しかし、特許文献1に開示されている従来の技術は、車両の位置の誤差を小さくすべく位置情報を補正するために、光ビーコンなどの路側のインフラを必要とする。光ビーコンや画像センサ等の路側のインフラも徐々に整備されつつあるが、多くの道路では、設置されていないのが現状である。このため、検出した車両の位置情報にどの程度の誤差が含まれているかがわからず、検出した位置情報を使用することができるか否かの判断が困難であった。また、一方で、光ビーコンなどを必要としない簡便な構成でも、車両の位置情報を精度よく検出することが望まれていた。
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、簡便な構成で車両の位置の誤差の有無を判定することができる誤差判定装置、該誤差判定装置を実現するコンピュータプログラム及び誤差判定方法を提供することを目的とする。
第1発明に係る誤差判定装置は、車両が走行して得られた位置情報に含まれる誤差を判定する誤差判定装置において、所定周期で車両の位置が時刻とともに特定された車両情報を取得する車両情報取得手段と、前記車両が通過した交差点に設けられた信号機の灯色の切り替わり時点を含む信号情報を取得する信号情報取得手段と、前記交差点の停止線の位置情報を記憶する記憶手段と、取得した車両情報及び信号情報並びに前記停止線の位置情報に基づいて、前記車両が前記信号機の赤信号の開始時点までに前記停止線を通過可能か否かを判定する第1判定手段と、前記交差点の全赤信号が終了した時点から所要の短時間経過までの間の前記車両の速度に基づいて、該車両が前記赤信号の開始時点までに前記停止線を通過したか否かを判定する第2判定手段と、前記第1判定手段及び第2判定手段の判定結果に基づいて、前記車両の位置の誤差の有無を判定する誤差判定手段とを備えることを特徴とする。
第2発明に係る誤差判定装置は、第1発明において、前記誤差判定手段は、前記第1判定手段及び第2判定手段の判定結果が異なる場合、前記車両の位置に誤差があると判定するように構成してあることを特徴とする。
第3発明に係る誤差判定装置は、第1発明又は第2発明において、前記車両情報取得手段で取得した車両の位置に所定の偏差を付加する付加手段と、該付加手段で偏差を付加した場合と付加しない場合とで、前記第1判定手段での判定結果が異なる車両を抽出する抽出手段とを備え、前記第1判定手段は、前記抽出手段で抽出した車両に対して前記停止線を通過できたか否かを判定するようにしてあり、前記第2判定手段は、前記抽出手段で抽出した車両に対して前記停止線を通過したか否かを判定するように構成してあることを特徴とする。
第4発明に係る誤差判定装置は、第1発明乃至第3発明のいずれか1つにおいて、前記誤差判定手段で車両の位置に誤差があると判定した場合、前記車両の位置情報を特定する特定手段を備えることを特徴とする。
第5発明に係る誤差判定装置は、第4発明において、前記特定手段は、前記誤差判定手段で車両の位置に誤差があると判定するまでの位置情報を特定するように構成してあることを特徴とする。
第6発明に係る誤差判定装置は、第1発明乃至第5発明のいずれか1つにおいて、前記第1判定手段で通過できなかったと判定し、前記第2判定手段で通過したと判定した車両の前記赤信号開始時点での位置と前記停止線の位置との偏差を該車両の位置の誤差として推定する誤差推定手段を備えることを特徴とする。
第7発明に係る誤差判定装置は、第1発明乃至第5発明のいずれか1つにおいて、前記第1判定手段で通過できたと判定し、前記第2判定手段で通過しなかったと判定した車両の前記赤信号が終了した時点から該車両の位置が変化するまでの時間に基づいて、該車両の停止位置を特定する停止位置特定手段と、該停止位置特定手段で特定した停止位置と前記停止線の位置との偏差を該車両の位置の誤差として推定する誤差推定手段を備えることを特徴とする。
第8発明に係る誤差判定装置は、第6発明又は第7発明において、前記誤差推定手段で推定した誤差に基づいて、車両の位置を補正する補正手段を備えることを特徴とする。
第9発明に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、複数の車両が走行して得られた位置情報に含まれる誤差を判定させるためのコンピュータプログラムにおいて、コンピュータを、所定周期で車両の位置が時刻とともに特定された車両情報、前記車両が通過した交差点に設けられた信号機の灯色の切り替わり時点を含む信号情報、及び前記交差点の停止線の位置情報に基づいて、前記車両が前記信号機の赤信号の開始時点までに前記停止線を通過可能か否かを判定する第1判定手段と、前記交差点の全赤信号が終了した時点から所要の短時間経過までの間の前記車両の速度に基づいて、該車両が前記赤信号の開始時点までに前記停止線を通過したか否かを判定する第2判定手段と、前記第1判定手段及び第2判定手段の判定結果に基づいて、前記車両の位置の誤差の有無を判定する誤差判定手段として機能させることを特徴とする。
第10発明に係る誤差判定方法は、複数の車両が走行して得られた位置情報に含まれる誤差を判定する誤差判定装置による誤差判定方法において、交差点の停止線の位置情報を記憶手段に記憶しておき、所定周期で車両の位置が時刻とともに特定された車両情報を車両情報取得手段が取得するステップと、前記車両が通過した前記交差点に設けられた信号機の灯色の切り替わり時点を含む信号情報を信号情報取得手段が取得するステップと、取得された車両情報及び信号情報並びに前記停止線の位置情報に基づいて、前記車両が前記信号機の赤信号の開始時点までに前記停止線を通過可能か否かを第1判定手段が判定するステップと、前記交差点の全赤信号が終了した時点から所要の短時間経過までの間の前記車両の速度に基づいて、該車両が前記赤信号の開始時点までに前記停止線を通過したか否かを第2判定手段が判定するステップと、前記判定するステップそれぞれでの判定結果に基づいて、前記車両の位置の誤差の有無を誤差判定手段が判定するステップとを含むことを特徴とする。
