JP5930697B2 - クロム窒化物およびクロム炭窒化物を備えた素材、該素材の製造方法、及び該素材を用いた振動波駆動装置 - Google Patents

クロム窒化物およびクロム炭窒化物を備えた素材、該素材の製造方法、及び該素材を用いた振動波駆動装置 Download PDF

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Description

本発明は、クロム窒化物またはクロム炭窒化物の製造方法、クロム窒化物またはクロム炭窒化物、及びクロム窒化物またはクロム炭窒化物を用いた振動波駆動装置に関する。
従来において、窒化ガスの存在する減圧雰囲気の中で、クロムをターゲット材として、スパッタリングを行うことによってピストンリングに窒素量を傾斜させた複合皮膜層を形成する方法が知られている。
この方法では、窒素ガス雰囲気中で、金属クロムをターゲット材にしてスパッタリングを行うことで、ターゲット材のクロムは原子状になり、クロム原子の一部は窒素と反応して窒化クロムとなる。
真空容器内に窒素ガスを導入する前にスパッタリングを行うと、ピストンリング母材に純金属クロム膜の下地層が形成される。下地層が所定の厚さになった所で徐々に窒素ガスを導入してスパッタリングを続けると、クロムの一部は窒化クロムに転換する。
このようにすることで、ピストンリングの母材に近い方は、密着性の良い金属クロムが形成され、摺動面に近い方は耐摩耗性に優れている窒化クロムが多くなる。
また、特許文献1では、複合皮膜層内の窒化クロムの量は連続的に増加するので、金属クロム層との間での剥離を防止するようにした製造方法が開示されている。
また、特許文献2では、つぎのような鉄系材料の表面処理方法が開示されている。
すなわち、鉄系材料に窒化処理を施して表面に鉄窒化物および鉄炭窒化物の少なくとも一方からなる窒化層を形成させ、この窒化層の表面にクロムメッキ層を形成させる。
この鉄系材料を塩浴中で、500〜700℃の温度に加熱保持することにより、上記窒化層中にクロムを拡散させてクロム窒化物およびクロム炭窒化物の少なくとも一方の化合物層を形成させる。
これにより、品質の安定化、塩浴寿命の長期化および処理時間の大幅短縮ができ、工業的な量産が可能とされる。
特開平7−224936号公報 特開2000−178711号公報
上記特許文献1の製造方法では、クロム中の窒素含有量を変化させて、母材との密着性と耐摩耗性の両立を達成している。
しかし、この製造方法はドライプロセスと言われるものであって、膜の成長速度は余り大きくない上、一回の処理ごとに容器内を真空にしなければならず、必ずしも大量生産に向いているとは言えない面がある。
一方、特許文献2にあるように、窒化層の表面にクロムメッキを施した後、塩浴中でクロム窒化物などを形成させる処理がある。この処理によれば大量生産を可能にしている。
しかし、このような処理では塩浴中での処理が必要となり、処理条件の安定化のため塩浴の管理が必要となる。
また、有毒ガスの発生等の問題があり、更に、廃棄物処理、処理物の中性化、洗浄、塩の飛散、等クリーンな製造条件を達成する上で解決すべき多くの問題が存在する。
本発明は、上記課題に鑑み、簡易でクリーンな製造方法により、量産性を図り耐摩耗性を向上させることが可能となる、クロム窒化物またはクロム炭窒化物の製造方法、クロム窒化物またはクロム炭窒化物、及びクロム窒化物またはクロム炭窒化物を用いた振動波駆動装置の提供を目的とする。
本発明の一様態は、0.35重量%以上1.0重量%以下の炭素を含有した鉄系材料の表面にクロムメッキを設けた後、850℃以上で熱処理することで前記鉄系材料に含有された炭素が、設けられたクロム中に拡散することでクロム炭化物に変化するクロム炭化物生成工程と、
前記クロム炭化物生成工程の後、550℃以上で窒化処理することで窒素が該クロム炭化物中に拡散し、該クロム炭化物が窒素化合物に変化する工程と、
