定義
特に指示しない限り、「1つの(a)」または「1つの(an)」は、1つまたは複数を意味する。
本明細書で使用する場合、「約」は、プラスマイナス10%を意味する。例えば、「約100」は、90〜110の任意の数を含む。
「実質的により少ない」という用語は、少なくとも90%、より好ましくは95%、より好ましくは98%、より好ましくは99%、より好ましくは99.9%より少ないことを意味する。
本明細書で記載する場合、「PAM4抗体」という用語は、マウスPAM4抗体、キメラPAM4抗体、ヒト化PAM4抗体、およびヒトPAM4抗体を含む。好ましい実施形態では、PAM4抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1〜配列番号6のCDR配列を含む。
本明細書で使用する場合、「PAM4抗原」は、PAM4抗体が結合する抗原である。好ましい実施形態では、DTTまたは過ヨウ素酸によるPAM4抗原の処理は、PAM4抗体の結合を阻害または妨害する。より好ましい実施形態では、PAM4抗原は、MUC−1またはMUC−5などの、膵癌細胞により発現されるムチンのエピトープである。
本明細書で使用する場合、「抗膵癌抗体」は、PAM4抗体と同じ診断特性、治療特性、および結合特性を示す抗体である。好ましい実施形態では、「抗膵癌抗体」は、PAM4抗体と同じエピトープに結合する。
「非内分泌膵癌」は、通常、外分泌膵腺から発生する癌を指す。この用語は、膵インスリノーマを除外し、膵癌、膵腺癌、腺扁平上皮癌、扁平上皮癌、および巨細胞癌、ならびに腫瘍性ではあるが、まだ悪性ではない、膵上皮内腫瘍(PanIN)、粘液性嚢胞腫瘍(MCN)、および膵管内粘液性腫瘍(IPMN)などの前駆病変を含む。「膵癌」および「非内分泌膵癌」という用語は、本明細書で互換的に使用されている。
本明細書で使用される、抗体は、全長の(すなわち、天然に存在するもしくは通常の免疫グロブリン遺伝子断片の組換え過程で生成される)免疫グロブリン分子(例えば、IgG抗体)または抗体断片のような、免疫グロブリン分子の免疫活性(すなわち、特異的結合)部分を指す。
抗体断片は、F(ab’)2、Fab’、Fab、Fv、sFvなどのような、抗体部分である。構造がどうであれ、抗体断片は、全長抗体によって認識されるのと同じ抗原と結合する。「抗体断片」という用語は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域からなる「Fv」断片や、重可変領域および軽可変領域がペプチドリンカーで連結されている組換え単鎖ポリペプチド分子(「scFv」タンパク質)などの、抗体の可変領域からなる単離された断片も含む。
裸の抗体は、治療剤または診断剤にコンジュゲートされていない抗体またはその断片である。一般に、抗体分子のFc部分は、細胞溶解をもたらし得る機構を実行に移す、補体媒介性細胞傷害(CDC)およびADCC(抗体依存性細胞傷害)などの、エフェクター機能を提供する。しかしながら、シグナル伝達誘導性アポトーシスなどの他の機構が働くので、Fc部分が治療機能に必要とされないこともある。裸の抗体には、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体の両方、ならびに融合タンパク質および特定の組換え抗体、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体も含まれる。
キメラ抗体は、1つの種に由来する抗体、好ましくは齧歯類抗体の相補性決定領域(CDR)を含む可変ドメインを含む組換えタンパク質であるが、抗体分子の定常ドメインはヒト抗体の定常ドメインに由来している。獣医学的適用では、キメラ抗体の定常ドメインは、ネコまたはイヌなどの、他の種の定常ドメインに由来していてもよい。
ヒト化抗体は、1つの種由来の抗体、例えば、齧歯類抗体由来のCDRが、齧歯類抗体の重可変鎖および軽可変鎖からヒトの重可変ドメインおよび軽可変ドメイン(例えば、フレームワーク領域配列)に移されている組換えタンパク質である。抗体分子の定常ドメインは、ヒト抗体の定常ドメインに由来する。特定の実施形態では、もとの(齧歯類)抗体由来の限られた数のフレームワーク領域アミノ酸残基が、ヒト抗体フレームワーク領域配列に代わりに挿入されていてもよい。
ヒト抗体は、例えば、抗原刺激に応答して特異的なヒト抗体を産生するように「改変」されているトランスジェニックマウスから得られる抗体である。この技術では、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子座のエレメントが、内在性マウス重鎖および軽鎖遺伝子座の標的破壊を含む胚性幹細胞株に由来するマウス系統に導入される。トランスジェニックマウスは、特定の抗原に特異的なヒト抗体を合成することができ、このマウスを用いて、ヒト抗体分泌ハイブリドーマを産生することができる。トランスジェニックマウスからヒト抗体を得る方法は、Greenら,Nature Genet.7:13(1994)、Lonbergら,Nature 368:856(1994)、およびTaylorら,Int.Immun.6:579(1994)によって記載されている。完全ヒト抗体は、全て当該技術分野で公知である、遺伝子または染色体トランスフェクション法、およびファージディスプレイ技術により構築することもできる。例えば、免疫化されていないドナー由来の免疫グロブリン可変ドメイン遺伝子レパートリーからの、インビトロでのヒト抗体およびその断片の産生については、McCaffertyら,Nature 348:552−553(1990)を参照されたい。この技術では、抗体可変ドメイン遺伝子は、繊維状バクテリオファージの主要外殻タンパク質遺伝子または非主要外殻タンパク質遺伝子のいずれかにインフレームでクローニングされ、機能的抗体断片としてファージ粒子の表面に提示される。繊維状粒子はファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含むので、抗体の機能特性に基づく選択により、それらの特性を示す抗体をコードする遺伝子を選択することにもなる。このように、ファージは、B細胞の特性のいくつかを模倣する。ファージディスプレイは、種々の形式で行なうことができ、参考のために、例えば、JohnsonおよびChiswell,Current Opiniion in Structural Biology 3:5564−571(1993)を参照されたい。ヒト抗体はまた、インビトロ活性化B細胞により作製されてもよい。米国特許第5,567,610号および同第5,229,275号を参照されたく、これらの実施例の節は、参照により本明細書に組み込まれる。
治療剤は、抗体部分と別々に、同時に、もしくは順次に投与される、あるいは抗体部分、すなわち、抗体もしくは抗体断片、またはサブ断片にコンジュゲートされている化合物、分子、または原子であり、疾患の治療において有用である。治療剤の例としては、抗体、抗体断片、薬物、毒素、ヌクレアーゼ、ホルモン、免疫調節物質、アポトーシス促進剤、抗血管新生剤、ホウ素化合物、光活性剤または色素、および放射性同位体が挙げられる。有用な治療剤は、以下でより詳細に記載されている。
診断剤は、抗体部分またはターゲッティング可能な構築物にコンジュゲートされて投与され得る分子、原子、または他の検出可能部分であり、標的抗原を含む細胞の位置を特定することによって疾患を検出または診断する際に有用である。有用な診断剤としては、放射性同位体、色素(例えば、ビオチン−ストレプトアビジン複合体を含むもの)、造影剤、蛍光化合物または蛍光分子、および磁気共鳴イメージング(MRI)または陽電子放出断層撮影(PET)スキャニング用の増強剤(例えば、常磁性イオン)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、診断剤は、放射性同位体、磁気共鳴イメージングで使用される増強剤、および蛍光化合物からなる群から選択される。抗体成分に放射性金属または常磁性イオンを付加するために、イオンを結合させるための多様なキレート基が付着した長いテールを有する試薬と抗体成分を反応させる必要があり得る。このようなテールは、ポリリジン、多糖、または例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、DOTA、NOTA、NETA、ポルフィリン、ポリアミン、クラウンエーテル、ビス−チオセミカルバゾン、ポリオキシム、およびこの目的のために有用であることが公知の同様の基などのキレート基に結合することができるペンダント基を有する他の誘導体化鎖もしくは誘導体化可能な鎖などのポリマーであることができる。キレート剤は標準的な化学反応を用いて抗体に結合される。キレート剤は通常、免疫反応性の損失を最小限に抑え、かつ凝集および/または内部架橋を最小限に抑えて分子との結合形成を可能にする基により抗体に連結される。キレート剤を抗体にコンジュゲートするための他のより特殊な方法および試薬は、米国特許第4,824,659号に開示されており、その実施例の節は、参照により本明細書に組み込まれる。特に有用な金属−キレート剤の組合せとしては、125I、131I、123I、124I、62Cu、64Cu、18F、111In、67Ga、68Ga、99mTc、94mTc、11C、13N、15O、76Brなどの、一般エネルギー範囲60〜4,000keVの診断用同位体とともに放射性イメージングに使用される、2−ベンジルDTPAならびにそのモノメチルおよびシクロヘキシル類似体が挙げられる。同じキレート剤が、マンガン、鉄、およびガドリニウムなどの非放射性金属と錯化する場合、本発明の抗体とともに使用するとMRIに有用である。NOTA(1,4,7−トリアザシクロノナン−N,N’,N’’−三酢酸)、DOTA(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン四酢酸)、およびTETA(p−ブロモアセトアミド−ベンジル−テトラエチルアミン四酢酸)などの大環状のキレート剤は、種々の金属および放射性金属と一緒に、最も具体的には、それぞれ、ガリウム、イットリウム、および銅などの放射性核種と一緒にすると有用である。このような金属−キレート剤錯体は、環のサイズを目的の金属に合わせることにより極めて安定にすることができる。放射免疫治療(RAIT)用の223Raなどの安定に結合する核種を対象とする他のリング型キレート剤、例えば、大環状ポリエーテルが本発明に包含される。つい最近では、ほとんど全ての分子をPETイメージングで有用な18F原子で標識するための一般的に有用な技術が、米国特許出願第12/112,289号(現在公開されている米国特許第7,563,433号)に記載されており、この実施例の節は、参照により本明細書に組み込まれる。
免疫コンジュゲートは、少なくとも1つの治療剤および/または診断剤にコンジュゲートされた抗体、抗体断片、または融合タンパク質である。診断剤は、放射性核種または非放射性核種、造影剤(例えば、磁気共鳴イメージング、コンピュータ断層撮影、または超音波検査用のもの)を含むことができ、放射性核種は、ガンマ線、ベータ線、アルファ線、オージェ電子、または陽電子を放出する同位体であることができる。治療剤は、以下でより詳細に記載される、癌などの疾患状態を治療するために有用な任意の薬剤であってもよい。
発現ベクターは、宿主細胞内で発現される遺伝子を含むDNA分子である。通常、遺伝子発現は、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーター、組織特異的調節エレメント、およびエンハンサーをはじめとする、特定の調節エレメントの制御下に置かれる。このような遺伝子は、調節エレメントに「機能的に連結されている」と言われる。
組換え宿主は、クローニングベクターまたは発現ベクターのいずれかを含む任意の原核細胞または真核細胞であってもよい。この用語は、宿主細胞の染色体またはゲノム中にクローニングされた遺伝子を含むように遺伝子改変された、原核細胞または真核細胞、およびトランスジェニック動物も含む。好適な哺乳動物宿主細胞としては、SP2/0細胞およびNS0細胞などの骨髄腫細胞、ならびにチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ハイブリドーマ細胞株、および抗体発現に有用な他の哺乳動物宿主細胞が挙げられる。2005年7月25日に出願された米国特許出願第11/187,863号(現在公開されている米国特許第7,531,327号)、2006年7月14日に出願された米国特許出願第11/487,215号(現在公開されている米国特許第7,537,930号)、および2007年10月24日に出願された米国特許出願第11/877,728号(これらの各々の実施例の節は、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているような、Bcl−EEE遺伝子などのアポトーシス阻害因子をトランスフェクトされ、かつ無血清条件で増殖し、さらにトランスフェクトするのに適しているSP2/0細胞も、mAbおよび他の融合タンパク質の発現に特に有用である。
本明細書で使用する場合、抗体融合タンパク質という用語は、特異性が同じまたは異なる2つ以上の同じまたは異なる天然抗体、単鎖抗体、または抗体断片が連結されている、組換えで産生された抗原結合分子である。融合タンパク質の価数は、この融合タンパク質が抗原またはエピトープに対して有している結合アームまたは結合部位の総数、すなわち、一価、二価、三価、または多価を示す。抗体融合タンパク質が多価であるということは、抗原に対する結合において複数の相互作用を利用できることを意味し、したがって、抗原に対する結合の結合力が高まる。特異性は、抗体融合タンパク質がいくつの抗原またはエピトープに結合することができるかということ、すなわち、単一特異性、二重特異性、三重特異性、多重特異性を示す。これらの定義を用いると、天然抗体、例えば、IgGは、結合アームを2本有するので二価であるが、1つの抗原に結合するので単一特異性である。単一特異性の多価融合タンパク質は、エピトープに対して2つ以上の結合部位を有するが、同じ抗原上の同じまたは異なるエピトープとしか結合せず、例えば、ダイアボディーは同じ抗原と反応性のある2つの結合部位を有する。融合タンパク質は、異なる抗体成分の多価もしくは多重特異性の組合せ、または同じ抗体成分の複数のコピーを含み得る。融合タンパク質はさらに治療剤を含み得る。このような融合タンパク質に好適な治療剤の例としては、免疫調節物質(「抗体−免疫調節物質融合タンパク質」)および毒素(「抗体−毒素融合タンパク質」)が挙げられる。1つの好ましい毒素は、リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)、好ましくは組換えRNアーゼを含む。
多重特異性抗体は、異なる構造の少なくとも2つの標的、例えば、2つの異なる抗原、同じ抗原上の2つの異なるエピトープ、あるいはハプテンおよび/または抗原もしくはエピトープに同時に結合することができる抗体である。多重特異性の多価抗体は2つ以上の結合部位を有する構築物であり、これらの結合部位は特異性が異なる。
二重特異性抗体は、2つの異なる標的に同時に結合することができる抗体である。二重特異性抗体(bsAb)および二重特異性抗体断片(bsFab)は、例えば、腫瘍関連抗原に特異的に結合する少なくとも1つのアームと、治療剤または診断剤を含むターゲッティング可能なコンジュゲートに特異的に結合する少なくとも1つの他のアームとを有し得る。分子工学を用いて、種々の二重特異性融合タンパク質を産生することができる。
PAM4抗体
本発明の様々な実施形態は、正常または良性の膵組織ではなく膵癌と極めて高い選択性で反応する抗体に関するものである。抗膵癌抗体およびその断片は、好ましくは、ヒト膵臓の腫瘍から得られる未処理のムチン調製物に対して惹起されるが、部分精製ムチンまたは精製ムチンですらも利用し得る。このような抗体の非限定的な例は、PAM4抗体である。
マウスPAM4(mPAM4)抗体は、異種移植されたRIP−1ヒト膵癌由来の膵癌ムチンを免疫原として用いることにより開発された(Goldら,Int.J.Cancer,57:204−210,1994)。以下で論じるように、抗体の交差反応性研究や免疫組織化学染色研究により、PAM4抗体は標的膵癌抗原上の独特かつ新規なエピトープを認識することが示されている。免疫組織化学染色研究(例えば、実施例2に記載の研究)により、PAM4 MAbは、乳癌細胞、膵癌細胞、および他の癌細胞により発現される抗原に結合し、正常ヒト組織への結合は限られていることが示されている。しかしながら、最大の発現は通常、膵癌細胞によるものである。したがって、PAM4抗体は、膵癌に比較的特異的であり、膵癌細胞に優先的に結合する。PAM4抗体は、内在化することができる標的エピトープと反応する。このエピトープは、膵癌と関連しかつ限局性膵炎または正常膵組織と関連しない抗原によって主に発現される。PAM4エピトープに対するPAM4抗体の結合は、抗原をDTTまたは過ヨウ素酸で処理することにより阻害される。動物モデルで放射性標識PAM4 MAbを用いた局在研究および治療研究により、腫瘍ターゲッティングと治療効力が示されている。
PAM4抗体は、多くの臓器および腫瘍型によって発現されるが、膵癌細胞で優先的に発現されるPAM4抗原に結合する。PAM4 MAbを用いた研究(例えば、実施例3の研究)により、抗体が、いくつかの重要な特性を示すことが示されており、これらの特性のために、抗体は臨床診断および臨床治療用途にふさわしい候補となる。PAM4抗原は、膵癌やその他の癌の診断および治療の有用な標的を提供する。PAM4抗体は、PAM4以外の抗膵癌抗体(CA19.9、DUPAN2、SPAN1、Nd2、CEACAM5、B72.3、抗Lea、およびその他の抗ルイス抗原)によって認識されるエピトープとは異なる膵癌抗原のエピトープを認識するようである。
PAM4抗体と組み合わせてまたはPAM4抗体とともに使用するのに好適な抗体としては、例えば、抗体CA19.9、DUPAN2、SPAN1、Nd2、B72.3、CC49、抗CEA、抗CEACAM6、抗Lea、抗HLA−DR、抗CD40、抗CD74、抗CD138、ならびにルイス抗原Le(y)により規定される抗体、または結腸特異的抗原p(CSAp)、MUC−1、MUC−2、MUC−3、MUC−4、MUC−5ac、MUC−16、MUC−17、EGP−1、EGP−2、HER2/neu、EGFR、血管新生因子(例えば、VEGFおよびPlGF)、インスリン様増殖因子(ILGF)、テネイシン、血小板由来増殖因子、およびIL−6、ならびにオンコジーン産物(bcl−2、Kras、p53)、cMETに対する抗体、および腫瘍壊死物質に対する抗体、例えば、Epsteinらによる特許(米国特許第6、071、491号、同第6.017、514号、同第5、019、368号、および同第5、882、626号)に記載されているような抗体が挙げられる。このような抗体は、PAM4抗体免疫検出法および免疫治療法を補完するのに有用である。これらのおよびその他の治療剤は、PAM4抗体の投与前に、投与と同時に、投与後に投与されたとき、PAM4抗体などの抗膵癌抗体と相乗的に作用することができる。
治療用途において、腫瘍細胞に対するエフェクター細胞機能に関与する免疫調節物質に作動性または拮抗性を示す抗体も、単独または他の腫瘍関連抗体(一例として、CD40に対する抗体)と組み合わせたPAM4抗体と併用して有用であることができる。Todrykら,J.Immunol Methods,248:139−147(2001);Turnerら,J.Immunol,166:89−94(2001)。オンコジーン(例えば、bcl−2、Kras、p53、cMET)のマーカーもしくは産物に対する抗体、またはVEGFRおよび胎盤様増殖因子(PlGF)などの、血管新生因子に対する抗体も有用である。
PAM4抗原の異なるエピトープに結合する別のPAM4様抗体が利用可能であることは、臨床試料中のPAM4抗原を検出するために有用な、二重決定基酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)の開発にとって重要である。ELISA実験は、実施例1および5に記載されている。
本明細書に記載されるマウスPAM4抗体、キメラPAM4抗体、ヒト化PAM4抗体、および完全ヒトPAM4抗体、ならびにそれらの断片は、診断法および/または治療法に有用な抗膵癌抗体の例となるものである。以下の実施例では、ヒト化PMA4抗体の構築および使用の好ましい実施形態が開示されている。非ヒトモノクローナル抗体はヒト宿主により外来タンパク質として認識され得るので、注射を繰り返すと、有害な過敏性反応が生じることがあるが、マウス抗体配列をヒト化することにより、患者が経験し得る有害免疫応答を減らすことができる。マウスに基づくモノクローナル抗体の場合、これは、ヒト抗マウス抗体(HAMA)応答と呼ばれることが多い。ヒト化抗膵癌抗体またはその断片のフレームワーク領域中のいくつかのヒト残基を、そのマウス対応物に置き換えることが好ましい。2つの異なるヒト抗体由来のフレームワーク配列の組合せをVHに用いることも好ましい。抗体分子の定常ドメインは、ヒト抗体の定常ドメインに由来している。
別の好ましい実施形態は、ヒトPAM4抗体などのヒト抗膵癌抗体である。ヒト抗体は、例えば、抗原刺激に応答して特異的なヒト抗体を産生するように「改変」されているトランスジェニックマウスから得られる抗体である。この技術では、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子座のエレメントが、内在性重鎖および軽鎖遺伝子座の標的破壊を含む胚性幹細胞株に由来するマウス系統に導入される。トランスジェニックマウスは、ヒト抗原に特異的なヒト抗体を合成することができ、このマウスを用いて、ヒト抗体分泌ハイブリドーマを産生することができる。トランスジェニックマウスからヒト抗体を得る方法は、Greenら,Nature Genet.7:13(1994)、Lonbergら,Nature 368:856(1994)、およびTaylorら,Int.Immun.6:579(1994)によって記載されている。
完全ヒト抗体は、全て当該技術分野で公知である、遺伝子または染色体トランスフェクション法、およびファージディスプレイ技術により構築することもできる。例えば、免疫化されていないドナー由来の免疫グロブリン可変ドメイン遺伝子レパートリーからのインビトロでのヒト抗体およびその断片の産生については、McCaffertyら,Nature 348:552−553(1990)を参照されたい。この技術では、抗体可変ドメイン遺伝子は、繊維状バクテリオファージの主要外殻タンパク質遺伝子または非主要外殻タンパク質遺伝子のいずれかにインフレームでクローニングされ、機能的抗体断片としてファージ粒子の表面に提示される。繊維状粒子はファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含むので、抗体の機能特性に基づく選択により、それらの特性を示す抗体をコードする遺伝子を選択することにもなる。このように、ファージは、B細胞の特性のいくつかを模倣する。ファージディスプレイは、種々の形式で行なうことができ、参考のために、例えば、JohnsonおよびChiswell,Current Opiniion in Structural Biology 3:5564−571(1993)を参照されたい。
抗体調製
特定の抗原に対するモノクローナル抗体は当業者に公知の方法により得ることができる。例えば、KohlerおよびMilstein,Nature 256:495(1975)、およびColiganら(編),CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY,第1巻,2.5.1−2.6.7ページ(John Wiley & Sons 1991)(以下、「Coligan」)を参照されたい。簡潔に述べると、抗膵癌MAbは、PAM4抗原などの、膵癌由来ムチンを含む組成物をマウスに注射し、血清試料を採取して抗体産生の存在を確認し、脾臓を摘出してBリンパ球を取得し、このBリンパ球と骨髄腫細胞を融合してハイブリドーマを産生させ、このハイブリドーマをクローニングし、PAM4抗原に対する抗体を産生する陽性クローンを選択し、PAM4抗原に対する抗体を産生するクローンを培養し、ハイブリドーマ培養物から抗膵癌抗体を単離することにより得ることができる。
免疫原に対する最初の抗体惹起の後に、抗体の配列を決定し、その後、キメラ抗体またはヒト化抗体を産生するための組換え技術により、抗体を調製することができる。マウス抗体および抗体断片のキメラ化は当業者に周知である。キメラ化モノクローナル抗体に由来する抗体成分を使用することによって、マウス定常領域の免疫原性と関連する潜在的な問題が軽減される。
マウス免疫グロブリン可変ドメインをクローニングするための一般的な技術は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Orlandiらの刊行物,Proc Nat’l Acad.Sci.USA 86:3833(1989)により記載されている。一般に、マウス抗体のVK(可変軽鎖)配列とVH(可変重鎖)配列は、RT−PCR、5’−RACE、およびcDNAライブラリスクリーニングなどの、種々の分子クローニング法によって得ることができる。具体的に、マウスPAM4 MAbのVH配列とVK配列は、RT−PCRでハイブリドーマ細胞からPCR増幅によりクローニングされ、それらの配列は、DNAシーケンシングにより決定された。それらが本物であることを確かめるために、クローニングしたVK遺伝子とVH遺伝子を、Orlandiら(Proc Natl.Acad.Sci.,USA,86:3833,1989)によって記載されたように、キメラAbとして細胞培養で発現させることができる。
好ましい実施形態では、キメラ化PAM4抗体または抗体断片は、マウスPAM4 MAbの相補性決定領域(CDR)およびフレームワーク領域(FR)とヒト抗体の軽鎖定常領域および重鎖定常領域とを含み、ここで、キメラ化PAM4の軽鎖可変領域のCDRは、SASSSVSSSYLY(配列番号1)というアミノ酸配列を含むCDR1、STSNLAS(配列番号2)というアミノ酸配列を含むCDR2、およびHQWNRYPYT(配列番号3)というアミノ酸配列を含むCDR3を含み、キメラ化PAM4 MAbの重鎖可変領域のCDRは、SYVLH(配列番号4)というアミノ酸配列を含むCDR1、YINPYNDGTQYNEKFKG(配列番号5)というアミノ酸配列を含むCDR2、GFGGSYGFAY(配列番号6)というアミノ酸配列を含むCDR3を含む。キメラ化モノクローナル抗体に由来する抗体成分を使用することによって、マウス定常領域の免疫原性と関連する潜在的な問題が軽減される。
マウス抗体および抗体断片のヒト化も当業者に周知である。ヒト化MAbを産生するための技術は、例えば、Carterら,Proc Nat’l Acad.Sci.USA 89:4285(1992)、Singerら,J.Immun.150:2844(1992)、Mountainら.Biotechnol Genet Eng Rev.10:1(1992)、およびColigan(10.19.1−10.19.11ページ)によって開示されており、これらは各々、参照により本明細書に組み込まれる。例えば、ヒト化モノクローナル抗体は、マウス相補性決定領域をマウス免疫グロブリンの重可変鎖および軽可変鎖からヒト可変ドメインに移し、次いで、ヒト残基をマウス対応物のフレームワーク領域中に代わりに挿入することによって産生し得る。ヒト定常領域配列に加えて、ヒトフレームワーク領域配列を使用することによって、HAMA反応を誘導する機会をさらに減らすことができる。
上記のように得られた、PAM4可変領域配列に基づいて、参照により本明細書に組み込まれる、Leungら(Mol Immunol.32:1413(1995))により記載されたように、ヒト化PAM4抗体を設計および構築することができる。実施例1には、hPAM4 MAbの構築に使用されたヒト化のプロセスが記載されている。
hPAM4抗体を調製するために使用されるプライマーのヌクレオチド配列については、以下の実施例1で論じられている。好ましい実施形態では、ヒト化PAM4抗体または抗体断片は、上で開示された軽鎖と重鎖のCDR配列(配列番号1〜配列番号6)を含む。ヒト化抗体の軽鎖および重鎖可変領域のFRが、マウスPAM4 MAbの対応するFRから置換された少なくとも1つのアミノ酸を含むことも好ましい。
完全ヒト抗体、例えば、ヒトPAM4をヒト以外のトランスジェニック動物から得ることができる。例えば、Mendezら,Nature Genetics,15:146−156(1997);米国特許第5,633,425号を参照されたい。例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を有するトランスジェニックマウスからヒト抗体を回収することができる。マウス液性免疫系は、内在性免疫グロブリン遺伝子を不活化し、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入することによってヒト化される。ヒト免疫グロブリン遺伝子座は非常に複雑であり、合わせるとヒトゲノムのほぼ0.2%を占める多数の別個のセグメントを含む。トランスジェニックマウスが十分な抗体レパートリーを確実に産生できるようにするためには、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子座の大部分をマウスゲノムに導入しなければならない。これは、生殖系列構成のヒト重鎖免疫グロブリン遺伝子座または軽鎖免疫グロブリン遺伝子座のいずれかを含む酵母人工染色体(YAC)の形成から始まる段階的プロセスで達成される。各挿入物は約1Mbのサイズなので、YAC構築物は免疫グロブリン遺伝子座の重複断片の相同組換えを必要とする。一方は重鎖遺伝子座を含み、一方は軽鎖遺伝子座を含む2つのYACを、YAC含有酵母スフェロプラストとマウス胚性幹細胞の融合を通じてマウスに別々に導入する。次いで、胚性幹細胞クローンをマウス胚盤胞にマイクロインジェクションする。得られたキメラの雄を、生殖系列からYACを伝達するその能力についてスクリーニングし、マウス抗体産生に欠損があるマウスと交配させる。一方はヒト重鎖遺伝子遺伝子座を含み、もう一方はヒト軽鎖遺伝子遺伝子座を含む2つのトランスジェニック系統を交配させ、免疫化に応答してヒト抗体を産生する子孫を作り出す。
抗体は、当該技術分野で公知の方法を用いて細胞培養技術により産生することができる。1つの例では、トランスフェクトーマ培養物を無血清培地に適合させる。ヒト化抗体の産生のために、HSFMを用いてローラーボトル中500mlの培養物として細胞を増殖させることができる。培養物を遠心分離し、上清を0.2μmのメンブレンに通して濾過する。濾過した培地をプロテインAカラム(1×3cm)に流速1ml/分で通す。次いで、樹脂を約10カラム容量のPBSで洗浄し、10mM EDTAを含む0.1Mグリシン緩衝液(pH3.5)を用いて、プロテインA結合抗体をカラムから溶出させる。1.0ml画分を、10μlの3M Tris(pH8.6)を含むチューブに回収し、280/260nmの吸光度からタンパク質濃度を測定する。ピーク画分をプールし、PBSに対して透析し、例えば、Centricon 30フィルター(Amicon,Beverly,MA)を用いて抗体を濃縮する。抗体濃度はELISAで測定し、PBSを用いてその濃度を約1mg/mlに調整する。試料にアジ化ナトリウム0.01%(w/v)を防腐剤として加えると好都合である。
抗体は、種々の十分確立されている技術によりハイブリドーマ培養物から単離および精製することができる。このような単離技術としては、プロテインAセファロースを用いる親和性クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、およびイオン交換クロマトグラフィーが挙げられる。例えば、Coligan(2.7.1−2.7.12ページおよび2.9.1−2.9.3ページ)を参照されたい。METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY,第10巻,79−104ページのBainesら,「Purification of Immunoglobulin G(IgG)」(The Humana Press,Inc.1992)も参照されたい。
抗膵癌MAbは、当業者に周知の種々の技術によって特徴解析することができる。例えば、抗体のPAM4抗原に対する結合能力は、間接的酵素免疫アッセイ、フローサイトメトリー解析、ELISA、またはウエスタンブロット解析を用いて確認することができる。
抗体断片