第1発明、第9発明及び第10発明にあっては、車両情報取得手段は、車両の位置が時刻とともに特定された車両情報を取得する。車両情報は、例えば、車車間通信で送受信されている車両情報を受信することにより、プローブ情報(「フローティングカーデータ」とも称する)を取得する。プローブ情報は、例えば、所定の周期(例えば、0.1秒〜1.0秒程度の範囲)での車両の位置、当該位置を通過する時刻、車両の方位情報、車両を識別する識別番号などの情報を含む。信号情報取得手段は、車両が通過した交差点に設けられた信号機の灯色の切り替わり時点を含む信号情報を取得する。信号情報は、例えば、時系列に信号機の灯色の切り替え時刻、各灯色の表示時間などの情報を含む。また、車両が通過した交差点の停止線の位置情報を記憶しておく。なお、停止線の位置情報を外部装置から取得してもよい。上述の各情報を取得することにより、各車両が交差点へ向かって走行し、さらに交差点を通過して走行した際の時間経過とともに、車両の位置(停止線までの距離)、速度、方位情報(方位変化)、その時点での信号機の灯色などの過去の情報を時系列に得ることができる。なお、車両の速度は、車両の位置と当該位置での時刻とに基づいて求めることができる。
第1判定手段は、取得した車両情報及び信号情報並びに停止線の位置情報に基づいて、車両が信号機の赤信号の開始時点までに停止線を通過できたか否かを判定する。第1判定手段は、車両が交差点の停止線へ向かって走行した時点(より具体的には、例えば、信号機の黄信号開始時点)で当該車両が赤信号の開始時点(黄信号の終了時点)までに停止線を通過する位置に到達できたか否かを判定する。第1判定手段による停止線を通過できたか否かの判定(通過可否判定)は、以下のようにして行うことができる。すなわち、車両が赤信号の開始時点(黄信号の終了時点)で停止線に進入し、信号待ちに会わない進入条件は、V×Ty=Xで求めることができる。ここで、Vは車両の速度、Tyは黄信号時間、Xは黄信号開始時点での車両の位置(停止線と車両との距離)を表す。すなわち、進入条件は、車両が走行中に黄信号になった場合、その黄信号時間内(赤信号になる前)に停止線まで到達することができる車両の速度と停止線までの距離の限界を示す直線である。
第2判定手段は、赤信号が終了した時点から所定時間経過までの間の車両の速度に基づいて、当該車両が赤信号の開始時点までに停止線を通過したか否かを判定する。第2判定手段は、実際に停止線で停止することなく停止線を通過したのか、あるいは実際に停止線で停止したのかを判定する。所定時間は、例えば、0〜5秒程度とすることができる。所定時間が0秒の場合は、第2判定手段による判定時点は全赤終了時点であり、また、所定時間が3秒の場合には、第2判定手段による判定時点は全赤終了時点から3秒経過の時点である。第2判定手段による停止線を通過したか否かの判定(通過停止判定)は、以下のようにして行うことができる。すなわち、車両の速度が第1速度閾値Vth1より大きい場合は、車両が停止線で停止することなく通過したと判定する。また、車両の速度が第3速度閾値Vth3(<Vth1)より小さい場合は、車両が停止線で停止したと判定する。また、交差点で車両が右折又は左折する場合もあるので、車両の方位情報を車両情報に含めた状態で取得することにより、例えば、車両の速度が第2速度閾値Vth2(<Vth1、かつ>Vth3)〜第1速度閾値Vth1の範囲であって、方位が変化した場合には、車両が停止線で停止することなく通過したと判定する。なお、通過停止の判定は上述の条件に限定されるものではない。
誤差判定手段は、第1判定手段及び第2判定手段の判定結果に基づいて、車両の位置の誤差の有無を判定する。例えば、第1判定手段及び第2判定手段それぞれの判定結果が異なる場合、車両の位置に誤差があると判定する。なお、車両の位置に誤差があるとは、許容範囲を超えた誤差があることを示し、許容範囲内の誤差は誤差がないと判定することができる。また、車両の位置に誤差がないとは、誤差がない場合だけでなく、許容範囲内の誤差であれば誤差なしと判定することができる。上述のように、交差点の信号情報及び車両の車両情報を使用し、光ビーコン又は画像センサなどの路側のインフラ装置を必要としないので簡便な構成で車両の位置の誤差の有無を判定することができる。また、交差点に設置された信号情報を用いることにより、従来であれば位置補正に用いられるマップマッチングを行う必要がないので、マップマッチングに必要な詳細な道路地図情報が不要となり、地図データを具備していなくても車両が交差点を直進して通過した場合、当該車両の位置の誤差を低減することができる。
第2発明にあっては、誤差判定手段は、第1判定手段及び第2判定手段の判定結果が異なる場合、車両の位置に誤差があると判定する。例えば、第1判定手段で車両が停止線を通過することができたと判定した場合に、第2判定手段で車両が実際に停止線で停止したときは、車両の位置に誤差があると判定する。また、第1判定手段で車両が停止線を通過することができなかったと判定した場合に、第2判定手段で車両が実際に停止線で停止したときは、車両の位置に誤差があると判定する。
