JP5968180B2 - 地中発酵設備 - Google Patents
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Description
非特許文献1には、バイオマスのエネルギー変換方法について記載されている。水分含量の多い生ゴミ,家畜糞尿,活性汚泥など,液体系のバイオマスの場合は,生物化学変換法が適しており、現在,含水率の多いバイオマスのエネルギー変換法としては,メタン発酵システムが実用化されている。メタン発酵の原料となる有機性廃棄物としては,食品加工残渣,野菜残渣,畜産加工残渣,水産加工残渣,厨芥生ゴミ,グリーンウェスト,家畜し尿,し尿,下水汚泥,浄化槽汚泥などがある。メタン発酵システムは,もともとし尿や下水汚泥を対象として開発,実用化されてきた技術であるが,近年,畜産系廃棄物や生ゴミなどの高濃度の有機物を含有する固形廃棄物を対象として実用化されてきている。
一般的なメタン発酵システムは、ソーティングライン,クラッシャー,発酵槽,高圧コンプレッサーによるバイオガス循環システム,脱水装置,ガスエンジンによるコージェネシステム,コンポスト化システム,脱臭システムの各ユニットから構成される。これらのシステム構成はどのプラントでもほぼ同じであるが,ガスエンジンで発電する代わりに燃料電池で発電する場合もある。バイオガスから高濃度のメタンガスを精製して天然ガス自動車用の燃料に用いる場合もあり、このようなプラントにはバイオガスの精製設備が付属している。
近年、東日本大震災と福島原子力発電所の事故を契機に、原発代替エネルギーとして再生可能エネルギーのコストダウン技術が強く求められており、都市部や都市部近郊においてもさらに簡便に地中微生物を有効に活用することができる技術が求められている。
上記目的を達成するための本発明の特徴構成は、
地上にバイオマス生産設備を備え、
地表部と地下不透水層との間にわたって平面視で周囲を遮水壁に覆われ、バイオマスを嫌気発酵する微生物を育成するバイオマス発酵サイトを備え、
前記バイオマス生産設備で生産されたバイオマスを水に可溶化して前記バイオマス発酵サイトに供給するバイオマス供給設備を備えるとともに、前記バイオマス発酵サイトから嫌気発酵により生成したバイオガスを回収するバイオガス回収部を前記遮水壁に囲まれたバイオマス発酵サイトに備えた点にある。
地上にバイオマスを嫌気発酵する微生物を育成するバイオマス発酵サイトを備えるから、前記バイオマス発酵サイト内にバイオマスを供給することによって、そのバイオマス発酵サイトで嫌気発酵を行わせて、バイオガスを生成させることができる。前記バイオマスの供給は、バイオマス生産設備から直接行うことができる。また、バイオガスは、地中で生成し、比重差により地表部に向かって移動するので、特に分離操作を必要とせず、地表部にて回収することができる。バイオガスは、バイオガス回収部により回収することで、燃料等として用いることができる。したがって、効率のよいエネルギー変換が可能となる。
上記構成において、前記バイオマス発酵サイトの地表部に、バイオガス遮蔽部を設けてあることが好ましい。
生成したバイオガスは、土砂や地下水との比重差で地表部に移動し、分離回収することができるが、このバイオガスを収集してから捕集すれば、効率よく回収することができる。
そのため、前記バイオマス発酵サイトの地表部に、バイオガス遮蔽部を設けることにより、バイオガス遮蔽部近傍に滞留したバイオガスを回収することで効率のよいバイオガス回収が可能となる。また、バイオガス遮蔽部によると、回収しきれないバイオガスが大気中に放散されるのを防止することができるから、前記バイオガスが周辺の環境に悪影響を与えたり、地球温暖化ガスとなったりするのを防止できることになる。
また、前記バイオマス生産設備が前記バイオマス発酵サイトの地表部に設けられていることが好ましい。
このように構成してあると、前記バイオマス生産設備で生産されたバイオマスを、バイオマス発酵サイトに直接供給できる。すると、生産されたバイオマスを輸送するコストを削減することができ、バイオガスの製造コストの削減に寄与することができる。また、バイオマス発酵サイトの地表部の敷地とバイオマス生産設備の敷地とを共有化して、地上部分と地下部分とを機能分担しつつ有効利用することができる。