抗体断片は、例えば、F(ab’)2、Fab’、F(ab)2、Fab、Fv、sFv、scFvなどの、抗体の抗原結合部分である。特定のエピトープを認識する抗体断片は、公知の技術により作製することができる。例えば、F(ab’)2断片は、抗体分子のペプシン消化により産生することができる。これらのおよびその他の方法は、例えば、Goldenbergの米国特許第4,036,945号および同第4,331,647号、ならびにそれらに含まれる参照文献により記載されている。また、Nisonoffら,Arch Biochem.Biophys.89:230(1960)、Porter,Biochem.J.73:119(1959)、Edelmanら,METHODS IN ENZYMOLOGY 第1巻,422ページ(Academic Press 1967)、ならびにColigan(2.8.1−2.8.10ページおよび2.10−2.10.4および)も参照されたい。あるいは、所望の特異性を有するモノクローナルFab’断片の迅速かつ容易な同定を可能にするために、Fab’発現ライブラリーを構築することができる(Huseら,1989,Science,246:1274−1281)。
単鎖Fv分子(scFv)は、1つのVLドメインと1つのVHドメインを含む。このVLドメインとVHドメインは、標的結合部位を形成するように会合している。これら2つのドメインはさらに、ペプチドリンカー(L)によって共有結合している。scFv分子は、VL−L−VH(VLドメインがscFv分子のN末端部である場合)、またはVH−L−VL(VHドメインがscFv分子のN末端部である場合)のいずれかとして表される。scFv分子の作製方法、および好適なペプチドリンカーの設計方法は、米国特許第4,704,692号、米国特許第4,946,778号、R.RaagおよびM.Whitlow,「Single Chain Fvs.」 FASEB 第9巻:73−80(1995)、ならびにR.E.BirdおよびB.W.Walker,「Single Chain Antibody Variable Regions」,TIBTECH,第9巻:132−137(1991)に記載されている。
他の抗体断片、例えば、単ドメイン抗体断片は当該技術分野で公知であり、特許請求された構築物で使用し得る。単ドメイン抗体(VHH)は、標準的な免疫化技術により、例えば、ラクダ、アルパカ、またはラマから得ることができる(例えば、Muyldermansら,TIBS 26:230−235,2001;Yauら,J Immunol Methods 281:161−75,2003;Maassら,J Immunol Methods 324:13−25,2007参照)。VHHは、強力な抗原結合能を有し得、従来のVH−VL対には接近不可能な新規のエピトープと相互作用することができる(Muyldermansら,2001)。アルパカ血清IgGは、ラクダ科重鎖のみのIgG抗体(HCAb)を約50%含む(Maassら,2007)。アルパカをTNF−αなどの既知の抗原で免疫化することができ、標的抗原に結合しかつ標的抗原を中和するVHHを単離することができる(Maassら,2007)。ほぼ全てのアルパカVHHコード配列を増幅するPCRプライマーが同定されており、これらのプライマーを用いて、アルパカVHHファージディスプレイライブラリーを構築することができ、このライブラリーを当該技術分野で周知の標準的なバイオパニング技術による抗体断片単離に使用することができる(Maassら,2007)。
抗体断片は、全長抗体のタンパク質分解的加水分解によって、または断片をコードするDNAの、大腸菌もしくは別の宿主内での発現によって調製することもできる。抗体断片は、常法により全長抗体のペプシンまたはパパイン消化により得ることができる。例えば、抗体断片は、抗体をペプシンで酵素的に切断して、F(ab’)2と表される約100Kdの断片を得ることにより作製することができる。この断片を、チオール還元剤、および任意でジスルフィド結合の切断により生じるスルフヒドリル基に対する遮断基を用いてさらに切断し、約50KdのFab’一価断片を生じさせることができる。あるいは、パパインを用いる酵素的切断によって、2つの一価Fab断片と1つのFc断片が直接的に生じる。
別の形態の抗体断片は、単一の相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。CDRは、抗体が結合するエピトープに構造上相補的であって、かつ可変領域の残りの部分よりも変化しやすい抗体の可変領域のセグメントである。したがって、CDRは超可変領域と呼ばれることもある。可変領域は3つのCDRを含む。CDRペプチドは、目的の抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することにより得ることができる。このような遺伝子は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成することにより調製される。例えば、Larrickら,Methods:A Companion to Methods in Enzymology 2:106(1991);Courtenay−Luck,「Genetic Manipulation ofモノクローナル ANTIBODIES」(MONOCLONAL ANTIBODIES:PRODUCTION,ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATION、Ritterら(編),166−179ページ(Cambridge University Press 1995));およびWardら,「Genetic Manipulation and Expression of Antibodies」(MONOCLONAL ANTIBODIES:PRINCIPLES AND APPLICATION、Birchら,(編),137−185ページ(Wiley−Liss,Inc.1995))を参照されたい。
重鎖を分離して一価の軽鎖−重鎖断片を形成し、さらに断片を切断するような他の抗体切断方法、または他の酵素学的、化学的、もしくは遺伝学的技術も、これらの断片が完全抗体により認識される抗原に結合する限り使用し得る。
抗体融合タンパク質
目的の抗膵癌抗体を含む融合タンパク質は、官能基間のグルタルアルデヒド結合からより特異的な結合までの種々の常法により調製することができる。本明細書に記載の融合タンパク質を含む抗体および/または抗体断片は、好ましくは、直接的に、あるいはリンカー部分を介して、あるいは抗体または断片上の1つまたは複数の官能基(例えば、アミン、カルボキシル、フェニル、チオール、もしくはヒドロキシル基)を介して、互いに共有結合している。グルタルアルデヒドの他、例えば、ジイソシアネート、ジイソチオシアネート、ビス(ヒドロキシスクシンイミド)エステル、カルボジイミド、マレイミドヒドロキシスクシンイミドエステルなどの様々な従来のリンカーを使用することができる。
融合タンパク質を作製する簡単な方法は、グルタルアルデヒドの存在下で抗体または断片を混合することである。最初のシッフ塩基結合は、例えば、第2級アミンへのホウ化水素還元により安定化させることができる。ジイソチオシアネートまたはカルボジイミドを、位置特異的でないリンカーとしてグルタルアルデヒドの代わりに使用することもできる。一実施形態では、抗体融合タンパク質は、抗膵癌MAbまたはその断片含み、このMAbはPAM4抗原に結合する。この融合タンパク質およびその断片は膵癌細胞に優先的に結合する。この一価単一特異性MAbは抗原のダイレクト・ターゲッティングに有用であるが、このダイレクト・ターゲッティングでは、MAbが治療剤、診断剤、またはそれらの組合せに結合しており、このタンパク質が患者に直接投与される。
融合タンパク質は、代わりに、PAM4抗原の異なるエピトープに結合する少なくとも2つの抗膵癌MAbまたはその断片を含み得る。例えば、MAbは、抗原特異的なダイアボディー、トリアボディー、およびテトラボディーを生じさせることができ、これらは多価であるが、PAM4抗原に対して単一特異的である。2つ以上のscFv分子の非共有結合的会合によって、機能的なダイアボディー、トリアボディー、およびテトラボディーが形成され得る。単一特異性ダイアボディーは同じscFvのホモ二量体であり、各scFvは、短いリンカーによって同じ抗体のVLドメインに連結されている、選択された抗体由来のVHドメインを含む。ダイアボディーは、2つのFv結合部位を生じさせる、2つのscFvの非共有結合的会合によって形成された二価の二量体である。トリアボディーは、3つの結合部位を生じさせる、3つのscFvからなる三価の三量体の形成により生じ、テトラボディーは、4つの結合部位を生じさせる、4つのscFvからなる四価の四量体である。いくつかの単一特異性ダイアボディーが、VH1−リンカー−VL1を含む組換え遺伝子構築物を含む発現ベクターを用いて作製されている。Holligerら,Proc Natl.Acad.Sci USA 90:6444−6448(1993);Atwellら,Molecular Immunology 33:1301−1302(1996);Holligerら,Nature Biotechnology 15:632−631(1997);Helfrichら,Int J Cancer 76:232−239(1998);Kipriyanovら,Int J Cancer 77:763−772(1998);Holigerら,Cancer Research 59:2909−2916(1999))を参照されたい。scFvを構築する方法は、米国特許第4,946,778号(1990)および米国特許第5,132,405号(1992)に開示されており、これらの各々の実施例の節は、参照により本明細書に組み込まれる。scFvに基づく多価単一特異性抗体の作製方法は、米国特許第5,837,242号(1998)、米国特許第5,844,094号(1998)、およびWO98/44001号(1998)に開示されており、これらの各々の実施例の節は、参照により本明細書に組み込まれる。多価単一特異性抗体融合タンパク質は、同じ抗原上または別の抗原上に存在し得る2つ以上の同種のエピトープに結合する。価数の増加により、さらなる相互作用、親和性の増強、および滞留時間の延長が可能になる。これらの抗体融合タンパク質をダイレクト・ターゲッティング系で使用することができるが、この系では、抗体融合タンパク質が治療剤、診断剤、またはそれらの組合せにコンジュゲートされており、それを必要とする患者に直接投与される。
好ましい実施形態は、PAM4標的エピトープに対する親和性を有する1つまたは複数の抗原結合部位と、膵癌と関連する他のエピトープに対する1つまたは複数のさらなる結合部位とを含む多価多重特異性抗体またはその断片である。この融合タンパク質は、同じまたは異なる抗原上に存在し得る少なくとも2つの異なるエピトープに結合するので、多重特異性である。例えば、融合タンパク質は2つ以上の抗原結合部位を含んでいてもよく、第1の抗原結合部位はPAM4抗原エピトープに対する親和性を有し、第2の抗原結合部位はTAG−72またはCEAなどの別の標的抗原に対する親和性を有する。別の例は、CA19.9 MAb(またはその断片)およびPAM4 MAb(またはその断片)を含み得る二重特異性抗体融合タンパク質である。このような融合タンパク質は、CA19.9およびPAM4に対する親和性を有する。抗体融合タンパク質およびその断片をダイレクト・ターゲッティング系で使用することができるが、この系では、抗体融合タンパク質が治療剤、診断剤、またはそれらの組合せにコンジュゲートされており、それを必要とする患者に直接投与される。
別の好ましい実施形態は、PAM4標的エピトープに対する親和性を有する少なくとも1つの結合部位と、ハプテン分子に対する親和性を有する少なくとも1つのハプテン結合部位とを含む多価多重特異性抗体である。例えば、二重特異性融合タンパク質は、679 MAb(またはその断片)およびPAM4 MAb(またはその断片)を含み得る。モノクローナル679抗体は、トリペプチド部分のヒスタミンスクシニルグリシル(HSG)を含む分子に高い親和性で結合する。このような二重特異性PAM4抗体融合タンパク質は、例えば、上記のように、679からF(ab’)2断片を得ることにより調製することができる。679 F(ab’)2断片の鎖間ジスルフィド架橋を、軽鎖−重鎖結合が起こらないように注意しながらDTTで穏やかに還元して、Fab’−SH断片を形成させる。このSH基を過剰のビス−マレイミドリンカー(1,1’−(メチレンジ−4,1−フェニレン)ビス−マレイミド)で活性化させる。PAM4 MAbをFab’−SHに変換した後、活性化した679 Fab’−SH断片と反応させて二重特異性抗体融合タンパク質を得る。この二重特異性抗体融合タンパク質のような二重特異性抗体融合タンパク質は、親和性増強系で使用することができるが、この系では、標的抗原が融合タンパク質でプレターゲッティングされ、次に、1つまたは複数のHSGハプテンを含む担体部分(ターゲッティング可能な構築物)に結合した診断剤または治療剤でターゲッティングされる。代わりの好ましい実施形態では、TF10などの、DNLベースのhPAM4−679構築物を、以下の実施例に記載されるように調製し、使用してもよい。
二重特異性抗体は、種々の従来法、例えば、ジスルフィドを切断し、全IgGまたは好ましくはF(ab’)2断片の混合物を再形成し、2つ以上のハイブリドーマを融合して2つ以上の特異性を有する抗体を産生するポリオーマを形成させることによって、および遺伝子改変によって作製することができる。二重特異性抗体融合タンパク質は、異なる抗体の還元的切断によって生じるFab’断片の酸化的切断によって調製されている。これは、2つの異なる抗体のペプシン消化によって生じた2つの異なるF(ab’)2断片を混合し、還元的切断によりFab’断片の混合物を形成し、次いで、酸化によってジスルフィド結合を再形成して、もとのエピトープの各々に特異的なFab’部分を含む二重特異性抗体融合タンパク質を含むF(ab’)2断片の混合物を産生することにより行なうのが有利である。抗体融合タンパク質の調製のための一般的技術は、例えば、Nisonoffら,Arch Biochem Biophys.93:470(1961)、Hmmerlingら,J Exp Med.128:1461(1968)、および米国特許第4,331,647号に見出し得る。
より選択性の高い結合は、マレイミドヒドロキシスクシンイミドエステルなどのヘテロ二官能性リンカーを用いることにより達成することができる。このエステルと抗体または断片との反応により、抗体または断片上のアミン基が誘導体化され、次にこの誘導体を、例えば、遊離スルフヒドリル基を有する抗体Fab断片(または、例えば、トラウト試薬によりスルフヒドリル基がそれに付加されたより大きな断片または完全抗体)と反応させることができる。このようなリンカーは同じ抗体中の基を架橋する可能性が低く、結合の選択性を向上させる。
抗原結合部位から離れた部位で抗体または断片を連結するのが有利である。これは、例えば、上記のように、切断された鎖内スルフヒドリル基に連結することにより達成することができる。別の方法は、酸化された炭水化物部分を有する抗体を、少なくとも1つの遊離アミン官能基を有する別の抗体と反応させることを含む。これにより最初のシッフ塩基結合が生じるが、これを、例えば、ホウ化水素還元によって第2級アミンへと還元することにより安定化し、最終的な複合体を形成させることが好ましい。このような部位特異的結合は、小分子については米国特許第4,671,958号に、より大きな付加物については米国特許第4,699,784号に開示されており、それらの各々の実施例の節は、参照により本明細書に組み込まれる。
12アミノ酸残基長よりも長いリンカー(例えば、15または18残基のリンカー)を有するscFvでは、同じ鎖上のVHドメインとVLドメイン間の相互作用が可能になり、通常、単量体、二量体(ダイアボディーと呼ばれる)、および少量のより質量の大きい多量体の混合物が形成される(Korttら,Eur.J.Biochem.(1994)221:151−157)。しかしながら、5つ以下のアミノ酸残基のリンカーを有するscFvでは、同じ鎖上のVHドメインとVLドメインの分子内対合は妨げられ、異なる鎖上のVHドメインとVLドメインの対合が強いられる。3〜12残基のリンカーでは、主に二量体が形成される(Atwellら,Protein Engineering(1999)12:597−604)。0〜2残基のリンカーの場合、scFvの三量体(トリアボディーと呼ばれる)、四量体(テトラボディーと呼ばれる)、またはより高次のオリゴマー構造物が形成されるが、オリゴマー化の正確なパターンは、リンカーの長さの他、Vドメインの組成および向きに依存するように思われる。
つい最近では、ほとんど全ての所望の組合せで抗体、抗体断片、および/またはその他のエフェクター部分の混合物を構築するための新規の技術が、2006年3月24日に出願された米国特許出願第11/389,358号(現在公開されている米国特許第7,550,143号);2006年3月28日に出願された同第11/391,584号(現在公開されている米国特許第7,521,056号);2006年6月29日に出願された同第11/478,021号(現在公開されている米国特許第7,534,866号);2006年12月5日に出願された同第11/633,729号(現在公開されている米国特許第7,527,787号);および2007年10月26日に出願された同第11/925,408号に記載されており、これらの各々の実施例の節は、参照により本明細書に組み込まれる。一般にドック・ロック(DNL)として知られる技術は、二量体化・ドッキングドメイン(DDD)配列およびアンカリングドメイン(AD)配列と呼ばれる2つの相補的ペプチド配列のうちの1つをそのN末端またはC末端に含む融合タンパク質の産生を含む。好ましい実施形態では、DDD配列は、cAMP依存的タンパク質キナーゼの調節サブユニットに由来し、AD配列は、Aキナーゼアンカリングタンパク質(AKAP)の配列に由来する。DDD配列は、AD配列に結合する二量体を形成し、これにより、三量体、四量体、六量体、または任意の種々の他の複合体の形成が可能になる。抗体または抗体断片などのエフェクター部分をDDD配列およびAD配列に付加することによって、抗体または抗体断片の任意の選択された組合せの複合体を形成し得る。DNL複合体は、ジスルフィド結合またはその他の結合の形成により共有結合的に安定化し得る。
任意の公知の抗TAA抗体の抗原結合可変領域配列を含む二重特異性抗体を使用してもよく、抗TAA抗体としては、hPAM4(米国特許第7,282,567号)、hA20(米国特許第7,251,164号)、hA19(米国特許第7,109,304号)、hIMMU31(米国特許第7,300,655号)、hLL1(米国特許第7,312,318号)、hLL2(米国特許第7,074,403号)、hMu−9(米国特許第7,387,773号)、hL243(米国特許出願第11,368,296号)、hMN−14(米国特許第6,676,924号)、hRS7(米国特許第7,238,785号)、hMN−3(米国特許出願第10,672,278号)、およびhR1(2009年1月20日に出願された米国仮特許出願第61,145,896号)が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、引用された特許または特許出願の各々の実施例の節は、参照により本明細書に組み込まれる。
有用な他の抗体は、多種多様な公知の供給源から市販で入手し得る。例えば、種々の抗体を分泌するハイブリドーマ株は、American Type Culture Collection(ATCC,Manassas,VA)から入手可能である。腫瘍関連抗原を含むが、これに限定されない、様々な疾患標的に対する多数の抗体が、ATCCに寄託されており、かつ/またはこれらの抗体は、可変領域配列が公表されており、特許請求された方法および組成物で使用するために利用可能である。例えば、米国特許第7,312,318号;同第7,282,567号;同第7,151,164号;同第7,074,403号;同第7,060,802号;同第7,056,509号;同第7,049,060号;同第7,045,132号;同第7,041,803号;同第7,041,802号;同第7,041,293号;同第7,038,018号;同第7,037,498号;同第7,012,133号;同第7,001,598号;同第6,998,468号;同第6,994,976号;同第6,994,852号;同第6,989,241号;同第6,974,863号;同第6,965,018号;同第6,964,854号;同第6,962,981号;同第6,962,813号;同第6,956,107号;同第6,951,924号;同第6,949,244号;同第6,946,129号;同第6,943,020号;同第6,939,547号;同第6,921,645号;同第6,921,645号;同第6,921,533号;同第6,919,433号;同第6,919,078号;同第6,916,475号;同第6,905,681号;同第6,899,879号;同第6,893,625号;同第6,887,468号;同第6,887,466号;同第6,884,594号;同第6,881,405号;同第6,878,812号;同第6,875,580号;同第6,872,568号;同第6,867,006号;同第6,864,062号;同第6,861,511号;同第6,861,227号;同第6,861,226号;同第6,838,282号;同第6,835,549号;同第6,835,370号;同第6,824,780号;同第6,824,778号;同第6,812,206号;同第6,793,924号;同第6,783,758号;同第6,770,450号;同第6,767,711号;同第6,764,688号;同第6,764,681号;同第6,764,679号;同第6,743,898号;同第6,733,981号;同第6,730,307号;同第6,720,15号;同第6,716,966号;同第6,709,653号;同第6,693,176号;同第6,692,908号;同第6,689,607号;同第6,689,362号;同第6,689,355号;同第6,682,737号;同第6,682,736号;同第6,682,734号;同第6,673,344号;同第6,653,104号;同第6,652,852号;同第6,635,482号;同第6,630,144号;同第6,610,833号;同第6,610,294号;同第6,605,441号;同第6,605,279号;同第6,596,852号;同第6,592,868号;同第6,576,745号;同第6,572;856号;同第6,566,076号;同第6,562,618号;同第6,545,130号;同第6,544,749号;同第6,534,058号;同第6,528,625号;同第6,528,269号;同第6,521,227号;同第6,518,404号;同第6,511,665号;同第6,491,915号;同第6,488,930号;同第6,482,598号;同第6,482,408号;同第6,479,247号;同第6,468,531号;同第6,468,529号;同第6,465,173号;同第6,461,823号;同第6,458,356号;同第6,455,044号;同第6,455,040, 6,451,310号;同第6,444,206’ 6,441,143号;同第6,432,404号;同第6,432,402号;同第6,419,928号;同第6,413,726号;同第6,406,694号;同第6,403,770号;同第6,403,091号;同第6,395,276号;同第6,395,274号;同第6,387,350号;同第6,383,759号;同第6,383,484号;同第6,376,654号;同第6,372,215号;同第6,359,126号;同第6,355,481号;同第6,355,444号;同第6,355,245号;同第6,355,244号;同第6,346,246号;同第6,344,198号;同第6,340,571号;同第6,340,459号;同第6,331,175号;同第6,306,393号;同第6,254,868号;同第6,187,287号;同第6,183,744号;同第6,129,914号;同第6,120,767号;同第6,096,289号;同第6,077,499号;同第5,922,302号;同第5,874,540号;同第5,814,440号;同第5,798,229号;同第5,789,554号;同第5,776,456号;同第5,736,119号;同第5,716,595号;同第5,677,136号;同第5,587,459号;同第5,443,953号、同第5,525,338号を参照されたく、これらの各々の実施例の節は、参照により本明細書に組み込まれる。これらは例に過ぎず、多種多様な他の抗体およびそのハイブリドーマが当該技術分野で公知である。当業者であれば、目的の選択された疾患関連標的に対する抗体を求めて単にATCC、NCBI、および/またはUSPTOのデータベースを探索することによって、ほぼ全ての疾患関連抗原に対する抗体配列または抗体分泌ハイブリドーマを入手し得ることを理解するであろう。当該技術分野で周知の標準的な技術を用いて、クローニングした抗体の抗原結合ドメインを増幅し、切り出し、発現ベクターに連結し、適合した宿主細胞にトランスフェクトし、タンパク質産生に使用し得る。
プレターゲッティング
二重特異性抗体または多重特異性抗体をプレターゲッティング技術で使用し得る。プレターゲッティングは、元々、骨髄などの正常組織に対する望ましくない毒性の一因となる直接的なターゲッティング抗体の血中クリアランスの遅さを解決するために開発された多段階プロセスである。プレターゲッティングでは、放射性核種またはその他の治療剤を、血液から数分以内にクリアランスされる小さい送達分子(ターゲッティング可能な構築物またはターゲッティング可能なコンジュゲート)に付加する。ターゲッティング可能な構築物および標的抗原に対する結合部位を有する、プレターゲッティング二重特異的抗体または多重特異的抗体をまず投与し、遊離抗体を血中からクリアランスさせ、その後、ターゲッティング可能な構築物を投与する。
プレターゲッティング法は、例えば、Goodwinら,米国特許第4,863,713号;Goodwinら,J.Nucl.Med.29:226,1988;Hnatowichら,J.Nucl.Med.28:1294,1987;Oehrら,J.Nucl.Med.29:728,1988;Klibanovら,J.Nucl.Med.29:1951,1988;Sinitsynら,J.Nucl.Med.30:66,1989;Kalofonosら,J.Nucl.Med.31:1791,1990;Schechterら,Int.J.Cancer 48:167,1991;Paganelliら,Cancer Res.51:5960,1991;Paganelliら,Nucl.Med.Commun.12:211,1991;米国特許第5,256,395号;Stickneyら,Cancer Res.51:6650,1991;Yuanら,Cancer Res.51:3119,1991;米国特許第6,077,499号;米国特許出願第09/597,580号;米国特許出願第10/361,026号;米国特許出願第09/337,756号;米国特許出願第09/823,746号;米国特許出願第10/116,116号;米国特許出願第09/382,186号;米国特許出願第10/150,654号;米国特許第6,090,381号;米国特許第6,472,511号;米国特許出願第10/114,315号;米国仮特許出願第60/386,411号;米国仮特許出願第60/345,641号;米国仮特許出願第60/3328,835号;米国仮特許出願第60/426,379号;米国特許出願第09/823,746号;米国特許出願第09/337,756号;米国仮特許出願第60/342,103号;および米国特許第6,962,702号に開示されているように、当該技術分野で周知である。
対象の疾患または障害を治療または診断するプレターゲッティング法は、(1)対象に二重特異性抗体または抗原結合抗体断片を投与し、(2)必要に応じて、対象にクリアリング組成物を投与し、この組成物に血中から抗体をクリアランスさせ、(3)対象に1つまたは複数のキレート化されたもしくは化学的に結合された治療剤または診断剤を含むターゲッティング可能な構築物を投与することにより、提供され得る。この技術は、ターゲッティング可能な構築物にコンジュゲートした酵素を投与し、次いで、この酵素によって活性形態に変換されるプロドラッグを投与することにより、抗体依存的酵素プロドラッグ療法(ADEPT)に利用し得る。
発現ベクターおよび宿主細胞
発現ベクターは、宿主細胞内で発現される遺伝子を含むDNA分子である。通常、遺伝子発現は、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーター、組織特異的調節エレメント、およびエンハンサーをはじめとする、特定の調節エレメントの制御下に置かれる。このような遺伝子は、調節エレメントに「機能的に連結されている」と言われる。プロモーターは構造遺伝子の転写を指令するDNA配列である。構造遺伝子はメッセンジャーRNA(mRNA)へと転写されるDNA配列であり、メッセンジャーRNAは、その後、ペプチドまたはタンパク質へと翻訳される。プロモーターが誘導性プロモーターの場合、誘導因子に応答して転写の割合が増加する。対照的に、プロモーターが構成的プロモーターの場合、転写の割合は誘導因子によって調節を受けない。エンハンサーは、転写の開始部位に対するエンハンサーの距離または向きとは無関係に、転写効率を高めることができるDNA調節エレメントである。
単離されたDNA分子は、細胞または生物の染色体DNAに組み込まれていないDNAの断片である。好ましい実施形態では、発現されるDNA配列は、発現ベクターにパッケージングされ、宿主細胞にトランスフェクトされるが、宿主細胞内では、宿主細胞の染色体DNAに組み込まれることが好ましい。例えば、より短いオリゴヌクレオチドの化学合成およびタンパク質コード配列へのアセンブリよる任意の選択された配列の核酸の構築方法が当該技術分野で周知である。あるいは、制限エンドヌクレアーゼを用いて目的のDNA配列を切断し、つなぎ合わせて、選択されたタンパク質コード配列を作製してもよい。部位特異的突然変異導入などの、コードされたタンパク質配列中に特定の変化を生じさせるための他の技術も周知である。
クローニングベクターは、プラスミド、コスミド、またはバクテリオファージなどの、宿主細胞で自律的に複製する能力を有するDNA分子である。クローニングベクターは、典型的には、1つまたは少数の制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含み、この部位に、ベクターの本質的な生物学的機能を失わせずに決定可能な様式で外来DNA配列、ならびにクローニングベクターで形質転換された細胞の同定および選択で使用するのに好適なマーカー遺伝子を挿入することができる。マーカー遺伝子は、典型的には、テトラサイクリン、アンピシリン、カナマイシン、またはその他の抗生物質に対する耐性を与える遺伝子を含む。組換え宿主は、クローニングベクターまたは発現ベクターのいずれかを含む任意の原核細胞または真核細胞であってもよい。この用語は、宿主細胞の染色体またはゲノム中にクローニングされた遺伝子を含むように遺伝子改変された、原核細胞または真核細胞も含む。
好適な宿主細胞としては、微生物または哺乳動物の宿主細胞が挙げられる。好ましい宿主は、MAbおよびその他の融合タンパク質の産生用に開発されたヒト細胞株PER.C6である。したがって、好ましい実施形態は、抗膵癌MAb、コンジュゲート、融合タンパク質またはそれらの断片をコードするDNA配列を含む宿主細胞である。PER.C6細胞(WO97/00326号)は、ヒトホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターの制御下にAd血清型5(Ad5)E1AおよびE1Bコード配列(Ad5ヌクレオチド459〜3510)を含むプラスミドを用いた、初代ヒト胎児網膜細胞のトランスフェクションにより作製された。
SP2/0細胞、およびNS0細胞などの骨髄腫細胞、ならびにチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ハイブリドーマ細胞株、および抗体発現に有用な他の哺乳動物宿主細胞をはじめとする、他の哺乳動物宿主細胞を使用してもよい。2005年7月25日に出願された米国特許出願第11/187,863号(現在公開されている米国特許第7,531,327号); 2006年7月14日に出願された米国特許出願第 11/487,215号(現在公開されている米国特許第7,537,930号);および2007年10月24日に出願された米国特許出願第11/877,728号(これらの各々の実施例の節は、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているような、Bcl−EEE遺伝子などのアポトーシス阻害因子をトランスフェクトされ、かつ無血清条件で増殖し、さらにトランスフェクトするのに適しているSP2/0細胞も、mAbおよび他の融合タンパク質の発現に特に有用である。場合によって、発現されるアポトーシス阻害因子および/または構造遺伝子は、宿主細胞を適切な濃度のメトトレキセートに曝露させることによって増幅し得る。Bcl−EEEをトランスフェクトされ、 無血清培地中で増殖するように馴化したSP2/0細胞は、培養寿命が長くなり、細胞密度がより高く、かつタンパク質産生率が顕著により高いことが報告されている(米国特許第7,531,327号;米国特許第7,537,930号);2007年10月24日に出願された米国特許出願第11/877,728号)。
