JP5946278B2 - 被加工体の熱加工方法 - Google Patents

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本発明は、導体や半導体を始めとした被加工体の内部を極めて簡易な方法で熱加工する上で好適な被加工体の熱加工方法に関するものである。
導体、半導体は、それぞれ一層又は多層の物質層が形成されており、これらの各層には、微視的な欠陥等を始めとした形状に依拠した不均一形状を有する場合もあれば、単一層内の濃度や化学組成等が微視的に偏る場合もある。
このような不均一形状や不均一濃度等を解消するためには、当該箇所を中心としてを局所的に加熱して溶融させる方法がある。しかしながら、かかる方法では、不均一形状又は不均一濃度等が材料の内部に形成されていた場合には、当該箇所をピンポイントに検出してこれを溶融させることができないという問題点があった。
T. Kawazoe、 K. Kobayashi、 S. Takubo、 and M. Ohtsu、 J. Chem. Phys.、 Vol.122、 No.2、January 2005、 pp.024715 1-5
なお、ナノオーダーの局所領域にスポットを当てて材料の物理的性質を改変する際に、近接場光を利用する方法も考えられる(例えば、非特許文献1参照。)。しかしながら、この近接場光は、あくまでナノオーダーもの局所領域においてこれを浸出させることができるものの、実際に材料自体を溶融させることができない。逆に材料の内部を溶融する手段は、多くの周知技術が存在するものの、実際にナノオーダーもの局所領域においてこれをピンポイントに溶融させることができる技術は従来において案出されていなかった。
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、ナノオーダーの局所領域において、特に材料の内部についてピンポイントに溶融することによる熱加工を行うことが可能な被加工体の熱加工方法を提供することにある。
本発明に係る被加工体の熱加工方法は、上述した課題を解決するために、順方向バイアス電圧を印加することにより半導体からなる被加工体に拡散電流を発生させ、上記発生された拡散電流により生じるジュール熱に基づいて上記被加工体の一部を溶融させてその表面形状又はドーパントの濃度分布を変化させることを繰り返すとともに、上記変化後の表面形状又はドーパントの濃度分布に基づいて、上記被加工体中を伝導する電子を放出させることにより発光させるとともに上記拡散電流を減少させて上記ジュール熱を低下させることにより、当該変化後の表面形状又はドーパントの濃度分布を固定させ、上記溶融させた被加工体の内部を熱加工することを特徴とする。
上述した構成からなる本発明によれば、順方向バイアス電圧を印加することにより導体又は半導体からなる被加工体に拡散電流を発生させ、発生された拡散電流により生じるジュール熱に基づいて上記被加工体の一部を溶融させてその形状、濃度分布、又は化学的組成の何れかを変化させることを繰り返し実行する。そして、変化後の形状、濃度分布、又は化学的組成に基づいて、上記被加工体中を伝導する電子を断熱過程又は非断熱過程の何れを介して放出させることにより発光させる。これにより、拡散電流を減少させてジュール熱を低下させることにより、当該変化後の形状、濃度分布、又は化学的組成を固定させることが可能となる。そして、このようなプロセスを通じて、ナノオーダーの局所領域において、特に材料の内部についてピンポイントに溶融することによる熱加工を行うことが可能となる。
本発明を適用した熱加工装置の構成図である。 n層とp層からなる半導体層の接合部のエネルギーバンド図である。 (a)は、ジュール熱発生前におけるn層とp層の接合部の微視的な形状の例を示す図であり、(b)は、ジュール熱を発生させた後におけるn層とp層の接合部の微視的な形状の例を示す図である。 非断熱過程を説明するための、原子同士の結合をバネで置き換えたモデルを示す図である。 n層とp層からなる半導体層の接合部に形成された反転分布について説明するための図である。 非断熱過程に基づく多段階誘導放出について説明するための図である。 非断熱過程を継続して生じさせた場合におけるメカニズムについて説明するための図である。 半導体層における電圧−電流特性を示す図である。 断熱過程に基づく電子の放出について説明するための図である。
