本発明は、上記課題を解決するために、互いに背向する2方向に対して動作可能であり、かつ、比例ソレノイドとしての機能を併せ持っているソレノイドにおいて、発生する磁束を効率的に利用できると共に、可動磁極に対する吸引力の変化を抑制可能なソレノイドを提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、ケースと、このケース内に所定の間隙をおいて配置された第1及び第2のコイルと 前記ケースの両端部にそれぞれ固定された第1及び第2の固定磁極と、前記ケース内に前記第1のコイルと前記第2のコイルとの間に介在するように配置された共通磁極と、前記ケース内に摺動可能に設けられ、かつ、略筒状の本体部と、この本体部の前記第1の固定磁極と対向する側に設けられた第1の磁極部と、前記本体部の前記第2の固定磁極と対向する側に設けられた第2の磁極部とを有し、前記第1のコイルに通電したときには前記ケース、前記第1の固定磁極及び前記共通磁極と共に磁気回路を生成して前記第1の固定磁極に吸引され、前記第2のコイルに通電したときには前記ケース、前記第2の固定磁極及び前記共通磁極と共に磁気回路を生成して前記第2の固定磁極に吸引される可動磁極とを備えたソレノイドであって、前記第1の固定磁極は、前記可動磁極と対向する部分に、前記可動磁極の中心軸に対して斜行すると共に互いに異なる斜行角度を有する第1の面と第2の面とが形成され、前記第2の固定磁極は、前記可動磁極と対向する部分に、前記可動磁極の中心軸に対して斜行すると共に互いに異なる斜行角度を有する第1の面と第2の面とが形成され、前記共通磁極は、前記可動磁極の前記本体部の周側面に対向し、かつ、前記可動磁極の中心軸に対して平行である平行面が形成され、前記可動磁極は、前記第1の磁極部に前記第1の固定磁極の前記第1の面と前記第2の面とに対してそれぞれ対向する第1の面と第2の面とが形成され、前記第2の磁極部に、前記第2の固定磁極の前記第1の面と前記第2の面とに対してそれぞれ対向する第1の面と第2の面とが形成されると共に、前記本体部の前記周側面において前記可動磁極が前記第1の固定磁極と前記第2の固定磁極との中間に位置しているときよりも前記第1又は前記第2の固定磁極に最も接近しているときの方が前記共通磁極の前記平行面に対向している領域の面積が小さくなるように形成されていることを特徴とするソレノイドである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記可動磁極は、前記第1及び前記第2の磁極部が略錐台形状に形成されると共に、前記第1及び前記第2の磁極部の周側面がそれぞれ前記第1の面であることを特徴とするソレノイドである。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記可動磁極は、前記第1及び前記第2の磁極部の中心軸及びその近傍に凹陥部が形成されると共に、これらの凹陥部の内周面がそれぞれ前記第2の面であることを特徴とするソレノイドである。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記可動磁極は、前記第1及び前記第2の磁極部の前記凹陥部の中央に、前記可動磁極の中心軸と直交するように、かつ、平坦な直交面が形成されていることを特徴とするソレノイドである。
請求項5に記載の発明は、請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記可動磁極は、前記本体部の前記周側面と前記第1の磁極部の前記周側面との間に第1の段差部が形成されると共に、前記本体部の前記周側面と前記第2の磁極部の前記周側面との間に第2の段差部が形成され、前記可動磁極が前記第1の固定磁極に最も接近しているときに前記可動磁極の中心軸方向において前記第1の段差部が前記共通磁極に対して重なり合うようになされ、前記可動磁極が前記第2の固定磁極に最も接近しているときに前記可動磁極の中心軸方向において前記第1の段差部が前記共通磁極に対して重なり合うようになされていることを特徴とするソレノイドである。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記可動磁極は、前記第1の段差部及び前記第2の段差部において、前記可動磁極の中心軸に近い領域が前記可動磁極の中心軸と直交する直交面として形成され、前記可動磁極の中心軸から遠い領域が前記可動磁極の中心軸に対して斜行する斜行面として形成されていることを特徴とするソレノイドである。
請求項7に記載の発明は、請求項4から請求項6のいずれか一項に記載の発明において、前記可動磁極は、前記第1の磁極部及び前記第2の磁極部の前記直交面にスペーサがそれぞれ配置されていることを特徴とするソレノイドである。
請求項8に記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の発明において、前記共通磁極は、前記可動磁極の中心軸方向に配列された複数の共通磁極構成板からなることを特徴とするソレノイドである。
請求項9に記載の発明は、請求項2から請求項8のいずれか一項に記載の発明において、前記第1の固定磁極と前記第2の固定磁極との少なくとも一方は、前記可動磁極に対向する部分のうち、前記第1の面を含む一部分が分割されていることを特徴とするソレノイドである。
請求項1に記載の発明によれば、可動磁極の本体部の周側面において、可動磁極が第1の固定磁極と第2の固定磁極との中間に位置しているときよりも、第1又は第2の固定磁極に最も接近しているときの方が共通磁極の平行面に対向している領域の面積が小さくなるように形成されているので、可動磁極と共通磁極との間の磁気抵抗は第1又は第2の固定磁極に最も接近しているときの方が第1の固定磁極と第2の固定磁極との中間に可動磁極が位置しているときよりも大きくなる。したがって、可動磁極が第1又は第2の固定磁極に接近するときに、両者を流れる磁束量が急増することによって吸引力が急増することを抑制できる。また、第1及び第2の磁極部に形成した第1及び第2の面が可動磁極の中心軸に対して斜行しているので、これらの面を経由して流れる磁束の可動磁極の中心軸方向の分力が吸引力として寄与する。
請求項2に記載の発明によれば、第1及び第2の磁極部を略錐台形状とすることによって、所定の斜行角度を持つ第1の面を容易に、かつ、低コストで形成することができる。