治療および診断への抗体使用
特定の実施形態は、対象の悪性腫瘍を診断または治療する方法であって、対象に抗膵癌MAb、融合タンパク質、またはそれらの断片を投与することを含む方法に関するものであり、ここで、このMAb、融合タンパク質、または断片は、少なくとも1つの診断剤および/または治療剤に結合している。また、癌を診断または治療する方法であって、対象にPAM4抗原に対する1つまたは複数の抗原結合部位と1つまたは複数のハプテン結合部位とを含む多価多重特異性抗体またはその断片を投与すること、結合していない抗体が対象の血流からクリアランスされるのに十分な時間待つこと、ならびにその後、対象に、局在化した抗体のハプテン結合部位に結合する、診断剤、治療剤、またはそれらの組合せを含む担体分子を投与することを含む方法も好ましい。より好ましい実施形態では、癌は非内分泌膵癌である。
インビトロ診断にMAbを使用することは周知である。例えば、Carlssonら,Bio/Technology 7(6):567(1989)を参照されたい。例えば、MAbは、生検試料由来の組織における腫瘍関連抗原の存在を検出するために使用することができる。MAbは、放射性免疫アッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ、および蛍光免疫アッセイなどの技術を用いて、臨床体液試料中の腫瘍関連抗原の量を測定するためにも使用できる。
腫瘍標的化MAbと毒素のコンジュゲートは、インビボで癌細胞を選択的に死滅させるために使用することができる(Spalding,Bio/Technology 9(8):701(1991);Goldenberg,Scientific American Science & Medicine 1(1):64(1994))。例えば、実験動物モデルにおける治療研究により、細胞傷害性放射性核種を有する抗体の抗腫瘍活性が示されている(Goldenbergら,Cancer Res.41:4354(1981)、Cheungら,J.Nat’l Cancer Inst.77:739(1986)、およびSenekowitschら,J.Nucl.Med.30:531(1989))。好ましい実施形態では、コンジュゲートは、90Y標識hPAM4抗体を含む。コンジュゲートは、任意で1つまたは複数の他の治療剤とともに投与されてもよい。好ましい実施形態では、90Y標識hPAM4は、ゲムシタビンまたは5−フルオロウラシルとともに膵癌患者に投与される。さらに好ましい実施形態では、90Yは、hPAM4に付加されるDOTAキレート剤にコンジュゲートされる。またさらに好ましい実施形態では、より少なく、より毒性の低い反復用量のゲムシタビンをより少ない、分割用量の90Y−DOTA−hPAM4と組み合わせるように、90Y−DOTA−hPAM4を、治療周期を含む分割用量で、ゲムシタビンと組み合わせる。
認容性である場合、この分割用量スケジュールの反復周期が示される。一例として、ゲムシタビン200mg/m2の4週投与を、90Y−DOTA−hPAM4 8mg/m2の3週投与と組み合わせ、後者をゲムシタビン投与の2週目に開始する。これで1回の治療周期が構成される。両方の薬剤の骨髄抑制効果は累積的であり得るので、各成分がより多いかまたはより少ない、さらに他の用量で、分割用量が構成されてもよく、これは、造血毒性を評価する従来の手段で決定される。このような治療介入に習熟した医師ならば、骨髄抑制性治療剤への事前曝露を含む多くの要因に基づく患者の骨髄の状態や全身の健康状態を根拠にしてこれらの用量を調整することができる。これらの原則は、放射性標識hPAM4と、5−フルオロウラシルやシスプラチンなどの放射線増感薬をはじめとする他の治療剤との組合せにも適用することができる。
キメラ抗体、ヒト化抗体、およびヒト抗体ならびにそれらの断片は、インビボでの治療法および診断法に使用されている。したがって、診断剤もしくは治療剤、またはそれらの組合せを標的に送達する方法であって、(i)少なくとも1つの診断剤および/または治療剤にコンジュゲートされたキメラPAM4抗体、ヒト化PAM4抗体、またはヒトPAM4抗体などの、抗膵癌抗体またはその断片を含む組成物を準備すること、ならびに(ii)その診断用または治療用の抗体コンジュゲートを対象に投与することを含む方法が企図される。好ましい実施形態では、抗膵癌抗体およびその断片は、ヒト化されているかまたは完全ヒト型である。
また、例えば、少なくとも1つの診断剤または少なくとも1つの治療剤に結合した、キメラPAM4 MAb、ヒト化PAM4 MAb、もしくはヒトPAM4 MAbまたはそれらの断片を含む、癌細胞を標的とする診断用または治療用のコンジュゲートも本明細書に記載されている。好ましくは、診断用コンジュゲートは、光活性診断剤、超音波検出剤、MRI造影剤、または18Fもしくは68GaなどのPET放射性核種である。さらに好ましくは、診断剤は、20〜4,000keVのエネルギーを有する放射性核種である。
別の実施形態は、悪性腫瘍を治療する方法であって、PAM4抗体などの、裸の抗膵癌抗体、抗体断片、または融合タンパク質を、単独でまたは1つもしくは複数の他の治療剤とともに投与することを含む方法に関する。他の治療剤は、抗体の前に、抗体と同時に、または抗体の後に加えてもよい。好ましい実施形態では、治療剤はゲムシタビンであり、より好ましい実施形態では、ゲムシタビンは、週1回6週間投与される従来の800〜1,000mg/m2用量のゲムシタビンよりも少ない用量で、分割投与スケジュールでhPAM4放射性コンジュゲートとともに投与される。例えば、分割治療用量の90Y−PAM4と組み合わせる場合、放射線増感剤として作用することが意図される反復分割用量のゲムシタビン200〜380mg/m2が注入される。当業者であれば、本明細書に記載され、特許請求された抗体、融合タンパク質、および/またはそれらの断片を、熱ショックタンパク質90(Hsp90)を含むが、これに限定されない、任意の公知のまたは記載された治療剤とともに投与し得ることを理解するであろう。
治療用組成物は、少なくとも1つのヒト化抗膵癌抗体もしくは完全ヒト抗膵癌抗体またはそれらの断片を、単独でかつコンジュゲートさせずにか、他のヒト化抗体もしくはキメラ抗体、ヒト抗体などの、他の抗体もしくはその断片、治療剤、または免疫調節物質とコンジュゲートさせてか、あるいはこれらとコンジュゲートさせずに組み合わせてかのいずれかで含む。また、同じまたは異なるエピトープもしくは抗原に対する裸のまたはコンジュゲートされた抗体を、1つまたは複数の抗膵癌抗体もしくはその断片と組み合わせてもよい。
したがって、本発明は、融合タンパク質およびその断片を含む、抗膵癌抗体およびその断片を、裸の抗体または抗体断片として、単独で投与すること、または集学的療法として投与することを企図している。好ましくは、抗体は、ヒト化PAM4抗体もしくは完全ヒトPAM4抗体またはそれらの断片である。集学的療法は、他の抗体を裸の抗体、融合タンパク質の形態で、または免疫コンジュゲートとして投与することを伴う、裸の抗膵癌抗体による免疫療法をさらに含む。例えば、ヒト化PAM4抗体または完全ヒトPAM4抗体を、別の裸の抗体、あるいは同位体、1つもしくは複数の化学療法剤、サイトカイン、毒素、またはそれらの組合せとコンジュゲートされたヒト化PAM4抗体またはその他の抗体と組み合わせてもよい。例えば、本発明は、CA19.9、DUPAN2、SPAN1、Nd2、B72.3、CC49、抗Lea抗体、他のルイス抗原(例えば、Le(y))に対する抗体、ならびに癌胎児性抗原(CEAまたはCEACAM5)、CEACAM6、結腸特異的抗原p(CSAp)、MUC−1、MUC−2、MUC−3、MUC−4、MUC−5ac、MUC−16、MUC−17、HLA−DR、CD40、CD74、CD138、HER2/neu、EGFR、EGP−1、EGP−2、血管新生因子(例えば、VEGF、PlGF)、インスリン様増殖因子(ILGF)、テネイシン、血小板由来増殖因子、およびIL−6に対する抗体、ならびにオンコジーン産物(例えば、bcl−2、Kras、p53)、cMETに対する抗体、ならびに腫瘍壊死物質に対する抗体などの他の膵腫瘍関連抗体の前に、これらと組み合わせて、またはこれらの後に、裸のまたはコンジュゲートされたPAM4抗体またはその断片を処置することを企図している。これらの固形腫瘍抗体は裸であってもよいし、または特に、薬物、毒素、同位体、放射性核種、もしくは免疫調節物質とコンジュゲートされていてもよい。多くの異なる抗体の組合せを、裸の形態かまたはコンジュゲートされた形態のいずれかで構築し、使用してもよい。あるいは、異なる裸の抗体の組合せを、連続的に、同時に、または順次に投与される、細胞傷害剤などの他の治療剤、または放射線と組み合わせて投与するために利用してもよい。
本明細書に記載の抗体はPAM4陽性腫瘍を直接ターゲッティングする。抗体は、膵癌または他の癌抗原に選択的に結合し、分子上の結合部位の数が増すにつれ、標的細胞に対する親和性が増し、所望の場所での滞留時間の延長が見られる。さらに、抗原に結合しない分子は身体から速やかにクリアランスされ、正常組織の曝露が最小限に抑えられる。多重特異性抗体の使用はAES系でのものであり、この系では、その後の診断剤または治療剤の特異的送達のために、抗PAM4抗体が陽性腫瘍をプレターゲッティングする。薬剤は、ヒスタミンスクシニルグリシル(HSG)含有ペプチドによって運ばれ得る。679と呼ばれるマウスモノクローナル抗体は、トリペプチドHSGハプテンを含む分子に高い親和性で結合し(Morelら,Molecular immunology,27,995−1000,1990)、hPAM4との二重特異性抗体を形成させるために使用し得る。しかし、ヒト化型の679の使用が一層より好ましい。また、In−DTPAまたはNOTAなどの、代わりとなるハプテンを利用してもよい。二重特異性抗体は標的とされる抗原に選択的に結合し、親和性の増大や所望の場所での滞留時間の延長を可能にする。さらに、抗原に結合しない抗体は身体から速やかにクリアランスされ、正常組織の曝露が最小限に抑えられる。PAM4抗体および他の膵癌に対する抗体は、哺乳動物の癌の診断および/または治療に使用することができる。診断には、公知の技術を用いて、結合した標識抗体または断片を検出する工程がさらに必要となる。
この用途に関して、「診断」または「検出」という用語は、互換的に使用されることができる。通常、診断が組織の特定の組織学的状態を規定することを指すのに対し、検出は、特定の抗原を含む組織、病変、または生物を認識および限局化するものである。
抗体およびその断片の投与は、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、胸膜腔内、髄腔内への注射、局所的カテーテルによる灌流、または直接的な病巣内への注射により行なうことができる。抗体を注射により投与する場合、投与は、連続注入によるもの、または単回もしくは複数回のボーラス注射によるものであってもよい。
裸の抗体による療法
裸の抗膵癌抗体およびその断片の効力は、これらの裸の抗体を、同時にまたは順次にまたは所定の投与計画に従って投与される、1つまたは複数の他の裸の抗体、あるいは薬物、毒素、免疫調節物質、ホルモン、オリゴヌクレオチド、ホルモン拮抗薬、酵素、酵素阻害剤、治療用放射性核種、血管新生阻害剤などをはじめとする、1つまたは複数の治療剤とコンジュゲートされた1つまたは複数の免疫コンジュゲートで補うことによって増強することができる。あるいは、裸の抗体は、他の抗体に付加されていない治療剤とともに投与されてもよい。裸の抗膵癌抗体を補うために使用し得る抗体は、同じ癌細胞に対して向けられたものであってもよいし、または選択された裸の抗体の抗腫瘍効果を増強するために動員することができる免疫調節細胞(例えば、CD40+細胞)に対して向けられたものであってもよい。
免疫コンジュゲート、治療剤、および診断剤
抗膵癌抗体およびその断片は、治療または診断用の少なくとも1つの治療剤および/または診断剤にコンジュゲートされていてもよい。免疫療法の場合、その目的は、非標的組織への曝露を最小限に抑えて、細胞傷害用量の放射能、毒素、抗体、および/または薬物を標的細胞に送達することである。好ましくは、抗膵癌抗体は、膵腫瘍を診断および/または治療するために使用される。
抗体、抗体断片、または融合タンパク質はどれも、当該技術分野で公知の種々の技術を用いて、1つまたは複数の治療剤または診断剤とコンジュゲートすることができる。1つまたは複数の治療剤または診断剤を、各々の抗体、抗体断片、または融合タンパク質に結合させてもよい。Fc領域が存在しない場合(特定の抗体断片の場合)、治療剤または診断剤を付加し得る抗体または抗体断片のいずれかの軽鎖可変領域に炭水化物部分を導入することが可能である。例えば、Leungら,J Immunol.154:5919(1995)、Hansenら,米国特許第5,443,953号(1995)、Leungら,米国特許第6,254,868号を参照されたく、各々の特許の実施例の節は、参照により本明細書に組み込まれる。
抗体の炭水化物部分を介して抗体成分にペプチドをコンジュゲートする方法は当業者に周知である。例えば、Shihら,Int.J.Cancer 41:832(1988);Shihら,Int.J.Cancer 46:1101(1990);およびShihら,米国特許第5,057,313号を参照されたく、これらの実施例の節は、参照により本明細書に組み込まれる。一般的な方法は、酸化された炭水化物部分を有する抗体成分を、少なくとも1つの遊離アミン官能基を有し、かつペプチドまたは薬物などの、複数の治療剤が付加された担体ポリマーと反応させることを含む。この反応により、最初のシッフ塩基(イミン)結合が生じ、この結合は、第2級アミンへの還元によって安定化され、最終的なコンジュゲートを形成することができる。
抗体融合タンパク質または多重特異性抗体は2つ以上の抗体またはその断片を含み、その各々は、少なくとも1つの治療剤および/または診断剤に付加されていてもよい。したがって、抗体融合タンパク質の1つまたは複数の抗体またはその断片は、付加された2つ以上の治療剤および/または診断剤を有することができる。さらに、これらの治療剤は同じである必要はなく、異なる治療剤であることができ、例えば、薬物や放射性同位体を同じ融合タンパク質に付加することができる。特に、IgGを131Iで放射性標識し、薬物に付加することができる。131IはIgGのチロシンに取り込ませることができ、薬物はIgGリジンのイプシロンアミノ基に付加することができる。治療剤と診断剤は両方とも、還元されたSH基、および抗体の炭水化物側鎖に付加することもできる。あるいは、二重特異性抗体は、疾患抗原に対する1つの抗体またはその断片と、上で論じられたようなプレターゲッティング技術で使用されるターゲッティング可能な構築物に付加されたハプテンに対する別の抗体またはその断片とを含んでいてもよい。
多種多様な診断試薬および治療試薬、例えば、薬物、毒素、オリゴヌクレオチド、免疫調節物質、ホルモン、ホルモン拮抗薬、酵素、酵素阻害剤、放射性核種、血管新生阻害剤などを同時投与もしくは順次投与することができ、または有利には本発明の抗体にコンジュゲートさせることができる。本明細書に列挙した治療剤は、上記のような裸の抗体とは別に投与しても有用な薬剤である。治療剤としては、例えば、ビンカアルカロイド、アントラサイクリン、ゲムシタビン、エピドフィロトキシン、タキサン、代謝拮抗薬、アルキル化剤、抗生物質、SN−38、COX−2阻害剤、抗有糸分裂剤、抗血管新生剤、およびアポトーシス剤、特にドキソルビシン、メトトレキセート、タキソール、CPT−11、カンプトテカン、プロテオソーム阻害剤、mTOR阻害剤、HDAC阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、ならびにこれらのおよびその他の種類の抗癌剤由来の他のものなどのような化学療法薬が挙げられる。同時投与もしくは順次投与のために、または免疫コンジュゲートおよび抗体融合タンパク質の調製のために有用な他の癌化学療法薬としては、窒素マスタード、アルキルスルホネート、ニトロソ尿素、トリアゼン、葉酸類似体、COX−2阻害剤、代謝拮抗薬、ピリミジン類似体、プリン類似体、白金配位錯体、mTOR阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、プロテオソーム阻害剤、HDAC阻害剤、カンプトテシン、ホルモンなどが挙げられる。好適な化学療法剤は、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES、第19版(Mack Publishing Co.1995)、およびGOODMANおよびGILMAN’S THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THE RAPEUTICS、第7版(Mac Millan Publishing Co.1985)、ならびにこれらの刊行物の改訂版に記載されている。実験薬などの、他の好適な化学療法剤は当業者に公知である。
好ましい実施形態では、カンプトテシンおよび関連化合物(例えば、SN−38)のコンジュゲートを、hPAM4または例えば、2008年2月6日に出願された米国特許出願第12/026,811号;および2006年3月23日に出願された米国特許出願第11/388,032号(これらの実施例の節は、参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているような他の抗膵癌抗体にコンジュゲートさせてもよい。
別の好ましい実施形態では、hPAM4抗体をゲムシタビンにコンジュゲートさせる。別の実施形態では、ゲムシタビンを、裸のまたはコンジュゲートされたキメラPAM4抗体、ヒト化PAM4抗体、またはヒトPAM4抗体の前、後、またはこれらと同時に投与する。好ましくは、コンジュゲートされたhPAM4抗体または抗体断片を放射性核種にコンジュゲートさせる。
毒素は、動物、植物、または微生物起原のものであることができる。シュードモナス外毒素などの毒素はまた、抗膵癌抗体およびhPAM4抗体の免疫コンジュゲートの治療剤部分と複合体化されてもよく、またはこのような治療剤部分を形成してもよい。このようなコンジュゲートまたは他の融合タンパク質の調製に好適に利用される他の毒素としては、リシン、アブリン、リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)、DNアーゼI、ブドウ球菌腸毒素−A、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素、およびシュードモナス内毒素が挙げられる。例えば、Pastanら,Cell 47:641(1986)、Goldenberg,CA−−A Cancer Journal for Clinicians 44:43(1994)、SharkeyおよびGoldenberg,CA−−A Cancer Journal for Clinicians 56:226(2006)を参照されたい。使用に好適なさらなる毒素は当業者に公知であり、米国特許第6,077,499号に開示されており、この実施例の節は、参照により本明細書に組み込まれる。
サイトカインなどの免疫調節物質はまた、免疫コンジュゲートの治療剤部分にコンジュゲートされてもよく、もしくはこのような治療剤部分を形成してもよく、または抗体、抗体断片、もしくは融合タンパク質にコンジュゲートされずに投与されてもよい。融合タンパク質は、異なる抗原に結合する1つまたは複数の抗体またはその断片を含み得る。例えば、融合タンパク質はPAM4抗原および免疫調節細胞または免疫調節因子と結合し得る。あるいは、対象は、裸の抗体、抗体断片、または融合タンパク質、およびそれとは別に投与されるサイトカインを受容することができ、このサイトカインは裸の抗体の投与の前、投与と同時、または投与の後に投与することができる。本明細書で使用する場合、「免疫調節物質」という用語は、サイトカイン、リンホカイン、モノカイン、幹細胞増殖因子、リンホトキシン、造血因子、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン(IFN)、副甲状腺ホルモン、チロキシン、インスリン、プロインスリン、リラキシン、プロリラキシン、濾胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、黄体形成ホルモン(LH)、肝増殖因子、プロスタグランジン、線維芽細胞増殖因子、プロラクチン、胎盤性ラクトゲン、OBタンパク質、形質転換増殖因子(TGF)、TGF−α、TGF−β、インスリン様増殖因子(ILGF)、エリスロポエチン、トロンボポエチン、腫瘍壊死因子(TNF)、TNF−α、TNF−β、ミューラー管阻害物質、マウスゴナドトロピン関連ペプチド、インヒビン、アクチビン、血管内皮増殖因子、インテグリン、インターロイキン(IL)、顆粒球−コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージ−コロニー刺激因子(GM−CSF)、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、S1因子、IL−1、IL−1cc、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−21、およびIL−25、LIF、kit−リガンド、FLT−3、アンジオスタチン、トロンボスポンジン、エンドスタチン、ならびにLTなどを含む。
あるいは、抗体および断片は、抗体を酵素に連結することにより、検出可能なように標識することができる。抗体−酵素コンジュゲートを適当な基質の存在下でインキュベートすると、酵素部分は基質と反応して、例えば、分光学的手段、蛍光分析手段、または視覚的手段により検出することができる化学的部分を生じる。抗体を検出可能なように標識するために使用することができる酵素の例としては、マレイン酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、デルタ−V−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、α−グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、α−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼが挙げられる。
治療剤または診断剤は、ジスルフィド結合形成を介して、還元された抗体成分のヒンジ領域に付加することができる。代替法として、このような薬剤は、N−スクシニル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)などの、ヘテロ二官能性架橋剤を用いて抗体成分に付加することができる。Yuら,Int.J.Cancer 56:244(1994)。このようなコンジュゲーションに関する一般的な技術は当該技術分野で周知である。例えば、Wong,CHEMISTRY OF PROTEIN CONJUGATION AND CROSS−LINKING(CRC Press 1991);Upeslacisら,「Modification of Antibodies by Chemical Methods」(MONOCLONAL ANTIBODIES:PRINCIPLES AND APPLICATION,Birchら(編),187−230ページ(Wiley−Liss,Inc.1995));Price,「Production and Characterization of Synthetic Peptide−Derived Antibodies」(MONOCLONAL ANTIBODIES:PRODUCTION,ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATION,Ritterら(編),60−84ページ(Cambridge University Press 1995))を参照されたい。あるいは、治療剤または診断剤は、抗体のFc領域の炭水化物部分を介してコンジュゲートさせることができる。この炭水化物基は、チオール基に結合している同じ薬剤の付加量を増加させるために使用することができるし、またはこの炭水化物部分は異なるペプチドに結合させるために使用することができる。
免疫コンジュゲートは、罹患組織を検出するための1つまたは複数の放射性同位体を含み得る。特に有用な診断用放射性核種としては、110In、111In、177Lu、18F、52Fe、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、86Y、90Y、89Zr、94mTc、94Tc、99mTc、120I、123I、124I、125I、131I、154−158Gd、32P、11C、13N、15O、186Re、188Re、51Mn、52mMn、55Co、72As、75Br、76Br、82mRb、83Sr、または他のガンマ線放射体、ベータ線放射体、もしくは陽電子放射体が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、好ましくは20〜4、000keVの範囲、より好ましくは25〜4、000keVの範囲、一層より好ましくは25〜1、000keVの範囲、さらにより好ましくは70〜700keVの範囲の崩壊エネルギーを有する。有用な陽電子放出放射性核種の総崩壊エネルギーは、好ましくは<2、000keV、より好ましくは1、000keV未満、最も好ましくは<700keVである。ガンマ線検出を利用する診断剤として有用な放射性核種としては、限定するものではないが、5lCr、57Co、58Co、59Fe、67Cu、67Ga、75Se、97Ru、99mTc、l11In、114mIn、123I、125I、131I、169Yb、197Hg、および201Tlが挙げられる。有用なガンマ線放出放射性核種の崩壊エネルギーは、好ましくは20〜2000keV、より好ましくは60〜600keV、最も好ましくは100〜300keVである。
免疫コンジュゲートは、罹患組織を治療するための1つまたは複数の放射性同位体を含み得る。特に有用な治療用放射性核種としては、111In、177Lu、212Bi、213Bi、211At、62Cu、64Cu、67Cu、90Y、125I、131I、32P、33P、47Sc、111Ag、67Ga、142Pr、153Sm、161Tb、166Dy、166Ho、186Re、188Re、189Re、212Pb、223Ra、225Ac、59Fe、75Se、77As、89Sr、99Mo、105Rh、109Pd、143Pr、149Pm、169Er、194Ir、198Au、199Au、および211Pbが挙げられるが、これらに限定されるものではない。治療用放射性核種は、好ましくは20〜6,000keVの範囲、好ましくはオージェ放射体については60〜200keV、ベータ放射体については100〜2,500keV、およびアルファ放射体については4,000〜6,000keVの範囲の崩壊エネルギーを有する。有用なベータ粒子放出核種の最大崩壊エネルギーは好ましくは20〜5,000keV、より好ましくは100〜4,000keV、最も好ましくは500〜2,500keVである。また、オージェ放出粒子を伴って実質的に崩壊する放射性核種も好ましい。例えば、Co−58、Ga−67、Br−80m、Tc−99m、Rh−103m、Pt−109、In−111、Sb−119、I−125、Ho−161、Os−189m、およびIr−192。有用なベータ粒子放出核種の崩壊エネルギーは、好ましくは<1,000keV、より好ましくは<100keV、最も好ましくは<70keVである。また、アルファ粒子の発生を伴って実質的に崩壊する放射性核種も好ましい。このような放射性核種としては、限定するものではないが、Dy−152、At−211、Bi−212、Ra−223、Rn−219、Po−215、Bi−211、Ac−225、Fr−221、At−217、Bi−213、およびFm−255が挙げられる。有用なアルファ粒子放出放射性核種の崩壊エネルギーは、好ましくは2,000〜10,000keV、より好ましくは3,000〜8,000keV、最も好ましくは4,000〜7,000keVである。
例えば、67Cuは、その半減期が61.5時間であることや、ベータ粒子とガンマ線を豊富に供給することから、放射免疫療法のためのより有望な放射性同位体の1つと考えられるが、これはキレート剤のp−ブロモアセトアミド−ベンジル−テトラエチルアミン四酢酸(TETA)を用いて抗体にコンジュゲートさせることができる。Chase,前掲。あるいは、エネルギーに富んだベータ粒子を放出する90Yは、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)を用いて、またはより好ましくはDOTAを用いて、抗体、抗体断片、または融合タンパク質に結合させることができる。90Yを抗体またはターゲッティング可能な構築物にコンジュゲートさせる方法は当該技術分野で公知であり、任意のそのような公知の方法を使用し得る(例えば、米国特許第7,259,249号を参照されたく、この実施例の節は、参照により本明細書に組み込まれる。また、Lindenら,Clin Cancer Res.11:5215−22,2005;Sharkeyら,J Nucl Med.46:620−33,2005;Sharkeyら,J Nucl Med.44:2000−18,2003を参照されたい)。
可能性のあるさらなる放射性同位体としては、11C、13N、15O、75Br、198Au、224Ac、126I、133I、77Br、113mIn、95Ru、97Ru、103Ru、105Ru、107Hg、203Hg、121mTe、122mTe、125mTe、165Tm、167Tm、168Tm、197Pt、109Pd、105Rh、142Pr、143Pr、161Tb、166Ho、199Au、57Co、58Co、51Cr、59Fe、75Se、201Tl、225Ac、76Br、169Ybなどが挙げられる。
別の実施形態では、放射線増感剤を、裸のまたはコンジュゲートされた抗体または抗体断片と組み合わせて使用することができる。例えば、放射線増感剤を、放射性標識された抗体または抗体断片と組み合わせて使用することができる。放射線増感剤の付加により、放射性標識された抗体または抗体断片単独での治療と比較して、効力の増強が可能になる。放射線増感剤は、D.M.Goldenberg(編),CANCER THERAPY WITH RADIOLABELED ANTIBODIES,CRC Press(1995)に記載されている。この技術とともに使用される他の典型的な目的の放射線増感剤としては、ゲムシタビン、5−フルオロウラシル、およびシスプラチンが挙げられ、これらは、膵癌をはじめとする様々な癌の治療における外部照射と組み合わせて使用されている。それゆえ、本発明者らは、分割用量の90Y−hPAM4と組み合わせたゲムシタビンの放射線増感用量と思われる量(4週間にわたって週1回200mg/m2)のゲムシタビンの組合せを研究し、良好な認容性を示す(3つの標準に対してNCI−CTCによるグレード3〜4の毒性がない)ことが分かっているこの組合せの単回サイクルの後に膵癌縮小の客観的証拠を見つけた。
熱中性子活性化療法のためのホウ素付加物を付加した担体を有する抗体またはその断片も通常同様にして達成される。しかしながら、中性子照射を行なう前に、ターゲッティングされない免疫コンジュゲートがクリアランスされるまで待つのが有利である。クリアランスは抗膵癌抗体に結合する抗イディオタイプ抗体を用いて促進することができる。この一般原理を記載したものとしては、米国特許第4,624,846号を参照されたい。例えば、カルボランなどのホウ素付加物を抗体に付加することができる。カルボランは当該技術分野で周知のように、ペンダント側鎖上のカルボキシル官能基を用いて調製することができる。アミノデキストランなどの担体へのカルボランの付加は、カルボランのカルボキシル基を活性化し、担体上のアミンと縮合することにより達成することができる。次に、この中間コンジュゲートを抗体にコンジュゲートさせる。抗体コンジュゲートを投与した後、ホウ素付加物を熱中性子の照射によって活性化し、アルファ放射により崩壊して毒性の高い、短期の効果を生じる放射性原子へと変換させる。
対象の癌を診断する方法は、診断用免疫コンジュゲートを投与し、癌または腫瘍に局在化する免疫コンジュゲートに付加された診断用標識を検出することによって達成し得る。抗体、抗体断片、または融合タンパク質を診断剤にコンジュゲートさせてもよいし、または診断剤に付加されたターゲッティング可能な構築物を用いるプレターゲッティング技術で投与されてもよい。診断剤として使用することができる放射性薬剤は上で論じられている。好適な非放射性診断剤は、磁気共鳴イメージング、X線、コンピュータ断層撮影、または超音波検査に好適な造影剤である。磁気イメージング剤としては、例えば、マンガン、鉄、およびガドリニウムなどの非放射性金属を、2−ベンジル−DTPAならびにそのモノメチルおよびシクロヘキシル類似体を含む金属キレート剤の組合せと錯化したものが挙げられる。2001年10月10日に出願された米国特許出願第09/921,290号を参照されたく、その実施例の節は、参照により本明細書に組み込まれる。また、PETスキャニングヌクレオチドなどの他のイメージング剤、好ましくは18Fを使用してもよい。
