JP5960396B2 - ナノカプセルの製造方法 - Google Patents
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Description
従来のナノカプセルの製造方法によれば、薬剤を、消化器官内部の環境からある程度保護可能なナノカプセルを製造することが可能となる。
PEGとPOSSとを結合させるに当たっては、種々の触媒を用いることもできる。
図1は、実施形態に係るナノカプセルの製造方法を説明するために示すフローチャートである。
まず、実施形態に係るナノカプセルの製造方法について説明する。
実施形態に係るナノカプセルの製造方法は、図1に示すように、薬剤を包含するナノカプセルの製造方法であって、PEG−POSS準備工程S1と、PEG−POSS溶液製造工程S2と、ナノカプセル製造工程S3とをこの順番で含む。以下、各工程を説明する。
なお、各工程においては、器具や装置として汎用の器具や装置を用いることが可能であり、器具及び装置についての詳細な説明は省略する。
実施形態においては、反応性の基はイソシアネート基からなる。
ヒドロキシ基とイソシアネート基との反応においては、必要に応じて触媒を用いてもよい。触媒としては、例えば、有機スズ化合物のような有機金属類を用いることができる。また、必要に応じて加温や超音波処理等を行ってもよい。
溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(以下、THFという。)、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、クロロホルム、アセトン、水、蟻酸、酢酸、シクロヘキサン等種々の溶媒を用いることができ、実施形態においては、THF及びジメチルスルホキシドを特に好適に用いることができる。また、複数種類の溶媒を混合した混合溶媒を用いてもよい。
次に、実施形態に係るナノカプセルについて説明する。
次に、実施形態に係る医薬品又は食品について説明する。
実施形態に係る医薬品又は食品は、実施形態に係るナノカプセルを含有することを特徴とする。
以下、試験例により本発明のナノカプセルの製造方法及びナノカプセルについてさらに詳しく説明するが、本発明はこれに何ら制約されるものではない。
図3は、試験例に係るナノカプセルの透過型電子顕微鏡写真である。図3(a)〜図3(c)はそれぞれ倍率の異なる写真である。
図4は、試験例に係るナノカプセルのフーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)による分析の結果を示すグラフである。図4中、縦軸は赤外線の透過率を表し、横軸は波数を表す。
図6は、試験例に係るナノカプセルからのインスリンの放出率を示すグラフである。図6中、縦軸はインスリンの放出率を表し、横軸は時間を表す。
なお、比較用に製造した「純粋なPEG−POSSからなるナノ構造体」は、上記した中央部と辺縁部を有するナノ構造(花状のミセル構造)そのものである。
PEGとしては、数平均分子量(以下、単に分子量という。)3.4kDaのもの(アルドリッチ社より購入。)を、n−ヘキサン及びクロロホルムを用いた沈殿法により2回精製してから用いた。
POSSとしては、Isocyanatopropyldimethylsilylcyclohexyl-polyhedral oligosilsesquioxane(以下の式(5)参照。トーメンプラスチック社より購入。)を用いた。なお、式(3)に示すように、当該POSSは、末端部にイソシアネート基を有する官能基を有する。
また、溶媒としてのトルエンは、事前に水素化カルシウムにより乾燥し、使用前に窒素雰囲気下で蒸留を行ったものを用いた。
特に記載のない化学薬品類については、分析グレード又はそれ以上の純度を有していたため、さらに精製することなくそのまま用いた。
各工程は、明細書中に特段の記載がない場合には、汎用の実験器具及び実験装置を用いて行った。
UV−可視分光光度計としては、日本分光株式会社のJasco V−530を用いた。
ナノカプセルの粒子サイズの測定には、モールヴァン機器社のレーザー回折粒子サイズ測定機であるNano−ZSを用いて行った。
透過型電子顕微鏡(TEMともいう。)は、日本電子株式会社のJEM−2100 LaB6電子顕微鏡を用いた。加速電圧は160kVとした。
透過型電子顕微鏡から平均粒径を測定するために、国立健康研究所の画像解析ソフトウェアであるイメージJを用いた。
FT−IRは、島津製作所のIR Prestige−21を用いて行った。
ゼータ電位及び流体力学直径(光散乱により測定される直径)の測定は、シスメックス株式会社のゼータサイザーナノを用いて行った。
試験例に係るナノカプセルの製造方法は、基本的に実施形態に係るナノカプセルの製造方法に沿って行った(図1及び図2中の「PEG−POSS」〜「ナノカプセル」参照。)。以下、各工程について詳細に説明する。
PEG−POSS準備工程S1は、PEG(上記の分子量3.4kDaのPEG)と、POSSであって反応性を有する基を末端に有するもの(上記の式(3)のPOSS)とを結合させ、PEG−POSSを準備する工程である。本工程においては、DBTDLを用いて、PEGの両端のヒドロキシ基に、直接的にPOSSのイソシアネート基をウレタン結合させることにより、PEG−POSSを得ることができた。具体的には、まず、PEGをトルエンに加えてPEG混合溶液を製造し、当該PEG混合溶液にPOSSとDBTDLとをさらに混合し、窒素雰囲気下、90℃で12時間撹拌することによりPEG−POSSを得た。この場合、PEG−POSSは、以下の式(4)で表される構造のものとなる。
PEG−POSS溶液製造工程S2においては、PEG−POSSを溶媒に溶解させてPEG−POSS溶液を製造する。具体的には、PEG−POSS準備工程で準備したPEG−POSSのうち40mgをTHF10mlに完全に溶解させ、PEG−POSS溶液を製造した。
