクトフェリンやアポラクトフェリン中に存在する空の鉄結合性ポケットに結合することにより生成すると考えられる。また、セレンがラクトフェリン中の鉄結合性ポケットに結合した鉄と置き換わることにより前記ポケットに結合して生成することも考えられる。したがって、原料としては、ラクトフェリン及びアポラクトフェリンのいずれか一方または両方を含有する溶液であれば使用することができる。本発明の製造方法においては、セレンのラクトフェリン又はアポラクトフェリン中に存在する空の鉄結合性ポケットへの結合は、ラクトフェリン中における鉄との置換よりも容易に起こると考えられることから、製造効率という観点からは、原料として、アポラクトフェリンを含有する溶液を使用することが望ましい。また、原料として、ラクトフェリンとアポラクトフェリンの両方を含む溶液を使用する場合には、アポラクトフェリンの含有量が多いほど好ましく、例えば、ラクトフェリンとアポラクトフェリンとの総量に対し、アポラクトフェリンの含量が90モル%以上、特に95モル%以上、最も好ましくは97モル%以上であることが望ましい。
上記ラクトフェリン及び/又はアポラクトフェリンを含有する溶液は、医薬品、試薬などとして、ラクトフェリンやアポラクトフェリンとして市販されているものを使用して調製することができる。また、上記ラクトフェリン及び/又はアポラクトフェリンを含有する溶液は、乳汁(例えば、牛乳)やホエー(乳清)などから得られた動物由来のものから調製してもよいし、遺伝子工学的手法により製造されたものから調製してもよい。また、ラクトフェリン及びアポラクトフェリンを含有する溶液において、アポラクトフェリンの濃度を公知の様々な方法により向上させたもの、例えば、ホエーなどから抽出されたラクトフェリン含有溶液に、塩酸やクエン酸などの酸を添加してpHを2程度に調整し、鉄分を解離させることにより製造したものも使用することができる。さらに、アポラクトフェリンの濃度を向上させたものとしては、例えば、特許第4634809号公報に記載された方法、すなわち、ラクトフェリンを含有する溶液と酸とを混合し、前記混合液を限外濾過膜に供給し、非透過液、透過液をそれぞれ系外に取り出し、非透過液については、再度酸を添加し、さらに限外濾過を行い、目標とするタンパク質濃度、分離率になるまで該操作を繰り返し行うことによっても、好適に製造され得る。この場合、酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸などの無機酸、酢酸、安息香酸、クエン酸などの有機酸が用いられる。上記の限外濾過には、例えば、旭化成ケミカルズ(株)社製のペンシル型モジュール用小型実験装置(PS−24001型)に、同社製のUFモジュールであるACP−0013(中空糸モジュール:膜内径0.8mm、有効膜面積170cm2、膜素材:ポリアクリロニトリル、公称分画分子量:13,000)を組み込み込んだ限外濾過装置が用いられ得る。
本発明の製造方法に使用するセレン塩としては、水溶性であれば特に限定されず、どのようなものを用いてもよいが、塩化セレン及び臭化セレン等を使用することができる。セレン塩の添加量としては、特に制限はないが、セレンは、ラクトフェリン又はアポラクトフェリンの鉄結合ポケットに結合すると考えられており、前記タンパク質1分子につき2個の鉄結合ポケットが存在することから、反応系中に、前記タンパク質1モルにつき約2モル以上のセレンが存在するような量のセレン塩を添加することが好ましい。また、ラクトフェリンやアポラクトフェリンは、pHが過度に高い領域では変性してしまい、過度に低い領域ではセレンと結合しなくなってしまうことから、反応溶液のpHは3〜9であることが好ましい。反応溶液のpHは、種々の公知の緩衝剤を使用することによっても調整することができる。上記タンパク質とセレン塩との反応温度・時間は、使用する材料や量などに応じ適宜調整すべきであるが、一般的には、10℃〜35℃で、5分〜2時間程度混合することが望ましい。