例えば、ガドリニウムイオン、ランタニウムイオン、ジスプロシウムイオン、鉄イオン、マンガンイオン、または他の同等の標識をはじめとするMRI造影剤、CT造影剤、および超音波造影剤などの、造影剤を診断剤として使用してもよい。使用に好適な常磁性イオンとしては、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)、およびエルビウム(III)が挙げられるが、ガドリニウムが特に好ましい。
X線イメージングなどの他の状況で有用なイオンとしては、ランタン(III)、金(III)、鉛(II)、および特にビスマス(III)が挙げられるが、これらに限定されない。蛍光標識としては、ローダミン、フルオレセイン、およびレノグラフィンが挙げられる。ローダミンおよびフルオレセインは、イソチオシアネート中間体を介して連結されることが多い。
磁気共鳴イメージング技術用のものをはじめとして、金属も診断剤で有用である。これらの金属としては、ガドリニウム、マンガン、鉄、クロム、銅、コバルト、ニッケル、ジスプロシウム、レニウム、ユーロピウム、テルビウム、ホルミウム、およびネオジムが挙げられるが、これらに限定されない。抗体に放射性金属または常磁性イオンを付加するために、イオンを結合させるための多様なキレート基が付加した長いテールを有する試薬と反応させる必要があり得る。このような尾部は、ポリリジン、多糖、または例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ポルフィリン、ポリアミン、クラウンエーテル、ビス−チオセミカルバゾン、ポリオキシム、およびこの目的のために有用であることが知られている同様の基などの、キレート基に結合することができるペンダント基を有する他の誘導体化されたまたは誘導体化可能な鎖であることができる。
キレート剤を、標準的な化学反応を用いて、抗体、融合タンパク質、またはそれらの断片に結合させる。キレート剤は通常、免疫反応性の損失を最小限に抑え、凝集および/または内部架橋を最小限に抑えて、分子との結合の形成を可能にする基により抗体に連結される。キレート剤を抗体にコンジュゲートさせるための他の、より特殊な方法および試薬は、「Antibody Conjugates」と題されたHawthorneの米国特許第4,824,659号(1989年4月25日に出願)に開示されており、この実施例の節は、参照により本明細書に組み込まれる。特に有用な金属−キレート剤の組合せとしては、一般エネルギー範囲20〜2,000keVの診断用同位体とともに用いられる、2−ベンジルDTPAならびにそのモノメチルおよびシクロヘキシル類似体が挙げられる。同じキレート剤が、マンガン、鉄、およびガドリニウムなどの非放射性金属と錯化している場合は、MRIに有用である。NOTA、DOTA、およびTETAなどの大環状キレート剤は、種々の金属および放射性金属とともに、最も具体的には、それぞれガリウム、イットリウム、および銅の放射性核種と一緒にすると有用である。このような金属−キレート剤の錯体は、環のサイズを目的の金属に合わせることにより極めて安定にすることができる。RAITのための223Raなどの、安定に結合する核種に対して対象となる、大環状ポリエーテルなどの他の環型キレート剤は、本発明に包含される。
放射性不透過物質および造影物質は、X線の増強やコンピュータ断層撮影に使用され、これらには、ヨード化合物、バリウム化合物、ガリウム化合物、タリウム化合物などが含まれる。具体的な化合物には、バリウム、ジアトリゾ酸、ヨード化ケシ油エチルエステル、クエン酸ガリウム、イオカルミン酸、イオセタム酸、ヨーダミド、ヨージパミド、ヨードキサム酸、イオグラミド、イオヘキソール、イオパミドール、イオパノ酸、イオプロセム酸、イオセファム酸、イオセル酸、イオスラミドメグルミン、イオセメチン酸、イオタスル、イオテトル酸、イオタラム酸、イオトロクス酸、イオキサグル酸、イオキソトリゾ酸、イポダート、メグルミン、メトリザミド、メトリゾエート、プロピリオドン、および塩化タリウムが含まれる。
抗体、抗体断片、または融合タンパク質を蛍光化合物で標識することもできる。蛍光標識MAbの存在は、抗体を適切な波長の光に曝し、生じた蛍光を検出することにより決定される。蛍光標識化合物としては、Alexa 350、Alexa 430、AMCA、アミノアクリジン、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665、BODIPY−FL、BODIPY−R6G、BODIPY−TMR、BODIPY−TRX、5−カルボキシ−4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシフルオレセイン、5−カルボキシ−2’,4’,5’,7’−テトラクロロフルオレセイン、5−カルボキシフルオレセイン、5−カルボキシローダミン、6−カルボキシローダミン、6−カルボキシテトラメチルアミノ、カスケードブルー、Cy2、Cy3、Cy5、6−FAM、ダンシルクロライド、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、フルオレスカミン、HEX、6−JOE、NBD(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール)、オレゴングリーン488、オレゴングリーン500、オレゴングリーン514、パシフィックブルー、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、クレシルファストバイオレット、クレシルブルーバイオレット、ブリリアントクレシルブルー、パラアミノ安息香酸、エリスロシン、フタロシアニン、フタルデヒド、アゾメチン、シアニン、キサンチン、スクシニルフルオレセイン、希土類金属クリプテート、ユーロピウムトリスビピリジンジアミン、ユーロピウムクリプテートまたはキレート剤、ジアミン、ジシアニン、ラホーヤブルー色素、アロピコシアニン、アロコシアニンB、フィコシアニンC、フィコシアニンR、チアミン、フィコエリスロシアニン、フィコエリスリンR、REG、ローダミングリーン、ローダミンイソチオシアネート、ローダミンレッド、ROX、TAMRA、TET、TRIT(テトラメチルローダミンイソチオール)、テトラメチルローダミン、およびテキサスレッドが挙げられる。蛍光標識抗体は、フローサイトメトリー解析に特に有用であるが、内視鏡検出法および血管内検出法で使用することもできる。
あるいは、抗体、抗体断片、または融合タンパク質は、抗体と化学発光化合物を結合させることにより検出可能なように標識することができる。化学発光タグ付きMAbの存在は、化学反応の過程で生じる発光の存在を検出することにより決定される。化学発光標識化合物の例としては、ルミノール、イソルミノール、芳香族アクリジンエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩、およびシュウ酸エステルが挙げられる。
同様に、生物発光化合物を用いて、抗体およびその断片を標識することもできる。生物発光は、触媒タンパク質が化学発光反応の効率を高める生物系で見られる一種の化学発光である。生物発光タンパク質の存在は、発光の存在を検出することにより決定される。標識に有用な生物発光化合物としては、ルシフェリン、ルシフェラーゼ、およびエクオリンが挙げられる。
したがって、対象の悪性腫瘍を診断する方法であって、抗膵癌MAb、融合タンパク質、またはそれらの断片を含む組成物を用いて、対象由来の標本(体液、組織、または細胞)に対するインビトロ診断アッセイを行なうことを含む方法が記載されている。結合した抗体の存在によって細胞または組織中のPAM4抗原の存在を検出するために、免疫組織化学を使用することができる。好ましくは、診断される悪性腫瘍は癌である。最も好ましくは、癌は膵癌である。
さらに、DTPA、DOTA、TETA、もしくはNOTAなどのキレート剤、あるいは蛍光分子などの検出可能な標識、または重金属もしくは放射性核種などの細胞傷害剤が付加される、好適なペプチドを本抗体にコンジュゲートすることができる。例えば、治療上有用な免疫コンジュゲートは、光活性剤または色素を抗体融合タンパク質にコンジュゲートすることによって得ることができる。蛍光色素などの蛍光組成物、および他の色素原、または可視光線に感受性のあるポルフィリンなどの色素は、好適な光線を病変に当てることにより病変の検出および治療に使用されている。治療においては、これは、光照射、光療法、または光線力学療法と呼ばれている(Joriら(編),PHOTODYNAMIC THERAPY OF TUMORS AND OTHER DISEASES(Libreria Progetto 1985);van den Bergh,Chem.Britain 22:430(1986))。さらに、モノクローナル抗体は、光療法を行なうために光活性化色素と結合されている。Mewら,J.Immunol.130:1473(1983);同,Cancer Res.45:4380(1985);Oseroffら,Proc Natl.Acad.Sci.USA 83:8744(1986);同,Photochem.Photobiol.46:83(1987);Hasanら,Prog.Clin.Biol.Res.288:471(1989);Tatsutaら,Lasers Surg.Med.9:422(1989);Pelegrinら,Cancer 67:2529(1991)。
治療目的で、抗膵癌抗体およびその断片は、治療的有効量で患者に投与される。抗体は、投与される量が生理学的に意義のあるものであるならば、「治療的有効量」で投与されると言われる。その存在がレシピエント患者の生理に検出可能な変化をもたらすならば、薬剤は生理学的に意義のあるものである。
診断剤は、抗体、抗体断片、もしくは融合タンパク質、またはターゲッティング可能な構築物にコンジュゲートして投与し得る分子または原子であり、疾患関連抗原を含む細胞の位置を特定することによって疾患を診断/検出する際に有用である。有用な診断剤としては、放射性同位体、色素(例えば、ビオチン−ストレプトアビジン複合体を含むもの)、放射線不透過物質(例えば、ヨウ素、バリウム、ガリウム、およびタリウム化合物など)、造影剤、蛍光化合物または分子、ならびに磁気共鳴イメージング(MRI)のための増強剤(例えば、常磁性イオン)が挙げられるが、これらに限定されない。米国特許第6,331,175号には、MRI技術およびMRI増強剤にコンジュゲートされた抗体の調製が記載されている。好ましくは、診断剤は、核イメージング、内視鏡検査、および血管内検査のための放射性同位体、磁気共鳴イメージングまたは超音波検査で使用する増強剤、X線およびコンピュータ断層撮影のための放射線不透過剤および造影剤、ならびに内視鏡蛍光透視法を含む蛍光透視法のための蛍光化合物からなる群から選択される。抗体にコンジュゲートされているかまたは二重特異性プレターゲッティング法で使用される蛍光剤および放射活性剤は、特に、ガンマ放射体、ベータ放射体、および陽電子放射体とともに、Goldenbergの米国特許第5,716,595号、同第6,096,289号、および米国特許出願第09/348,818号(これらの実施例の節は、参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているような、悪性腫瘍などの罹患組織または細胞塊と関連する標的抗原の内視鏡的検出、術中検出、または血管内検出に特に有用である。内視鏡適用は、結腸などの内視鏡検査が可能な構造に拡散している場合に使用し得る。陽電子放出断層撮影に有用な放射性核種としては、F−18、Mn−51、Mn−52m、Fe−52、Co−55、Cu−62、Cu−64、Ga−68、As−72、Br−75、Br−76、Rb−82m、Sr−83、Y−86、Zr−89、Tc−94m、In−110、I−120、およびI−124が挙げられるが、これらに限定されない。有用な陽電子放出放射性核種の総崩壊エネルギーは、好ましくは<2,000keV、より好ましくは1,000keV未満、最も好ましくは<700keVである。ガンマ線検出を利用する診断剤として有用な放射性核種としては、Cr−51、Co−57、Co−58、Fe−59、Cu−67、Ga−67、Se−75、Ru−97、Tc−99m、In−1ll、m−114m、I−123、I−125、I−131、Yb−l69、Hg−197、およびTl−201が挙げられるが、これらに限定されない。有用なガンマ線放出放射性核種の崩壊エネルギーは、好ましくは20〜2000keV、より好ましくは60〜600keV、最も好ましくは100〜300keVである。
インビトロ診断
本発明は、生体試料をPAM4抗原の存在についてインビトロでスクリーニングするための、抗膵癌抗体の使用を企図している。このような免疫アッセイでは、抗体、抗体断片、または融合タンパク質は、以下に記載されるように、液相で利用してもよいし、または固相担体に結合させてもよい。考慮すべき宿主免疫応答がないので、インビトロ診断の目的のために、マウス、キメラ、ヒト化、またはヒトなどの任意の種類の抗体を利用し得る。
生体試料がPAM4抗原を含むかどうかを決定するためのスクリーニング方法の一例は、放射免疫アッセイ(RIA)である。例えば、RIAの一形態では、被試物質を放射性標識PAM4抗原の存在下でPAM4 MAbと混合する。この方法では、試験物質の濃度は、MAbと結合している標識PAM4抗原の量と反比例し、遊離の標識PAM4抗原の量と直接関係する。他の好適なスクリーニング法は当業者には容易に明らかとなるであろう。
あるいは、抗膵癌抗体、抗体断片、または融合タンパク質が固相担体に結合されているインビトロアッセイを行なうことができる。例えば、ポリマーをコーティングしたビーズ、プレート、またはチューブなどの不溶性の支持体にMAbを結合させるために、MAbをアミノデキストランなどのポリマーに付加することができる。
他の好適なインビトロアッセイは当業者には容易に明らかとなるであろう。検出可能なように標識された抗体およびPAM4抗原の具体的な濃度、インキュベーションの温度および時間、ならびにその他のアッセイ条件は、試料中のPAM4抗原の濃度、試料の性質などを含む様々な要因によって異なり得る。抗膵癌抗体の試料の結合活性は、周知の方法に従って測定し得る。当業者であれば、通常の実験を用いて、各測定についての操作的でかつ最適なアッセイ条件を決定することができるであろう。
生体試料中のPAM4抗原の存在は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて決定することができる(例えば、Goldら.J Clin Oncol.24:252−58,2006)。直接競合ELISAでは、純粋または半純粋な抗原調製物を、試験される体液または細胞抽出物に不溶性の固相支持体に結合させ、検出可能なように標識した一定量の可溶性抗体を添加すると、固相抗原と標識抗体の間で形成される二元複合体の検出および/または定量が可能になる。
対照的に、「二部位ELISA」または「サンドイッチアッセイ」としても知られる「二重決定基」ELISAでは少量の抗原しか必要とされず、このアッセイでは抗原の大量精製の必要はない。したがって、二重決定基ELISAは、臨床試料中の抗原の検出のための直接競合ELISAにとって好ましい。例えば、生検標本中のc−myc癌タンパク質の定量のための二重決定基ELISAの使用を参照されたい。Fieldら,Oncogene 4:1463(1989);Spandidosら,AntiCancer Res.9:821(1989)。
二重決定基ELISAでは、一定量の非標識MAbまたは抗体断片(「キャプチャー抗体」)を固相支持体に結合させ、試験試料をキャプチャー抗体と接触させ、検出可能なように標識した一定量の可溶性抗体(または抗体断片)を添加すると、キャプチャー抗体と抗原と標識抗体の間で形成される三元複合体の検出および/または定量が可能になる。この文脈において、抗体断片は、PAM4抗原のエピトープに結合する抗膵癌MAbの一部である。二重決定基ELISAを実施する方法は周知である。例えば、Fieldら,前掲、Spandidosら,前掲、およびMooreら,「Twin−Site ELISAs for fos and myc Oncoproteins Using the AMPAK System」(METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY,第10巻,273−281ページ(The Humana Press,Inc.1992))を参照されたい。
二重決定基ELISAでは、可溶性抗体または抗体断片は、キャプチャー抗体によって認識されるエピトープとは異なるPAM4エピトープに結合しなければならない。二重決定基ELISAは、生検試料中にPAM4抗原が存在するかどうかを確認するために行なうことができる。あるいは、このアッセイは、体液の臨床試料中に存在するPAM4抗原の量を定量するために行なうことができる。この定量アッセイは、精製PAM4抗原の希釈物を含めることにより行なうことができる。
抗膵癌Mab、融合タンパク質、およびそれらの断片は、アッセイキットの製造にも適している。このようなキットは、バイアル、チューブなどのような1つまたは複数の容器手段(該容器手段は各々、免疫アッセイの個別の要素を含む)を密封して収容するように区画化されている運搬手段を含み得る。
本発明の抗体、抗体断片、および融合タンパク質を用いて、組織学的標本から調製した組織切片中のPAM4抗原の存在を検出することもできる。このようなインサイチュ検出を用いて、PAM4抗原の存在を決定したり、検査組織におけるPAM4抗原の分布を決定したりすることができる。インサイチュ検出は、検出可能なように標識した抗体を凍結組織切片に適用することによって達成することができる。研究により、PAM4抗原はパラフィン包埋切片で保存されることが示されている。インサイチュ検出の一般的な技術は当業者に周知である。例えば、Ponder,「Cell Marking Techniques and Their Application」(MAMMALIAN DEVELOPMENT:A PRACTICAL APPROACH 113−38 Monk(編)(IRL Press 1987))、およびColiganの5.8.1−5.8.8ページを参照されたい。
抗体、抗体断片、および融合タンパク質は、任意の適切なマーカー部分、例えば、放射性同位体、酵素、蛍光標識、色素、色素原、化学発光標識、生物発光標識、または常磁性標識で検出可能なように標識することができる。
マーカー部分は、ガンマカウンターもしくはシンチレーションカウンターを使用するような手段によって、またはオートラジオグラフィーによって検出される放射性同位体であることができる。好ましい実施形態では、診断用コンジュゲートは、ガンマ線、ベータ線、または陽電子放出同位体である。本記載におけるマーカー部分とは、所定の条件下でシグナルを発生する分子を指す。マーカー部分の例としては、放射性同位体、酵素、蛍光標識、化学発光標識、生物発光標識、および常磁性標識が挙げられる。
マーカー部分の抗膵癌抗体に対する結合は、当該技術分野で公知の標準的な技術を用いて達成することができる。これに関する典型的な方法は、Kennedyら,Clin Chim Acta 70:1(1976)、Schursら,Clin.Chim.Acta 81:1(1977)、Shihら,Int J Cancer 46:1101(1990)によって記載されている。
上記のインビトロ検出法およびインサイチュ検出法を用いて、病状の診断または病期判定を補助し得る。例えば、このような方法を用いて、膵癌などの、PAM4抗原を発現する腫瘍を検出することができる。
インビボ診断/検出
放射性標識MAbを用いる様々なインビボ診断イメージング方法が周知である。免疫シンチグラフィー技術では、例えば、抗体をガンマ線放出放射性同位体で標識し、患者に導入する。ガンマカメラを用いて、ガンマ線放出放射性同位体の位置および分布を検出する。例えば、Srivastava(編),RADIOLABELED MONOCLONAL ANTIBODIES FOR IMAGING AND THERAPY(Plenum Press 1988)、Chase,「Medical Applications of Radioisotopes」(REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,第18版,Gennaroら(編),624−652ページ(Mack Publishing Co.,1990))、およびBrown,「Clinical Use of Monoclonal Antibodies」(BIOTECHNOLOGY AND PHARMACY 227−49,Pezzutoら(編)(Chapman & Hall 1993))を参照されたい。
診断イメージングでは、放射性同位体を、直接的にまたは中間的官能基を用いて間接的に、抗体に結合させてもよい。有用な中間的官能基としては、エチレンジアミン四酢酸およびジエチレントリアミン五酢酸などのキレート剤が挙げられる。例えば、Shihら,前掲、および米国特許第5,057,313号を参照されたい。
患者に送達される放射線量は、最小の半減期、最小の身体残留、および検出と正確な測定を可能にする最少の同位体量の最良の組合せとなるように同位体を選択することで可能な限り低レベルに維持される。抗膵癌抗体に結合させることができ、かつ診断イメージングに適当な放射性同位体の例は、99mTc、111In、および18Fである。
本抗体、抗体断片、および融合タンパク質は、インビボ診断の目的で、常磁性イオンおよび種々の放射線造影剤で標識することもできる。磁気共鳴イメージングに特に有用な造影剤は、ガドリニウム、マンガン、ジスプロシウム、ランタン、または鉄イオンを含む。さらなる薬剤としては、クロム、銅、コバルト、ニッケル、レニウム、ユーロピウム、テルビウム、ホルミウム、またはネオジムが挙げられる。抗体およびその断片は、超音波造影剤/増強剤にコンジュゲートすることもできる。例えば、1つの超音波造影剤はリポソームである。また、超音波造影剤はガス充填されたリポソームであることが好ましい。
好ましい実施形態では、二重特異性抗体を造影剤にコンジュゲートすることができる。例えば、二重特異性抗体は、超音波イメージングで使用するための2つ以上の画像増強剤を含んでもよい。別の好ましい態様では、造影剤はリポソームである。好ましくは、リポソームは、リポソームの外面に共有結合した二価のDTPA−ペプチドを含む。
薬学的に好適な賦形剤
さらなる薬学的方法を用いて、治療適用での抗膵癌抗体の作用期間を制御し得る。徐放性製剤は、抗体、抗体断片、または融合タンパク質と複合体を形成するかまたはそれらを吸着するポリマーの使用を通じて調製することができる。例えば、生体適合性ポリマーとしては、ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)のマトリックスおよびステアリン酸二量体とセバシン酸の無水共重合体のマトリックスが挙げられる。Sherwoodら,Bio/Technology 10:1446(1992)。このようなマトリックスからの抗体、抗体断片、または融合タンパク質の放出速度は、抗体、抗体断片、または融合タンパク質の分子量、マトリックス内の抗体の量、および分散している粒子の大きさによって決まる。Saltzmanら,Biophys.J.55:163(1989);Sherwoodら,前掲。他の固相投薬形態は、Anselら,PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS,第5版(Lea & Febiger 1990)、およびGennaro(編),REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES,第18版(Mack Publishing Company 1990)、ならびにそれらの改訂版に記載されている。
対象に送達される抗体、その断片、または融合タンパク質は、1つまたは複数の薬学的に好適な賦形剤、1つまたは複数の追加成分、あるいはこれらの何らかの組合せを含む。抗体を公知の方法に従って処方し、免疫コンジュゲートまたは裸の抗体が薬学的に好適な賦形剤と混合物中で組み合わされている薬学的に有用な組成物を調製することができる。滅菌リン酸緩衝化食塩水は、薬学的に好適な賦形剤の一例である。他の好適な賦形剤は当業者に周知である。例えば、Anselら,PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS,第5版(Lea & Febiger 1990)、およびGennaro(編),REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,第18版(Mack Publishing Company 1990)、ならびにそれらの改訂版を参照されたい。
免疫コンジュゲートまたは裸の抗体は、例えば、ボーラス注射または持続注入による静脈内投与のために処方することができる。注射用処方物は、添加した防腐剤とともに、単位投薬形態で、例えば、アンプル中でまたは複数回投与容器中で提供することができる。これらの組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、または乳濁液のような形態をとることでき、懸濁剤、安定化剤、および/または分散剤のような処方剤を含むことができる。あるいは、活性成分は、使用前に、好適なビヒクル(例えば、滅菌パイロジェンフリー水)で構成するための粉末形態であることができる。
また、免疫コンジュゲート、裸の抗体、およびそれらの断片、または融合タンパク質を、皮下にまたは他の非経口経路で哺乳動物に投与してもよい。好ましい実施形態では、抗体またはその断片は、1投与当たり20〜2000ミリグラムタンパク質の投薬量で投与される。さらに、投与は、持続注入によるものであっても、または単回もしくは複数回のボーラス注射によるものであってもよい。一般に、投与される免疫コンジュゲート、融合タンパク質、または裸の抗体のヒトについての投薬量は、患者の年齢、体重、身長、性別、全身の健康状態、および過去の病歴のような要因によって異なる。通常、単回の静脈内注入として約1mg/kg〜20mg/kgの範囲の投薬量の免疫コンジュゲート、抗体融合タンパク質、または裸の抗体をレシピエントに与えるのが望ましいが、状況によっては、より少ないまたはより多い投薬量を投与してもよい。この投薬量を必要に応じて繰り返してもよく、例えば、週1回を4〜10週間、好ましくは週1回を8週間、より好ましくは週1回を4週間繰り返してもよい。また、1週間おきに数カ月間のようにより低い頻度でまたは週に2回もしくは3回のようにより高い頻度で投与してもよい。用量およびスケジュールを適宜調整して、投薬を様々な非経口経路により投与してもよい。
キット
様々な実施形態は、患者の罹患組織を治療または診断するのに好適な構成要素を含むキットに関するものであってもよい。例示的なキットには、本明細書に記載された少なくとも1つの抗体、抗原結合断片、または融合タンパク質が含まれていてもよい。投与するための構成要素を含む組成物が、消化管を介する送達(例えば、経口送達によるもの)のために処方されていない場合、何らかの他の経路を介してキット構成要素を送達することができる装置を含めてもよい。非経口送達などの用途のための、1つのタイプの装置は、対象の身体に組成物を注射するために使用されるシリンジである。吸入装置も使用し得る。特定の実施形態では、抗膵癌抗体またはその抗原結合断片は、抗体の滅菌液体処方物または、凍結乾燥製剤を含む予め充填されたシリンジまたは自動注射ペンといった形態の中に提供されてもよい(例えば、Kivitzら,Clin.Ther.2006,28:1619−29)。
キット構成要素は、1つにまとめて包装してもよいし、または2つ以上の容器に分けてもよい。いくつかの実施形態では、容器は、再構成に好適な組成物の滅菌凍結乾燥処方物を含むバイアルであってもよい。キットはまた、他の試薬の再構成および/または希釈に好適な1つまたは複数の緩衝液を含んでいてもよい。使用し得るその他の容器としては、袋、トレイ、箱、チューブなどが挙げられるが、これらに限定されない。キット構成要素をこれらの容器内に包装し、滅菌状態で維持してもよい。含めることができる別の構成要素は、キットを使用するための取扱説明書である。
以下の実施例は本発明の実施形態を例示するものであって、特許請求の範囲を限定するものではない。実施例では、例示的な抗膵癌モノクローナル抗体(PAM4)を利用した研究が論じられている。PAM4 MAbを用いた臨床研究は、膵癌病変の大部分が患者においてターゲッティングされ、正常組織での取込みが示されなかったことを示している。線量測定により、3:1〜10:1の腫瘍対赤色骨髄用量比で、10〜20cGy/mCiを腫瘍に送達することが可能であることが示された。このデータは、PAM4が膵癌の治療に有用であることを示している。
実施例1.ヒト化PAM4 MAb
好ましい実施形態では、特許請求された方法および組成物に、膵癌ムチンに対して惹起されたマウスPAM4 MAbのヒト化IgGである抗体hPAM4が利用されている。マウスPAM4配列のヒト化を利用して、ヒト抗マウス抗体(HAMA)応答が軽減された。ヒト化PAM4を作製するために、マウス相補性決定領域(CDR)をマウス免疫グロブリンの重可変鎖および軽可変鎖からヒトフレームワーク領域(FR)抗体配列に移し、次に、いくつかのヒトFR残基をそのマウス対応物と置き換えた。ヒト化モノクローナル抗体は、インビトロおよびインビボでの診断法および治療法で使用するのに好適である。
マウスPAM4 MAbの可変領域フレームワーク配列(図1Aおよび1B)とKabatデータベース中の既知のヒト抗体の比較により、PAM4のVKとVHのFRが、それぞれ、ヒト抗体のWalker VKとWil2 VHのFRと最も高い配列相同性を示すことが示された。それゆえ、Walker VKとWil2 VHのFRをヒトフレームワークとして選択し、その中に、PAM4のVKとVHに対するマウスCDRを、それぞれ移植した(図3)。しかしながら、PAM4重鎖のヒト化の場合には、ヒト抗体NEWMのFR4配列を用いて、Wil2 FR4配列を置き換えた(図3B)。推定CDRに隣接するPAM4 FR中の数アミノ酸残基は、これらの残基が他のFR残基よりもAg結合に対する影響が大きいという考えに基づき、hPAM4中で維持された。これらの残基は、VKの21M、47W、59P、60A、85S、87F、および100G、ならびにVHの27Y、30P、38K、48I、66K、67A、および69Lであった。hPAM4 VK(配列番号16)およびVH(配列番号19)のDNA配列およびアミノ酸配列を、それぞれ、図3Aおよび3Bに示す。
長いオリゴヌクレオチド合成とPCRの組合せを用いて、hPAM4用に設計したVKおよびVH遺伝子(図4)を構築するために、Leungら(Leungら,1994)によって記載された改良された戦略を用いた。hPAM4 VHドメインの構築のために、2つの長いオリゴヌクレオチドであるhPAM4VHA(173mer)とhPAM4VHB(173mer)を、自動DNA合成装置(Applied Biosystem)で合成した。
hPAM4VHAは、hPAM4 VHドメインのnt17〜189を表す。
5’−AGTCTGGGGC TGAGGTGAAG AAGCCTGGGG CCTCAGTGAA GGTCTCCTGC GAGGCTTCTG GATACACATT CCCTAGCTAT GTTTTGCACT GGGTGAAGCA GGCCCCTGGA CAAGGGCTTG AGTGGATTGG ATATATTAAT CCTTACAATG ATGGTACTCA GTACAATGAG AAG−3’(配列番号20)
hPAM4VHBは、nt169〜341に相補的なhPAM4 VHドメインのマイナス鎖を表す。
5’−AGGGTTCCCT GGCCCCAGTA AGCAAATCCG TAGCTACCAC CGAAGCCTCT TGCACAGTAA TACACGGCCG TGTCGTCAGA TCTCAGCCTG CTCAGCTCCA TGTAGGCTGT GTTGATGGAC GTGTCCCTGG TCAGTGTGGC CTTGCCTTTG AACTTCTCAT TGTACTGAGT ACC−3’(配列番号21)
hPAM4VHAおよびVHBの3’末端配列(21nt残基)は互いに相補的である。規定のPCR条件下で、hPAM4VHAおよびVHBの3’末端はアニールして、短い二本鎖DNAを形成し、残りの長いオリゴヌクレオチドがその両側に連なる。アニールした末端は各々、一本鎖DNAの転写用のプライマーとして働き、hPAM4 VHのnt17〜341から構成される二本鎖DNAを生じさせる。全長hPAM4 VHを形成させるために、このDNAを2つの短いオリゴヌクレオチド、hPAM4VHBACKおよびhPAM4VHFORの存在下でさらに増幅した。下線部は、図4Bに示すサブクローニングのための制限部位である。
hPAM4VHBACK 5’−CAG GTG CAG CTG CAG CAG TCT GGG GCT GAG GTG A−3’(配列番号22)