以下、本発明を適用した被加工体の熱加工方法に適用される熱加工装置について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明を適用した熱加工装置10a、10bの構成図である。この熱加工装置10a、10bは、被加工体としての半導体1又は導体2と、この半導体1又は導体2に対して電圧を印加し続けることにより、当該半導体1又は導体2から光を発光させる電源41とを備え、更に回路のON/OFF制御を行うためのスイッチ42を備えている。
次に半導体1の構成について図面を参照しながら詳細に説明をする。因みに図1(a)は、熱加工装置10aの構成図であり、図1(b)は、熱加工装置10bの構成図であるが、先ずは前者の構成について詳細に説明をする。
半導体1は、N型半導体層(n層)13、n層13との間でpn接合を構成するP型半導体層(p層)14、n層13とp層14との間に形成される接合層35とを備えている。このn層13〜p層14までを半導体層30という。p層14には、電源41が接続されており、使用時には、p層14側が正電圧、n層13側が負電圧となるように順方向にバイアス電圧が負荷されることになる。
n層13は、いわゆるシリコン等の基板等で構成されるがこれに限定されるものではなく、他の間接型半導体であってもよい。ここで代表的な間接型無機化合物にはSi以外に,GaP,AlGaAs(混晶比に依存)、AlP、AlAs, Ge, SiC, PbS, PbTe, TIO2, GaS, AlSb,, C(ダイヤモンド),BNなどがあり、本手法はそのすべてに応用可能である。
p層14は、例えばホウ素等をp型ドーパントとして高密度、高エネルギーでインプラントしたものとして構成される。このp層14は、例えば700KeV、表面から500nm付近においてそのドーピング密度は1019とされていてもよい。
このような半導体1を作製する際には、p層及びn層に順方向バイアス電圧を印加する。その結果、以下のメカニズムに基づいて、本発明所期の半導体1を作製することが可能となる。
図2は、n層13〜p層14のエネルギーバンド図を示している。順方向バイアス電圧が負荷されると、p層14中の正孔がn層13側へと移動し、n層13中の電子がp層14側へと移動していく。その結果、接合層35は空乏化することなく互いの電子と正孔が打ち消しあうことで拡散電流が流れる。その結果、順方向バイアス電圧が高い場合にこの電子の移動に伴うジュール熱が発生する。このジュール熱の特に大きな発生部位は、大きな電位差を生じる接合層35やn層13やp層14の表面等である。また、この順方向バイアス電圧をより高くしていくことにより、かかる接合層35においてアバランシェ降伏を起こし、一気に電流が流れていくことになる。その結果、ジュール熱による発熱が、かかるアバランシェ降伏により促進されることになる。
このジュール熱が発生する結果、接合層35やn層13やp層14における流動性が増加し、その表面形状及び/又はドーパントの分布が変化することになる。上述した順方向バイアス電圧を負荷し続けることにより、かかる表面形状及び/又はドーパントの分布変化が継続して生じることになる。
図3(a)は、かかるジュール熱発生前におけるn層13とp層14の接合層35の微視的な形状の例である。n層13とp層14の接合界面には、ナノオーダーの微細な凹凸が形成されている。
