以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下の図において同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。
図1は本発明の実施例に係る遠心分離機1の全体構成の概略を示す断面図である。遠心分離機1は、本体内部に回転室48を備え、回転室の下方には駆動源である遠心用モータ9が設けられる。遠心用モータ9は、インバータによる可変速制御が可能な高周波誘導モータ或いはブラシレスマグネット同期モータが用いられる。遠心用モータ9の下部には、出力軸(モータ軸)の回転数を検出するための回転センサ24が設けられ、側方には遠心用モータ9を冷却するためのDCファン25が設けられる。遠心用モータ9から上方へチャンバ32の内部にまで延びる出力軸(モータ軸)の先端部にはロータ31が着脱可能に装着される。チャンバ32は、上部に円形の開口部を有する略円筒形の容器である。チャンバ32の上側の開口部は、断熱材を内包したドア43が設けられ、ロータ31の回転室を開閉可能に構成する。遠心分離機1の運転時には、図示していないロック機構でドア43が開かないようにロックされる。
チャンバ32の外周には、配管されたエバポレータ(蒸発器)33が巻装され、その周囲は発泡剤などの適切な断熱材34で断熱される。冷媒を循環供給するために冷媒を圧縮するコンプレッサ35はコンプレッサ用モータ13を有し、吐出管36から圧縮した冷媒を凝縮機(コンデンサ)37に供給し、冷媒は凝縮機37において凝縮機ファン18からの風で放熱・冷却され液化し、キャピラリ38を通してチャンバ32の外周に巻きつけられたエバポレータ33の下部に送られる。ロータ31の回転時の風損により回転室48内で発生する熱は、エバポレータ33内で冷媒が蒸発する際の気化熱により奪われ、気化された冷媒はエバポレータ33の上部から排出されサクション管42を介してコンプレッサ35に戻る。ロータ31を収容するチャンバ32の底部の金属部に接する部分には温度センサ40aが設けられ、ロータ31の温度を間接的に検出する。さらに遠心用モータ9の出力軸を貫通させる貫通穴を塞ぐためのゴム製のシールラバー41には、その内部に温度センサ40b(破線で図示)が埋め込まれ、ロータ31の温度を間接的に検出するのに用いられる。ここで、本実施例では温度センサ40aと温度センサ40bの2つが設けられるが、必ずしも2つ必要な訳ではなくいずれか一方でも良い。また、他の場所に温度センサを設けても良いが、ロータ31の温度に間接的な検出にあたりその精度が変わってくるので注意が必要である。
遠心分離機1の内部には後述する制御装置を収容するための制御ボックス29が設けられる。制御装置は、図示しないマイクロコンピュータ、タイマー、記憶装置等を含んで構成され、遠心用モータ9の回転制御、回転室48の温度制御のための冷却機の運転制御を含め、遠心分離機1の全体の制御を行う。よって制御ボックス29の内部には各種の電気機器や電子回路が含まれ、動作時に各機器や回路が発熱する。そのため冷却用としてDCファン26が設けられ、制御装置の通電時にはDCファン26によって冷却風が電気機器や電子回路に送られる。制御装置20には温度センサ40aの検出温度がフィードバックされ、ロータ31内の試料が設定された目標温度になるようにコンプレッサ35内のコンプレッサ用モータ13の回転数が制御される。以上のように、遠心分離機1においては、DCファン25、DCファン26、遠心用モータ9、コンプレッサ用モータ13、凝縮機ファン18の5つの電気駆動のモータが含まれるが、本発明に於いては、遠心用モータ9、コンプレッサ用モータ13、凝縮機ファン18の3つの電気駆動のモータが特に発明に関与する。
遠心分離機1の上部には操作パネル21が設置される。操作パネル21は、例えばタッチ式の液晶表示パネルとすると好ましい。操作パネル21によって、試料を保持するロータ31の運転回転数(回転速度)設定、運転時間設定、冷却温度設定などの遠心運転条件の入力が行われ、各種情報の表示が行われる。
図2は、本発明の実施例に係る遠心分離機のブロック図である。これらは点線で示すように制御ボックス29の内部に収容される。図2の構成において、単相の交流電源22に接続された給電ライン2には、双方向コンバータ4、単方向コンバータ5、整流器15、及び、直流電源6が主に接続される。双方向コンバータ4は、電流波形を絶縁しながら計測可能な遠心用モータ電流センサ19を介して電力の順変換時には昇圧コンバータとして動作して交流電源22の電力を直流電力に変換する。電力の逆変換時には降圧コンバータとして動作して直流電力を交流電力に変換し交流電源22に電力を回生するものであって高力率である。双方向コンバータ4の直流電力供給端は平滑コンデンサ7を介して遠心用インバータ8に接続される。遠心用インバータ8の逆変換端子は高周波誘導モータ或いはブラシレスマグネット同期モータ等から成るロータ31を回転駆動する遠心用モータ9に接続される。この双方向コンバータ4の構成と動作は出願人が特開平7−246351号公報で詳細を開示したものと同様であり、交流側は交流電源22に接続され、直流側は平滑コンデンサ7に接続され、双方向コンバータ4を構成する複数の整流素子に逆方向並列にバイポーラトランジスタ、IGBT、FET等のスイッチング素子を接続して構成される。尚、双方向コンバータ4はそのような構成だけでなく、その他の公知の構成による双方向コンバータを用いても良い。
直流電力供給端に直流電力を供給し遠心用モータ9を加速するときは、双方向コンバータ4の昇圧機能により電源電圧のピーク値より高い一定の直流電圧に昇圧しながら通過電流は電源電圧波形の正弦波形と等しく位相が同期した電流波形とし受電力率を改善する。遠心用モータ9を回生減速するときは双方向コンバータ4の降圧機能により交流電源22の電源電圧にほぼ等しく電圧波形に倣わせながら直流電力供給端の電圧を降圧し通過電流は電源電圧波形のサイン波形と等しく流れる方向が逆の電流波形とし逆潮流力率の改善をし、交流電源22に電力を戻す。双方向コンバータ4と遠心用インバータ8の間には、充電電圧を絶縁しながら測定する電圧センサ44が平滑コンデンサ7と並列に設けられる。電圧センサ44の出力は、入力コントロールライン23を介して制御装置20に伝達され、制御装置によってモニタされるとともに制御動作に活用される。
給電ライン2は直流電源6にも接続され、直流電源6の直流定電圧出力端からは、DCファン25、DCファン26のON・OFFを制御するコントロールスイッチ10、14を介してそれぞれ遠心用モータ9を冷却するDCファン25及び制御ボックス29を冷却するDCファン26が接続される。また、直流電源6の直流定電圧出力端は制御装置20に接続される。この直流電源6としてはスイッチング方式の安定化電源を用いることができ、交流電源22の広範囲な電源電圧に対応可能である。このように本実施例では各ファンをACファンではなくてDCファンを用いることにより、電源電圧・周波数にかかわらず一定な回転数が得られるようにすることができ、一定の冷却能力が確実に得られるように構成される。
