JP5954393B2 - インクジェット記録方法 - Google Patents

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Description

本発明は、被記録面がプラスチック等のインクを吸収しない非吸収性または低吸収性の記録媒体に水性インクでインクジェット記録を行う記録方法に関する。
従来、インクを吸収しない記録媒体または低吸収性の記録媒体対する記録方法については、有機溶剤を主成分とする非水系インクが多く用いられてきた。非水系インクは乾燥が速く、耐水性があり、画像の滲み防止ができるなどの優れる点があるが、記録媒体表面で溶剤が揮発することにより画像が形成されるため、乾燥時における溶剤の臭気や有害性が問題となっていた。更に、有機溶剤による環境への影響も懸念されていた。そこで、インク非吸収性の記録媒体に対しても、安全面および環境を保護する観点から、水性インクを用いる記録方法が求められている。
非水系インクジェットインクで、可塑剤を含有しない樹脂基材又は非吸収性の無機基材を構成要素とする記録媒体に記録するインクジェット記録方法が、例えば特許文献1に開示されている。顔料、定着樹脂、特定の化合物を含有するインクジェットインクであって、作業安全性に優れ、臭気の問題がなく、記録後の乾燥性に優れ、鮮鋭かつ十分な耐擦過性を有する画像を記録することができるとしている。しかし、インクには主溶剤の例としてジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジアセテート等が合計80質量%以上含まれており、水系インクに比べると安全性が著しく低いことは明らかである。更に揮発する多量の溶剤による環境への影響も多大である。
水系インクジェットインクで非吸収性記録媒体に斑等が生じない良好な高速プリント画質が得られ、長期において安定して使用できる水性加熱定着型インクおよびこれを用いた加熱定着型インクジェット記録方法が、例えば特許文献2に開示されている。有機溶剤の添加量は10〜35質量%であり、有機溶剤の例としてジエチレングリコールジエチルエーテルが挙げられている。特定の有機溶剤と水溶性樹脂の組み合わせにより、斑の発生が抑制され良好な記画質が得られるとしている。ところが、特許文献2に挙げられたインク組成物で行った記録では、非吸収性記録媒体に水系インクで記録した場合非水系インクに比べ劣る耐擦過性について十分な強度を得ることができない。
特開2008−303235号公報 特開2008−260820号公報
本発明のいくつかの態様における目的の1つは、被記録面が非吸収性または低吸収性の記録媒体に対して、インクの滲みが少なく高画質であり、耐擦過性が優れた画像が得られるインクジェット記録方式の記録方法を提供することである。
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
[適用例1]本発明に係るインクジェット記録方法の一態様は、
インクジェット記録装置によって、インク非吸収性または低吸収性の記録媒体を40℃以上60℃以下の温度範囲に加熱して水性インク組成物の液滴を吐出する第一の工程と、 前記記録媒体を50℃以上90℃以下の温度範囲に加熱して、該記録媒体上に吐出された前記水性インク組成物を乾燥させる第二の工程と、を含むインクジェット記録方法であって、
前記水性インク組成物は、水と少なくとも一種の水不溶性の着色剤と、水不溶性の熱可塑性樹脂粒子と、界面活性剤と、沸点が150℃以上220℃以下のグリコールジエーテル類から選択される少なくとも一種の第一の溶剤と、1,2−ヘキサンジオールおよび1,2−ペンタンジオールから選択される少なくとも一種からなる第二の溶剤と、沸点が170℃以上220℃以下の範囲であるグリコール類から選択される少なくとも一種からなる第三の溶剤とを含有し、
前記水性インク組成物中における前記第一の溶剤の含有量(W1)が5〜20質量%であり、
前記水性インク組成物中における前記第二の溶剤の含有量(W2)が3〜10質量%であり、
前記水性インク組成物中における前記第三の溶剤の含有量(W3)が5〜15質量%であり、
前記第二の溶剤と前記第三の溶剤の含有量の合計(W2+W3)が22質量%以下であることを特徴とする。
本適用例のインクジェット記録方法によれば、インク非吸収性の記録媒体上に形成された画像の滲みを低減でき、記録物の耐擦過性、速乾性に優れた記録を得ることができる。
[適用例2]上記適用例に記載のインクジェット記録方法において、
前記第一の溶剤であるグリコールジエーテル類が、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする。
[適用例3]上記適用例に記載のインクジェット記録方法において、
前記第三の溶剤であるグリコール類が、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオールから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする。
[適用例4]上記適用例に記載のインクジェット記録方法において、
前記水不溶性の着色剤は顔料であり、水溶性樹脂で水性インク組成物中に分散されていることを特徴とする。
[適用例5]上記適用例に記載のインクジェット記録方法において、
前記水不溶性の熱可塑性樹脂粒子が、アクリル系樹脂またはスチレン−アクリル酸共重合体系樹脂であることを特徴とする。
[適用例6]上記適用例に記載のインクジェット記録方法において、
前記界面活性剤がシリコン系界面活性剤であることを特徴とする。
[適用例7]上記適用例に記載のインクジェット記録方法において、
前記記録媒体の加熱は、ヒーターまたは温風により行うことを特徴とする。
以下に本発明の好適な実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
1.インクジェット記録方法
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録方法は、インクジェット記録装置によって、インク非吸収性または低吸収性の記録媒体を40℃以上60℃以下の温度範囲に加熱して水性インク組成物の液滴を吐出する第一の工程と、前記記録媒体を50℃以上90℃以下の温度範囲に加熱して、該記録媒体上に吐出された前記水性インク組成物を乾燥させる第二の工程とを含むインクジェット記録方法であって、前記水性インク組成物は、水と少なくとも一種の水不溶性の着色剤と、水不溶性の熱可塑性樹脂粒子と、界面活性剤と、沸点が150℃以上220℃以下のグリコールジエーテル類から選択される少なくとも一種からなる第一の溶剤と、1,2−ヘキサンジオールおよび1,2−ペンタンジオールから選択される少なくとも一種からなる第二の溶剤と、沸点が170℃以上220℃以下のグリコール類から選択される少なくとも一種の第三の溶剤とを含有し、前記水性インク組成物中における前記第一の溶剤の含有量(W1)が5〜20質量%であり、前記水性インク組成物中における前記第二の溶剤の含有量(W2)が3〜10質量%であり、前記水性インク組成物中における前記第三の溶剤の含有量(W3)が5〜15質量%であり、前記第二の溶剤と前記第三の溶剤の含有量の合計(W2+W3)が22質量%以下であることを特徴とする。なお、本発明において「画像」とは、ドット群から形成される印字パターンを示し、テキスト印字、ベタ印字も含める。
