図2は、太陽光発電量推定システム10の構成を示す模式図である。太陽光発電量推定システム10は、太陽光発電装置(以下「PV装置」という)PVa、PVb、PVcと、電力センサSa、Scと、発電量推定装置18と、通信ネットワークNWと、を有する。電力センサSa、Scと、発電量推定装置18とは、通信ネットワークNWを介して接続されている。PV装置PVa、PVb、PVcをPV装置PVと言うことがある。電力センサSa、Scを電力センサSと言うことがある。
通信ネットワークNWは、双方向にデータを伝送可能なネットワークである。通信ネットワークNWは、例えば、有線ネットワーク若しくは無線ネットワーク、又はそれらの組み合わせで構成される。通信ネットワークNWは、いわゆるインターネットであっても良いし、専用線のネットワークであっても良い。
PV装置PVは、パネルに太陽光を受光することで、日射強度に応じた量の発電を行う。PV装置PVは、発電した電力を、配電線路を通じて電力系統Lに供給する。
電力センサSは、PV装置PVにて発電された発電量を、一定時間ごと(例えば、1秒ごと)に計測する。そして、電力センサSは、その計測した発電量の情報(以下「計測情報」という)115(図4参照)を、通信ネットワークNWを介して、発電量推定装置18に送信する。電力センサSは、柱上変圧器又は開閉器等の内部に設置され得る。
発電量推定装置18は、電力センサSから送信された計測情報115を受信及び保持する。そして、発電量推定装置18は、所定の時刻において、所定の地域内に設置されている各PV装置PVの発電量の合計を予測し、合わせて予測の信頼度の情報を与える。このとき、発電量推定装置18は、電力センサSが設置されていないPV装置PV(例えば、図2のPV装置PVbなど)については、後述する方法により、所定の時刻における発電量を推定する。この発電量推定装置18の詳細については、後述する。以下、発電量推定装置18のハードウェア構成の一例を示す。
発電量推定装置18は、例えば、CPU(Central Processing Unit)901と、メモリ(Random Access Memory)902と、通信デバイス903と、入力デバイス904と、表示デバイス905と、記憶デバイス906とを有する。これら要素901〜906は、双方向にデータ伝送が可能なバス910で接続されている。
CPU901は、コンピュータプログラム(以下「プログラム」という)に記載された内容を実行することにより、後述する各種機能を実現する。各種機能の詳細については後述する。
メモリ902は、CPU901におけるプログラムの実行に必要なデータを一時的に保持する。メモリ902は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成される。
通信デバイス903は、通信ネットワークNWを介したデータの送受信を制御する。通信デバイス903は、例えば、電力センサSから通信ネットワークNWを介して、計測情報115を取得する。
表示デバイス905は、ユーザに各種情報を提示し得る、いわゆるマンマシンインターフェースデバイスである。表示デバイス905は、例えば、ディスプレイ、又はスピーカ等で構成される。表示デバイス905に表示される各種情報については後述する。
入力デバイス904は、ユーザからの入力を受け付け得る、いわゆるヒューマンインタフェースデバイスである。入力デバイス904は、例えば、キーボード、マウス、又はボタン等で構成される。ユーザは、入力デバイス904を介して、各種パラメータを設定及び変更したり、各種機能の実行を指示したりできる。また、ユーザは、入力デバイス904を介して、所定のデータを表示デバイス905に表示させたりできる。
記憶デバイス906は、各種プログラム及びデータを保持する。記憶デバイス906は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)又はフラッシュメモリ902等で構成される。記憶デバイス906は、例えば、後述する各種機能を実現し得るプログラム及びデータ等を保持する。記憶デバイス906に記憶されているプログラム及びデータは、必要に応じてCPU901に読み出されて実行される。なお、記憶デバイス906は各種のデータベースDBで構成されている。
図1は、発電量推定装置18が備える機能構成の一例を示すブロック図である。これらの機能は記憶デバイス906に格納された各種のデータベースDBに格納されるデータを使用して実現される。ここで実現される機能は、発電量を推定する発電量推定部11と、信頼度モデルを設定する信頼度モデル設定部12と、推定した発電量の信頼度を求める信頼度算出部13で構成されている。また最終的に求められた推定発電量と、信頼度の情報が表示部24に表示される。
以下各機能の詳細について、発電量推定部11、信頼度モデル設定部12、信頼度算出部13の順に説明する。まず、発電量推定部11について説明する。
図3は、発電量推定装置18が備える機能構成のうち、発電量推定部11の一例を示すブロック図である。発電量推定装置18の発電量推定部11は、計測情報取得部20と、境界地点推定部21と、雲形状形成部22と、発電量予測部23と、表示部24とを有する。これら機能部20〜24は、CPU901によって対応するプログラムが実行されることにより実現される。
更に、発電量推定装置18内の発電量推定部11の処理においては、計測情報データベースDB1と、地点情報データベースDB2と、制約条件データベースDB3と、雲形状特性情報データベースDB4と、発電特性情報データベースDB5と、境界線データベースDB6と、予測発電量データベースDB7と、気象情報データベースDB8に格納されたデータを使用する。これらデータベースDBは、例えば、記憶デバイス906内に構成される。
計測情報取得部20は、電力センサSから計測情報115を受信して、それを計測情報データベースDB1に登録する。
図4は、計測情報データベースDB1に構成されるデータテーブルの一例である。計測情報データベースDB1は、1以上の計測情報115a、115b、・・・を保持及び管理する。計測情報115a、115b、・・・を計測情報115と言うことがある。計測情報115は、データ項目として例えば、地点ID101と、各時刻において計測された発電量111a、111b、・・・111dとを有する。各時刻の発電量111a、111b、・・・を発電量111と言うことがある。
このうち地点ID101は、PV装置PVが設置されている地点を一意に識別するための値である。この地点ID101は、PV装置PVの識別情報であっても良いし、地点の識別情報(例えば、その地点の住所又は名称等)であっても良い。各発電量111は、地点ID101によって識別されるPV装置PVが、各時刻において発電した量である。
図4に示す計測情報115aの表示事例は、「地点A」に設置されているPV装置PVの「11:00」における発電量111が「600」であり、「11:01」における発電量が「610」であることを示す。なお、各時刻における発電量111については、古いデータから適宜削除するようにしても良い。図3の説明に戻る。
図3の境界地点推定部21は、所定の地域の所定の時刻における雲の境界地点(雲の端点)を抽出する。雲の境界とは、雲を地上に投影した場合に雲の影となる領域と影とならない領域との境界のことである。
以下、境界地点推定部21の機能を説明する前に、雲の境界を定めるための考え方について補足的に説明をしておく。図5は、雲の境界を推定する方法を説明するための模式図である。図5において、所定の区域Rには、複数の受光装置1が分散して設置されている。この区域Rは、本発明により太陽光発電の総発電量を求める対象となる地域を意味している。
区域R内に設置された受光装置1は、太陽光の受光量に応じて変化する値である受光値を出力する。受光装置1は、例えば、PV装置PV又は日照計等である。受光信号は、例えば、受光装置1がPV装置の場合は発電量であったり、受光装置1が日照計の場合は日射量であったりする。
推定装置は、所定の区域Rに設置されている複数の受光装置1のうちの全部又は一部である所定の複数の受光装置1の各々から受光信号を複数回取り込んで分析する。そして、推定装置は、所定の変化を有する受光信号を測定した受光装置1の設置地点と、その所定の変化が生じた時間を特定する。所定の変化とは、例えば、受光信号が所定時間に所定以上増加又は減少しているような変化である。若しくは、所定の変化とは、例えば、受光信号が所定時間に所定の増加傾向又は減少傾向を有するような変化である。
これにより、推定装置は、雲が地上に形成する影の境界(以下、雲の境界とも呼ぶ)が、その所定の変化が生じた時間に、その所定の変化を測定した受光装置1の設置地点を通過したと推定できる。