単方向コンバータ5は、電流波形を絶縁しながら計測可能なコンプレッサ用モータ電流センサ28を介して交流電源22に接続され、交流電源22の電力を高力率で直流電力に変換する。単方向コンバータ5の直流電力供給端は、平滑コンデンサ11を設けてコンプレッサ用インバータ12に接続される。コンプレッサ用インバータ12の逆変換端子は、高周波誘導モータ或いはDCブラシレスマグネット同期モータ等から成るコンプレッサ用モータ13に接続される。単方向コンバータ5は、直流電力供給端から平滑コンデンサ11に直流電力を供給し昇圧機能により交流電源22のピーク値より数10V高い直流電圧に昇圧しながら通過電流は電源電圧波形のサイン波形と等しく位相が同期した電流波形とし受電力率を改善する。平滑コンデンサ11の充電電圧はコンプレッサ用インバータ12へ供給され、コンプレッサ用インバータ12で交流電圧値変換されてコンプレッサ用モータ13を駆動する。コンプレッサ用モータ13の回転数は交流電圧の周波数に依存し、その最大許容回転数は120Hz弱、即ち7200min−1弱である。コンプレッサ用モータ13は常に冷媒を圧縮する反力を受けており、電源供給を遮断すると直ちに減速停止するので回生電力を生じさせることはできない。従って、遠心用モータ9の回路のような双方向コンバータのような双方向変換機能は必要とされない。単方向コンバータ5とコンプレッサ用インバータ12の間には、平滑コンデンサ11の充電電圧を絶縁しながら測定する電圧センサ45が設けられる。電圧センサ45の出力は、出力コントロールライン27を介して制御装置20に伝達され、制御装置によってモニタされるとともに制御動作に活用される。
交流電源22は給電ライン3を介して整流器15にも給電され、整流器15の直流出力端から平滑コンデンサ16を介して凝縮機ファン用インバータ17に接続される。凝縮機ファン用インバータ17の出力端には高周波誘導モータ或いはブラシレスマグネット同期モータ等から成る凝縮機ファン18が接続される。前述した遠心用モータ9及びコンプレッサ用モータ13の所要電力は最大で通常2〜4kW程度であるが、直流電源6及び凝縮機ファン18の所要電力は合計100W程度であり、昇圧動作による力率改善機能は必要ない。また、電源高調波の抑制が必要ならば、電源入力部にリアクトル等を介在させれば良い。なお、電源高調波の更なる低減が必要なら力率改善機能を付加しても良い。
制御装置20の出力コントロールライン27からは、双方向コンバータ4が昇圧コンバータ動作か又は降圧コンバータ動作の動作選択、コントロールスイッチ10、14のON・OFF制御によるDCファン25、26の回転・停止の選択信号が出力される。遠心用インバータ8、コンプレッサ用インバータ12、凝縮機ファン用インバータ17に遠心用モータ9、コンプレッサ用モータ13と凝縮機ファン18のそれぞれには、電源電圧の変化を吸収し且つこれらのモータの回転状態に応じた適切な印加電圧となるよう例えばPWM方式の電圧フィードバック制御するための信号が出力される。遠心用インバータ8には出力電圧・出力周波数制御による遠心用モータ9のON・OFFを含む回転数の可変速制御信号が出力され、コンプレッサ用モータ13、凝縮機ファン18へも上記と同様な制御のためにそれぞれコンプレッサ用インバータ12、凝縮機ファン用インバータ17にもON・OFFを含む回転数の可変速制御がなされる。これらのモータの制御方法は制御装置20によって実行され、公知のVVVF制御あるいはセンサ付またはセンサレスベクトル制御技術と同様のものであり、モータの回転数に応じて適切な電圧とスベリまたは同期周波数を与え駆動する。
凝縮機ファン用インバータ17の整流器15には高価な昇圧機能を用いずに交流電源22の様々な電圧に対応するため、凝縮機ファン18の動作電圧を交流電源22の最小電圧とし、交流電源22の他の高い電圧に対応するためにPWM方式の電圧フィードバック制御する安価な構成とする。凝縮機ファン用インバータ17には電流波形を絶縁しながら計測可能な電流センサ47と電圧センサ46が設けられ、入力コントロールライン23を介して制御装置20に信号が入力されており、制御装置20から凝縮機ファン用インバータ17の電流及び平滑コンデンサ16の電圧がモニタできる。
制御装置20の入力コントロールライン23からは、交流電源22のライン電圧を検出し交流電源22の電圧の変化を吸収して制御装置20が遠心用インバータ8、コンプレッサ用インバータ12、凝縮機ファン18のそれぞれを電圧フィードバック制御するための電圧センサ30の電圧モニタ入力、双方向コンバータ4の入力部に設けられ双方向コンバータ4に流れる電流を検出する遠心用モータ電流センサ19の電流モニタ入力、単方向コンバータ5の入力部に設けられ単方向コンバータ5に流れる電流を検出するコンプレッサ用モータ電流センサ28の電流モニタ入力、遠心用モータ9の回転数を検出する回転センサ24の信号が入力される。電圧センサ30は、交流電源22の電圧を測定する
制御装置20には、試料を遠心分離するロータ31の種類、運転回転数設定、運転時間設定、冷却温度設定などの遠心運転条件を入力し設定値を記憶するための操作パネル21が設けられる。制御装置は設定値に従って、接続する交流電源22に対する電源電流の分配パラメータを操作パネル21に出力する。また、制御装置20には設定された電源電圧と許容電流定格をパラメータとして記憶することができる。この操作パネル21の表示内容を図3を参照して説明する。
本発明が適用される高速冷却遠心機は、200V系を入力電圧としており、交流電源22の定格電源電圧は、例えば単相交流では仕向け国によって200V,208V,220V,230V又は240Vがある。また、三相交流の場合は400Vである。ただし、この三相交流の場合はパワーグランドPEと各ライン間の電圧を使用するので実際には230Vが各相間の電圧となる。電圧変動幅は、通常その電圧下限は−15%、その電圧上限は+10%であり、170V〜264Vの電源電圧範囲に対応する必要がある。一方の交流電源22の定格給電容量は、例えば単相交流では30A、24A、23A、22A、21A、三相交流では30A、15Aである。電源周波数は50Hzと60Hzが存在し、電源周波数の違いに依る特性への影響はないが、その他の制御で分別して活用することがあり電源周波数も一応選択する。これらの電源パラメータを操作パネル21の操作画面から入力設定し記憶する。
図3は、電源パラメータを定格電圧200V、周波数50Hz、定格電流30A、単相交流に設定した際の操作パネル21の表示例を示したものである。定格電圧は仕向先の電源に合わせてInput voltage欄130、周波数はFrequency欄131、電源相数はPhase欄132、定格電流はMax. Current欄133のそれぞれの設定項目ごとに用意されている数字の所にチェックマーク134を入れ、OKボタン135を選択するとこれらの設定値が制御装置20に含まれる記憶手段に記憶される。この設定作業は例えば遠心分離機の製造者が工場出荷時に行うが、製品出荷後に中継ハブでの仕向け先の変更、或いは現地にて設置作業者が工場出荷時の設定と異なる電源に接続する場合にも行う。この設定された定格電流に基づいて、制御装置20は遠心用モータ9への電力供給とコンプレッサ用モータ13への電力供給の分配比を決定する。
