以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について詳説する。
ここでは、本発明をインクジェット記録装置(液滴吐出装置)に適用した場合を例に説明する。
《インクジェット記録装置の全体構成》
まず、インクジェット記録装置の全体構成について説明する。
図1は、インクジェット記録装置の全体の概略構成を示す全体構成図である。
このインクジェット記録装置10は、枚葉紙にシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)、クロ(K)の4色のインクを打滴してカラー画像を記録するインクジェット記録装置である。記録媒体としての枚葉紙には、汎用の印刷用紙が使用される。また、インクには紫外線硬化型の水性インクが使用される。
ここで、汎用の印刷用紙とは、いわゆるインクジェット専用紙ではなく、一般のオフセット印刷などに用いられる塗工紙などのセルロースを主体とした用紙をいう。
また、水性インクとは、水及び水に可溶な溶媒に染料、顔料などの色材を溶解又は分散させたインクをいい、紫外線硬化型の水性インクとは、紫外線(UV)の照射により硬化するタイプの水性インクをいう。
汎用の印刷用紙は浸透性を有し、このような記録媒体にそのまま水性インクを用いてインクジェット方式で画像を記録すると、フェザリングやブリーディング等が発生する。このため、本例のインクジェット記録装置では、インク中の成分を凝集させる機能を有する処理液を事前に塗布して画像の記録が行われる。
図1に示すように、インクジェット記録装置10は、主として、記録媒体としての用紙Pを給紙する給紙部12と、給紙部12から給紙された用紙Pの表面(画像記録面)に処理液を塗布する処理液塗布部14と、処理液が塗布された用紙Pの乾燥処理を行う処理液乾燥処理部16と、乾燥処理された用紙Pの表面にインクジェット方式でインク滴を打滴してカラー画像を描画する画像記録部18と、画像が記録された用紙Pの乾燥処理を行うインク乾燥処理部20と、乾燥処理された用紙Pに紫外線を照射して画像を定着させる紫外線照射部22と、紫外線照射された用紙Pを排紙して回収する排紙部24とを備えて構成される。
〈給紙部〉
給紙部12は、給紙台30に積載された用紙Pを1枚ずつ処理液塗布部14に給紙する。給紙部12は、主として、給紙台30と、サッカー装置32と、給紙ローラ対34と、フィーダボード36と、前当て38と、給紙ドラム40とを備えて構成される。
用紙Pは、多数枚が積層された束の状態で給紙台30に載置される。給紙台30は、図示しない給紙台昇降装置によって昇降可能に設けられる。給紙台昇降装置は、給紙台30に積載された用紙Pの増減に連動して、駆動が制御され、束の最上位に位置する用紙Pが常に一定の高さに位置するように、給紙台30を昇降させる。
サッカー装置32は、給紙台30に積載されている用紙Pを上から順に1枚ずつ取り上げて、給紙ローラ対34に給紙する。サッカー装置32は、昇降自在かつ揺動自在に設けられたサクションフット32Aを備え、このサクションフット32Aによって用紙Pの上面を吸着保持して、用紙Pを給紙台30から給紙ローラ対34に移送する。この際、サクションフット32Aは、束の最上位に位置する用紙Pの先端側の上面を吸着保持して、用紙Pを引き上げ、引き上げた用紙Pの先端を給紙ローラ対34を構成する一対のローラ34A、34Bの間に挿入する。
給紙ローラ対34は、互いに押圧当接された上下一対のローラ34A、34Bで構成される。上下一対のローラ34A、34Bは、一方が駆動ローラ(ローラ34A)、他方が従動ローラ(ローラ34B)とされ、駆動ローラ(ローラ34A)は、図示しないモータに駆動されて回転する。モータは、用紙Pの給紙に連動して駆動され、サッカー装置32から用紙Pが給紙されると、そのタイミングに合わせて駆動ローラ(ローラ34A)を回転させる。上下一対のローラ34A、34Bの間に挿入された用紙Pは、このローラ34A、34Bにニップされて、ローラ34A、34Bの回転方向(フィーダボード36の設置方向)に送り出される。
フィーダボード36は、用紙幅に対応して形成され、給紙ローラ対34から送り出された用紙Pを受けて、前当て38までガイドする。このフィーダボード36は、先端側が下方に向けて傾斜して設置され、その搬送面の上に載置された用紙Pを搬送面に沿って滑らせて前当て38までガイドする。
フィーダボード36には、用紙Pを搬送するためのテープフィーダ36Aが幅方向に間隔をおいて複数設置される。テープフィーダ36Aは、無端状に形成され、図示しないモータに駆動されて回転する。フィーダボード36の搬送面に載置された用紙Pは、このテープフィーダ36Aによって送りが与えられて、フィーダボード36の上を搬送される。
また、フィーダボード36の上には、リテーナ36Bとコロ36Cとが設置される。
リテーナ36Bは、用紙Pの搬送面に沿って前後に縦列して複数配置される(本例では2つ)。このリテーナ36Bは、用紙幅に対応した幅を有する板バネで構成され、搬送面に押圧当接されて設置される。テープフィーダ36Aによってフィーダボード36の上を搬送される用紙Pは、このリテーナ36Bを通過することにより、凹凸が矯正される。なお、リテーナ36Bは、フィーダボード36との間に用紙Pを導入しやすくするため、後端部がカールして形成される。
コロ36Cは、前後のリテーナ36Bの間に配設される。このコロ36Cは、用紙Pの搬送面に押圧当接されて設置される。前後のリテーナ36Bの間を搬送される用紙Pは、このコロ36Cによって上面が抑えられながら搬送される。
前当て38は、用紙Pの姿勢を矯正する。この前当て38は、板状に形成され、用紙Pの搬送方向と直交して配置される。また、図示しないモータに駆動されて、揺動可能に設けられる。フィーダボード36の上を搬送された用紙Pは、その先端が前当て38に当接されて、姿勢が矯正される(いわゆる、スキュー防止)。前当て38は、給紙ドラム40への用紙の給紙に連動して揺動し、姿勢を矯正した用紙Pを給紙ドラム40に受け渡す。
給紙ドラム40は、前当て38を介してフィーダボード36から給紙される用紙Pを受け取り、処理液塗布部14へと搬送する。給紙ドラム40は、円筒状に形成され、図示しないモータに駆動されて回転する。給紙ドラム40の外周面上には、グリッパ40Aが備えられ、このグリッパ40Aによって用紙Pの先端が把持される。給紙ドラム40は、グリッパ40Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けながら、処理液塗布部14へと用紙Pを搬送する。
給紙部12は、以上のように構成される。給紙台30の上に積載された用紙Pは、サッカー装置32によって上から順に1枚ずつ引き上げられて、給紙ローラ対34に給紙される。給紙ローラ対34に給紙された用紙Pは、その給紙ローラ対34を構成する上下一対のローラ34A、34Bによって前方に送り出され、フィーダボード36の上に載置される。フィーダボード36の上に載置された用紙Pは、フィーダボード36の搬送面に設けられたテープフィーダ36Aによって搬送される。そして、その搬送過程でリテーナ36Bによってフィーダボード36の搬送面に押し付けられ、凹凸が矯正される。フィーダボード36によって搬送された用紙Pは、先端が前当て38に当接されることにより、傾きが矯正され、その後、給紙ドラム40に受け渡される。そして、その給紙ドラム40によって処理液塗布部14へと搬送される。
〈処理液塗布部〉
処理液塗布部14は、用紙Pの表面(画像記録面)にインクを凝集させる機能を有する処理液を塗布する。この処理液塗布部14は、主として、用紙Pを搬送する処理液塗布ドラム42と、処理液塗布ドラム42によって搬送される用紙Pの表面(画像記録面)に処理液を塗布する処理液塗布装置44とを備えて構成される。
処理液塗布ドラム42は、記録媒体としての用紙Pの保持手段(記録媒体保持手段)として機能するとともに、記録媒体としての用紙Pの搬送手段(記録媒体搬送手段)として機能し、給紙部12の給紙ドラム40から用紙Pを受け取り、外周面上に保持して回転することにより、用紙Pを処理液乾燥処理部16へと搬送する。
処理液塗布ドラム42は、円筒状に形成され、図示しないモータに駆動されて回転する。処理液塗布ドラム42の外周面上には、グリッパ42Aが備えられ、このグリッパ42Aによって用紙Pの先端が把持される。処理液塗布ドラム42は、このグリッパ42Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けながら、処理液乾燥処理部16へと用紙Pを搬送する(1回転で1枚の用紙Pを搬送する。)。処理液塗布ドラム42と給紙ドラム40は、互いの用紙Pの受け取りと受け渡しのタイミングが合うように、回転が制御される。すなわち、同じ周速度となるように駆動されるとともに、互いのグリッパの位置が合うように駆動される。
処理液塗布装置44は、処理液塗布ドラム42によって搬送される用紙Pの表面に処理液を塗布する処理液塗布手段として機能する。処理液塗布装置44は、たとえば、ローラ塗布装置で構成され、周面に処理液が付与された塗布ローラを用紙Pの表面に押圧当接させて、用紙Pの表面に処理液を塗布する。処理液塗布装置44は、この他、たとえば、処理液をインクジェット方式で吐出して塗布するヘッドや、処理液を噴霧して塗布するスプレで構成することもできる。
処理液塗布部14は、以上のように構成される。給紙部12の給紙ドラム40から受け渡された用紙Pは、処理液塗布ドラム42で受け取られる。処理液塗布ドラム42は、用紙Pの先端をグリッパ42Aで把持して、回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けて搬送する。この搬送過程で塗布ローラが用紙Pの表面に押圧当接され、用紙上を塗布ローラが転動して、用紙Pの表面に処理液が塗布される。
なお、この処理液塗布部14で塗布する処理液は、インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含む液体で構成される。凝集剤としては、インク組成物のpHを変化させることができる化合物であっても、多価金属塩であっても、ポリアリルアミン類であってもよい。pHを低下させ得る化合物としては、水溶性の高い酸性物質(リン酸、シュウ酸、マロン酸、クエン酸、若しくは、これらの化合物の誘導体、又は、これらの塩等)が好適に挙げられる。酸性物質は、1種単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。これにより、凝集性を高め、インク全体を固定化することができる。また、インク組成物のpH(25℃)は、8.0以上であって、処理液のpH(25℃)は、0.5〜4の範囲が好ましい。これにより、画像濃度、解像度及びインクジェット記録の高速化を図ることができる。
処理液には添加剤を含有することができ、たとえば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤を含有することができる。
このような処理液を用紙Pの表面(画像記録面)に塗布して画像を記録することにより、フェザリングやブリーディング等の発生を防止でき、浸透性を有する汎用の印刷用紙を使用しても、高品質な印刷を行うことが可能になる。
〈処理液乾燥処理部〉
処理液乾燥処理部16は、表面に処理液が付与された用紙Pを乾燥処理する。この処理液乾燥処理部16は、主として、用紙Pを搬送する処理液乾燥処理ドラム46と、用紙搬送ガイド48と、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される用紙Pの画像記録面に熱風を吹き当てて乾燥させる処理液乾燥処理ユニット50とを備えて構成される。
処理液乾燥処理ドラム46は、処理液塗布部14の処理液塗布ドラム42から用紙Pを受け取り、画像記録部18へと用紙Pを搬送する。処理液乾燥処理ドラム46は、円筒状に組んだ枠体で構成され、図示しないモータに駆動されて回転する。処理液乾燥処理ドラム46の外周面上には、グリッパ46Aが備えられ、このグリッパ46Aによって用紙Pの先端が把持される。処理液乾燥処理ドラム46は、このグリッパ46Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、画像記録部18と用紙Pを搬送する。なお、本例の処理液乾燥処理ドラム46は、外周面上の2カ所にグリッパ42Aが配設され、1回の回転で2枚の用紙Pが搬送できるように構成されている。処理液乾燥処理ドラム46と処理液塗布ドラム42は、互いの用紙Pの受け取りと受け渡しのタイミングが合うように、回転が制御される。すなわち、同じ周速度となるように駆動されるとともに、互いのグリッパの位置が合うように駆動される。
用紙搬送ガイド48は、処理液乾燥処理ドラム46による用紙Pの搬送経路に沿って配設され、用紙Pの搬送をガイドする。
処理液乾燥処理ユニット50は、処理液乾燥処理ドラム46の内側に設置され、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される用紙Pの表面に向けて熱風を吹き当てて乾燥処理する。本例では、2台の処理液乾燥処理ユニット50が、処理液乾燥処理ドラム内に配設され、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される用紙Pの表面に向けて熱風を吹き当てる構成とされている。
処理液乾燥処理部16は、以上のように構成される。処理液塗布部14の処理液塗布ドラム42から受け渡された用紙Pは、処理液乾燥処理ドラム46で受け取られる。処理液乾燥処理ドラム46は、用紙Pの先端をグリッパ46Aで把持して、回転することにより、用紙Pを搬送する。この際、処理液乾燥処理ドラム46は、用紙Pの表面(処理液が塗布された面)を内側に向けて搬送する。用紙Pは、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される過程で処理液乾燥処理ドラム46の内側に設置された処理液乾燥処理ユニット50から熱風が表面に吹き当てられて、乾燥処理される。すなわち、処理液中の溶媒成分が除去される。これにより、用紙Pの表面にインク凝集層が形成される。
〈画像記録部〉
画像記録部18は、用紙Pの画像記録面にC、M、Y、Kの各色のインクを打滴して、用紙Pの画像記録面にカラー画像を描画する。この画像記録部18は、主として、用紙Pを搬送する画像記録ドラム52と、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pを押圧して、用紙Pを画像記録ドラム52の周面に密着させる用紙押さえローラ54と、用紙PにC、M、Y、Kの各色のインク滴を吐出して画像を記録するヘッドユニット56と、用紙Pに記録された画像を読み取る画像読取手段としてのインラインセンサ58と、インクミストを捕捉するミストフィルタ60と、画像記録ドラム52を冷却するドラム冷却ユニット62とを備えて構成される。
画像記録ドラム52は、記録媒体としての用紙Pを保持する記録媒体保持手段として機能するとともに、記録媒体としての用紙Pを搬送する記録媒体搬送手段として機能する。画像記録ドラム52は、処理液乾燥処理部16の処理液乾燥処理ドラム46から用紙Pを受け取り、インク乾燥処理部20へと用紙Pを搬送する。画像記録ドラム52は、円筒状に形成され、駆動手段としての図示しないモータに駆動されて回転する。画像記録ドラム52の外周面上には、グリッパが備えられ、このグリッパによって用紙Pの先端が把持される。画像記録ドラム52は、このグリッパによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けながら、用紙Pをインク乾燥処理部20へと搬送する。また、画像記録ドラム52は、その周面に多数の吸着穴(不図示)が所定のパターンで形成される。画像記録ドラム52の周面に巻き掛けられた用紙Pは、この吸着穴から吸引されることにより、画像記録ドラム52の周面に吸着保持されながら搬送される。これにより、高い平坦性をもって用紙Pを搬送することができる。
用紙押さえローラ54は、画像記録ドラム52の用紙受取位置(処理液乾燥処理ドラム46から用紙Pを受け取る位置)の近傍に配設される。この用紙押さえローラ54は、ゴムローラで構成され、画像記録ドラム52の周面に押圧当接させて設置される。処理液乾燥処理ドラム46から画像記録ドラム52受け渡された用紙Pは、この用紙押さえローラ54を通過することによりニップされ、画像記録ドラム52の周面に密着させられる。
