以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
本発明を適用する無線中継システムの一例として、送電線監視システムの概要図を図1に示す。この送電線監視システムは、送電線51を架設(支持)する複数の鉄塔50にそれぞれ配置された複数の無線通信装置1を備えている。各無線通信装置1は、通信範囲が広くなるように、見通し距離が長くなる鉄塔50の頂部付近に固定設置されている。この複数の無線通信装置1は、送電線51(図では1本で例示)の経路に沿うように、一例としてツリー型(木型)の連絡経路(ネットワーク経路)を形成している。
無線通信装置1は、それぞれの役割に応じて、親局、末端局、中継局、分岐局、分岐補助局となっている。
親局となる無線通信装置1は、携帯電話回線、固定電話回線、インターネット回線、又は光ケーブル回線などの外部通信回線に接続可能になっていて、この送電線監視システム外の上位ホスト局(不図示)と通信を行う。連絡経路は、この親局を基準にツリー型に形成する。同図では、親局の右側にツリー型の連絡経路が形成されているが、さらに左側にもツリー型の連絡経路が形成されていてもよい。連絡経路は、分岐の無い一列型であってもよい。親局は、連絡経路内に少なくとも1つ配置するが、複数配置してもよい。又、一つの鉄塔50の根元に親局を配置し、その鉄塔50の頂部に中継局等の他の局を配置してもよい。親局は、末端局への定期通信の発信元又は末端局からの定期通信の宛先となる。又、親局は、末端局からの定期通信、及び各局で発生したイベント送信を受信した場合、必要に応じて上位ホスト局に通知する。又、親局は、上位ホスト局から各局へ指示があった場合、データ(情報)を指定の局宛てに送信する。
末端局となる無線通信装置1は、連絡経路の端に配置されていて、定期通信の発信元になる。又、末端局は、親局からの定期通信については終端となり、受信した定期通信データを破棄する。又、末端局は、それ以外のデータを受信したときは、自局宛てでなければ破棄する。
中継局となる無線通信装置1は、受信したデータを連絡経路の反対側に送信する。つまり、親局側から送られたデータを末端局側に中継し、末端局側から送られたデータを親局側に中継する。
分岐局となる無線通信装置1は、連絡経路の分岐点に配置されていて、親局側からのデータを分岐して、分岐先の各末端局側に中継する。分岐局は、末端局側から送られたデータを、分岐せずに親局方向に中継する。
分岐補助局となる無線通信装置1は、分岐前の連絡経路(分岐局よりも親局側)の、分岐局の一つ隣りに配置されており、通常は中継局として動作するが、分岐局への中継を失敗したときに分岐局の肩代わりをして、データを各々の分岐先に中継する。
図2に無線通信装置1のブロック図を示す。
無線通信装置1は、CPU(中央演算処理装置)2、無線部3、標準電波受信機4、RTC(リアルタイムクロック)5、内部メモリ6、地絡検出器7、地絡表示器8、携帯電話モジュール9、外部アナログ信号入力端子12、外部接点信号入力端子13、及び電源部30などを備えている。
CPU2は、内部メモリ6に記憶されたプログラムにしたがって動作して、無線通信装置1を統括的に制御するものである。CPU2は、主に無線通信の制御を行う無線通信制御部、及び電源部30の監視を行う電源監視部として機能する。親局、分岐補助局、分岐局、中継局、及び末端局となる各無線通信装置1のプログラムは、皆共通であり、後述する転送テーブルの内容で自局が何れの局か判別して動作するようになっている。
無線部3は、一例として、標準規格ARIB STD-T66に準拠した、データ通信が可能な2.4GHz帯の小電力無線である。小電力無線は、使用するために免許が不要であるので好ましく用いることができる。無線部3は、変調器21、復調器22、送信用高周波回路23、受信用高周波回路24、受信電界強度測定回路24a、高周波スイッチ25、及びアンテナ26などを備えている。無線部3は、CPU2から出力される送信データを、変調器21が例えばFSK(Frequency-shift keying)変調し、それを送信用高周波回路23が増幅及びフィルタリングしてアンテナ26から無線送信する。送信周波数は、2400MHz以上2483.5MHz以下の所定の周波数であり、送信出力は10mWである。又、回線速度は一例として125kbpsである。アンテナ26は、一例として基板上に1/2波長アンテナ(利得2.14dBi)が形成されたものを用いる。アンテナ26として、外部アンテナを接続して用いてもよい。無線部3は、アンテナ26から入力される無線信号を受信用高周波回路24が中間周波数に直交復調し、それを復調器22がFSK復調して、受信データをCPU2に出力する。高周波スイッチ25など無線部3の送受信は、CPU2によって切り換えられて半二重通信が可能になっている。又、受信電界強度測定回路24aは、受信電界強度(キャリアレベル)を測定し、CPU2に出力する。このような無線部3は、市販されている小電力無線用のモジュールやICなど、公知の種々のものを用いることができる。無線部3は、CPU2の制御により、例えば電源をオン/オフされたり、無線部3に用いたモジュールやICを動作モード/動作停止モード(省電力モード)に制御されたりすることで、送受信を行うウェークアップ期間と送受信を行わないスリープ期間とを交互に繰り返す間欠動作が可能になっている。なお、CPU2自体も、ウェークアップ期間とスリープ期間とに連動するように、消費電力の多い通常動作モードと小電力モードで動作するようにしてもよい。
