JP5974650B2 - 結晶粒異方性判定方法 - Google Patents

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Description

本発明は結晶粒異方性を生じたチタン合金等を不良品として排除する際に有用な、超音波を使用した結晶粒異方性判定方法に関する。
例えばα−β型チタン合金の製造時に成分や工程のバラツキによって過度にα粒、β粒が細長く延びる等の結晶粒異方性を生じることがあり、これは疲労強度の低下等を招くため不良品として排除する必要がある。
一方、超音波を使用して結晶粒径を検出する方法が特許文献1,2等に開示されている。例えば特許文献1では、被測定材を伝播した共振周波数における超音波のエネルギー値とこれ以外の周波数の超音波のエネルギー値の比より結晶粒径を算出している。また、特許文献2では、複数の周波数の超音波を被測定材内に伝播させ、特定の周波数における超音波の減衰定数と当該周波数とから結晶粒径を算出している。
特開2011-169872 特開平8-43363
ところが、結晶粒異方性を検出する方法は従来提案されておらず、その解決が望まれていた。
そこで、本発明はこのような要請に鑑みてなされたもので、超音波を利用して簡易かつ確実に結晶粒異方性を判定でき、併せて結晶粒径の検出も可能な結晶粒異方性判定方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本第1発明では、被測定材中に超音波を発振し、受振された反射波のうちから所定時間範囲の反射波を取り出して、取り出した反射波の周波数分析を行い、全周波数の反射波パワーの合計値に対する所定周波数以上の反射波パワーの合計値の割合に基づいて前記被測定材の結晶粒が細長く延びる結晶粒異方性を生じている否かを判定することを特徴としている。
本第1発明において、被測定材内部の結晶粒に異方性を生じていると高調波や波形の歪みが生じ、この結果、全周波数の反射波パワーの合計値に対する所定周波数以上の反射波パワーの合計値の割合が減少する。そこで、この割合が一定値以下になったときに結晶粒の異方性を生じているものと判定する。
本第2発明では、前記全周波数の反射波パワーの合計値より前記被測定材の結晶粒径を検出する。
本第2発明において、結晶粒界からの反射波にはレイリー散乱による後方散乱成分が含まれているから、全周波数の反射波パワーの合計値は結晶粒径の6乗に比例する。したがって、全周波数の反射波パワーの合計値より結晶粒径を検出することができる。
以上のように本発明の結晶粒異方性判定方法によれば、超音波を利用して簡易かつ確実に結晶粒の異方性を判定できるとともに、結晶粒径の検出も可能である。
本発明方法を実施する装置の構成を示す図である。 超音波反射波の時間変化を示す図である。 超音波反射波の要部の時間変化を示す図である。 超音波反射波のパワースペクトラムを示す図である。 全周波数の反射波パワーの合計値と15MHz以上の高調波反射波パワーの合計値の関係を示す図である。
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
本発明方法を実施するに当たっては図1に示すように、被測定材たるα−β型チタン合金の丸棒材1の側面に超音波探触子2を接触させる。超音波探触子2は信号処理装置3に接続されている。超音波探触子2からは丸棒材1の内部に超音波(例えば周波数10MHz)が発振され、内部からの反射波が再び超音波探触子2で受振される。受振信号の一例を図2に示す。
受振信号には初期に丸棒材1表面からの反射波による大きな信号が現れ、その後、丸棒材1の径に応じた一定時間の後に、丸棒材1の底面からの反射波による大きな信号が現れる。この間の丸棒材1の内部からの反射波による信号は、丸棒材1内部に疵等が無い場合には図2に示すように充分小さな値を維持する。
信号処理装置3は、丸棒材1の内部からの反射波による信号部分のみを取り出し(図2のX領域、図3)、この信号部分に対して高速フーリエ変換(FFT)処理を行う。FFT処理によって、上記X領域の信号部分についてのパワースペクトルが得られる。これを図4に示す。
図4より明らかなように、基本周波数10MHz近傍の周波数成分以外に、15MHz以上の高調波成分が生じている。これはレイリー散乱による基本周波数付近の反射波に加えて、異なる剛性を有するα粒とβ粒の界面で高調反射波や反射波波形の歪みが発生することによる。なお、図4の縦軸のパワー値は入力信号の2乗に比例するものである。
そこで、上記パワースペクトルにおける全周波数に亘る反射波のパワー合計値を横軸にとるとともに、15MHz以上の反射波の高調波成分のパワー合計値を縦軸にとって、複数の実験値をプロットすると、結晶粒の異方性を生じていない丸棒材1については図5の黒三角で示すように領域Yの中に全てがプロットされる。領域Yにプロットされた各実験値の、全周波数に亘る反射波のパワー合計値に対する反射波高調波成分のパワー合計値の割合は5〜8%の範囲であった。
これに対して、丸棒材1の内部で結晶粒が細長く延びる異方性を生じている場合には、丸棒材1内に超音波を発振した時の全周波数に亘る反射波のパワー合計値と15MHz以上の反射波高調波成分のパワー合計値の対について複数の実験値を図5中にプロットすると、白三角で示すように、上記領域Yとは重ならない下方の領域Zの中に全てがプロットされる。そして、これらプロットされた各実験値の、全周波数に亘る反射波のパワー合計値に対する反射波高調波成分のパワー合計値の割合は1〜4%の範囲であった。これは、α粒やβ粒、特にβ粒が細長く延びる等の異方性を生じると、α粒に比して相対的にヤング率の低いβ粒の幅が変化し、これに応じて高調波成分や波形歪み成分が変化するからである。
このようにして、丸棒材1内に超音波を発振し、受振された反射波について、全周波数に亘る反射波のパワー合計値に対する反射波高調波成分のパワー合計値の割合を算出することによって、丸棒材1内部の結晶粒が異方性を生じているか否かを簡易かつ確実に判定して不良品を排除することができる。
なお、結晶粒界からの反射波にはレイリー散乱による後方散乱成分が含まれているから、全周波数の反射波パワーの合計値は結晶粒子径の6乗と比例関係がある。したがって、全周波数に亘る反射波のパワー合計値より丸棒材内部の結晶粒子径を正確に知ることができる。
上記実施形態では被測定材として丸棒材を使用したが、これに限られるものではない。また、α−β型チタン合金材としたが、これには限られない。
なお、FFTに代えて短時間フーリエ変換(STFT)によってパワー値を得るようにすれば、被測定材の深さ方向の各部の結晶粒異方性の有無や結晶粒径を知ることができる。
1…丸棒材(被測定材)、2…超音波探触子、3…信号処理装置。

Claims (2)

  1. 被測定材中に超音波を発振し、受振された反射波のうちから所定時間範囲の反射波を取り出して、取り出した反射波の周波数分析を行い、全周波数の反射波パワーの合計値に対する所定周波数以上の反射波パワーの合計値の割合に基づいて前記被測定材の結晶粒が細長く延びる結晶粒異方性を生じている否かを判定することを特徴とする結晶粒異方性判定方法。
  2. 前記全周波数の反射波パワーの合計値より前記被測定材の結晶粒径を検出する請求項1に記載の結晶粒異方性判定方法。
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