本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかにされる。
液体を媒体に吐出するヘッドユニットと、
該ヘッドユニットに対して離当接可能であり、前記ヘッドユニットに当接して該ヘッドユニットをキャップするキャップ部材と、
前記キャップ部材を前記ヘッドユニットに当接させるための開口部を有し、前記キャップ部材を内部に収容するキャップ部材収容部であって、該キャップ部材収容部の内部を湿潤させるための湿潤体をさらに備えるキャップ部材収容部と、
前記キャップ部材が前記ヘッドユニットから離間しているときに、前記キャップ部材収容部に対して相対移動して、前記開口部を覆う蓋部と、
を備える液体吐出装置であって、
前記蓋部に取り付けられ、かつ、
前記蓋部が前記キャップ部材収容部に対して相対移動して前記開口部を覆った際に、前記キャップ部材に接触して該キャップ部材を加湿する接触加湿材を有することを特徴とする液体吐出装置。
かかる液体吐出装置によれば、キャップ部材に付着した液体が固化することを抑制することが可能となる。
また、前記キャップ部材は、前記ヘッドユニットに当接するシール部を備え、
前記接触加湿材は、前記シール部に接触して該シール部を加湿することとしてもよい。
かかる場合には、クリーニングが適切に行われない問題を避けることが可能となる。
また、前記蓋部は、前記キャップ部材収容部と対向した状態で、前記キャップ部材収容部に対して下方へ相対移動して、前記開口部を覆い、
前記接触加湿材は、前記蓋部の下面に固定されている弾性材であることとしてもよい。
かかる場合には、簡易な構成でキャップ部材に付着した液体が固化することを抑制することが可能となる。
また、前記接触加湿材に加湿液を供給する供給ユニットを備えることとしてもよい。
かかる場合には、メンテナンスが簡易なものとなる。
また、前記供給ユニットを制御する制御部を有し、
前記制御部は、
前記蓋部が、前記キャップ部材収容部に対する相対移動を開始してから、前記開口部を覆うまでの間に、
前記供給ユニットに加湿液を供給させる供給処理を実行することとしてもよい。
かかる場合には、接触加湿材の加湿機能をより適切に発揮させることが可能となる。
次に、キャップ部材が、液体を媒体に吐出するヘッドユニットに当接して該ヘッドユニットをキャップすることと、
前記キャップ部材が前記ヘッドユニットから離間しているときに、
前記キャップ部材を前記ヘッドユニットに当接させるための開口部を有し、前記キャップ部材を内部に収容するキャップ部材収容部であって、該キャップ部材収容部の内部を湿潤させるための湿潤体をさらに備えるキャップ部材収容部に対して、接触加湿材が取り付けられた蓋部が相対移動して前記開口部を覆った際に、
前記接触加湿材が前記キャップ部材に接触して該キャップ部材を加湿することと、
を有することを特徴とする加湿方法。
かかる加湿方法によれば、キャップ部材に付着した液体が固化することを抑制することが可能となる。
===プリンター11の構成例について===
以下、本発明をラテラル方式のインクジェット式プリンターに具体化した一実施形態を図1〜図14に従って説明する。なお、以下における明細書中の説明において、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は、図1等の図面に矢印で示した方向を基準として示すものとする。
図1に示すように、液体吐出装置の一例としてのインクジェット式プリンター(以下、「プリンター」という。)11は、直方体状の本体ケース12を備えている。本体ケース12内には、媒体の一例としての長尺状の連続紙13を繰り出す繰り出し部14と、その連続紙13に液体の一例としてのインクの吐出により印刷が施される印刷室15と、その印刷によりインクが付着した連続紙13に乾燥処理を施す乾燥装置16と、そのように乾燥処理が施された連続紙13を巻き取る巻き取り部17が設けられている。
すなわち、本体ケース12内における上下方向の中央部よりもやや上寄りの位置には、本体ケース12内を上下に区画する平板状の基台18が設けられており、この基台18よりも上側の領域が矩形板状のプラテン19を基台18上に支持してなる印刷室15となっている。そして、基台18よりも下側の領域において、連続紙13の搬送方向で上流側となる左側寄りの位置に、繰り出し部14が配設されると共に、下流側となる右側寄りの位置に、乾燥装置16及び巻き取り部17が配設されている。
図1に示すように、繰り出し部14には、前後方向に延びる巻き軸20が回転自在に設けられ、その巻き軸20に対して連続紙13が予めロール状に巻かれた状態で巻き軸20と一体回転可能に支持されている。すなわち、連続紙13は、巻き軸20が回転することにより、繰り出し部14から繰り出されて搬送方向の下流側に搬送されるようになっている。また、繰り出し部14の右側方には、巻き軸20から繰り出された連続紙13を右側下方から巻き掛けることにより、その連続紙13の搬送方向を鉛直上方向に変換する第1ローラー21が巻き軸20と平行な態様で前後方向に延びるように設けられている。
一方、印刷室15内において、プラテン19の左側であって下側の第1ローラー21と上下方向で対応する位置には、第2ローラー22が下側の第1ローラー21と平行な態様で前後方向に延びるように設けられている。そして、第1ローラー21によって搬送方向が鉛直上方向に変換された連続紙13は、この第2ローラー22に左側下方から巻き掛けられることにより、その搬送方向が水平右方向に変換されてプラテン19の上面に摺接するようになっている。
また、印刷室15内において、プラテン19の右側には、プラテン19を挟んで左側の第2ローラー22と左右方向で対向する第3ローラー23が第2ローラー22と平行な態様で前後方向に延びるように設けられている。なお、第2ローラー22及び第3ローラー23は各々の周面の頂部がプラテン19の上面と同一高さとなるように各々の設置される位置が調整されている。
そのため、印刷室15内で左側の第2ローラー22により搬送方向が水平右方向に変換された連続紙13は、プラテン19の上面に摺接しつつ下流側となる右側に搬送された後、第3ローラー23に右側上方から巻き掛けられることにより搬送方向が鉛直下方向に変換されて基台18よりも下側の乾燥装置16に向けて搬送されるようになっている。そして、乾燥装置16内を通過することにより乾燥処理を施された連続紙13は、更に鉛直下方向に搬送されるようになっている。
図1に示すように、乾燥装置16の下方には、乾燥装置16内を通過して鉛直下方向に搬送される連続紙13を左側上方から巻き掛けることにより、その連続紙13の搬送方向を水平右方向に変換する第4ローラー24が前後方向に延びるように設けられ、この第4ローラー24の右側に巻き取り部17が配設されている。そして、巻き取り部17には、第4ローラー24と平行な態様で前後方向に延びる巻き取り軸25が図示しない搬送モーターの駆動力に基づいて回転するように設けられ、この巻き取り軸25に対して連続紙13の搬送方向下流端となる先端が巻きつけられている。
図1に示すように、印刷室15内におけるプラテン19の前後両側には、左右方向に延びるガイドレール26(図1では2点鎖線で示す)が対をなすように設けられている。ガイドレール26の上面はプラテン19の上面よりも高くなっており、両ガイドレール26の上面には、矩形状のキャリッジ27が図示しない駆動機構の駆動に基づき両ガイドレール26に沿って左右方向への往復移動可能な状態で支持されている。そして、このキャリッジ27の下面には、ヘッドユニット28が備えられている。本実施の形態に係るヘッドユニット28は、支持板28a及び記録ヘッド29を有しており、キャリッジ27の下面側に支持板28aを介して記録ヘッド29が支持されている。