車両の位置に誤差がない場合(許容範囲内の誤差がある場合も含む)には、第1判定手段による判定精度(通過可否の予測)が高くなるので、第2判定手段による判定結果(通過停止判定)と異なる可能性は非常に小さくなる。しかし、車両の位置に誤差がある場合(許容範囲を超える誤差がある場合)には、第1判定手段による判定精度(通過可否の予測)が低くなるので、第2判定手段による判定結果(通過停止判定)と異なる可能性は大きくなる。そこで、第1判定手段及び第2判定手段の判定結果が異なる場合、車両の位置に誤差があると判定することにより、簡便な構成で車両の位置の誤差が許容できるものであるか否かを判定することが可能となる。
第3発明にあっては、付加手段で車両の位置に所定の偏差を付加し、抽出手段は、偏差を付加した場合と付加しない場合とで、第1判定手段での判定結果が異なる車両を抽出する。例えば、車両情報取得手段で取得した車両の位置をXとする。車両の位置Xは、例えば、黄信号開始時点での位置(停止線と車両との距離)である。そして、偏差をΔXとすると、車両の位置をXとした場合と、車両の位置をX+ΔX、あるいはX-ΔXとした場合とで、第1判定手段での判定結果が異なる車両を抽出する。
車両の位置に所定の偏差を付加した場合と、付加しない場合とで判定結果が異なる車両だけを抽出することにより、車両の位置がXである場合に、停止線を通過することができたか否かがよくわからない車両だけを抽出することができる。逆に、停止線を通過することが明らかな車両、及び停止線で停止することが明らかな車両を除外することができるので、車両情報に含まれるすべての車両について処理する必要がなく、第1判定手段と第2判定手段とで判定結果が異なると予想される車両(すなわち、車両の位置情報に許容範囲を超える誤差が含まれる車両)だけを用いて誤差判定の処理を行うことができるため、処理軽減を図ることができる。
第4発明にあっては、特定手段は、車両の位置に誤差があると判定した場合、当該車両の位置情報を特定する。すなわち、複数の車両それぞれについて誤差の有無を判定した場合に、誤差があると判定された車両の位置情報を特定しておく。そして、車両の位置情報を用いて算出するような交通指標の統計値(例えば、旅行時間)など求める際には、特定した位置情報(すなわち、誤差がある位置情報)を使用しないこと(重み付けを0にする)、あるいは誤差がない位置情報に比べて小さい重み付けをすることにより、交通指標の精度を低下させることを防止することができる。
第5発明にあっては、特定手段は、車両の位置に誤差があると判定するまでの位置情報を特定する。車両の位置に誤差があると判定した地点以降の位置情報は、位置を補正して誤差を許容範囲内にすることができるので、誤差があると判定した地点までの車両の位置情報を特定しておく。そして、車両の位置情報を用いて算出するような交通指標の統計値(例えば、旅行時間)など求める際には、誤差があると判定した地点までの位置情報(すなわち、誤差がある位置情報)を使用しないこと(重み付けを0にする)、あるいは誤差がない位置情報に比べて小さい重み付けをすることにより、交通指標の精度を低下させることを防止することができる。
第6発明にあっては、誤差推定手段は、第1判定手段で停止線を通過できなかったと判定し、第2判定手段で停止線を通過したと判定した車両の赤信号開始時点での位置と停止線の位置との偏差を当該車両の位置の誤差として推定する。すなわち、実際には停止線を通過したのに、赤信号開始時点で停止線を通過できないと判定した場合には、少なくとも赤信号開始時点での車両の位置と停止線の位置との間の偏差だけ誤差が含まれている。そこで、車両の位置の誤差は、車両の赤信号開始時点での位置と停止線の位置との偏差であると推定することができる。これにより、車両の位置に誤差があると判定した場合に、当該誤差がどの程度のものであるかを推定することができる。
第7発明にあっては、停止位置特定手段は、第1判定手段で停止線を通過できたと判定し、第2判定手段で停止線を通過しなかったと判定した車両の赤信号が終了した時点から当該車両の位置が変化するまでの時間に基づいて、当該車両の停止位置を特定する。赤信号により停止線で停止する車両は複数台存在するので、当該車両が停止車両の先頭車両から何番目の車両に応じて、当該車両の停止位置(停止線と車両の停止位置との距離)は異なる。通常、赤信号が終了し青信号が開始されると、停止車両の先頭車両から後続の車両へと順次動き始めるので、赤信号が終了した時点から車両の位置が変化する(動き始める)までの時間に基づいて、当該車両の停止位置を特定することができる。
誤差推定手段は、特定した停止位置と停止線の位置との偏差を当該車両の位置の誤差として推定する。すなわち、実際には停止線の手前で停止したのに、赤信号開始時点で停止線を通過できたと判定した場合には、少なくとも停止位置と停止線の位置との間の偏差だけ誤差が含まれている。そこで、車両の位置の誤差は、車両の停止位置と停止線の位置との偏差であると推定することができる。これにより、車両の位置に誤差があると判定した場合に、当該誤差がどの程度のものであるかを推定することができる。
第8発明にあっては、補正手段は、推定した誤差に基づいて、車両の位置を補正する。これにより、車両の位置情報を精度よく求める(補正する)ことができる。
本発明によれば、簡便な構成で車両の位置の誤差の有無を判定することができる。
以下、本発明を実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本実施の形態の誤差判定装置100の構成の一例を示すブロック図であり、図2は本実施の形態の誤差判定装置100による誤差判定を行う交差点を含む道路の一例を示す模式図である。図1に示すように、誤差判定装置100は、装置全体を制御する制御部10、車両情報取得部11、信号情報取得部12、記憶部13、通過可否判定部14、通過停止判定部15、誤差判定部16、位置偏差付加部17、特定車両抽出部18、位置情報特定部19、誤差推定部20、停止位置特定部21、車両位置補正部22などを備える。
