JP5974872B2 - 酸素吸収性多層体 - Google Patents

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Description

本発明は、低湿度から高湿度までの広範な湿度条件下で、酸素バリア性能及び酸素吸収性能に優れた酸素吸収性多層体及び該多層体を含む酸素吸収性多層容器に関するものである。
食品、飲料、医薬品、化粧品に代表される、酸素の影響を受けて変質あるいは劣化しやすい各種物品の酸素酸化を防止し、長期に保存する目的で、これらを収納した包装体内の酸素除去を行う酸素吸収剤が使用されている。
酸素吸収剤としては、酸素吸収能力、取り扱い易さ、安全性の点から、鉄粉を反応主剤とする酸素吸収剤が一般的に用いられている。しかし、この鉄系酸素吸収剤は、金属探知機に感応するために、異物検査に金属探知機を使用することが困難であった。また、鉄系酸素吸収剤を同封した包装体は、発火の恐れがある為に電子レンジによる加熱ができない。さらに、鉄粉の酸化反応には水分が必須であるため、被保存物が高水分系であるものでしか、酸素吸収の効果を発現することができなかった。
また、熱可塑性樹脂に鉄系酸素吸収剤を配合した酸素吸収性樹脂組成物からなる酸素吸収層を配した多層材料で容器を構成することにより、容器のガスバリア性の向上を図るとともに容器自体に酸素吸収機能を付与した包装容器の開発が行われている(特許文献1参照)。しかし、これも同様に金属探知機に使用できない、電子レンジによる加熱ができない、被保存物が高水分系のものしか効果を発現しない、といった課題を有している。さらに、不透明性の問題により内部視認性が不足するといった課題を有している。
上記のような事情から、有機系の物質を反応主剤とする酸素吸収剤が望まれている。有機系の物質を反応主剤とする酸素吸収剤としては、アスコルビン酸を主剤とする酸素吸収剤が知られている(特許文献2参照)。
他方、樹脂と遷移金属触媒からなる酸素吸収性樹脂組成物が知られている。例えば、酸化可能有機成分としてポリアミド、特にキシリレン基含有ポリアミドと遷移金属触媒からなる樹脂組成物が知られている(特許文献3参照)。さらに、この特許文献3には、この樹脂組成物を成形して得られる酸素吸収剤、包装材料、包装用多層積層フィルムも例示されている。
また、酸素吸収に水分を必要としない酸素吸収樹脂組成物として、炭素−炭素不飽和結合を有する樹脂と遷移金属触媒からなる酸素吸収樹脂組成物が知られている(特許文献4参照)。
さらに、酸素を捕集する組成物として、置換されたシクロヘキセン官能基を含むポリマーまたは該シクロヘキセン環が結合した低分子量物質と遷移金属とからなる組成物が知られている(特許文献5参照)。
特開平9−234832号公報 特開昭51−136845号公報 特開2001−252560号公報 特開平05−115776号公報 特表2003−521552号公報
しかしながら、特許文献2の酸素吸収剤組成物は、そもそも酸素吸収性能が低く、また、被保存物が高水分系のものしか効果を発現しない、比較的に高価である、といった課題を有している。
また、特許文献3の樹脂組成物は、遷移金属触媒を含有させキシリレン基含有ポリアミド樹脂を酸化させることで酸素吸収機能を発現させるものであるため、樹脂の酸化劣化による高分子鎖の切断が発生し、包装容器そのものの強度が低下するという問題を有している。さらに、この樹脂組成物は、未だ酸素吸収性能が不十分であり、被保存物が高水分系のものしか効果を発現しない、といった課題を有している(比較例1参照)。
さらに、特許文献4の酸素吸収樹脂組成物は、上記と同様に樹脂の酸化にともなう高分子鎖の切断により臭気成分となる低分子量の有機化合物が生成し、酸素吸収後に臭気が発生するという問題がある。
一方、特許文献5の組成物は、シクロヘキセン官能基を含む特殊な材料を用いる必要があり、また、この材料は比較的に臭気が発生しやすい、という課題が依然として存在する。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、金属探知機に感応せず、酸素吸収後の臭気がなく、優れた酸素吸収性能を有する、新規な酸素吸収性多層体及び該多層体を含む酸素吸収性多層容器を提供することにある。また、本発明の他の目的は、低湿度から高湿度までの広範な湿度条件下で優れた酸素吸収性能を有する、酸素吸収性多層体及び該多層体を含む酸素吸収性多層容器を提供することにある。
本発明者らは、酸素吸収性多層体について鋭意検討を進めた結果、所定のテトラリン環を有するポリアミド化合物と遷移金属触媒を用いることにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下<1>〜<5>を提供する。
<1> 熱可塑性樹脂を含有するシーラント層、ポリアミド化合物及び遷移金属触媒を含有する酸素吸収性樹脂組成物からなる酸素吸収層、及びガスバリア性物質を含有するガスバリア層の少なくとも3層をこの順に有する酸素吸収性多層体であって、
前記ポリアミド化合物が、下記一般式(1)〜(2)で表される構成単位;
Figure 0005974872
(式中、Rは、それぞれ独立して、一価の置換基を示し、一価の置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基およびイミド基からなる群より選択される少なくとも1種であり、これらはさらに置換基を有していてもよい。各式中、mは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示し、各式中、nは、それぞれ独立して、0〜7の整数を示し、テトラリン環のベンジル位には少なくとも1つ以上の水素原子が結合している。各式中、Xは、それぞれ独立して、芳香族炭化水素基、飽和または不飽和の脂環式炭化水素基、直鎖状または分岐状の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基および複素環基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を含有する2価の基を示す。)
からなる群より選択される少なくとも1つのテトラリン環を有する構成単位を含有する、酸素吸収性多層体。
<2> 前記遷移金属触媒が、マンガン、鉄、コバルト、ニッケルおよび銅からなる群より選択される少なくとも1種以上の遷移金属を含むものである、上記<1>に記載の酸素吸収性多層体。
<3> 前記遷移金属触媒が、前記ポリアミド化合物100質量部に対し、遷移金属量として0.001〜10質量部含まれる、上記<1>または<2>に記載の酸素吸収性多層体。
<4> 前記一般式(1)で表される構成単位が、下記式(3)〜(6)で表される構成単位;
Figure 0005974872
からなる群より選択される少なくとも1つである、上記<1>〜<3>のいずれかに記載の酸素吸収性多層体。
<5> 上記<1>〜<4>のいずれか一項に記載の酸素吸収性多層体を含む、酸素吸収性多層容器。
本発明によれば、低湿度から高湿度までの広範な湿度条件下で優れた酸素吸収性能を有する酸素吸収性多層体及び該多層体を含む酸素吸収性多層容器を実現することができる。そして、この酸素吸収性多層体及び該多層体を含む酸素吸収性多層容器は、被保存物の水分の有無によらず酸素を吸収することができ、しかも酸素吸収後の臭気発生がないので、例えば、食品、調理食品、飲料、医薬品、健康食品等、対象物を問わず幅広い用途で使用することができる。また、金属探知機に感応しない酸素吸収性多層体及び該多層体を含む酸素吸収性多層容器を実現することもできる。さらに、酸素吸収後も酸化による上記のテトラリン環を有するポリアミド化合物の強度低下が極めて小さく、長期の利用においても酸素吸収層の強度が維持されるため、層間剥離が生じにくい酸素吸収性多層体及び該多層体を含む酸素吸収性多層容器を実現することもできる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されない。
[酸素吸収性多層体]
本実施形態の酸素吸収性多層体は、熱可塑性樹脂を含有するシーラント層(層C)、少なくとも1種のテトラリン環を有する構成単位を含有するポリアミド化合物(以下、単に「テトラリン環含有ポリアミド化合物」ともいう。)と遷移金属触媒とを含有する酸素吸収性樹脂組成物からなる酸素吸収層(層A)、並びにガスバリア性物質を含有するガスバリア層(層D)の少なくとも3層をこの順に積層したものである。また、本実施形態の酸素吸収性多層体は、必要に応じて、これら3層以外の層を任意の位置に有していてもよい。