を含むことを特徴とするクロム窒化物およびクロム炭窒化物を備えた素材の製造方法である。
本発明の一様態は、母材である0.35重量%以上1.0重量%以下の炭素を含有した鉄系材料の表面にクロム窒化物およびクロム炭窒化物が形成され、
表面からクロム窒化物層、それより内側にクロム炭窒化物層および窒素が拡散した前記母材部分を有することを特徴とするクロム窒化物およびクロム炭窒化物を備えた素材である。
本発明によれば、簡易でクリーンな製造方法により、量産性を図り耐摩耗性を向上させることが可能となる、クロム窒化物またはクロム炭窒化物の製造方法、クロム窒化物またはクロム炭窒化物、及びクロム窒化物またはクロム炭窒化物を用いた振動波駆動装置を実現することができる。
本発明の実施例1におけるクロムメッキを施した表面の熱処理による硬さ変化を示すグラフ。 本発明の実施例1におけるクロムメッキの熱処理による表面成分組成の変化を示すグラフ。 本発明の実施例1におけるクロムメッキ表面の熱処理による変化を示す写真。 本発明の実施例1におけるクロムメッキの熱処理による表面成分組成の変化を示すグラフ(各温度6時間保持の場合)。 本発明の実施例1におけるクロムメッキ表面の写真(850℃、6時間保持)。 本発明の実施例1におけるクロムメッキを施した表面の熱処理による硬さ変化を示すグラフ(母材がSUS440Cの場合)。 本発明の実施例1におけるクロムメッキの熱処理による表面成分組成の変化を示すグラフ(母材がSUS440Cの場合)。 本発明の実施例1におけるクロムメッキ表面の熱処理による変化を示す写真(SUS440Cの場合)。 本発明の実施例1における熱処理を施したクロムメッキ断面の写真及び面分析の結果を示す写真。 本発明の実施例1における硬化層を摩擦摺動部に用いた振動波駆動装置を示す図。 本発明の実施例1における本発明の硬化層を摩擦摺動部に用いた振動体を示す図。 本発明の実施例2におけるクロムメッキの熱処理による表面成分組成の変化を示すグラフ。 本発明の実施例2におけるクロムメッキを施した表面の熱処理による硬さ変化を示すグラフ。 本発明の実施例2における熱処理を施したクロムメッキ断面の写真及び線分析の結果を示す図。 本発明の実施例2における炭素及び窒素元素の線分析を示す図。
[実施例1]
実施例1として、本発明を適用したクロム窒化物またはクロム炭窒化物の製造方法及びそれを用いた振動波駆動装置の構成例について説明する。
本実施例では、鉄系材料の表面にクロムメッキを施し、それを真空中で熱処理することにより、一旦クロム炭化物を生成させた後、それをクロム窒化物またはクロム炭窒化物に変化させることでクロム窒化物またはクロム炭窒化物を製造した。
以下に、これらの製造方法について更に詳細に説明する。
まず、上記一旦クロム炭化物を生成させるクロム炭化物生成工程として、鉄系材料の表面にクロムメッキを設けた後、熱処理することにより鉄系材料中の炭素をクロム中に拡散させ、該クロムをクロム炭化物に変化させる工程について説明する。
その際、試料の材料として、つぎの材料を用いた。すなわち、
電磁軟鉄(炭素量0.02重量%以下)、
炭素鋼JIS S20C(炭素含有量0.2重量%)、
炭素鋼JIS S45C(炭素含有量0.45重量%)、
JIS SK4(炭素含有量1.0重量%)、
ステンレスSUS420J2(炭素含有量0.35重量%)、
SUS420F(炭素含有量0.35重量%)、
ステンレスSUS440C(炭素含有量1.0重量%)、を用いた。
それぞれの材料の表面に、厚さ約3〜5μmのクロムメッキを施した。
但し、ステンレス以外の材料にはクロムの下層に厚さ約0.5μmのニッケルメッキ層がある。
その後、各材料を真空中にて850℃〜1150℃の各温度(50℃おき)に1時間および6時間保持した後、窒素ガスによる急冷または炉中にて徐冷(20K/分)を行い、各試料を常温まで冷却した。