この2.4GHz帯の小電力無線(無線部3)でデータ通信可能な距離を測定したところ、屋外見通しでアンテナ高さ10m時に、少なくとも1200m、最大2000m程度の距離で通信が可能であった。回線速度を遅くすると、通信可能な距離をさらに長くすることができる。例えば回線速度を1/nにすると感度が√(n)倍上がる。無線通信装置1が設置される鉄塔50の間隔は、一律ではなく場所や鉄塔種類にもよるが、概ね50m〜500m程度の間隔になっている。したがって、小電力無線のデータ通信可能な距離内に、複数の鉄塔が存在する場合が多い。例えば、鉄塔間距離を300m、データ通信可能距離を1200mとしたときに、無線通信装置1は、1〜4本先の鉄塔に配置された複数の他の無線通信装置1とデータ通信が可能である。このように通信範囲がオーバーリーチするように無線通信装置1が配置される。
なお、免許が不要な無線機として、400MHz帯、900MHz帯、1200MHz帯を使用する特定小電力無線がある。このような特定小電力無線を本発明に用いてもよいが、2.4GHz帯の小電力無線を用いると、周波数が高いため回路素子やアンテナなどを小型化でき、ひいては装置全体を小型化することができるので好ましい。又、必要性に応じて、送受周波数や送信出力などが異なる、小電力無線や特定小電力無線以外の他の規格の無線機を用いてもよい。
標準電波受信機4は、長波用のバーアンテナ28によって受信される標準電波を復調して、標準電波に含まれる時刻情報をCPU2に出力する。標準電波受信機4は、市販されている標準電波受信用のモジュールやICなど、公知のものを使用することができる。標準電波とは、正確な時刻情報と正確な周波数情報を含む電波放送であり、わが国では独立行政法人情報通信研究機構が40kHz及び60kHzで運用を行っている。標準電波には、時刻情報として、時、分、通算日、年などの情報が含まれている。
RTC5は、時計であり、年、月、日、時、分、秒の時刻をCPU2に出力する。又、RTC5は、CPU2に制御されて時計の時刻を更新設定される。
内部メモリ6は、例えばEEPROMなどの書き換え可能な不揮発性メモリ、CPU2の動作用のプログラムを記憶するフラッシュROMや、CPU2の作業用エリアとなるRAMなどで構成されている。書き換え可能な不揮発性メモリは、CPU2に制御されて後述する転送テーブルや無線通信周波数、再送回数などの各種設定情報を記憶する。
地絡検出器7は、本発明における検出器の一例であって、鉄塔(不図示)に取り付けられて使用され、検出対象現象として送電故障の一例である地絡を検出したときに検出情報を出力する。地絡検出器7は、フォトカプラで電気的に絶縁して検出情報の受け渡しをする地絡検出器用インタフェース11aを介して、CPU2に接続されている。なお、地絡検出器7と共に、又は地絡検出器7に換えて、地絡以外の他の送電故障を検出する他の検出器を備えてもよい。検出器の検出する検出対象現象は、例えば落雷による閃絡を検出してもよい。閃絡を検出する場合、閃絡検出器を用いる。
地絡表示器(表示器)8は、検出器7が検出対象現象を検出(この場合、地絡を検出)したときに、例えば、目立つ色の布製の吹き流しを外部に放出したり、色を変色させたりするように外観を変えることで、巡回者等が目視で地絡の発生した鉄塔を発見可能にするものである。地絡表示器8は、電気的に絶縁して表示開始用の信号の受け渡しをしたり、作動用電力の受け渡しをしたりする地絡表示器用インタフェース11bを介して、CPU2に接続されている。
携帯電話モジュール9は、携帯電話網と接続が可能なものであり、親局となる無線通信装置1にだけ配置される。携帯電話モジュール9は、携帯電話用インタフェース11cを介して、シリアル通信でCPU2と相互に通信して、CPU2に動作を制御される。これにより、親局は、携帯電話網に接続して例えば上位ホスト局とデータ通信が可能になっている。
外部アナログ信号入力端子12は、一例として4つのアナログ信号の入力が可能になっており、検出対象現象を検出したときに検出信号としてアナログ信号を出力する検出器が接続可能になっている。外部アナログ信号入力端子12から入力された信号は、A/D変換器12aがデジタル変換して、CPU2に入力する。外部接点信号入力端子13は、一例として3つの接点信号の入力が可能になっており、検出信号としてハイレベル/ローレベル(又はオープン/クローズ)の接点信号を出力する検出器が接続可能になっている。これら、入力端子12,13に、温度センサ、湿度センサ、積雪センサ、雷撃電流センサなどを検出器として接続してもよい。
電源部30は、太陽電池31、リチウムイオンキャパシタ32、充電回路33、レギュレータ34、過放電保護回路35、A/D変換器36a,36bを備え、無線通信装置1の各部に動作用の電力を供給する。太陽電池31の発電した電力は、充電回路33によってリチウムイオンキャパシタ32に蓄電されると共に、レギュレータ34により動作用電圧に安定化されて各部に供給される。リチウムイオンキャパシタ32(蓄電体の一例)は、満充電時に日照なしで少なくとも4日間、より望ましくは8日間、無線通信装置1を動作させることができる電力容量であることが好ましい。又、太陽電池31やリチウムイオンキャパシタ32を必要性に応じて増設できるようにすることが好ましい。又、リチウムイオンキャパシタ32は、過放電に対して弱いので、同図に示すように、電圧低下したときに、CPU2に制御されて出力を遮断する過放電保護回路35を介して電力を出力させることが好ましい。太陽電池31の発電電圧は、A/D変換器36a(検出器の他の一例)によりアナログ/デジタル変換されてCPU2に入力されている。又、リチウムイオンキャパシタ32の電圧は、A/D変換器36b(検出器の他の一例)によりアナログ/デジタル変換されてCPU2に入力されている。
