JP5980573B2 - 液体検知線 - Google Patents

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この発明は、建物内部の漏水や薬液等の貯蔵、運搬時の漏液を検知する液体検知線に関するものである。
コンピュータ室、各種の資料などの保管室等の場合、建物内部の壁面、床面、各種機器表面、配管接合部等に水が付着したり、漏水したりすると、建物床面等の腐食の原因となったり、各種機器が誤動作したり、資料が変質したりする恐れがある。また、水や硫酸、塩酸などの薬品類のような各種の液体を貯蔵したり、輸送したりする場合、その液体の漏洩は、経済的損失や事故の原因となる。
このため、漏水や漏液(以下、これらを「漏液」と称する。)を検知する手段として、建物内部の壁面等に液体(漏液)検知線を添設して、その漏液を検知することが行われている。
その漏液検知線として、例えば、図7に示すように、導体1を吸湿性編組2によって被覆し、その被覆電線を撚り合わせるとともにその外周面をさらに非吸湿性編組3によって被覆したものP1がある(特許文献1第3頁左上欄第7〜同頁右上欄第7行、第3図(a)参照)。
この漏液検知線P1は、漏液が生じると、上記両編組2、3がその漏液を捕捉してその漏液を介して導体1、1間を短絡させ、その短絡による電気信号によって漏液を検出する。このとき、両編組2、3が漏液を確実に捕捉するため、検知精度が高いものである。また、可撓性に富んでいるため施工性も良い。
他の漏液検知線P2として、図8に示すように、2本の導体1、1が間隔を開けて並列され、その導体1、1を絶縁性樹脂4によって被覆し、その絶縁樹脂4を導体長さ方向において、所要間隔で欠如(透孔5)させるとともに、両導体1、1をその長さ方向において、所要間隔で露出(導体露出部1a)させたものもある(特許文献2段落0022、図1参照)。
この液体検知線P2は、漏液が生じると、その漏液を透孔5で捕捉してその漏液を介して導体1、1間を短絡させ、その短絡による電気信号によって漏液を検出する。
さらに、他の漏液検知線P3として、図9に示すように、導体1、1を吸湿材の編組2によって被覆し、その編組被覆の導体1、1を絶縁糸からなる編組3でもって被覆した液体検知線P3もある(特許文献3請求項1〜5 図1〜図3参照)。
この液体検知線P3は、上記液体検知線P1と同様に、漏液が生じると、上記両被覆編組2、3がその漏液を捕捉してその漏液を介して導体1、1間を短絡させ、その短絡による電気信号によって漏液を検出する。
このとき、ウェス(布)をこの漏液検知線の漏液を捕捉した個所の全長に当てれば、網目状の孔内の液分がそのウェスに触れ、毛細管現象によって裏面の液分等もウェスに吸収除去されるため、復帰性に優れている。また、編組2、3により構成されているため、可撓性に富むとともに、屈曲されても復元性に富み、曲げ癖が付き難く、施工性も優れている。
特開昭61−2034号公報 特開2000−131178号公報 特開2011−13004号公報 実開平01−89351号公報 特開2002−277341号公報
上記漏液検知線P1は、編組2、3でもって漏液を捕捉し、その編組2、3内の水分で導体1、1を短絡させて検知するため、少量の漏水ではその漏水を検知し得ない場合がある。
漏液検知線P2は、絶縁樹脂4が扁平成型体からなるため、柔軟性が液体検知線P1、P3に比べて劣り、設置時(施工時)、屈曲すると、その曲げ癖の修正が難しく、設置面に添わせにくくなる問題もある。
液体検知線P3は、上記のように、絶縁被覆が編組2、3からなるため、施工性及び復元性に優れている。しかし、編組2、3の網目から漏液が入り込んで導体1、1を短絡させるものであるため、漏液の表面張力等によってその漏液が網目を円滑に通らずに前記短絡が行なわれず、円滑な漏液検知がなされない恐れがある。
この発明は、この様な実状の下、上記各漏液検知線P1〜P3の問題点を解決する液体検知線とすることを課題とする。
上記課題を達成するために、この発明は、各導体の絶縁性をその導体を被覆する編組でもって担保するとともに、その編組自体を導体の長さ方向全長に亘って所要間隔で欠如させたのである。
