JP5920246B2 - 温間プレス成形方法 - Google Patents

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Description

本発明は、加熱した鋼板(ブランク)をプレス成形する温間プレス成形方法に関する。
今日、車両部品の製造において、燃費向上を目的とした車体の軽量化と、乗員保護のための衝突安全性向上を両立させるため、高強度鋼板の適用が進められている。しかしながら、高強度鋼板は一般にプレス成形性が劣り、金型離型後の弾性回復(スプリングバック)による形状の歪みも大きく寸法精度不良が発生しやすいため、適用部品が限定されているのが現状である。
そのため、プレス成形性の改善及びスプリングバックを防止した形状凍結性向上を狙いとして、鋼板を所定の温度に加熱した後にプレス成形する、特許文献1などに記載される温間プレス成形方法が適用されている。温間プレス成形方法は冷間プレス成形方法よりも高い温度で鋼板を成形することによって、鋼板の変形抵抗を低下させて変形性能を向上させプレス割れなどの不具合を防止するとともに、形状凍結性を向上させる技術である。
また、温間・熱間プレス成形方法の他の例としては、例えば特許文献2、特許文献3及び4に開示されたものがあり、これらはプレス成形性を確保しつつ、プレスと同時にプレス成形品の一部分を急冷させて焼入をすることで強度を高めるというものである。
特開2001−314923号公報 特開2011−179028号公報 特開2011−173166号公報 特開2005−205416号公報
温間プレス成形方法では、加熱された鋼板を金型により挟圧してプレス成形するため、金型との接触により鋼板の温度はプレス成形中に低下し、金型との接触時間の差などの影響により鋼板内で不均一な温度分布が生じやすい。
薄鋼板が適用される自動車用骨格部品などでは、部品の形状が複雑であるため、温間プレス成形後のプレス成形品に温度分布(温度差)が生じている場合には、複雑な応力状態が生じ、プレス成形後の空冷中にプレス成形品の形状が歪んでしまい、所望の寸法のプレス成形品が得られないという問題がしばしば発生していた。
しかしながら、上記のいずれの特許文献にもこのような温度分布に起因するプレス成形品の歪み改善を図る手段を講じたものはない。
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、温間プレス成形後のプレス成形品の歪を防止し、寸法精度を向上させるための技術を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための手段について説明するにあたって、まず、一般的な鋼板の深絞り成形について図11、図12に基づいて説明する。
図11は、一般的な鋼板の深絞り成形を行うプレス成形装置1の立断面を図示したものである。このプレス成形装置1は、図12(a)に示すようなハット断面を有する部品(ハット断面部品2)をプレス成形するものである。図11(a)はプレス成形開始前を説明する図であり、図11(b)は、プレス下死点を説明する図である。
このプレス成形装置1は、図11に示すように、凹部を有する上金型3(ダイス)と、前記凹部に挿入可能となっている凸部を有する下金型5(パンチ)と、前記凸部の両側に配置され、上金型3の肩部7とで被加工材料となる鋼板9を挟圧するしわ押え11と、しわ押え11に挟圧力を与えるクッションピン13とを備えている。
このプレス成形装置1を用いたプレス成形方法は、図11(a)に示すように、鋼板9を所定の温度に加熱したものを両方のしわ押え11に亘るように載置し、図11(b)に示すように、上金型3の肩部7としわ押え11とで鋼板9を挟圧しつつ、上金型3を下降させてハット断面部品2を成形するというものである。
図11(b)に示すように、上金型3の肩部7としわ押え11とで挟圧されている部分(図11(b)中の四角枠で囲んだ部分)は、ハット断面部品2においてフランジ部15となる部分である(図12参照)。
自動車用骨格部品は、上記のように成形されたハット断面部品2を2つ用い、図12(b)に示すように、開口側を対向させてフランジ部15を重ね合わせてスポット溶接等で接合して作成されるものが多い。そのため、フランジ部15は平坦であることが望ましく、これが鋼板9を上金型3の肩部7としわ押え11とで挟圧しながら成形する理由の一つでもある。
しかし、上記のようなプレス成形方法の場合、ハット断面部品2のフランジ部15は、プレス成形中において、他の部分と比較して上金型3の肩部7としわ押え11に長く接触し、かつ挟圧しているため、鋼板9から金型への熱移動量が多く、フランジ部15とそれ以外の部分(特にパンチ底部)との温度差が著しく大きくなり、ハット断面部品全体として不均一な温度分布となってしまう。
上記のような成形により不均一な温度分布になったハット断面部品2を空冷すると、前述したように形状に歪みを生ずる。発明者は、この歪みと温度分布との関係について検討したので、図13に基づいて詳細に説明する。
図13は、ハット断面部品2のフランジ部15とそれ以外の部分の平均温度差(℃)と、ハット断面部品2の成形直後に金型から外した時点と空冷後との形状の歪み量(mm)の関係を示したグラフである。図13において横軸は、フランジ部15の平均温度とフランジ部以外の部分の平均温度との差であり、差が大きいほど、ハット断面部品2のフランジと内部との温度差が大きいことを示す。また、縦軸は成形直後に金型から外した時点と空冷後との形状の歪み量を示す。なお、平均温度は、成形直後に金型から外した時点で、ほぼ同一の幅方向位置であって、フランジの長手方向に複数箇所、フランジ以外の部分の長手方向に複数箇所を放射温度計で測定して値を平均化した。
ここで形状の歪み量について、図14に基づいて説明する。図14において、太い実線はプレス下死点の形状を図示したものであり、細い実線は成形直後に金型から外した形状、点線は空冷後の形状を図示したものである。形状の歪み量は、ハット断面部品2の成形直後に金型から外した時点の形状と空冷後の形状とにおけるフランジ部15の高さの変化量として定義した(図14参照)。
図13を見ると、温度差が大きくなるにしたがって形状の歪み量が大きくなることがわかる。これには次の理由が考えられる。
ハット断面部品2のフランジと内部とに温度差があると、冷却される過程において、ハット断面部品2の各部位によって熱収縮量が異なる。すなわち、温度が高い部位は比較的大きく熱膨張しているため冷却過程で大きく収縮するが、逆に温度が低い部位はあまり熱膨張していないため冷却過程における収縮は比較的小さい。
このように熱収縮量が異なることは、冷却過程において部品全体が均一に収縮しないことを意味しており、特にハット断面部品2等のように形状が複雑である場合、形状による剛性の大小も影響して複雑な応力状態となり、その結果、ハット形状に歪みが発生してしまう。
上記のような形状の歪みは、温度差が大きいほど熱収縮量の差が大きくなるためより顕著になる。
従って、図13に示すように、温度差が大きくなるにしたがって形状の歪み量が大きくなると考えられる。
上記のような形状の歪みを発生させないようにするには、プレス成形後の部品の温度分布が均一になるようにプレス成形すればよいと発明者らは考えた。そのためには、プレス成形において温度低下するハット断面部品2の部位を特定し、その部位を成形する金型の部位を、予め所定の温度に加熱してプレス成形すればよい。より具体的には、特に温度低下が大きかったフランジ部15を成形する金型部位(すなわち、しわ押え11とそれに相対する上金型3の部分(肩部7))を加熱してプレス成形を行えばよい。この点について実験を行ったところ、フランジ部15の温度低下が小さくなり、温度分布が比較的均一になりハット断面部品2の空冷による寸法精度不良が改善されることを確認した。
また、図13のグラフの傾きに注目すると、平均温度差が100℃を超えると急激に空冷による形状の歪み量が増加していることが分かる。従って、形状の歪み量を低減するためには平均温度差は100℃以内に抑えることが望ましい。
また、そのためにフランジ部15を成形する金型の部位を、鋼板9の成形開始時温度と300℃差以内になるように加熱しておくと形状の歪み量低減について高い効果が得られることを確認した。
なお、上記ではハット断面部品2を例に説明したが、形状はこれに限定されない。
本発明はかかる知見に基づくものであり、具体的には以下の構成からなるものである。