印刷室15内においては、プラテン19の左端から右端までの一定範囲が印刷領域とされており、この印刷領域単位で連続紙13は間欠的に搬送されるようになっている。そして、この印刷領域単位での間欠搬送によってプラテン19上に停止した状態にある連続紙13に対してキャリッジ27の往復移動に伴いヘッドユニット28(記録ヘッド29)の後述するノズル32からインクが吐出されることで連続紙13に対して印刷が施されるようになっている。また、印刷室15内において、第3ローラー23よりも右側となる非印刷領域には、非印刷時に記録ヘッド29のメンテナンスを行うためのメンテナンス機構30が設けられている。
図2に示すように、キャリッジ27の下面側に支持された支持板28aには複数個(本実施形態では15個)の記録ヘッド29が連続紙13の搬送方向(図2において白抜き矢印で示す方向)と直交する幅方向(前後方向)に亘って千鳥状の配置態様となるように支持されている。そして、各記録ヘッド29の下面となるノズル形成面31には、多数のノズル32により前後方向に沿う複数列(本実施形態では4列)のノズル列33が左右方向に所定間隔をおいて規則的に形成されている。
また、図3に示すように、本体ケース12内には、互いに色の異なるインクを収容した複数(本実施形態では4つ、但し、図3には1つのみ図示)のインクカートリッジ34と、グリセリン、水等を含む湿潤液を収容した湿潤液カートリッジ35とが着脱可能に装着されている。そして、各インクカートリッジ34は、インク供給チューブ36を介して、記録ヘッド29に接続されている。また、湿潤液カートリッジ35は、湿潤液供給路を構成する湿潤液供給チューブ37を介して、メンテナンス機構30に備えられた後述する加湿パッド53a及びメンテナンスキャップ63にそれぞれ接続されている。
なお、湿潤液供給チューブ37は、複数に分岐しており、分岐部分から見て上流側の上流端が湿潤液カートリッジ35に接続され、分岐部分から見て下流側の二つの下流端が加湿パッド53a及びメンテナンスキャップ63にそれぞれ接続されている。湿潤液供給チューブ37における分岐位置よりも下流側のチューブ部分において、その下流端が加湿パッド53aに接続されるチューブ部分には加湿パッド側供給バルブ37aが設けられると共に、その下流端がメンテナンスキャップ63に接続されるチューブ部分にはメンテナンスキャップ側供給バルブ37bが設けられている。
さらに、図3に示すように、本体ケース12内には、加圧ポンプ38が設けられている。加圧ポンプ38には、下流側が複数に分岐した空気供給チューブ39の上流端が接続され、その空気供給チューブ39の各下流端が各インクカートリッジ34及び湿潤液カートリッジ35に接続されている。また、空気供給チューブ39における分岐位置よりも下流側のチューブ部分において、その下流端がインクカートリッジ34に接続されるチューブ部分にはインク供給バルブ40が設けられると共に、その下流端が湿潤液カートリッジ35に接続されるチューブ部分には湿潤液供給バルブ41が設けられている。
そして、インク供給バルブ40が開弁した状態において、加圧ポンプ38から空気供給チューブ39を介して各インクカートリッジ34に加圧空気が供給されることにより、各インクカートリッジ34からインク供給チューブ36を介して記録ヘッド29側にインクが導出されるようになっている。
また、湿潤液供給バルブ41が開弁し、かつ、加湿パッド側供給バルブ37aが開弁した状態において、加圧ポンプ38から空気供給チューブ39を介して湿潤液カートリッジ35に加圧空気が供給されることにより、湿潤液カートリッジ35から湿潤液供給チューブ37を介して加湿パッド53aに湿潤液が導出されるようになっている。また、湿潤液供給バルブ41が開弁し、かつ、メンテナンスキャップ側供給バルブ37bが開弁した状態において、加圧ポンプ38から空気供給チューブ39を介して湿潤液カートリッジ35に加圧空気が供給されることにより、湿潤液カートリッジ35から湿潤液供給チューブ37を介してメンテナンスキャップ63に湿潤液が導出されるようになっている。すなわち、プリンター11には、湿潤液カートリッジ35、湿潤液供給チューブ37、加湿パッド側供給バルブ37a、メンテナンスキャップ側供給バルブ37b、加圧ポンプ38、空気供給チューブ39、湿潤液供給バルブ41を備えた加湿パッド53a及びメンテナンスキャップ63に湿潤液を供給する供給ユニット42が備えられている。
次に、メンテナンス機構30について説明する。
図3に示すように、メンテナンス機構30は、非印刷領域において記録ヘッド29よりも下方となる位置で水平方向への移動自在に配置される保湿ユニット50と、該保湿ユニット50よりも更に下方となる位置で上下方向への移動自在に配置されるメンテナンスユニット51とを備えている。そして、同図に示すように、メンテナンス機構30は、保湿ユニット50の水平方向での移動位置により、保湿ユニット50とメンテナンスユニット51とが上下方向において重なった配置態様を取り得るように構成されている。
図3及び図4に示すように、保湿ユニット50は、その長さ方向となる左右方向の寸法が各記録ヘッド29を支持する支持板28aの左右方向の寸法よりも長い前後一対の帯状板52と、両帯状板52上に支持可能とされる保湿キャップ53(蓋部に相当)とを主体に構成されている。
各帯状板52上の左右各端部には鉛直上方向に向けてガイド棒54が立設されると共に、各帯状板52の下面には左右方向に沿ってラック55が形成されている。そして、各帯状板52のラック55に対してメンテナンスユニット51から見た場合に印刷領域とは反対側となる右側の位置で前後方向に沿う軸線を中心に回転するピニオン56が噛合している。
このピニオン56には、正逆両方向への回転を制御される移動モーター57(図9参照)が動力伝達可能に連結されている。そして、この移動モーター57の駆動に伴ってピニオン56が回転することにより、そのピニオン56とラック55が噛合した前後一対の帯状板52は、その水平状態を維持しつつ、図3に実線で示す干渉位置と、該干渉位置から水平方向右側に離間した同じく図3に二点鎖線で示す非干渉位置との間を往復移動するようになっている。
また、保湿キャップ53は、平面視形状が支持板28aよりも大きな矩形状に形成された基板部58を有し、その基板部58の上面からは支持板28aの周縁形状よりは小さく且つ千鳥状に配置された各記録ヘッド29の配置領域よりは大きな矩形環状をなす周壁部59が上方に向けて突出形成されている。そして、保湿キャップ53は、全記録ヘッド29を一括して囲繞するように周壁部59の上端部を他部材である支持板28aに当接させることによって周壁部59の開口部60が支持板28aで覆われた場合には、その周壁部59内の空間域61が密閉状態となるように構成されている。そのため、図示はしないが、保湿キャップ53における周壁部59の上端部には弾性材料からなるシール部材が矩形環状をなすように付設されている。
また、保湿キャップ53における基板部58の四隅には、帯状板52から立設された各ガイド棒54を挿通可能とするガイド孔58aが形成されている。そして、これらのガイド孔58aに帯状板52のガイド棒54が挿通されることにより、保湿キャップ53は、帯状板52上に水平方向への移動が規制された載置状態で支持されるようになっている。したがって、移動モーター57の駆動に伴ってピニオン56にラック55を噛合させた帯状板52が左右方向に往復移動した場合には、その帯状板52と共に保湿キャップ53も干渉位置と非干渉位置との間を左右方向に往復移動することになる。この点で、本実施形態においては、移動モーター57、ピニオン56、ラック55及び帯状板52により、保湿キャップ53を干渉位置と非干渉位置との間で移動させる保湿キャップ移動機構が構成されている。