このように、太陽電池31を用いると、外部から無給電で無線通信装置1を動作させることができるので、交通不便な設置場所も多く、さらに鉄塔の頂部という高所に設置される装置のメンテナンスが簡便になるので好ましい。又、リチウムイオンキャパシタ32を用いると、電気二重層コンデンサと比べて、エネルギー密度が高く、静電容量が大きいため、装置を小型化、軽量化しつつ動作可能期間を長くすることができるので好ましい。なお、蓄電する電力容量、重量、形状の大きさなどが許容できる場合には、電気二重層コンデンサや、リチウムイオン2次電池、ニッケルカドミウム2次電池、鉛蓄電池といった2次電池など公知の種々の蓄電体を用いてもよい。又、外部電源を使用可能なときには、太陽電池31やリチウムイオンキャパシタ32を備えなくてもよい。
この送電線監視システムの情報の連絡経路を、図3及び図4に示す。
各々の無線通信装置1には、同図にIDで示すように、無線通信装置1を個別に識別可能な識別番号(ID番号)が付与されている。この識別番号が無線通信装置1のアドレスとして使用されることで、無線通信装置1と他の無線通信装置1とが1対1で無線通信(選択呼出し)することが可能になっている。なお、以下において各無線通信装置1をその局種及び識別番号(ID番号)で呼ぶこともある。
図3は、親局ID1から末端局ID14,ID24,ID34に向かう連絡経路を示し、図4は、末端局ID14,ID24,ID34から親局ID1に向かう連絡経路を示す。図3の連絡方向では、情報は3分岐されて中継されるが、図4の連絡方向では、情報は分岐されずに親局側に向かって中継される。
各無線通信装置1には、自局の位置から連絡経路に沿って順に並ぶ順番に対応づけて、通信可能な複数の他の該無線通信装置1の識別番号を、転送テーブルとして内部メモリ6(図2参照)に予め記録しておく。この転送テーブルの記録を行うために、最初に、設置者が無線通信装置1と他の無線通信装置1とデータ通信を行わせ、所定の電界強度以上で互いが通信できる、及び/又は所定の符号誤り率以下で互いが通信できる他の無線通信装置1の識別番号を、自局から近い順に確認する。通信ができなくなったときには、それよりも先の無線通信装置1は通信不能であるとして確認しない。このとき連絡経路に沿って最大でも所定の複数台先(例えば4台先)まで離れた他の無線通信装置1と通信の可否を確認するようにして、記録する複数台数の最大値を規定してもよい。なお、隣接する無線通信装置1を1台先、その次に隣接する無線通信装置1を2台先というように数える。複数台数先の無線通信装置1とは、2台以上先の無線通信装置1のことをいう。
次に、設置者は、無線通信装置1に対して、保守・設定用の無線通信装置(図示せず)から記録用のコマンドを付して記録すべき転送テーブルを無線送信する。これにより、この無線通信を受信した無線通信装置1のCPU2(図2参照)が自局宛ての転送テーブルを内部メモリ6(図2参照)に記録する。なお、無線通信装置1に接続した設定用のコンピュータ(図1に不図示)を操作して転送テーブルを記録するようにしてもよい。
なお、上記のように、通信可能となった他の無線通信装置1の識別番号を転送テーブルに記録することが好ましいが、通信可能となる他の無線通信装置1を確認せずに、他の無線通信装置1の識別番号を、一律に所定の複数台数先(例えば4台先)まで、全て転送テーブルに記録してもよい。この場合、後述する検出情報の飛越通信の際に、データ中継に掛かる時間が長くなる場合がある。
転送テーブルの例を表1〜表6に示す。転送テーブル中の「右登録」には、図3の連絡経路により自局が送信する方向で通信可能な他の無線通信装置1の識別番号を順番に登録し、「左登録」には、図4の連絡経路により自局が送信する方向で通信可能な他の無線通信装置1の識別番号を順番に登録する。ここでは、記録させる複数台数先の最大値を4台に規定した例を示している。基本的に、無線通信装置1は、転送テーブルに基づいて、自局の「右登録」側から来た情報を「左登録」側に中継し、自局の「左登録」側から来た情報を「右登録」側に中継する。又、この転送テーブルの登録内容から、無線通信装置1(CPU2)は、自局が親局、末端局、中継局、分岐局、分岐補助局のいずれであるか判断する。
表1は、図3,4に示す親局ID1に登録された転送テーブルである。「右登録」には、自局よりも末端局側方向(図の右側方向)の1台先(「+1」欄)に、中継局ID2の識別番号が記録され、2台先(「+2」欄)に分岐補助局ID3の識別番号が記録され、3台先(「+3」欄)に分岐局ID10の識別番号が記録されている。4台先(「+4」欄)からは、分岐しているので、分岐先の各系統の中継局ID11,ID21,ID31の識別番号が記録されている。親局ID1よりも左側には連絡経路が無いので、「左登録」に何も記録されていない。又、「自局ID」欄には、自局の識別番号[ID1]が記録されている。さらに、これらの登録された識別番号の中に親局があるときは「親局ID」欄に親局の識別番号が記録されている。この場合、自局が親局であるので、「親局ID」欄に自局の識別番号[ID1]が記録されている。無線通信装置1は、自局IDと親局IDとが一致している場合、自局が親局であると認識する。なお、親局は、分岐局、分岐補助局、中継局、末端局の条件にも当て嵌まるときは、それらとしても機能する。
