JP5948969B2 - 音声解析装置、音声解析システムおよびプログラム - Google Patents

音声解析装置、音声解析システムおよびプログラム Download PDF

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Description

本発明は、音声解析装置、音声解析システムおよびプログラムに関する。
特許文献1には、建物形状、パーティションおよび騒音源のデータを入力する手段と、これらのデータに基づいて室内の多数の受音点における音圧レベルおよび明瞭度を演算する手段と、前記多数の受音点における音圧レベル分布図および明瞭度分布図を作成する手段とを備える室内音環境評価システムが開示されている。
特開平7−28481号公報
本発明は、発話者と発話者の音声が届く位置にいる他者との間の距離を、発話者の位置があらかじめ分かっていなくても、音の減衰から把握可能にすることを目的とする。
請求項1に記載の発明は、装着者に配され音声を取得するとともに装着者のうち少なくとも1人については装着者の口からの距離が異なる位置に複数配される音声取得手段から音声の音声信号に関する情報を受信する音声情報受信部と、前記音声情報受信部により複数の装着者から取得した前記音声の音声信号に関する情報から音声の同調性を判別する同調性判別部と、前記同調性判別部により音声の同調性が存在すると判別されるとともに装着者の口からの距離が異なる位置に配される前記複数の音声取得手段によりそれぞれ取得された音声の音圧の比較結果に基づき音声が装着者自身の発話音声であると識別された場合に、発話者に配された前記音声取得手段に取得された音声の音圧と他者に配された当該音声取得手段に取得された音声の音圧から発話者を基準とした他者との距離を導出する距離導出部と、を備えることを特徴とする音声解析装置である。
請求項2に記載の発明は、前記音声取得手段のうち装着者の口からの距離が互いに異なる2つの当該音声取得手段で取得される音声の音圧差に基づいて、当該音声取得手段により取得された音声が装着者の発話音声か装着者以外の発話音声かを識別する自他識別部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の音声解析装置である。
請求項3に記載の発明は、前記音声取得手段に他者の音声が到達する時間差および当該音声取得手段が離間する距離から導出される装着者と他者の向き合う角度である対面角度から、他者の三次元位置を導出するための数値計算の初期値を選択する初期値選択手段と、前記初期値選択手段により選択された初期値を用いた数値計算により他者の三次元位置を導出する位置導出手段と、をさらに備え、前記初期値選択手段は、前記距離導出部により導出された発話者と他者との距離を利用して前記初期値を選択することを特徴とする請求項1または2に記載の音声解析装置である。
請求項4に記載の発明は、装着者に配され音声を取得するとともに装着者のうち少なくとも1人については装着者の口からの距離が異なる位置に複数配される音声取得手段と、前記音声取得手段により取得された音声の音声信号に関する情報を送信する音声情報送信部と、前記音声情報送信部により送信された音声の音声信号に関する情報を受信する音声情報受信部と、前記音声情報受信部により複数の装着者から取得した前記音声の音声信号に関する情報から音声の同調性を判別する同調性判別部と、前記同調性判別部により音声の同調性が存在すると判別されるとともに装着者の口からの距離が異なる位置に配される前記複数の音声取得手段によりそれぞれ取得された音声の音圧の比較結果に基づき音声が装着者自身の発話音声であると識別された場合に、発話者に配された前記音声取得手段に取得された音声の音圧と他者に配された当該音声取得手段に取得された音声の音圧から発話者を基準とした他者との距離を導出する距離導出部と、を備えることを特徴とする音声解析システムである。
請求項5に記載の発明は、コンピュータに、装着者に配され音声を取得するとともに装着者のうち少なくとも1人については装着者の口からの距離が異なる位置に複数配される音声取得手段から音声の音声信号に関する情報を受信する機能と、複数の装着者から取得した前記音声の音声信号に関する情報から音声の同調性を判別する機能と、音声の同調性が存在すると判別されるとともに装着者の口からの距離が異なる位置に配される前記複数の音声取得手段によりそれぞれ取得された音声の音圧の比較結果に基づき音声が装着者自身の発話音声であると識別された場合に、発話者に配された前記音声取得手段に取得された音声の音圧と他者に配された当該音声取得手段に取得された音声の音圧から発話者を基準とした他者との距離を導出する機能と、を実現させるプログラムである。
請求項1の発明によれば、発話者と発話者の音声が届く位置にいる他者との間の距離を、発話者の位置があらかじめ分かっていなくても、音の減衰から把握することができる音声解析装置を提供できる。
請求項2の発明によれば、音声取得手段により取得された音声が装着者の発話音声か装着者以外の他者の発話音声かを識別する機能を音声解析装置で備えることができる。
請求項3の発明によれば、本発明を採用しない場合に比べ、発話者の三次元位置を求める場合に、その位置精度が向上する。
請求項4の発明によれば、発話者と発話者の音声が届く位置にいる他者との間の距離を、発話者の位置があらかじめ分かっていなくても、音の減衰から把握することができる音声解析システムを構築できる。
請求項5の発明によれば、発話者と発話者の音声が届く位置にいる他者との間の距離を、発話者の位置があらかじめ分かっていなくても、音の減衰から把握することができる機能をコンピュータにより実現できる。
