以下、本発明の一実施形態を図1〜図28に基づいて説明する。図1には、第1実施形態に係る画像形成装置としてのレーザプリンタ1000の概略構成が示されている。
このレーザプリンタ1000は、光走査装置1010、感光体ドラム1030、帯電装置1031、現像ローラ1032、転写チャージャ1033、除電ユニット1034、クリーニングユニット1035、トナーカートリッジ1036、給紙コロ1037、給紙トレイ1038、レジストローラ対1039、定着ローラ1041、排紙ローラ1042、排紙トレイ1043、通信制御装置1050、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置1060などを備えている。なお、これらは、プリンタ筐体1044の中の所定位置に収容されている。
通信制御装置1050は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコン)との双方向の通信を制御する。
プリンタ制御装置1060は、CPU、該CPUにて解読可能なコードで記述されたプログラム及び該プログラムを実行する際に用いられる各種データが格納されているROM、作業用のメモリであるRAM、アナログデータをデジタルデータに変換するAD変換回路などを有している。そして、プリンタ制御装置1060は、上位装置からの要求に応じて各部を制御するとともに、上位装置からの画像情報を光走査装置1010に送る。
感光体ドラム1030は、円柱状の部材であり、その表面には感光層が形成されている。すなわち、感光体ドラム1030の表面が被走査面である。そして、感光体ドラム1030は、図1における矢印方向に回転するようになっている。
帯電装置1031、現像ローラ1032、転写チャージャ1033、除電ユニット1034及びクリーニングユニット1035は、それぞれ感光体ドラム1030の表面近傍に配置されている。そして、感光体ドラム1030の回転方向に沿って、帯電装置1031→現像ローラ1032→転写チャージャ1033→除電ユニット1034→クリーニングユニット1035の順に配置されている。
帯電装置1031は、感光体ドラム1030の表面を均一に帯電させる。
光走査装置1010は、帯電装置1031で帯電された感光体ドラム1030の表面を、上位装置からの画像情報に基づいて変調されたレーザ光により走査し、感光体ドラム1030の表面に画像情報に対応した潜像を形成する。ここで形成された潜像は、感光体ドラム1030の回転に伴って現像ローラ1032の方向に移動する。なお、この光走査装置1010の構成については後述する。
トナーカートリッジ1036にはトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ1032に供給される。
現像ローラ1032は、感光体ドラム1030の表面に形成された潜像にトナーカートリッジ1036から供給されたトナーを付着させて画像情報を顕像化させる。ここでトナーが付着した像(以下では、便宜上「トナー像」ともいう)は、感光体ドラム1030の回転に伴って転写チャージャ1033の方向に移動する。
給紙トレイ1038には記録紙1040が格納されている。この給紙トレイ1038の近傍には給紙コロ1037が配置されており、該給紙コロ1037は、記録紙1040を給紙トレイ1038から1枚ずつ取り出し、レジストローラ対1039に搬送する。該レジストローラ対1039は、給紙コロ1037によって取り出された記録紙1040を一旦保持するとともに、該記録紙1040を感光体ドラム1030の回転に合わせて感光体ドラム1030と転写チャージャ1033との間隙に向けて送り出す。
転写チャージャ1033には、感光体ドラム1030の表面のトナーを電気的に記録紙1040に引きつけるために、トナーとは逆極性の電圧が印加されている。この電圧により、感光体ドラム1030の表面のトナー像が記録紙1040に転写される。ここで転写された記録紙1040は、定着ローラ1041に送られる。
定着ローラ1041では、熱と圧力とが記録紙1040に加えられ、これによってトナーが記録紙1040上に定着される。ここで定着された記録紙1040は、排紙ローラ1042を介して排紙トレイ1043に送られ、排紙トレイ1043上に順次、積み重ねられる。
除電ユニット1034は、感光体ドラム1030の表面を除電する。
クリーニングユニット1035は、感光体ドラム1030の表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラム1030の表面は、再度帯電装置1031に対向する位置に戻る。
次に、前記光走査装置1010の構成について説明する。
この光走査装置1010は、一例として図2に示されるように、光源装置14、カップリングレンズ8、開口板16、シリンドリカルレンズ7、反射ミラー18、ポリゴンミラー13、第1走査レンズ11a、第2走査レンズ11b、及び走査制御装置(図示省略)などを備えている。そして、これらは、光学ハウジング31の所定位置に組み付けられている。なお、光源装置14は、本実施形態の実施例1の光源装置である。
なお、以下では、便宜上、主走査方向に対応する方向を「主走査対応方向」と略述し、副走査方向に対応する方向を「副走査対応方向」と略述する。
カップリングレンズ8は、光源装置14から射出されたレーザ光を略平行光とする。なお、光源装置14については、後に詳述する。
開口板16は、開口部を有し、カップリングレンズ8を介したレーザ光のビーム径を規定する。
シリンドリカルレンズ7は、開口板16の開口部を通過したレーザ光を、反射ミラー18を介してポリゴンミラー13の偏向反射面近傍に副走査対応方向に関して結像する。
光源装置14とポリゴンミラー13との間の光路上に配置される光学系は、偏向器前光学系とも呼ばれている。本実施形態では、偏向器前光学系は、一例として、カップリングレンズ8と開口板16とシリンドリカルレンズ7と反射ミラー18とから構成されている。
ポリゴンミラー13は、高さの低い正六角柱状部材からなり、側面に6面の偏向反射面が形成されている。このポリゴンミラー13は、副走査対応方向に平行な軸のまわりを等速回転しながら、反射ミラー18からのレーザ光を偏向する。
第1走査レンズ11aは、ポリゴンミラー13で偏向されたレーザ光の光路上に配置されている。
第2走査レンズ11bは、第1走査レンズ11aを介したレーザ光の光路上に配置されている。そして、この第2走査レンズ11bを介したレーザ光が、感光体ドラム1030の表面に照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、ポリゴンミラー13の回転に伴って感光体ドラム1030の長手方向に移動する。すなわち、感光体ドラム1030上を走査する。このときの光スポットの移動方向が「主走査方向」である。また、感光体ドラム1030の回転方向が「副走査方向」である。
ポリゴンミラー13と感光体ドラム1030との間の光路上に配置される光学系は、走査光学系とも呼ばれている。本実施形態では、走査光学系は、一例として、第1走査レンズ11aと第2走査レンズ11bとから構成されている。なお、第1走査レンズ11aと第2走査レンズ11bの間の光路上、及び第2走査レンズ11bと感光体ドラム1030の間の光路上の少なくとも一方に、少なくとも1つの折り返しミラーが配置されても良い。
光源装置14は、一例として、図3及び図4に示されるように、パッケージ10、リッド15(カバー)、面発光レーザアレイチップ20、光分離素子17、フォトダイオード30などを有している。以下では、図3及び図4に示されるXYZ3次元直交座標系を用いて説明する。なお、ここでは、X軸方向が副走査対応方向であり、Y軸方向が主走査対応方向である。
パッケージ10は、一例として、図3に示されるように、セラミックスにより形成されたCLCC(Ceramic Leaded Chip Carrier)と呼ばれるフラットパッケージである。このパッケージ10は、一例として、XY平面に平行に配置されており、中央に段付き凹部10aが形成されている。
詳述すると、パッケージ10は、一例として、複数のセラミックス層と、リード配線としての複数(例えば32個)の金属製の配線部材とが交互に積層された多層構造を有している。すなわち、隣接する2つの配線部材は、セラミックス層によって絶縁されている。なお、パッケージ10の材料としては、絶縁性を有する材料であれば、セラミックス以外の例えば樹脂等であっても良い。