1.1.インクジェット記録工程
本発明の一実施形態におけるインクジェット記録方法は、インクジェット記録装置によって、インク非吸収性または低吸収性の記録媒体上を40℃以上60℃以下の温度範囲に加熱して水性インク組成物の液滴を吐出する第一の工程と、前記記録媒体を50℃以上90℃以下の温度範囲に加熱して、該記録媒体上に吐出された前記水性インク組成物を乾燥させる第二の工程とを含むことを特徴とする。
インクジェット記録装置としては、インクの液滴を吐出して、液滴を記録媒体上に付着させて記録を行うことができるものであれば特に限定されないが、印刷時に記録媒体を加熱できる機能を備えていることが好ましい。ここで、「印刷時」とは、記録媒体がインクジェット記録装置の紙案内部に搬送されてから、インクジェット記録装置によりインクの液滴を吐出して、液滴を記録媒体上に付着させた後に、該記録媒体がインク乾燥機構に搬送されるまでの時間のことをいう。
記録媒体を加熱できる機能としては、例えば、記録媒体に熱源を直接接触させて加熱するプリントヒーター機能や、記録媒体に直接接触させないで赤外線やマイクロウェーブ(2,450MHz程度に極大波長をもつ電磁波)などを照射したり、温風を吹き付けたりするドライヤー機能などが挙げられる。プリントヒーター機能およびドライヤー機能は、それぞれ単独で使用することもできるし、同時に使用することもできる。これにより、印刷時の乾燥温度を調節することができる。
また、インクジェット記録装置によりインクの液滴を吐出して、液滴を付着させた記録媒体を所定の温度に設定された乾燥機や恒温槽で乾燥させてもよい。
記録媒体としては、インク非吸収性または低吸収性の記録媒体を用いる。インク非吸収性の記録媒体として、例えば、インクジェット印刷用に表面処理をしていない(すなわち、インク吸収層を形成していない)プラスチックフィルム、紙等の基材上にプラスチックがコーティングされているものやプラスチックフィルムが接着されているもの等が挙げられる。ここでいうプラスチックとしては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。インク低吸収性の記録媒体として、アート紙、コート紙、マット紙等の印刷本紙が挙げられる。
ここで、本明細書において「インク非吸収性または低吸収性の記録媒体」とは、「ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下である記録媒体」を示す。このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙−液体吸収性試験方法−ブリストー法」に述べられている。
インクジェット記録装置を用いたインクジェット記録方法は、例えば、次の様に行うことができる。まず、水性インク組成物(後述)を液滴として40℃以上60℃以下の温度範囲に加熱した記録媒体上に吐出する。これにより、記録媒体上に画像を形成することができる。インクジェット吐出方法としては、従来公知の方式はいずれも使用でき、特に圧電素子の振動を利用して液滴を吐出させる方法(電歪素子の機械的変形によりインク滴を形成するインクジェットヘッドを用いた記録方法)においては優れた画像記録を行うことが可能である。
次に、インクジェット記録装置に備えられたプリントヒーターおよびドライヤーによって、記録媒体を50℃以上90℃以下の温度範囲に加熱して、記録媒体上に吐出された水性インク組成物(後述)を乾燥させる。本工程によって、記録媒体上に吐出された水性インク組成物中に含有される水分等が速やかに蒸発飛散して、水性インク組成物中に含まれる樹脂粒子(後述)によって被膜が形成される。これにより、記録媒体上において、濃淡むらや滲みが少ない高画質な画像を短時間で得ることができ、樹脂粒子の被膜を形成させることで記録媒体上にインク乾燥物が接着するため画像が定着する。
記録媒体の加熱温度範囲は、50℃以上90℃以下である。記録媒体の加熱温度が50℃以上であれば、水性インク組成物中の液媒体の蒸発飛散を効果的に促進することができる。この時の加熱温度は、高温であるほど速乾性、耐擦性、画像の滲み低減のいずれについても有利である。ただし、記録媒体の加熱温度が90℃を超える場合、記録媒体の種類によっては変形が生じたり、記録媒体の加熱冷却の際に記録画像の収縮等の不具合が起こる場合がある。また、加熱に使用されるヒーターの消費電力の増大や、加熱機構によるインクジェットプリンターからの排熱が増大する等の好ましくない課題があり、これらを踏まえて、記録媒体の加熱温度の上限は90℃であることが好ましい。
記録媒体の加熱時間は、水性インク組成物中に存在する液媒体が蒸発飛散し、かつ樹脂定着剤の被膜を形成することができれば特に制限はなく、用いる溶媒、樹脂粒子、印刷速度等を加味して適宜設定することができる。
1.2.水性インク組成物
以下、本発明の一実施形態におけるインクジェット記録方法に用いる水性インク組成物について、詳細に説明する。
1.2.1.溶媒
本実施形態に係るインクジェット記録方法で使用する水性インク組成物は、沸点が150℃以上220℃以下のグリコールジエーテル類から選択される少なくとも一種からなる第一の溶剤と、1,2−ヘキサンジオールおよび1,2−ペンタンジオールから選択される少なくとも一種からなる第二の溶剤と、沸点が170℃以上220℃以下のグリコール類から選択される少なくとも一種からなる第三溶剤とを含有する。
沸点が150℃以上220℃以下のグリコールジエーテル類から選択される少なくとも一種からなる第一の溶剤は、第二の溶剤に比較して低沸点の溶剤を選択してインクジェット記録の水性インク組成物に添加されることで、加熱乾燥の第二の工程の初期段階で第三の溶剤とともに第一の溶剤が揮発して、インクの記録媒体上での乾燥を速める。インク乾燥性が高いことは、加熱乾燥にかかる時間や加熱温度を下げることができるとともに、インクの凝集によるむらや滲みを減少させて画質を向上させる。
また、グリコールジエーテル類から選択される少なくとも一種からなる第一の溶剤は、熱可塑性樹脂粒子を緩慢に溶解または膨潤し、記録媒体にインクが付着して溶剤が揮発するまでの間に、インク組成物中の非揮発成分である着色剤を主成分とする固化物を熱可塑性樹脂粒子とともに固着させる効果を有する。
なお、グリコールジエーテルの熱可塑性樹脂粒子の溶解性は、次の方法により判定することができる。ガラスプレート上に熱可塑性樹脂粒子を水に分散したエマルジョン0.05gを滴下し、室温で1日置いて水分を蒸発させた後、残留物である熱可塑性樹脂粒子の固化物が付着したガラスプレートをグリコールジエーテルが入った容器に浸し、前記固化物の状態を観察する。状態に変化が無ければ溶解性なし、前記固化物に白濁、割れ、軟化、膨潤、溶け出しがあれば熱可塑性樹脂粒子溶解性ありと判定できる。