また、図3に示すように、保湿キャップ53には、後述するキャップ部材69に接触して該キャップ部材69を加湿する接触加湿材の一例としての加湿パッド53aが取り付けられている。この加湿パッド53aは、スポンジ等の弾性材であり、図3及び図4に示すように、保湿キャップ53の下面に固定されている。また、当該加湿パッド53aには、前述した湿潤液供給チューブ37の下流端が湿潤液(加湿液に相当)を供給可能に接続されている。
一方、メンテナンスユニット51は、矩形状をなす開口部62の大きさが保湿キャップ53の基板部58よりも小さく形成された有底箱形状のメンテナンスキャップ63(キャップ部材収容部に相当)を備えている。このメンテナンスキャップ63は、非印刷領域における記録ヘッド29のホームポジションの下方位置で上下方向への移動自在に支持されており、シリンダ等からなる昇降装置64の駆動に基づき上下方向に移動するようになっている。
すなわち、メンテナンスキャップ63は、昇降装置64の駆動に基づき、図13に示すように後述する複数のメンテナンス装置68が各々対応する記録ヘッド29に対して接近した位置状態となるメンテナンス位置と、図3に示すように各メンテナンス装置68が各々対応する記録ヘッド29から下方へ大きく離間した位置状態となる退避位置との間を上下方向に移動する。なお、その場合のメンテナンスキャップ63の上下方向の高さ位置は、リニアポテンショメータ等からなる昇降センサー65(図9参照)によって検出されるようになっている。
そして、メンテナンスキャップ63は、その周壁部66の上端部を保湿キャップ53の基板部58に当接させることによって開口部62が他部材である保湿キャップ53により覆われた場合には、周壁部66内の空間域67が密閉状態となるように構成されている。そのため、図示はしないが、メンテナンスキャップ63における周壁部66の上端部にも弾性材料からなるシール部材が矩形環状をなすように付設されている。
また、図3に示すように、メンテナンスキャップ63の下端部には湿潤液供給チューブ37の下流端が湿潤液を供給可能に接続される湿潤液流路84が周壁部66の下端外側面から底壁部内を貫通してメンテナンスキャップ63の内底面に供給口85を開口するようにして形成されている。湿潤液流路84は湿潤液供給チューブ37と共に湿潤液供給路を構成するものであり、その湿潤液流路84の途中からは湿潤液排出路86が周壁部66内を鉛直上方に向かって延びるように分岐形成されている。
この湿潤液排出路86は、その下端が湿潤液流路84の水平流路部分に接続されると共に、その上端が湿潤液流路84において最上位置となる供給口85よりも更に上方となる位置で周壁部66の外側面に向けて水平に屈曲されることにより、周壁部66の外側面にオーバーフロー穴としての排出口87を開口形成している。そのため、湿潤液カートリッジ35から加圧ポンプ38の駆動に基づき湿潤液供給チューブ37及び湿潤液流路84を介してメンテナンスキャップ63内に供給された湿潤液は、その液面88が排出口87の開口位置と同じ高さ(例えば、内底面から1〜2mm程度の高さ)の液面(閾値液面)になった場合には、水頭差により湿潤液排出路86の排出口87からメンテナンスキャップ63外に排出されるようになっている。
また、図3に示すように、メンテナンスキャップ63の周壁部66における排出口87よりも上方となる位置には、メンテナンスキャップ63の内外間を連通させる大気開放孔89が貫通形成されている。そして、その大気開放孔89内には電磁弁からなる大気開放弁90が配設されている。この大気開放弁90は、メンテナンスキャップ63の開口部62が他部材である保湿キャップ53により覆われた状態において、メンテナンスキャップ63内の空間域67に湿潤液を供給しようとするときに開放されるように、制御部91により開閉制御される。
図3及び図5に示すように、メンテナンスキャップ63内には、キャリッジ27の支持板28aに支持された記録ヘッド29と同数(本実施形態では15個)のメンテナンス装置68が、各記録ヘッド29と個別に対応した配置状態となるように収容されている。各メンテナンス装置68は、ヘッドユニット28(記録ヘッド29)に対して離当接可能であり、ヘッドユニット28(記録ヘッド29)に当接して該ヘッドユニット28(記録ヘッド29)をキャップするキャップ部材69と、ヘッドユニット28(記録ヘッド29)に対して離当接可能であり、ヘッドユニット28(記録ヘッド29)に摺接して該ヘッドユニット28(記録ヘッド29)をワイプするワイパー部材70とを主体に構成されている。すなわち、メンテナンスキャップ63は、キャップ部材69とワイパー部材70を内部に収容している。
キャップ部材69は、対応する記録ヘッド29のノズル形成面31に対して全てのノズル列33を囲んだ状態で当接し得るように形成された有底箱形状の部材である。キャップ部材69には、周壁部69aが備えられており、周壁部69aの上端部がノズル形成面31に当接するようになっており、そのため、当該上端部には、弾性材料からなるシール部69bが矩形環状をなすように備えられている。なお、キャップ部材69には、図示しないインク排出チューブが吸引ポンプ96(図9参照)を介して接続されている。そして、キャップ部材69は、その上端の開口部を対応する記録ヘッド29のノズル形成面31に全ノズル列33を囲うように当接させた状態で吸引ポンプ96が駆動されることにより、その記録ヘッド29内から増粘等したインクを図示しない廃インクタンクにインク排出チューブを介して強制的に排出するようになっている。
また、ワイパー部材70は、対応する記録ヘッド29のノズル形成面31に対して撓み変形を伴って摺接可能な弾性片からなる部材である。ワイパー部材70は、その上端を対応する記録ヘッド29のノズル形成面31に対して弾性変形を伴いながら摺接させることにより、ノズル形成面31に付着しているインクを払拭するようになっている。
図5に示すように、メンテナンスキャップ63内には、前後方向の幅寸法が右側半分と左側半分とで異なる略T字状をなす複数枚(本実施形態では3枚)の可動プレート71a〜71cが前後方向で隣接する可動プレート71a〜71c同士の向きを入れ違いにして各々が上下方向への移動自在に配設されている。そして、これらの各可動プレート71a〜71cに対して各メンテナンス装置68が、前後方向に一連の千鳥状配置をなす所定数(本実施形態では5つ)のメンテナンス装置68で構成されるメンテナンス装置群72a〜72c毎に振り分けられ、そのメンテナンス装置群72a〜72c単位で対応する可動プレート71a〜71c上に支持されている。
すなわち、図5に示すように、メンテナンスキャップ63内の後方位置で千鳥状配置をなす5つのメンテナンス装置68からなる第1メンテナンス装置群72aは、前後方向で最後部に位置する第1可動プレート71aに支持されている。また、メンテナンスキャップ63内の中央位置で千鳥状配置をなす5つのメンテナンス装置68からなる第2メンテナンス装置群72bは、前後方向で中央部に位置する第2可動プレート71bに支持されている。さらに、メンテナンスキャップ63内の前方位置で千鳥状配置をなす5つのメンテナンス装置68からなる第3メンテナンス装置群72cは、前後方向で最前部に位置する第3可動プレート71cに支持されている。
