以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
本発明の実施形態に係る水栓装置の構造について、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る水栓装置1の一部の外観を示す図であって、通常の使用時において使用者が視認できる部分のみの外観を示している。
水栓装置1は、キッチンのシンク等に設置され、使用者の操作に応じて水を吐出するための装置である。図1に示したように、水栓装置1は、キッチンのシンク等に固定される部分である本体部10と、本体部10の上部に配置された吐水ヘッド20とを有している。
本体部10は、略円筒形状に形成されており、キッチンのシンク等に対し台座13を介して立設した状態で固定されるものである。本体部10の上端には吐水ヘッド20を保持しており、本体部10の内部には吐水ヘッド20に水を供給するための内部流路が形成されている。本体部10は、当該内部流路を流れる水の流量を調整可能な弁である第一流調弁11を有しており、本体部10の側面に備えられたレバー12により、第一流調弁11の開度を調整することが可能となっている。
吐水ヘッド20は、略円筒形状に形成されており、使用者側の先端が上方に向かうよう傾斜した状態で本体部10の上端に保持されている。吐水ヘッド20には吐水口21が形成されており、本体部10の内部流路を通じて供給された水を吐水口21から下方に向けて吐出することが可能となっている。吐水ヘッド20の上端(本体部10に保持される部分とは反対側の先端)には、押し込み型のスイッチであるタッチボタン70を有している。後に説明するように、使用者はタッチボタン70を押し込む(操作する)ことにより、吐水口21からの水の吐出を一時的に停止したり再開したりすることができる。
図2は、水栓装置1をキッチンのシンク2上に設置した状態を模式的に示す図である。シンク2はステンレスにより形成されており、水平な底部3と、水栓設置部4とを有している。水栓設置部4は、シンク2のうち使用者から見て奥側(図2では右側)の部分に形成された略直方形状の部分であって、その上端部分に形成された開口5を塞ぐように水栓装置1の本体部10が固定されている。水栓設置部4の内部には空間が形成されており、当該空間内には、吐出される水を本体部10の内部流路に供給するための給水配管40の一部が配置されている。給水配管40は鉛直方向に沿って配置された直線状の配管であって、その上端が本体部10の内部流路に接続されており、その下端が上水道に接続されている。水栓設置部4の下端部分には開口6が形成されており、給水配管40は開口5及び開口6を貫いた状態で配置されている。
給水配管40の途上であって、シンク2の底部3の下方には第二流調弁50が配置されている。第二流調弁50は、制御装置60からの制御信号によってその開度を調整することが可能な電磁弁であって、第二流調弁50によって給水配管40を流れる水の流量を調整することが可能となっている。
図2に示したように、吐水ヘッド20は本体部10の上端部に対し脱着可能となっており、本体部10から取り外した状態で水を吐出することができる。吐水ヘッド20のうち本体部10の上端に接続される方の端部には、可撓性を有するホース30の一端が接続されており、ホース30の他端は本体部10の内部流路と接続されている。このため、上水道から供給される水は、給水配管40、本体部10の内部流路、ホース30、吐水ヘッド20を順に通過した後、吐水ヘッド20の吐水口21から吐出される。
本体部10の内部のうち、内部流路の上方にはホース30を収納するための収納空間が形成されている。図1のように吐水ヘッド20が本体部10の上端部に保持された状態においては、ホース30は収納空間の内部において撓んだ状態で収納されている。これにより、使用者は吐水ヘッド20を把持して本体部10から取り外した後、ホース30を本体部10の収納空間から引き出した状態で吐水ヘッド20の位置を自由に移動させ、所望の位置に水を吐出させることができる。