パッケージ10に形成された段付き凹部10aの最下段面11には、面発光レーザアレイチップ20が、射出方向が+Z方向となるように実装されている。詳述すると、パッケージ10における面発光レーザアレイチップ20が実装されている領域には、ダイアタッチエリアとも呼ばれる、共通電極となる金属膜が設けられている。面発光レーザアレイチップ20は、この金属膜上にAuSn等の半田材を用いてダイボンディングされている。面発光レーザアレイチップ20の構成については、後に詳述する。
上記複数(例えば32個)の配線部材は、パッケージ10における面発光レーザアレイチップ20が実装されている領域から放射状に延びるように配置されており、パッケージ10の外側の複数(例えば32個)の電極端子(不図示)と個別に接続されている。
リッド15は、一例として、略シルクハット形状の金属製部材から成り、つば部15aがパッケージ10における段付き凹部10aの周囲部に固定された環状部材から成るスペーサ19に、例えばシーム溶接等によって接合されている。この結果、外部から接合部を介しての水分等の進入が防止されている。なお、リッド15のつば部15a以外の部分である本体部15cの形状は、略円筒形状に限らず、例えば略角筒柱状であってもよい。
リッド15の+Z側の壁は、一例として、+X方向から見て、XY平面に対して例えば17°傾斜しており、その中央部、すなわち面発光レーザアレイチップ20の+Z側の位置に開口15bが形成されている。この開口15bの周囲部には、略平板状の外形を有する光分離素子17が、開口15bを塞ぐように取り付けられている。そこで、面発光レーザアレイチップ20から射出されたレーザ光は、光分離素子17に入射する。光分離素子17については、後に詳述する。なお、以下では、リッド15の+Z側の壁を、傾斜壁とも称する。
結果として、パッケージ10、リッド15、スペーサ19及び光分離素子17によって、面発光レーザアレイチップ20が外部から遮蔽されており、面発光レーザアレイチップ20が収容されている内部空間に、外部からダスト等が侵入することが防止されている。
面発光レーザアレイチップ20は、図5に示されるように、XY平面に沿って2次元配列された複数(例えば32個)の発光部100を含む面発光レーザアレイ240、複数(例えば32個)の発光部100に対応する複数(例えば32個)の電極パッド210などを有している。
各発光部は、発振波長が780nm帯の垂直共振器型の面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:VCSEL)である。
複数の電極パッド210は、複数の発光部100の周囲に配置されており、ボンディングワイヤ220を介して、対応する複数の発光部100と電気的に接続されている。また、複数の電極パッド210は、上記複数の配線部材と個別に電気的に接続されている。
面発光レーザアレイ240では、図6に示されるように、32個の発光部100(面発光レーザ)が半導体製造工程によって同一基板上に形成されている。32個の発光部100は、全ての発光部100をX軸方向に伸びる仮想線上に正射影したときに等間隔d2となるように配置されている。なお、本明細書では、「発光部間隔」とは2つの発光部100の中心間距離を意味する。また、図6では発光部100の数が32個であるものを示しているが、発光部100の個数は、複数であればよく、例えば、発光部100が40個のものであってもよい。
図7には、図6のA−A線断面図が示されている。32個の発光部100は、前述したように、半導体製造工程によって同一基板上に形成されている32個の面発光レーザ100であり、面発光レーザアレイ240は、各発光部100間で均一な偏光方向を有する単一基本横モードの複数のレーザ光を射出することができる。この結果、円形でかつ高密度の微小な32個の光スポットを同時に、感光体ドラム1030上に形成することができる。
また、前述したように、面発光レーザアレイ240では、各発光部100をX軸方向に延びる仮想線上に正射影したときの発光部間隔が等間隔d2であるため、各発光部100の点灯タイミングを調整することにより、感光体ドラム1030上に32個の光スポットを副走査方向に等間隔で形成することができ、複数の発光部が感光体ドラムに対向して副走査方向に等間隔で並んでいる場合と同様な構成と捉えることができる。
そして、例えば、上記間隔d2を2.65μm、光走査装置1010の全光学系の倍率を2倍とすれば、4800dpi(ドット/インチ)の高密度書込みができる。勿論、主走査対応方向の発光部数を増加したり、副走査対応方向のピッチd1を狭くして間隔d2がより小さくなるように発光部を配置したり、光走査装置1010の全光学系の倍率を下げたりすれば、書込み密度をより高密度化でき、より高品質の画像を形成することが可能となる。なお、主走査方向の書き込み間隔は、各発光部100の点灯タイミングを調整することで容易に制御できる。
光分離素子17は、一例として、図8に示されるように、透明ガラス板から成るカバーガラス41と、該カバーガラス41の入射面(−Z側の面)に形成された所定の反射率(又は透過率)を有する反射膜45と、カバーガラス41の射出面(+Z側の面)に形成された所定の反射率(又は透過率)を有する反射防止膜46と、を有する。
反射膜45としては、一例として、薄い金等からなる金属膜、誘電体多層膜などが用いられている。なお、誘電体多層膜は、ミラーとしての機能を有するように、所定の厚さの高屈折率材料と低屈折率材料とを交互に積層することにより形成されたものである。高屈折率材料としては、例えばZnS−SiO2、TiO2等が挙げられ、低屈折率材料としては、例えばSiO2等が挙げられる。
反射防止膜46としては、一例として、カバーガラス41の屈折率よりも低い屈折率を有する誘電体膜、所定の膜厚の高屈折率材料と低屈折率材料とが交互に積層された誘電体多層膜などが用いられている。
以上のように構成される光分離素子17は、一例として、リッド15の傾斜壁に、該傾斜壁に平行に(+X方向から見てXY平面に対して例えば17°傾斜した状態で)、開口15bをリッド15の内側から覆うように取り付けられている。
この場合、面発光レーザアレイ240からの複数のレーザ光それぞれは、一部が反射膜45、カバーガラス41及び反射防止膜46を透過し、残部が反射膜45、カバーガラス41又は反射防止膜46で入射方向に交差する所定方向に反射される。この透過光が光源装置14から射出されたレーザ光である。
結果として、光分離素子17は、面発光レーザアレイ240から射出された複数のレーザ光それぞれを透過光と反射光とに分離する機能、及びリッド15の開口15bを覆う機能を併せ持つ。
なお、光分離素子は、リッドの傾斜壁に形成された開口をリッドの外側から覆うように取り付けられても良いし、リッドの傾斜壁に形成された開口に嵌め込まれても良い。
ここで、光分離素子17をXY平面に対して傾斜させて配置している理由の1つは、光分離素子17での反射光が面発光レーザアレイ240に戻ることを防止し、ひいては面発光レーザアレイ240の各発光部100の出力変動を防止するためである。
また、もう1つの理由は、面発光レーザアレイ240から射出された複数のレーザ光それぞれの残部を、光分離素子17でフォトダイオード30に向けて反射させるためである。すなわち、光分離素子17で反射されたレーザ光をモニタ光として利用するためである。
しかしながら、光分離素子17で反射されたレーザ光をモニタ光として利用する場合、カバーガラス41の表面での反射光と裏面での反射光との干渉により、エタロン効果が発生する。
「エタロン効果」とは、透明部材にレーザ光が入射した際、該透明部材の入射面と射出面との距離に応じた多重反射が生じ、これが周波数に応じた光干渉となって波長に対する正弦波を描く現象である。具体的には、発明者の経験に基づくと、例えば10チャネル以上の多チャネル面発光レーザアレイでは、温度変化による周波数変動が顕著であり、この結果、モニタ光強度に振動が生じ、線形的なモニタ電流を出力することができなくなる。
そこで、光分離素子からの反射光をモニタ光として利用する場合、光分離素子の構成、及び傾斜角度の設定を非常にシビア(精密)に行う必要がある。例えば多数のチャネル(発光部)の個々のモニタ電流における最大値と最小値との差を20%以内に収めるためには、光分離素子での反射光間の反射角のばらつきを、3σで±1°以下に抑えることが要求される。