ラクトフェリン又はアポラクトフェリンとセレン塩との混合後、タンパク質と結合していない過剰のセレンは、細胞毒性を有することから、除去する必要があるが、このような過剰セレンは、透析や限外濾過により除去することができる。過剰セレンを透析により除去する場合には、透析膜を用い、10〜10,000倍量の水中で6時間〜72時間透析を行う。また、限外濾過により過剰セレンを除去する場合には、一般に市販されている装置、例えば、分離対象液用のタンク、液供給用のポンプ、限外濾過膜を有する限外濾過モジュールを備えた構造のものを使用することができる。本発明の製造方法に使用する透析膜や限外濾過膜としては、ラクトフェリンやアポラクトフェリンは、約80,000の分子量を有することから、分画分子量が約5,000〜約80,000のものが好ましく使用される。また、透析膜の素材としては再生セルロース、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリルなどが挙げられ、限外濾過膜の素材としては、例えば、酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリルアミド、ポリイミド、芳香族ポリアミド、ポリアクリロニトリル、親水性ポリオレフィンなどの天然もしくは合成ポリマーの有機膜やアルミナ、ジルコニア、チタンなどセラミックの無機膜などが挙げられる。さらに、限外濾過膜の形式としては、中空糸モジュール型、平板型モジュール型、平膜型のものが挙げられるが、濾過速度の点から中空糸モジュール型が、好適に選択される。また、上記の限外濾過は、濾過効率の観点から、20℃以上で行うことが好ましい。
本発明のセレン−ラクトフェリンは、後記する実験例に示すように、ラット角膜上皮障害モデルに対して優れた治療効果が認められる。従って、これらを含有する医薬は、角膜や結膜における炎症や欠損に伴う疾患、例えば、角結膜疾患、より具体的には、ドライアイ、乾性角結膜炎、点状表層角膜症、角膜びらん、又は角膜潰瘍等の予防又は治療剤、特に角結膜上皮障害を伴うこれらの疾患の予防又は治療剤として有用である。
本明細書における「角結膜」とは、角膜及び/又は結膜の意味であり、「角結膜疾患」とは角膜及び/又は結膜における疾患である。本発明におけるドライアイ、乾性角結膜炎、点状表層角膜症、角膜びらん、又は角膜潰瘍等の疾患は、一般的には角結膜疾患に包含される疾患であるが、必ずしも角結膜疾患に起因するものである必要はない。従って、本発明におけるドライアイ、乾性角結膜炎、点状表層角膜症、角膜びらん、又は角膜潰瘍等
は、角結膜疾患によらないものをも包含するものである。
また、本発明における「製剤学的に許容される担体」とは、錠剤、カプセル剤、液剤などの内服用製剤を製造するために許容されている製剤用の担体をいい、「眼科用製剤に許容される眼科用担体」とは、点眼剤や眼軟膏などの眼科用製剤を製造するために許容されている製剤用の担体をいう。
本発明のセレン−ラクトフェリンを有効成分として含む医薬組成物は、製薬上許容される担体をさらに含有し、セレン−ラクトフェリン以外の有効成分を含有していてもよい。本発明のセレン−ラクトフェリンは、眼科用製剤として直接眼に投与することもできるし、コンタクトレンズ保存液として使用することもできる。さらに、本発明のセレン−ラクトフェリンは内服製剤としてもよい。
内服製剤としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、フィルムコ−ティング剤、散剤等の経口用固形製剤、液剤、シロップ剤等の経口用液体製剤を挙げることができる。
経口用固形製剤を調製する場合は、賦形剤、必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤等を加えた後、常法により錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等を製造することができる。