(1)本発明にかかる温間プレス成形方法は、鋼板を400〜700℃の範囲で均一加熱してプレス成形金型を用いてプレス成形を行う温間プレス成形方法であって、
プレス成形時に前記鋼板と接触する前記プレス成形金型における部位のうちの特定部位(金型特定部位)を加熱して前記鋼板をプレス成形するプレス成形工程を備えてなり、
前記金型特定部位は、400〜700℃の範囲で均一加熱した前記鋼板を室温のプレス成形金型でプレス成形したときの前記鋼板の温度分布を求め、前記温度分布に基づいて、前記鋼板の温度低下が予め定めた温度差以上となる前記鋼板の部位(鋼板特定部位)と接触する金型特定部位であることを特徴とするものである。
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記金型特定部位の加熱は、前記鋼板の均一加熱温度と前記金型特定部位との温度差を所定値以内とするように行うことを特徴とするものである。
(3)また、上記(2)に記載のものにおいて、前記鋼板の均一加熱温度と前記金型特定部位の温度差を300℃以内に設定することを特徴とするものである。
(4)また、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のものにおいて、前記予め定めた温度差以上となる鋼板特定部位は、前記温度分布における温度低下の最も少ない鋼板部位を基準として、当該部位との温度差が100℃以上ある部位であることを特徴とするものである。
(5)また、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載のものにおいて、前記温度分布は、測定又は数値解析によって得ることを特徴とするものである。
(6)また、上記(1)乃至(5)のいずれかに記載のものにおいて、前記鋼板は、室温における引張強さTSが440MPa以上で、降伏比が0.85以上である引張特性を有する高強度熱延鋼板であって、該高強度熱延鋼板を、400〜700℃の温間プレス成形温度域の温度に加熱し該温間プレス成形温度域の温度で引張試験を行った際の、降伏応力YS2が、室温における降伏応力YS1の80%以下で、かつ全伸びEl2が、室温における全伸びEl1の1.1倍以上であり、さらに、前記温間プレス成形温度域の温度で15%以下の歪を付与する温間加工を施し室温まで冷却したのち、室温で引張試験を行った際の、降伏応力YS3が、室温における降伏応力YS1の80%以上で、かつ全伸びEl3が、室温における全伸びEl1の80%以上であり、温間プレス成形性に優れることを特徴とするものである。
(7)また、上記(6)に記載のものにおいて、前記鋼板が、質量%で、
C:0.015〜0.16%、 Si:0.2%以下、
Mn:1.8%以下、 P:0.035%以下、
S:0.01%以下、 Al:0.1%以下、
N:0.01%以下、 Ti:0.13〜0.25%
を、下記(1)式を満足するように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、金属組織が面積率で95%以上のフェライト相からなり、かつフェライトの平均結晶粒径が1μm以上で、該フェライト結晶粒中に、平均粒子径が10nm以下の炭化物を分散析出させた組織を有することを特徴とするものである。

2.00≧(C/12)/(Ti/48+V/51+W/184+Mo/96+Nb/93+Zr/91+Hf/179)≧1.05…(1)
ここで、C、Ti、V、Mo、W、Nb、Zr、Hf:各元素の含有量(質量%)
(8)また、上記(7)に記載のものにおいて、前記鋼板が、前記組成に加えてさらに、質量%で、V:1.0%以下、Mo:0.5%以下、W:1.0%以下、Nb:0.1%以下、Zr:0.1%以下、Hf:0.1%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とするものである。
(9)また、上記(7)または(8)に記載のものにおいて、前記鋼板が、前記組成に加えてさらに、質量%で、B:0.003%以下を含有することを特徴とするものである。
(10)また、上記(7)〜(9)のいずれかに記載のものにおいて、前記鋼板が、前記組成に加えてさらに、質量%で、Mg:0.2%以下、Ca:0.2%以下、Y:0.2%以下、REM:0.2%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含むことを特徴とするものである。
(11)また、上記(7)〜(10)のいずれかに記載のものにおいて、前記鋼板が、前記組成に加えてさらに、質量%で、Sb:0.1%以下、Cu:0.5%以下、Sn:0.1%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含むことを特徴とするものである。
(12)また、上記(7)〜(11)のいずれかに記載のものにおいて、前記鋼板が、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ni:0.5%以下、Cr:0.5%以下を含むことを特徴とするものである。
(13)また、上記(7)〜(12)のいずれかに記載のものにおいて、前記鋼板が、前記組成に加えてさらに、質量%で、O、Se、Te、Po、As、Bi、Ge、Pb、Ga、In、Tl、Zn、Cd、Hg、Ag、Au、Pd、Pt、Co、Rh、Ir、Ru、Os、Tc、Re、Ta、Be、Srのうちから選ばれた1種または2種以上を合計で2.0%以下含有することを特徴とするものである。
(14)また、上記(7)〜(13)のいずれかに記載のものにおいて、前記鋼板が、表面にめっき層を具えることを特徴とするものである。
本発明にかかる温間プレス成形方法は、鋼板を400〜700℃の範囲で均一加熱してプレス成形金型を用いてプレス成形を行う温間プレス成形方法であって、プレス成形時に前記鋼板と接触する前記プレス成形金型における部位のうちの特定部位(金型特定部位)を加熱して前記鋼板をプレス成形するプレス成形工程を備えてなるものである。
またこの前提として、前記金型特定部位は、400〜700℃の範囲で均一加熱した前記鋼板を室温のプレス成形金型でプレス成形したときの前記鋼板の温度分布を求め、前記温度分布に基づいて、前記鋼板の温度低下が予め定めた温度差以上である前記鋼板の部位(鋼板特定部位)と接触する部位とした。
以上の手段を講じることにより、プレス成形後のプレス成形品の温度分布を所定の範囲以内とすることができる。これにより、プレス成形品がプレス成形後に室温まで冷却される過程において、熱収縮量の違いによるスプリングバックやねじれなどによる形状の歪みを防止することができ、寸法精度が良好な自動車用骨格部品を製造することができる。
その結果、従来は、寸法精度不良が原因で適用できなかった高強度鋼板を自動車用骨格部品に適用することができるようになり、車体の軽量化などの環境問題改善に大きく寄与することができる。
本発明実施の形態1にかかる温間プレス成形方法の一工程を説明する説明図である。 本発明実施の形態1にかかる温間プレス成形方法の他の工程を説明する説明図であり、この工程は図1で説明する工程に先立って行うものである。 一般的なプレス成形方法(フォーム成形)を説明する説明図である。 絞り成形とフォーム成形とのプレス成形前後の平均温度差の違いを説明する説明図である。 本発明実施の形態2にかかる温間プレス成形方法の一工程を説明する説明図である。 実施例にかかるプレス成形品とその成形に用いる下金型の斜視図である。 実施例の結果を説明する説明図であり、金型特定部位の加熱温度によるフランジ部とそれ以外の部分との平均温度差の違いを説明する図である(その1)。 実施例による実験結果を説明する説明図であり、プレス成形品の中央部と端部との断面を比較し、プレス成形品の冷却による変形(ねじれ)を説明する図である(その1)。 実施例による実験結果を説明する説明図であり、金型特定部位の加熱温度によるねじれ角度の結果の違いを説明する図である(その2)。 実施例による実験結果を説明する説明図であり、目標形状に対するプレス成形品の冷却による変形(形状の歪み量)を説明する図である(その2)。 一般的な温間プレス成形(深絞り成形)方法を説明する説明図である。 一般的な温間プレス成形方法におけるプレス成形品を説明する説明図であり、プレス成形品の断面(ハット断面形状)と、このプレス成形品を用いた製品の組み立ての一例を説明する図である。 一般的な温間プレス成形方法によって成形されたプレス成形品における平均温度差(フランジ部とそれ以外の部位)と形状の歪み量(成形直後に金型から外した時点と空冷後との形状変化量)との関係を示すグラフである。 一般的な温間プレス成形方法におけるプレス成形品の冷却による変形を説明する説明図である。