請求項3に記載の発明によれば、可動磁極の凹陥部の内周面が第2の面であるので、所定の斜行角度を持つ第2の面を容易に、かつ、低コストで形成することができる。
請求項4に記載の発明によれば、第1及び第2の磁極部に直交面を設けたので、吸引力の生成に寄与する磁束の流れを一定程度確保することができる。
請求項5に記載の発明によれば、第1及び第2の磁極部に段差部を形成することによって、第1又は第2の固定磁極に最も接近している状態における共通磁極と可動磁極の周側面とが対向している領域の面積を、第1の固定磁極と第2の固定磁極との中間に可動磁極が位置している状態における共通磁極と可動磁極の平行面とが対向している領域の面積よりも小さくすることが容易に実現できる。
請求項6に記載の発明によれば、第1の段差部及び前記第2の段差部において、可動磁極の中心軸に近い領域を直交面とし、可動磁極の中心軸から遠い領域を斜行面としてので、可動磁極の中心軸から遠い領域である斜行面に共通磁極への磁束の流れを多少生じることになる。これによって、共通磁極の平行面と可動磁極の周側面とが対向している領域の面積が変化するときに、この面積が漸次変化するのに近い状態とすることができる。
請求項7記載の発明によれば、残留磁気の影響によって、第1又は第2の固定磁極に対して可動磁極が張り付くことを防止できる。また、直交面にスペーサを装着するので、装着作業が容易になる。
請求項8に記載の発明によれば、共通磁極の可動磁極の中心軸方向における厚みが比較的大きいと、ケースの内部へ圧入するのに必要な作業時間が長くなる上に、共通磁極の寸法精度が十分でない場合には、圧入自体が困難になることもあるが、共通磁極を分割したのでケースの内部への圧入が容易になる。
請求項9に記載の発明によれば、略錐台形状の第1及び第2の磁極部に対応して、第1の固定磁極及び第2の固定磁極の対向する部分を凹陥させる必要があるが、第1の面を含む一部分を分割することによって、凹陥部の内周面を所定の斜行角度に切削加工するという難易度が高い加工を行わずに形成することが可能になる。ひいては、製造コストを低減することが可能になる。
本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドについて説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドを示す図(1)であり、(a)は斜視図、(b)は可動磁極の中心軸方向の断面図である。図1において、10はソレノイド、20は可動磁極、23aは段差部斜行面、23bは段差部直交面、24aは段差部斜行面、24bは段差部直交面、40は第1固定磁極、45は第2固定磁極、50は第1共通磁極構成板、52は第2共通磁極構成板、60はケース、61は肉厚部、62a及び62bは開口部、63及び64は肉薄部、65は第1蓋、66は第2蓋、67はシャフト、68は第1先端部、68aは開口部、69は第2先端部、70及び71はドライブッシュ、72は第1ボビン、73は第1コイル、74は第2ボビン、75は第2コイル、76a、76b、76c及び76dはリード線、77はフランジ、77a、77b及び77cは開口部、78及び79はスペーサである。
本発明の第1の実施の形態に係るソレノイド10は、互いに背向する2方向に対して動作する機能と、コイルの電流値によって推力を制御可能な比例ソレノイドとしての機能を併せ持っている。すなわち、ソレノイド10は、図1に示すように、シャフト67がケース60の両端部に設けた第1蓋65と第2蓋66とから突出するように摺動する。シャフト67は、可動磁極20の中心軸に沿って形成された貫通孔に嵌合されており、可動磁極20の摺動に伴ってケース60の外部に突出する。可動磁極20は、第1コイル73に通電したときには、第1固定磁極40に吸引され、第2コイル75に通電したときには第2固定磁極に吸引される。また、ソレノイド10の外部には、図示していないスプリングを2つ設けており、それぞれのスプリングが第1固定磁極40又は第2固定磁極に吸引されつつある可動磁極20を第1固定磁極40と第2固定磁極との中間点に押し戻すように弾発力を加えている。可動磁極20の推力は、第1コイル73及び第2コイル75のターン数と、これらのコイルに流れる電流値によって決まる。したがって、この電流値をスプリングの弾発力に適宜対応するように制御すれば、可動磁極20を励磁による吸引力と弾発力が均衡する位置に停止させることができる。また、第1コイル73又は第2コイル75への通電を停止すると、スプリングの弾発力によって第1固定磁極40と第2固定磁極との中間点に押し戻される。
さらにソレノイド10の各部品の詳細について説明する。図2は、本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドを示す図(2)であり、(c)は正面図、(d)は左側面図である。図2において、76dはリード線、77dは開口部であり、その他の符号は図1と同じものを示す。また、図3は、本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドの動作を示す断面図であり、(a)は可動磁極が第1磁極部に最も接近した状態、(b)は可動磁極が第2磁極部に最も接近した状態である。図3において用いた符号は、すべて図1と同じものを示す。さらに、図4は、本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドの可動磁極、第1固定磁極、第2固定磁極及び共通磁極の細部を示す左側面図である。図4において、21は本体部、22は周側面、23は第1段差部、23aは段差部斜行面、23bは段差部直交面、24は第2段差部、24aは段差部斜行面、24bは段差部直交面、25は第1磁極部、26は外側斜行面、27は内側斜行面、28は内側直交面、29は第2磁極部、30は外側斜行面、31は内側斜行面、32は内側直交面、33は貫通孔、40a、40b及び40cは貫通孔、41は凹陥部、41aは突出部、42は外側斜行面、43は内側斜行面、44は内側直交面、45a、45b及び45cは貫通孔、51は貫通孔、46は凹陥部、46aは突出部、47は外側斜行面、48は内側斜行面、49は内側直交面、51aは平行面、53は貫通孔、53aは平行面であり、その他の符号は図1と同じものを示す。なお、図4において、断面のハッチングは省略している。