ヘッドユニット56は、シアン(C)のインク滴をインクジェット方式で吐出するインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)200Cと、マゼンタ(M)のインク滴をインクジェット方式で吐出するインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)200Mと、イエロ(Y)のインク滴をインクジェット方式で吐出するインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)200Yと、クロ(K)のインク滴をインクジェット方式で吐出するインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)200Kとを備えて構成される。各インクジェットヘッド200C、200M、200Y、200Kは、画像記録ドラム52による用紙Pの搬送経路に沿って一定の間隔をもって配置される。
各インクジェットヘッド200C、200M、200Y、200Kは、ラインヘッドで構成され、最大の用紙幅に対応する長さで形成される。各インクジェットヘッド200C、200M、200Y、200Kは、ノズル面(ノズルが配列される面)が画像記録ドラム52の周面に対向するように配置される。
各インクジェットヘッド200C、200M、200Y、200Kは、ノズル面に形成されたノズルから、画像記録ドラム52に向けてインクの液滴を吐出することにより、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pに画像を記録する。
なお、このインクジェットヘッド200C、200M、200Y、200Kの構成については、後に詳述する。
インラインセンサ58は、用紙Pに記録された画像を読み取る画像読取手段として機能する。インラインセンサ58は、画像記録ドラム52による用紙Pの搬送方向に対して、最後尾のインクジェットヘッド200Kの下流側に設置され、インクジェットヘッド200C、200M、200Y、200Kで記録された画像を読み取る。このインラインセンサ58は、たとえば、ラインスキャナで構成され、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pからインクジェットヘッド200C、200M、200Y、200Kによって記録された画像を読み取る。
なお、インラインセンサ58の下流側には、インラインセンサ58に近接して接触防止板59が設置される。この接触防止板59は、搬送の不具合等によって用紙Pに浮きが生じた場合に、用紙Pがインラインセンサ58に接触するのを防止する。
ミストフィルタ60は、最後尾のインクジェットヘッド200Kとインラインセンサ58との間に配設され、画像記録ドラム52の周辺の空気を吸引してインクミストを捕捉する。このように、画像記録ドラム52の周辺の空気を吸引してインクミストを捕捉することにより、インラインセンサ58へのインクミストの進入を防止でき、読み取り不良等の発生を防止できる。
ドラム冷却ユニット62は、画像記録ドラム52に冷風を吹き当てて、画像記録ドラム52を冷却する。このドラム冷却ユニット62は、主として、エアコン(不図示)と、そのエアコンから供給される冷気を画像記録ドラム52の周面に吹き当てるダクト62Aとで構成される。ダクト62Aは、画像記録ドラム52に対して、用紙Pの搬送領域以外の領域に冷気を吹き当てて、画像記録ドラム52を冷却する。本例では、画像記録ドラム52のほぼ上側半分の円弧面に沿って用紙Pが搬送されるので、ダクト62Aは、画像記録ドラム52のほぼ下側半分の領域に冷気を吹き当てて、画像記録ドラム52を冷却する構成とされている。具体的には、ダクト62Aの吹出口が、画像記録ドラム52のほぼ下側半分を覆うように円弧状に形成され、画像記録ドラム52のほぼ下側半分の領域に冷気が吹き当てられる構成とされている。
ここで、画像記録ドラム52を冷却する温度は、インクジェットヘッド200C、200M、200Y、200Kの温度(特にノズル面の温度)との関係で定まり、インクジェットヘッド200C、200M、200Y、200Kの温度よりも低い温度となるように冷却される。これにより、インクジェットヘッド200C、200M、200Y、200Kに結露が生じるのを防止することができる。すなわち、インクジェットヘッド200C、200M、200Y、200Kよりも画像記録ドラム52の温度を低くすることにより、画像記録ドラム側に結露を誘発することができ、インクジェットヘッド200C、200M、200Y、200Kに生じる結露(特にノズル面に生じる結露)を防止することができる。
画像記録部18は、以上のように構成される。処理液乾燥処理部16の処理液乾燥処理ドラム46から受け渡された用紙Pは、画像記録ドラム52で受け取られる。画像記録ドラム52は、用紙Pの先端をグリッパで把持して、回転することにより、用紙Pを搬送する。画像記録ドラム52に受け渡された用紙Pは、まず、用紙押さえローラ54を通過することにより、画像記録ドラム52の周面に密着される。これと同時に画像記録ドラム52の吸着穴から吸引されて、画像記録ドラム52の外周面上に吸着保持される。用紙Pは、この状態で搬送されて、各インクジェットヘッド200C、200M、200Y、200Kを通過する。そして、その通過時に各インクジェットヘッド200C、200M、200Y、200KからC、M、Y、Kの各色のインクの液滴が表面に打滴されて、表面にカラー画像が描画される。用紙Pの表面にはインク凝集層が形成されているので、フェザリングやブリーディング等を起こすことなく、高品位な画像を記録することができる。
インクジェットヘッド200C、200M、200Y、200Kによって画像が記録された用紙Pは、次いで、インラインセンサ58を通過する。そして、そのインラインセンサ58の通過時に表面に記録された画像が読み取られる。この記録画像の読み取りは必要に応じて行われ、読み取られた画像から吐出不良等の検査が行われる。読み取りを行う際は、画像記録ドラム52に吸着保持された状態で読み取りが行われるので、高精度に読み取りを行うことができる。また、画像記録直後に読み取りが行われるので、たとえば、吐出不良等の異常を直ちに検出することができ、その対応を迅速に行うことができる。これにより、無駄な記録を防止できるとともに、損紙の発生を最小限に抑えることができる。
この後、用紙Pは、吸着が解除された後、インク乾燥処理部20へと受け渡される。
〈インク乾燥処理部〉
インク乾燥処理部20は、画像記録後の用紙Pを乾燥処理し、用紙Pの表面に残存する液体成分を除去する。インク乾燥処理部20は、画像が記録された用紙Pを搬送するチェーングリッパ64と、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pにバックテンションを付与するバックテンション付与機構66と、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pを乾燥処理するインク乾燥処理ユニット68とを備えて構成される。
チェーングリッパ64は、インク乾燥処理部20、紫外線照射部22、排紙部24において共通して使用される用紙搬送機構であり、画像記録部18から受け渡された用紙Pを受け取って、排紙部24まで搬送する。
このチェーングリッパ64は、主として、画像記録ドラム52に近接して設置される第1スプロケット64Aと、排紙部24に設置される第2スプロケット64Bと、第1スプロケット64Aと第2スプロケット64Bとに巻き掛けられる無端状のチェーン64Cと、チェーン64Cの走行をガイドする複数のチェーンガイド(不図示)と、チェーン64Cに一定の間隔をもって取り付けられる複数のグリッパ64Dとで構成される。第1スプロケット64Aと、第2スプロケット64Bと、チェーン64Cと、チェーンガイドとは、それぞれ一対で構成され、用紙Pの幅方向の両側に配設される。グリッパ64Dは、一対で設けられるチェーン64Cに掛け渡されて設置される。
第1スプロケット64Aは、画像記録ドラム52から受け渡される用紙Pをグリッパ64Dで受け取ることができるように、画像記録ドラム52に近接して設置される。この第1スプロケット64Aは、図示しない軸受に軸支されて、回転自在に設けられるとともに、図示しないモータが連結される。第1スプロケット64A及び第2スプロケット64Bに巻き掛けられるチェーン64Cは、このモータを駆動することにより走行する。
第2スプロケット64Bは、画像記録ドラム52から受け取った用紙Pを排紙部24で回収できるように、排紙部24に設置される。すなわち、この第2スプロケット64Bの設置位置が、チェーングリッパ64による用紙Pの搬送経路の終端とされる。この第2スプロケット64Bは、図示しない軸受に軸支されて、回転自在に設けられる。
チェーン64Cは、無端状に形成され、第1スプロケット64Aと第2スプロケット64Bとに巻き掛けられる。
チェーンガイドは、所定位置に配置されて、チェーン64Cが所定の経路を走行するようにガイドする(=用紙Pが所定の搬送経路を走行して搬送されるようにガイドする。)。本例のインクジェット記録装置10では、第2スプロケット64Bが第1スプロケット64Aよりも高い位置に配設される。このため、チェーン64Cが、途中で傾斜するような走行経路が形成される。具体的には、第1水平搬送経路70Aと、傾斜搬送経路70Bと、第2水平搬送経路70Cとで構成される。
第1水平搬送経路70Aは、第1スプロケット64Aと同じ高さに設定され、第1スプロケット64Aに巻き掛けられたチェーン64Cが、水平に走行するように設定される。
第2水平搬送経路70Cは、第2スプロケット64Bと同じ高さに設定され、第2スプロケット64Bに巻き掛けられたチェーン64Cが、水平に走行するように設定される。
傾斜搬送経路70Bは、第1水平搬送経路70Aと第2水平搬送経路70Cとの間に設定され、第1水平搬送経路70Aと第2水平搬送経路70Cとの間を結ぶように設定される。
チェーンガイドは、この第1水平搬送経路70Aと、傾斜搬送経路70Bと、第2水平搬送経路70Cとを形成するように配設される。具体的には、少なくとも第1水平搬送経路70Aと傾斜搬送経路70Bとの接合ポイント、及び、傾斜搬送経路70Bと第2水平搬送経路70Cとの接合ポイントに配設される。
グリッパ64Dは、チェーン64Cに一定の間隔をもって複数取り付けられる。このグリッパ64Dの取付間隔は、画像記録ドラム52からの用紙Pの受け取り間隔に合わせて設定される。すなわち、画像記録ドラム52から順次受け渡される用紙Pをタイミングを合わせて画像記録ドラム52から受け取ることができるように、画像記録ドラム52からの用紙Pの受け取り間隔に合わせて設定される。
チェーングリッパ64は、以上のように構成される。上記のように、第1スプロケット64Aに接続されたモータ(不図示)を駆動すると、チェーン64Cが走行する。チェーン64Cは、画像記録ドラム52の周速度と同じ速度で走行する。また、画像記録ドラム52から受け渡される用紙Pが、各グリッパ64Dで受け取れるようにタイミングが合わせられる。
バックテンション付与機構66は、チェーングリッパ64によって先端を把持されながら搬送される用紙Pにバックテンションを付与する。このバックテンション付与機構66は、主として、ガイドプレート72と、そのガイドプレート72に形成される吸着穴(不図示)から空気を吸引する吸引機構(不図示)とで構成される。
ガイドプレート72は、用紙幅に対応した幅を有する中空状のボックスプレートで構成される。このガイドプレート72は、チェーングリッパ64による用紙Pの搬送経路(=チェーンの走行経路)に沿って配設される。具体的には、第1水平搬送経路70Aと傾斜搬送経路70Bとを走行するチェーン64Cに沿って配設され、チェーン64Cから所定距離離間して配設される。チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pは、その裏面(画像が記録されていない側の面)が、このガイドプレート72の上面(チェーン64Cと対向する面:摺接面)の上を摺接しながら搬送される。
ガイドプレート72の摺接面(上面)には、多数の吸着穴(不図示)が所定のパターンで多数形成される。上記のように、ガイドプレート72は、中空のボックスプレートで形成される。吸引機構(不図示)は、このガイドプレート72の中空部(内部)を吸引する。これにより、摺接面に形成された吸着穴から空気が吸引される。
ガイドプレート72の吸着穴から空気が吸引されることにより、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pの裏面が吸着穴に吸引される。これにより、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pにバックテンションが付与される。
上記のように、ガイドプレート72は、第1水平搬送経路70Aと傾斜搬送経路70Bとを走行するチェーン64Cに沿って配設されるので、第1水平搬送経路70Aと傾斜搬送経路70Bとを搬送されている間、バックテンションが付与される。
インク乾燥処理ユニット68は、チェーングリッパ64の内部(特に第1水平搬送経路70Aを構成する部位)に設置され、第1水平搬送経路70Aを搬送される用紙Pに対して乾燥処理を施す。このインク乾燥処理ユニット68は、第1水平搬送経路70Aを搬送される用紙Pの表面に熱風を吹き当てて乾燥処理する。インク乾燥処理ユニット68は、第1水平搬送経路70Aに沿って複数台配置される。この設置数は、インク乾燥処理ユニット68の処理能力や用紙Pの搬送速度(=印刷速度)等に応じて設定される。すなわち、画像記録部18から受け取った用紙Pが第1水平搬送経路70Aを搬送されている間に乾燥させることができるように設定される。したがって、第1水平搬送経路70Aの長さも、このインク乾燥処理ユニット68の能力を考慮して設定される。
なお、乾燥処理を行うことにより、インク乾燥処理部20の湿度が上がる。湿度が上がると、効率よく乾燥処理することができなくなるので、インク乾燥処理部20には、インク乾燥処理ユニット68と共に排気手段を設置し、乾燥処理によって発生する湿り空気を強制的に排気することが好ましい。排気手段は、たとえば、排気ダクトをインク乾燥処理部20に設置し、この排気ダクトによってインク乾燥処理部20の空気を排気する構成とすることができる。
インク乾燥処理部20は、以上のように構成される。画像記録部18の画像記録ドラム52から受け渡された用紙Pは、チェーングリッパ64で受け取られる。チェーングリッパ64は、用紙Pの先端をグリッパ64Dで把持して、平面状のガイドプレート72に沿わせて用紙Pを搬送する。チェーングリッパ64に受け渡された用紙Pは、まず、第1水平搬送経路70Aを搬送される。この第1水平搬送経路70Aを搬送される過程で用紙Pは、チェーングリッパ64の内部に設置されたインク乾燥処理ユニット68によって乾燥処理が施される。すなわち、表面(画像記録面)に熱風が吹き当てられて、乾燥処理が施される。この際、用紙Pは、バックテンション付与機構66によってバックテンションが付与されながら乾燥処理が施される。これにより、用紙Pの変形を抑えながら乾燥処理することができる。
〈紫外線照射部〉
紫外線照射部22は、紫外線硬化型の水性インクを用いて記録された画像に紫外線(UV)を照射して、画像を定着させる。この紫外線照射部22は、主として、乾燥処理された用紙Pを搬送するチェーングリッパ64と、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pにバックテンションを付与するバックテンション付与機構66と、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pに紫外線を照射する紫外線照射ユニット74とで構成される。
上記のように、チェーングリッパ64とバックテンション付与機構66は、インク乾燥処理部20及び排紙部24と共に共通して使用される。
紫外線照射ユニット74は、チェーングリッパ64の内部(特に傾斜搬送経路70Bを構成する部位)に設置され、傾斜搬送経路70Bを搬送される用紙Pの表面に紫外線を照射する。この紫外線照射ユニット74は、紫外線ランプ(UVランプ)を備え、傾斜搬送経路70Bに沿って複数配設される。そして、傾斜搬送経路70Bを搬送される用紙Pの表面に向けて紫外線を照射する。この紫外線照射ユニット74の設置数は、用紙Pの搬送速度(=印刷速度)等に応じて設定される。すなわち、用紙Pが傾斜搬送経路70Bを搬送されている間に照射した紫外線によって画像を定着させることができるように設定される。したがって、傾斜搬送経路70Bの長さも、この用紙Pの搬送速度等を考慮して設定される。
紫外線照射部22は、以上のように構成される。チェーングリッパ64に搬送されてインク乾燥処理部20で乾燥処理が施された用紙Pは、次いで、傾斜搬送経路70Bを搬送される。この傾斜搬送経路70Bを搬送される過程で用紙Pは、チェーングリッパ64の内部に設置された紫外線照射ユニット74により紫外線照射が施される。すなわち、紫外線照射ユニット74から表面に向けて紫外線が照射される。この際、用紙Pは、バックテンション付与機構66によってバックテンションが付与されながら紫外線照射が施される。これにより、用紙Pの変形を抑えながら紫外線照射を施すことができる。また、紫外線照射部22は、傾斜搬送経路70Bに設置されており、傾斜搬送経路70Bには傾斜したガイドプレート72が設置されているため、たとえ、用紙Pが搬送途中でグリッパ64Dから落下した場合であっても、ガイドプレート72上を滑らせて排出させることができる。