[実施の形態1]
本発明の一実施の形態にかかる温間プレス成形方法は、鋼板9を400〜700℃の範囲で均一加熱してプレス成形金型を用いてプレス成形を行う温間プレス成形方法であって、図1に示すようなプレス成形装置21を用いて、プレス成形時に鋼板9と接触するプレス成形金型における部位のうちの特定部位(以下、これを「金型特定部位」という)を、加熱手段を用いて加熱して鋼板9をハット断面部品2にプレス成形するプレス成形工程を備えてなるものである。
ここで金型特定部位とは、成形後のハット断面部品2の温度分布を所定の温度範囲内にするために、加熱を要する金型の部位である。
金型特定部位の特定方法について図2を用いて説明する。図2は図11に示したプレス成形装置1と同一のプレス成形装置である。なお、図2において、図11と同一のものには同一の符号を付してある。
プレス成形装置1は、図2に示すように、凹部を有する上金型3(ダイス)と、前記凹部に挿入可能となっている凸部を有する下金型5(パンチ)と、前記凸部の両側に配置され、上金型3の肩部7とで被加工材料となる鋼板9を挟圧するしわ押え11と、しわ押え11に挟圧力を与えるクッションピン13とを備えている。図2(a)はプレス成形開始前を説明する図であり、図2(b)はプレス下死点を説明する図である。
金型特定部位の特定には、まず、400〜700℃の範囲で均一加熱した鋼板9を、図2に示したプレス成形機を用いて室温の金型でプレス成形をしたときの鋼板9の温度分布を求める。ここで、プレス成形したときとは、下死点状態または離型直後等を意味する。
鋼板9の部位によって金型と接触する時間が異なるため、鋼板9の温度は不均一な分布となる。なお、温度分布の求め方は、測定による方法でもよいし、あるいは数値解析による方法でもよい。測定による場合は、サーモビューワー等の放射温度計等を用いるとよい。
次に、この求めた温度分布に基づいて、鋼板9の温度低下が予め定めた温度以上である鋼板9の部位(以下、これを「鋼板特定部位」という)を特定する。本実施の形態において、鋼板特定部位はフランジ部15が該当した。
なお、鋼板特定部位は、前記鋼板9の温度分布における温度低下の最も少ない部位を基準として、当該部位との温度差が100℃以上ある部位としてもよい。
次に、金型特定部位を特定する。金型特定部位とは、上述したとおり金型における鋼板特定部位と接触する部位である。本実施の形態において、金型特定部位は、フランジ部15と接触する部位であり、上金型の肩部7及びしわ押え11が該当する。
上記のような金型特定部位の特定は一度行えばよい。後はこの部位を加熱するようなプレス成形装置を用いてプレス成形を行う。ここで、加熱された鋼板9を何度もプレス成形すれば金型の温度分布が変化し、これに伴い鋼板特定部位及び金型特定部位が変化するのではないか、ということが懸念される。しかしながら、この点は、発明者による実験によって金型の温度分布が変化する特定部位はほぼ同じ部位であることが分かっている。従って、一度特定した金型特定部位を継続的に加熱部位としても問題ない。
上記のとおり金型特定部位を特定したので、この金型特定部位を加熱してプレス成形するためのプレス成形装置21(図1参照)の構成について説明する。
本実施の形態にかかるプレス成形装置21は、図2に示すプレス成形装置1の上金型3の肩部7及びしわ押え11(金型特定部位)に、加熱手段としてカートリッジヒーター23を埋め込んだものである。なお、加熱手段を有する点以外の構成は図2に示したものと同一であるため、図1においては同一の符号を付しており、また、これらの詳細な説明についても省略する。
このカートリッジヒーター23で加熱すれば、金型特定部位を所定の温度にすることができる。なお、カートリッジヒーター23は上金型3に4つ、及びしわ押え11の各々に2つずつとしたが、埋め込む数はこれに限られず、カートリッジヒーター23の能力や、金型の大きさ、成形条件等に応じて適宜変更すればよい。また、加熱手段はカートリッジヒーター23に限られない。また、高温を保持したい金型の部位に断熱材50を貼って加熱し、プレス成形直前に断熱材50を外して金型を高温にしたままプレス成形してもよい。さらには、金型に埋め込んだカートリッジヒーター23の周辺を断熱材50で仕切って金型の一部のみを加熱するようにしてもよい。
加熱手段で金型特定部位を加熱する際は、鋼板9の均一加熱温度と金型特定部位との温度差を所定値以内とするように行う。なお、前記温度差を300℃以内に設定することが好ましい。
以上のように、本実施の形態においては、鋼板特定部位を加熱可能なプレス成形装置21を用いることにより、プレス成形後のハット断面部品2の温度分布を所定の温度差以内とすることができる。これにより、冷却過程において、熱収縮量の違いによる形状の歪みを防止することができ、寸法精度が良好なハット断面部品2を製造することができる。
[実施の形態2]
上記のプレス成形方法は絞り成形であったが、フォーム成形にも本発明は適用できる。本発明にかかる実施の形態2の説明をする前に、まず一般的なフォーム成形について、図3に基づいて説明する。図3は、一般的なフォーム成形を行うプレス成形装置31の立断面図である。図3(a)はプレス成形開始前を説明する図であり、図3(b)はプレス下死点を説明する図である。
プレス成形装置31は、図3に示すとおり、凹部を有する上金型33(ダイ)と、前記凹部に挿入可能な凸部を有する下金型35(パンチ)を備えている。成形方法は、図3(a)に示すように、下金型35の前記凸部に加熱した鋼板9を載置し、上金型33を下降させて、下金型35の前記凸部の凸R部37と上金型の前記凹部の内側の肩R部39とで折り曲げるようにしてプレス成形する(図3(b)参照)ものである。
フォーム成形の場合も絞り成形場合と同様に、金型と接触することで鋼板9の温度低下が生じるが、成形方法の違いにより温度低下の様子も異なる。このことについて、図4に基づいて説明する。図4は、絞り成形とフォーム成形についての実験結果を説明する図である。
実験は、板厚1.6mm、引張強度980MPa級の鋼板9を用いて、温度700℃に鋼板9を加熱した後、絞り成形とフォーム成形を行った。図4は、プレス成形前後の鋼板9とハット断面部品2との平均温度の差を比較したものである。図4を見ると、絞り成形の場合は約170℃低下していたが、フォーム成形の場合は約35℃程度の低下であった。これは、フォーム成形の場合、プレス成形によって比較的温度低下しないことを意味している。これは、フォーム成形の場合、絞り成形の場合(図2参照)と異なり、図3に示すように、しわ押えが不要であることから鋼板9と接触する金型の面積が少なく、接触による熱移動が小さいためであると考えられる。従って、フォーム成形の場合、金型特定部位を加熱する際に必要な熱量は、絞り成形の場合と比較して少なくて済む。
上記のことを踏まえて、本発明を適用したフォーム成形の一実施形態について以下に説明する。まず、金型特定部位を特定する。特定は、以下のようにして行う。400〜700℃の範囲で均一加熱した鋼板9を、図3に示したプレス成形装置31を用いて室温のプレス成形金型でプレス成形をしたときの鋼板9の温度分布を求める。温度分布は、測定又は数値解析によって得ることができる点は本発明実施の形態1と同様である。
次に、この求めた温度分布に基づいて、鋼板9の鋼板特定部位を特定する。本実施の形態において鋼板特定部位は、フランジ部15と縦壁部とをつなぐ部位、縦壁部、及びパンチ底部と縦壁部とをつなぐ部位が該当した。
そこで、本発明実施の形態において、金型特定部位として、下金型の凸部の凸R部37と上金型の凹部の内側の肩R部39を特定した。
図5に、上記で特定した金型特定部位を加熱する加熱手段を備えたプレス成形装置41を示す。このプレス成形装置41は、図3に示したプレス成形装置31の金型特定部位に加熱手段としてカートリッジヒーター23を埋め込んだものである。なお、図5において、図3と同一のものには同一の符号を付してある。また、断熱材50をカートリッジヒーター23の周囲に埋めて金型肩R部のみを集中加熱してもよい。
上述したとおり、フォーム成形の場合はプレス成形による温度低下がほとんどないため、図1に示したプレス成形装置21と比較して、必要なカートリッジヒーター23の数は少ないものになっている。なお、埋め込む数は図示したものに限られず、カートリッジヒーター23の能力や、金型の大きさ、成形条件等に応じて適宜変更すればよい。また、加熱手段はカートリッジヒーター23に限られない。