前記の判定方法により選定された熱可塑性樹脂粒子溶解性を有する沸点が150℃以上220℃以下であるグリコールジエーテルとしては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルである。これらのうち、特に好ましくは、沸点が190℃以上220℃以下であるジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルが挙げられる。
第一の溶剤の含有量(W1)は、水性インク組成物の全質量に対して、5質量%以上20質量%以下である。また、第一の溶剤の含有量(W1)は、水性インク組成物の全質量に対して、7質量%以上14質量%以下がより好ましい。
水性インク組成物中の前記第一の溶剤の含有量(W1)を5質量%以上とすることで、インク非吸収性または低吸収性の記録媒体上に形成した画像は良好な耐擦性を有する。また、水性インク組成物中の前記第一の溶剤の含有量(W1)を7質量%以上とすることで、インク非吸収性または低吸収性の記録媒体上に形成した画像はさらに良好な耐擦性を示す。また、水性インク組成物中の前記第一の溶剤の含有量(W1)が20質量%以下であれば、印刷物の加熱工程で発生する溶剤臭を十分少なくすることができる。また、水性インク組成物中の前記第一の溶剤の含有量(W1)が14質量%以下であれば、加熱工程において発生する溶剤臭を一層削減することができる。一方、水性インク組成物中の前記第一の溶剤の含有量(W1)が20質量%を超えると、加熱工程で短時間に溶剤が揮発して溶剤臭が増えるため好ましくない。
1,2−ヘキサンジオールおよび1,2−ペンタンジオールから選択される少なくとも一種からなる第二の溶剤は、界面活性剤と相乗して、記録媒体に対する水性インク組成物の濡れ性をさらに高めて、記録媒体上でインクを均一に濡らす作用を有する低表面張力の溶剤である。ここで、低表面張力の溶剤とは室温での表面張力が40mN/m以下の溶剤を指す。記録媒体上でインクが均一に濡れることで、記録媒体上のインクの濃淡むらや滲みを低減させることができる。
第二の溶剤は、被記録面が非吸収性のプラスチックからなる記録媒体に対して、記録媒体上でインクを均一に濡らす作用に優れているため、形成された画像の滲みが低減される。
第二の溶剤の含有量(W2)は、水性インク組成物の全質量に対して、3質量%以上10質量%以下である。また、第二の溶剤の含有量(W2)は、水性インク組成物の全質量に対して、4質量%以上8質量%以下がより好ましい。
水性インク組成物中の前記第一の溶剤の含有量(W2)が7質量%以上であれば、水性インク組成物中の前記第二の溶剤の含有量(W2)を4質量%以上とすることで、画像の滲みは一層低減される。また、水性インク組成物中の前記第二の溶剤の含有量(W2)が8質量%以下であれば、記録媒体上の画像をより速く乾燥させることができる。一方、水性インク組成物中の前記第二の溶剤の含有量(W2)が3質量%未満であると、非吸収性の記録媒体に対するインクの濡れ性が乏しくなり、良好な画質が得られない場合がある。また、水性インク組成物中の前記第二の溶剤の含有量(W2)が10質量%を超えると、溶剤が蒸発飛散し難くなり、画像の乾燥が不十分になる場合がある。
本実施形態に係る印刷方法で使用する水性インク組成物は、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオールから選択される第三の溶剤を含有する。第三の溶剤の機能の一つとしては、インクジェットヘッドのノズル面でのインクの乾燥固化を抑制して、ノズル目詰まりやインクの吐出不良等を防止することが挙げられる。また、第三の溶剤の他の機能の一つとしては、水性インク組成物中の水の蒸発を抑制して、インク中の顔料や樹脂成分等の固形分の凝集・析出を防止することが挙げられる。プロピレングリコールの沸点は約188℃、1,3−プロパンジオールの沸点は約213℃である。
第三の溶剤の含有量(W3)は、水性インク組成物全量に対して、5質量%以上15質量%以下である。水性インク組成物中の前記第三の溶剤の含有量(W3)が5質量%未満であると、ノズル目詰まりを生じやすくなる場合がある。一方、水性インク組成物中の前記第三の溶剤の含有量(W3)が15質量%を超えると、インクの乾燥速度の低下による印刷物の画質低下を招く場合があり、また、記録媒体上でのインクの固化・定着が阻害されて、印刷物の耐擦性が低下する場合がある。
水性インク組成物中の前記第二の溶剤と第三の溶剤の含有量の合計(W2+W3)は、水性インク組成物の全質量に対して、22質量%以下である。前記第二の溶剤と第三の溶剤の含有量の合計(W2+W3)が22質量%を超えると、記録媒体を乾燥する加熱工程で、溶剤が十分揮発せず残留して画像の耐擦性を低下させる。
1.2.2.着色剤
本実施形態に係るインクジェット記録方法で使用する水性インク組成物は、水不溶性の着色剤を含有する。水不溶性の着色剤としては、水不溶性の染料または顔料が挙げられるが、顔料であることが好ましい。顔料は、水に不溶あるいは難溶であるだけでなく、光やガス等に対しても退色しにくい性質を有している。このため、顔料を用いたインク組成物で印刷した記録物は、耐水性、耐ガス性、耐光性等に優れ、保存性が良好となるからである。
水性インク組成物は、水系インクジェット記録用インク組成物において従来から使用されている任意の顔料を含むことができる。顔料としては、例えば、インクジェット記録用インク組成物において従来から使用されている有機顔料または無機顔料を用いることができる。
無機顔料としては、酸化チタンおよび酸化鉄や、コンタクト法、ファーネスト法、またはサーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを利用することができる。
有機顔料としては、アゾ顔料(例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、またはキレートアゾ顔料)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ベリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、またはキノフタロン顔料)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、または酸性染料型キレート)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、またはアニリンブラックなどを利用することができる。これらの顔料のうち、水との親和性が良好な顔料を用いるのが好ましい。