hPAM4VHFOR 5’−TGA GGA GAC GGT GAC CAG GGT TCC CTG GCC CCA−3’(配列番号23)
最少量のhPAM4VHAおよびVHB(実験により決定)を、10μLの10×PCR緩衝液(500mM KCl、100mM Tris HCl緩衝液、pH8.3、15mM MgCl2)、2μmolのhPAM4VHBACKおよびhPAM4VKFOR、ならびに2.5ユニットのTaq DNAポリメラーゼ(Perkin Elmer Cetus,Norwalk,Conn.)の存在下で増幅した。この反応混合物を、94℃で1分間の変性、45℃で1分間のアニーリング、および72℃で1.5分間の重合からなる3サイクルのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)にかけた。この手順の後に、94℃で1分間の変性、55℃で1分間のアニーリング、および72℃で1分間の重合からなる27サイクルのPCR反応が行なわれた。hPAM4 VHの二本鎖PCR増幅産物をゲル精製し、PstI制限部位とBstEII制限部位で制限消化し、重鎖ステージングベクターVHpBS2の相補的なPstI/BstEII制限部位にクローニングした。このベクターにおいて、VH配列は、翻訳開始コドンをコードするDNA配列および5’末端でインフレームに連結された分泌シグナルペプチドおよび3’末端のイントロン配列と完全にアセンブルされていた。VHpBS2は、VHpBSの改変型ステージングベクターであり(Leungら,Hybridoma,13:469,1994)、このベクターには、次のサブクローニング工程を容易にするために、XhoI制限部位が翻訳開始コドンの16塩基上流に導入されていた。アセンブルされたVH遺伝子を、IgHエンハンサーおよびMT1プロモーターの制御下にあるヒトIgG重鎖と軽鎖の両方、ならびに選択および増殖のマーカーとしてのマウスd/fr遺伝子の発現カセットを含む発現ベクターのpdHL2に、XhoI−BamHI制限断片としてサブクローニングした。pdHL2の重鎖領域は、BamHI制限部位を欠いているので、このライゲーションでは、可変鎖のBamHI部位とpdHL2ベクターに存在するHindIII部位とを架橋するためのリンカーを使用する必要がある。得られた発現ベクターをhPAM4VHpdHL2と表した。
ヒト化VK配列の全長DNAを構築するために、hPAM4VKA(157mer)およびhPAM4VKB(156mer)を上記のように合成した。hPAM4VKAおよびVKBを、2つの短いオリゴヌクレオチド、hPAM4VKBACKおよびhPAM4VKFORによって、上記のように増幅した。
hPAM4VKAは、hPAM4 VKドメインのnt16〜172を表す。
5’−CAGTCTCCAT CCTCCCTGTC TGCATCTGTA GGAGACAGAG TCACCATGAC CTGCAGTGCC AGCTCAAGTG TAAGTTCCAG CTACTTGTAC TGGTACCAAC AGAAACCAGG GAAAGCCCCC AAACTCTGGA TTTATAGCAC ATCCAACCTG GCTTCTG−3’(配列番号24)
hPAM4VKBは、nt153〜308に相補的なhPAM4 VKドメインのマイナス鎖を表す。
5’−GTCCCCCCTC CGAACGTGTA CGGGTACCTA TTCCACTGAT GGCAGAAATA AGAGGCAGAA TCTTCAGGTT GCAGACTGCT GATGGTGAGA GTGAAGTCTG TCCCAGATCC ACTGCCACTG AAGCGAGCAG GGACTCCAGA AGCCAGGTTG GATGTG−3’(配列番号25)
hPAM4VKAおよびVKBの3’末端配列(20nt残基)は互いに相補的である。規定のPCR条件下で、hPAM4VHAおよびVHBの3’末端はアニールして、短い二本鎖DNAを形成し、残りの長いオリゴヌクレオチドがその両側に連なる。アニールした末端は各々、一本鎖DNAの転写用のプライマーとして働き、hPAM4 VKのnt16〜308から構成される二本鎖DNAを生じさせる。全長hPAM4 VKを形成させるために、このDNAを2つの短いオリゴヌクレオチド、hPAM4VKBACKおよびhPAM4VKFORの存在下でさらに増幅した。下線部は、以下に示すサブクローニングのための制限部位である。
hPAM4VKBACK 5’−GAC ATC CAG CTG ACC CAG TCT CCA TCC TCC CTG−3’(配列番号26)
hPAM4VKFOR 5’−TTA GAT CTC CAG TCG TGT CCC CCC TCC GAA CGT−3’(配列番号27)
ゲル精製したhPAM4 VKのPCR産物をPvuIIおよびBglIIで制限消化し、軽鎖ステージングベクターVKpBR2の相補的なPvuII/BclI部位にクローニングした。VKpBR2は、VKpBRの改変型ステージングベクターであり(Leungら,Hybridoma,13:469,1994)、このベクターには、XbaI制限部位が翻訳開始コドンの16塩基上流に導入されていた。アセンブルされたVK遺伝子を、VH配列を含む発現ベクターのhPAM4VHpdHL2に、XbaI−BamHI制限断片としてサブクローニングした。得られた発現ベクターをhPAM4pdHL2と表した。
約30μgのhPAM4pdHL2をSalIによる消化で線状化し、450Vおよび25μFでのエレクトロポレーションによりSp2/0−Ag14細胞にトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を96ウェルプレートに入れ、CO2細胞培養インキュベーターで2日間インキュベートした後、MTX耐性について選択した。選択から生き残ったコロニーが2〜3週間で出現し、これをELISAアッセイでヒト抗体分泌について選択した。簡潔に述べると、生き残ったコロニー由来の上清(約100ul)を、ヤギ抗ヒトIgG F(ab’)2断片特異的AbでプレコーティングしたELISAマイクロプレートのウェルに添加した。プレートを室温で1時間インキュベートした。結合しなかったタンパク質は、洗浄緩衝液(0.05%Tween−20を含むPBS)で3回洗浄することにより除去した。セイヨウワサビペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG Fc断片特異的Abをウェルに添加した。1時間インキュベートした後、PBS中に4mM o−フェニレンジアミン二塩酸塩(OPD)と0.04%H2O2とを含む基質溶液(100μL/ウェル)を洗浄後のウェルに添加した。暗所で30分間発色させ、50μLの4N H2SO4溶液を添加することにより反応を停止させた。ELISAリーダーで490nmの吸光度を読み取ることにより、結合したヒトIgGを測定した。陽性細胞クローンを拡大し、プロテインAカラムでの親和性クロマトグラフィーにより、hPAM4を細胞培養上精から精製した。
膵癌細胞抽出物でコーティングしたマイクロタイタープレート中でのELISAアッセイにより、hPAM4のAg結合活性を確認した。hPAM4のAg結合親和性を、マウスVドメインとヒトCドメインから構成されるキメラPAM4のAg結合親和性と比較して評価するために、PAM4抗原でコーティングしたプレートを用いるELISA競合結合アッセイを開発した。様々な濃度のcPAM4またはhPAM4と混合した一定量のHRPコンジュゲートcPAM4を、コーティングしたウェルに添加し、室温で1〜2時間インキュベートした。4mM o−フェニレンジアミン二塩酸塩と0.04%H2O2とを含む基質溶液を添加した後、490nmの吸光度を読み取ることにより、CaPan1 Agに結合したHRPコンジュゲートcPAM4の量を明らかにした。図4の競合アッセイで示されるように、hPAM4抗体およびcPAM4抗体は、よく似た結合活性を示した。
実施例2.免疫組織化学染色研究
正常成体組織に対する免疫組織化学によって、PAM4反応性エピトープが胃腸管に限定されており、そこでは、染色は弱いが、陽性であることが示された(表1)。膵管、膵導管、膵腺房、および膵島細胞を含む、正常膵組織は染色が陰性であった。抗原として組織ホモジネートを用いるPAM4ベースの酵素免疫アッセイは全般的に免疫組織化学データを裏付けるものであった(表2)。PAM4エピトープは、正常な膵臓やその他の非胃腸管組織には存在しなかった。腫瘍組織では、PAM4は、25のうち21(85%)の膵癌(表3および表4)ならびに26のうち10の結腸癌と反応性があったが、胃、肺、乳房、卵巣、前立腺、肝臓、または腎臓の腫瘍とは限られた反応性しかなかった(表4)。PAM4反応性は、腫瘍分化のステージと相関しているようであり、中分化腫瘍または低分化腫瘍よりも高分化膵癌でより大きいパーセンテージの染色が見られた。一般に、低分化腫瘍は全膵癌の10%未満に相当する。
これらの研究により、PAM4の反応性と組織分布(正常なものと癌の両方)は、CAl9.9、DUPAN2、SPAN1、Nd2、およびB72.3抗体、ならびにルイス抗原に対する抗体について報告されているものとは異なることが示された。これらのMAbのうちのあるもので行なわれた交差遮断研究と考え合わせると、このデータは、PAM4 MAbが独特でかつ新規なエピトープを認識することを示唆する。CA19.9、DUPAN2、および抗Le
a抗体によって認識される抗原と比較した場合、PAM4抗原は、その組織分布がより限定されているものと思われ、より高いパーセンテージの膵腫瘍と反応性がある。さらに、PAM4抗原は、同じ濃度でも反応全体の強度がより大きく、膵腫瘍内のより高いパーセンテージの細胞と反応性がある。最後に、PAM4は、12の慢性膵炎標本のうちの3つと弱く反応するに過ぎないことが分かったが、一方、CA19.9とDUPAN2は、12全ての標本と強く反応した。特異性は、使用するアッセイのタイプや検査する組織の範囲および数よって一部決まることが認識されるが、正常膵組織と腫瘍膵組織を識別するPAM4の能力、大きいパーセンテージの癌標本と反応するその能力、高い反応強度、および初期膵癌と膵炎などの良性症状を識別する能力は、この例示的な抗膵癌抗体の重要な特徴である。
実施例3.放射性標識PAM4のインビボ生体分布および腫瘍ターゲッティング
PAM4の最初の生体分布研究は、予測される分化の範囲を網羅する一連の4つの異なる異種移植ヒト膵腫瘍で行なった。使用した4つの腫瘍株AsPc1、BxPc3、Hs766T、およびCaPan1は各々、腫瘍内に131I−PAM4の濃縮を示し(範囲:3日目で21%〜48%ID/g)、これは、同時に投与された非特異的なアイソタイプ一致Ag8抗体(範囲:3日目で3.6%〜9.3%ID/g)よりも有意に(p<0.01〜0.001)高かった。この生体分布データを用いて、AsPc1、BxPc3、Hs766T、およびCaPan1のそれぞれに、注射量12,230;10,684;6,835;および15,843cGy/mCiの腫瘍に対する潜在的線量を推定した。実際の最大認容量(MTD)0.7mCiでは、PAM4は、異種移植腫瘍モデルの各々に実質的な線量をもたらすことができた。各腫瘍株において、放射性標識PAM4の血液レベルは、非特異的Ag8よりも有意に(p<0.01〜0.001)低かった。PAM4からの血液への潜在的線量はAg8からのものより1.4〜4.4倍低かった。PAM4からの腫瘍への線量をPAM4から血液への線量に対して標準化したところ、腫瘍が受け取った線量は2.2;3.3;3.4であり、それぞれ血液よりも13.1倍高かった。重要なことに、非腫瘍組織に対する潜在線量は最小であった。
CaPan1腫瘍モデルを用いて、PAM4の生体分布を抗CEA抗体であるMN14と比較した。腫瘍内のPAM4の濃度は初期の時点ではMN14よりもずっと高く、3日目の腫瘍:血液比は、MN14の場合の2.7±1.9と比較して、PAM4の場合、12.7±2.3であった。腫瘍内へのPAM4の取込みは、初期の時点でMN14の場合よりも有意に高かったが(1日目ではp<0.001;3日目ではp<0.01)、線量測定解析により、14日の試験期間にわたってMN14と比較した場合、PAM4から腫瘍へは3.2倍高い線量であるに過ぎないことが示された。これは、PAM4が腫瘍から速やかにクリアランスされるためであり、したがって後の時点では、2つの抗体が同じような濃度で腫瘍内に存在していた。腫瘍からのPAM4の速やかなクリアランスは、BxPc3およびHs766T腫瘍モデルでも見られたが、AsPc1腫瘍モデルでは見られなかった。これらの観察結果は、例えば、結腸直腸癌におけるG9やB72.3などの、他の抗ムチン抗体について報告されているもの(各々、MN14抗体と比較した場合に、より長い保持時間を示した)とは異なっていた。PAM4の代謝についての研究から得られた結果は、まず腫瘍細胞に結合した後、抗体が速やかに放出され、おそらくは異化されるかまたは抗原:抗体複合体として隔離されることを示している。血液クリアランスも非常に速い。これらのデータは、131Iが治療用途のための同位体の適当な選択肢とはなり得ないことを示唆している。頻繁に投与することができる、90Yまたは188Reなどの、短命な同位体がより効果的な試薬であり得る。
PAM4は、CaPan1腫瘍モデルを除いて、正常組織へのターゲッティングの形跡を示さず、CaPan1腫瘍モデルでは、小さいが、統計的に有意な脾臓への取込みが見られた(範囲は3日目で3.1〜7.5%ID/g)。この種の脾臓ターゲッティングは、抗ムチン抗体B72.3およびCC49の臨床適用で見られている。重要なことに、これらの研究では、脾臓ターゲッティングが腫瘍への抗体の取込みに影響を及ぼすことも、核スキャンの解釈の妨げとなることもなかった。これらの研究から、脾臓ターゲッティングが脾臓中の交差反応抗原によるものでも、Fc受容体による結合によるものでもなく、むしろ1つまたは複数の以下の可能性、すなわち、脾臓にトラップされた抗原の直接的なターゲッティングか、または血液中で形成されたもしくは腫瘍部位から放出された抗原:抗体複合体の間接的な取込みによるものであったことが示唆された。後者では、血液中に免疫複合体が存在することが必要である。しかしながら、これらは、5分といった初期の標本や7日目といった後期の標本をゲル濾過(HPLC、GF−250カラム)で検討した場合には見られず、放射性標識抗体はネイティブな物質として溶出した。前者の説明は、CaPan1腫瘍が大量のPAM4反応性抗原を産生し、検討した他の腫瘍細胞株よりも100〜1000倍多いという事実から見てより可能性が高いと思われる。これらの他の腫瘍株ではPAM4による脾臓ターゲッティングがないことから、この現象は過剰な抗原産生に関連したものであることが示唆される。脾臓ターゲッティングは、タンパク質用量をもとの2μgから10μgに増加させることによって克服することができる。脾臓にトラップされた抗原の多くは、おそらく放射性標識抗体ではなく非標識PAM4と複合体を形成したものと思われる。タンパク質用量を増加させることで、腫瘍または非腫瘍組織へのPAM4のターゲッティングに悪影響はなかった。それどころか、タンパク質用量を100μgまで増加させることにより、CaPan1腫瘍内の放射性標識PAM4濃度が2倍を超えた。
実施例4.無胸腺ヌードマウスにおける同所性膵腫瘍モデルの開発
動物モデルにおける膵癌の臨床症状をより近似させるため、本発明者らは、腫瘍細胞を膵頭に直接注入することにより同所性モデルを開発した。腹水が発症して10〜14週で死に至るまで、同所性CaPan1腫瘍は、明らかな症状を示さずに徐々に増殖した。移植後3〜4週までに、動物は触知可能な約0.2gの腫瘍を発生させた。増殖後8週以内に、約1.2gの原発性腫瘍が、肝臓や脾臓への転移を伴って見られた(1〜3個の転移腫瘍/動物;各腫瘍<0.1g)。10〜14週で腹水の発症を伴う横隔膜播種が明らかになった。通常、腹水の形成や時折生じる黄疸が、腫瘍増殖の最初の明らかな症状であった。この時点で、腫瘍は1〜2gとかなり大きく、動物には死に至るまで長くて3〜4週間しかなかった。
4週齢の同所性腫瘍(約0.2g)を担持する動物に投与した放射性標識131I−PAM4は、1日目に7.9±3.0の局在化指数で原発性腫瘍への特異的ターゲッティングを示し、14日目には22.8±15.3に増加した。他の組織への特異的ターゲッティングの形跡は見られなかった。肝臓や脾臓への腫瘍転移が見られたある症例では、両転移ともターゲッティングされ、高濃度の放射性標識抗体を有していた。さらに、約半分の動物が切開部位に皮下腫瘍を発生させた。同じ動物の同所性腫瘍と皮下腫瘍のターゲッティングに有意な差は見られず、また、動物にさらなる皮下腫瘍があるかないかにかかわらず、同所性腫瘍のターゲッティングに有意な差は見られなかった。PAM4から原発性腫瘍および血液への推定線量は、それぞれ6,704および1,655cGy/mCiであった。
実施例5.膵癌の実験的放射免疫療法
治療のための131I−PAM4の使用に関する最初の試験を、無胸腺マウスで皮下異種移植片として増殖したCaPan1腫瘍を用いて行なった。同じような用量の非特異的Ag8の治療効果も比較する試験において、0.25gの腫瘍を担持する動物に350μCiの131I−PAM4を投与した。1cm3の腫瘍を有する動物への131I−PAM4の投与のMTDは700μCiである。5週目と6週目までに、PAM4処置した動物は劇的な腫瘍退縮を示し、27週でも8匹中5匹で腫瘍がない状態であった。無処置およびAg8処置動物は、腫瘍増殖の急速な進行を示したが、これら2つの対照群の間で有意差は見られなかった。7週で、無処置群の腫瘍が最初の時点から20.0±14.6倍増殖したのに対し、131I−Ag8処置腫瘍は4.9±1.8倍しか増殖していなかった。この時点で、PAM4腫瘍はもとの大きさの0.1±0.1倍に退縮しており、無処置動物(p<0.001)と非特異的Ag8処置動物(p<0.01)の両方と有意差があった。
これらのデータは、CaPan1腫瘍が131I−PAM4による処置に感受性があったことを示している。転帰、すなわち、腫瘍の退縮または進行は、最初の腫瘍の大きさをはじめとするいくつかの要因に左右された。したがって、0.25g、0.5g、l.0g、または2.0gのCaPan1腫瘍負荷を担持する動物群を350μCi 131I−PAM4の1回投与で処置した。最初の腫瘍の大きさが0.25gおよび0.5gの動物の大多数(各群10匹の動物中9匹)は、処置後少なくとも16週間、腫瘍退縮または増殖阻害を示した。1.0g腫瘍群では、7匹中5匹で、16週間、腫瘍増殖がなく、また2.0g腫瘍群では、9匹中6匹で、進行するまで6週間、腫瘍増殖がなかった。1回の350μCiの投与はより大きい腫瘍に対してそれほど効果的ではないが、1回投与は大きい腫瘍に対する適切な投与計画ではない可能性がある。
毒性試験によって、より大きい腫瘍負荷の場合により効果的な可能性がある放射免疫療法を複数回行なうことができることが示されている。平均1.0gのCaPan1腫瘍を担持する動物に、350μCi 131I−PAM4を1回投与するか、0時間と4週で2回投与するか、またはこれらの動物を無処置とした。無処置群の平均生存期間は3.7±1.0週であった(生存は腫瘍が5cm3に達するまでの時間と定義する)。動物は早くも3週で死亡し、6週を過ぎて生き残った動物はいなかった。350μCi 131I−PAM4の1回投与により、生存期間は18.8±4.2週まで有意に増加した(p<0.0001)。動物の死亡の範囲は、13週から25週まで延長された。26週の試験期間の終了時に生存していた動物はいなかった。
1回投与群と比較して2回投与群では生存期間の有意な増加が見られた。動物の半数が26週の時点で生存しており、腫瘍の大きさは1.0〜2.8cm3で、平均腫瘍増殖率は最初の腫瘍の大きさから1.6±0.7倍であった。26週で生存していなかった動物について、平均生存期間(17.7±5.3週)は1回投与群と同程度であった。
PAM4による治療試験も同所性腫瘍モデルを用いて行なった。4週齢の同所性腫瘍(推定腫瘍重量0.25g)を担持する動物群を無処置のままとするか、350μCi 131I−PAM4または350μCi 131I−非特異的Ag8の1回投与で処置した。無処置動物は10週までに死亡率50%を示し、15週で生存しているものはいなかった。腫瘍増殖後4週で非特異的131I−Ag8を投与した動物は、7週で死亡率50%を示し、14週で生存しているものはいなかった。これら2つの群の間に統計学的(ログランク解析)に有意な差はなかったが、Ag8処置動物で放射線毒性が起こった可能性がある。放射性標識PAM4は、無処置またはAg8処置動物と比較して有意な生存利益をもたらし(p<0.001)、実験の終了時の16週で生存率70%であった。この時点で、生存していた動物を屠殺し、腫瘍の大きさを測定した。全ての動物に平均重量1.2gの腫瘍があっただけでなく、7匹の動物中4匹で1つまたは2つの小さな(<0.1g)転移の形跡もあった。増殖後16週の時点で、これらの腫瘍は8週齢の腫瘍により典型的なものであった。
実施例6.ジェムザール(登録商標)化学療法と131I−PAM4実験的放射免疫療法の併用モダリティ
ゲムシタビン(ジェムザール(登録商標))と131I−PAM4放射免疫療法の併用の最初の試験は格子状アレイとして行ない、ゲムシタビン1回量(0、100、200、500mg/kg)に対して131I−PAM4 1回量([MTD=700μCi]MTDの100%、75%、50%、0%)とした。組み合わされたMTDは、500mg/kgゲムシタビンと350μCi 131I−PAM4(50%MTD)であることが分かった。体重減少により測定される毒性は、無毒とみなされる最大値、すなわち、体重の20%の減少にまで至った。併用治療プロトコルはゲムシタビン単独よりも有意に効果的であったが、この治療の効果は放射免疫療法単独と同程度であった。次の試験は、真の相乗的治療効果が見られるかどうかを調べるために、低用量のゲムシタビンと放射免疫療法で行なった。約1cm3(体重の約5%)の腫瘍を担持する無胸腺ヌードマウスに、0、3、6、9、および12日目にゲムシタビン100mg/kgを投与し、0日目に100μCiの131I−PAM4を投与した。ゲムシタビン単独と比較して統計学的に有意(p<0.0001)な腫瘍の退縮(5つの腫瘍のうち2つが0.1cm3未満)および/または腫瘍の増殖阻害を伴って治療効果が見られた。したがって、驚くべきことに、より少ない投薬量の治療剤で、ゲムシタビンと放射免疫療法の併用の相乗効果があるように思われる。さらに留意すべきは、体重の点で、毒性が見られなかったことである。この併用治療プロトコルは、必要であれば、上記の放射免疫療法単独試験で行なったように、4週目に2回目の治療サイクルを開始して、複数回行なうことができる。
実施例7.二重特異性cPAM4×734と99mTcまたは111In標識ペプチドハプテンを用いるプレターゲッティング
プレターゲッティングアプローチを用いる膵癌のイメージングのために、本発明者らは、キメラPAM4(cPAM4)Fab’とマウス734(m734)Fab’からなる二重特異性F(ab’)2抗体(bsMAb)を調製した。マウス734抗体はIn−DTPA錯体を認識する。このbsMAbを125I(7μCi)で標識し、ヒト膵癌異種移植片(CaPan1)を担持する無胸腺ヌードマウスに注射した。キメラリツキシマブ(抗CD20モノクローナル抗体)とm734から作製した非ターゲッティングF(ab’)2 bsMAbを131Iで標識し、対照として同時注射した。様々な時点(注射後4、24、36、48、および72時間)でマウスを解剖し、組織を摘出し、計数してグラム当たりの注射量パーセント(%ID/g)を測定した。対照bsリツキシマブと比較して、各時点でのbsPAM4の腫瘍取込みは有意に多かった(p<0.032またはそれより良い)。このタイプのプレターゲッティング系を用いた本発明者らのこれまでの実験から、良好な腫瘍:非腫瘍比を得るには1%ID/g未満の血液レベルが必要であることが示唆された。bsPAM4の投与後36時間では、血中1.10±0.40%ID/gであったが、注射後48時間では0.56±0.08%ID/gまで下がった。これら2つの時点での腫瘍取込みは、それぞれ6.43±1.50%ID/gおよび5.37±2.38%ID/gであった。これらの値は、36時間および48時間の時点で、それぞれ腫瘍中0.65±0.33%ID/gおよび0.47±0.19%ID/g(p<0.018およびp<0.0098)であった対照bsリツキシマブよりも有意に高かった。しかしながら、血液クリアランス速度は非常によく似ており、有意な差はなかった。
これらのデータに基づき、CaPan1腫瘍を担持するマウスでプレターゲッティング実験を行なった。このマウスには、放射性標識ペプチド−ハプテンをbsMAb投与の40時間後に投与した。2つのペプチドIMP−192およびIMP−156を使用し、これらは各々、734MAbによる認識のための二価DTPAを含んでいたが、一方は、99mTcを安定に結合させるために特異的な付加的な基を含んでいた(IMP−192)。担腫瘍マウス(腫瘍体積は約0.30cm3)に125I−bsPAM4(6μCi)を投与し、40時間後に放射性標識ペプチド−ハプテン(34.5μCi;1.5×10−11モル;bsMAb:ペプチド=10:1)を投与した。一方のマウス群に99mTc標識IMP192を投与し、もう一方のマウス群には111In標識IMP156を投与した。非特異的ターゲッティングの対照には、放射性標識ペプチドの投与前に125I−bsリツキシマブを投与した2つの群と、111Inまたは99mTc標識ペプチド単独を投与した別の2つの群とが含まれた。
ペプチドを投与してから3時間および24時間後にマウスを屠殺し、腫瘍および様々な組織について%ID/gを測定した。本発明者らのこれまでの知見と一致して、非ターゲッティング対照bsリツキシマブと比較して腫瘍におけるbsPAM4は有意に多く、それぞれ8.2±3.4%および0.3±0.08%ID/g(p<0.0001)であった。これは、有意に多い111In−IMP156の腫瘍取込みに換算された(20.2±5.5%ID/g対0.9±0.1%ID/g、p<0.0001)。bsPAM4でプレターゲッティングしたマウスにおける99mTc−IMP192の腫瘍取込みも、bsリツキシマブでプレターゲッティングしたマウスにおける腫瘍取込みよりも有意に多かった(16.8±4.8%ID/g対1.1±0.2%ID/g、p<0.0005)。単独で投与した場合の各ペプチドの腫瘍取込みは、bsPAM4を投与したマウスの場合よりも有意に少なかった(99mTc−IMP192および111In−IMP156について、0.2±0.05%ID/gおよび0.1±0.03%ID/g、それぞれ、p<0.0004およびp<0.0001)。
3時間の時点と同様、ペプチド注射から24時間後(bsMAb投与から64時間後)の腫瘍中のbsPAM4は、bsリツキシマブよりも有意に多かった(それぞれ、6.4±2.2%ID/g対0.2±0.09%ID/g;p<0.0001)。この時点で、bsPAM4でプレターゲッティングされたマウスの腫瘍では11.1±3.5%ID/g
111In−IMP156および12.9±4.2%ID/g
99mTc−IMP192であったのに対して、bsリツキシマブでプレターゲッティングされた腫瘍では0.5±0.2%ID/gおよび0.4±0.03%ID/gであった(それぞれ、p<0.0008およびp<0.0002)。ペプチド単独を投与したマウスでは、bsPAM4でプレターゲッティングしたペプチドと比較して、腫瘍における
99mTc−IMP192(0.06±0.02%ID/g、p<0.0007)および
111In−IMP156(0.09±0.02%ID/g、p<0.0002)は有意に少なかった。
表5は、これらの群について、各々、放射性標識産物の投与後の早い時点での、様々な組織の腫瘍:非腫瘍比(T:NT)を示している。bsPAM4×m734F(ab’)2の投与後4時間で、腫瘍:血液比が2:1より小さかったことに注目することが重要である。しかしながら、投与後3時間では、プレターゲッティングされた111In−IMP156および99mTc−IMP192は、調べた全ての組織について有意により高い腫瘍:非腫瘍比を示し、特に、腫瘍:血液比は36:1および9:1に相当した(それぞれ、p<0.001およびp<0.011)。本発明者らが24時間の時点の腫瘍:血液比を調べたところ、125I−bsPAM4単独では4:1であるのに対し、プレターゲッティングされた111In−IMP156および99mTc−IMP192は、それぞれ274:1および80:1と、有意に高い値を示した(p<0.0002)。これらのデータは、このプレターゲッティングbsPAM4アプローチを、非腫瘍組織には最小の線量としながら腫瘍には高い線量を送達する、半減期の短い高エネルギーの放射性同位体とともに使用することができることを強く裏付けるものである。
実施例8.トランスフェクトされた細胞株に対するPAM4抗体の結合
トランスフェクトされた膵臓細胞
MUC−1ムチンを発現しないPanC1ヒト膵腺癌細胞に、MUC−1をコードするcDNA(これは、Hudsonら(Amer.J.Pathol.148,3:951−60,1996)に開示されており、M.A.Hollingsworth博士(Univ.of Nebraska Medical Center,Omaha,NE)から得られたものである)をトランスフェクトした。このMUC−1 cDNAは、30タンデムリピート(30TR)型か、または42タンデムリピート(42TR)型のいずれかのMUC−1をコードしていた(Hudsonら,1996;Lidellら,FEBS J.275:481−89,2008)。このMUC−1配列は、コードされたタンデムリピート配列の数以外の点では同じであった。
細胞培養物由来の上清の酵素免疫アッセイにより、PAM4抗体との反応性について、30TRもしくは42TR MUC−1または対照ベクター(インサートなし、もしくは逆向きのインサート)のいずれかをトランスフェクトされたPanC1細胞あるいはトランスフェクトされていないPanC1細胞を調べた。免疫アッセイにより、トランスフェクトされていないPanC1細胞も対照をトランスフェクトされたPanC1細胞も検出可能なレベルのPAM4反応性ムチンを産生しなかった(図示せず)。しかしながら、30TR MUC−1をトランスフェクトされた細胞と42TR MUC−1をトランスフェクトされた細胞は両方とも、PAM4抗体と極めてよく反応した(図示せず)。
トランスフェクトされたPanC1細胞を、より感度の高い免疫アッセイを用いて再検討した。簡潔に述べると、約80%〜90%コンフルエンシーに達するまで(最初の播種から約4〜5日)、細胞をT75フラスコで増殖させた。この時点で、使用済み培地を回収し、高速で遠心分離し、酵素免疫アッセイによるPAM4反応性ムチンの定量に用いた。細胞も回収し、計数した。Hollingsworth博士から得たPanc1親細胞株とAmerican Type Culture Collection(Manassas,VA)から入手した別のPanc1細胞の両方、およびベクター対照が、わずかではあるけれども検出可能な量のPAM4反応性ムチンを産生した(それぞれ、0.87±0.17、0.54±0.17、および0.02±0.02μg/mL/106細胞)のに対し、30TR−MUC−1遺伝子をトランスフェクトされた細胞は、14.17±2.22μg/mL/106細胞を産生した(他の全ての試料と比較した、30TR−MUC−1遺伝子をトランスフェクトした培地と比較した場合、P<0.0003またはそれより良い)。
MUC−1 cDNAによるPanC1細胞のトランスフェクションは、トランスフェクトされたPanC1細胞によるMUC−1の発現が増大するのに加えて、トランスフェクトされた細胞におけるサイトケラチン8および18のレベルの増大などの、細胞タンパク質発現に対する2次的影響も有するが(Hudsonら,1996,要旨)、これは、より長い(42TR)MUC−1 cDNAをトランスフェクトされた細胞のみに見られることが報告されている(Hudsonら.1996,pg.956,col.第1、第3段落)。
トランスフェクトされた腎臓細胞
MUC−1遺伝子をトランスフェクトされたHEK−293(ヒト胎児腎臓細胞)は、MA5モノクローナル抗体と反応するが、PAM4とは反応しないMUC−1を産生した(図示せず)。しかしながら、上で論じたように、非常に低レベルの内在性MUC−1を発現するMUC−1トランスフェクトPanC1細胞は、PAM4と強く反応し、MAb−MA5とは反応しないMUC−1を合成した。異種サンドイッチ免疫アッセイ(PAM4→MA5およびMA5→PAM4キャプチャー/プローブ)は、いくつかの細胞株由来の上清でシグナルを生じさせるように機能しなかった。PAM4またはMA5 MAbをキャプチャー試薬として使用しながら、ポリクローナル抗ムチン抗血清をプローブとして使用すると、効果的な免疫アッセイが実際に得られた。ポリクローナルをプローブとして用いるそれぞれの免疫アッセイにおけるこれら2つのMAbの交差遮断により、これらのMAbが独立したエピトープと反応することが示唆された。