まず、編組は、編み機の編み糸の本数を少なくすることによって、その編組の欠如部を容易に形成し得る(下記実施形態参照)。
つぎに、編組で絶縁性を担保すれば、編組は可撓性に富むため、液体検知線P2のような扁平成型体からなる絶縁被覆4のような曲げ癖の修正が容易で、施工性の良いものとなる。
一方、その編組は所要間隔で欠如されてその欠如部では導体が露出し、その欠如部で漏液を捕捉してその漏液を介して導体1、1間が円滑に短絡するため、漏液検出が円滑である。
また、導体被覆を編組で行なったから、この液体検知線をS字状等に屈曲させた際、その導体の屈曲に合わせて編み糸が自由に動くことと、編組に欠如部が存在することにより、さらに編み糸が自由に動き易いことから、その屈曲性がよく、このため、この液体検知線を屈曲させて円滑に床等に添設でき、その添設の作業性が良い。このとき、欠如部が、各導体間においてその長さ方向に向かって交互になっておれば、その屈曲方向の各欠如部の間隔が狭くなって編み糸が自由にさらに動き易くなるため、その屈曲性も向上して作業性はさらに向上する。
この発明の構成としては、少なくとも2本の導体が間隔を開けて並列され、その両導体はその外周を全長に亘って編組によって絶縁性を維持して被覆された液体検知線において、前記編組が導体の長さ方向全長に亘って所要間隔で欠如されている構成を採用することができる。
その所要間隔は、導体の絶縁性担保等を考慮して適宜に設定する。
また、各導体間の絶縁性はその各導体の間に編組の編み糸を介在させることによって担保し得る。その具体的な構成としては、例えば、導体が少なくとも2本であって、上記編組の断面を、その編組の糸が各導体をたすき掛け状に包んでいる構成としたり、導体を2本とし、上記編組が、前記導体の長さ方向に亘って断面8の字状を呈して、その編組の前記8の字状の両側の中空部に前記導体がそれぞれ位置されている構成としたりすることができる。
このようにすれば、各導体の絶縁性を確保しつつ、液体検知線の厚さ(太さ)を導体の直径に編組糸の太さの2倍を加えた程度の厚みとすることができ、薄型化を図ることができる。このため、物品の隙間や下側等の厚みのある液体検知線を設置しにくい場所でも容易に設置することができる。また、その液体検知線が平型の場合、編組欠如部の存在によって平面視のS字曲げ等の屈曲(ムカデのような屈曲)が容易である(図4参照)。
上記導体としては、従来から使用されているものであれば何れでも良く、例えば、錫メッキ等の撚り線、単線、平角線等であって、その材質も金属に限らず、導電性を有すれば、炭素繊維等の非金属であっても良いが、可撓性を重視するのであれば、撚り線が好ましい。炭素繊維の場合、耐薬品性であって、編組した導体とすれば、その編組の各ストランド中のフィラメントの本数、編組の打数、編組のピッチを適宜に選択することによって、その導体の抵抗を所要の値とすることができる。このとき、炭素繊維の編組は毛羽立ちが生じやすいため、透液性の絶縁材の編組等で被覆することが好ましい。その絶縁材はフッ素樹脂とすると、酸又はアルカリ液にほとんど侵されないものとなる。
また、上記導体はそのまま利用しても良いが、導体に編組被覆したり、導体に半導電性樹脂を被覆したものとすることもできる。編組被覆した場合(図7参照)は透液性となり、その編組の繊維糸は吸液性、非吸液性いずれでもよいが、非吸液性の場合は編組を疎にすることにより、編組の隙間に液体を保持できる(透液性とし得る)。半導電性樹脂を被覆した場合は、ポリプロピレン等の樹脂にカーボンブラック等の導電性粉を混入したものを採用できる。半導電性樹脂被覆した導体であると、耐薬品性を有するものとすることができると共に、編組欠如部が金属面接地しても導体間が短絡する誤動作を防止できる。
さらに、導体の本数は、2本以上であれば何れでも良いが、3本であると、その一本を漏液位置の検知線として使用したり(特許文献4第8頁第6行以降の[実施例3]第4図、第5図参照)、各導体を平形に並べた液体検知線の場合、漏液検知範囲を広くしたりすることができる(特許文献5図1〜図6参照)。