図3(b)は、ジュール熱を発生させた後におけるn層13とp層14の接合層35の微視的な形状の例である。ジュール熱が発生することにより、このn層13とp層14の接合層35の流動性が増加する結果、n層13やp層14等の表面形状やドーパントの分布がランダムに変化することになる。かかる表面形状やドーパントの分布の変化が繰り返して起こる結果、例えば、ある特有の微細形状Aがこのn層13とp層14との界面において形成される。この微細形状Aは、入射された光に基づいて近接場光が発生する上でより適した形状である。この微細形状Aを形成させるための条件は確定されるものではなく、ジュール熱の発生に伴うn層13やp層14等の表面形状やドーパントのランダムな変化の結果、ある確率の下で偶然に形成されるものである。なお、この近接場光は、n層13とp層14との界面に発生する場合に限定されるものではなく、半導体1を構成する何れか1以上の層の表面形状及び/又はドーパント分布を変化させるものであればよい。
このような微細形状Aが形成されたときに、上述した順方向バイアス電圧を更に負荷し続けると、当該微細形状Aの主として角部において近接場光が発生する。ここでいう、近接場光は、仮想的な電磁場の意味も含まれていることから、仮想的な電磁場が形成されていることが近接場光の発生を意味するものとして解される。この近接場光の発生は、特に誘導光が無い状態の下であっても、順方向電流注入時には注入された電荷の自然放出およびそれを元とした誘導放出によって発生することになる。この近接場光が発生することにより以下に説明する非断熱過程が生じる。ちなみに、この近接場光の発生位置は、当該微細形状Aに対応したn層13とp層14の界面のみならず、他の箇所で発生することも当然起こりえる。
この非断熱過程とは、図4に示すように、原子同士の結合をバネで置き換えたモデルで考えることができる。一般に伝搬光の波長は分子の寸法に比べると遥かに大きいため、分子レベルでは空間的には一様な電場とみなせる。その結果、図4(a)に示すように、バネで隣り合う電子は同振幅、同位相で振動させられる。感光性樹脂膜12の原子核は重いため、この電子の振動には追従できず、伝搬光では分子振動は極めて起こりにくい。このように伝搬光では、分子振動が電子の励起過程に関わることを無視することができるため、この過程を断熱過程という(非特許文献1参照。)。
一方、近接場光の空間的な電場勾配は非常に急峻に低下する。このため近接場光では隣り合う電子に異なる振動を与えることになり、図4(b)に示すように、この異なる電子の振動により重い原子核も振動させられる。近接場光が分子振動を起こすことは、エネルギーが分子振動の形態を取ることに相当するため、近接場光では、振動準位を介した励起過程(非断熱過程)が可能となる。このように原子核の振動準位を介した励起過程は、通常の光学応答である断熱過程に対し、原子核が応答し動くため、非断熱過程という。
また、上述した順方向バイアス電圧を印加させ続けることにより、伝導帯における電子密度n1が、下位準位にある正孔密度n2と比較して圧倒的に高くなる。その結果、伝導帯と下位準位との間で、図5に示すように、かかる電子密度の差異に基づく反転分布が接合層35に形成される。次に図6(a)に示すように、この形成された反転分布により、伝導帯中の電子を近接場光による非断熱過程に基づいて、伝導帯中の電子を、バンドギャップの中間に位置する振動準位に仮想的に遷移させることができる。この電子が非断熱過程に基づいて振動準位に遷移できたのは、その箇所において近接場光が発生していたため実現できたものである。この近接場光は、ジュール熱による流動によってある確率の下で生じた微細形状A(又はそのドーパントの変化)によって生じたものである。振動準位に遷移した電子は、この近接場光によって仮想的に生じた仮想場を廻り、その後振動準位から伝導帯へと戻ることになる。この伝導帯に戻った電子は、拡散電流によるジュール熱に寄与する。
このように近接場光が単に発生した段階では、伝導帯中の電子を振動準位に仮想的に遷移させて再度伝導帯に戻ることを繰り返すこととなる。伝導帯に戻った電子は、ジュール熱に寄与することとなり、ジュール熱は下がることなく表面形状及び/又はドーパントの分布変化が継続して生じることになる。
またジュール熱による表面形状及び/又はドーパントの分布変化が生じた結果、更に近接場光の発生態様が変化した場合には、ある確率の下で図6(b)に示すように、伝導帯中の電子を近接場光による非断熱過程に基づいて、伝導帯中の電子を、バンドギャップの中間に位置する振動準位に仮想的に遷移させてそこから電子を放出させることによる発光させる。また、かかる近接場光に基づいて伝導帯中の電子を複数段階で誘導放出させることにより発光させる。