〈排紙部〉
排紙部24は、一連の画像記録処理が行われた用紙Pを排紙し、回収する。この排紙部24は、主として、紫外線照射された用紙Pを搬送するチェーングリッパ64と、用紙Pを積み重ねて回収する排紙台76とを備えて構成される。
上記のように、チェーングリッパ64は、インク乾燥処理部20及び紫外線照射部22と共に共通して使用される。チェーングリッパ64は、排紙台76の上で用紙Pを開放し、排紙台76の上に用紙Pをスタックさせる。
排紙台76は、チェーングリッパ64から開放された用紙Pを積み重ねて回収する。この排紙台76には、用紙Pが整然と積み重ねられるように、用紙当て(前用紙当て、後用紙当て、横用紙当て等)が備えられる(不図示)。
また、排紙台76は、図示しない排紙台昇降装置によって昇降可能に設けられる。排紙台昇降装置は、排紙台76にスタックされる用紙Pの増減に連動して、その駆動が制御され、最上位に位置する用紙Pが常に一定の高さに位置するように、排紙台76を昇降させる。
《制御系》
図2は、本実施の形態のインクジェット記録装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。
同図に示すように、インクジェット記録装置10は、システムコントローラ100、通信部102、画像メモリ104、搬送制御部110、給紙制御部112、処理液付与制御部114、処理液乾燥制御部116、画像記録制御部118、インク乾燥制御部120、紫外線照射制御部122、排紙制御部124、操作部130、表示部132、不揮発性メモリ134等が備えられる。
システムコントローラ100は、インクジェット記録装置10の各部を統括制御する制御手段として機能するとともに、各種演算処理を行う演算手段として機能する。このシステムコントローラ100は、CPU、ROM、RAM等を備えており、所定の制御プログラムに従って動作する。ROMには、このシステムコントローラ100が、実行する制御プログラム、及び、制御に必要な各種データが格納される。
通信部102は、所要の通信インターフェースを備え、その通信インターフェースと接続されたホストコンピュータとの間でデータの送受信を行う。
画像メモリ104は、画像データを含む各種データの一時記憶手段として機能し、システムコントローラ100を通じてデータの読み書きが行われる。通信部102を介してホストコンピュータから取り込まれた画像データは、この画像メモリ104に格納される。
搬送制御部110は、インクジェット記録装置10における用紙Pの搬送系を制御する。すなわち、給紙部12におけるテープフィーダ36A、前当て38、給紙ドラム40の駆動を制御するとともに、処理液塗布部14における処理液塗布ドラム42、処理液乾燥処理部16における処理液乾燥処理ドラム46、画像記録部18における画像記録ドラム52の駆動を制御する。また、インク乾燥処理部20、紫外線照射部22及び排紙部24で共通して用いられるチェーングリッパ64及びバックテンション付与機構66の駆動を制御する。
搬送制御部110は、システムコントローラ100からの指令に応じて、搬送系を制御し、給紙部12から排紙部24まで滞りなく用紙Pが搬送されるように制御する。
給紙制御部112は、システムコントローラ100からの指令に応じて給紙部12を制御する。具体的には、サッカー装置32及び給紙台昇降機構等の駆動を制御して、給紙台30に積載された用紙Pが、重なることなく1枚ずつ順に給紙されるように制御する。
処理液付与制御部114は、システムコントローラ100からの指令に応じて処理液塗布部14を制御する。具体的には、処理液塗布ドラム42によって搬送される用紙Pに処理液が塗布されるように、処理液塗布装置44の駆動を制御する。
処理液乾燥制御部116は、システムコントローラ100からの指令に応じて処理液乾燥処理部16を制御する。具体的には、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される用紙Pが乾燥処理されるように、処理液乾燥処理ユニット50の駆動を制御する。
画像記録制御部118は、システムコントローラ100からの指令に応じて画像記録部18を制御する。具体的には、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pに所定の画像が記録されるように、インクジェットヘッド200C、200M、200Y、200Kの駆動を制御する。また、記録された画像が読み取られるように、インラインセンサ58の動作を制御する。
インク乾燥制御部120は、システムコントローラ100からの指令に応じてインク乾燥処理部20を制御する。具体的には、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pに熱風が送風されるようにインク乾燥処理ユニット68の駆動を制御する。
紫外線照射制御部122は、システムコントローラ100からの指令に応じて紫外線照射部22を制御する。具体的には、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pに紫外線が照射されるように紫外線照射ユニット74の駆動を制御する。
排紙制御部124は、システムコントローラ100からの指令に応じて排紙部24を制御する。具体的には、排紙台昇降機構等の駆動を制御して、排紙台76に用紙Pがスタックされるように制御する。
操作部130は、所要の操作手段(たとえば、操作ボタンやキーボード、タッチパネル等)を備え、その操作手段から入力された操作情報をシステムコントローラ100に出力する。システムコントローラ100は、この操作部130から入力された操作情報に応じて各種処理を実行する。
表示部132は、所要の表示装置(たとえば、LCDパネル等)を備え、システムコントローラ100からの指令に応じて所要の情報を表示装置に表示させる。
不揮発性メモリ134は、たとえば、EEPROM (electrically erasable programmable read only memory)等で構成され、制御等に必要な各種データや各種設定情報等が記録される。
上記のように、用紙に記録する画像データは、ホストコンピュータから通信部102を介してインクジェット記録装置10に取り込まれる。取り込まれた画像データは、画像メモリ104に格納される。
システムコントローラ100は、この画像メモリ104に格納された画像データに所要の信号処理を施してドットデータを生成する。そして、生成したドットデータに従って画像記録部18の各インクジェットヘッド200C、200M、200Y、200Kの駆動を制御し、その画像データが表す画像を用紙に記録する。
ドットデータは、一般に画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って生成される。色変換処理は、sRGBなどで表現された画像データ(たとえば、RGB8ビットの画像データ)をインクジェット記録装置10で使用するインクの各色のインク量データに変換する処理である(本例では、C、M、Y、Kの各色のインク量データに変換する。)。ハーフトーン処理は、色変換処理により生成された各色のインク量データに対して誤差拡散等の処理で各色のドットデータに変換する処理である。
システムコントローラ100は、画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って各色のドットデータを生成する。そして、生成した各色のドットデータに従って、対応するインクジェットヘッドの駆動を制御することにより、画像データが表す画像を用紙に記録する。
また、後述するように、システムコントローラ100は、インクジェットヘッド200C、200M、200Y、200Kを構成するヘッドモジュールの位置決め時に所定のテストパターンの画像を用紙Pに描画させ、描画された画像をインラインセンサ58に読み取られ、読み取られた画像を処理して、各ヘッドモジュールの取付位置の修正量を算出する処理を行う。
なお、図示されていないが、インクジェット記録装置10には、画像記録部18に隣接してメンテナンス部が備えられる。メンテナンス部はインクジェットヘッド200のメンテナンスを行う。メンテナンス部には、インクジェットヘッド200のノズル面を覆うキャップや、ノズル面をクリーニングするクリーニング装置等が備えられる。ヘッドユニット56は、ヘッドユニット移送機構によって画像記録部18とメンテナンス部との間を移動可能に設けられ、必要に応じてメンテナンス部でメンテナンス処理が施される。たとえば、長期間運転を停止するような場合には、インクジェットヘッド200がメンテナンス部に移動して、ノズル面がキャップで覆われる。これにより、ノズル面の乾燥が防止される。また、インクジェットヘッド200は、使用によりノズル面が汚れるので、定期的にクリーニング装置によってノズル面がクリーニングされる。ノズル面のクリーニングは、たとえば、ノズル面をブレードやウェブで払拭することにより行われる。
《インクジェット記録装置による記録動作》
次に、以上のように構成されるインクジェット記録装置10の画像記録時の動作について説明する。
操作部130を介してシステムコントローラ100に印刷ジョブの開始が指示されると、サイクルアップの処理が行われる。すなわち、安定した動作を行うことができるように、各部で準備動作が行われる。
サイクルアップが完了すると、印刷処理が開始される。すなわち、給紙部12から用紙Pが順次給紙される。
給紙部12では、給紙台30に積載された用紙Pを上から順に1枚ずつサッカー装置32で給紙する。サッカー装置32から給紙された用紙Pは、給紙ローラ対34を介して1枚ずつフィーダボード36の上に載置される。
フィーダボード36の上に載置された用紙Pは、フィーダボード36に備えられたテープフィーダ36Aによって送りが与えられて、フィーダボード36の上を滑りながら給紙ドラム40へと搬送される。この際、順次給紙される用紙Pは、互いに重なることなく1枚ずつフィーダボード36の上を滑りながら給紙ドラム40へと搬送される。また、その搬送過程でリテーナ36Bによって上面がフィーダボード36に向けて押し付けられる。これにより、凹凸が矯正される。
フィーダボード36の終端まで搬送された用紙Pは、先端が前当て38に当接された後、給紙ドラム40に受け渡される。これにより、傾きを発生させることなく、一定の姿勢で用紙Pを給紙ドラム40に給紙することができる。
給紙ドラム40は、回転しながら用紙Pの先端をグリッパ40Aで把持することにより用紙Pを受け取り、用紙Pを処理液塗布部14に向けて搬送する。
処理液塗布部14に搬送された用紙Pは、給紙ドラム40から処理液塗布ドラム42へと受け渡される。
処理液塗布ドラム42は、回転しながら用紙Pの先端をグリッパ40Aで把持して受け取り、用紙Pを処理液乾燥処理部16に向けて搬送する。用紙Pは、この処理液塗布ドラム42によって搬送される過程で処理液塗布装置44によって表面に処理液が塗布される。
表面に処理液が塗布された用紙Pは、処理液塗布ドラム42から処理液乾燥処理ドラム46に受け渡される。
処理液乾燥処理ドラム46は、回転しながら用紙Pの先端を把持して受け取り、用紙Pを画像記録部18に向けて搬送する。用紙Pは、この処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される過程で処理液乾燥処理ユニット50から送風される熱風が表面に吹き当てられて、乾燥処理される。これにより、処理液中の溶媒成分が除去され、用紙Pの表面(画像記録面)にインク凝集層が形成される。
処理液の乾燥処理が施された用紙Pは、処理液乾燥処理ドラム46から画像記録ドラム52に受け渡される。
画像記録ドラム52は、回転しながら用紙Pの先端を把持して受け取り、用紙Pをインク乾燥処理部20に向けて搬送する。用紙Pは、この画像記録ドラム52によって搬送される過程でインクジェットヘッド200C、200M、200Y、200Kによって表面にC、M、Y、Kの各色のインクの液滴が打滴され、画像が記録される。また、その搬送過程で記録された画像が、インラインセンサ58によって読み取られる。この際、用紙Pは、画像記録ドラム52の周面に吸着保持されながら搬送される。そして、この吸着保持された状態で画像の記録、及び、記録された画像の読み取りが行われる。これにより、高精度に画像を記録することができるとともに、高精度に画像の読み取りを行うことができる。
画像が記録された用紙Pは、画像記録ドラム52からチェーングリッパ64に受け渡される。
チェーングリッパ64は、走行するチェーン64Cに備えられたグリッパ64Dで用紙Pの先端を把持して、用紙Pを受け取り、排紙部24に向けて搬送する。
用紙Pは、このチェーングリッパ64による搬送過程で、まず、インクの乾燥処理が施される。すなわち、第1水平搬送経路70Aに設置されたインク乾燥処理ユニット68から表面に向けて熱風が吹き当てられる。これにより、乾燥処理が施される。この際、用紙Pは、ガイドプレート72によって裏面を吸着保持されながら搬送され、バックテンションが付与される。これにより、用紙Pの変形を抑えながら、乾燥処理することができる。
乾燥処理が終了した用紙P(インク乾燥処理部20を通過した用紙P)は、次いで、紫外線照射が施される。すなわち、傾斜搬送経路70Bに設置された紫外線照射ユニット74から表面に向けて紫外線が照射される。これにより、画像を構成するインクが硬化し、画像が用紙Pに定着する。この際、用紙Pは、ガイドプレート72によって裏面を吸着保持されながら搬送され、バックテンションが付与される。これにより、用紙Pの変形を抑えながら、定着処理することができる。
紫外線照射が終了した用紙P(紫外線照射部22を通過した用紙P)は、排紙部24に向けて搬送され、排紙部24においてグリッパ64Dから開放されて、排紙台76の上にスタックされる。
以上一連の動作により画像の記録処理が完了する。上記のように、給紙部12からは用紙Pが連続的に給紙されるので、各部では連続的に用紙Pの処理が行われる。
《ヘッドの構成》
上記のように、本実施の形態のインクジェットヘッド200M,200K,200C,200Yは、用紙幅に対応する長さを有するラインヘッドで構成される。
なお、各インクジェットヘッド200M,200K,200C,200Yの構成は同じなので、ここではインクジェットヘッド200として、その構成について説明する。
図3は、ヘッドの要部の構造を示す底面図(ヘッドをノズル面側から見た図)である。図4は、図3の一部を拡大した拡大図である。図5は、ヘッドの要部の構造を示す正面図である。図6は、ヘッドの要部の構造を示す側面図である。
同図に示すように、インクジェットヘッド200は、複数のヘッドモジュール210を一列に繋ぎ合わせて構成される。各ヘッドモジュール210は同じ構造を有しており、ベースフレーム212に一列に並べて取り付けられることにより、一つのインクジェットヘッド200を構成する。
以下、ヘッドモジュール210とベースフレーム212の構成について説明する。
なお、以下においては、インクジェットヘッド200のノズルの配列方向(ノズル列の方向)をX方向、ノズル面と直交する方向をZ方向、ノズル面と平行かつX方向と直交する方向をY方向とする。X方向、Y方向、Z方向は、互いに直交する。
〈ヘッドモジュール〉
ヘッドモジュール210は、いわゆる短尺のヘッドであり、単体で所定の印字幅の画像を記録することができるものである。このヘッドモジュール210をノズル列の方向(用紙Pの搬送方向と直交する方向)に沿って複数個を繋ぎ合わせることにより、1つの長尺のヘッドが構成される。
図7は、ヘッドモジュールの正面図である。図8は、ヘッドモジュールの背面図である。図9は、ヘッドモジュールの側面部分断面図である。
ヘッドモジュール210は、インクの吐出を行うインクジェットヘッド214と、インクジェットヘッド214をベースフレーム212に取り付けるためのブラケット216とを備えて構成される。
インクジェットヘッド214は、主として、ヘッド本体部218と電装・配管部220とで構成される。
ヘッド本体部218は、矩形の板形状を有する。ヘッド本体部218は下面部分にノズル面222を有する。ノズル面222は、中央部に帯状のノズル形成領域222Aを有する。ノズル形成領域222Aは、一定の幅を有し、X方向に沿って形成される。ノズルNは、このノズル形成領域222Aに形成される。
ここで、本例のインクジェットヘッド214では、図4に示すように、ノズルNが二次元マトリクス状に配置される。具体的には、X方向に沿って一定ピッチで配置されるとともに、X方向に対して所定角度傾斜した方向に沿って一定ピッチで配置される。このようにノズルNを配置することにより、X方向に投影される実質的なノズルNの間隔を狭めることができる。この場合、ノズルNの配列方向(ノズル列の方向)はX方向となる。なお、ノズルNは、X方向に沿って一列に配列する形態とすることもできる。