なお、熱処理後の試料を分析(表面溶出抽出ジフェニルカルバンド吸光光度法による)すると、六価クロム量は2.5ppm以下(検出限度以下)という極めて低い含有量であった。
なお、参考までにRoHS指令値は1000ppm以下である。
図1はJIS SUS420Fの表面にクロムメッキした試料を真空炉中で900〜1150℃(50℃おき)の各温度で各1時間保持した後、徐冷したものの表面ビッカース硬さ試験の結果である。
メッキのままでは硬さは900HVであり、900℃では一旦400HVまで低下するがその後950℃から硬さが上昇し、1000〜1150℃では1300HV程度になった。
図2は、JIS SUS420Fの表面にクロムメッキした試料を真空炉中で900〜1150℃(50℃おき)の各温度で各1時間保持した後徐冷したものの表面をXMA(X線マイクロアナライザー)にて元素分析した結果を示すものである。
この結果によると硬さの変化と同様、950℃以上でクロム中に炭素元素が急激に拡散しており、その結果クロム炭化物または鉄を含むクロム複炭化物に相変化したことが予測された。
確認のため950℃以上の熱処理を経た試料表面をX線回折により結晶構造を分析すると、(Cr、Fe)23C6になっていた。
なお、本発明ではクロム窒化物、クロム炭窒化物およびクロム炭化物と称する化合物には、クロム・鉄複窒化物(Cr、Fe)xNy、クロム・鉄複炭窒化物(Cr、Fe)x(C、N)yおよびクロム・鉄複炭化物(Cr、Fe)xCyが含まれる(x、yは自然数)。
図3は、前記試料において、900℃、950℃、1050℃および1150℃にて熱処理した表面の走査電子顕微鏡写真を示す。
900℃の試料は表面にクラックが見られ、まだほとんどクロム元素のままの状態である。
950℃の試料では凹凸のある部分と滑らかな表面を呈している部分とがある。炭化物が生成した部分と金属クロムのままの部分が混在しているとみられ、硬さ試験の結果においても、炭化物および焼きなましされた金属クロムの各硬さの間の硬さになっていた。炭化物と金属クロムの割合によって、硬さは異なるとみられる。
1050℃の試料ではほぼ全面1μm大の角ばった粒子で覆われている。クロム炭化物粒子が析出したものである。その後さらに温度を上げた1150℃処理の試料では、粒子が大きくなると同時に丸みを帯びてきた。粗大化(コースニング)が進んだためである。
他の材料試料においても状況はほぼ同様であるが、S45CとSK4についてはクロムメッキの下層にNi層を付与してしまったため、母材から表面への炭素原子の拡散を困難にしてしまった。その結果1150℃になってやっと表面に炭素が拡散してきた。
なるべく低温処理を可能ならしめるために、母材にはクロムメッキを直接付与させることが重要である。
SUS420Fにおいて、各温度に保持する時間を6時間にした場合を次に示す。
図4は、上記と同様JIS SUS420Fの表面にクロムメッキした試料を真空炉中で850〜1000℃(50℃おき)の各温度で各6時間保持した後徐冷したものの表面をXMAにて元素分析した結果を示すものである。
この結果によると、850℃以上でクロム中に炭素元素が急激に拡散しており、前記した各温度に1時間保持した場合と比較して約100℃低い温度で同量の炭素が拡散している。
すなわち、保持時間を6倍にすることで、炭素を拡散させるための温度を約100℃低下させることができた。
図5には前記試料において、850℃にて熱処理した表面の走査電子顕微鏡写真を示す。
これによると、前記した950℃で1時間保持した場合の材料組織と同程度の炭化物が生成し、再結晶化が進んでいる。組織の上でも保持時間を6倍にすることが、温度を約100℃低下させることに相当する。
図6はJIS SUS440Cの表面にクロムメッキした試料を真空炉中で900〜1150℃(50℃おき)の各温度で各1時間保持した後徐冷したものの表面ビッカース硬さ試験の結果を示すものである。
