JP5940823B2 - コンクリートの締め固め管理方法 - Google Patents
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Description
ところで、このようなダムの施工では、内部振動機に、ダムコンクリートの主たる部分でバイバックというバイブレータを装備した油圧重機を用いるため、振動機の挿入間隔は既に設置されているバイブレータの間隔、例えば60cm程度となる。また、ダムコンクリートの場合、バイバックによる締め固め時間は一般コンクリートよりも長くなり、ダムコンクリートの積算基準から判断すると、約40秒である。また、この場合、コンクリートの締め固め時間はオペレータの目視によって判定されているが、バイブレータのかけ忘れあるいは不十分な稼動時間による締め固めの不足、過度な稼動時間による材料分離など、均質なコンクリートを得るための管理状況としては必ずしも十分ではない。
そこで、従来から、バイブレータの負荷やコンクリートの物性変化を定量的に観測することによって、コンクリートの締め固めの完了を評価、判定することが提案されている。この種の締め固め管理方法が特許文献1、2などに記載されている。
従来、このような締め固め施工域全体に亘る締め固め程度の評価や締め固め完了の判定はバイブレータのオペレータの経験的感覚などで行われており、見逃しがあると、コンクリートの締め固めの不完全な箇所が発生する。この締め固めの不完全な箇所が型枠近傍であれば、型枠を脱型した際に、ジャンカの状態になって発見することができるが、コンクリート内部の場合は発見が極めて難しい。
また、この方法は次のように具体化することが好ましい。
(1)バイブレータにGPSセンサを搭載し、コンクリートの締め固め施工域の地図を複数のマス目とともにGPS対応のモニターに表示して、前記バイブレータによりコンクリートの締め固めを行う毎に、前記モニターの地図上の該当するマス目に、GPS測量で求めたコンクリートの締め固め施工域におけるバイブレータの挿入位置を表示し、前記モニターの地図上の該当するマス目に締め固め施工位置についての前記バイブレータによるコンクリートの締め固めの及ぶ範囲、程度を記録し、締め固め完了と判定した範囲を表示する。
(2)コンクリートの締め固め評価基準は、バイブレータを打設したコンクリートに挿入してコンクリートを締め固める間、前記バイブレータのコンクリートを締め固めるときの油圧を測定して、前記バイブレータの油圧の経時変化により、コンクリートの締め固め程度を評価するものとする。
この場合、バイブレータの油圧の測定に油圧計及び/又は油圧センサを用い、前記油圧計及び/又は油圧センサに、バイブレータの油圧が前記バイブレータの挿入とともに増加を開始し、時間の経過とともに上昇してピークに達し、コンクリートの締め固めの進行とともに前記油圧が徐々に低下し、略一定値に近づく前記油圧の経時変化を表示して、前記油圧若しくは前記油圧の変化の傾きがあらかじめ定めたしきい値よりも低下した時点、又は前記油圧の低下の割合が減少する時点をコンクリートの締め固め完了と判定することが好ましい。
図1に示すように、このコンクリートの締め固め管理方法では、油圧ポンプの駆動により当該油圧ポンプから油圧ホース(油圧管)10を通じて供給する圧油により、バイブレータ11を振動させる油圧式バイブレータ1を用いて、打設したコンクリートCに振動を加え締め固めるコンクリートの締め固め施工の際に、バイブレータ1の運転時の負荷と相関関係を有するバイブレータ1の油圧を測定してコンクリートCの締め固め程度を評価し、コンクリートCの締め固め完了を判定する。従来の、バイブレータ運転時の負荷と相関関係を有する力率、周波数、音量やバイブレータの振動による音圧に対して、油圧は、力学的な負荷を最も包括的に表現することができると考えられ、実測した負荷変動の値は理論的な予測と近いのが特徴である。