そのような添加剤としては、当該分野で一般的に使用されているものでよく、例えば、賦形剤としては乳糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、微結晶セルロース、珪酸等を;結合剤としては水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ゼラチン液、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドン等を;崩壊剤としてはカンテン末、炭酸水素ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド等を;滑沢剤としては精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ砂、ポリエチレングリコール等を;着色剤としてはβ−カロチン、黄色三二酸化鉄、カルメラ等を;矯味剤としては白糖、橙皮等を例示できる。
経口用液体製剤を調製する場合は、矯味剤、緩衝剤、安定化剤、保存剤等を加えて常法により内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等を製造することができる。そのような添加剤としては、当該分野で一般的に使用されているものでよく、例えば矯味剤としては白糖等を;緩衝剤としてはクエン酸ナトリウム等を;安定化剤としてはトラガント等を;保存剤としてはパラオキシ安息香酸エステル等を例示できる。
また、本発明のセレン−ラクトフェリンを有効成分として含む医薬組成物としては、眼科用製剤、特に点眼用の製剤が好ましく、かかる点眼剤は、水性点眼剤、非水性点眼剤、懸濁性点眼剤、乳濁性点眼剤、眼軟膏等のいずれでもよい。このような製剤は、投与形態に適した組成物として、必要に応じて薬学的に許容される担体、例えば等張化剤、キレート剤、安定化剤、pH調節剤、防腐剤、抗酸化剤、溶解補助剤、粘稠化剤等を配合し、当業者に公知の製剤方法により製造できる。
等張化剤としては、グルコース、トレハロース、ラクトース、フルクトース、マンニトール、キシリトール、ソルビトール等の糖類、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等の無機塩類等が挙げられ、その配合量は、組成物全量に対して0〜5重量%が好ましい。
キレート剤としては、エデト酸二ナトリウム、エデト酸カルシウム二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、エデト酸カルシウム等のエデト酸塩類、エチレンジアミン四酢酸塩、ニトリロ三酢酸又はその塩、ヘキサメタリン酸ソーダ、クエン酸等が挙げられ、その配合量は、組成物全量に対して0〜0.2重量%が好ましい。
安定化剤としては、亜硫酸水素ナトリウム等が挙げられ、その配合量は、組成物全量に対して0〜1重量%が好ましい。
pH調節剤としては、塩酸、炭酸、酢酸、クエン酸等の酸が挙げられ、さらに水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸塩又は炭酸水素塩、酢酸ナトリウムなどのアルカリ金属酢酸塩、クエン酸ナトリウムなどのアルカリ金属クエン酸塩、トロメタモール等の塩基等が挙げられ、その配合量は、組成物全量に対して0〜20重量%が好ましい。
本発明のセレン−ラクトフェリンは、それ自体に抗菌作用が期待できるものであるが、防腐剤が必要である場合には、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル等のパラオキシ安息香酸エステル、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム等の第4級アンモニウム塩、アルキルポリアミノエチルグリシン、クロロブタノール、ポリクォード、ポリヘキサメチレンビグアニド、クロルヘキシジン等が挙げられ、その配合量は、組成物全量に対して0〜0.2重量%が好ましい。
抗酸化剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、乾燥亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、濃縮混合トコフェロール等が挙げられ、その配合量は、組成物全量に対して0〜0.4重量%が好ましい。