この設置地点を通過した雲の境界の一部を雲の境界地点と言う。よって、推定装置は、雲の境界が各受光装置1の設置地点と、その設置地点を通過した時間を用いて、或る時点における雲の境界地点を推定することができる。
このとき、推定装置は、風向及び風速に関する情報を用いることで、雲の境界地点が、その設置地点を通過した時間から或る時点までに、どの方向にどのくらい移動するかを推定することができる。推定装置は、例えば、発電量推定装置18である。
例えば、図5において、受光装置1a、1b、1c、1d、1eが所定の変化を測定した時間をそれぞれT1、T2、T3、T4、T5とする。このとき、推定装置は、雲の境界が、受光装置1aの地点を時間T1に通過したと推定する。そして、推定装置は、その受光装置1aの地点を時間T1に通過した雲の境界地点が、或る時点Tに地点2aに移動していると推定する。
推定装置は、他の受光装置1b〜1eについても同様に、その地点をT2〜T5に通過した雲の境界地点が、或る時点Tに地点2b〜2eに移動していると推定する。これにより、推定装置は、或る時点Tにおける雲の境界地点2a〜2eを特定し、この雲の境界地点2a〜2eを線で結ぶことにより境界線L1を推定することができる。なお、雲の境界地点の移動先の方向及び速度(図5のベクトル3a〜3e)は、例えば、その地点における風向及び風速に関する情報を用いて推定する。
以上の基本的な考え方に基づき、境界地点推定部21では、各地点のPV装置PVの発電量の変化に基づいて、その雲の境界地点を抽出する。境界地点推定部21の処理には、計測情報データベースDB1と、地点情報データベースDB2と、発電特性情報データベースDB5と気象情報データベースDB8などに格納されたデータを使用する。以下、具体的な格納データについて説明する。
図6は、地点情報データベースDB2に構成されるデータテーブルの一例である。地点情報データベースDB2は、1以上の地点情報105を保持及び管理する。地点情報105は、データ項目として例えば、地点ID101と、地点座標102と、計測フラグ103とを有する。
地点ID101については、上述の通りである。地点座標102は、地点ID101が示す地点の座標を示す値である。地点座標102は、例えば経度及び緯度で表現される。
計測フラグ103は、地点ID101に対応するPV装置PVの発電量を計測できたか否かを示すフラグである。図6では、計測できた場合を「○」、計測できなかった(非計測の)場合を「×」と表記している。電力センサSを備えていないPV装置PVの計測フラグ103は、常に「非計測」となる。また、電力センサSを備えているPV装置PVであっても、(例えば、通信ネットワークNWの障害等によって)計測情報115が取得できない場合、そのPV装置PVの計測フラグ103は「非計測」となる。
例えば、図6に示す地点情報値105aは、地点ID101が「地点A」の地点座標102は「経度36.5、緯度140.5」であり、その地点のPV装置PVの発電量は計測できたことを示す。また、地点ID101が「地点O」の地点座標102は「経度36.0、緯度140.0」であり、その地点ID101に対応するPV装置PVの発電量は計測できなかったことを示す。
図7は、発電特性情報データベースDB5に構成されるデータテーブルの一例である。発電特性情報125は、データ項目として例えば、地点ID101と、定格発電量121と、季節別発電量122a〜122dとを有する。季節別発電量122a〜122dを季節別発電量122と言うことがある。
地点ID101については、上述の通りである。定格発電量121は、地点ID101が示すPV装置PVの定格発電量である。季節別発電量122は、各季節の晴天時における各時刻の平均的な(一般的な)発電量である。この季節別発電量122は、後述する発電量の変化点閾値を設定する際に必要となる。なぜなら、同じ時間であっても、季節が異なれば晴天時の発電量は異なり得るので、季節毎に発電量の変化点閾値を調整する必要があるためである。
例えば、図7に示す発電特性情報125aは、地点ID値が「地点A」のPV装置PVの定格発電量は「3.5」であり、春の晴天時の12時における平均発電量122は「2.8」であることを示す。
次に、上述の計測情報115及び地点情報105を用いて、境界地点推定部21が、雲の境界地点を抽出する方法について説明する。
図8は、或る地点のPV装置PVにおける発電量の時間的推移を示すグラフである。グラフ200において、横軸は現在時刻を「Tn=0」とした場合の時刻t、縦軸は発電量Pを示す。このグラフ200は、現在時刻Tnよりも過去の時刻Td(Td<Tn)において発電量Pが大きく減少している。そして、その減少した発電量Pが時刻Tdよりも未来の時刻Tu(Td<Tu<Tn)まで続き、時刻Tuにおいて発電量Pが大きく増加している。このことから、このグラフ200が示すPV装置PVの地点は、時刻Tdから時刻Tuまでの間、雲に覆われていたと推定できる。以下、この発電量Pが所定以上変化した時刻を検出する処理について説明する。
まず、境界地点推定部21は、或る地点が雲に覆われているか否かを判定するための発電量の閾値である変化点閾値P1を設定する。境界地点推定部21は、その或る地点において下記(1)式及び(2)式を共に満たす増加時刻Tuiを抽出する。
P1−ε≦P(Tui)≦P1+ε …(1)
P(Tui−1)<P(Tui)<P(Tui+1) …(2)
ここで、「i」は計測の順番を示す正の整数である。すなわち、「i−1」は「i」の計測時刻の1つ前の計測時刻を示し、「i+1」は「i」の計測時刻の1つ後の計測時刻を示す。「ε」は変化点閾値P1の近傍の範囲を定義する所定値である。
つまり、境界地点推定部21は、式1及び式2によって、変化点閾値P1とほぼ同じ発電量であって、且つ、発電量が時間経過と共に増加している増加時刻Tuiのみを抽出する。
同様に、境界地点推定部21は、その或る地点において下記(3)式及び(4)式を共に満たす減少時刻Tdiを抽出する。
P1−ε≦P(Tdi)≦P1+ε …(3)
P(Tdi−1)>P(Tdi)>P(Tdi+1) …(4)
つまり、境界地点推定部21は、(3)式及び(4)式によって、変化点閾値P1とほぼ同じ発電量であって、且つ、発電量が時間経過と共に減少している減少時刻Tdiのみを抽出する。
上記(1)式及び(3)式の変化点閾値P1は、地点毎に異なる閾値であっても良い。上記(1)式の変化点閾値P1と上記(3)式の変化点閾値P1とは異なる閾値であっても良い。変化点閾値P1は、発電特性情報データベースDB5に格納されている各地点におけるPV装置PVの発電特性情報125を用いて設定されても良い。例えば、境界地点推定部21は、変化点閾値P1を、定格発電量121のα倍(0<α<1)と設定しても良い、或いは、境界地点推定部21は、変化点閾値P1を、発電量を予測する時刻における晴天時の平均的な発電量122のα倍(0<α<1)と設定しても良い。
境界地点推定部21は、発電量の時間的変化を示すグラフにいわゆるローパスフィルタを適用した後に上記増加時刻Tu及び減少時刻Tdを抽出しても良い。若しくは、境界地点推定部21は、計測発電量111の移動平均を算出し、その移動平均値に対して上記増加時刻Tu及び減少時刻Tdを抽出しても良い。なぜなら、境界地点推定部21が、短時間の急激な発電量の増減に対する増加時刻Tu又は減少時刻Tdを抽出しないようにするためである。
境界地点推定部21は、上記処理を各地点について実行し、各地点の増加時刻Tu及び減少時刻Tdを抽出する。境界地点推定部21は、この増加時刻Tu及び減少時刻Tdに基づいて、所定の時刻における雲の境界地点を推定する。以下、その方法について説明する。
図9は、計測地点における風速及び風向を示す模式図である。図9に示す各地点を通る点線の矢印50a〜50cは、各計測地点における風向を示す。雲の境界地点は、一般的に風向に沿って、風速に比例した速度で移動すると考えられる。そこで、境界地点推定部21は、風向及び風速に基づいて、計測地点において増加時刻Tu(又は減少時刻Td)に抽出された雲の境界地点が、その増加時刻Tu(又は減少時刻Td)よりも所定の時間後の時刻である予測時刻において、どの地点に移動するかを推定する。予測時刻は、例えば、現在時刻又は現在時刻以降の所定の時刻であって良い。