図3及び図6に示すように、メンテナンスキャップ63内における可動プレート71a〜71cよりも下側には、前後方向に延びる一本の回転軸73が図示しない軸受けにより回転自在に支持されている。そして、その回転軸73には、複数(本実施形態では3つ)のカム部材74〜76が前後方向に間隔をおいて回転軸73と一体回転可能に軸支されている。なお、図3に示すように、回転軸73は、メンテナンスキャップ63内に供給されて貯留される湿潤液の液面88が閾値液面の高さ(オーバーフロー穴としての排出口87と対応する高さ)になった場合にも各カム部材74〜76を湿潤液の液面88よりも上方に位置させ得る高さに支持されている。そして、本実施形態では、このような回転軸73及び各カム部材74〜76により、各メンテナンス装置68をメンテナンス装置群72a〜72c毎に移動させるために変位動作する変位部材が構成されている。
すなわち、各カム部材74〜76は、各メンテナンス装置群72a〜72cを支持する各可動プレート71a〜71cと上下方向で個別に対応する配置態様となるように回転軸73に軸支されており、回転軸73の回転に伴い対応する可動プレート71a〜71cに下側からカム係合するようになっている。ちなみに、最後部の第1可動プレート71aの下側には図7Aに示す第1カム部材74が、中央部の第2可動プレート71bの下側には図7Bに示す第2カム部材75が、そして、最前部の第3可動プレート71cの下側には図7Cに示す第3カム部材76が、それぞれ回転軸73に軸支された状態で配置されている。
また、図6に示すように、メンテナンスキャップ63内の最前部には、左右方向に延びる一本の動力伝達軸77が、その左端部をメンテナンスキャップ63外に突出させると共に、その右端部を回転軸73の前端部に上側から直交させた配置態様で、図示略の軸受けにより回転自在に支持されている。そして、動力伝達軸77におけるメンテナンスキャップ63外に突出した左端部(すなわち、突出端)には、回転軸側の歯車としての従動歯車78が動力伝達軸77と一体回転可能に軸支される一方、動力伝達軸77の右端部には、回転軸73の前端部に軸支された図示しないウォームホイールに噛合するウォーム79が動力伝達軸77と一体回転可能に設けられている。
また、図6に示すように、メンテナンスキャップ63の外側において動力伝達軸77の左端部(突出端)の近傍位置には、駆動源としてのカムモーター80が出力軸81を動力伝達軸77と平行な左右方向に沿わせるようにして配置されている。そして、カムモーター80の出力軸81の先端には、動力伝達軸77側の従動歯車78と噛合関係を有して動力伝達歯車機構を構成する駆動歯車82が駆動源側の歯車として出力軸81と一体回転可能に軸支されている。
ここで、カムモーター80における出力軸81の先端に軸支された駆動歯車82は、図3に示すように、昇降装置64の駆動に基づきメンテナンスキャップ63がその底面を所定の基準面83から距離Aだけ上方に位置させた最下方の退避位置状態にある場合に、動力伝達軸77の従動歯車78に対して噛合可能とされている。すなわち、昇降装置64の駆動に基づきメンテナンスキャップ63が図3に示す退避位置状態よりも上方に移動した場合には、その突出端に従動歯車78を軸支した動力伝達軸77もメンテナンスキャップ63と共に上昇することになる。その一方、出力軸81に駆動歯車82を軸支したカムモーター80は基準面83の近傍に固定配置されたままであり、駆動歯車82の高さは何ら変化しない。そのため、メンテナンスキャップ63が図3に示す退避位置状態から上方の他の位置状態(例えば図10〜図14の位置状態)へ移動した場合は、カムモーター80の出力軸81に軸支された駆動歯車82と動力伝達軸77に軸支された従動歯車78とは両者の噛み合い状態が解除されるようになっている。
次に、各カム部材74〜76のカム形状について説明する。
図7A〜図8に示すように、各カム部材74〜76は、それぞれ同一のカム形状をなすように形成されており、回転軸73に対して他のカム部材とは回転軸73の回転方向に角度ずれした態様で軸支されている。具体的には、第1カム部材74の回転軸73に対する角度位置を基準として、第2カム部材75は、回転軸73の逆回転方向(図7A〜図7Cにおける時計方向)に45度だけ角度ずれする一方、第3カム部材76は、回転軸73の正回転方向(図7A〜図7Cにおける反時計方向)に45度だけ角度ずれした態様に軸支されている。
さらに、各カム部材74〜76の周面には、回転中心からの距離が相対的に長くされた円弧凸面状のカム機能部74a,74c,75a,75c,76a,76cと、回転中心からの距離がカム機能部よりも短くされた非カム機能部74b,74d,75b,75d,76b,76dが周方向へ交互配置で連なるように形成されている。そして、各カム部材74〜76は、回転軸73の回転に伴い回転した場合において、カム機能部が回転軸73の真上となる0度の角度位置(以下、「カム作用位置」という。)に位置するときには、対応する可動プレート71a〜71cの下面に押し上げ力を伴ってカム係合することにより、その可動プレート71a〜71cを上方に押し上げ可能となっている。その一方、各カム部材74〜76は、非カム機能部がカム作用位置に位置することになる場合には可動プレート71a〜71cに対して押し上げ力を付与しないようになっている。
すなわち、各カム部材74〜76は、カム作用位置にカム機能部が位置する場合には、図13に示すように昇降装置64がメンテナンスキャップ63をメンテナンス位置に移動させた際に、カム機能部で押し上げた可動プレート71a〜71c上のメンテナンス装置68が対応する記録ヘッド29に当接して該記録ヘッド29をメンテナンス可能な位置状態となる上側の当接位置にメンテナンス装置群72a〜72cを移動させる。その一方、各カム部材74〜76は、カム作用位置に非カム機能部が位置する場合には、昇降装置64がメンテナンスキャップ63をメンテナンス位置に移動させた際に、可動プレート71a〜71c上のメンテナンス装置68が対応する記録ヘッド29から離間した位置状態となる下側の離間位置(当接位置よりも低い位置)にメンテナンス装置群72a〜72cを移動させる。
まず、図7Aに示す第1カム部材74は、回転軸73の回転角度が同図に示すように初期角度(0度)の状態から正回転方向(同図で反時計方向)に回転した場合における回転角度が90度〜180度となったときにカム作用位置に位置することになる周面部位に、広角の第1カム機能部74aが形成されている。また、同様に、回転軸73の回転角度が270度となったときにカム作用位置に位置することになる周面部位には、狭角の第2カム機能部74cが形成されている。そして、回転軸73の正回転方向で第1カム機能部74aに隣接する周面部位には広角の第1非カム機能部74bが形成されると共に、回転軸73の逆回転方向で第1カム機能部74aに隣接する周面部位には狭角の第2非カム機能部74dが形成されている。
また、図7Bに示す第2カム部材75は、同図に示す初期角度(0度)の状態から回転軸73が正回転方向(同図で反時計方向)に回転した場合における回転角度が135度〜225度となったときにカム作用位置に位置することになる周面部位に、広角の第1カム機能部75aが形成されている。また、同様に、回転軸73の回転角度が315度となったときにカム作用位置に位置することになる周面部位には、狭角の第2カム機能部75cが形成されている。そして、回転軸73の正回転方向で第1カム機能部75aに隣接する周面部位には広角の第1非カム機能部75bが形成されると共に、回転軸73の逆回転方向で第1カム機能部75aに隣接する周面部位には狭角の第2非カム機能部75dが形成されている。
また、図7Cに示す第3カム部材76は、同図に示す初期角度(0度)の状態から回転軸73が正回転方向(同図で反時計方向)に回転した場合における回転角度が45度〜135度となったときにカム作用位置に位置することになる周面部位に、広角の第1カム機能部76aが形成されている。また、同様に、回転軸73の回転角度が225度となったときにカム作用位置に位置することになる周面部位には、狭角の第2カム機能部76cが形成されている。そして、回転軸73の正回転方向で第1カム機能部76aに隣接する周面部位には広角の第1非カム機能部76bが形成されると共に、回転軸73の逆回転方向で第1カム機能部76aに隣接する周面部位には狭角の第2非カム機能部76dが形成されている。
