JP5976355B2 - 光電変換素子 - Google Patents

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Description

本発明の実施形態は、光電変換素子に関する。
光増感型太陽電池は、一般的には、離間対向して設けられた酸化物電極および対向電極と、2つの電極間に介在する液状のキャリア移動層とを備えている。酸化物電極は、金属酸化物の微粒子の集合体からなる半導体層の表面に色素を担持させて構成され、透明基板に支持される。キャリア移動層が液状であるため、こうした太陽電池は湿式方式の光増感型太陽電池と称される。
酸化物電極を支持する透明基板側から光が入射されると、光は半導体層表面の色素に到達して色素を励起し、励起した色素は速やかに半導体層へ電子を渡す。電子を失って正に帯電した色素は、キャリア移動層から拡散してきたイオンから電子を受け取って電気的に中和され、色素に電子を渡して正に帯電したイオンは対向電極に拡散して電子を受け取る。この酸化物電極および対向電極を、それぞれアノードおよびカソードとして湿式光増感型太陽電池が作動する。
半導体層はn型半導体から構成され、酸化チタンが広く用いられている。n型半導体として酸化タングステンを用い、支持電解質(例えばリチウム塩)と酸化還元対(例えばI-およびI3 -)とを含む電解液をキャリア移動層として用いた場合には、励起した色素から半導体層(酸化タングステン)に注入された電子が外部に取り出されるのに加えて、一部の電子が酸化タングステンの表面でリチウムイオンを電気化学的に還元する。すなわち、発電反応と同時に蓄電反応が生じる。このような湿式光増感型太陽電池では、光照射を中止して暗下に曝すと発電反応は停止するが、アノードとカソードの電極電位の違いから起電力が発生する。酸化タングステンに蓄積された電子が外部に流れる放電反応が生じるので、湿式光増感型太陽電池に蓄電機能を付与することができる。こうした太陽電池は、光電変換素子と称される。
色素は、一般劇にアンカー基と呼ばれる官能基を色素分子の表面に有している。この官能基がn型半導体表面の水酸基との間にエステル結合を形成して結合するが、n型半導体の表面の一部は色素が存在せずに露出されている。色素を還元して酸化状態にあるキャリア(I3 -)がn型半導体の露出面に接触すると、n型半導体から電子を受け取って還元される。逆電子移動反応と呼ばれるこの反応は内部短絡となって、発電反応における抵抗成分として効率の低下を招く。逆電子移動反応を抑制して発電効率を高めるためには発電反応場を増やす必要があり、n型半導体の表面に可能な限り多くの色素を結合させることによって、これを達成することができる。
蓄電機能を有する光電変換素子において、酸化タングステンでリチウムイオンの還元反応が生じるのは、酸化タングステン表面のうち色素分子が結合していない部位となる。発電効率を高めるには、酸化タングステン表面に十分に色素を結合させて、露出した表面を低減することが必要である。こうして色素が結合した部位が増加すればリチウムイオンの還元反応が阻害されて、蓄電容量が低下する。したがって、発電効率と蓄電容量とはトレードオフの関係となる。
特開2009−283429号公報
本発明が解決しようとする課題は、蓄電機能を有し、発電効率および蓄電容量の両方が高められた光電変換素子を提供することにある。
実施形態の光電変換素子は、n型半導体電極と、前記n型半導体電極に対向して配置された対向電極と、前記n型半導体電極と前記対向電極との間に配置された電解液層とを具備する。前記n型半導体電極は、酸化タングステンを含むn型半導体粒子と、前記n型半導体粒子の表面に結合した色素と、前記n型半導体粒子の表面に結合した、少なくとも2つのカルボン酸基を有する有機分子(ただし、4−ブロモイソフタル酸を除く)とを含むことを特徴とする。
一実施形態に係る光電変換素子の構成を表わす断面図。 色素および塩基酸有機分子が吸着したn型半導体電極の表面を説明する模式図。 n型半導体粒子における発電領域と蓄電領域とを説明する模式図。 一実施形態に係る光電変換素子の製造工程を表わす断面図。 図4に続く工程を表わす断面図。 図5に続く工程を表わす断面図。 図6に続く工程を表わす断面図。 図7に続く工程を表わす断面図。
以下、図面を参照して実施形態を具体的に説明する。
図1は、一実施形態にかかる光電変換素子の構成を表わす断面図である。図示する光電変換素子20は、n型半導体電極3、対向電極7、およびこれら2つの電極間に配置された電解液層10を有する。n型半導体電極3は、透明基板1上の透明導電膜2に形成され、対向電極7は、透明基板5上の透明導電膜6に形成される。2つの透明基板1および5は、それぞれの周縁に設けられたエポキシ系樹脂8a,8bによって固定されている。
n半導体電極層3は、n型半導体の粒子4の集合体を含む。n型半導体粒子4の表面には色素および塩基酸有機分子が吸着している。粒子の集合体であるので、n型半導体電極3の表面積は極めて大きい。例えば、基板の投影面積に対する窒素吸着量から求められるラフネスファクターは、500〜2000程度である。n型半導体は、少なくとも酸化タングステンを含み、n型半導体全体の50質量%以下程度であれば、可視光領域の吸収が少なく透明な他のn型半導体が併用されてもよい。