本実施形態の酸素吸収性多層体は、層Cを内側として密封用包装容器の一部または全部に使用することにより、容器内の酸素を吸収して、容器外から侵入する酸素がわずかでもある場合にはこの侵入した酸素をも吸収して、保存する内容物品(被保存物)の酸素による変質等を防止することができる。
[シーラント層(層C)]
本実施形態の酸素吸収性多層体のシーラント層(層C)は、熱可塑性樹脂を含有するものである。この層Cは、シーラントとしての役割に加え、容器内の酸素を酸素吸収層まで透過させると同時に酸素吸収層(層A)と内容物(被保存物)とを隔離する(層Aと被保存物との物理的な接触を阻害する)役割を有する。ここで、層Cの酸素透過度は、20μmの厚さのフィルムについて、23℃、相対湿度60%の条件下で測定したときに、300mL/(m・day・atm)以上であることが好ましく、より好ましくは400mL/(m・day・atm)以上、さらに好ましくは500mL/(m・day・atm)以上である。酸素透過度が上記の好ましい値以上であると、そうでない場合に比べて、層Aの酸素を吸収する速度をより高めることができる。
本実施形態の酸素吸収性多層体の層Cに用いる熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、メタロセン触媒によるポリエチレン等の各種ポリエチレン類;ポリスチレン;ポリメチルペンテン;プロピレンホモポリマー、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体等のポリプロピレン類;ヒートシール性を有するPET、A−PET、PETG、PBT等のポリエステル;アモルファスナイロン等が挙げられる。これらは、1種を単独でまたは組み合わせて使用することができる。これら熱可塑性樹脂には、必要に応じて、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、熱可塑性エラストマーを添加してもよい。本実施形態の酸素吸収性多層体の層Cに用いる熱可塑性樹脂は、多層体の成形性と加工性を考慮すると、MFRが200℃で1〜35g/10分、240℃である、または、MFRが240℃で2〜45g/10分であるものが好ましく用いられる。
また、本実施形態の酸素吸収性多層体の層Cは、上記の熱可塑性樹脂以外に、当業界で公知の各種添加剤を含有していてもよい。かかる任意成分としては、例えば、乾燥剤、酸化チタン等の着色顔料、染料、酸化防止剤、スリップ剤、帯電防止剤、可塑剤、安定剤、滑剤等の添加剤、炭酸カルシウム、クレー、マイカ、シリカ等の充填剤、消臭剤等が挙げられるが、これらに特に限定されない。特に、製造中に発生した端材をリサイクルして再加工する観点から、層Cに酸化防止剤を配合することが好ましい。
層C中の熱可塑性樹脂の含有割合は、適宜設定でき、特に限定されないが、層Cの総量に対して、70〜100質量%が好ましく、より好ましくは80〜100質量%であり、さらに好ましくは90〜100質量%である。また、本実施形態の層Cに用いる熱可塑性樹脂は、テトラリン環含有ポリアミド化合物以外の熱可塑性樹脂を、その総量に対して、50〜100質量%含むものが好ましく、より好ましくは70〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%である。
[酸素吸収層(層A)]
本実施形態の酸素吸収性多層体の酸素吸収層(層A)は、上記一般式(1)〜(2)で表される構成単位からなる群より選択される少なくとも1種のテトラリン環含有ポリアミド化合物と遷移金属触媒とを含有する酸素吸収性樹脂組成物からなる。
層A中の前記テトラリン環含有ポリアミド化合物の含有割合は、特に限定されないが、層Aの総量に対して、50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。テトラリン環含有ポリアミド化合物の含有割合が前記好ましい値以上にあると、そうでない場合に比べて、酸素吸収性能をより高めることができる。
<テトラリン環含有ポリアミド化合物>
本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物において用いられるテトラリン環含有ポリアミド化合物は、上記一般式(1)〜(2)で表される構成単位のうち、少なくとも1種を含有するものである。また、上記一般式(1)で表される構成単位は、上記式(3)〜(6)で表される構成単位からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。ここで、「構成単位を含有する」とは、化合物中に当該構成単位を1以上有することを意味する。かかる構成単位は、テトラリン環含有ポリアミド化合物中に繰り返し単位として含まれていることが好ましい。このようにテトラリン環含有ポリアミド化合物が重合体である場合、上記構成単位のホモポリマー、上記構成単位と他の構成単位とのランダムコポリマー、上記構成単位と他の構成単位とのブロックコポリマーのいずれであっても構わない。
上記一般式(1)〜(2)で表される構成単位において、Rで示した一価の置換基としては、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数が1〜15、より好ましくは炭素数が1〜6の直鎖状、分岐状または環状アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数が2〜10、より好ましくは炭素数が2〜6の直鎖状、分岐状または環状アルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基)、アルキニル基(好ましくは炭素数が2〜10、より好ましくは炭素数が2〜6のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基)、アリール基(好ましくは炭素数が6〜16、より好ましくは炭素数が6〜10のアリール基、例えば、フェニル基、ナフチル基)、複素環基(好ましくは炭素数が1〜12、より好ましくは炭素数が2〜6の5員環或いは6員環の芳香族または非芳香族の複素環化合物から1個の水素原子を取り除くことによって得られる一価の基、例えば、1−ピラゾリル基、1−イミダゾリル基、2−フリル基)、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ニトロ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数が1〜10、より好ましくは炭素数が1〜6の直鎖状、分岐状または環状アルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数が6〜12、より好ましくは炭素数が6〜8のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基)、アシル基(ホルミル基を含む。好ましくは炭素数が2〜10、より好ましくは炭素数が2〜6のアルキルカルボニル基、好ましくは炭素数が7〜12、より好ましくは炭素数が7〜9のアリールカルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基)、アミノ基(好ましくは炭素数が1〜10、より好ましくは炭素数が1〜6のアルキルアミノ基、好ましくは炭素数が6〜12、より好ましくは炭素数が6〜8のアニリノ基、好ましくは炭素数が1〜12、より好ましくは炭素数が2〜6の複素環アミノ基、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、アニリノ基)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは炭素数が1〜10、より好ましくは炭素数が1〜6のアルキルチオ基、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数が6〜12、より好ましくは炭素数が6〜8のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基)、複素環チオ基(好ましくは炭素数が2〜10、より好ましくは炭素数が1〜6の複素環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基)、イミド基(好ましくは炭素数が2〜10、より好ましくは炭素数が4〜8のイミド基、例えば、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)等が例示されるが、これらに特に限定されない。
