JP5925929B2 - 過塩基化金属スルホナート清浄剤 - Google Patents

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Description

本発明は過塩基化(overbased)金属スルホナート清浄剤に関する。
現在、ガソリンエンジン及びディーゼルエンジンについての燃料経済に関する流れがあり、これが潤滑油組成物中に使用される増大されたレベルの有機摩擦改質剤をもたらしていた。不運なことに、摩擦改質剤と過塩基化金属スルホナート清浄剤の間に相溶性の問題があり、これらが現在二液型パッケージ(two-part package)(摩擦改質剤がトップ処理(top-treat)として添加される)の使用により解決される。それ故、本発明は潤滑油組成物中の摩擦改質剤と過塩基化金属スルホナート清浄剤の間の相溶性の問題を解決することに関する。
本発明によれば、少なくとも一つのアミン基を有する少なくとも一つの摩擦改質剤を含む過塩基化金属スルホナート清浄剤が提供される。少なくとも一つのアミン基を有する摩擦改質剤は以下に“アミンをベースとする摩擦改質剤”として知られる。過塩基化金属スルホナート清浄剤はアミンをベースとする摩擦改質剤の存在下で製造され、その結果、摩擦改質剤が清浄剤に混入される。
摩擦改質剤は軽い表面接触を最小にする目的のために潤滑剤に添加される一般に細長い分子である。それらは極性末端(頭部)及び油溶性末端(尾部)を有する。尾部は通常少なくとも10個の炭素原子、好ましくは10-40個の炭素原子、更に好ましくは12-25個の炭素原子、更に好ましくは15-19個の炭素原子を含む直鎖炭化水素である。尾部が長すぎたり、又は短すぎたりする場合、その分子は摩擦改質剤として機能しないであろう。使用中、頭部が金属表面に付着し、尾部が並んで積み重なる。
アミンをベースとする摩擦改質剤はアルコキシル化ヒドロカルビル置換モノ-アミン及びジアミン、並びにヒドロカルビルエーテルアミン、好ましくはアルコキシル化獣脂アミン(alkoxylated tallow amine)及びアルコキシル化獣脂エーテルアミン(alkoxylated tallow ether amine)から選ばれることが好ましく、窒素1モル当り約2モルのアルキレンオキサイドを含むアルコキシル化アミンが最も好ましい。エトキシル化アミン及びエトキシル化エーテルアミンが特に好ましい。このような摩擦改質剤は直鎖状ヒドロカルビル基を含むことが好ましい。ヒドロカルビル基は主として炭素及び水素を含むが、1個以上のヘテロ原子、例えば、硫黄又は酸素を含んでもよい。好ましいヒドロカルビル基は12-25個の炭素原子、好ましくは15-19個の炭素原子の範囲である。好ましい構造が下記の二つの図により示されるが、これらに限定されない。
Figure 0005925929
(式中、RはC6-C28アルキル基、好ましくはC12-C25アルキル基であり、X及びYは独立にOもしくはS又はCH2であり、x及びyは独立に1〜6であり、pは2〜4(好ましくは2)であり、かつm及びnは独立に0〜5である。)当該一つ又は複数のアルキル基は、摩擦改質剤特性を付与するために充分に直鎖状の特徴を有する。
本発明において、過塩基化金属スルホナート清浄剤は清浄剤及び摩擦改質剤の両方として機能するハイブリッド系を生じるためにアミンをベースとする摩擦改質剤の存在下で合成される。それ故、それは清浄剤及び摩擦改質剤の両方として潤滑油組成物中に使用されてもよく、これは別々の、付加的な摩擦改質剤が必要とされなくてもよいことを意味する。
アミンをベースとする摩擦改質剤は“加熱ソーキング”工程後に反応成分に添加されることが好ましい。
本発明によれば、潤滑粘度の油、及び少なくとも一つのアミン基を有する少なくとも一つの摩擦改質剤を含む過塩基化金属スルホナート清浄剤を含む、潤滑油組成物がまた提供される。
本発明によれば、少なくとも一つのアミン基を有する少なくとも一つの摩擦改質剤を含む過塩基化金属スルホナート清浄剤の清浄剤及び摩擦改質剤の両方としての潤滑油組成物中の使用がまた提供される。
本発明によれば、少なくとも一つのアミン基を有する少なくとも一つの摩擦改質剤を含む過塩基化金属スルホナート清浄剤の調製方法であって、その方法が
−アルキルアレーンスルホン酸、炭化水素溶媒、アルコール及びそのスルホン酸と反応するのに必要とされる量よりも上の化学量論上過剰のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩基(例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属アルコキシド等)の混合物を用意する工程;
−その混合物を過塩基化剤で過塩基化する工程;
−その混合物を“加熱ソーキング”する工程;及び
−少なくとも一つのアミン基を有する摩擦改質剤を“加熱ソーキング”工程後にその混合物に添加する工程
を含むことを特徴とする前記過塩基化金属スルホナート清浄剤の調製方法がまた提供される。
“加熱ソーキング”は、その混合物があらゆる更なる加工工程が行なわれる前の期間にわたって、選ばれた温度範囲(又は選ばれた温度)(これは炭酸化が行なわれる温度よりも高いことが好ましい)で、あらゆる更なる化学試薬を添加しないで、維持されることを意味する。
本発明によれば、エンジン中の摩擦を減少する方法であって、その方法がエンジンを潤滑粘度の油及び少なくとも一つのアミン基を有する少なくとも一つの摩擦改質剤を含む過塩基化金属スルホナート清浄剤を含む潤滑油組成物で潤滑する工程を含むことを特徴とするエンジン中の摩擦を減少する方法がまた提供される。
エンジンは自動車エンジン、特にガソリンエンジンであることが好ましい。
アルキルアレーンスルホン酸はアルキルベンゼンスルホン酸であることが好ましい。アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩基は水酸化カルシウムであることが好ましい。
清浄剤はエンジン中の、ピストン沈着物(deposit)、例えば、高温ワニス沈着物及びラッカー沈着物の生成を減少する添加剤である。それは通常酸中和特性を有し、かつ微細な固体を懸濁液中に保つことができる。殆どの清浄剤は金属“石鹸”、即ち、酸性有機化合物の金属塩(時折、表面活性剤と称される)をベースとする。
清浄剤は一般に長い疎水性尾部を有する極性頭部を含み、その極性頭部は酸性有機化合物の金属塩を含む。多量の金属塩基が過剰の金属塩基、例えば、酸化物又は水酸化物を酸性ガス、例えば、二酸化炭素と反応させて金属塩基(例えば、炭酸塩)ミセルの外層として中和された清浄剤を含む過塩基化清浄剤を得ることにより含まれ得る。