ナノカプセル製造工程S3においては、PEG−POSS溶液に薬剤として疎水性薬剤を添加し、インスリンを包含するナノカプセルを製造した。まず、100mgのインスリンを10mlの0.01N HCl水溶液に溶解させ、インスリン溶液を用意した。
次に、0.5mlのインスリン溶液と、0.9mlのインスリン溶液と、1.3mlインスリン溶液とを、それぞれPEG−POSS溶液に滴下して溶液混合物とした(つまり、インスリンの量が異なる3種類の溶液混合物を作った。)。その後、溶液混合物を透析チューブ(スペクトル/ポア6、MWCO:3.5kD)に注ぎ、室温、磁気撹拌の条件化で、蒸留水を用いて透析した。
さらに、THFとHClを除去するために蒸留水を少なくとも3回交換し、インスリンを包含するナノカプセルを製造した。
4−1.インスリンの捕集効率
まず、添加したインスリンの量とインスリンの捕集効率との関係を分析した。インスリンの捕集効率は、UV−可視分光光度計で遊離しているインスリンの量を測定し、測定によって得られた量を添加したインスリンの全量で割ることにより得た。その結果、インスリンの捕集効率は、インスリンを5mg添加したものについては52.6%、インスリンを9mg添加したものについては70.5%、インスリンを13mg添加したものについては76.5%であることがわかった。つまり、PEG−POSSはインスリンを内包する能力に優れるということが確認できた。
次に、インスリンを包含するナノカプセルと、純粋なPEG−POSSのみからなるナノ構造体とのサイズとの違いを、レーザー回折粒子サイズ測定機でpHごとに測定して分析した。
また、図3各図に示すように、透過型電子顕微鏡により、上記両ナノカプセルの形態を撮影して観察した。この際、ナノカプセルを水に分散した後、室温で炭素被覆銅グリッド(200−Aメッシュ 日新Em株式会社製)に乗せ、真空オーブンで乾燥させることにより固定化を行った。
本測定の結果、図3各図に示すように、製造されたナノカプセルが中央部と辺縁部とを有する球形形状からなることが確認できた。また、インスリンを包含するナノカプセルが、純粋なPEG−POSSのみからなるナノ構造体より大きいことも確認できた。
次に、インスリンを包含するナノカプセルをFT−IRによる分析にかけた。その結果、図4に示すように、PEG−POSSの存在とインスリンの存在とを確認できた。1651cm−1と1531cm−1〜1514cm−1のピークはインスリンのアミドのものであった。一方、PEG−POSSのSi−O−Siのピークは、純粋なPEG−POSSのピークよりも高波数側にシフトしており、これは、インスリンとPEG−POSSとの間に強い相互作用が働いているためであると考えられる。
つぎに、ナノカプセルがpHによって受ける影響を分析した。まず、インスリンを含有するナノカプセルをPBS緩衝液(pH2.5)10mlに分散し、遠心分離にかけた。遠心分離の条件は、3000rpm、15分であり、その後、37℃で2時間放置した。
上記のものを再び遠心分離にかけ、2000rpm、1分で得られた上澄み液のうち0.5mlを20分ごとに取り出し、ナノカプセルから放出されたインスリンの量を測定するのに用いた。なお、上澄み液を取り出した分に関しては、同量の新しいPBS緩衝液を、上澄み液と交換するように用いることで液量の変化を補った。
その後、再び遠心分離(2000rpm、1分)にかけ、pH2.5のときと同じように上澄み液0.5mlを20分ごとに取り出し、ナノカプセルから放出されたインスリンの量を測定するのに用いた。
なお、インスリンを包含するナノカプセルは互いに電荷を有するため、電気的な反発力から、よい拡散性を有することが期待できる。
また、pHによる流体力学直径の変化を調べた結果、図5(b)に示すように、インスリンを包含するナノカプセルについては、pHの増加とともに流体力学直径が大きくなることが確認できた。
Claims (5)
- 薬剤を包含し、経口投与したときに前記薬剤を腸内部で徐々に放出するナノカプセルの製造方法であって、
ポリエチレングリコール−かご状シルセスキオキサン結合体(以下、PEG−POSSという。)を準備するPEG−POSS準備工程と、
前記PEG−POSSを溶媒に溶解させてPEG−POSS溶液を製造するPEG−POSS溶液製造工程と、
前記PEG−POSS溶液に前記薬剤として疎水性薬剤を添加し、前記ナノカプセルを製造するナノカプセル製造工程とをこの順番で含み、
前記疎水性薬剤として、タンパク質からなる薬剤であるインスリンを用いることを特徴とするナノカプセルの製造方法。 - 請求項1に記載のナノカプセルの製造方法において、
前記ナノカプセル製造工程は、前記PEG−POSS溶液に前記疎水性薬剤を添加して撹拌し、前記PEG−POSSの自己凝集作用によりナノカプセルを製造する工程であることを特徴とするナノカプセルの製造方法。 - 請求項1又は2に記載のナノカプセルの製造方法において、
前記PEG−POSS準備工程は、ポリエチレングリコール(以下、PEGという。)と、かご状シルセスキオキサン(以下、POSSという。)であってPEGに対する反応性を有する基を末端に有するものとを結合させ、前記PEG−POSSを準備する工程であることを特徴とするナノカプセルの製造方法。 - 請求項3に記載のナノカプセルの製造方法において、
前記POSSとして、以下の式(1)で表されるPOSSを用いることを特徴とするナノカプセルの製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のナノカプセルの製造方法において、
前記ナノカプセル製造工程で製造される前記ナノカプセルの平均径が、20nm〜800nmの範囲内にあることを特徴とするナノカプセルの製造方法。
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