また、上記構成において、前記バイオガス回収部を備えたバイオガス回収設備が、バイオガスを回収して一時貯留するガスホルダを備えるとともに、ガスホルダからガス利用設備へガス供給するガス供給部を備えてもよい。
前記バイオガス回収設備が、ガスホルダを備えると、前記バイオガス回収部からバイオガスを回収して一時貯留することができ、バイオガスを安定供給するのに寄与する。また、バイオガスの生成量は、バイオマスの質、量の変動や自然条件の影響を受けて変動するため、回収されるバイオガス中のメタン濃度も変動する。これをガスホルダに一時貯留すると、メタンガス濃度の変動を抑制して成分を安定させて供給できることになる。そのため、ガスホルダを介して供給されるバイオガスは、成分が安定するために、ガス供給部を介してガス利用設備で安定利用可能になる。
また、前記ガス利用設備が前記バイオマス生産設備に併設されてもよい。
前記ガス利用設備が前記バイオマス生産設備に併設されていれば、前記ガス利用設備から前記バイオマス生産設備にバイオガスを輸送するための輸送コスト、輸送設備費も削減できる。また、ガス利用設備が電力や熱を発生する設備であれば、逆にバイオマス生産設備に電力や熱を供給することにより、バイオマス生産設備におけるバイオマス製造コストを低減することができる。そのため、バイオガスを安価に供給することができると同時に、全体として、エネルギーの消費効率がよい設備とすることができる。
また、前記バイオガス回収部が、前記バイオマス発酵サイトの地表部に横架されたガス吸引配管を備えるとともに、前記ガス吸引配管からガス吸引する吸引ポンプを備えてもよい。
上記構成によると、前記ガス吸引配管を地表部近傍に埋設するだけの比較的簡便な設備によって、敷地の広域にわたって均等に効率よくガス吸引できる設備を敷設できる。また、敷地の広域にわたりバイオガスを漏洩させることなく吸引することができると、大気中にバイオガスが放散されにくくなる。
また、前記バイオマス供給設備が、前記バイオマス発酵サイトの帯水層に可溶化したバイオマスを供給するバイオマス供給部を備えるとともに、帯水層の水を回収する回収部を備えてもよい。
バイオマス生産設備で生産されたバイオマスは、可溶化することで水流とともに地中の土砂の隙間に連続供給できる。また、水流とともにバイオマスを供給すると、バイオマス発酵サイトにおける帯水層の水量が増えるので、帯水層の水位が上昇するおそれがあるが、帯水層の水を回収する回収部を備えると、増加した帯水層の水を回収して帯水層の水位を一定に保てるとともに、嫌気発酵により発生した可溶性の無機成分を回収して、その無機成分により土壌の隙間が目詰まりするのを防止して、嫌気発酵条件が良好に維持するのに寄与する。
なお、前記バイオマス生産設備が、微細藻類培養設備であって、前記バイオマスが微細藻類とすることができる。
バイオマス生産設備としては、種々の設備を適用することができるが、微細藻類培養設備とすれば、特に可溶化処理をするまでもなく、水流とともに土砂の隙間に供給可能な程度に可溶化しているバイオマスとしての微細藻類を連続的に供給することができる。このような微細藻類培養設備は、大きな敷地をそのまま有効利用できるもので、下水処理場などの曝気槽を利用して構成することができる。このような場合、地下空間をバイオマス発酵サイトとして利用可能な広大な敷地を容易に確保できるという点でも有利である。また、このように培養される微細藻類は、大気中の二酸化炭素を固定化する役割を担うものでもあるので、地球温暖化ガスの低減に大きく寄与することができるとともに、固定化した二酸化炭素をバイオガスに変換できることになるので、再生可能エネルギーを効率的に生産することにもなるので好ましい。
また、前記バイオマス生産設備が、食用植物生産設備であって、前記バイオマスが、食用植物からの有価物回収残渣とすることもできる。
