JP5958229B2 - ケト酸金属錯体水溶液及びその製造方法並びに複合酸化物粒子の製造方法 - Google Patents
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Description
この複合酸化物は、特有の結晶構造をとることが知られており、例えば、ガーネット構造、ぺロブスカイト構造、スピネル構造、マグネトプランバイト構造、ホタル石構造、ブリデライト構造、アパタイト構造、オリビン構造、リシコン構造、ホランダイト構造、バーネサイト構造、デフォッサイト構造、シーライト構造、K2NiF4構造、NaFeO2構造、Al2SiO5構造、GdFeO3構造等をとることで様々な機能を発現するために、高い結晶性が要求される。
多くの複合酸化物粒子は、所望の特性を発現させるためには結晶化が必要であり、特に、ガーネット構造やぺロブスカイト構造の複合酸化物においては、結晶構造中における金属イオンの位置や金属イオンの周囲の酸素配位構造によりその特性が大きく変化することが知られている。そこで、得られた複合酸化物に所望の特性を発現させるために、金属イオン及び金属イオンの周囲の酸素配位を所望の位置に位置付けするために何らかの工夫が必要であり、そこで様々な方法が提案されている。
また、CVD法等の気相法では、金属塩を含む原料を高温の酸素気流中に注入して酸化させ結晶化させることで複合酸化物粒子を製造する方法が知られている。
また、熱分解法においては、金属の蓚酸塩、酢酸塩、クエン酸塩等の原料を所望の温度に加熱して熱分解させて複合酸化物粒子を得る方法が知られている。
また、熱分解法の一種としては、錯体重合法のように、2種以上の金属イオンをポリエステル錯体のような有機ポリマーと反応させて有機金属ポリマーを形成することにより、より均一な金属イオンの混合状態とした有機金属ポリマー原料を熱分解させることで複合酸化物を製造する方法も知られている。
このように、複合酸化物粒子を製造する方法としては、固相法、気相法、熱分解法が主として用いられている。
特に、ガーネット構造やぺロブスカイト構造の複合酸化物粒子を得る場合、金属イオンの位置や金属イオンの周囲の酸素配位構造を精密に制御しなければ、所望の特性や機能を発現する複合酸化物粒子を得ることが難しく、製造工程上大きな問題であった。
前記水溶性ケト酸は、グリオキシル酸、ピルビン酸、アセト酢酸、レブリン酸の群から選択される1種または2種以上であることが好ましい。
前記複合酸化物粒子の結晶構造は、ガーネット構造またはペロブスカイト構造であることが好ましい。
したがって、このケト酸金属錯体水溶液を熱分解させた後、得られた熱分解生成物を、該熱分解生成物が結晶化する温度以上の温度にて加熱することにより、特性及び機能に優れた複合酸化物粒子を容易に得ることができる。
しかも、得られた複合酸化物粒子は、安定した結晶構造を有するので、所望の特性や機能を安定して発現することができる。
なお、以下の実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
本実施形態のケト酸金属錯体水溶液は、1分子中にカルボキシル基とケトン基またはカルボニル基(>CO)を有する水溶性ケト酸を配位子とする金属錯体を水に溶解してなるケト酸金属錯体水溶液であり、前記金属錯体は、2種以上の金属元素またはそのイオンを含有している。
なお、このケト酸金属錯体水溶液中の金属元素またはそのイオンの濃度については、特に制限を設けるものではないが、複合酸化物の重量換算で0.5質量%以上かつ15質量%以下が好ましい範囲である。
本実施形態のケト酸金属錯体水溶液の製造方法は、1分子中にカルボキシル基とケトン基またはカルボニル基(>CO)を有する水溶性ケト酸を水に溶解してなる水溶性ケト酸水溶液に、2種以上の金属塩を添加し混合して、前記水溶性ケト酸を配位子とし2種以上の金属元素またはそのイオンを含有してなるケト酸金属錯体水溶液とする方法である。