地点Aにおける減少時刻をTdA、増加時刻をTuAとする。境界地点推定部21は、地点Aにおける減少時刻Tdから予測時刻までの風速が「VA」、風向が「北西から南東の方向」であるという情報を、所定の情報源から取得する。境界地点推定部21は、減少時刻TdAに地点Aを通過した雲の境界地点(以下「減少境界地点」という)は、予測時刻に地点Aから「北西から南東の方向」へ「VA×TdA」の地点Adに移動していると推定する。同様に、境界地点推定部21は、増加時刻TuAに地点Aを通過した雲の境界地点(以下「増加境界地点」という)は、予測時刻に地点Aから「北西から南東の方向」へ「VA×TuA」の地点Auに移動していると推定する。
境界地点推定部21は、地点B及び地点Cについても同様の処理により、予測時刻における減少境界地点Bd及びCdと、増加境界地点Bu及びCuを推定する。
風向及び風速は、例えば、気象庁等が発表した情報を利用する。若しくは、計測地点の近傍に風力発電所又は風力計が設置されている場合は、その風力発電所又は風力計によって計測された風向及び風速情報を利用しても良い。
図10は、風光及び風速の情報を気象情報として気象情報データベースに蓄積しておく場合のデータベース構成例を示している。気象情報データベースDB8には、PV装置が設置されている地点における気象情報が記憶される。図10に示すデータ構成の例では、各地点101における気象項目150として天候、風向、風速、日射量の情報が、時刻(項目151)ごとに格納されている。
図10の記録事例では、地点AのPV装置の4月1日0:00時点での天候(晴れ)、風向(南東)、風速(5.2m)、日射量(0)は、同日12:00には天候(曇り)、風向(北西)、風速(10.7m)、日射量(2.5)であったことがわかる。なお、この記憶は例えばより短い周期で観測され、記憶されている。以下、図3の説明に戻る。
雲形状形成部22は、境界地点推定部21によって推定された現在時刻又は未来の或る時刻における減少地点及び増加地点を基に、その時刻における雲の形状を推定する。すなわち、雲形状形成部22は、雲の形状(すなわち輪郭)を模式化した(閉曲線形状の)境界線を形成する。以下、その境界線を形成する方法について説明する。
図11は、現在時刻における減少地点と増加地点を示す模式図である。現在時刻TNにおける減少地点Ad、Bd、Cd及び増加地点Au、Bu、Cuは、上記の境界地点推定部21によって推定されたものである。そして、雲形状形成部22は、これら減少地点及び増加地点に基づき、閉曲線形状の境界線を形成する。以下、その境界線を形成する方法について説明する。
雲形状形成部22は、或る境界地点の近傍に位置する他の境界地点を探索する。そして、雲形状形成部22は、或る境界地点と、その境界地点と距離が一番近い他の境界地点とを結び境界線の一部(以下「線分」という)を形成する。同じく、雲形状形成部22は、或る境界地点と、その境界地点と距離が二番目に近い他の境界地点とを結び線分を形成する。このとき、雲形状形成部22は、減少境界線同士又は増加境界線同士を結ぶ。
例えば、図11の地点Buは、一番近い地点Auと結ばれ、線分Bu−Au(線分230)を形成する。同じく、地点Buは、二番目に近い地点Cuと結ばれ、線分Bu−Cuを形成する。図11では境界線を直線で示しているが、適当な曲線であっても良い。
上記の処理を各境界地点において実行することにより、雲形状形成部22は、各減少地点を結ぶ減少境界線と、各増加地点を結ぶ増加境界線を形成できる。
ただし、雲形状形成部22は、所定の制約条件に基づいて境界線を形成する。以下、その制約条件について説明する。以下に述べる制約条件は、制約条件データベースDB3に格納されている。
第1の制約条件は、線分が、各計測地点から風向の方向に延長した直線(例えば、図11の直線mA、直線mB、直線mC等。以下「風向直線」という)と交差しない位置関係にあることである。ただし、境界地点上の風向直線は対象外とする。
雲形状形成部22が、地点Auからの線分を形成する場合を例に説明する。雲形状形成部22は、地点Auに一番近い地点Buと線分Au−Buを形成する。この線分Au−Buは、第1の制約条件に反しない。しかし、雲形状形成部22が、地点Auに二番目に近い地点Cuと線分Au−Cuを形成すると、この線分Au−Cuは風向直線mBと交差するため第1の制約条件に反する。したがって、雲形状形成部22は、線分Au−Cuは不適切と判断する。この場合、雲形状形成部22は、同じ風向直線上に存在する増加地点と減少地点とを結ぶ線分の形成を試みる。例えば、雲形状形成部22は、増加地点Auと、同じ風向直線mA上に存在する減少地点Adとを結ぶ線分Au−Adの形成を試みる。
第2の制約条件は、境界地点同士を結ぶ線分を形成する際、線分同士が重複又は交差しないことである。以下、この第2の制約条件について更に説明する。
図12は、第2の制約条件を説明するための模式図である。図12において、地点Du、Eu、Fu、Gu、Huは全て増加地点である。そして、増加地点Euに近い他の増加地点は、増加地点FuとGuである。増加地点Guに近い他の増加地点は、増加地点EuとFuである。仮に、増加地点Euが線分Eu−Fuと線分Eu−Guを形成し、増加地点Guが線分Gu−Euと線分Gu−Fuを形成したとする。この場合、線分Eu−Gu(線分301)が重複するので、第2の制約条件に反する。この場合、雲形状形成部22は、線分が重複しないように線分の再形成を試みる。例えば、雲形状形成部22は、重複する線分の形成を禁止して、線分の再形成を試みる。
なお、第2の制約条件を、上記の条件に代えて(又は上記の条件に加えて)、増加地点のみ又は減少地点のみを連結した境界線の集合により閉曲線が生じないこととしても良い。この条件において閉曲線が生じた場合、雲形状形成部22は、増加地点のみ又は減少地点のみで形成される1本の境界線となるように、閉曲線を構成する線分の何れかを削除する。例えば、図12の場合、線分Eu−Gu(線分301)を削除することにより、増加地点のみで形成される1本の境界線Du−Eu−Fu−Gu−Huを形成できる。
第3の制約条件は、増加地点間又は減少地点間の線分が所定の長さ(距離)より短いこと、及び或る線分と他の線分との間隔が所定の長さ(距離)より長いことである。なぜなら、第3の制約条件に反している場合、その線分から構成される境界線は雲の形状を適切に模式化していない可能性が高いためである。以下、この第3の制約条件について更に説明する。
図13は、第3の制約条件を説明するための模式図である。図13において、線分Cd−Ddの長さLpが、所定の長さLAよりも長い(Lp>LA)とする。この場合、雲形状形成部22は、第3の制約条件に反する線分Cd−Ddは、雲の形状の模式には不適切と判断する。また、図13において、線分Cu−Duと線分Cd−Ddとの間隔Lwが、所定の間隔LBよりも短い(Lw<LB)とする。この場合、雲形状形成部22は、第3の制約条件に反する線分Cu−Du及び/又は線分Cd−Ddは、雲の形状の模式には不適切と判断する。このように不適切と判断した場合、雲形状形成部22は、例えば、以下の処理を行う。
図14は、第3の制約条件に反する境界線を修正する方法を説明するための模式図である。雲形状形成部22は、線分Cu−Du及び線分Cd−Ddを不適切と判断したので、上記第3の制約条件に適合する他の線分の形成を試みる。例えば、雲形状形成部22は、増加地点Cuと減少地点Cdとを結ぶ線分Cu−Cd(線分302a)を形成する。同じく、雲形状形成部22は、増加地点Duと減少地点Ddとを結ぶ線分Du−Dd(線分302b)を形成する。すなわち、第3の制約条件は、1つの雲のモデルを2つの雲のモデルに分割するポイントを発見するための判断基準とも言える。
第4の制約条件は、増加境界線と減少境界線とそれらを結ぶ線分から形成される閉曲線が、一般的な雲形状と所定以上の相似性を有することである。すなわち、形成した雲形状のモデルが、一般的な雲形状のモデルと所定以上の相似性を有するか否かを判定する。
例えば、一般的な雲形状のモデルを予め雲形状特性情報データベースDB4に保持させておく。そして、雲形状形成部22は、形成した閉曲線と、雲形状特性情報DB4に保持されている各雲形状のモデルとの相似性を算出する。ここで、いずれの雲形状モデルとも所定以上の相似性を有さない場合(すなわち、類似する雲形状モデルが1つも存在しない場合)、雲形状形成部22は、その形成した閉曲線は雲の形状を適切に模式していないと判断する。なぜなら、一般的な雲の形状から極端にかけ離れた雲が形成される可能性は低いからである。
第5の制約条件は、所定の時刻に対して形成した閉曲線が、それより少し前の所定の時刻に対して形成した閉曲線と、所定以上の相似性を有することである。例えば、雲形状形成部22は、所定の各時刻に対して形成した閉曲線を境界線データベースDB6に保持させておく。