なお、上記の一価の置換基Rが水素原子を有する場合、その水素原子が置換基T(ここで、置換基Tは、上記の一価の置換基Rで説明したものと同義である。)でさらに置換されていてもよい。その具体例としては、ヒドロキシ基で置換されたアルキル基(例えば、ヒドロキシエチル基)、アルコキシ基で置換されたアルキル基(例えば、メトキシエチル基)、アリール基で置換されたアルキル基(例えば、ベンジル基)、第1級或いは第2級アミノ基で置換されたアルキル基(例えば、アミノエチル基)、アルキル基で置換されたアリール基(例えば、p−トリル基)、アルキル基で置換されたアリールオキシ基(例えば、2−メチルフェノキシ基)等が挙げられるが、これらに特に限定されない。なお、上記の一価の置換基Rが一価の置換基Tを有する場合、上述した炭素数には、置換基Tの炭素数は含まれないものとする。例えば、ベンジル基は、フェニル基で置換された炭素数1のアルキル基と看做し、フェニル基で置換された炭素数7のアルキル基とは看做さない。また、上記の一価の置換基Rが置換基Tを有する場合、その置換基Tは複数あってもよい。
上記一般式(1)〜(2)で表される構成単位において、Xは、芳香族炭化水素基、飽和または不飽和の脂環式炭化水素基、直鎖状または分岐状の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基および複素環基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を含有する2価の基を示す。芳香族炭化水素基、飽和または不飽和の脂環式炭化水素基、直鎖状または分岐状の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基および複素環基は、置換されていても無置換でもよい。また、Xは、ヘテロ原子を含有していてもよく、或いは、エーテル基、スルフィド基、カルボニル基、ヒドロキシ基、アミノ基、スルホキシド基、スルホン基等を含有していてもよい。
ここで、芳香族炭化水素基としては、例えば、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、メチルフェニレン基、o−キシリレン基、m−キシリレン基、p−キシリレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、フェナントリレン基、ビフェニレン基、フルオニレン基等が挙げられるが、これらに特に限定されない。脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、メチルシクロへキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基等のシクロアルキレン基や、シクロヘキセニレン基等のシクロアルケニレン基が挙げられるが、これらに特に限定されない。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、イソプロピリデン基、テトラメチレン基、イソブチリデン基、sec‐ブチリデン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基等の直鎖状または分枝鎖状アルキレン基や、ビニレン基、プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1,3−ブタジエニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基、1−ヘキセニレン基、2−ヘキセニレン基、3−ヘキセニレン基等のアルケニレン基等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは、さらに置換基を有していてもよく、その具体例としては、例えば、ハロゲン、アルコキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボアルコキシ基、アミノ基、アシル基、チオ基(例えばアルキルチオ基、フェニルチオ基、トリルチオ基、ピリジルチオ基等)、アミノ基(例えば非置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、フェニルアミノ基等)、シアノ基、ニトロ基等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
上記一般式(1)で表される構成単位を含有するテトラリン環含有ポリアミド化合物は、例えば、テトラリン環を有するジカルボン酸またはその誘導体(I)と、ジアミンまたはその誘導体(II)、とを重縮合することによって得ることができる。
テトラリン環を有するジカルボン酸またはその誘導体(I)としては、例えば、下記一般式(7)で表される化合物が挙げられる。テトラリン環を有するジカルボン酸またはその誘導体(I)は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
Figure 0005974872
(式中、Rは、それぞれ独立して、一価の置換基を示し、一価の置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基およびイミド基からなる群より選択される少なくとも1種であり、これらはさらに置換基を有していてもよい。mは0〜3の整数を示し、nは0〜7の整数を示し、テトラリン環のベンジル位には少なくとも1つ以上の水素原子が結合している。)
なお、上記一般式(7)で表される化合物は、例えば、下記一般式(8)で表されるナフタレン環を有するジカルボン酸またはその誘導体を水素と反応させることによって得ることができる。
Figure 0005974872

(式中、Rは、それぞれ独立して、一価の置換基を示し、一価の置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基およびイミド基からなる群より選択される少なくとも1種であり、これらはさらに置換基を有していてもよい。mは、それぞれ独立して0〜3の整数を示す。)
ジアミンまたはその誘導体(II)としては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン等の直鎖飽和脂肪族ジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、2,4−ジメチルオクタメチレンジアミン等の分岐状飽和脂肪族アミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等の脂環族アミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンアミン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン等の芳香族アミン、またはこれらの誘導体が挙げられる。ジアミンまたはその誘導体(II)は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記一般式(2)で表される構成単位を含有するテトラリン環含有ポリアミド化合物は、例えば、テトラリン環を有するジアミンまたはその誘導体(III)と、ジカルボン酸またはその誘導体(IV)を重縮合することによって得ることができる。
テトラリン環を有するジアミンまたはその誘導体(III)としては、例えば、下記一般式(9)で表される化合物が挙げられる。テトラリン環を有するジアミンまたはその誘導体(III)は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
Figure 0005974872
(式中、Rは、それぞれ独立して、一価の置換基を示し、一価の置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基およびイミド基からなる群より選択される少なくとも1種であり、これらはさらに置換基を有していてもよい。mは0〜3の整数を示し、nは0〜7の整数を示し、テトラリン環のベンジル位には少なくとも1つ以上の水素原子が結合している。)