過塩基化スルホナート清浄剤はスルホン酸、炭化水素溶媒、アルコール、水及びそのスルホン酸と反応するのに必要とされる量よりも上の化学量論上過剰の金属塩基(好ましくは水酸化カルシウム)の混合物から生成されることが好ましい。その混合物は塩基の源を与える過塩基化剤で過塩基化(炭酸化)される。その方法は試薬を反応器に添加し、金属化合物の殆ど又は全部が炭酸化されるまで過塩基化剤を反応器に注入することを伴なう。炭酸化工程は“加熱ソーキング”工程により追随され、その工程では、混合物があらゆる更なる加工工程が行なわれる前の期間にわたって、選ばれた温度範囲(又は選ばれた温度)(これは通常炭酸化が行なわれる温度よりも高い)で、あらゆる更なる化学試薬を添加しないで、維持される。アミンをベースとする摩擦改質剤は“加熱ソーキング”工程後に過塩基化清浄剤に添加されることが好ましい。
好適な過塩基化剤の例は二酸化炭素、ホウ素の源(例えば、ホウ酸)、二酸化硫黄、硫化水素、及びアンモニアである。好ましい過塩基化剤は二酸化炭素もしくはホウ酸、又はその二つの混合物である。最も好ましい過塩基化剤は二酸化炭素であり、便宜のために、過塩基化剤による処理が一般に“炭酸化”と称されるであろう。状況が明らかにそれ以外を必要としない限り、炭酸化への本明細書の言及はその他の過塩基化剤による処理への言及を含むことが理解されるであろう。
有利には、炭酸化工程の完結時に、塩基性金属化合物の一部が炭酸化されないで残る。有利には、塩基性カルシウム化合物の15質量%まで、特に11質量%までが炭酸化されないで残る。
炭酸化は100℃未満で行なわれる。典型的には、炭酸化は少なくとも15℃、好ましくは少なくとも25℃で行なわれる。有利には、炭酸化は80℃未満、更に有利には60℃未満、好ましくは最大で50℃、更に好ましくは最大で40℃、特に最大35℃で行なわれる。
有利には、温度が、ほんの小さい変動でもって、炭酸化工程中に実質的に一定に維持される。一つより多い炭酸化工程がある場合、両方又は全ての炭酸化工程が実質的に同じ温度で行なわれることが好ましいが、夫々の工程が100℃未満で行なわれることを条件として、異なる温度が所望により使用されてもよい。
炭酸化は大気圧、大気圧より上の圧力、又は大気圧より下の圧力で行なわれてもよい。炭酸化は大気圧で行なわれることが好ましい。
炭酸化工程は“加熱ソーキング”工程により追随され、その工程では、混合物があらゆる更なる加工工程が行なわれる前の期間にわたって、選ばれた温度範囲(又は選ばれた温度)(これは通常炭酸化が行なわれる温度よりも高い)で、いずれの更なる化学試薬を添加することなしで、維持される。混合物は通常加熱ソーキング中に撹拌される。典型的には、加熱ソーキングは少なくとも30分、有利には少なくとも45分、好ましくは少なくとも60分、特に少なくとも90分の期間にわたって行なわれてもよい。加熱ソーキングを行ない得る温度は典型的には15℃から反応混合物の還流温度の丁度下まで、好ましくは25℃〜60℃の範囲である。その温度は物質(例えば、溶媒)が加熱ソーキング工程中にその系から実質的に除去されないような温度であるべきである。本発明者らは加熱ソーキングが生成物安定化、固体の溶解、及びフィルタビリティ(filterability)を助ける効果を有することを見出した。
アミンをベースとする摩擦改質剤は、加熱ソーキング工程後に清浄剤に添加されることが好ましい。
高度に過塩基化された生成物が必要とされる場合、炭酸化工程(及び、使用される場合には、加熱ソーキング工程)後に、更なる量の塩基性カルシウム化合物が混合物に有利に添加され、その混合物は再度炭酸化され、その第二炭酸化工程が有利に更なる加熱ソーキング工程により追随される。
低下された粘度の生成物は塩基性カルシウム化合物の1回以上の更なる添加及びその後の炭酸化を採用することにより得られてもよく、夫々の炭酸化工程が有利に加熱ソーキング工程により追随される。塩基性金属化合物として、金属酸化物、水酸化物、アルコキシド、及びカルボキシレートが挙げられる。酸化カルシウム及び、更に特別には、水酸化物が使用されることが好ましい。塩基性化合物の混合物が所望により使用されてもよい。
過塩基化剤により過塩基化される混合物は通常水を含むべきであり、また一つ以上の溶媒、促進剤(例えば、アルカノール、好ましくはメタノール)又は過塩基化方法に一般に使用されるその他の物質を含んでもよい。
好適な溶媒の例は芳香族溶媒、例えば、ベンゼン、アルキル置換ベンゼン、例えば、トルエン又はキシレン、ハロゲン置換ベンゼン、及び低級アルコール(8個までの炭素原子を有する)である。好ましい溶媒はトルエン及び/又はメタノールである。使用されるトルエンの量は、金属過塩基化清浄剤(油を除く)を基準とする、トルエンの質量%が少なくとも1.5、好ましくは少なくとも15、更に好ましくは少なくとも45、特に少なくとも60、更に特別には少なくとも90であるような量であることが有利である。実用的/経済的理由のために、トルエンの前記%は典型的には最大で1200、有利には最大で600、好ましくは最大で500、特に最大で150である。使用されるメタノールの量は、金属清浄剤(油を除く)を基準とする、メタノールの質量%が少なくとも1.5、好ましくは少なくとも15、更に好ましくは少なくとも30、特に少なくとも45、更に特別には少なくとも50であるような量であることが有利である。実用的/経済的理由のために、メタノール(溶媒としての)の前記%は典型的には最大で800、有利には最大で400、好ましくは最大で200、特に最大で100である。上記%はトルエン及びメタノールが一緒に、又は別々に使用されるかを問わないで適用される。
好ましい促進剤はメタノール及び水である。使用されるメタノールの量は、一つ以上の塩基性金属化合物、例えば、水酸化カルシウムの初期の仕込み(即ち、第二工程又はその後の工程で添加されるいずれの一つ以上の塩基性金属化合物を除く)を基準とする、メタノールの質量%が少なくとも6、好ましくは少なくとも60、更に好ましくは少なくとも120、特に少なくとも180、更に特別には少なくとも210であるような量であることが有利である。実用的/経済的理由のために、メタノール(促進剤としての)の前記%は典型的には最大で3200、有利には最大で1600、好ましくは最大で800、特に最大で400である。初期の反応混合物(過塩基化剤による処理の前)中の水の量は、一つ以上の塩基性金属化合物、例えば、水酸化カルシウムの初期の仕込み(即ち、第二工程又はその後の工程で添加されるいずれの一つ以上の塩基性金属化合物を除く)を基準とする、水の質量%が少なくとも0.1、好ましくは少なくとも1、更に好ましくは少なくとも3、特に少なくとも6、更に特別には少なくとも12、特に少なくとも20であるような量であることが有利である。実用的/経済的理由のために、水の前記%は典型的には最大で320、有利には最大で160、好ましくは最大で80、特に最大で40である。使用される反応体が無水ではない場合、反応混合物中の水の比率は成分中のいずれの水、及びまた表面活性剤の中和により生成される水を考慮すべきである。特に、表面活性剤それら自体中に存在するいずれの水について考量されなければならない。