本実施形態(実施例1)では、上述したような光分離素子17の構成(反射膜45、カバーガラス41及び反射防止膜46)及び傾斜角度の設定(17°)によって、光分離素子17での反射光間の反射角のばらつきを、3σで±1°以下に抑えている。
図3に戻り、フォトダイオード30は、一例として、光分離素子17の反射膜45で反射された複数のレーザ光の光路上(面発光レーザアレイチップ20の+Y側)に受光面(例えば絶縁膜の上面)が位置するように、面発光レーザアレイチップ20が収容されている内部空間に配置されている。詳述すると、フォトダイオード30は、パッケージ10に形成された段付き凹部10aの最上段面12に、P型半導体が+Z側に位置し、かつN型半導体が−Z側に位置するようにダイボンディングによって実装されている。P型半導体に接続されたアノード電極は、パッケージ10の配線部材とワイヤボンディングにより電気的に接続されている。N型半導体に接続されたカソード電極は、導電性接着剤を介して接地されている。
この場合、光分離素子17の反射膜45で反射された複数のレーザ光それぞれの残部は、フォトダイオード30に入射される。この結果、フォトダイオード30にモニタ光として十分な光量のレーザ光を入射させることができる。また、光分離素子17は、カバーガラス41の+Z側に反射防止膜46を有しているため、カバーガラス41の+Z側の面での界面反射を減らすことができ、エタロン効果の影響を低減することができる。
すなわち、本実施形態では、図9に示されるように、各レーザ光の光スポットの主光線を含む中央の光線(光量が大きい光線)をフォトダイオード30に向けて反射させるため、モニタ光として十分な光量を得ることができ、また光スポットの光量分布に影響がない。
ここで、反射膜45の反射率は3%〜15%であることが好ましく、更には、5%〜12%であることがより好ましい。反射率が低過ぎると、モニタ光の光量が小さくなるため、フォトダイオード30でのモニタ電流がノイズに埋もれてしまい、S/Nが低下するため、面発光レーザアレイ240における各発光部100の光量制御を正確に行なうことができなくなるからである。また、反射率が高過ぎると、光分離素子17を透過するレーザ光の光量が小さくなり、結果的に、光源装置14から射出されるレーザ光(書き込み用の光)の光量が低下してしまうからである。
なお、光分離素子17では、カバーガラス41の−Z側の面に反射膜45を形成せずに、リッド15内外の気体(カバーガラス41の周囲の気体)の屈折率と、カバーガラス41の屈折率との差による界面(カバーガラス41の入射面又は射出面)での反射を利用するとともに、その反射率をカバーガラス41の材料によって設定することが、より好ましい。
すなわち、薄膜作製工程によって形成された完全に均一ではない反射膜45による反射を利用するよりも、カバーガラス41の材料そのものの屈折率による反射を利用することで、安定した光量のモニタ光を受光することができる。また、反射膜45を形成する必要がなくなる分、コストダウンを図ることができる。
また、反射防止膜46は、反射率が1%以下であることが好ましく、更には、0.5%以下であることがより好ましい。この場合、図9に示されるレーザ光の領域6Aの一部を反射防止膜46で反射させてフォトダイオード30に入射させることができる。
次に、発光部100(面発光レーザ)の構成について説明する。発光部100は、一例として、図10(A)及び図10(B)に示されるように、基板101、バッファ層102、下部半導体DBR103、下部スペーサ層104、活性層105、上部スペーサ層106、上部半導体DBR107、コンタクト層109、保護層111、p側電極113、2つの透明層121A及び121Bを含む保護層121、n側電極114などを有している。
基板101は、表面が鏡面研磨面であり、図11(A)に示されるように、鏡面研磨面(主面)の法線方向が、結晶方位[1 0 0]方向に対して、結晶方位[1 1 1]A方向に向かってθ(例えば15°)傾斜したn−GaAs単結晶基板である。すなわち、基板101はいわゆる傾斜基板である。ここでは、図11(B)に示されるように、結晶方位[0 −1 1]方向が+X方向、結晶方位[0 1 −1]方向が−X方向となるように配置されている。
図10(A)及び図10(B)に戻り、バッファ層102は、基板101の+Z側の面上に積層され、n−GaAsからなる層である。
下部半導体DBR103は、バッファ層102の+Z側に積層され、n−AlAsからなる低屈折率層と、n−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層のペアを40.5ペア有している。各屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた厚さ20nmの組成傾斜層が設けられている。そして、各屈折率層はいずれも、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、発振波長をλとするとλ/4の光学的厚さとなるように設定されている。なお、光学的厚さがλ/4のとき、その層の実際の厚さDは、D=λ/4n(但し、nはその層の媒質の屈折率)である。
下部スペーサ層104は、下部半導体DBR103の+Z側に積層され、ノンドープの(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなる層である。
活性層105は、下部スペーサ層104の+Z側に積層され、GaInAsP/GaInPの3重量子井戸構造の活性層である。各量子井戸層は0.7%の圧縮歪みを誘起する組成であるGaInAsPからなり、各障壁層は0.6%の引張歪みを誘起する組成であるGaInPからなる。
上部スペーサ層106は、活性層105の+Z側に積層され、ノンドープの(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなる層である。
下部スペーサ層104と活性層105と上部スペーサ層106とからなる部分は、共振器構造体とも呼ばれており、その厚さが1波長の光学的厚さとなるように設定されている。なお、活性層105は、高い誘導放出確率が得られるように、電界の定在波分布における腹に対応する位置である共振器構造体の中央に設けられている。
上部半導体DBR107は、上部スペーサ層106の+Z側に積層され、p−Al0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層とp−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層のペアを23ペア有している。各屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた組成傾斜層が設けられている。そして、各屈折率層はいずれも、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、λ/4の光学的厚さとなるように設定されている。
上部半導体DBR107における低屈折率層の1つには、p−AlAsからなる被選択酸化層108が厚さ30nmで挿入されている。この被選択酸化層108の挿入位置は、電界の定在波分布において、活性層105から3番目となる節に対応する位置である。
コンタクト層109は、上部半導体DBR107の+Z側に積層され、p−GaAsからなる層である。
2つの透明層121A、121Bは、コンタクト層109の+Z側であって、射出領域内でその中心部から外れた部分に設けられた、該部分の反射率を中心部の反射率よりも低くする透明な誘電体膜からなる。すなわち、2つの透明層121A、121Bは、射出光の偏光方向を所望の方向(例えばX軸方向)に規定するためのモードフィルタとして機能する。
p側電極113は、コンタクト層109から、SiN膜からなる光学的厚さがλ/4の保護層111によって絶縁された状態で電極パッド210に向けて延伸している。p側電極113及び電極パッド210は、オーミック材料のAuZnと配線材としてのAuがリフトオフ法により形成される。
保護層121は、SiNからなる光学的厚さが2λ/4の層であり、p側電極113、及び後述する、保護層111の一部である2つの透明層111A、111B上に形成されている。この結果、保護層121における透明層111Aに対応する領域には、透明層111Aを含む透明層121Aが+Z側に突出して形成され、保護層121における透明層111Bに対応する領域には、透明層111Bを含む透明層121Bが+Z側に突出して形成されている。