使用者は、本体部10のレバー12を操作することにより第一流調弁11の開度を調整し、吐水口21から吐出される水の流量を調整することができる。しかし、吐水ヘッド20を本体部10から取り外して使用している状態においては、使用者の手の位置(吐水ヘッド20の近く)とレバー12の位置との距離が比較的大きいため、使用者にとっては、吐出される水の流量を調整する操作を行うためにレバー12まで手を伸ばすのは面倒な場合が多い。
このため、本実施形態に係る水栓装置1においては、使用者はレバー12の操作を行うことに代えて、吐水ヘッド20の先端に設けられたタッチボタン70を押し込むことによっても、吐水口21からの水の吐出を一時的に停止したり再開したりすることが可能となっている。
吐水口21から水を吐出している状態(従って、第一流調弁11が開いている状態)において使用者がタッチボタン70を押し込む操作を行うと、この操作に基づく操作信号が、吐水ヘッド20に内蔵された電波発信装置80(図2では不図示)から電波により発信される。
電波発信装置80から発信された電波は、台座13を透過して水栓設置部4の内部に侵入し、水栓設置部4内部の空間において反射や回折をしながら、下方に向かって伝搬する。その後、電波の少なくとも一部は開口6を通過し、制御装置60に向かって伝搬する。
制御装置60には、受信した電波を電気信号に変換するための電波受信装置61をその上部に有している。このため、電波発信装置80から発信され開口6を通過した電波は、電波受信装置61により受信されて電気信号に変換され、かかる電気信号(すなわち操作信号)が制御装置60に伝達される。制御装置60は、伝達された操作信号に基づいて第二流調弁50を閉弁するように制御する。その結果、第一流調弁11が開いた状態のまま第二流調弁50が閉弁され、吐水口21からの水の吐出が一時的に停止される。
この状態で使用者が再度タッチボタン70を押し込む操作を行うと、この操作に基づく操作信号が電波発信装置80から電波により発信される。当該電波は先程と同様に水栓設置部4内を通って電波受信装置61に到達し、電気信号(操作信号)に変換されて制御装置60に伝達される。制御装置60は、伝達された操作信号に基づいて第二流調弁50を開弁するように制御する。その結果、第二流調弁50が再び開弁され、吐水口21からの水の吐出が再開される。
このように、タッチボタン70が操作されると、吐水ヘッド20に内蔵された電波発信装置80と電波受信装置61との間で電波による無線通信が行われ、タッチボタン70の操作に基づく操作信号が制御装置60に伝達される。制御手段は、かかる操作信号に基づいて第二流調弁50を制御する。これにより、吐水ヘッド20を本体部10から取り外した状態で使用している使用者は、レバー12まで手を伸ばすことなく、手元のタッチボタン70を操作することによって、吐水口21からの水の吐出を一時的に停止又は再開することが可能となっている。
ここで、電波発信装置80から発信された電波は上記のように電波受信装置61に到達するが、その際に電波が辿る経路は一つではない。例えば、水栓設置部4を電波が通る際、電波は水栓設置部4の内壁で複数回反射された後に開口6を通過するが、1回だけ反射されて開口6に到達するものだけでなく、複数回反射されて開口6に到達するものもある。更に、電波発信装置80から発信された電波の一部は回折によりシンク2の周囲を回り込みながら(水栓設置部4及び開口6を通過することなく)電波受信装置61に到達するものもある。このように、電波受信装置61には、互いに伝搬距離の異なる経路を辿った複数の電波が到達する。
その結果、電波発信装置80が電波を発信した時点における吐水ヘッド20の位置や向きによっては、電波受信装置61に到達した複数の電波が互いに逆位相となって打ち消し合い、電波発信装置80が電波を受信できなくなる場合がある。このような現象は、電波が辿る複数の経路間における伝搬距離の差と、電波の波長との関係により生じものである。電波発信装置80が電波を受信できないと、操作信号は制御装置60に伝達されないため、使用者がタッチボタン70を操作したにもかかわらず吐水口21からの水の吐出量は変更されない。
本実施形態に係る水栓装置1では、このような現象の発生を防止するために、使用者がタッチボタン70を操作した際における電波の発信の仕方を工夫している。以下、図3乃至図5を参照しながら、電波発信装置80が電波を発信する際の具体的な動作について詳しく説明する。