有利には、反応媒体はメタノール、水(その少なくとも一部が塩生成中に生成されうる)、及びトルエンを含む。
所望により、低分子量カルボン酸(1個から約7個までの炭素原子を有する)、例えば、ギ酸、無機ハロゲン化物、又はアンモニウム化合物が炭酸化を促進し、フィルタビリティを改良するために、又は過塩基化清浄剤の増粘剤として使用されてもよい。しかしながら、過塩基化清浄剤は無機ハロゲン化物、アンモニウム塩、2価アルコール又はこれらの残渣を含まないことが好ましい。
取扱の容易さのために、過塩基化清浄剤は有利には最大で20,000mm2/s、好ましくは最大で10,000mm2/s、特に最大で5,000mm2/sのKV40、及び最大で2,000mm2/s、好ましくは最大で1,000mm2/s、特に最大で500mm2/sのKV100を有する。この明細書中、粘度はASTM D445に従って測定される。
清浄剤の塩基性度は全アルカリ価(TBN)として表されることが好ましい。全アルカリ価は過塩基化物質の塩基性度の全てを中和するのに必要とされる酸の量である。TBNはASTM規格D2896又は同等の操作を使用して測定されてもよい。清浄剤は低TBN(即ち、50未満のTBN)、中間TBN(即ち、50〜150のTBN)又は高TBN(即ち、150より大きいTBN、例えば、150-500)を有してもよい。本発明の好ましい清浄剤は150より大きいTBNを有する。
スルホン酸は典型的にはヒドロカルビル置換型、特にアルキル置換型、芳香族炭化水素、例えば、蒸留及び/又は抽出による石油の分別から、或いは芳香族炭化水素のアルキル化により得られたもののスルホン化により得られる。例として、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ビフェニル又はそれらのハロゲン誘導体、例えば、クロロベンゼン、クロロトルエンもしくはクロロナフタレンをアルキル化することにより得られたものが挙げられる。芳香族炭化水素のアルキル化は触媒の存在下で約3個から100個以上までの炭素原子を有するアルキル化剤、例えば、ハロパラフィン、パラフィンの脱水素により得られてもよいオレフィン、及びポリオレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、及び/又はブテンのポリマーを用いて行なわれてもよい。アルキルアリールスルホン酸は通常約7個から約100個以上までの炭素原子を含む。それらは、それらが得られる源に応じて、アルキル置換芳香族部分当り、約16個から約80個までの炭素原子、又は12〜40個の炭素原子を含むことが好ましい。
これらのアルキルアリールスルホン酸を中和してスルホナートを得る場合、炭化水素溶媒及び/又は希釈油だけでなく、促進剤及び粘度調節剤がまた反応混合物中に含まれてもよい。
使用し得るスルホン酸の別の型はアルキルフェノールスルホン酸を含む。このようなスルホン酸は硫化し得る。硫化又は未硫化を問わないで、これらのスルホン酸はフェノールの表面活性特性に匹敵する表面活性特性ではなく、スルホン酸の表面活性特性に匹敵する表面活性特性を有すると考えられる。
本発明の使用に適したスルホン酸はまたアルキルスルホン酸を含む。このような化合物では、そのアルキル基が好適には9〜100個の炭素原子、有利には12〜80個の炭素原子、特に16〜60個の炭素原子を含む。
表面活性剤が塩の形態で使用される場合、いずれの好適なカチオン、例えば、四級窒素イオン、又は、好ましくは、金属イオンが存在してもよい。好適な金属イオンとして、アルカリ金属、アルカリ土類金属(マグネシウムを含む)及び遷移金属のイオンが挙げられる。好適な金属の例はリチウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、銅、亜鉛、及びモリブデンである。好ましい金属はリチウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム及びカルシウム、更に好ましくは、リチウム、ナトリウム、マグネシウム及びカルシウム、特にカルシウムである。表面活性剤の中和は過塩基化工程で使用される塩基性カルシウムの添加の前に、又は塩基性カルシウム化合物により行なわれてもよい。
過塩基化清浄剤(これらは通常、例えば、濃縮物(concentrate)の質量を基準として50〜70質量%の過塩基化清浄剤を含む油中の濃縮物として調製される)は、油をベースとする組成物、例えば、潤滑剤又はグリースの添加剤として有用である。油をベースとする組成物に含まれる過塩基化清浄剤の量は組成物の型及びその提案される適用に依存する。船用適用のための潤滑剤は典型的には最終潤滑剤を基準とする活性成分基準で、0.5〜18質量%の過塩基化清浄剤を含み、一方、自動車クランクケース潤滑油は典型的には最終潤滑剤を基準とする活性成分基準で、0.01〜6質量%の過塩基化清浄剤を含む。
調製された過塩基化清浄剤は油溶性であり、もしくは好適な溶媒の助けにより油に溶解可能であり、又は安定に分散可能な材料である。その用語として本明細書に使用される油溶性、溶解可能、又は安定に分散可能は、これらの添加剤が可溶性、溶解可能、混和性であり、又はあらゆる比率で油に懸濁し得ることを必ずしも示さない。しかしながら、それは、これらの添加剤が油が使用される環境でそれらの意図される効果を発揮するのに十分な程度まで油に、例えば、可溶性又は安定に分散可能であることを意味する。更に、その他の添加剤の油をベースとする組成物中の混入は高レベルの特別な添加剤(所望される場合)の混入を可能にし得る。
過塩基化清浄剤はあらゆる好都合の方法でベースオイルに混入されてもよい。こうして、それらは、必要により好適な溶媒、例えば、トルエン又はシクロヘキサンの助けにより、それらを所望のレベルの濃度で油に分散又は溶解することにより油に直接添加されてもよい。このようなブレンドは室温又は高温で生じ得る。
清浄剤はまた更なる表面活性剤基(surfactant group)、例えば、フェノール、サリチル酸、カルボン酸及びナフテン酸から選ばれる基を含んでもよく、これらは2種以上の異なる表面活性剤グループが過塩基化方法中に混入されるハイブリッド材料の製造により得られてもよい。
ハイブリッド材料の例は表面活性剤スルホン酸及びフェノールの過塩基化カルシウム塩;表面活性剤スルホン酸及びサリチル酸の過塩基化カルシウム塩;表面活性剤スルホン酸及びカルボン酸の過塩基化カルシウム塩;並びに表面活性剤サリチル酸、フェノール及びスルホン酸の過塩基化カルシウム塩である。
少なくとも2種の過塩基化金属化合物が存在する場合には、あらゆる好適な比率(質量基準)が使用されてもよく、好ましくはいずれか一つの過塩基化金属化合物対あらゆるその他の金属過塩基化化合物の質量対質量比率は5:95から95:5まで、例えば、90:10から10:90まで、更に好ましくは20:80から80:20まで、特に70:30から30:70まで、有利には60:40から40:60までの範囲である。