より具体的には、黒色インク用顔料として、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、若しくはチャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅酸化物、鉄酸化物(C.I.ピグメントブラック11)、若しくは酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料を挙げることができる。
適なカーボンブラックの具体例としては、三菱化学株式会社製のカーボンブラックとして、No.2300、900、MCF88、No.20B、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No2200B等が挙げられる。デグサ社製のカーボンブラックとして、カラーブラックFW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、プリテックス35、U、V、140U、スペシャルブラック6、5、4A、4、250等が挙げられる。コロンビアカーボン社製のカーボンブラックとして、コンダクテックスSC、ラーベン1255、5750、5250、5000、3500、1255、700等が挙げられる。キャボット社製のカーボンブラックとして、キャボット社製のリガール400R、330R、660R、モグルL、モナーク700、800、880、900、1000、1100、1300、400、エルフテックス12等が挙げられる。
カラーインク用顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG)、3、12(ジスアゾイエローAAA)、13、14、17、23、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83(ジスアゾイエローHR)、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、151、154、155、180、185、213;C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22(ブリリアントファーストスカーレット)、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ba))、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3(パーマネントレッド2B(Sr))、48:4(パーマネントレッド2B(Mn))、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81(ローダミン6Gレーキ)、83、88、92、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、トバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19(キナクリドンレッド)、23、38;またはC.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルーR)、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルーG)、15:4、15:6(フタロシアニンブルーE)、16、17:1、56、60、63;等を使用することができる。
顔料の粒径は、特に限定されるものではないが、平均粒径として、好ましくは25μm以下、より好ましくは2μm以下である。平均粒径が25μm以下の顔料を用いることにより、目詰まりの発生を抑制することができ、一層充分な吐出安定性を実現することができる。
顔料の含有量は、インク組成物全体に対して、好ましくは0.5〜15質量%、より好ましくは1.0〜10.0質量%である。
上記の顔料は、水性インク組成物中でより安定的に分散保持されやすくするために、各種の方法を適用することができる。その方法としては、たとえば、水溶性樹脂を用いて分散させる方法、界面活性剤を用いて分散させる方法、顔料粒子表面に親水性官能基を化学的・物理的に導入し、分散および/または溶解可能とする方法等が挙げられる。本実施形態に係る印刷方法に使用される水性インク組成物には、前記のいずれの方法も用いることができ、必要に応じて各方法を組み合わせた形態で用いることもできる。特に、水溶性樹脂により顔料が水性インク組成物中に分散される方法では、水性インク記録物が記録媒体に付着したときに、記録媒体とインク組成物、および/または、インク組成物中の固化物間の密着性を高めることがあり好ましい。また、顔料粒子表面に親水性官能基を化学的・物理的に導入して顔料を水性インク組成物中に分散させる方法は、顔料の分散安定性を高め、該水性インク組成物の保存安定性を良好にする点で好ましい。
顔料の分散に使用できる水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α―メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α―メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体等およびこれらの塩が挙げられる。これらの中で、特に疎水性官能基を有するモノマーと親水性官能基を持つモノマーとの共重合体、疎水性官能基と親水性官能基とを併せ持つモノマーからなる重合体が好ましい。共重合体の形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれの形態でも用いることができる。
上記の塩としては、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリ−iso−プロパノールアミン、アミノメチルプロパノール、モルホリン等の塩基性化合物との塩が挙げられる。これら塩基性化合物の添加量は、上記水溶性樹脂の中和当量以上であれば特に制限はない。
上記顔料の分散に使用できる水溶性樹脂の分子量は、重量平均分子量として1,000〜100,000の範囲であることが好ましく、3,000〜10,000の範囲であることがより好ましい。分子量が上記範囲であることにより、着色剤の水中での安定的な分散が得られ、また水性インク組成物に適用した際の粘度制御等がしやすい。また、酸価としては50〜300の範囲であることが好ましく、70〜150の範囲であることがより好ましい。酸価がこの範囲であることにより、着色剤粒子の水中での分散性が安定的に確保でき、またこれを用いた水性インク組成物にて印刷された印刷物の耐水性が良好である。
以上述べた顔料の分散に使用できる水溶性樹脂としては、市販品を用いることもできる。詳しくは、ジョンクリル67(重量平均分子量:12,500、酸価:213)、ジョンクリル678(重量平均分子量:8,500、酸価:215)、ジョンクリル586(重量平均分子量:4,600、酸価:108)、ジョンクリル611(重量平均分子量:8,100、酸価:53)、ジョンクリル680(重量平均分子量:4,900、酸価:215)、ジョンクリル682(重量平均分子量:1,700、酸価:238)、ジョンクリル683(重量平均分子量:8,000、酸価:160)、ジョンクリル690(重量平均分子量:16,500、酸価:240)(以上商品名、BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。