図4に示すように、可動磁極20は、第1共通磁極構成板50の貫通孔51と第2共通磁極構成板52の貫通孔53に挿入された状態で設けられている、また、第1コイル73及び第2コイル75への通電を停止しているときには、可動磁極20の中心軸方向における中間点が第1共通磁極構成板50と第2共通磁極構成板52との接触面に対応した位置、つまり図4に示した位置に停止するように配置されている。さらに、可動磁極20は、第1磁極部25と第2磁極部29とが鏡面対称となるように形成されており、本体部21を間に挟んで互いに背向している。本体部21は、可動磁極20の本体部であり、円筒形状の周側面22を持っている。周側面22は、第1共通磁極構成板50の平行面51aと第2共通磁極構成板52の平行面53aに極めて近接した状態で対向している。また、第1磁極部25、本体部21及び第2磁極部29を可動磁極20の中心軸に沿って貫通するように貫通孔33を形成している。貫通孔33は、図1(b)で示したように、シャフト67が嵌合されている。
第1磁極部25は、第1固定磁極40に対向するように、かつ、略円錐台形状に形成されている。略円錐台形状に形成されていることから、第1磁極部25の周側面は可動磁極20の中心軸に対して一定の角度で斜行している。また、第1磁極部25の先端部分は、可動磁極20の中心軸及びその近傍となる領域が凹陥部になっている。この凹陥部の内周面は、可動磁極20の中心軸に対して一定の角度で斜行している。第1磁極部25の周側面である外側斜行面26と、第1磁極部25の先端部分における凹陥部の内周面である内側斜行面27とは、後述するように、比例ソレノイドとして好ましい特性が得られるように、可動磁極20の中心軸に対してそれぞれ異なる角度で、かつ、外側斜行面26が内側斜行面27よりも可動磁極20の中心軸に対して小さい斜行角度なるように形成されている。さらに、第1磁極部25の先端部分の凹陥部において、内側斜行面27よりも可動磁極20の中心軸に近い領域は、可動磁極20の中心軸に対して直交する内側直交面28としている。内側直交面28の中心には、貫通孔33が開口している。なお、第1磁極部25は、略六角錐台や略八角錐台など他の形状としてもよい。
第2磁極部29は、第2固定磁極45に対向するように、かつ、略円錐台形状に形成されている。第2磁極部29の周側面は、可動磁極20の中心軸に対して第1磁極部25の外側斜行面26と同じ角度で斜行している。また、第2磁極部29の先端部分は、可動磁極20の中心軸及びその近傍となる領域が凹陥部になっている。この凹陥部の内周面は、第1磁極部25の内側斜行面27と同じ角度で斜行している。したがって、第2磁極部29の周側面である外側斜行面30と、第2磁極部29の先端部分における凹陥部の内周面である内側斜行面31とは、第2コイル75に通電したときには、第1磁極部25の外側斜行面26と第1磁極部25の内側斜行面27と同じ特性が得られる。さらに、第2磁極部29の先端部分の凹陥部において、内側斜行面31よりも可動磁極20の中心軸に近い領域は、可動磁極20の中心軸に対して直交する内側直交面32としている。内側直交面32は、内側直交面28と同じ面積を有しており、その中心には貫通孔33が開口している。なお、ソレノイド10に求められる特性によっては、第1磁極部25と第2磁極部29との形状を第1磁極部25と異なるものとしてもよい。例えば、外側斜行面26と外側斜行面30との斜行角度を異なるものにする、又は、内側直交面28と内側直交面32との面積を異なるものとする、あるいは、複数の部位において形状を互いに異なるものにしてもよい。なお、第2磁極部29は、略六角錐台や略八角錐台など他の形状としてもよい。
また、第1磁極部25は、最も径が大きい部分においても本体部21より径が小さくなっており、これらの境界は第1段差部23として形成されている。第1段差部23は、可動磁極20の中心軸から遠い側、つまり本体部21に連続する側を可動磁極20の中心軸に対して斜行する段差部斜行面23aと、可動磁極20の中心軸から近い側、つまり第1磁極部25に連続する側を可動磁極20の中心軸に対して直交する段差部直交面23bから構成されている。段差部斜行面23aと段差部直交面23bとは、可動磁極20の中心軸に対する角度が異なっており、後述するように、可動磁極20と第1共通磁極構成板50及び第2共通磁極構成板52との間に流れる磁束を調節するためにこのような角度に設定されている。第2磁極部29と本体部21との境界も第2段差部24として形成されており、第2段差部24も第1段差部23と同様に、段差部斜行面24aと段差部直交面24bとから構成されている。
第1固定磁極40は、可動磁極20の第1磁極部25に対向している側に凹陥部41を形成している。凹陥部41は、可動磁極20の第1磁極部25の形状に噛み合うように、略円錐台形状に凹陥しており、第1固定磁極40の中心軸及びその近傍の領域を第1磁極部25に向かって突出した突出部41aとしている。凹陥部41の内周面である外側斜行面42は、可動磁極20の中心軸に対して斜行しており、かつ、第1磁極部25の外側斜行面26と同じ斜行角度にしている。突出部41aの周側面である内側斜行面43は、可動磁極20の中心軸に対して斜行しており、かつ、第1磁極部25の内側斜行面27と同じ斜行角度にしている。また、突出部41aの第1磁極部25に対向する面は、可動磁極20の中心軸に対して直交する内側直交面44として形成されている。したがって、外側斜行面26と外側斜行面42との間、及び、内側斜行面27と内側斜行面43と間を流れるほとんどの磁束は、可動磁極20の中心軸に対して斜行するように流れる。これらの磁束を可動磁極20の中心軸方向と、この中心軸に直交する方向との分力に分解すると、磁束が流れる部位によって差はあるが、中心軸方向へ働く分力が図20に示した従来技術の構造、すなわち対向する2組の面のうち、1組が中心軸に直交する方向に流れる構造よりも大きくすることが可能である。また、外側斜行面26と外側斜行面42、及び、内側斜行面27と内側斜行面43は、可動磁極20の中心軸に対する斜行角度をそれぞれ異なるものとしているので、可動磁極20が第1固定磁極40に接近しつつあるときに、これら2組の面同士の間隙が異なるものとなる。具体的には、外側斜行面26と外側斜行面42との可動磁極20の中心軸に対する斜行角度が内側斜行面27と内側斜行面43との斜行角度よりも小さいので、外側斜行面26と外側斜行面42との間隙の方が内側斜行面27と内側斜行面43との間隙よりも小さくなる。