n側電極114は、基板101の−Z側の面に形成されている。
なお、このように基板101上に複数の半導体層が積層されたものを、以下では、便宜上「積層体」ともいう。
以下に、光源装置14の製造方法について簡単に説明する。先ず、パッケージ10の段付き凹部10aの最下段面11に、面発光レーザアレイチップ20をダイボンディングする。
次に、面発光レーザアレイチップ20の複数の電極パッド210とパッケージ10の複数の配線部材(リード配線)とをワイヤボンディングにより電気的に接続する。
次に、パッケージ10の段付き凹部10aの最上段面12に、フォトダイオード30をダイボンディングする。
次に、フォトダイオード30のアノード電極とパッケージ10の配線部材(リード配線)とをワイヤボンディングにより電気的に接続し、カソード電極を導電性接着剤により接地させる。
次に、面発光レーザアレイチップ20及びフォトダイオード30が実装されたパッケージ10と、本体部15cの傾斜壁に光分離素子17が取り付けられたリッド15とを例えば溶接により接合する。
具体的には、略円筒形状の部分から成る本体部15cの−Z側の端から外側に張り出したつば部15aとパッケージ10に固定されたスペーサ19とを、例えばシーム溶接等で接合する。この結果、接合部を介して外部から水分等が進入することを防ぐことができる。
なお、傾斜壁及び光分離素子17の+X方向から見たXY平面に対する傾斜角度は、面発光レーザアレイチップ20からのレーザ光をフォトダイオード30に向けて反射させることが可能な角度である。この傾斜角度は、例えば17°に設定されるが、要は、10°以上であることが好ましく、更には、15°以上であることがより好ましい。
次に、面発光レーザアレイチップ20の製造方法について順を追って説明する。面発光レーザアレイチップ20は、半導体製造工程によって、基板101上に同時に複数個が一体的に形成された後、複数のチップ状の面発光レーザアレイチップ20に分割されて製造される。ここでは、面発光レーザアレイチップ20の所望の偏光方向Pは、X軸方向であるものとする。
(1)先ず、積層体を有機金属気相成長法(MOCVD法)又は分子線エピタキシャル成長法(MBE法)による結晶成長によって作成する。ここでは、MOCVD法の場合、III族の原料には、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)を用い、V族の原料には、フォスフィン(PH3)、アルシン(AsH3)を用いる。また、p型ドーパントの原料には四臭化炭素(CBr4)、ジメチルジンク(DMZn)を用い、n型ドーパントの原料にはセレン化水素(H2Se)を用いている。
(2)積層体の表面に一辺が25μmの正方形状のレジストパターンを形成する。
(3)Cl2ガスを用いるECRエッチング法で、上記レジストパターンをフォトマスクとして四角柱状のメサ構造体(以下では、便宜上「メサ」と略述する)を形成する(図12(A)参照)。ここでは、エッチングの底面は下部スペーサ層104中に位置するようにした。
ところで、面発光レーザアレイ240において、隣接する2つの発光部100(メサ)間の溝の幅は、各発光部の電気的及び空間的分離のために、5μm以上であることが好ましい。この溝の幅が狭過ぎると、メサを形成する際のエッチングの制御が難しくなるからである。また、メサの大きさ(1辺の長さ)は10μm以上であることが好ましい。あまり小さいと動作時に熱がこもり、特性が低下するおそれがあるからである。
(4)フォトマスクを除去する。
(5)積層体を水蒸気中で熱処理する。これにより、被選択酸化層108中のAl(アルミニウム)がメサの外周部から選択的に酸化され、メサの中央部に、Alの酸化層108aによって囲まれた酸化されていない領域108bが残留する(図12(A)参照)。すなわち、発光部の駆動電流の経路をメサの中央部だけに制限する、いわゆる酸化狭窄構造体が形成される。上記酸化されていない領域108bが電流通過領域(電流注入領域)である。このようにして、例えば一辺が4μm〜6μm程度の略正方形状の電流通過領域が形成される。
(6)気相化学堆積法(CVD法)を用いて、SiNからなる透明な保護層111を形成する。ここでは、保護層111の光学的厚さがλ/4となるようにした。具体的には、SiNの屈折率nが1.86、発振波長λが780nmであるため、実際の膜厚(=λ/4n)は約105nmに設定した。
(7)P側電極113をコンタクト層に導通させるためのコンタクトホールを、メサ上部(保護層111)に形成するためのエッチングマスク(以下では、マスクMという)を作成する(図12(B)参照)。ここでは、一例として、保護層111におけるメサの周囲、メサ上面の周囲部、及びメサ上面の中心をX軸方向(偏光方向P)に挟み、Y軸方向(偏光方向Pに直交する方向)を長手方向とする2つの長方形状の小領域(第1及び第2の小領域)がエッチングされないようなマスクMを作成する。なお、マスクMは、一例として、レジストパターンにより形成されている。
例えば、図12(B)におけるメサの拡大図である図13に示されるように、第1の小領域と第2の小領域とのX軸方向の間隔L1を5μm、第1及び第2の小領域のX軸方向の幅L2を2μm、第1及び第2の小領域のY軸方向の長さL3を8μmとする。
(8)BHF(バッファードフッ酸)にて、保護層111におけるマスクMが形成されていない領域をウェットエッチングし、コンタクトホールを形成する。
(9)マスクMを除去する(図14(A)及び図14(B)参照)。なお、図14(A)は、この工程におけるメサ構造を有する積層体のXZ断面図であり、図14(B)は、該積層体を+Z側から見た平面図である。
ここで、便宜上、第1の小領域に残存している保護層111を「透明層111A」と称し、第2の小領域に残存している保護層111を「透明層111B」と称する。
上記ウェットエッチングの際、マスクMも横方向からエッチングされるため、保護層111における第1及び第2の小領域が徐々に小さくなるようにエッチングされ、透明層111A及び透明層111Bには、XY平面に対して傾斜する側面が形成される。
(10)メサの上面に一辺14μmの正方形状のレジストパターンを形成し、p側の電極材料の蒸着を行なう。p側の電極材料としてはCr/AuZn/Auからなる多層膜、もしくはTi/Pt/Auからなる多層膜が用いられる。
(11)メサ上面の光射出口となる領域(射出領域)に蒸着された電極材料をリフトオフし、p側電極113を形成する(図15(A)及び図15(B)参照)。p側電極113はメサ上面において、平面視ロ字状に形成されており、このp側電極113により囲まれた領域が光射出口である。
図16は、図15(A)及び図15(B)におけるメサ上面の拡大平面図である。光射出口は、一辺の長さがL4(例えば10μm)の正方形状である。本実施形態では、光射出口内の第1及び第2の小領域に、それぞれ光学的厚さがλ/4のSiNからなる透明な誘電体膜としての2つの透明層111A、111Bが形成されている。
(12)気相化学堆積法(CVD法)により、SiNからなる保護層121を光学的厚さが2λ/4となるように形成する(図17参照)。ここでは、SiNの屈折率nが1.86であり、面発光レーザの発振波長λが780nmであるため、保護層の膜厚(=2λ/4n)を、約210nmに設定した。この結果、2つの透明層111A、111B上にも保護層121が形成され、透明層111Aが形成されていた領域には、透明層111Aを含んだ透明層121Aが形成され、透明層111Bが形成されていた領域には、透明層111Bを含んだ透明層121Bが形成される。
(13)基板101の−Z側(裏側)を所定の厚さ(例えば、100μm程度)まで研磨した後、n側電極114を形成する(図10(A)及び図10(B)参照)。ここでは、n側電極114はAuGe/Ni/Auからなる多層膜である。
(14)アニールによって、p側電極113とn側電極114のオーミック導通をとる。この結果、基板101上にメサが発光部となる複数の面発光レーザが形成される。
(15)32個の面発光レーザをそれぞれが含み、一体化された複数の面発光レーザアレイチップ20を分割し、個々の面発光レーザアレイチップ20を得る。
すなわち、モードフィルタとしての2つの透明層121A、121Bの光学的厚さが3λ/4となる32個の面発光レーザを有する面発光レーザアレイチップ20が得られる。