顔料を分散させるために用いることができる界面活性剤としては、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アシルメチルタウリン酸塩、ジアルキルスルホ琥珀酸塩、アルキル硫酸エステル塩、硫酸化オレフィン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、モノグリセライトリン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、アルキルピリジウム塩、アルキルアミノ酸塩、アルキルジメチルベタイン等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミド、グリセリンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。
顔料の分散に使用できる上記水溶性樹脂または上記界面活性剤の顔料に対する添加量は、顔料1質量%に対して好ましくは1質量%〜100質量%であり、より好ましくは5質量%〜50質量%である。この範囲であることにより、顔料の水中への分散安定性が確保できる。
顔料粒子表面に親水性官能基を化学的・物理的に導入し、分散および/または溶解可能とする方法としては、顔料に親水性官能基として、−OM、−COOM、−CO−、−SO3M、−SO2NH2、−RSO2M、−PO3HM、−PO32、−SO2NHCOR、−NH3、−NR3(但し、式中のMは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表し、Rは、炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基または置換基を有していてもよいナフチル基を表す。)等を導入する方法が挙げられる。これらの官能基は、顔料粒子表面に直接および/または他の基を介してグラフトされることによって、物理的および/または化学的に導入される。多価の基としては、炭素数が1〜12のアルキレン基、置換基を有していてもよいフェニレン基又は置換基を有していてもよいナフチレン基等を挙げることができる。
また、前記の表面処理方法としては、硫黄を含む処理剤によりその顔料粒子表面に−SO3Mおよび/または−RSO2M(Mは対イオンであって、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、又は有機アンモニウムイオンを示す。)が化学結合するように表面処理されたもの、すなわち、前記顔料が、活性プロトンを持たず、スルホン酸との反応性を有せず、顔料が不溶ないしは難溶である溶剤中に、顔料を分散させ、次いでアミド硫酸、又は三酸化硫黄と第三アミンとの錯体によりその粒子表面に−SO3Mおよび/または−RSO2Mが化学結合するように表面処理され、水に分散および/または溶解が可能なものとされたものであることがより好ましい。
前記官能基またはその塩を顔料粒子の表面に直接または多価の基を介してグラフトさせる表面処理手段としては、種々の公知の表面処理手段を適用することができる。例えば、市販の酸化カーボンブラックにオゾンや次亜塩素酸ソーダ溶液を作用し、カーボンブラックをさらに酸化処理してその表面をより親水化処理する手段(例えば、特開平7−258578号公報、特開平8−3498号公報、特開平10−120958号公報、特開平10−195331号公報、特開平10−237349号公報)、カーボンブラックを3−アミノ−N−アルキル置換ピリジウムブロマイドで処理する手段(例えば、特開平10−195360号公報、特開平10−330665号公報)、有機顔料が不溶又は難溶である溶剤中に有機顔料を分散させ、スルホン化剤により顔料粒子表面にスルホン基を導入する手段(例えば、特開平8−283596号公報、特開平10−110110号公報、特開平10−110111号公報)、三酸化硫黄と錯体を形成する塩基性溶剤中に有機顔料を分散させ、三酸化硫黄を添加することにより有機顔料の表面を処理し、スルホン基又はスルホンアミノ基を導入する手段(例えば、特開平10−110114号公報)等が挙げられるが、本発明で用いられる表面処理顔料のための作製手段はこれらの手段に限定されるものではない。
一つの顔料粒子にグラフトされる官能基は単一でも複数種であってもよい。グラフトされる官能基の種類及びその程度は、インク中での分散安定性、色濃度、及びインクジェットヘッド前面での乾燥性等を考慮しながら適宜決定されてよい。
顔料を水中に分散させる方法としては、樹脂分散剤については顔料と水と水溶性樹脂、界面活性剤については顔料と水と界面活性剤、表面処理された顔料については該顔料と水、また各々に必要に応じて水溶性有機溶剤・中和剤等を加えて、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータミル、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、ジェットミル、オングミル等の従来用いられている分散機にて行なうことができる。この場合、顔料の粒径としては、前記の通り平均粒径として、好ましくは25μm以下、より好ましくは2μm以下になるまで分散することが、顔料の水中での分散安定性を確保する点で好ましい。
1.2.3.熱可塑性樹脂粒子
本実施形態に係るインクジェット記録方法で使用する水性インク組成物は、熱可塑性樹脂粒子を含有する。熱可塑性樹脂粒子は、前記記録媒体を50℃以上90℃以下の温度範囲に加熱して、該記録媒体上に吐出された前記水性インク組成物が乾燥する工程で、インクを固化させ、さらにインク固化物を記録媒体上に強固に定着させる作用を有する。この作用により樹脂粒子を含有する水性インク組成物で記録された記録物は、インク非吸収性または低吸収性の記録媒体上で耐擦性に優れる。
熱可塑性樹脂粒子は、水性インク組成物中に完全に溶解するように添加されていてもよく、粒子として分散している状態即ちエマルジョン状態またはサスペンジョン状態となるような粒子として含有されていてもよい。本実施形態に係るインクジェット記録方法で使用する水性インク組成物は、エマルジョン状態またはサスペンジョン状態の樹脂粒子で含有されることが好ましい。エマルジョン状態またはサスペンジョン状態の樹脂粒子を含有することにより、水性インク組成物の粘度を本実施形態に係るインクジェット記録方法における適正な範囲に容易に調整することができるため、保存安定性や吐出安定性を確保しやすい。