溶解補助剤としては、安息香酸ナトリウム、グリセリン、D−ソルビトール、ブドウ糖、プロピレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴール、D−マンニトール等が挙げられ、その配合量は、組成物全量に対して0〜3重量%が好ましい。
粘稠化剤としては、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルメロースナトリウム、キサンタンガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等が挙げられ、その配合量は、組成物全量に対して0〜70重量%が望ましい。
点眼剤を調製する場合、例えば、所望の上記成分を滅菌精製水、生理食塩水等の水性溶剤、又は綿実油、大豆油、ゴマ油、落花生油等の植物油等の非水性溶剤に溶解又は懸濁させ、所定の浸透圧に調整し、濾過滅菌等の滅菌処理を施すことにより行うことができる。
尚、眼軟膏剤を調製する場合は、前記各種の成分の他に、軟膏基剤を含むことができる。前記軟膏基剤としては、特に限定されないが、ワセリン、流動パラフィン、ポリエチレン等の油性基剤;油相と水相とを界面活性剤等により乳化させた乳剤性基剤;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール等からなる水溶性基剤等が好ましく挙げられる。
本発明のセレン−ラクトフェリンを有効成分とする角結膜疾患の予防又は治療剤を投与する場合、その用量は、患者の体重、年齢、性別、症状、投与形態及び投与回数等によって異なるが、通常は成人に対して、セレン−ラクトフェリンとして1日0.2〜1000μg、好ましくは2〜200μgを1回、又は、数回に分けて投与すればよく、液体点眼剤の場合は、0.01〜50mg/mL、好ましくは0.1〜10mg/mLのものを1日数回、1回に1〜数滴点眼すればよい。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
[実施例1]
セレン−ラクトフェリンの調製
5.4mgの塩化セレン(I)(和光純薬(株)製)を含有する水溶液にアポラクトフェリン((株)アップウェル製)1gを添加し、液量を10mLに調整し、水溶液のpHが3以上であることを確認し、25℃で30分間、撹拌子を用いて240回/分の条件で撹拌することにより、アポラクトフェリンにセレンを結合させた。次に、前記の塩化セレン(I)とアポラクトフェリンの混合溶液を透析用セルローズチューブ(分画分子量12,000〜14,000;アズワン(株)製)に移し、6Lの純水(17MΩ以上)を用い、12時間ごとに純水を交換しながら、4℃、48時間透析を行い、アポラクトフェリンに結合しなかった過剰のセレンを除去した。透析後、凍結乾燥をフリーズドライヤーFDU−12AS(アズワン(株)製)を用いて行った。
[実施例2]
原料として、ラクトフェリン(タツア・ジャパン(株)製)を使用したこと以外は、実施例1の工程を繰り返した。
[実施例3]
実施例1の工程を繰り返したが、本実施例においては、透析に代えて、過剰セレンの除去を以下の手順で行った。すなわち、本実施例においては、UF膜(マイクローザ AP−0013(UF)分画分子量6,000;旭化成(株)製)をペンシル型モジュール卓上濾過装置(マイクローザUF・M FPS−24001;旭化成(株)製)にセットした。そして、前記装置(操作圧力:モジュール出口圧で40kPa)を用い、塩化セレン(I)とアポラクトフェリンの混合溶液10mLを、室温(20℃以上)で3回限外濾過した。
[実施例4]
原料として、ラクトフェリン(タツア・ジャパン(株)製)を使用したこと以外は、実施例3の工程を繰り返した。
[実施例5]
セレン結合量の測定
(実験方法)
実施例1〜4で製造したセレン−ラクトフェリンの凍結乾燥品1gをケルダールフラスコに入れ、硝酸(和光純薬(株)製)10mLを加え、室温に4時間放置した。次に、直火で15分間ゆるやかに加熱し、更に、やや強火で10分間加熱した。自然冷却後、70%過塩素酸(和光純薬(株)製)5mLを加え、加熱濃縮した。過塩素酸の白煙が発生してから更に15分間加熱を継続した。分解物はわずかに黄色になった。自然冷却後、水1mLを加え、加熱濃縮して白煙が認められてから更に2分間加熱した。自然冷却後、更に同じ操作を繰り返した。次に、10%塩酸(和光純薬(株)製)1mLを加え、沸騰水浴中で30分間加熱した。これを全体で5mLとなるように純水で希釈した。本希釈液を試験溶液とした。