その後、種々の後工程を経て、面発光レーザアレイチップ20の完成品を得る。
このようにして製造された面発光レーザアレイチップ20では、射出光の偏光方向は、所望の偏光方向であるX軸方向であり、偏光抑圧比が20dB以上で安定していた。
なお、偏光抑圧比とは、射出光の所望の偏光方向における光強度と、該偏光方向に直交する方向における光強度との比であり、例えば複写機、プリンタなどの画像形成装置では20dB程度必要とされている。また、面発光レーザアレイチップ20では、射出光のX軸方向に関する放射角とY軸方向に関する放射角との差が0.1°以下であり、射出光の断面形状は、ほぼ円形であった。
ここで、前述したように、電流通過領域及び光射出口のXY断面形状は、いずれも正方形とされている。
図18には、光射出口の開口幅(正方形の一辺の長さ)と射出光のX軸方向に関する放射角との関係が示されている。図18から分かるように、射出光の放射角は、光射出口の開口幅L4(図16参照)にも依存しており、該開口幅L4が狭くなるほど、射出光の放射角が大きくなる。これは、射出光のY軸方向に関する放射角についても同様である。
このように、光出射口の開口幅を調整することで、射出光の放射角を調整することができる。
そこで、発明者は、この手法を用いて、多チャネル面発光レーザアレイの各チャネル(面発光レーザ)の射出光の放射角を、該チャネルの位置に応じて調整することで、チャネル間のカップリング効率のばらつきを大きく低減できることを見出した。
すなわち、多チャネル面発光レーザアレイからの射出光をフォトダイオードで受光してモニタ電流に変換する場合における大きな問題点として、フォトダイオードの受光面の中央部に対応する面発光レーザアレイの中央のチャネルのカップリング効率と、フォトダイオードの受光面の周辺部に対応する面発光レーザアレイの周辺のチャネルのカップリング効率との差異が大きいことが挙げられる。なお、チャネルのカップリング効率とは、該チャネルから射出されフォトダイオードの受光面に入射されるレーザ光の光量である。
特に、パッケージへの実装の際に、面発光レーザアレイ(VCSELアレイ)とフォトダイオード(PD)との位置関係にずれが生じ、その結果、面発光レーザアレイの周辺のチャネルから射出されフォトダイオードの周辺部に入射されていたレーザ光の入射位置が、フォトダイオードの外側へずれた場合、そのチャネルのカップリング効率は大きく低下することになる。
結果として、面発光レーザアレイの周辺のチャネルのカップリング効率と、フォトダイオードの中心付近に射出光が入射される、面発光レーザアレイの中央のチャネルのカップリング効率と、との差は更に大きくなる。
チャネル間のカップリング効率のばらつきが大きいと、フォトダイオードからのモニタ電流でレーザパワーをコントロールするAPC(オートパワーコントロール)制御を安定して行うことが困難となる。なお、チャネル間のカップリング効率のばらつきは(1−最小カップリング効率/最大カップリング効率)×100というパーセント表示で表され、この値が20%を超えると、APC制御が不安定となる。
ところで、チャネルからの射出光の放射角が小さい場合には、そのエネルギの発散度合が小さいため、該チャネルのカップリング効率は大きくなる。逆に、チャネルからの射出光の放射角が大きい場合には、そのエネルギの発散度合が大きいため、該チャネルのカップリング効率は小さくなる。
図19には、射出光の放射角とモニタ電流との関係がグラフにて示されている。図19から分かるように、射出光の水平方向又は垂直方向の放射角が小さいほど、フォトダイオードでのモニタ電流は大きくなり、カップリング効率が大きくなる。
そこで、発明者は、この特性を利用することで、チャネル間のカップリング効率のばらつきを小さくすることに成功した。
すなわち、光源装置14では、32チャネルの面発光レーザアレイ240において、周辺に位置するチャネル(図6の黒塗りのチャネル)については、射出光の放射角を小さくしてカップリング効率を高め、中央に位置するチャネル(図6の白抜きのチャネル)については、射出光の放射角を大きくしてカップリング効率を低くしている。以下では、便宜上、面発光レーザアレイ240の32個のチャネル(発光部100)のうち、中央に位置するチャネルを中央チャネルと称し、周辺に位置するチャネルを周辺チャネルと称する。
この結果、チャネル間のカップリング効率のばらつき、すなわち(1−最小カップリング効率/最大カップリング効率)の値を小さくすることができ、APC制御を安定して行うことが可能となっている。
図20には、以下の(a)〜(c)の3種類の面発光レーザアレイについての、PD−VCSEL間距離の設計値からずれ量と、チャネル間のカップリング効率ばらつきとの関係がグラフにて示されている。
(a)32個のチャネル全ての射出光の放射角が6.3°に設定された面発光レーザアレイ
(b)32個のチャネルのうち、周辺チャネルの射出光の放射角が5.9°に設定され、かつ中央チャネルの射出光の放射角が6.3°に設定された面発光レーザアレイ
(c)32個チャネルのうち、周辺チャネルの射出光の放射角が5.5°に設定され、かつ中央チャネルの射出光の放射角が6.3°に設定された面発光レーザアレイ
図20から分かるように、周辺チャネルの射出光の放射角が小さい面発光レーザアレイほど、チャネル間のカップリング効率ばらつきが小さくなる。
また、PD−VCSEL間距離の観点では、上記(a)の面発光レーザアレイでは、全チャネルの射出光の放射角が等しく、チャネル間のカップリング効率のばらつきを例えば20%以下に抑えるためには、PD−VCSEL間距離のばらつき(設計値からのずれ)は、最大±150μm程度しか許容されない。
一方、上記(b)及び(c)の面発光レーザアレイでは、それぞれPD−VCSEL間距離のばらつきの許容最大値は、上記(a)の面発光レーザアレイよりも大きくなり、(c)の面発光レーザアレイでは、±230μm程度となった。
この結果、面発光レーザアレイをパッケージに実装する際の位置ずれ量の許容範囲が大きくなり、ひいては製造歩留まりを向上することができる。
このように、周辺チャネルの射出光の放射角が中央チャネルの射出光の放射角よりも1°程度まで小さいことは、チャネル間のカップリング効率のばらつきの低減に大きく寄与する。しかしながら、周辺チャネルの射出光の放射角を中央チャネルの射出光の放射角よりも小さくし過ぎると、すなわち両放射角の差を1°程度よりも大きくすると、PD−VCSEL間距離のずれ量が0の場合又は微少な場合に、周辺チャネルのカップリング効率が大きくなり過ぎて、却ってチャネル間のカップリング効率のばらつきが増加してしまう。
また、前述した面発光レーザアレイチップ20の製造方法では、(5)の工程において、メサ中央部に電流通過領域を形成した。この電流通過領域は、メサ外周部から酸化されずに残った領域であり、同じ酸化時間であれば、メサが大きいほど大きくなり、メサが小さいほど小さくなる。
このように、メサの大きさを変えることで、電流通過領域の幅、ひいては光射出口の開口幅を調整することができる。
そこで、中央チャネルのメサを周辺チャネルのメサよりも小さくすることによって、中央チャネルの射出光の放射角を、周辺チャネルの射出光の放射角よりも大きくでき、ひいてはチャネル間のカップリング効率のばらつきを小さくすることができる。
次に、本実施形態の実施例2の光源装置140を用いて行われる、面発光レーザアレイの特性評価について説明する。
この光源装置140は、一例として、図21に示されるように、レーザモジュール500と光学モジュール600とで構成されている。
レーザモジュール500は、一例として、面発光レーザアレイチップ510、該面発光レーザアレイチップ510を駆動制御する不図示のレーザ制御装置、面発光レーザアレイチップ510、レーザ制御装置が実装されているPCB(Printed Circuit Board)基板580などを有している。面発光レーザアレイチップ510は、面発光レーザアレイチップ20と実質的に同一の構成を有している。
光学モジュール600は、一例として、第1の部分610と第2の部分630とから構成されている。第1の部分610は、ハーフミラー611、集光レンズ612、及びフォトダイオード613を有している。また、第2の部分630は、カップリングレンズ631、及び開口板632を有している。