そして、雲形状形成部22は、形成した閉曲線と、境界線データベースDB6に保持されている所定の時間前の閉曲線との相似性を算出する。ここで、所定以上の相似性を有さない場合、雲形状形成部22は、その形成した閉曲線は雲の形状を適切に模式していないと判断する。なぜなら、短い時間で雲の形状が極端に変形する可能性は低いからである。
第6の制約条件は、所定の時刻に対して形成した閉曲線に囲まれた領域の面積と、それより少し前の所定の時刻に対して形成した閉曲線に囲まれた面積と、の差分が所定値以下であることである。例えば、雲形状形成部22は、所定の各時刻に対して形成した閉曲線を境界線データベースDB6に保持させておく。
そして、雲形状形成部22は、形成した閉曲線の面積と、境界線データベースDB6に保持されている所定の時間前の閉曲線の面積と、の差分を算出する。ここで、差分が所定の閾値以上の場合、雲形状形成部22は、その形成した閉曲線は雲の形状を適切に模式していないと判断する。なぜなら、短い時間で雲の面積が極端に変化する可能性は低いからである。
上記の第1〜第6の制約条件は、1つだけ適用しても良いし、何れかを組み合わせて適用しても良いし、全てを適用しても良い。
例えば、第1の制約条件と第2の制約条件とを組み合わせて適用しても良い。これにより、雲形状形成部22は、雲の境界線を示す閉曲線を形成することができる。例えば、第1の制約条件と第2の制約条件に、更に第3の制約条件を組み合わせて適用しても良い。
これにより、雲形状形成部22は、より精度の高い雲の境界線を示す閉曲線を形成することができる。例えば、雲形状形成部22は、第1の制約条件と第2の制約条件と第3の制約条件に、更に第4の制約条件、第5の制約条件、及び/又は第6の制約条件を組み合わせて適用しても良い。これにより、雲形状形成部22は、更に精度の高い雲の境界線を示す閉曲線を形成することができる。
また、上述の各制約条件は、地域毎に異なって設定されても良い。また、上述の各制約条件に所定の重み付けを設定しておき、雲の境界線を示す閉曲線がどのくらい各制約条件を満たしているのかに基づいて、その閉曲線の精度を算出するようにしても良い。
以上の制約条件に基づき、雲形状形成部22は、1以上の閉曲線を形成する。すなわち、形成した各閉曲線は、現在時刻又は未来の或る時刻における雲の形状及びその雲が存在する地点を模式したものと見なすことができる。図3の説明に戻る。
発電量予測部23は、雲形状形成部22により形成された閉曲線(すなわち、雲の地点及び形状を模式したもの)に基づき、非計測のPV装置PVの発電量を推定する。以下、発電量予測部23における処理を更に説明する。
図15は、或る地点が閉曲線の内部に位置するか否かの判定方法を説明するための模式図である。発電量予測部23は、非計測であるPV装置PVの地点Oが閉曲線310の内部に位置するか否かを判定する。この判定には、例えば、以下の(5)式を用いる。ここで、Mは閉曲線を形成する境界地点の数である。そして、nM+1=n1とする。
閉曲線310を(5)式に当てはめると、角n1Oan2+角n2Oan3+・・・+角n6Oan1=2πなので、地点Oaは閉曲線310の内部に位置すると判定できる。また、角n1Obn2+角n2Obn3+・・・+角n6Obn1=0なので、地点Obは閉曲線310の外部に位置すると判定できる。
上記の処理を、各非計測のPV装置PVの地点について判定する。そして、何れかの閉曲線の内部に位置する地点を内部点、何れの閉曲線の内部にも位置しない地点を外部点とする。
次に、閉曲線の内部点及び外部点の発電量を推測する方法について説明する。内部点は、雲に覆われている可能性が高いため、日射量が小さいと推定できる。外部点は、雲に覆われている可能性が低いため、日射量が大きいと推定できる。
したがって、内部点における発電量は、境界地点推定部21において用いた変化点閾値P1よりも小さいと推定できる。外部点における発電量は、変化点閾値P1よりも大きいと推定できる。
そこで、例えば、内部点の発電量をP1×M(Mは0<M<1の所定の係数)と推定する。外部点の発電量をP1×N(NはN>1の所定の係数)と推定する。若しくは、内部点の発電量を、その内部点と同じ閉曲線に囲まれている計測可能なPV装置PVの発電量に基づいて推定しても良い。また、外部点の発電量を、何れの閉曲線にも囲まれていない計測可能なPV装置PVの発電量に基づいて推定しても良い。
以上の処理により、非計測なPV装置PVの地点の未来の或る時刻の発電量を推定することができる。
次に、各地域におけるPV装置PVの総発電量を推定する方法について説明する。第1の推測方法は、地点情報データベースDB2から所定の地域内に設置されている全てのPV装置PVの設置点を抽出し、非計測な地点については上述の方法によって発電量を推測する。これにより、その地域内の全PV装置PVの総発電量を推測する。第2の推測方法は、発電特性情報データベースDB5から所定の地域内における平均的な発電特性及びPV装置PVの設置密度を抽出し、上記の方法によって発電量を推測する。以下、第2の推測方法を更に説明する。
PV装置PVの設置密度をρとする。所定の時刻における平均的な発電量をPsとする。内部点における推定発電量をPs×Rlow(0≦Rlow≦1)とする。外部点における発電量推定値をPs×Rhigh(0≦Rhigh≦1かつRhigh≧Rlow)とする。或る地域内に存在する閉曲線φ1、φ2、・・・、φnの内部面積をS1、S2、・・・、Snとし、その地域内の面積をSallとする。そして、以下の(6)式により、或る地域内における推測総発電量Pallを算出する。
第1の推測方法は、比較的高い精度で総発電量を推測できる。一方、第2の推測方法は、第1の推測方法で推測した場合よりも精度が低い可能性があるものの、処理に必要となるデータ量が少ないので、処理負荷を低くすることができる。なお、発電量を推定する手法については、適宜の手法を採用することができる。
以上の処理により、発電量予測部23は、非計測地点も含めた所定の地域における所定の時刻のPV装置PVの総発電量(以下「予測総発電量」という)を推定することができる。この推定された総発電量は、PV装置PVの発電を考慮して電力需給制御を行う場合に用いられる。図3の説明に戻る。
予測発電量データベースDB7は、発電量予測部23によって推定された予測発電量を保持及び管理する。図16に、予測発電量データベースDB7に格納される発電量情報のデータ構成の一例を示す。図19に示す例では、各PV装置設置地点101における、11時から12時までの1分ごとの発電量153が、データ種別152(計測発電量および推定発電量)ごとに格納されている。
図16に示す例では、地点Aに設置されているPV装置については、過去に発電量推定処理が実施されたため、発電量の計測値および推定値の双方が記録されている。一方、地点Bに設置されているPV装置については、過去に発電量推定処理が実施されていないため、発電量計測値のみが記録されている。
この発電量計測値は、通信デバイス903により計測発電量情報が取得されるたびに以下のように更新されるものとしても良い。例えば、地点名AのPV装置の12時1分における発電量情報が取得された場合、地点名Aの11:00の発電量データを消去し、12時1分の発電量データを新たに格納して良い。
図16の記憶事例では、地点AのPV装置の11:00の発電量は2.3(kwh)で、11:01では2.4(kwh)、12:00では2.8(kwh)が計測された。これに対し、それぞれの時刻での発電量を2.1(kwh)、2.5(kwh)、2.7(kwh)と推定していた。
以上例示したPV装置の各種データは、全てPV装置の設置点101に関連付けて記憶されている。このため、これらの複数のデータベースDBに記憶されたデータは互いに関連付けて利用することが可能である。
表示部24は、予測発電量データベースDB7から、所定の地域の所定の時刻における予測総発電量を抽出して表示する。また、表示部24は、形成した閉曲線を地図と重畳して表示する。これにより、ユーザは、各地点における日射量の大小、即ちPV装置PVの発電量の大小を視覚的に把握できる。更に、表示部24は、閉曲線の時間的推移を表示することにより、ユーザは、地域の日射量及び発電量の変動を視覚的に把握できる。
図17は、発電量推定装置18の発電量推定部11が予測発電量を推定する処理の一例を示すフローチャートである。
計測情報取得部20は、各PV装置PVの電力センサSが計測した発電量を計測情報データベースDB1に登録する(ステップS101)。
境界地点推定部21は、発電特性情報データベースDB5から各地点における発電特性を抽出し、それに基づいて所定の時刻における変化点閾値P1を設定する(ステップS102)。
境界地点推定部21は、計測情報データベースDB1から各計測地点における発電量を抽出し、上記の変化点閾値P1を用いて、増加時刻及び減少時刻を抽出する(ステップS103)。