上記一般式(9)で表される化合物は、例えば、下記一般式(10)で表されるナフタレン環を有するジアミンまたはその誘導体を水素と反応させることによって得ることができる。
Figure 0005974872
(式中、Rは、それぞれ独立して、一価の置換基を示し、一価の置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基およびイミド基からなる群より選択される少なくとも1種であり、これらはさらに置換基を有していてもよい。mは、それぞれ独立して0〜3の整数を示す。)
ジカルボン酸またはその誘導体(IV)としては、例えば、シュウ酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、3,3−ジメチルペンタン二酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のベンゼンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェニルマロン酸、フェニレンジ酢酸、フェニレンジ酪酸、4,4−ジフェニルエーテルジカルボン酸、p-フェニレンジカルボン酸、またはこれらの誘導体等が挙げられる。ジカルボン酸またはその誘導体(IV)は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記一般式(1)または(2)で表される構成単位を含有するテトラリン環含有ポリアミド化合物は、例えば、下記一般式(11)または(12)で表される構成単位を含有するポリアミド化合物を水素と反応させることによって得ることができる。
Figure 0005974872
(式中、Rは、それぞれ独立して、一価の置換基を示し、一価の置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基およびイミド基からなる群より選択される少なくとも1種であり、これらはさらに置換基を有していてもよい。mは、それぞれ独立して0〜3の整数を示す。Xは芳香族炭化水素基、飽和または不飽和の脂環式炭化水素基、直鎖状または分岐状の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基および複素環基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を含有する2価の基を示す。)
Figure 0005974872
(式中、Rは、それぞれ独立して、一価の置換基を示し、一価の置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基およびイミド基からなる群より選択される少なくとも1種であり、これらはさらに置換基を有していてもよい。mは、それぞれ独立して0〜3の整数を示す。Xは芳香族炭化水素基、飽和または不飽和の脂環式炭化水素基、直鎖状または分岐状の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基および複素環基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を含有する2価の基を示す。)
上記一般式(7)〜(12)で表される構成単位においてRで示した一価の置換基およびXで示した2価の基の具体例は、上記一般式(1)〜(2)で表される構成単位において説明したものと同一である。そのため、ここでの重複した説明は省略する。
本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物において用いられるテトラリン環含有ポリアミド化合物は、上記一般式(1)〜(2)で表される構成単位以外の、他のテトラリン環を有する構成単位、および/または、テトラリン環を有さない構成単位を共重合成分として含んでいてもよい。具体的には、前述したジアミンまたはその誘導体(II)やジカルボン酸またはその誘導体(IV)において示した化合物を共重合成分として用いることができる。また、下記一般式(13)で表されるω−アミノカルボン酸単位を更に含有してもよい。
Figure 0005974872
(式中、lは、2〜18の整数を表す。)
上記一般式(13)で表されるω−アミノカルボン酸単位を構成しうる化合物としては、炭素数3〜19のω−アミノカルボン酸や炭素数3〜19のラクタムが挙げられる。炭素数3〜19のω−アミノカルボン酸としては、例えば、6−アミノヘキサン酸及び12−アミノドデカン酸などが挙げられ、炭素数3〜19のラクタムとしては、例えば、ε−カプロラクタム及びラウロラクタムを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記一般式(1)で表される構成単位を含有するテトラリン環含有ポリアミド化合物のなかで、より好ましいものとしては、上記式(3)〜(6)で表される構成単位を含有するテトラリン環含有ポリアミド化合物が挙げられる。
上記のテトラリン環含有ポリアミド化合物の分子量は、所望する性能や取扱性などを考慮して適宜設定することができ、特に限定されない。一般的には、重量平均分子量(Mw)が1.0×10〜8.0×10であることが好ましく、より好ましくは5.0×10〜5.0×10である。また同様に、数平均分子量(Mn)が1.0×10〜1.0×10であることが好ましく、より好ましくは5.0×10〜5.0×10である。なお、ここでいう分子量は、いずれもポリスチレン換算の値を意味する。なお、上記のテトラリン環含有ポリアミド化合物は、1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記のテトラリン環含有ポリアミド化合物のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、0〜150℃であることが好ましく、より好ましくは10〜130℃である。なお、ここでいうガラス転移温度は、示差走査熱量測定により測定される値を意味する。
上記のテトラリン環含有ポリアミド化合物を製造する方法は、特に制限されず、従来公知のポリアミドの製造方法をいずれも適用することができる。ポリアミドの製造方法としては、例えば、加圧塩法、常圧滴下法、加圧滴下法等が挙げられる。これらの中でも、加圧塩法が好適である。
加圧塩法は、ジカルボン酸とジアミンの塩を原料として加圧下にて重縮合を行う方法である。具体的には、ジカルボン酸とジアミンとからなる設定モル比のジカルボン酸とジアミンの塩を含む水溶液を調製した後、該水溶液を濃縮し、次いで加圧下にて昇温し、縮合水を除去しながら重縮合させる方法である。
常圧滴下法は、ジカルボン酸を加熱溶融した後に、常圧下にてジアミン成分を連続的に滴下し、縮合水を除去しながら重縮合させる方法である。この際、生成するポリアミドの融点よりも反応温度が下回らないように昇温しながら重縮合反応を行う。設定モル比に達したらジアミンの滴下を終了し、ポリアミドの融点より10℃程度高い温度まで昇温して所定時間保持し、重縮合を継続する。
加圧滴下法は、ジカルボン酸成分を加熱溶融した後に、加圧下にて、好ましくは0.3〜0.4MPaG程度に加圧して、ジアミン成分を連続的に滴下し、縮合水を除去しながら重縮合させる方法である。この際、生成するポリアミドの融点よりも反応温度が下回らないように昇温しながら重縮合反応を行う。設定モル比に達したらジアミン成分の滴下を終了し、徐々に常圧に戻しながら、ポリアミドの融点より10℃程度高い温度まで昇温して所定時間保持し、重縮合を継続する。
上記重縮合方法で製造されたポリアミドは、そのまま使用することもできるが、更に重合度を高めるための工程を経てもよい。更に重合度を高める工程としては、押出機内での反応押出や固相重合等が挙げられる。固相重合で用いられる加熱装置としては、連続式の加熱乾燥装置やタンブルドライヤー、コニカルドライヤー、ロータリードライヤー等と称される回転ドラム式の加熱装置およびナウタミキサーと称される内部に回転翼を備えた円錐型の加熱装置が好適に使用できるが、これらに限定されることなく公知の方法、装置を使用することができる。特にポリアミドの固相重合を行う場合は、上述の装置の中で回転ドラム式の加熱装置が、系内を密閉化でき、着色の原因となる酸素を除去した状態で重縮合を進めやすいことから好ましく用いられる。