第1の部分610は、面発光レーザアレイチップ510の+Z側であって、面発光レーザアレイチップ510から射出されたレーザ光の光路上にハーフミラー611が位置するように配置されている。ハーフミラー611に入射したレーザ光の一部は−Y方向に反射され、集光レンズ612を介してフォトダイオード613で受光される。フォトダイオード613は、モニタ用のフォトダイオードであり、受光光量に応じた信号(光電変換信号)をレーザモジュール500のレーザ制御装置に出力する。
第2の部分630は、第1の部分610の+Z側であって、ハーフミラー611を透過したレーザ光の光路上にカップリングレンズ631が位置するように配置されている。カップリングレンズ631は、ハーフミラー611を透過したレーザ光を略平行光とする。開口板632は、開口部を有し、カップリングレンズ631を介したレーザ光を整形する。開口板632の開口部を通過したレーザ光が、光源装置140から射出されたレーザ光となる。
ここで、面発光レーザアレイチップ510から射出されたレーザ光をフォトダイオード613に導く光学系を組み込むコストが、この光源装置140の高価格化を招く原因となっている。このため、発明者は、実施例1の光源装置14を発明するに至った。
以上のように構成される実施例2の光源装置140を用いる面発光レーザアレイの特性評価は、面発光レーザアレイチップ510から射出されハーフミラー611で反射されたレーザ光の光量をフォトダイオード613で検出することによって行われる。これによって得られる理想的な波形データが、図22(A)に示されている。
一方、図22(B)には、面発光レーザアレイチップ510に、戻り光による光量変動がある場合の異常波形125aが実線で示され、光量変動がない正常波形125bが破線で示されている。
図22(B)から分かるように、異常波形125aは、波形の前半部分が波打つように現れることが多いが、これに限らず、波形の後半部分が波打つように現れる場合もある。また、周波数も1kHzの場合や、もっと大きい、例えば、数100kHzの波形においても、異常波形が生じる場合がある。特に、1kHzにおける波形を、例えば複写機、プリンタ等の画像形成装置に必要な1ラインを安定して描く際の基準とした場合、その安定性は、画像形成装置によっては、5%レベルの変動であっても問題となる。
ここで、画像形成装置に必要とされる、面発光レーザアレイの特性の定量化について説明する。この特性の定量化には、一般に、熱による面発光レーザの光量変動を評価する指標としてのドループ値が利用されている。
具体的には、面発光レーザの立ち上がり(稼働開始直後の)時間帯での光量Paと、十分に時間が経過した時間帯での光量Pbとの差を、光量Paで除して得られる、次の(1)式のDr(単位:%)を、ドループ値として定義する。
Dr=(Pa−Pb)/Pa・・・(1)
Pa:時間Taにおける光出力値
Pb:時間Tbにおける光出力値
一例として、実施例2では、図22(B)に示されるように、1kHzでデューティーが50%、Taは、1kHzにおける1μsecの位置で、Tbは1kHzにおける480μsecの位置とした。また、光出力は1.4mW相当とし、測定温度は25℃になるように温調冶具で調整した。実施例2では、このような光出力及び温度とされているが、利用される光出力及び温度に対して、面発光レーザアレイの特性の定量化が行われるので、これに限定されるものではない。また、上記デューティー比、周波数、Ta、Tbの各値は、画像形成装置として、高精度な画像を形成するために必要な条件となる。
また、2次元配列された複数の面発光レーザを含む面発光レーザアレイは、各面発光レーザのドループ値が互いに一致又は近似してないと、図22(B)に示されるような異常波形125a等が発生し、最終的に形成される画像の品質が著しく低下する。
そこで、面発光レーザアレイの特性としては、次の(2)式で定義される、複数の面発光レーザ(発光部)のドループ値のばらつきが、極力小さいことが望ましい。
ドループ値のばらつき(%)=Dr(max)−Dr(min)・・・(2)
Dr(max):複数の発光部の中で最もDr値が大きい発光部のDr値
Dr(min):複数の発光部の中で最もDr値が小さい発光部のDr値
上記(2)式のドループ値のばらつきが、3%を超えた状態で画像を形成すると、画像品質が著しく低下することが分かっている。
なお、仮にドループ値のばらつきが小さくても、各面発光レーザのドループ値そのものが大きければ、これに起因する画像劣化が生じる。
図23には、比較例1の光源装置(光デバイスAともいう)におけるch間のドループ値のばらつきが示されている。光デバイスAは、パッケージと、該パッケージに実装された32個の発光部(ch1〜ch32)を有する面発光レーザアレイと、パッケージに接続され、反射防止膜が形成されていない透明ガラス板(表面及び裏面の反射率を合わせた反射率が約8.6%)が面発光レーザアレイの射出方向に直交するように低融点ガラスによって融着された金属製リッドと、を有している。なお、各発光部には、モードフィルタは設けられていない。
比較例1では、面発光レーザアレイの32個の発光部のドループ値は、大きいもので4%、小さいものでは−1.5%であった。これは、発光部によってドループ値が一様でなく、出力波形が異常波形となっていることを示している。光デバイスAのような発光部間にドループ値の大きなばらつきがある光源装置を用いると、高品質な画像を形成することができない。
図24には、比較例2の光源装置(光デバイスBともいう)におけるch間のドループ値のばらつきが示されている。光デバイスBは、パッケージと、該パッケージに実装された32個の発光部(ch1〜ch32)を有する面発光レーザアレイと、反射防止膜が表面及び裏面に形成されている透明ガラス板(表面及び裏面の反射率を合わせた反射率が約0.1%)が面発光レーザアレイの射出方向に直交するように低融点ガラスによって融着された金属製のリッドと、を有している。なお、各発光部には、モードフィルタは設けられていない。
比較例2では、面発光レーザアレイの32個の発光部のドループ値は、大きいもので1.5%、小さいもので0.2%であり、ばらつきが格段に低減されていることが分かる。
比較例2のように、反射率が非常に低い反射防止膜が形成された透明ガラス板を用いることにより、戻り光への耐性が強くなり、ドループ値のばらつきが小さくなる。結果として、異常波形の抑制、各面発光レーザの光量変動の抑制が可能となる。
しかしながら、比較例2では、発明者が目的とする面発光レーザアレイとフォトダイオードとが一体化された構造を有し、安定したAPC制御を行うことができる光源装置(光デバイス)を実現することはできない。
そこで、発明者は、裏面(射出面)に反射防止膜が形成され、かつ表面(入射面)に所定の反射率を有する反射膜が形成された透明ガラス板が、面発光レーザアレイの射出方向に直交する仮想平面、すなわち面発光レーザアレイからの複数のレーザ光の光路に直交する仮想平面に対して所定角度傾斜した状態で取り付けられた金属製のリッドを、面発光レーザアレイ及びフォトダイオードが実装されたパッケージに取り付け、透明ガラス板の傾斜によって、面発光レーザアレイへの戻り光をなくし、かつモニタ用フォトダイオードに向けてモニタ光を反射させる場合のch間のドループ値のばらつきを、以下の複数の実施例において調べた。
図25には、本実施形態の実施例3の光源装置(光デバイスCともいう)におけるch間のドループ値のばらつきが示されている。光デバイスCは、パッケージと、該パッケージに実装された32個の発光部(ch1〜ch32)を有する面発光レーザアレイ及びフォトダイオードと、パッケージに取り付けられ、裏面(射出面)に反射防止膜が形成され、かつ表面(入射面)に780nmの波長に対して10%の反射率を有する反射層が形成された透明ガラス板が面発光レーザアレイの射出方向に直交する仮想平面(XY平面)に対して8°傾斜した状態で低融点ガラスによって融着された金属製リッドと、を有している。なお、各発光部には、モードフィルタは設けられていない。
実施例3では、面発光レーザアレイの32個の発光部のドループ値(%)は、大きいもので3%、小さいもので0.5%であり、上記光デバイスAよりもばらつきが低減されているのが分かる。しかしながら、上記光デバイスBよりもドループ率のばらつきは大きく、傾斜角は、8°では不充分であることが分かる。
