JP5973368B2 - 空間投影装置、空間投影方法及び空間投影プログラム - Google Patents

空間投影装置、空間投影方法及び空間投影プログラム Download PDF

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Description

本発明は、画像を空間に投影する空間投影装置、空間投影方法及び空間投影プログラムに関する。
プロジェクタは極めてフレキシブルな画像出力デバイスであり、投影仕様の範囲内であれば個人スペース、会議ホール、巨大パブリックビューイング、ビルの壁などに合わせて自由サイズの映像表示を提供することができる。プロジェクタを使って平面スクリーンではない任意の構造物(以下、被写体と称する)へ投影するとき、被写体の形状を事前に計測して、その形状に合わせて所定画像が空間歪みの無いように投影する技術は、プロジェクション・マッピング(projection mapping)として知られている。任意スケール表示の利点を活かして、プロジェクション・マッピングはエンターテインメント志向のイベントやイルミネーションによる広告表示などに利用されている。
プロジェクション・マッピングでは、所定画像を正確に投影するために、目視確認と手動操作によって1画素単位での位置合わせを行う場合がある。これに対して、プロジェクタ投影の状態をカメラによって把握し、所定画像を指定された位置に投影するために、プロジェクタ・カメラシステムが利用されている。プロジェクタ・カメラシステムは、プロジェクタとカメラが連動して、カメラからのフィードバック画像に応じて、プロジェクタから投影出力する画像を処理する。通常、平面なスクリーンにプロジェクション・マッピングする場合には、プロジェクタ画面上の点とカメラ画面上の点を、キャリブレーション作業で得た平面射影変換(plane-homography)を使い、スクリーン面を介して対応付ける。この対応関係を利用して、所定画像をスクリーン面の決められた場所に投影する。
もし、被写体の空間構造に凹凸があったり曲がった構造である場合には、その空間構造を事前に把握しなければならない。例えば、レーザ計測を利用して、被写体の空間構造、あるいは凹凸形状を得る。その形状に合わせて所定画像を幾何的に変形させて、平面スクリーンと同様の状態で指定個所に所定画像を投影する(例えば、非特許文献1参照)。あるいは、構造光(structured light)と呼ばれる幾何パターンをプロジェクタから投影し、カメラで観測した歪み画像から空間構造の凹凸形状あるいは奥行きを計測する方式も利用できる。このように、従来技術は、外界または被写体の空間構造をレーザ計測またはプロジェクタ・カメラシステムを利用して空間構造を把握し、その凹凸形状または奥行きに合わせて指定個所へ所定画像を投影する。
これに対して、外界の空間構造を計測せずに、ライト・トランスポートを利用したプロジェクション・マッピングの技術が公開されている(例えば、非特許文献2参照)。ライト・トランスポート(light transport)とは、全てのプロジェクタ画素と全てのカメラ画素間の対応関係を表現したデータであり、図15に示すようにプロジェクタ画素の1点1点を順番に点灯させ、その画素からの光が光学的反射や屈折によって結び付くカメラ画素を検出することによって得られる。図15は、未校正なプロジェクタ・カメラシステムを使ったLTMの測定を示す図である。プロジェクタ画面の画素数がu×v画素であるとき、各点光源のカメラ応答の画像Cjを列ベクトル化して並べた行列Tはuv×pq画素の巨大、かつ、スパースな行列であり、ライト・トランスポート行列(light transport matrix)と呼ばれる。非特許文献2では、この行列の転置Tを利用して、プロジェクタからの視点から観測されるであろう仮想画像(dual photography)を人工的に生成する方法が公知である。
一般的に、レーザあるいは構造光を使った3次元形状計測では一次反射光のみを受光することを前提としている。このため、被写体の構造によって発生する光学的な多重反射や屈折を扱うことができない。これに対して、ライト・トランスポートは一次反射光と多重反射や屈折光を区別することなく扱うことできるため、全てのプロジェクタ画素と全てのカメラ画素間の対応付けに基づいた高精度なプロジェクション・マッピングを可能とする。なお、以降では、ライト・トランスポートをLT、ライト・トランスポート行列をLTMと称する。
J. Shimamura and K. Arakawa:"Location-Aware Projection with Robust 3-D Viewing Point Detection and Fast Image Deformation", Proc. ACM International Conference on Multimedia, pp.296--299, 2004. P. Sen, B. Chen, G. Garg, S.R. Marschner, M. Horowitz, M. Levoy, and H.P.A. Lensch: "Dual Photography",ACM Transactions on Graphics, vol.23, no.3, pp.745--755, 2005.