本実施の形態の誤差判定装置100は、高度交通システム(ITS:Intelligent Transport Systems)の無線技術(ITS無線)を用いたシステムなどにおいて用いられ、図2に示すように、例えば、交差点に向かって走行する車両から、ITS無線により得られる車両情報を取得又は収集する。また、信号制御が行われる交差点(例えば、車車間通信の情報を取得することができる交差点)において、信号機の信号情報を取得することにより、当該交差点を走行した車両の位置(位置情報)に含まれる誤差がどの程度であるか(許容することができる程度であるか否か)を判定するとともに、誤差が含まれる場合には、その誤差の程度も推定するものである。誤差判定装置100は、例えば、交通管制センタなどの中央に設置されるが、車載用として構成してもよい。
誤差判定装置100は、交差点に向かって走行する車両が停止線で通過できたか否かを判定し(第1の判定、通過可否判定)、さらに実際に停止線で停止せずに通過したか停止線で停止したかを判定(第2の判定、通過停止判定)し、両方の判定が異なる場合に、許容範囲を超える誤差が車両の位置に含まれると判定するものである。
車両情報取得部11は、車両情報取得手段としての機能を有する。車両情報取得部11は、車両の位置及び速度が時刻とともに特定された車両情報を取得する。車両情報は、例えば、車車間通信で送受信されている車両情報を受信することにより、プローブ情報(「フローティングカーデータ」とも称する)を取得する。プローブ情報は、例えば、所定の周期(例えば、0.1秒〜1.0秒程度の範囲)での車両の位置、当該位置を通過する時刻、車両の方位情報、車両を識別する識別番号などの情報を含む。
信号情報取得部12は、信号情報取得手段としての機能を有し、車両が通過した交差点に設けられた信号機の灯色の切り替わり時点を含む信号情報を取得する。信号情報は、例えば、時系列に信号機の灯色の切り替え時刻、各灯色の表示時間などの情報を含む。
記憶部13は、車両情報取得部11で取得した車両情報、及び信号情報取得部12で取得した信号情報を記憶する。また、記憶部13は、車両が通過した交差点の停止線の位置情報を記憶してある。すなわち、停止線の位置情報は、外部装置(不図示)から入力して記憶部13に記憶することができる。なお、停止線の位置情報を記憶部13に記憶することなく、誤差判定処理の都度取得するようにしてもよい。また、記憶部13に、各車両の位置(停止線までの距離)、速度、方位情報(方位変化)、その時点での信号機の灯色などの過去の情報を記憶(蓄積)できるようにしてもよい。
誤差判定装置100は、上述の車両情報、信号情報を取得して収集することにより、複数の車両が交差点へ向かって走行し、さらに交差点を通過して走行した際の時間経過とともに、各車両の位置(停止線までの距離)、速度、方位情報(方位変化)、その時点での信号機の灯色などの過去の情報を時系列に得ることができる。
通過可否判定部14は、第1判定手段としての機能を有する。通過可否判定部14は、取得した車両情報及び信号情報並びに記憶した停止線の位置情報に基づいて、車両が信号機の赤信号の開始時点までに停止線を通過できたか否かを判定する。なお、車両が信号機の赤信号の開始時点までに停止線を通過できたか否かを判定する構成に代えて、車両が信号機の赤信号終了までに交差点(例えば、交差点の流出道路の入り口)を通過できたか否かを判定してもよく、あるいは車両が黄信号開始までに交差点(例えば、停止線)を通過できたかを判定してもよい。通過可否判定部14は、車両が交差点の停止線へ向かって走行した時点(より具体的には、例えば、信号機の黄信号開始時点)で当該車両が赤信号の開始時点(黄信号の終了時点)までに停止線を通過する位置に到達できたか否かを判定する。以下、通過可否判定の方法について説明する。
図3は本実施の形態の誤差判定装置100による通過可否の判定方法の一例を示す説明図である。図中、横軸は交差点を基準とした車両の位置(停止線から車両までの距離)を示し、縦軸は車両の速度を示す。なお、交差点の位置は、厳密には交差点の流出道路の入り口の位置である。図中の直線は、進入条件Lを示す。進入条件Lとは、車両が赤信号終了までに交差点を通過できる条件である。ここで、交差点とは、交差点の流出道路の入り口である。
進入条件Lは、V×Tr=Xで求めることができる。ここで、Vは車両の速度、Trは黄信号開始時点から赤信号終了までの時間、Xは黄信号開始時点での車両の位置(交差点の流出道路の入り口と車両との距離)を表す。すなわち、進入条件Lは、車両が走行中に黄信号になった場合、赤信号終了までに交差点の流出道路の入り口まで到達することができる車両の速度Vと交差点の流出道路の入り口までの距離Xの限界を示す直線である。
例えば、図中点Aで示す車両(速度がV1であり、黄信号開始時の位置がXa)は、赤信号が終了するまでに交差点を通過(進入)することができ、図中点Bで示す車両(速度がV1であり、黄信号開始時の位置がXb)は、赤信号が終了するまでに交差点を通過(進入)することができない。なお、図3の例において、進入条件Lを黄信号開始又は赤信号の開始(黄信号の終了)までに交差点を通過できる条件とすることもできる。この場合、交差点の位置は交差点手前の停止線の位置である。なお、以下では、進入条件を車両が赤信号の開始までに交差点(停止線の位置)を通過できる条件として説明する。