ハイブリッド材料の特別な例として、例えば、WO-A-97/46643、WO-A-97/46644、WO-A-97/46645、WO-A-97/46646、及びWO-A-97/46647に記載されたものが挙げられる。
潤滑油組成物は少なくとも一つの摩擦改質剤、例えば、高級脂肪酸のグリセリルモノエステル、例えば、グリセリルモノ-オレエート;長鎖ポリカルボン酸とジオールのエステル、例えば、2量体化された不飽和脂肪酸のブタンジオールエステル;オキサゾリン化合物;並びにアルコキシル化アルキル置換モノ-アミン、ジアミン及びアルキルエーテルアミン、例えば、エトキシル化獣脂アミン及びエトキシル化獣脂エーテルアミンから選ばれた摩擦改質剤を含んでもよい。
その他の既知の摩擦改質剤は、油溶性有機モリブデン化合物を含む。このような有機モリブデン摩擦改質剤はまた、潤滑油組成物に酸化防止信用(credit)及び耐磨耗信用を与える。このような油溶性有機モリブデン化合物の例として、ジチオカルバメート、ジチオホスフェート、ジチオホスフィネート、キサンテート、チオキサンテート、スルフィド等、及びこれらの混合物が挙げられる。モリブデンジチオカルバメート、ジアルキルジチオホスフェート、アルキルキサンテート及びアルキルチオキサンテートが特に好ましい。
更に、モリブデン化合物は、酸性モリブデン化合物であってもよい。これらの化合物はASTM試験D-664又はD-2896滴定操作により測定して塩基性窒素化合物と反応し、典型的には6価である。モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、並びにその他のアルカリ性金属モリブデン酸塩及びその他のモリブデン塩、例えば、モリブデン酸水素ナトリウム、MoOCl4、MoO2Br2、Mo2O3Cl6、三酸化モリブデン又は同様の酸性モリブデン化合物が含まれる。
モリブデン化合物は式
Mo(ROCS2)4及び
Mo(RSCS2)4
(式中、Rは一般に1個から30個までの炭素原子、好ましくは2-12個の炭素原子の、アルキル、アリール、アラルキル及びアルコキシアルキルからなる群から選ばれる有機基、最も好ましくは2〜12個の炭素原子のアルキルである)
のものであってもよい。モリブデンのジアルキルジチオカルバメートが特に好ましい。
有機モリブデン化合物の別のグループは3核モリブデン化合物、特に式Mo3SkLnQzのもの及びこれらの混合物であり、式中、Lはその化合物を油に可溶性又は分散性にするのに充分な数の炭素原子を有する有機基を有する独立に選ばれるリガンドであり、nは1から4までであり、kは4から7まで変化し、Qは中性電子供与性化合物、例えば、水、アミン、アルコール、ホスフィン、及びエーテルのグループから選ばれ、かつzは0から5までの範囲であり、非化学量論値を含む。少なくとも21個の合計炭素原子、例えば、少なくとも25個、少なくとも30個、又は少なくとも35個の炭素原子が全てのリガンドの有機基中に存在すべきである。
リガンドは下記の基及びこれらの混合物(mixture)から独立に選ばれる。
Figure 0005925929
式中、X、X1、X2、及びYは酸素及び硫黄の群から独立に選ばれ、かつR1、R2、及びRは水素及び有機基(これらは同じであってもよく、また異なっていてもよい)から独立に選ばれる。有機基はヒドロカルビル基、例えば、アルキル基(例えば、リガンドの残部に結合された炭素原子が一級又は二級である)、アリール基、置換アリール基及びエーテル基であることが好ましい。夫々のリガンドは同じヒドロカルビル基を有することが更に好ましい。
用語“ヒドロカルビル”はリガンドの残部に直接結合された炭素原子を有する置換基であり、本発明の状況内で主として特性がヒドロカルビルである。このような置換基として、下記のものが挙げられる。
1. 炭化水素置換基、即ち、脂肪族(例えば、アルキル又はアルケニル)置換基、脂環式(例えば、シクロアルキル又はシクロアルケニル)置換基、芳香族置換芳香族核、脂肪族置換芳香族核及び脂環式置換芳香族核等だけでなく、環状置換基(その環はリガンドの別の部分により完成される(即ち、あらゆる二つの示された置換基が一緒に脂環式基を形成してもよい))。
2. 置換炭化水素置換基、即ち、非炭化水素基(これらは、本発明の状況で、置換基の主としてヒドロカルビルの特性を変化させない)を含むもの。当業者は好適な基(例えば、ハロ、特にクロロ及びフルオロ、アミノ、アルコキシル、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、スルホキシ等)を認識する。
3. ヘテロ置換基、即ち、本発明の状況内で主として炭化水素の特性であるが、炭素以外の原子を含まなければ炭素原子で構成される、鎖又は環中に存在する炭素以外の原子を含む置換基。
重要なことに、リガンドの有機基は化合物を油に可溶性又は分散性にするのに充分な数の炭素原子を有する。例えば、夫々の基中の炭素原子の数は一般に約1個〜約100個、好ましくは約1個から約30個まで、更に好ましくは約4個〜約20個の範囲である。好ましいリガンドとして、ジアルキルジチオホスフェート、アルキルキサンテート、及びジアルキルジチオカルバメートが挙げられ、これらの中でジアルキルジチオカルバメートが更に好ましい。上記官能基の二つ以上を含む有機リガンドがまたリガンドとして利用することができ、コアーの一つ以上に結合することができる。当業者は化合物の生成がコアーの電荷のバランスを保つのに適した電荷を有するリガンドの選択を必要とすることを明確に理解する。
式Mo3SkLnQzを有する化合物はアニオン性のリガンドにより囲まれたカチオン性のコアーを有し、例えば、下記の構造により表され、かつ+4の正味の電荷を有する。
Figure 0005925929
従って、これらのコアーを可溶化するために、全てのリガンド中の合計電荷は-4でなければならない。四つのモノアニオンのリガンドが好ましい。如何なる理論により束縛されたくないが、2個以上の3核コアーが1個以上のリガンドにより結合又は相互連結されてもよく、リガンドが多座であってもよいと考えられる。これは単一コアーへの多くの連結を有する多座リガンドの場合を含む。酸素及び/又はセレンが1個以上のコアー中で硫黄に代えて置換されてもよいと考えられる。
油溶性又は分散性3核モリブデン化合物は、適当な一つ以上のリガンド/一つ以上の溶媒中でモリブデン源、例えば、(NH4)2Mo3S13・n(H2O)(式中、nは0〜2の間で変化し、非化学量論値を含む)を、好適なリガンド源、例えば、テトラアルキルチウラムジスルフィドと反応させることにより調製し得る。その他の油溶性又は分散性3核モリブデン化合物は、適当な一つ以上の溶媒中での、モリブデン源(例えば、 (NH4)2Mo3S13・n(H2O))、リガンド源(例えば、テトラアルキルチウラムジスルフィド、ジアルキルジチオカルバメート、又はジアルキルジチオホスフェート)、及び硫黄引抜剤(sulphur abstracting agent)(例えば、シアン化物イオン、亜硫酸イオン、又は置換ホスフィン)の反応中に生成し得る。また、3核モリブデン-硫黄ハロゲン化物塩、例えば、[M']2[Mo3S7A6](式中、M'は対イオンであり、かつAはハロゲン、例えば、Cl、Br、又はIである)が適当な一つ以上の液体/一つ以上の溶媒中でリガンド源、例えば、ジアルキルジチオカルバメート又はジアルキルジチオホスフェートと反応させられて油溶性又は分散性3核モリブデン化合物を生成し得る。適当な液体/溶媒は、例えば、水性又は有機性(organic)であってもよい。