このデータから、PAM4およびMA5エピトープは同じ抗原性分子内で共発現されていないこと、ならびにPanC1細胞株はPAM4エピトープを作り出す生合成過程を有する可能性があるが、HEK−293細胞は有していないことが示唆される。MUC−1タンパク質コアの翻訳後修飾(特定の糖転移酵素の発現/活性)の相違がこうした発見の原因である可能性がある。
実施例9.PAM4抗原の免疫反応性に対する試薬処理の影響
膵臓ムチンPAM4抗原をDTTで処理すると(室温で15分間)、PAM4との反応性が完全に消失した(DTT−EC50、0.60±0.00μM)。MUC−1の唯一のシステイン(シスチン架橋)は膜貫通ドメインに存在し、DTTが接近できるはずがない。分泌型のMUC−1は膜貫通ドメインを含まず、それゆえ、分子内シスチン架橋を有さない。0.05Mの過ヨウ素酸ナトリウムを用いて室温で2時間、PAM4抗原を過ヨウ素酸酸化処理して得られたデータから、PAM4抗体との免疫反応性が40%失われたことが示された(図示せず)。さらなる過ヨウ素酸研究により、PAM4抗体との免疫反応性が60%も失われたことが示されている(図示せず)。過ヨウ素酸研究とDTT研究の結果から、PAM4エピトープが、何らかの最小形態のグリコシル化に立体構造的に依存しており、分子間ジスルフィド結合形成によって影響され得ることが示唆されている。
実施例10.PAM4抗原の分布および交差反応性
PanINでのPAM4エピトープの発現は、MUC−1に典型的なものと違っている。この発現は、市販のMAb−CLH2−2で検出されるMUC−5acについて報告されている発現によく似ている。しかしながら、PAM4キャプチャーとMAb−CLH2−2をプローブとして用いてサンドイッチ免疫アッセイを試みると、ネガティブな結果が得られた。これは、PAM4エピトープとCLH2−2エピトープが重なり、したがって互いに遮断し合う可能性があることを示唆するものであると思われるが、CLH2−2が42/66(64%)の胃癌と反応するのに対し、PAM4 MAbは、わずか6/40(15%)の胃癌、かつこのうち、局所的に反応するものとの反応性しか示さないことが報告された。
EIAで(PAM4をキャプチャーとして用いて)市販の45M1という抗MUC−5ac MAb抗体をプローブ試薬として用いると、ポジティブな結果が得られ、この2つのエピトープが同じ抗原性分子上に存在する可能性があることが示される。(両方向の)遮断研究により、遮断は見られなかったので、45M1が結合するエピトープとPAM4が結合するエピトープが、実際には2つの別々のエピトープであることが示された。浸潤性膵癌由来のコアからなる組織マイクロアレイの標識により、個々の患者標本における45M1エピトープとPAM4エピトープの発現に顕著な相違が示された。28標本のうち、一致は17症例(61%)でしか見られなかった。PAM4が28症例中24症例(86%)と反応したのに対し、45M1は28症例中13症例(46%)と反応した(図示せず)。
MUC−1遺伝子トランスフェクションに関する上記の研究(実施例8)で、MUC−1の発現は別のムチンの発現を上方調節したか、または何らかの他の方法でPAM4エピトープの曝露に影響を及ぼした可能性があり得る。過ヨウ素酸研究の結果は、PAM4抗原のPAM4抗体との免疫反応性における因子としてのグリコシル化と一致している。したがって、アポムチンを用いた研究の結果は、抗原決定を確定するものではない可能性がある。
EIAキャプチャーに基づくと、PAM4抗体は、45M1という抗MUC−5ac MAbと同じ抗原性タンパク質に結合するように見えるが、MUC−5acは膵癌に特異的なものではなく、いくつかの正常組織(PAM4が反応する胃粘膜以外)に見られることに留意する。例えば、MUC−5acは、正常な肺、結腸、および他の組織で見られる。PAM4抗体は、少数の試料において、限られた量または最低限の量まで、上で示されている場合を除き、正常肺組織に結合しない。
DTTおよび過ヨウ素酸の効果に関して、ペプチドコアのジスルフィド架橋は、どのような組織がタンパク質を産生しても同一であると思われる。特定のアミノ酸配列は、組織源とは無関係に、特定の方法で折り畳まれるはずである。しかしながら、グリコシル化のパターンは、組織源によって異なる可能性がある。
実施例11.PAM4抗体のファージディスプレイペプチド結合
2つの異なるファージディスプレイペプチドライブラリーを用いてPAM4抗体結合を調べた。第1のものは、12個のアミノ酸配列からなる線状ペプチドライブラリーであり、第2のものは、ジスルフィド架橋で環化した7個のアミノ酸配列からなる環状ペプチドであった。本発明者らは、合わせて合計4ラウンドの間、個々のライブラリーを交互にhPAM4とhLL2に対してパニングし(抗CD22抗体によるネガティブ選択)、その後、ファージディスプレイされたペプチドを、hLL2に対する反応性が皆無かそれに近く、hPAM4とmPAM4の両方と反応するかどうかついてスクリーニングした。非特異的な形でのファージ結合(すなわち、エプラツズマブ[hLL2]に対する結合)を廃棄した。
線状ペプチドディスプレイペプチドについては、配列 WTWNITKAYPLP(配列番号29)が(35個のシーケンシングされたファージ中)30回同定され、その各々にPAM4抗体との反応性があることが示された。突然変異解析を行なったが、この解析では、この配列をベースとし、各位置で7.5%の縮重を有するライブラリーを先に述べた通りに構築し、パニングし、スクリーニングした。変動性は、PAM4結合が陽性の得られた19個のペプチド配列で認められ、7個はもとの配列と同一であり、5個は配列WTWNITKEYPQP(配列番号31)を有し、残りは独特のものとして存在していた。表6は、この突然変異解析の結果を示す。上の列に同定された配列を示し、下の列に各々のアミノ酸がその位置で同定された頻度を示す。もとの配列が最も頻度が高く(太字)、次ぎに多い変動は、位置8のAがEに置換されたものおよび位置11のLがQに置換されたものであった。これらの置換は免疫反応性に何ら大きな影響を与えなかったようである。
ファージディスプレイ環状ライブラリーでの結果は、線状ライブラリーとは顕著に異なっていた(表7)。配列ACPEWWGTTC(配列番号30)は、調べた35個のペプチド中33個で存在していた。環状ライブラリーの解析は以下の結果示した(アステリスクの付いた位置は不変であり、ライブラリーでの選択圧を受けなかった)。
(位置2および10の)2つのシステインはジスルフィド架橋を形成した。任意のアミノ酸による位置9のTの置換は、免疫反応性に大いに影響を及ぼした。配列GTTGTTC(配列番号32)は、上で示した環状ペプチド配列と比較した場合、MUC−5acタンパク質中にアミノ末端に向かって存在するが、これは、コンセンサスペプチド配列のC末端において相同性を示す。しかしながら、環状ペプチドは、線状配列とPAM4抗体の免疫反応性の約10%を示すに過ぎない。線状コンセンサス配列と環状コンセンサス配列は両方ともシステインを伴うが、これは、PAM4抗原免疫反応性に対するDTTの影響と関係する場合もあるし、関係しない場合もある。
本明細書に報告された結果は、PAM4エピトープが、ジスルフィド架橋、および特定のグリコシル化パターンによって生じ得る、特定の立体構造によって決まることを示している。
実施例12.膵炎標本における膵癌の免疫組織学
膵炎、糖尿病、喫煙などのような、いくつかの病理学的条件によって、患者に膵癌が発生しやすくなる。この予め選択された患者群において、スクリーニング手段は、膵臓新生物の早期検出に特に重要である。本発明者らは、この疾患の一次診断を受けた患者由来の9つの慢性膵炎組織標本を検討した。本発明者らは、抗CD74 MAbと、炎症性浸潤の指標としてのLL1と、膵管細胞および膵腺房細胞の陽性対照としてのMAb−MA5とを用いた。2つの対照MAbが膵炎と一致する免疫組織学的証拠を提供したのに対し、PAM4が炎症を起こした膵組織と反応した例はなかった。しかしながら、1つの症例で、中分化膵腺癌も組織標本中に存在していた。PAM4は、この腫瘍内の新生物細胞を強く染色した。2つめの症例では、炎症を起こした組織はPAM4で陰性であったが、PAM4で標識される小さなPanIN前駆病変が同定された。この後者の標本内でのPanINの標識は、非悪性疾患と診断された患者の膵臓新生物の早期検出と一致する。これらの結果は、PAM4抗体を用いた検出および/または診断を、良性膵組織のバックグラウンドと対照させて膵臓新生物に対して高感度および高選択性に実施し得るを示している。
実施例13.手術不能かつ転移性の膵癌を有する患者の治療
患者118−001、CWGは、複数の肝転移があるステージIVの膵腺癌を有する63歳の男性であり、2007年11月に診断を受けた。この患者は、第1の治療戦略として放射免疫療法とゲムシタビン化学療法の併用を開始することに同意し、その後、6.5mCi/m
2の
90Y−hPAM4を200mg/m
2のゲムシタビンと併用した最初の治療サイクルを投与され、このサイクルに従って、ゲムシタビンが週1回で1〜4週目に投与され、
90Y−hPAM4が週1回で2〜4週目に(3用量)投与された。最初のサイクルの後、大きな毒性が認められなかったので、2カ月後、同じ治療サイクルを繰り返した。驚くことに、最初の治療サイクルから4週間後にすでに、CTによる原発腫瘍と3つのうち2つの肝転移の直径の減少の証拠が認められ、これは、FDG−PETスキャンのSUV値の顕著な減少と一致しており、4つの腫瘍のうち3つが、この時点で通常のバックグラウンドレベルに戻っていた(図6および図7)。患者の治療前の1,297というCA−19.9レベルは、77という低いレベルにまで落ち、治療が効果的であることをさらに裏付けた。表8は、この患者における
90Y−hPAM4を用いた放射免疫療法とゲムシタビン化学療法の併用の効果を示す。抗体にコンジュゲートされた、このような低い用量の放射性核種を、このような低く、毒性のない用量のゲムシタビンと併用することで、わずか1クールのこの治療の後ですら、このような抗腫瘍活性が示されたのは、驚くべきことであり、また予期しないことであった。
実施例14.手術不能な転移性膵癌を有する患者の治療
広範囲の手術不能膵腺癌を有し、直径1〜4cmに及ぶいくつかの肝転移、大幅な体重減少(体重30lb以上)、軽度の黄疸、無気力、および衰弱、ならびに投薬が必要な腹痛を有する56歳の男性に、各々200mg/m2の用量でゲムシタビン注入を4週投与する。最後の3回のゲムシタビン注入時に、90Y−DOTA−hPAM4放射性標識ヒト化抗体を、2時間のi.v.注入で、10mCi/m2の90Yおよび20mg抗体タンパク質の用量で投与する。2週間後、患者に、i.v.注入による600mg/m2の3週用量からなる1クールのゲムシタビン化学療法を投与する。次に、患者を4週間後に評価すると、患者は、軽度の白血球減少(グレード2)を示し、ベースラインを超える大きな血液または酵素の変化は他に見られないが、5,700から1,200への血液CA19.9力価の改善と黄疸の軽減とを示し、全体的な主観的改善がある。3週間後、より低い用量のゲムシタビン(週1回×4)と、3用量の90Y−DOTA−hPAM4のサイクルを繰り返す。4週間後、患者を再評価し、CTスキャンとPETスキャンにより、全腫瘍塊(原発癌と転移)が約40%低下したことと、CA19.9力価が870までさらに低下したことが確認される。患者は食欲と活動を取り戻し、痛み止めを必要とせずに、より普通の日常活動に復帰することができる。この患者は、この実験的治療を開始してから12lb太った。スキャンと血液値の繰り返しにより、この応答が6週後まで維持されることが示されている。
実施例15.プレターゲッティング用のドック・ロック(DNL)構築物の調製
DDD融合タンパク質およびAD融合タンパク質
DNL技術を用いて、ほとんど全ての抗体もしくはその断片または他のエフェクター部分を含む、二量体、三量体、四量体、六量体などを作製することができる。特定の好ましい実施形態のために、IgG抗体またはFab抗体断片を、二量体化・ドッキングドメイン(DDD)配列またはアンカリングドメイン(AD)配列のいずれかを含む融合タンパク質として産生し得る。好ましい実施形態では、DDD部分とAD部分は融合タンパク質として産生されるが、当業者であれば、化学的架橋などの、他のコンジュゲーション方法を特許請求された方法および組成物の範囲内で利用し得ることを理解するであろう。
二重特異性抗体を、第1の抗体のFab−DDD融合タンパク質と第二の抗体のFab−AD融合タンパク質を組み合わせることによって形成してもよい。あるいは、IgG−AD融合タンパク質とFab−DDD融合タンパク質を組み合わせた構築物を作製してもよい。この技術は限定的なものではなく、任意の有用なタンパク質またはペプチドを、DNL構築物に組み込むためのAD融合タンパク質またはDDD融合タンパク質として産生してもよい。化学的架橋を利用する場合、ADコンジュゲートまたはDDDコンジュゲートは、タンパク質またはペプチドに限定されず、当該技術分野で公知の任意の架橋技術を用いてAD配列またはDDD配列に架橋し得る任意の分子を含んでいてもよい。特定の例示的な実施形態では、以下でさらに詳細に記載されるように、ポリエチレングリコール(PEG)または他のポリマー部分をDNL構築物に組み込んでもよい。
プレターゲッティング用途のために、腫瘍関連抗原(TAA)などの、罹患組織と関連する抗原への結合部位を含む抗体または断片を、治療剤および/または診断剤が付加されているターゲッティング可能な構築物上のハプテンに結合する第2の抗体または断片と組み合わせてもよい。DNLベースの二重特異性抗体を対象に投与し、循環抗体を身体からクリアランスさせ、標的組織に局在化させて、コンジュゲートしたターゲッティング可能な構築物を加え、これが、局在化した診断または治療用の抗体に結合する。
独立のトランスジェニック細胞株を、各々のFabまたはIgG 融合タンパク質用に開発してもよい。ひとたび産生されれば、これらのモジュールを、必要に応じて精製するか、または細胞培養上清液中で維持することができる。産生後、任意のDDD−融合タンパク質モジュールを任意のAD−融合タンパク質モジュールと組み合わせて、二重特異性DNL構築物を作製することができる。様々なタイプの構築物のために、様々なAD配列またはDDD配列を利用してもよい。例示的なDDD配列とAD配列を以下に示す。
DDD1:SHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号33)
DDD2:CGHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号34)
AD1:QIEYLAKQIVDNAIQQA(配列番号35)
AD2:CGQIEYLAKQIVDNAIQQAGC(配列番号36)
発現ベクター
プラスミドベクターpdHL2は、いくつかの抗体および抗体ベースの構築物を産生するのに使用されている。Gilliesら,J Immunol Methods(1989),125:191−202;Losmanら,Cancer(Phila)(1997),80:2660−6を参照されたい。このジシストロン性の哺乳動物発現ベクターはIgGの重鎖と軽鎖の合成を導く。ベクター配列は、多くの様々なIgG−pdHL2構築物とほとんど同じであり、唯一の違いは可変ドメイン(VHおよびVL)配列に存在する。当業者に公知の分子生物学のツールを用いて、これらのIgG発現ベクターをFab−DDDまたはFab−AD発現ベクターに変換することができる。Fab−DDD発現ベクターを作製するために、重鎖のヒンジ、CH2、およびCH3ドメインのコード配列を、ヒンジの最初の4残基、14残基のGly−Serリンカー、およびヒトRIIαの最初の44残基をコードする配列と置き換えた(DDD1と表す)。Fab−AD発現ベクターを作製するために、IgGのヒンジ、CH2、およびCH3ドメインの配列を、ヒンジの最初の4残基、15残基のGly−Serリンカー、およびバイオインフォマティックスとペプチドアレイ技術を用いて作製され、RIIα二量体と極めて高い親和性(0.4nM)で結合することが示された、AKAP−ISと呼ばれる17残基の合成ADをコードする配列と置き換えた(AD1と表す)。Altoら.Proc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A(2003),100:4445−50を参照されたい。
IgG−pdHL2ベクターをFab−DDD1発現ベクターまたはFab−AD1発現ベクターのいずれかに変換しやすくするために、2つのシャトルベクターを以下に記載するように設計した。
CH1の調製
pdHL2プラスミドベクターを鋳型として用いてCH1ドメインをPCRで増幅した。左側のPCRプライマーは、CH1ドメインの上流(5’)末端と、CH1コード配列の5’にあるSacII制限エンドヌクレアーゼ部位とからなっていた。右側のプライマーは、ヒンジ(PKSC)の最初の4残基、続いて4つのグリシンと1つのセリンをコードする配列からなり、最後の2つのコドン(GS)はBamHI制限部位を含んでいた。410bpのPCR増幅物をPGEMT(登録商標)PCR クローニングベクター(PROMEGA(登録商標),Inc.)にクローニングし、クローンをT7(5’)方向での挿入についてスクリーニングした。
(G4S)2DDD1の構築((G4S)2は配列番号37として開示されている)
(G4S)2DDD1(配列番号37として開示された(G4S)2)と表される二重鎖オリゴヌクレオチドは、DDD1のアミノ酸配列と、その前の11残基のリンカーペプチドをコードし、最初の2つのコドンがBamHI制限部位を含むように、 Sigma GENOSYS(登録商標)(Haverhill,UK)により合成された。終止コドンとEagI制限部位は3’末端に付加されている。コードされたポリペプチド配列を以下に示す。
GSGGGGSGGGGSHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号38)
それらの3’末端で30塩基対だけ重複する、RIIA1−44上およびRIIA1−44下と表される2つのオリゴヌクレオチドは、174bpのDDD1配列の中央の154塩基対を含むように合成され(Sigma GENOSYS(登録商標))、組み合わされた。これらのオリゴヌクレオチドをアニーリングし、Taqポリメラーゼによるプライマー伸張反応にかけた。プライマー伸張後、二重鎖をPCRで増幅した。増幅物をPGEMT(登録商標)にクローニングし、T7(5’)方向での挿入についてスクリーニングした。
(G4S)2−AD1の構築((G4S)2は配列番号37として開示されている)
(G4S)2−AD1(配列番号37として開示された(G4S)2)と表される二重鎖オリゴヌクレオチドは、AD1のアミノ酸配列と、その前の11残基のリンカーペプチドをコードし、最初の2つのコドンがBamHI制限部位を含むように、合成された(Sigma GENOSYS(登録商標))。終止コドンとEagI制限部位は3’末端に付加されている。コードされたポリペプチド配列を以下に示す。
GSGGGGSGGGGSQIEYLAKQIVDNAIQQA(配列番号39)
AKAP−ISトップおよびAKAP−ISボトムと表される、上記のペプチド配列をコードする2つの相補的な重複オリゴヌクレオチドを合成し、アニーリングさせた。この二重鎖をPCRで増幅した。増幅物をPGEMT(登録商標)ベクターにクローニングし、T7(5’)方向での挿入についてスクリーニングした。
DDD1とCH1の連結
DDD1配列をコードする190bpの断片を、BamHI制限酵素とNotI制限酵素を用いてPGEMT(登録商標)から切り出し、その後、CH1−PGEMT(登録商標)中の同じ部位に連結して、シャトルベクターCH1−DDD1−PGEMT(登録商標)を作製した。
AD1とCH1の連結
AD1配列を含む110bpの断片を、BamHI制限酵素とNotI制限酵素を用いてPGEMT(登録商標)から切り出し、その後、CH1−PGEMT(登録商標)中の同じ部位に連結して、シャトルベクターCH1−AD1−PGEMT(登録商標)を作製した。
CH1−DDD1またはCH1−AD1のpdHL2ベースのベクターへのクローニング
このモジュール設計を用いて、CH1−DDD1またはCH1−AD1のいずれかをpdHL2ベクター中の任意のIgG構築物に組み込むことができる。pdHL2からSacII/EagI制限断片(CH1−CH3)を除去し、それを、それぞれのpGemTシャトルベクターから切り出される、CH1−DDD1またはCH1−AD1のSacII/EagI断片と置き換えることによって、重鎖定常ドメイン全体が上記の構築物のうちの1つと置き換えられる。
h679−Fd−AD1−pdHL2の構築
h679−Fd−AD1−pdHL2は、14アミノ酸残基から構成された柔軟なGly/Serペプチドスペーサーを介してAD1がFdのCH1ドメインのカルボキシル末端に結合したh679 Fabを産生するための発現ベクターである。h679の可変ドメインを含むpdHL2ベースのベクターは、SacII/EagI断片を、SacIIとEagIを用いてCH1−AD1−SV3シャトルベクターから切り出されたCH1−AD1断片と置き換えることにより、h679−Fd−AD1−pdHL2に変換された。
C−DDD1−Fd−hMN−14−pdHL2の構築
C−DDD1−Fd−hMN−14−pdHL2は、柔軟なペプチドスペーサーを介してCH1ドメインのカルボキシル末端でDDD1がhMN−14 Fabに結合している2コピーの融合タンパク質C−DDD1−Fab−hMN−14を含む安定な二量体を産生するための発現ベクターである。hMN−14 IgGを産生するために使用されている、プラスミドベクターhMN−14(I)−pdHL2は、SacIIおよびEagI制限エンドヌクレアーゼで消化してCH1−CH3ドメインを除去することと、SacIIおよびEagIを用いてCH1−DDD1−SV3シャトルベクターから切り出されたCH1−DDD1断片を挿入することにより、C−DDD1−Fd−hMN−14−pdHL2に変換された。
同じ技術は、hLL1、hLL2、hPAM4、hR1、hRS7、hMN−14、hMN−15、hA19、hA20、および多くの他のものなどの、多種多様な既知抗体のFab発現用のプラスミドを産生するために利用されている。通常、抗体可変領域コード配列は、pdHL2発現ベクター中に存在し、この発現ベクターは、上記のようなAD融合タンパク質またはDDD融合タンパク質を産生するために変換された。このような抗体のいずれかのFab断片を含むAD融合タンパク質またはDDD融合タンパク質を、1つのAD融合タンパク質につき2つのDDD融合タンパク質というおよその割合で組み合わせて、第1の抗体の2つのFab断片と第2の抗体の1つのFab断片とを含む三量体DNL構築物を作製してもよい。
C−DDD2−Fd−hMN−14−pdHL2
C−DDD2−Fd−hMN−14−pdHL2は、14アミノ酸残基のGly/Serペプチドリンカーを介してhMN−14のFdのカルボキシル末端に付加されたDDD2の二量体化・ドッキングドメイン配列を有するC−DDD2−Fab−hMN−14を産生するための発現ベクターである。分泌されるこの融合タンパク質は、DDD2ドメインの非共有結合的相互作用によって結合している2つの同一コピーのhMN−14 Fabから構成されている。
発現ベクターを以下のように人工作製した。リンカーペプチド(GGGGSGGGCG、配列番号40)の一部とDDD2の残基1〜13のコード配列を含む、2つの重複する相補的オリゴヌクレオチドを合成により作製した。これらのオリゴヌクレオチドをアニーリングさせ、T4 PNKでリン酸化して、それぞれ制限エンドヌクレアーゼBamHIとPstIで消化したDNAとのライゲーションに適合する5’末端および3’末端上の突出を生じさせた。
二重鎖DNAを、BamHIおよびPstIによる消化により調製したシャトルベクターCH1−DDD1−PGEMT(登録商標)と連結して、シャトルベクターCH1−DDD2−PGEMT(登録商標)を作製した。SacIIおよびEagIを用いて、CH1−DDD2−PGEMT(登録商標)から507bp断片を切り出し、SacIIおよびEagIによる消化により調製したIgG発現ベクターhMN−14(I)−pdHL2と連結した。最終的な発現構築物はC−DDD2−Fd−hMN−14−pdHL2と表した。同様の技術は、いくつかの異なるヒト化抗体のFab断片のDDD2−融合タンパク質を作製するのに利用されている。
h679−Fd−AD2−pdHL2
C−DDD2−Fab−hMN−14(A)と対を成してBとなるように、h679−Fab−AD2を設計した。h679−Fd−AD2−pdHL2は、14アミノ酸残基のGly/Serペプチドリンカーを介してCH1ドメインのカルボキシル末端に付加されたAD2のアンカリングドメイン配列を有するh679−Fab−AD2を産生するための発現ベクターである。AD2は、その前に1つのシステイン残基と、AD1のアンカードメイン配列の後にもう1つのシステイン残基とを有する。
発現ベクターを以下のように人工作製した。AD2のコード配列とリンカー配列の一部を含む、2つの重複する相補的オリゴヌクレオチド(AD2上およびAD2下)を合成により作製した。これらのオリゴヌクレオチドをアニーリングさせ、T4 PNKでリン酸化して、それぞれ制限エンドヌクレアーゼBamHIとSpeIで消化したDNAとのライゲーションに適合する5’末端および3’末端上の突出を生じさせた。
二重鎖DNAを、BamHIおよびSpeIによる消化により調製したシャトルベクターCH1−AD1−PGEMT(登録商標)に連結して、シャトルベクターCH1−AD2−PGEMT(登録商標)を作製した。SacII制限酵素とEagI制限酵素を用いて、このシャトルベクターからCH1コード配列とAD2コード配列を含む429塩基対断片を切り出し、それらの同じ酵素による消化により調製したh679−pdHL2ベクターに連結した。最終的な発現ベクターは、h679−Fd−AD2−pdHL2である。
TF2 DNLプレターゲッティング構築物の作製
TF2と表される三量体DNL構築物は、C−DDD2−Fab−hMN−14をh679−Fab−AD2と反応させることにより得られた。TF2の試験バッチを以下のように、>90%収率で作製した。プロテインLで精製したC−DDD2−Fab−hMN−14(200mg)をh679−Fab−AD2(60mg)と1.4:1のモル比で混合した。総タンパク質濃度は、1mM EDTAを含むPBS中に1.5mg/mlであった。その後の工程は、TCEP還元、HICクロマトグラフィー、DMSO酸化、およびIMP291親和性クロマトグラフィーを含んだ。TCEPを添加する前、SE−HPLCにより、a2b形成の形跡は示されていなかった。5mMのTCEPを添加すると、この二成分構造に予想される157kDaのタンパク質と一致するa2b複合体が速やかに形成された。IMP291親和性クロマトグラフィーによって、TF2をほぼ均一なるまで精製した(図示せず)。IMP291は、679 Fabが結合するHSGハプテンを含む合成ペプチドである(Rossiら,2005,Clin Cancer Res 11:7122s−29s)。IMP291未結合画分のSE−HPLC解析により、生成物からのa4、a2、および遊離カッパ鎖の除去が示された(図示せず)。
非還元的SDS−PAGE解析により、大部分のTF2は、IgGの相対移動度に近い相対移動度を有する大きな共有結合的構造として存在することが示された(図示せず)。追加のバンドは、ジスルフィド形成がこれらの実験条件下では不完全であることを示唆している(図示せず)。TF2の成分ポリペプチドに相当するバンドのみが明らかである(図示せず)ので、還元SDS−PAGEは、非還元ゲル中に現れている追加のバンドが全て、生成物と関連するものであることを示している(図示せず)。しかしながら、4つのポリペプチドの各々の相対移動度は近過ぎて分離することができなかった。MALDI−TOF質量分析法(図示せず)により、156,434Daの単一ピークが明らかとなったが、これは、TF2の計算された質量(157,319Da)の99.5%範囲内にある。
TF2の機能性をBIACORE(登録商標)アッセイで明らかにした。TF2、C−DDD1−hMN−14+h679−AD1(非共有結合的なa2b複合体の対照試料として使用)、またはC−DDD2−hMN−14+h679−AD2(還元されていないa2成分とb成分の対照試料として使用)を1μg/ml(総タンパク質)に希釈し、HSGで固相化したセンサーチップ上を通過させた。TF2の応答は、2つの対照試料の応答の約2倍であり、対照試料中のh679−Fab−AD成分のみがセンサーチップに結合し、このチップ上に残ることが示された。次に、hMN−14の抗イディオタイプ抗体であるWI2 IgGを注入することにより、TF2だけが、さらなるシグナル応答により示されるような、h679−Fab−ADと強固に会合したDDD−Fab−hMN−14成分を有することが示された。センサーチップ上に固相化されたTF2に対するWI2の結合から生じた応答単位のさらなる増加は、2つの完全に機能的な結合部位に対応しており、各々、C−DDD2−Fab−hMN−14の1つのサブユニットによってもたらされるものである。これは、WI2の2つのFab断片に対するTF2の結合能によって確認された(図示せず)。
プレターゲッティング用のTF10二重特異性抗体の作製
同様のプロトコルを用いて、2コピーのC−DDD2−Fab−hPAM4と1コピーのC−AD2−Fab−679を含む三量体TF10 DNL構築物を作製した。TF10中の癌を標的とする抗体成分は、放射性標識MAbとして詳細に研究されている(例えば、Goldら,Clin.Cancer Res.13:7380−7387,2007)ヒト化抗膵癌ムチンMAbのhPAM4から得られた。ハプテン結合成分は、ヒト化抗ヒスタミニル−スクシニル−グリシン(HSG)MAbのh679から得られた。TF10二重特異性([hPAM4]2×h679)抗体は、上記のように、(抗CEA)2×抗HSG bsAb TF2の作製について開示された方法を用いて作製した。TF10構築物は、2つのヒト化PAM4 Fabと1つのヒト化679 Fabを含む。
2つの融合タンパク質(hPAM4−DDDおよびh679−AD2)を、安定にトランスフェクトされた骨髄腫細胞で独立に発現させた。組織培養上清液を合わせて、2倍モル過剰のhPAM4−DDDが得られた。反応混合物を、1mM還元グルタチオンを用いる穏やかな還元条件の下、室温で24時間インキュベートした。還元後、2mM酸化グルタチオンを用いる穏やかな酸化により、DNL反応を完了させた。h679 Fabに高い特異性で結合するIMP291−アフィゲル樹脂を用いる親和性クロマトグラフィーで、TF10を単離した。
hPAM4 IgGと、臨床試験に入っている抗CEA×抗HSG bsMAbについて、組織の組織学および血液細胞結合の完全なパネルを検討した。hPAM4結合は、3つの標本のうちの1つの標本の膀胱と胃に対する非常に弱い結合に限定されており(インビボでは結合が見られなかった)、抗CEA×抗HSG bsMAbに起因する正常組織への結合はなかった。さらに、H1およびH2ヒスタミン受容体を有する細胞株に対するインビトロでの研究では、IMP288ジ−HSGペプチドとのアンタゴニスト活性またはアゴニスト活性が示されず、2つの異なる種での動物試験では、イメージングに使用される用量よりも20,000倍高い用量で、ヒスタミン成分と関連するペプチドの薬理学的活性が示されなかった。したがって、HSG−ヒスタミン誘導体には薬理学的活性がない。
実施例16.TF10二重特異性抗体および111In標識ペプチドによるプレターゲッティングを用いたイメージング研究
以下の研究は、hPAM4を組み込んだ二重特異性抗体と標識ペプチドを用いるプレターゲッティング技術を用いたインビボイメージングの実行可能性を示すものである。2コピーのC−DDD2−Fab−hPAM4と1コピーのC−AD2−Fab−679を含む、TF10二重特異性抗体を前述の実施例に記載したように調製した。TF10および111In−IMP−288ペプチドによるプレターゲッティングを用いて、0.2〜0.3gのヒト膵癌異種移植片を担持するヌードマウスをイメージングした。図8に示す結果は、111In標識ジ−HSGペプチドのIMP−288とともに、bsMAbプレターゲッティング法を用いる動物モデルで、輪郭が描かれた腫瘍をどれほど明瞭に検出することができるかということを示している。図8の上の6匹の動物に、2つの異なる用量のTF10(投与したペプチドのモルに対して10:1および20:1のモル比)を投与し、翌日、これらの動物に111In標識ジHSGペプチド(IMP288)を投与した。図8の下の他の3匹の動物には、111In−IMP−288のみを投与した(プレターゲッティングなし)。標識ペプチドを注入してから3時間後に画像を撮影した。これらの画像から、プレターゲッティングした動物では、0.2〜0.3gの腫瘍がはっきりと局在しているが、111In−ペプチドのみを投与した動物では局在が見られないことが示されている。腫瘍取込みは、平均して20〜25%ID/gであり、腫瘍/血液比は2000:1超、腫瘍/肝臓比は170:1、腫瘍/腎臓比は18/1であった。
実施例17.プレターゲッティングおよび18F標識で使用するターゲッティングペプチドの作製
