以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
(統計システム100)
図1は、統計システム100の概略的な接続関係を示した説明図である。統計システム100は、監視装置110と、解析装置120と、管理サーバ130と、信号制御装置140とを含んで構成される。
監視装置110は、任意の道路を監視する装置であり、例えば、図1に示すような対象領域10としての交差点全域を十分に見渡すことができる位置に配置され、対象領域10に対し、移動体12を含む各部位の距離を測定して3次元情報を生成する。ここで移動体12は、自動四輪、自動二輪、自転車、歩行者等を含む独立して移動可能な対象物である。
解析装置120は、専用回線、LAN(Local Area Network)、インターネット等の通信回線102を介して1または複数の監視装置110と通信可能に接続され、監視装置110で生成された3次元情報に基づいて交通統計量を導出したり、移動体12の移動軌跡と交通ルールとに基づいて違反統計量を導出したりする。また、交通統計量、違反統計量、および、対象領域10で生じた事故に関する事故統計量に基づいて、改修情報を導出できる。改修情報は、対象領域10を改修するための情報であり、安全度、危険度、改善案、対処案等を含む。
管理サーバ130は、LANやインターネット等の通信網104を介して1または複数の解析装置120と通信可能に接続され、監視装置110で導出された交通統計量や違反統計量を集約する。また、管理サーバ130は、交通ルール、道路設計図、事故情報等をデータベースとして保持し、解析装置120からの要求に応じて交通ルール、道路設計図、事故情報等を配信することができる。
信号制御装置140は、任意の1または複数の信号機について、その信号色の切換タイミングを制御するとともに、その信号機の状態(信号色等)を解析装置120に送信する。また、信号制御装置140から信号機の状態を取得するのが困難な場合、監視装置110の撮像部等を通じて信号機の状態、例えば、信号色を推定してもよい。
当該統計システム100によると、1年間に亘り、移動レーンや移動経路毎の移動体12の移動統計や、移動時の速度変化と軌跡、信号遷移時の交通変化等の交通統計量を常時取得することができる。ここで、移動経路とは、車両等の移動体12の軌跡を統計的に有意な数収集した場合における、移動体12の軌跡上にみられる幾何学的パターンであり、道路上の白線で示されたルートとは必ずしも一致しない。また、複数の移動体12に対して意図的に同じ経路を通過させようとしても、例えば、運転操作が異なるなどの誤差により軌道が厳密に一致しないといったように、移動経路は移動体12の移動余裕を含んだ幅を持つ。さらに、往路と復路が物理的に同じ場所を通過する必要のある狭い一本道では、幾何学的なパターンは一通りしかないが、移動方向を加味して、往路用移動経路、復路用移動経路のように2パターンと扱う場合もある。移動レーンは、移動経路の中で、車線で区画化された自動四輪1台が、移動余裕も含めて移動可能な幅に設定された一連の領域である。このような交通統計量を導出する際には、移動レーンやその数等、車両が受ける制限の設定を要するが、当該統計システム100では、かかる制限を設定する煩雑な作業を行うことなく、自動的に移動経路を特定できる。こうして、必要な交通統計量を容易に導出することが可能となる。
さらに、このような交通統計量、違反統計量、および、事故統計量に基づいて、交通事故の原因となりうる要素が、交通ルール違反と道路の地理構造のいずれにあるのかを切り分け、危険要因を高精度に分析して適切な改善情報を導出することが可能となる。以下、監視装置110および解析装置120の構成を述べ、その後、それらを用いた解析方法を詳述する。
(監視装置110)
図2は、監視装置110の概略的な構成を示した説明図である。監視装置110は、光学式情報取得部112と、通信部114と、警報部116と、中央制御部118とを含んで構成される。
光学式情報取得部112は、測距部112aと撮像部112bとからなる。測距部112aは、レーザレーダやカメラ等が用いられ、対象領域10中の各部位の距離を導出する。本実施形態では、測距部112aとしてレーザレーダを用いる例を挙げる。これは、レーザレーダの方がカメラと比較して光源を必要としないので、昼夜(別途の光源の有無)に拘わらず、距離を正確に導出できるからである。
具体的に、測距部112aとしてのレーザレーダでは、対象領域10に対しレーザ光をスイープしながら投影し、レーザ光を出射してから反射光が戻ってくるまでの時間に基づいて対象点(各部位)の距離を導出する。スイープは繰り返し行われ、その周期は、後述する移動軌跡導出部が移動体12の移動を認識できる程度に速い。測距部112aは、レーザの照射方向と対象点との距離とに基づいて対象点の集合(対象点群)それぞれの3次元座標に相当する3次元情報を導出する。
撮像部112bは、1または複数のカメラで構成され、対象領域10の静止画または動画を撮像する。また、光度が足りない場合、別途の光源を用いて撮像してもよい。
通信部114は、解析装置120との通信回線102を通じて通信を確立し、測距部112aで測定した対象点群に関する3次元情報や撮像部112bで撮像した撮像画像を解析装置120に送信する。
警報部116は、対象領域10を移動している移動体12に交通ルールに基づく違反項目がある場合、警報を発する。かかる警報は、聴覚的な警告音声や視覚的な警告画像を含む。
中央制御部118は、中央処理装置(CPU)や信号処理装置(DSP:Digital Signal Processor)、プログラム等が格納されたROMやメモリ、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路により、監視装置110全体を管理および制御する。
(解析装置120)
図3は、解析装置120の概略的な構成を示した説明図である。解析装置120は、通信部122と、記録部124と、中央制御部126とを含んで構成される。
通信部122は、監視装置110と通信回線102を通じて通信を確立し、監視装置110から対象点群に関する3次元情報および撮像画像を受信する。また、通信部122は、通信網104を介して管理サーバ130や信号制御装置140とも通信を確立する。
記録部124は、フラッシュメモリやHDDで構成され、3次元情報を一時的に保持したり、交通統計量や違反統計量等を記録する。また、記録部124は、交通の地理的構成を格納する交通地理構成DB(データベース)、移動体12の移動軌跡を蓄積するための交通ダイナミクスDB、移動体12に関する統計演算の結果を格納する交通統計DB、交通ルールを格納する交通ルールDB、交通ルールに違反した移動体12に関する統計演算の結果を格納する違反統計DB、対象領域10において生じた交通事故に関する情報を格納する事故統計DB等のデータベースとしても機能する。