LTを利用したプロジェクション・マッピングは、レーザあるいは構造光による3次元計測に頼らずに、任意形状に対して所定画像を投影することができる。ただし、そのLTを計測するための作業に膨大な時間がかかるという問題がある。図15に示したように、プロジェクタ画面がp×q画素であるとき、各画素を点光源として使い、カメラ応答の画素を検出する作業を順番に繰り返すと、単純にp×q枚の画像を観測する必要がある。例えば、1000×1000画素の画像を点光源として使うと、1000000枚の画像を処理してLTMを生成することになり、計算機コストが高くその処理に多くの時間がかかるという問題がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、プロジェクタ・カメラシステムの動作を活用したプロジェクション・マッピングにおいて、面倒な計測作業を回避し、できるだけ少ないカメラ応答画像から効率的にライト・トランスポート行列(LTM)を得ることができる空間投影装置、空間投影方法及び空間投影プログラムを提供することを目的とする。
本発明は、2×2(nは自然数)の画素を有するプロジェクタから被写体に投影した複数の照明パターンをカメラで観測した観測画像からプロジェクタ画素とカメラ画素間の対応関係を表現したライト・トランスポート行列を算出する空間投影装置であって、前記プロジェクタの画素をブロックサイズが2n−i×2n−iである2 ×2 個のレイヤiのブロックjに分割し(iは1以上n以下の整数、jは1以上4以下の整数)、レイヤiの各ブロックはレイヤi−1の4種のブロックを1個ずつ含むように前記4n枚の照明パターンを生成し、レイヤ1から順にすべての照明パターンを前記被写体に投影する照明パターン生成・投影手段と、前記カメラで観測した4n枚の観測画像の背景差分から前記カメラの画素ごとに対応する応答画素を特定した復号テーブルを生成する照明パターン復号手段と、前記復号テーブルを用いて前記カメラの画素に対応する前記プロジェクタの画素を求めることにより前記ライト・トランスポート行列を算出するライト・トランスポート行列算出手段とを備えることを特徴とする。
本発明は、前記2×2の画素を有するプロジェクタに代えて、p×q(p、qは、自然数)の画素を有するプロジェクタを用いる場合の前記nは、2>max(p,q)を満たす最小のnであることを特徴とする。
本発明は、前記照明パターン復号手段は、所定の閾値より大きい画素値を持つ画素のみを前記応答画素として特定することを特徴とする。
本発明は、前記照明パターン復号手段は、各レイヤにおける4つの照明パターンのうち最大応答を得た応答画素を特定することにより、各レイヤにおける4つの照明パターンにおいて1回だけ応答有と判定した前記復号テーブルを生成することを特徴とする。
本発明は、前記ライト・トランスポート行列を用いて入力画像を前記被写体に投影するライト・トランスポート操作手段とをさらに備えることを特徴とする。
本発明は、2×2(nは自然数)の画素を有するプロジェクタから被写体に投影した複数の照明パターンをカメラで観測した観測画像からプロジェクタ画素とカメラ画素間の対応関係を表現したライト・トランスポート行列を算出する空間投影装置が行う空間投影方法であって、前記プロジェクタの画素をブロックサイズが2n−i×2n−iである2 ×2 個のレイヤiのブロックjに分割し(iは1以上n以下の整数、jは1以上4以下の整数)、レイヤiの各ブロックはレイヤi−1の4種のブロックを1個ずつ含むように前記4n枚の照明パターンを生成し、レイヤ1から順にすべての照明パターンを前記被写体に投影する照明パターン生成・投影ステップと、前記カメラで観測した4n枚の観測画像の背景差分から前記カメラの画素ごとに対応する応答画素を特定した復号テーブルを生成する照明パターン復号ステップと、前記復号テーブルを用いて前記カメラの画素に対応する前記プロジェクタの画素を求めることにより前記ライト・トランスポート行列を算出するライト・トランスポート行列算出ステップとを有することを特徴とする。
