JP5939195B2 - 回転体 - Google Patents

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Description

本発明は、回転軸に対して回転部材をナットにより締付固定した回転体に関する。
図4に示すように、過給機では、コンプレッサホイール100に回転軸101が挿通され、同回転軸101の端部にナット102が螺合されている。また、このナット102には、締結工具が嵌合する嵌合部103と、同嵌合部103に隣接して設けられ、軸方向視において外周が円形であるとともにその径が嵌合部103よりも小さい切削加工部104とが形成されている。ナット102の嵌合部103に締結工具を嵌合し、この締結工具によりナット102をコンプレッサホイール100側に締め付けることにより、コンプレッサホイール100が回転軸101に締付固定されている。
従来、こうした過給機では、その回転時のアンバランスを修正し、振動や騒音の発生を抑制するようにしている(例えば、特許文献1など)。
図4を参照して、こうした過給機のアンバランスの修正方法の一例を説明する。
まず回転軸101を中心として過給機を回転させたときの振れ回り量等、アンバランス状態を加速度センサ及び回転角センサの検出信号から算出する。そして、所定のアルゴリズムに基づいて、このアンバランスを修正するための切削加工部104の周方向における切削位置及び切削量を算出する。次に、図4に示すように、ナット102の切削加工部104の外周において上記切削位置と対向する位置にエンドミル105を配設させ、このエンドミル105を回転させつつナット102の径方向(図4の下方向)に移動させることで切削加工部104の一部を切削する。こうして、切削加工部104の一部が切削除去されることにより、過給機が回転する際のアンバランスが修正される。
特開2012‐13596号公報
ところで、過給機を構成する各部品には寸法公差があるため、過給機ではこうした寸法公差が重畳した組み立て公差が発生し、過給機の軸方向の長さにばらつきが生じる。上述した修正方法において、組み立て公差によってエンドミル105とナット102との軸方向における相対的な位置関係が変化し、例えば図5(a)に示すようにこれらが接近すると、エンドミル105がナット102の嵌合部103を切削してしまうおそれがある。このため、アンバランス修正時のナット102の切削量がアンバランスを修正するために算出された上記切削量よりも多くなる。またこれを避けるために、エンドミル105とナット102との軸方向における相対的な位置関係を変更して、例えば図5(b)に示すように離間させることもできる。しかしながら、こうした場合であっても、組み立て公差によってエンドミル105が嵌合部103から離れる方向にこれらの相対的な位置関係が変更されている場合には、切削加工部104においてエンドミル105によって切削される領域が減少することとなる。その結果、アンバランス修正時のナット102の切削量が上記切削量よりも少なくなる。
このように、上述した修正方法において、組み立て公差によってエンドミル105とナット102との軸方向における相対的な位置関係が変化すると、アンバランス修正時のナット102の切削量にばらつきが生じ、効率良くアンバランスを修正することができなくなる。なお、こうした不都合は、過給機に限らず、回転軸を中心として回転する回転体においても同様に生じる。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、回転体の組み立て公差によって切削工具とナットとの軸方向における相対的な位置関係が変化したとしても、アンバランスの修正量にばらつきが生じることを抑えることができる回転体を提供することにある。
上記課題を解決するための回転体は、回転部材に挿通される回転軸にナットを螺合させて回転部材を回転軸に締結固定している。そして、こうした回転体に設けられるナットには、締結工具が嵌合する嵌合部と、軸方向視において外周が円形であるとともにその径が嵌合部よりも小さい切削加工部とが形成され、嵌合部と切削加工部との間にはその周方向全周に亘って延びる溝が形成されている。
上記構成によれば、切削加工部と嵌合部との間に溝が設けられている。このため、切削加工部を切削する際に、回転体の組み立て公差によって回転軸の軸方向における切削工具と切削加工部との相対的な位置関係が変化した場合でも、切削工具の切削領域における嵌合部側の端を溝の部分に位置させることができる。このため、嵌合部を不要に加工してしまったり、切削加工部において未加工の部分が生じたりすることなく、切削加工が必要な部分を過不足なく除去することできる。したがって、こうした構成によれば、切削加工部の切削量のばらつきを抑えてアンバランスの修正量にばらつきが生じることを抑えることができる。
過給機の回転体の端部を拡大した側面図。 過給機の回転体の端部の正面図。 過給機の回転体の端部を拡大した側面図。 従来の過給機の構造の一例を示す側面図。 (a)、(b)はエンドミルとナットとの相対的な位置関係の一例を示す側面図。
以下、回転体の一実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。
図1に示すように、過給機では、回転部材としてのコンプレッサホイール1に回転軸2が挿通され、この状態で回転軸2の端部にナット3が螺合されている。そして、このナット3をコンプレッサホイール1側に締め付けることによってコンプレッサホイール1が回転軸2に締結固定されている。なお、これらコンプレッサホイール1、回転軸2及びナット3によって回転体が構成されている。