バイオマス生産設備として、サトウキビ畑と、そこから収穫したサトウキビよりサトウを生産する食品加工工場等のような、食用植物生産設備とすると、食用植物からの有価物回収残渣をバイオマスとして供給することができる。すなわち、通常は、焼却廃棄されるバイオマスを嫌気発酵によりバイオガスを得るための原料として用いることができるので、焼却廃棄による二酸化炭素の発生を抑制するとともに、廃棄物の有効利用と、廃棄物処分費用の低減の両立を図ることができる。これにより、バイオガスの製造コストを低減することができ、バイオガスを安価に供給するのに寄与することができた。
また、前記バイオマス生産設備が、バイオマスの糖化処理設備を備え、前記バイオマスが、グルコースまたはオリゴ糖類を含有するものとすることができる。
糖化処理によってグルコースやオリゴ糖類に変換されたバイオマスはきわめて嫌気発酵しやすく、短期間で水素やメタンに変換することが可能であるため、少なくとも一部が糖化されてグルコースまたはオリゴ糖類を含有するバイオマスを地中発酵することで、より効率の高いバイオガス製造が期待できる。糖化処理としては、硫酸法、酵素法、熱水処理法などがあり、一部実用化されている。
本発明の地中発酵設備は、バイオマス生産設備Bを備え、バイオマス発酵サイトDを備え、前記バイオマス生産設備Bで生産されたバイオマスを水に可溶化してバイオマス発酵サイトDに供給するバイオマス供給設備6を備えるとともに、バイオマス発酵サイトDから嫌気発酵により生成したバイオガスを回収するバイオガス回収設備7を備える。
バイオマス生産設備Bとしては、地上に設けられた微細藻類培養設備や、たとえば、サトウキビ、ソルガム、とうもろこし等、食用植物の圃場や食品加工工場、それらが一体になっている食品工場や糖化処理設備あるいは糖化処理設備を含む複合設備等に好適に適用することができる。また、バイオマスとしても、食用植物からの有価物回収残渣等が適用されるバイオマス生産設備Bは限定されるものではないが、ここでは、バイオマス生産設備Bとして、下水処理場を利用した微細藻類培養設備について説明する。
そして、下水道管から微細藻類培養設備に流入した処理汚水は、沈砂池1、沈殿槽2、曝気槽3、沈殿分離槽4の順に流動して、沈殿分離槽4の上澄みの処理汚水を消毒槽5で消毒処理した後に河川等に放流可能にする。
その後、処理汚水は沈殿分離槽4に流入して、微細藻類を含んだ活性汚泥を沈殿させて、上澄みの処理汚水を処理が完了した処理完了水として分離し、消毒槽5において塩素消毒などの後に河川等に流出させる。曝気槽3において、余剰に発生した微細藻類は、後述のバイオマス供給設備6によりバイオマス発酵サイトDに供給可能に構成されている。さらに、ここで沈殿した活性汚泥の一部は、曝気槽3に戻されて、処理汚水中の溶解・浮遊性有機物を酸化分解するために使用される。
前記バイオマス発酵サイトDは、地表部Gと地下不透水層L1との間にわたって平面視で周囲を遮水壁Wに覆われ、バイオマスを嫌気発酵する微生物を育成する領域として形成されている。
このようにして形成されたバイオマス発酵サイトDは、遮水壁Wと地下不透水層L1と地表部Gの間にわたって、内部の主に帯水層L2領域にバイオマスを嫌気発酵する微生物を育成する閉鎖された発酵空間を形成している。これによると、通常の下水処理設備程度の面積の敷地を有するバイオマス生産設備B周囲に、地下10m程度の深さまで遮水壁Wを設けた場合を想定すると、1650m3程度の容積のメタン発酵槽に相当するきわめて大きな領域を発酵空間として利用できることになる。
バイオマス供給設備6は、前記バイオマス生産設備Bの曝気槽3で余剰に発生した微細藻類を、曝気槽3下流の沈殿分離槽4から処理済みの汚水とともに回収し、バイオマス供給部6Aを通じて地表部G側から帯水層L2に供給する。前記バイオマス供給部6Aは、前記バイオマス発酵サイトD内に設けられた給水用縦管61と、給水用縦管61を通じて汚水を供給する供給ポンプ62とを設けて構成してある。