電装・配管部220は、配管や回路基板等の集合体であり、ヘッド本体部218の上部に設けられる。
ブラケット216は、水平部224と垂直部226とからなるL字状に形成される。
水平部224は、インクジェットヘッド214の取付部として機能する。垂直部226は、ベースフレーム212への取付部として機能する。
水平部224は矩形の板形状を有する。水平部224は、インクジェットヘッド214のヘッド本体部218の外形とほぼ同じ形状(矩形状)で形成される。インクジェットヘッド214は、ヘッド本体部218を水平部224の下面部に取り付けられる。水平部224には、インクジェットヘッド214の電装・配管部220を通すための開口部224Aが備えられる。
垂直部226も板形状を有する。垂直部226は、水平部224に対して垂直に配置され、水平部224の一端に接合されて、水平部224と一体化される。
垂直部226は、水平部224とほぼ同じ幅で形成される垂直部本体226Aと、垂直部本体226Aの両サイドからX方向に張り出して形成される一対の第1張出部226Bと、一対の第1張出部226Bから更にX方向に張り出して形成される一対の第2張出部226Cとを備えて構成される。
垂直部226には、ヘッドモジュール210をベースフレーム212に取り付ける際のY方向の位置決めの基準となるヘッドモジュールY方向位置決め手段と、Z方向の位置決めの基準となるヘッドモジュールZ方向位置決め手段とが設けられるとともに、X方向の取付位置の微調整を行うためのX方向取付位置調整手段の一部が設けられる。
ヘッドモジュールY方向位置決め手段は、ヘッドモジュールY方向位置決め部材を構成する2つのヘッドモジュールY方向固定接点部材234と、同じくヘッドモジュールY方向位置決め部材を構成する1つのヘッドモジュールY方向可動接点部材236とで構成される。
2つのヘッドモジュールY方向固定接点部材234は、垂直部226の第2張出部226Cに設けられる。このヘッドモジュールY方向固定接点部材234は、剛球(剛性を有する球体)で構成される。ヘッドモジュールY方向固定接点部材234は、第2張出部226Cに形成された穴(不図示)に挿入されて、第2張出部226Cの内面(ヘッドモジュール210をベースフレーム212に取り付けたときにベースフレーム212と対向する面)から一部が所定量突出して設けられる。
一方、ヘッドモジュールY方向可動接点部材236は、垂直部226の垂直部本体226Aに設けられる。このヘッドモジュールY方向可動接点部材236は、剛球で構成され、垂直部本体226Aに形成されたヘッドモジュールY方向可動接点部材挿入穴238に挿入されて、垂直部本体226Aに設けられる。ヘッドモジュールY方向可動接点部材挿入穴238は、Y方向に沿って形成され、垂直部本体226Aの外面から内面に向かって貫通して形成される。ヘッドモジュールY方向可動接点部材236は、ヘッドモジュールY方向可動接点部材挿入穴238に挿入されて、垂直部本体226Aの内面から突出可能に設けられる。なお、ヘッドモジュールY方向可動接点部材挿入穴238は、ヘッドモジュールY方向可動接点部材236が脱落しないように、垂直部本体226Aの内面側が縮径して形成される。
ヘッドモジュールY方向可動接点部材挿入穴238はネジ穴で構成され、ヘッドモジュールY方向可動接点部材位置調整ネジ240が螺合される。ヘッドモジュールY方向可動接点部材位置調整ネジ240は、いわゆるイモネジ(ネジ頭部がネジ部と同じ大きさのネジ)で構成される。このヘッドモジュールY方向可動接点部材位置調整ネジ240のネジ込み量を調整することにより、ヘッドモジュールY方向可動接点部材236の垂直部本体226Aの内面からの突出量が調整される。
後述するように、ヘッドモジュールY方向固定接点部材234とヘッドモジュールY方向可動接点部材236とは、ヘッドモジュール210をベースフレーム212に取り付けた際、ベースフレーム212側に設けられる固定接点用ベースフレームY方向位置決め部材290と可動接点用ベースフレームY方向位置決め部材292とに当接される。これにより、ベースフレーム212に対してヘッドモジュール210がY方向に位置決めされる。
ヘッドモジュールZ方向位置決め手段は、ヘッドモジュールZ方向位置決め部材を構成する一対のヘッドモジュールZ方向接点部材242で構成される。
一対のヘッドモジュールZ方向接点部材242は、垂直部226の第1張出部226Bに設けられる。このヘッドモジュールZ方向接点部材242は、剛球で構成される。ヘッドモジュールZ方向接点部材242は、第1張出部226Bに形成されたヘッドモジュールZ方向接点部材挿入穴244に挿入されて、第1張出部226Bに設けられる。ヘッドモジュールZ方向接点部材挿入穴244は、Z方向に沿って形成され、第1張出部226Bの下面から上面に向かって貫通して形成される。ヘッドモジュールZ方向接点部材242は、ヘッドモジュールZ方向接点部材挿入穴244に挿入されて、一部が第1張出部226Bの上面から突出可能に設けられる。なお、ヘッドモジュールZ方向接点部材挿入穴244は、ヘッドモジュールZ方向接点部材242が脱落しないように、第1張出部226Bの上面側が縮径して形成される。
ヘッドモジュールZ方向接点部材挿入穴244は、ネジ穴で構成される。ヘッドモジュールZ方向接点部材挿入穴244には、ヘッドモジュールZ方向接点部材位置調整ネジ246が螺合される。ヘッドモジュールZ方向接点部材位置調整ネジ246は、いわゆるイモネジで構成される。このヘッドモジュールZ方向接点部材位置調整ネジ246のネジ込み量を調整することにより、ヘッドモジュールZ方向接点部材242の第1張出部226Bの上面からの突出量が調整される。
後述するように、ヘッドモジュールZ方向接点部材242は、ヘッドモジュール210をベースフレーム212に取り付けた際、ベースフレーム212側に設けられるベースフレームZ方向接点部材294に当接される。これにより、ベースフレーム212に対してヘッドモジュール210がZ方向に位置決めされる。
なお、一対のヘッドモジュールZ方向接点部材242は、その設置間隔(X方向の設置間隔)が、インクジェットヘッド214の印字領域幅(全体のノズル列の長さ)よりも長くなるように設定することが好ましい。これにより、着座時における安定性が増し、Z方向の位置決め精度を向上させることができる。
また、一対からなるヘッドモジュールY方向固定接点部材234についても同様に、その設置間隔(X方向の設置間隔)が、インクジェットヘッド214の印字領域幅(全体のノズル列の長さ)よりも長くなるように設定することが好ましい。これにより、着座時における安定性が増し、Y方向の位置決め精度を向上させることができる。
X方向取付位置調整手段(取付位置調整手段)は、主として、偏芯ローラ248とプランジャ250とX方向位置決め基準ピン(位置決め基準ピン)296とで構成される。偏芯ローラ248とプランジャ250とは、ヘッドモジュール210に設けられ、X方向位置決め基準ピン296はベースフレーム212に設けられる。
偏芯ローラ248とプランジャ250とは、垂直部本体226Aの内面側に配置される。偏芯ローラ248とプランジャ250とは、一定の間隔をもって互いに対向して配置される。
偏芯ローラ248は、軸部248Aと、ローラ部248Bとを備えて構成される。軸部248Aは、ローラ部248Bを回転させるための回転軸として機能し、ローラ部248Bに対して偏芯して連結される。このため、軸部248Aを回転させると、ローラ部248Bが偏芯して回転する。
偏芯ローラ248の軸部248Aは、雄ネジで構成される。軸部248Aは、垂直部本体226Aの偏芯ローラ取付穴252に挿通される。偏芯ローラ取付穴252はネジ穴で構成され、Y方向と平行に形成される。偏芯ローラ取付穴252は、垂直部本体226Aの外面側から内面側に向けて貫通して形成される。偏芯ローラ248は、軸部248Aが偏芯ローラ取付穴252に螺合されることにより、垂直部本体226Aに取り付けられる。偏芯ローラ248の軸部248Aの基端部端面には、軸部248Aをスクリュードライバで回転させるための溝(+又は−の溝)が形成される。垂直部本体226Aに取り付けられた偏芯ローラ248は、スクリュードライバを用いて軸部248Aを回転させることにより、ローラ部248Bが偏芯して回転する。
ローラ部248Bには、板バネ254が押圧当接される。板バネ254は、垂直部本体226Aの内面側に配置される。板バネ254は、ローラ部248Bの周面に当接され、ローラ部248Bを軸方向に押圧する。ローラ部248Bは、この板バネ254によって、回転に一定の抵抗が付与される。
プランジャ250は、X方向付勢手段として機能する。プランジャ250は、X方向に沿って配置され、先端(押圧部)が偏芯ローラ248に対向して配置される。
上記のように、偏芯ローラ248とプランジャ250とは一定の間隔をもって互いに対向して配置される。ヘッドモジュール210をベースフレーム212に取り付けると、ベースフレーム側に設けられるX方向位置決め基準ピン296が、偏芯ローラ248とプランジャ250との間に嵌入され、偏芯ローラ248とプランジャ250とによって挟持される。プランジャ250は、X方向位置決め基準ピン296をX方向に押圧する。これにより、ヘッドモジュール210がX方向に付勢される。この状態で偏芯ローラ248を回転させると、その回転量に応じてヘッドモジュール210がX方向に移動する。
ブラケット216の垂直部226には、更に、ブラケット216をベースフレーム212に取り付けるためのガイド溝256が形成される。ガイド溝256は、垂直部226の垂直部本体226Aに形成され、所定の幅をもって垂直部本体226Aの上面部から鉛直下向き(Z方向)に所定の深さで形成される。このガイド溝256は、ブラケット216をベースフレーム212に取り付ける際、ベースフレーム側に設けられる一対のY方向ガイドポスト276が嵌入される。このため、ガイド溝256の幅は、Y方向ガイドポスト276の幅(直径)とほぼ同じに形成される。これにより、隣接するヘッドモジュール210との干渉を防ぐことができる。
ガイド溝256は、先端部(下端部)と、ほぼ中央部とに円弧状の拡径部256Aが形成される。ヘッドモジュール210がベースフレーム212の所定の位置に取り付けられると、ベースフレーム側に設けられる一対のY方向ガイドポスト276が、この拡径部256Aに収容される。これにより、ベースフレーム212に取り付けられたヘッドモジュール210が移動可能に支持される。
このようにガイド溝256の拡径部256Aは、ヘッドモジュール210を移動可能に支持するために設けられるので、その形成位置はY方向ガイドポスト276に対応して形成され、ヘッドモジュール210をベースフレーム212に取り付けたとき、そのほぼ中央位置にY方向ガイドポスト276が収容されるように形成される。ここでは、ヘッドモジュール210をベースフレーム212に取り付けたとき、Y方向ガイドポスト276の軸を中心とした円を成すように拡径部256Aが形成される。この円はY方向ガイドポスト276の直径よりも大きく形成される。これにより、ヘッドモジュール210をベースフレーム212に取り付けた際、ヘッドモジュール210を所定範囲内で移動可能に支持することができる。また、ヘッドモジュール210をベースフレーム212に取り付ける際にヘッドモジュール210にガタツキを生じさせることなく取り付けることができる。
また、ガイド溝256の内壁面には、一対の切欠き部258A、258Bが形成される。この一対の切欠き部258A、258Bは、ブラケット216をベースフレーム212に取り付ける際、ベースフレーム側に設けられるZ方向吊り下げロッド278のロック用バー288が係合される。ブラケット216は、この切欠き部258A、258BにZ方向吊り下げロッド278のロック用バー288が係合することにより、ベースフレーム212に係止される。切欠き部258A、258Bは、ガイド溝256の内壁面の対向する位置に形成され、それぞれブラケット216の垂直部226の内面側と外面側に所定の深さをもって形成される。すなわち、垂直部226の外面側に一方の切欠き部258Aが形成され、内面側に他方の切欠き部258Bが形成される。
更に、ブラケット216の垂直部226には、ヘッドモジュール210をベースフレーム212に取り付けた際にヘッドモジュール210の変位量(移動量)を検出するための磁石260が設けられる。この磁石260は、ベースフレーム212側に設けられる磁気センサ298とともに変位量検出手段を構成する。ヘッドモジュール210がベースフレーム212に取り付けられると、この磁石260がベースフレーム212側に設けられる磁気センサ298と対向して配置される。
ヘッドモジュール210は以上のように構成される。
〈ベースフレーム〉
図10は、ベースフレームの要部の構造を示す正面図である。また、図11は、ベースフレームの要部の構造を示す側面断面図である。
ベースフレーム212は、主として、上部フレーム部270と、一対の下部フレーム部272A、272Bとで構成される。
上部フレーム部270は、矩形の板形状を有する。上部フレーム部270は、水平(XY平面と平行)に配設される。一対の下部フレーム部272A、272Bは、矩形の板形状を有する。一対の下部フレーム部272A、272Bは、一定の間隔をもって上部フレーム部270の下部に垂直(XZ平面と平行)に配設される。
一対の下部フレーム部272A、272Bは、ヘッドモジュール210を取り付けるための取付部として機能する。ヘッドモジュール210は、この一対の下部フレーム部272A、272Bに交互に取り付けられる。すなわち、一方の下部フレーム部272Aを第1下部フレーム(第1取付部)、他方の下部フレーム部272Bを第2下部フレーム(第2取付部)とすると、第1番目のヘッドモジュール210は第1下部フレーム部272Aに取り付けられ、その隣に配置される第2番目のヘッドモジュール210は第2下部フレーム部272Bに取り付けられる。また、第2番目のヘッドモジュール210の隣に配置される第3番目のヘッドモジュール210は第1下部フレーム部272Aに取り付けられ、その隣に配置される第4番目のヘッドモジュールは第2下部フレーム部272Bに取り付けられる。このように、ヘッドモジュール210は、第1下部フレーム部272Aと第2下部フレーム部272Bとに交互に取り付けられる。
ベースフレーム212には、ヘッドモジュール210を支持するためのヘッドモジュール支持手段が設けられる。ヘッドモジュール支持手段は、ヘッドモジュールごとに用意される。上記のように、ヘッドモジュール210は、一対の下部フレーム部272A、272Bに交互に取り付けられるので、ヘッドモジュール支持手段は、一対の下部フレーム部272A、272Bに交互に設けられる。したがって、ヘッドモジュール支持手段の設置間隔(X方向の設置間隔)は、各下部フレーム部272A、272Bに取り付けられるヘッドモジュール210の設置間隔(X方向の設置間隔)と一致する。
ヘッドモジュール支持手段は、一対のY方向ガイドポスト276とZ方向吊り下げロッド278とで構成される。
一対のY方向ガイドポスト276は、上下方向(Z方向)に一定の間隔をもって並列して配置される。Y方向ガイドポスト276は、円柱状に形成される。Y方向ガイドポスト276は、頂部にフランジ部276Aを有する。Y方向ガイドポスト276は、下部フレーム部272A、272Bの外側面から突出して設けられ、Y方向と平行に配設される。Y方向ガイドポスト276の幅(直径)は、ガイド溝256の幅とほぼ同じに形成される。
上記のように、ヘッドモジュール210は、ベースフレーム212に取り付ける際、そのブラケット216の垂直部226に形成されたガイド溝256を一対のY方向ガイドポスト276に嵌めて取り付ける。Y方向ガイドポスト276の幅(直径)は、ガイド溝256の幅とほぼ同じに形成されるので、取り付ける際にガタツクことなく取り付けることができる。
一対のY方向ガイドポスト276には、それぞれY方向押圧板280が備えられる。Y方向押圧板280はリング状に形成される。Y方向押圧板280は、その内周部にY方向ガイドポスト276が挿通されて、Y方向ガイドポスト276に設けられる。
また、一対のY方向ガイドポスト276には、それぞれY方向押圧バネ282が備えられる。Y方向押圧バネ282は、その内周部にY方向ガイドポスト276が挿通されて、Y方向ガイドポスト276に設けられる。Y方向押圧バネ282は、Y方向ガイドポスト276のフランジ部276AとY方向押圧板280との間に配置される。
上記のように、ヘッドモジュール210は、ベースフレーム212に取り付ける際、ガイド溝256に一対のY方向ガイドポスト276が嵌め込まれる。一対のY方向ガイドポスト276は、ガイド溝256に嵌め込まれると、Y方向押圧板280がブラケット216の垂直部226に係合する。Y方向押圧板280は、Y方向押圧バネ282によってY方向に付勢されているので、ヘッドモジュール210は、このY方向押圧板280によってベースフレーム212に向けて押圧される。