化合物の油溶性又は分散性は、リガンドの有機基中の炭素原子の数により影響されうる。少なくとも合計21個の炭素原子が全てのリガンドの有機基中に存在すべきである。選ばれるリガンド源は、化合物を潤滑組成物中で可溶性又は分散性にするのに充分な数の炭素原子をその有機基中に有することが好ましい。
本明細書で使用される用語“油溶性”又は“分散性”は、化合物又は添加剤があらゆる比率で油に可溶性、溶解性、混和性であり、又は懸濁し得ることを必ずしも示さない。しかしながら、これらはそれらが、例えば、油が使用される環境中でそれらの意図される効果を与えるのに充分な程度まで油に可溶性又は安定に分散性であることを意味する。更に、その他の添加剤の付加的な混入はまた、高レベルの特定の添加剤(所望される場合)の混入を可能にしうる。
モリブデン化合物は、有機モリブデン化合物であることが好ましい。更に、モリブデン化合物は、モリブデンジチオカルバメート(MoDTC)、モリブデンジチオホスフェート、モリブデンジチオホスフィネート、モリブデンキサンテート、モリブデンチオキサンテート、硫化モリブデン及びこれらの混合物からなる群から選ばれることが好ましい。モリブデン化合物はモリブデンジチオカルバメートとして存在することが最も好ましい。モリブデン化合物はまた3核モリブデン化合物であってもよい。
潤滑油組成物は、少なくとも一つの耐磨耗剤又は酸化防止剤を含んでもよい。ジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩は、耐磨耗剤及び酸化防止剤として頻繁に使用される。金属は、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属、又はアルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケルもしくは銅であってもよい。亜鉛塩は、潤滑油組成物の合計重量を基準として、0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜2重量%の量で潤滑油中に最も一般に使用される。それらは最初に通常一つ以上のアルコール又はフェノールとP2S5との反応により、ジヒドロカルビルジチオリン酸(DDPA)を生成し、次いで生成されたDDPAを亜鉛化合物で中和することにより既知の技術に従って調製されてもよい。例えば、ジチオリン酸は、一級アルコールと二級アルコールの混合物を反応させることによりつくられてもよい。あるいは、一方に存在するヒドロカルビル基が特性上完全に二級であり、かつ他方に存在するヒドロカルビル基が特性上完全に一級である場合、多種のジチオリン酸が調製し得る。亜鉛塩をつくるために、あらゆる塩基性又は中性亜鉛化合物が使用し得るが、酸化物、水酸化物及び炭酸塩が最も一般的に採用される。市販の添加剤は、中和反応中の過剰の塩基性亜鉛化合物の使用のために過剰の亜鉛を頻繁に含む。
好ましい亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェートは、ジヒドロカルビルジチオリン酸の油溶性塩であり、下記の式により表し得る。
Figure 0005925929
式中、R及びR'は1個から18個まで、好ましくは2〜12個の炭素原子を含み、かつアルキル基、アルケニル基、アリール基、アリールアルキル基、アルカリール基及び脂環式基の如き基を含む同じ又は異なるヒドロカルビル基であってもよい。2〜8個の炭素原子のアルキル基がR基及びR'基として特に好ましい。こうして、これらの基は、例えば、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、アミル、n-ヘキシル、i-ヘキシル、n-オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル、2-エチルヘキシル、フェニル、ブチルフェニル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、プロペニル、ブテニルであってもよい。油溶性を得るために、ジチオリン酸中の炭素原子の合計数(即ち、R及びR')は一般に約5個以上である。それ故、亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェートは亜鉛ジアルキルジチオホスフェートを含み得る。本発明は約0.02重量%から約0.12重量%まで、好ましくは約0.03重量%から約0.10重量%までのリンレベルを含む潤滑剤組成物とともに使用される場合に特に有用であり得る。潤滑油組成物のリンレベルは約0.08重量%以下、例えば、約0.05重量%から約0.08重量%までであることが更に好ましい。
潤滑油組成物は少なくとも一つの酸化抑制剤を含んでもよい。酸化抑制剤又は酸化防止剤は鉱油が使用中に劣化する傾向を減少する。酸化劣化は潤滑剤中のスラッジ、金属表面上のワニスのような沈着物、及び増粘により証明し得る。このような酸化抑制剤として、ヒンダードフェノール、好ましくはC5-C12アルキル側鎖を有するアルキルフェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩、アルキルフェノールスルフィド、油溶性フェネート及び硫化フェネート、リン硫化又は硫化炭化水素又はエステル、リンエステル、金属チオカルバメート、米国特許第4,867,890号に記載されたような油溶性銅化合物、及びモリブデン含有化合物が挙げられる。
窒素に直接結合された少なくとも二つの芳香族基を有する芳香族アミンは、酸化防止に頻繁に使用される化合物の別のクラスを構成する。それらは好ましくはごく少量、即ち、0.4重量%までで使用され、又は更に好ましくは組成物の別の成分からの不純物として生じ得るような量以外は完全に避けられる。
一つのアミン窒素に直接結合された少なくとも二つの芳香族基を有する典型的な油溶性芳香族アミンは、6個から16個までの炭素原子を含む。アミンは二つより多い芳香族基を含んでもよい。合計少なくとも三つの芳香族基を有する化合物(二つの芳香族基が共有結合又は原子もしくは基(例えば、酸素原子もしくは硫黄原子、又は-CO-基、-SO2-基もしくはアルキレン基)により結合されており、二つが一つのアミン窒素に直接結合されている)がまた窒素に直接結合された少なくとも二つの芳香族基を有する芳香族アミンと考えられる。芳香族環は典型的には、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルアミノ基、ヒドロキシ基、及びニトロ基から選ばれる1個以上の置換基により置換されている。一つのアミン窒素に直接結合された少なくとも二つの芳香族基を有するあらゆるこのような油溶性芳香族アミンの量、0.4重量%の活性成分を超えないことが好ましい。