このようにして得られた水溶性ケト酸を配位子とする金属錯体(または金属錯塩)とは、錯イオンの中心原子が金属元素の原子またはイオンである錯体(または錯塩)のうち、この中心原子に水溶性ケト酸が配位結合している錯体(または錯塩)のことである。
特に、発光や蛍光体の場合には、上記のY(イットリウム)、アルミニウム(Al)及び希土類元素からなる17元素の群から選択される1種または2種以上を主成分とすることが好ましい。
このようにして得られた水溶性ケト酸金属錯体は、末端にヒドロキシ基を有していないので、水溶性ケト酸を配位結合させて得られた金属錯体(または金属錯塩)を2種以上混合してなる混合液を撹拌している最中に脱水・縮重合のようなポリマー化が生じることがない。
この水溶性ケト酸金属錯体は、上述したように、末端にヒドロキシ基を有していないので、この混合液を乾燥している最中に脱水・縮重合のようなポリマー化が生じることがなく、したがって、2種以上の金属イオンが均一に分布した水溶性ケト酸金属錯体の乾燥固形物を得ることができる。
ここで、400℃以上かつ600℃以下の温度範囲にて熱分解することとしたのは、この温度範囲が乾燥固形物を効果的に熱分解するのに最も適した温度範囲だからである。
この乾燥固形物は、2種以上の水溶性ケト酸金属錯体がそれぞれ分子レベルで混合されているので、水溶性ケト酸金属錯体の乾燥固形物の熱分解は殆ど同時に生じる。その結果、得られる非晶質状の複合酸化物粒子は2種以上の金属イオンが均一に分布した状態で得ることができる。
この場合、加熱する以前の非晶質状の複合酸化物粒子は、2種以上の金属イオンが均一に分布した状態で存在しているので、これを加熱することにより、非晶質状の複合酸化物粒子を結晶化させることで、得られた複合酸化物の結晶構造が精密に制御されることとなる。よって、結晶構造が精密に制御された複合酸化物粒子を得ることができる。
以上により、結晶性に優れた複合酸化物粒子を得ることができる。
このようにして得られた複合酸化物粒子は、次のような性質を有している。この複合酸化物粒子の結晶構造は、ガーネット構造またはペロブスカイト構造である。
ガーネット構造は、組成式[C]3[A]2[B]3O12で表され、空間群はIa3dで立方晶系に属し、C、A、Bの各サイトに入る陽イオンの周りには、それぞれ酸素がCサイトでは12面体配位、Aサイトでは8面体配位、そしてBサイトでは4面体配位で配置された結晶構造となっている。このように歪んだ酸素の配位構造により所望の機能が発現され、その歪みの程度が特性に大きく影響する。したがって、複合酸化物粒子を構成するガーネット構造における各金属イオンは、極めて高い分布の均一性が求められることとなる。
(1)磁性材料
ReM5O12(但し、ReはYまたは希土類元素、MはFeまたはAl)にて表される、いわゆるYIG系複合酸化物が挙げられる。このYIG系複合酸化物の具体例としては、例えば(Tb,Re)3Al5O12、(Tb,Bi)3(Fe,Ga,Al)5O12
等が挙げられ、これらの材料はマイクロ波用デバイス、光アイソレータファラデー回転子等として有益である。
ReM5O12:R(但し、ReはYまたは希土類元素、MはAlまたはGa、Rは希土類元素)にて表される、いわゆるYAG系複合酸化物、あるいは、L3M2R3O12:Re(但し、Lはアルカリ土類元素、MはAl,Ga,InまたはSc、RはY,Si,GeまたはSn、Reは希土類金属)にて表される複合酸化物が挙げられる。複合酸化物の具体例としては、例えばCa3Sc2Si3O12:Ce等が挙げられ、これらの材料はLED用蛍光体、レーザー発振子、近赤外発光材等として有益である。
なお、ガーネット構造以外の蛍光体としては、CaSc2O4:Ce、(Ca,Sr,Ba)2SiO4:Eu、Ba3SiO5:Eu、Sr3SiO5:Eu等がある。