遮水壁W内の地表部Gと帯水層L2の間の不飽和層L3には、水平配置してある多数のガス吸引配管71を設けてバイオガス回収部を備えるとともに、前記ガス吸引配管71に流入したバイオガスを吸引してガスホルダ72に導く吸引ポンプ73を設けてバイオガス回収設備7を設けてある。前記ガス吸引配管71は、不飽和層L3まで上昇してきたバイオガスを、吸引捕集するガス吸引部71aを多数備えており、吸引ポンプ73の吸引力でバイオマス発酵サイトDの平面視における全領域からバイオガスを吸引できるように構成してある。ガス吸引配管71から回収されたバイオガスは一旦ガスホルダ72に貯留され、ガス利用設備にガス供給自在なガス供給部74を設けてバイオガス利用を図る構成としてある。
一般的な土壌で地中発酵が行えることを確認するために、種々土壌に種々条件下でバイオマスを供給し、発生するガスの組成を分析したところ以下のようになった。
3箇所の異なる場所から一般の土壌(A,B,C)を採取した。各土壌を2mmの篩にて小石等を除去したサンプル土壌として20gづつガラスバイアル瓶に入れ、栄養源を添加した後、容器内を窒素置換しラバーキャップで蓋をし、アルミキャップで封止した。これを30℃で静置培養して、2日後および1ヶ月後の容器内の気層部分のガス成分を水素検出器あるいはメタン検出器としてTCDを用いたガスクロマトグラフィにて分析した。サンプル土壌と栄養源との組み合わせは、表1の通りである。
2 :沈殿槽
3 :曝気槽
31 :ディフューザ
4 :沈殿分離槽
5 :消毒槽
6 :バイオマス供給設備
6A :バイオマス供給部
6B :回収部
61 :給水用縦管
62 :供給ポンプ
63 :排水用縦管
64 :排水ポンプ
7 :バイオガス回収設備
71 :ガス吸引配管(バイオガス回収部)
71a :ガス吸引部
72 :ガスホルダ
73 :吸引ポンプ
74 :ガス供給部
B :バイオマス生産設備
D :バイオマス発酵サイト
G :地表部
L1 :地下不透水層
L2 :帯水層
L3 :不飽和層
L4 :バイオガス遮蔽部
W :遮水壁
Claims (10)
- 地上にバイオマス生産設備を備え、
地表部と地下不透水層との間にわたって平面視で周囲を遮水壁に覆われ、バイオマスを嫌気発酵する微生物を育成するバイオマス発酵サイトを備え、
前記バイオマス生産設備で生産されたバイオマスを水に可溶化して前記バイオマス発酵サイトに供給するバイオマス供給設備を備えるとともに、前記バイオマス発酵サイトから嫌気発酵により生成したバイオガスを回収するバイオガス回収部を遮水壁に囲まれたバイオマス発酵サイトに備えた地中発酵設備。 - 前記バイオマス発酵サイトの地表部に、バイオガス遮蔽部を設けてある請求項1に記載の地中発酵設備。
- 前記バイオマス生産設備が前記バイオマス発酵サイトの地表部に設けられている請求項1または2に記載の地中発酵設備。
- 前記バイオガス回収部を備えたバイオガス回収設備が、バイオガスを回収して一時貯留するガスホルダを備えるとともに、ガスホルダからガス利用設備へガス供給するガス供給部を備える請求項1〜3のいずれか一項に記載の地中発酵設備。
- 前記ガス利用設備が前記バイオマス生産設備に併設されている請求項4に記載の地中発酵設備。
- 前記バイオガス回収部が、前記バイオマス発酵サイトの地表部に横架されたガス吸引配管を備えるとともに、前記ガス吸引配管からガス吸引する吸引ポンプを備えてなる請求項1〜5のいずれか一項に記載の地中発酵設備。
- 前記バイオマス供給設備が、前記バイオマス発酵サイトの帯水層に可溶化したバイオマスを供給するバイオマス供給部を備えるとともに、帯水層の水を回収する回収部を備える請求項1〜6のいずれか一項に記載の地中発酵設備。
- 前記バイオマス生産設備が、微細藻類培養設備であり、前記バイオマスが微細藻類である請求項1〜7のいずれか一項に記載の地中発酵設備。
- 前記バイオマス生産設備が、食用植物生産設備であり、前記バイオマスが、食用植物からの有価物回収残渣である請求項1〜7のいずれか一項に記載の地中発酵設備。
- 前記バイオマス生産設備が、バイオマスの糖化処理設備を備え、前記バイオマスが、グルコースまたはオリゴ糖類を含有するものである請求項1〜7のいずれか一項に記載の地中発酵設備。
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