テトラリン環含有ポリアミド化合物の製造時には、熱安定剤、光安定剤等の各種安定剤、重合調整剤等の従来公知のものをいずれも用いることができる。これらの種類や使用量は、反応速度、テトラリン環含有ポリアミド化合物の分子量、ガラス転移温度、粘度、色調、安全性、熱安定性、耐候性、自身の溶出性などに応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。
なお、テトラリン環含有ポリアミド化合物の好ましい相対粘度は、成形品の強度や外観、成形加工性の観点から、好ましくは1.8〜4.2、より好ましくは1.9〜4.0、更に好ましくは2.0〜3.8である。
なお、ここでいう相対粘度は、テトラリン環含有ポリアミド化合物1gを96%硫酸100mLに溶解し、キャノンフェンスケ型粘度計にて25℃で測定した落下時間(t)と、同様に測定した96%硫酸そのものの落下時間(t)の比であり、次式で示される。
相対粘度=t/t
上述したテトラリン環含有ポリアミド化合物は、いずれも、テトラリン環のベンジル位に水素を有するものであり、上述した遷移金属触媒と併用することでベンジル位の水素が引き抜かれ、これにより優れた酸素吸収能を発現する。
また、本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物は、酸素吸収後の臭気発生が著しく抑制されたものである。その理由は明らかではないが、例えば以下の酸化反応機構が推測される。すなわち、上記のテトラリン環含有ポリアミド化合物においては、まずテトラリン環のベンジル位にある水素が引き抜かれてラジカルが生成し、その後、ラジカルと酸素との反応によりベンジル位の炭素が酸化され、ヒドロキシ基またはケトン基が生成すると考えられる。そのため、本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物においては、上記従来技術のような酸化反応による酸素吸収主剤の分子鎖の切断がなく、テトラリン環含有ポリアミド化合物の構造が維持され、臭気の原因となる低分子量の有機化合物が酸素吸収後に生成され難いためと推測される。
<遷移金属触媒>
本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物において使用される遷移金属触媒としては、上記のテトラリン環含有ポリアミド化合物の酸化反応の触媒として機能し得るものであれば、公知のものから適宜選択して用いることができ、特に限定されない。
かかる遷移金属触媒の具体例としては、遷移金属の有機酸塩、ハロゲン化物、燐酸塩、亜燐酸塩、次亜燐酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酸化物、水酸化物等が挙げられる。ここで、遷移金属触媒に含まれる遷移金属としては、例えば、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルテニウム、ロジウム等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅が好ましい。また、有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、オクタノイック酸、ラウリン酸、ステアリン酸、アセチルアセトン、ジメチルジチオカルバミン酸、パルミチン酸、2−エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、リノール酸、トール酸、オレイン酸、カプリン酸、ナフテン酸等が挙げられるが、これらに限定されない。遷移金属触媒は、上述した遷移金属と有機酸とを組み合わせたものが好ましく、遷移金属がマンガン、鉄、コバルト、ニッケルまたは銅であり、有機酸が酢酸、ステアリン酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸またはナフテン酸である組み合わせがより好ましい。なお、遷移金属触媒は、1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物におけるテトラリン環含有ポリアミド化合物および遷移金属触媒の含有割合は、使用するテトラリン環含有ポリアミド化合物や遷移金属触媒の種類および所望の性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されない。酸素吸収性樹脂組成物の酸素吸収量の観点から、遷移金属触媒の含有量は、テトラリン環含有ポリアミド化合物100質量部に対し、遷移金属量として0.001〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.002〜2質量部、さらに好ましくは0.005〜1質量部である。
<他の熱可塑性樹脂>
また、本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物は、必要に応じて、上記テトラリン環含有ポリアミド化合物以外の、他の熱可塑性樹脂をさらに含有していてもよい。他の熱可塑性樹脂を併用することで、成形性や取扱性を高めることができる。
他の熱可塑性樹脂としては、公知のものを適宜用いることができる。低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、或いはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同士のランダムまたはブロック共重合体等のポリオレフィン;無水マレイン酸グラフトポリエチレンや無水マレイン酸グラフトポリプロピレン等の酸変性ポリオレフィン;エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体やそのイオン架橋物(アイオノマー)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体等のエチレン−ビニル化合物共重合体;ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、α−メチルスチレン−スチレン共重合体等のスチレン系樹脂;ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のポリビニル化合物、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等のポリアミド;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート等のポリエステル;ポリカーボネート;ポリエチレンオキサイド等のポリエーテル等或いはこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの熱可塑性樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
テトラリン環含有ポリアミド化合物及び遷移金属触媒並びに必要に応じて含有される熱可塑性樹脂は、公知の方法で混合する事が出来る。また、押出機を用いてこれらを混練することにより、より高い分散性を有する酸素吸収性樹脂組成物を得ることもできる。
<各種添加剤>
ここで、本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物は、本実施形態の効果を過度に損なわない範囲で、当業界で公知の各種添加剤を含有していてもよい。かかる任意成分としては、例えば、乾燥剤、顔料、染料、酸化防止剤、スリップ剤、帯電防止剤、安定剤等の添加剤、炭酸カルシウム、クレー、マイカ、シリカ等の充填剤、消臭剤等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