したがって、メンテナンスキャップ63が図3に示す退避位置状態にあって、従動歯車78と駆動歯車82が噛合している場合において、カムモーター80が駆動されると、その駆動力が動力伝達軸77を介して回転軸73に伝達される結果、各カム部材74〜76は回転軸73と共に一体回転することになる。そして、各カム部材74〜76は、回転軸73の回転角度に応じて、第1カム機能部74a,75a,76a、第1非カム機能部74b,75b,76b、第2カム機能部74c,75c,76c、及び第2非カム機能部74d,75d,76dのうち何れか一つの周面部位が回転軸73の真上となる0度の角度位置(すなわち、カム作用位置)に位置することになる。なお、この場合における回転軸73及び各カム部材74〜76の回転角度は、回転軸73の近傍位置に配設されるロータリポテンショメータ等からなる角度センサー95(図9参照)により測定される。
ちなみに、図3、図7A〜図7C及び図8に示す状態(回転軸73の回転角度が初期角度(0度)の状態)を第1角度状態とすると、この第1角度状態では、カム作用位置に、各カム部材74〜76は各々の第1非カム機能部74b,75b,76bが位置する。すなわち、第1角度状態では、何れのカム部材74〜76も可動プレート71a〜71cに押し上げ力を付与可能なカム機能部74a,74c,75a,75c,76a,76cがカム作用位置に位置しない。したがって、第1角度状態では、各可動プレート71a〜71cに支持されている全てのメンテナンス装置群72a〜72cがその上下二位置のうち下側の離間位置に位置することになる。
次に、第1角度状態から回転軸73を正回転方向に45度だけ回転させた第2角度状態では、カム作用位置に、第1カム部材74は第1非カム機能部74bが、第2カム部材75は第1非カム機能部75bが、第3カム部材76は第1カム機能部76aが、それぞれ位置する。そのため、第2角度状態では、カム作用位置に第1カム機能部76aを位置させた第3カム部材76と対応する第3可動プレート71cだけが上方に押し上げられることになる。したがって、第2角度状態では、第3可動プレート71cに支持された第3メンテナンス装置群72cだけが上側の当接位置に位置する一方、第1可動プレート71a及び第2可動プレート71bに支持された第1メンテナンス装置群72a及び第2メンテナンス装置群72bは下側の離間位置に位置することになる。
次に、第2角度状態から回転軸73を正回転方向に45度だけ回転させた第3角度状態では、カム作用位置に、第1カム部材74は第1カム機能部74aが、第2カム部材75は第1非カム機能部75bが、第3カム部材76は第1カム機能部76aが、それぞれ位置する。そのため、第3角度状態では、カム作用位置に第1カム機能部74a,76aを位置させた第1カム部材74及び第3カム部材76と対応する第1可動プレート71a及び第3可動プレート71cが上方に押し上げられることになる。したがって、第3角度状態では、第1可動プレート71a及び第3可動プレート71cに支持された第1メンテナンス装置群72a及び第3メンテナンス装置群72cが上側の当接位置に位置する一方、第2可動プレート71bに支持された第2メンテナンス装置群72bは下側の離間位置に位置することになる。
次に、第3角度状態から回転軸73を正回転方向に45度だけ回転させた第4角度状態では、カム作用位置に、全てのカム部材74〜76の第1カム機能部74a,75a,76aが位置する。そのため、第4角度状態では、全てのカム部材74〜76が対応する各可動プレート71a〜71cを上方に押し上げることになる。したがって、第3角度状態では、各可動プレート71a〜71cに支持された全てのメンテナンス装置群72a〜72cが上側の当接位置に位置することになる。
次に、第4角度状態から回転軸73を正回転方向に45度だけ回転させた第5角度状態では、カム作用位置に、第1カム部材74は第1カム機能部74aが、第2カム部材75は第1カム機能部75aが、第3カム部材76は第2非カム機能部76dが、それぞれ位置する。そのため、第5角度状態では、カム作用位置に第1カム機能部74a,75aを位置させた第1カム部材74及び第2カム部材75と対応する第1可動プレート71a及び第2可動プレート71bが上方に押し上げられることになる。したがって、第5角度状態では、第1可動プレート71a及び第2可動プレート71bに支持された第1メンテナンス装置群72a及び第2メンテナンス装置群72bが上側の当接位置に位置する一方、第3可動プレート71cに支持された第3メンテナンス装置群72cは下側の離間位置に位置することになる。
次に、第5角度状態から回転軸73を正回転方向に45度だけ回転させた第6角度状態では、カム作用位置に、第1カム部材74は第2非カム機能部74dが、第2カム部材75は第1カム機能部75aが、第3カム部材76は第2カム機能部76cが、それぞれ位置する。そのため、第6角度状態では、カム作用位置に第1カム機能部75a及び第2カム機能部76cを位置させた第2カム部材75及び第3カム部材76と対応する第2可動プレート71b及び第3可動プレート71cが上方に押し上げられることになる。したがって、第6角度状態では、第2可動プレート71b及び第3可動プレート71cに支持された第2メンテナンス装置群72b及び第3メンテナンス装置群72cが上側の当接位置に位置する一方、第1可動プレート71aに支持された第1メンテナンス装置群72aは下側の離間位置に位置することになる。
次に、第6角度状態から回転軸73を正回転方向に45度だけ回転させた第7角度状態では、カム作用位置に、第1カム部材74は第2カム機能部74cが、第2カム部材75は第2非カム機能部75dが、第3カム部材76は第1非カム機能部76bが、それぞれ位置する。そのため、第7角度状態では、カム作用位置に第2カム機能部74cを位置させた第1カム部材74と対応する第1可動プレート71aだけが上方に押し上げられることになる。したがって、第7角度状態では、第1可動プレート71aに支持された第1メンテナンス装置群72aが上側の当接位置に位置する一方、第2可動プレート71b及び第3可動プレート71cに支持された第2メンテナンス装置群72b及び第3メンテナンス装置群72cは下側の離間位置に位置することになる。
次に、第7角度状態から回転軸73を正回転方向に45度だけ回転させた第8角度状態では、カム作用位置に、第1カム部材74は第1非カム機能部74bが、第2カム部材75は第2カム機能部75cが、第3カム部材76は第1非カム機能部76bが、それぞれ位置する。そのため、第8角度状態では、カム作用位置に第2カム機能部75cを位置させた第2カム部材75と対応する第2可動プレート71bだけが上方に押し上げられることになる。したがって、第8角度状態では、第2可動プレート71bに支持された第2メンテナンス装置群72bが上側の当接位置に位置する一方、第1可動プレート71a及び第3可動プレート71cに支持された第1メンテナンス装置群72a及び第3メンテナンス装置群72cは下側の離間位置に位置することになる。そして、この第8角度状態から回転軸73を正回転方向に更に45度回転させると、前述した第1角度状態になる。
次に、上記プリンター11の電気的構成について図9に基づき以下説明する。
図9に示すように、このプリンター11における制御部91は、中央処理装置として機能するCPU92を備え、そのCPU92には、ROM93及びRAM94が接続されている。ROM93には、プリンター11の稼働状態を制御するための各種の制御プログラムが記憶されている。また、RAM94には、プリンター11の駆動中にCPU92により適宜書き換えられる各種の情報が記録されるようになっている。