他のn型半導体としては、例えば、マグネシウム、ストロンチウム、イットリウム、ランタン、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、アルミニウム、亜鉛、インジウム、クロム、およびモリブデンなどの金属の酸化物;SrTiO3、CaTiO3、BaTiO3、MgTiO3、およびSrNb26のようなペロブスカイト;これらの混合物などが挙げられる。GaNもまた、酸化タングステンとともに用いることができる。
n型半導体の粒子4の平均粒径は特に限定されないが、5〜500nmの範囲内が望ましい。こうした範囲内の平均粒径を有するn型半導体粒子から構成されるn型半導体電極3は、十分に大きな比表面積を有するのに加えて、色素が吸着する有効表面積も適切な範囲内となる。このため、エネルギー変換効率が損なわれることがない。n型半導体の粒子4の平均粒径が5〜100nmの範囲内であれば、エネルギー変換効率をさらに高めることができる。
異なる平均粒径のn型半導体粒子を混合して用いた場合には、充填密度が増加することによって有効表面積が増加する。これに加えて、半導体層の内部において、粒径の大きな粒子の表面で入射した光が乱反射して色素に効率よく光が注入される。このため、エネルギー変換効率はよりいっそう高いものとなる。
n型半導体の粒子4の平均粒径は、BET法による比表面積からの換算から求めることができる。光電変換素子のn型半導体電極からn型半導体の粒子を取り出して平均粒径を測定する際には、この光電変換素子の表面の最大面積を有する面の実質的に中央部から採取したものが用いられる。
一般的に、n型半導体電極3の厚さが増すと、単位面積当たりに含まれるn型半導体の粒子4の数が増加するので実表面積が増加することになる。n型半導体電極3の表面で保持し得る色素の量が増加する結果、光吸収率が高められる。しかしながら、n型半導体電極3の厚さが増加すると、その表面に吸着した色素からn型半導体電極3に移行した電子が透明導電膜2に達するまでに拡散する距離が大きくなる。このため、n型半導体電極3での電荷再結合による電子のロスも大きくなる。
n型半導体電極3の厚さが0.1〜80μmの範囲内であれば、電荷の再結合を抑制しつつ、実効面積を増加させることができる。n型半導体電極3の厚さは、1〜60μmがより好ましく、3〜50μmが特に好ましい。
n型半導体の粒子4の表面に吸着させる色素としては、例えば、ルテニウム−トリス型の遷移金属錯体、ルテニウム−ビス型の遷移金属錯体、オスミウム−トリス型の遷移金属錯体、オスミウム−ビス型の遷移金属錯体、ルテニウム−シス−ジアクア−ビピリジル錯体、フタロシアニン、およびポルフィリン等が挙げられる。こうした色素は、n型半導体電極の表面に単分子吸着していることが望ましい。
図2に示されるように、色素は、エステル結合を介してn型半導体粒子の表面に吸着される。色素はn型半導体電極に電子を渡し、キャリア(I)から電子を受け取って発電反応が行なわれる。
一方、塩基酸有機分子は、少なくとも2つのカルボン酸基(COOH)を有する分子である。塩基酸有機分子においては、図2に示されるように、カルボン酸基の1つが、n型半導体電極表面の水酸基との間にエステル結合を形成し、それによって塩基酸有機分子がn型半導体粒子の表面に吸着される。塩基酸有機分子における残りのカルボン酸基は、負の電荷を有している。
図2に示されるように、逆電子移動反応を生じる酸化状態にあるキャリア(I3 -)は、n型半導体電極の表面に存在するカルボン酸基(COO-)と負電荷同士の反発によってn型半導体電極の表面から隔離され、この結果、逆電子移動反応が抑制される。その一方、正電荷を有するリチウムイオン(Li+)は、n型半導体電極表面におけるカルボン酸基(COO-)と正負の電荷によって何等妨げられることなく引き寄せられる。このため、発電効率を損なうことなく蓄電容量が高められる。
上述したように電子のやり取りが行なわれるので、n型半導体粒子の表面においては、図3に示されるように色素が吸着している領域が発電領域となる。n型半導体粒子の表面における色素が未吸着の領域は、リチウムイオンの還元反応が生じる蓄電領域である。さらに、色素が未吸着の領域には塩基酸有機分子が吸着しているので、これによって逆電子移動反応が抑制される。
n型半導体電極の表面に塩基酸有機分子が吸着していることは、顕微赤外分光法により分析して確認することができる。分析条件は、使用装置:Agilent社製 FTS6000/UMA500、測定方法:反射法、検出器:MCT、分解能:4cm-1、積算回数:256回である。測定によれば、1700cm-1付近のカルボン酸に帰属されるピークと、1540cm-1、1400cm-1付近のカルボン酸エステルに帰属されるピークが観測される。このことより、少なくとも一方のカルボン酸少はn型半導体電極と結合をし、少なくとももう一方はカルボン酸の状態をとっていることが確認される。