潤滑油組成物は少なくとも一つの粘度改質剤を含んでもよい。好適な粘度改質剤の代表的な例は、ポリイソブチレン、エチレンとプロピレンのコポリマー、ポリメタクリレート、メタクリレートコポリマー、不飽和ジカルボン酸とビニル化合物のコポリマー、スチレンとアクリルエステルのインターポリマー、並びにスチレン/イソプレン、スチレン/ブタジエン、及びイソプレン/ブタジエンの部分水素化コポリマーだけでなく、ブタジエン及びイソプレンの部分水素化ホモポリマーである。
潤滑油組成物は、少なくとも一つの粘度指数改良剤を含んでもよい。粘度指数改良剤分散剤は、粘度指数改良剤及び分散剤の両方として機能する。粘度指数改良剤分散剤の例として、アミン、例えば、ポリアミンと、ヒドロカルビル置換モノ-又はジカルボン酸(そのヒドロカルビル置換基は、粘度指数改良特性を化合物に付与するのに充分な長さの鎖を含む)の反応生成物が挙げられる。一般に、粘度指数改良剤分散剤は、例えば、ビニルアルコールのC4-C24不飽和エステルもしくはC3-C10不飽和モノ-カルボン酸又はC4-C10ジ-カルボン酸と4〜20個の炭素原子を有する不飽和窒素含有モノマーのポリマー;C2-C20オレフィンとアミン、ヒドロキシアミン又はアルコールで中和された不飽和C3-C10モノ-又はジ-カルボン酸のポリマー;又はC4-C20不飽和窒素含有モノマーをグラフトすることにより、又は不飽和酸をポリマー主鎖にグラフトし、次いでグラフトされた酸のカルボン酸基をアミン、ヒドロキシアミンもしくはアルコールと反応させることにより更に反応させられたエチレンとC3-C20オレフィンのポリマーであってもよい。
潤滑油組成物は、少なくとも一つの流動点降下剤を含んでもよい。流動点降下剤(それ以外に潤滑油流動性改良剤(LOFI)として知られている)は液体が流れ、又は注入し得る最低温度を低下させる。このような添加剤は公知である。液体の低温流動性を改良するこれらの添加剤の代表は、C8-C18ジアルキルフマレート/酢酸ビニルコポリマー、及びポリメタクリレートである。発泡制御は、ポリシロキサン型の消泡剤、例えば、シリコーン油又はポリジメチルシロキサンにより与えられる。
上記添加剤の幾つかは、多くの効果を与え得る。こうして、例えば、単一添加剤が分散剤-酸化抑制剤として作用し得る。このアプローチは公知であり、本明細書で更に詳述される必要はない。
潤滑油組成物において、ブレンドの粘度の安定性を維持する添加剤を含むことが必要であり得る。こうして、極性基含有添加剤がプレ-ブレンド段階で好適な低粘度を達成するが、或る種の組成物が長期間にわたって貯蔵される場合に、増粘することが観察された。この増粘を調節するのに有効である添加剤は、先に開示されたような無灰分散剤の調製に使用されるモノ-もしくはジカルボン酸又は酸無水物との反応により官能化された長鎖炭化水素を含む。
潤滑油組成物が一つ以上の上記添加剤を含む場合、夫々の添加剤は典型的には、添加剤がその所望される機能を与える量でベースオイルにブレンドされる。クランクケース潤滑剤中に使用される場合の、このような添加剤の代表的な有効量が、以下にリストされる。リストされた全ての値は活性成分質量%として記述される。
Figure 0005925929
完全配合潤滑油組成物(fully formulated lubricating oil composition)(潤滑粘度の油+全ての添加剤)のノアク揮発度は12以下、例えば、10以下、好ましくは8以下である。
添加剤を含む一つ以上の添加剤濃縮物(濃縮物は時折添加剤パッケージと称される)を調製することは、必須ではないが、望ましいかもしれず、それにより数種の添加剤が油に同時に添加されて潤滑油組成物を生成し得る。
最終組成物は5質量%から25質量%まで、好ましくは5〜18質量%、典型的には10〜15質量%の濃縮物を採用してもよく、残部は潤滑粘度の油である。
潤滑油は軽質蒸留鉱油から重質潤滑油、例えば、ガソリンエンジン油、潤滑鉱油及びヘビーデューティディーゼル油までの粘度の範囲であってもよい。一般に、油の粘度は100℃で測定して、約2mm2/秒(センチストークス)(centistokes)から約40mm2/秒まで、特に約4mm2/秒から約20mm2/秒までの範囲である。
天然油として、動物油及び植物油(例えば、ヒマシ油、ラード油);液体石油並びにパラフィン型、ナフテン型及び混合パラフィン-ナフテン型の水素化精製され、溶剤処理され、又は酸処理された鉱油が挙げられる。石炭又はシェールに由来する潤滑粘度の油がまた有用なベースオイルとして利用できる。
合成潤滑油として、炭化水素油及びハロ置換炭化水素油、例えば、重合オレフィン及び共重合オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン-イソブチレンコポリマー、塩素化ポリブチレン、ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、ポリ(1-デセン));アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2-エチルヘキシル)ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェノール);並びにアルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化ジフェニルスルフィド及びこれらの誘導体、類似体及び同族体が挙げられる。
アルキレンオキサイドポリマー並びにこれらのインターポリマー及び誘導体(末端ヒドロキシル基がエステル化、エーテル化等により修飾されている)が、既知の合成潤滑油の別のクラスを構成する。これらはエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの重合により調製されたポリオキシアルキレンポリマー、並びにポリオキシアルキレンポリマーのアルキルエーテル及びアリールエーテル(例えば、1000の分子量を有するメチル-ポリイソ-プロピレングリコールエーテル又は1000〜1500の分子量を有するポリ-エチレングリコールのジフェニルエーテル);並びにこれらのモノ-及びポリカルボン酸エステル、例えば、テトラエチレングリコールの酢酸エステル、混合C3-C8脂肪酸エステル及びC13オキソ酸ジエステルにより例示される。
