JP5937782B2 - V型コラーゲン遺伝子転写促進剤 - Google Patents
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特開2001−316240号(特許文献2)には、Saussurea属植物の抽出物を含むコラーゲン産生促進剤が開示されている。
よって、本発明の目的は、線維芽細胞によるV型コラーゲンの産生を促進させることにより、皮膚にしなやかさをもたらし得るV型コラーゲン遺伝子転写促進剤を提供することにある。
本発明のV型コラーゲン遺伝子転写促進剤が皮膚のしなやかさを増進できる作用機序としては、次のようなことが考えられる。
本発明のV型コラーゲン遺伝子転写促進剤に含まれる有効成分は、細胞に働きかけてV型コラーゲン遺伝子の転写を促進し、その産生を促し、I型コラーゲンに対するV型コラーゲンの量比が高まるように誘導する作用を有する。V型コラーゲンは、I型コラーゲンと比べると、量的にはかなり少ない成分であるが、I型コラーゲンに混ざってコラーゲンの線維を形成する。このとき、V型コラーゲンの量比が多い程、径の細い線維構造体が形成される。したがって、皮膚のV型コラーゲンの割合を多くすることにより、よりしなやかな皮膚構造になると考えられる。
また、本発明によれば、V型コラーゲン遺伝子転写促進剤を含む皮膚化粧料を提供することができる。
適当な添加剤としては、防腐剤(例えばパラベンなど)、酸化防止剤(例えばアスコルビン酸など)、着色料、界面活性剤(セチル硫酸ナトリウムなどのアニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのノニオン界面活性剤、テトラアルキルアンモニウム塩などのカチオン界面活性剤など)、油性溶剤(オリーブ油、ひまし油などの植物油、ミツロウなどのロウ、ジメチルポリシロキサンなどのシリコーン油など)、水性溶剤(水、エタノールなどの低級アルコール、プロピレングリコールなど)、紫外線吸収剤、香料、薬効成分などが挙げられる。
本発明の皮膚化粧料に含まれるV型コラーゲン遺伝子転写促進剤の量は、特に制限されず、該皮膚化粧料の形態に応じて適宜決定できる。一例を挙げれば、皮膚化粧料の全重量に対して0.001〜20重量%、より好ましくは0.01〜10重量%、さらに好ましくは0.1〜5重量%である。
本発明の皮膚化粧料の形態としては、例えば、クリーム、ローション(化粧水)、乳液、ファンデーション、エッセンス(エキス)、オイル、パックなどが挙げられる。
上記の抽出物は、細胞培養において、培地中に0.001〜0.5重量%となるように添加するのが好ましい。
細胞培養の条件は、細胞の種類に応じて適宜決定でき、このような条件は、当業者に公知である。
ガラス製容器(2L)内において、紫根、木香の乾燥標品各100gに、蒸留水とエタノールを等容量混合したものを抽出溶媒として各1000mL加え、ゆっくり撹拌を行いつつ、室温で1時間抽出し、抽出液を各々ろ過し、ろ液を各々減圧乾固して、紫根及び木香の各抽出物を得た。
得られた抽出物は、紫根抽出物25.2g、木香抽出物14.8gであった。これらの抽出物を、本発明のV型コラーゲン遺伝子転写促進剤として、以下の試験例に用いた。
上記の各V型コラーゲン遺伝子転写促進剤のV型コラーゲン遺伝子転写促進活性を評価するために、V型コラーゲンα1鎖遺伝子プロモーター活性増強効果を、以下に示すルシフェラーゼアッセイに従って測定した。
ルシフェラーゼアッセイは、プロモーターの転写活性を調べるためのレポーター遺伝子としてルシフェラーゼ遺伝子を用いる方法である。ルシフェラーゼの発光活性を測定することにより、解析対象遺伝子の転写活性が測定できる。具体的には、解析対象遺伝子のプロモーター下流にルシフェラーゼ遺伝子を結合させたベクターを細胞にトランスフェクションし、細胞の培養を行う。培養中、プロモーターの転写活性が強ければ細胞内に多くの酵素(ルシフェラーゼ)が産生され、活性が弱ければ酵素(ルシフェラーゼ)の産生量は少なくなる。酵素(ルシフェラーゼ)の量は、発光量により測定できる。
本実施例では、V型コラーゲンα1鎖遺伝子のプロモーターの転写活性を調べるルシフェラーゼアッセイ系を構築し、該アッセイ系の細胞に、実施例1で得られた各V型コラーゲン遺伝子転写促進剤を添加して培養し、添加したV型コラーゲン遺伝子転写促進剤の転写活性増強効果を評価した。
ヒトV型コラーゲンα1鎖遺伝子のプロモーター断片を、基本プロモーター領域に対応するプライマーセットを用いるPCR法により得た。該プライマーセットおよび得られたプロモーター断片の塩基配列を以下に示す。
・プライマー1: 5' gagctCCCGGGCCAGCCCCTTCCTCC 3'(配列番号1)
(下線部は、クローニングのためのSacI制限酵素部位)
・プライマー2: 5' ctcgagTCGAGTGAGGTCCTGCGCCA 3'(配列番号2)
(下線部は、クローニングのためのXhoI制限酵素部位)