種々の実施形態で、18F標識タンパク質またはペプチドを新規の技術により調製し、診断研究および/またはPETイメージングなどのイメージング研究に使用する。18F標識のための新規の技術は、DOTA、NOTA、もしくはNETAまたはそれらの誘導体などの、キレート化部分に錯化した、18F−金属錯体、好ましくは、18F−アルミニウム錯体の調製を含む。キレート化部分を、当該技術分野で周知のコンジュゲーション技術を用いて、タンパク質、ペプチド、または任意の他の分子に付加してもよい。特定の好ましい実施形態では、18F−Al錯体を、まず溶液中で形成させ、その後、既にタンパク質またはペプチドにコンジュゲートしているキレート化部分に付加する。しかしながら、代わりの実施形態では、アルミニウムをまずキレート化部分に付加し、後で18Fを付加してもよい。
ペプチド合成
ペプチドは、Fmoc戦略を用いて固相ペプチド合成によって合成した。Fmoc/Aloc保護基を用いて基をジアミノアミノ酸の側鎖に付加し、示差的に脱保護した。使用する酢酸に対して1:1の比でピペリジンを添加することを除き、Danglesら(J.Org.Chem.1987,52:4984−4993)の方法によって、Aloc基を除去した。非対称テトラ−t−ブチルDTPAは、McBrideら(米国特許出願公開第2005/0002945号、この実施例の節は、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている通りに作製した。
トリ−t−ブチルDOTA、対称テトラ−t−ブチルDTPA、ITC−ベンジルDTPA、p−SCN−Bn−NOTA、およびTACNは、MACROCYCLICS(登録商標)(Dallas,TX)から入手した。DiBocTACN、NODA−GA(tBu)3、およびNO2AtBuは、CheMatech(Dijon,France)から購入した。Aloc/FmocリジンおよびDap(ジアミノプロピオン酸誘導体(Dprとも呼ばれる))は、CREOSALUS(登録商標)(Louisville,KY)またはBACHEM(登録商標)(Torrance,CA)から入手した。Sieberアミド樹脂は、NOVABIOCHEM(登録商標)(SanDiego,CA)から入手した。残りのFmocアミノ酸は、CREOSALUS(登録商標)、BACHEM(登録商標)、PEPTECH(登録商標)(Burlington,MA)、EMD BIOSCIENCES(登録商標)(SanDiego,CA)、CHEMIMPEX(登録商標)(WoodDale,IL)、またはNOVABIOCHEM(登録商標)から入手した。塩化アルミニウム六水和物は、SIGMA−ALDRICH(登録商標)(Milwaukee,WI)から購入した。残りの溶媒および試薬は、FISHER SCIENTIFIC(登録商標)(Pittsburgh,PA)またはSIGMA−ALDRICH(登録商標)(Milwaukee,WI)から購入した。18Fは、IBA MOLECULAR(登録商標)(Somerset,NJ)により供給された。
IMP272の18F標識
調製し、18F標識した最初のペプチドは、IMP272であった。
DTPA−Gln−Ala−Lys(HSG)−D−Tyr−Lys(HSG)−NH2 MH+ 1512
記載されている通りにIMP272を合成した(McBrideら,米国特許出願第20040241158号、この実施例の節は、参照により本明細書に組み込まれる)。
酢酸緩衝溶液 − 酢酸1.509gを約160mLの水に希釈し、1M NaOHの添加によってpHを調整し、その後、250mLまで希釈すると、0.1M溶液(pH4.03)が得られた。
酢酸アルミニウム緩衝溶液 − 0.1028gのAlCl3六水和物を42.6mLのDI水に溶かすことによって、アルミニウム溶液を調製した。このアルミニウム溶液の4mLアリコートを、16mLの0.1M NaOAc溶液(pH4)と混合すると、2mM Alストック溶液が得られた。
IMP272酢酸緩衝溶液 − ペプチド(0.0011g、7.28×10−7mol IMP272)を、364μLの0.1M酢酸緩衝溶液(pH4)に溶かすと、2mMのペプチドストック溶液が得られた。
IMP272のF−18標識 − アルミニウムストック溶液の3μLアリコートをREACTI−VIAL(商標)中に入れ、50μLの18F(受け取ったままの状態)および3μLのIMP272溶液と混合した。この溶液を加熱ブロック中、110℃で15分間加熱し、逆相HPLCで分析した。HPLC分析(図示せず)により、93%が遊離の18F標識であり、7%がペプチドに結合していることが示された。この反応液に、さらに10μLのIMP272溶液を添加し、それを再び加熱し、逆相HPLCで分析した(図示せず)。HPLCトレースにより、8%の18Fがボイド容量にあり、92%の活性がペプチドに付着していることが示された。このペプチド溶液の残りを、150μLのPBSとともに、室温で約1時間インキュベートし、その後、逆相HPLCで調べた。HPLC(図示せず)により、58%の18Fがペプチドに結合しておらず、42%が依然としてペプチドに付着していることが示された。このデータから、リン酸塩と混合した場合、18F−Al−DTPA錯体が不安定となり得るということが示されている。
標識ペプチドの溶液を1cc(30mg)WATERS(登録商標)HLBカラム(品番186001879)に適用し、300μLの水で洗浄して、未結合のF−18を除去することにより、標識ペプチドを精製した。このカラムを100μLのMeOH/H2O(1:1)で2回洗浄することにより、ペプチドを溶出した。精製ペプチドを水中、25℃でインキュベートし、逆相HPLCで分析した(図示せず)。HPLC分析により、18F標識IMP272が水中で安定でないことが示された。水中で40分インキュベートした後、83%は保持されたが、約17%の18Fがペプチドから放出された(図示せず)。
ペプチド(16μLの2mM IMP272、48μg)を18Fで標識し、抗体結合についてサイズ排除HPLCで分析した。サイズ排除HPLCにより、このペプチドは、hMN−14×679に結合するが、無関係な二重特異性抗体hMN−14×734に結合しないということが示された(図示せず)。
他の金属を用いたIMP272の18F標識
金属ストック溶液の約3μLアリコート(6×10−9mol)を、ポリプロピレン円錐形バイアル中に入れ、75μLの18F(受け取ったままの状態)と混合し、室温で約2分間インキュベートした後、0.1M NaOAc緩衝液(pH4)中の20μLの2mM(4×10−8mol)IMP272溶液と混合した。この溶液を、加熱ブロック中、100℃で15分間加熱し、逆相HPLCで分析した。IMP272は、インジウム(24%)、ガリウム(36%)、ジルコニウム(15%)、ルテチウム(37%)、およびイットリウム(2%)で標識された(図示せず)。これらの結果から、18F金属標識技術は、アルミニウム配位子に限定されるものではなく、他の金属も同様に利用することができることが示されている。異なる金属配位子を用いる場合、F−18−金属コンジュゲートの結合を最適化するために、異なるキレート化部分を利用してもよい。
血清安定性18F標識ペプチドIMP449の産生および使用
以下のアミノ酸を以下に示す順序でSieberアミド樹脂に付加することによって、この樹脂上でペプチドIMP448 D−Ala−D−Lys(HSG)−D−Tyr−D−Lys(HSG)−NH2(MH+1009)を作製した。すなわち、Aloc−D−Lys(Fmoc)−OH、Trt−HSG−OHを付加し、Alocを切断し、Fmoc−D−Tyr(But)−OH、Aloc−D−Lys(Fmoc)−OH、Trt−HSG−OHを付加し、Alocを切断し、Fmoc−D−Ala−OHを付加し、最後にFmocを切断して、所望のペプチドを作製した。次に、このペプチドを樹脂から切断し、HPLCで精製すると、IMP448が生成され、次に、これをITCベンジルNOTAに結合させた。このペプチドIMP448、0.0757g(7.5×10−5mol)を、0.0509g(9.09×10−5mol)のITCベンジルNOTAと混合し、1mLの水に溶かした。次に、撹拌したペプチド/NOTA溶液に、無水炭酸カリウム(0.2171g)をゆっくりと添加した。炭酸塩を全て添加した後、この反応溶液はpH10.6であった。この反応液を室温で一晩撹拌させておいた。14時間後、この反応液を1M HClで注意深くクエンチし、HPLCで精製すると、48mgのIMP449が得られた。
IMP449の18F標識
ペプチドIMP449(0.002g、1.37×10−6mol)を、686μL(2mMペプチド溶液)の0.1M NaOAc(pH4.02)に溶かした。2mM Alの酢酸緩衝液(pH4)溶液3μLを、1.3mCiの18F 15μLと混合した。次に、この溶液を2mM IMP449溶液20μLと混合し、105℃で15分間加熱した。逆相HPLC分析により、放射能の35%(tR約10分)がペプチドに付着し、放射能の65%がカラムのボイド容量(3.1分、図示せず)で溶出されることが示され、放射能の大部分がペプチドと結合しないことが示された。粗標識混合物(5μL)をヒトプール血清と混合し、37℃でインキュベートした。15分後にアリコートを取って、HPLCで分析した。このHPLCにより、放射能の9.8%が依然としてペプチドに付着している(35%から減少)ことが示された。1時間後に別のアリコートを取って、HPLCで分析した。このHPLCにより、放射能の7.6%が依然としてペプチドに付着している(35%から減少)ことが示されたが、これは15分での量と本質的に同じであった(データは示さない)。
高線量18F標識
精製IMP449を用いたさらなる研究により、18F標識ペプチドが、ヒト血清中、37℃で少なくとも1時間、極めて安定であり(91%、図示せず)、かつヒト血清中、37℃で少なくとも4時間、ある程度安定である(76%、図示せず)ことが示された。さらなる研究を行ない、その場合には、IMP449を安定化剤としてのアスコルビン酸の存在下で調製した。これらの研究(図示せず)では、金属−18F−ペプチド錯体は、37℃で4時間後、血清中での検出可能な分解を示さなかった。18F標識ペプチドを注射してから30分後のマウスの尿にはペプチドに結合した18Fが含まれることが分かった(図示せず)。これらの結果から、本明細書に開示された18F標識ペプチドが、18Fイメージング研究に使用されるインビボに近似した条件下で十分な安定性を示すことが示されている。
約400μLの水中の18F(約21mCi)を、0.1M NaOAc(pH4)中の9μLの2mM AlCl3と混合した。ペプチドIMP449、60μL(0.5 NaOH(pH4.13)中に0.01M、6×10−7mol)を添加し、この溶液を110℃まで15分間加熱した。次に、この反応溶液を1cc WATERS(登録商標)HLBカラム筒に入れ、水で溶出して、未結合の18Fを除去し、次いでEtOH/H20(1:1)で18F標識ペプチドを溶出することによって、粗標識ペプチドを精製した。この粗反応溶液をカラムに通して廃棄バイアルに入れ、カラムを1mLずつの水で3回洗浄した(18.97mCi)。次に、HLBカラムを新しいバイアルの上に置き、200μLのEtOH/H2O(1:1)で2回溶出し、標識ペプチドを回収した(1.83mCi)。全ての溶出が終了した後、カラムは0.1mCiの放射能を保持していた。精製された18F標識ペプチドのアリコート(20μL)を、200μLのヒトプール血清と混合し、37℃で加熱した。逆相HPLCでアリコートを分析した。これらの結果から、ヒト血清中でインキュベートしてから0時間、1時間(91%標識ペプチド)、2時間(77%標識ペプチド)、および4時間(76%標識ペプチド)の時点における18F標識された精製IMP449の37℃での相対的な安定性が示された(図示せず)。18F標識IMP449は、逆相HPLCクロマトグラフィーで使用されることもあるTFA溶液中で安定であることも観察された。本明細書に記載の例示的な18F標識分子について観察されたTFA中での安定性とヒト血清中での安定性の間には一般的相関があるように思われる。これらの結果から、本明細書に開示された方法によって生成される18F標識ペプチドが、例えば、PET走査を用いて標識細胞または組織を検出する、インビボでの標識およびイメージング研究に首尾よく使用されるのに十分なヒト血清中での安定性を示すことが示されている。最後に、IMP449ペプチドは、放射線分解に感受性のあるチオウレア結合を含むので、いくつかの産物がRP−HPLCで観察される。しかしながら、反応混合物にアスコルビン酸を添加すると、生成される副産物は顕著に減少した。
実施例18.プレターゲッティングTF10 DNL構築物と18F標識ペプチドを用いたインビボ研究
18F標識IMP449を以下のように調製した。約0.5mL中の18F、54.7mCiを0.1M NaOAc緩衝液(pH4)中の2mM Al 3μLと混合した。3分後、0.5M NaOAc緩衝液(pH4)中の0.05M IMP449 10μLを添加し、反応液を96℃の加熱ブロック中で15分間加熱した。この反応液の中身をシリンジで取り除いた。次に、C18カラムを用いるHPLCで粗標識ペプチドを精製した。流速は3mL/分であった。緩衝液Aは水中の0.1%TFAであり、緩衝液Bは、0.1%TFAを含む水中の90%アセトニトリルであった。勾配は、100%のAから75/25のA:Bへと15分かけて移行した。最初に溶出する標識ペプチドと未標識ペプチドとの間に保持時間(tR)の差が約1分あった。HPLC溶出物を0.5分(mL)ずつの画分で回収した。使用したカラムにもよるが、標識ペプチドは6〜9分のtRを有していた。目的の画分を水に2倍希釈し、その溶液を1cc Waters(登録商標)HLBカラム筒に入れることによって、HPLC精製したペプチド試料をさらに処理した。このカートリッジを3×1mLの水で溶出して、アセトニトリルとTFAを除去し、次いで400μLのEtOH/H20(1:1)で18F標識ペプチドを溶出した。精製された[Al18F]IMP449は、分析的HPLC C18カラムで単一のピークとして溶出した(図示せず)。
4つの増殖の遅い皮下CaPan1異種移植片を担持するTACONIC(登録商標)ヌードマウスをインビボ研究に使用した。3匹のマウスにTF10(162μg)、次いで18時間後に[Al18F]IMP449を注射した。TF10は、腫瘍イメージング研究に有用なヒト化二重特異性抗体であり、PAM−4で規定されるMUC1腫瘍抗原に二価結合し、HSGに一価結合する(例えば、Goldら,2007,J.Clin.Oncol.25(18S):4564参照)。1匹のマウスにはペプチドのみを注射した。ペプチドを注射してから1時間後に、全てのマウスを解剖した。すぐに組織をカウントした。動物#2は、大腿骨に高いカウントを示した。この大腿骨を新しいバイアルに移し、古い空のバイアルとともに再カウントした。再カウントにより、このカウントが組織に含まれることが示された。この大腿骨を破砕すると、それには大きな筋肉片が付着していた。平均分布を比較することにより、腫瘍ターゲッティング二重特異性抗体の存在下では、どの正常組織よりも大幅に高いレベルの18F標識ペプチドが腫瘍に局在化することが示された。
組織取込みは、[Al
18F]IMP449のみを投与された動物またはプレターゲッティング設定の動物で同様であった(表9)。1時間でのヒト膵癌異種移植片CaPan1への取込みは、ペプチドのみと比較して、プレターゲッティング動物で5倍増加した(4.6±0.9%ID/g対0.89%ID/g)。並外れた腫瘍/非腫瘍比はこの時点で達成された(例えば、腫瘍/血液比および腫瘍/肝臓比は、それぞれ、23.4±2.0および23.5±2.8であった)。
これらの結果から、TF10 DNL構築物などのPAM4含有抗体構築物とともに用いた18F標識ペプチドによって、PETイメージング解析などのインビボイメージングを実施するための18F標識の好適なターゲッティングがもたらされることが示されている。
実施例19.TF10を用いたさらなるイメージング研究
要約
前臨床試験および臨床試験により、膵癌の核イメージングや放射免疫療法への放射性標識mAb−PAM4の適用が示されている。本発明者らは、本明細書において、イメージングや治療を改善するための放射性標識ペプチドをプレターゲッティングするために、PAM4をベースとする新規の二重特異性モノクローナル抗体(mAb)構築物であるTF10の能力を検討した。TF10は、mAb−PAM4については二価、mAb−679については一価であり、ヒスタミン−スクシニル−グリシンハプテンに対して反応性があるヒト化二重特異性mAbである。放射性標識されたTF10および/またはTF10でプレターゲッティングされたハプテン−ペプチド(IMP−288)の生体分布研究および核イメージングを、CaPan1ヒト膵癌異種移植片を担持するヌードマウスで行なった。125I−TF10は血液から速やかにクリアランスされ、16時間までに、グラム当たりの注射用量(ID/g)の1%未満にまでレベルが低下した。腫瘍取込みは、この時点で3.47±0.66%ID/gであり、どの正常組織にも蓄積していなかった。プレターゲッティングアプローチの有用性を示すために、111In−IMP−288をTF10の16時間後に投与した。放射性標識ペプチドを投与してから3時間で、腫瘍内への強い取込みがイメージングで示され、正常組織への付着の形跡は見つからなかった(実施例16)。111In−ペプチドのみを投与した動物ではターゲッティングが見られなかった(実施例16)。TF10でプレターゲッティングされた111In−IMP−288の腫瘍取込みが24.3±1.7%ID/gであったのに対し、111In−IMP−288単独では、腫瘍取込みは、16時間でわずか0.12±0.002%ID/gであった。腫瘍/血液比は、111In−PAM4−IgG(24時間で約5:1;P<0.0003)と比較して、プレターゲッティング群(3時間で約1,000:1)では有意に大きかった。放射線量の推定から、TF10/90Y−ペプチドのプレターゲッティングによって、90Y−PAM4−IgGよりも大きい抗腫瘍効果がもたらされることが示唆された。したがって、これらの結果から、直接放射性標識したPAM4−IgGと比較して、TF10プレターゲッティングが、膵癌の早期検出、診断、および治療のためのイメージングの向上をもたらし得ることが裏付けられている(Goldら,CancerRes2008,68(12):4819−26)。
本発明者らは、初期のステージI疾患、ならびに前駆病変、膵上皮内腫瘍、および膵管内乳頭粘液性腫瘍を含む、浸潤性膵腺癌の>85%で発現されるムチン上に存在する独特のバイオマーカーを同定した(Goldら,Clin Cancer Res 2007,13:7380−87)。mAb−PAM4で検出される、この特異的なエピトープ(Goldら,Int J Cancer 1994,57:204−10)は、正常膵組織および炎症を起こした膵組織、ならびにほとんどの他の悪性組織には存在しない。したがって、このエピトープの検出により、膵臓新生物が存在する高い診断的可能性が与えられる。それぞれ、131Iおよび99mTcで標識されたマウスPAM4 IgGまたはFab’を用いた初期の臨床研究では、10人の浸潤性膵腺癌患者のうちの8人で特異的ターゲッティングが示された(Marianiら,Cancer Res 1995,55:5911s−15s;Goldら,Crit Rev Oncol Hematol 2001,39:147−54)。2人の陰性の患者のうち、1人がPAM4−エピトープを発現しない低分化膵癌を有していたのに対し、もう1人の患者は、悪性病変ではなく、膵炎を有していたことが後から分かった。
したがって、膵癌に対するPAM4の高い特異性は、初期疾患の検出と診断に有用である。検出の改善の他に、90Y−PAM4 IgGは、ヌードマウス中の大きなヒト膵癌異種移植片の治療に効果的であることも分かり(Cardilloら,Clin Cancer Res 2001,7:3186−92)、ゲムシタビンと併用したとき、治療応答のさらなる改善が見られた(Goldら,Clin Cancer Res 2004,10:3552−61;Goldら,Int J Cancer 2004,109:618−26)。ゲムシタビン治療から脱落する患者での第I相治療試験が最近終了し、90Y−ヒト化PAM4 IgGの最大認容量が20mCi/m2であることが分かった(Gulecら,Proc Amer Soc Clin Onc,第43回年次総会,J Clin Oncol 2007,25(18S):636s)。全ての患者が8週目でまたは8週目以降に疾患の進行を示したが、いくつかの症例では腫瘍の初期収縮が見られた。放射線増感用量のゲムシタビンと併用した90Y−hPAM4 IgGの分割投与レジメンを評価する臨床研究が現在進行中である。
本発明者らは、PAM4の膵癌に対するターゲッティング特異性に基づいて、新規の組換えヒト化二重特異性モノクローナル抗体(mAb)、TF10の開発を本明細書で報告している。この構築物は、独特の合成ハプテンであるヒスタミン−スクシニル−グリシン(HSG)にも結合する。このハプテンは、単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)および陽電子放出断層撮影(PET)イメージングに、ならびに治療目的に好適な広範な放射性核種で放射性標識することができるいくつかの小ペプチドに組み入れられている(Karacayら,Clin Cancer Res 2005,11:7879−85;Sharkeyら,Leukemia 2005,19:1064−9;Rossiら,Proc Natl Acad Sci USA 2006,103:6841−6;McBrideら,J Nucl Med 2006,47:1678−88)。これらの研究は、イメージングまたは治療用途のために膵腺癌をターゲッティングするこの新しい構築物の可能性を示している。
方法および材料
TF2およびTF10二重特異性DNL構築物とIMP288ターゲッティングペプチドとを上記のように調製した。ヨウ化ナトリウム(125I)および塩化インジウム(111In)はPERKIN−ELMER(登録商標)から入手した。TF10をヨードゲン法により125Iで通常通り標識し、サイズ排除スピンカラムの使用により精製した。DOTA−ペプチドおよびDOTA−PAM4−IgGの111InClでの放射性標識を以前に記載されているように行なった(Rossiら,Proc Natl Acad Sci USA 2006,103:6841−6;McBrideら,J Nucl Med 2006,47:1678−88)。サイズ排除高速液体クロマトグラフィーで放射性標識産物の精製を調べ、遊離の未結合同位体の量を即時TLCで測定した。
TF10分布研究のために、皮下にCaPan1ヒト膵癌異種移植片を担持する、雌の無胸腺ヌードマウス約20g(TACONIC(登録商標)Farms)に125I−TF10(10μCi;40μg、2.50×10−10mol)を注射した。様々な時点で、マウスの群(n=5)を解剖し、腫瘍組織と非腫瘍組織を摘出し、ガンマカウンターでカウントして、組織のグラム当たりの注射用量のパーセンテージ(%ID/g)を測定し、これらの値を用いて血液クリアランス速度と腫瘍/非腫瘍比を計算した。
プレターゲッティング生体分布研究にために、10:1の二重特異性mAb/放射性標識ペプチドモル比を用いた。例えば、皮下にCaPan1ヒト膵癌異種移植片を担持する無胸腺ヌードマウスの群にTF10(80μg、5.07×10−10mol)を投与し、一方、第2の群は未処置のままにした。TF10の注射後16時間で、111In−IMP−288ハプテン−ペプチド(30μCi、5.07×10−11mol)を投与した。いくつかの時点でマウスを解剖し、腫瘍組織と非腫瘍組織を摘出し、ガンマカウンターでカウントして、%ID/gを測定した。これらのデータから腫瘍/非腫瘍比を計算した。別の研究で、生体分布、核イメージング、および潜在的治療活性を比較する目的で、マウスの群に111In−DOTA−PAM4−IgG(20μC、50μg、3.13×10−10mol)を投与した。ゼロ時間で活性がないと仮定して、時間−活性曲線から放射線量の推定値を計算した。スチューデントのt検定を用いて有意差を評価した。
核免疫シンチグラフィーを実施するために、放射性標識ペプチドの注射後3時間または放射性標識hPAM4−IgGの注射後24時間で、111In用の中エネルギーコリメーター(ADAC Laboratories)を取り付けたデュアルヘッドSolusガンマカメラを用いて、担腫瘍マウスをイメージングした。計100,000cpmか、または10分間かのどちらか早い方が来るまで、マウスをイメージングした。
結果
二重特異性mAb TF10のインビトロでの特徴解析。標的ムチン抗原に対するTF10の結合をELISAで解析した(図9)。これらの結果から、二価TF10、PAM4−IgG、およびPAM4−F(ab’)2についてのほとんど同一の結合曲線が示されたが(半最大結合は、それぞれ、1.42±0.10、1.31±0.12、および1.83±0.16nmol/Lと計算された;全てについてP>0.05)、一価bsPAM4化学的コンジュゲート(PAM4−Fab’×抗DTPA−Fab’)は有意により低い結合力を有し(半最大結合、30.61±2.05nmol/L;TF10と比較して、P=0.0379)、TF10が二価の様式で結合することが示唆された。ムチンに結合した125I−TF10の免疫反応性画分は87%であり、未結合のTF10が9%、遊離のヨウ素が3%であることが分かった(図示せず)。111In−IMP−288の90%はTF10に結合した(図示せず)。TF10に結合した全ての111In−IMP−288のうちで、過剰のムチン(200μg)を添加したときに、92%がより高い分子量で溶出し、わずか3%がムチン非反応性のTF10画分とともに溶出した。さらに5%の放射性標識ペプチドが、遊離ペプチド容量に溶出された。TF10の非存在下でムチン抗原に結合した放射性標識ペプチドはなかった(図示せず)。
CaPan1担腫瘍ヌードマウスにおける 125 I−TF10の生体分布。TF10は血液からの速やかなクリアランスを示し、1時間で21.03±1.93%ID/gから始まり、16時間で実に0.13±0.02%ID/gまで減少した。生物学的半減期は2.19時間と計算された[95%信頼区間(95%CI)、2.11〜2.27時間]。組織取込みによって、1時間での肝臓、脾臓、および腎臓における放射能の増強が明らかとなったが、これは、16時間までに即座にクリアランスされた[肝臓、脾臓、および腎臓について、それぞれ、T1/2=2.09 時間(95%CI、2.08〜2.10)、2.84時間(95%CI、2.49〜3.29)、および2.44時間(95%CI、2.28〜2.63)]。胃における放射能は、放射性ヨウ素の沈着と排出を反映する可能性が最も高く、放射性ヨウ化TF10が、おそらくは肝臓と脾臓で活発に異化され、それにより血液からのその速やかなクリアランスを説明するものであることが示唆された。それにもかかわらず、16時間までに、胃内での放射性ヨウ素の濃縮は1%ID/g未満であった。125I−TF10を投与され、16時間で解剖された5匹の非担腫瘍ヌードマウスの群は、同様の組織分布を示し、腫瘍が二重特異性mAb分布と正常組織からのクリアランスに影響を及ぼしていなかったことを示唆した(データは示さない)。もちろん、調べた最初の時点より前に、違いが生じた可能性がある。TF10の腫瘍取込みは注射後6時間でピークに達し(7.16±1.10%ID/g)、16時間で最大結合の半分にまで減少していた(3.47±0.66%ID/g)。腫瘍取込みは、次の32時間の間、再びほぼ2倍減少したが、その後、次の24時間の間、安定であった。
TF10でプレターゲッティングされた 111 In標識ペプチドの生体分布。TF10の最大の腫瘍取込みは6時間で起こったが、これまでの経験から、放射性標識ペプチドは、TF10の血液レベルが<1%ID/gにまでクリアランスされた時点(すなわち、16時間)で投与される必要があることが示された。より高レベルの血中TF10が、血中での受け入れ難いほど高い放射性標識ペプチドの結合(すなわち、低い腫瘍/血液比)をもたらしたのに対し、もっと遅い時点でのペプチドの投与は、腫瘍内のTF10の濃度が低下し、その結果として、腫瘍内の放射性標識ペプチドの濃度が低下することを意味した。したがって、初期のプレターゲッティング研究は、16時間の間隔を用いて行なわれた。
111In−IMP−288の量を一定(30μCi、5.07×10
−11mol)に保ちながら、モル比で表されるTF10とIMP−288の投与量が5:1から20:1まで変化するように、増加量のTF10を投与した(表10)。
3時間で、血液中の111In−IMP−288の量は、ほとんど検出されなかった(0.01%)。腫瘍取込みは、投与された二重特異性mAbの量が4倍増加するにつれて、19.0±3.49%ID/gから28.55±0.73%ID/gに増加した(ある群から別の群へと、各TF10/ペプチド比を比較した場合、統計学的に有意な差が見られた;P<0.03またはそれより良い)が、正常組織取込みの増加は全く認められなかった。TF10を投与した動物での腫瘍取込みは、111In−IMP−288を単独投与したときよりも>100倍高かった。TF10の投与前に、投与を受けたかまたは投与を受けていない動物の正常組織での111In活性の比較は、ほとんどの場合、有意差のない同様の絶対値を示した。これは、二重特異性mAbが、16時間までに、全ての正常組織から十分にクリアランスされてしまい、これらの組織での感知され得るペプチド取込みが防がれたことを示唆している。腫瘍/血液比は>2,000:1であり、他の組織比は100:1を超えた。腫瘍/腎臓比ですら10:1を超えた。非腫瘍組織に対するターゲッティングが最小の、放射性同位体の最大腫瘍取込みは、20:1の比によりもたらされた。しかしながら、いずれのTF10/ペプチド比も、シグナル強度とコントラスト比の両方に関して、腫瘍に対する並外れたターゲッティングを達成するために用いることができた。放射性標識ペプチドの腫瘍取込みの絶対差が、10:1の比(24.3±1.71%ID/g)と20:1(28.6±0.73%ID/g)の比の間でそれほど差がないので、10:1の比をさらなる研究のために選んだ。
10:1の二重特異性mAb/ペプチド比の、TF10でプレターゲッティングした111In−IMP−288、または111In−IMP−288ペプチドのみのいずれかを投与された動物の画像を図10に示す。これらの腫瘍の大部分は、直径≦0.5cm、重さ約0.25gであった。これらの画像は、TF10をプレターゲッティングした動物の腫瘍における極めて強い取込みを示している(図10A)。TF10をプレターゲッティングした動物の画像バックグラウンドの強度を増加させて、111In−IMP−288のみを投与した動物の撮影画像の強度と一致させた(図10B)。しかしながら、画像を、TF10をプレターゲッティングしたマウスに最適化したとき、シグナル強度とコントラストが非常に高かったので、さらなる放射能は体内に認められなかった。111In−IMP−288のみを投与した動物では、画像強度を上げても、腫瘍局在が見られなかった(図10C)。
TF10でプレターゲッティングされる111In−IMP−288ペプチドの動態と比較したターゲッティング111In−hPAM4全IgGの動態を評価するために、さらなる実験を行なった。111In−ペプチドの腫瘍取込みが、調べた最初の時点の3時間で最も高かった(15.99±4.11%ID/g)のに対し、放射性標識ペプチドの血液濃度は、わずか0.02±0.01%ID/gでしかなく、平均腫瘍/血液比は946.3±383.0であった。時間とともに、放射性標識ペプチドは、76.04時間の生物学的半減期で、腫瘍からクリアランスされた。非腫瘍組織の中では、腎臓での取込みが最も高く、3時間で平均して1.89±0.42%ID/gであり、時間とともに着実に減少した(生物学的半減期、33.6時間)。肝臓取込みは、0.15±0.06%ID/gで始まり、時間とともに本質的に変化しないままであった。TF10でプレターゲッティングした111In−IMP−288とは対照的に、111In−hPAM4−IgGは、最初の24時間以内で大幅にクリアランスされ、3時間での30.1%ID/gから24時間での実に11.5±1.7%ID/gまで減少したにもかかわらず、血液からのクリアランスがより遅かった。脾臓での取込み上昇のばらつきから、脾臓内に取り込まれるようになった分泌ムチンのターゲッティングによって、抗体が血液から除去されている可能性が高いことが示唆された。腫瘍取込みは、48時間で80.4±6.1%ID/gとピークに達し、モニタリング期間中ずっと、高いレベルのままであった。高い腫瘍取込みは、IgGについて予想されていた血液クリアランスよりも速いことと相まって、24時間以内に5.2±1.0の腫瘍/血液比をもたらした。図10Cは、111In−PAM4−IgGの投与後24時間での動物の画像を示しており、これは、この早い時点で腫瘍を可視化することができるが、腹部内にまだかなりの放射能があることを示している。111In−IMP−288と111In−hPAM4−IgGについての腫瘍/腎臓比が後で同じとなる腎臓を除き、腫瘍/非腫瘍比は、111In−hPAM4−IgGと比較して、TF10でプレターゲッティングした111In標識ハプテン−ペプチドで、ほとんど高かった。しかしながら、TF10でプレターゲッティングした111In−IMP−288の腫瘍/腎臓比は、3時間で腫瘍と正常組織を容易に識別することができるほど十分に高かった(例えば、約7:1)。