SUS420Fと同様にメッキのままでは硬さは900HVであり、900℃では一旦400HV程度まで低下するがその後950℃から硬さが急上昇し、1150℃までSUS420Fの場合より硬い1400HV程度を維持した。
図7は、同様にJIS SUS440Cの表面にクロムメッキした試料を真空炉中で900〜1150℃(50℃おき)の各温度で各1時間保持した後、徐冷したものの表面をXMAにて元素分析した結果を示すものである。
この結果によると、やはり950℃以上でクロム中に炭素元素が急激に拡散しており、その結果クロム炭化物または鉄を含むクロム複炭化物に相変化したことが予測された。
確認のため950℃以上の熱処理を経た試料表面をX線回折により結晶構造を分析すると、SUS420Fとは異なり、(Cr、Fe)7C3になっていた。
図8に、前記試料において、900℃、950℃、1050℃にて熱処理した表面の走査電子顕微鏡写真を示す。
900℃ではSUS420Fの場合と異なり、既にわずかであるが炭化物の微細粒子が観察された。
950℃になると全面微細粒子で覆われ、1050℃の試料では網目状の組織になった。この網の部分をXMAで分析すると他の部分よりもFeの含有量が多いことがわかった。
この網目の部分は旧オーステナイト(γ)粒界に相当し、該粒界部分はFeの拡散が先行したようである。
次に、上記クロム炭化物生成工程の後、窒化処理により窒素を該クロム炭化物中に拡散させ、該クロム炭化物を窒素化合物に変化させるようにする工程について説明する。
クロム炭化物を窒素化合物に変化させる工程では、上記のようにして生成した表面のクロム炭化物部分を、550℃にて2時間イオン窒化処理する。
これにより、相変化を起こしクロム窒化物に変化することが確認された。
図9は、一旦クロム炭化物にしてからクロム窒化物に変化させた例を示す断面写真およびその元素マッピングである。
具体的には振動波駆動装置の振動体の表面に摩擦材として使用するために、当該方法によりクロム窒化物を生成したものである。
母材の材質はJIS SUS440Cであり、その表面に約15μmのクロムメッキを施した後、真空炉中にて1200℃で1時間保持すると前述したようにクロム炭化物が生成した。
さらに、この振動体を550℃にて2時間イオン窒化処理した結果のものである。
写真の左側が表面であり、以下に説明するが該表面側から窒化により窒素元素が内部へと拡散していることがわかる。
Cr元素のマッピング(面分析)をみると、クロム元素については旧γ粒界に沿って母材側に拡散しているが、ほとんどは表面付近に残存している。
一方、Fe元素については反対に元々クロムメッキ部分であった表面方向に、やはり旧γ粒界に沿って拡散している。
このように互いの元素が拡散し合うことで、表面の硬い化合物層の母材に対する密着性が増加して、はく離しにくくなる。
次に、C元素を見てみると、この元素が多く存在する部分には同時にCr元素も多く存在することがわかる。
それは、母材側に拡散しているCr元素の多い部分でも同様である。
さらに、表面から10〜15μm付近の深さ部分が最も多く存在する。
しかし、一方N元素について見てみると、表面から10μm程度の深さまで最も多量に存在する部分と、さらにその内部の5μm程度の中間的な量が存在する部分(中間層)および最も少ない量が存在する母材部分に明瞭に判別できる。
以上から、該断面は表面からクロム窒化物層、それより深い部分(中間層)にはクロム炭窒化物層および若干窒素が拡散した母材部分から構成される。
なお、クロムメッキに直接イオン窒化処理した場合は、処理温度を800℃という高温にしても、表面からわずか1μm程度しかクロム窒化物に変化しない。なお、イオン窒化処理においては800℃という温度は実用的とは言えず、装置を構成する容器の材料や冶具などを耐熱材料に変更しなければならない。
その点、一旦クロム炭化物にしておくと、炭素の部分がそれと原子の大きさが同程度の窒素に置換するだけですむので、前記した温度と比較すると低温であって充分実用的な550℃という比較的低温の窒化温度でも窒素は拡散すると考えられる。