熱可塑性樹脂粒子の成分としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、シアノアクリレート、アクリルアミド、オレフィン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルアルコール、ビニルエーテル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、塩化ビニリデンの単独重合体もしくは共重合体、フッ素樹脂、天然樹脂等が挙げられる。なお、共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれの形態でも用いることができる。熱可塑性樹脂粒子として好ましくは、アクリル系樹脂またはスチレン−アクリル酸共重合体系樹脂である。
上記の樹脂粒子としては、公知の材料・方法で得られるものを用いることもできる。例えば、特公昭62−1426号公報、特開平3−56573号公報、特開平3−79678号公報、特開平3−160068号公報、特開平4−18462号公報等に記載のものを用いてもよい。また、市販品を用いることもでき、例えば、マイクロジェルE−1002、マイクロジェルE−5002(以上商品名、日本ペイント株式会社製)、ボンコート4001、ボンコート5454(以上商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)、SAE1014(商品名、日本ゼオン株式会社製)、サイビノールSK−200(商品名、サイデン化学株式会社製)、ジョンクリル7100、ジョンクリル390、ジョンクリル711、ジョンクリル511、ジョンクリル7001、ジョンクリル632、ジョンクリル741、ジョンクリル450、ジョンクリル840、ジョンクリル74J、ジョンクリルHRC−1645J、ジョンクリル734、ジョンクリル852、ジョンクリル7600、ジョンクリル775、ジョンクリル537J、ジョンクリル1535、ジョンクリルPDX−7630A、ジョンクリル352J、ジョンクリル352D、ジョンクリルPDX−7145、ジョンクリル538J、ジョンクリル7640、ジョンクリル7641、ジョンクリル631、ジョンクリル790、ジョンクリル780、ジョンクリル7610(以上商品名、BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。
1.2.4.界面活性剤
本実施形態に係るインクジェット記録方法で使用する水性インク組成物は、界面活性剤を含有する。界面活性剤は、前記記録媒体上でインクの濃淡むらや滲みを生じないように均一に広げる作用を有する。
界面活性剤として好ましくは、シリコン系界面活性剤が挙げられる。シリコン系界面活性剤としては、ポリシロキサン系化合物等が好ましく用いられ、例えば、ポリエーテル変性オルガノシロキサン等が挙げられる。また、市販品を用いることでき、例えば、BYK−306、BYK−307、BYK−333、BYK−341、BYK−345、BYK−346、BYK−348(以上商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017(以上商品名、信越化学株式会社製)等が挙げられる。
1.2.5.水
本実施形態に係るインクジェット記録方法で使用する水性インク組成物は、水を含有する。水は、水性インク組成物の主となる媒体であり、上述した乾燥工程において蒸発飛散する成分である。
水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水または超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものであることが好ましい。また、紫外線照射または過酸化水素添加等により滅菌した水を用いると、顔料分散液およびこれを用いた水性インク組成物を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。
1.2.6.その他の溶剤成分
本実施形態に係るインクジェット記録方法で使用する水性インク組成物は、保湿作用を持つあるいは低表面張力である溶剤をさらに含有することができる。例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、iso−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、n−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−ペンタノール、N−メチル−2−ピロリドン、テトラメチル尿素、ジメチルスルフォキシド、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、N,N’−ジメチルプロピレン尿素等の水溶性の溶剤が挙げられる。
1.2.7.その他の含有成分
本実施形態に係るインクジェット記録方法で使用する水性インク組成物は、さらに、pH調整剤、防腐剤・防かび剤、防錆剤、キレート化剤等を含有することができる。
pH調整剤としては、例えば、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
防腐剤・防かび剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン等が挙げられる。市販品では、プロキセルXL2、プロキセルGXL(以上商品名、アビシア社製)や、デニサイドCSA、NS−500W(以上商品名、ナガセケムテックス株式会社製)等が挙げられる。
防錆剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
キレート化剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸およびそれらの塩類(エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム塩等)等が挙げられる。
1.2.7物性
本実施の形態に係るインクジェット記録方法に用いる水性インク組成物の20℃における粘度は、好ましくは2mPa・s以上10mPa・s以下であり、より好ましくは3mPa・s以上8mPa・s以下である。水性インク組成物の20℃における粘度が上記範囲内にあると、ノズルから水性インク組成物の液滴が適量吐出され、液滴の飛行曲がりや飛散を一層低減することができるため、インクジェット記録装置に好適に使用することができる。水性インク組成物の粘度は、振動式粘度計VM−100AL(山一電機株式会社製)を用いて、水性インク組成物の温度を20℃に保持することで測定できる。
2.実施例
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
2.1.水性インク組成物の調製
2.1.1顔料分散液の調製
本実施例で用いる水性インク組成物は、着色剤として水不溶性の顔料を使用した。顔料を水性インク組成物に添加する際には、あらかじめ該顔料を水溶性樹脂で分散させた。