図3乃至図5はいずれも、水栓装置1における電波発信装置80の動作を説明するための模式図であって、水栓装置1のうちタッチボタン70近傍の部分における構成を示している。
図3は、タッチボタン70が押し込まれていない通常の状態を示している。図3に示したように、タッチボタン70は案内軸71と可動部73とを有している。
案内軸71は、後に説明するように可動部73の動きを案内する円筒形状の軸であって、吐水ヘッド20の先端に固定されている。案内軸71は、その中心軸が吐水ヘッド20の中心軸と一致するように配置されており、案内軸71の直径は吐水ヘッド20の直径よりも一回り小さくなっている。案内軸71の先端(吐水ヘッド20とは反対側の端部)には、案内軸71の中心軸に対して垂直な面をなす平面部72が形成されている。
可動部73は、内部に空間を有する円筒形状に形成されており、その内径は案内軸71の直径よりも大きく、その外形は吐水ヘッド20の直径と同一である。可動部73は、その中心軸が案内軸71の中心軸と一致するように配置されており、可動部73の一方の端部は、可動部73の中心軸に対して垂直な壁面74により封止されている。また、他方の端部75においては内部の空間が開放されており、案内軸71の先端の一部が端部75から内部に挿入された状態となっている。
このような構成により、可動部73は案内軸71に案内されながら、その中心軸方向に沿って移動可能となっている。可動部73は、図示しない付勢手段(例えばバネ)によって上方に向けて(吐水ヘッド20から遠ざかる方向に向けて)付勢されている。このため、使用者がタッチボタン70を押し込み、図4のように可動部73を吐水ヘッド20に近づけた後、使用者が壁面74から手を放すと、可動部73は付勢手段によって吐水ヘッド20から遠ざかり、その可動範囲の上端(図3の位置)まで戻る。
可動部73の内部の空間には、可動部73の内壁に固定された状態で電波発信装置80が配置されている。電波発信装置80は、電波を発信するための送信アンテナや電源、及び制御部等を搭載した薄板形状の基板であって、壁面74と平行となるよう配置されている。電波発信装置80の下面、すなわち、案内軸71の平面部72と対向する面には、タクトスイッチ90が下方に向けて固定されている。
タクトスイッチ90は、電波発信装置80に固定された基部91と、基部91に設けられたボタン92とを有している。ボタン92は、基部91から案内軸71に向けて突出しており、基部91に向けて(上方に向けて)押し込むことが可能となっている。すなわち、可動部73の中心軸方向に沿って上方に押し込むことが可能となっている。図3のように可動部73がその上端位置にある通常の状態においては、ボタン92は平面部72から離間している。
図3の状態から、使用者が壁面74に手を当ててタッチボタン70を押し込むと、可動部73は下方に移動して吐水ヘッド20に接近する。このとき、可動部73に固定されている電波発信装置80及びタクトスイッチ90は平面部72に接近するようにその位置が変化し、最終的にはボタン92が平面部72によって基部91に向けて押し込まれる(図4)。
ボタン92が押し込まれると、電波発信装置80はタッチボタン70の操作に基づく1回目の操作信号を電波により発信する。このとき、電波発信装置80の位置(電波発信位置)はその可動範囲における下端(吐水ヘッド20に最も近づいた位置)となっており、かかる位置から電波が発信される。
続いて、使用者が可動部73の壁面74から手を放すと、可動部73は付勢手段によって上方に向けて(吐水ヘッド20から遠ざかるように)移動を開始する。このとき、可動部73と共にタクトスイッチ90も移動するため、移動を開始した直後に、ボタン92は元の押し込まれていない状態に戻る。
その後、可動部73は付勢手段によって上昇を続け、電波発信装置80の位置(電波発信位置)は吐水ヘッド20から遠ざかって行く。可動部73がその可動範囲のほぼ上端位置に到達した時点で、電波発信装置80は2回目の操作信号を電波により発信する(図5)。