中央制御部126は、中央処理装置や信号処理装置、プログラム等が格納されたROMやメモリ、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路により、解析装置120全体を管理および制御する。また、中央制御部126は、移動体特定部150、移動軌跡導出部152、移動経路特定部154、交通蓄積部156、交通統計部158、違反蓄積部160、違反統計部162、事故蓄積部164、事故統計部166、改修情報導出部168としても機能する。
移動体特定部150は、測距部112aを通じて取得した対象領域10中の対象点群の3次元情報に基づいて、移動体12に属する対象点群を抽出し、移動体12を特定する。移動軌跡導出部152は、移動体特定部150が特定した移動体12に属する対象点群の3次元的構成(対象点群の数、車高や車幅等、移動体12の対象点群に矛盾がないか考慮する)を使用し移動体12を追跡して移動軌跡を導出する。移動経路特定部154は、移動軌跡導出部152が導出した移動軌跡に基づいて、移動体12の移動が統計的にパターン化されて存在する移動経路を特定する。
交通蓄積部156は、移動体12の移動経路、移動方向、大きさ、移動速度、および、移動時刻や、それらに基づいて特定される数値の群から選択される1または複数の交通パラメータを移動体12に関連付けて蓄積する。そして、交通統計部158は、1または複数の交通パラメータに関する統計をとる(交通統計量)。また、違反蓄積部160は、任意の移動体12の移動軌跡と、予め定められた交通ルールとを比較し、交通ルールに従っていない違反項目がある場合、その違反項目を移動体12に関連付けて蓄積する。そして、違反統計部162は、違反項目に関する統計をとる(違反統計量)。
事故蓄積部164は、対象領域10で事故が生じた場合に、事故に関連する移動体12の移動軌跡、事故が生じた位置、時刻等の事故情報を蓄積する。事故統計部166は、事故情報に関する統計をとる(事故統計量)。改修情報導出部168は、交通統計量、違反統計量、および、事故統計量に基づいて、対象領域10の改修情報を導出する。以下、解析装置120を用いた解析方法を通じ、かかる機能部の詳細な動作を説明する。
(解析方法)
図4および図5は、解析方法の具体的な処理を説明するためのフローチャートである。ここでは、まず、図4のフローチャートの流れに従い、移動体特定処理S1、移動軌跡導出処理S2、移動経路特定処理S3を通じ、交通統計量や違反統計量を導出するための準備として移動経路を特定する。そして、移動経路が特定されると、図5のフローチャートに従い、交通統計量、違反統計量、および、事故統計量を導出し、それらに基づいて改修情報を導出する。
(移動体特定処理S1)
図4のフローチャートを参照すると、まず、移動体特定処理S1が実行される。図6は、移動体特定処理S1の具体的な処理を説明するためのフローチャートであり、図7は、移動体特定処理S1を説明するための説明図である。
移動体特定部150は、まず、固定背景が既に特定されているか否か判定する(S1−1)。固定背景が特定されていれば(S1−1におけるYES)、ステップS1−4に処理を移行する。固定背景が未だ特定さていない場合(S1−1におけるNO)、管理サーバ130から、道路として区画化されている領域等を示した道路設計図等を取得し、交通地理構成DBに格納する(S1−2)。交通地理構成DBには、このような道路設計図以外にも、後述する移動経路等を登録することができる。また、道路設計図に付随して、交差点の見通し等が把握できる設計図や3次元情報を有していてもよい。このような交通地理構成DB中の道路設計図、移動経路等は、初回のみならず、道路構造の変化に伴い定期的に更新されるとしてもよい。
続いて、移動体特定部150は、交通地理構成DB中の道路設計図と、測距部112aを通じて取得した対象点群の3次元情報とに基づいて固定背景を導出する(S1−3)。例えば、移動体特定部150は、連続する3次元情報に低域通過フィルタ(LPF)を施し、3次元情報の移動がない部位を固定背景とする。すると、図7(a)のような移動体12を含まない固定背景14のみが特定される。図7では、理解を容易にするため対象点群を平面として表している。
次に、移動体特定部150は、測距部112aを通じて取得した対象点群の3次元情報から、固定背景14と対象点が一致する対象点群を削除する(S1−4)。すると、図7(b)のように、移動体12に相当する対象点群が残される。移動体特定部150は、隣接する対象点の間隔が所定の距離範囲に含まれる各集合体をグループ化して1の移動体12とし、図7(b)の対象点群を複数の移動体12に分離する(S1−5)。こうして、1または複数の移動体12が特定される。
なお、移動体特定部150は、必ずしも固定背景14の対象点群を導出する必要はなく、道路面から鉛直上方に、例えば車両の高さ程度に突出した点群の塊(点群ブロック)が存在すれば、その点群ブロックを追跡し、移動体足り得る有意な道路面上の移動があったことをもって、その点群ブロックを移動体12として特定しても構わない。また、明らかに移動体12の通行可能領域ではないと把握できる部分、例えば街路樹等に属する点群領域は予め削除したり、マスク等を使って無視してもよい。
(移動軌跡導出処理S2)
図8は、移動軌跡導出処理S2の具体的な処理を説明するためのフローチャートである。移動軌跡導出部152は、前回の3次元情報と今回の3次元情報とを比較し、移動体特定部150が特定した1または複数の移動体12の所定距離範囲内に、対象移動体として交通ダイナミクスDBに登録されている移動体12があるか否か判定する(S2−1)。対象移動体がなければ(S2−1におけるNO)、その移動体12が対象領域10中に初めて出現した対象移動体として交通ダイナミクスDBに登録する(S2−2)。
所定距離範囲内に対象移動体があれば(S2−1におけるYES)、その移動体12と対象移動体とが同一の移動体12であるとみなし、移動軌跡導出部152は、その移動距離、移動方向およびスイープ周期から、かかる移動体12の移動方向と移動速度とを導出する(S2−3)。このとき、対象移動体の前回の移動方向および移動速度と、移動体12の今回の移動方向と移動速度とを比較して連続性を確認し、同一の移動体12である確からしさを判定してもよい。また、移動体12を構成する3次元点群の構成(点群が構成する形状)をもって確からしさを判定してもよい。
そして、移動軌跡導出部152は、導出した移動体12の位置、移動方向、大きさ、移動速度、および、移動時刻や、それらに基づいて特定される数値を、対象移動体の識別子(ID)に関連付けて交通ダイナミクスDBに追加記録する(S2−4)。ここで、移動体12の大きさは、対象点群の数や高さから特定することができる。ただし、対象移動体があったとしても、移動速度が0の場合、その移動体12は停止しているとみなせるので、交通ダイナミクスDBへの追加記録は行わない。こうして、停止している移動体12の情報を間引くことができる。ただし、一時的に停車して移動速度が0になっている移動体12等であっても、対象領域10内に留まっているうちは駐停車移動体として追跡を継続する。このようにして、移動軌跡導出部152は移動体12を追跡(追尾)する。