以上のように、本実施の形態においては、鋼板特定部位を加熱可能なプレス成形装置41を用いることにより、プレス成形後のハット断面部品2の温度分布を所定の範囲以内とすることができる。これにより、冷却過程において、熱収縮量の違いによる形状の歪みを防止することができ、寸法精度が良好なハット断面部品2を製造することができる。
[実施の形態3]
次に、上記のプレス成形装置21によって温間プレス成形するのに好適で温間プレス成形性に優れた高強度熱延鋼板について説明する。
なお、ここでいう「温間プレス成形性に優れた」とは、400℃以上700℃以下の温間プレス成形温度域において厳しい加工条件にも対応可能な極めて良好な延性を有し、温間プレス成形の前後で機械的特性の変化が小さい場合をいうものとする。
本発明の温間プレス成形用高強度熱延鋼板は、室温における降伏比が0.85以上かつ引張強さTS1が440MPa以上である鋼板を対象とする。なお、ここで言う「室温」とは、(22±5)℃を意味するものとする。
本発明の温間プレス成形用高強度熱延鋼板は、室温における降伏比が0.85以上かつ引張強さTS1が440MPa以上で、400〜700℃の温間プレス成形温度域における降伏応力(温間降伏応力)YS2が、室温における降伏応力(降伏強さ)YS1の80%以下、全伸びEl2が、室温における全伸びEl1の1.1倍以上である引張特性を有する。
このような引張特性を有する高強度熱延鋼板は、本発明者らの検討によれば、400〜700℃の温間プレス成形温度域において変形抵抗が低下するとともに延性が上昇し、温間プレス成形温度域での優れた加工性(温間プレス成形性)を示し、温間プレス成形温度域において、鋼板を複雑な形状の部材に成形することが可能となる。上記した引張特性を具備しない鋼板は、温間プレス成形温度域において、スプリングバックの影響が顕著となり所望の形状凍結性が得られなかったり、割れが生じたりする等の不具合が生じるため、鋼板を複雑な形状の部材に成形することが難しい。
温間プレス成形温度域における降伏応力(温間降伏応力)YS2が、室温における降伏応力YS1の80%を超えると、温間プレス成形時の、鋼板変形抵抗が十分に低減しておらず、温間プレス成形時の負荷荷重(プレス荷重)を大きくする必要があり、金型寿命が短寿命化するという問題となる。また、大きな負荷荷重(プレス荷重)を付与するために、加工機(プレス機)本体も必然的に大きくならざるを得ない。加工機(プレス機)本体が大きくなると、温間プレス成形温度に加熱した鋼板を加工機まで搬送するのに長時間を要し、鋼板温度の低下を招き、所望の温度で温間プレス成形することが難しくなる。また更に、形状凍結性も十分に改善されないため、温間プレス成形を利用する効果を発現することができない。また、温間プレス成形温度域における全伸びEl2が、室温における全伸びEl1の1.1倍未満では、温間プレス成形時における加工性改善が不十分となり、温間プレス成形時に割れ等の欠陥が生じる。
また、本発明の温間プレス成形用高強度熱延鋼板は、温間プレス成形温度域に加熱して15%以下の歪を付与したのち、温間プレス成形温度域から室温まで冷却した後の降伏応力(降伏強さ)YS3が加熱前の室温における降伏応力(降伏強さ)YS1の80%以上であり、全伸びEl3が加熱前の室温における全伸びEl1の80%以上となる引張特性を有する。すなわち、温間プレス成形用高強度熱延鋼板は、温間プレス成形温度域で加工され、室温に冷却されたのちでも、所望の高強度と高延性を維持できる高強度熱延鋼板である。
通常、鋼板に温間プレス成形を施して部材を製造する場合、鋼板には相当塑性歪みで10%程度までの歪が導入される。そこで、本発明では、400℃以上700℃以下の温間プレス成形温度域で最大15%以下の歪が導入される温間プレス成形を想定し、温間プレス成形温度域に加熱して15%以下の歪を与えたのち、温間プレス成形温度から室温まで冷却した後の鋼板の降伏応力および全伸びを規定する。温間プレス成形前後で優れた延性を維持するという観点から、歪付与は、15%以下に限定した。
温間プレス成形温度域に加熱し温間プレス成形し、室温まで冷却したのちの、室温における降伏応力YS3および全伸びEl3が、温間プレス成形温度域に加熱する前の室温における降伏応力YS1および全伸びEl1の80%未満であると、温間プレス成形後の部材の強度および全伸びが不足する。このような鋼板を使用して、温間プレス成形によって所望形状の自動車部材とすると、自動車衝突時の衝撃吸収性能が不足し、自動車部材としての信頼性が損なわれる。
このようなことから、本発明では、400℃以上700℃以下の温間プレス成形温度域に加熱して15%以下の歪を付与したのち、温間プレス成形温度から室温まで冷却した後の降伏応力YS3および全伸びEl3を、温間プレス成形温度域に加熱する前の室温における降伏応力YS1および全伸びEl1の80%以上に限定した。
上記したような引張特性を鋼板に付与するために、本発明では、鋼板組成を、質量%で、C:0.015〜0.16%、Si:0.2%以下、Mn:1.8%以下、P:0.035%以下、S:0.01%以下、Al:0.1%以下、N:0.01%以下、Ti:0.13〜0.25%を、次(1)式
2.00≧(C/12)/(Ti/48+V/51+W/184+Mo/96+Nb/93+Zr/91+Hf/179)≧1.05…(1)
(ここで、C、Ti、V、Mo、W、Nb、Zr、Hf:各元素の含有量(質量%))
を満足するように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成に限定した。
上記した成分が、基本の成分であるが、この基本の成分に加えて、選択元素として、V:1.0%以下、Mo:0.5%以下、W:1.0%以下、Nb:0.1%以下、Zr:0.1%以下、Hf:0.1%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、B:0.003%以下、および/または、Mg:0.2%以下、Ca:0.2%以下、Y:0.2%以下、REM:0.2%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、Sb:0.1%以下、Cu:0.5%以下、Sn:0.1%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、Ni:0.5%以下、Cr:0.5%以下のうちから選ばれた1種または2種、および/または、O、Se、Te、Po、As、Bi、Ge、Pb、Ga、In、Tl、Zn、Cd、Hg、Ag、Au、Pd、Pt、Co、Rh、Ir、Ru、Os、Tc、Re、Ta、Be、Srのうちから選ばれた1種または2種以上を合計で2.0%以下、を含有してもよい。
つぎに、本発明鋼板の組成限定理由について説明する。以下、とくに断わらない限り質量%は単に%で記す。
C:0.015〜0.16%
Cは、Ti、或いは更にV、Mo、W、Nb、Zr、Hfと結合して炭化物を形成し、マトリックス中に微細分散して、鋼板を高強度化する、本発明では重要な元素である。引張強さTS:440MPa以上の高強度を達成するためには、Cは、少なくとも0.015%以上含有する必要がある。一方、0.16%を超えて多量に含有すると、延性、靱性が著しく低下し、良好な衝撃吸収能(例えば引張強さTS×全伸びElで表される)を確保できなくなる。このため、Cは0.015〜0.16%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.04〜0.14%である。
Si:0.2%以下
Siは、固溶強化元素である。固溶強化は、高温域での強度低下を抑制るため、温間プレス成形温度域での加工性(温間プレス成形性)向上を阻害する。このため、本発明ではできるだけ低減することが好ましいが、0.2%までは許容できる。このようなことから、Siは0.2%以下に限定した。なお、好ましくは0.06%以下である。なお、Siは不純物レベルまで低減してもよい。
Mn:1.8%以下
Mnは、Siと同様、固溶強化元素であり、高温域での強度低下を抑制して、温間プレス成形温度域での加工性(温間プレス成形性)向上を阻害する。このため、本発明ではできるだけ低減することが好ましいが、1.8%までは許容できる。このようなことから、Mnは1.8%以下に限定した。なお、好ましくは1.1%以下である。また、Mn含有量が極端に少なくなると、オーステナイト(γ)→フェライト(α)変態点が過度に上昇して、炭化物が粗大化することが懸念されるため、Mnは0.5%以上とすることがより好ましい。