この例では、総入力電力が200V×30Aで6000Wであるから、分配パラメータはコンプレッサ用モータ13用に2400Wの消費電力の固定値を6000Wから差し引き、残りの電力でロータ31を加速する制御を行うから遠心用モータ9の消費電力は3600Wとなり、遠心用モータ9の加速時は、遠心用モータ電流センサ19の通過電流が18A、コンプレッサ用モータ13の回転数が58Hz(58Hzは60倍して3480min−1に相当)になるように制御装置20が出力コントロールライン27を介して遠心用インバータ8及びコンプレッサ用インバータ12を制御する。ロータ31の加速整定後は、遠心用モータ9の消費電力が少なくなるため、コンプレッサ用モータ13の回転数は65Hzに引き上げてロータ31の冷却能力を強めて運転制御する。
ここで、コンプレッサ用モータ13に分配された2400Wはコンプレッサ用モータ13を58Hzで運転するときの最大の消費電力であり、この回転数58Hzは、コンプレッサ用モータ13が加速期間中にロータ31を余分に過熱しない回転数である。なお、コンプレッサ用モータ13の消費電力はエバポレータ33の吸熱量が大きいほど大きくなる。
図4は、本実施例に係る遠心分離機1の交流電源電流の分配パラメータ例を示すもので、これらはあらかじめ制御装置20の記憶手段に、例えばテーブル形式で格納される。ここでは、各定格電源電圧・定格給電容量、許容入力電力の組み合わせと、それに対応する分配パラメータが含まれ、これは図3の画面操作の結果に対する分配パラメータのファクタと決定例でもある。図3で設定された条件は、定格電圧単相200V時、定格電流30Aの場合の例であり、この例以外に同じ騒音・冷却条件下で遠心分離機を稼働させることができる条件の各パラメータが記憶される。
例えば、交流電源22の定格電圧が240V定格電流21Aの場合は、許容入力電力が5040Wとなる。この際、遠心用モータ9の入力電力は2640Wに設定され、制御装置20は遠心用モータ電流センサ19の出力が11.00Aになるように遠心用インバータ8にスベリ指令を出力する。これらの項番1から6は使用ロータ31のファミリが異なりロータが冷え難いため凝縮機ファン18の回転数は54Hzとしている。
項番5に示すように定格電圧三相400V(上述の通り実際には230Vが各相間の電圧)、定格電流が15A/相(各1相当り)の場合の例は、計算上の許容入力電力は6900Wになるが遠心用モータ9の入力電力は遠心用モータ電流センサ19の電源定格電流の15Aに抑えられ3450Wとされる。項番6に示すように定格電流が30A/相(各1相当り)の場合の例は、計算上の許容入力電力は13800Wになるが遠心用モータ9の入力電力は加速時の駆動トルクの制限などにより3900Wが最大であるとし遠心用モータ電流センサ19の電源定格電流は16.95Aに抑えられる。このように、各定格電源電圧・定格給電容量、許容入力電力の組み合わせによって予め遠心用モータ9とコンプレッサ用モータ13の回転数が設定されており、しかもロータ31の加速時と整定後に分けて設定される。
もちろん、本発明になる遠心分離機は、騒音・冷却条件は上記に限る必要はなく、従い分配パラメータも上記にとらわれずに様々に設定可能で、設定値に従い様々な交流電源22の電源事情で遠心分離機の最大能力とマッチさせて運転可能である。
なお、ロータ31が識別できると後述の風損、慣性モーメント、最大回転速度が自動的に決まるため本実施例の実現に特に好都合である。このロータ31の識別は、特開平11−156245号公報に開示されているようなロータ識別装置による自動取得でも良いし、操作パネル21からユーザが手動設定することよっても良い。
図5は、上記で決定された分配パラメータに従って制御装置20が、出願人が販売する高速冷却遠心機で使用している最高回転数22000min−1、慣性モーメント0.0141kg・m2の比較的高速回転で低慣性モーメントのR22A4形ロータを加速し、22000min−1で整定したのち減速させた動作の実測例を示したものである。
ロータ31、遠心用モータ9の回転数100(左縦軸:回転数25000min−1目盛)、コンプレッサ用モータ13の回転数101(右縦軸:回転数(Hz)目盛)、遠心用モータ電流センサ19の出力102(右縦軸:電流(A)目盛)、コンプレッサ用モータ電流センサ28の出力103(右縦軸:電流(A)目盛)にて示す。104は、遠心用モータ電流センサ19とコンプレッサ用モータ電流センサ28の出力の合算電流値(右縦軸:電流(A)目盛)である。この場合、凝縮機ファン18、DCファン25とDCファン26の消費電力は合計100W程度であるので、合算電流値104は、遠心分離機全体の消費電流にほぼ等しい。
ライン100で示すようにR22A4形ロータ31を加速開始後に約45秒でロータ31が22000min−1の整定回転数に到達するまでは、回転数101で示すようにコンプレッサ用モータ13の回転数をロータ31冷却の熱平衡状態となる回転数58Hzに制御される。この回転数58Hzでは合算電流値104で示すように加速中のロータ31を不用意に温めることない上、ロータ31の加速のために一時的に増加する遠心分離機全体の消費電流をほぼ30A弱で一定に保つことが可能となる。R22A4形ロータを加速開始後ロータ31が22000min−1の整定回転数に到達するまでは、ライン102で示すように遠心用モータ電流センサ19の通過電流が約18A、遠心用モータ9の入力電力で約3600Wになるように制御装置20が遠心用モータ電流センサ19の出力をフィードバック信号とし遠心用インバータ8にスベリ指令を出力している。一方、ライン103で示すようにコンプレッサ用モータ13の入力電力として最大約12A、約2400Wの消費電力と合わせて、制御装置20は交流電源22からの入力電力として200V時電流約30Aの約6000Wの設定電源容量定格以内で動作し、遠心分離機が最大の能力を発揮している。
このとき、単方向コンバータ5の通過電流が一定の電流になるようにコンプレッサ用モータ13の回転数を細かく制御する定電流制御方法も実施可能であるが、この方法では回転数の応答が悪く通過電流の安定化が困難であり、むしろコンプレッサ用モータ13の回転数をあらかじめ定めた回転数に保つ方が結果としての定電流特性は勝り異音発生も無い結果が得られている。
R22A4形ロータが22000min−1の整定回転数に到達した後は、コンプレッサ用モータ13の回転数を、例えば65Hzに引き上げてロータ31を強力に冷却する。このコンプレッサ用モータ13の回転数65Hzは、コンプレッサ35から発生する騒音が遠心分離機の規定騒音値限度、例えば58dB以下になるような回転数であり、遠心分離機1から発する騒音を適切に抑えている。