次に、移動軌跡導出部152は、前回の3次元情報では対象移動体であったが、今回の3次元情報には存在しなくなってしまった移動体12があるか否か判定する(S2−5)。存在しない移動体12があれば(S2−5におけるYES)、その移動体12は、最早、対象領域10から外れてしまったとして、対象移動体から抹消するとともに、交通ダイナミクスDBに記録されている当該対象移動体の情報を、確定した移動経路として登録して(S2−6)、当該移動軌跡導出処理S2を終了する。存在しない移動体12がなければ(S2−5におけるNO)、何らの処理を行うことなく、当該移動軌跡導出処理S2を終了する。
当該移動軌跡導出処理S2では、対象領域10中に複数の移動体12が存在する場合があるが、前回と今回の3次元情報から1つ1つの移動体12を同定しつつ追跡しているので、複数の移動体12が混在することはない。また、同一種や同形状の移動体12が複数含まれたとしても、前回と今回の3次元情報から移動体12の移動方向や移動速度を導出し、予測値と整合をとっているので、個々の移動体12の正しい移動軌跡を確実に導出することが可能となる。
(移動経路特定処理S3)
図9は、移動経路特定処理S3の具体的な処理を説明するためのフローチャートであり、図10は、移動経路を説明するための説明図である。ここでは、ヒストグラムを用い、高頻度の移動軌跡を移動経路として特定する。移動経路特定部154は、新たに確定した移動経路が登録されているか否か判定する(S3−1)。確定した移動経路が登録されていなければ(S3−1におけるNO)、当該移動経路特定処理S3を終了する。
確定した移動経路が登録されていれば(S3−1におけるYES)、当該移動経路が除外移動経路に該当するか否か判定する(S3−2)。除外移動経路に該当すると(S3−2におけるYES)、当該移動経路について、何らの追加処理を行わず、移動経路特定処理S3を終了する。これは、以下の理由による。
交差点やT字路において、移動経路は、直線に限らず、右折や左折等の曲線となることがある。しかし、移動体12の移動方向が任意の方向に偏ると、その移動方向に関する移動軌跡のヒストグラムのみが突出することとなる。
そこで、本実施形態では、任意の移動軌跡について、ヒストグラムを通じ、その移動軌跡が移動経路であることが確からしくなると(例えば、ヒストグラムの値が所定値を超えると)、当該移動軌跡と実質的に同一の移動軌跡に関して、ヒストグラムの対象から除外する。すなわち、高頻度の移動軌跡が移動経路として特定されると、その移動経路を除外移動経路とし、その移動経路に属する移動軌跡をヒストグラムには加算せず、低頻度の移動軌跡をヒストグラムの対象とする。そして、除外後の移動軌跡に基づいて新たに移動経路が特定される。
移動経路が除外移動経路に該当しない場合(S3−2におけるNO)、移動経路特定部154は、予め対象領域10を複数のグリッドに分けて作成しておいたxyテーブル(2次元ヒストグラム)において、移動軌跡が通過するグリッドに任意の数値(ここでは1)を加算してヒストグラムを更新する(S3−3)。
そして、移動経路特定部154は、ヒストグラムのエントリー数が予め定められた所定数以上となったか否か判定し(S3−4)、所定数未満であれば(S3−4におけるNO)、当該移動経路特定処理S3を終了する。
エントリー数が所定数以上となれば(S3−4におけるYES)、ヒストグラム上に、移動体12が高頻度で通る移動軌跡のパターンが生じるので、そのパターンを移動経路として特定する(S3−5)。このように、移動軌跡のヒストグラムを生成することで、煩雑な作業を必要とせず自動的に移動経路を取得できる。また、経路特定後は、一旦ヒストグラムを初期化し、エントリー数を0として次の処理に備える。
また、一旦、移動経路として特定されると、上述したように他の移動経路を特定すべく、除外移動経路として登録され、その移動経路に属する移動軌跡がヒストグラムから排除され、以後、除外移動経路に相当する移動軌跡はヒストグラムとして累積されなくなる。そして、低頻度の移動軌跡に関するエントリー数も所定数以上となると、その移動軌跡も移動経路として特定され、除外移動経路となる。このような除外処理を、例えば、移動軌跡の95%以上が、移動経路として特定されるまで繰り返す。こうして、高頻度の移動軌跡によって抽出され難い低頻度の移動軌跡も適切に抽出され、移動経路を的確に特定することが可能となる。
また、道路幅が広い場合、1本の道路内に複数の移動経路(例えば対向車線)が存在する場合がある。このような場合、特定された移動経路に、移動体12の移動方向を関連付け、方向性をもった移動経路とする。こうして、図10に示すように複数の移動経路170を特定することができる。かかる移動経路170は、交通地理構成DBに登録または更新される。
ただし、移動経路特定処理S3では、慣習的に多くの移動体12が移動経路170を逸脱して(違反して)移動している場合、その違反している移動経路170が正規の移動経路170として特定されてしまう場合がある。このような場合、特定された移動経路170を、移動体12の数の多い順に並べ、ユーザに採否を確認し、不要な移動経路170を排除することもできる。
このように、交通統計量、違反統計量、および、事故統計量を導出するための準備として移動経路170が特定されると、その移動経路170の情報に基づいて、交通統計量、違反統計量、事故統計量を導出することが可能となる。以下、図5のフローチャートに従い、移動体特定処理S1、移動軌跡導出処理S2、交通蓄積処理S4、違反蓄積処理S5、事故蓄積処理S6、判定処理S7、交通統計処理S8、違反統計処理S9、事故統計処理S10、改修情報導出処理S11を通じて、交通統計量、違反統計量、および、事故統計量を導出する。ただし、図4において既に説明した移動体特定処理S1、移動軌跡導出処理S2については、その処理が実質的に等しいので、ここでは、同一の符号を付してその説明を省略し、図4と異なる交通蓄積処理S4、違反蓄積処理S5、事故蓄積処理S6、判定処理S7、交通統計処理S8、違反統計処理S9、事故統計処理S10、改修情報導出処理S11のみ説明する。
図5のフローチャートの事前処理として、違反蓄積部160は、管理サーバ130から交通ルール(例えば、道路交通法等)を取得し、交通ルールDBに格納するとともに、事故情報を取得し、事故統計DBに格納する。そして、違反蓄積部160は、交通ルールDBから交通ルールを読み出すとともに、交通地理構成DBから移動経路170を含む交通の地理的構成を読み出し、当該交通ルールを、移動経路170や信号機に適合させる。例えば、信号機が青信号または黄信号の場合、その信号機に対応する移動経路170を移動している移動体12の移動速度は法定速度まで許容され、赤信号の場合、移動体12の移動速度は、停止線付近において0となるべきといったような当て嵌めを行う。