2回目の操作信号は、1回目の操作信号と同一の信号である。すなわち、電波発信装置80は、使用者が1回だけ行ったタッチボタン70の操作に基づく操作信号を、電波の発信位置を変化させながら2回発信する。また、この電波発信装置80の位置の変化は、使用者が行ったタッチボタン70の操作に基づいて生じるものである。これにより、1回目の操作信号と同一の操作信号が、1回目とは異なる発信位置から再度繰り返して発信される。
尚、電波発信装置80が上昇し吐水ヘッド20から遠ざかった状態で再度操作信号を発信するための方法としては様々な方法を採ることができる。本実施形態では、使用者が可動部73の壁面74から手を放し、ボタン92が元の状態に戻った時点で、電波発信装置80の制御部が経過時間の計測を開始する。その後、電波発信装置80が上昇し吐水ヘッド20から十分に遠ざかったと推定されるような所定時間が経過した後、電波発信装置80が2回目の操作信号を発信するよう、制御部が制御を行う。
本実施形態に係る水栓装置1においては、上記のように電波発信装置80がその発信位置を変化させながら、同一の操作信号を複数回繰り返して発信する。すなわち、電波発信装置80から電波受信装置61に至るまでの伝搬距離を変化させながら操作信号を複数回発信する。このため、電波受信装置61に到達した電波が打ち消し合う現象が発生する可能性はあるものの、伝搬距離を変化させながら複数回発信した電波が毎回打ち消し合ってしまう可能性は極めて低い。従って、電波受信装置61は少なくとも1回は操作信号を受信することができる。
電波発信装置80が発信した操作信号が確実に電波受信装置61に到達するため、タッチボタン70と第二流調弁50との間における無線通信を安定して行うことができ、タッチボタン70の操作に基づく第二流調弁50の制御を確実に行うことができる。
また、電波発信装置80は可動部73に固定されているため、電波発信装置80の電波の発信位置は、使用者が可動部73を動かすことによって変化する。従って、電波発信装置80の電波の発信位置を変化させるための駆動源(電磁モーター等)を別途設けることなく、使用者が可動部73を動かすことを利用して電波の発信位置させている。これにより、吐水ヘッド20を小型化している。
図1のように、吐水ヘッド20が本体部10の上端に保持された状態において、電波発信装置80が有する送信アンテナの励振方向が鉛直方向となるように設定されている。また、電波受信装置61が有する受信アンテナの励振方向も鉛直方向となるように設定されている。すなわち、電波発信装置80の励振方向と電波受信装置61の励振方向とが互いに一致しているため、電波受信装置61は高い受信効率で操作信号を受信することができる。
また、タッチボタン70は、可動部73が一直線方向(押し込み方向)に沿ってのみ動くように構成された押し込み型のスイッチである。このため、可動部73が動いても送信アンテナの励振方向は変化せず、電波発信装置80の励振方向と電波受信装置61の励振方向とが互いに一致した状態が常に維持される。その結果、電波の受信効率が低下してしまうことがない。
また、電波発信装置80と電波受信装置61との間には、導体からなるシンク2の底部3が配置されている。このため、電波発信装置80から発信された電波が電波受信装置61に向かって一直線に伝搬する経路は底部3によって遮られている。その結果、電波は水栓設置部4の内部の空間において反射や回折をしながら通過するか、回折によりシンク2の周囲を回り込みながら通過し、電波受信装置61に到達する。
ここで、電波発信装置80が有する送信アンテナの励振方向は、上記のように鉛直方向、すなわち、シンク2のうち水平な底部3に対し垂直に交わる方向となっている。このため、電波発信装置80から発信された電波が回折しながら電波受信装置61に到達しやすい状態となっており、電波受信装置61は操作信号を安定して受信することが可能である。
尚、上記のような効果を得るためには、電波発信装置80が有する送信アンテナの励振方向が底部3に対して完全に垂直である必要はなく、垂直に近ければ十分である。励振方向が底部3に対してなす角度が45度よりも大きければ、一定の効果を奏するものと思われる。