図26には、本実施形態の実施例4の光源装置(光デバイスDともいう)におけるch間のドループ値のばらつきが示されている。光デバイスDは、パッケージと、該パッケージに実装された32個の発光部(ch1〜ch32)を有する面発光レーザアレイ及びフォトダイオードと、パッケージに取り付けられ、裏面(射出面)に反射防止膜が形成され、かつ表面(入射面)に780nmの波長に対して10%の反射率を有する反射層が形成された透明ガラス板が面発光レーザアレイの射出方向に直交する仮想平面(XY平面)に対して10°傾斜した状態で低融点ガラスによって融着された金属製リッドと、を有している。なお、各発光部には、モードフィルタは設けられていない。
また、図27には、本実施形態の実施例5の光源装置(光デバイスEともいう)におけるch間のドループ値のばらつきが示されている。光デバイスEは、パッケージと、該パッケージに実装された32個の発光部(ch1〜ch32)を有する面発光レーザアレイ及びフォトダイオードと、パッケージに取り付けられ、裏面(射出面)に反射防止膜が形成され、かつ表面(入射面)に780nmの波長に対して15%の反射率を有する反射層が形成された透明ガラス板が面発光レーザアレイの射出方向に直交する仮想平面(XY平面)に対して10°傾斜した状態で低融点ガラスによって融着された金属製リッドと、を有している。なお、各発光部には、モードフィルタは設けられていない。
また、図28には、本実施形態の実施例6の光源装置(光デバイスFともいう)におけるch間のドループ値のばらつきが示されている。光デバイスFは、パッケージと、該パッケージに実装された32個の発光部(ch1〜ch32)を有する面発光レーザアレイ及びフォトダイオードと、パッケージに取り付けられ、裏面(射出面)に反射防止膜が形成され、かつ表面(入射面)に空気とガラスとの屈折率差を利用して反射できるように反射膜が形成されていない透明ガラス板を面発光レーザアレイの射出方向に直交する仮想平面(XY平面)に対して15°傾斜した状態で低融点ガラスによって融着された金属製リッドと、を有している。なお、各発光部には、モードフィルタは設けられていない。
上記光デバイスD、E及びFでは、ドループ値のばらつきは、光デバイスBと同等、あるいはそれ以下であった。
そこで、反射防止膜が形成されていない透明ガラス板と一体化された樹脂製リッドを用いても、透明ガラス板を傾斜させることで、反射防止膜が形成された透明ガラス板と一体化された金属製リッドを用いる場合と同等の効果を得ることができることが分かった。すなわち、レーザ光を一部反射する透明部材を用いても、それを傾斜させることで戻り光の問題を解決できる。
以上の説明から分かるように、光分離素子17のXY平面に対する傾斜角は、10°以上であることが好ましく、15°以上であることがより好ましい。
以上説明した本実施形態の実施例1〜6の光源装置は、2次元配列された複数の発光部を有する面発光レーザアレイと、該面発光レーザアレイからの複数のレーザ光の光路上に配置され、該複数のレーザ光それぞれの一部を透過させ、残部を入射方向に交差する方向に反射させる光学素子と、該光学素子で反射されたレーザ光を受光するフォトダイオードと、を備えている。
この場合、面発光レーザアレイから射出された複数のレーザ光それぞれの一部の主光線を含む中央の光線(光量が大きい光線)を透過させることができ、例えば書き込み用光として充分な光量を得ることができる。また、面発光レーザアレイから射出された複数のレーザ光それぞれの残部の主光線(光量が大きい光線)を含む光線がフォトダイオードで受光されるため、モニタ光として充分な光量を得ることができる。また、面発光レーザアレイから射出された複数のレーザ光それぞれの残部が面発光レーザアレイに戻ることが抑制されるため、面発光レーザアレイの光量変動を抑制することができる。
結果として、本実施形態の実施例1〜6の光源装置では、安定したAPC制御を行うことができる。
一方、例えば特許文献1に開示されている面発光レーザモジュールでは、面発光レーザから射出されたレーザ光のうち、主光線を含む中央の光線(光量が大きい光線)がモジュール外に射出され、周辺の光線(光量が小さい光線)が反射部で反射されて、受光素子に入射されるため、受光素子での受光光量が不足し、安定したAPC制御を行うことができないおそれがあった。
ところで、前述したように、フォトダイオードの受光面の中央部で受光されるレーザ光の光量は、フォトダイオードの受光面の周辺部で受光されるレーザ光の光量よりも大きい。これらの光量の差は、面発光レーザアレイ及びフォトダイオードをパッケージに実装する際の位置ずれがあると、一層大きくなる。
そこで、実施例1の光源装置14では、複数の発光部100のうち、中央の発光部100から射出されたレーザの放射角は、周辺の発光部100から射出されたレーザ光の放射角よりも大きく設定されている。
この場合、中央の発光部100から射出されるレーザ光の光量を、周辺の発光部100から射出されるレーザ光の光量よりも小さくすることができる。この結果、面発光レーザアレイチップ20及びフォトダイオード30をパッケージに実装する際の位置ずれがあっても、フォトダイオード30の受光面で受光される各レーザ光の光量(カップリング効率)のばらつきを低減できる。
結果として、光源装置14の製造歩留りを向上させつつ安定したAPC制御を行うことができ、ひいては安価で高性能かつ高信頼性の光源装置14を提供できる。
また、中央の発光部100から射出されたレーザ光の放射角と、周辺の発光部100から射出されたレーザ光の放射角との差は、1°以下に設定されることが好ましい。
この場合、面発光レーザアレイ240をパッケージに実装する際の位置ずれ量の大小に関わらず、カップリング効率のばらつきを低減でき、ひいては光源装置14の製造歩留まりを格段に向上することができる。
また、中央の発光部100は、周辺の発光部100よりも小さく形成されることが好ましい。この場合、簡易な手法により、中央の発光部100から射出されるレーザ光の放射角を、周辺の発光部100から射出されるレーザ光の放射角よりも大きく設定することができる。
また、反射膜45の反射率は、複数のレーザ光の波長に対して、3%〜15%に設定されることが好ましい。また、カバーガラス41は、面発光レーザアレイの射出方向に直交する仮想平面、すなわち面発光レーザアレイからの複数のレーザ光の光路に直交する仮想平面(XY平面)に対して、10°以上傾斜していることが好ましい。
この場合、書き込み用光の光量を不足させることなく、フォトダイオード30の受光面に入射される各レーザ光の光量のばらつきを低減してS/N比が良いモニタ電流を出力することができ、面発光レーザの制御に適切なフィードバックを行うことができる安定したAPC制御を実現することができる。
また、光源装置14は、面発光レーザアレイチップ20及びフォトダイオード30を保持するパッケージ10と、光分離素子17を保持し、該光分離素子17とで面発光レーザアレイ240及びフォトダイオード30を覆うようにパッケージ10に取り付けられたリッド15と、を更に備え、該リッド15は、面発光レーザアレイ240からの複数のレーザ光の光路上に形成され、光分離素子17によって塞がれている開口15bを有している。
この場合、面発光レーザアレイ240及びフォトダイオード30が一体的に設けられ、光量のばらつきが低減された高品質な複数のレーザ光を射出できる光源装置14を実現できる。
また、光走査装置1010は、光源装置14を備えているため、多数のレーザ光で感光体ドラム1030を安定して精度良く走査することができる。
また、レーザプリンタ1000は、光走査装置1010を備えているため、高速、かつ高精細に画像を形成することができる。すなわち、スループット及び画像品質の向上を図ることができる。
なお、上記実施形態では、面発光レーザアレイ240の32個の発光部100のうち、最外周に位置する20個の発光部100(図6の黒塗りの20個の発光部100)を周辺の発光部とし、最外周に位置する20個の発光部100に取り囲まれている12個の発光部100(図6の白抜きの12個の発光部100)を中央の発光部としているが、これに限られない。例えば、図6の白抜きの12個の発光部100のうち、最も+X側のY軸方向に並ぶ2つの発光部100及び最も−X側のY軸方向に並ぶ2つの発光部100を、周辺の発光部としても良い。要は、図6の白抜きの12個の発光部100のうちの少なくとも1つを中央の発光部とし、それ以外を周辺の発光部とすれば良い。
また、上記実施形態では、面発光レーザアレイが32個の発光部を有する場合について説明しているが、これに限定されるものではない。要は、面発光レーザアレイは、少なくとも1個の中央の発光部と、該発光部を取り囲むように配列された複数の発光部と、を有していれば良い。