P:0.035%以下
Pは、固溶強化能が非常に高く、高温域での強度低下を抑制し、温間プレス成形温度域での加工性向上を阻害する元素である。さらに、Pは,粒界に偏析するため、温間プレス成形時ならびに温間プレス成形後の延性を低下させる。このようなことから、Pは極力低減することが好ましいが、0.035%までは許容できる。このため、Pは0.035%以下に限定した。なお、好ましくは0.02%以下である。
S:0.01%以下
Sは、鋼中では介在物として存在する元素であり、Tiと結合して強度を低下させたり、Mnと結合して硫化物を形成し、常温や温間での鋼板の延性を低下させる。このため、Sは極力低減することが好ましいが、0.01%までは許容できる。このため、Sは0.01%以下に限定した。なお、好ましくは0.004%以下である。
Al:0.1%以下
Alは、脱酸剤として作用する元素であり、このような効果を得るためには0.02%以上含有することが望ましい。一方、0.1%を超えて含有すると、酸化物系介在物が増加し、温間での延性低下が著しくなる。このため、Alは0.1%以下に限定した。なお、好ましくは0.07%以下である。
N:0.01%以下
Nは、製鋼の段階でTiやNb等と結合し、粗大な窒化物を形成するため、多量の含有は、鋼板強度が著しく低下させる。このようなことから、Nは極力低減することが好ましいが、0.01%までは許容でき、Nは0.01%以下に限定した。なお、好ましくは0.007%以下である。
Ti:0.13〜0.25%
Tiは、Cと結合して炭化物を形成し、鋼板の強化に寄与する元素である。室温での引張強さ440MPa以上を確保するためには、0.13%以上の含有を必要とする。一方、0.25%を超える含有は、鋼素材の加熱に際し、粗大なTiCが残存して、ミクロボイドを生成する。このため、Tiは0.25%以下に限定した。なお、好ましくは0.22%以下である。また、より好ましくは0.15%以上である。
2.00≧(C/12)/(Ti/48+V/51+W/184+Mo/96+Nb/93+Zr/91+Hf/179)≧1.05…(1)
(ここで、C、Ti、V、Mo、W、Nb、Zr、Hf:各元素の含有量(質量%))
なお、(1)式に記載された元素が含有されない場合には、(1)式の中央値における当該元素の含有量を零として、(1)式の適否を計算するものとする。
(1)式は、炭化物による析出強化を発現させ、温間プレス成形後に所望の高強度を確保するために、必須の要件である。C、Ti、V、Mo、W、Nb、Zr、Hfの含有量が(1)式を満足して初めて、所望量の炭化物を析出させることができ、所望の高強度を確保することができる。(1)式の中央値が、1.05未満では、粒界強度の低下や加熱に対して炭化物熱安定性が不安定となり、炭化物が粗大化しやすくなるといった不具合が生じるため、所望の高強度化が達成できなくなる。一方、(1)式の中央値が2.00を超えると、セメンタイトが過度に析出し、温間プレス成形中にミクロボイド生成の原因となり、温間プレス成形中の割れの原因となる。このようなことから、(1)式を満足するように調整して各元素を含有することとした。なお、好ましくは、(1)式中の中央値は1.85以下1.05以上である。
上記した成分が、基本の成分であるが、この基本の成分に加えて、選択元素として、V:1.0%以下、Mo:0.5%以下、W:1.0%以下、Nb:0.1%以下、Zr:0.1%以下、Hf:0.1%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、B:0.003%以下、および/または、Mg:0.2%以下、Ca:0.2%以下、Y:0.2%以下、REM:0.2%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、Sb:0.1%以下、Cu:0.5%以下、Sn:0.1%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、Ni:0.5%以下、Cr:0.5%以下のうちから選ばれた1種または2種、および/または、O、Se、Te、Po、As、Bi、Ge、Pb、Ga、In、Tl、Zn、Cd、Hg、Ag、Au、Pd、Pt、Co、Rh、Ir、Ru、Os、Tc、Re、Ta、Be、Srのうちから選ばれた1種または2種以上を合計で2.0%以下、を含有してもよい。
V:1.0%以下、Mo:0.5%以下、W:1.0%以下、Nb:0.1%以下、Zr:0.1%以下、Hf:0.1%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、V、Mo、W、Nb、ZrおよびHfは、Tiと同様、炭化物を形成して鋼板の強化に寄与する元素である。そのため、鋼板の更なる高強度化が要求される場合において、Tiに加えて、V、Mo、W、Nb、ZrおよびHfのうちから選択して、1種または2種以上含有することができる。
このような効果を得るためには、Vは0.01%以上、Moは0.01%以上、Wは0.01%以上、Nbは0.01%以上、Zrは0.01%以上、Hfは0.01%以上、含有することが好ましい。Vが1.0%を超えると、炭化物が粗大化しやすくなり、温間プレス成形温度域で炭化物が粗大化するため、室温まで冷却した後の炭化物の平均粒子径を10nm以下に調整することが困難となる。そのため、Vは1.0%以下とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.2%以下である。
また、MoおよびWが、0.5%、1.0%をそれぞれ超えると、γ→α変態が極度に遅延する。このため、鋼板組織にベイナイト相やマルテンサイト相が混在し、実質的にフェライト相単相を得ることが困難となる。このようなことから、MoおよびWはそれぞれ0.5%以下、1.0%以下に限定することが好ましい。
また、Nb、ZrおよびHfは、それぞれ0.1%を超えて含有すると、スラブ再加熱時に、粗大な炭化物が溶解しきれず残存する。このため、温間プレス成形中にミクロボイドが生成しやすくなる。このようなことから、Nb、ZrおよびHfはそれぞれ0.1%以下に限定することが好ましい。
B:0.003%以下
Bは、γ→α変態の核生成を阻害して、変態点を低下させる作用を有し、炭化物の微細化に寄与する元素であり、必要に応じて選択して含有できる。このような効果を得るには、0.0002%以上の含有することが望ましい。一方、0.003%を超えて含有しても、効果が飽和し経済的に不利となる。そのため、Bは0.003%以下に限定することが好ましい。より好ましくは0.002%以下である。
Mg:0.2%以下、Ca:0.2%以下、Y:0.2%以下、REM:0.2%以下のうちから選ばれた1種または2種以上
Mg、Ca、Y、REMはいずれも、介在物を微細化する作用を有し、温間プレス成形中での介在物と母材近傍での応力集中を抑制して、延性を向上させる効果を有し、必要に応じて選択して含有できる。なお、REMは、Rare Earth Metalの略でランタノイド系の元素を指す。
Mgは0.2%、Caは0.2%、Yは0.2%、REMは0.2%を超える含有は、鋳造性を低下させ、熱間での延性を低下させるとともに、鋼板の延性を低下させる悪影響が顕在化する。このため、含有する場合には、Mg:0.2%以下、Ca:0.2%以下、Y:0.2%以下、REM:0.2%以下に限定することが好ましい、なお、より好ましくは、Mgは0.001〜0.1%、Caは0.001〜0.1%、Yは0.001〜0.1%、REMは0.001〜0.1%で、好ましくは、これら元素の合計量が0.2%以下となるように調整することが望ましく、より好ましくは0.1%以下である。
Sb:0.1%以下、Cu:0.5%以下、Sn:0.1%以下のうちから選ばれた1種または2種以上Sb、Cu、Snは、鋼板表面付近に濃化し、温間プレス成形中の鋼板表面の窒化による鋼板の軟化を抑制する効果があり、必要に応じて選択して1種または2種以上を含有できる。なお、Cuは耐食性をも向上させる効果がある。このような効果を得るためには、Sb、Cu、Snはそれぞれ0.005%以上含有することが望ましい。一方、Sbは0.1%、Cuは0.5%、Snは0.1%をそれぞれ超える、過度の含有は、鋼板の表面性状を悪化する。このため、Sb:0.1%以下、Cu:0.5%以下、Sn:0.1%以下にそれぞれ限定することが好ましい。
Ni:0.5%以下、Cr:0.5%以下のうちから選ばれた1種または2種
Ni、Crはいずれも、高強度化に寄与する元素であり必要に応じて選択して含有できる。