・プロモーター断片(NCBIアクセッション番号:AL591890):5' CCCGGGCCAGCCCCTTCCTCGCTGCGACTCGCCCGCTGTCCCCACCCCCTCGCCCGCGGCGCCCAGTGGGAGGCGGGGGCTGGCCTCGCCGAGCCCAGCGCCGGGCTCTGATTTGCTGCGGGCGTTGGGGATCGACAGCCTCCGCGGCTGCCTTCCAGGAGAGAGGGAGGGAGGAAAAGGGGGAAAAAAGTGCTCCGCGCCGAAGGCGAGGTCCGCACTCTCCGTCCCCGCGGCTGGCGCAGGACCTCACTCGA 3'(配列番号3)
マウスNIH-3T3細胞は、10%胎児ウシ血清(FBS)/ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)で培養し、実験には対数増殖期のものを用いた。トランスフェクション前日に、細胞を1.5×105細胞/35 mmディッシュで播種し、37℃、5% CO2条件下で一晩培養した。
翌日、リン酸カルシウム法(Chen, C and Okayama, H (1987), Mol. Cell Biol. 7, 2745〜2752)に従って、リン酸カルシウム-プラスミドDNA混合液(5μg/dish)を調製した。調製した混合液を、一晩培養した細胞培養液に滴下後、さらに6時間培養した。トランスフェクションの効率を上げる為に、6時間後、培養液を除去し、15%グリセロール/PBS(リン酸緩衝生理食塩水)溶液を加えて1分間処理した。PBSで細胞を数回洗浄後、実施例1で得られたそれぞれのV型コラーゲン遺伝子転写促進剤を木香は0.01重量%、紫根は0.005重量%含んだ10% FBS/DMEM培地を加え、さらに1日培養した。
プロモーター活性は、デュアルルシフェラーゼアッセイシステム(プロメガ社製)を用いて測定した。具体的には、トランスフェクション後、V型コラーゲン遺伝子転写促進剤の存在下で培養した細胞は、PBSで洗浄後、アッセイシステムに付属した細胞溶解液を用いて処理した。処理した細胞をラバーポリスマンでかきとり、細胞懸濁液を1.5 ml遠心管に回収した。回収したサンプルは、13000 rpm、10分間遠心後、その上清(細胞抽出液)をルシフェラーゼ測定に用いた。細胞抽出液10μlに発光基質液を50μl加え、ルミノメーター(ベルトールド社製Lumat LB9507型)にて発光量を10秒間測定した。すべてのサンプルにおいて、内部標準DNA(pRL-TK)の発光量も測定し、内部標準DNAの発光量で実測値を除した相対発光量をルシフェラーゼ活性の測定値とした。
得られたデータは、V型コラーゲン遺伝子転写促進剤を添加しなかった場合に測定されたルシフェラーゼ活性に対する、V型コラーゲン遺伝子転写促進剤を添加した場合のルシフェラーゼ活性の倍率で表し、V型コラーゲン遺伝子プロモーター活性の増強効果を評価した。結果を表1に示す。
試験例1におけるV型コラーゲンα1鎖遺伝子のプロモーターの代わりに、I型コラーゲンα1鎖遺伝子のプロモーターを用いて、試験例1と同様にしてルシフェラーゼアッセイを繰り返した。
試験例1で得られたV型コラーゲン遺伝子のプロモーターの転写促進活性についてのルシフェラーゼ活性を、I型コラーゲン遺伝子のプロモーターの転写促進活性についてのルシフェラーゼ活性で除して、I型に対するV型コラーゲン遺伝子の転写促進活性の倍率を算出した。結果を表2に示す。
このような本発明のV型コラーゲン遺伝子転写促進剤によれば、I型コラーゲンに対するV型コラーゲンの量を多くできるので、V型コラーゲンの含有量が向上したコラーゲン線維の産生が増進され、しなやかな皮膚を得ることができると考えられる。
<クリーム>
本発明の皮膚化粧料である、クリームを製造した。各成分の配合割合を、表3に重量%で示す。
(A)の各成分を混合し、80℃に加熱した。一方、(B)の各成分をそれぞれ混合し80℃に加熱した。(A)の混合物に、(B)の混合物を撹拌しながら徐々に加えて乳化させ、その後35℃に冷却して、クリームを得た。
<ローション>
本発明の皮膚化粧料である、ローションを製造した。各成分の配合割合を、表4に重量%で示す。
(A)の各成分を混合し、80℃に加熱して、さらに混合、均一化した後、冷却する。これに35℃で(B)の各成分を順次添加し、混合、均一化して、ローションを得た。
Claims (2)
- 紫根及び/又は木香の30〜70重量%含水低級脂肪族アルコールによる抽出物を有効成分として含み、線維芽細胞におけるI型コラーゲンに対するV型コラーゲンの量比を高める誘導作用をして皮膚にしなやかさをもたらす、V型コラーゲン遺伝子転写促進剤(ただし、皮膚の老化防止のためのものを除く)。
- 請求項1に記載のV型コラーゲン遺伝子転写促進剤を含む、皮膚に柔軟性及びしなやかさをもたらすための皮膚化粧料(ただし、皮膚の老化防止のためのものを除く)。
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