制御部91の入力側には、昇降センサー65及び角度センサー95等が接続されると共に、制御部91の出力側には、加圧ポンプ38、移動モーター57、昇降装置64、カムモーター80、大気開放弁90、及び吸引ポンプ96等の各駆動回路が接続されている。そして、制御部91は、昇降センサー65及び角度センサー95から入力される検出信号に基づき、加圧ポンプ38、移動モーター57、昇降装置64、カムモーター80、大気開放弁90、及び吸引ポンプ96等の各駆動状態を制御するようになっている。
===プリンター11の動作例について===
次に、本実施形態のプリンター11の動作に関して、特にメンテナンス機構30によるメンテナンス動作に着目して以下説明する。
まず、プリンター11の電源がオフされる時には、キャリッジ27が非印刷領域まで移動し、記録ヘッド29がホームポジション(図3、図10〜図14の位置)となる位置で停止する。
そして、その時点で保湿キャップ53が図3に二点鎖線で示す非干渉位置にある場合(例えば、図12〜図14の状態にある場合)には、先ず、昇降装置64の駆動によりメンテナンスキャップ63が、保湿キャップ53が干渉位置へ移動できる(すなわち、保湿キャップ53がメンテナンスキャップ63とヘッドユニット28の間に入り込める)ようになるまで、下降する(本実施の形態においては、図11に示された位置より若干下側の位置まで下降する)。そして、次に、移動モーター57がピニオン56を図3で反時計方向に回転させる方向に駆動制御される。すると、そのピニオン56にラック55を噛合させている帯状板52が非干渉位置から図3に実線で示す干渉位置まで移動する。そのため、その帯状板52に載置状態で支持されている保湿キャップ53も非干渉位置から干渉位置に移動する。
なお、保湿キャップ53が電源オフ時点で既に干渉位置に位置している場合(例えば、図3、図11の状態にある場合)には移動モーター57は駆動されない。
そして次には、昇降装置64の駆動により、メンテナンスキャップ63が図10に示すように底面を基準面83から距離B(距離B>距離A)だけ上方に位置させる待機位置まで上昇させられる。
このことを実現するために、先ず、メンテナンスユニット51では、カム部材74〜76を一体回転可能に軸支する回転軸73の角度状態が第1角度状態以外になっている場合には、メンテナンスキャップ63が図3の退避位置に位置した状態で、その角度状態が第1角度状態となるように回転軸73を回転させるべく、制御部91によりカムモーター80が駆動制御される。
その結果、メンテナンスキャップ63内において各可動プレート71a〜71c上に支持された状態にある全てのメンテナンス装置群72a〜72cが上下二位置のうち下側の離間位置となり、各メンテナンス装置68は各上端(例えばワイパー部材70の上端)がメンテナンスキャップ63の開口部62から上方には突出しない位置状態となる。
そして、その状態において昇降装置64の駆動によりメンテナンスキャップ63が図3の退避位置から図11に示すように底面を基準面83から距離C(距離B>距離C>距離A)だけ上方に位置させるメンテナンス装置保湿位置(以下、「保湿位置」と略称する。また、図11には「保湿位置」と略示)まで上昇させられる。
すると、メンテナンスキャップ63は、その上昇移動に伴い、周壁部66の上端が干渉位置に位置する保湿キャップ53の基板部58の下面に当接し、開口部62が他部材である保湿キャップ53により覆われる。すなわち、保湿キャップ53はメンテナンスキャップ63の蓋部として働き、蓋部である保湿キャップ53がメンテナンスキャップ63に対して相対移動して開口部62を覆う。より具体的には、保湿キャップ53は、メンテナンスキャップ63と対向した状態で、メンテナンスキャップ63に対して下方へ相対移動して(本実施の形態においては、メンテナンスキャップ63の方が上方へ移動する)、開口部62を覆う。
また、保湿キャップ53がメンテナンスキャップ63に対して下方へ相対移動して開口部62を覆った際には、図11に示すように、保湿キャップ53の下面に固定された加湿パッド53aが、メンテナンスキャップ63の内部に収容されたキャップ部材69(具体的には、キャップ部材69のシール部69b)に接触する。そして、接触した加湿パッド53aは、該加湿パッド53aに含浸されている湿潤液で、キャップ部材69(具体的には、キャップ部材69のシール部69b)を加湿する。
なお、本実施の形態においては、保湿キャップ53がメンテナンスキャップ63に対する相対移動を開始してから、開口部62を覆うまでの間に、供給ユニット42に湿潤液を加湿パッド53aへ供給させる供給処理が制御部91により実行される。すなわち、当該間に、制御部91は、供給ユニット42を制御して加湿パッド53aに湿潤液を供給する処理を開始する。つまり、制御部91の制御により加圧ポンプ38が駆動されて湿潤液カートリッジ35から湿潤液供給チューブ37を介して湿潤液が加湿パッド53aに供給される。
また、これに加えて、供給ユニット42に湿潤液をメンテナンスキャップ63へ供給させる供給処理が制御部91により実行される。かかる供給処理は、保湿キャップ53が開口部62を覆った際に、開始される。すなわち、制御部91は、供給ユニット42を制御してメンテナンスキャップ63に湿潤液を供給する処理を、保湿キャップ53が開口部62を覆った際に、開始する。つまり、メンテナンスキャップ63は、大気開放孔89の大気開放弁90が開弁状態とされ、そして、制御部91の制御により加圧ポンプ38が駆動されて湿潤液カートリッジ35から湿潤液供給チューブ37を介して湿潤液がメンテナンスキャップ63内の空間域67に供給される。このとき、加圧ポンプ38の加圧力でメンテナンスキャップ63内の空間域67に加圧供給される湿潤液は、その空間域67内での液面88の高さが閾値液面の高さ以上になると、湿潤液排出路86の排出口87からメンテナンスキャップ63の外部に排出される。そして、メンテナンスキャップ63内の空間域67に対する湿潤液の供給が一通り完了すると、制御部91の制御により大気開放弁90が閉弁状態に切り替えられる。すると、メンテナンス装置68等を収容したメンテナンスキャップ63内の空間域67は内底面上に貯留された湿潤液(メンテナンスキャップ63の内部を湿潤させるための湿潤体に相当)による保湿雰囲気が密閉された空間域67となる。そのため、かかる保湿雰囲気によって、キャップ部材69とワイパー部材70を主体とするメンテナンス装置68及び回転軸73と各カム部材74〜76を主体とする変位部材が機構的に保湿状態を維持される。
そして、図11に示す保湿位置からメンテナンスキャップ63が昇降装置64の駆動により更に上方に上昇させられると、その上昇するメンテナンスキャップ63によって保湿キャップ53が記録ヘッド29のある上方に向けて押し上げられる。なお、このとき保湿キャップ53は基板部58の四隅に形成したガイド孔58aに帯状板52から立設されたガイド棒54が挿通された状態でガイド棒54にガイドされつつ上下移動するため、水平方向での位置ずれを抑制された状態で上昇する。
そして、昇降装置64の駆動によりメンテナンスキャップ63が図10に示す待機位置まで上昇すると、そのメンテナンスキャップ63上に積層状態となっている保湿キャップ53の周壁部59が記録ヘッド29を支持する支持板28aの下面に全ての記録ヘッド29を囲んだ状態となって当接し、開口部60が他部材である支持板28aにより覆われる。その結果、保湿キャップ53は内部の空間域61が密閉された状態となり、その空間域61内に記録ヘッド29が封じ込められた状態となる。したがって、記録ヘッド29は、大気とは遮断された密閉雰囲気中に存在することになるので、電源オフの期間中にノズル32からのインク溶媒の蒸発によりインク粘度が増大したりノズル32から気泡が混入したりすることが抑制される。