ここでは、外部の管理サーバ130から交通ルールを取得する例を挙げているが、移動軌跡導出部152が導出した移動軌跡と、周囲の交通状況(例えば、信号機の信号色)とに基づいて、自発的に交通ルールを構築してもよい。この場合、構築された範囲内で交通違反を判定することとなる。また、この場合に、カメラ等を補助的に用い、標識や道路面に表示された制限文字等を認識して、交通ルールの構築を支援するとしてもよい。
(交通蓄積処理S4)
図5のフローチャートに沿って、移動体特定処理S1、移動軌跡導出処理S2が実行されると、交通蓄積部156は、移動軌跡導出部152が導出した各移動体12が、移動経路特定部154が特定したいずれの移動経路170を移動しているか判定する。そして、移動体12の識別子に、移動体12の移動経路、移動方向、大きさ、移動速度、および、移動時刻や、それらに基づいて特定される数値を関連付け、その都度、交通ダイナミクスDBに追加記録する。ここで、移動速度および移動時刻は、移動軌跡中の平均値でもよいし、サンプリング毎の値でもよい。後者の場合、移動速度および移動時刻は、時系列に並べて交通ダイナミクスDBに記録され、移動速度の変移を導出することも可能となる。また、速度の変化がない移動体12(駐停車移動体)に関しては、駐停車移動体であるというフラグを設け、駐停車移動体としての交通統計を算出する。このとき、移動時刻の差分を通じて駐停車時間を計時し、記録するとしてもよい。
また、移動経路170に対応する信号機の信号色を信号制御装置140から取得し、移動経路170に組み合わせることで、信号色の切換パターンに応じた速度分布などの動的な統計を取得できる。
ただし、本実施形態が改修情報の導出のみを目的とする場合、交通蓄積部156は、後述する改修情報導出処理S11で用いられる交通パラメータ、例えば、交差点に進入する移動体12の数、移動体12の移動軌跡における速度分布の緩急、移動体12が移動経路170中に停留する時間、移動経路170の数、通過する移動体12の数等に絞って交通ダイナミクスDBに記録するとしてもよい。
このような処理を予め定められた蓄積時間(例えば、24時間)分蓄積する。したがって、蓄積時間内に対象領域10を通過した移動体12の数だけサンプルが蓄積される。
(違反蓄積処理S5)
違反蓄積部160は、移動軌跡導出部152が導出した各移動体12の移動軌跡と、交通ルールDBから読み出した交通ルールとを比較し、交通ルールに従っていない違反項目がある場合、その違反項目および信号色を、移動経路、移動方向、大きさ、移動速度、および、移動時刻や、それらに基づいて特定される数値の交通パラメータとともに、移動体12の識別子に関連付けて、交通ダイナミクスDBに蓄積する。また、カメラを補助的に用いる場合、その撮像画像も移動体12に関連付けて蓄積する。このような交通パラメータと違反項目や撮像画像を合わせて交通ダイナミクスDBに記録することで、その違反項目が妥当であったか否かを事後的に判断することができる。かかる違反項目も蓄積時間(例えば、24時間)分蓄積する。したがって、蓄積時間内に対象領域10を通過した移動体12の数だけサンプルが蓄積される。
上記違反項目としては、例えば、安全速度違反、信号無視、徐行違反、通行区分無視、一時停止違反、駐停車違反、右左折の強引な割り込み等がある。本来交通ルールに基づく違反項目は多数存在するが、抽出対象とする違反項目を上記に限定し、違反項目を完全に網羅しなくとも、上記の違反項目に起因する事故数が多いので、十分に有用な違反統計量を得ることができる。
違反蓄積部160は、例えば、所定の移動経路170に関して、駐停車禁止領域に移動速度が0となる移動体12が滞留し、その移動軌跡が所定時間確定しない場合、その移動体12が駐停車違反していると判断できる。また、正規の移動経路170から離脱して移動する移動体12があると、通行区分無視と判断できるが、そのような移動体12が短時間に多数存在していた場合、違反蓄積部160は、正規の移動経路170に何らかの障害物が存在している可能性が高いと判断することができる。
ただし、本実施形態が改修情報の導出のみを目的とする場合、違反蓄積部160は、後述する改修情報導出処理S11で用いられる違反項目、例えば、ルール違反数(総交通量)、速度に関するルール違反、信号タイミングに関するルール違反、移動経路170に関するルール違反、滞留に関するルール違反等に絞って交通ダイナミクスDBに記録するとしてもよい。
また、違反項目が予め定められた指摘すべき項目に含まれる場合、違反蓄積部160は、警報を発する旨の制御信号を監視装置110に送信し、監視装置110の警報部116は、その移動体12に対して警報を発する。こうして、移動体12に注意喚起を行うことが可能となる。
(事故蓄積処理S6)
事故蓄積部164は、対象領域10中において事故が生じ、ユーザの操作入力または解析により、それが事故であることを把握すると、事故に関連する移動体12の移動軌跡、事故が生じた位置、時刻等の事故情報を交通ダイナミクスDBに蓄積する。また、撮像部112bを通じた撮像画像がある場合、事故が生じた時刻の前後所定時間分の撮像画像を事故に関連付けて追加記録してもよい。さらに、信号制御装置140から信号色を取得している場合、事故が生じた時点の信号色を事故に関連付けて追加記録してもよい。
ただし、本実施形態が改修情報の導出のみを目的とする場合、事故蓄積部164は、後述する改修情報導出処理S11で用いられる事故情報、例えば、事故数(総交通量)等に絞って交通ダイナミクスDBに記録するとしてもよい。
(判定処理S7)
交通統計部158は、蓄積時間(例えば、24時間)が経過したか否か判定し、蓄積時間が経過していなかったら(S7におけるNO)、移動体特定処理S1からの処理を繰り返し、蓄積時間が経過していれば(S7におけるYES)、交通統計処理S8に処理を移行する。
(交通統計処理S8)
蓄積時間が経過すると、交通統計部158は、移動経路、移動方向、大きさ、移動速度、および、移動時刻や、それらに基づいて特定される数値の群からユーザに指示された1または複数の交通パラメータに関して統計演算を行い、交通統計量を生成する。ここでは、交通統計量の一例として統計マップを挙げて説明する。統計マップは、移動経路、移動方向、大きさ、移動速度、および、移動時刻や、それらに基づいて特定される数値の群から選択される1または複数の交通パラメータの組み合わせにより、様々な態様で生成される。以下、統計マップを例示する。