なお、取得(収集)した車両情報に基づいて、対象とする交差点を走行した全車両について位置の誤差を判定することもできるが、予め位置の誤差が相当程度の(例えば、許容範囲を超えている可能性が高い)車両を抽出し、抽出した車両についてだけ誤差の有無を判定することもできる。以下、車両の抽出方法について説明する。
位置偏差付加部17は、付加手段としての機能を有し、車両の位置(停止線との距離)Xに所定の偏差ΔXを付加する。偏差ΔXが付加された車両の位置は、X+ΔX、X−ΔXとなる。所定の偏差ΔXは、例えば、50mとすることができるが、これに限定されるものではない。例えば、感応制御を行っている交差点では、最大延長のタイミングまでに停止線を通過できる車両を抽出してもよい。なお、所定の偏差は、車両の位置Xに対して車両の進行方向に付加することができ、例えば、車両がカーブを走行している場合には、道路の方向に沿って付加すればよい。
また、特定車両抽出部18は、抽出手段としての機能を有し、車両の位置Xに偏差ΔXを付加した場合と、偏差ΔXを付加しない場合とで、通過可否判定部14での判定結果が異なる車両を抽出する。なお、位置偏差付加部17及び特定車両抽出部18は、必須の構成ではない。
図4は本実施の形態の誤差判定装置100による車両の抽出方法の一例を示す説明図である。図4は図3と同様のものであり、図中の直線は進入条件を表す。また、丸印は車両の位置を示し、車両の位置は黄信号開始時点での位置(停止線と車両との距離)である。横方向の線分は位置の偏差を示す。そして、偏差をΔXとすると、車両の位置をXとした場合と、車両の位置をX+ΔX、あるいはX-ΔXとした場合とで、通過可否判定部14での判定結果が異なる車両を抽出する。
図4の例では、車両C11、C14は、偏差を付加する前と付加した後で、いずれも停止線を通過することができ、判定結果が同じであるので抽出しない。また、車両C12、C13は、偏差を付加する前と付加した後で判定結果が異なるので抽出する。
車両の位置に所定の偏差を付加した場合と、付加しない場合とで判定結果が異なる車両だけを抽出することにより、車両の位置がXである場合に、停止線を通過することができたか否かがよくわからない車両だけを抽出することができる。逆に、停止線を通過することが明らかな車両、及び停止線で停止することが明らかな車両を除外することができるので、車両情報に含まれるすべての車両について処理する必要がなく、通過可否判定部14及び通過停止判定部15で判定結果が異なると予想される車両(すなわち、車両の位置情報に許容範囲を超える誤差が含まれる車両)だけを用いて誤差判定の処理を行うことができるため、処理軽減を図ることができる。
通過停止判定部15は、第2判定手段としての機能を有する。通過停止判定部15は、赤信号が終了した時点から所定時間経過までの間の車両の速度に基づいて、当該車両が赤信号の開始時点までに停止線を通過したか否かを判定する(通過停止判定)。以下、通過停止判定の方法について説明する。
図5は交差点付近での車両の走行状態の一例を示す模式図であり、図6は本実施の形態の誤差判定装置100による通過停止判定の一例を示す説明図である。図5中、車両C1は交差点の停止線で停止することなく停止線を通過し、交差点の流出路(直進方向)へ走行した車両を示す。また、車両C2は交差点の停止線で停止することなく停止線を通過し、交差点で右折して流出路(右折方向)へ走行した車両を示す。また、車両C3は交差点の停止線で停止した車両を示す。
通過停止判定部15は、車両が実際に停止線で停止することなく停止線を通過したのか、あるいは実際に停止線で停止したのかを判定する。所定時間は、例えば、0〜5秒程度とすることができる。所定時間が0秒の場合は、通過停止判定部15による判定時点は全赤終了時点であり、また、所定時間が3秒の場合には、通過停止判定部15による判定時点は全赤終了時点から3秒経過の時点である。
そして、通過停止判定部15による停止線を通過したか否かの判定(通過停止判定)は、以下のようにして行うことができる。すなわち、図6に示すように、例えば、全赤終了時点(所定時間が0秒)で、車両の速度が第1速度閾値Vth1(例えば、30〜40km/h)より大きい場合は、車両は停止線で停止することなく通過したと判定する。図5で例示した車両C1が相当する。
また、全赤終了時点で、車両の速度が第3速度閾値Vth3(<Vth1、例えば、5〜10km/h)より小さい場合は、車両が停止線で停止したと判定する。図5で例示した車両C3が相当する。なお、この場合、車両の速度が第3速度閾値Vth3より小さいという条件に加えて、図6に示すように、単位時間当たりの車両の位置変化が所定の閾値Lth(例えば、0.5〜1m程度)以下という条件を加えることもできる。
また、図5の車両C2のように、交差点で右折又は左折する車両も存在するので、車両の方位情報又はウィンカー情報を車両情報に含めた状態で取得することにより、例えば、車両の速度が第2速度閾値Vth2(<Vth1、かつ>Vth3)〜第1速度閾値Vth1の範囲であって、方位が変化した場合には、車両が停止線で停止することなく通過したと判定する。図5で例示した車両C2が相当する。第2速度閾値Vth2は、例えば、15〜20km/hである。なお、通過停止の判定は上述の条件に限定されるものではない。
なお、車両の位置情報には誤差が含まれていることを前提としているので、通過可否判定部14では、含まれている誤差を顕在化するためにあえて車両の位置情報を使用するが、通過停止判定部15では、実際に通過したか停止したかを判定するので、車両の位置で判定するのではなく、車両の速度、方位情報を用いて判定する。これにより、車両の位置に許容することができない誤差が含まれているか否かを一層顕在化させて判定することができる。