さらに、本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物は、酸素吸収反応を促進させるために、必要に応じて、さらにラジカル発生剤や光開始剤を含有していてもよい。ラジカル発生剤の具体例としては、各種のN−ヒドロキシイミド化合物が挙げられる。具体的には、N−ヒドロキシコハクイミド、N−ヒドロキシマレイミド、N,N’−ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカルボン酸ジイミド、N−ヒドロキシフタルイミド、N−ヒドロキシテトラクロロフタルイミド、N−ヒドロキシテトラブロモフタルイミド、N−ヒドロキシヘキサヒドロフタルイミド、3−スルホニル−N−ヒドロキシフタルイミド、3−メトキシカルボニル−N−ヒドロキシフタルイミド、3−メチル−N−ヒドロキシフタルイミド、3−ヒドロキシ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−ニトロ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−クロロ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−メトキシ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−ジメチルアミノ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−カルボキシ−N−ヒドロキシヘキサヒドロフタルイミド、4−メチル−N−ヒドロキシヘキサヒドロフタルイミド、N−ヒドロキシヘット酸イミド、N−ヒドロキシハイミック酸イミド、N−ヒドロキシトリメリット酸イミド、N,N−ジヒドロキシピロメリット酸ジイミド等が挙げられるが、これらに特に限定されない。また、光開始剤の具体例としては、ベンゾフェノンとその誘導体、チアジン染料、金属ポルフィリン誘導体、アントラキノン誘導体等が挙げられるが、これらに特に限定されない。なお、これらのラジカル発生剤および光開始剤は、1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本実施形態の酸素吸収性多層体において、酸素吸収層(層A)の厚みは、用途や所望する性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、5〜200μmが好ましく、より好ましくは10〜100μmである。厚みが上記好ましい範囲内にあると、そうでない場合に比べて、層Aが酸素を吸収する性能をより高めることができるとともに、加工性や経済性を高次元で維持することができる。また、シーラント層(層C)の厚みも、用途や所望する性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、5〜200μmが好ましく、より好ましくは10〜80μmである。厚みが上記好ましい範囲内にあると、そうでない場合に比べて、層Aの酸素吸収速度をより高めることができるとともに、加工性や経済性を高次元で維持することができる。さらに、得られる酸素吸収性多層体の加工性を考慮すると、層Cと層Aの厚み比が、1:0.5〜1:3にあることが好ましく、より好ましくは1:1.5〜1:2.5である。
[ガスバリア層(層D)]
本実施形態の酸素吸収性多層体のガスバリア層(層D)は、ガスバリア性物質を含有するものである。層Dの酸素透過率は、20μmの厚さのフィルムについて、23℃、相対湿度60%の条件下で測定したときに、100mL/(m・day・atm)以下であることが好ましく、より好ましくは80mL/(m・day・atm)以下、さらに好ましくは50mL/(m・day・atm)以下である。
本実施形態の酸素吸収性多層体の層Dに用いるガスバリア性物質としては、ガスバリア性熱可塑性樹脂や、ガスバリア性熱硬化性樹脂、シリカ、アルミナ、アルミ等の各種蒸着フィルム、アルミ箔等の金属箔等を用いることができる。ガスバリア性熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体、MXD6、ポリ塩化ビニリデン等が例示できる。また、ガスバリア性熱硬化性樹脂としては、ガスバリア性エポキシ樹脂、例えば、三菱ガス化学株式会社製「マクシーブ」等が例示できる。
ガスバリア性物質として熱可塑性樹脂を用いる場合、ガスバリア層(層D)の厚みは、5〜200μmが好ましく、より好ましくは10〜100μmである。また、ガスバリア性物質として或いはガスバリア性接着剤層としてアミン−エポキシ硬化剤のような熱硬化性樹脂を使用する場合は、層Dの厚みは、0.1〜100μmが好ましく、より好ましくは0.5〜20μmである。厚みが上記好ましい範囲内にあると、そうでない場合に比べて、ガスバリア性がより高められる傾向にあるとともに、加工性や経済性を高次元で維持することができる。
なお、本実施形態の酸素吸収性多層体は、層Cと層Aとの間に、層Aと層Dとの間に、または、層Cの外層に或いは層Dの外層に、樹脂層、金属箔層或いは接着剤層等の少なくとも1以上の他の層を有していてもよい。例えば、層Dの破損やピンホールを防ぐために、層Dの内側や外側に熱可塑性樹脂からなる保護層を設けることができる。この保護層に用いる樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン等のポリエチレン類、プロピレンホモポリマー、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体等のポリプロピレン類、ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド類、さらに、PET等のポリエステル類及びこれらの組み合わせが挙げられる。
また、加工性を考慮すると、本実施形態の酸素吸収性多層体は、層Dと層Aとの間に、ポリオレフィン樹脂からなる中間層を介在させることが好ましい。この中間層の厚みは、加工性の観点から、層Cの厚みと略同一であることが好ましい。なお、ここでは、加工によるバラツキを考慮して、厚み比が±10%以内を略同一とする。
また、層Dの外層に紙基材を積層して、酸素吸収性紙基材或いは酸素吸収性紙容器として用いることもできる。紙基材と積層して紙容器とする際の加工性を高い次元で維持する観点から、層Dよりも内側の層の総厚みが100μm以下であることが好ましく、より好ましくは80μm以下である。
本実施形態の酸素吸収性多層体は、各種材料の性状、加工目的、加工工程等に応じて、共押出法、各種ラミネート法、各種コーティング法などの公知の方法を利用して製造することができ、その製造方法は特に限定されない。通常の包装材料を積層する方法、例えば、ウェットラミネーション法、ドライラミネーション法、無溶剤型ドライラミネーション法、押出ラミネーション法、Tダイ共押出成形法、共押出ラミネーション法、インフレーション法等を適用することができる。例えば、フィルムやシートの成形については、Tダイ、サーキュラーダイ等が付属した押出機から溶融した樹脂組成物を押し出して製造する方法や、別途製膜した酸素吸収性フィルムもしくはシートに接着剤を塗布し、他のフィルムやシートと貼り合わせることで製造する方法がある。さらに必要に応じて、例えば、コロナ処理、オゾン処理等の前処理をフィルム等に施すことができ、また、例えば、イソシアネート系(ウレタン系)、ポリエチレンイミン系、ポリブタジェン系、有機チタン系等のアンカーコーティング剤、あるいはポリウレタン系、ポリアクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリ酢酸ビニル系、セルロース系、その他等の、ラミネート用接着剤等の公知のアンカーコート剤、接着剤等を使用することもできる。
[酸素吸収性多層容器]
本実施形態の酸素吸収性多層容器は、上述した酸素吸収性多層体を包装容器の全体又は一部に含むものである。本実施形態の酸素吸収性多層容器は、容器内の酸素を吸収して、容器外から侵入する酸素がわずかでもある場合にはこの侵入した酸素をも吸収して、保存する内容物品(被保存物)の酸素による変質等を防止することができる。
本実施形態の酸素吸収性多層容器の形状は特に限定されず、収納、保存する物品に応じて適宜設定することができる。例えば、上記のフィルム状或いはシート状の酸素吸収性多層体を製袋することで、三方シール平袋、スタンディングパウチ、ガセット包装袋、ピロー包装袋、主室と副室とからなり主室と副室との間に易剥離壁を設けた多室パウチ、シュリンクフィルム包装等とすることができる。また、熱成形を施すことで、任意の形状の容器にすることもできる。
より具体的には、上記のフィルム状或いはシート状の酸素吸収性多層体を、真空成形、圧空成形、プラグアシスト成形等の方法で成形することにより、トレイ、カップ、ボトル、チューブ、PTP(プレス・スルー・パック)等の所定の形状の酸素吸収性多層容器を作製することができる。また、射出機を用い、溶融した樹脂を、多層多重ダイスを通して射出金型中に共射出または逐次射出することによって所定の形状の多層容器に一挙に成形することもできる。