図11および図12は、統計マップ172を例示した説明図である。例えば、対象領域10中の各移動経路170を、図11(a)のように移動経路170a、170b、170c、170d、170e、170f、170g、170h、170i、170j、170k、170lに分ける。そして、交通統計部158は、交通ダイナミクスDBに蓄積された移動体12の移動経路170、および、移動時刻に基づいて、移動経路170と分割された時間範囲(朝、昼、夕方、夜)に移動体12を振り分け、移動経路170および時間範囲毎に移動体12の数を積算する。こうして図11(b)のような、統計マップ172が生成される。このとき駐停車移動体が存在する場合、その移動体12の情報を排除して統計マップ172を生成してもよい。
図11(b)の統計マップ172を参照すると、交差点の直進(170a、170d、170g、170j)に相当する移動体12の数は、右折(170c、170f、170i、170l)や左折(170b、170e、170h、170k)に相当する移動体12の数より相対的に多いことが把握される。また、朝や夕方に通過する移動体12の数は、昼や夜に通過する移動体12の数より相対的に多いことが把握される。
さらに、複数の移動経路170のうち、移動経路170a、170dの移動体12の数は、移動経路170g、170jの移動体12の数より相対的に大きい。したがって、移動経路170a、170dが含まれる道路が主幹線であることを把握できる。ここでは、車線が明確にわかれている例を取り上げたが、往路と復路が同じ場所を通行しなければならない狭い道においては、地理的に同じ場所を通る経路を、移動方向を加味した2つの異なる移動経路として分離して扱っても構わない。
また、他の例として、例えば、対象領域10中の道路の方位を、図12(a)のように、方位180a、180b、180c、180dに分ける。そして、交通統計部158は、交通ダイナミクスDBに蓄積された移動体12の移動経路170に基づいて、移動方向を含む移動経路170毎に、例えば、移動体12が進入してきた方位(進入方位)と移動体12が進出した方位(進出方位)とに移動体12を振り分け、その組み合わせ毎に移動体12の数を積算する。こうして図12(b)のような、マトリクス状の統計マップ172が生成される。
かかる統計マップ172には移動体12の数を直接代入してもよいが、単位時間あたりの数に変更して代入してもよい。また、同一時刻の他の交通パラメータとの相対的な比率(%)として代入してもよい。
図12(b)の統計マップ172を参照すると、例えば、直進、左折、右折に拘わらず、方位180a、180bに進入または進出する移動体12が、他の方位180c、180dと比較して多いことが把握される。したがって、方位180a、180bに対する交通量が多いこととなるので、今後、移動レーンを増やす等の対応を検討することとなる。
このようにして生成された図11(b)や図12(b)の統計マップ172は交通統計DBに格納される。ここでは、統計マップ172を24時間(1日)単位で集計する例を挙げたが、それよりも短期間(例えば30分毎)や、長期間(例えば1ヶ月毎)で集計してもよい。かかる短期間の集計により、24時間中の交通量の偏り(例えば朝と夜の違い)を把握したり、長期間の集計により、季節による交通量の偏りを把握することができる。
上述した、移動経路170と移動時刻の組み合わせや、移動方向に基づく方位同士の組み合わせの他、以下のような様々な統計マップ172を生成できる。
(1)信号機の信号色、移動経路、移動速度、および、移動時刻の統計演算を行う。例えば、信号機の信号色を、青色信号に遷移してから10秒間、その後青色信号が継続している間、黄色信号の間、赤色信号に遷移してから10秒間、その後赤色信号が継続している間のように分割し、それぞれで、移動経路、移動速度、および、移動時刻の情報を割り当てる。
(2)分割された時間範囲、移動経路170毎の移動速度=0となる移動体12の数。
(3)分割された時間範囲、同一の移動経路170の同一部位に複数の移動体12が存在する数。例えば、車両同士や車両と人が同一部位に存在する場合、衝突(事故)が発生する可能性がある。
(4)分割された時間範囲、特に右折の移動経路170を通過する移動体12の数とその平均待ち時間。
(5)分割された時間範囲、移動体12の速度分布。
また、交通統計部158は、信号制御装置140から取得した、その時点の信号機の状態(信号色)も交通パラメータとして統計マップ172を生成することもできる。例えば、赤信号の状態で停止している移動体12の数を移動経路170毎に統計をとることで、青信号と赤信号との時間配分の妥当性を判断することができる。また、統計データを青信号時の移動体12に制限することで、移動経路170を通過する平均速度を導出することも可能となる。このように、移動経路170と信号機の状態とを組み合わせて統計演算することで、信号機の状態に応じた速度分布などの動的な統計を取得することが可能となる。また、生成された統計マップ172は、新たな道路を計画すべきかどうか等、都市計画に用いることができる。
このように、生成された統計マップ172は、交通統計DBに格納される。また、収集された統計マップ172は、例えば、その都度、または、予め定められた日数分蓄積されてから、管理サーバ130に送られるとしてもよい。
ただし、上述したように、本実施形態が改修情報の導出のみを目的とする場合、後述する改修情報導出処理S11で用いられる交通パラメータ、例えば、交差点に進入する移動体12の数、移動体12の移動軌跡における速度分布の緩急、移動体12が移動経路170中に停留する時間、移動経路170の数、通過する移動体12の数等に絞って交通統計量を生成してもよい。
ここでは、移動軌跡導出部152が導出した移動軌跡を、一旦、交通ダイナミクスDBに格納し、周期的かつ一度に統計マップ172を生成する例を挙げたが、かかる場合に限らず、予め統計演算をすべき交通パラメータを決めておき、移動軌跡導出部152が導出した移動軌跡に関し、リアルタイムに統計演算を行って統計マップ172を生成してもよい。
(違反統計処理S9)
図5に戻って、違反統計部162は、違反蓄積部160が蓄積した違反項目に関して統計をとり違反統計量を生成する。具体的に、違反項目毎に、その違反項目が関連付けられている移動体12を抽出、計数し、各違反項目の数、または、相対値を導出する。
また、このような違反項目と、移動経路、移動方向、大きさ、移動速度、および、移動時刻や、それらに基づいて特定される数値の群から選択される1または複数の交通パラメータの組み合わせにより、交通統計部158同様、統計マップ172を生成してもよい。かかる統計マップ172は、図11(b)および図12(b)で説明した統計マップ172と組み合わせが異なるだけで、その態様は実質的に等しいので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
このように、生成された統計マップ172は、違反統計DBに格納される。また、収集された統計マップ172は、例えば、その都度、または、予め定められた日数分蓄積されてから、管理サーバ130に送られるとしてもよい。