さらに、可動磁極20の摺動時の単位時間当たりの間隙の縮小距離が小さくなる。この間隙の違いと、単位時間当たりの間隙の縮小距離の違いが磁束の流れの微妙な制御を可能にし、ソレノイド10に所望の特性を持たせることを可能にする。くわえて、内側直交面28と内側直交面44とは、可動磁極20の中心軸に対して直交しており、これらの間を流れるほとんどの磁束はこの中心軸と平行に流れるので、可動磁極20の推力を増大させる効果を有する。また、第1固定磁極40の中心軸に沿って貫通孔40a、40b及び40cが形成されている。貫通孔40aと貫通孔40bとの段差部は、図1に示したドライブッシュ70の位置決めのために形成されている。さらに、もっとも径が大きい貫通孔40cはドライブッシュ70の圧入する際の誘い込みのために形成されている。なお、凹陥部41は、第1磁極部25が略六角錐台や略八角錐台などに形成されている場合には、これに応じた形状としてもよい。
第2固定磁極45は、可動磁極20の第2磁極部29に対向している側に凹陥部46を形成している。したがって、凹陥部46は、可動磁極20を介して第1固定磁極40の凹陥部41と対向している。また、凹陥部46は、可動磁極20の第2磁極部29の形状に噛み合うように、第2固定磁極45の中心軸及びその近傍の領域を第2磁極部29に向かって突出した突出部46aとしている。凹陥部46の内周面である外側斜行面47は、可動磁極20の中心軸に対して斜行しており、かつ、第2磁極部29の外側斜行面30と同じ斜行角度にしている。突出部46aの周側面である内側斜行面48は、可動磁極20の中心軸に対して斜行しており、かつ、第2磁極部29の内側斜行面31と同じ斜行角度にしている。また、突出部46aの第2磁極部29に対向する面は、可動磁極20の中心軸に対して直交する内側直交面49として形成されている。したがって、外側斜行面30と外側斜行面47との間、及び、内側斜行面31と内側斜行面48と間を流れるほとんどの磁束は、可動磁極20の中心軸に対して斜行するように流れるが、外側斜行面26と外側斜行面42との間、及び、内側斜行面27と内側斜行面43と同様に、図20に示した従来技術の構造よりも大きくすることが可能である。くわえて、内側直交面32と内側直交面49とは、可動磁極20の中心軸に対して直交しており、これらの間を流れるほとんどの磁束はこの中心軸と平行に流れるので、可動磁極20の推力を増大させる効果を有する。貫通孔45aと貫通孔45bとの段差部は、図1に示したドライブッシュ71の位置決めのために形成されている。さらに、もっとも径が大きい貫通孔45cはドライブッシュ71の圧入する際の誘い込みのために形成されている。なお、凹陥部46は、第2磁極部29が略六角錐台や略八角錐台などに形成されている場合には、これに応じた形状としてもよい。
第1共通磁極構成板50及び第2共通磁極構成板52は、第1コイル73と第2コイル75とのいずれに通電した場合でも、磁気回路として中核的な役割を果たす磁極である。第1共通磁極構成板50は、中心及びその近傍に貫通孔51を有する円盤形状に形成されている。第2共通磁極構成板52も、中心及びその近傍に貫通孔53を有する円盤形状に形成されており、さらに第1共通磁極構成板50と同じ形状で、かつ、同じ大きさである。第1共通磁極構成板50と第2共通磁極構成板52とは、共通磁極を2つに分割することによって、1mmから4mm程度の厚さの磁性金属板をプレス加工して成形することが可能になると共に、ケース60の2つの開口部から別々に圧入できるようになるので、ソレノイド10の組立作業の効率化と、製造コストの低減を図ることができるという利点がある。もちろん、3枚以上の共通磁極構成板で共通磁極を構成することも可能であり、1つの共通磁極のみで構成することも可能である。また、貫通孔51と貫通孔53とは、可動磁極20の本体部21の径よりもわずかに大きい径に形成されており、貫通孔51の内周面である平行面51aと貫通孔53の内周面である平行面53aとは可動磁極20の中心軸に対して平行となるように形成されている。さらに、平行面51aと平行面53aは、本体部21の周側面22との間隙を必要最小限とし、無用な磁気抵抗を生じないようにしている。なお、ソレノイド10に求められる特性によっては、第1共通磁極構成板50と第2共通磁極構成板52との形状や厚さを互いに異なるものとしてもよい。
前述のように、第1段差部23と第2段差部24とは、可動磁極20と第1共通磁極構成板50及び第2共通磁極構成板52との間に流れる磁束を調節する機能を有している。ここで、この磁束を調節する機能について説明する。図1(b)に示すように、可動磁極20が第1固定磁極40と第2固定磁極45との中間に位置しているときには、第1共通磁極構成板50の平行面51aと第2共通磁極構成板52の平行面53aとの全ての領域が可動磁極20の本体部21の周側面22に正対した状態で対向しており、また両者の間の間隙は非常に狭いものとなっている。したがって、第1コイル73と第2コイル75とのいずれに通電した場合、平行面51aと平行面53aの全ての領域を磁束が通過する状態となる。しかし、図3(a)示す状態、すなわち可動磁極20が第1固定磁極40に最も接近した状態になると、可動磁極の中心軸方向において第2段差部24が平行面53aと同じところに位置する。この状態においては、周側面22に正対しているのは平行面53aの一部分となり、他の部分は段差部斜行面23aと外側斜行面30とに対向しているが、正対しているわけではない。さらに、段差部斜行面23aと外側斜行面30とは、周側面22よりも平行面53aとの間隙が非常に大きい。したがって、周側面22と段差部斜行面23a及び外側斜行面30との間に流れる磁束は、平行面53aの場合よりも少なくなる。
以上の構成によれば、可動磁極20が第1固定磁極40と第2固定磁極45との中間に位置しているときよりも、可動磁極20が第1固定磁極40に最も接近しているときの方が平行面51a及び53aの面積が小さくなり、可動磁極20と第1共通磁極構成板50及び第2共通磁極構成板52との間を流れる磁束を絞り込むような作用を生じる。また、図3(b)示す状態、すなわち可動磁極20が第2固定磁極45に最も接近した状態においても、周側面22に正対しているのが平行面51aの一部分となる。よって、可動磁極20が第1固定磁極40と第2固定磁極45との中間に位置しているときよりも、可動磁極20が第2固定磁極45に最も接近しているときの方が平行面51a及び53aの面積が小さくなるので、可動磁極20の第1固定磁極40又は第2固定磁極45への接近に連動して流れる磁束量を絞り込むような効果を生じる。これは、例えて言うならば、流量調整弁によって流体の流量を絞り込むような作用であり、図20で示した可動磁極101と磁性部102との構成には全く存在しないものである。