R22A4形ロータが22000min−1の整定状態からこの場合は約36秒で減速停止する際はライン102で示すようにロータ31減速時の遠心用モータ電流センサ19の出力はマイナスになり、ライン104で示すようにロータ31の減速回生制動時に発生する電気エネルギーは双方向コンバータ4の逆潮流機能により交流電源22あるいは、コンプレッサ用モータ13が動作中のときは単方向コンバータ5からコンプレッサ用インバータ12を介してコンプレッサ用モータ13に吸収される。従って、本実施例の遠心分離機1では、いわゆる減速回生放電抵抗器を搭載する必要が全く無いので、遠心分離機1の小形化が可能になり省スペースが実現できる。さらに、ロータの運転とロータの冷却は全く独立してそれぞれを最適に制御でき、さらに、受電力率が高いので、高速回転するロータ31を強力に冷却しかつ短時間に加速・減速する性能が得られ、電源高調波を低減できる。ライン102で示すようにロータ31の停止間際に一時電流が増えているのは、滑らかな減速により遠心分離したサンプルの舞い上がりなどの乱れを防ぐために直流制動動作するためである。
通常遠心分離機は慣性モーメント、最高回転数の異なる様々なロータとの組合せがありこれにも対応する必要がある。図6は、本発明になる遠心分離機により図5と同じ制御方法により、出願人が販売する高速冷却遠心機で使用している最高回転数10000min−1、慣性モーメント0.277kg・m2の比較的低速回転で高慣性モーメントなR10A3形ロータを約100秒で加速し、10000min−1で整定したのち約90秒で減速停止したときの、図5と同様の特性を表示したものである。ライン110(左縦軸:回転数25000min−1目盛)は遠心用モータ9の回転数、ライン111(右縦軸:回転数(Hz)目盛)はコンプレッサ用モータ13の回転数、ライン112(右縦軸:電流(A)目盛)は遠心用モータ電流センサ19の出力、ライン113(右縦軸:電流(A)目盛)はコンプレッサ用モータ電流センサ28の出力である。ライン114(右縦軸:電流(A)目盛)は遠心用モータ電流センサ19とコンプレッサ用モータ電流センサ28の出力の合算電流値を示したものである。
制御装置20は交流電源22からの入力電力として200V時電流約30Aの約6000Wの電源容量定格以内で動作し、ロータ31の慣性モーメント値にかかわらず本実施例の遠心分離機は最大の能力を発揮していることが理解できるであろう。次に、凝縮機ファン18の回転数の制御に関する選択・設定について説明する。
凝縮機ファン18の回転数の制御選択範囲はこの例の場合0Hzから60Hzであり、消費電力は最大で75W程度であるから遠心分離機全体の電力の消費にはさほど影響ないが、回転数を増やすと騒音には大きな影響を及ぼすため、ロータ31の冷却能力が確保できるかぎり回転数を低く抑える必要がある。
図15はR20A4形ロータの目標制御温度と風損の大きさを示すグラフである。図16はR10A3形ロータの目標制御温度と風損の大きさを示すグラフである。図15で、170〜172は、R10A3形ロータを各設定温度に冷やす際の目標制御温度であり、ライン173はロータ31の回転数と風損の大きさの関係を示すものである。ここで目標制御温度が4℃の時のロータ31の違いによる目標制御温度の違いは、図15のライン170、173と図16のライン175、178を比較してわかるように、R22A4形小容量高速回転ロータは表面積が小さく風損発熱源が集中しており、風損が小さいにもかかわらず冷却には大きな冷力が必要であり、一方、R10A3形大容量低速回転ロータは表面積が大きく風損発熱源が広いため風損が大きいにもかかわらず冷却には小さな冷力で済む。
さらに一般的に、大容量のロータは風損低減のため外面をカバーで覆う部材が必要なものが多く、回転中のこのカバー変形により風切り音が発生するため騒音が大きい傾向がある。これらの要因を考慮して、回転中のロータ31の所要冷力と発生騒音の関係から図18に示すように、遠心分離に使用するロータ31の種類に対応して凝縮機ファン18の回転数の上限値を自動的に選択して設定する。なお、図18において、R15Aは出願人が販売する高速冷却遠心機で使用している最高回転数15000min−1、慣性モーメント0.1247kg・m2の比較的中速回転で中慣性モーメントのロータである。
もちろん、冷却能力、騒音への影響が大きい凝縮機ファン18の設定回転数は上述の分配パラメータの決定ファクタに加えてよいし、コンプレッサ用モータ13の回転数や遠心用モータ9の回転数に応じて所要冷力との関係で凝縮機ファン18の回転数を適宜変更するように構成しても良い。
以上、本実施例によれば遠心分離機1を電源電圧に依存しない構成としたので、単巻きトランスが不要となり仕向け先の電圧に合ったタップに切換える必要がなく、製品の小形化でき生産性が向上する。また、電源周波数に依存しない構成とするとともに、主な騒音源となるコンプレッサ用モータと凝縮機ファンを可変速制御として適切な回転数で運転するようにしたので防音・遮音性に優れた遠心分離機を実現できる。仕向け先の給電容量に合わせてロータ加速時の電流を調整するように設定・記憶し、この内容に基づいて機器がほぼ最大給電可能電流値付近で動作するよう制御するので、常にその電源事情で最大の性能が発揮できる。
次に図7を用いて、装着されるロータ31の種類に応じて遠心用モータ9への電力供給とコンプレッサ用モータ13への電力供給の分配比を変更する制御について説明する。図7に示すような、ロータ31の種類と分配パラメータをテーブル形式にて記憶装置にあらかじめ格納し、制御装置20は装着されたロータ31を識別し、記憶装置から読み出した分配パラメータに従って遠心用インバータ8とコンプレッサ用インバータ12への電力供給を制御する。
制御装置20は交流電源22からの入力電力として200V時電流約30Aの約6000Wの電源容量定格以内で動作する場合の例であり、項番1のR22A4形小容量高速回転ロータは加速時間は短いが冷却するのに大きな冷力が必要であるから、加速時遠心用モータ9の電力を3350W程度に絞る。一方、コンプレッサ用モータ13の回転数を64Hzと高速にして冷却能力を十分に確保する。
項番3のR10A3形大容量低速回転ロータは、加速時間は長いが冷却するのに大きな冷力は必要ないので、加速時には遠心用モータ9の電力への分配を高めて3900W程度に増やして加速時間を短縮する。一方、コンプレッサ用モータ13の回転数を50Hzと低速にして冷却能力は縮小している。項番2はR15A形中容量中速回転ロータであるため、コンプレッサ用モータ13の回転数と加速時遠心用モータ9の電力を項番1と3の中間に定めている。なお、交流電源52の定格電圧、定格電流が異なる他の電源事情の場合には、上記の思想に基づき予め分配パラメータを決めて、記憶装置に格納しておくと良い。
このように、仕向け先の給電容量と装着されるロータ31の種類に応じて、コンプレッサ用モータ13の回転数と加速時の遠心用モータ9の電力をロータ31の加速時間・冷却特性に合わせて適切に分配されるように分配パラメータを設定・記憶してあり、この内容に基づいて遠心用モータ9への電力供給とその他のモータへの電力供給の分配比を決定し制御するので、常にその電源事情で最良の性能が発揮できる。
次に図8を用いて本発明の第3の実施例を説明する。図8の遠心分離機のブロック図において図1で示した第一の実施例と異なるところは、電源として三相交流電源を用いることであり、給電ライン2と給電ライン3が交流電源52の異なる相に接続されることにある。その他の同じ参照符号を付している部分は、図1で示した第一の実施例のブロック図と同一である。