本実施形態による音声解析システムの構成例を示す図である。 本実施形態における端末装置の構成例を示す図である。 装着者および他者の口(発声部位)と、マイクロフォンとの位置の関係を示す図である。 マイクロフォンと音源との間の距離と音圧(入力音量)との関係を示す図である。 装着者自身の発話音声と他者の発話音声の識別方法を示す図である。 本実施形態における端末装置の動作を示すフローチャートである。 データ解析部についてさらに詳しく説明した図である。 データ解析部の動作について説明したフローチャートである。 (a)〜(c)は、本実施の形態において時間差Δt12を求める方法を説明した図である。 本実施の形態における対面角度について説明した図である。 第1マイクロフォンおよび第2マイクロフォンを使用して対面角度αを求める方法について説明した図である。 点M1、点M2、点M3、および点Sの位置関係を示した概念図である。 点M1および点M2の中点C12を頂点とし、半頂角をαとする円錐について抜き出して説明した図である。 設置される候補点の三次元位置を示した概念図である。 初期値選択部についてさらに詳しく説明した図である。 本実施形態における初期値選択部の動作を示すフローチャートである。 本実施形態の端末装置をそれぞれ装着した複数の装着者が会話している状況を示す図である。 図17の会話状況における各端末装置の発話情報の例を示す図である。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<システム構成例>
図1は、本実施形態による音声解析システムの構成例を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の音声解析システム1は、端末装置10と音声解析装置の一例であるホスト装置20とを備えて構成される。端末装置10とホスト装置20とは、無線通信回線を介して接続されている。無線通信回線の種類としては、Wi−Fi(Wireless Fidelity)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee、UWB(Ultra Wideband)等の既存の方式による回線を用いて良い。また、図示の例では、端末装置10が1台のみ記載されているが、詳しくは後述するように、端末装置10は、使用者各人が装着して使用するものであり、実際には使用者数分の端末装置10が用意される。以下、端末装置10を装着した使用者を装着者と呼ぶ。
端末装置10は、発話者の音声を取得するための音声取得手段として、複数のマイクロフォン(第1マイクロフォン11a、第2マイクロフォン11b、および第3マイクロフォン11c)と、増幅器(第1増幅器13a、第2増幅器13b、および第3増幅器13c)とを備える。また、端末装置10は、収録した音声を解析する音声解析部15と、解析結果をホスト装置20に送信するためのデータ送信部16とを備え、さらに電源部17とを備える。
本実施の形態において、第1マイクロフォン11a、第2マイクロフォン11b、第3マイクロフォン11cは、予め定められた距離にて離間して配される。本実施形態の第1マイクロフォン11a、第2マイクロフォン11b、および第3マイクロフォン11cとして用いられるマイクロフォンの種類としては、ダイナミック型、コンデンサ型等、既存の種々のものを用いて良い。とくに無指向性のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)型マイクロフォンが好ましい。
第1増幅器13a、第2増幅器13b、および第3増幅器13cは、第1マイクロフォン11a、第2マイクロフォン11b、および第3マイクロフォン11cが取得音声に応じて出力する電気信号(音声信号)を増幅する。本実施形態の第1増幅器13a、第2増幅器13b、および第3増幅器13cとして用いられる増幅器としては、既存のオペアンプ等を用いて良い。
音声解析部15は、第1増幅器13aおよび第2増幅器13bから出力された音声信号を解析する。そして、第1マイクロフォン11aおよび第2マイクロフォン11bで取得した音声が端末装置10を装着した装着者自身が発話した音声か、他者の発話による音声かを識別する。すなわち、音声解析部15は、第1マイクロフォン11aおよび第2マイクロフォン11bで取得した音声に基づき、音声の発話者を識別する自他識別部として機能する。音声識別のための具体的な処理の内容については後述する。
データ送信部16は、音声解析部15による解析結果を含む取得データと端末のIDを、上記の無線通信回線を介してホスト装置20へ送信する。ホスト装置20へ送信する情報としては、ホスト装置20において行われる処理の内容に応じて、上記の解析結果の他、例えば、第1マイクロフォン11a、第2マイクロフォン11b、第3マイクロフォン11cによる音声の取得時刻、取得音声の音圧等の情報を含めて良い。また端末装置10に音声解析部15による解析結果を蓄積するデータ蓄積部を設け、一定期間の保存データを一括送信しても良い。なお有線回線で送信しても良い。本実施の形態では、データ送信部16は、第1マイクロフォン11a、第2マイクロフォン11b、第3マイクロフォン11cにより取得された音声の音声信号に関する情報を送信する音声情報送信部として機能する。
電源部17は、上記の第1マイクロフォン11a、第2マイクロフォン11b、および第3マイクロフォン11c、第1増幅器13a、第2増幅器13b、第3増幅器13c、音声解析部15およびデータ送信部16に電力を供給する。電源としては、例えば乾電池や充電池等の既存の電源が用いられる。また、電源部17は、必要に応じて、電圧変換回路および充電制御回路等の周知の回路を含む。`
ホスト装置20は、端末装置10から送信されたデータを受信するデータ受信部21と、受信したデータを蓄積するデータ蓄積部22と、蓄積したデータを解析するデータ解析部23と、解析結果を出力する出力部24とを備える。このホスト装置20は、例えばパーソナルコンピュータ等の情報処理装置により実現される。また、上記のように本実施形態では複数台の端末装置10が使用され、ホスト装置20は、その複数台の端末装置10の各々からデータを受信する。
データ受信部21は、上記の無線回線に対応しており、各端末装置10からデータを受信してデータ蓄積部22へ送る。本実施形態ではデータ受信部21は、データ送信部16により出力された音声信号に関する情報を受信する音声情報受信部として機能する。データ蓄積部22は、例えばパーソナルコンピュータの磁気ディスク装置等の記憶装置により実現され、データ受信部21から取得した受信データを発話者別に蓄積する。ここで、発話者の識別は、端末装置10から送信される端末IDと、あらかじめホスト装置20に登録されている発話者名と端末IDの照合により行う。また、端末装置10から端末IDの代わりに、装着者名を送信するようにしておいても良い。