誤差判定部16は、誤差判定手段としての機能を有する。誤差判定部16は、通過可否判定部14及び通過停止判定部15の判定結果に基づいて、車両の位置の誤差の有無を判定する。例えば、通過可否判定部14及び通過停止判定部15それぞれの判定結果が異なる場合、車両の位置に誤差があると判定する。また、通過可否判定部14及び通過停止判定部15それぞれの判定結果が異ならない場合、車両の位置は許容誤差範囲内にあると判定する。すなわち、車両の位置が許容誤差範囲内であるということは、通過可否判定部14及び通過停止判定部15それぞれの判定結果が異ならない場合をいい、必ずしも誤差の絶対値の大小に依拠するものに限定されるものではない。なお、車両の位置に誤差があるとは、許容範囲を超えた誤差があることを示し、許容範囲内の誤差は誤差がないと判定することができる。また、車両の位置に誤差がないとは、誤差がない場合だけでなく、許容範囲内の誤差であれば誤差なしと判定することができる。
上述のように、交差点の信号情報及び車両の車両情報を使用し、光ビーコン又は画像センサなどの路側のインフラ装置を必要としないので簡便な構成で車両の位置の誤差の有無を判定することができる。また、交差点に設置された信号情報を用いることにより、従来であれば位置補正に用いられるマップマッチングを行う必要がないので、マップマッチングに必要な詳細な道路地図情報が不要となり、地図データを具備していなくても車両が交差点を直進して通過した場合、当該車両の位置の誤差を低減することができる。
図7は本実施の形態の誤差判定装置100による誤差の有無判定の一例を示す説明図である。図7に示すように、通過可否判定部14の進入条件による通過可否判定(通過可否判定)で車両が停止線を通過することができたと判定した場合に、通過停止判定部15の実際に通過したか停止したかの判定(通過停止判定)で当該車両が停止線で停止したと判定したときは、車両の位置に誤差があると判定する。
また、通過可否判定部14の進入条件による通過可否判定(通過可否判定)で車両が停止線を通過することができなかったと判定した場合に、通過停止判定部15の実際に通過したか停止したかの判定(通過停止判定)で当該車両が停止線で停止することなく通過したと判定したときは、車両の位置に誤差があると判定する。
また、通過可否判定部14及び通過停止判定部15それぞれの判定結果が同じである場合、車両の位置に誤差がないと判定する。
車両の位置に誤差がない場合(許容範囲内の誤差がある場合も含む)には、通過可否判定部14による判定精度(通過可否の予測)が高くなるので、通過停止判定部15による判定結果(通過停止判定)と異なる可能性は非常に小さくなる。しかし、車両の位置に誤差がある場合(許容範囲を超える誤差がある場合)には、通過可否判定部14による判定精度(通過可否の予測)が低くなるので、通過停止判定部15による判定結果(通過停止判定)と異なる可能性は大きくなる。そこで、通過可否判定部14及び通過停止判定部15の判定結果が異なる場合、車両の位置に誤差があると判定することにより、簡便な構成で車両の位置の誤差が許容できるものであるか否かを判定することが可能となる。
次に、誤差がある場合(許容範囲を超えた誤差がある場合)の誤差の推定方法について説明する。誤差推定部20は、誤差推定手段としての機能を有し、誤差判定部16で誤差があると判定した場合、車両の位置の誤差を推定する。
図8は本実施の形態の誤差判定装置100による誤差の推定量の一例を示す模式図である。図8は図3と同様に、横軸は交差点を基準とした車両の位置(交差点から車両までの距離)を示し、縦軸は車両の速度を示す。図中の直線は進入条件を示す。なお、図8の進入条件は、車両が赤信号の開始までに交差点(停止線の位置)を通過できる条件である。
図8の点Aで示す車両は、赤信号の開始までに停止線を通過することができたと判定されたが(通過可否判定)、実際には停止線で停止した車両である。この場合、当該車両は、位置情報に基づけば、赤信号の開始時点では停止線を通過した先の地点に位置しているはずであるのに、実際には停止線の手前で停止したから、少なくとも黄信号開始時の位置と進入不可能な位置(進入条件よりも右側の位置)との間の偏差分(すなわち、停止線からの距離に相当する偏差分)だけ誤差が存在すると推定することができる。
図8の点Bで示す車両は、赤信号の開始時点で停止線を通過することができなかったと判定されたが(通過可否判定)、実際には停止線で停止せずに通過した車両である。この場合、当該車両は、位置情報に基づけば、停止線の手前で停止しているはずであるのに、実際には停止線を通過したから、少なくとも黄信号開始時の位置と進入可能な位置(進入条件よりも左側の位置)との間の偏差分(すなわち、停止線からの距離に相当する偏差分)だけ誤差が存在すると推定することができる。
図9及び図10は車両位置の誤差の推定の一例を示す説明図である。図9は通過可否判定部14での判定処理の際に用いる各車両(車両A、B)の軌跡を時刻t1、t2、t3の順序で時間経過とともに模式的に示すものであり、赤信号開始後からの(赤信号終了までの)車両の位置の時間変化を交差点に重ね合せて図示したものである。なお、時刻t1は、例えば、赤信号開始時点であり、時刻t2、t3はその後の時点であって赤信号終了までの間の時点である。
図9に示すように、車両Aは、時刻t1では交差点のほぼ中央に位置し、その後時刻t2では、交差点の流出道路側に位置が変化し、時刻t3では流出道路の入り口で速度がゼロとなっている。すなわち、車両Aは、通過可否判定部14の進入条件による通過可否判定(通過可否判定)で車両が停止線を通過することができないと判定されたものである。なお、図9では、車両Aの停止位置が停止線を越えているが、これは車両Aの位置情報に誤差が含まれているからである。