さらに、図1及び図2に基づいて、他の構成部品について説明する。ケース60は、図1(b)に示すように、第1共通磁極構成板50及び第2共通磁極構成板52を嵌合する中央部分を他の部分よりも肉が厚い肉厚部61としている。このように形成することによって、第1共通磁極構成板50と第2共通磁極構成板52とを両端の開口部から挿入し、肉厚部61まで挿入する作業を人手で行えるようにしている。また、ケース60の両端部は、他の部分よりも肉が薄い肉薄部63及び64としている。肉薄部63と肉薄部64とは、第1蓋65と第2蓋66とを嵌合するために形成されており、これらと中央寄りの部分との段差部は第1蓋65及び第2蓋66を圧入する際の位置決め、すなわち圧入する深さを設定するために利用される。くわえて、図1(b)に示した開口部62a及び62bと、図示していない2つの開口部とはリード線76a、76b、76c及び76dをケース60の外部に導出するために形成されている。
シャフト67は、可動磁極20の貫通孔33に嵌合されており、さらに第1固定磁極40に固定されたドライブッシュ70と、第2固定磁極45に固定されたドライブッシュ71とに支持されている。また、図2(d)に示すように、負荷装置の弁体やリンク機構などを接続するために、第1先端部68の最先端部の近傍に開口部68aを形成してある。なお、第2先端部69に開口部を設けてもよく、第1先端部68と第2先端部69との両方に負荷装置を接続できるようにしてもよい。ドライブッシュ70とドライブッシュ71とは、シャフト67の軸受であり、第1固定磁極40と第2固定磁極45とにそれぞれ嵌合されている。第1ボビン72と第2ボビン74とには、第1コイル73と第2コイル75とをそれぞれ巻回してあるが、これらのボビンを省略することも可能である。フランジ77は、ソレノイド10を負荷装置等に固定するためのものであり、図2(a)に示すように、四隅にねじ止め用の開口部77a、77b、77c及び77dを形成してある。また、図1(b)に示したスペーサ78及び79は、残留磁気によって可動磁極20が第1固定磁極40又は第2固定磁極に貼り付くことを防止するためのものである。また、スペーサ78とスペーサ79とは、内側直交面28と内側直交面32とに接するように配置されているが、これらの直交面に接着されていない。
続けて、本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドにおける磁束の流れについて説明する。図5は本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドにおける磁束の流れを示す図(1)であり、(a)は第1コイルへの通電前の状態、(b)は第1コイルへの通電直後の状態である。図5において用いた符号は、すべて図3と同じものを示す。また、図6は本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドにおける磁束の流れを示す図(2)であり、(c)は可動磁極の摺動開始直後の状態、(d)は可動磁極の摺動開始後間もない状態である。図6において用いた符号は、すべて図3と同じものを示す。さらに、図7は、本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドにおける磁束の流れを示す図(3)であり、(e)は可動磁極が第1固定磁極に一定程度接近した状態、(f)は可動磁極が第1固定磁極に相当程度接近した状態である。図7において用いた符号は、すべて図3と同じものを示す。くわえて、図8は、本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドにおける磁束の流れを示す図(4)であり、(g)は可動磁極が第1固定磁極最も接近した状態、(h)は第1コイルへの通電を停止した状態である。図8において用いた符号は、すべて図3と同じものを示す。なお、これらの図面に記載した矢印は磁束の流れを模式的に示したものである。
図5(a)は、第1コイル73へ通電する前の状態を示しており、可動磁極20は第1固定磁極40と第2固定磁極45との中間に位置している。第1コイル73へ通電すると、図5(b)に示すように、可動磁極20の第1磁極部25から第1固定磁極40へ、第1固定磁極からケース60へ、ケース60から第1共通磁極構成板50及び第2共通磁極構成板52へ、さらに第1共通磁極構成板50及び第2共通磁極構成板52から第1磁極部25を巡る磁気回路を生成する。第1磁極部25から第1固定磁極40への磁束の流れは、間隙が圧倒的に小さい外側斜行面26と外側斜行面42との先端寄りの部分にかなり集中する。可動磁極20が第1固定磁極40へ少し摺動すると、図6(c)に示すように、第1固定磁極40の凹陥部41に第1磁極部25の先端部が進入する。この状態においては、可動磁極20の中心軸方向に対して外側斜行面26と外側斜行面42とが部分的に重なり合った状態となり、重なり合った部分に相応程度磁束の流れが集中するが、第1固定磁極40の内側斜行面27と第1固定磁極40の内側斜行面43との間にも流れる。前述のように、外側斜行面26と外側斜行面42とは、可動磁極20の中心軸方向に対して斜行しており、吸引力の分力には可動磁極20の中心軸に平行な部分もあるので、これらの間を流れる磁束は可動磁極20への吸引力として寄与する。
第1固定磁極40の凹陥部41に第1磁極部25の先端部がさらに進入すると、図6(d)に示すように、内側斜行面27と内側斜行面43との間、及び、内側直交面28と内側直交面44との間を流れる磁束量が増加する。これらの磁束は、可動磁極20への吸引力として寄与する。さらに、可動磁極20が摺動すると、図7(e)に示すように、内側斜行面27と内側斜行面43との間、及び、内側直交面28と内側直交面44とが接近するのと同時に、外側斜行面26と外側斜行面42とが非常に接近するので、外側斜行面26と外側斜行面42との間を流れる磁束量の比率はあまり低下しない。一方、可動磁極20の第2段差部24が可動磁極20の中心軸方向において、第2共通磁極構成板52と重なり合うようになるので、段差部斜行面24aが第2共通磁極構成板52の平行面53aと対向した状態となり、第1共通磁極構成板50及び第2共通磁極構成板52から可動磁極20へ流れる磁束量が漸次減少して行く。