その結果、この半導体1から係る電子の放出による発光を実現することが可能となる。当該微細形状Aにおいては引き続き近接場光が発生するため、非断熱過程を生じさせることが可能となる。この非断熱過程による誘導放出においては、振動準位を介し電子を放出させる。このとき、バンドギャップ幅に相当する吸収端波長よりも長波長である波長の光でも伝導帯中の電子を多段階で遷移させて放出させることができ、その結果伝導体中の電子を減少させることが可能となる。
このような非断熱過程による多段階の誘導放出が生じることにより、伝導帯における電子密度n1が減少する。その結果、かかる近接場光が発生する微細形状Aについては、n層13へと移動する電子の量は減少することになり、拡散電流が低下し、当該微細形状Aについてはジュール熱が低下することになる。即ち、誘導放出は、電子や正孔のエネルギーを奪うものとなり、接合層35やn層13やp層14の流動性が低下する。その結果、この微細形状Aについては、表面形状及び/又はドーパントの分布の変化が抑制されることになる。微細形状Aはそのまま変化することなく固定されることになる。
また、図6(b)に示すように発光が生じた場合、その発光に基づいて、表面形状及び/又はドーパントの分布による近接場光が発生しやすくなる。その発生した近接場光により、さらに各部における非断熱過程が生じやすくなり、微細構造Aの固定化並びに発光が促進されることとなる。
また、上述の如き順方向バイアス電圧を印加し続けることにより、上述したメカニズムが継続的に生じる。図7(a)に示すように、微細形状Aは、そのまま近接場光が発生し続けて、上述した非断熱過程による誘導放出が継続して生じる結果、温度が低下し、かかる形状の状態でそのまま固定され続ける。また、微細形状A以外の箇所は、近接場光が発生しないため冷却されることなく、そのままジュール熱が発生することにより、このn層13とp層14の接合層35の流動性が増加する結果、n層13やp層14等の表面形状やドーパントの分布がランダムに変化する。このランダムな変化の結果、図7(a)に示すように微細形状Aとほぼ同一形状の微細形状Bが形成される場合もある。かかる場合に光を入射させると、当該微細形状Bにおいて近接場光が発生することになる。そして、この微細形状Bについても同様に非断熱過程による誘導放出が生じる結果、温度が低下し、かかる形状の状態でそのまま固定され続ける。即ち、半導体1において近接場光が好適に発生する領域が微細形状Aのみならず微細形状Bの分も増加したことになる。
かかる処理が繰り返し実行されると、理想的には図7(b)に示すように、n層13とp層14との界面において微細形状Aと同一の形状が数多く形成されることになる。これは、順方向バイアス電圧が印加された場合に近接場光が好適に発生する微細形状Aと同一の形状が数多く作り出された半導体1として構成することが可能となる。その結果、発光効率を飛躍的に向上させることが可能となる。
なお、この微細形状Aは、あくまで表面形状に依拠したものであるが、これに限定されるものではなく、ジュール熱の発生に伴うn層13やp層14等の材料の濃度分布の変化の結果、即ちドーパントの変化の結果、表面形状が変化していなくても、近接場光が好適に発生する条件になる場合がある。かかるn層13やp層14等のドーパントが近接場光が好適に発生可能なように変化した場合においても、上述した微細形状Aの形成と同様な効果が得られる。即ち、拡散電流を減少させてジュール熱を低下させることにより、ドーパント分布を固定させることを繰り返し実行することになる。
なお、ドーパントの分布以外には、例えば化学的組成を変化させ、その後拡散電流を減少させてジュール熱を低下させることによりこれを固定するようにしてもよい。