遠心分離機がロータ31を所定の最高回転数で整定制御中に、例えば4℃の温度に冷却維持する場合がより大きな消費電力となり、大気中でロータ31を回転させる遠心分離機の場合、通常遠心用モータ9で消費される電力はほぼコンプレッサ用モータ13で消費される電力に等しく1kWから2kW程度になる。なお、これらの電力にこれらの駆動力に変換する効率を掛け算した値がロータ31で発生する風損に等しい。一方、直流電源6の消費電力と凝縮機ファン18の消費電力は共におおよそ50Wから100W程度であるから、給電ライン2と給電ライン3の消費電力はほぼ等しく、これらの給電ラインを交流電源52の三相交流の異なる相に接続すると消費電力が偏ること無く良いバランスが取れる。図1のように給電ライン2と給電ライン3をまとめて交流電源22に接続するのを図8のように分離して接続し直す、或いはその逆への接続の変更は極めて容易であるので、汎用性のある接続の仕方である。
第三の実施例に係る遠心分離機では、大容量の遠心用モータ9のコンバータとなる双方向コンバータ4は交流電源22の力率を改善して264V電源電圧のピーク電圧に約10Vを加算した直流電圧になるように昇圧制御される。平滑コンデンサ7に充電される直流出力電圧は約385Vに一定電圧に制御されるので、遠心用モータ9のインバータ回路は交流電源22の供給電圧の変動に対して安定した回転制御ができる。同様にしてコンプレッサ用モータ13も大容量であり、コンプレッサ用モータ13に電力を供給する単方向コンバータ5も同様に、170V〜264Vの電源電圧変動や50Hz、60Hzの電源周波数の変化にも対応しているので、コンプレッサ用モータ13も安定に制御される。
チャンバ32を冷却する能力は、コンプレッサ35のコンプレッサ用モータ13の回転数に依存するのはもちろんであるが、この他に凝縮機37を冷却する凝縮機ファン18の風量によっても大きく左右される。特に、使用する電源周波数環境50Hzと60Hzとで、遠心分離機の騒音と最大冷却能力が異なるという問題があり、例えばACファンタイプの凝縮機ファン18は、電源周波数50Hzの場合は1時間あたりの風量は1800リューベで騒音約50.6dBであり、電源周波数60Hzの場合は風量2040リューベで騒音54.3dBであり、電源周波数60Hzの方が風量は10数%増えるが騒音も3から4dB程度大きくなる。
遠心用モータ9や制御ボックス29を冷却するACファンも同様で、電源周波数50Hzよりも60Hzの方が風量、騒音が大きい。従ってチャンバ32を冷却する能力は、凝縮機ファン18の回転数が高い60Hzの方が50Hzに比べて大きいため、50Hzの場合、遠心分離機の回転室48の最大冷却能力は小さく騒音も小さく、電源60Hzの場合、遠心分離機の回転室48の最大冷却能力は大きいが騒音も大きい。直流電源6の直流電圧は例えば24Vであり電源電圧が170V〜264Vに変動してもDC24Vを供給するので、DCファン25、DCファン26は一定の回転数を保ち風量・風圧は変化しないから電源電圧・周波数に依存せずまた騒音が変わることなく遠心用モータ9や制御ボックス29を冷却することができる。
以上説明したように、第三の実施例では電源電圧・周波数フリーな構成とし、接続される電源電圧と許容電流定格を設定記憶した結果により分配パラメータを決定し遠心分離機を動作させるようにしたので、接続される交流電源の電圧が様々に異なっていても単巻トランスを用意する必要が無く、電源周波数50Hzと60Hzの違いによる能力・騒音の違いをなくし最適となる最大冷却能力と騒音特性を備える遠心分離機を実現できた。さらに、単相交流への接続だけではなく、遠心用モータ9の双方向コンバータ4とコンプレッサ用モータ13の単方向コンバータ5で受電する相を異ならせる、いわゆるマルチフェイズ電源への接続が容易に変更可能な構成としたので、各相あたりの使用電流が低減でき、交流電源の電源インピーダンスが高い場合にも運転が可能となる。
次に、遠心分離機1のロータ31の温度制御において、ロータ31の風損損失の大小にかかわらず速かに目標の設定温度にロータ31の温度を近づけ、その後高精度な温度制御を得るための動作について説明する。
従来の温度制御方式はチャンバ32の温度を温度センサ40bで検出してコンプレッサ用モータ13を間欠制御(ON・OFF制御)するため、ロータ31内の試料の温度を所望の目標温度に制御するのにオーバーシュート・アンダーシュートを繰返してチャンバ32のロータ31側の表面温度を脈動させるように構成している。この際の温度制御時に発生する誤差を補うため、予め実験等により求めておいたロータ31回転時の温度センサ40bの目標温度(目標制御温度)とロータ31内の試料温度の差である温度補正値を用いて高精度化を実現している。しかしながら、従来のコンプレッサ35のON・OFF制御では、ON・OFF切替え時に発生する騒音、及び交流電源22の瞬時電圧低下などを伴う他、チャンバ32室内の温度を脈動させながらロータ31を温度制御していたので、温度変動に幅が発生するため温度制御のさらなる高精度化が長年の課題であった。ロータ31の温度検出手段として、放射温度計等をロータ31の回転室48内に設け、直接ロータ31の底面部の温度を測定し、これを目標制御温度としてロータ31を所望の温度制御・維持そる方法もあるが、本発明の実施例では、チャンバ32の温度をサーミスタ等の温度センサ40a、40bで間接的に測定する方法にて、以下説明する。
温度補正値はロータ31の運転回転数、試料の維持温度の他に、ロータの種類・形状毎に風損による発生量とチャンバ32とロータ31間の熱交換量が異なるため、予めロータ種類・運転回転数・試料の維持温度毎に温度補正値を定め操作パネル21又は制御装置20に記憶しておき、ロータ31の種類の他に運転・温度制御条件にあった温度補正値を用いて温度制御の精度向上を図っている。
昨今、エアコンや冷蔵庫などの民生機器では、冷凍機のコンプレッサ用モータ13をコンプレッサ用インバータ12によって可変速運転する技術が普及しており、遠心分離機への適用も検討され始めているが、遠心分離機は、試料維持温度が−20℃から40℃と広範囲であることや、ロータの回転数やロータの種類によって風損による損失が数100W程度から2kWの範囲で大きく変化するため、インバータ方式の冷凍機を適用するにあたり民生機器とは全く異なる温度制御技術が必要となる。ここで図15、図16を用いてロータの種類、回転数と風損の関係を説明する。図15は日立工機株式会社製のR20A4形ロータの各回転数における温度センサ40aの目標制御温度と風損の関係を示す図である。横軸はロータ31の回転数(min−1)である。ここでロータ31の風損173(単位W)は、右側縦軸に対応するもので、ロータ31の風損は回転数にほぼ比例して増加し、近似式とするとロータの回転数のほぼ2.8乗に比例する。