表2は、分岐局ID10に登録された転送テーブルの例である。分岐局から末端局側に向かい連絡経路が3系統に分岐しているので、「右登録」には、3系統分(3枝分)の識別番号が、各系統に対応するように行を分けて記録されている。「左登録」には、自局より親局側に1台先の(「+1」欄)に分岐補助局の[ID3]が記録され、2台先(「+2」欄)に中継局の[ID2]が記録され、3台先(「+3」欄)に親局の[ID1]が記録されている。4台先(「+4」欄)の連絡経路は存在しないので空欄である。「自局ID」欄には、自局の識別番号[ID10]が記録されている。又、これらの登録された識別番号の中に親局ID1があるので、「親局ID」欄に[ID1]が記録されている。無線通信装置1(CPU2)は、「右登録」(「左登録」)の「+1」欄に複数の識別番号が記録されているときに、自局が分岐局であると認識する。
表3は、分岐補助局ID3に登録された転送テーブルの例である。無線通信装置1は、「右登録」(「左登録」)の「+2」欄に複数の識別番号が記録され、それらが「+1」欄の共通の識別番号から分岐しているとき(「+1」欄に一つのIDだけが記録されているとき)は、自局が分岐補助局であると認識する。つまり分岐前側(親局側)で、分岐局の一つ隣りの無線通信装置1が分岐補助局になる。
表4は、末端局ID14に登録された転送テーブルの例である。自局よりも右側方向には連絡経路が無いので、「右登録」には何も登録されていない。「左登録」には、「+1」〜「+4」欄まで順番に、[ID13]〜[ID10]が記録されている。転送テーブル中に親局は無いので、「親局ID」欄には、親局が無いことを示す、一例として「255」が記録されている。無線通信装置1は、表4のように「右登録」に何も記録されていないとき、又は、「左登録」に何も記録されていないときに、自局が親局でなければ、末端局であると認識する。
表5は、中継局ID2に登録された転送テーブルの例である。
表6は、中継局ID22に登録された転送テーブルの例である。無線通信装置1は、親局、分岐局、分岐補助局、末端局以外のときに中継局であると認識する。
連絡経路が、分岐先でさらに分岐するように枝数が多い場合、転送テーブルの行列の数を、適宜その枝数に対応させて増加させる。
次に、送電線監視システムの動作について説明する。
送電線監視システムでは、イベント通信、定期通信、コマンド通信の3種の通信を行う。
イベント通信は、送電故障(この例では、地絡)の発生など、予め定められたイベントの発生(所定条件の一例)を検出した無線通信装置1(中継局、分岐局、分岐補助局、末端局)から親局に、そのイベントが発生したことを示す特別情報を、飛越通信で中継伝送(リレー通信)する通信である。ここで飛越通信とは、無線通信装置1が連絡経路に沿って複数台数先の他の無線通信装置1と無線通信して情報を中継する通信である。イベント通信では、無線通信装置1が、転送テーブルに記録された中で自局から最も離れた他の無線通信装置1へ飛越通信を行う。無線通信装置1は、その飛越通信先の他の無線通信装置1と無線通信が不能なときには、順次1台ずつ近い他の無線通信装置1と無線通信を試み、無線通信が可能となった他の無線通信装置1に情報を中継することが好ましい。
イベント通信の場合、図2に示す無線通信装置1は、地絡検出器7から地絡の検出情報が出力されたとき、外部アナログ信号入力端子12若しくは外部接点信号入力端子13から予め設定された条件を満たす信号が入力されたとき、又は、リチウムイオンキャパシタ32が電圧低下したときなど予め定めたイベントが発生したときに、そのイベントの発生を示す特別情報を、CPU2が無線部3から送信させる。
図5に、イベント通信の概要を示す。
例えば中継局ID22で地絡が検出された場合、中継局ID22は、内部メモリ6に記憶された転送テーブル(表6参照)から、親局側へ向かう「左登録」中で、自局から最も離れた識別番号(「+4」欄の[ID2])を確認し、図5(a)に示すように、中継局ID2に地絡の検出情報を送信する。この検出情報を受信した中継局ID2は、転送テーブル(表5参照)を確認し、「左登録」中の親局ID1に検出情報を中継する。親局ID1は、検出情報を携帯電話回線で上位ホスト局に連絡する。このように飛越通信を行うと、中継回数を減らすことができるので、短時間で情報を中継伝送することができる。なお、仮に中継局ID2の転送テーブルに親局が記録されていない場合には、中継局ID2は、特別情報であるので、転送テーブルの「左登録」中で最も離れた識別番号の局に情報を飛越通信で中継する。
ここで、中継局ID22と中継局ID2との無線通信が不能であったときには、図5(b)に示すように、中継局ID22は、転送テーブル(表6参照)を確認し、1台分近い分岐補助局ID3に地絡の検出情報を送信する。検出情報を受信した分岐補助局ID3は、特別情報であるので、転送テーブル(表3参照)を確認し、「左登録」中の親局ID1に検出情報を飛越通信で中継する。
中継局ID22と分岐補助局ID3との無線通信が不能であったときには、中継局ID22は、図5(c)に示すようにさらに1台分近い分岐局ID10と無線通信し、分岐局ID10が親局ID1に飛越通信で中継伝送する。それでも通信不能であれば、中継局ID22は、図5(d)に示すように、隣接する中継局ID21と無線通信を行う。このように、無線通信が不能なときに、1台ずつ近づけて通信を行うことで、情報を確実に伝送することができる。
なお、イベント通信では、特別情報の発信元の無線通信装置1が、特別情報を、連絡経路に沿う一方向(左方向)だけでなく、連絡経路に沿う反対方向(右方向)の無線通信装置1へも中継することが好ましい。この場合、左登録側から特別情報を受信した無線通信装置1(中継局)は、右登録側に特別情報を飛越通信で中継する。このように両方向に特別情報を発信するのは、図6に示すように、連絡経路内に、複数の親局(親局ID1及び親局ID60)が配置される場合があり、中継局ID22が両方向に検出情報を送信すると、仮に親局ID1が動作不能状態になっていたとしても、他の親局ID60まで検出情報が飛越通信で中継伝送されて、上位ホスト局に連絡できるためである。つまり、上位ホスト局への特別情報の連絡性を高めることができる。又、特別情報の発信元の無線通信装置1が、特別情報を両方向へ発信するようにしておくと、右登録側に親局を配置するという決まりを設けたり、いずれの方向に親局が配置されているか判別したりすることが不要になると共に、ネットワークの拡張性に優れるため好ましい。なお、特別情報を受信した末端局は、その情報を破棄する。