まず、水溶性ケト酸として、グリオキシル酸、ピルビン酸、アセト酢酸、レブリン酸の群から選択される1種または2種以上を選択し、これらを含む水溶液に複合酸化物の原料となる金属塩、または金属水酸化物や金属ヒドロキシ炭酸塩、あるいは金属酸化物を、水溶性ケト酸と金属イオンの混合比を金属イオンの価数と同じモル数以上の比率で混合し溶解させてケト酸金属錯体帥溶液を作製する。
以上により、ガーネット構造の複合酸化物を得ることができる。
ぺロブスカイト構造は、一般式ABO3で表される化合物であり、立方晶系の単位格子を有し、立方晶の各頂点に金属Bが、体心に金属Aが、そして金属Aを中心として、酸素Oは立方晶の各面心に配置している酸素と金属Aから成るAO6八面体の向きは、金属Bとの相互作用により容易に歪み、これにより、より対称性の低い斜方晶や正方晶に相転移する。これにより、結晶の物性が変化する。その結果、誘電性、圧電性、同電性、非線形光学性、磁性、超電導性、イオン電導性等に優れた機能を発現することとなる。
(1)強誘電体材料
ぺロブスカイト構造の強誘電体材料としては、例えば、BaTiO3、SrTiO3、(Ca,Ba,Sr)TiO3、(Ca,Na)(Nb,Ti,Fe)O3等が挙げられる。
(2)イオン伝導体
燃料電池のイオン伝導体用複合酸化物粒子としては、例えば、一般式(A,M)(B,R)O3(但し、AはLa、MはSr、BはGa,Sc,MnまたはCr、RはFe)にて表される複合酸化物が挙げられる。
正極材用複合酸化物粒子としては、例えば、一般式(A,M)BO3(但し、AはLa、MはLi、BはTi,NbまたはTa)にて表される複合酸化物が挙げられる。
なお、一般式ABO3で表される化合物以外の材料としては、YBa2Cu3O7、Bi2Sr2Ca2Cu3O10等で表される高温超電導材料がある。
しかも、得られた複合酸化物粒子は、安定した結晶構造を有するので、所望の特性や機能を安定して発現することができる。
[実施例1]
バリウム−チタンケト酸錯体水溶液としてバリウム−チタングリオキシル酸水溶液を作製した。
まず、バリウムケト酸水溶液としては、炭酸バリウム粉体84.63gを10%グリオキシル酸水溶液635g(バリウムイオンに対し2倍モル量のグリオキシル酸を含有)に添加し、室温(25℃)にて24時間撹拌して溶解させ、バリウムグリオキシル酸水溶液Aaを作製した。
次いで、このバリウム−チタングリオキシル酸水溶液Aをスプレードライヤーを用いて噴霧乾燥して乾燥粒子を作製した。その後、この乾燥粒子を、大気中、1000℃にて2時間、加熱処理を行ったところ、チタン酸バリウム(BaTiO3)粉体を得ることができた。
スカンジウム−ジルコニウムケト酸錯体水溶液としてスカンジウム−ジルコニウムグリオキシル酸水溶液を作製した。
まず、酸化スカンジウム粉体13.79gとオキシ塩化ジルコニウム8水和物(ZrOCl2・8H2O)290.03gを、10%グリオキシル酸水溶液1555g(スカンジウムイオンに対し3倍モル量、オキシジウルコニウムイオンに対し2倍モル量のグリオキシル酸を含有)に添加して、室温(25℃)にて24時間撹拌して溶解させ、スカンジウム−ジルコニウムグリオキシル酸水溶液Bを作製した。
ランタン−ユーロピウムケト酸錯体水溶液としてランタン−ユーロピウムグリオキシル酸水溶液を作製した。
まず、塩化ランタン7水和物(LaCl3・7H2O)371.37gと、塩化ユーロピウム6水和物(EuCl3・6H2O)7.48gを、純水8000gに溶解させ、溶液Caを作製した。
次いで、このスラリーCb1000gにグリオキシル酸176g(金属イオンの3倍モル)を加え、室温(25℃)にて24時間撹拌し、ランタン−ユーロピウムグリオキシル酸水溶液Cを作製した。
[実施例4]
グリオキシル酸錯体によるYAG:Ce複合酸化物粒子を作製した。なお、グリオキシル酸/金属イオンの比を3倍モルとした。
まず、硝酸イットリウム・6H2O186.3g、硝酸アルミニウム・9H2O313.5g、硝酸セリウム・6H2O6.5gを純水5000gに溶解し、Y−Al−Ce塩の水溶液Daを調製した。