なお、このコンクリートの締め固め施工においては、ダムコンクリートなどのマスコンクリートを締め固めるために、油圧式バイブレータ1を専用ベースマシンに搭載した建設機械のバイバック2が採用される。ここで、バイバック2は、クローラ21と、クローラ21上に旋回可能に配設される運転室22及び機械室23と、運転室22の前側に装備されるアクチュエータ24及び油圧式バイブレータ1とを備え、アクチュエータ24は運転室22の前部にシリンダ241により傾動可能に支持されるブーム242、ブーム242の先端部にシリンダ243によって回動可能に支持されるアーム244とを有し、このアーム244の先端部に油圧式バイブレータ1がシリンダ245によって回動可能に取り付けられる。この場合、油圧式バイブレータ1は4本の棒状バイブレータ11からなり、油圧ポンプ(図示省略)の駆動によりこの油圧ポンプから油圧ホース10を通じて供給する圧油により油圧モータ(図示省略)を駆動して、各棒状バイブレータ11を振動させるようになっている。
(1)油圧があるしきい値よりも下がった時点をコンクリートの締め固め完了と判定する。図2に示すケースでは、65秒の時点を締め固め完了と判断する。
(2)油圧の変化の傾きがあるしきい値よりも小さくなった時点をコンクリートの締め固め完了と判定する。図2に示すケースでは、70秒の時点を締め固め完了と判断する。
(3)コンクリートとバイブレータの密着度が減少し、油圧負荷の低下の割合が減少する時点をコンクリートの締め固め完了と判定する。油圧の経時変化曲線を2階微分した形状は正の数であれば、油圧の経時変化は凹であり、この最大値となる変化点、すなわち凹の変化率が最大となる点が締め固め判断基準と考えることができる。この点は3階微分の曲線が正から負へ推移する点となる。図2に示すケースでは、46秒の時点を締め固め完了と判断する。
なお、バイブレータの挿入位置でのコンクリートの締め固めの判断は、この油圧の変化による自動判定としてもよく、油圧の変化を含めたオペレータの総合判断による判定としてもよい。
この締め固め域全体に亘る管理方法は、コンクリートの締め固め域全体に亘り締め固めが完了したことを確認できるように、締め固めが完了した範囲を地図上に記録するようにした点、また、バイブレータによるコンクリートの締め固めの効果がバイブレータの挿入位置からの距離とバイブレータの作用した時間に関連することから、バイブレータの挿入位置からの距離とバイブレータの振動時間を考慮して、コンクリートの締め固めの及ぶ範囲、程度を評価し、締め固め完了の範囲を判定するようにした点が、特徴である。
そして、この管理方法の場合、周知のGPS(Global Positioning System)システムを利用して、バイブレータにGPSセンサを搭載し、コンクリートの締め固め施工域の地図をGPS対応のモニター、ここでは、前述のパソコンのディスプレイに表示して、バイブレータによりコンクリートの締め固めを行う毎に、モニターの地図上に、GPS測量で求めたコンクリートの締め固め施工域におけるバイブレータの挿入位置を表示し、モニターの地図上に締め固め施工位置についてのコンクリートの締め固めの及ぶ範囲、程度及び締め固め完了と判定した範囲を記録する。
図3に示すように、このモニターに表示する地図では、地図上に複数のマス目からなるメッシュを入れて地図を分割し、バイブレータにより締め固めを行う位置毎に、コンクリートの締め固めの及ぶ範囲及び程度、並びにコンクリートの締め固め完了と判定した範囲を地図上の該当するマス目に表示していく。
この場合、コンクリートの締め固めの及ぶ範囲に該当するマス目を無色で又は締め固めの及ぶ範囲を表す色として定めた色を付けて表示し、その締め固めの程度を数値化(この場合、締め固めの程度を百分率(%)で表す)してマス目に表示し、コンクリートの締め固め完了と判定した範囲に該当するマス目は締め固め完了を表す色として定めた色を付けて表示する。
図4はここで使用する4本のバイブレータの各部の寸法を示している。図4に示すように、4本のバイブレータは180cmの範囲内に横一列に等間隔に配列され、各バイブレータの間隔が60cmになっている。