図8は、本発明を適用した半導体1における電圧−電流特性を示している。この電流特性においてバイアス電圧を徐々に増加させて100V超に至るまでは殆ど電流が流れないが、100Vを超えると極めて良好な微分負性抵抗の特性が表れていることが示されている。また順方向バイアス電圧によるジュール熱発生は通常の抵抗特性を示すPN接合においても発生するので、負性抵抗の出現は本手法にとって必須では無いが、この実施例ではドーパントの不均一が電気素子としても機能するような分布となったので優れた整流素子としても機能する可能性を示唆するものであり、図8は、その電気特性の傾向を示したものである。
上述したように、本発明では、順方向バイアス電圧を印加することによりp層14とn層13の接合部に拡散電流を発生させ、発生された拡散電流により生じるジュール熱に基づいて半導体1を構成する何れか1以上の層の表面形状及び/又はドーパント分布を変化させることを繰り返し実行する。
そして、変化後の表面形状及び/又はドーパント分布に基づいて近接場光が発生した箇所では、伝導帯中の電子を非断熱過程に基づいて複数段階で誘導放出させることにより、拡散電流を減少させてジュール熱を低下させて、表面形状及び/又はドーパント分布を固定させる。
また変化後の表面形状及び/又はドーパント分布に基づいて近接場光が発生しない箇所では、或いは近接場光が発生しても単に仮想場ができているだけに発光させる上で好適な条件を満たさない箇所においては、拡散電流を発生させ続けて当該表面形状及び/又は当該ドーパント分布を変化させることを、近接場光による非断熱過程で発光するまで繰り返す。
これにより、本発明では、接合層35のバンドギャップ幅に対応した吸収端波長より長波長である光を放出させることができる。仮に、n層13がシリコンであれば、そのシリコンによる発光波長としての近赤外域の光をも発光させることが可能となる。
上述した実施の形態においては、あくまで発生させた近接場光に基づいて非断熱過程により光を発光させ、これによりジュール熱を低下させることを利用したものであるが、これに限定されるものではなく、通常の断熱過程による光の放出を利用するものであってもよい。
図9は、断熱過程による光を放出させる場合について説明するためのエネルギーバンド図である。図9(a)に示すように、当初は、順方向バイアス電圧を印加し続けることによるジュール熱が発生することにより、このn層13とp層14の接合層35の流動性が増加する結果、接合層35のみならずn層13やp層14等の表面形状やドーパントの分布がランダムに変化する。しかしながら、ある特有の形状やドーパントの分布が形成されたときに図9(b)に示すように、断熱過程により電子が一段階過程で放出され、その結果、光が発光することとなる。このように断熱過程により光が発光することとなれば、同様に拡散電流が減少することとなり、その結果、ある特有の形状やドーパントの分布の領域が冷却されて固定される。その固定された形状ないしドーパントの分布が、その断熱過程により光を発光させる上で好適なものとなる。このため、このようなプロセスを繰り返し実行させることにより、断熱過程により光を発光させることが可能な箇所が増加し、最終的にはこの接合層35において当該箇所を至るところに形成させることが可能となる。そして、このようなプロセスを通じて、ナノオーダーの局所領域において、特に材料の内部についてピンポイントに溶融することによる熱加工を行うことが可能となる。
ちなみに、断熱過程においても、ドーパントの分布以外には、例えば化学的組成を変化させ、その後拡散電流を減少させてジュール熱を低下させることによりこれを固定するようにしてもよいことは勿論である。
このように、本発明では、順方向バイアス電圧を印加することにより半導体1からなる被加工体に拡散電流を発生させ、発生された拡散電流により生じるジュール熱に基づいて上記被加工体の一部を溶融させてその形状、濃度分布、又は化学的組成の何れかを変化させることを繰り返し実行する。そして、変化後の形状、濃度分布、又は化学的組成に基づいて、上記被加工体中を伝導する電子を放出させることにより発光させる。この発光の過程では、断熱過程又は非断熱過程の何れを介するものであってもよい。これにより、拡散電流を減少させてジュール熱を低下させることにより、当該変化後の形状、濃度分布、又は化学的組成を固定させることが可能となる。そして、このようなプロセスを通じて、ナノオーダーの局所領域において、特に材料の内部についてピンポイントに溶融することによる熱加工を行うことが可能となる。