塩基酸有機分子は、直鎖状、分岐鎖状、および環状のいずれであってもよいが、炭素数は3以上30以下程度であることが望まれる。炭素数がこうした範囲内の塩基酸有機分子であれば、発電効率を低下させずに所望の効果を得ることができる。具体的には、シュウ酸、プロパン二酸、ブタン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、ドコサン二酸、テトラコサン二酸、ヘキサコサン二酸、オクタコサン二酸、およびトリアコンタン二酸等の直鎖飽和のジカルボン酸;メチルペンタン二酸、ジエチルペンタン二酸、エチルオクタデカン二酸、およびジメチルエイコサン二酸等の分岐鎖飽和のジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の環構造を含む飽和のジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、およびフタル酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。こうしたジカルボン酸における水素原子の一部は、メチル基、エチル基、およびプロピル基などの脂肪族アルキル基;フェニル基などの芳香族基;あるいはハロゲン基等によって置換されていてもよい。塩基酸有機分子は、単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
立体的に嵩高くない塩基酸有機分子は、発電反応を阻害するおそれも少ないので、より好ましい。また、直鎖状の塩基酸有機分子であれば、n型半導体電極の表面に結合させる際に色素に及ぼす影響も小さい。
n型半導体電極の表面における塩基酸有機分子が少なすぎる場合には、逆電子移動反応を抑制する効果を十分に得られない。一方、n型半導体電極の表面における塩基酸有機分子が多すぎる場合には、酸化状態にある色素分子を還元するキャリアの拡散が阻害されるおそれがある。n型半導体電極の表面における塩基酸有機分子の量が、0.01×10-8mol/cm2以上1×10-8mol/cm2以下の範囲内であれば、蓄積容量を損なうことなく発電効率を高めることができる。n型半導体電極の表面における塩基酸有機分子の吸着量は、0.05×10-8mol/cm2以上0.95×10-8mol/cm2以下がより好ましく、0.1×10-8mol/cm2以上0.9×10-8mol/cm2以下が特に好ましい。
n型半導体電極における色素の吸着量と塩基酸有機分子の吸着量との合計に対する塩基酸有機分子の吸着量、すなわち塩基酸有機分子吸着比率は、1%以上50%以下の範囲内であることが好ましい。こうした割合で、n型半導体電極の表面に塩基酸有機分子が吸着している場合には、逆電子移動反応を抑制する効果を十分に得ることができ、酸化状態にある色素分子を還元するキャリアの拡散を阻害するおそれも小さい。その結果、蓄積容量とともに発電効率を十分に高めることができる。n型半導体電極表面における塩基酸有機分子の吸着比率は、3%以上45%が以下より好ましく、5%以上40%以下が特に好ましい。
n型半導体電極における色素および/または塩基酸有機分子の存在は、それぞれの吸着量を分析して確認することができる。例えば、色素および/または塩基酸有機分子が吸着したn型半導体電極を、0.1N水酸化カリウム水溶液に浸漬して色素および/または塩基酸有機分子をn型半導体電極から脱着する。色素の吸着量を求めるには、まず、脱着液の吸光スペクトルを分光光度計により測定する。スペクトルの500nm付近の吸光ピークの高さから、Ru(II)色素の水溶液中でのモル吸光係数11876[l/mol・cm]を用いて脱着液の色素濃度を求め、n型半導体電極表面の単位面積あたりの色素吸着量[mol/cm2]を算出することができる。
一方、塩基酸有機分子の吸着量を求める際には、脱着液を中和した後、色素分子および塩基酸有機分子を有機溶媒相に移行させた後、色素分子と塩基酸有機分子とを分離する。色素分子と塩基酸有機分子との分離は、溶解性の異なる有機溶媒を利用した再結晶などの操作により行なうことができる。塩基酸有機分子が溶解した有機溶媒について、ガスクロマトグラフィ/質量分析法による定量分析を行なって、塩基酸有機分子の吸着量が得られる。n型半導体電極表面に結合される色素の吸着量と塩基酸有機分子の吸着量との合計に対する塩基酸有機分子の吸着量を、塩基酸有機分子の吸着比率として算出することができる。
上述したような色素と塩基酸有機分子とを表面に有するn型半導体電極3は、図1に示したように透明導電膜2を介して透明基板1上に設けられている。透明基板1としては、例えばガラス基板を用いることができ、透明導電膜2としては、可視光領域の吸収が少なく導電性を有するものが用いられる。具体的には、透明導電膜2としては、スズがドープされた酸化インジウム(ITO)、フッ素がドープされた酸化スズ膜(FTO)、アンチモンがドープされた酸化スズ(ATO)、ガリウムがドープされた酸化亜鉛(GZO)、およびアルミニウムがドープされた酸化亜鉛(AZO)から選択することができる。こうした透明導電膜は、単層で用いても、2種以上を併用して複層して用いてもよい。透明導電膜と併用して低抵抗な金属またはカーボンを用いてマトリクス状の配線を形成した場合には、伝導性をさらに向上させて抵抗の上昇を防ぐことができる。
n型半導体電極3に対向して配置された対向電極7は、透明導電膜6を介して透明基板5上に設けられている。透明基板5および透明導電膜6としては、すでに説明したものを用いることができる。対向電極7は、酸化還元触媒作用を有し、例えば、金属膜、またはカーボン膜等から形成することができる。電解液層を構成する電解質組成物に対する耐性を考慮すると、白金が特に好ましい。