インバータ方式の冷凍機を採用して従来の温度センサ40bの検出温度と設定された目標温度との差から、比例・積分・微分項からなるいわゆる温度フィードバックPID制御方式を採用しても、前述のように運転条件によってロータの発熱量が大きく異なる。ロータ31の回転数と目標制御温度との関係は、170〜172の通りであり、170はロータ31を20℃に冷やす時の目標制御温度曲線であり、171は10℃に冷やす時の目標制御温度曲線、172は4℃に冷やす時の目標制御温度である。170〜172により理解できるようにロータ31の回転数が上昇すると風損が上昇するので、目標制御温度を低めに設定する必要がある。このように、比例・積分・微分項の配分となるPID制御パラメータは温度制御条件によって最適値が大きく異なり、PID制御パラメータの適正値を一様に定めるのは困難である。従って、コンプレッサ用モータ13の回転数を単にPID制御するだけでは制御温度のハンチングが生じ易いので制御温度の更なる精度向上が望めないため、ロータ温度の好ましくない上下の温度差を抑え、温度制御精度を向上させる必要がある。
そこで第四の実施例では、制御装置20はチャンバ32の底部に設けた温度センサ40aの検出温度をフィードバックし、ロータ31内の試料が設定された目標温度になるようにコンプレッサ35内のコンプレッサ用モータ13の回転数を制御する。ここで、凝縮機37の放熱のために風を送る凝縮機ファン18の回転数は、前述のように50Hzで制御されている。
図16は出願人が販売するロータであるR10A3形ロータの各回転数における温度センサ40aの目標制御温度と風損の関係を示す図である。R10A3形ロータは、図15で例示したR20A4形ロータよりも大型であってロータ径が大きい。従って、回転数の上昇に伴うロータ31の風損178(単位W)の上昇度合いは、図15の風損173よりも大きくなる。しかしながら、R10A3形ロータの表面積が大きいため、チャンバ32の冷却によって、R20A4形ロータよりも冷却効果が高くなる。従って、ロータ31の回転数と目標制御温度との関係は、175〜177の通りであり、175はロータ31を20℃に冷やす時の目標制御温度曲線であり、176は10℃に冷やす時の目標制御温度曲線であり、177は4℃に冷やす時の目標制御温度である。目標制御温度170〜172により理解できるようにロータ31の回転数が上昇すると風損が上昇するので、目標制御温度を低くする
図9は本実施例の遠心分離機1において、ロータ31として前出のR22A4形ロータを回転数22000min−1、試料の温度を4℃に温度制御したときの、コンプレッサ用モータ13の回転数(単位Hz)150と、温度センサ40aによる測定された温度151と、ロータ31の底面温度152(単位℃)を示したものである。横軸はロータ31を回転させてからの経過時間である。
このロータの場合、ロータ31を回転数22000min−1において4℃に冷やすための目標制御温度は、図15のライン172からわかるように−12.7℃となる。この際のコンプレッサ用モータ13の制御回転数は、図9の0〜500秒付近の範囲に示すように、ロータ31の加速段階では58Hzとし、ロータ31が22000min−1で整定した以降は65Hzとする。このように制御することによって、時間の経過に伴い温度センサ40aの検出温度が低下し、経過時間650秒付近で目標制御温度より0.5℃高い−12.2℃に達すると、温度センサ40aの検出温度と目標制御温度からPID演算によりコンプレッサ用モータ13の回転数を制御するPID制御を開始する。図17のPID制御開始時のI(積分項)の初期値は、例えばPID制御に移行する直前2分間の温度センサ40aの測温値が減少する温度時間変化率(℃/秒)で決めることができる。
例えば図17では、温度センサ40aの測温値が減少する温度時間変化率が2分間で約1.2℃であるから、PID制御のI項の初期値として50Hzが代入される。ここでPID制御のPとIとDの和をコンプレッサ周波数にするが、PとDは演算の都度、新たな値を決めるのに対し、Iは時間軸に沿って積算するので、初期値として入れておくとその後の制御のオフセットのような効果がでる。この制御操作により、PID移行時にコンプレッサ用モータ13の回転数を高く維持し、温度センサ40aが速やかに、滑らかに制御目標温度に近づく。この理由は、測温値が減少する温度時間変化率が大きい程ロータ31の冷却が速いので、PID制御移行時のIを小さく設定し、逆の場合は大きく設定し、いずれの場合も、コンプレッサ用モータ13の回転数制御に変曲点を設けて、温度センサ40aが速やかに制御目標温度に近づくようにしている。
以上のように制御することにより、コンプレッサ用モータ13のPID演算により算出される演算回転数は、当初若干の回転数のオーバーシュート・アンダーシュートを伴うものの、最終的には約48Hzの回転数に落ち着き、これ以降コンプレッサ用モータ13の回転数制御は安定する。この間、ロータ31の試料の温度にほぼ一致するロータ31の底面温度152の時間経過は、制御開始時に26℃であったものが滑らかに下降し、正確に4℃にて維持される。
図10は、従来の遠心分離機でR22A4形ロータを22000min−1で回転させ、試料の温度を4℃に冷却したときの、コンプレッサ用モータ13の回転数(単位Hz)153、ロータ31の底面温度(単位℃)155、温度センサ40bの測定温度値154の時間経過を示したものである。図9の本実施例と異なり、従来の遠心分離機では温度センサ40aの替わりにシールラバー41内に設けられた温度センサ40bを用いて温度制御を行っている。その場合は温度制御目標が異なるため、温度センサ40bの冷却目標温度を図9の−12.7℃から−7℃に変更したこと以外は図9で示した実測例と異なるところはない。
図10から明らかなように、従来のコンプレッサ用モータ13の制御回転数は、時間が経過してもオーバーシュート・アンダーシュートを繰り返し回転数が収束安定しないためコンプレッサ35から発生する騒音が変動し、ロータ31の底面温度は脈動が継続するため温度制御精度が低下する。この原因は、温度センサ40bがシールラバー41に覆われているためコンプレッサ用モータ13の回転数の変化によるエバポレータ33の温度変化に対する遅れ、時定数などのレスポンスが悪いためである。したがって、本実施例による温度制御を行うには、図10のように温度センサ40bを用いて行うのではなく、図9のように温度センサ40aを用いて行うと良い。この理由は温度センサ40aがチャンバ32の金属部に接触し設けられているためのエバポレータ33の温度変化に対してレスポンス良く応答するからである。
図11は、遠心分離機1でロータ31として前出のR22A4形ロータを回転数10000min−1で回転させ、ロータ31内の試料の温度を4℃に温度制御したときの、コンプレッサ用モータ13の回転数(単位Hz)156、温度センサ40aの測定温度(単位℃)157、ロータ31の試料の温度にほぼ一致するロータ31の底面温度(単位℃)158の時間経過を示したものである。この条件では、ロータ31の風損は、図9の場合の11%程度で100W未満となり、温度制御動作の進行に伴い測定温度157に対応した回転数156が最小連続回転数、例えば本実施例の場合15Hzを下回ったら、コンプレッサ用モータ13の回転数制御はPID連続回転数制御から20HzのON及びOFFの制御となる。通常、コンプレッサ用モータ13においては、定格や安定性の関係から連続回転できる最大回転数(最大連続回転数)と最小回転数(最小連続回転数)が設定されている。ここで、間欠制御の際の連続回転数を20Hzとして、コンプレッサ用モータ13の最小連続回転数よりも高く設定する。コンプレッサ用モータ13をON・OFF制御する際のそれぞれの回転数、すなわち発停回転数は、本発明ではON時20Hz、OFF時0(ゼロ)Hzである。