その後、プリンター11の電源がオン状態となり、連続紙13に対して印刷を行う場合には、昇降装置64の駆動によりメンテナンスキャップ63が図10の待機位置から図11に示す保湿位置まで下降させられる。すると、そのメンテナンスキャップ63と共に保湿キャップ53も一緒に下降し、それまでは保湿キャップ53内に位置していた記録ヘッド29が保湿キャップ53の開口部60よりも上方空域に位置するようになる。その結果、記録ヘッド29を搭載したキャリッジ27は非印刷領域から印刷領域への移動が可能となる。そして、印刷領域において記録ヘッド29からインクが吐出されることにより連続紙13に対して印刷が実行される。
ところで、そうした印刷の実行途中に記録ヘッド29のノズル32から印刷とは無関係の制御信号に基づきインクを廃インクとして吐出する、所謂フラッシングを行う場合がある。このフラッシングには、所定頁分の印刷が行われる毎に少量の廃インクを吐出する弱フラッシングと、一定期間の経過毎に弱フラッシングよりは量の多い廃インクを吐出する強フラッシングがある。弱フラッシングの場合は、プラテン19の前後両側に設けられた図示略のフラッシングボックスの上方位置まで記録ヘッド29を搭載したキャリッジ27が移動し、そのフラッシングボックス内に記録ヘッド29から廃インクが吐出される。
一方、強フラッシングの場合は、メンテナンスユニット51のメンテナンス装置68が備えるキャップ部材69内に記録ヘッド29から廃インクが吐出される。そのため、この強フラッシングを行う場合は、保湿ユニット50が干渉位置から非干渉位置へと水平方向右側に移動し、メンテナンスユニット51におけるメンテナンスキャップ63の上下移動の経路上から左右方向に離間した位置態様となる。
すなわち、昇降装置64の駆動によりメンテナンスキャップ63が若干下降し、基板部58との当接状態が解除される。そして、移動モーター57が制御部91によりピニオン56が図11において時計方向に回転するように駆動制御され、そのピニオン56にラック55を噛合させた帯状板52が図11の干渉位置から図12に示すように非干渉位置まで水平移動する。その結果、この帯状板52上に載置状態で支持されている保湿キャップ53も帯状板52と共に干渉位置から非干渉位置へと水平移動する。
すると次に、昇降装置64の駆動によりメンテナンスキャップ63が、前記当接状態が解除された位置から図12に示すように底面を基準面83から距離D(距離D>距離B)だけ上方に位置させるフラッシング位置まで、上昇させられる。すると、メンテナンスキャップ63は周壁部66の上端が記録ヘッド29のノズル形成面31の直ぐ下側に位置して各メンテナンス装置68のキャップ部材69が個別対応する記録ヘッド29のノズル形成面31の直下に僅かな距離をおいて位置するようになる。そして、その状態で記録ヘッド29のノズル32から直下のキャップ部材69内に廃インクが吐出される。
なお、この場合も、各カム部材74〜76を一体回転可能に軸支した回転軸73の回転角度は動力伝達軸77のウォーム79と回転軸73のウォームホイールとが噛み合うことにより第1角度状態に維持される。そして、そのようなフラッシングが終了すると、記録ヘッド29を搭載したキャリッジ27は再び非印刷領域から印刷領域に移動し、印刷領域において記録ヘッド29から再び連続紙13に対して印刷のためのインクが吐出される。
次に、各記録ヘッド29のノズル32からインクを強制的に排出させるクリーニングを行う場合には、前述した強フラッシングを行う場合と同様に、まず、保湿ユニット50が非干渉位置に移動させられる。そして、メンテナンスユニット51では、メンテナンスキャップ63が昇降装置64の駆動により図3に示す退避位置まで下降させられ、動力伝達軸77に軸支された従動歯車78とカムモーター80の出力軸81に軸支された駆動歯車82とが噛合される。そして、制御部91が、クリーニングを実施したい記録ヘッド29とその時点での角度センサー95の検出信号に基づきカムモーター80を駆動制御する。
例えば、全ての記録ヘッド29においてクリーニングを実行させる場合は、第1〜第3の全てのカム部材74〜76が第1カム機能部74a,75a,76aをカム作用位置に位置させ得る回転角度(この場合135度)である第4角度状態になるようにカムモーター80の回転方向及び回転量が制御される。
すなわち、回転軸73の回転角度が45度間隔で第1角度状態から第8角度状態まで多段階に切り替え制御されることにより、各記録ヘッド29と個別に対応するキャップ部材69がカム部材74と回転軸73とからなる変位部材の変位動作に基づき個別に昇降移動される(個別移動工程)。そして、そのような個別の昇降移動制御によって、メンテナンス装置68による記録ヘッド29の選択クリーニングが可能とされる。
そして、回転軸73の回転に伴ってカム作用位置にカム機能部が位置することになったカム部材74〜76と対応する可動プレート71a〜71c上に支持されたメンテナンス装置群72a〜72cが、例えば図12に示す下側の離間位置から図13に示す上側の当接位置に可動プレート71a〜71cと共に上昇する。
そして次に、昇降装置64の駆動によりメンテナンスキャップ63が最下方の退避位置から図13に示すように底面を基準面83から距離E(距離E>距離D)だけ上方に位置させる最上方のメンテナンス位置まで上昇させられる。すると、メンテナンスユニット51では、カム機能部がカム作用位置に位置するカム部材74〜76によって上方へ押し上げられた可動プレート71a〜71c上のメンテナンス装置68のキャップ部材69が、キャップ部材69をヘッドユニット28に当接させるための開口部62を介して、対応するヘッドユニット28(記録ヘッド29)のノズル形成面31に対して当該ノズル形成面31に形成された全ノズル列33を囲繞するように当接する。
なお、この場合は、カム部材74〜76のカム機能部と非カム機能部との回転中心からの距離差に応じた小さな昇降ストロークでの個別昇降とは異なり、全てのメンテナンス装置68を内部の空間域67に収容したメンテナンスキャップ63と共にメンテナンス位置と退避位置との高低差(距離E−距離A)に相当する昇降ストロークで一斉に昇降移動させる(一斉移動工程)。そして、図13に示す状態において吸引ポンプ96が制御部91により駆動制御されると、記録ヘッド29のノズル形成面31に当接したキャップ部材69内が負圧になり、その記録ヘッド29のノズル32から廃インクが強制的に吸引排出される。
そして次に、そのようにクリーニングが終了した記録ヘッド29のノズル形成面31を払拭清掃するワイピング時には、メンテナンスキャップ63が昇降装置64の駆動により図14に示すように底面を基準面83から距離F(距離E>距離F≒距離D)だけ上方に位置させるワイピング位置まで下降させられる。そして、その状態において、記録ヘッド29を搭載したキャリッジ27が左右方向(図14の場合は左方向)に移動すると、その記録ヘッド29のノズル形成面31に各メンテナンス装置68のワイパー部材70が上端側を撓ませつつ摺接する。そして、その摺接作用により記録ヘッド29のノズル形成面31からインクが払拭される。
===本実施の形態に係るプリンター11の有効性について===