次いで、炭酸水素アンモニウム349gを純水10000gに溶解させた水溶液Dbを調製した。
このイットリウムアルミネートヒドロキシ炭酸塩乾燥物D中のYAG:Ce酸化物含有量を1000℃での強熱減量による固形分率にて測定した結果、58.8質量%であった。
この乾燥固形物Dについて熱分析を行った結果、460℃に発熱ピークが1つ認められ、Y,Al,Ceグリオキシル酸錯体が同時に熱分解したことが確認された。熱分析の結果を図1に示す。
表2によれば、700℃の焼成では、アモルファス相(A相)であったが、800℃以上の加熱処理では結晶化され、ガーネット構造のYAG:Ce複合酸化物は単一相(YAG相)であった。
グリオキシル酸錯体によるYAG:Ce複合酸化物粒子を作製した。なお、グリオキシル酸/金属イオンの比を3.5倍モルとした。
ここでは、実施例4にて得られた乾燥物Dを50g(YAG:Ce;29.4g(=0.04915モル);YAG:Ceモル質量=598.24)をグリオキシル酸(分子量:74.04)101.87gを純水1000gに溶解させたグリオキシル酸水溶液に加え、室温(25℃)にて24時間撹拌して溶解させ、グリオキシル酸錯体溶液Eを作製した。これらの組成等を表1に示す。
この乾燥固形物Eについて熱分析を行った結果、460℃に発熱ピークが1つ認められ、Y,Al,Ceグリオキシル酸錯体が同時に熱分解したことが確認された。
表2によれば、700℃の焼成では、アモルファス相(A相)であったが、800℃以上の加熱処理では結晶化され、ガーネット構造のYAG:Ce複合酸化物は単一相(YAG相)であった。
アセト酢酸錯体によるYAG:Ce複合酸化物粒子を作製した。なお、アセト酢酸/金属イオンの比を3倍モルとした。
ここでは、実施例4にて得られた乾燥物Dを50g(YAG:Ce;29.4g(=0.04915モル);YAG:Ceモル質量=598.24)をアセト酢酸(分子量:102.09)120.04gを純水1000gに溶解させたアセト酢酸水溶液に加え、室温(25℃)にて24時間撹拌して溶解させ、アセト酢酸錯体溶液Fを作製した。これらの組成等を表1に示す。
この乾燥固形物Fについて熱分析を行った結果、470℃に発熱ピークが1つ認められ、Y,Al,Ceアセト酢酸錯体が同時に熱分解したことが確認された。
表2によれば、700℃の焼成では、アモルファス相(A相)であったが、800℃以上の加熱処理では結晶化され、ガーネット構造のYAG:Ce複合酸化物は単一相(YAG相)であった。
ピルビン酸錯体によるYAG:Ce複合酸化物粒子を作製した。なお、ピルビン酸/金属イオンの比を3倍モルとした。
ここでは、実施例4にて得られた乾燥物Dを50g(YAG:Ce;29.4g(=0.04915モル);YAG:Ceモル質量=598.24)をピルビン酸(分子量:88.06)103.86gを純水1000gに溶解させたピルビン酸水溶液に加え、室温(25℃)にて24時間撹拌して溶解させ、ピルビン酸錯体溶液Gを作製した。これらの組成等を表1に示す。
この乾燥固形物Gについて熱分析を行った結果、465℃に発熱ピークが1つ認められ、Y,Al,Ceピルビン酸錯体が同時に熱分解したことが確認された。
表2によれば、700℃の焼成では、アモルファス相(A相)であったが、800℃以上の加熱処理では結晶化され、ガーネット構造のYAG:Ce複合酸化物は単一相(YAG相)であった。
レブリン酸錯体によるYAG:Ce複合酸化物粒子を作製した。なお、レブリン酸/金属イオンの比を3倍モルとした。
ここでは、実施例4にて得られた乾燥物Dを50g(YAG:Ce;29.4g(=0.04915モル);YAG:Ceモル質量=598.24)をレブリン酸(分子量:116.11)136.94gを純水1000gに溶解させたレブリン酸水溶液に加え、室温(25℃)にて24時間撹拌して溶解させ、レブリン酸錯体溶液Hを作製した。これらの組成等を表1に示す。