連続回転できる最小回転数を15Hzとし、ON・OFF制御時のON時回転数20Hzよりも低く設定しているため、最小連続制御時の吸熱量とON・OFF間欠制御時の吸熱量間の吸熱量守備範囲がオーバーラップしており、低速の連続回転数制御とON・OFF間欠制御間で制御状態の行き来があっても温度制御性特性が良好になる。このコンプレッサ用モータ13のON及びOFFの繰り返し制御に伴い、温度センサ40aの測定温度157は小幅に脈動するが、ロータ31の底面温度158は変動がなく高精度で安定した温度制御となっていることが理解できるであろう。
温度センサ40aの目標制御温度は約−1℃であり、コンプレッサ用モータ13の回転数は温度制御開始当初100〜300秒付近は65Hzにあり、PID制御により温度センサ40aの温度が−0.5℃になると15Hzまで連続制御で回転数が低下する。しかし、コンプレッサ用モータ13が15Hzの最小連続回転数であっても連続運転すると温度センサ40aの測定温度157がさらに低下するため、目標制御温度が約−1℃より2度低下した−3℃でコンプレッサ用モータ13をOFFにし、コンプレッサ用モータ13のON・OFF制御に移行する。そして温度センサ40aの測定温度157が上昇に転じ目標制御温度より1度高い0℃になると、コンプレッサ用モータ13を再びONにする。このON・OFF制御は、目標制御温度に対して+1度のオーバーに対してOFF状態からON動作へ、一方、−1度のアンダーに対してON動作からOFF状態に切換え制御し、OFF状態からON動作への移行時には最小60秒のOFF状態の状態確保(最小オフ時間)、逆のON動作からOFF状態への移行時には最小30秒ON状態の状態確保(最小オン時間)を伴う。これは、コンプレッサ35のオイル潤滑上の理由からで、サクション管42と吐出管36の間で圧力差が所定値以下でON、圧力差が所定値以上でOFFする必要があるからである。
図12は、遠心分離機1でロータ31として前出のR10A3形ロータを回転数7800min−1で回転させ、ロータ31内の試料の温度を4℃に温度制御したときの、コンプレッサ用モータ13の回転数(単位Hz)159、温度センサ40aの測定温度(単位℃)160、ロータ31の試料の温度にほぼ一致するロータ31の底面温度(単位℃)161の時間経過を示したものである。温度センサ40aの制御温度目標は、おおよそ−2℃である。この条件では、ロータ31の風損は630W程度となり、コンプレッサ用モータ13の回転数159で示すように温度制御動作の進行に伴いコンプレッサ用モータ13の回転数159は連続制御回転数の下限値となる15Hz強の連続回転数制御となる。この回転数は、図9の場合のON・OFF制御時のON時回転数20Hzよりも低いため、低速の連続回転数制御と20Hz、ON・OFF制御との間の吸熱量範囲がオーバーラップしている、低速の連続回転数制御とON・OFF制御と狭間の領域の制御性が良好になる。
図13は、遠心分離機1でR22A4形ロータを10000min−1で回転させ、試料の温度を4℃に冷却維持する途上で、回転数を12000min−1に設定変更した場合の温度制御を実測例で示した図である。図11とは逆に、コンプレッサ用モータ13の回転数(単位Hz)162で示すように温度制御動作の進行に伴いコンプレッサ用モータ13の回転数(単位Hz)163の制御は20HzのON・停止OFF制御からPID連続回転数制御となる。温度センサ40aの目標制御温度は当初約−1℃であり、回転数の設定変更後は約−2℃である。図11と同様にコンプレッサ用モータ13の回転数162は温度制御開始当初の0〜200秒程度までは65Hzにあり、PID制御による連続回転数制御により15Hzまで連続制御で回転数が低下した後にON・OFF制御に移行する。
この後約2000秒付近で、ロータ31の回転数が10000min−1から12000min−1に設定回転数変更タイミング174で増速されると、ロータ31の風損が若干増加する。よって、コンプレッサ用モータ13の回転数が25HzでON状態にあるとき180秒以上温度センサ40aの検出温度が新しい目標制御温度−2℃を0.5℃上回る状態が継続してしまうので、制御装置20はコンプレッサ用モータ13を連続回転のPID制御に移行する。この後の制御の状況は図12での説明と同様である。
連続回転のPID制御に移行後の初期コンプレッサ用モータ13の回転数162は、約1900〜2300秒付近に示すように30Hzとし、過大な回転数からのPID制御開始により一時過渡的にロータ31の温度が低下してしまうのを防止している。この関係をまとめて示すと図14のようになり、目標制御温度と温度センサ40aの検出温度が数度程度の所定値範囲内に接近している場合、PID制御開始時の初期コンプレッサ用モータ13の回転数は、ロータ31の設定可能最大回転数に対する設定回転数との比率から求まる係数を、コンプレッサ用モータ13の所定最大連続回転数に掛け算した回転数として設定され再変更される。最大回転数に対する設定回転数との比率(%)が65%以下の場合は、コンプレッサ用モータ13の回転数(Hz)は全て30Hzに設定される。例えば最大回転数22,000rpmのロータ31の設定回転数が12000rpmの場合は、最大回転数の54.5%になるので、図14から65%以下の30HzがPID制御開始時の初期コンプレッサ用モータ13の回転数に再設定される。
なお、PID制御開始時の初期コンプレッサ用モータ13の回転数はロータ31の風損に依存するので、あらかじめ登録されているロータ群の風損係数と運転中のロータ31の回転速度からロータの発熱量を算出した値を係数として、コンプレッサ用モータ13の最大連続回転数に掛け算した回転数に再設定することでも良い。
次に図19を用いて遠心分離機1の運転を開始して、ロータの回転を上昇させて設定回転数に整定させる際のコンプレッサ用モータ13の回転数との関係を示す。(1)と(2)の横軸は同じ時間軸で並べて記載している。作業者が回転室48にロータ31をセットしてドア43を閉め、操作パネル21にて遠心分離の設定回転数を22,000rpmにし、遠心分離時間、設定温度等を設定してから時間t1において運転を開始したとする。すると図19(1)のロータ回転数201に示すように、遠心用モータ9の回転数が上昇することによってロータ31の回転数が上昇し、時間t3において加速が終了して整定状態(ロータ31が設定回転数にて定速運転する状態)になる。図19(1)では、遠心用モータ9の動作状態として、“停止”、“加速”、“整定”の3つの状態を示している。