ここで、一対のY方向ガイドポスト276は、上記のように上下方向に一定の間隔をもって配置されるが、各Y方向ガイドポスト276に備えられるY方向押圧バネ282は付勢力が異なるもの、すなわち、バネ定数が異なるものが使用される。具体的には、下側のY方向ガイドポスト276に備えられるY方向押圧バネ282の方が、上側のY方向ガイドポスト276に備えられるY方向押圧バネ282よりもバネ定数が大きいものが使用される。この結果、下側のY方向ガイドポスト276に備えられるY方向押圧板280による押圧力の方が上側のY方向ガイドポスト276に備えられるY方向押圧板280による押圧力よりも大きくなる。これはX方向の取付位置の調整時において、ヘッドモジュール210が傾くのを防止するためである。すなわち、X方向取付位置調整手段に近い下側のY方向ガイドポスト276に備えられるY方向押圧バネ282のバネ定数を大きくすることにより、X方向の取付位置調整時における回転モーメントの中心がX方向取付位置調整手段の近くに設定され、ヘッドモジュール210が傾くのを防止することができる(上側のY方向ガイドポスト276に備えられるY方向押圧バネ282のバネ定数を大きくすると、ヘッドモジュール210の上側が動きにくくなり、傾きやすくなる。)。
なお、本実施の形態のインクジェットヘッド200では、下側のY方向ガイドポスト276に近接してX方向取付位置調整手段が設けられているので、下側のY方向ガイドポスト276に備えられるY方向押圧バネ282のバネ定数を上側のY方向ガイドポスト276に備えられるY方向押圧バネ282のバネ定数よりも大きくしているが、上側のY方向ガイドポスト276に近接してX方向取付位置調整手段が設けられている場合は、上側のY方向ガイドポスト276に備えられるY方向押圧バネ282のバネ定数を下側のY方向ガイドポスト276に備えられるY方向押圧バネ282のバネ定数よりも大きくする。すなわち、X方向取付位置調整手段のより近くに設置されるY方向ガイドポスト276のY方向押圧バネ282のバネ定数を他方側のY方向ガイドポスト276のY方向押圧バネ282のバネ定数よりも大きくする。これにより、X方向の取付位置の調整時におけるヘッドモジュール210の傾きを防止することができる。
Z方向吊り下げロッド278は、円柱状に形成される。Z方向吊り下げロッド278は、頂部にツマミ部278Aを有する。Z方向吊り下げロッド278は、Z方向と平行に配設される。上部フレーム部270には、このZ方向吊り下げロッド278を取り付けるためのZ方向吊り下げロッド挿通穴284が形成される。Z方向吊り下げロッド挿通穴284は、Z方向に沿って形成され、上部フレーム部270の上面部から下面部に貫通して形成される。Z方向吊り下げロッド278は、このZ方向吊り下げロッド挿通穴284に挿通されて、上部フレーム部270に取り付けられる。
上部フレーム部270に取り付けられたZ方向吊り下げロッド278は、下部フレーム部272A、272Bの外側面の前方に配置される。
また、Z方向吊り下げロッド278は、一対のY方向ガイドポスト276と同一直線上に配置され、一対のY方向ガイドポスト276の上方に配置される。したがって、ヘッドモジュール210をベースフレーム212に取り付けると、Z方向吊り下げロッド278は、ガイド溝256内に収容される。
Z方向吊り下げロッド278には、Z方向押圧バネ286が備えられる。Z方向押圧バネ286は、その内周部にZ方向吊り下げロッド278が挿通されて、Z方向吊り下げロッド278に設けられる。Z方向押圧バネ286は、Z方向吊り下げロッド278のツマミ部278Aと上部フレーム部270との間に設けられる。この結果、Z方向吊り下げロッド278は、Z方向押圧バネ286の付勢力によって上方に付勢される(上部フレーム部270に向けて引き上げる方向に付勢される。)。
また、Z方向吊り下げロッド278には、先端(下端)にロック用バー288が備えられる。ロック用バー288は、Z方向吊り下げロッド278の先端から左右に突出して設けられる(Z方向吊り下げロッド278の軸方向に対して直交して設けられる)。ロック用バー288は、ガイド溝256の幅よりも長く形成される。ロック用バー288は、ヘッドモジュール210側のガイド溝256に形成された切欠き部258A、258Bに嵌め込まれて、ヘッドモジュール210を係止する。
切欠き部258A、258Bへのロック用バー288の嵌め込みは、Z方向吊り下げロッド278を回転させることにより行われる。すなわち、上記のように、ロック用バー288は、ガイド溝256の幅よりも長く形成されているので、ガイド溝256の幅方向(X方向)と同じ方向に向けた状態でヘッドモジュール210をベースフレーム212に取り付けると、ロック用バー288がガイド溝256の入口部(上端部)に当接し、ヘッドモジュール210を取り付けることができない。
そこで、ヘッドモジュール210をベースフレーム212に取り付ける際は、ロック用バー288がガイド溝256の内壁面に接触しない位置に位置させておき、この状態でヘッドモジュール210をベースフレーム212に取り付ける。そして、ヘッドモジュール210がベースフレーム212に取り付けられて、ロック用バー288が切欠き部258A、258Bの形成位置に位置したところで、Z方向吊り下げロッド278を回転させる。これにより、ロック用バー288が切欠き部258A、258Bに嵌まり込む。
なお、上記のように、ロック用バー288は、その軸方向の向きがガイド溝256の幅方向(X方向)と平行になると、切欠き部258A、258Bに嵌まり込む。このときのロック用バー288の位置をロック位置とする。
一方、ロック用バー288は、その軸方向の向きがガイド溝256の幅方向(X方向)と直交すると、ガイド溝256の内壁面に接触しなくなる(切欠き部258A、258Bから外れる。)。このときのロック用バー288の位置をロック解除位置とする。
Z方向吊り下げロッド278は、Z方向押圧バネ286によって上方に付勢されているので、ロック用バー288が切欠き部258A、258Bに嵌め込まれると、ロック用バー288は、切欠き部258A、258Bに係合する(切欠き部258A、258Bの内周部の天井面に係合する。)。これにより、ベースフレーム212に取り付けられたヘッドモジュール210が上方に向けて付勢される。
ベースフレーム212には、ヘッドモジュール210をベースフレーム212に取り付ける際のY方向の位置決めを行うためのベースフレームY方向位置決め手段と、Z方向の位置決めを行うためのベースフレームZ方向位置決め手段とが備えられる。
ベースフレームY方向位置決め手段は、ベースフレームY方向位置決め部材を構成する2つの固定接点用ベースフレームY方向位置決め部材290と、同じくベースフレームY方向位置決め部材を構成する1つの可動接点用ベースフレームY方向位置決め部材292とで構成される。
2つの固定接点用ベースフレームY方向位置決め部材290は、それぞれ剛性を有するピン(たとえば、ステンレス製のピン)で構成され、ヘッドモジュールY方向固定接点部材234よりも高硬度で構成される。2つの固定接点用ベースフレームY方向位置決め部材290は、それぞれ下部フレーム部272A、272Bの下面部から下方(Z方向下向き)に向けて突出して設けられる。2つの固定接点用ベースフレームY方向位置決め部材290は、ヘッドモジュール210側に設けられる2つのヘッドモジュールY方向固定接点部材234の設置間隔と同じ間隔で設けられ、ヘッドモジュール210をベースフレーム212に取り付けた際、2つのヘッドモジュールY方向固定接点部材234が周面に当接する位置に設けられる。すなわち、2つの固定接点用ベースフレームY方向位置決め部材290は、ヘッドモジュール210側に設けられる2つのヘッドモジュールY方向固定接点部材234に対応して設けられる。
可動接点用ベースフレームY方向位置決め部材292は、剛性を有するピン(たとえば、ステンレス製のピン)で構成され、ヘッドモジュールY方向可動接点部材236よりも高硬度で構成される。可動接点用ベースフレームY方向位置決め部材292は、下部フレーム部272A、272Bの外側面に形成された凹部内に収容されて下部フレーム部272A、272Bに配置される。この可動接点用ベースフレームY方向位置決め部材292は、Y方向と平行に配置される。可動接点用ベースフレームY方向位置決め部材292は、ヘッドモジュール210をベースフレーム212に取り付けた際、その先端面にヘッドモジュール210側のヘッドモジュールY方向可動接点部材236が当接する位置に設けられる。すなわち、可動接点用ベースフレームY方向位置決め部材292は、ヘッドモジュール210側に設けられるヘッドモジュールY方向可動接点部材236に対応して設けられる。
上記のように、ヘッドモジュール210は、ベースフレーム212に取り付けられると、Y方向ガイドポスト276に備えられたY方向押圧板280によってベースフレーム212に向けて押圧される。したがって、ヘッドモジュール210をベースフレーム212に取り付けると、ヘッドモジュール210側に設けられた2つのヘッドモジュールY方向固定接点部材234が、ベースフレーム212側に設けられた2つの固定接点用ベースフレームY方向位置決め部材290に押圧当接される。また、ヘッドモジュール210側に設けられたヘッドモジュールY方向可動接点部材236が、ベースフレーム212側に設けられた可動接点用ベースフレームY方向位置決め部材292に押圧当接される。これにより、ベースフレーム212に取り付けられたヘッドモジュール210が、ベースフレーム212に対してY方向に位置決めされる。
なお、上記のように、固定接点用ベースフレームY方向位置決め部材290は、ヘッドモジュールY方向固定接点部材234よりも高硬度で構成され、可動接点用ベースフレームY方向位置決め部材292は、ヘッドモジュールY方向可動接点部材236よりも高硬度で構成される。これにより、位置決め時の位置安定性が向上し、ヘッドモジュール210を交換したときの繰り返し精度を向上させることができる。
高硬度にする手法としては、素材に高硬度のものを使用したり、表面処理を施すことにより高硬度にする方法などを採用することができる。
ベースフレーム212に対するヘッドモジュール210のZ方向の位置決めを行うためのベースフレームZ方向位置決め手段は、一対のベースフレームZ方向接点部材294で構成される。
一対のベースフレームZ方向接点部材294は、剛性を有するピン(たとえば、ステンレス製のピン)で構成され、ヘッドモジュールZ方向接点部材242よりも高硬度に形成される。一対のベースフレームZ方向接点部材294は、それぞれ下部フレーム部272A、272Bの外側面から突出して設けられ、Y方向と平行に配設される。一対のベースフレームZ方向接点部材294は、ヘッドモジュール210側に設けられる一対のヘッドモジュールZ方向接点部材242の設置間隔と同じ間隔で設けられ、ヘッドモジュール210をベースフレーム212に取り付けた際、一対のヘッドモジュールZ方向接点部材242が当接する位置に設けられる。すなわち、一対のベースフレームZ方向接点部材294は、ヘッドモジュール210側に設けられるヘッドモジュールZ方向接点部材242に対応して設けられる。
上記のように、ヘッドモジュール210は、ベースフレーム212に取り付けられると、Z方向吊り下げロッド278に備えられたZ方向押圧バネ286の作用で上方に向けて付勢される。したがって、ヘッドモジュール210をベースフレーム212に取り付けると、ヘッドモジュール210に設けられた一対のヘッドモジュールZ方向接点部材242が、ベースフレーム212に設けられた一対のベースフレームZ方向接点部材294に当接される。これにより、ベースフレーム212に対してヘッドモジュール210がZ方向に位置決めされる。
なお、上記のように、ベースフレームZ方向接点部材294は、ヘッドモジュールZ方向接点部材242よりも高硬度に形成される。これにより、位置決め時の位置安定性が向上し、ヘッドモジュール210を交換したときの繰り返し精度を向上させることができる。
高硬度にする手法としては、素材に高硬度のものを使用したり、表面処理を施すことにより高硬度にする方法などを採用することができる。
ベースフレーム212には、X方向取付位置調整手段の一構成部材であるX方向位置決め基準ピン296が設けられる。X方向位置決め基準ピン296は、剛性を有するピン(たとえば、ステンレス製のピン)で構成され、下部フレーム部272A、272Bの下面部から下方(Z方向下向き)に向けて突出して設けられる。X方向位置決め基準ピン296は、ヘッドモジュール210をベースフレーム212に取り付けた際、ヘッドモジュール210側に設けられた偏芯ローラ248とプランジャ250と間に嵌入される位置に配置される。
ヘッドモジュール210がベースフレーム212に取り付けられると、X方向位置決め基準ピン296が偏芯ローラ248とプランジャ250と間に嵌入されて両者に挟持される。この状態で偏芯ローラ248を回転させると、ベースフレーム212に対してヘッドモジュール210がX方向に変位する。
更に、ベースフレーム212には、ヘッドモジュール210側に設けられる磁石260とともに変位量検出手段を構成する磁気センサ298が設けられる。磁気センサ298は、下部フレーム部272A、272Bに設けられる。下部フレーム部272A、272Bには、所定位置に磁気センサ装着部300が設けられる。磁気センサ298は、この磁気センサ装着部300に取り付けられる。磁気センサ装着部300に取り付けられた磁気センサ298は、ヘッドモジュール210がベースフレーム212に取り付けられると、ヘッドモジュール210側に設けられた磁石260と対向する位置に配置される。
ベースフレーム212に取り付けられたヘッドモジュール210をX方向取付位置調整手段によってX方向に変位させると、その変位量が磁気センサ298によって検出される。この磁気センサ298によって検出された変位量の情報はシステムコントローラ100に出力される。
ベースフレーム212は以上のように構成される。
なお、ベースフレーム212の素材については、特に限定されないが、ヘッドモジュール210を高精度に取り付けられるようにするため、熱の影響を受けにくい素材を使用することが好ましい。具体的には、鉄系の線膨張率(約15ppm/℃)よりも低い線膨張率10ppm/℃以下の素材で形成することが好ましい。これにより、熱の影響でヘッドモジュール210の取付位置が変わるのを防止することができる。このような素材としては、たとえば、セラミックスやインバー、スーパーインバーを用いることができる。
《ヘッドモジュールの取り付け方法》
次に、ヘッドモジュール210の取り付け方法について説明する。
上記のように、ベースフレーム212には、ヘッドモジュール支持手段が備えられており、このヘッドモジュール支持手段を用いてヘッドモジュール210がベースフレーム212に取り付けられる。
ヘッドモジュール支持手段は、一対の下部フレーム部272A、272Bに交互に備えられている。したがって、ヘッドモジュール210は、一対の下部フレーム部272A、272Bに交互に取り付けられる。なお、取り付け方法自体は、どの場所でも同じなので、ここでは下部フレーム部272Aに取り付ける場合について説明する。
ヘッドモジュール210は、ベースフレーム212の下部から上方に押し上げる動作によって、ベースフレーム212に取り付けられる。
まず、ベースフレーム212の下方位置において、ヘッドモジュール210のブラケット216の水平部224をベースフレーム212の上部フレーム部270と平行な姿勢にする。また、ブラケット216の垂直部226をベースフレーム212の下部フレーム部272Aと平行な姿勢にする。この状態でヘッドモジュール210のブラケット216に形成されたガイド溝256の位置をベースフレーム212の下部フレーム部272Aに設けられたY方向ガイドポスト276の位置に合わせる。
次に、図12、図13に示すように、Y方向ガイドポスト276がガイド溝256に嵌まるように、ヘッドモジュール210をベースフレーム212に向けて押し上げる。Y方向ガイドポスト276がガイド溝256に嵌まると、そのY方向ガイドポスト276をガイドとして、ヘッドモジュール210が垂直に押し上げられる。これにより、取り付け時のブレやガタツキを防止することができ、ヘッドモジュール210が他の部材(取り付け済みのヘッドモジュール210など)に接触するのを防止することができる。
Y方向ガイドポスト276をガイド溝256に嵌めて、ヘッドモジュール210を押し上げると、ベースフレーム212に設けられたZ方向吊り下げロッド278がガイド溝256に収容される。
ここで、Z方向吊り下げロッド278には、ロック用バー288が備えられている。ヘッドモジュール210をベースフレーム212に取り付ける際は、ロック用バー288がガイド溝256の内壁面に接触しないように、ロック用バー288をロック解除位置に位置させる。これにより、ロック用バー288がガイド溝256の入口部分に接触して、ヘッドモジュール210の移動を阻害するのを防止することができる。