境界地点推定部21は、各計測地点における風速及び風向の情報を取得する(ステップS104)。
境界地点推定部21は、増加時刻及び減少時刻と風速及び風向等の情報とに基づいて、現在時刻又は未来の或る時刻(以下「予測時刻」という)における増加境界地点及び減少境界地点の地点を推定する(ステップS105)。
雲形状形成部22は、予測時刻における複数の増加境界地点及び減少境界地点と、各種制約条件等に基づいて、雲形状を模式する閉曲線を形成する(ステップS106)。
発電量予測部23は、地点情報データベースDB2から非計測地点を抽出し、非計測地点が閉曲線の内側であるか外側であるかを考慮して、各非計測地点の予測時刻における発電量を推定する(ステップS107)。
発電量予測部23は、各地点において推定された発電量に基づいて、所定の地域における現在時刻又は未来の或る時刻の総発電量を推定し、予測発電量データベースDB7に登録する(ステップS108)。
以上の処理により、所定の地域における現在時刻又は未来の或る時刻の総発電量を推定することができる。この推定した総発電量は、例えば、電力系統の需給調整制御に利用することができる。
次に、閉曲線を形成する変形例として、変化点閾値を2つ設定した場合について説明する。
図18は、変化点閾値を2つ設定した場合に係る発電量の時間的推移を示すグラフである。図8に示したグラフ200では変化点閾値を1つしか設定していないのに対し、図18に示すグラフ400では変化点閾値を2つ設定している点が相違する。
グラフ400は地点Aに設置されたPV装置PVの発電量の時間的推移を示す。グラフ400において、P1>P2とし、晴天時における発電量をPsとする。この場合、例えば、P1=Ps×α、P2=Ps×β(0<β<α<1)と定義できる。
境界地点推定部21は、上述の(1)及び(2)式を用いて、P1に対応する増加時刻Tu1とP2に対応増加時刻Tu2を抽出する。同様に、境界地点推定部21は、上述の(3)式及び(4)式を用いて、P1に対応する減少時刻Pd1とP2に対応する減少時刻Pd2を抽出する。
境界地点推定部21は、風向及び風速の情報に基づいて、予測時刻における増加時刻Tu1及びTu2に対応する増加地点Au1及びAu2を推定する。同様に、境界地点推定部21は、予測時刻における減少時刻Td1及びTd2に対応する減少地点Ad1及びAd2を推定する。
図19は、予測時刻における境界地点及び閉曲線の変形例を示す模式図である。
雲形状形成部22は、同じ境界地点閾値に対応する増加地点及び減少地点を結んで閉曲線を形成する。すなわち、変化点閾値を複数設定した場合、雲形状形成部22は、複数の閉曲線を形成する。ここで、雲形状形成部22は、互いの閉曲線同士が交わらない(重ならない)ように、閉曲線を形成する。図19の場合、雲形状形成部22は、変化点閾値P1に対応する境界線410と、境界地点閾値P2に対応する境界線411を形成する。
発電量予測部23は、雲形状形成部22によって形成された複数の閉曲線を用いて、非計測地点における発電量を推定する。発電量予測部23は、1つの非計測地点が2つ以上の閉曲線に囲まれている場合は、最も内側の閉曲線に囲まれているとして発電量を推定する。この非計測地点における発電量の推定は、例えば、以下の方法で行う。
増加地点Auk及び減少地点Adkで形成される閉曲線Ckの内側、且つ増加地点Auk+1及び減少地点Adk+1で形成される閉曲線Ck+1の外側の領域をDkとする。
なお閉曲線Ck+1は、閉曲線Ckに包含されるとする。この領域Dkにおける太陽光発電量をSkと推定する。ここで、kは0からNの値を取る整数である。非計測地点が領域Dkに存在するか否かは、上記(5)式を用いて非計測地点が、閉曲線Ckの内側に存在しており、且つ閉曲線Ck+1の外側に存在しているか否かによって判定される。また、Skは領域Dkにおける太陽光発電量の代表値であり、Pk≧Sk≧Pk+1(P1>P2>・・・>Pnとする)を満たす数値を事前に設定する。
例えば、図19において、閉曲線Au1−Bu1・・・Bd1−Ad1(境界線410)の外側の領域をD0とする。閉曲線Au1−Bu1・・・Bd1−Ad1(境界線410)の内側でかつ閉曲線Au2−Bu2・・・Bd2−Ad2(境界線411)の外側の領域をD1とする。閉曲線Au2−Bu2・・・Bu2−Au2(境界線411)の内側の領域をD2とする。そして、発電量予測部23は、非計測地点が領域D0、D1及びD2のいずれに含まれるかを判定し、各領域に対応するS0、S1、S2に基づいて非計測地点の発電量を推定する。
以上の処理により、2以上の変化点閾値を設定して、非計測のPV装置PVの発電量を推定することができる。変化点閾値を増やすことにより、より精細に雲の日射量に対する影響を考慮して発電量を推定することができる。よって、PV装置PVの発電量の推定精度を高めることができる。
上述した本発明の実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
例えば、所定の地域の予測時刻における雲形状推定モデルを、その地域の天気予報に利用しても良い。例えば、予測時刻における予測発電量を各家庭にフィードバックして、各家庭における電力制御に利用しても良い。
また、風向風速情報の取得時に風向風速を推定する手法について、以下のようにすることも可能である。前記したように、風向および風速情報は気象庁等が発表した情報、あるいは、計測地点の近傍に設置されている風力発電所又は風力計によって計測された風向及び風速情報を利用して良い。また、日射量あるいはPV発電量の計測地点における時系列データを地点間で比較することにより、計測地点における風向および風速を推定しても良い。
これらに加え、本発明の代案事例では以下に述べる地点間の類似度を利用した風向風速推定手法を採用しえる。この代案事例では、風向および風速を推定する地点(以下、比較元地点とする)、および比較元地点の近傍に位置する計測地点(以下、比較先地点とする)を選択する。
そのうえで上記2地点の計測情報を計測情報データベースDB1から取得し、時間差の値τを定めて比較先地点と比較元地点との類似度を算出する。ここで、類似度とは、2つの時系列データの変動の傾向が似ているほど大きくなるような値とする。例えば、以下の(7)式に表わす相互相関係数RXYの値を類似度として用いることができる。
ただし、X(t):比較元地点の発電量時系列データ、Y(t):比較先地点の発電量時系列データ、X:X(t)の平均値、Y:Y(t)の平均値、τ:時間差とする。
このとき、時間差の値を、所定の範囲内(例えば−60≦τ≦0)を一定間隔(例えば1秒間隔)で変化させ、類似度の値を繰り返し計算する。例えば、1秒間隔で時間差を変化させるとした場合、τ=−60、−59、…−1、0として(7)式から相互相関係数RXYの値をそれぞれ計算する。
図20に、計算結果をグラフに表した例を示す。ここでは、比較元地点a、および比較先地点bおよびcにおける発電量時系列データを図20(a)、図20(b1)、図20(c1)のグラフで示す。
この事例では、比較先地点bにおいて時点t2で発電量が減少し、その後の時点t1において比較元地点aの発電量が減少した。これに対し、比較先地点cでも時点t2近辺で発電量が減少してこの状態が継続し、その後比較元地点aの発電量が増加した。また比較元地点aと比較先地点bの増減は変化パターンが類似(瞬間的減少)しているに対し、比較先地点cの増減は減少が継続する変化パターンであり、類似性が低いといえる。
このとき、時間差τに対する地点aとbとの類似度Rabは図20(b2)のようになる。この場合には類似度Rabの値が大きく、相関が高いことがわかる。これに対し、地点aとcとの類似度Racは図20(c2)のようになる。この場合には類似度Racの値が小さく、相関が低いことがわかる。
以上の処理を時間差τの値を変えて繰り返し実行し、所定の時間差の範囲内で類似度を算出したら、類似度が最大となるときの時間差および類似度の値を記憶する。図20(b2)の例では、時間差(t2−t1)と類似度の最大値rabが記憶される。同様に、図20(c2)の例では、時間差t3と類似度の最大値racが記憶される。
以上の処理を、近傍の比較先地点ごとに行ったら、記憶されている類似度の中で最大となる比較先地点を選択し、その地点を風上地点とする。図の地点a、b、cで類似度の算出を行った場合、rab>racであるならば、地点aの風上地点は地点bと決定される。このとき、地点aにおける風向は地点bから地点aに向かう方角と推定される。