ただし、上述したように、本実施形態が改修情報の導出のみを目的とする場合、後述する改修情報導出処理S11で用いられる違反項目、例えば、ルール違反数(総交通量)、速度に関するルール違反、信号タイミングに関するルール違反、移動経路170に関するルール違反、滞留に関するルール違反等に絞って違反統計量を生成してもよい。
(事故統計処理S10)
事故統計部166は、管理サーバ130から取得した事故情報、または、事故蓄積部164が蓄積した事故情報に関して統計をとり事故統計量を生成する。例えば、事故情報である事故数を総交通量で除算して後述する改修情報導出処理S11で用いられる事故頻度を導出する。
(改修情報導出処理S11)
図13は、改修情報導出処理S11を説明するためのフローチャートである。改修情報導出部168は、交通統計量、違反統計量、および、事故統計量に基づき、3段階の処理を通じて対象領域10の改修情報を導出する。まず、改修情報導出部168は、1段階目として、交通統計量に従い、安全度や危険度に関連付けられたタグを1または複数特定する(S11−1)。そして、2段階目として、違反統計量に従い、安全度や危険度に関連付けられたタグを1または複数特定する(S11−2)。かかる1段階目の処理および2段階目の処理の結果はいずれも3段階目の処理で利用される。続いて、3段階目として、交通統計量、違反統計量および事故統計量に従い、改善案や対処案といった改修情報に関連付けられたタグを1または複数特定する(S11−3)。ここでは、所定の条件を満たせばタグが関連付けられ、複数の条件を同時に満たせば、その数だけタグが付与される。改修情報導出部168は、このように改修情報に関連付けられたタグを定期的(例えば、24時間毎)に管理サーバ130に送信する(S11−4)。
管理サーバ130では、各解析装置120から改修情報(タグ)を受信すると、各解析装置120に対応する対象領域10それぞれに関連付け、複数の対象領域10を一括して管理する。ユーザは、対象領域10毎のタグを参照することで、安全度や危険度、また、改善案や対処案を容易かつ迅速に把握することが可能となる。以下、改修情報導出処理S11の3段階の処理を具体的に述べる。
(1段階目の処理S11−1)
図14は、改修情報導出処理の1段階目の処理を説明するためのフローチャートであり、図15は、関連付けられるタグの情報を示した説明図である。改修情報導出部168は、改修情報導出処理S11の1段階目として、交通統計部158が導出した交通統計量を参照し、移動経路間に交差する部分がある場合における信号機の有無を判定する(S11−1−1)。移動経路間に交差する部分があり、かつ、信号機がある場合(S11−1−1におけるYES)、改修情報導出部168は、ステップS11−1−6に処理を移行する。
そもそも移動経路間に交差する部分がない場合または交差はあるが信号機が無い場合(S11−1−1におけるNO)、改修情報導出部168は、交差点に進入する移動体12の数が所定数A0未満であるか否か判定し(S11−1−2)、所定数A0未満であれば(S11−1−2におけるYES)、「タグ01」を特定する(S11−1−3)。所定数A0未満でなければ(S11−1−2におけるNO)、改修情報導出部168は、交差点に進入する移動体12の数が所定数A1以上であるか否か判定し(S11−1−4)、所定数A1以上であれば(S11−1−4におけるYES)、「タグ02」を特定する(S11−1−5)。所定数A1以上でなければ(S11−1−4におけるNO)、改修情報導出部168は、ステップS11−1−6に処理を移行する。
続いて、改修情報導出部168は、移動体12の移動軌跡における速度分布の緩急が所定数A2未満であるか否か判定し(S11−1−6)、所定数A2未満であれば(S11−1−6におけるYES)、「タグ03」を特定する(S11−1−7)。所定数A2未満でなければ(S11−1−6におけるNO)、改修情報導出部168は、移動体12の移動軌跡における速度分布の緩急が所定数A3以上であるか否か判定し(S11−1−8)、所定数A3以上であれば(S11−1−8におけるYES)、「タグ04」を特定する(S11−1−9)。所定数A3以上でなければ(S11−1−8におけるNO)、改修情報導出部168は、ステップS11−1−10に処理を移行する。
次に、改修情報導出部168は、移動体12が移動経路中に停留する時間が所定時間A4未満であるか否か判定し(S11−1−10)、所定時間A4未満であれば(S11−1−10におけるYES)、「タグ05」を特定する(S11−1−11)。所定時間A4未満でなければ(S11−1−10におけるNO)、改修情報導出部168は、移動体12が移動経路中に停留する時間が所定時間A5以上であるか否か判定し(S11−1−12)、所定時間A5以上であれば(S11−1−12におけるYES)、「タグ06」を特定する(S11−1−13)。所定時間A5以上でなければ(S11−1−12におけるNO)、改修情報導出部168は、ステップS11−1−14に処理を移行する。
続いて、改修情報導出部168は、移動経路170の数が所定数A6未満であるか否か判定し(S11−1−14)、所定数A6未満であれば(S11−1−14におけるYES)、「タグ07」を特定する(S11−1−15)。所定数A6未満でなければ(S11−1−14におけるNO)、改修情報導出部168は、移動経路170の数が所定数A7以上であるか否か判定し(S11−1−16)、所定数A7以上であれば(S11−1−16におけるYES)、「タグ08」を特定する(S11−1−17)。所定数A7以上でなければ(S11−1−16におけるNO)、改修情報導出部168は、ステップS11−1−18に処理を移行する。
次に、改修情報導出部168は、各々の移動経路において通過する移動体12の数が所定数A8未満であるか否か判定し(S11−1−18)、所定数A8未満であれば(S11−1−18におけるYES)、「タグ09」を特定する(S11−1−19)。所定数A8未満でなければ(S11−1−18におけるNO)、改修情報導出部168は、通過する移動体12の数が所定数A9以上であるか否か判定し(S11−1−20)、所定数A9以上であれば(S11−1−20におけるYES)、「タグ0A」を特定する(S11−1−21)。所定数A9以上でなければ(S11−1−20におけるNO)、改修情報導出部168は、当該1段階目の処理を終了する。
このようにして特定されたタグは、それぞれ、図15に示すような安全度や危険度を示し、また、意味合いを有する。例えば、「タグ01」は、「安全」を示し、「信号のない交差する経路を車両が通行することはほとんど無い。」といった意味合いを有する。
当該1段階目の処理で特定されるタグは、交通事故と相関はあるものの、交通事故そのものに直結するもの(顕在化するもの)ではない。換言すれば、交通事故の潜在要因に相当する。
(2段階目の処理S11−2)