また、その条件ではクロム炭化物よりもクロム窒化物の方が安定だから相変化するとも言える。
以上、説明したようにこの実施例を用いると、実用的な窒化処理条件においても比較的短時間で厚いクロム窒化物層が得られる。
図10は、前記した振動波駆動装置を示す図である。
この振動波駆動装置は主に振動体1、その下面に貼付した圧電素子2、振動体の振動を上端部1aの摩擦摺動部1aaにて接触させ回転駆動に変換するロータ3および該ロータの回転運動を出力する軸4から構成されている。
これらにより、圧電素子2への電圧の印加により振動体1が振動し、振動体1に接触している摩擦摺動部が振動体1の振動により、ロータ(移動体)3が回転駆動(摩擦駆動)されるように構成されている。
その際、本実施例では、上記振動波駆動装置の摩擦摺動部を、本発明の製造方法で製造されたクロム窒化物またはクロム炭窒化物によって形成する構成を採ることができる。
図11は振動体1の部分を示す図であるが、上方に多数あるくし歯の上端部1aには摩擦摺動部1aaがある。
当該部分に本発明のクロム窒化物またはクロム炭窒化物を設けて、耐久性の高い振動波駆動装置が出来る。
[実施例2]
実施例2として、実施例1とは異なる形態のクロム窒化物またはクロム炭窒化物の製造方法の構成例について説明する。
本実施例では、鉄系材料の表面に窒化処理により窒素を拡散させた後、該表面にクロムメッキを設け、
さらに、それを真空中にて熱処理することにより前記窒素をクロム中に拡散させ、該クロムを化合物に変化させることによりクロム窒化物層またはクロム炭窒化物層を生成した。
次に、本実施例の具体的な製造方法について説明する。
まず、JIS SUS420J2製の振動体にイオン窒化処理した後XMA分析したところ表面の窒素含有量は7重量%であった。
その後、真空中1000℃にて1時間保持したところ表面の窒素含有量を1重量%まで低下した。
つまり加熱により脱窒したのである。そして当該振動体の表面に10〜20μm厚のクロムメッキを施した。
図12は、このようにして製造した試料を真空中にて、50℃おきに800〜1100℃の各温度で1時間保持後窒素急冷して、その表面の各元素含有量をXMAにて分析した結果を示すものである。
非摺動部表面においては900℃、摩擦摺動面においては950℃以上で急激に窒素含有量が増大した。
後に当該試料断面からメッキ厚を測定すると、非摺動部では10μm、摩擦摺動部では20μmであった。
つまり、メッキが厚い部分は表面の窒素含有量が増大するために、同じ1時間では約50℃高い温度を必要としたことがわかる。
図13は、当該振動体試料の熱処理温度と表面硬さの関係を示している。
これからわかるように、窒素含有量の増大と硬さの増大する温度は一致していた。
つまり、当初SUS420J2母材表面に含まれていた窒素がクロムメッキ側に拡散してきて、1500HVという高硬度のクロム窒化物またはクロム炭窒化物を生成した。
図14は1100℃の熱処理を施した当該試料の表面付近の断面写真と、各元素の線分析の結果を示している。
この結果から表面付近はほぼクロム窒化物になっている。
また、図14の炭素と窒素スペクトルのみを再度詳細に分析した図15をみると、窒素元素が中間層部分で滑らかに表面に向かって増大するとともに、母材との中間層部分は母材及び表面のクロム窒化物より炭素含有量が多くなっていることがわかった。
本実施例では、真空中で900℃以上の温度にするだけでクロム窒化物ないしクロム炭窒化物という硬い化合物相を生成することが出来た。
実施例1と共通する利点は、各元素が表面から母材にかけてなめらかに傾斜していることであって、化合物相のはく離強度が高く、過酷な摩擦摺動特性を要求する振動波駆動装置の摩擦材として最適である。