本発明は、コンピュータを、前記空間投影装置として機能させるための空間投影プログラムである。
本発明によれば、プロジェクタ・カメラシステムを使って、少ないカメラ応答画像から効率的に凹凸や曲がった形状の空間構造のライト・トランスポート行列を獲得することができる。
本発明の第1実施形態の構成を示すブロック図である。 図1に示す同期制御部31の処理動作をフローチャートである。 図1に示す符号化照明生成部32の処理動作を示すフローチャートである。 プロジェクタ1の画面を8×8画素とした例を示す図である。 プロジェクタ画面がイレギュラーなサイズである場合を示す図である。 図1に示す照明パターン復号部33の処理動作を示すフローチャートである。 図7は、復号テーブルの例を示す図である。 図1に示すLT獲得部34の処理動作を示すフローチャートである。 スパース表現のLTMを示す図である。 本発明の第2実施形態の構成を示すブロック図である。 図10に示すLT操作部35の処理動作を示すフローチャートである。 本発明の第3実施形態の構成を示すブロック図である。 図12に示す画像送信部3bが備える同期制御部37の処理動作を示すフローチャートである。 図12に示す画像受信部3aが備える同期制御部31の処理動作を示すフローチャートである。 未校正なプロジェクタ・カメラシステムを使ったLTMの測定を示す図である。
<第1実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態による空間投影装置を説明する。図1は同実施形態の構成を示すブロック図である。この図に示す空間投影装置3は、1台のプロジェクタ1と1台のカメラ2のプロジェクタ・カメラシステムを使用したものである。本実施形態は、プロジェクタ1とカメラ2のハンドリングを制御するための同期制御部31、LTを得るために符号化された照明パターンを生成する符号化照明生成部32、カメラ2から得た観測画像から照明パターンに応答した画素を検出して、元の照明パターンに復号する照明パターン復号部33、並びに、その照明パターンの系列からLTMを算出するLT獲得部34から構成される。
この構成において、プロジェクタ1、カメラ2は必ずしも構成要素として接続している必要はなく、処理に必要なデータを取得すればよく、同期制御部31、符号化照明生成部32、照明パターン復号部33、LT獲得部34からそれぞれの矢印へのデータの流れは、ハードディスク装置、RAID装置、CD−ROMなどの記録媒体を利用する、または、ネットワークを介してリモートなデータ資源を利用する形態でもどちらでもよい。
次に、図2を参照して、図1に示す同期制御部31の処理動作を説明する。図2は図1に示す同期制御部31の処理動作をフローチャートである。まず、処理を開始すると、同期制御部31は、符号化照明生成部32との連携によりプロジェクタ1からの照明を出力する準備をチェックした(ステップS1)後、プロジェクタ1から照明パターンを投影するためのフレーム番号fを同期信号として送出する(ステップS2)。フレーム番号fは、処理開始と同時にf=0と初期化され、符号化照明生成部32から照明パターンを投影するたびに1ずつカウントされる値である。
次に、同期制御部31は、照明パターン復号部33との連携によりカメラ2により画像観測の準備をチェックして(ステップS3)、カメラ2から画像を取得する命令(画像観測の命令)として、そのトリガーを照明パターン復号部33へ転送する(ステップS4)。同期制御部31は、符号化照明生成部32から全ての照明パターンを投影した時点で処理停止とし、その停止命令があるまで、フレーム番号をカウントしながらこの処理を続ける(ステップS5)。