連絡経路の両方向に向けて情報を発信する場合、末端局に向かう経路で分岐が生じる場合がある。その場合、送信側の無線通信装置1は、飛越通信を行う複数台数分先の無線通信装置1が分岐先の各々にあるときは、その各々の分岐先の無線通信装置1に、情報を直接中継する。例えば中継局ID2が連絡経路の両方向に特別情報を発信する例を図7に示す。図7(a)に示すように、中継局ID2は、「左登録」側の親局ID1に特別情報を発信する。続いて、中継局ID2は、転送テーブル(表5参照)中の、「右登録」に記録された最も遠い、各分岐先の中継局ID12,ID22,ID32の各々に、特別情報を発信する。ここで、例えば中継局ID2と中継局ID22との無線通信が不能なときは、図7(b)に示すように中継局ID21に中継し、さらに、中継局ID21と通信が不能なときは、図7(c)に示すように分岐局ID10に中継する。
次に、定期通信について説明する。
定期通信は、連絡経路の端部の無線通信装置1が、定期的に、送信側の無線通信装置が1台先の無線通信装置1へと順次中継させる定期通信情報を発信する。この定期通信は、連絡経路が正常であるか否か、つまり各無線通信装置1が正常であるか否かを検査するために行う。
具体的には、定期通信は、図3に示すように、定期的に(例えば1日ごとに)親局ID1(端部の無線通信装置)から末端局ID14,ID24,ID34側に向けて、又、図4に示すように、定期的に各末端局ID14,ID24,ID34(端部の無線通信装置)から親局ID1側に向けて、隣接し合う無線通信装置1で情報を順次中継する逐次通信を行わせる定期通信情報を伝送する。各無線通信装置1は、転送テーブルを確認して、1台先の無線通信装置1に定期通信情報を中継する。
図3のように親局ID1が定期通信情報を発信する理由は、図6に示したように、他にも親局が存在する場合があるからである。そのため、全ての端部の無線通信装置1が定期通信情報を発信することが好ましい。端部に配置されていない親局は、定期通信を発信しない。なお、図4のように、親局ID1が端部にあり、親局ID1しか親局が無い場合には、親局ID1が定期通信情報を発信しないようにしてもよい。又、連絡経路に沿って一方向にしか情報を中継しない場合には、一方向の上流側の端部の無線通信装置1のみが定期通信情報を発信するようにしてもよい。
親局ID1、末端局ID14,ID24,ID34がそれぞれ定期通信を発信する時刻は、適宜ずらして設定しておくことが好ましい。発信する時刻は、予め内部メモリ6に記録されている。
この定期通信では、無線通信装置1が1台先の無線通信装置1と無線通信が不能な場合(所定条件の他の一例)、複数台先の無線通信装置1と飛越通信を行う。定期通信時の飛越通信では、送信側の無線通信装置1が、2台先、3台先・・・というように、2台先の無線通信装置1から順次1台ずつ先の他の無線通信装置1と無線通信を試み、無線通信が可能となった無線通信装置1に情報を中継する。
図8に、定期通信時の飛越通信の一例を示す。同図は、末端局ID24が定期通信情報を発信した例である。図8(a)に示すように、例えば中継局ID22と中継局ID21との無線通信が不能の場合、中継局ID22は、転送テーブル(表6参照)から、「左登録」中の2台先の識別番号(「+2」欄の[ID10])を確認し、中継局ID10に定期通信情報を中継する。
さらに、中継局ID22と分岐局ID10との通信が不能であった場合、図8(b)に示すように、中継局ID22は、転送テーブルから、「左登録」中の3台先の識別番号(「+3」欄の[ID3])を確認し、分岐補助局ID3に定期通信情報を中継する。それでも駄目なときには、4台先の中継局ID2に中継する。
又、図3に示すように親局ID1が定期通信を発信するときに、図示しないが、例えば分岐補助局ID3と分岐局ID10との通信が不能であった場合には、分岐補助局ID3は、転送テーブル(表3参照)を確認し、分岐局ID10を飛び越して、2台先の中継局ID11、ID21、ID31に定期通信情報を直接中継する。又、図示しないが、親局ID1が定期通信を発信するときに、例えば中継局ID2が、分岐補助局ID3と通信不能で、さらに分岐局ID10と通信が不能な場合には、中継局ID2は、転送テーブル(表5参照)を確認し、分岐補助局ID3及び分岐局ID10を飛び越して、3台先の中継局ID11、ID21、ID31に定期通信情報を直接中継する。この場合、中継局ID2が分岐処理を行う。なお、通常は分岐補助局ID3が分岐処理すれば事足りることが多いので、ここでは、分岐局ID10の隣接局だけを分岐補助局と呼んでいる。
このように、逐次通信で通信不能なときに、順次1台ずつ先の無線通信装置1に情報を中継することで、例えば、落雷等で一部の無線通信装置1が故障したとしても、定期通信情報を確実に伝送することができる。
定期通信を行うことで、例えば親局ID1が定期的に定期通信情報を受信しなくなったときは、システムに何らかの障害が発生したと判別し、障害が発生したことを外部ホスト局に連絡することができる。