また、地点ab間の距離の値を、上記の処理により求めた時間差(t2−t1)で除することにより、地点aにおける風速が推定される。ここで、地点間の距離は地点情報データベースDB2に格納された緯度経度情報から算出される。
また、地点間の位置関係を考慮し、複数の地点間類似度を用いて風向風速を推定しても良い。例えば、図21左側に示すような地点1から地点9の位置関係の計測地点において、図中の地点5における風向風速を推定する場合について、処理の一例を説明する。
このとき、図21右側の表に示すように、複数の風向候補を設定し、それぞれの風向に対応する地点組合せを選択する。この地点組合せに含まれる地点は、風向風速を推定する地点5の周囲に位置する計測地点から選択する。
ここで、ある風向について選択した複数の地点組合せにおいて、それぞれ類似度最大となる類似度および時間差を算出する。さらに、同一の風向に対応する複数の地点組合せについて算出した類似度の平均を算出する。
このとき、単純な算術平均を算出しても良いし、例えば推定を行う地点5に近い地点組合せほど重みを大きくした重み付き平均を算出しても良い。以上の処理を繰り返し実施し、複数の風向候補ごとに算出された平均類似度を比較し、類似度が大きい風向候補を風向として決定する。
以上に示したように、複数の地点間類似度を考慮して風向風速の推定を行うことにより、局地的あるいは一時的な日射量変動のノイズによる風向風速推定への影響を低減し、高精度の推定結果を得ることができる。
以上、図1の発電量推定部11の動作について説明した。続いて図1の信頼度モデル設定部12の機能について詳細に説明する。信頼度モデル設定部12は、PV装置の位置情報および過去における気象情報、発電量情報に基づき、所定の地域内の区域ごとの発電量の信頼度モデルを設定する。以下、図22に示すフローチャートを用いて信頼度モデル設定処理について説明する。
まず、信頼度モデル設定部12の最初の処理であるステップS81では、信頼度を算出する条件を設定する。図23に本処理で設定する信頼度モデルのデータ構成例を示す。図23に示す例において本ステップS81で設定する条件は、天候、風向などの項目を含む気象条件(151)、季節、時刻などの項目を含む日時条件160、どれだけ将来の発電量を推定するかを示す予測時刻161で表わされる。なおこれらの設定条件(151、160、161、162)は、緯度と経度102で位置設定された地点名101ごとに設定される。
これらの条件のパラメータを変更することにより、同じPV装置について同じ発電量推定手法を適用した場合でも、地点ごとの信頼度が変化する可能性がある。本ステップS81にて設定した条件下での太陽光発電量の推定信頼度を、図22に示すフローチャートの以下のステップで算出していく。
次に、ステップS82では、ステップS81で設定した条件に合致する過去時点の計測発電量情報および推定発電量情報を発電情報データベースDB5、予測発電量データベースDB7より、それぞれ抽出する。このとき、推定発電量情報を既に発電量情報データベースDB5に登録済の情報から抽出しても良い。また、信頼度モデル設定処理を実施するたびに、図17を用いて説明した発電量推定処理を先駆けて実施し、出力された推定発電量情報を利用しても良い。
次に、ステップS83では、ステップS82で抽出された過去時点の計測発電量情報および推定発電量情報を用いて、計測地点ごとに信頼度指標の度数分布を作成する。ここで、信頼度指標の定義例を図24、図25に示す発電量の時系列データ例を用いて説明する。
図24は、信頼度指標を発電量の推定誤差により定義する場合の説明図である。図24は、横軸に時間をとり、縦軸に過去に計測された計測発電量(実線)Pkと、同時刻における推定発電量(点線)Psを時系列的に表示した図である。この図24の例において、時刻tnにおける計測発電量Pk(tn)と推定発電量Ps(tn)との差分(推定誤差)r1(tn)として信頼度指標が算出される。
このとき、1つの計測時刻に対して1つ算出される推定誤差r1を、1データとして複数時刻の複数の推定誤差から度数分布を作成する。また、上記の処理により算出した差分r1を、対応する時刻の計測発電量Pk(tn)あるいは定格発電量Ps(tn)により除算した値を信頼度指標として定義し使用しても良い。この信頼度指標を用いることにより、定格発電量の異なる複数のPV装置間で信頼度を比較分析することができる。
また、所定の複数の時刻における発電量の平均値で定義される平均発電量、あるいは所定の複数の時刻における発電量の和で定義される累積発電量を1つのデータとみなし、その計測値および推定値の差分を1つの推定誤差として度数分布を作成しても良い。
推定誤差による信頼度指標を選択することにより、地点ごとの信頼度から、ある1時点の発電量推定においてどれだけの推定誤差が生じる可能性があるかを把握することができる。
図25は、信頼度指標を、ある発電量に達する時刻の差(時刻ずれ)により定義する場合の説明図である。図25の例では、計測発電量Pkが設定発電量Pnに達する時刻tmと推定発電量Psが設定発電量Pnに達する時刻teの差分r2として信頼度指標が算出される。
このとき、計測発電量Pkあるいは推定発電量Psが設定発電量Pnに達する1組の時刻tmおよびteに対して算出される時刻ずれを1データとして度数分布を作成する。設定発電量Pnは、各地点に設置されるPV装置の定格発電量を超えない値として設定される。例えば、発電特性情報データベースDB4から抽出したPV装置の定格発電量のα倍(0<α<1)として設定発電量Pnを設定して良い。
時刻ずれによる信頼度指標を選択することにより、地点ごとの信頼度から、推定される発電量変動のタイミングについてどれだけの時刻ずれが生じる可能性があるかを把握することができる。
次に、ステップS84では、ステップS83において作成された度数分布を用いて計測地点ごとの信頼度を算出する。図26にステップS83で作成した度数分布、およびその度数分布から算出した信頼度の例を示す。
図26の例では、横軸に誤差ゼロを含む正負の推定誤差の大きさをとり、縦軸にその推定誤差の発生回数(発生度数)をとっている。これは信頼度指標を推定誤差とした場合の度数分布を示している。
図26の例では、推定誤差の最大値Emaxおよび推定誤差の最小値Eminの差分として信頼度を定義している。信頼度指標を時刻ずれとした場合も、上記と同様の処理により信頼度を決定する。このとき、推定の信頼性が最も高くなるのは信頼度の値が0となる(推定誤差あるいは時刻ずれが常に0となる)場合であり、信頼度の値が大きくなるほど、推定の信頼性が低くなる。
以上のステップS81からステップS84までの処理を計測地点ごとに実施することにより、各計測地点における信頼度が算出される。
次にステップS85では、ステップS84により求めた各計測地点における信頼度を用いて、各地点の位置情報に基づき所定の地域内の信頼度を算出する。所定の地域内の信頼度を算出する手法について、図27に示す例を用いて説明する。
図27は、PV装置が設置された地点を含む地域の地図を示す。図27において地点o、および地点mは、いずれも発電量データを取得可能なPV装置が設置されている地点を表している。また、ステップS81で設定した風向方向に並行な方向をX軸とし、X軸と1点で交わるY軸を空間座標軸として設定する。
図27の例では、地点oを基準として、X軸方向に距離d1、Y軸方向に距離d2離れた位置に地点mが存在する。以下、地点mの計測発電量Pkmおよび地点oの計測発電量Pkoを入力として推定した地点mの推定発電量Psmから信頼度を算出し、その信頼度の値を用いて地域内の信頼度分布を推定する手法を示す。
図28はX軸に沿った信頼度の増減モデルの例を示す。ここで、X軸の風上から風下方向を、距離d1の正の方向とする。地点oの計測発電量Pkoを入力とした場合、地点oの推定発電量Psoは計測発電量Pkoと同値とすることで一意に定まるため、地点oにおける信頼度は0となる。なお、図26の関係から明らかなように、信頼度0は、信頼度が高いことを意味しており、信頼度が0以外の正負の数値で示された場合、数値が大きいほど信頼度が低下したことを意味している。
図17のフローチャートに示す地点ごとの発電量を推定する手法では、雲の形状が一定で、風向風速が一定であるという前提条件に基づいている。雲の形状および風向風速は風下に移動するにつれて変化していくため、上記の前提条件が崩れることにより推定精度が低下し、推定の信頼性が低下すると予想される。以上の考察により、図28のグラフに示す通り、地点oにおいて信頼度は0であり、距離d1が大きくなるにつれ信頼度が増加していくと予想される。