Niは、オーステナイト安定化元素であり、高温でのフェライトの生成を抑制し、鋼板の高強度化に寄与する。また、Crは、焼入性向上元素であり、Niと同様高温でのフェライトの生成を抑制し、鋼板の高強度化に寄与する。このような効果を得るには、Ni、Crはそれぞれ0.01%以上含有することが望ましい。一方、Ni:0.5%、Cr:0.5%を超える、過度の含有は、マルテンサイト相やベイナイト相等の低温変態相の発生を誘起する。マルテンサイト相やベイナイト相といった低温変態相は加熱中に回復が生じるため、温間プレス成形後に強度が低下する。このため、Ni、Crはそれぞれ0.5%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.3%以下である。
O、Se、Te、Po、As、Bi、Ge、Pb、Ga、In、Tl、Zn、Cd、Hg、Ag、Au、Pd、Pt、Co、Rh、Ir、Ru、Os、Tc、Re、Ta、Be、Srのうちから選ばれた1種または2種以上を合計で2.0%以下
これら元素は、合計で2.0%以下であれば、素材強度や温間プレス成形性に影響をおよぼさない範囲で、許容できる。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。
さらに、上記したような引張特性を鋼板に付与するために、本発明では、上記した組成に加えて、鋼板の金属組織を、マトリックスがフェライト相単相で、かつフェライトの平均結晶粒径が1μm以上で、該フェライト結晶粒中に、平均粒子径が10nm以下の炭化物を分散析出させた組織に限定する。
金属組織: フェライト面積率 95%以上
本発明では、鋼板の金属組織は、フェライト単相とする。ここでいう「フェライト単相」は、フェライト相100%の場合に加えて、面積率で95%以上、好ましくは95%超の、実質的に単相である場合まで含むものとする。
金属組織をフェライト単相にすることにより、優れた延性を保持でき、さらに熱による材質変化を抑制できる。硬質相であるベイナイト相やマルテンサイト相が混在すると、加熱により硬質相内に導入される転位が回復し軟化するため、温間プレス成形後に鋼板強度を維持できなくなる。このため、パーライト、ベイナイト相、マルテンサイト相を含まない方がよいが、このような硬質相、さらには残留オーステナイト相は、組織全体に対する面積率で5%未満であれば、許容できる。
金属組織が実質的にフェライト相単相であれば、本発明の組成範囲の場合には、400℃以上700℃以下の温度域(温間プレス成形温度域)に加熱されても、鋼板の金属組織は実質的にフェライト相単相のままに維持される。
上記した組成の組織を有する鋼板では、加熱されることに伴い、延性が増加し、温間プレス成形温度域における全伸びEl2を室温における全伸びEl1の1.1倍以上を確保できる。
また、上記した組成を有する鋼板では、温間プレス成形温度域において成形加工を施すと、転位の回復を伴いながら成形加工されるため、温間プレス成形中の延性低下は殆ど生じない。そして、温間プレス成形後に室温まで冷却しても組織変化が生じないことから、鋼板の金属組織は実質的にフェライト単相のままに維持され、優れた延性を示すことになる。温間プレス成形時および温間プレス成形後の鋼板がマルテンサイト相、ベイナイト相等の硬質相を含むと、所望の延性(全伸び)を得ることが困難となる。
また、鋼板の金属組織を実質的にフェライト相単相とすれば、温間プレス成形温度域に加熱して15%以下の歪を付与する温間プレス成形加工を施し、室温まで冷却した後の鋼板の全伸びEl3を、温間プレス成形前の室温における全伸びEl1の80%以上を確保することができる。また、フェライト相を400℃以上に加熱すると、温度上昇に伴い転位の運動が活発となり変形抵抗が低下し、鋼板の降伏応力が低下する。そのため、400℃以上700℃以下の加熱温度域における鋼板の降伏応力YS2は、室温における鋼板の降伏応力YS1の80%以下とすることができる。
フェライトの平均結晶粒径:1μm以上
フェライトの平均結晶粒径が1μm未満であると、温間プレス成形時に結晶粒が成長し易くなり、温間プレス成形後の鋼板の材質が、温間プレス成形前と大きく相違したものとなり、材質安定性が低下する。しかも、フェライトの平均結晶粒径が15μmを超えて過剰に大きくなると、細粒化強化量の低下により、所望の鋼板強度を確保することが難しくなる。このため、フェライトの平均結晶粒径は15μm以下とすることが好ましい。なお、より好ましくは1〜12μmの範囲である。
なお、フェライトの平均結晶粒径が1μm以上となる組織を得るためには、フェライトの核生成サイト数が過剰になるのを防止することが有効である。核生成サイト数は、圧延中に鋼板内に蓄積される歪エネルギーと密接な関係があり、フェライト粒の微細化を防止するには、過剰な歪エネルギーの蓄積を防ぐ必要がある。このためには、仕上圧延終了温度を840℃以上に調整する。
フェライト結晶粒中の炭化物の平均粒子径:10nm以下
しかし、実質的にフェライト相のみの組織では、所望の鋼板特性(降伏比:0.85以上、引張強さ:440MPa以上)を確保することは困難である。そこで、本発明では、フェライト結晶粒中に、平均粒子径が10nm以下の微細な炭化物を析出させて、鋼板の高強度化を図る。ここで、炭化物の平均粒子径が10nmを超えると、鋼板に所望の鋼板特性を得ることができない。なお、好ましくは7nm以下である。
微細な炭化物としては、Ti炭化物、或いは更にV炭化物、Mo炭化物、W炭化物、Hf炭化物、Zr炭化物、Nb炭化物が挙げられる。これらの炭化物は、加熱温度が700℃以下であれば粗大化することはなく、平均粒子径は10nm以下に維持される。したがって、鋼板を400℃以上700℃以下の温間プレス成形温度域に加熱し温間プレス成形を施しても、炭化物の粗大化が抑制されるため、温間プレス成形後に室温まで冷却したのちの鋼板強度の大幅な低下が抑制される。したがって、実質的にフェライト単相のマトリックス中に平均粒子径10nm以下の上記した炭化物を含む組織とすれば、400℃以上700℃以下の温間プレス成形温度域に加熱して、最大15%の歪を付与する温間プレス成形を施して、室温まで冷却した後の鋼板の降伏応力YS3を、温間成形前の室温における降伏応力YS1の80%以上とすることができる。
本発明鋼板では、700℃までの加熱温度であれば、加熱処理およびその後の冷却が材質に影響を及ぼすことはない。したがって、本発明鋼板は、温間プレス成形後の鋼板を急冷する急冷装置が付帯した温間プレス成形設備で加工することも可能である。なお、本発明高強度熱延鋼板は、急冷装置を付設しない温間プレス成形設備においても加工可能であることはいうまでもない。
このようなことから、本発明鋼板に、溶融亜鉛めっき処理等の加熱が伴うめっき処理を施しても、材質の変化は少ない。そのため、本発明鋼板にめっき処理を施し、その表面にめっき層、例えば電気めっき層、無電解めっき層、溶融めっき層等を具えることも可能である。また、めっき層の合金成分は特に限定されず、亜鉛めっき、合金化亜鉛めっき等が適用可能である。なお、めっき層は、Znもしくは、Znに、0.1〜0.2mass %Alまたは10〜20mass %Niを含む組成とすることが好ましい。
本発明の温間プレス成形方法による作用効果について、具体的な実施例に基づいて説明する。
本実施例においては、板厚1.6mm、引張強度980MPa級の鋼板9を用いて、温度700℃にて鋼板9を加熱した後、図6(a)に示すような、上方からみて湾曲した形状のハット断面部品43を、図6(b)に示す下金型45(パンチ)を用いてプレス成形(深絞り成形)する実験を行った。鋼板9は、電気炉を用いて在炉時間を300秒に設定し、鋼板9全体が均一な温度分布になるように加熱した。加熱された鋼板9を炉から取り出し、10秒の搬送時間の後にプレス機内に送給して成形を実施した。プレス成形機は一般的なメカニカルプレス機を使用しプレス速度は15spm(strokes per minute)とした。
まず、金型を室温のまま温間プレス成形をしたときの温度分布を熱構造連成数値解析により求めた。ここで、熱構造連成数値解析とは、温度解析と構造解析を連成させて行うプレス成形解析のことである。温度解析と構造解析を連成させた解析とは、空冷による温度低下や金型と鋼板9の接触熱伝達による温度低下を考慮して鋼板9の温度分布を解析し(温度解析)、これによって得られた温度分布に基づいて、当該温度に対応する温度依存データ(ヤング率、ポアソン比、熱膨張係数、降伏応力、応力-歪線図、比熱、熱伝導率など)を用いて応力状態等の解析(構造解析)を行う解析をいう。熱構造連成数値解析を行うことでより正確な温度分布を求めることができる。