複数の導体を被覆する編組は、吸液によって透過すれば、その糸は吸湿材であっても良いが、非吸湿材が好ましい。それは、欠如部の導体露出部で漏液を円滑に捕捉し得るため、素材としての吸湿性をあまり要求されないからである。むしろ、復帰時の漏液除去においては非吸湿性(撥水性)の方が好ましい。
この編組糸及び上記導体被覆編組糸の材料としては、各種の天然繊維や樹脂等の種々のものが考えられるが、例えば、ポリプロピレン繊維(PP繊維)、ポリフェニレンサルファイド繊維(PPS繊維)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等を挙げることができる。吸湿材の編組の場合、その素材も、従来から使用されている各種の天然繊維や樹脂等の種々のものが考えられるが、例えば、ポリビニルアルコール繊維(PVA繊維)、ポリエステル繊維等を挙げることができる。それらの編組はモノフィラメントでもマルチフィラメントでも良い。
この発明は、以上のように、各導体の絶縁性をその導体を被覆する編組でもって担保するとともに、その編組自体を導体の長さ方向全長に亘って所要間隔で欠如させたものとしたので、施工性の良いものとなるとともに、漏液を導体の露出した欠如部で捕捉するため、漏液検出が円滑である。
この発明の実施形態を示し、(a)は一部正面図、(b)は切断下面図 (a)は同実施形態の一部正面図、(b)は同一部背面図、(c)は同一部右側面図、(d)は同一部左側面図 同実施形態の編組状態の要部斜視図 同実施形態の作用図 他の実施形態の断面図 他の実施形態の断面図 従来の一例を示し、(a)は一部切断要部正面図、(b)は切断側面図 他の従来例の要部正面図 他の従来例の要部斜視図
図1、図2に、この発明の実施形態を示し、この実施形態の液体検知線Pは、軟銅からなる単線に錫メッキを施した導体(直径:0.65mm)を電極としている。この2本の導体11、11を並列させるとともに、10本の編み糸12a(例えば、ポリエチレン糸、直径:約200μm)が各導体11をたすき掛け状に包んで断面視8の字状に編組12し、その編組12の両側の中空部に導体11を1本ずつ編み込んでいる。
その編み込みは、図3に示すように、各編み糸12aが二本の導体11、11の周りに断面視8の字を描くように引き回され、この編み機は13本編みのため、その引き回される第1番の編み糸12aと第7番の編み糸12aが両導体11、11の間で8の字状にクロスし、第2番の編み糸12aと第8番の編み糸12aが両導体11、11の間で8の字状にクロスするように、各編み糸12aが順々に規則的にクロスして編組12が形成されている。
このとき、13本編みの編み機でもって10本の編み糸12aの編組12を編んだため、図1(a)及び図2(a)〜(d)に示すように、各導体11の長さ方向全長に亘って編み糸12aの10本間隔で編み糸12aの無い編組12の欠如部15が形成され、この欠如部15は、各導体11、11間においてその長さ方向に向かって交互に位置するものとなっている。この欠如部15の大きさ(導体11の長さ方向の幅)は、編み機の編み本数(13本以外に,9本,19本,23本など)に対する編み糸12aの欠如数(3本,4本・・)や編み糸12aの太さを適宜に設定することによって可変である。この実施形態では、導体11の長さ方向においてその導体11の一本の径程の幅の欠如部15となっている。
このように、編組12が断面8の字状であると、両導体11、11同士の離間方向に互いに重なり合うことなく編み糸(ポリエチレン糸)12aが介在することとなる。また、8の字状編組12の液体検知線Pは、図4(a)に示すように、S字状に屈曲させて添設し得るため、その添設作業性が良い利点もある。特に、同図(b)に示すように、直角壁Wに沿って厚みが薄い状態のままで添設することができる。このようにS字状に屈曲させたり角に沿って添設できるのは、編組12であるため、導体11の屈曲に合わせて編み糸12aが自由に動くことと、編組12に欠如部15が存在することにより、さらに編み糸12aが自由に動き易いからである。
さらに、図1(b)では、導体11、11の離間はその太さ分程度であるが、図5に示すように、両導体11、11をさらに接近させて、両導体11、11間を一本の編み糸12aの太さ分程度まで接近させることもできる。この導体11、11の離間距離は、導体11の張力や編組12のピッチ・張力の調節によって適宜に設定する。