データ解析部23は、例えばパーソナルコンピュータのプログラム制御されたCPUにより実現され、データ蓄積部22に蓄積されたデータを解析する。具体的な解析内容および解析手法は、本実施形態のシステムの利用目的や利用態様に応じて種々の内容および手法を取り得る。例えば、端末装置10の装着者どうしの対話頻度や各装着者の対話相手の傾向を分析したり、対話における個々の発話の長さや音圧の情報から対話者の関係を類推したりすることが行われる。また本実施の形態では、詳しくは後述するがデータ解析部23において発話者の三次元位置を導出する。
出力部24は、データ解析部23による解析結果を出力したり、解析結果に基づく出力を行ったりする。この解析結果等を出力する手段は、システムの利用目的や利用態様、解析結果の内容や形式等に応じて、ディスプレイ表示、プリンタによる印刷出力、音声出力等、種々の手段を取り得る。
<端末装置の構成例>
図2は、端末装置10の構成例を示す図である。
上記のように、端末装置10は、各使用者に装着されて使用される。使用者が装着可能とするため、本実施形態の端末装置10は、図2に示すように、装置本体30と、装置本体30に接続された提げ紐40とを備えた構成とする。図示の構成において、使用者は、提げ紐40に首を通し、装置本体30を首から提げて装着する。
装置本体30は、金属や樹脂等で形成された薄い直方体のケース31に、少なくとも第1増幅器13a、第2増幅器13b、第3増幅器13c、音声解析部15、データ送信部16および電源部17を実現する回路と電源部17の電源(電池)とを収納して構成される。また本実施の形態では、ケース31に第3マイクロフォン11cが設けられる。さらにケース31には、装着者の氏名や所属等のID情報を表示したIDカード等を挿入するポケットを設けても良い。また、ケース31自体の表面にそのようなID情報等を記載しても良い。
提げ紐40には、第1マイクロフォン11a、第2マイクロフォン11bが設けられる(以下、第1マイクロフォン11a、第2マイクロフォン11b、および第3マイクロフォン11cをそれぞれ区別しない場合には、マイクロフォン11a、11b、11cと記載)。提げ紐40の材質としては、革、合成皮革、木綿その他の天然繊維や樹脂等による合成繊維、金属等、既存の種々の材質を用いて良い。また、シリコン樹脂やフッ素樹脂等を用いたコーティング処理が施されていても良い。
この提げ紐40は、筒状の構造を有し、提げ紐40の内部にマイクロフォン11a、11bを収納している。マイクロフォン11a、11bを提げ紐40の内部に設けることにより、マイクロフォン11a、11bの損傷や汚れを防ぎ、対話者がマイクロフォン11a、11bの存在を意識することが抑制される。本実施の形態では、この環形状の提げ紐40を首に掛けることで装置本体30を使用者である装着者に装着するようにしている。
<収録音声の非言語情報に基づく発話者(自他)の識別>
次に、本実施形態における発話者の識別方法について説明する。
本実施形態のシステムは、端末装置10に設けられた2つのマイクロフォン11a、11cにより収録された音声の情報を用いて、端末装置10の装着者自身の発話音声と他者の発話音声とを識別する。言い換えれば、本実施形態は、収録音声の発話者に関して自他の別を識別する。また、本実施形態では、収録音声の情報のうち、形態素解析や辞書情報を用いて得られる言語情報ではなく、音圧(マイクロフォン11a、11cへの入力音量)等の非言語情報に基づいて発話者を識別する。言い換えれば、言語情報により特定される発話内容ではなく、非言語情報により特定される発話状況から音声の発話者を識別する。
図1および図2を参照して説明したように、本実施形態において、端末装置10の第3マイクロフォン11cは装着者の口(発声部位)から遠い位置に配置され、第1マイクロフォン11aは装着者の口(発声部位)に近い位置に配置される。すなわち、装着者の口(発声部位)を音源とすると、第3マイクロフォン11cと音源との間の距離と、第1マイクロフォン11aと音源との間の距離が大きく異なる。具体的には、第3マイクロフォン11cと音源との間の距離は、第1マイクロフォン11aと音源との間の距離の1.5〜4倍程度である。ここで、マイクロフォン11a、11cにおける収録音声の音圧は、マイクロフォン11a、11cと音源との間の距離が大きくなるにしたがって減衰(距離減衰)する。したがって、装着者の発話音声に関して、第3マイクロフォン11cにおける収録音声の音圧と第1マイクロフォン11aにおける収録音声の音圧とは大きく異なる。
一方、装着者以外の者(他者)の口(発声部位)を音源とした場合を考えると、その他者が装着者から離れているため、第3マイクロフォン11cと音源との間の距離と、第1マイクロフォン11aと音源との間の距離は、大きく変わらない。装着者に対する他者の位置によっては、両距離の差は生じ得るが、装着者の口(発声部位)を音源とした場合のように、第3マイクロフォン11cと音源との間の距離が第1マイクロフォン11aと音源との間の距離の数倍となることはない。したがって、他者の発話音声に関して、第3マイクロフォン11cにおける収録音声の音圧と第1マイクロフォン11aにおける収録音声の音圧とは、装着者の発話音声の場合のように大きく異なることはない。
図3は、装着者および他者の口(発声部位)と、マイクロフォン11a、11cとの位置の関係を示す図である。
図3に示す関係において、装着者の口(発声部位)である音源aと第3マイクロフォン11cとの間の距離をLa3、音源aと第1マイクロフォン11aとの間の距離をLa1とする。また、他者の口(発声部位)である音源bと第3マイクロフォン11cとの間の距離をLb3、音源bと第1マイクロフォン11aとの間の距離をLb1とする。この場合、次の関係が成り立つ。
La3>La1(La3≒1.5×La1〜4×La1)
Lb3≒Lb1
図4は、マイクロフォン11a、11cと音源との間の距離と音圧(入力音量)との関係を示す図である。
上述したように、音圧は、マイクロフォン11a、11cと音源との間の距離に応じて距離減衰する。図4において、距離La3の場合の音圧Ga3と距離La1の場合の音圧Ga1とを比較すると、音圧Ga1は、音圧Ga3の4倍程度となっている。一方、距離Lb3と距離Lb1とが近似するため、距離Lb3の場合の音圧Gb3と距離Lb1の場合の音圧Gb1とは、ほぼ等しい。そこで、本実施形態では、この音圧比の差を用いて、収録音声における装着者自身の発話音声と他者の発話音声とを識別する。なお、図4に示した例では、距離Lb3、Lb1を60cmとしたが、ここでは音圧Gb3と音圧Gb1とがほぼ等しくなることに意味があり、距離Lb3、Lb1は図示の値に限定されない。