なお、フランジ部を有する熱成形容器を作製する場合には、そのフランジ部に易剥離機能を付与する特殊加工を施してもよい。また、上記の酸素吸収性多層体を容器の蓋材、トップシール等の部材として用いることで、これらの容器に酸素吸収機能を付与することができる。
本実施形態の酸素吸収性多層体及び該多層体を含む酸素吸収性多層容器を使用するにあたり、エネルギー線を照射して、酸素吸収反応の開始を促進したり、酸素吸収速度を高めたりすることができる。エネルギー線としては、例えば、可視光線、紫外線、X線、電子線、γ線等を利用可能である。照射エネルギー量は、用いるエネルギー線の種類に応じて、適宜選択することができる。
本実施形態の酸素吸収性多層体及び該多層体を含む酸素吸収性多層容器は、酸素吸収に水分を必須としない、換言すれば被保存物の水分の有無によらず酸素吸収することができるため、被保存物の種類を問わず幅広い用途で使用することができる。とりわけ、酸素吸収後の臭気の発生がないので、例えば、食品、調理食品、飲料、健康食品、医薬品等において特に好適に用いることができる。すなわち、本実施形態の酸素吸収性多層体及び該多層体を含む酸素吸収性多層容器は、低湿度から高湿度までの広範な湿度条件下(相対湿度0%〜100%)での酸素吸収性能に優れ、かつ内容物の風味保持性に優れるため、種々の物品の包装に適している。しかも、本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物は、従来の鉄粉を使用した酸素吸収性樹脂組成物とは異なり、鉄の存在のため保存できない被保存物(例えばアルコール飲料や炭酸飲料等)に好適に用いることができる。
被保存物の具体例としては、牛乳、ジュース、コーヒー、茶類、アルコール飲料等の飲料;ソース、醤油、めんつゆ、ドレッシング等の液体調味料;スープ、シチュー、カレー等の調理食品;ジャム、マヨネーズ等のペースト状食品;ツナ、魚貝等の水産製品;チーズ、バター、卵等の乳加工品或いは卵加工品;肉、サラミ、ソーセージ、ハム等の畜肉加工品;にんじん、じゃがいも、アスパラ、しいたけ等の野菜類;フルーツ類;卵;麺類;米、精米等の米類;豆等の穀物類;米飯、赤飯、もち、米粥等の米加工食品或いは穀物加工食品;羊羹、プリン、ケーキ、饅頭等の菓子類;粉末調味料、粉末コーヒー、コーヒー豆、茶、乳幼児用粉末ミルク、乳幼児用調理食品、粉末ダイエット食品、介護調理食品、乾燥野菜、おかき、せんべい等の乾燥食品(水分活性の低い食品);接着剤、粘着剤、農薬、殺虫剤等の化学品;医薬品;ビタミン剤等の健康食品;ペットフード;化粧品、シャンプー、リンス、洗剤等の雑貨品;その他の種々の物品を挙げることができるが、これらに特に限定されない。特に、酸素存在下で劣化を起こしやすい被保存物、例えば、飲料ではビール、ワイン、日本酒、焼酎、果汁飲料、フルーツジュース、野菜ジュース、炭酸ソフトドリンク、茶類等、食品では果物、ナッツ、野菜、肉製品、幼児食品、コーヒー、ジャム、マヨネーズ、ケチャップ、食用油、ドレッシング、ソース類、佃煮類、乳製品類等、その他では医薬品、化粧品等の包装材に好適である。なお、水分活性とは、物品中の自由水含有量を示す尺度であって、0〜1の数字で示されるものであり、水分のない物品は0、純水は1となる。すなわち、ある物品の水分活性Awは、その物品を密封し平衡状態に到達した後の空間内の水蒸気圧をP、純水の水蒸気圧をP、同空間内の相対湿度をRH(%)、とした場合、
Aw=P/P=RH/100
と定義される。
なお、これらの被保存物の充填(包装)前後に、被保存物に適した形で、容器や被保存物の殺菌処理を施すことができる。殺菌方法としては、例えば、100℃以下での熱水処理、100℃以上の加圧熱水処理、130℃以上の超高温加熱処理等の加熱殺菌、紫外線、マイクロ波、ガンマ線等の電磁波殺菌、エチレンオキサイド等のガス処理、過酸化水素や次亜塩素酸等の薬剤殺菌等が挙げられる。
以下に実施例と比較例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、特に記載が無い限り、NMR測定は室温で行った。
[モノマー合成例]
(合成例1)
内容積18Lのオートクレーブに、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸ジメチル2.20kg、2−プロパノール11.0kg、5%パラジウムを活性炭に担持させた触媒350g(50wt%含水品)を仕込んだ。次いで、オートクレーブ内の空気を窒素と置換し、さらに窒素を水素と置換した後、オートクレーブ内の圧力が0.8MPaとなるまで水素を供給した。次に、撹拌機を起動し、回転速度を500rpmに調整し、30分かけて内温を100℃まで上げた後、さらに水素を供給し圧力1MPaとした。その後、反応の進行による圧力低下に応じ、1MPaを維持するよう水素の供給を続けた。7時間後に圧力低下が無くなったので、オートクレーブを冷却し、未反応の残存水素を放出した後、オートクレーブから反応液を取り出した。反応液を濾過し、触媒を除去した後、分離濾液から2−プロパノールをエバポレーターで蒸発させた。得られた粗生成物に、2−プロパノールを4.40kg加え、再結晶により精製し、テトラリン−2,6−ジカルボン酸ジメチルを80%の収率で得た。尚、NMRの分析結果は下記の通りである。1H‐NMR(400MHz CDCl3)δ7.76-7.96(2H m)、7.15(1H d)、3.89(3H s)、3.70(3H s)、2.70-3.09(5H m)、1.80-1.95(1H m)。
次いで、10Lフラスコに、上記で得たテトラリン−2,6−ジカルボン酸ジメチル1.00kg、16wt%エタノール水溶液8.00kg、水酸化ナトリウム360gを添加し、80℃で4時間撹拌し、加水分解した。その後、pHが7になるまで36%塩酸を加え、析出したテトラリン−2,6−ジカルボン酸を濾過により分離後、真空乾燥し、90%の収率で得た。尚、NMRの分析結果は下記の通りである。1H‐NMR(400MHz ((DC)S=O)δ12.41-12.75(2H br)、7.65(2H m)、7.23(1H d)、3.70(3H s)、2.60-3.45(5H m)、2.05-2.13(1H m)、1.70-1.79(1H m)。
[ポリマー製造例]
(製造例1)
温度計、圧力計、窒素導入口、放圧口を備えた2Lオートクレーブに、合成例1で得たテトラリン−2,6−ジカルボン酸171.8g(780mmol)、ドデカメチレンジアミン156.3g(780mmol)、蒸留水190gを仕込み、容器内を窒素置換した。2時間かけて220℃まで昇温し、圧力2MPaGで2時間保持した。その後、1時間かけて320℃まで昇温するとともに、その昇温の間に圧力を常圧まで下げ、30分間、320℃、常圧で保持した後に冷却することでテトラリン環含有ポリアミド化合物(1)を得た。得られたポリアミド化合物(1)のガラス転移温度と融点をDSCにより測定を行った結果、ガラス転移温度は111℃、融点は262℃であった。また、相対粘度は3.74であった。仕込み組成を表1に示す。
(製造例2)
製造例1と同様のオートクレーブに、合成例1で得たテトラリン−2,6−ジカルボン酸116.4g(529mmol)、アゼライン酸24.8g(132mmol)、ドデカメチレンジアミン132.4g(661mmol)、蒸留水120gを仕込み、製造例1と同様の方法でテトラリン環含有ポリアミド化合物(2)を合成した。ポリアミド化合物(2)のガラス転移温度は94℃、融点は246℃、相対粘度は3.5であった。仕込み組成を表1に示す。
(製造例3)
製造例1と同様のオートクレーブに、合成例1で得たテトラリン−2,6−ジカルボン酸151.1g(686mmol)、セバシン酸138.8g(686mmol)、ヘキサメチレンジアミン159.5g(1372mmol)、蒸留水120gを仕込み、製造例1と同様の方法でテトラリン環含有ポリアミド化合物(3)を合成した。ポリアミド化合物(3)のガラス転移温度は87℃、融点は250℃、相対粘度は2.6であった。仕込み組成を表1に示す。
(製造例4)
製造例1と同様のオートクレーブに、合成例1で得たテトラリン−2,6−ジカルボン酸112.2g(510mmol)、ヘキサメチレンジアミン59.3g(509mmol)、ε−カプロラクタム115.4g(1020mmol)、蒸留水120gを仕込み、製造例1と同様の方法でテトラリン環含有ポリアミド化合物(4)を合成した。ポリアミド化合物(4)のガラス転移温度は96℃、融点は219℃、相対粘度は2.4であった。仕込み組成を表1に示す。