次に、図3を参照して、図1に示す符号化照明生成部32の処理動作を説明する。図3は、図1に示す符号化照明生成部32の処理動作を示すフローチャートである。まず、符号化照明生成部32は、同期制御部31から初期化されたフレーム番号を受信する(ステップS11)。フレーム番号は照明する画像の管理番号となり、時系列番号を示すように初期値f=0から付与され、カメラ2で画像を観測するたびに同期制御部31においてf←f+1にカウントされる。
図4はプロジェクタ1の画面を8×8画素とした簡単な例である。この例を参照して処理内容を説明する。レイヤ1ではブロックA、B、C、Dの画素領域はそれぞれ4×4画素である。レイヤ2では区分けされた領域は2×2画素単位でラベル付けされており、レイヤ3では1画素単位でラベル付けされている。
符号化照明生成部32は、同期制御部31からフレーム番号fを受信すると、フレーム番号fを値4で割って商を算出して、フレーム番号の判定を行い(ステップS12)、レイヤが変更になったか否かを判定する(ステップS13)。値4はレイヤがA、B、C、Dの4つのブロックに分けされていることに起因する数字であり、ブロック種類に応じて変更可能である。図4では、最初にレイヤ1を使う。符号化照明生成部32は、フレーム番号に応じてその剰余が0のとき、レイヤ1→レイヤ2、あるいはレイヤ2→レイヤ3にレイヤを変更する(ステップS14)。レイヤ変更がない場合、すなわち、その剰余が0でなければ、レイヤを変更しない(ステップS13でNoの場合)。
次に、符号化照明生成部32は、画素割当の変更を行う(ステップS15)。画素割当の変更では、ブロックA、B、C、Dで割り当てた画素をフレーム番号に応じて点灯させる。図4では、フレーム番号fを4で割ったときの余りが0のときはブロックAの画素領域を照明とし、フレーム番号fを4で割ったときの余りが1のときはブロックBの画素領域を照明とし、フレーム番号fを4で割ったときの余りが2のときはブロックCの画素領域を照明とし、フレーム番号fを4で割ったときの余りが3のときはブロックDの画素領域を照明とする。続いて、符号化照明生成部32は、点灯画素に照明処理を行う(ステップS16)。点灯画素による照明では、点灯させる画素が決まった後、プロジェクタ画面全体へ解像度を変換して、その照明パターンの画像をプロジェクタ1へ出力する。これにより、その照明パターンが被写体に投影される。そして、符号化照明生成部32は、その停止命令があるまで、この処理を続ける(ステップS17)。
以上説明したように、時系列順ではフレーム番号f=0,1,2,3のとき、レイヤ1においてそれぞれブロックA、B、C、Dの画素領域を、フレーム番号f=4,5,6,7のとき、レイヤ2においてそれぞれブロックA、B、C、Dの画素領域、フレーム番号f=8,9,10,11のとき、レイヤ3においてそれぞれブロックA、B、C、Dの画素領域をそれぞれ点灯させる。このように、フレーム番号に従って、レイヤのブロックA、B、C、Dの画素領域の順番に照明として点灯させて、被写体を照らす。一般的には、プロジェクタ画面が2×2(nは整数)画素のとき、本処理ではフレーム番号f=0,1,2,...,4n−1に従って、ブロックA、B、C、Dの照明パターンを使う。符号化照明生成部32はフレーム番号が4nになった時点で処理を停止する。
なお、プロジェクタ画面が2×2画素で表現できない場合、例えば、800×600画素の場合では、それを包含するできるだけ大きい2×2画素において、上記の処理を行う。この例では、1024×1024画素が包含する最大画素サイズなので、210×210画素として上記の照明パターンを生成する(図5参照)。図5は、プロジェクタ画面がイレギュラーなサイズである場合を示す図である。
800×600画素を超える画素領域では無効画素であるため値0を常時セットしておき、210×210画素において、各レイヤのブロックを照明とした符号パターンを生成する。これにより、任意サイズのプロジェクタ画面に対応して、照明符号パターンを生成する。