図5は、装着者自身の発話音声と他者の発話音声の識別方法を示す図である。
図4を参照して説明したように、装着者自身の発話音声に関して、第1マイクロフォン11aの音圧Ga1は、第3マイクロフォン11cの音圧Ga3の数倍(例えば4倍程度)である。また、他者の発話音声に関して、第1マイクロフォン11aの音圧Ga1は、第3マイクロフォン11cの音圧Ga3とほぼ等しい(1倍程度)。そこで、本実施形態では、第1マイクロフォン11aの音圧Ga1と第3マイクロフォン11cの音圧Ga3との比に閾値を設定する。そして、音圧比が閾値よりも大きい音声は装着者自身の発話音声と判断し、音圧比が閾値よりも小さい音声は他者の発話音声と判断する。図5に示す例では、閾値を2とし、音圧比Ga1/Ga3は閾値2を超えるので装着者自身の発話音声と判断され、音圧比Gb1/Gb3は閾値2よりも小さいので他者の発話音声と判断されている。
ところで、マイクロフォン11a、11cにより収録される音声には、発話音声の他に、環境音等のいわゆる雑音(ノイズ)が含まれる。この雑音の音源とマイクロフォン11a、11cとの間の距離の関係は、他者の発話音声の場合と類似する。すなわち、図4、図5に示した例によれば、雑音の音源cと第1マイクロフォン11aとの間の距離をLc1とし、雑音の音源cと第3マイクロフォン11cとの間の距離をLc2とすると、距離Lc1と距離Lc2とは近似する。そして、マイクロフォン11a、11cの収録音声における音圧比Gc1/Gc3は、閾値2よりも小さくなる。しかし、このような雑音は、バンドパスフィルタやゲインフィルタ等を用いた既存の技術によるフィルタリング処理を行うことにより発話音声から分離され、除去される。
<端末装置の動作例>
図6は、本実施形態における端末装置10の動作を示すフローチャートである。
図6に示すように、端末装置10のマイクロフォン11a、11cが音声を取得すると、各マイクロフォン11a、11cから取得音声に応じた電気信号(音声信号)が第1増幅器13aおよび第3増幅器13cへ送られる(ステップ101)。第1増幅器13aおよび第3増幅器13cは、マイクロフォン11a、11cからの音声信号を取得すると、信号を増幅して音声解析部15へ送る(ステップ102)。
音声解析部15は、第1増幅器13aおよび第3増幅器13cで増幅された信号に対してフィルタリング処理を行い、信号から環境音等の雑音(ノイズ)の成分を除去する(ステップ103)。次に、音声解析部15は、雑音成分が除かれた信号に対し、一定の時間単位(例えば、数十分の一秒〜数百分の一秒)毎に、各マイクロフォン11a、11cの収録音声における平均音圧を求める(ステップ104)。そして、第1マイクロフォン11aにおける平均音圧と第3マイクロフォン11cにおける平均音圧との比(音圧比)を求める(ステップ105)。
次に、音声解析部15は、ステップ104で求めた各マイクロフォン11a、11cにおける平均音圧の利得が有る場合(ステップ106でYes)、発話音声が有る(発話が行われた)と判断する。そして、ステップ105で求めた音圧比が閾値よりも大きい場合(ステップ107でYes)、音声解析部15は、発話音声は装着者自身の発話による音声であると判断する(ステップ108)。また、ステップ105で求めた音圧比が閾値よりも小さい場合(ステップ107でNo)、音声解析部15は、発話音声は他者の発話による音声であると判断する(ステップ109)。一方、ステップ104で求めた各マイクロフォン11a、11cにおける平均音圧の利得が無い場合(ステップ106でNo)、音声解析部15は、発話音声が無い(発話が行われていない)と判断する(ステップ110)。なお、ステップ106の判断は、ステップ103のフィルタリング処理で除去しきれなかった雑音が信号に残っている場合を考慮し、平均音圧の利得の値が一定値以上の場合に、利得があると判断しても良い。音圧比を求めるステップ105と利得の有無を判断するステップ106の順序を逆にして、利得がある場合のみ音圧比を求めても良い。
この後、音声解析部15は、データ送信部16を介して、ステップ104〜ステップ110の処理で得られた情報(発話の有無、発話者の情報)を解析結果としてホスト装置20へ送信させる(ステップ111)。このとき、発話者毎(装着者自身または他者)の発話時間の長さや平均音圧の利得の値、その他の付加情報を解析結果と共にホスト装置20へ送信させても良い。また上述した例では、マイクロフォン11a、11cの組を使用したが、マイクロフォン11b、11cの組を使用しても同様のことが可能である。
次に上記自他識別結果を含む音声の音声信号の情報により他者の三次元位置を求める方法について説明する。これは、本実施の形態では、ホスト装置20のデータ解析部23において導出される。
図7は、データ解析部23についてさらに詳しく説明した図である。
図7に示すように、データ解析部23は、各マイクロフォン11a、11b、11cに他者の音声が到達する時間差を求める時間差導出部231と、この時間差および各マイクロフォン11a、11b、11cが離間する距離から導出される装着者と他者の向き合う角度である対面角度を求める対面角度導出部232と、対面角度から他者の三次元位置を導出するための数値計算の初期値を選択する初期値選択手段の一例としての初期値選択部233と、初期値選択部233が初期値を選択するためのLUT(Look up Table)を格納するLUT格納部234と、初期値選択部233により選択された初期値を用いた数値計算により他者の三次元位置を導出する位置導出手段の一例としての数値計算部235とを備える。
図8は、データ解析部23の動作について説明したフローチャートである。以下、図7、図8を使用してデータ解析部23の動作について説明を行なう。
まずデータ解析部23では、データ受信部21により受信された音声信号に関する情報をデータ蓄積部22を介して取得する(ステップ201)。次に時間差導出部231においてデータ受信部21により受信された音声信号に関する情報から、詳しくは後述する方法により各マイクロフォン11a、11b、11cに他者の音声が到達する時間差が求められる(ステップ202)、具体的には、第1マイクロフォン11aと第2マイクロフォン11bとの間の時間差Δt12、第2マイクロフォン11bと第3マイクロフォン11cとの間の時間差Δt23、第3マイクロフォン11cと第1マイクロフォン11aとの間の時間差Δt31、がそれぞれ求められる。