ここで、遠心用モータ9は電気モータであるため、起動時及び加速時の電流は、整定時の電流に比べて大きくなるという特性がある。このような状況下であっても、加速時間を短くしてできるだけ早く整定状態にするには、コンプレッサ用モータ13に割り当てる最大電力を少なくして、その分を遠心用モータ9へ配分することにより遠心用モータ9への電力配分を多くすることが好ましい。一方、遠心用モータ9への電力配分を少なくするということは、コンプレッサ用モータ13の回転数を所望の回転数まで上げられないこともある。例えば、コンプレッサ用モータ13を最大連続回転数(例えば80Hz)にあげて回転室48内を急速冷却したい場合であっても、接続電源の給電容量の関係から制限せざるを得ない場合がある。本実施例では、遠心用モータ9の加速時と整定時に対するコンプレッサ用モータ13への電力配分比を変更するようにし、例えば加速時にはコンプレッサ用モータ13の回転上限を58Hzに制限して遠心用モータ9への電力分配比率を多めにし、整定時には遠心用モータ9への電力分配比を低下させてコンプレッサ用モータ13の回転上限を67Hz程度になるように設定した。ここで58Hz、67Hzというのは接続電源の給電容量によって設定される値であるので、給電容量の異なる設置場所においてはコンプレッサ用モータ13の回転上限値は変わるものである。
このように本実施例では、インバータ制御の冷凍機への電力配分と遠心用モータ9への電力配分比を、ロータ31の回転の加速時と整定時において異なるように構成した。このように構成することによって、加速時には遠心用モータ9への電力配分(最大分配電力)を多めにして加速を早く終了させ、整定時には遠心用モータ9への電力配分(最大分配電力)を減らして、その分をコンプレッサ用モータ13への電力配分(最大分配電力)に回すようにして回転室48内が良好に冷却されるように構成した。
図19(2)においては、時間t3でロータ31が整定状態になると、制御装置20はコンプレッサ用モータ13の回転数を58Hzから67Hzに上昇させ、時間t4で67Hzの定常運転になる。その後、コンプレッサ用モータ13が67Hzで連続運転をすることにより回転室48内が十分に冷えると、PID制御によって時間t5でコンプレッサ用モータ13の回転数が徐々に落とされ、回転室48を目標温度を保つように制御される。図19の例では時間t5以降は、58Hzよりやや高い程度の回転数を保つ例が図示されているが、整定して十分時間が経過した後のコンプレッサ用モータ13の回転数は、ロータの種類、設定温度、回転数によって変わるものである。また、回転室48を目標温度が高めの場合は、整定して十分時間が経過した後のコンプレッサ用モータ13の設定回転数が最小連続回転数に近くまで、又はそれ以下にまで下がることがある。コンプレッサ用モータ13の設定回転数が最小連続回転数以下の場合は、PID制御からコンプレッサ用モータ13の間欠ON・OFF運転を行う。
以上のように第5の実施例によれば、加速時と整定時において遠心用モータ9とコンプレッサ用モータ13への電力配分(最大分配電力)を変更するように制御するので、加速時には遠心用モータ9への電力分配量を増やして迅速に加速させ、整定時(定常回転時)は加速時に比べて遠心用モータへの電力分配量を減らすことによりロータ31を確実に冷却することができる。尚、第5の実施例では時間t1〜t3までの加速時のコンプレッサ用モータへ配分される最大電力を、コンプレッサ用モータ13の回転数58Hz分に制限したが、この制限量を固定せずに、この間の期間を細分化して、加速前半の区間、後半の区間に2分割して、あるいはさらに多分割して、各区間毎の遠心用モータ9とコンプレッサ用モータ13への電力配分比を変更するように細かく制御しても良い。この際であっても加速時の最後の区間の遠心用モータ9への電力配分よりも、整定直後の遠心用モータ9への電力配分が少なくなるようにすると良い。
次に図20を用いて本願発明の第6の実施例を説明する。第5の実施例においては加速時と整定時の遠心用モータ9への電力配分を変えるように、つまり2段階に変更可能なように設定した。第6の実施例においてはこの電力配分比の変更を、遠心用モータ9で消費される電流値に応じて連続可変にできるように構成したことに特徴がある。図20(1)はロータ31の加速時から整定時に至る際に遠心用モータに流れる電流値(単位A)である。作業者が回転室48にロータ31をセットしてドア43を閉め、操作パネル21にて遠心分離の設定回転数を22,000rpmにし、遠心分離時間、設定温度等を設定してから時間t11において運転を開始したとする。すると遠心用モータ9の回転数の上昇に伴い、モータ電流211は図示のように上昇する。このモータ電流211の上昇は使用するモータの種類や制御の仕方によって一様でないが、本実施例の遠心用モータ9は遠心用インバータ8によって駆動されるため、時間t11直後に4A付近まで上昇し、その後矢印211aのようにほぼリニアに上昇し、矢印211b付近では13A程度まで上昇する。ここで、給電容量に応じたモータ電流211の加速時の最大分配電力(上限値)が13Aであるので、その上限値の電流をキープしたまま加速を続け、時間t13において遠心用モータ9の回転数が設定回転数22,000rpmに到達したため、定速運転に移行する。すると遠心用モータ9の電流は7.5A程度に落ちる。
図20(2)はコンプレッサ用モータ13の回転数212の推移を示すグラフである。(1)と(2)の横軸は同じ時間軸で並べて記載している。第6の実施例では、各時間における(遠心用モータ9の消費電流+コンプレッサ用モータ13の消費電力)が、総給電容量内での遠心用モータ9とコンプレッサ用モータ13に割り当てられた消費電力の範囲内で収まるように制御される。そのため制御装置20に含まれるマイクロコンピュータが遠心用モータ9の電流値(図2の電流センサ19の出力)に応じてコンプレッサ用モータ13の回転数212を設定するように構成した。図20(2)において回転数212は、時間t11で起動してから大きく増加させ、遠心用モータ9の定速回転時(時間t13以降)の上限値の67Hzよりも大きくなるように設定される。しかしながら、矢印212aにおいて遠心用モータ9とコンプレッサ用モータ13の消費電力の合計が割当て電力値の上限に達する上に遠心用モータ9の消費電力が更に上昇傾向にあるので、その分だけコンプレッサ用モータ13の消費電力を落とすべく回転数212を矢印212bのように減少させる。
加速時間の終了間際、即ち時間t13の直前の数百回転付近で矢印211cのように遠心用モータ9の消費電力が大きく低下するので、矢印212dのようにその分だけコンプレッサ用モータ13の回転数を上昇させるようにして、最終的には矢印212eで示すように67Hz付近で落ち着くようにした。尚、コンプレッサ用モータ13の回転数67Hzは、遠心分離運転初期段階において回転室48の温度を割り当てられた最大分配電力の範囲内で最大に冷却しようとする時の設定回転数であって、回転室48が一端目標温度まで低下した後においては、その温度を維持するだけで良いので、コンプレッサ用モータ13の回転数を大幅に下げることができ、時間t15以降の制御ではPID制御によって、モータ13の回転数を低回転に制御している。
以上、本発明者によってなされた発明を各実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。