この液体検知線Pは、従来と同様に、コンピュータ室、各種の資料などの保管室等の場合、建物内部の壁面、床面、各種機器表面、配管接合部等に設置し、その設置場所において、漏液して、その漏液が編組12の欠如部15に捕捉されると、その漏液を介して導体11、11間が短絡して、漏液検出がなされる。
上記実施形態において、導体11を、図9に示す編組2によって絶縁被覆したものとすることができ、また、上記のように、半導電性樹脂被覆したものとすることもできる。
何れの上記各実施形態においても、図6に示すように、導体(電極)11を3本並列に設け、その各導体11を編み糸12aでもってたすき掛け状に包んだ液体検知線P、P’とすることもできる。このように、電極11を三本とすることで、その一本を位置検知等の信号線とすることができる。また、3本並列させて漏液検知すれば、検知面が2本の場合に比べて2倍に増えるため、検知範囲を広げることが可能となる。導体(電極)11の本数は、必要に応じて4本以上と任意である。この場合、各導体11は編み糸12aでもってたすき掛け状に包む。
さらに、上記各実施形態において、導体11は単線を用いたが、単線に代えて撚り線を採用することができる。撚り線とすれば、液体検知線の可撓性を向上させることができる。
また、導体11や編組12は、耐熱性等を考慮して適宜に変更し得る。上記の軟銅錫メッキ線(導体11)は耐熱温度が120℃程度であるが、例えば、そのメッキをニッケルとすることによって、その耐熱温度を200℃程度まで高めることができる。軟銅線をステンレス線や炭素繊維線に代えれば、その耐熱温度を1000℃程度まで高めることができる。それに合わせて編組12も同等な耐熱性とする必要があり、例えば、ガラス繊維やアラミド繊維、さらに高温環境で使用される場合は、セラミックス等を使用することができる。
さらに、編組12を上記実施形態のようにポリエチレン糸12aのみで編まずに、例えば、ポリエチレン糸とフッ素樹脂糸の両方を用いて編組することもできる。この場合、ポリエチレン糸は吸湿性(親水性)であるのに対し、フッ素樹脂糸は非吸湿性(撥水性)であって、性質の異なる糸12aから編組12を構成することもできる。このように、吸湿性と非吸湿性の糸を交互に編み込んだ編組12とすると、非吸湿糸から吸湿糸側に水分がはじかれて吸湿糸側により多くの水分(漏液)が捕捉されるため、漏液検出速度が向上する。この吸湿性と非吸湿性の構成は、液体検知線P’における編組12と導体11単体の編組被覆とでも採用し得る。
P、P’、P1、P2、P3 液体検知線(漏液検知線)
1、11 導体
2、12 編組
12a 編み糸
15 編組の欠如部

Claims (4)

  1. 少なくとも2本の導体(11、11)が間隔を開けて並列され、それらの導体(11)はその外周を全長に亘って編組(12)によって絶縁性を維持して被覆された液体検知線(P)であって、前記編組(12)が導体(11)の長さ方向全長に亘って所要間隔で欠如(15)されて、その欠如(15)によって屈曲性がよくなるとともに液体検知が円滑になることを特徴とする液体検知線。
  2. 上記導体(11)が少なくとも2本であって、上記編組(12)の縦断面を、その編組の編み糸(12a)が各導体(11)をそれぞれたすき掛け状に包んでいることを特徴とする請求項1に記載の液体検知線。
  3. 上記導体(11)が2本であって、上記編組(12)が、前記導体(11)の長さ方向に亘って断面8の字状を呈して、その編組(12)の前記8の字状の両側の中空部に前記導体(11)がそれぞれ位置されていることを特徴とする請求項1に記載の液体検知線。
  4. 上記欠如(15)が、上記各導体(11)間においてその長さ方向に向かって交互になっていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の液体検知線。
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