次に、図1(b)に示す被加工体を導体2とした熱加工装置10bの構成について説明をする。
導体2は、例えば、鉄等、あらゆる導体を含むものである。また、電源41と、スイッチ42の構成は図1(a)と同様であるため、同一の符号を付すことにより以下での説明を省略する。
このような導体2に対して同様に順方向バイアス電圧を負荷すると、導体2に電流が流れる。そして、この順方向バイアス電圧の大きさを大きくするにつれて、導体2に流れる電流の量が勢い増加し、その結果、ジュール熱が発生する。そして、この発生したジュール熱によって、導体2中の表面形状やドーパントの分布がランダムに変化する。しかしながら、ある特有の形状やドーパントの分布が形成されたときに、非断熱過程、又は断熱過程により電子が一段階過程で放出され、その結果、光が発光することとなる。この非断熱過程では、近接場光を利用することは上述したとおりであり、また断熱過程では上述したように近接場光を利用することなく光を放出させる。
この断熱過程、又は非断熱過程の何れかにより光が発光することとなれば、同様に拡散電流が減少することとなり、その結果、ある特有の形状やドーパントの分布の領域が冷却されて固定される。その固定された形状ないしドーパントの分布が、その断熱過程、又は非断熱過程により光を発光させる上で好適なものとなる。このため、このようなプロセスを繰り返し実行させることにより、非断熱過程、又は断熱過程により光を発光させることが可能な箇所が増加し、当該変化後の形状、濃度分布、又は化学的組成を固定させることが可能となる。そして、このようなプロセスを通じて、ナノオーダーの局所領域において、特に材料の内部についてピンポイントに溶融することによる熱加工を行うことが可能となる。
なお、本発明においては、順方向バイアス電圧の印加時において、少なくとも溶融箇所に対して外部から光を照射するようにしてもよい。上述した放出される電子は、この照射した光によって、増倍されることとなり、その結果、上述した熱加工の現象を誘発させ、助長させることが可能となるためである。
1 半導体
2 導体
13 n層
14 p層
35 接合部
41 電源
42 スイッチ

Claims (4)

  1. 順方向バイアス電圧を印加することにより半導体からなる被加工体に拡散電流を発生させ、上記発生された拡散電流により生じるジュール熱に基づいて上記被加工体の一部を溶融させてその表面形状又はドーパントの濃度分布を変化させることを繰り返すとともに、上記変化後の表面形状又はドーパントの濃度分布に基づいて、上記被加工体中を伝導する電子を放出させることにより発光させるとともに上記拡散電流を減少させて上記ジュール熱を低下させることにより、当該変化後の表面形状又はドーパントの濃度分布を固定させ、
    上記溶融させた被加工体の内部を熱加工すること
    を特徴とする被加工体の熱加工方法。
  2. 上記変化後の表面形状又はドーパントの濃度分布に基づいて近接場光を発生させ、上記放出すべき電子を非断熱過程に基づいて複数段階で誘導放出させること
    を特徴とする請求項1記載の被加工体の熱加工方法。
  3. 上記順方向バイアス電圧の印加時において、少なくとも上記溶融箇所に対して外部から光を照射すること
    を特徴とする請求項1又は2記載の被加工体の熱加工方法。
  4. 順方向バイアス電圧を印加することにより、半導体からなる被加工体におけるp層とn層の接合部に拡散電流を発生させ、上記発生された拡散電流により生じるジュール熱に基づいて何れか1以上の上記層の表面形状又はドーパントの濃度分布を変化させることを繰り返すとともに、上記順方向バイアス電圧により伝導帯と価電子帯に反転分布を生じさせ、
    上記反転分布を形成している上記伝導帯中の電子を放出させることにより発光させること
    を特徴とする請求項1〜3のうち何れか1項記載の被加工体の熱加工方法。
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