上述したとおり、本実施の形態に係る画像記録装置1は、インクを連続紙13に吐出するヘッドユニット28と、該ヘッドユニット28に対して離当接可能であり、ヘッドユニット28に当接して該ヘッドユニット28をキャップするキャップ部材69と、キャップ部材69をヘッドユニット28に当接させるための開口部62を有し、キャップ部材69を内部に収容するメンテナンスキャップ63であって、該メンテナンスキャップ63の内部を湿潤させるための湿潤体(湿潤液)をさらに備えるメンテナンスキャップ63と、キャップ部材69がヘッドユニット28から離間しているときに、メンテナンスキャップ63に対して相対移動して、開口部62を覆う保湿キャップ53と、を備えている。そして、当該画像記録装置1は、さらに、保湿キャップ53に取り付けられ、かつ、保湿キャップ53がメンテナンスキャップ63に対して相対移動して開口部62を覆った際に、キャップ部材69に接触して該キャップ部材69を加湿する加湿パッド53aを有している。そして、このことにより、キャップ部材69に付着したインクが固化することを抑制することが可能となる。
すなわち、比較例に係る画像記録装置は、本実施の形態に係る画像記録装置1と同様、インクを連続紙に吐出するヘッドユニットと、該ヘッドユニットに対して離当接可能であり、ヘッドユニットに当接して該ヘッドユニットをキャップするキャップ部材と、キャップ部材をヘッドユニットに当接させるための開口部を有し、キャップ部材を内部に収容するメンテナンスキャップであって、該メンテナンスキャップの内部を湿潤させるための湿潤体(湿潤液)をさらに備えるメンテナンスキャップと、キャップ部材がヘッドユニットから離間しているときに、メンテナンスキャップに対して相対移動して、開口部を覆う保湿キャップと、を備えていた。そして、保湿キャップが、メンテナンスキャップの開口部を覆うことにより、メンテナンスキャップ内のキャップ部材を保湿状態とさせるべくメンテナンスキャップの内部に保湿雰囲気を作り出していた。
しかしながら、比較例に係る画像記録装置においては、キャップ部材が乾燥することにより、キャップ部材に付着したインクが固まって残留してしまう事象が発生する場合があった。
本発明者等は、鋭意検討を行った結果、当該問題が、保湿キャップが開口部を覆ってからすぐにはメンテナンスキャップの内部に適切な保湿雰囲気が作り出されないこと(保湿キャップが開口部を覆ってから適切な保湿雰囲気が作り出されるまでに一定の時間がかかること)に起因していることを見出した。すなわち、保湿キャップが開口部を覆ってからすぐには適切な保湿雰囲気が作り出されないために、適切な保湿雰囲気が作り出されていない時期(つまり、開口部が覆われた直後等)にキャップ部材に付着したインクが固化してしまうことを見出した。
そこで、本実施の形態においては、保湿キャップ53に取り付けられ、かつ、保湿キャップ53がメンテナンスキャップ63に対して相対移動して開口部62を覆った際に、キャップ部材69に接触して該キャップ部材69を加湿する加湿パッド53aを画像記録装置1に設けることとした。したがって、保湿キャップ53が開口部62を覆ったときに、加湿パッド53aがキャップ部材69に接触して当該キャップ部材69を加湿し始めることとなる。そのため、メンテナンスキャップ63の内部に適切な保湿雰囲気が作り出されていない前述した時期(開口部62が覆われた直後等の時期)においても、キャップ部材69については加湿が確実になされることとなるため、キャップ部材69に付着したインクが固化することを抑制することが可能となる。
また、本実施の形態に係る加湿パッド53aは、キャップ部材69の、ヘッドユニット28に当接するシール部69bを、加湿することとした。そのため、メンテナンスキャップ63の内部に適切な保湿雰囲気が作り出されていない前述した時期(開口部62が覆われた直後等の時期)においても、シール部69bについて加湿が確実になされることとなり、シール部69bに付着したインクが固化することが抑制される。したがって、シール部69bにおけるインクの当該固化によりキャップ部材69内が密閉された空間にならず、吸引ポンプ96によるクリーニングが適切に行われない問題を、避けることが可能となる。
また、本実施の形態において、保湿キャップ53は、メンテナンスキャップ63と対向した状態で、メンテナンスキャップ63に対して下方へ相対移動して、開口部62を覆い、加湿パッド53aは、保湿キャップ53の下面に固定されている弾性材であることとした。
そのため、保湿キャップ53が開口部62を覆ったタイミングで加湿パッド53aをキャップ部材69に接触させるための特別な機構を設ける必要がなく(加湿パッド53aを単に保湿キャップ53に固定しておけばよい)、そのため、簡易な構成でキャップ部材69に付着したインクが固化することを抑制することが可能となる。
===その他の実施の形態===
上記の実施の形態は、主として液体吐出装置について記載されているが、加湿方法等の開示も含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
上記実施の形態においては、液体吐出装置(液体噴射装置)をインクジェット式プリンターに具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置を採用してもよく、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうち何れか一種の噴射装置に本発明を適用することができる。
また、上記実施の形態においては、媒体として連続紙13を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、カット紙、フィルム、布であってもよい。
また、上記実施の形態においては、ヘッドユニット28が複数(15個)の記録ヘッド29を有していることとしたが、これに限定されるものではない。例えば、ヘッドユニット28が、一つの記録ヘッド29からなることとしてもよい。
また、上記実施の形態においては、メンテナンスキャップ63の内部を湿潤させるための湿潤体として湿潤液を例に挙げて説明したが、湿潤させる機能を備えるものであればこれに限定されるものではない、例えば、メンテナンスキャップ63内に取り付けられた固体の湿潤体であってもよい。
また、上記実施の形態においては、画像記録装置1が、加湿パッド53aに湿潤液を供給する供給ユニット42を備えることとした。すなわち、湿潤液が加湿パッド53aに送られることとしたが、これに限定されるものではない。
例えば、加湿パッド53aに湿潤液を送るユニットは備えられておらず、湿っていた加湿パッド53aが乾いた際には、加湿パッド53aを交換するようにしてもよい。
ただし、メンテナンスが簡易なものとなる点で、上記実施の形態の方がより望ましい。
また、上記実施の形態において、供給ユニット42を制御する制御部91は、保湿キャップ53が、メンテナンスキャップ63に対する相対移動を開始してから、開口部62を覆うまでの間に、供給ユニット42に湿潤液を供給させる供給処理を実行することとしたが、これに限定されるものではない。例えば、当該供給処理の実行タイミングは、プリンター11の電源がONされたときでもよい。
ただし、保湿キャップ53が開口部62を覆って加湿パッド53aがキャップ部材69に接触する直前に、加湿パッド53aを湿らせることができるため、加湿パッド53aの加湿機能をより適切に発揮させることが可能となる点で、上記実施の形態の方がより望ましい。
また、上記実施形態においては、加湿パッド53aに供給される加湿液として湿潤液を例に挙げて説明した。つまり、メンテナンスキャップ63の内部を湿潤させるための湿潤液を、加湿液に流用することとした。しかしながら、これに限定されるものではなく、加湿液は、メンテナンスキャップ63の内部を湿潤させるための湿潤液とは別の液体であってもよい。但し、メンテナンスキャップ63の内部を湿潤させるための湿潤液を供給する供給ユニット42を加湿液の供給に流用できる点で、上記実施の形態の方がより望ましい。