さらに、可動磁極20が第1固定磁極40に接近すると、図7(f)に示すように、第1磁極部25の各面と第1固定磁極40の各面とが非常に接近した状態となる。しかし、可動磁極20の中心軸方向において、第2共通磁極構成板52の平行面53aと対向している周側面22の面積が相当に小さくなるので、第2共通磁極構成板52から可動磁極20へ流れる磁束量が相当に絞り込まれて、第1共通磁極構成板50及び第2共通磁極構成板52から可動磁極20へ流れる磁束量がさらに低下する。したがって、第1磁極部25の各面と第1固定磁極40の各面とが非常に接近しても、両者の間を流れる磁束量は増大しないので、可動磁極20に働く吸引力が急増することはない。そして、図8(g)に示すように、スペーサ78が内側直交面44に接して可動磁極20の摺動が停止し、可動磁極20が第1固定磁極40に最も接近したとなる。この状態において、図8(h)に示すように、第1コイル73への通電を停止して消磁させる。なお、可動磁極20が第2固定磁極45に接近する場合も、同様の磁束の流れと、各部又は各面における磁束量の変化を生じる。
くわえて、本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドと従来技術による比較例に係るソレノイドとの吸引力に関する実験結果について説明する。図9は、第1の比較例に係るソレノイドを示す図であり、(a)は第1コイルへの通電前の状態、(b)は第1コイルへの通電を停止した状態である。図9において、80は周側面、81は外側斜行面、82は段差部斜行面、83は段差部斜行面を示し、その他の符号は図1と同じものを示す。また、図10は、第2の比較例に係るソレノイドを示す図であり、(a)は第1コイルへの通電前の状態、(b)は第1コイルへの通電を停止した状態である。図10において、84は周側面、85は直交面、86は平行面、87は直交面、88は平行面、89は直交面であり、その他の符号は図1と同じものを示す。さらに、図11は、本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドに対する実験結果を示すグラフである。くわえて、図12は、第1の比較例に係るソレノイドに対する実験結果を示すグラフである。また、図13は、第2の比較例に係るソレノイドに対する実験結果を示すグラフである。
第1の比較例に係るソレノイドは、図9に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドとほとんど共通する構成としているが、可動磁極20の周側面80を、可動磁極20の中心軸方向において本発明の第1の実施の形態に係るソレノイド10における可動磁極20の周側面22よりも長いものとし、可動磁極20が第1固定磁極40に最も接近しても第2共通磁極構成板52の平行面53aの全体が周側面22に対向するようにしている。したがって、共通磁極の構成は図20に示した従来技術に係るソレノイドに近似していると言える。なお、外側斜行面81、段差部斜行面82及び段差部斜行面83の斜行角度は、本発明の第1の実施の形態に係るソレノイド10と同じである。また、第2の比較例に係るソレノイドは、図10に示すように、可動磁極20は、周側面84が第1の比較例に係るソレノイドと同様に長く、第1磁極部40を可動磁極20の中心軸に対して平行である平行面86と、可動磁極20の中心軸と直交する直交面87とで構成している。また、周側面84と平行面86との段差部を可動磁極20の中心軸と直交する直交面85としている。第1固定磁極40も可動磁極20の中心軸に対して平行である平行面88と、可動磁極20の中心軸と直交する直交面89とで構成している。
そして、本発明の第1の実施の形態に係るソレノイド、並びに、第1及び第2の比較例に係るソレノイドにおいて、各コイルの巻き数と電流値の積について、1015アンペアターン、1440アンペアターン、2030アンペアターン及び3210アンペアターンの4つを設定し、通電時の吸引力(N)とストローク(mm)との関係について比較した。その結果、本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドは、図11に示すように、4つのアンペアターンのいずれにおいても、約4mmのストローク長において吸引力がほぼ一定、すなわち概ね20N以内の変化となった。第1の比較例に係るソレノイドは、図12に示すように、1015アンペアターン及び1440アンペアターンで、約4mmのストローク長において吸引力がほぼ一定になったが、2030アンペアターン及び3210アンペアターンでは約3mmとなった。くわえて、第1の比較例に係るソレノイドは、可動磁極20が第1固定磁極40に最も接近する位置(グラフ上5mmの位置)の2mm手前ほど手前から顕著に増大している。したがって、第1の比較例に係るソレノイドは、比例ソレノイドとして好ましくない吸引力の急増を解消できない構造と言える。また、第2の比較例に係るソレノイドは、1015アンペアターン、1440アンペアターン及び2030アンペアターンで、約4mmのストローク長において吸引力がほぼ一定となり、3210アンペアターンでは約6mmのストローク長において吸引力がほぼ一定となった。したがって、第2の比較例に係るソレノイドは、吸引力がほぼ一定に保持できることに関して本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドよりも優れている。しかし、吸引力は、2030アンペアターンにおいても80Nを超えることがない。これは、比較的短時間の内に第1磁極部40の可動磁極20と対向する部分が通電開始から磁気飽和することによる。これに対して、本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドは、吸引力と直交する方向に効率的に利用できる2030アンペアターンで吸引力を130Nでほぼ一定にできている。一般的な流量制御弁では、100Nを超える吸引力を要求されることも多いので、第2の比較例に係るソレノイドは、実用性、特に電力の利用効率という点で著しく劣ると言わざるを得ない。くわえて、第2の比較例に係るソレノイドは、可動磁極20の中心軸と直交する方向への吸引力を生じるので、軸受に大きなストレスが掛かる点でも好ましくない。