以上のようにしてヘッドモジュール210をベースフレーム212に向けて押し上げると、ヘッドモジュール210のブラケット216に設けられた一対のヘッドモジュールZ方向接点部材242が、ベースフレーム212に設けられた一対のベースフレームZ方向接点部材294に当接される。そして、この一対のヘッドモジュールZ方向接点部材242が、ベースフレーム212に設けられた一対のベースフレームZ方向接点部材294に当接されると、ヘッドモジュール210のガイド溝256に形成された一対の切欠き部258A、258Bが、Z方向吊り下げロッド278に設けられたロック用バー288の設置位置に位置する。この状態でZ方向吊り下げロッド278を回転させ、ロック用バー288をロック位置に位置させる。これにより、ロック用バー288が切欠き部258A、258Bに嵌まり込み、ロック用バー288が切欠き部258A、258Bの内周部の天井面に係止される。これにより、ヘッドモジュール210が、Z方向吊り下げロッド278に吊り下げられた状態でベースフレーム212に取り付けられる。
ここで、Z方向吊り下げロッド278にはZ方向押圧バネ286が備えられている。このため、Z方向吊り下げロッド278に係止されると、ヘッドモジュール210はZ方向押圧バネ286の作用で上方に向けて押し上げられる。この結果、ヘッドモジュール210に設けられた一対のヘッドモジュールZ方向接点部材242が、ベースフレーム212に設けられた一対のベースフレームZ方向接点部材294に当接される。これにより、ヘッドモジュール210がベースフレーム212に対してZ方向に位置決めされる。
また、ガイド溝256に嵌められた一対のY方向ガイドポスト276には、Y方向押圧バネ282が備えられている。Y方向押圧バネ282は、Y方向押圧板280を介して、ヘッドモジュール210をベースフレーム212に向けて押圧する。この結果、ヘッドモジュール210に設けられたヘッドモジュールY方向固定接点部材234とヘッドモジュールY方向可動接点部材236とが、ベースフレーム212に設けられた固定接点用ベースフレームY方向位置決め部材290と可動接点用ベースフレームY方向位置決め部材292とに押圧当接される。これにより、ヘッドモジュール210がベースフレーム212に対してY方向に位置決めされる。
なお、ヘッドモジュールZ方向接点部材242がベースフレームZ方向接点部材294に当接されると、Y方向ガイドポスト276が、ガイド溝256に形成された拡径部256Aに収容される。これにより、ヘッドモジュール210がX方向に変位可能な状態でベースフレーム212に取り付けられる。
なお、ヘッドモジュールZ方向接点部材242及びヘッドモジュールY方向可動接点部材236は位置調整が可能であるが、この位置調整は事前に行っておくことが好ましい(たとえば、工場出荷時に実施)。
以上により、ヘッドモジュール210がベースフレーム212に取り付けられる。この作業を全てのヘッドモジュール210に対して行う。上記のように、ヘッドモジュール210は、ベースフレーム212に交互に取り付けられるので、取り付けは交互に行われる。
なお、取り付けはベースフレーム212の一方端から他方に向けて順に行うことが好ましい。この際、第1番目のヘッドモジュール210(最初に取り付けられるヘッドモジュール210)は、X方向の変位量の調整範囲の中央値に合わせ込んで取り付けることが好ましい。これにより、以降のヘッドモジュール210の取付位置が調整範囲から外れるリスクを減らすことができ、調整範囲を無駄に大きく取るのを防ぐことができる。
ヘッドモジュール210が取り付けられたベースフレーム212は、インクジェット記録装置10に備えられた所定のホルダに保持されて、インクジェット記録装置10に搭載される。
《ヘッドモジュールの位置決め方法》
上記の取り付け作業により、ヘッドモジュール210がベースフレーム212に取り付けられる。しかし、この取り付けはラフな取り付け(仮取り付け)である。この後、隣り合うヘッドモジュール間で間隔が精緻に調整されて、ヘッドモジュール210の繋ぎ目でノズル列に隙間が生じないようにされる。すなわち、ヘッドモジュール210の位置決めが行われる。以下、ヘッドモジュール210の位置決め方法について説明する。
ヘッドモジュール210の位置決めは、ベースフレーム212に取り付けられた各ヘッドモジュール210の相対的な位置関係を検出し、その検出結果に基づいて、各ヘッドモジュール210の間隔が許容範囲内に収まるように、X方向の取付位置を調整することにより行われる。
ここで、ベースフレーム212に取り付けられた各ヘッドモジュール210の相対的な位置関係の検出は、ヘッドモジュール210が組み付けられたインクジェットヘッド200で所定のテストパターンの画像を用紙に記録することにより行われる。すなわち、ヘッドモジュール210が組み付けられたインクジェットヘッド200をインクジェット記録装置10に搭載し、所定のテストパターンの画像を用紙Pに記録し、記録された画像から各ヘッドモジュール210の相対的な位置関係の検出する。
用紙Pに記録された画像の読み取りは、インラインセンサ58で行われる。システムコントローラ100は、インラインセンサ58で読み取ったテストパターンの画像データを取得し、得られた画像データを処理して、各ヘッドモジュール210の相対的な位置関係の検出する。たとえば、図14に示すように、各ヘッドモジュール210において基準となるノズルNが打滴したドットの間の距離を画像データ上で計測し、各ヘッドモジュール210の相対的な位置関係(隣り合うヘッドモジュール210の間隔δ)を検出する。この処理はシステムコントローラ100が所定の制御プログラムを実行することにより行われる。システムコントローラ100は、この制御プログラムを実行することにより、各ヘッドモジュール210の相対的な位置を検出する位置検出手段及び位置情報取得手段として機能する。
各ヘッドモジュール210の相対的な位置関係の検出後、X方向取付位置調整手段を用いて各ヘッドモジュール210の取付位置の微調整を行う。すなわち、隣り合うヘッドモジュール210の間隔が、あらかじめ設定された許容範囲に収まるように、各ヘッドモジュール210のX方向の位置調整を行う。
X方向取付位置調整手段によるX方向の位置調整は、各ヘッドモジュール210に備えられた偏芯ローラ248を回転させることにより行われる。偏芯ローラ248はスクリュードライバを利用して回転させる。すなわち、偏芯ローラ248の軸部248Aの基端部端面には、スクリュードライバ用の溝が形成されているので、その溝にスクリュードライバの先端を嵌め、スクリュードライバで軸部248Aを回転させて、偏芯ローラ248を回転させる。
偏芯ローラ248の軸部を回転させると、偏芯ローラ248が偏芯回転する。そして、この偏芯ローラ248が偏芯回転することにより、ヘッドモジュール210がX方向位置決め基準ピン296を基準としてX方向に移動する。
ここで、ヘッドモジュール210がX方向に移動すると、その変位量が磁気センサ298によって検出される。検出された変位量の情報はシステムコントローラ100に出力される。システムコントローラ100は、得られた変位量の情報を表示部132に出力する。オペレータは、この表示部132に表示される変位量の情報に基づいて、偏芯ローラ248を必要量回転させる。
なお、各ヘッドモジュール210の補正量は、各ヘッドモジュール210の相対的な位置関係から定められる。すなわち、隣り合うヘッドモジュール210の間隔が、あらかじめ設定された許容範囲に収まるように、各ヘッドモジュール210の取付位置の補正量が求められる。
システムコントローラ100は、各ヘッドモジュール210の相対的な位置の情報(ヘッドモジュール位置情報)を取得し、隣り合うヘッドモジュール210の間隔を許容範囲に収めるための補正量を算出する。算出された各ヘッドモジュール210の取付位置の補正量の情報は、指示手段としての表示部132に表示される。オペレータは、この表示部132に表示される補正量の情報に基づいて、ヘッドモジュール210を移動させ、ヘッドモジュール210の取付位置を調整する。
なお、補正量の算出は、システムコントローラ100が所定の制御プログラムを実行することにより行われる。この制御プログラムを実行することにより、システムコントローラ100が補正量算出手段として機能する。
以上一連の作業でヘッドモジュール210の取り付け、位置調整(位置決め)が完了する。ここでは、一度に全てのヘッドモジュール210をベースフレーム212に取り付ける場合について説明したが、一部のヘッドモジュール210を交換する場合についても同様の手順で取り付け、位置調整が行われる。
なお、ヘッドモジュール210の取り外しは次のように行われる。
ヘッドモジュール210は、Z方向吊り下げロッド278のロック用バー288に係止されてベースフレーム212に吊り下げられた状態で取り付けられている。まず、このロック用バー288の係合を解除する。すなわち、Z方向吊り下げロッド278を回転させてロック用バー288をロック解除位置に移動させる。これにより、ロック用バー288が切欠き部258A、258Bから外れ、ヘッドモジュール210とロック用バー288との係合が解除される。ヘッドモジュール210とロック用バー288との係合の解除後、ヘッドモジュール210を下向きに引き下げる。これにより、ヘッドモジュール210がベースフレーム212から取り外される。なお、ヘッドモジュール210を引き下げる際、一対のY方向ガイドポスト276がガイドの役割を果たすので、他のヘッドモジュール210に接触したりすることなく、ヘッドモジュール210を取り外すことができる。
以上説明したように、本実施の形態のインクジェットヘッド200によれば、複数のヘッドモジュール210を繋ぎ合わせて構成されるインクジェットヘッド200において、各ヘッドモジュール210が個別にベースフレーム212に取り付けられ、個別にその取付位置の調整が行われる。これにより、簡単に取り付け、位置合わせを行うことができる。
また、本実施の形態のインクジェットヘッド200では、高精度な位置決めが要求されるX方向の位置決めについて、偏芯ローラ248を利用した高精度な位置合わせを行うことができるので、高精度にヘッドモジュール同士を繋ぎ合わせることができる。また、その調整幅も十分に確保することができるの、部品公差を低く抑えることができる。これにより、製造コストを抑えることができる。
また、本実施の形態のインクジェットヘッド200では、ヘッドモジュール210をベースフレーム212に取り付ける際、ベースフレーム212に対してヘッドモジュール210を交互に取り付ける構造としている。これにより、隣り合うヘッドモジュール210の間隔を広く取ることができる。そして、この隣り合うヘッドモジュール210の間隔を広く取ることができることにより、位置決め用の接点の間隔(ヘッドモジュールZ方向接点部材242の間隔)を広く取ることができる(印字領域幅(全体のノズル列の長さ)よりも広く取ることができる。)。これにより、ヘッドモジュール210の回転方向の精度を高く取ることができ、より安定した状態で高精度にヘッドモジュール210を取り付けることができる。たとえば、ヘッドモジュール210の印字領域幅lを40mmとしたとき位置決め用の接点の間隔を70mmとする。
《他のヘッドを考慮したヘッドモジュールの位置決め方法》
上記のように、ヘッドモジュール210の位置決めは、隣り合うヘッドモジュール210の間隔が許容範囲内に収まるように、各ヘッドモジュール210のX方向の取付位置を調整することにより行われる。
この際、調整対象とするインクジェットヘッド200のヘッドモジュール210の相対的な位置の情報だけを利用するのではなく、他のインクジェットヘッド200のヘッドモジュール210の相対的な位置の情報も利用して、各インクジェットヘッド200のヘッドモジュール210の取付位置の調整を行うことにより、ヘッドユニット56全体として、より高精度な位置決めが可能になる。
たとえば、各インクジェットヘッド200のヘッドモジュール210の相対的な位置の情報(ヘッドモジュール位置情報)に基づいて、隣り合うヘッドモジュール210の間隔が許容範囲に収まるように、各インクジェットヘッド200の各ヘッドモジュール210の取付位置を調整するとともに、各インクジェットヘッド200の印字領域幅Lが同じになるように、各インクジェットヘッド200の各ヘッドモジュール210の取付位置を調整する。これにより、各インクジェットヘッド200の印字領域幅Lが一致し、高品質な画像を記録することができる。
本実施の形態のインクジェット記録装置10は、シアン(C)のインク滴を吐出するインクジェットヘッド200Cと、マゼンタ(M)のインク滴を吐出するインクジェットヘッド200Mと、イエロ(Y)のインク滴を吐出するインクジェットヘッド200Yと、クロ(K)のインク滴を吐出するインクジェットヘッド200Kとを備えているので、シアンのインクジェットヘッド200Cと、マゼンタのインクジェットヘッド200Mと、イエロのインクジェットヘッド200Yと、クロのインクジェットヘッド200Kの各ヘッドのヘッドモジュール210の相対的な位置の情報を利用して、各インクジェットヘッド200C、200M、200Y、200Kのヘッドモジュール210の位置決めを行う。
ここで、各インクジェットヘッド200における印字領域幅Lは、たとえば、図14に示すように、ヘッドモジュール210の相対的な位置の情報から求めることができる。すなわち、各ヘッドモジュール210の印字領域幅l(ヘッドモジュール210のノズル列の長さ)の情報と、各ヘッドモジュール210の間隔δの情報とからインクジェットヘッド200の印字領域幅Lを求めることができる(各ヘッドモジュール210の印字領域幅lは既知である。)。
また、この各ヘッドモジュール210の印字領域幅lの情報と、各ヘッドモジュール210の間隔δの情報とからヘッド内における各ヘッドモジュール210の位置(たとえば、インクジェットヘッド200の一端に配置されるヘッドモジュール210を基準とした各ヘッドモジュール210の位置)も求めることができる。
このように、各インクジェットヘッド200のヘッドモジュール210の位置調整を行う際は、この各インクジェットヘッド200のヘッドモジュール210の相対的な位置の情報(ヘッドモジュール位置情報)を利用して、隣り合うヘッドモジュール210の間隔が許容範囲に収まり、かつ、各インクジェットヘッド200の印字領域幅Lが同じになるように、各インクジェットヘッド200の各ヘッドモジュール210の取付位置を調整する。
以下、この調整方法の具体的な手順について説明する。
まず、ベースフレーム212に取り付けられた各ヘッドモジュール210の相対的な位置を検出する(ヘッドモジュール位置情報取得工程)。
上記のように、ベースフレーム212に取り付けられた各ヘッドモジュール210の相対的な位置の検出は、ヘッドモジュール210が組み付けられたインクジェットヘッド200で所定のテストパターンの画像を用紙に記録することにより行われる。すなわち、所定のテストパターンの画像を用紙Pに記録し、用紙Pに記録された画像をインラインセンサ58で読み取り、読み取った画像のデータを処理して、各インクジェットヘッド200のヘッドモジュール210の相対的な位置を検出する。この処理はシステムコントローラ100が所定の制御プログラムを実行することにより行われる。システムコントローラ100は、この制御プログラムを実行することにより、各ヘッドモジュール210の相対的な位置を検出する位置検出手段及び位置情報取得手段として機能する。
なお、システムコントローラ100は、後述するように、所定の制御プログラムを実行することにより、補正量算出手段としても機能する。そして、システムコントローラ100は、指示手段としての表示部132とともにインクジェットヘッド200の調整装置を構成する。
各ヘッドモジュール210の相対的な位置の検出後、X方向取付位置調整手段を用いて各ヘッドモジュール210の取付位置の調整を行う(位置調整工程)。この際、各インクジェットヘッド200のヘッドモジュール210の相対的な位置の情報(ヘッドモジュール位置情報)を利用して、隣り合うヘッドモジュール210の間隔が許容範囲に収まり、かつ、各インクジェットヘッド200の印字領域幅Lが同じになるように、各インクジェットヘッド200の各ヘッドモジュール210の取付位置を調整する。
システムコントローラ100は、各インクジェットヘッド200のヘッドモジュール210の相対的な位置の情報(ヘッドモジュール位置情報)から、隣り合うヘッドモジュール210の間隔が許容範囲に収まり、かつ、各インクジェットヘッド200の印字領域幅Lが同じになるようにするための各インクジェットヘッド200の取付位置の補正量を算出する。