電解液層10には、可逆的な酸化還元対とともに、蓄電機能を付与するための支持電解質が含有される。酸化還元対および支持電解質については、追って詳細に説明する。この電解液層10は、n型半導体電極3と対向電極7との間に充填され、さらに、n型半導体電極3を構成しているn型半導体粒子4の間を埋める。
このような光電変換素子20において透明基板1側から光12が入射されると、まず、n型半導体電極3の表面に吸着されている色素が、入射光12を吸収して励起される。ここで照射される光は、通常、太陽光または擬似太陽光である。擬似太陽光は、分光特性がAM1.5、照射強度が100mW/cm2のものを使用する。励起した色素が、n型半導体電極3へ電子を渡すとともに、電解液層10にホールを渡す。電子(e-)は、図1に示すように矢印方向に移動して発電が行なわれる。
一実施形態にかかる光電変換素子は、例えば、図4〜図8に示す工程にしたがって製造することができる。
まず、図4(a)に示されるような透明導電膜2を介して透明基板1上に設けられたn型半導体電極3と、図4(b)に示されるような透明導電膜6を介して透明基板5上に設けられた対向電極7とを準備する。
透明基板1としてのガラス基板上には、常法により透明導電膜2を形成する。得られた透明導電膜2上に、n型半導体の粒子4を含むペーストを塗布し、乾燥、焼成してn型半導体電極3が形成される。ペーストは、n型半導体の粒子を、任意の方法により水やアルコールなどの有機溶媒に分散させて調製することができる。分散方法は、例えば自転公転ミキサー、ディソルバー、ボールミル、およびホモジナイザーなどから選択することができる。
二次凝集が解消されたn型半導体の粒子が再度凝集するのを防ぐために、アセチルアセトン、界面活性剤、およびキレート剤などから選択される添加剤をペーストに加えてもよい。必要に応じて、ポリエチレンオキシドやポリビニルアルコールなどの高分子、あるいはセルロース系の増粘剤などの各種増粘剤を添加して、ペーストの粘性を高めることもできる。
n型半導体粒子を含むペーストの塗布方法は特に限定されない。例えばディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、またはグラビアコート法などの任意の方法を用いて、透明導電膜2の上に塗布して塗膜を形成することができる。
次いで、乾燥・焼成を行なってn型半導体電極3が得られる。n型半導体粒子4の焼結が十分になされるように、n型半導体の種類に応じた適切な温度で焼成する。焼成温度が低すぎる場合には、粒子間の接触が不十分となって電子移動抵抗が高くなる。一方、焼成温度が高すぎる場合には、粒成長が進行して比表面積が低下する。その結果、n型半導体電極の表面における色素吸着量が減少して、発電効率が低下する。焼成温度が高すぎる場合には、透明導電膜2の抵抗も高くなってしまう。透明基板1の耐熱性も考慮すると、n型半導体粒子を含むペーストの塗膜は、200〜800℃で焼成することが好ましい。なお、焼成時間は焼成温度によって異なり、10分〜100時間程度である。焼成温度が高ければ焼成時間は短時間で行なわれ、焼成温度が低ければ長時間の焼成を要する。焼成温度は、250〜700℃がより好ましく、300〜600℃が特に好ましい。
焼成によって、n型半導体粒子4の集合体からなるn型半導体電極3が、透明導電膜2を介して透明基板1上に形成される。n型半導体電極3の厚さは、1〜60μmがより好ましく、3〜50μmが特に好ましい。
次に、色素を含む溶液にn型半導体電極を含浸させて、表面に色素を結合させる。色素は、例えばエタノール等の溶媒に溶解して0.01〜1mM程度の濃度の溶液を調製しておく。この溶液に、n型半導体電極3を室温で10分〜100時間程度浸漬した後、溶液から引き上げる。浸漬時間は、n型半導体電極の厚さ、溶液中における色素の含有量、および溶液の温度などに応じて適宜選択すればよい。
浸漬時間を制御することによって、n型半導体電極表面における色素の吸着量を制御することができる。色素分子に設計されているアンカー基と称される官能基、例えば、カルボン酸基、ホスホン酸基などが、n型半導体表面の水酸基との間にエステル結合を形成することによって、n型半導体電極の表面に色素が吸着される。
n型半導体電極の表面には、色素が結合していない水酸基が存在し、ここに塩基酸有機分子を結合させる。塩基酸有機分子は、例えばエタノール等の溶媒に溶解して0.01〜1mM程度の濃度の溶液を調製しておく。塩基酸有機分子を含有する溶液に、表面に色素が吸着したn型半導体電極を室温で10分〜100時間程度浸漬した後、溶液から引き上げる。浸漬時間は、n型半導体電極の厚さ、溶液中における色素の含有量、および溶液の温度などに応じて適宜選択することができる。色素の場合と同様、塩基酸有機分子の場合も、浸漬時間によってn型半導体電極の表面における吸着量を制御することができる。
色素とともに塩基酸有機分子が含有された溶液を用いた場合には、色素と塩基酸有機分子とを、一度の浸漬工程でn型半導体電極の表面に共吸着させることができる。それぞれの吸着量を所望の範囲内に制御するのが容易であることから、色素および塩基酸有機分子は、別個の浸漬工程でn型半導体電極の表面に順次吸着させることが好ましい。