以上のように、本発明の第1の実施の形態に係るソレノイド10は、可動磁極20の本体部21の周側面22において、可動磁極20が第1固定磁極40と第2固定磁極45との中間に位置しているときよりも、第1固定磁極40又は第2固定磁極45に最も接近しているときの方が第1共通磁極構成板50及び第2共通磁極構成板52の平行面に対向している領域の面積が小さくなるように形成されているので、可動磁極20と第1共通磁極構成板50及び第2共通磁極構成板52との間の磁気抵抗は第1固定磁極40と第2固定磁極45に最も接近しているときの方が第1固定磁極40と第2固定磁極45との中間に可動磁極20が位置しているときよりも大きくなる。したがって、可動磁極20が第1固定磁極40又は第2固定磁極45に接近するときに両者を流れる磁束量が急増することによって吸引力が急増することを抑制できる。また、第1磁極部25の外側斜行面26及び内側斜行面27、並びに、第2磁極部29の外側斜行面30及び内側斜行面31が可動磁極20の中心軸に対して斜行しているので、これらの面を経由して流れる磁束を可動磁極20に対する吸引力として寄与させることができる。また、第1磁極部25及び第2磁極部29を略円錐台形状とすることによって、所定の斜行角度を持つ外側斜行面26及び外側斜行面30を容易に、かつ、低コストで形成することができる。さらに、可動磁極20の凹陥部の内周面が内側斜行面27及び内側斜行面31であるので、所定の斜行角度を持つ内側斜行面27及び内側斜行面31を容易に、かつ、低コストで形成することができる。くわえて、第1磁極部25及び第2磁極部29に内側直交面28及び内側直交面32を設けたので、吸引力の生成に寄与する磁束の流れを一定程度確保することができる。また、可動磁極20の第1段差部23及び第2段差部24によって、第1固定磁極40又は第2固定磁極45に最も接近しているとき状態における第1共通磁極構成板50の平行面51a及び第2共通磁極構成板52の平行面53aと、可動磁極20の周側面22とが対向している領域の面積を、第1固定磁極40と第2固定磁極45との中間に可動磁極20が位置している状態における第1共通磁極構成板50の平行面51a及び第2共通磁極構成板52の平行面53aと、可動磁極20の周側面22とが対向している領域の面積よりも小さくすることが容易に実現できる。くわえて、第1段差部23と第2段差部24とにおいて、可動磁極20の中心軸に近い領域を段差部直交面23bと段差部直交面24bとし、可動磁極20の中心軸から遠い領域を段差部斜行面23aと段差部斜行面24aとしているので、可動磁極20の中心軸から遠い領域である段差部斜行面23aと段差部斜行面24aとに第1共通磁極構成板50及び第2共通磁極構成板52への磁束の流れを多少生じることになる。これによって、第1共通磁極構成板50及び第2共通磁極構成板52と可動磁極20の平行面とが対向している領域の面積が変化するときに、この面積が漸次変化するのに近い状態とすることができる。また、スペーサ78とスペーサ79とを内側直交面28と内側直交面32とに接着したので、残留磁気の影響によって、第1固定磁極40又は第2固定磁極45に対して可動磁極20が張り付くことを防止でき、さらに接着作業も容易になる。また、共通磁極の可動磁極の中心軸の方向における厚みが比較的大きいと、ケース60の内部へ圧入するのに必要な作業時間が長くなる上に、共通磁極の寸法精度が十分でない場合には、圧入自体が困難になることもあるが、共通磁極を第1共通磁極構成板50と第2共通磁極構成板52に分割したので、ケース60の内部への圧入が容易になる。同時に、1枚の磁性金属板をプレス加工することによって成形でき、材料費の低減も可能である。また、従来技術に係るソレノイドのように、可動磁極と固定磁極との間に流れる磁束を可動磁極の中心軸に直交する方向に向けることによって、可動磁極と固定磁極との間に働く吸引力の急増を低減する構成としていないので、可動磁極がスリーブに押し付けられる、又は、シャフトが軸受に押し付けられることによって無用な摩擦力を生じることがない。ひいては、ソレノイドの省電力化を図ることができ、同時にソレノイドの長寿命化を図ることもできる。
さらに、本発明の第2の実施の形態に係るソレノイドについて説明する。図14は、本発明の第2の実施の形態に係るソレノイドを示す図であり、(a)は第1コイルへの通電前の状態、(b)は第1コイルへの通電を停止した状態である。図14において、54は共通磁極、55は第1斜行面、56は第2斜行面であり、その他の符号は図1と同じものを示す。
本発明の第2の実施の形態に係るソレノイドは、本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドで分割していた共通磁極を単体の共通磁極54としている。さらに、共通磁極54は、可動磁極20の周側面22に対向する側に、可動磁極20の中心軸に対して斜行する第1斜行面55と第2斜行面56とを形成し、周側面22に対向する領域の面積を小さくしている。この構成によれば、共通磁極54において磁束の流れを常時絞り込む効果を有するので、可動磁極20に対する吸引力をあまり必要としない用途に好適である。また、24は第1領域、24aは狭隘部分であり、その他の符号は図2と同じものを示す。本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドとは、共通磁極以外の部品を共用できるという利点もある。さらに、可動磁極20が第1固定磁極40に最も接近する直前において、段差部斜行面24aが第2斜行面56と対向した状態となるが、これらの面は互いに直交している状態に近いくらいに斜行しているので、可動磁極20の中心軸方向に対して段差部斜行面24aと第2斜行面56とが部分的に重なり合うと、共通磁極54から可動磁極20へ流れる磁束量は本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドよりも急速に減少する。したがって、可動磁極20に対する吸引力の変化をさらに抑制することができる。