図16は、改修情報導出処理の2段階目の処理を説明するためのフローチャートであり、図17は、関連付けられるタグの情報を示した説明図である。改修情報導出部168は、改修情報導出処理S11の2段階目として、違反統計部162が導出した違反統計量を参照し、ルール違反の頻度(ルール違反数/総交通量)が所定数A11以上であるか否か判定し(S11−2−1)、所定数A11以上であれば(S11−2−1におけるYES)、「タグ12」を特定して(S11−2−2)、ステップS11−2−5に処理を移行する。
所定数A11以上でなければ(S11−2−1におけるNO)、改修情報導出部168は、ルール違反の頻度が所定数A12未満であるか否か判定し(S11−2−3)、所定数A12未満であれば(S11−2−3におけるYES)、「タグ11」を特定して(S11−2−4)、当該2段階目の処理を終了する。所定数A12未満でなければ(S11−2−3におけるNO)、改修情報導出部168は、当該2段階目の処理を終了する。
ルール違反の頻度が所定数A11以上であれば、そのルール違反が、時間(速度、信号タイミング)、移動経路(幾何要因)、滞留(駐停車)のいずれを原因とするものかを判定する。したがって、改修情報導出部168は、時間に関するルール違反の頻度が所定数A13以上であるか否か判定し(S11−2−5)、所定数A13以上でなければ(S11−2−5におけるNO)、ステップS11−2−10に処理を移行し、所定数A13以上であれば(S11−2−5におけるYES)、ステップS11−2−6に処理を移行する。
次に、改修情報導出部168は、速度に関するルール違反の頻度が所定数A14以上であるか否か判定する(S11−2−6)。所定数A14以上であれば(S11−2−6におけるYES)、「タグ13」を特定し(S11−2−7)、所定数A14以上でなければ(S11−2−6におけるNO)、ステップS11−2−8に処理を移行する。
続いて、改修情報導出部168は、信号タイミングに関するルール違反の頻度が所定数A15以上であるか否か判定する(S11−2−8)。所定数A15以上であれば(S11−2−8におけるYES)、「タグ14」を特定し(S11−2−9)、所定数A15以上でなければ(S11−2−8におけるNO)、ステップS11−2−10に処理を移行する。
次に、改修情報導出部168は、移動経路170に関するルール違反の頻度が所定数A16以上であるか否か判定する(S11−2−10)。所定数A16以上であれば(S11−2−10におけるYES)、「タグ15」を特定し(S11−2−11)、所定数A16以上でなければ(S11−2−10におけるNO)、ステップS11−2−12に処理を移行する。
続いて、改修情報導出部168は、滞留に関するルール違反の頻度が所定数A17以上であるか否か判定する(S11−2−12)。所定数A17以上であれば(S11−2−12におけるYES)、「タグ16」を特定し(S11−2−13)、所定数A17以上でなければ(S11−2−12におけるNO)、当該2段階目の処理を終了する。
このようにして特定されたタグは、それぞれ、図17に示すような安全度や危険度を示し、また、意味合いを有する。例えば、「タグ11」は、「安全側」を示し、「ルール違反が少ない。」といった意味合いを有する。
ルール違反は、安全のために規定されている交通ルールを破っているものであり、当該2段階目の処理で特定されるタグは、交通事故との相関性がより高い。
(3段階目の処理S11−3)
図18は、改修情報導出処理の3段階目の処理を説明するためのフローチャートであり、図19は、関連付けられるタグの情報を示した説明図である。改修情報導出部168は、改修情報導出処理S11の3段階目として、事故統計部166が導出した事故統計量と、1段階目の処理S11−1および2段階目の処理S11−2で特定したタグ名称とを参照し、事故頻度(事故数/総交通量)が所定数A21未満であるか否か判定し(S11−3−1)、所定数A21未満でなければ(S11−3−1におけるNO)、ステップS11−3−6に処理を移行する。
所定数A21未満であれば(S11−3−1におけるYES)、改修情報導出部168は、「タグ11」が特定されているか否か判定し(S11−3−2)、「タグ11」が特定されていれば(S11−3−2におけるYES)、「タグ21」を特定する(S11−3−3)。「タグ11」が特定されていなければ(S11−3−2におけるNO)、ステップS11−3−4に処理を移行する。
続いて、改修情報導出部168は、「タグ12」が特定されているか否か判定し(S11−3−4)、「タグ12」が特定されていれば(S11−3−4におけるYES)、「タグ22」を特定する(S11−3−5)。「タグ12」が特定されていなければ(S11−3−4におけるNO)、ステップS11−3−6に処理を移行する。
次に、改修情報導出部168は、事故頻度が所定数A22以上であるか否か判定し(S11−3−6)、所定数A22以上でなければ(S11−3−6におけるNO)、当該3段階目の処理を終了する。
所定数A22以上であれば(S11−3−6におけるYES)、改修情報導出部168は、「タグ11」が特定されているか否か判定し(S11−3−7)、「タグ11」が特定されていれば(S11−3−7におけるYES)、「タグ23」を特定する(S11−3−8)。
かかる「タグ23」は、ルール違反が少ないにも拘わらず事故が多い場所であり、交通統計量から分析された潜在的な要因が事故に結びついている可能性が高いため、さらに以下のような分析を遂行する。改修情報導出部168は、「タグ02」が特定されているか否か判定し(S11−3−9)、「タグ02」が特定されていれば(S11−3−9におけるYES)、「タグ25」を特定し(S11−3−10)、「タグ02」が特定されていなければ(S11−3−9におけるNO)、ステップS11−3−11に処理を移行する。
次に、改修情報導出部168は、「タグ04」が特定されているか否か判定し(S11−3−11)、「タグ04」が特定されていれば(S11−3−11におけるYES)、「タグ26」を特定し(S11−3−12)、「タグ04」が特定されていなければ(S11−3−11におけるNO)、ステップS11−3−13に処理を移行する。
続いて、改修情報導出部168は、「タグ06」が特定されているか否か判定し(S11−3−13)、「タグ06」が特定されていれば(S11−3−13におけるYES)、「タグ27」を特定し(S11−3−14)、「タグ06」が特定されていなければ(S11−3−13におけるNO)、ステップS11−3−15に処理を移行する。
次に、改修情報導出部168は、「タグ08」が特定されているか否か判定し(S11−3−15)、「タグ08」が特定されていれば(S11−3−15におけるYES)、「タグ28」を特定し(S11−3−16)、「タグ08」が特定されていなければ(S11−3−15におけるNO)、ステップS11−3−17に処理を移行する。
続いて、改修情報導出部168は、「タグ09」が特定されているか否か判定し(S11−3−17)、「タグ09」が特定されていれば(S11−3−17におけるYES)、「タグ29」を特定し(S11−3−18)、「タグ09」が特定されていなければ(S11−3−17におけるNO)、ステップS11−3−19に処理を移行する。