同様に、図29はY軸に沿った信頼度の増減モデルの例を示す。雲の境界線上の地点では同様の発電量変動が観測されると予想されるため、地点oから見てY軸方向に離れて存在する地点の発電量は、地点oと同様の発電量変動を示すと推定できる。しかし、地点oからの距離d2が増大するにつれ、雲自体の形状変化の可能性および異なる雲に日射量が影響される可能性が増大するため、推定精度が低下すると予想される。以上の考察により、図29のグラフに示す通り、地点oにおいて信頼度は0であり、距離d2が大きくなるにつれ信頼度が増加していくと予想される。
上記図28、図29に示すX軸、Y軸方向の信頼度増減モデルを設定することにより、地域内の信頼度分布を決定することができる。
図30に、XY平面で表わされる地域の上に、信頼度を垂直軸方向に表示した図を示す。図30において、XY平面上の各地点を通りXY軸に垂直な直線と、平面oABCとの交点が、各地点における信頼度の値を示す。3次元空間上において平面は3地点を指定することにより決定される。このため地点oの計測発電量Pkoを入力として推定した地点m1および地点m2の推定発電量Psm1、Psm2を算出し、地点m1および地点m2の信頼度r1およびr2を算出することにより、地域内の信頼度分布を決定することができる。このとき、地点m1および地点m2は地点oよりも風下の地点を選択する。
以上に示した地域内の信頼度分布算出手法は一例であり、発電量推定手法により変更を加えて良い。例えば、図28および図29に示した例以外の信頼度の増減モデルを設定して良い。また、信頼度分布を表す面(図30に示す例では平面oABC)を決定する際、所定の地域をさらに分割した地域ごとに複数の平面、あるいは曲面により信頼度分布を決定しても良い。
以上ステップS85の信頼度算出処理を地点ごとに実施することにより、地域内の地点ごとの信頼度を算出する。図23に算出された地点ごとの信頼度のデータ構成例を示す。地点名101で表わされる各地点について、設置位置を表す緯度・経度102が登録され、気象条件151、日時条件160、予測時刻161などで規定される条件下での信頼度162が登録される。
信頼度は図26に例示したような推定誤差あるいは時間ずれの生じ得る範囲を示す値に加えて、数値に応じた段階を設定して、各地点の条件ごとに登録しても良い。図31に信頼度の段階設定例を示す。図31の例では、信頼度を「高」・「中」・「低」の3段階に分類し、推定誤差の範囲が10%以下、あるいは時間ずれが1分以下の場合について、「高」の段階を割り当てている。
再び図1の説明に戻る。ここで信頼度算出部13は、信頼度モデル設定部12により過去時点における気象情報、計測発電量情報、推定発電量情報を用いて作成した地点ごとに信頼度データから、所望の条件による信頼度分布を算出する。
本システムでは、そのユーザが図2の入力デバイス904を通じて信頼度算出条件を入力することにより、信頼度算出部13は入力された条件に適合した信頼度を図23に示す信頼度分布情報から抽出し、表示部25に表示する。ここで、信頼度分布情報が推定誤差の%値により格納されている場合は、発電特性情報データベースDB6に格納されているPV装置の定格発電量情報を用いて%値をW値(うるささ指数)に変換し表示しても良い。こうすることにより、PV装置の定格容量の差を考慮した推定誤差を把握することができる。
また、ユーザが信頼度算出条件を決定する項目のうち、いくつかについて入力しない場合は、その項目について全ての場合の信頼度の値を重み付平均した値を表示しても良い。例えば、ユーザが気象条件の風向の項目のみ入力しなかった場合、風向以外の信頼度算出条件はユーザの入力通りとし、風向について北、北東、東、・・・とした全通りの信頼度を信頼度分布情報から抽出して加算平均した値を表示しても良い。
このとき、重みは全ての場合について等しくしても良いし、気象情報について過去の発生頻度に比例した重みを設定しても良い。すなわち、上記の風向を入力しなかった例において、過去の気象情報から風向が北の場合の発生頻度、風向が北東の場合の発生頻度などのように全ての場合について発生頻度を求め、それぞれの場合の信頼度にその発生頻度に比例した値で重み付して平均した値を表示しても良い。
なお、信頼度算出の処理において、風向風速を地点間の発電量時系列データの類似度を用いて推定した場合、算出した類似度を考慮して信頼度を決定しても良い。
例えば、図22のフローチャートに基づいて算出した信頼度の値に、風向風速の推定処理において算出した地点間相関の値(相互相関係数RXY))で除した値を最終的な信頼度と定義しても良い。このような定義を採用することにより、地点間相関の値が大きく推定され、風向の信頼度が高い場合に、PV発電量の信頼度が高くなるよう設定できる。
また、信頼度を算出する地点の近傍において推定された風向風速の状況に応じて信頼度を決定しても良い。例えば、図21における地点5のPV発電量の信頼度を算出する場合、以下に記す場合分けにより係数αを決定し、図22のフローチャートに基づいて算出した信頼度の値に、αを乗じた値を最終的な信頼度と定義しても良い。このとき、地点5の近傍にある地点2、4、6、8における推定された風向と地点5において推定された風向を比較し、地点5の風向と上記近傍4地点の風向が同一であればα=1、地点5の風向と上記近傍3地点の風向が同一であればα=1.1、・・・など、風向が一致している近傍地点の割合が大きいほどαの値が小さくなるようにαの値を設定する。
このように信頼度を定義することにより、近傍の地点が同一の風向に沿って移動する雲の影響を受けている場合は信頼度を高く、近傍の地点が別々の風向に沿って移動する雲の影響を受ける場合、すなわち比較的小さな雲によりPV発電量が影響を受けるため予測誤差が生じる可能性の高い場合は信頼度が低くなるよう設定できる。
表示部25は、所定の地域内の信頼度分布および信頼度算出条件を表示する。図32に信頼度分布の表示画面例を示す。図32に示す画面例では、画面左側に所定の地域内の各区画、画面右側に条件や凡例を表示している。画面内の各区画について、画面右下に示す凡例に従い信頼度を段階ごとに色分けして示している。画面内の白丸は計測発電量情報を取得可能なPV装置の設置位置を示す。また、図32に示す画面例では、画面右上に信頼度算出条件を表示している。
以上詳細に説明した本発明の太陽光発電量推定システムによれば、地点ごとの発電量がデータの信頼度とともに推定できる。かつ推定時刻は気象条件の変動を加味した将来予測時点とすることができる。また予測する地点は、通信ネットワークに接続されたPV装置の設置位置ばかりでなく、任意の位置とすることができる。
つまり、通信ネットワークに接続されていないPV装置の発電量を推定することも可能である。発電量推定装置2で使用される複数のデータベースDBの中には、非計測(通信ネットワークに接続されていない)のPV装置の位置情報、定格発電量、さらには自己地点または近傍地点での晴天時の発電量などの情報も備えられているので、計測された情報から求められた図30の面的信頼度の情報を加味して、この地図領域内の任意点の発電量と信頼度情報を求めることが可能である。
この結果、変電所のフィーダに接続された多数のPV装置が天候の変化に応じて順次変化するときの総出力を、ネットワーク接続されていないPV装置の出力も含めて高精度に予測推定することが可能である。かつこのときの予測信頼度の情報も同時に得られている。
PV装置の出力が増加すると、フィーダ末端の電圧が跳ね上がる事象があるが、本発明によれば係る事象も予測可能であり、タップ付き変圧器の制御にも精度よく反映することが可能となる。制御の際の余裕を高く取っておく必要がない。
このため、以上説明した太陽光発電量推定システムにおいて、さらに系統制御装置を備え、発電量推定装置2により算出された発電量およびその信頼度を用いて制御信号を生成し、系統制御信号に基づき系統制御装置を制御することができる太陽光発電系統制御システムを構成することも可能である。
図32に系統制御装置105をさらに備える太陽光発電系統制御システム50のシステム構成例を示す。図32では、系統制御装置105としてステップ式自動電圧調整器(SVR:Step Voltage Regulator)を備え、系統電圧制御を行う例を示す。このシステム構成により、各PV装置の推定発電量から所定の時刻における系統電圧を潮流計算により算出し、さらに各PV装置の信頼度から生じ得る系統電圧の幅を算出可能であるため、推定誤差、あるいは時間ずれを考慮した高信頼な系統電圧制御を実現しつつ、適切な系統電圧幅を設定することによりタップ切替回数を低減し機器コストの削減が可能となる。
以下、太陽光発電量推定装置18からのPV発電量推定値と信頼性の情報を用いて電力系統制御に活用するときの事例について幾つか説明する。まず、PV発電量推定値と信頼性の情報を利用したSVR制御について説明する。