この乾燥固形物Hについて熱分析を行った結果、470℃に発熱ピークが1つ認められ、Y,Al,Ceレブリン酸錯体が同時に熱分解したことが確認された。
表2によれば、700℃の焼成では、アモルファス相(A相)であったが、800℃以上の加熱処理では結晶化され、ガーネット構造のYAG:Ce複合酸化物は単一相(YAG相)であった。
クエン酸錯体によるYAG:Ce複合酸化物粒子を作製した。なお、クエン酸/金属イオンの比を3倍モルとした。
ここでは、実施例4にて得られた乾燥物Dを50g(YAG:Ce;29.4g(=0.04915モル);YAG:Ceモル質量=598.24)をクエン酸(分子量:192)226.59gを純水1000gに溶解させたクエン酸水溶液に加え、室温(25℃)にて24時間撹拌して溶解させ、クエン酸錯体溶液Jを作製した。このクエン酸錯体溶液Jは、撹拌中に粘度が上昇するのが認められた。これらの組成等を表1に示す。
この乾燥固形物Jについて熱分析を行った結果、420℃と465℃に発熱ピークが2つ認められ、Y,Alクエン酸錯体が別々に熱分解したことが確認された。
表2によれば、700℃の焼成では、アモルファス相(A相)であったが、800℃では、ガーネット構造とは異なるY/Al=1/1のイットリウムアルミネート(YAP)の生成が認められた。また、900℃では、上記のYAP相以外にY/Al=3/5のガーネット構造のイットリウムアルミネートガーネット(YAG)の生成が認められた。
さらに、1000℃では、Y/Al=3/5のガーネット構造のイットリウムアルミネートガーネット(YAG)のみ生成が認められた。
グリコール酸錯体によるYAG:Ce複合酸化物粒子を作製した。なお、グリコール酸/金属イオンの比を3倍モルとした。
ここでは、実施例4にて得られた乾燥物Dを50g(YAG:Ce;29.4g(=0.04915モル);YAG:Ceモル質量=598.24)をグリコール酸(分子量:76.05)89.69gを純水1000gに溶解させたグリコール酸水溶液に加え、室温(25℃)にて24時間撹拌して溶解させ、グリコール酸錯体溶液Kを作製した。
このグリコール酸錯体溶液Kを作製する途中、すなわち乾燥物Aをグリコール酸水溶液に溶解させる途中で析出物が認められた。この析出物を分析した結果、Y、C,H、O成分が検出された。これらの組成等を表1に示す。
この乾燥固形物Kについて熱分析を行った結果、420℃と460℃に発熱ピークが2つ認められ、Y,Alグリコール酸錯体が別々に熱分解したことが確認された。
表2によれば、700℃の焼成では、アモルファス相(A相)であったが、800℃では、ガーネット構造とは異なるY/Al=2/1のイットリウムアルミネート(YAM)と、Y/Al=1/1のイットリウムアルミネート(YAP)の生成が認められた。また、900℃では、上記のYAP相が単相で存在していることが認められた。
さらに、1000℃では、上記のYAP相以外にAl2O3相が認められ、Y/Al=3/5のガーネット構造のイットリウムアルミネートガーネット(YAG)の生成のみが認められなかった。
グリオキシル酸錯体によるYAG:Ce複合酸化物粒子を作製した。なお、グリオキシル酸/金属イオンの比を2.6倍モルとした。
ここでは、実施例4にて得られた乾燥物Dを50g(YAG:Ce;29.4g(=0.04915モル);YAG:Ceモル質量=598.24)をグリオキシル酸(分子量:74.04)75.67gを純水1000gに溶解させたグリオキシル酸水溶液に加え、室温(25℃)にて24時間撹拌して溶解させ、グリオキシル酸錯体溶液Lを作製した。
この乾燥固形物Lについて熱分析を行った結果、200℃と300℃との間に吸熱ピークが1つ、460℃に発熱ピークが1つ、それぞれ認められ、Y,Al,Ceのヒドロキシ炭酸塩の不溶粒子が残存していることが確認された。また、Y,Al,Ceグリオキシル酸錯体が同時に熱分解したことが確認された。