透明基板5としてのガラス基板上には、図4(b)に示されるように透明導電膜6および対向電極7を順次形成する。透明導電膜6および対向電極7は、常法により形成することができる。対向電極7に白金を用いる場合には、電析など電気化学的なウェットプロセスまたはスパッタリングなどのドライプロセスにより、透明基板5上の透明導電膜6に付着させればよい。
図5に示されるように、透明導電膜2を介して透明基板1上に設けられたn型半導体電極3と、透明導電膜6を介して透明基板5上に設けられた対向電極7とを離間対向して配置し、電解質組成物の注入口を残して周囲をエポキシ系樹脂8aで固定して、光電変換ユニット19を得る。n型半導体電極3と対向電極7との間には、電解液層を形成するための電解質組成物が充填される間隙21が生じている。
光電変換ユニット19における間隙21には、図6に示されるように、注入ノズル9を用いて電解質組成物10を注入する。電解質組成物10は、可逆的な酸化還元対および支持電解質を含む。
可逆的な酸化還元対は、例えば、ヨウ素(I2)とヨウ化物との混合物、ヨウ化物、臭化物、ハイドロキノン、およびテトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体等から供給することができる。特に、ヨウ素とヨウ化物との混合物から供給されるI-とI3 -とからなる酸化還元対が好ましい。
ヨウ素は、電解質組成物中でヨウ化物と混合して、可逆的な酸化還元対として作用する。電解質組成物中に0.01mol/L以上3mol/L以下の量のヨウ素が含有されていれば、溶液の光吸収を増大させることなく酸化還元対の酸化体を十分に確保できる。これによって、n型半導体電極に効率よく光が与えられるとともに、電荷の輸送も良好に行なわれる。電解質組成物中におけるヨウ素の含有量は、0.02mol/L以上2.8mol/L以下がより好ましく、0.03mol/L以上2.5mol/L以下が特に好ましい。
ヨウ化物としては、例えば、アルカリ金属のヨウ化物、有機化合物のヨウ化物、およびヨウ化物の溶融塩等が挙げられる。ヨウ化物の溶融塩としては、例えば、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、第4級アンモニウム塩、ピロリジニウム塩、ピラゾリジウム塩、イソチアゾリジニウム塩、およびイソオキサゾリジニウム塩等から選択される複素環含窒素化合物のヨウ化物を使用することができる。
ヨウ化物の溶融塩としては、例えば、1,3−ジメチルイミダゾリウムアイオダイド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド、1−メチル3−プロピルイミダゾリウムアイオダイド、1−メチル−3−ペンチルイミダゾリウムアイオダイド、1−メチル−3−イソペンチルイミダゾリウムアイオダイド、1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウムアイオダイド、1−メチル−3−イソヘキシル(分岐)イミダゾリウムアイオダイド、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムアイオダイド、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾールアイオダイド、1−エチル−3−イソプロピルイミダゾリウムアイオダイド、1−プロピル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイド、およびピロリジニウムアイオダイド等を挙げることができる。こうしたヨウ化物の溶融塩は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
電解質組成物中におけるヨウ化物の溶融塩の含有量は、0.005mol/L以上7mol/L以下程度であることが好ましい。前述したような範囲の量でヨウ化物が電解質組成物中に含まれていれば、その効果を十分に得ることができる。しかも、電解質組成物の粘度が上昇して、電解液層中におけるキャリアのイオン伝導性が低下することもない。電解質組成物中におけるヨウ化物の溶融塩の含有量は、0.008mol/L以上、6mol/L以下程度であることがより好ましく、0.01mol/L以上5mol/L以下程度であることが特に好ましい。
上述したような酸化還元対は、色素の酸化電位よりも0.1〜0.6V卑な酸化還元電位を示すことが望ましい。こうした卑な酸化還元電位を示す酸化還元対の場合には、例えばI-のような還元種が、酸化された色素に電子を供与することができる。色素の酸化電位よりも0.1〜0.6V卑な酸化還元電位を示す酸化還元対が電解質中に含有されることによって、半導体電極と導電膜との間の電荷輸送の速度を速めることができる。しかも、開放端電圧も高められる。
支持電解質は蓄電機能を付与し、例えばリチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、例えば、ハロゲン化リチウム、過塩素酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、LiN(SO2Rf)2・LiC(SO2Rf)3(ただしRf=CF3,C25)、およびLiBOB(リチウムビスオキサレートボラート)等を挙げることができる。こうしたリチウム塩は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。電解液の構成が容易にできることから、ヨウ化リチウムが望ましい。