さらに対面角度導出部232において、詳しくは後述する方法により、この時間差Δt12、Δt23、Δt31、およびマイクロフォン11a、11b、11c同士が離間する距離に基づいて、装着者と他者の向き合う角度である対面角度を求める(ステップ203)。なお対面角度についても、この後、詳細に説明を行なう。具体的には、時間差Δt12と第1マイクロフォン11aと第2マイクロフォン11bとの間の距離D12に基づき、対面角度αを求める。同様にして時間差Δt23と第2マイクロフォン11bと第3マイクロフォン11cとの間の距離D23に基づき、対面角度βを求め、時間差Δt31と第3マイクロフォン11cと第1マイクロフォン11aとの間の距離D31に基づき、対面角度γを求める。
次に初期値選択部233において、LUT格納部234を参照して他者の三次元位置を導出するための初期値を選択する(ステップ204)。この初期値の選択の方法についても、この後、詳細に説明を行なう。
そして数値計算部235において、選択された初期値から開始する数値計算を行い、他者の三次元位置を導出する(ステップ205)。
この他者の三次元位置の情報は出力部24に出力される(ステップ206)。
<マイクロフォンに他者の音声が到達する時間差を求める方法の説明>
各マイクロフォン11a、11b、11cに他者の音声が到達する時間差Δt12、Δt21、Δt31は、以下のようにして求めることができる。なお以下の説明は、時間差Δt12を求める場合を例に取り説明を行なうが、時間差Δt21、Δt31についても同様の方法により求めることができる。
図9(a)〜(c)は、本実施の形態において時間差Δt12を求める方法を説明した図である。このうち図9(a)は、第1マイクロフォン11aと第2マイクロフォン11bに到達する他者の音声をサンプリング周波数1MHzでサンプリングし、そのデータの中から連続する5000ポイントを抜き出した図である。
ここで横軸は5000ポイントのデータにそれぞれに付けられたデータ番号を表わし、縦軸は、他者の音声の振幅を表わす。そして実線は、第1マイクロフォン11aに到達した他者の音声の波形信号であり、点線は、第2マイクロフォン11bに到達した他者の音声の波形信号である。
本実施の形態では、この2つの波形信号の相互相関関数を求める。つまり一方の波形信号を固定し、他方の波形信号をシフトしつつ積和をとる計算を行なう。図9(b)〜(c)は、この2つの波形信号に対する相互相関関数を示した図である。このうち図9(b)は、サンプリングした5000ポイントのデータ全体の相互相関関数であり、図9(c)は、図9(b)に示した相互相関関数のピーク付近を拡大した図である。なお図9(b)〜(c)では、第1マイクロフォン11aに到達した他者の音声の波形信号を固定し、第2マイクロフォン11bに到達した他者の音声の波形信号をシフトして相互相関関数を求めた場合を示している。
図9(c)に示すようにデータ番号0を基準にしてピーク位置は、−227ポイントずれている。これは第1マイクロフォン11aを基準にして第2マイクロフォン11bに到達する他者の音声が、この分遅延して到達することを意味する。本実施の形態においてサンプリング周波数は、上述の通り1MHzなので、サンプリングした各データ間の時間は、1×10−6(s)である。よってこの遅延時間としては227×1×10−6(s)=227(μs)となる。つまりこの場合、時間差Δt12は、227(μs)である。
<対面角度の説明>
図10は、本実施の形態における対面角度について説明した図である。
本実施の形態において対面角度とは、上述の通り端末装置10の装着者と他者の向き合う角度である。そして図10に本実施の形態で定義される対面角度について示している。ここでは、本実施の形態の対面角度の例として、第1マイクロフォン11aおよび第2マイクロフォン11bを基準とする対面角度αを図示している。
本実施の形態では、対面角度αとして、2個の音声取得手段である第1マイクロフォン11aと第2マイクロフォン11bとを結ぶ線分と、この線分の中点および他者を結ぶ線分との角度を採用する。これにより対面角度αの数学的取り扱いがより簡単になる。そしてこの定義を採用した場合、例えば、装着者と他者がそれぞれ正面を向いて対向しているときは、この二人の対面角度αは、90°となる。
なお第2マイクロフォン11bおよび第3マイクロフォン11cを基準とした対面角度である対面角度β、および第3マイクロフォン11cおよび第1マイクロフォン11aを基準とした対面角度である対面角度γも同様にして定義することができる。
<対面角度を求める方法の説明>
図11は、第1マイクロフォン11aおよび第2マイクロフォン11bを使用して対面角度αを求める方法について説明した図である。
ここで、点M1を第1マイクロフォン11aの位置、点M2を第2マイクロフォン11bの位置であるとする。また点Sを他者の位置であるとする。なおここで他者の位置とは、より正確には、他者の音声の音源である発声点の位置である。そして発声点である点Sから発した音声は、同心円状に広がる。このとき音声は有限の速度である音速で広がるため音声が第1マイクロフォン11aの位置である点M1に到達した時間と第2マイクロフォン11bの位置である点M2に到達した時間とは異なり、音声の行路差δ12に対応した時間差Δt12が生じる。そして点M1と点M2との間の距離をD12、点M1と点M2の中点C12と点Sの間の距離をL12とするとこれらの間には次の(1)式が成立する。
δ12=(L12 +L1212cosα+D12 /4)0.5−(L12 −L1212cosα+D12 /4)0.5 …(1)
この(1)式は、L12>D12の場合、L12による影響が小さいため、下記(2)式に近似できる。
δ12≒D12cosα …(2)
また音速cと時間差Δt12を使用すると、下記(3)式が成立する。
δ12=cΔt12 …(3)