水栓装置1では、タッチボタン70が押し込まれていない通常の状態(図3の状態)において、ボタン92が平面部72から離間している。このため、使用者が可動部73を下方に押し込む量が所定以上となるよりも前においては、ボタン92は平面部72に触れず、基部91に向けて押し込まれることがない。このため、タッチボタン70に使用者の手が触れた程度にも関わらず操作信号が発信され、第二流調弁50の制御が使用者の意に反して行われてしまうことが防止される。
次に、本発明の別の実施形態に係る水栓装置1aについて、図6乃至図8を参照しながら説明する。水栓装置1aは、吐水ヘッド20の上端に設けられたタッチボタン70a及びその内部の構成(電波発信装置80a等)のみが吐水ヘッド20と異なっているが、他は同一である。従って以下では、水栓装置1と異なる点のみについて説明を行い、水栓装置1と共通の事項については説明を省略する。図6乃至図8はいずれも、水栓装置1aにおける電波発信装置80aの動作を説明するための模式図であって、水栓装置1aのうちタッチボタン70a近傍の部分における構成を示している。
図6は、タッチボタン70aが押し込まれていない通常の状態を示している。図6に示したように、タッチボタン70aは案内軸71aと可動部73aとを有している。
案内軸71aは、後に説明するように可動部73aの動きを案内する円筒形状の軸であって、吐水ヘッド20の先端に固定されている。案内軸71aは、その中心軸が吐水ヘッド20の中心軸と一致するように配置されており、案内軸71aの直径は吐水ヘッド20の直径よりも一回り小さくなっている。案内軸71aの先端(吐水ヘッド20とは反対側の端部)には、案内軸71aの中心軸に対して直角な面をなす平面部72aが形成されている。
平面部72a上には、電波発信装置80aが固定された状態で配置されている。電波発信装置80aは、電波を発信するための送信アンテナや電源、及び制御部等を搭載した薄板形状の基板であって、平面部72aと平行となるよう配置されている。
可動部73aは金属により形成されている。可動部73aは、内部に空間を有する円筒形状に形成されており、その内径は案内軸71aの直径よりも大きく、その外形は吐水ヘッド20の直径と同一である。可動部73aは、その中心軸が案内軸71aの中心軸と一致するように配置されており、可動部73aの一方の端部は、可動部73aの中心軸に対して直角な壁面74aにより封止されている。また、他方の端部75aにおいては内部の空間が開放されており、電波発信装置80a及び案内軸71aの先端の一部が端部75aから内部に挿入された状態となっている。
このような構成により、可動部73aは案内軸71aに案内されながら、その中心軸方向に沿って移動可能となっている。可動部73aは、図示しない付勢手段(例えばバネ)によって上方に向けて(吐水ヘッド20から遠ざかる方向に向けて)付勢されている。このため、使用者がタッチボタン70aを押し込み、図7のように可動部73aを吐水ヘッド20に近づけた後、使用者が壁面74aから手を放すと、可動部73aは付勢手段によって吐水ヘッド20から遠ざかり、その可動範囲の上端(図6の位置)まで戻る。
可動部73aの側面には、二つのスリットSL1、SL2が開口形成されている。スリットSL1は長方形状に形成されており、タッチボタン70aが押し込まれていない図6の状態において、電波発信装置80aと同じ高さとなるような位置に形成されている。すなわち、図6の状態においては、電波発信装置80aの下端部はスリットSL1の下端部よりも高い位置となっており、電波発信装置80aの上端部はスリットSL1の上端部よりも低い位置となっている。
スリットSL2は、スリットSL1と同一の長方形状に形成されており、可動部73aの周方向においてスリットSL1とは異なる位置に形成されている。すなわち、図6においてスリットSL2の右端は、スリットSL1の左端よりも左側となっている。また、スリットSL2はスリットSL1よりも高い位置(壁面74aにより近い位置)に形成されており、スリットSL2の下端は、スリットSL1の上端とほぼ同じ高さとなっている。