まず、コンクリートの締め固め域におけるこのバイブレータによる影響範囲を考える。図5にコンクリートの締め固め域の一部を例示し、この締め固め域上にメッシュを作成してこの締め固め域を複数のマス目で分割して示している。各マス目は1辺の長さが20cmあるものとし、図5の中央の横方向に並ぶ9つのマス目(1マス20cm×9=180cm)をバイブレータの挿入位置として、各マス目にバイブレータの挿入位置からの距離を記入してある。
このコンクリートの締め固め域におけるバイブレータの振動の影響力は距離に応じて減衰することから距離の関数で表すことができる。この場合、距離の2乗の関数となると予想して、図5の各マス目の距離を2乗して表すと、図6のとおりとなる。
次に、この図6からバイブレータの影響する位置とその効果について考える。バイブレータの締め固めの効果はバイブレータの挿入位置からの距離とバイブレータの作用した時間に関連し、バイブレータの挿入位置からの距離が近い程大きくなり、距離が遠い程小さくなる。そこで、距離の2乗で締め固めの効果が小さくなるとし、ここではバイブレータによる締め固めの影響がバイブレータの挿入位置から120cmの距離まで及ぶものと考えて、各マス目の距離を2乗した数値と120cmを2乗した数値(本来の数値は1.44となるが、ここでは1.44を四捨五入して1.4と記入する。)との差を締め固めの効果を表す定数とすると、各マス目における締め固めの効果を表す定数は図7のようになる。図7から、バイブレータの位置で定数は1.44、バイブレータから120cm(6マス)離れた位置で定数はゼロとなる。
そして、バイブレータの締め固めの効果はバイブレータの挿入位置からの距離とバイブレータの作用した時間に関連することから、バイブレータの挿入位置と振動時間を考慮し、このバイブレータの挿入位置から距離60cmまでの範囲はコンクリートの締め固めが規定の時間(例えば40秒)で完了すると仮定して、締め固めの効果を示す締め固め効果値、すなわち締め固め程度を求める。この場合、図7によりバイブレータから60cm離れた位置での締め固めの効果を表す定数は1.1であり、ここではこの位置の締め固め効果値(締め固め程度)を100(%)とすると、図7に示す各マス目における締め固め効果値は図8に示すとおりとなる。図8により、バイブレータの挿入位置での締め固め程度は133で、バイブレータの挿入位置から60cmの位置の締め固め程度は100と評価し、締め固め程度が100以上のマス目を規定時間(例えば40秒)で締め固め完了と判定する。また、締め固め程度が100未満のマス目に該当するコンクリートの締め固め域の各地点は、バイブレータによる締め固めの積算時間で、引き続き、締め固め程度を評価し、締め固めの完了を判定していく。
このようなコンクリートの締め固め程度の評価、締め固め完了の判定は既述の油圧センサに接続するパソコン、又はこれとは別のパソコンを用いて実行することが可能である。
このようにしてコンクリートの締め固め域においてバイブレータによる締め固め施工位置について求められた締め固めの及ぶ範囲及び締め固め程度を、図3に示す地図の該当する各マス目に表示し、締め固め程度が100以上のマス目を締め固め完了の範囲として色で表示する。
また、この実施の形態の場合、地図上のコンクリートの締め固めの及ぶ範囲に該当するマス目を無色で又は締め固めの及ぶ範囲を表す色として定めた色を付けて表示し、その締め固めの程度を数値化してマス目に表示し、コンクリートの締め固め完了と判定した範囲に該当するマス目は締め固め完了を表す色として定めた色を付けて表示するものとしたが、その表示方法は任意であり、締め固めの及ぶ範囲、程度及び締め固め完了の範囲を視覚的に確認することができれば、締め固め施工域全体の管理については上記と同様の効果を得ることができる。