さらに、定期通信情報を中継(発信も含む)する各無線通信装置1は、その中継に自局が介在したことを識別可能な識別フラグを定期通信情報に追加して中継する。このように識別フラグを追加することで、故障などの障害が生じている無線通信装置1を特定することができる。イベント通信やコマンド通信のときにも中継する情報に識別フラグを追加するようにしてもよい。
具体的には、定期通信時に、通信不能により飛越通信が発生すると、伝送される定期通信情報に、通信不能であった無線通信装置1の識別フラグが追加されないので、障害が生じている無線通信装置1の特定が可能になる。例えば、図8(a)のように中継局ID21が飛び越されたときには、ID21の識別フラグが追加されず、他の局の識別フラグは追加されるので、通信不能であった中継局ID21を特定できる。図8(b)のように中継局ID21及び分岐局ID10が飛び越されたときには、ID21、ID10の識別フラグが追加されず、他の局の識別フラグは追加されるので、通信不能であった中継局ID21及び分岐局ID10を特定できる。親局ID1は、特定した故障局の識別番号を、外部ホスト局に連絡する。
このように、定期通信を行うことにより、定期的に各無線通信装置1が正常であるか否かをセルフチェックすることができる。
なお、定期通信で飛越通信が発生したときには、飛越通信した送信側の無線通信装置1が、飛越通信したことを示す飛越通信発生フラグを定期通信情報に追加して中継してもよい。定期通信情報に飛越通信発生フラグが追加されているときには、いずれかの無線通信装置1が通信不能であったことが判る。そのため、異常の有無だけを迅速に確認できる。飛越通信発生フラグが追加されているときに、各識別フラグを確認して、障害の生じている無線通信装置1を特定すればよい。
定期通信情報に追加する識別フラグとして、ID2等の識別番号の数字そのものを追加してもよいが、中継した各局の識別番号をデータで表すとデータ量が大きくなる。そのため、表7に示すように、中継する情報のデータ並びの中に、予め各局を1ビットで対応させた領域を用意しておき、識別フラグとして、中継した局が自局の識別番号の位置のビットを「0」から「1」に変更するように2値で表現することが、データ量を減らす観点から優れている。表7は、ID1〜ID103まで識別フラグを追加可能な例である。
又、連絡経路の端部以外の無線通信装置1が定期的に定期通信情報を受信しなくなったときに、端部の無線通信装置1に近い側から連絡経路に沿った順番で、無線通信装置1が端部の無線通信装置に肩代わりして定期通信情報を発信することが好ましい。これは、定期通信が無くなることを防止して、障害のある無線通信装置1の有無をセルフチェックできなくなることを防ぐためである。
例えば図4に示す中継局ID23は、転送テーブルは表8の様になる。
中継局ID23は、表8の転送テーブルから「右登録」の「+1」に「ID24」が登録されており、「右登録」に他に記録がないので、自局が末端局ID24の隣接局であると判別する。中継局ID23は、定期通信情報を中継したときに、その日時のデータを内部メモリ6に記録しておく。この中継局ID23は、末端局ID24との距離(+1)にさらに1を加えて得た数(2)に定期通信間隔(例えば1日)を乗じた肩代わり開始期間(2日)を算出し、この肩代わり開始期間が経過しても定期通信情報を受信しないときに、末端局ID24と反対側の左側へ定期通信情報を発信する。
肩代わりして定期通信を発信する無線通信装置1(この例では中継局ID23)は、右側及び左側の両側に定期通信情報を発信することが好ましい。これは、例えば末端局ID24が親局になっている場合のように、連絡経路の左側だけでなく、右側にも親局が配置されている場合があるためである。
又、中継局ID22は、転送テーブル(表6参照)から「右登録」の「+2」に「ID24」が登録されており、それより右側に他に記録がないので、自局が末端局ID24の次隣接局であると判別する。中継局ID22は、末端局ID24との距離(+2)にさらに1を加えて得た数(3)に定期通信間隔(1日)を乗じた肩代わり開始期間(3日)を算出し、肩代わり開始期間が経過しても定期通信情報を受信しないときに、定期通信情報を発信する。
又、図3に示す中継局ID2は、転送テーブル(表5参照)から「左登録」の「+1」に「ID1」が登録されており、「左登録」に他に記録がないので、自局が末端に配置された親局ID1の隣接局であると判別する。この中継局ID2は、親局ID1との距離(+1)にさらに1を加えて得た数(2)に定期通信間隔(1日)を乗じた肩代わり開始期間(2日)を算出し、肩代わり開始期間が経過しても定期通信情報を受信しないときに、定期通信情報を発信する。
又、例えば図9に示すような連絡経路に形成された鉄塔監視システムでは、分岐局ID110の転送テーブルは表9のように登録されている。
分岐局ID110は、3系統登録された「右登録」中の最も離れている距離「+2」と、1系統登録された「左登録」中の最も離れている距離「+3」とを比較し、最も大きな距離である「+3」にさらに1を加えて得た数(4)に定期通信間隔(1日)を乗じた肩代わり開始期間(4日)を算出し、肩代わり開始期間が経過しても定期通信情報を受信しないときに、定期通信情報を発信する。
定期通信の肩代わりは、「右登録」及び「左登録」の少なくともどちらかの最大の距離「+4」にIDが登録されていない無線通信装置1が行う。肩代わりの開始期間は、最大の距離(「+4」)に登録が無い「右登録」及び「左登録」側の各系統の中で、IDが登録されている最も離れた最大の距離を求め、その最大の距離にさらに1を足して得た数に、定期通信間隔を乗じた肩代わり開始期間が経過しても定期通信情報を受信しないときに、定期通信情報を発信する。定期通信情報を肩代わりした無線通信装置1は、親局側や最大の距離「+4」にIDが登録されている側だけに定期通信情報を発信してもよいが、前述したように左右両方向に発信することが好ましい。