リチウム塩から電離したリチウムイオンは、n半導体電極で充放電反応に利用される。電解質組成物中におけるリチウム塩の含有量が、0.01mol/L以上3mol/L以下の範囲内であれば、半導体電極と対向電極との間で電解液から析出して内部短絡することなく、十分な効果を得ることができる。電解質組成物中におけるリチウム塩の含有量は、0.02mol/L以上2mol/L以下がより好ましく、0.03mol/L以上1mol/L以下が特に好ましい。
電解質組成物には、有機溶媒が含有されていてもよい。有機溶媒の存在によって、電解質組成物の粘度をよりいっそう低下させることができるため、n半型導体電極へ浸透されやすくなる。また、キャリアの移動度が高められる結果、内部抵抗が低下して発電効率が向上する。
有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、およびプロピレンカーボネート(PC)などの環状カーボネート;ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、およびジエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート;γ−ブチロラクトンプロピオン酸メチル、およびプロピオン酸エチルなどが挙げられる。さらに、テトラヒドロフラン、および2一メチルテトラヒドロフランなどの環状エーテル;ジメトキシエタン、およびジエトキシエタンなどの鎖状エーテル;アセトニトリル、プロピオニトリル、グルタロニトリル、およびメトキシプロピオニトリルなどのニトリル系溶剤などから選択される有機溶媒が、電解質組成物中に含有されてもよい。こうした有機溶媒は、単独であるいは2種以上の混合物として用いることができる。
電解質組成物中における有機溶媒の含有量は特に限定されないが、ヨウ素やヨウ化物塩、リチウム塩などの溶解性、粘度や揮発による性能低下のおそれを考慮して決定すればよい。電解質組成物中における有機溶媒の含有量は、10質量%以上50質量%以下が好ましい。
電解質組成物中に、その0.01質量%以上50質量%以下程度の水が含有された場合には、光電変換素子のエネルギー変換効率を、よりいっそう高めることができる。水の含有量は、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましく、1質量%以上10質量%以下が特に好ましい。
電解質組成物10は、図7に示されるようにn型半導体電極3と対向電極7との間に充填される。光電変換ユニット19の開口部を、図8に示すようにエポキシ系樹脂8で封口して、本実施形態の光電変換素子20が得られる。
本実施形態の光電変換素子20においては、色素とともに塩基酸有機分子がn型半導体電極3の表面に存在している。塩基酸有機分子によって、逆電子反応を十分に抑制することができる。
以上述べた少なくともひとつの実施形態の光電変換素子によれば、酸化タングステンを含むn型半導体粒子と、前記n型半導体粒子の表面に結合した色素と、前記n型半導体粒子の表面に結合した塩基酸有機分子とがn型半導体電極に含まれることにより、発電効率とともに蓄電容量を高めることが可能となる。
<実施例>
以下に、光電変換素子の具体例を示す。
<実施例1>
n型半導体粒子として、平均1次粒径が約10〜30nmの酸化タングステン粒子を用意した。平均1次粒径は、BET法による比表面積から換算された平均粒径である。この粒子に水、エタノール、および界面活性剤を混合し乳鉢で10分間撹拌してスラリー状とし、さらに自転公転ミキサーで10分間撹拌して半導体粒子のペーストを得た。
ガラス基板1上にフッ素ドープしたSnO2透明導電膜(6Ω/□)2を形成し、その上に前述のペーストをスクリーン印刷法により印刷して、450℃で30分間の熱処理を施した。これによって、図4(a)に示すようなn型半導体電極3が透明導電膜2上に形成された。n型半導体電極3は、酸化タングステン粒子4の集合体からなり、その厚さは15μmである。基板の投影面積に対する窒素吸着量から、このn型半導体電極3のラフネスファクターを求めたところ、1500であった。
色素としてのルテニウム錯体を乾燥エタノールに溶解して、3×10-4Mの乾燥エタノール溶液を調製した。ルテニウム錯体は、具体的には、シス−ビス(チオシアナト)−N,N−ビス(2,2’−ジピリジル−4,4’−ジカルボン酸)−ルテニウム(II)二水和物)である。前述のn型半導体電極3を、この溶液に室温で8時間浸漬した後、アルゴン気流中で引き上げた。これによって、n型半導体電極3表面には、色素であるルテニウム錯体が担持された。
次に、塩基酸有機分子としてノナン二酸を乾燥エタノールに溶解して、3×10-4Mの乾燥エタノール溶液を調製した。色素を吸着させたn半導体電極3を、この溶液に室温で4時間浸漬した後、アルゴン気流中で引き上げた。これによって、n型半導体電極3表面には、色素であるルテニウム錯体とともに塩基酸有機分子が担持された。