図6の状態から、使用者が壁面74aに手を当ててタッチボタン70aを押し込むと、可動部73aは下方に移動して吐水ヘッド20に接近する。可動部73aがその可動範囲の下端まで到達した状態においては、スリットSL2が電波発信装置80aと同じ高さとなるような位置となる(図7)。すなわち、図7の状態においては、電波発信装置80aの下端部はスリットSL2の下端部よりも高い位置となっており、電波発信装置80aの上端部はスリットSL2の上端部よりも低い位置となっている。
タッチボタン70aは、案内軸71aに対する可動部73aの位置を検知することのできる図示しない位置検知装置を備えている。この位置検知装置によって、可動部73aがその可動範囲の下端まで到達したことを検知すると、電波発信装置80aはタッチボタン70の操作に基づく1回目の操作信号を電波により発信する。可動部73aは金属により形成されているため、電波発信装置80aが発した電波の大部分はスリットSL2を通過して外部に伝搬する。すなわち、図7におけるスリットSL2の位置が電波の発信位置となる。
続いて、使用者が可動部73aの壁面74aから手を放すと、可動部73aは付勢手段によって上方に向けて(吐水ヘッド20から遠ざかるように)移動を開始する。可動部73aは付勢手段によって上昇を続け、可動部73aがその可動範囲のほぼ上端位置に到達したことを位置検知装置が検知した時点で、電波発信装置80aは2回目の操作信号を電波により発信する(図8)。2回目の操作信号は、1回目の操作信号と同一の信号である。
2回目の操作信号が発信される際においては、スリットSL1は電波発信装置80aと同じ高さとなっている。すなわち、図8の状態においては、電波発信装置80aの下端部はスリットSL1の下端部よりも高い位置となっており、電波発信装置80aの上端部はスリットSL1の上端部よりも低い位置となっている。可動部73aは金属により形成されているため、電波発信装置80aが発した電波の大部分はスリットSL1を通過して外部に伝搬する。すなわち、図8におけるスリットSL1の位置が電波の発信位置となる。
図7と図8とを比較すると明らかなように、1回目の操作信号が発信される際と2回目の操作信号が発信される際との間で、電波発信装置80aの位置は変化しない。しかし、電波発信装置80aと同じ高さに位置するスリット(SL1、SL2)の位置が、可動部73aの周方向に沿って変化する。その結果、1回目の操作信号の発信位置と、2回目の操作信号の発信位置とは、互いに異なる位置となっている。
このように、電波発信装置80aは、使用者が1回だけ行ったタッチボタン70aの操作に基づく操作信号を、電波の発信位置を変化させながら2回発信する。また、この発信位置の変化は、使用者が行ったタッチボタン70aの操作に基づいて生じるものである。これにより、1回目の操作信号と同一の操作信号が、1回目とは異なる発信位置から再度繰り返して発信される。
本実施形態に係る水栓装置1aにおいては、上記のように電波発信装置80aからの電波の発信位置を変化させながら、同一の操作信号を複数回繰り返して発信する。すなわち、電波発信装置80aから電波受信装置61に至るまでの伝搬距離を変化させながら操作信号を複数回発信する。このため、電波受信装置61に到達した電波が打ち消し合う現象が発生する可能性はあるものの、伝搬距離を変化させながら複数回発信した電波が毎回打ち消し合ってしまう可能性は極めて低い。従って、電波受信装置61は少なくとも1回は操作信号を受信することができる。
尚、以上の説明においては、タッチボタン70、70aの操作に基づいて、吐水口21からの水の吐出を一時的に停止又は再開するような例を説明した。しかし、本発明の実施形態としてはこのような態様に限られず、吐水口21からの水の吐出量を段階的に変更してもよい。例えば、タッチボタン70を一回押すごとに水の吐出量を段階的に増加又は減少させてもよい。
また、タッチボタン70、70aの操作に基づいて変更するのは吐水口21からの水の吐出に限られず、吐水口21から吐出される水(温水)の温度であってもよい。この場合、給水配管40の途上には温調装置が設けられ、制御装置は、タッチボタン70になされた操作に基づいてかかる温調装置を制御することとなる。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。