合成潤滑油の別の好適なクラスは、ジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸)と種々のアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール)のエステルを含む。このようなエステルの具体的な例として、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2-エチルヘキシル)、フマル酸ジ-n-ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸二量体の2-エチルヘキシルジエステル、並びに1モルのセバシン酸を2モルのテトラエチレングリコール及び2モルの2-エチルヘキサン酸と反応させることにより生成された複合エステル(complex ester)が挙げられる。
合成油として有用なエステルとして、C5-C12モノカルボン酸及びポリオール並びにポリオールエステル、例えば、ネオペンチルグリコール、テトラメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及びトリペンタエリスリトールから調製されるものも挙げられる。
ケイ素をベースとする油、例えば、ポリアルキルシリコーン油、ポリアリールシリコーン油、ポリアルコキシシリコーン油又はポリアリールオキシシリコーン油及びシリケート油は、合成潤滑剤の別の有用なクラスを構成する。このような油として、テトラエチルシリケート、テトライソプロピルシリケート、テトラ-(2-エチルヘキシル)シリケート、テトラ-(4-メチル-2-エチルヘキシル)シリケート、テトラ-(p-tert-ブチル-フェニル)シリケート、ヘキサ-(4-メチル-2-エチルヘキシル)ジシロキサン、ポリ(メチル)シロキサン及びポリ(メチルフェニル)シロキサンが挙げられる。その他の合成潤滑油として、リン含有酸の液体エステル(例えば、トリクレシルホスフェート、トリオクチルホスフェート、デシルホスホン酸のジエチルエステル)及びポリマー状テトラヒドロフランが挙げられる。
未精製油、精製油及び再精製油を、本発明の潤滑剤中に使用することができる。未精製油は更に精製処理しないで天然源又は合成源から直接得られるものである。例えば、レトルト採取法操作(retorting operation)から直接得られるシェール油、蒸留から直接得られる石油、又はエステル化から直接得られ、更に処理しないで使用されるエステル油が未精製油であろう。精製油は、油が一つ以上の特性を改良するために、一つ以上の精製工程で更に処理される以外は未精製油と同様である。多くのこのような精製技術、例えば、蒸留、溶剤抽出、酸又は塩基抽出、濾過及びパーコレーション(percolation)が、当業者に知られている。再精製油は、精製油を得るのに使用される方法と同様の方法により得られるが、既にサービスで使用された油で開始する。このような再精製油はまた、再生油又は再加工油として知られており、使用済み添加剤及び油分解生成物を除去するための技術を使用する付加的な加工にしばしばかけられる。
潤滑粘度の油は、グループI、グループII、グループIII、グループIVもしくはグループVのベースストック又は上記ベースストックのベースオイルブレンドを含んでもよい。潤滑粘度の油は、グループIII、グループIVもしくはグループVのベースストック、又はこれらの混合物であることが好ましいが、但し、その油又は油ブレンドの揮発度が、ノアク試験(ASTM D5880)により測定して、13.5%以下、好ましくは12%以下、更に好ましくは10%以下、最も好ましくは8%以下であり、かつ少なくとも120、好ましくは少なくとも125、最も好ましくは約130から140までの粘度指数(VI)であることを条件とする。
本発明におけるベースストック及びベースオイルに関する定義は、米国石油協会(API)刊行物“エンジンオイルライセンシング及び認可システム”、工業サービス部門、第14編、1996年12月、補遺1、1998年12月(the American Petroleum Institute (API) publication “Engine Oil Licensing and Certification System”, Industry Services Department, Fourteenth Edition, December 1996, Addendum 1, December 1998)に見られるものと同じである。前記刊行物は原料油を以下のとおりにカテゴリー化する。
a)グループIベースストックは、90%未満の飽和物(saturate)及び/又は0.03%より多い硫黄を含み、表E-1に明記された試験方法を使用して80以上かつ120未満の粘度指数を有する。
b)グループIIベースストックは、90%以上の飽和物及び0.03%以下の硫黄を含み、表E-1に明記された試験方法を使用して80以上かつ120未満の粘度指数を有する。
c)グループIIIベースストックは、90%以上の飽和物及び0.03%以下の硫黄を含み、表E-1に明記された試験方法を使用して、120以上の粘度指数を有する。
d)グループIVベースストックは、ポリアルファオレフィン(PAO)である。
e)グループVベースストックは、グループI、II、III、又はIVに含まれないあらゆるその他のベースストックを含む。
Figure 0005925929
本発明はここに、下記の実施例を参照して記載される。しかしながら、本発明は下記の実施例に限定されない。
本発明が下記の実施例により説明されるが、これらに何ら限定されない。
下記の過塩基化スルホン酸カルシウム清浄剤を調製した。
Figure 0005925929
過塩基化スルホン酸カルシウム−摩擦改質剤ハイブリッド清浄剤の調製
トルエン360.4g、メタノール283.5g、水22.05g、及び希釈剤油(グループI 150N)24.84gを反応器に導入し、温度を約20℃に維持しながら混合した。水酸化カルシウム(Ca(OH)2)(231g)を添加し、その混合物を撹拌しながら40℃に加熱した。この方法で得られたスラリーに、トルエン135g中で希釈された、アルキルベンゼンスルホン酸342.2g(82%a.i.、1242ミリモル/kg)を添加した。その混合物の温度を約28℃に低下し、この温度に維持し、その間に二酸化炭素仕込み(800g)を10分の期間にわたってその混合物に注入した。次いでその温度を1時間にわたって60℃に上昇させてその反応を“加熱ソーキング”し、その後に約28℃の温度に冷却した。この時点で、摩擦改質剤(例えば、エトキシル化獣脂アミン摩擦改質剤)(77.83g)を希釈剤油(196.2g)の更なる仕込と一緒に撹拌下で添加した。その合成を完結するために、生成物を4時間にわたって60℃から160℃に加熱して溶媒及び水を除去した。この溶媒ストリッピング方法を減圧下でロータリーエバポレーター中で四つの段階:20分間にわたって60-67℃、40分間にわたって67-72℃、60分間にわたって72-155℃そして60分間にわたって155℃に保って行なった。生成物を150℃で濾過して沈降物を除去した。