温度分布を確認すると、図6に示すハット断面部品43の中で、パンチ底部47とフランジ部49との温度差が大きく生じていることがわかった。そこでフランジ部49を鋼板特定部位とし、金型特定部位をしわ押えと上金型の肩部とした。
次に、金型特定部位を加熱してプレス成形を行った。プレス成形は、金型特定部位の加熱温度〔プレス前の鋼板均一加熱温度と金型特定部位の加熱温度との差〕を100℃〔Δ600℃〕、200℃〔Δ500℃〕、400℃〔Δ300℃〕、600℃〔Δ100℃〕の4パターンを行った。また、比較のため、金型特定部位を加熱せずに金型温度を室温である20℃均一としてプレス成形を実施した。
このときのフランジ部49の平均温度とそれ以外の部分の平均温度の差を図7に示す。図7のグラフから分かる通り、金型特定部位の加熱温度が高いほど平均温度の差が小さくなる。これは、ハット断面部品43内の温度分布を均一にするために、金型特定部位の加熱の効果があることを意味している。なお、金型特定部位を加熱しない場合は図7において金型特定部位の温度を20℃として示した。
次に、プレス成形後にハット断面部品43を十分な時間空冷した。
すると、図8に示す通り、ハット断面部品の中央部の断面(図中の破線)に対して端部の断面(図中の実線)にねじれが発生した。ねじれ具合の比較のために、加熱温度毎のねじれ角度を測定してグラフ化したものを図9に示す。なお、このねじれ角度は、プレス成形直後に金型から外した時点を基準として、空冷後におけるねじれ角度を測定した値である。図9において、横軸は金型特定部位の加熱温度を示し、縦軸は、中央部の断面に対する端部の断面のねじれ角度を表す。図9を見ると、加熱温度が高いほど、ねじれ角度は小さくなっており、加熱温度600℃ではねじれ角度が約0.2°以内と良好な寸法精度が得られた。
また、ハット断面部品43の端部近傍(図10(a)の矢視A−Aで示す部位)を観察すると、図10(b)の断面図に示す通り、フランジ部49が外方に跳ね上がるような形状の歪みが発生した。なお、図10(b)において、太い実線で示す図形はハット断面部品43の目標とする(プレス成形直後の)形状の断面であり、細い実線はプレス成形直後に金型から外した時点の形状の断面であり、破線で示す図形は空冷後の形状の断面である。
そこで、金型特定部位の加熱温度毎に形状の歪み量を測定した。その結果を表1に示す。表1に示す通り、加熱なしの金型の場合は形状の歪み量が4.2mmであったのに対し、金型特定部位を100℃〔Δ600℃〕に加熱した金型で2.1mm、400℃〔Δ300℃〕に加熱した金型で0.2mmと著しく低減しており、フランジ部49の形状の歪み量を低減する効果があることも確認した。
以上の結果から、本発明によれば、金型特定部位を特定してこの部位を加熱し、鋼板均一加熱温度と金型特定部位加熱温度との差を300℃以内とすることによって、鋼板特定部位(フランジ部49)とそれ以外の部分の温度差を100℃以内になるようにして温間プレス成形を行うことにより、冷却後において寸法精度に優れたハット断面部品43を得ることができる。
なお、上記実施例では鋼板9の加熱方法は電気炉による加熱としたが、本発明は加熱方法の種類によらず同じ効果を発揮するものである。例えば、通電加熱や遠赤外線加熱等が挙げられる。
また、上記実施例ではプレス成形機の種類はメカニカルプレス機としたが、本発明はプレス成形機の種類によらず同じ効果を発揮するものである。
実施の形態3で示した高強度熱延鋼板を製造し、その性状について試験を行ったので、以下説明する。
表2に示す化学組成を有する溶鋼を転炉で溶製し、連続鋳造法で鋳造しスラブ(鋼素材)とした。これらスラブ(鋼素材)を、表3に示す加熱温度に加熱し均熱保持して、粗圧延したのち、表3に示す熱延条件で、仕上圧延し、冷却し、コイル状に巻取り、熱延鋼板(板厚1.6mm)とした。なお、鋼板No.1、No.9、No.11、No.13は、連続溶融亜鉛めっきラインにて700℃に加熱後、液温:460℃の溶融亜鉛めっき浴に浸漬して、表面に溶融亜鉛めっき層を形成したのち、該めっき層に530℃で合金化処理を施し、合金化溶融亜鉛めっき層を形成した。なお、めっき付着量は、45g/m2とした。
得られた熱延鋼板から試験片を採取し、組織観察、析出物観察、引張試験、温間成形温度域における穴拡げ試験を行った。試験方法はつぎのとおりとした。
(1)組織観察
得られた熱延鋼板から組織観察用試験片を採取し、圧延方向に平行な断面(L断面)を研磨し、腐食(腐食液:5%ナイタール液)して走査型電子顕微鏡(倍率:400倍)を用いて、板厚中心部を観察し、各10視野撮像した。得られた組織写真について、画像解析を行い、組織の同定、および各相の組織分率、各相の平均結晶粒径の測定を行った。
得られた組織写真をもちいて、まず、フェライト相とそれ以外とを分離し、フェライト相の面積を測定し、観察視野全体に対する面積率を求め、フェライト相の面積率とした。なお、フェライト相は粒内に腐食痕が観察されず粒界が滑らかな曲線で観察されるが、線状の形態として観察される粒界はフェライト相の一部として計上した。また、フェライトの平均結晶粒径は、得られた組織写真を用い、ASTM E 112-10に準拠した切断法によって求めた。
(2)析出物観察
得られた鋼板の板厚中央部から透過型電子顕微鏡観察用試験片を採取し、機械研磨、化学研磨により、観察用薄膜とした。得られた薄膜について、透過型電子顕微鏡(倍率:120000倍)を用いて、析出物(炭化物)の観察を行った。100個以上の炭化物について、粒子径を測定し、それらの算術平均値を、各鋼板の炭化物平均粒径とした。なお、測定に当たっては、1μmより大きな粗大なセメンタイトや窒化物は除外した。
(3)引張試験
得られた熱延鋼板から、JIS Z 2201(1998)に準拠して、圧延方向と垂直方向が引張方向となるようにJIS 13 B号引張試験片を採取し、JIS G 0567(1998)に準拠して引張試験を行い、室温(22±5℃)における引張特性(降伏応力YS1、引張強さTS1、全伸びEl1)、および400〜800℃の温度域の各加熱温度における高温引張特性(降伏応力YS2、引張強さTS2、全伸びEl2)を測定した。なお、引張試験はいずれも、クロスヘッドスピード:10mm/minで行った。また、高温での引張特性を測定する試験では、電気炉を用いて試験片を加熱し、試験片温度が試験温度の±3℃以内に安定して得られるようになったのち、15min保持し、引張試験を行った。
また、更に、得られた熱延鋼板から、同様に、JIS 13 B号引張試験片を採取し、400〜800℃の温度域の各加熱温度に加熱し、表5に示す歪(公称歪)を導入したのち、表5に示す冷却速度で室温まで冷却した。そして、このようにして得られた各引張試験片について、室温で引張試験を行い、引張特性(降伏応力(YS3)、引張強さ(TS3)、全伸び(El3))を求めた。なお、引張試験はいずれも、クロスヘッドスピード:10mm/minで行った。また、加熱温度で歪を導入する際には、電気炉を用いて加熱し、試験片温度が試験温度の±3℃以内に安定して得られるようになった後、15分保持した。
なお、各引張試験では、各鋼板で各3本行い、得られた値を算術平均し、各鋼板の特性とした。
(4)温間成形温度域における穴拡げ試験
穴拡げ試験は、日本鉄鋼連盟規格(T1001-1996)に準拠して行った。
得られた熱延鋼板から、穴拡げ試験片(大きさ:100W×100L mm)を採取し、試験片の中央に、クリアランスを12%として、直径10mmの穴を打抜加工で導入した。
次いで、試験片を、加熱炉によって600℃まで加熱して均熱保持したのち、550±25℃の状態にしたのち、試験片の穴に円筒台のポンチを挿入し、次式
穴拡げ率(%)=(試験後穴径-試験前穴径(=10mm))/(試験前穴径)×100で算出される穴拡げ率が80%になるまで、試験片の穴を押し拡げた。
穴拡げ試験後、各試験片について、穴縁端面の亀裂貫通の有無を確認した。また、試験後、試験片の一部を切り出し、断面の板厚中央部についてビッカース硬さ試験を行い、硬さを測定した。なお、測定点は5点とした。また、ビッカース硬さ試験の試験荷重は1kgf(9.8N)とした。
穴縁端面に貫通割れが確認されないうえ、ビッカース硬さが260HV以上の試験片を、温間成形性良好(○)とした。一方、穴縁端面に貫通割れが確認された試験片、或いはビッカース硬さが260HV未満である試験片を、温間成形性不良(×)と評価した。