このように肩代わり開始期間を計算することで、連絡経路の端部に近いほうから順番に、定期通信を受信しなくなった無線通信装置1が肩代わりして定期通信を発信できる。
末端局以外の無線通信装置1が定期通信を肩代わりしたときは、定期通信情報として、末端局以外が定期通信を発信したことを識別可能な定期通信情報を発信することが好ましい。具体的には、例えば後述する表11に示す「定期通信肩代わりフラグ」を追加して、肩代わりしたことを識別可能に、定期通信情報を発信することが好ましい。親局ID1は、定期通信肩代わりフラグを確認することで、末端局の異常の有無を迅速に確認することができる。
次に、コマンド通信について説明する。コマンド通信は、図3に示す連絡経路で、親局ID1が特定の局に対して、その局の状態を逐次通信で問い合せし、問い合わせを受けた局は、その情報を中継せず、代わりに問い合わせに対し、図4に示す連絡経路で親局ID1に逐次通信で応答する。この場合も、定期通信と同様に、無線通信装置1間で通信不能なときには、飛び越し通信を行う。又、コマンド通信も飛越通信で中継するようにしてもよい。
無線通信装置1が、イベント通信、定期通信、コマンド通信のいずれか2つ、又は3つの通信を共に行う必要性が生じたときは、優先順位として、1:イベント通信、2:コマンド通信、3:定期通信の順番で送信する。イベント通信の中でも、地絡の検出情報を、最も優先して送信する。又、無線通信装置1は、いずれの通信の場合でも、送信を行う前に受信電界強度測定回路24a(図2参照)によりキャリア検出を行い、キャリアが検出されないときに送信を行う。キャリアが検出されたときには、検出されなくなるまで送信を待つ。
なお、図9に示すように、親局(親局ID102)が連絡経路の途中に配置されているときに、親局は、イベント通信、コマンド通信の何れの情報も、右側及び左側の両方向に発信すると共に、定期通信、イベント通信、コマンド通信の何れかの情報を受信したときには、送られてきた方向と反対側の方向に中継(送信)することが好ましい。又、親局が連絡経路の途中に配置されているときに、親局は受信して中継した情報を、携帯電話回線を介して上位ホスト局に連絡することが好ましい。
次に、間欠動作について説明する。
各無線通信装置1は、送受信を行うウェークアップ期間と送受信を行わないスリープ期間とを交互に繰り返す間欠動作で情報を中継することが、消費電力を少なくでき、動作可能な期間を長くすることができるので好ましい。
図10に間欠動作の概要を示す。同図中の太線がウェークアップ期間Wを示し、破線がスリープ期間Sを示し、繰り返し周期Tで間欠動作する。各無線通信装置1は、各々のRTC5(図2参照)の時刻に基づく時刻同期により、一斉にウェークアップ期間Wを開始する。ウェークアップ期間Wは、一例として2秒間であり、スリープ期間Sは一例として178秒であり、その繰り返し周期Tは一例として180秒で動作する。この場合、各無線通信装置1は、例えば毎時0分、3分、6分・・・57分というように、内部メモリ6に予め記憶されている時刻でウェークアップ期間Wを開始する。
無線通信装置1は、標準電波受信機4(図2参照)の受信した時刻情報によりRTC5(図2参照)の時刻を修正するため、正確な時刻同期が可能である。無線通信装置1は、例えば0時及び12時の1日2回、標準電波受信機4から時刻情報を取得してRTC5の時刻修正を行う。なお、無線通信装置1は、標準電波受信機4が標準電波を受信不能なときに、他の例えば隣接する無線通信装置1に対して時刻情報の返信を要求するコマンド通信を実行し、他の無線通信装置1から無線通信で時刻情報を取得することが好ましい。無線通信装置1は、隣接する無線通信装置1と無線通信が不能なときに、飛越通信でさらに先の無線通信装置1から時刻情報を取得することがより好ましい。
同図に示すように、一例として、末端局ID24が定期通信を発信する場合、末端局ID24は、ウェークアップ期間中に、中継局ID23に対して定期通信情報を送信する。これを中継局ID23が正常に受信したときは、中継局ID23は、データ転送が正常に終了したことを示すACK(ACKnowledgement)を末端局ID24に送信する。末端局ID24は、中継局ID23の送信したACKを受信できたときに、無線通信が正常に行えたと判別する。中継局ID23は、中継局ID24にACKを送信後、中継局ID22に対して情報を送信し、中継局ID22からACKを受信したときは、正常に無線通信できたと判別する。以下同様にID21まで情報が無線中継されていく。
同図の例では、中継局ID21が、分岐局ID10に対して情報を送信するときに、ウェークアップ期間Wが終了してしまう。このようにウェークアップ期間Wが過ぎてしまう場合には、中継局ID21は、送信できなかったデータを内部メモリ6にバックアップ記録して、次のウェークアップ期間Wに分岐局ID10に情報を送信する。以下同様に、親局ID1まで情報が中継される。
図示しないが、親局ID1から各末端局ID14,ID24,ID34まで定期通信するときも同様に、ウェークアップ期間W中に情報を転送し、そのウェークアップ期間Wが終了するときは、情報をバックアップして次のウェークアップ期間Wに情報を送信する。分岐局ID10で情報が分岐されるときには、図11に示すように、分岐局ID10は、最初に一つの系統の例えば中継局ID11に情報を送信し、次に別の系統の例えばID21に情報を送信し、次にさらに別の系統の例えばID31に情報を中継する。