一方、ガラス基板5上にフッ素ドープしたSnO2透明導電膜(6Ω/□)6を設け、この表面に白金を付着させて、図4(b)に示すような対向電極7を得た。n型半導体電極3が作製されたガラス基板1上に、直径40μmのスペーサー(図示しないが、紙面と平行の位置関係)を介してこの対向電極7を配置し、電解質組成物の注入口を残して周囲をエポキシ系樹脂8で固めて固定した。以上の操作によって、図5に示すような光電変換素子ユニット19が得られた。
光電変換ユニット19における間隙21には、図6に示すように注入ノズル9を用いて電解質組成物10を注入した。電解質組成物10は、100mLのアセトニトリル中に、0.5mol/Lのリチウムアイオダイド(LiI)、0.05mol/Lのヨウ素(I2)、0.6mol/Lのエチルメチルイミダゾリウムジシアナミド、および0.5mol/Lのt−ブチルピリジン(TBP)を含み、さらに1質量%の水が含有されている。
電解質組成物10は、図7に示すようにn型半導体電極3と対向電極7との間の間隙21に充填され、n型半導体電極3を構成しているn型半導体の粒子4の間にも隙間なく浸透した。引き続き、図8に示すように、光電変換ユニットの開口部をエポキシ樹脂8bで封口して、本実施例の光電変換素子が得られた。
<実施例2〜10>
色素および塩基酸有機分子をn型半導体電極表面に吸着させるための浸漬時間を、下記表1に示すように変更した以外は前述した実施例1と同様の手法により、実施例2〜10の光電変換素子を得た。
<実施例11>
塩基酸有機分子をノナン二酸からペンタン二酸に変更した以外は実施例1と同様にして、塩基酸有機分子の溶液を調製した。こうした溶液を用いて塩基酸有機分子をn型半導体電極の表面に吸着させた以外は実施例1と同様の手法により実施例11の光電変換素子を得た。
<実施例12>
塩基酸有機分子をノナン二酸からトリデカン二酸に変更した以外は実施例1と同様にして、塩基酸有機分子の溶液を調製した。こうした溶液を用いて塩基酸有機分子をn型半導体電極の表面に吸着させた以外は実施例1と同様の手法により、実施例12の光電変換素子を得た。
<実施例13>
塩基酸有機分子をノナン二酸からジメチルエイコサン二酸に変更した以外は実施例1と同様にして、塩基酸有機分子の溶液を調製した。こうした溶液を用いて塩基酸有機分子をn型半導体電極の表面に吸着させた以外は実施例1と同様の手法により、実施例13の光電変換素子を得た。
<実施例14>
n型半導体粒子を、平均1次粒径が約10〜30nmの酸化タングステン粒子(70質量%)と、平均1次粒径が約5〜15nmの酸化チタン粒子(30質量%)との混合物に変更した以外は実施例1と同様の手法により、実施例14の光電変換素子を得た。平均1次粒径は、BET法による比表面積から換算された平均粒径である。
<実施例15>
n型半導体粒子を、平均1次粒径が約10〜30nmの酸化タングステン粒子(70質量%)と、平均1次粒径が約5〜15nmの酸化スズ粒子(30質量%)との混合物に変更した以外は実施例1と同様の手法により、実施例15の光電変換素子を得た。平均1次粒径は、BET法による比表面積から換算された平均粒径である。
<比較例1>
塩基酸有機分子を吸着せず、色素を吸着させるための浸漬時間を0.5時間とした以外は実施例1と同様の手法により、比較例1の光電変換素子を得た。
<比較例2>
塩基酸有機分子を吸着せず、色素を吸着させるための浸漬時間を72時間とした以外は実施例1と同様の手法により、比較例2の光電変換素子を得た。
下記表1には、色素をn型半導体電極の表面に吸着させる際の浸漬時間、および塩基酸有機分子をn型半導体電極の表面に吸着させる際の浸漬時間を、用いたn型半導体の種類とともにまとめる。
Figure 0005976355
実施例1〜15の光電変換素子について、n型半導体電極の表面の塩基酸有機分子の吸着量および吸着比率を求め、下記表2にまとめる。
Figure 0005976355
塩基酸有機分子の吸着量は、次のような手法により求めた。まず、色素および塩基酸有機分子が吸着したn半導体電極を、0.1N水酸化カリウム水溶液に浸漬して、色素および塩基酸有機分子を脱着した。0.1N塩酸により脱着液を中和した後、色素分子と塩基酸有機分子を有機溶媒相に移行させ、再結晶を行なって色素分子と塩基酸有機分子を分離した。再結晶には、溶解性の異なる有機溶媒、例えば、エーテルなどを用いた。塩基酸有機分子が溶解した有機溶媒について、ガスクロマトグラフィ/質量分析法による定量分析を行なって塩基性有機分子の吸着量を得た。定量分析に用いた測定装置は、5975(Agilent社製)である。
一方、色素の吸着量は、脱着液の吸光スペクトルを分光光度計U2800(日立製作所製)により測定して求めた。具体的には、スペクトルの500nm付近の吸光ピークの高さから、Ru(II)色素の水溶液中でのモル吸光係数11876[l/mol・cm]を用いて脱着液の色素濃度を求め、単位面積あたりの色素吸着量[mol/cm2]を算出した。
実施例1〜15の光電変換素子について、n型半導体電極の表面における色素の吸着量と塩基酸有機分子吸着量との合計に対する塩基酸有機分子の吸着量を、塩基酸有機分子の吸着比率として算出した。
実施例1〜15および比較例1〜2の光電変換素子について、100mW/cm2の擬似太陽光を照射した際の発電効率を測定した。その結果を、蓄電容量の測定結果とともに下記表3に示す。
Figure 0005976355