つまりこの(2)式および(3)式を使用することで、対面角度αが求まる。つまり2つの音声取得手段である第1マイクロフォン11aと第2マイクロフォン11bに他者の音声が到達する時間差Δt12および第1マイクロフォン11aと第2マイクロフォン11bが離間する距離D12に基づいて、装着者と他者の向き合う角度である対面角度αを導出することができる。なお対面角度β、γも同様にして導出することができる。
<他者の三次元位置の導出方法の説明>
次に上述のようにして求められた対面角度α、β、γを利用して、他者の三次元位置を導出する方法の説明を行なう。
まずマイクロフォン11a、11b、11cの位置をそれぞれ点M1、点M2、点M3とすると、点M1、点M2、点M3を頂点とする三角形は、△M1M2M3となる。そして各頂点M1、M2、M3の三次元座標をここでは、それぞれ(xM1、yM1、zM1)、(xM2、yM2、zM2)、(xM3、yM3、zM3)とする。さらに線分M1M2の中点C12、線分M2M3の中点C23、線分M3M1の中点C31の三次元座標を、それぞれ(xC12、yC12、zC12)、(xC23、yC23、zC23)、(xC31、yC31、zC31)とする。また他者の位置である点Sの三次元座標を(x、y、z)とする。
図12は、点M1、点M2、点M3、および点Sの位置関係を示した概念図である。
図12では、点M1および点M2の中点C12を頂点とし、半頂角をαとする円錐、および点M3および点M1の中点C31を頂点とし、半頂角をγとする円錐を実線で示している。そして上述した対面角度の定義より、点Sは、これらの円錐面(円錐の側面)の何れかの位置に存在することになる。
またこの関係は、点M2および点M3の中点C23を頂点とし、半頂角をβとする円錐、についても同様のことが言える。つまり、点Sは、これら3つの円錐の円錐面の交点に存在する。なお図12では、説明をわかりやすくするため、点M2および点M3の中点C23を頂点とし、半頂角をβとする円錐については、図示していない。
また図13は、点M1および点M2の中点C12を頂点とし、半頂角をαとする円錐について抜き出して説明した図である。
ここで図13において、中点C12から円錐の底面に垂線を下ろし、中点C12を起点としてこの垂線方向にのびるaベクトルを考える。また、中点C12を起点として円錐面に沿った方向にのびるrベクトルを考える。このとき点M2は、この垂線上に存在し、aベクトルとrベクトルのなす角度は、対面角度αである。
そしてaベクトルとrベクトルの内積を使用してaベクトル、rベクトル、および対面角度αの関係を表わすと、次の(4)式、および(5)式が成立する。
Figure 0005948969
Figure 0005948969
また点M1、中点C12、および点Sの三次元座標を使用すると、次の(6)式、(7)式、および(8)式が成立する。
Figure 0005948969
Figure 0005948969
Figure 0005948969
この(8)式の関係を対面角度β、γについて適用すると、次の(9)式および(10)式が成立する。
Figure 0005948969
Figure 0005948969
つまり他者の位置である点Sの三次元座標(x、y、z)は、(8)式〜(10)式に示した3つの式による3元2次連立方程式を解くことで求めることができる。
このように本実施の形態では、2個のマイクロフォンを結ぶ線分の中点を頂点とし対面角度を半頂角とする円錐の側面に他者の音声の音源が位置するとともに、この音源は3つの円錐の側面の交点に位置することを利用して他者の三次元位置を導出する。
しかしながら(8)式〜(10)式の3元2次連立方程式を解析的に解くことは困難である。そのため本実施の形態では、数値的に解く方法で、点Sの三次元座標(x、y、z)を求める。ただし数値的に解く方法でも(8)式〜(10)式のような非線形の方程式を解く場合、解が発散しやすいという問題がある。解が発散するか、収束するか否かは初期値の与え方により決まる。そのため収束解を得るためには、初期値の選択が重要となる。
<初期値の選択の方法の説明>
そこで本実施の形態では、端末装置10および他者が置かれる三次元空間中に初期値の候補となる候補点を予め用意しておき、この中から点Sの三次元座標(x、y、z)により近いものを初期値として選択することで収束解を得られやすくしている。
より具体的には、予め定められた原点を設定し、この原点からx軸、y軸、z軸方向に予め定められた間隔にて候補点を設定する。
図14は、設置される候補点の三次元位置を示した概念図である。
ここでは、原点Oからx軸、y軸、z軸方向に等間隔で候補点が設定されている。この点は、例えば、x軸、y軸、z軸方向に10mの範囲で、1m間隔で設定することができる。
そして本実施の形態では、このように設定された候補点に対する対面角度α、β、γを予め求めておく。そして候補点の三次元座標と対面角度α、β、γとの関係をLUT(Look up Table)として持っておく。本実施の形態では、このLUTは、LUT格納部234に格納されている。そして初期値選択部233が、このLUTを参照し、実際に導出された対面角度α、β、γの値と、このLUTに格納されている対面角度α、β、γの値を比較する。そしてそれぞれの対面角度α、β、γについて値の差が比較的小さいものを選択し、これに対応する三次元座標を初期値として選択する。
このように本実施の形態では、他者が置かれる三次元空間中に設定され初期値の候補となる候補点に対する対面角度と他者に対する対面角度を比較することで候補点の中から初期値を選択する。
また本実施の形態では、初期値を選択するのにさらに発話者と他者の距離を求め、この距離についても併せて利用する。
図15は、初期値選択部233についてさらに詳しく説明した図である。
図15に示すように初期値選択部233は、複数の装着者から取得した音声の音声信号に関する情報から音声の同調性を判別する同調性判別部233−1と、同調性判別部233−1により音声の同調性が存在すると判別されるとともに音声が自己発話であると識別された場合に、発話者に配されたマイクロフォンに取得された音声の音圧と他者に配されたマイクロフォンに取得された音声の音圧から発話者を基準とした他者との距離を導出する距離導出部233−2と、距離導出部233−2により導出された発話者と他者との距離を利用し、導出された対面角度α、β、γの値とLUTに格納されている対面角度α、β、γの値を比較することで初期値を選択する初期値決定部233−3とを備える。