表2によれば、700℃の焼成では、アモルファス相(A相)であったが、800℃及び900℃では、ガーネット構造とは異なるY/Al=1/1のイットリウムアルミネート(YAP)の生成が認められた。また、1000℃では、Y/Al=3/5のガーネット構造のイットリウムアルミネートガーネット(YAG)が単一相で生成していることが認められた。
Claims (6)
- 1分子中にカルボキシル基とケトン基またはカルボニル基を有する水溶性ケト酸を配位子とする金属錯体を水に溶解してなるケト酸金属錯体水溶液であって、
前記金属錯体は、2種以上の金属元素またはそのイオンを含有してなり、
前記2種以上の金属元素の組合せは、バリウムとチタンとの組合せ、スカンジウムとジルコニウムとの組合せ、ランタンとユーロピウムとの組合せ、イットリウムとアルミニウムとセリウムとの組合せからなる群から選ばれるいずれか1つであり、
前記水溶性ケト酸は、グリオキシル酸、アセト酢酸、ピルビン酸、レブリン酸からなる群から選ばれるいずれか1つであり、
前記水溶性ケト酸と前記金属元素との混合比は、前記金属元素を金属イオンに換算したときに、前記水溶性ケト酸の前記金属イオンに対する混合比が、前記金属イオンの価数と同じモル数以上となる比率であることを特徴とするケト酸金属錯体水溶液。 - 前記金属錯体は、イットリウム及び希土類元素の群から選択される1種または2種以上の元素またはそのイオンと、アルミニウムまたはそのイオンとを含有してなることを特徴とする請求項1記載のケト酸金属錯体水溶液。
- 前記水溶性ケト酸は、グリオキシル酸、ピルビン酸、アセト酢酸、レブリン酸の群から選択される1種または2種以上であることを特徴とする請求項1または2記載のケト酸金属錯体水溶液。
- 1分子中にカルボキシル基とケトン基またはカルボニル基を有する水溶性ケト酸を水に溶解してなる水溶性ケト酸水溶液に、2種以上の金属塩を添加し混合して、前記水溶性ケト酸を配位子とし2種以上の金属元素またはそのイオンを含有してなるケト酸金属錯体水溶液とし、
前記2種以上の金属元素の組合せは、バリウムとチタンとの組合せ、スカンジウムとジルコニウムとの組合せ、ランタンとユーロピウムとの組合せ、イットリウムとアルミニウムとセリウムとの組合せからなる群から選ばれるいずれか1つであり、
前記水溶性ケト酸は、グリオキシル酸、アセト酢酸、ピルビン酸、レブリン酸からなる群から選ばれるいずれか1つであり、
前記水溶性ケト酸と前記金属元素との混合比は、前記金属元素を金属イオンに換算したときに、前記水溶性ケト酸の前記金属イオンに対する混合比が、前記金属イオンの価数と同じモル数以上となる比率であることを特徴とするケト酸金属錯体水溶液の製造方法。 - 1分子中にカルボキシル基とケトン基またはカルボニル基を有する水溶性ケト酸を配位子とし2種以上の金属元素またはそのイオンを含有してなるケト酸金属錯体水溶液を乾燥させて、水溶性ケト酸金属錯体の乾燥物を得、
次いで、この乾燥物を350℃以上かつ600℃以下の温度範囲にて熱分解させ、
次いで、この熱分解生成物を、該熱分解生成物が結晶化する温度以上の温度にて加熱して複合酸化物粒子を得、
前記2種以上の金属元素の組合せは、バリウムとチタンとの組合せ、スカンジウムとジルコニウムとの組合せ、ランタンとユーロピウムとの組合せ、イットリウムとアルミニウムとセリウムとの組合せからなる群から選ばれるいずれか1つであり、
前記水溶性ケト酸は、グリオキシル酸、アセト酢酸、ピルビン酸、レブリン酸からなる群から選ばれるいずれか1つであり、
前記水溶性ケト酸と前記金属元素との混合比は、前記金属元素を金属イオンに換算したときに、前記水溶性ケト酸の前記金属イオンに対する混合比が、前記金属イオンの価数と同じモル数以上となる比率であることを特徴とする複合酸化物粒子の製造方法。 - 前記複合酸化物粒子の結晶構造は、ガーネット構造またはペロブスカイト構造であることを特徴とする請求項5記載の複合酸化物粒子の製造方法。
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