顔料分散液は、以下のようにして調製した。まず、30%アンモニア水溶液(中和剤)0.6質量部を溶解させたイオン交換水84.4質量部に、水溶性樹脂として3.0質量部のスチレン−アクリル酸共重合体(重量平均分子量:25,000、酸価:180)を加えて溶解させた。そこに、下記顔料12質量部を加えてジルコニアビーズにて10時間分散処理をおこなった。その後、遠心分離機による遠心ろ過を行って、粗大粒子やごみ等の不純物を除去し、顔料濃度が12質量%になるように調製した。以下に、顔料分散液の製造に使用した顔料種を示す。
C.I.ピグメントブラック7(ブラック顔料分散液に使用)
C.I.ピグメントイエロー74(イエロー顔料分散液に使用)
C.I.ピグメントレッド122(マゼンタ顔料分散液に使用)
C.I.ピグメントブルー15:3(シアン顔料分散液に使用)
2.1.2.水性インク組成物およびインクセットの調製
上記の「2.1.1顔料分散液の調製」で調製した顔料分散液をもちいて、表1、表2、表3に示す材料組成にて、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色の水性インク組成物を1組のインクセットとし、異なる組成を有するインクセット実施例1〜実施例14、比較例1〜比較例8を得た。各水性インク組成物は、上記顔料分散液と表1、表2、表3に示す材料を容器中に入れ、マグネチックスターラーにて1時間攪拌混合した後、孔径5μmのメンブレンフィルターにてろ過して粗大粒子やごみ等の不純物を除去することにより調製した。なお、表1、表2、表3中の数値は、全て質量%を示し、イオン交換水は、各水性インク組成物の合計が100質量%になるように調製した。
Figure 0005954393
Figure 0005954393
表1、表2、表3において、界面活性剤は、シリコン系界面活性剤「BYK−348」(ビックケミー・ジャパン株式会社製)を用いた。
2.2.評価試験
2.2.1.速乾性の評価
(1)記録物の作成
インクジェットプリンターPX−G930(セイコーエプソン株式会社製)の一部を改造して、紙案内部に温度が可変できるヒーターを取り付けて、画像の記録時に記録媒体を加熱調整できるようにした。
2.1で調製した実施例1〜実施例14、比較例1〜比較例7のシアンインクを前記インクジェットプリンターにそれぞれ充填した。記録媒体としてプラスチックメディア(商品名「コールドラミネートフィルムPG−50L」、株式会社ラミーコーポレーション製、PETフィルム)を用い、ベタパターンを記録した。ベタパターン画像は、縦720dpi、横720dpiの解像度で、印刷インク量0.8mg/cm2となるように形成した。
記録物は、前記インクジェットプリンターを用いて、紙案内部のヒーターを調製して記録時に記録媒体が50℃になる様にし、記録直後記録媒体を60℃の恒温槽内に静置して、10分間乾燥し作成した。
(2)記録物の評価
得られた記録物の速乾性について、乾燥を終えて恒温槽内から記録物を取り出し、取り出して室温に戻した直後に、指で記録部分を触って、以下の評価基準で判定した。表1、表2に評価結果を速乾性として示す。
○:指へのインクの付着なし。
△:記録物表面のべたつきが残るが、指へのインク付着はなく、べたつきは実使用上許容できる。
×:指へのインクの付着あり。
2.2.2.耐擦性の評価
(1)記録物の作成
2.2.1で用いたインクジェットプリンターに、2.1で調製した実施例1〜実施例14、比較例1〜比較例7のシアンインクをそれぞれ充填した。記録媒体プラスチックメディア(商品名「コールドラミネートフィルムPG−50L」、株式会社ラミーコーポレーション製、PETフィルム)を用い、ベタパターンを記録した。ベタパターン画像は、縦720dpi、横720dpiの解像度で、印刷インク量1.0mg/cm2となるように形成した。
記録物は、前記インクジェットプリンターを用いて、紙案内部のヒーターを調整して記録時に記録媒体が50℃となる様にし、記録直後記録媒体を60℃の恒温槽内に静置して、10分間乾燥し作成した。
(2)記録物の評価方法
得られた記録物を20℃で16時間保った後、学振型摩擦堅牢試験機AB−301(テスター産業株式会社製を用いて、荷重500g,摩擦回数10回の条件で、摩擦用白綿布を取り付けた摩擦子と記録物とを擦り合わせ、画像の表面状態を目視にて観察した。以下の評価基準で判定した。表1、表2に評価結果を耐擦性として示す。
○:10回擦ってもキズがない
△:10回擦って表面に擦り跡が残るが、下地が露出するキズがなく、擦り跡は実使用上許容できる。
×:10回擦って下地が露出するキズがある。
2.2.3.画質の評価
(1)記録物の作成
2.2.1で用いたインクジェットプリンターに、2.1で調製した実施例1〜実施例14、比較例1〜比較例7のインクセットのブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各4色をそれぞれ充填した。記録媒体としてプラスチックメディア(商品名「コールドラミネートフィルムPG−50L」、株式会社ラミーコーポレーション製、PETフィルム)を用い、各色がそれぞれ他の色と接触するベタパターンを記録した。ベタパターン画像は、縦720dpi、横720dpiの解像度で、印刷インク量1.2mg/cm2となるように形成した。
記録物は、前記インクジェットプリンターを用いて、紙案内部のヒーターを調整して記録時に記録媒体が50℃となる様にし、記録直後記録媒体を60℃の恒温槽内に静置して、10分間乾燥し作成した。
(2)記録物の評価方法
得られた記録物について、各色の他色との接触部分の滲みを観察し、以下の評価基準で判定した。表1、表2に評価結果を画質として示す。
○:各色間で滲みなし。
△:他色との接触部分でわずかな曲がりはあるが、明確な滲みではないため、実使用上問題ない。
×:各色間で滲みあり。
表1に記載の実施例1〜実施例14の水性インク組成物を使用した場合は、速乾性の評価結果からいずれも良好な速乾性を有することが確認できた。また、耐擦性の評価結果から非吸収性の記録媒体に記録された画像の表面にキズがつき難く、耐擦性に優れていることが示された。また、画質の評価結果から、非吸収性記録媒体に記録された画像に滲みがないまたは実使用上問題のない滲みしか発生しないことが確認された。
表1に記載する第一の溶剤の含有量(W1)が14質量%の実施例6および実施例12および実施例14の水性インク組成物を使用した場合は、加熱印刷時に溶剤の臭いは感じられなかった。一方、表1に記載する第一の溶剤の含有量(W1)が20質量%の実施例4および実施例8および実施例10および実施例13の水性インク組成物を使用した場合は、加熱印刷時にわずかに溶剤臭がする場合があったが、実使用上問題とならない程度であった。
表2に記載の比較例1および比較例2の水性インク組成物を使用した場合は、第二の溶剤と第三の溶剤の合計(W2+W3)が22質量%を超えているため、耐擦性の優れない記録物を形成した。