この場合、たとえば、基準となる1つのヘッドを定め、そのヘッドの印字領域幅Lと一致するように、残りのヘッドのヘッドモジュール210の取付位置の補正量を算出する。たとえば、図15に示すように、クロ(K)のインクジェットヘッド200Kを基準とした場合、クロ(K)のインクジェットヘッド200Kの印字領域幅L(K)と残りのインクジェットヘッド200C、200M、200Yの印字領域幅L(C)、L(M)、(Y)とが同じになるように、各インクジェットヘッド200C、200M、200Yのヘッドモジュール210の取付位置の補正量を算出する。
また、隣接するヘッド間で印字領域幅Lが一致するように、各インクジェットヘッド200のヘッドモジュール210の取付位置の補正量を算出することもできる。
算出された各インクジェットヘッド200のヘッドモジュール210の取付位置の補正量の情報は、指示手段としての表示部132に表示される。オペレータは、この表示部132に表示される補正量の情報に基づいて、ヘッドモジュール210を移動させ、ヘッドモジュール210の取付位置を調整する。
なお、補正量の算出は、システムコントローラ100が所定の制御プログラムを実行することにより行われる。この制御プログラムを実行することにより、システムコントローラ100が補正量算出手段として機能する。
このように、各インクジェットヘッド200のヘッドモジュール210を位置決めする際、調整対象とするインクジェットヘッド200のヘッドモジュール210の相対的な位置の情報だけを利用するのではなく、他のインクジェットヘッド200のヘッドモジュール210の相対的な位置の情報も利用して、各インクジェットヘッド200のヘッドモジュール210の取付位置の調整を行うことにより、ヘッドユニット56全体として、より高精度な位置決めが可能になる。
なお、上記の例では、隣り合うヘッドモジュール210の間隔が許容範囲に収まり、かつ、各インクジェットヘッド200の印字領域幅Lが同じになるように、各インクジェットヘッド200の各ヘッドモジュール210の取付位置を調整する構成としているが、更に、レジストレーション(ドットの相対的な記録位置の関係)のズレ(いわゆるレジズレ)が最小限になるように、各インクジェットヘッド200の各ヘッドモジュール210の取付位置を調整するようにしてもよい。すなわち、隣り合うヘッドモジュールの間隔が許容範囲内に収まるとともに、各インクジェットヘッド200の印字領域幅Lが同じになり、かつ、各ヘッド間200でレジズレが最小になるように、各インクジェットヘッド200のヘッドモジュール210の取付位置を調整する。
たとえば、図15に示す例において、シアンのインクジェットヘッド200Cの2番目のヘッドモジュール210C2の位置調整を行う際、隣に位置する1番目のヘッドモジュール210C1と3番目のヘッドモジュール210C3との間隔が許容範囲に収まるように位置調整するとともに、マゼンタのインクジェットヘッド200Mの2番目のヘッドモジュール210M2、イエロのインクジェットヘッド200Yの2番目のヘッドモジュール210Y2、及び、クロのインクジェットヘッド200Kの2番目のヘッドモジュール210K2との間でレジズレが最小限となるように位置調整を行う。また、各インクジェットヘッド200C、200M、200Y、200Kで印字領域幅Lが同じになるように、各インクジェットヘッド200のヘッドモジュール210の取付位置を調整する。これにより、色間のズレを起こしにくくすることができ、更に高品質な画像を記録することができる。
なお、上記の例では、インクジェット記録装置10の装置上で各インクジェットヘッド200のヘッドモジュール210の取付位置を調整する場合について説明したが、ヘッドモジュール210の取付位置の調整は装置外で行うこともできる。
《ヘッドモジュールの取付位置の監視》
上記のように、ヘッドモジュール210はベースフレーム212に位置決めして取り付けられる。しかしながら、ヘッドモジュール210は使用していると、次第に取付位置にズレが生じる。そして、ヘッドモジュール210の取付位置にズレが生じた状態でインクジェットヘッド200の使用を継続すると、用紙Pに記録される画像の品質が低下する。したがって、ズレが許容範囲を超える前にヘッドモジュール210の取付位置を修正することが好ましい。
一方、ヘッドモジュール210の取付位置にズレが生じているか否かを判断するためには、ヘッドモジュール210の取付位置を監視する必要がある。以下、ヘッドモジュール210の取付位置を監視する方法について説明する。
〈第1の例〉
本実施の形態のインクジェットヘッド200には、ヘッドモジュール210の変位量を検出するための磁気センサ298が備えられている。したがって、この磁気センサ298を利用してヘッドモジュール210の取付位置のズレの監視が行われる。この処理は、所定の制御プログラムに従ってシステムコントローラ100が実施する。
システムコントローラ100は、ヘッドモジュール210の取付位置の調整(位置決め)が完了すると、磁気センサ298からヘッドモジュール210の変位量の情報を取得する。そして、得られた変位量の情報を初期位置情報として不揮発性メモリ(記憶手段)134に記録する。
この後、システムコントローラ100は、あらかじめ設定された検出タイミングで磁気センサ298からヘッドモジュール210の変位量の情報を取得する。そして、取得した変位量の情報を不揮発性メモリ134に記録する。また、これと同時にシステムコントローラ(判定手段)100は、初期位置(取付位置の調整時の位置)からの変位量をズレ量として算出する。そして、算出されたズレ量と閾値とを比較する。この閾値は、ヘッドモジュール210の取付位置のズレ量の許容範囲として設定される。システムコントローラ100は、ズレ量が閾値以上と判断すると、許容以上の位置ズレがヘッドモジュール210に生じたと判断する。
許容以上の位置ズレがヘッドモジュール210に生じたと判断すると、システムコントローラ100は所定の警告動作を実施する。たとえば、表示部132にヘッドモジュール210の位置調整を促すメッセージを表示する。あるいは、警報手段を備えている場合は警報を発令し、警告灯を備えている場合は警告灯を点灯させる。オペレータは、この警告を受けて、ヘッドモジュール210の調整を行う。
このように、ヘッドモジュール210の取付位置を監視し、ズレが許容範囲を超える前にヘッドモジュール210の取付位置を修正することにより、常にインクジェットヘッド200を最良の状態に保つことができる。これにより、常に高品質な画像を記録することができる。
なお、上記の例では、ヘッドモジュール210の取付位置の調整(位置決め)が完了すると、初期位置の設定が行われる構成とされている。ヘッドモジュール210の取付位置の調整を行うタイミングとしては、インクジェットヘッド200の製造時やヘッドモジュール210の交換時、インクジェット記録装置10の起動時、インクジェットヘッド200のメンテナンス時、インクジェットヘッド200の輸送後(たとえば、工場からの出荷後などの輸送後)、インクジェット記録装置10への設置前などが挙げられる。また、一定枚数を記録するたびに実施してもよいし、や、一定の記録時間(稼働時間)ごとに実施するようにしてもよい。更に、印刷のジョブごとに実施するようにしてもよい。
また、位置(変位量)を検出するタイミング(検出タイミング)は、ヘッドモジュール210の位置ズレが生じやすい状況の前後に設定することが好ましい。たとえば、設定した枚数の印刷ジョブを完了した時や、インクジェット記録装置10の起動時、インクジェットヘッド200に対して定期的に行われるメンテナンス時(インクジェットヘッド200のノズル面を清掃する清掃時等)、インクジェットヘッド200の輸送時、インクジェットヘッド200の移動時(たとえば、メンテナンスのためにインクジェットヘッド200をメンテナンス部に移動させる時)、温度変化時などが挙げられる。このように、ヘッドモジュールの位置変化が発生しやすい状況の前後に限定して監視することにより、センサの動作回数を減らすことができ、センサの長寿命化を図ることができる。
なお、上記の例では、許容以上の位置ズレがヘッドモジュール210に生じていることが検出された場合に所定の警告動作が実施される構成としているが、許容以上の位置ズレがヘッドモジュール210に生じていると判断されたときに行う処理は、これに限定されるものではない。この他、画像記録動作の停止、用紙Pに対して位置ズレが発生したことを示す目印の押印、位置ズレが発生したヘッドモジュール210で印字した部分の品質チェックの強化などを行うようにしてもよい。
また、このように許容以上の位置ズレがヘッドモジュール210に生じると、その繋ぎ目の部分でスジやムラといった打滴のムラ(いわゆる繋ぎムラ)が発生するので、これを是正するように、インクの吐出を制御(繋ぎムラ補正)するようにしてもよい。すなわち、システムコントローラ(吐出制御手段)100は、画像データからドットデータを生成するが、このドットデータの生成時に繋ぎムラを修正するようなドットデータを作成する。これにより、ヘッドモジュールに位置ズレが生じた場合であっても高品質な画像を記録することができる。
また、後述するように、各ヘッドモジュール210にX方向取付位置調整手段(取付位置調整手段)を駆動するための駆動手段が備えられている場合には、自動で位置ズレを修正する構成としてもよい。これにより、常に位置ズレのない状態(位置ズレが許容範囲内の状態)に保つことができる。
〈第2の例〉
ヘッドモジュール210やベースフレーム212は熱により膨張・収縮し、変形する。したがって、ヘッドモジュール210を位置決めしたときの環境の温度と、実際の使用環境での温度が異なると、ヘッドモジュール210の取付位置にズレが生じる。温度変化によって、どの程度のズレが生じるかは、使用する素材等によって定まり、あらかじめ求めることができる。したがって、ヘッドモジュール210の周辺温度を検出すれば、取付位置のズレ量を検出(推定)することができる。以下、ヘッドモジュール210の周辺温度に基づくヘッドモジュール210の取付位置の監視方法について説明する。
この方法ではヘッドモジュール210の周辺温度の情報が必要になる。このため、図16に示すように、ベースフレーム212には、各ヘッドモジュール210の取付位置に対応して温度検出手段としての温度センサ302が備えられる。たとえば、磁気センサ298の近傍に設置される。
システムコントローラ100は、ヘッドモジュール210の取付位置の調整(位置決め)が完了すると、温度センサ302からヘッドモジュール210の周辺温度の情報を取得する。そして、得られた周辺温度の情報を位置決め時温度情報として不揮発性メモリ(記憶手段)134に記録する。
この後、システムコントローラ100は、あらかじめ設定された検出タイミングで温度センサ302からヘッドモジュール210の周辺温度の情報を取得する。そして、取得したヘッドモジュール210の周辺温度の情報を不揮発性メモリ134に記録する。また、これと同時にシステムコントローラ100は、位置決め時の温度との温度差を算出する。そして、算出された温度差と閾値とを比較する。この閾値は、許容以上の位置ズレが生じる温度差として設定される。ヘッドモジュール210の取付位置のズレ量の許容範囲として設定される。システムコントローラ100は、温度差が閾値以上と判断すると、許容以上の位置ズレがヘッドモジュール210に生じたと判断する。
許容以上の位置ズレヘッドモジュール210が生じたと判断すると、システムコントローラ100は所定の警告動作を実施する。オペレータは、この警告を受けて、ヘッドモジュール210の調整を行う。
なお、上記の例では、ヘッドモジュール210の取付位置の調整(位置決め)が完了すると、位置調整時の温度を検出する構成とされている。ヘッドモジュール210の取付位置の調整を行うタイミングとしては、初期位置を検出する場合と同様に、インクジェットヘッド200の製造時やヘッドモジュール210の交換時、インクジェット記録装置10の起動時、インクジェットヘッド200に対して定期的に行われるメンテナンス時(ノズル面の清掃を行う清掃時等)、インクジェットヘッド200の輸送後(たとえば、工場からの出荷後などの輸送後)、インクジェット記録装置10への搭載時(インクジェット記録装置10に搭載する前あるいは搭載した後)などが挙げられる。また、一定の記録枚数ごとや、一定の記録時間(稼働時間)ごとに実施するようにしてもよいし、印刷のジョブごとに実施するようにしてもよい。
また、周辺温度を検出するタイミングについても、位置(変位量)を検出するタイミングと同様に、ヘッドモジュール210の位置ズレが生じやすい状況の前後に設定することが好ましい。たとえば、設定した枚数の印刷ジョブを完了した時や、インクジェット記録装置10の起動時、インクジェットヘッド200に対して定期的に行われるメンテナンス時、インクジェットヘッド200の輸送時、ヘッドモジュール210の移動時、温度変化時などが挙げられる。このように、ヘッドモジュールの位置変化が発生しやすい状況の前後に限定して監視することにより、センサの動作回数を減らすことができ、センサの長寿命化を図ることができる。
また、許容以上の位置ズレがヘッドモジュール210に生じていると判断されたときに行う処理は、警告動作の他、繋ぎムラ補正の実施や画像記録動作の停止、用紙Pに対して位置ズレが発生したことを示す目印の押印、位置ズレが発生したヘッドモジュール210で印字した部分の品質チェックの強化などを行うようにしてもよい。
また、後述するように、各ヘッドモジュール210にX方向取付位置調整手段(取付位置調整手段)を駆動するための駆動手段が備えられている場合には、自動で位置ズレを修正する構成としてもよい。これにより、常に位置ズレのない状態(位置ズレが許容範囲内の状態)に保つことができる。
〈その他の例〉
上記の例では、変位量の検出と周辺温度の検出を別々に行う構成としているが、変位量の検出と周辺温度の検出を同時に行い、それぞれメモリに記録する構成としてもよい。この場合、周辺温度の情報を利用して、変位量を補正することができる。これにより、より正確なズレ量を検出することができる。
また、本例のインクジェットヘッド200は、X方向の位置調整を手動で行う構成とされているが、ヘッドモジュール210をX方向に移動させるための駆動手段を備えたヘッド(後述)の場合には、自動で位置調整を行う構成とすることもできる。
また、上記の例では、インクジェット記録装置10に備えられた不揮発性メモリ134に変位量の情報を記録する構成としているが、ヘッド自体にメモリを備え、このヘッドに備えられたメモリに変位の情報を記録する構成としてもよい。この場合、ベースフレーム212にメモリを備える構成としてもよいし、各ヘッドモジュール210にメモリを備える構成としてもよい。
また、メモリに記録する変位量の情報は、変位量を検出するたびに書き換える構成(更新する構成)としてもよいし、履歴として残す構成としてもよい。
《磁気センサの感度補正》
本実施の形態のインクジェットヘッド200は、ヘッドモジュール210の変位量を検出する変位量検出手段を磁石260と磁気センサ298とで構成している。
磁石260はヘッドモジュール210に設けられ、磁気センサ298はベースフレーム212に設けられる。ヘッドモジュール210をベースフレーム212に取り付けると、磁石260と磁気センサ298とが対向して配置され、ヘッドモジュール210の変位量の検出が可能になる。
ところで、本実施の形態のインクジェットヘッド200は、複数のヘッドモジュール210をベースフレーム212に並べて取り付けることにより、一列に繋ぎ合わされて構成される。このとき、各ヘッドモジュール210を並べる順番は任意に定めることができる。すなわち、各ヘッドモジュール210は、構造が同じであるため、どの位置にでも取り付けることができ、また、任意に交換することができる。このため、磁気センサ298と磁石260との組み合わせが一意には定まらない。
一方、ヘッドモジュール210が移動(X方向の移動)したときに磁気センサ298から出力される値、すなわち、磁気センサ298の感度(ゲイン)は、磁気センサ298と磁石260との組み合わせによって変動する。磁気センサ298の感度が変動する要因としては、磁気センサ298の出力の個体差、磁石260の磁力の個体差、磁気センサ298と磁石260との取付位置のズレ(たとえば、Y方向やZ方向のズレ)などが挙げられる。したがって、磁気センサ298と磁石260とを任意の組み合わせで使用した場合であっても、これらの情報を取得できれば、磁気センサ298の感度を補正して一定の感度で使用することができる。
以下、磁気センサ298の感度の補正方法について説明する。
図17に示すように、磁気センサ298が取り付けられたベースフレーム212には、磁気センサ298ごとに磁気センサ側メモリ(センサ側記憶手段)310が備えられる。磁気センサ側メモリ310には、その磁気センサ側メモリ310が備えられた磁気センサ298の感度を補正するのに必要な情報(センサ側補正情報)が記録される。