また、面発光レーザアレイの複数の発光部の配列は、上記実施形態で説明したもの(図6参照)に限られない。要は、面発光レーザアレイの複数の発光部は、副走査対応方向(X軸方向)の位置が互いに異なるように2次元配列されていることが好ましい。例えば、マトリクス状に配置された複数の発光部を有する面発光レーザアレイを射出方向(Z軸方向)周りに回転させて配置しても良い。
また、上記実施形態の実施例1では、カバーガラスの入射面に反射膜が形成され、カバーガラスの射出面に反射防止膜が形成されているが、逆でも良い。
また、上記実施形態の実施例1では、カバーガラスに反射膜及び反射防止膜が形成されているが、反射膜及び反射防止膜の少なくとも一方が形成されていなくても良い。
また、上記実施形態の実施例1では、光分離素子17は、リッド15の開口15bを覆うためのカバーガラス41と、該カバーガラス41に形成された反射膜45及び反射防止膜46とを含んで構成されているが、これに限られない。例えば、面発光レーザアレイと、リッドの開口を覆うためのカバーガラスとの間のレーザ光の光路上に、例えばハーフミラー等のビームスプリッタ、透明ガラス板、反射膜及び反射防止膜の少なくとも一方が形成された透明ガラス板などを配置しても良い。要は、面発光レーザアレイチップからの複数のレーザ光の光路上に、該複数のレーザ光それぞれの一部を透過させ、残部を反射させる光学素子が配置されていれば良い。
また、上記実施形態では、面発光レーザの発振波長が780nm帯の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、650nm帯、850nm帯、980nm帯、1.3μm及び1.5μm帯など、異なる活性層材料を用いた他の波長帯であっても良い。また、基板もGaAs以外の基板を用いても良い。
また、上記面発光レーザアレイは、画像形成装置以外の用途にも用いることができる。その場合には、発振波長は、その用途に応じて、650nm帯、780nm帯、850nm帯、980nm帯、1.3μm帯、1.5μm帯等の波長帯であっても良い。この場合に、活性層を構成する半導体材料は、発振波長に応じた混晶半導体材料を用いることができる。例えば、650nm帯ではAlGaInP系混晶半導体材料、980nm帯ではInGaAs系混晶半導体材料、1.3μm帯及び1.5μm帯ではGaInNAs(Sb)系混晶半導体材料を用いることができる。
また、上記実施形態では、受光素子として、フォトダイオード30が採用されているが、これに限らず、例えばフォトトランジスタなどを採用しても良い。
また、上記実施形態の面発光レーザアレイでは、光射出口及び電流通過領域の形状が正方形状とされているが、これに限らず、例えば、正方形以外の多角形状、円形状、楕円形状等の他の形状であっても良い。
また、上記実施形態では、画像形成装置としてレーザプリンタ1000の場合について説明したが、これに限定されるものではない。
例えば、レーザ光によって発色する媒体(例えば、用紙)に直接、レーザ光を照射する画像形成装置であっても良い。
例えば、媒体が、CTP(Computer to Plate)として知られている印刷版であっても良い。つまり、光走査装置1010は、印刷版材料にレーザアブレーションによって直接画像形成を行い、印刷版を形成する画像形成装置にも好適である。
また、例えば、媒体が、いわゆるリライタブルペーパーであっても良い。これは、例えば紙や樹脂フィルム等の支持体上に、以下に説明するような材料が記録層として塗布されている。そして、レーザ光による熱エネルギ制御によって発色に可逆性を与え、表示/消去を可逆的に行うものである。
透明白濁型リライタブルマーキング法とロイコ染料を用いた発消色型リライタブルマーキング法があり、いずれも適用できる。
透明白濁型は、高分子薄膜の中に脂肪酸の微粒子を分散したもので、110℃以上に加熱すると脂肪酸の溶融により樹脂が膨張する。その後、冷却すると脂肪酸は過冷却状態になり液体のまま存在し、膨張した樹脂が固化する。その後、脂肪酸が固化収縮して多結晶の微粒子となり樹脂と微粒子間に空隙が生まれる。この空隙により光が散乱されて白色に見える。次に、80℃から110℃の消去温度範囲に加熱すると、脂肪酸は一部溶融し、樹脂は熱膨張して空隙を埋める。この状態で冷却すると透明状態となり画像の消去が行われる。
ロイコ染料を用いたリライタブルマーキング法は、無色のロイコ型染料と長鎖アルキル基を有する顕消色剤との可逆的な発色及び消色反応を利用している。レーザ光により加熱されるとロイコ染料と顕消色剤が反応して発色し、そのまま急冷すると発色状態が保持される。そして、加熱後、ゆっくり冷却すると顕消色剤の長鎖アルキル基の自己凝集作用により相分離が起こり、ロイコ染料と顕消色剤が物理的に分離されて消色する。
また、媒体が、紫外光を当てるとC(シアン)に発色し、可視光のR(レッド)の光で消色するフォトクロミック化合物、紫外光を当てるとM(マゼンタ)に発色し、可視光のG(グリーン)の光で消色するフォトクロミック化合物、紫外光を当てるとY(イエロー)に発色し、可視光のB(ブルー)の光で消色するフォトクロミック化合物が、紙や樹脂フィルム等の支持体上に設けられた、いわゆるカラーリライタブルペーパーであっても良い。
これは、一旦紫外光を当てて真っ黒にし、R・G・Bの光を当てる時間や強さで、Y・M・Cに発色する3種類の材料の発色濃度を制御してフルカラーを表現し、仮に、R・G・Bの強力な光を当て続ければ3種類とも消色して真っ白にすることもできる。
このような光エネルギ制御によって発色に可逆性を与えるものも上記実施形態と同様な光走査装置を備える画像形成装置として実現できる。
また、像担持体として銀塩フィルムを用いた画像形成装置であっても良い。この場合には、光走査により銀塩フィルム上に潜像が形成され、この潜像は通常の銀塩写真プロセスにおける現像処理と同等の処理で可視化することができる。そして、通常の銀塩写真プロセスにおける焼付け処理と同等の処理で印画紙に転写することができる。このような画像形成装置は光製版装置や、CTスキャン画像等を描画する光描画装置として実施できる。
また、一例として図29に示されるように、複数の感光体ドラムを備えるカラープリンタ2000であっても良い。
このカラープリンタ2000は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせてフルカラーの画像を形成するタンデム方式の多色カラープリンタであり、ブラック用のステーション(感光体ドラムK1、帯電装置K2、現像装置K4、クリーニングユニットK5、及び転写装置K6)と、シアン用のステーション(感光体ドラムC1、帯電装置C2、現像装置C4、クリーニングユニットC5、及び転写装置C6)と、マゼンタ用のステーション(感光体ドラムM1、帯電装置M2、現像装置M4、クリーニングユニットM5、及び転写装置M6)と、イエロー用のステーション(感光体ドラムY1、帯電装置Y2、現像装置Y4、クリーニングユニットY5、及び転写装置Y6)と、光走査装置2010と、転写ベルト2080と、定着ユニット2030などを備えている。
各感光体ドラムは、図29中の矢印の方向に回転し、各感光体ドラムの周囲には、回転方向に沿って、それぞれ帯電装置、現像装置、転写装置、クリーニングユニットが配置されている。各帯電装置は、対応する感光体ドラムの表面を均一に帯電する。帯電装置によって帯電された各感光体ドラム表面に光走査装置2010により光が照射され、各感光体ドラムに潜像が形成されるようになっている。そして、対応する現像装置により各感光体ドラム表面にトナー像が形成される。さらに、対応する転写装置により、転写ベルト2080上の記録紙に各色のトナー像が転写され、最終的に定着ユニット2030により記録紙に画像が定着される。
光走査装置2010は、前記面発光レーザアレイチップ20と同様にして製造された面発光レーザアレイチップを含む光源装置を、色毎に有している。そこで、上記光走査装置1010と同様の効果を得ることができる。また、カラープリンタ2000は、この光走査装置2010を備えているため、上記レーザプリンタ1000と同様の効果を得ることができる。
ところで、カラープリンタ2000では、各部品の製造誤差や位置誤差等によって色ずれが発生する場合がある。このような場合であっても、点灯させる発光部を選択することで色ずれを低減することができる。