また図16は、本実施形態における初期値選択部233の動作を示すフローチャートである。
以下、図15〜図16を使用して本実施形態の初期値選択部233の動作を説明する。
まず同調性判別部233−1において、複数の端末装置10から送られた音声の同調性が判別される(ステップ301)。
以下、音声の情報の同調性を判別する方法について説明する。
図17は、本実施形態の端末装置10をそれぞれ装着した複数の装着者が会話している状況を示す図である。図18は、図17の会話状況における各端末装置10A、10Bの発話情報の例を示す図である。
図17に示すように、端末装置10をそれぞれ装着した二人の装着者A、装着者Bが会話している場合を考える。このとき、装着者A、装着者Bの発話音声は、装着者Aの端末装置10Aと装着者Bの端末装置10Bの双方に捉えられる。
端末装置10Aおよび端末装置10Bからは、それぞれ独立に、発話情報がホスト装置20(図1参照)に送られる。このとき、端末装置10Aから取得した発話情報と、端末装置10Bから取得した発話情報とは、図18に示すように、発話時間の長さや発話者が切り替わったタイミング等の発話状況を示す情報は近似する。そこで、本適用例のホスト装置20は、端末装置10Aから取得した情報と端末装置10Bから取得した情報とを比較することにより、これらの情報が同じ発話状況を示していると判断し、装着者Aと装着者Bとが会話していることを認識する。即ち、装着者Aと装着者Bの発話状態の同調性が判断できる。ここで、発話状況を示す情報としては、少なくとも、上述した発話者ごとの個々の発話における発話時間の長さ、個々の発話の開始時刻と終了時刻、発話者が切り替わった時刻(タイミング)等のように、発話に関する時間情報が用いられる。なお、特定の会話に係る発話状況を判断するために、これらの発話に関する時間情報の一部のみを用いても良いし、他の情報を付加的に用いても良い。
複数の装着者の何れについても同調性がないと判断した場合(ステップ301でNo)、ステップ301に戻る。一方、複数の装着者の何れかについて同調性があると判断された場合(ステップ301でYes)、次に距離導出部233−2にて装着者Aと装着者Bとの距離が導出される(ステップ302)。
本実施形態では、装着者Aと装着者Bとの距離を導出するのに、音声の音圧の情報を使用する。
図17に戻り、装着者Aが発話しているとき、即ち装着者Aが発話者である場合(この場合、装着者Bは他者となる)に、装着者Aのマイクロフォン11Aaで取得される装着者A(発話者)の音声の音圧Lp1と、装着者B(他者)のマイクロフォン11Baで取得される装着者A(発話者)の音声の音圧Lp2を考える。そして装着者A(発話者)の口とマイクロフォン11Aaとの距離をr1、装着者A(発話者)の口とマイクロフォン11Baとの距離をr2とすると、次の(11)式が成立する。
Lp1−Lp2=20log(r2/r1) …(11)
このとき、Lp1、Lp2は、端末装置10から送信する情報の中に含まれ、そしてr1は、予めわかっているため、上記(11)式からr2を求めることができる。つまり装着者A(発話者)の口とマイクロフォン11Baとの距離r2は、装着者A(発話者)と装着者B(他者)との距離とみなすことができるため、この両者の距離を導出することができる。
なお(11)式のような数式により計算を行なう方法の他に、LUTを使用する方法でも両者の距離を導出することができる。つまりLp1、Lp2、r2のそれぞれの関係をLUTとしてまとめておき、このLUTを参照することでr2を求めることができる。
なお本実施の形態では、このとき取得した音声が装着者自身の発話音声であるか、装着者以外の他者の発話音声であるかの自他識別結果を使用する。つまり音声が装着者自身の発話音声(自己発話)であると識別された場合に、発話者を基準とした他者との距離を導出することを行なう。この自他識別結果を利用することで距離を導出する基準が明確となり、発話者と他者の間の距離をより正確に導出することができる。この自他識別結果を利用しない場合、マイクロフォンにより取得した音声が、どの者が発声したものであるかが不明確となり、距離の導出を正確に行なうことが困難となる。さらに本実施の形態では、マイクロフォンにより取得した音が、エアコンの音や工事の音などの雑音であった場合、どの端末装置10においても装着者自身の発話音声と識別されないため、これを雑音と判断し、排除することができる。この場合はもちろん距離の導出は行なわれない。
そして初期値決定部233−3では、このようにして導出された発話者と他者との距離を利用して、導出された対面角度α、β、γの値とLUTに格納されている対面角度α、β、γの値を比較することで初期値を選択する(ステップ303)。
具体的には、例えば、LUTに格納されている対面角度α、β、γの値を比較する。そしてそれぞれの対面角度α、β、γについて値の差が比較的小さいものをまずいくつか候補として選択する。そしてこの選択された候補の中から、上記のようにして導出された発話者と他者との距離が最も近いものを初期値として決定する。
上記方法により初期値が選択された後は、数値計算部235が、この初期値を用いて数値計算を行ない、(8)式〜(10)式の3元2次連立方程式を解く。そして得られた収束解が、他者の位置である点Sの三次元座標(x、y、z)である。本実施の形態では、数値計算の方法については、特に限定されることはなく、ニュートン法、二分法など一般的な方法が使用できる。
以上詳述した本実施の形態の音声解析システム1によれば、より簡易な構成で、他者の三次元位置を計測することができる。そして計算量が膨大になりにくいとともに、他者の三次元位置をより正確に計測することができる。
なお図17および図18で説明した例では、装着者Aおよび装着者Bの双方が、図2で説明したような端末装置10を使用していたが、双方の距離を導出するには、一方に装着者の口からの距離が異なる位置に配される複数のマイクロフォン11a、11cが配され、他方には、例えばマイクロフォンが1つのみという形態でも可能である。つまり口からの距離が異なる位置に配される複数のマイクロフォン11a、11cが配される端末装置10で、まずこの装着者自身の自己発話であるか否かを判断することができる。そのためこの端末装置10を使用する装着者を、他者との距離を導出する基準として定めることができる。そして他者との距離を導出するのに、他者が端末装置10を使用している必要はなく、他者に配されるマイクロフォンからの音圧の情報があればよい。即ち、他者に配されるマイクロフォンは1つのみでもかまわない。