Figure 0005974872
(実施例1)
ポリアミド化合物(1)100質量部に対し、ステアリン酸コバルト(II)をコバルト量が0.05質量部となるようドライブレンドして得られた混合物を、押出機、Tダイ、冷却ロール、巻き取り機等を備えた単層フィルム製造装置を用い、厚み120μmのフィルムを製造した。
次いで、バッチ式の2軸延伸機(東洋精機株式会社製、センターストレッチ式二軸延伸機)を用いて、加熱温度150℃、延伸速度2000mm/min、熱固定温度200℃、熱固定時間30秒にて、縦2倍、横2倍に同時2軸延伸することで、厚み30μmの2軸延伸フィルムを作製した。得られたフィルムの両面をコロナ放電処理することで、酸素吸収性フィルム(OA1)を作製した。
次に、ウレタン系ドライラミネート用接着剤(三井化学株式会社製、商品名:タケラックA505/タケネートA20)を用いて、シリカ蒸着PETフィルム(三菱樹脂株式会社製、商品名:テックバリアTXR)と、直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(三井化学東セロ株式会社製、商品名:T.U.X FC−S、以下「LLDPE」とも表記する。)とをドライラミネーターにて積層して、シリカ蒸着PETフィルム(12μm)/接着剤(3μm)/OA1(30μm)/接着剤(3μm)/LLDPE(40μm)の酸素吸収性多層体からなる酸素吸収性多層フィルムを得た。
得られた酸素吸収性多層フィルムを用いて、そのLLDPE層側を内面にして10cm×20cmの三方シール袋を作製し、この三方シール袋内にビタミンC錠剤を100g充填した後に、密封した。このようにして得られた密封袋を、40℃・50%RH下にて暗所保存した。そして、7日保存後と2ヶ月保存後の袋内酸素濃度の測定を行った。また、2ヶ月保存後の密封袋を開封し、ビタミンC錠剤の外観及び袋内の臭気確認を行った。さらに、保存試験前及び6ヶ月保存後のシール強度を測定した。これらの結果を表2に示す。
(実施例2)
ポリアミド化合物(1)をポリアミド化合物(2)とした以外は、実施例1と同様にして酸素吸収性多層フィルムを得た後、三方シール袋を作製して、実施例1と同様の保存試験を実施した。これらの結果を表2に示す。
(実施例3)
ポリアミド化合物(1)をポリアミド化合物(3)とした以外は、実施例1と同様にして酸素吸収性多層フィルムを得た後、三方シール袋を作製して、実施例1と同様の保存試験を実施した。これらの結果を表2に示す。
(実施例4)
ポリアミド化合物(1)をポリアミド化合物(4)とした以外は、実施例1と同様にして酸素吸収性多層フィルムを得た後、三方シール袋を作製して、実施例1と同様の保存試験を実施した。これらの結果を表2に示す。
(比較例1)
ポリアミド化合物(1)をN−MXD6(三菱ガス化学株式会社製、商品名:MXナイロン S6007)とした以外は、実施例1と同様にして酸素吸収性多層フィルムを得た後、三方シール袋を作製して、実施例1と同様の保存試験を実施した。これらの結果を表2に示す。
(比較例2)
ポリアミド化合物(1)をナイロン6(宇部興産株式会社製、商品名:UBEナイロン6 1022B)とし、ステアリン酸コバルトを添加せずに単層延伸フィルムとした以外は、実施例1と同様にして多層フィルムを得た後、三方シール袋を作製して、実施例1と同様の保存試験を実施した。これらの結果を表2に示す。
Figure 0005974872
実施例1〜4から明らかなように、本発明の酸素吸収性多層体は、低湿度下において良好な酸素吸収性能を示し、酸素吸収後も強度を保持していた。
(実施例5)
直径37mmのスクリューを2本有する二軸押出機を使用し、溶融したポリアミド化合物(1)100重量部に対し、ステアリン酸コバルト(II)をコバルト量が0.05質量部となるよう添加し、酸素吸収性樹脂組成物を得た。
次いで、3台の押出機、フィードブロック、Tダイ、冷却ロール、巻き取り機等を備えた多層フィルム製造装置を用い、1台目及び3台目の押出機からナイロン6(宇部興産株式会社製、商品名:UBEナイロン6 1022B)を、2台目の押出機から上記の酸素吸収性樹脂組成物をそれぞれ押し出し、フィードブロックを介してナイロン6(90μm)/酸素吸収性樹脂組成物(180μm)/ナイロン6(90μm)の2種3層構造の多層フィルムを製造した。
次いで、得られた多層フィルムを、バッチ式の2軸延伸機(東洋精機株式会社製、センターストレッチ式二軸延伸機)を用いて、加熱温度150℃、延伸速度2000mm/min、熱固定温度190℃、熱固定時間30秒にて、縦3倍、横3倍に同時2軸延伸することで、厚み30μmの2軸延伸フィルムを作製した。得られたフィルムの両面をコロナ放電処理することで、酸素吸収性フィルム(OA2)を作製した。なお、延伸後の各層の厚みは、10/20/10(μm)となった。
次いで、酸素吸収性フィルム(OA2)を使用し、実施例1と同様にして、シリカ蒸着PETフィルム(12μm)/接着剤(3μm)/OA2(40μm)/接着剤(3μm)/LLDPE(40)の構成の酸素吸収性多層フィルムを得た後、三方シール袋を作製した。作製した三方シール袋にパイナップル80gとフルーツシラップ液80gを充填後、ヘッドスペース空気量が5ccとなるよう密封し、90℃・30分のボイル処理を行った後に、40℃・80%RH下に暗所保存した。7日後と2ヶ月保存後の袋内酸素濃度の測定を行った。また、2ヶ月保存後の密封袋を開封し、パイナップルの風味及び袋内の臭気を確認した。さらに、保存試験前及び6ヶ月後のシール強度を測定した。これらの結果を表3に示す。
(実施例6)
ポリアミド化合物(1)をポリアミド化合物(2)とした以外は、実施例5と同様にして酸素吸収性多層フィルムを得た後、三方シール袋を作製して、実施例5と同様の保存試験を実施した。これらの結果を表3に示す。
(実施例7)
ポリアミド化合物(1)をポリアミド化合物(3)とした以外は、実施例5と同様にして酸素吸収性多層フィルムを得た後、三方シール袋を作製して、実施例5と同様の保存試験を実施した。これらの結果を表3に示す。
(実施例8)
ポリアミド化合物(1)をポリアミド化合物(4)とした以外は、実施例5と同様にして酸素吸収性多層フィルムを得た後、三方シール袋を作製して、実施例5と同様の保存試験を実施した。これらの結果を表3に示す。
(比較例3)
ポリアミド化合物(1)をN−MXD6とした以外は、実施例5と同様にして酸素吸収性多層フィルムを得た後、三方シール袋を作製して、実施例5と同様の保存試験を実施した。これらの結果を表3に示す。
(比較例4)
ポリアミド化合物(1)をナイロン6とし、ステアリン酸コバルトを添加せずに単層延伸フィルムとした以外は、以外は、実施例5と同様にして多層フィルムを得た後、三方シール袋を作製して、実施例5と同様の保存試験を実施した。これらの結果を表3に示す。
Figure 0005974872
実施例5〜8から明らかなように、本発明の酸素吸収性多層体は、高湿度下において良好な酸素吸収性能を示し、酸素吸収後も強度を保持していた。

Claims (4)

  1. 熱可塑性樹脂を含有するシーラント層、ポリアミド化合物及び遷移金属触媒を含有する酸素吸収性樹脂組成物からなる酸素吸収層、及びガスバリア性物質を含有するガスバリア層の少なくとも3層をこの順に有する酸素吸収性多層体であって、
    前記ポリアミド化合物が、下記式(3)〜(6)で表される構成単位;
    Figure 0005974872
    からなる群より選択される少なくとも1つのテトラリン環を有する構成単位を含有する、酸素吸収性多層体。
  2. 前記遷移金属触媒が、マンガン、鉄、コバルト、ニッケルおよび銅からなる群より選択される少なくとも1種以上の遷移金属を含むものである、請求項1に記載の酸素吸収性多層体。
  3. 前記遷移金属触媒が、前記ポリアミド化合物100質量部に対し、遷移金属量として0.001〜10質量部含まれる、請求項1または2に記載の酸素吸収性多層体。
  4. 請求項1〜のいずれか一項に記載の酸素吸収性多層体を含む、酸素吸収性多層容器。
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