次に、図6参照して、図1に示す照明パターン復号部33の処理動作を説明する。図6は、図1に示す照明パターン復号部33の処理動作を示すフローチャートである。照明パターン復号部33は、同期制御部31から画像観測命令の同期信号が入力されると、画像を取得できる状態かのチェックを行い(ステップS21)、観測可能でなければ同期信号を待機し(ステップS22)、観測可能状態ならばカメラ2から観測画像を取得する(ステップS23)。
次に、照明パターン復号部33は、事前に保有しておいた背景画像の取り出しを行い(ステップS24)、この背景画像との背景差分を処理する(ステップS25)。背景画像とは、照明パターンが照明されていない状態、あるいは黒を投影したときの観測画像である。この背景差分において、蛍光灯などの環境光の元では画像雑音が多く混入するため、所定の閾値として例えば10階調に設定しておき(ステップS26)、この値より大きい画素をカメラ2の応答画素として検出する(ステップS27)。
符号化照明生成部32では、各レイヤにおいて4つのブロックの画素を順番に照明として使っているため、応答画素はその照明に対応して検出される。ただし、ブロックAとブロックBの境界付近に位置する画素では、ブロックAとブロックBからの双方の符号化照明に対して応答画素が検出される場合や、4つのブロック境界付近に位置する画素では、複数の符号化照明に対して応答画素が検出される場合がある。そこで、ここでは、各カメラ2の画素と1つの照明パターンと対応付ける。照明パターン復号部33は、符号化照明生成部32において同じレイヤにおいてブロックを切り替えながら照明パターンを投影したとき、各ブロックからの照明に対して最大の輝度値となる応答画素を特定する(ステップS28)。つまり、照明パターン復号部33は、同じカメラ2の画素が1つ以上の照明パターンに応答した場合は、最大応答を得たときの照明パターンとのLTを獲得する。この処理により、同期制御部31からのフレーム番号fに従って、各レイヤの4回の照明パターンにおいて1回だけ応答有りと判定する。ここで、最初のレイヤから最終レイヤにおいて、応答有りの場合を1、そうでない場合を0として、図7に示すの復号テーブルに書き込む(ステップS29)。以上の処理を処理停止の命令まで続け、全ての照明パターンから0と1のビット列を復号テーブルに書き込む(ステップS30)。
次に、図7に示す復号テーブルのビット列について説明する。レイヤ3の画素pはレイヤ1ではブロックA、レイヤ2ではブロックCに属するので、時系列の符号は「1000」「0010」「0100」になる。一方、レイヤ3の画素pはレイヤ1ではブロックC、レイヤ2ではブロックDに属するので、時系列の符号は「0010」「0001」「0010」になる。プロジェクタ画面が2×2画素を使うとき符号長は4nになり、プロジェクタ画面の画素ON/OFFの4nビットの符号パターンは全ての画素で異なる。復号テーブルでは、フレーム番号f=0からf=4n−1までの照明パターンに対して、各レイヤのどのブロックからの照明に対するカメラ応答画素かが記録されるため、プロジェクタ画面のどの画素からの光に応答したかが特定できるようになっている。
次に、図8を参照して、図1に示すLT獲得部34の処理動作を説明する。図8は、図1に示すLT獲得部34の処理動作を示すフローチャートである。LT獲得部34は照明パターン復号部33から出力された復号テーブル(図7参照)の符号化ビット列からカメラ2の画素と対応づけられたプロジェクタ1画素を算出し、LTMにおいて各座標を記録する。LT獲得部34は、図7に示す復号テーブルを入力すると(ステップS41)、そのテーブルの右端のコラムのカメラ2の座標を(X,Y)から(X,Y)の順に逐次読み出す。説明の都合上、座標(X,Y)が読み出されたときの処理動作を説明する。
図7の復号テーブルの横方向には、各カメラ座標の画素が応答した符号化系列が記録されている。座標(X,Y)では、「0010 0010 .... 0100」となっている。LT獲得部34は、この復号系列から、4ビットずつ取り出して符号系列の照合により各レイヤの照明ブロックを決定する(ステップS42)。レイヤ1の欄から「0010」と復号されているので、図4に示すのレイヤ1の例では”ブロックC”のプロジェクタ座標と特定される。