検量線用溶液と試験溶液をそれぞれ2mL採って、これに0.1mol/LのEDTA(和光純薬(株)製)溶液4mL、20%塩酸ヒドロキシルアミン(和光純薬(株)製)溶液2mLを加え、10%塩酸(和光純薬(株)製)及び10%アンモニア水(和光純薬(株)製)を用いてpH1.0〜1.5に調整した。これに0.1%2,3−ジアミノナフタレン(和光純薬(株)製)溶液5mLを加え混和した。蓋をして、暗所で50℃水浴中30分間加温した。自然冷却後、液全体を分液漏斗に移し、シクロヘキサン(和光純薬(株)製)10mLを加え、5分間振盪の後、シクロヘキサン層を分取した。このシクロヘキサン溶液を0.1mol/Lの塩酸(和光純薬(株)製)25mLで2回洗浄した。シクロヘキサンのみを取りだし、分光蛍光光度計(FP6000;日本分光(株)製)を用いて、励起波長378nm、蛍光波長520nmで蛍光強度を測定した。検量線の値から、試験溶液のセレン濃度を測定した。
(結果)
結果を図1に示す。図1において、(a)は、透析膜を用いて過剰セレンを除去した結果を示し、(b)は、UF膜を用いた限外濾過により過剰セレンを除去した結果を示す。図中、縦軸はアポラクトフェリン100g中に結合したセレン量(mg)を示し、左側のカラムが原料としてアポラクトフェリンを使用した場合のセレン結合量を、右側のカラムが原料としてラクトフェリンを使用した場合のセレン結合量を示す。
原料としてアポラクトフェリンを使用した(a)、(b)の左側カラムにおいて、セレン結合量は、それぞれ、142mg/100g、114mg/100gであるのに対し、原料としてラクトフェリンを使用した(a)、(b)の右側カラムにおいて、セレン結合量は、64mg/100g、28mg/100gであった。この結果から、最終物であるセレン−ラクトフェリンの生産効率は、原料としてラクトフェリンを使用するよりも、アポラクトフェリンを使用した方が高いことが確認された。
[実験例1]
角結膜上皮障害の治癒効力試験
藤原らの方法(Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 42, 96-100, 2001)を参考に、以下に示す方法でドライアイによる角結膜上皮障害モデルを作製し、実施例3で製造したセレン−ラクトフェリンを用いて、角結膜上皮障害に対する治癒効果を評価した。この実験は、各個体の両眼を用いて、片眼をコントロールとし、他方の眼に薬液を投与することにより、同一個体での比較ができるようにした。
(実験方法)
雄性SDラット(7週齢)にペントバルビタールを腹腔内に投与(35mg/kg)して、全身麻酔後、両側の眼窩外涙腺を摘出しドライアイモデルを作製した。
涙腺摘出翌日より、いずれの群にも左眼にはPBSを、右眼にはPBS(Control群)、1%セレン−ラクトフェリン(PBS溶液)、又は5%セレン−ラクトフェリン(PBS溶液)を、それぞれ1回5μLで1日4回、2週間連日点眼した。また、正常群として、涙腺摘出を施さない動物を用意し、同一の条件にて両眼に共にPBSを点眼した(正常群)。なお、動物は各群とも9〜10匹使用した。
3週間の点眼終了後、角膜上皮の障害部を蛍光色素フルオレセインにて染色した。
角膜上皮の障害の程度は、角膜全体を上中下及び左中右の合わせて9つの部分に分割して、各部分ごとに下記の基準で障害をスコア化し、その合計値を求めた。その後、各群において、左眼の合計スコア値と右眼の合計スコア値との比較をステューデントのt検定にて行った。なお、公平な評価を行うため、点眼開始から角膜上皮障害のスコア化まで、各群に投与した薬液の内容にブラインドをかけ、スコア化後に照合した。
(角膜上皮のフルオレセイン染色スコア判断基準)
0:染色されない(点状蛍光なし)
1:わずかに点状蛍光がみられる