特に、クロム元素の含有量が多い表面層と鉄元素の含有量が多い母材との間に、それぞれの元素含有量がそれぞれ反対の方向に傾斜する中間層が存在しており、そのことが密着性の高い化合物相になっていると考えられる。
また、当該中間層では炭素元素が両側の表面層及び母材よりも高くなっており、その炭素含有量が多い化合物相が存在することで密着性の高い化合物相になっていると考えられる。
一方、本実施例特有の効果としては、一般的な表面硬化処理とは異なり、窒素が母材内部から拡散することにある。
その結果、表面層より内部の方が硬い層が得られ易い。
そのため、摩擦摺動による初期のなじみが容易に進行し、その後は高耐摩耗性を維持するという特徴がある。
また、一般には表面硬化層を設けた後、当該表面をラップ加工などにより平滑化処理を施すわけであるが、その場合でもせっかく設けた高耐摩耗性、高耐食性などといった優れた特性をもつ層を除去することが少ないので好ましい。
以上に説明したように、本発明によれば、環境に配慮した条件の下、工業的大量生産に適したクロム窒化物またはクロム炭窒化物の製造が可能である。
また、本発明の製造方法によるクロム窒化物またはクロム炭窒化物は表面に10μm以上の厚さでも容易に製造することができ、これらの表面を研削やラップなど平滑化処理して使用することも可能となる。
また、母材である鉄系材料との密着性が良好なため、剥離も発生しにくい。
1:振動体
1a:くし歯の上端部
1aa:摩擦摺動部
2:圧電素子など電気−機械エネルギー変換素子
3:ロータ(移動体)
4:軸

Claims (5)

  1. 0.35重量%以上1.0重量%以下の炭素を含有した鉄系材料の表面にクロムメッキを設けた後、850℃以上で熱処理することで前記鉄系材料に含有された炭素が、設けられたクロム中に拡散することでクロム炭化物に変化するクロム炭化物生成工程と、
    前記クロム炭化物生成工程の後、550℃以上で窒化処理することで窒素が該クロム炭化物中に拡散し、該クロム炭化物が窒素化合物に変化する工程と、
    を含むことを特徴とするクロム窒化物およびクロム炭窒化物を備えた素材の製造方法。
  2. 母材である0.35重量%以上1.0重量%以下の炭素を含有した鉄系材料の表面にクロム窒化物およびクロム炭窒化物が形成され、
    表面からクロム窒化物層、それより内側にクロム炭窒化物層および窒素が拡散した前記母材部分を有することを特徴とするクロム窒化物およびクロム炭窒化物を備えた素材
  3. 0.35重量%以上1.0重量%以下炭素を含有した鉄系材料を窒化処理し前記鉄系材料の表面に窒素を拡散させた後、該表面にクロムメッキを設ける工程と、
    前記クロムメッキした鉄系材料を真空中にて900℃以上で熱処理することで前記窒素がクロム中に拡散し、前記クロムを窒素化合物に変化させる工程と、
    を含むことを特徴とするクロム窒化物およびクロム炭窒化物を備えた素材の製造方法。
  4. 母材である0.35重量%以上1.0重量%以下の炭素を含有した鉄系材料の表面にクロム窒化物およびクロム炭窒化物が形成されたクロム窒化物およびクロム炭窒化物を備えた素材であって、
    前記クロム窒化物およびクロム炭窒化物からなる層と前記母材との間には、
    前記層及び前記母材に含有されている炭素より多い炭素元素を含む中間層、またはクロム及び鉄元素の含有量が、厚さ方向に対して互いに反対の方向に傾斜する中間層を有することを特徴とするクロム窒化物およびクロム炭窒化物を備えた素材
  5. 圧電素子を備え、圧電素子への電圧の印加により振動する振動体と、
    摩擦摺動部を備え、摩擦摺動部が前記振動体に接触し、前記振動により摩擦駆動される移動体と、
    を有する振動波駆動装置であって、
    前記摩擦摺動部が、請求項または4に記載のクロム窒化物およびクロム炭窒化物を備えた素材によって形成されていることを特徴とする振動波駆動装置。
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