また上述した例では、自他識別の判断を端末装置10で行なっていたが、これに限られるものではなく、ホスト装置20の方で行なってもよい。この形態における音声解析システム1としては、図1のものに対し、音声解析部15で行なっていた自他識別の機能を、例えば、ホスト装置20のデータ解析部23で行なう。そしてこの場合、データ解析部23は、マイクロフォン11a、11cにより取得された音声が装着者の発話音声か装着者以外の発話音声かを識別する自他識別部として機能する。
<プログラムの説明>
なお本実施の形態におけるホスト装置20が行なう処理は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することにより実現される。即ち、ホスト装置20に設けられた制御用コンピュータ内部の図示しないCPUが、ホスト装置20の各機能を実現するプログラムを 実行し、これらの各機能を実現させる。
よってホスト装置20が行なう処理は、コンピュータに、装着者に配され音声を取得するとともに装着者のうち少なくとも1人については装着者の口からの距離が異なる位置に複数配されるマイクロフォンから音声の音声信号に関する情報を受信する機能と、複数の装着者から取得した音声の音声信号に関する情報から音声の同調性を判別する機能と、音声の同調性が存在すると判別されるとともに装着者の口からの距離が異なる位置に配される複数のマイクロフォンにより取得された音声の音声信号の比較結果に基づき音声が自己発話であると識別された場合に、発話者に配されたマイクロフォンに取得された音声の音圧と他者に配されたマイクロフォンに取得された音声の音圧から発話者を基準とした他者との距離を導出する機能と、を実現させるプログラムとして捉えることもできる。
1…音声解析システム、10…端末装置、11a…第1マイクロフォン、11b…第2マイクロフォン、11c…第3マイクロフォン、15…音声解析部、16…データ送信部、20…ホスト装置、21データ受信部、23…データ解析部、30…装置本体、40…提げ紐、231…時間差導出部、232…対面角度導出部、233…初期値選択部、233−1…同調性判別部、233−2…距離導出部、233−3…初期値決定部

Claims (5)

  1. 装着者に配され音声を取得するとともに装着者のうち少なくとも1人については装着者の口からの距離が異なる位置に複数配される音声取得手段から音声の音声信号に関する情報を受信する音声情報受信部と、
    前記音声情報受信部により複数の装着者から取得した前記音声の音声信号に関する情報から音声の同調性を判別する同調性判別部と、
    前記同調性判別部により音声の同調性が存在すると判別されるとともに装着者の口からの距離が異なる位置に配される前記複数の音声取得手段によりそれぞれ取得された音声の音圧の比較結果に基づき音声が装着者自身の発話音声であると識別された場合に、発話者に配された前記音声取得手段に取得された音声の音圧と他者に配された当該音声取得手段に取得された音声の音圧から発話者を基準とした他者との距離を導出する距離導出部と、
    を備えることを特徴とする音声解析装置。
  2. 前記音声取得手段のうち装着者の口からの距離が互いに異なる2つの当該音声取得手段で取得される音声の音圧差に基づいて、当該音声取得手段により取得された音声が装着者の発話音声か装着者以外の発話音声かを識別する自他識別部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の音声解析装置。
  3. 前記音声取得手段に他者の音声が到達する時間差および当該音声取得手段が離間する距離から導出される装着者と他者の向き合う角度である対面角度から、他者の三次元位置を導出するための数値計算の初期値を選択する初期値選択手段と、
    前記初期値選択手段により選択された初期値を用いた数値計算により他者の三次元位置を導出する位置導出手段と、
    をさらに備え、
    前記初期値選択手段は、前記距離導出部により導出された発話者と他者との距離を利用して前記初期値を選択することを特徴とする請求項1または2に記載の音声解析装置。
  4. 装着者に配され音声を取得するとともに装着者のうち少なくとも1人については装着者の口からの距離が異なる位置に複数配される音声取得手段と、
    前記音声取得手段により取得された音声の音声信号に関する情報を送信する音声情報送信部と、
    前記音声情報送信部により送信された音声の音声信号に関する情報を受信する音声情報受信部と、
    前記音声情報受信部により複数の装着者から取得した前記音声の音声信号に関する情報から音声の同調性を判別する同調性判別部と、
    前記同調性判別部により音声の同調性が存在すると判別されるとともに装着者の口からの距離が異なる位置に配される前記複数の音声取得手段によりそれぞれ取得された音声の音圧の比較結果に基づき音声が装着者自身の発話音声であると識別された場合に、発話者に配された前記音声取得手段に取得された音声の音圧と他者に配された当該音声取得手段に取得された音声の音圧から発話者を基準とした他者との距離を導出する距離導出部と、
    を備えることを特徴とする音声解析システム。
  5. コンピュータに、
    装着者に配され音声を取得するとともに装着者のうち少なくとも1人については装着者の口からの距離が異なる位置に複数配される音声取得手段から音声の音声信号に関する情報を受信する機能と、
    複数の装着者から取得した前記音声の音声信号に関する情報から音声の同調性を判別する機能と、
    音声の同調性が存在すると判別されるとともに装着者の口からの距離が異なる位置に配される前記複数の音声取得手段によりそれぞれ取得された音声の音圧の比較結果に基づき音声が装着者自身の発話音声であると識別された場合に、発話者に配された前記音声取得手段に取得された音声の音圧と他者に配された当該音声取得手段に取得された音声の音圧から発話者を基準とした他者との距離を導出する機能と、
    を実現させるプログラム。
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