表2に記載の比較例3の水性インク組成物を使用した場合は、第二の溶剤の含有量(W2)が3質量%未満であるため、滲みが多くなり画質が優れない記録物を形成した。
表2に記載の比較例4の水性インク組成物を使用した場合は、第二の溶剤の含有量(W2)が10質量%を超えているため、速乾性の優れない記録物を形成した。
表2に記載の比較例5の水性インク組成物を使用した場合は、第三の溶剤(W3)が15質量%を超えているため、速乾性の優れない記録物を形成した。
表2に記載の比較例6の水性インク組成物を使用した場合は、第二の溶剤と第三の溶剤の合計(W2+W3)が22質量%を超えているため、耐擦性の優れない記録物を形成した。また、第三の溶剤の含有量(W3)が15質量%を超えているため、速乾性の優れない記録物を形成した。
表2に記載の比較例7の水性インク組成物を使用した場合は、第一の溶剤(W1)が5質量%未満であるため、耐擦性の優れない記録物を形成した。
2.2.4.吐出安定性の評価
(1)記録物の作成
2.2.1で用いたインクジェットプリンターに、2.1で調製した実施例1、実施例2および比較例8のブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各4色をそれぞれ充填した。普通紙(富士ゼロックスP紙等)を加熱せず水性インク組成物を普通紙上に10分間連続して吐出し、全ノズルが正常に吐出することを確認した。次いで、50℃に加熱した普通紙上に平均duty10%のテキストと図形の混合パターンの連続印刷を所定時間行い、記録物を得た。なお、1ドット当たりの吐出インク重量は20ngとし、解像度は縦720dpi、横720dpiとした。
(2)記録物の評価方法
得られた記録物の「ドット抜け」および「曲がり」を観察して評価した。ここで、「曲がり」とは、記録物上におけるインク着弾位置のずれのことをいう。記録物を以下の評価基準で判定した。表3に評価結果を吐出安定性として示す。
○:印刷開始から1時間経過後、ドット抜けおよび曲がりはない。
△:印刷開始から1時間経過後、ドット抜けは発生せず一部に曲がりが発生するが、実使用上許容できる。
×:印刷開始から1時間経過後、ドット抜けおよび曲がりが多発する。
Figure 0005954393
表3に記載の実施例1および実施例2の水性インク組成物を使用した場合は、いずれもドット抜けは発生せず、一部に曲がりが発生するが、実使用上許容できる結果であった。一方、表3に記載の比較例8の水性インク組成物を使用した場合は、第三の溶剤(W3)が5質量%未満であるため、ドット抜けおよび曲がりが多発する結果となった。
2.2.5.加熱温度評価
(1)加熱温度と耐擦性
実施例1のシアンインクで、2.2.2(1)と同じ方法で記録物を作成した。ただし、記録直後の乾燥条件のみ記録媒体を50℃の恒温槽内に10分間静置の乾燥に変更した。
得られた記録物を、2.2.2(2)と同じ方法で評価した。表1に示す実施例1の結果と異なり、表面にキズの発生が確認された。
(2)加熱温度と画質
実施例1のブラック、イエロー、マゼンタ、シアンのインクセットで、2.2.3(1)と同じ方法で記録物を作成した。ただし、記録時の加熱温度を35℃、40℃、60℃に変更した。
得られた記録物は、記録時の加熱温度が40℃、60℃のものは表1記載の実施例1の画質評価結果と同様に、隣接した色同士で滲みは発生しなかった。記録時の加熱温度が35℃のものは表1記載の実施例1の画質評価結果と異なり、隣接した色同士で滲みが発生した。
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。

Claims (7)

  1. インクジェット記録装置によって、インク非吸収性の記録媒体を40℃以上60℃以下の温度範囲に加熱して水性インク組成物の液滴を吐出する第一の工程と、
    前記記録媒体を50℃以上90℃以下の温度範囲に加熱して、該記録媒体上に吐出された前記水性インク組成物を乾燥させる第二の工程と、
    を含むインクジェット記録方法であって、
    前記水性インク組成物は、水と少なくとも一種の水不溶性の着色剤と、水不溶性の熱可塑性樹脂粒子と、界面活性剤と、
    沸点が150℃以上220℃以下のグリコールジエーテル類から選択される少なくとも一種の第一の溶剤と、
    1,2−ヘキサンジオールおよび1,2−ペンタンジオールから選択される少なくとも一種からなる第二の溶剤と、
    沸点が170℃以上220℃以下の範囲であるグリコール類から選択される少なくとも一種からなる第三の溶剤とを含有し、
    前記水性インク組成物中における前記第一の溶剤の含有量(W1)が5〜20質量%であり、
    前記水性インク組成物中における前記第二の溶剤の含有量(W2)が3〜10質量%であり、
    前記水性インク組成物中における前記第三の溶剤の含有量(W3)が5〜15質量%であり、
    前記第二の溶剤と前記第三の溶剤の含有量の合計(W2+W3)が22質量%以下であって、
    前記第一の溶剤が、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、インクジェット記録方法。
  2. 請求項1に記載のインクジェット記録方法において、
    前記第一の工程の後に、前記第二の工程によって、記録媒体上に吐出された前記水性インクを乾燥させることを特徴とする、請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録方法において、
    前記第三の溶剤であるグリコール類が、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオールから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とするインクジェット記録方法。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法において、
    前記水不溶性の着色剤は顔料であり、水溶性樹脂で水性インク組成物中に分散されていることを特徴とするインクジェット記録方法。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法において、
    前記水不溶性の熱可塑性樹脂粒子が、アクリル系樹脂またはスチレン−アクリル酸共重合体系樹脂であることを特徴とするインクジェット記録方法。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法において、
    前記界面活性剤がシリコン系界面活性剤であることを特徴とするインクジェット記録方法。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法において、
    前記記録媒体を加熱は、ヒーターまたは温風により行うことを特徴とするインクジェット記録方法。
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