一方、磁石260が取り付けられた各ヘッドモジュール210には、磁石側メモリ(被検出体側記憶手段)312が備えられる。磁石側メモリ312には、そのヘッドモジュール210に取り付けられた磁石260を使用した際に必要になる磁気センサ298の感度の補正情報(被検出体側補正情報))が記録される。
ベースフレーム212にヘッドモジュール210が取り付けられると、感度補正手段としてのシステムコントローラ100は、磁気センサ側メモリ310からセンサ側補正情報を読み出す。また、その磁気センサ側メモリ310が備えられた磁気センサ298に対応する磁石260の磁石側メモリ312から磁石側補正情報を読み出す。そして、読み出したセンサ側補正情報と磁石側補正情報とに基づいて、磁気センサ298の感度を補正する。
これにより、任意の組み合わせで磁気センサ298と磁石260とを使用した場合であっても、磁気センサ298の感度を一定にして使用することができる。
ここで、センサ側補正情報としては、磁気センサ298の出力の個体情報(検出感度(ゲイン)の個体データ)、磁気センサ298の取付位置の情報などが記録される。一方、磁石側補正情報としては、磁石260の個体情報としての磁力の情報、磁石260の取付位置の情報などが記録される。
たとえば、センサ側補正情報として磁気センサ298の取付位置の情報を記録し、磁石側補正情報として磁石260の取付位置の情報を記録した場合には、磁気センサ298と磁石260との取付位置のズレ(ズレ量とズレ方向)を求めることができる。そして、磁気センサ298と磁石260との取付位置のズレが分かれば、磁気センサ298の感度の補正量が分かるので、システムコントローラ100は磁気センサ298と磁石260との取付位置のズレに基づいて、磁気センサ298の感度を補正する。
同様に磁気センサ298の出力の個体情報の情報が分かれば、個体差による出力差を是正することができるので、センサ側補正情報として磁気センサ298の個体情報(検出感度(ゲイン)の個体データ)が記録されている場合は、その情報を読み出して、磁気センサ298の感度を補正する。
また、磁石260の磁力が分かれば、磁石260の磁力に応じて磁気センサ298の感度を補正することができるので、磁石側補正情報として磁石260の磁力の情報が記録されている場合は、その情報を読み出して、磁気センサ298の感度を補正する。
このように、磁気センサ298と磁石260とが、それぞれ個別に磁気センサ298の感度の補正に必要な情報を保有しておくことにより、任意の組み合わせで磁気センサ298と磁石260とを使用した場合であっても、一定の感度になるように磁気センサ298の感度を補正して使用することができる。
なお、磁気センサ側メモリ310及び磁石側メモリ312に記録する情報は、磁気センサ298の感度を補正するのに有効な情報であれば、その種類等については特に限定されるものでない。上記の他、たとえば、磁気センサ側メモリ310には、磁気センサ298の周辺温度の情報などをセンサ側補正情報として記録することができる。すなわち、磁気センサは、温度に応じてセンサの感度が変動したり、取付位置が変動したりする場合があるので、周辺温度の情報をセンサ側補正情報として磁気センサ側メモリ310に記録しておくことにより、温度に基づく磁気センサ298の感度の変化を補正することができる。磁石260も同様に温度に応じて磁力が変動したり、取付位置が変動したりする場合があるので、周辺温度の情報を磁石側補正情報として磁石側メモリ312に記録しておくことにより、温度に基づく磁気センサ298の感度の変化を補正することができる。これにより、より高精度な測定が可能になる。
なお、磁気センサ298の周辺温度の情報を磁気センサ側メモリ310に記憶する場合は、別途、温度センサが磁気センサ298の近傍に設けられる。周辺温度の情報は、一定間隔で定期的に記録する構成としてもよいし、あらかじめ設定された検出タイミング(たとえば、設定した枚数の印刷ジョブを完了した時や、インクジェット記録装置10の起動時、インクジェットヘッド200に対して定期的に行われるメンテナンス時、インクジェットヘッド200の輸送時、インクジェットヘッド200の移動時など)で検出して記録する構成としてもよい。
磁石260の周辺温度の情報を磁石側メモリ312に記憶する場合も同様に、別途、温度センサが磁石260の近傍に設けられる。周辺温度の情報は、一定間隔で定期的に記録する構成としてもよいし、あらかじめ設定された検出タイミングで検出して記録する構成としてもよい。
なお、ヘッドモジュール210がベースフレーム212に取り付けられた後は、磁石260と磁気センサ298とは近接して配置されるので、温度センサは共用のものを使用する構成とすることもできる。たとえば、図16に示すように、ヘッドモジュール210の周辺温度を検出するための温度センサ302が設けられている場合は、この温度センサ302の情報を取得して、磁気センサ側メモリ310及び磁石側メモリ312に記憶する構成とすることもできる。
また、1つのインクジェットヘッド200で温度分布に偏りがない場合は、全ての磁気センサ298及び磁石260の周辺温度の情報を1つの温度センサで計測する構成とすることもできる。あるいは、測定領域を複数に分割し、領域ごとに温度を計測する構成とすることもできる。
なお、上記の例では、磁気センサ298ごとに磁気センサ側メモリ310を用意する構成としているが、磁気センサ298については、1つの磁気センサ側メモリ310を用意し、この磁気センサ側メモリ310に各磁気センサ298のセンサ側補正情報を識別可能に記録する構成としてもよい。
また、1つの管理テーブルを用意し、この管理テーブルに各磁気センサ298のセンサ側補正情報と、各磁石260の磁石側補正情報とを記録する構成としてもよい。この場合、磁気センサ298と磁石260には、それぞれ固有の識別情報(たとえば、バーコードや二次元バーコード)を付与し、その識別情報を読み取って、対応するセンサ側補正情報と磁石側補正情報とを管理テーブルから読み出して使用する。
また、バーコードや二次元バーコードにセンサ側補正情報及び磁石側補正情報を記録し、読み取る構成とすることもできる。
なお、上記の例では、システムコントローラ100が磁気センサ298の感度の補正処理を実施しているが(所定の制御プログラムを実行することにより、システムコントローラ100が感度補正手段として機能する。)、たとえば、インクジェットヘッド200に感度補正手段としてのマイクロコンピュータを搭載し、当該マイクロコンピュータで磁気センサ298の感度の補正処理を実施する構成とすることもできる。
《変位量検出手段の他の例》
上記実施の形態では、ヘッドモジュール210の変位量を検出するための変位量検出手段を磁気センサ298と磁石260とで構成しているが、変位量検出手段の構成は、これに限定されるものではない。この他、レーザ距離センサや赤外線距離センサ、渦電流センサの構成などを使用して、変位量検出手段を構成することができる。
〈レーザ距離センサ〉
レーザ距離センサを使用する場合は、たとえば、ベースフレーム212側にレーザ距離センサを設け、ヘッドモジュール210側には、そのレーザ距離センサの被検出部(レーザ照射部)を設ける。
レーザ距離センサを使用する場合も上記磁気センサの場合と同様にセンサの感度補正を行うことが好ましい。すなわち、レーザ距離センサも磁気センサと同様にセンサの出力に個体差があるので、センサごとにメモリ(センサ側記憶手段)を所有し、そのメモリに感度を補正するための情報(センサ側補正情報)を記憶しておく。たとえば、レーザ距離センサの個体情報(検出感度(ゲイン)の個体データ)や取付位置の情報などをセンサ側補正情報として記憶しておく。被検出部側も同様に反射率や周囲の明るさ、周囲の温度などによってセンサの感度が変動するので、被検出部側もメモリ(被検出体側記憶手段)を所有し、その被検出部を使って検出する場合に必要なレーザ距離センサの感度の補正情報(被検出体側補正情報)を記憶しておく。たとえば、被検出部の反射率や周囲の明るさ、周囲の温度、取付位置の情報などを被検出体側補正情報として記憶しておく。これにより、いかなる組み合わせのレーザ距離センサと被検出部とを使用した場合であっても、一定の感度になるように修正して使用することができる。
〈赤外線距離センサ〉
赤外線距離センサを使用する場合は、たとえば、ベースフレーム212側に赤外線距離センサを設け、ヘッドモジュール210側には、その赤外線距離センサの被検出部(赤外線照射部)を設ける。
赤外線距離センサを使用する場合も上記磁気センサの場合と同様にセンサの感度補正を行うことが好ましい。すなわち、赤外線距離センサも磁気センサと同様にセンサの出力に個体差があるので、センサごとにメモリ(センサ側記憶手段)を所有し、そのメモリに感度を補正するための情報(センサ側補正情報)を記憶しておく。たとえば、赤外線距離センサの個体情報(検出感度(ゲイン)の個体データ)や取付位置の情報などをセンサ側補正情報として記憶しておく。被検出部側も同様に反射率や周囲の温度、被検出体の温度、被検出体の色、周囲の明るさなどによってセンサの感度が変動するので、被検出部側もメモリ(被検出体側記憶手段)を所有し、その被検出部を使って検出する場合に必要な赤外線距離センサの感度の補正情報(被検出体側補正情報)を記憶しておく。たとえば、被検出部の表面粗さや反射率や周囲の温度、被検出体の温度、被検出体の色、周囲の明るさの情報などを被検出体側補正情報として記憶しておく。これにより、いかなる組み合わせの赤外線距離センサと被検出部とを使用した場合であっても、一定の感度になるように修正して使用することができる。
〈渦電流センサ〉
渦電流センサを使用する場合は、たとえば、ベースフレーム212側に渦電流センサを設け、ヘッドモジュール210側には、その渦電流センサの被検出部を設ける。
渦電流センサを使用する場合も上記磁気センサの場合と同様にセンサの感度補正を行うことが好ましい。すなわち、渦電流センサも磁気センサと同様にセンサの出力に個体差があるので、センサごとにメモリ(センサ側記憶手段)を所有し、そのメモリに感度を補正するための情報(センサ側補正情報)を記憶しておく。たとえば、渦電流センサの個体情報(検出感度(ゲイン)の個体データ)や取付位置の情報などをセンサ側補正情報として記憶しておく。被検出部側も同様に導伝率や透磁率、被検出体の温度などによってセンサの感度が変動するので、被検出部側もメモリ(被検出体側記憶手段)を所有し、その被検出部を使って検出する場合に必要な渦電流センサの感度の補正情報(被検出体側補正情報)を記憶しておく。たとえば、被検出部の導伝率や透磁率、被検出体の温度、取付位置の情報などを被検出体側補正情報として記憶しておく。これにより、いかなる組み合わせの渦電流センサと被検出部とを使用した場合であっても、一定の感度になるように修正して使用することができる。
〈その他〉
その他、ヘッドモジュール210の変位量を検出する変位検出手段は、高分解能を有し、小型の計測機器を好適に用いることができる。
《X方向取付位置調整手段の他の例》
上記実施の形態のX方向取付位置調整手段(取付位置調整手段)は、偏芯ローラ248を手動で回転させる構成とされているが、図18に示すように、ヘッドモジュール210に駆動手段を搭載して、自動で回転させる構成とすることもできる。
図18に示す例では、偏芯ローラ248の駆動手段としてモータ320がヘッドモジュール210に搭載されている。モータ320には、その駆動軸にネジ歯車(ウォーム)322が連結されている。偏芯ローラ248には、軸部248Aに、はす歯歯車(ウォームホイール)324が連結されている。ネジ歯車322は、はす歯歯車324に噛み合わされている。モータ320を駆動して、ネジ歯車322を回転させると、はす歯歯車324が回転し、この結果、偏芯ローラ248が回転する。なお、この場合、偏芯ローラ248の軸部248Aは雄ネジではなく円柱状に形成され、偏芯ローラ取付穴252もネジ穴ではなく貫通穴で形成される。
このように、偏芯ローラ248は自動で回転させる構成とすることもできる。この場合、ヘッドモジュール210の位置決めの処理を自動で行うことができる。また、ヘッドモジュール210に許容以上の位置ズレが生じた場合にも自動で補正処理を行うことができる。
なお、上記実施の形態では、偏芯ローラ248とプランジャ250とX方向位置決め基準ピン296とでX方向取付位置調整手段を構成しているが、X方向取付位置調整手段の構成は、これに限定されるものではない。この他、たとえば、ボールネジ機構等の移動機構を用いて構成することもできる。
《ヘッドモジュールの位置決め方法の他の例》
上記のように、ヘッドモジュール210は、ベースフレーム212に取り付けられた後、位置調整(位置決め)が行われる。
どのヘッドモジュール210をどの程度変位(移動)させれば正確な位置に取り付けられるかは、各ヘッドモジュール210の相対的な位置関係から求めることができる。
そこで、各ヘッドモジュール210に必要な補正量を示すインジケータを設け、そのインジケータの表示に基づいてヘッドモジュール210の位置調整を行うことにより、より簡便にヘッドモジュール210の位置調整を行うことができる。
図19には、インジケータの表示に基づいてヘッドモジュールの位置調整を行う場合の例を示す図である。
同図に示すように、ヘッドモジュール210に必要な補正量を示すインジケータ(指示手段)330が備えられる。インジケータ330は、たとえば、インクジェットヘッド200が搭載されるホルダ(不図示)に設置される。また、インジケータ330は、ヘッドモジュール210ごとに設けられる。
同図に示すインジケータ330は、マイナス(−)、ゼロ(0)、プラス(+)をランプ(LED(Light Emitting Diode))で表示する構成とされている。このインジケータ330では、補正が必要な方向のランプが点灯される。たとえば、マイナス方向に補正が必要な場合は、マイナス(−)のランプが点灯され、プラス方向に補正が必要な場合はプラス(+)のランプが点灯される。補正が必要ない場合は、ゼロ(0)のランプが点灯される。
たとえば、マイナス(−)のランプが点灯されている場合、オペレータはマイナス方向にヘッドモジュール210を変位させる。システムコントローラ100は、磁気センサ298から出力されるヘッドモジュール210の変位情報を取得し、必要な量が補正されると、ゼロ(0)のランプを点灯させる。一方、必要以上に補正された場合は、プラス(+)のランプを点灯させる。この場合、オペレータは、プラス方向にヘッドモジュール210を変位させる。
このように、インジケータ330を用いてヘッドモジュール210の位置調整を行うことにより、間便に位置調整を行うことができる。
《その他の実施の形態》
上記実施の形態では、ヘッドモジュール210をY方向に位置決めする際、ヘッドモジュール側に設けられたヘッドモジュールY方向固定接点部材234とヘッドモジュールY方向可動接点部材236とをベースフレーム側に設けられた固定接点用ベースフレームY方向位置決め部材290と可動接点用ベースフレームY方向位置決め部材292とに当接させることで位置決めしているが、X方向の位置決めと同様に偏芯ローラを利用した取付位置調整手段で調整する構成としてもよい。Z方向についても同様である。
なお、上記実施の形態のように、ヘッドモジュール側に設けられたヘッドモジュールY方向固定接点部材234とヘッドモジュールY方向可動接点部材236とをベースフレーム側に設けられた固定接点用ベースフレームY方向位置決め部材290と可動接点用ベースフレームY方向位置決め部材292とに当接させてY方向の位置決めを行う場合、ヘッドモジュール210がY方向に正しく取り付けられるように、前もってヘッドモジュールY方向可動接点部材236の位置調整を行っておくことが好ましい。Z方向についても同様であり、前もってヘッドモジュールZ方向接点部材242の位置調整を行っておくことが好ましい。たとえば、工場出荷時に行うことが好ましい。
また、上記実施の形態では、偏芯ローラ248とプランジャ250とをヘッドモジュール210側に設け、X方向位置決め基準ピン296をベースフレーム212側に設けているが、偏芯ローラ248とプランジャ250とをベースフレーム212側に設け、X方向位置決め基準ピン296をヘッドモジュール210側に設ける構成とすることもできる。
また、上記実施の形態では、磁気センサ298をベースフレーム212側に設け、磁石260をヘッドモジュール210側に設ける構成としているが、磁気センサ298をヘッドモジュール210側に設け、磁石260をベースフレーム212側に設ける構成とすることもできる。
また、上記実施の形態では、偏芯ローラ248として、ローラ部248Bと軸部248Aとを偏芯させた構成のローラを使用しているが、ローラ部が楕円形状等のローラを使用した場合であっても同様の作用効果を得ることができる。
また、上記実施の形態では、ヘッドモジュール間の相対的な位置関係を検出する際、インクジェット記録装置10に搭載されたインラインセンサ58でテストパターンを読み取る構成としているが、機外の画像読取手段(スキャナ等)でテストパターンの画像を読み取り、ヘッドモジュール間の相対的な位置関係を検出する構成とすることもできる。