さらに、この実施の形態の場合、地図をモニターに表示するようにしたが、紙材、樹脂材、金属材などからなる地図を使用してもよく、この場合は、地図上に直接、色、数字、文字、記号などを使って、締め固めの及ぶ範囲、程度及び締め固め完了の範囲を同様に表示すればよく、このようにしても締め固め施工域全体の管理については上記と同様の効果を奏することができる。
またさらに、この実施の形態の場合、コンクリートの締め固め施工域におけるバイブレータの挿入位置をGPS測量により求めたが、このバイブレータの挿入位置の測定には、光波や電波を用いて距離を測定する電磁波測距儀など他の測量手段を使用した測定方法を採用してもよく、当該測量方法が適切なものである限り、締め固め施工域全体の管理については上記と同様の効果を奏することができる。
10 油圧ホース(油圧管)
11 棒状バイブレータ
2 バイバック
21 クローラ
22 運転室
23 機械室
24 アクチュエータ
241 シリンダ
242 ブーム
243 シリンダ
244 アーム
245 シリンダ
3 油圧計
C コンクリート
Claims (4)
- 打設したコンクリートの締め固め施工域に油圧式のバイブレータを挿入し、振動を加えて締め固める際に、各種のコンクリートの締め固め評価基準によりコンクリートの締め固め程度を評価し、コンクリートの締め固め完了を判定するコンクリートの締め固め管理方法において、
前記コンクリートの締め固め施工域の地図を作成し、前記地図に複数のマス目を入れて前記地図を分割しておき、
前記コンクリートの締め固め施工域において前記バイブレータにより締め固めを行う位置毎に、各種の測量方法により、前記コンクリートの締め固め施工域における前記バイブレータの挿入位置を求めて前記地図上に特定し、 当該締め固め施工位置について前記各種のコンクリートの締め固め評価基準により評価した前記バイブレータによるコンクリートの締め固めの及ぶ範囲、程度を前記地図上に特定したバイブレータの挿入位置に基づいて前記地図上の該当するマス目に記録し、これらのマス目に記録したコンクリートの締め固めの程度から前記各種のコンクリートの締め固め評価基準により締め固め完了と判定した範囲を前記地図上の該当するマス目に表示し、締め固め完了と判定されない範囲は、引き続き、前記バイブレータにより締め固めを行う毎にコンクリートの締め固めの程度を積算して評価し、締め固めの完了を判定する、
ことを特徴とするコンクリートの締め固め管理方法。 - バイブレータにGPSセンサを搭載し、コンクリートの締め固め施工域の地図を複数のマス目とともにGPS対応のモニターに表示して、前記バイブレータによりコンクリートの締め固めを行う毎に、前記モニターの地図上の該当するマス目に、GPS測量で求めたコンクリートの締め固め施工域におけるバイブレータの挿入位置を表示し、前記モニターの地図上の該当するマス目に締め固め施工位置についての前記バイブレータによるコンクリートの締め固めの及ぶ範囲、程度を記録し、締め固め完了と判定した範囲を表示する請求項1に記載のコンクリートの締め固め管理方法。
- コンクリートの締め固め評価基準は、バイブレータを打設したコンクリートに挿入してコンクリートを締め固める間、前記バイブレータのコンクリートを締め固めるときの油圧を測定して、前記バイブレータの油圧の経時変化により、コンクリートの締め固め程度を評価するものとする請求項1又は2に記載のコンクリートの締め固め管理方法。
- バイブレータの油圧の測定に油圧計及び/又は油圧センサを用い、前記油圧計及び/又は油圧センサに、バイブレータの油圧が前記バイブレータの挿入とともに増加を開始し、時間の経過とともに上昇してピークに達し、コンクリートの締め固めの進行とともに前記油圧が徐々に低下し、略一定値に近づく前記油圧の経時変化を表示して、前記油圧若しくは前記油圧の変化の傾きがあらかじめ定めたしきい値よりも低下した時点、又は前記油圧の低下の割合が減少する時点をコンクリートの締め固め完了と判定する請求項3に記載のコンクリートの締め固め管理方法。
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