次に、LT獲得部34は、レイヤ2の欄から「0010」と復号されているので、図4に示すレイヤ2の例では右下隅の”ブロックC”のプロジェクタ座標をさらに特定する(ステップS43)。この処理をレイヤnまで続けることにより、各レイヤのブロックをチェックしてプロジェクタ座標を特定していく。図7の座標(X,Y)が、この処理を経て、プロジェクタ座標(X,Y)に辿り着いたとする。そのとき、LT獲得部34は、図9に示すように、全てのカメラ座標を縦方向に並べたLTMにおいて、カメラ座標(X,Y)と光学的に結び付いたプロジェクタ座標(X,Y)をカメラ座標(X,Y)の横方向に記録する(ステップS44)。この場合は1つのプロジェクタ座標が記録される。図9は、スパース表現のLTMを示す図である。そして、LT獲得部34は、全てのカメラ座標に対して対応するプロジェクタ座標を書き込み、処理を終了する(ステップS45)。
このように、図15に示した状況において、未校正なプロジェクタ・カメラシステムを使って、未知の任意形状の表面にプロジェクタ1からの照明を投影したとき、プロジェクタ画面の各座標から照明した光線とカメラ2の画面の各座標の応答を結び付けるLTを効率的に獲得することができる。この処理によれば、256×256=27+1×27+1画素のプロジェクタ画面を使うとき、LTMを得るために各画素を点光源とした場合は65536枚の観測画像を必要としたが、この例では僅か4×7=28枚の観測画像からLTMを得ることができる。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態による空間投影装置を説明する。図10は、第2実施形態の構成を示すブロック図である。この構成において、プロジェクタ1、カメラ2、画像データベース(DB)36は必ずしも構成要素として接続している必要はなく、処理に必要なデータを取得すればよく、同期制御部31、符号化照明生成部32、照明パターン復号部33、LT獲得部34、LT操作部35からそれぞれの矢印へのデータの流れは、ハードディスク装置、RAID装置、CD−ROMなどの記録媒体を利用する、または、ネットワークを介してリモートなデータ資源を利用する形態でもどちらでもよい。図10に示す空間投影装置3は、LT操作部35を除く他の処理部は図1に示すものと同じため、ここでは詳細な説明を省略する。
次に、図11を参照して、図10に示すLT操作部35の処理動作を説明する。図11は、図10に示すLT操作部35の処理動作を示すフローチャートである。まず、LT操作部35は、LT獲得部34において得たLTMを読み込む(ステップS51)。続いて、LT操作部35は、対応座標の抽出を行い、カメラ座標の所定領域に画像全体を射影されるように、平面射影変換を使ってカメラ座標と画像座標を相互に変換できるように設定する(ステップS52)。
次に、LT操作部35は、画像データベース36から取り出した各画像を、読み込んだLTMを使って被写体へ投影する(ステップS53)。投影する被写体の所定範囲に画像全体が投影されるとして、図9に示すLTMから逐次カメラ座標とそれと結び付くプロジェクタ座標を取り出す。
次に、LT操作部35は、輝度補正を行う(ステップS54)。輝度補正では、以下の原理を利用する。プロジェクタ1の応答は事前に入力輝度に対して線形的に輝度を出力する場合、カメラ輝度Cとプロジェクタ輝度Pは、(1)式の関係になる。
C=VP+F, ・・・(1)
行列Vはプロジェクタ1とカメラ2間の各チャネルの光学的関係に基づいて算出されるカラー混合行列(color mixing matrix)であり、Fはプロジェクタ1のブラックオフセット光を含む環境光を表す。