得られた結果を表4、表5に示す。
本発明例はいずれも、室温における降伏比が0.85以上で、引張強さ(TS1)が440MPa以上であり、400℃以上700℃以下の温間成形温度域に加熱した場合の降伏応力(YS2)が、室温における降伏応力(YS1)に対して80%以下、400℃以上700℃以下の温間成形温度域に加熱した場合の全伸び(El2)が、室温における全伸び(El1)に対して1.1倍以上を満足している。また、本発明例は、いずれも温間成形温度域で15%以下の歪を与えた後、室温まで冷却した場合の降伏応力 (YS3)および全伸び(El3)が、室温(プレス成形歪導入前)における降伏応力(YS1)および全伸び(El1)に対してそれぞれ80%以上となっている。すなわち、本発明例は、いずれも温間成形性が良好な鋼板である。
一方、本発明の範囲を外れる比較例は、室温における降伏比が0.85未満であるか、400〜700℃の温間成形温度域に加熱した場合の降伏応力(YS2)または全伸び(El2)が、室温における降伏応力(YS1)の80%超えであるか、または全伸び(El1)の1.1倍未満であるか、温間成形温度域で15%以下の歪を与えた後室温まで冷却した場合の降伏応力(YS3)が室温における降伏応力(YS1)の80%未満であるか、または全伸び(El3)が全伸び(El1)の80%未満であるか、であり、温間成形性が不良であった。
なお、温間成形温度域を外れた温度で、あるいは付加する歪量が15%を超える条件で加工を行うと、鋼板が本発明範囲内のものであっても、室温まで冷却した後の降伏応力が加熱前の室温における降伏応力の80%以上であること、あるいは室温まで冷却した後の全伸びが加熱前の室温における全伸びの80%以上であること、のいずれかを満足できていない。
なお、本発明例は、400℃以上700℃以下の温度域では実質的なフェライト単相組織が維持され、且つ鋼板中の炭化物の状態も鋼板の材質に影響を及ぼすほど変化していない。このことから、温間成形温度域に加熱して温間成形を施したのち、室温まで冷却する際の冷却速度は温間成形後の鋼板の材質に何ら影響を及ぼさない。
以上のように、本発明に係る高強度熱延鋼板は、その特性上、温度が冷えた後でも、結晶粒の粗大化も起こらず、成形後の強度が元の強度まで回復する。そのため、加工性に優れることによるプレス成形時の寸法精度の向上ができ、且つ、製品強度(性能)も保つことができる。
このように、本発明に係る高強度熱延鋼板は、温間プレス成形性に優れ、温間プレス成形に好適であり、それ故に、実施の形態1、2のプレス成形方法及び装置による成形を行うことで、実施の形態1,2のプレス成形方法及び装置における熱収縮量の違いによるスプリングバック防止効果との相乗効果によって、寸法精度に優れた温間プレス成形を実現できる。
1 プレス成形装置
2 ハット断面部品
3 上金型
5 下金型
7 肩部
9 鋼板
11 しわ押え
13 クッションピン
15 フランジ部
21 プレス成形装置
23 カートリッジヒーター
31 プレス成形装置
33 上金型
35 下金型
37 凸R部
39 肩R部
41 プレス成形装置
43 ハット断面部品
45 下金型
47 パンチ底部
49 フランジ部
50 断熱材

Claims (13)

  1. 鋼板を400〜700℃の範囲で均一加熱してプレス成形金型を用いてプレス成形を行う温間プレス成形方法であって、
    プレス成形時に前記鋼板と接触する前記プレス成形金型における部位のうちの特定部位(金型特定部位)を加熱して前記鋼板をプレス成形するプレス成形工程を備えてなり、
    前記金型特定部位は、400〜700℃の範囲で均一加熱した前記鋼板を室温のプレス成形金型でプレス成形したときの前記鋼板の温度分布を求め、前記温度分布に基づいて、前記鋼板の温度低下が予め定めた温度差以上となる前記鋼板の部位(鋼板特定部位)と接触する金型特定部位であり、
    鋼板特定部位は、前記温度分布における温度低下の最も少ない鋼板部位を基準として、当該部位との温度差が100℃以上ある部位であることを特徴とする温間プレス成形方法。
  2. 前記金型特定部位の加熱は、前記鋼板の均一加熱温度と前記金型特定部位との温度差を所定値以内とするように行うことを特徴とする請求項1記載の温間プレス成形方法。
  3. 前記鋼板の均一加熱温度と前記金型特定部位の温度差を300℃以内に設定することを特徴とする請求項2記載の温間プレス成形方法。
  4. 前記温度分布は、測定又は数値解析によって得ることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の温間プレス成形方法。
  5. 前記鋼板は、室温における引張強さTSが440MPa以上で、降伏比が0.85以上である引張特性を有する高強度熱延鋼板であって、該高強度熱延鋼板を、400〜700℃の温間プレス成形温度域の温度に加熱し該温間プレス成形温度域の温度で引張試験を行った際の、降伏応力YS2が、室温における降伏応力YS1の80%以下で、かつ全伸びEl2が、室温における全伸びEl1の1.1倍以上であり、さらに、前記温間プレス成形温度域の温度で15%以下の歪を付与する温間加工を施し室温まで冷却したのち、室温で引張試験を行った際の、降伏応力YS3が、室温における降伏応力YS1の80%以上で、かつ全伸びEl3が、室温における全伸びEl1の80%以上であり、温間プレス成形性に優れることを特徴とする請求項1乃至に記載の温間プレス成形方法。
  6. 前記鋼板が、質量%で、
    C:0.015〜0.16%、 Si:0.2%以下、
    Mn:1.8%以下、 P:0.035%以下、
    S:0.01%以下、 Al:0.1%以下、
    N:0.01%以下、 Ti:0.13〜0.25%
    を、下記(1)式を満足するように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、金属組織が面積率で95%以上のフェライト相からなり、かつフェライトの平均結晶粒径が1μm以上で、該フェライト結晶粒中に、平均粒子径が10nm以下の炭化物を分散析出させた組織を有することを特徴とする請求項に記載の温間プレス成形方法。

    2.00≧(C/12)/(Ti/48+V/51+W/184+Mo/96+Nb/93+Zr/91+Hf/179)≧1.05…(1)
    ここで、C、Ti、V、Mo、W、Nb、Zr、Hf:各元素の含有量(質量%)
  7. 前記鋼板が、前記組成に加えてさらに、質量%で、V:1.0%以下、Mo:0.5%以下、W:1.0%以下、Nb:0.1%以下、Zr:0.1%以下、Hf:0.1%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項に記載の温間プレス成形方法。
  8. 前記鋼板が、前記組成に加えてさらに、質量%で、B:0.003%以下を含有することを特徴とする請求項またはに記載の温間プレス成形方法。
  9. 前記鋼板が、前記組成に加えてさらに、質量%で、Mg:0.2%以下、Ca:0.2%以下、Y:0.2%以下、REM:0.2%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項のいずれか一項に記載の温間プレス成形方法
  10. 前記鋼板が、前記組成に加えてさらに、質量%で、Sb:0.1%以下、Cu:0.5%以下、Sn:0.1%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項のいずれか一項に記載の温間プレス成形方法。
  11. 前記鋼板が、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ni:0.5%以下、Cr:0.5%以下を含むことを特徴とする請求項10のいずれか一項に記載の温間プレス成形方法。
  12. 前記鋼板が、前記組成に加えてさらに、質量%で、O、Se、Te、Po、As、Bi、Ge、Pb、Ga、In、Tl、Zn、Cd、Hg、Ag、Au、Pd、Pt、Co、Rh、Ir、Ru、Os、Tc、Re、Ta、Be、Srのうちから選ばれた1種または2種以上を合計で2.0%以下含有することを特徴とする請求項11のいずれか一項に記載の温間プレス成形方法。
  13. 前記鋼板が、表面にめっき層を具えることを特徴とする請求項12のいずれか一項に記載の温間プレス成形方法。
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