図1及び図2に示すように、ナット3の一端には、軸方向視において外周に凹凸が形成され、ナット3を締め付けるための締結工具が嵌合される嵌合部4が設けられている。一方、ナット3の他端には、軸方向視において外周が円形であるとともにその径が嵌合部4よりも小さい切削加工部5が形成されている。そして、切削加工部5と嵌合部4との間には、ナット3の周方向全周に亘って延びる溝6が形成されている。このため、ナット3において溝6が形成されている部分は、その径が切削加工部5及び嵌合部4よりも小さい。
こうした構成を備える過給機では、例えば次のように回転時のアンバランスを修正する。
まず、過給機の回転体を回転させて、そのときのアンバランスを加速度センサ及び回転角センサの検出信号から算出する。そして、その算出結果に基づいて、回転体のアンバランスを修正するための切削加工部5の周方向における切削位置や、その切削量を算出する。
次に、図1に示すように、切削加工部5の外周にエンドミル7を配設する。これにより、このエンドミル7が回転したときの切削領域Rにおける嵌合部4側の一端が溝6の部分に位置する一方、切削領域Rにおける他端が切削加工部5よりも軸方向の外方に位置することとなる。ここで、溝6の幅は、組み立て公差の最大値の2倍以上とし、切削領域Rの一端を、この溝6の幅のほぼ中間に位置させることが望ましい。なお、エンドミル7の軸方向における幅は、切削加工部5の同軸方向における長さよりも長い。
こうしてエンドミル7を切削加工部5の外周に配設すると、次に算出された切削部位がエンドミル7に対向する位置になるよう切削加工部5を回転軸2を中心として回転させる。そして、図2に示すように、エンドミル7をナット3の径方向に所定距離だけ移動させることにより、切削加工部5において図1及び図2に斜線で示す領域を切削する。これにより、回転体のアンバランスが修正される。なお、溝6の深さは、同溝6の底がエンドミルによって切削されないようにエンドミルの切削深さよりも十分深くすることが望ましい。
次に、こうした回転体の作用について説明する。
回転体を構成する各部品には寸法公差があるため、回転体ではこうした寸法公差が重畳した組み立て公差が発生し、切削加工部5の位置がその公差分だけ軸方向に変化する。このため、回転体の切削加工部5とエンドミル7との軸方向における相対的な位置関係が変化する。
この点、本実施形態では、ナット3の切削加工部5と嵌合部4との間に溝6が設けられている。このため、切削加工部5を切削する際に、回転体の組み立て公差によって回転軸2の軸方向におけるエンドミル7と切削加工部5との相対的な位置関係が変化してエンドミル7と嵌合部4とが近づいたとしても、エンドミル7の切削領域Rの一端を溝6の部分に位置させることができる。また、エンドミル7と嵌合部4とが離れる方向にその相対的な位置関係が変化した場合であっても、切削加工部5における嵌合部4側の端部よりも嵌合部4側にエンドミル7が位置することとなる。
以上説明した一実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
回転体のナット3に溝6を設けたため、嵌合部4を不要に加工してしまったり、切削加工部5において未加工の部分が生じたりすることなく、切削加工が必要な部分を過不足なく除去することできる。したがって、切削加工部5の切削量のばらつきを抑えてアンバランスの修正量にばらつきが生じることを抑えることができる。
上述した本実施形態の回転体は以下の方法により加工することもできる。
・エンドミル7を径方向にのみ移動させて切削加工部5を切削する場合を例示したが、切削加工部5を切削する方法はこれに限られない。例えば、以下のように変更してもよい。
図3に示すように、エンドミル7の先端を切削加工部5の外周よりも切削量に相当する分だけ回転軸2に接近させた状態で、同エンドミル7を溝6の部分まで移動させる。これにより、図3に斜線で示す領域が切削され、回転体のアンバランスが修正される。こうした場合によっても上記効果と同様の効果を得ることはできる。
・切削領域Rの一端を溝6の幅のほぼ中間に位置するようにしたが、溝6の部分に位置するのであればその位置を適宜変更してもよい。こうした構成によっても上記効果と同様の効果を得ることはできる。
・溝6の底にエンドミル7が達する場合であっても、例えば溝6の形状に応じて切削量を補正することによりナット3を所望の量切削することができるのであれば、溝6の深さをエンドミルの切削深さよりも深くしなくてもよい。
・切削工具としてエンドミル7を例示したが、フライスやドリル等、他の切削工具を用いてもよい。
・溝6の幅を組み立て公差の2倍以上に設定したが、例えば、組み立て公差と同じ幅等、溝6の幅を適宜変更してもよい。こうした場合であってもこの溝6の部分に切削領域Rの一端を位置させることができ、上記効果と同様の効果は奏する。
・コンプレッサホイール1を有する回転体を例示したが、タービンホイール等、他の回転部材を有する回転体であってもよい。
・過給機の回転体を例に説明したが、他の機器の回転体であってもよい。
1,100…コンプレッサホイール、2,101…回転軸、3,102…ナット、4,103…嵌合部、5,104…切削加工部、6…溝、7,105…エンドミル。

Claims (1)

  1. 回転部材に挿通される回転軸にナットを螺合させて前記回転部材を前記回転軸に締結固定した回転体において、
    前記ナットには、締結工具が嵌合する嵌合部と、軸方向視において外周が円形であるとともにその径が嵌合部よりも小さい切削加工部とが形成され、前記嵌合部と前記切削加工部との間にはその周方向全周に亘って延びる溝が形成されてなる回転体。
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