一方、車両Bは、時刻t1では交差点の上流側に位置し、その後時刻t2では、交差点側に位置が変化し、時刻t3ではさらに交差点側に位置するものの、赤信号であるのに速度が落ちていない。すなわち、車両Bは、通過可否判定部14の進入条件による通過可否判定(通過可否判定)で車両が停止線を通過することができる判定されたものである。なお、図9では、車両Bが交差点を進入できると判定されたにも関わらず車両Bの位置が交差点の手前にあるが、これは車両Bの位置情報にも誤差が含まれている可能性があるからである。
図10は通過停止判定部15での判定処理の際に用いる各車両(車両A、B)の軌跡を時刻t1、t2、t3の順序で時間経過とともに模式的に示すものであり、赤信号開始後の車両の位置の時間変化を交差点に重ね合せて図示したものである。なお、時刻t1は、例えば、赤信号開始時点であり、時刻t2、t3はその後の時点であって赤信号終了までの間の時点である。
図10に示すように、車両Aは、実際には、時刻t1で交差点の停止線より下流側の位置(すなわち、交差点を通過した位置)にあり、時刻t2、時刻t3では、車両Aの位置はさらに停止線から離れて下流側へ走行していることがわかる。すなわち、車両Aは、図9に示すように、赤信号開始時点で停止線を通過できないと判定したのに、実際には、図10に示すように、停止線を通過した場合には、少なくとも停止線位置と時刻t3での車両の位置との間の偏差だけ誤差が含まれている。そこで、車両の位置の誤差は、車両の赤信号開始時点(又は赤信号開始時点から適宜の時間経過の時点)での位置と停止線の位置との偏差であると推定することができる。これにより、車両の位置に誤差があると判定した場合に、当該誤差がどの程度のものであるかを推定することができる。なお、適宜の時間は、赤信号終了時点までの間の時間である。
また、図10に示すように、車両Bは、実際には、時刻t1で交差点の停止線より上流側の位置にあり、時刻t2、時刻t3では、車両Bの位置はさらに停止線に近づいて停止していることがわかる。すなわち、車両Bは、図9に示すように、赤信号開始時点で停止線を通過できると判定したのに、実際には、図10に示すように、交差点又は交差点の上流地点で停止した場合には、少なくとも停止線位置と時刻t1(赤信号開始時点)での車両の停止位置との間の偏差だけ誤差が含まれている。そこで、車両の位置の誤差は、車両の赤信号開始時点での停止位置と停止線の位置との偏差であると推定することができる。これにより、車両の位置に誤差があると判定した場合に、当該誤差がどの程度のものであるかを推定することができる。
次に、上述の車両Bのように、車両が停止線を通過できると判定されたが実際には停止した場合に、車両の停止位置を特定する方法について説明する。停止位置特定部21は、位置特定手段としての機能を有し、通過可否判定部14により停止線を通過できたと判定し、通過停止判定部15により実際に停止線で停止したと判定した車両の赤信号が終了した時点から当該車両の位置が変化するまでの時間に基づいて、当該車両の停止位置Xsを特定する。
赤信号により停止線で停止する車両は複数台存在するので、当該車両が停止車両の先頭車両から何番目の車両に応じて、当該車両の停止位置(停止線と車両の停止位置との距離)は異なる。通常、赤信号が終了し青信号が開始されると、停止車両の先頭車両から後続の車両へと順次動き始めるので、赤信号が終了した時点から車両の位置が変化する(動き始める)までの時間に基づいて、当該車両の停止位置を特定することができる。
具体的には、車両が動き始める時間と位置の関係を示す発進波は、例えば、4.7m/秒で進行する地点では、赤信号が終了した時点から4秒後に車両が動き始めたとすると、当該車両の停止位置は、停止線から19m(4.7×4)の位置にあることがわかる。
なお、発進波(発進波伝搬速度)Vdは、車両の走行速度Vs、停止時の車頭間隔h、車両の停止線上の通過間隔s等に基づいて算出することができる。例えば、任意の交差点(地点)において、例えば、車両の走行速度Vsが50km/h=15m/秒)、停止時の車頭間隔hが7m)、車両の停止線上の通過間隔sが2秒である場合、発進波(発進波伝搬速度)Vdは、4.7m/秒となる。
誤差推定部20は、停止位置特定部21で特定した停止位置Xsと停止線の位置との偏差を当該車両の位置の誤差として推定する。すなわち、実際には停止線の手前で停止したのに、赤信号開始時点で停止線を通過できたと判定した場合には、少なくとも停止位置と停止線の位置との間の偏差だけ誤差が含まれている。そこで、車両の位置の誤差は、車両の停止位置と停止線の位置との偏差であると推定することができる。これにより、車両の位置に誤差があると判定した場合に、当該誤差がどの程度のものであるかを推定することができる。
また、車両が停止線を通過できないと判定されたが実際には通過していた場合には、誤差推定部20は、通過可否判定部14で停止線を通過できなかったと判定し、通過停止判定部15で停止線を通過したと判定した車両の赤信号開始時点(又は赤信号開始時点から適宜の時間経過時点)での位置Xrと停止線の位置との偏差を当該車両の位置の誤差として推定する。なお、適宜の時間は、赤信号終了時点までの間の時間である。