表1中の過塩基化スルホン酸カルシウム清浄剤及び300TBNスルホン酸カルシウム清浄剤を下記のブレンドにブレンドした。
Figure 0005925929
ブレンドを60℃で12週間貯蔵し、それらを週間隔で観察することにより、それらの安定性について試験した。結果は、週の数(その後に不安定性がそれ自身を曇り及び/又は沈降物として示した)を表す。結果を>0.15%の沈降物レベルについて不合格と考えた。結果を以下に示す。
Figure 0005925929
表3に先に示されたように、ブレンド3は安定性試験で最良の結果を生じる。ブレンド3は、アミンをベースとする摩擦改質剤の存在下で製造された過塩基化スルホン酸カルシウム清浄剤を含む。このような安定性の改良は、エステル又はアミドをベースとする摩擦改質剤を含むハイブリッドについて観察されない。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕少なくとも一つのアミン基を有する少なくとも一つの摩擦改質剤を含む、過塩基化金属スルホナート清浄剤。
〔2〕過塩基化金属スルホナート清浄剤が過塩基化アルキルベンゼンスルホナート清浄剤である、前記〔1〕記載の過塩基化金属スルホナート清浄剤。
〔3〕摩擦改質剤がアルコキシル化ヒドロカルビル置換モノ-アミン及びジアミン、並びにヒドロカルビルエーテルアミン、好ましくはアルコキシル化獣脂アミン及びアルコキシル化獣脂エーテルアミン、好ましくは窒素1モル当り約2モルのアルキレンオキサイドを含むアルコキシル化アミンから選ばれる、前記〔1〕又は〔2〕記載の過塩基化金属スルホナート清浄剤。
〔4〕摩擦改質剤がエトキシル化アミン及びエトキシル化エーテルアミンから選ばれる、前記〔1〕から〔3〕のいずれか1項記載の過塩基化金属スルホナート清浄剤。
〔5〕摩擦改質剤が直鎖状ヒドロカルビル基、好ましくは直鎖状アルキル基を含む、前記〔1〕から〔4〕のいずれか1項記載の過塩基化金属スルホナート清浄剤。
〔6〕摩擦改質剤が下記の二つの構造:
Figure 0005925929
(式中、RはC 6 -C 28 アルキル基、好ましくはC 12 -C 25 アルキル基であり、X及びYは独立にOもしくはS又はCH 2 であり、x及びyは独立に1〜6であり、pは2〜4(好ましくは2)であり、かつm及びnは独立に0〜5である)
から選ばれる、前記〔1〕から〔5〕のいずれか1項記載の過塩基化金属スルホナート。
〔7〕潤滑粘度の油及び前記〔1〕から〔6〕のいずれか1項記載の過塩基化金属スルホナート清浄剤を含む、潤滑油組成物。
〔8〕潤滑油組成物中の清浄剤及び摩擦改質剤としての、前記〔1〕から〔6〕のいずれか1項記載の過塩基化金属スルホナート清浄剤の使用。
〔9〕前記〔1〕から〔6〕のいずれか1項記載の過塩基化金属スルホナート清浄剤の調製方法であって、その方法が
−アルキルアレーンスルホン酸、炭化水素溶媒、アルコール及びそのスルホン酸と反応するのに必要とされる量よりも上の化学量論上過剰のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩基(好ましくは水酸化カルシウム)の混合物を用意する工程;
−その混合物を過塩基化剤(好ましくは二酸化炭素)で過塩基化する工程;
−その混合物を“加熱ソーキング”する工程;及び
−少なくとも一つのアミン基を有する摩擦改質剤を“加熱ソーキング”工程後にその混合物に添加する工程
を含む、前記過塩基化金属スルホナート清浄剤の調製方法。
〔10〕エンジンを前記〔7〕記載の潤滑油組成物で潤滑する工程を含む、エンジン中の摩擦を減少する方法。
〔11〕少なくとも一つのアミン基を含む少なくとも一つの摩擦改質剤をその中に混入した、過塩基化金属スルホナート清浄剤。
〔12〕少なくとも一つの過塩基化金属スルホナート、及び少なくとも一つのアミン基を有する少なくとも一つの摩擦改質剤を含む、清浄剤。
〔13〕−アルキルアレーンスルホン酸、炭化水素溶媒、アルコール及びそのスルホン酸と反応するのに必要とされる量よりも上の化学量論上過剰のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩基(好ましくは水酸化カルシウム)の混合物を用意し;
−その混合物を過塩基化剤(好ましくは二酸化炭素)で過塩基化し;
−その混合物を“加熱ソーキング”し;そして
−少なくとも一つのアミン基を有する摩擦改質剤を“加熱ソーキング”工程後にその混合物に添加することにより得られる過塩基化金属スルホナート清浄剤。

Claims (8)

  1. 少なくとも一つのアミン基を有する少なくとも一つの摩擦改質剤を含む、過塩基化金属スルホナート清浄剤の製造方法であって、
    アルキルアレーンスルホン酸、炭化水素溶媒、アルコール及びそのスルホン酸と反応するのに必要とされる量よりも上の化学量論上過剰のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩基の混合物を用意する工程;
    その混合物を過塩基化剤で過塩基化する工程;
    その混合物を“加熱ソーキング”する工程;及び
    少なくとも一つのアミン基を有する摩擦改質剤を、“加熱ソーキング”工程後、過塩基化金属スルホナート清浄剤の合成の完結前に、その混合物に添加する工程;
    を含み、
    摩擦改質剤が下記の二つの構造:
    Figure 0005925929
    (式中、RはC 6 -C 28 アルキル基であり、X及びYは独立にOもしくはS又はCH 2 であり、x及びyは独立に1〜6であり、pは2〜4であり、かつm及びnは独立に0〜5である)
    から選ばれる、過塩基化金属スルホナート清浄剤の製造方法
  2. 過塩基化金属スルホナート清浄剤が過塩基化アルキルベンゼンスルホナート清浄剤である、請求項1記載の方法
  3. 摩擦改質剤がアルコキシル化ヒドロカルビル置換モノ-アミン、及びヒドロカルビルエーテルアミンから選ばれる、請求項1又は2に記載の方法
  4. 摩擦改質剤がエトキシル化アミン及びエトキシル化エーテルアミンから選ばれる、請求項1からのいずれか1項記載の方法
  5. 摩擦改質剤が直鎖状ヒドロカルビル基を含む、請求項1からのいずれか1項記載の方法
  6. 潤滑粘度の油、請求項1からのいずれか1項記載の方法により製造された過塩基化金属スルホナート清浄剤を添加する工程を含む、潤滑油組成物の製造方法
  7. 潤滑油組成物中の清浄剤及び摩擦改質剤としての、請求項1からのいずれか1項記載の方法により製造された過塩基化金属スルホナート清浄剤の使用。
  8. エンジンを請求項記載の方法で製造された潤滑油組成物で潤滑する工程を含む、エンジン中の摩擦を減少する方法。
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