取り出したカメラ座標に該当する画像上の画素値をC,LTで結び付くプロジェクタ座標の輝度値をPとして、(1)式の関係式を利用する。この輝度補正では、所定の輝度をカメラ2で観測するために、(2)式により輝度を補正する。
P=V−1(C−F), ・・・(2)
次に、プロジェクタ1から出力するための画像バッファを用意する。その画像バッファの各座標はプロジェクタ座標と結び付けられている。LTMのカメラ座標と画像の輝度を補正した後、そのプロジェクタ座標に相当する画素値を補正値Pで埋める。これを全てのカメラ座標について処理して、補正画像を生成する(ステップS55、S56)。補正画像が生成できたら、プロジェクタ1へ出力して被写体へその画像を投影する。これにより、被写体の凹凸形状に対して、平面スクリーンでの画像投影と同様に、幾何歪みの無い画像が投影できる。
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態による空間投影装置を説明する。図12は、第3実施形態の構成を示すブロック図である。図12に示す空間投影装置3は、画像受信部3aと画像送信部3bとを備えたものである。図12において、LT操作部35を備えている場合は第2実施形態の処理に従い、LT操作部35を備えていない場合は第1実施形態の処理に従う。
ただし、カメラ2と接続された画像受信部3aよ、プロジェクタ1と接続された画像送信部3bとが接続されていないため、それぞれに同期制御部31と同期制御部37を設けてある。図13は、図12に示す画像送信部3bが備える同期制御部37の処理動作を示すフローチャートである。同期制御部37は、照明準備ができたか否かを判定し(ステップS61)、準備ができていれば、フレーム番号を送出し(ステップS62)、一定時間(例えば5秒)待機する(ステップS63)。そして、処理の停止指示まで繰り返す(ステップS64)。
図14は、図12に示す画像受信部3aが備える同期制御部31の処理動作を示すフローチャートである。同期制御部31は、観測可能か否かを判定し(ステップS71)、観測可能であれば、画像観測の命令を送出する(ステップS72)。そして、処理の停止指示まで繰り返す(ステップS73)。
図12に示す空間投影装置3では、符号化照明生成部32で得た照明画像をプロジェクタ1から送出した後、一定間隔の時間(例えば、5秒)で処理を待機し、この時間の間に、カメラ2側では画像を観測して逐次LTMを記録するようにする。
以上説明したように、プロジェクタ・カメラシステムを使って、少ないカメラ応答画像から効率的に凹凸や曲がった形状の空間構造のライト・トランスポートを獲得することができ、そのライト・トランスポート行列を使えばスクリーン平面上にあたかも投影されたかのように、その空間構造に画像を投影することができる。また、ライト・トランスポートを利用したプロジェクション・マッピングを行う際に、所定の照明パターンに対する観測画像を組合せることで各カメラ画素に対応するプロジェクタ画素を求めることにより、従来のプロジェクタ画素ごとに対応するカメラ画素を求める方法に比してライト・トランスポート行列算出に必要となる観測画像の数を抑えることができる。さらに、その画像提示を使った拡張現実や映像コミュニケーションを実現することが可能となる。
なお、図1、図10、図12における処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより空間投影処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明してきたが、上記実施の形態は本発明の例示に過ぎず、本発明が上記実施の形態に限定されるものではないことは明らかである。したがって、本発明の技術思想及び範囲を逸脱しない範囲で構成要素の追加、省略、置換、その他の変更を行っても良い。
プロジェクタ・カメラシステムの動作を活用したプロジェクション・マッピングにおいて、面倒な計測作業を回避し、できるだけ少ないカメラ応答画像から効率的にライト・トランスポート行列(LTM)を得ることが不可欠な用途に適用できる。