すなわち、実際には停止線を通過したのに、赤信号開始時点で停止線を通過できないと判定した場合には、少なくとも赤信号開始時点(又は赤信号開始時点から適宜の時間経過時点)での車両の位置Xrと停止線の位置との間の偏差だけ誤差が含まれている。そこで、車両の位置の誤差は、車両の赤信号開始時点(又は赤信号開始時点から適宜の時間経過時点)での位置と停止線の位置との偏差であると推定することができる。これにより、車両の位置に誤差があると判定した場合に、当該誤差がどの程度のものであるかを推定することができる。
上述のように、車両位置の誤差の推定方法は、図8に例示した方法、図9及び図10に例示した方法などがある。いずれの方法でも誤差を推定することができる場合には、図9及び図10で求めた誤差の推定を信頼度が高いとして用いることもできる。
次に、車両の位置(位置情報)に許容範囲を超える誤差が含まれると判定された場合の当該位置情報の利用について説明する。
図11は車両の位置情報の一例を示す模式図である。図11の例では、道路を複数の車両が走行し、走行した結果としての位置情報(位置と時刻)が得られている。図11に示すように、誤差の有無の判定を行った判定地点(交差点)をS1とし、当該判定地点S1を走行した車両のうちの一部の車両の位置情報に誤差があったとする。
図11に示すように、位置情報特定部19は、特定手段としての機能を有し、車両の位置に誤差があると判定するまでの位置情報を特定する。車両の位置に誤差があると判定した地点以降の位置情報は、位置を補正して誤差を許容範囲内にすることができるので、誤差があると判定した地点までの車両の位置情報を特定しておく。そして、車両の位置情報を用いて算出するような交通指標の統計値(例えば、旅行時間)など求める際には、誤差があると判定した地点までの位置情報(すなわち、誤差がある位置情報)を使用しないこと(重み付けを0にする)、あるいは誤差がない位置情報に比べて小さい重み付けをすることにより、交通指標の精度を低下させることを防止することができる。
また、図11の例に代えて、位置情報特定部19は、車両の位置に誤差があると判定した場合、複数の車両の位置に依拠する交通指標の統計値を算出する際の重み付けのため、当該車両の位置情報を特定することもできる。すなわち、複数の車両それぞれについて誤差の有無を判定した場合に、誤差があると判定された車両の位置情報を特定しておく。そして、車両の位置情報を用いて算出するような交通指標の統計値(例えば、旅行時間)など求める際には、特定した位置情報(すなわち、誤差がある位置情報)を使用しないこと(重み付けを0にする)、あるいは誤差がない位置情報に比べて小さい重み付けをすることにより、交通指標の精度を低下させることを防止することができる。
車両位置補正部22は、補正手段としての機能を有し、誤差推定部20で推定した誤差に基づいて、車両の位置を補正する。これにより、車両の位置情報を精度よく求める(補正する)ことができる。
本実施の形態により得られた情報、例えば、誤差の有無、誤差の推定量、車両位置に補正量などを下流側の交差点の路側装置に提供してもよく、あるいは車両へ提供してもよい。
次に、本実施の形態の誤差判定装置100の動作について説明する。図12は本実施の形態の誤差判定装置100による車両の位置の誤差判定の処理手順を示すフローチャートである。以下、処理の主体を制御部10として説明する。なお、制御部10は、図12で示す処理を、例えば、0.1〜1秒毎に周期処理を行う。制御部10は、車両情報を取得し(S11)、信号情報を取得する(S12)。なお、車両情報のモニタは絶えず行われている。
制御部10は、進入条件を用いて車両の通過可否の判定を行い(S13)、当該車両が実際に停止線を通過したか停止線で停止したかを判定する(S14)。なお、判定に係る車両は、特定車両抽出部18で抽出した特定の車両について行うことができる。
制御部10は、通過可否判定の結果と通過停止判定の結果とが異なるか否か、すなわち、通過できると判定したが実際には停止したか、又は通過できないと判定したが実際には通過したかを判定する(S15)。
判定結果が異なる場合(S15でYES)、制御部10は、車両の位置に誤差があると判定し(S16)、車両の位置の誤差を推定する(S17)。判定結果が同じである場合(S15でNO)、制御部10は、車両の位置に誤差がないと判定する(S18)。
制御部10は、他の車両があるか否かを判定し(S19)、他の車両がある場合(S19でYES)、ステップS13以降の処理を続け、他の車両がない場合(S19でNO)、処理を終了する。
誤差判定装置100は、CPU、RAMなどを備えた汎用コンピュータを用いて実現することもできる。すなわち、図12に示すような、各処理手順を定めたコンピュータプログラムをDVDなどの記録媒体に記録しておく。そして、当該記録媒体に記録したコンピュータプログラムを光ディスク装置等で読み込ませることにより、コンピュータに備えられたRAMにロードし、コンピュータプログラムをCPUで実行することにより、コンピュータ上で誤差判定装置を実現することができる。
上述のように、本実施の形態によれば、無線を使った路車協調システムなどにおいて、光ビーコンや画像センサなどの装置が設置されていない場合でも、車両の位置精度を高めることができる。また、交差点に設置された信号情報を用いることにより、従来であれば位置補正に用いられるマップマッチングを行う必要がないので、マップマッチングに必要な詳細な道路地図情報を必要としない。
また、光ビーコン、感知器などが設置されていないような交差点でITS無線による感応制御を行う場合に、本実施の形態によれば、一層高い効果が期待できる。また、簡単な構成で、車両の位置の誤差を補正することができるので、より適切な現示を与えることができ交通をより円滑にすることができる。
開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。