図34に従来のSVR制御手法により系統電圧の時系列変化を示したグラフを示す。同図は横軸に時間、縦軸に系統電圧Vを示しており、図中のVUは不感帯上限を、VLは不感帯加減の設定値を表す。系統電圧Vはこの上下限値以内となるように、ステップ式自動電圧調整器SVRのタップ制御が実行される。
例えば、図示の例では時間の経過とともに系統電圧Vが上昇し、時刻T1以降上限値VUを一定時間Tsvrだけ経過した。この場合に系統制御装置105は、SVRのタップを下げ動作させる定限時方式による制御を行う。またこの例ではその後電圧V低下して下限値を逸脱する状態は時刻T3以降、T4まで一定時間Tsvrだけ継続したので系統制御装置105は、SVRのタップを上げ動作させる定限時方式による制御を行った。
図34の従来の制御手法は、PV装置が大量導入される以前には有効な手法であった。然るに大量導入後は天候の急変による系統電圧の増減により、従来手法ではSVRのタップ操作が頻繁に発生する結果となり、機械部品の損耗が懸念されている。
図35は、太陽光発電量推定システム10の予測結果をステップ式自動電圧調整器SVRのタップ制御に適用した場合の系統電圧の時系列変化を示したグラフである。この制御では、系統電圧Vが上昇した時刻T5において、タップ下げ制御を実行する。時刻T5は、点線で示す電圧VRが実際に上限値VUを超過する時刻T2以前の時刻であり、この条件として系統制御装置105は、系統電圧が上限値に近づいていること、天候から予測した発電量が今後増加する傾向であることを見越してタップ位置を事前に下げておく制御を実行する。これにより将来発電量が増加して系統電圧が上昇した場合であっても、上限値にまで至ることを阻止できる。
同様にしてこの制御では、系統電圧Vが下降した時刻T6において、タップ上げ制御を実行する。時刻T6は、点線で示す電圧VRが実際に下限値VLを逸脱する時刻以前の時刻であり、この条件として系統制御装置105は、系統電圧が下限値に近づいていること、天候から予測した発電量が今後減少する傾向であることを見越してタップ位置を事前に上げておく制御を実行する。
この制御は、将来のPV発電量を予測し、将来の時点における系統状態を潮流計算により算出し、将来の電圧変動を予測することで実現できる。予測された電圧変動に対し、将来の時点で系統電圧が不感帯内に収まるようSVRのタップ動作を決定する予測制御を用いることにより、上限逸脱および下限逸脱が従来手法を用いた場合よりも生じ難いように系統電圧が制御される。この予測手法により、タップ操作回数を大幅低減できる。
本発明では、単なる発電量の予測に基づくタップ操作ではなく、さらに信頼度を加味した制御を実行する。図36は、図35の予測結果に基づくタップ制御の時の電圧変動(点線)に対し、事前の予測結果よりも早く気象変更が発生し、結果として電圧上昇が早く発生してしまい、上限値を逸脱してしまった(実線)事例を示している。このように、PV装置の予測に誤差が生じ、その結果として予測制御を用いた場合でも系統電圧が規定範囲外に逸脱する場合が生じ得る。
この事例で予測結果にさらに信頼度情報を加味した場合の制御事例について図37で説明する。図37はPV装置の推定信頼度を含む予測値を用いたSVRの予測制御を適用した場合の系統電圧の時系列変化を示したグラフである。図中の一点鎖線は、各時刻においてPV発電量が信頼度を考慮した上下限値をとる場合について算出した系統電圧の上下限値を示している。すなわち信頼度を含んだ系統電圧の生じ得る範囲を示している。
例えば図37で実線は計測される系統電圧Vであり、時刻T7ではまだ電圧上昇が計測されていないが予測値(図36の点線)としては以後の上昇を予測している。図37の一点鎖線D1は信頼度が高いときに予測値を修正したものであり、電圧上昇が予測値(図36の点線)よりも早い時刻に、かつ大きく発生するように予測値を修正する。一点鎖線D2は信頼度が低いときの予測値修正を示したものであり、電圧上昇が予測値(図36の点線)よりも遅い時刻に、かつ小さく発生するように予測値を修正する。なお、信頼度が高い場合に、タップ切り替えを早めに操作することのほかに、タップ操作量を大きめにすることでも同様の効果を期待出来る。
信頼度を含む系統電圧の上下限値が規定範囲内に収まるようにSVRのタップ動作を決定する制御手法を採用することにより、PV発電量予測に誤差が生じた場合でも系統電圧の上下限逸脱を低減することができる。
このとき、地域内の全PV装置において発電量が最大となる場合、および全PV装置において発電量が0となる場合を想定してタップ動作を決定する制御手法と比較すると、本発明による制御手法は各時刻において生じ得るPV発電量の変動範囲を信頼度として算出し、その信頼度に基づきタップ動作を決定するため、不必要なタップ動作を低減することができる。
PV発電量推定値と信頼性の情報を用いて電力系統制御に活用するときの次の事例について説明する。ここではPV発電量推定値を利用して負荷融通の可否判定を行うことについて述べる。
まず負荷融通とは、本来の配電ルートが事故または工事などで使用不可能となった場合に、開かれていた複数の連系用開閉器を閉じて他のルートから電力供給を行うことである。
この場合は開閉器投入時に以下の項目に留意する必要がある。
(a)開閉器投入時に電圧差、位相差が投入可能条件から逸脱しないか。これは、過電流が流れることにより系統機器に過負荷がかかることを防止するためである。(b)開閉器投入時に電圧急変、位相急変が発生し連系されるフィーダ内の分散電源や負荷の脱落を引き起こさないか。
(c)負荷融通後のPV出力低下により、フィーダが重潮流となり、過電流、電圧低下が発生しないか。
この可否判断にPV発電量および信頼度の要件を加味することにより、真の負荷量および生じ得るPV装置の変動幅の推定が可能であり、上記の項目への抵触有無、対策要否を事前に検討できる。
これら可否判断のうち、(a)(b)について対策した本発明の一例を図38に示す。この状態では、対象フィーダは第1の配電ルートを介して配電系統に接続されていたが、第1の配電ルートからの給電が例えば事故または工事などで使用不可能となったため、第2の配電ルートからの給電を開始しようとしている。
図38の連系開閉器ループ投入可否判定処理フローでは、まず第2の配電ルートを形成すべく連系開閉器(常開の開閉器)を選択する(ステップS300)。次に、連系対象のフィーダのPV装置による出力を推定する(ステップS301)。ここで、発電量推定装置18の出力が用いられる。ステップS302では、PV装置出力停止時と、PV装置が最大出力である時の区間負荷を算出する。
ステップS303では、連系開閉器を閉じたときに配電系統から第2の配電ルートを介して対象フィーダに流れる潮流を計算する。潮流としては両端電圧、位相差を求めるが、これはPV装置出力停止時と、PV装置が最大出力である時の双方について求める。ステップS304では、両端電圧、位相差が所定の一定値以下であることを確認して条件が成立するか否かにより、第2の配電ルートからの給電開始の可否を決定する。
またこれら可否判断のうち、(c)について対策した本発明の一例を図39に示す。この場合最初のステップS310では、融通候補区間を選定する。次に各区間内のPV装置出力を推定する。ここで、発電量推定装置18の出力が用いられる。ステップS312では、PV装置出力停止時の区間負荷を算出する。ステップS313では、区間に電力供給したときに、配電系統から第2の配電ルートを介して対象フィーダに流れる潮流または負荷電流を計算する。ステップS314では、負荷融通後の潮流状態を評価する。ここでの評価は例えば過負荷による過電流状態であり、電圧低下の評価である。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明しているものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、またある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段などは、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計するなどによりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイルなどの情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)などの記録装置、またはICカード、SDカード、DVDなどの記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんどすべての構成が相互に接続されていると考えてもよい。