くわえて、本発明の第3の実施の形態に係るソレノイドについて説明する。図15は、本発明の第3の実施の形態に係るソレノイドを示す図であり、(a)は第1コイルへの通電前の状態、(b)は第1コイルへの通電を停止した状態である。図15において、57は共通磁極、58は第1平行面、59aは直交面、59bは第2平行面であり、その他の符号は図1と同じものを示す。
本発明の第3の実施の形態に係るソレノイドは、可動磁極20が第1固定磁極40に吸引されるときの吸引力と、第2固定磁極に吸引されるときの吸引力とを異なるようにした構成である。すなわち、共通磁極57の周側面22に対向する側に、可動磁極20の中心軸に対して距離が異なる第1平行面58と第2平行面59bとを形成し、その段差部を直交面59aとしている。第1平行面58と第2平行面59bとは、可動磁極20の中心軸に対して平行であり、直交面59aは可動磁極20の中心軸に対して直交しているので、可動磁極20が第1固定磁極40に吸引されるときの吸引力の方が小さくなる。したがって、この実施の形態に係るソレノイド10は、異なる2つの油圧回路に利用することが可能である。
続けて、本発明の第4及び第5の実施の形態に係るソレノイドについて説明する。図16は、本発明の第4の実施の形態に係るソレノイドを示す図であり、(a)は第1コイルへの通電前の状態、(b)は第1コイルへの通電を停止した状態である。図16において、34は外側斜行面、35は段差部斜行面、36は外側斜行面、37は段差部斜行面であり、その他の符号は図1と同じものを示す。また、図17は、本発明の第5の実施の形態に係るソレノイドを示す図であり、(a)は第1コイルへの通電前の状態、(b)は第1コイルへの通電を停止した状態である。図17において、38は段差部直交面、39は段差部直交面であり、その他の符号は図1と同じものを示す。
本発明の第4実施の形態に係るソレノイドは、本発明の第2の実施の形態に係るソレノイドの共通磁極54に加えて、図16に示すように、可動磁極20の第1段差部を段差部斜行面35のみで形成し、第2段差部を段差部斜行面37のみで形成している。これに応じて、本発明の第1実施の形態に係るソレノイドの可動磁極20の外側斜行面よりも可動磁極20の中心軸方向において長さが多少短い外側斜行面34及び36を形成している。この構成では、2つの段差部に可動磁極20の中心軸に対して直交する面を形成しないので、本発明の第2実施の形態に係るソレノイドよりも磁束の絞り込みが緩やかになる。本発明の第4実施の形態に係るソレノイドは、図17に示すように、逆に2つの段差部を可動磁極20の中心軸に対して直交する段差部直交面38及び39のみで形成している。したがって、本発明の第4実施の形態に係るソレノイドは、本発明の第2実施の形態に係るソレノイドよりも磁束の絞り込みが急になる。
さらに、本発明の第6実施の形態に係るソレノイドについて説明する。図18は、本発明の第6の実施の形態に係るソレノイドの可動磁極を示す図であり、(a)は左側面図、(b)は断面図である。図18において、90は可動磁極、91は周側面、92a、92b、92c、93a、93b及び93cは切欠部、94は第1磁極部、95は外側斜行面、96は内側斜行面、97は第2磁極部、98は外側斜行面、99は内側斜行面である。
本発明の第6実施の形態に係るソレノイドは、可動磁極90の周側面91において、第1磁極部94の段差部から第2磁極部97側に延在する切欠部92a、92b及び92cと図示してない1つの切欠部と、第2磁極部97の段差部から第1磁極部94側に延在する切欠部93a、93b及び93cと図示してない1つの切欠部とを形成している。なお、第1磁極部94の外側斜行面95及び内側斜行面96と、第2磁極部97の外側斜行面98及び内側斜行面99とは、本発明の第1実施の形態に係るソレノイドにおける各面と同じ形状及び大きさである。さらに、図18で図示していない第1固定磁極などの形状大きさも、本発明の第1実施の形態に係るソレノイドと同じである。
本発明の第6実施の形態に係るソレノイドは、可動磁極90の周側面91の第1磁極部94側と第2磁極部97側とに4つずつの切欠部を形成したので、共通磁極が周側面91の切欠部のない領域に対向しているとき、共通磁極が周側面91の切欠部のある領域に対向しているとき、及び、共通磁極が外側斜行面95又は外側斜行面98に対向しているときの3段階で磁束の流れを絞り込むことができる。
くわえて、本発明の第7実施の形態に係るソレノイドについて説明する。図19は、本発明の第7の実施の形態に係るソレノイドの固定磁極を示す図であり、(a)は分離した状態、(b)は一体にした状態である。図19において、40dは段差部、41bは周辺部、45dは段差部、46bは周辺部であり、その他の符号は図4と同じものを示す。
本発明の第7実施の形態に係るソレノイドは、固定磁極の凹陥部の切削加工という困難度が比較的高い工程を不要にして、ソレノイドの製造コストをさらに低減することを意図したものである。すなわち、図19(a)に示すように、第1固定磁極40の凹陥部の周辺部分を別体の周辺部41bとし、第2固定磁極45の凹陥部の周辺部分を別体の周辺部46bとしている。また、第1固定磁極40の周側面には段差部40dが形成され、同様に、第2固定磁極45の周側面には段差部45dが形成されている。周辺部41bと周辺部46bとはリング状に形成されており、これらを段差部40dと段差部45dにそれぞれ嵌合すると、図19(b)に示すように、これらの内周面が外側斜行面42と外側斜行面47とになる。このように分割することによって、周辺部41b及び46bの内周面の切削加工は、安価な生産設備で行うことが十分可能であり、凹陥部を削り出す加工よりもコスト的にかなり有利である。また、外側斜行面42と外側斜行面47の斜行角度が異なる周辺部41bと周辺部46bとをあらかじめ複数種形成しておけば、必要となる吸引力特性に応じて適宜選択できるようにすることも可能となる。
なお、本発明は以上に説明した内容に限定されるものではなく、例えば、2つの固定磁極の形状等を異なるものとしてもよい。さらに、本発明の第1実施の形態に係るソレノイドから第6実施の形態に係るソレノイドまでの構成を適宜選択して組み合わせてもよい。また、プッシュ・プルソレノイドなど2方向比例ソレノイド以外のソレノイドとして利用することもでき、その用途に対応するために部分的に異なる構成を採用することも可能である。このように、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限りにおいて種々の変形を加えることが可能である。