蓄電容量は、以下の手法により測定した。まず、光電変換素子と510Ωの抵抗素子とを接続して20秒間暗下に配置する。光電変換素子に100mW/cm2の擬似太陽光を照射すると充電が開始される。光電変換素子を20秒間光照射下に置いた後、再び暗下にする。光照射終了後、暗下にしたところから放電が開始される。放電は、0.01Vまで行なった。放電時の電流電圧特性を測定し、経過時間と電流値との積算から放電容量を求めた。
上記表1に示したように、比較例1および比較例2は、塩基酸有機分子が用いられていない以外は、それぞれ実施例9および実施例10と同様の構成である。比較例1および2の光電変換素子は、実施例9および10の光電変換素子と比較して発電効率および蓄電容量が劣っていることが、上記表3に示されている。
色素および塩基酸有機分子を吸着させる際の浸透時間の長い実施例10は、発電効率および蓄電容量のいずれもが、そうした浸透時間が短い実施例9より高い値となっている。比較例1と比較例2との間にはこうした傾向はみられない。発電効率は、色素を吸着させる際の浸透時間の長い比較例2の光電変換素子のほうが優れており、蓄電容量は、その浸透時間が短い比較例1の光電変換素子のほうが優れている。このように、塩基酸有機分子が用いられていない比較例においては、発電効率と蓄電容量とを両立できず、トレードオフの関係にあることがわかる。
酸化タングステンからなるn型半導体電極の表面に塩基酸有機分子と色素とが結合されている実施例1〜13の光電変換素子は、発電効率と蓄電容量とを両立することができることが上記表3に示されている。また、酸化タングステンとともに他のn型半導体がn型半導体電極に含まれた場合(実施例14,15)にも、同様の効果が得られている。
特に、塩基酸有機分子の吸着量が0.01×10-8mol/cm2以上1×10-8mol/cm2以下の範囲内の場合(実施例6〜8)には、この範囲外の場合(実施例9,10)より発電効率および蓄電容量がよりいっそう向上する傾向が示されている。塩基酸有機分子の吸着比率が1%以上50%以下の範囲内の場合(実施例1〜3)の場合にも、この範囲外の場合(実施例4,5)より発電効率および蓄電容量が向上する傾向があることがわかる。
<実施例16>
塩基酸有機分子としてノナン二酸を用いた以外は実施例1と同様にして、塩基酸有機分子の溶液を調製した。また、100mLのアセトニトリル中に、0.5mol/Lのリチウムアイオダイド(LiI)、0.03mol/Lのヨウ素(I2)、0.3mol/Lのメチルヘキシルイミダソリウムアイオダイド、および0.58mol/Lのt−ブチルピリジン(TBP)を含有する電解質組成物を用意した。
こうした塩基酸有機分子の溶液および電解質組成物を用いる以外は実施例1と同様の手法により、実施例16の光電変換素子を得た。
<実施例17>
塩基酸有機分子としてトリデカン二酸を用いた以外は実施例16と同様の手法により、実施例17の光電変換素子を得た。
<実施例18>
塩基酸有機分子が溶解される溶媒を、t−ブタノール/アセトニトリル(体積比1:1)の混合液に変更した以外は実施例16と同様の手法により、実施例18の光電変換素子を得た。
<比較例3>
塩基酸有機分子を吸着させない以外は実施例16と同様の手法により、比較例3の光電変換素子を得た。
実施例16〜18および比較例3の光電変換素子について、100mW/cm2の擬似太陽光を照射した際の発電効率を測定した。その結果を、蓄電容量の測定結果とともに下記表4に示す。
Figure 0005976355
塩基酸有機分子を用いた実施例16〜18の光電変換素子は、塩基酸有機分子が用いられない比較例3の光電変換素子と比較して、蓄電容量が2倍以上に向上することが上記表4に示されている。しかも、発電効率も最大で25%程度向上しており、塩基酸有機分子によって、発電効率および蓄電容量がともに高められている。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1,5 … 透明基板; 2,6 … 透明導電膜; 3 … n型半導体電極
4 … n型半導体粒子; 7 … 対向電極; 8a,8b … エポキシ系樹脂
9 … 注入ノズル; 10 … 電解質組成物; 12 … 入射光
19…光電変換ユニット; 20…光電変換素子; 21…間隙。

Claims (3)

  1. 酸化タングステンを含むn型半導体粒子と、前記n型半導体粒子の表面に結合した色素と、前記n型半導体粒子の表面に結合した、少なくとも2つのカルボン酸基を有する有機分子(ただし、4−ブロモイソフタル酸を除く)とを含むn型半導体電極と、
    前記n型半導体電極に対向して配置された対向電極と、
    前記n型半導体電極と前記対向電極との間に配置された電解液層と
    を具備することを特徴とする光電変換素子。
  2. 前記有機分子の量は、0.01×10−8mol/cm以上1×10−8mol/cm以下であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
  3. 前記有機分子の量は、前記色素の量と前記有機分子の量との合計に対して、モル数基準で1%以上50%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の光電変換素子。
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