飛越通信を行う場合にも、同様に、ウェークアップ期間W中に目的とする局に情報を送信し、そのウェークアップ期間Wが終了するときは、情報をバックアップして次のウェークアップ期間Wに情報を送信する。
送信側の無線通信装置1は、情報を送信した相手先の無線通信装置1から所定のタイムアウト時間Fが経過するよりも前にACKが返信されたときに、無線通信が正常に行えたと判別し、ACKが返信されないときに、無線通信が不能であったと判別する。なお、送信側の無線通信装置1が、相手先の無線通信装置1からACKが返信されないときに、所定の再送回数(例えば5回)まで情報を再送し、いずれかの再送に対しACKが返信されたときは、無線通信が正常に行えたと判別し、再送回数まで再送してもACKが返信されないときに、無線通信が不能であると判別してもよい。
例えば、図12に、中継局ID22から親局ID1に、イベント通信を行う場合の例を示す。この場合、すでに図5を用いて説明したように、中継局ID22は、飛越通信で中継局ID2に地絡の発生等の特別情報を送信する。中継局ID22は、タイムアウト時間Fが経過しても中継局ID2からACKが返信されないときには、中継局ID2に再送を行う。中継局ID22は、再送回数まで再送しても中継局ID2からACKが返信されないときには、中継局ID2との無線通信が不能であると判別し、同図に示すように、1台近い分岐補助局ID3に特別情報を送信する。この例では、分岐補助局ID3からACKが返信されたので、中継局ID22は、分岐補助局ID3との無線通信が正常に行えたと判別し、分岐補助局ID3への再送は行っていない。なお、中継局ID22は、再送途中にウェークアップ期間Wが終了するときは、それまで再送した回数を内部メモリ6にバックアップし、次のウェークアップ期間Wで残りの回数まで、再送を行う。
図13に、親局ID1が定期通信を発信した例を示す。この場合、中継局ID2の送信に対し、分岐補助局ID3からACKが返信されないため、中継局ID2は再送回数まで定期通信情報の再送を行う。再送回数まで再送を行ってもACKが返信されないため、中継局ID2は、分岐補助局ID3との無線通信が不能であると判別し、2台先の分岐局ID10に対し飛越通信で定期通信情報を送信する。
無線通信では、外来ノイズ等の影響で一時的に通信が不安定になることがあるので、このように所定の再送回数まで情報を再送することで、情報を中継できる確率が高くなるので、情報を一層確実に伝送することができる。
次に、無線通信装置1が送信する無線パケット構成の一例を表10、表11に示す。表10が無線パケットの全体構成であり、表11は、表10中のメッセージの内容を示している。
宛先アドレスは、例えば定期通信のときには隣接する無線通信装置1のID番号のように、無線通信を行う相手側の無線通信装置1のID番号である。制御コードは、送信している周波数番号や再送回数、データ区別(コマンド通信の宛先ID)などの情報である。
表中の項目1〜5は、各々該当するときに対応するステータスをOR(論理和)して転送する。項目1が末端局又は親局が発信した定期通信であることを示し(定期通信情報の一例)、項目2は末端局以外の局が定期通信を肩代わりして発信した定期通信であることを示し(定期通信情報の他の例)、項目3は、定期通信時に飛越通信が発生したことを示し、項目4は分岐補助局が分岐処理をしたことを示す。項目6〜13の場合は、ORせずに各々別パケットで送信する。項目6〜13の何れかである場合、それを特別情報であるとして、各無線通信装置1はイベント通信(飛越通信)で中継する。なお、項目14は、親局が子局にその無線通信装置1の項目6〜13の状態をコマンド通信で問い合わせした場合、子局はイベント通信で無いことを示すために、項目14のステータスをORして返信する。項目14に該当する場合、逐次通信で中継する。「中継」欄には、既に説明した表7のデータが入る。
このような無線パケット構成を用いると、少ないデータ量で情報を伝送することができる。無線パケット構成はこの構成に限られず、どのような構成を用いてもよい。
本発明の無線中継システムの例として送電線監視システムについて説明したが、本発明は、情報を無線中継する種々のシステムに適用することができる。例えば、各家庭のプロパンガスの残量を検出器で検出し、残量が所定値以下になったときにその情報を無線通信装置が中継伝送して連絡するプロパンガス監視システムに本発明を適用してもよいし、山や崖など地表のずれを検出する検出器を配置して、この検出器で山崩れや崖崩れを検出し、その情報を複数の無線通信装置が順次中継伝送する自然災害監視システムに本発明を適用してもよい。又、連絡経路の一端側に外部から無線又は有線で送られた情報を、連絡経路の他端側まで中継するような無線中継システムに本発明を適用してもよい。又、定期通信時にのみ、故障した無線通信装置1を飛越通信し、通常の情報を中継するときには飛越通信を行わず、常に1台先の無線通信装置へと情報を中継(逐次通信)する無線中継システムに本発明を適用してもよい。
又、図3の連絡経路と図4の連絡経路のように両方向に情報を伝送可能な例について説明したが、必要性に応じ、1方向にのみ情報を伝送するシステムに本発明を適用してもよい。又、親局に外部通信回線を介さずに直接、外部ホスト局をケーブル接続してもよい。又、隣接し合う無線通信装置1間で通信するときに送信出力を必要最小に小さくし、飛越通信するときに送信出力を必要な程度に大きくするようにしてもよい。又、無線通信装置1は、外部電源が使用可能なときや、太陽電池31の発電電力やリチウムイオンキャパシタ32に蓄電された電力に余裕があるときには、間欠動作を行わず、連続動作するようにしてもよい。