次に、改修情報導出部168は、「タグ0A」が特定されているか否か判定し(S11−3−19)、「タグ0A」が特定されていれば(S11−3−19におけるYES)、「タグ2A」を特定し(S11−3−20)、「タグ0A」が特定されていなければ(S11−3−19におけるNO)、当該3段階目の処理を終了する。
また、事故頻度が所定数A22以上の状況下で、「タグ11」が特定されていなければ(S11−3−7におけるNO)、改修情報導出部168は、「タグ12」が特定されているか否か判定し(S11−3−21)、「タグ12」が特定されていなければ(S11−3−21におけるNO)、当該3段階目の処理を終了し、「タグ12」が特定されていれば(S11−3−21におけるYES)、「タグ24」を特定する(S11−3−22)。
続いて、改修情報導出部168は、「タグ13」が特定されているか否か判定し(S11−3−23)、「タグ13」が特定されていれば(S11−3−23におけるYES)、「タグ2B」を特定し(S11−3−24)、「タグ13」が特定されていなければ(S11−3−23におけるNO)、ステップS11−3−25に処理を移行する。
次に、改修情報導出部168は、「タグ14」が特定されているか否か判定し(S11−3−25)、「タグ14」が特定されていれば(S11−3−25におけるYES)、「タグ2C」を特定し(S11−3−26)、「タグ14」が特定されていなければ(S11−3−25におけるNO)、ステップS11−3−27に処理を移行する。
続いて、改修情報導出部168は、「タグ15」が特定されているか否か判定し(S11−3−27)、「タグ15」が特定されていれば(S11−3−27におけるYES)、「タグ2D」を特定し(S11−3−28)、「タグ15」が特定されていなければ(S11−3−27におけるNO)、ステップS11−3−29に処理を移行する。
次に、改修情報導出部168は、「タグ16」が特定されているか否か判定し(S11−3−29)、「タグ16」が特定されていれば(S11−3−29におけるYES)、「タグ2E」を特定し(S11−3−30)、「タグ16」が特定されていなければ(S11−3−29におけるNO)、当該3段階目の処理を終了する。
このようにして特定されたタグは、それぞれ、図19に示すような改善案や対処案を示し、また、意味合いを有する。例えば、「タグ22」は、「道路設計を良好事例として登録する。一部を推奨設計としてユーザに提示する。ルール違反内容を吟味し、不必要なルールがある場合は緩和する。」という改善案を示し、「ルール違反が多いにもかかわらず、事故はあまり起こらない場所である。道路側の設計がロバストに行われていると推定される。」といった意味合いを有する。
当該3段階目の処理では、事故頻度や「タグ11」、「タグ12」を、交通事故を分析するためのレイヤーとし、詳細な改善案や対処案を導出する。
そして、このように特定された1または複数のタグは、定期的(例えば、24時間毎)に管理サーバ130に送信される(図13のS11−4参照)。
管理サーバ130では、特定されたタグに関連付けられた改善案または対処案、ならびに、安全度または危険度を、対象領域10に対応させてユーザに提示する。例えば、「タグ23」で示されるルール違反が少ないにも拘わらず事故が多い場所において、「タグ22」のような事故の少ない良好事例を参照する形で提示する。このときの提示順は、危険度が高い順位から行うとよい。また、改善案や対処案とともに、補助情報として、関連する事故記録、ルール違反の際の記録(移動軌跡、撮像画像)、交通地理をあわせて提示してもよい。
特に、ルール違反を原因として交通事故につながるケースが多い対象領域10には、同等のルール違反が生じているが交通事故が少ない対象領域10の情報も比較可能に提示するとしてもよい。
また、本実施形態で導出された改善案または対処案、ならびに、安全度または危険度は、以下のアプリケーションにも利用できる。例えば、(1)自治体、公共の場、カーナビゲーション、地図アプリケーション等において、民間人が道路状況を参照する場合、(2)自治体、警察、検察等において、公務で利用する場合、(3)公共事業で道路を構築する際、その規模や形状を決めるときに利用する場合等である。
以上、説明したように、本実施形態の解析装置120によれば、交通事故の原因となりうる要素が、交通ルール違反と道路の地理構造のいずれにあるのかを切り分け、危険要因を高精度に分析して適切な改善情報を導出することが可能となる。また、本実施形態では、事故のみを対象とせず、交通ルール違反や道路の地理構造といった交通事故を生じさせる潜在的な危険要因との関連性を把握しているので、高精度で実効性の高い改善案を提示することができる。
また、コンピュータによって解析装置120として機能するプログラムや、当該プログラムを記録した記録媒体も提供される。さらに、当該プログラムは、記録媒体から読み取られてコンピュータに取り込まれてもよいし、通信ネットワークを介して伝送されてコンピュータに取り込まれてもよい。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上述した実施形態では、複数の交通パラメータについて交通ダイナミクスDBに記録するとしているが、かかる場合に限らず、交通ダイナミクスDBの記録容量を加味して、記録する交通パラメータを制限してもよい。また、このように記録された交通パラメータを永遠に記録しておく必要はなく、所定の保持期間を経過したら削除するとしてもよい。
また、上述した実施形態では、解析装置120において解析方法を遂行する例を挙げて説明したが、処理負荷を分担し、解析方法の一部を解析装置120が実行し、残りの処理を管理サーバ130で実行するとしてもよい。
また、上述した実施形態では、解析装置120で統計結果を分析してタグを関連付けているが、かかるタグに相当するポイントを設け、タグに対応するすべてのポイントを加算して安全度や危険度を判定することもできる。このようなポイント制にすることで、安全度の高い対象領域10を抽出することができ、その対象領域10をモデルケースとして利用することも可能となる。
また、上述した実施形態では、測距部112aの3次元情報に基づいて交通統計量や違反統計量を導出したが、撮像部112bで撮像した画像情報を合わせて交通ダイナミクスDBに格納するとしてもよい。この場合、移動体12の乗車人数やナンバープレート等を証拠として蓄積することができる。
また、上述した実施形態では、測距部112aが1つの場合を例に挙げているが、かかる場合に限らず、複数の測距部112aを連結させて視野を広域化することも可能である。
なお、本明細書の解析方法における各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。