1・・・プロジェクタ、2・・・カメラ、3・・・空間投影装置、3a・・・画像受信部、3b・・・画像送信部、31、37・・・同期制御部、32・・・符号化照明生成部、33・・・照明パターン復号部、34・・・LT獲得部、36・・・画像データベース(DB)

Claims (7)

  1. ×2(nは自然数)の画素を有するプロジェクタから被写体に投影した複数の照明パターンをカメラで観測した観測画像からプロジェクタ画素とカメラ画素間の対応関係を表現したライト・トランスポート行列を算出する空間投影装置であって、
    前記プロジェクタの画素をブロックサイズが2n−i×2n−iである2 ×2 個のレイヤiのブロックjに分割し(iは1以上n以下の整数、jは1以上4以下の整数)、レイヤiの各ブロックはレイヤi−1の4種のブロックを1個ずつ含むように4n枚の照明パターンを生成し、レイヤ1から順にすべての照明パターンを前記被写体に投影する照明パターン生成・投影手段と、
    前記カメラで観測した4n枚の観測画像の背景差分から前記カメラの画素ごとに対応する応答画素を特定した復号テーブルを生成する照明パターン復号手段と、
    前記復号テーブルを用いて前記カメラの画素に対応する前記プロジェクタの画素を求めることにより前記ライト・トランスポート行列を算出するライト・トランスポート行列算出手段と
    を備えることを特徴とする空間投影装置。
  2. 前記2×2の画素を有するプロジェクタに代えて、p×q(p、qは、自然数)の画素を有するプロジェクタを用いる場合の前記nは、2>max(p,q)を満たす最小のnであることを特徴とする請求項1に記載の空間投影装置。
  3. 前記照明パターン復号手段は、所定の閾値より大きい画素値を持つ画素のみを前記応答画素として特定することを特徴とする請求項1または2に記載の空間投影装置。
  4. 前記照明パターン復号手段は、各レイヤにおける4つの照明パターンのうち最大応答を得た応答画素を特定することにより、各レイヤにおける4つの照明パターンにおいて1回だけ応答有と判定した前記復号テーブルを生成することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の空間投影装置。
  5. 前記ライト・トランスポート行列を用いて入力画像を前記被写体に投影するライト・トランスポート操作手段とをさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の空間投影装置。
  6. ×2(nは自然数)の画素を有するプロジェクタから被写体に投影した複数の照明パターンをカメラで観測した観測画像からプロジェクタ画素とカメラ画素間の対応関係を表現したライト・トランスポート行列を算出する空間投影装置が行う空間投影方法であって、
    前記プロジェクタの画素をブロックサイズが2n−i×2n−iである2 ×2 個のレイヤiのブロックjに分割し(iは1以上n以下の整数、jは1以上4以下の整数)、レイヤiの各ブロックはレイヤi−1の4種のブロックを1個ずつ含むように前記4n枚の照明パターンを生成し、レイヤ1から順にすべての照明パターンを前記被写体に投影する照明パターン生成・投影ステップと、
    前記カメラで観測した4n枚の観測画像の背景差分から前記カメラの画素ごとに対応する応答画素を特定した復号テーブルを生成する照明パターン復号ステップと、
    前記復号テーブルを用いて前記カメラの画素に対応する前記プロジェクタの画素を求めることにより前記ライト・トランスポート行列を算出するライト・トランスポート行列算出ステップと
    を有することを特徴とする空間投影方法。
  7. コンピュータを、請求項1から5のいずれか1項に記載の空間投影装置として機能させるための空間投影プログラム。
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