2:比較的多く点状蛍光がみられる
3:密に点状蛍光がみられる
(結果)
結果を図2に示す。図2において、(a)は1%セレン−ラクトフェリン(PBS溶液)投与群(以下S1群)、(b)は5%セレン−ラクトフェリン(PBS溶液)投与群(以下S5群)、(c)は正常群(以下N群)である。図中、縦軸は蛍光スコア値を示し、左側のカラムが左眼、即ちコントロールのPBS点眼側を、右側のカラムが右眼、すなわち、セレン−ラクトフェリン(図中、Se−ApoLと表記;(a)、(b))、又はPBS(c)を点眼した側を示す。また、各蛍光スコア値は、平均値で示してある。
(a)、(b)の左側カラムにおいて、蛍光スコアの平均値は6.1〜6.3を示しており、涙腺摘出後、2週間のPBS点眼により、角膜上皮の障害が進行していることが明らかとなった。なお、涙腺摘出を施さない(c)のN群において、2週間のPBS点眼により、蛍光スコアの平均値は3.3(左眼)、及び3.3(右眼)となった。
一方、(a)、(b)の右側カラムに見られるように、蛍光スコアの平均値は、(a)のS1群では蛍光スコアの平均値は4.7、(b)のS5群では同じく3.7となり、左眼と比較して角膜上皮障害の進行を抑制することが確認された。
[実験例2]
実験例1の薬理試験を繰り返したが、正常群の他に、薬剤投与群として、4群を設け、右眼に、それぞれ、0.01%、0.1%、1%、5%の濃度のセレン−ラクトフェリンを投与し、左眼にこれと同濃度のアポラクトフェリンを投与した。
(結果)
結果を図3に示す。図3において、(a)は0.01%セレン−ラクトフェリン(PBS溶液)投与群(以下S0.01群)、(b)は0.1%セレン−ラクトフェリン(PBS溶液)投与群(以下S0.1群)、(c)は1%セレン−ラクトフェリン(PBS溶液)投与群(以下S1群)、(d)は5%セレン−ラクトフェリン(PBS溶液)投与群(以下S5群)、(e)は正常群(以下N群)である。図中、縦軸は蛍光スコア値を示し、左側のカラムが左眼、すなわち、アポラクトフェリン(図中、ApoLと表記;(a)〜(d))又はPBS(e)を点眼した側を、右側のカラムが右眼、すなわち、セレン−ラクトフェリン(図中、Se−ApoLと表記;(a)〜(d))、又はPBS(e)を点眼した側を示す。また、各蛍光スコア値は、平均値で示してある。
(a)の左側カラムにおいて、蛍光スコアの平均値は4.6を示しており、角膜上皮の障害が進行していることが明らかとなった。一方、(a)の右側カラムに見られるように、蛍光スコアの平均値は、3.2となり、左眼と比較して角膜上皮障害の進行を抑制することが確認された。また、同様の傾向が(b)〜(d)にも認められた。
上記の薬理試験の結果から明らかなように、セレン−ラクトフェリンの点眼により、角膜上皮障害の進行が抑制され、この効果は、アポラクトフェリンよりも大きいことが確認された。従って、セレン−ラクトフェリンは、ドライアイ、乾性角結膜炎、点状表層角膜症、角膜びらん、又は角膜潰瘍等の角結膜疾患の予防又は治療剤、特に角結膜上皮障害を伴うこれらの疾患の予防又は治療剤として有用である。
[処方例1]
本発明のセレン−ラクトフェリンを含む点眼剤の代表的な処方例を以下の表1に示す。表1中、各成分の濃度は、滅菌精製水100mLあたりに含まれる各成分の量を意味する。
Figure 0005982095

Claims (5)

  1. セレン−ラクトフェリンである金属タンパク質を有効成分とする角結膜疾患の予防又は治療剤。
  2. 角結膜疾患が、ドライアイ、乾性角結膜炎、点状表層角膜症、角膜びらん、又は角膜潰瘍である、請求項記載の予防又は治療剤。
  3. 点眼剤又は眼軟膏剤である、請求項又はに記載の予防又は治療剤。
  4. セレン−ラクトフェリンである金属タンパク質を有効成分とするドライアイ、乾性角結膜炎、点状表層角膜症、角膜びらん、又は角膜潰瘍の予防又は治療剤。
  5. セレン−ラクトフェリンである金属タンパク質、及び眼科用製剤に許容される眼科用担体を含有してなる眼科用組成物。
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