図11は、放射性核種(90Y)を送達する直接法およびプレターゲッティング法の潜在的治療能力を示す。腫瘍内の放射性同位体の濃度(%ID/g)は、そのそれぞれの最大認容量(90Y−hPAM4について0.15mCiおよびTF10でプレターゲッティングした90Y−IMP−288について0.9mCi)で、プレターゲッティングしたTF10よりもPAM4−IgGで送達したときに遥かに大きいように思われるが、腫瘍に対する放射線量は似ていた(90Y−PAM4−IgGおよびTF10でプレターゲッティングした90Y−IMP−288について、それぞれ、10,080および9,229cGy)。プレターゲッティング法の利点は、並外れて低い血中放射能(9cGy)であり、90Y−hPAM4 IgG(1,623cGy)の場合よりもほぼ200倍少なかった。肝臓、およびその他の非腫瘍臓器に対する放射線量が、TF10でプレターゲッティングした90Y−IMP−288の場合よりも遥かに低かったことに留意するのも重要である。例外は腎臓であり、腎臓では、放射線量が、そのそれぞれの最大線量(90Y−PAM4−IgGおよびTF10−90Y−IMP−288のcGyについて、それぞれ、612および784)で、両方のプロトコルについて同じであった。これらのデータから、90Y−PAM4−IgGについて、他のほとんどの放射性標識された全IgG mAbの場合と同様に、線量制限毒性は血液学的であるが、TF10プレターゲッティングプロトコルでは、線量制限毒性は腎臓であることが示唆される。
考察
解剖学的画像を提供する、超音波検査技術、コンピュータ断層撮影(CT)技術、および磁気共鳴イメージング(MRI)技術などの、現在の診断モダリティーは、代謝環境のPETイメージングとともに、膵臓腫瘤の検出において高い感度を提供することが当たり前のように分かっている。しかしながら、これらのデータは、大部分、既に臨床症状を呈している集団での>2cmの病変の検出に基づくものである。膵癌の進行のこの時点では、予後はかなり悲惨なものである。患者の転帰を改善するために、無症状の患者での小さな初期の膵臓新生物の検出が必要である。
mAb−PAM4に関して本明細書で記載されているような、ターゲッティングアプローチを用いるイメージングによって、こうした小さい初期癌の診断が提供され得る。最も重要なのは、mAbの特異性である。本発明者らは、mAb−PAM4が、存在すると膵癌新生物の診断可能性が高くなるバイオマーカーと極めて反応性が高いことを示すために、組織標本の免疫組織化学的研究(Goldら,Clin Cancer Res 2007;13:7380−7;Goldら,Int J Cancer 1994;57:204−10)や患者血清の免疫アッセイ(Goldら,J Clin Oncol 2006;24:252−8)を含む、相当なデータを提示してきた。さらに、本発明者らは、PAM4が、正常な成人膵組織とも活動性膵炎とも反応しないが、膵臓内の最も初期の段階の腫瘍進行(膵上皮内腫瘍性病変1および膵管内乳頭粘液性腫瘍)と反応すること、およびバイオマーカーが、この進行から浸潤性膵腺癌に至るまでずっと高い発現レベルのままであることを明らかにした(Goldら,Clin Cancer Res 2007;13:7380−7)。ヒト膵腫瘍異種移植片を担持する無胸腺ヌードマウスを用いた前臨床研究により、放射性標識されたマウス型、キメラ型、およびヒト化型のPAM4の特異的ターゲッティングが示されている。
今回の研究で、本発明者らは、PAM4アームについては二価で、抗HSGハプテンアームについては一価の、次世代の組換え二重特異性PAM4ベースの構築物TF10を検討した。ドック・ロックと名付けられた、このプレターゲッティング系の構築物のいくつかの重要な特徴があり、これには、その一般的な適用性や合成のしやすさが含まれる。しかしながら、本考察の場合、これまでに報告された化学的構築物との主な違いは、腫瘍抗原に対する結合の向上をもたらす価数、および重要なことであるが、その薬物動態である。非腫瘍組織からのTF10クリアランスは、化学的コンジュゲートで見られたものよりも遥かに速かった。二重特異性構築物の血液レベルが1%ID/g未満に達する時間は、TF10の場合の16時間に対して、化学的コンジュゲートの場合は注射後40時間であった。プレターゲッティング剤のより速やかなクリアランスは、腫瘍部位での高いシグナル強度(%ID/g)を維持しつつ、腫瘍/血液比を大幅に改善させる。
早期検出と早期診断の手段を提供することに加え、これらの結果は、癌治療に対するTF10プレターゲッティング系の使用を支持する。腫瘍および非腫瘍組織に対する効果的な放射線量の考察により、直接放射性標識されたPAM4−IgGよりもプレターゲッティング法が好まれる。線量推定により、2つの送達系が異なる線量制限毒性(すなわち、直接放射性標識されたPAM4の骨髄毒性に対して、TF10プレターゲッティング系の腎臓)を有することが示唆された。これは、放射性標識PAM4を治療剤としてさらに臨床開発するのに重要なことである。ゲムシタビンは、膵癌に対して現場で使用される第一選択薬であるが、これは、腫瘍細胞の顕著な放射線増感をもたらすことができる。これまでの研究で、本発明者らは、ゲムシタビンと直接放射性標識されたPAM4−IgGの組合せが、どちらかのアームのみの場合と比較して、相乗的な抗腫瘍効果をもたらすことを示した(Goldら,Clin Cancer Res 2004,10:3552−61;Goldら,Int J Cancer 2004,109:618−26)。この組合せの線量制限因子は血液毒性と重複していた。しかしながら、TF10プレターゲッティングの線量制限臓器は、血液組織ではなく、腎臓であるように思われるので、ゲムシタビンとの組合せはあまり毒性がないはずであり、したがって、放射性同位体の投与の増加が可能となり、その結果として、抗腫瘍効力がより大きくなる。
前臨床モデルでTF10プレターゲッティングを用いて達成される優れたイメージングは、直接放射性標識されたDOTA−PAM4−IgGと比較して、このイメージングシステムを用いて臨床試験へと進むための説得力のある論拠を与える。膵臓新生物に対する腫瘍ターゲッティングmAbの特異性は、SPECT(111In)、PET(68Ga)、超音波検査(Au)、もしくは他の造影剤、またはさらに言えば、90Yもしくは他の治療用放射性核種に対して様々なイメージング化合物をHSG−ハプテン−ペプチドにコンジュゲートする能力を与える二重特異性抗体プラットフォーム技術と相まって、全体的な患者転帰を改善させる高い可能性を提供する(Goldenbergら,J Nucl Med 2008,49:158−63)。特に、本発明者らは、TF10ベースの免疫PET法が、膵癌発症のリスクが高い個体(例えば、遺伝的素因、慢性膵炎、喫煙者など)をスクリーニングするための大きな臨床的価値、ならびに従来技術から得られる疑わしい腹部画像および/または特定のバイオマーカーの存在もしくは腹部の生化学的所見による兆候が見られる患者の経過観察の手段を有することになると考えている。これらの患者を追跡するための進行中の医療計画の一部として使用されるときに、膵癌の早期検出が実現される可能性がある。最後に、ゲムシタビンとの組合せで、TF10プレターゲッティングにより、直接放射性標識されたPAM4−IgGよりも良い腫瘍増殖制御の機会が与えられる可能性がある。
実施例20.ゲムシタビンとTF10を用いてプレターゲッティングした90Y−標識ペプチドとによる膵癌異種移植片の治療
要約
90Y−hPAM4 IgGは、現在、ステージIII/IV膵癌の患者におけるゲムシタビンと併用した第I/II相試験で検討中である。本発明者らは、同様の量の放射能を膵癌異種移植片に送達することができるが、血液毒性があまりない放射性核種をプレターゲッティングする新しいアプローチであって、ゲムシタビンとの併用により適しているものを開示している。約0.4cm3の皮下CaPan1ヒト膵癌を担持するヌードマウスに、組換えbsMAbであるTF10を投与し、1日後に、90Y−標識ハプテン−ペプチド(IMP−288)を投与した。様々な線量とスケジュールのゲムシタビンをこの治療に加えて、腫瘍進行を28週までモニタリングした。0.7mCi PT−RAIT単独により、血球数が一時的に60%失われたに過ぎず、0.9mCi PT−RAIT単独および0.7mCi PT−RAIT+6mgゲムシタビン(ヒト当量約1000mg/m2)を投与した動物では、9カ月後に腎毒性の組織学的証拠が見られなかった。単回用量の0.25または0.5mCi PT−RAIT単独で、それぞれ、腫瘍の20%および80%を完全に除去することができる。標準的なゲムシタビンレジメン(週1回6mg×3;1週休み;3回繰り返す)に加えられた月1回の分割PT−RAIT(各ゲムシタビンサイクルの開始時に0.25mCi/投与で投与)によって、腫瘍が3.0cm3に達するまでの時間中央値がPT−RAIT単独を上回って有意に増加した。PT−RAITに加えるゲムシタビンの細胞傷害性のない放射性増感用量レジメンを検討する他の治療計画もまた、PT−RAIT単独を上回って治療応答の有意な改善を示した。これらの結果は、PT−RAITが膵癌治療のための有望な新しいアプローチであることを示している。今回のデータは、PT−RAITとゲムシタビンを併用することによって治療応答が増強されることを示している。
方法
TF10二重特異性抗体を上記のように調製した。プレターゲッティングのために、TF10を、ヒト膵腺癌細胞株CaPanを担持するヌードマウスに投与した。TF10が血液からクリアランスされるのに十分な時間(16h)を取った後、放射性標識された二価HSG−ペプチドを投与した。低分子量のHSG−ペプチド(約1.4kD)は、数分以内に血液からクリアランスされて、血管外スペースに入り、そこで、プレターゲッティングされたTF10 bsMAbの抗HSGアームに結合することができる。数時間以内に、放射性標識HSG−ペプチドの>80%が尿中に排出され、腫瘍にペプチドが局在したまま残り、正常組織中には微量しか残らない。
結果
図12は、0.15mCiの90Y−hPAM4 IgG、またはTF10でプレターゲッティングした0.25もしくは0.50mCiの90Y−IMP−288による、樹立された(約0.4cm3)CaPan1腫瘍の単一治療から得られた治療活性を示している。同様の抗腫瘍活性が0.5mCiのプレターゲッティング線量と0.15mCi線量の直接放射性標識されたIgGでも見られたが、直接コンジュゲートのこのレベルで血液毒性が重篤であった(図示せず)のに対し、プレターゲッティング線量は中程度の毒性しかなかった(図示せず)。実際、90Y−IMP−288を用いるプレターゲッティングのMTDは、ヌードマウスにおいて少なくとも0.9mCiである。
図13は、ゲムシタビンとPT−RAITの併用に、抗腫瘍治療に対する相乗効果があることを示している。ヒト当量のゲムシタビン(GEM) 1000mg/m2(6mg)を週1回、3週間、マウスに腹腔内投与し、次に、1週間休止した後、このレジメンを2回繰り返した。PT−RAIT(TF10でプレターゲッティングした0.25mCiの90Y−IMP−288)を、3サイクルの治療の各々の最初のGEM投与の1日後に投与した。Gem単独では、腫瘍進行(3.0cm3に進行するまでの時間に基づく生存)に大した影響がなかった。PT−RAIT単独により、治療していない動物と比較して生存が改善したが、GEMとPT−RAITの併用レジメンにより、ほぼ10週まで生存中央値が増加した。血液毒性は、PT−RAITでは線量制限的でないが、ゲムシタビン療法の制限の1つであるので、これらの研究は、PT−RAITを、応答の増強の可能性を伴って、標準的なGEM療法に加えることができることを示唆している。ゲムシタビン+PT−RAITの顕著な相乗効果は驚くべきことであり、また予期しないものであった。
さらなる研究では、ゲムシタビン+PT−RAITの抗腫瘍効果増強に対する投与タイミングの影響を検討した。TF10でプレターゲッティングした0.25mCiの90Y−IMP−288の1日前または1日後に、単一の6mg用量のGEMを投与した(図示せず)。この研究により、GEMについて既によく知られていること、すなわち、放射性増感は、放射線照射の前に最も良く得られることが確認された。治療したマウスの生存パーセントは、PT−RAIT単独と、放射性標識ペプチドの22時間後に投与されたゲムシタビンとPT−RAITの併用との間の生存期間にほとんど差を示さなかった。しかしながら、PT−RAITの19時間前にゲムシタビンを投与することにより、生存が大幅に増加した(図示せず)。
CaPan1を担持する動物における、単一のPT−RAIT(0.25mCi)とセツキシマブ(週1回1mg腹腔内;7週間)またはセツキシマブ+GEM(週1回6mg×3)との併用によって、PT−RAITとGEM+セツキシマブの併用は、より良好な初期応答をもたらすが(図14)、単にセツキシマブのみをPT−RAITに加えることに伴う応答が、PT−RAIT+GEMと同じぐらいかまたはPT−RAIT+GEMよりも良好なので、有望である(図14)ことが示された。この研究での全生存は極めて良く、研究が終わる24週後に>2.0cm3まで進行した腫瘍は各群に2つしかなかったので、これらの結果は、PT−RAITに加えられた場合のセツキシマブの潜在的役割を示している。
実施例21.膵癌治療に対する分割プレターゲッティング放射免疫療法(PT−RAIT)の効果
本発明者らは、90Y−DOTA−ジ−HSGペプチド(IMP−288)とTF10による分割療法を評価した。皮下にCaPan1ヒト膵癌異種移植片0.32〜0.54cm3を担持するヌードマウスで、TF10と放射性標識IMP−288を用いた研究を行なった。治療のために、TF10でプレターゲッティングされる90Y−IMP−288を、[A]一度に(0週目に0.6mCi)または[B]分割して(0週目と1週目に0.3mCi)、[C]分割して(0週目と1週目と2週目に0.2mCi)、もしくは[D]分割して(0週目と1週目と4週目に0.2mCi)、投与した。
大部分のマウスで腫瘍退縮(>90%)が見られた([A]群、[B]群、[C]群、および[D]群において、それぞれ、9/10、10/10、9/10、および8/10)。[A]群において、マウスの50%における最大腫瘍退縮は、[B]群、[C]群、および[D]群の、それぞれ、6.1週、8.1週、および7.1週と比較して、3.7週に達した。いくつかの腫瘍は再増殖を示した。14週で、分割群(2×0.3mCi)において最良の治療応答が見られ、3×0.2mCi群の3/10や1×0.6mCi群の1/10と比較して、6/10のマウスに腫瘍が見られなかった(NT)。大きな体重減少は見られなかった。分割PT−RAITは、毒性を最小限に抑えて膵癌を治療する別の代替法を提供する。
実施例22.進行性膵癌(PC)における90Y−hPAM4放射免疫療法(RAIT)+放射性増感ゲムシタビン(GEM)治療
PCに極めて特異的なヒト化抗体である90Y−hPAM4は、進行性疾患を有する患者において一過性の活性を示し、GEMは、前臨床研究で、RAITを増強した。この研究では、未治療の、切除不能PCを有する患者における90Y−hPAM4+GEMの反復治療サイクルを評価した。進行するかまたは許容できない毒性が現れるまで、コホート単位で90Y線量を増量し、患者は4週サイクルを繰り返した(週1回、200mg/m2のGEM、90Y−hPAM4、週1回、2〜4週目)。応答評価には、CT、FDG−PET、およびCA19.9血清レベルを用いた。
1回目の2線量レベル(6.5および9.0mCi/m2の90Y−hPAM4×3)の8人の患者(女性3人/男性5人、56〜72歳)について、血液毒性は一過性のグレード1〜2であった。2人の患者はFDG SUVによる初回治療に応答し、CA19.9が減少し、CTで病変退縮が見られる。両患者は、それぞれ、9カ月および11カ月、合計3サイクルおよび4サイクルを経た現在、良好な一般状態のままであり、さらなる毒性が見られない。初回治療後にPETおよびCTで安定な応答が見られ、CA19.9レベルが低下している3人目の患者は、現在、2回目のサイクルを受けている。他の4人の患者では初期に疾患が進行していた。残りの患者は今なお評価中である。90Y−hPAM4+低用量ゲムシタビンによる分割RAITが、初回90Y線量レベルで治療活性を示し、4回の治療サイクルの後でも血液毒性が最小限であるので、線量増量を継続している。
実施例23.Mab−PAM4を用いた膵癌の早期検出およびインビトロ免疫アッセイ
PAM4抗体を用いて免疫組織化学研究を行なった。染色組織切片で得られた結果は、PAM4と正常な膵管、膵導管、および膵腺房組織の反応を示さなかった(図示せず)。対照的に、同じ組織試料に適用されるMA5抗体の使用により、正常な膵管および膵腺房組織のびまん性の陽性染色が示された(図示せず)。高分化または中分化膵腺癌を有する組織切片では、PAM4染色が陽性であり、大半は細胞質の染色であったが、細胞表面での増強が見られた。同じ組織切片中の正常膵組織は染色されなかった。
表11に、様々な分化段階の膵腺癌試料におけるPAM4 MAbを用いた免疫組織化学的解析の結果を示す。全体としては、全膵癌試料について87%の検出率が見られ、高分化膵癌に関しては100%の検出、および中分化膵癌に関してはほぼ90%の検出であった。
表12は、PAM4免疫組織化学的染色によって、PanIn−1AからPanIN−3、IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)、およびMCN(粘液性嚢胞腫瘍)までを含む、非常に高いパーセンテージの膵癌前駆病変も検出されたことを示す。全体としては、PAM4染色によって、全膵臓前駆病変89%が検出された。これらの結果は、PAM4抗体に基づく免疫検出が、インビトロ解析で膵癌と前駆病変のほぼ90%を検出することができることを示している。PAM4発現は、PanIN発症の最も早い時期に見られた。強い染色がIPMN試料とMCN試料で見られた(図示せず)。PAM4エピトープは、大部分の膵腺癌で高濃度(強いびまん性染色)に存在していた。PAM4は、PanIN−1、IPMN、およびMCNを含む、最も初期の膵癌前駆病変とのびまん性の、強い反応性を示したが、正常膵組織とは反応しなかった。総合すると、これらの結果は、PAM4抗体を用いた診断および/または検出が、極めて高い特異性で、最も初期の膵癌発症を検出することができることを示している。
血清試料中のPAM4抗原に対する酵素ベースの免疫アッセイを開発した。図15は、膵癌と正常組織および他の種類の癌に対するPAM4免疫アッセイを用いた示差診断の結果を示している。これらの結果により、膵癌(n=53)を、膵炎ならびに乳癌、卵巣癌、および結腸直腸癌、ならびにリンパ腫をはじめとする他の全ての標本(n=233)と比較して、77.4%の膵癌検出感度、94.3%の検出特異性が示された。図15のデータを表形式で示す。
表13のデータを用いてROC曲線(図示せず)を構築した。膵癌患者53人を含む、計283人の患者を検討し、膵癌患者の循環PAM4抗原の存在を他の全ての試料と比較すると、ROC曲線から、0.88±0.03(95%ci、0.84〜0.92)(P値<0.0001)のAUCが得られ、膵癌試料と非膵癌試料の識別に極めて有意な差が見られた。膵臓CAを他の腫瘍や正常組織と比較すると、PAM4ベースの血清アッセイによって、77%の感度と95%の特異性が示された。
健常患者、「初期」(ステージ1)膵癌、および全膵癌試料由来の血清試料中のPAM4抗原濃度の比較を行なった。これらの標本には、健常ボランティア由来の13の血清、ステージ1由来の12の血清、ステージ2由来の13の血清、およびステージ3/4(進行性)膵癌由来の25の血清が含まれていた。ROC曲線統計解析で決定される、8.8ユニット/mlのカットオフ値(赤線)を用いた。PAM4抗原濃度の頻度分布を図16に示す。この図は、「初期」ステージ1膵癌の92%が、膵癌の診断について、カットオフ値を超えていることを示している。PAM4ベースのアッセイのROC曲線を図17に示す。この図は、膵癌の検出におけるPAM4アッセイの81.6%の感度と84.6%の特異性を示している。
これらの結果から、PAM4抗体結合に基づく酵素免疫アッセイによって、膵癌患者血清中のPAM4反応性抗原を検出および定量することができることが確認される。この免疫アッセイは、膵癌に対する高い特異性と感度を示している。ステージ1疾患を有する患者の大部分は、PAM4免疫アッセイを用いて検出可能であった。
結論として、PAM4抗体を用いる免疫組織学的方法により、浸潤性膵癌、ならびにその前駆病変、PanIN、IPMN、およびMCNの約90%が同定された。ヒト患者血清中のPAM4抗原を定量するPAM4ベースの酵素免疫アッセイにより、初期膵癌の検出に対する高い感度と特異性が示された。膵癌に対するPAM4の特異性が高いので、ムチンバイオマーカーもイメージング剤や治療剤のインビボターゲッティングの標的としての役割を果たすことができる。「早期」膵癌の検出のための免疫PETイメージングは、膵癌をより効果的に治療することができる場合、膵癌の早期診断に有用である。好ましくは放射線増感剤と組み合わせた、ヒト化PAM4抗体構築物とともに、放射免疫療法を使用するのは、膵癌の治療に有用である。
実施例24.PEG化DNL構築物
特定の実施形態では、PEG化形態の抗体または免疫コンジュゲートを含む構築物を調製することが好ましい場合がある。このようなPEG化構築物はDNL技術によって調製し得る。
好ましい方法では、hPAM4 FabなどのPEG化されるエフェクター部分をDDD配列に連結し、DDDモジュールを作製する。望ましい分子サイズのPEG試薬を相補的なAD配列で誘導体化し、結果として得られるPEG−ADモジュールをDDDモジュールと組み合わせて、DDDとADの間で形成されるジスルフィド結合を介して2コピーのFabまたは他のエフェクター部分と部位特異的につながった1つのPEGからなるPEG化コンジュゲートを生じさせる。これらのPEG試薬は、メトキシ基(m−PEG)を用いて一方の末端でキャッピングし得、線状または分岐状であることができ、また以下の官能基、すなわち、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、オルト−ピリジルチオエステル(OPTE)、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、チアゾリジン−2−チオン、スクシニミジルカルボネート(SC)、マレイミドまたはオルト−ピリジルジスルフィド(OPPS)のうちの1つを含み得る。PEG化の対象となり得るエフェクター部分には、酵素、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、ペプチド、アプタマー、ヘモグロビン、抗体、および抗体断片がある。本方法は限定的なものではなく、開示された方法および組成物を用いて、多種多様な薬剤をPEG化し得る。様々な大きさで、かつ種々の反応性部分で誘導体化されたPEGを、以下でより詳細に論じるような商業的供給源から入手してもよい。
PEG−AD2モジュールの作製
IMP350:CGQIEYLAKQIVDNAIQQAGC(SS−tbu)−NH2(配列番号41)
AD2の配列を組み入れたIMP350を、ペプチド合成機でFmoc法を用いて、Sieber Amide樹脂を用いて0.1mmolスケールで作製した。C末端から順に、使用された保護アミノ酸は、Fmoc−Cys(t−Buthio)−OH、Fmoc−Gly−OH、Fmoc−Ala−OH、Fmoc−Gln(Trt)−OH、Fmoc−Gln(Trt)−OH、Fmoc−Ile−OH、Fmoc−Ala−OH、Fmoc−Asn(Trt)−OH、Fmoc−Asp(OBut)−OH、Fmoc−Val−OH、Fmoc−Ile−OH、Fmoc−Gln(Trt)−OH、Fmoc−Lys(Boc)−OH、Fmoc−Ala−OH、Fmoc−Leu−OH、Fmoc−Tyr(But)−OH、Fmoc−Glu(OBut)−OH、Fmoc−Ile−OH、Fmoc−Gln(Trt)−OH、Fmoc−Gly−OH、およびFmoc−Cys(Trt)−OHであった。ペプチドを樹脂から切断し、逆相(RP)−HPLCで精製した。
PEG20−IMP350の合成
IMP350(0.0104g)を、7mLの1M Tris緩衝液(pH7.81)中で、0.1022gのmPEG−OPTE(20kDa、NEKTAR Therapeutics)と混合した。次に、アセトニトリル(1mL)を添加して、懸濁された材料をいくぶん溶解した。この反応液を室温で3時間撹拌し、次に、0.0549gのシステインとともに0.0527gのTCEPを添加した。この反応混合物を1.5時間撹拌し、次に、水中の20%エタノールで平衡化したPD−10脱塩カラムで精製した。この試料を溶出させ、凍結させ、凍結乾燥させて、0.0924gの粗PEG20−IMP350(MALDIでMH+ 23508)を得た。
IMP362(PEG20−IMP360)の合成
IMP360:CGQIEYLAKQIVDNAIQQAGC(SS−tbu)G−EDANS(配列番号42)MH+ 2660
AD2配列を組み入れたIMP360を、ペプチド合成機でFmoc法を用いて、Fmoc−Gly−EDANS樹脂を用いて0.1mmolスケールで合成した。0.23gのFmoc−Gly−OH、0.29gのHATU、26μLのDIEA、7.5mLのDMF、および0.57gのEDANS樹脂(NOVABIOCHEM(登録商標))を用いて、Fmoc−Gly−OHを樹脂に手作業で添加した。これらの試薬を混合し、樹脂に添加した。反応液を室温で2.5時間混合し、樹脂をDMFおよびIPAで洗浄して、余分な試薬を除去した。C末端から順に、使用された保護アミノ酸は、Fmoc−Cys(t−Buthio)−OH、Fmoc−Gly−OH、Fmoc−Ala−OH、Fmoc−Gln(Trt)−OH、Fmoc−Gln(Trt)−OH、Fmoc−Ile−OH、Fmoc−Ala−OH、Fmoc−Asn(Trt)−OH、Fmoc−Asp(OBut)−OH、Fmoc−Val−OH、Fmoc−Ile−OH、Fmoc−Gln(Trt)−OH、Fmoc−Lys(Boc)−OH、Fmoc−Ala−OH、Fmoc−Leu−OH、Fmoc−Tyr(But)−OH、Fmoc−Glu(OBut)−OH、Fmoc−Ile−OH、Fmoc−Gln(Trt)−OH、Fmoc−Gly−OH、およびFmoc−Cys(Trt)−OHであった。ペプチドを樹脂から切断し、RP−HPLCで精製した。
IMP362の合成のために、IMP360(0.0115g)を、7mLの1M tris緩衝液(pH7.81)中で0.1272gのmPEG−OPTE(20kDa、NEKTAR(登録商標)Therapeutics)と混合した。次に、アセトニトリル(1mL)を添加して、懸濁された材料をいくぶん溶解した。この反応液を室温で4時間撹拌し、次に、0.0431gのシステインとともに0.0410gのTCEPを添加した。この反応混合物を1時間撹拌し、水中の20%エタノールで平衡化したPD−10脱塩カラムで精製した。この試料を溶出させ、凍結させ、凍結乾燥させて、0.1471gの粗IMP362(MH+ 23713)を得た。
IMP413(PEG30−MP360)の合成
IMP413の合成のために、IMP360(0.0103g)を、7mLの1M tris緩衝液(pH7.81)中で0.1601gのmPEG−OPTE(30kDa、NEKTAR(登録商標)Therapeutics)と混合した。次に、アセトニトリル(1mL)を添加して、懸濁された材料をいくぶん溶解した。この反応液を室温で4.5時間撹拌し、次に、0.0473gのシステインとともに0.0423gのTCEPを添加した。この反応混合物を2時間撹拌した後、2日間透析した。透析した材料を凍結させ、凍結乾燥させて、0.1552gの粗IMP413(MH+ 34499)を得た。
IMP421の合成
IMP421 Ac−C−PEG3−C(S−tBu)GQIEYLAKQIVDNAIQQAGC(S−tBU)G−NH2(配列番号43)
以下のアミノ酸を以下に示す順序で樹脂に添加することによって、ペプチドIMP421(MH+ 2891)をNOVASYN(登録商標)TGR樹脂(487.6mg、0.112mmol)上に作製した:Fmoc−Gly−OH、Fmoc−Cys(t−Buthio)−OH、Fmoc−Gly−OH、Fmoc−Ala−OH、Fmoc−Gln(Trt)−OH、Fmoc−Gln(Trt)−OH、Fmoc−Ile−OH、Fmoc−Ala−OH、Fmoc−Asn(Trt)−OH、Fmoc−Asp(OBut)−OH、Fmoc−Val−OH、Fmoc−Ile−OH、Fmoc−Gln(Trt)−OH、Fmoc−Lys(Boc)−OH、Fmoc−Ala−OH、Fmoc−Leu−OH、Fmoc−Tyr(But)−OH、Fmoc−Glu(OBut)−OH、Fmoc−Ile−OH、Fmoc−Gln(Trt)−OH、Fmoc−Gly−OH、Fmoc−Cys(t−Buthio)−OH、Fmoc−NH−PEG3−COOH、Fmoc−Cys(Trt)−OH。N末端アミノ酸はアセチル誘導体として保護された。次に、ペプチドを樹脂から切断し、RP−HPLCで精製して、32.7mgの白色固体を生じた。
IMP457の合成
AD2の配列を組み入れたIMP421(配列番号43)を、標準的な化学的手段で合成した。15.2mg(5.26μmol)のIMP421(F.W.2890.50)と274.5mg(6.86μmol)のmPEG2−MAL−40Kのアセトニトリル溶液1mLに、1M Tris(pH7.8) 7mLを添加し、室温で3時間反応させておいた。余分なmPEG2−MAL−40Kを49.4mgのL−システインでクエンチした後、59.1mgのTCEPを用いて1時間かけてS−S−tBu脱保護を行なった。この反応混合物を、2つの3〜12mLの限度容量の10K SLIDE−A−LYZER透析カセット(各カセットに4ml)を用いて、5Lの5mM酢酸アンモニウム(pH5.0)中に2〜8℃で一晩透析した。次の日、5mM酢酸アンモニウム(pH5.0)の5Lの緩衝液交換をさらに3回行ない、各透析を少なくとも2.5時間続けた。精製産物(19.4mL)を2つの20mLシンチレーションバイアルに移し、凍結し、凍結乾燥して、246.7mgの白色固体が得られた。MALDI−TOFにより、mPEG2−MAL−40K 42,982およびIMP−457 45,500という結果が得られた。
実施例25.DNLによるPEG化hPAM4の作製
20kDa PEGに結合した2コピーのhPAM4 Fabを有するDNL構造物を調製する。還元および凍結乾燥したIMP362を、250mM イミダゾール、0.02% Tween 20、150mM NaCl、1mM EDTA、50mM NaH2PO4、pH7.5中のhPAM4 Fab−DDD2に10倍モル過剰で添加することにより、DNL反応を行なう。室温暗所で6時間後、反応混合物を、暗所4℃で、CMローディング緩衝液(150mM NaCl、20mM NaAc、pH4.5)に対して透析する。この溶液を、CMローディング緩衝液で予め平衡化した1mL Hi−Trap CM−FFカラム(AMERSHAM(登録商標))に充填する。試料を充填した後、カラムをCMローディング緩衝液でベースラインまで洗浄し、続いて、15mLの0.25M NaCl、20mM NaAc、pH4.5で洗浄する。PEG化hPAM4を12.5mLの0.5M NaCl、20mM NaAc、pH4.5で溶出させる。
コンジュゲーション過程を、クマシーブルー染色を用いてSDS−PAGEで解析する。非還元条件では、クマシーブルー染色したゲルによって、未結合画分または0.25M NaCl洗浄画分には存在しないが、0.5M NaCl画分にははっきりと表れる、反応混合物中の主要バンドの存在が明らかになる。蛍光イメージングは、IMP362上のEDANSタグを検出するために使用されるが、これにより、バンドがIMP362ならびに反応混合物および未結合画分中の過剰なIMP362の存在を含むことが示される。このDNL反応によって、IMP362とhPAM4 Fab二量体の部位特異的でかつ共有結合的なコンジュゲーションが生じる。ジスルフィド結合を破壊する還元条件下では、DNL構造物の構成要素が分離する。(hPAM4 Fab)2−PEG構築物の計算MWは、MALDI TOFで測定されるものと一致する。全体として、DNL反応により、陽イオン交換クロマトグラフィーで精製した後、>90%純粋となる均一な産物がほぼ定量的に生じる。
還元および凍結乾燥したIMP457を、250mMイミダゾール、0.02%Tween 20、150mM NaCl、1mM EDTA、50mM NaH2PO4、pH7.5中のhPAM4 Fab−DDD2に10倍モル過剰で添加することにより、別のDNL反応を行なう。室温で60時間後、1mMの酸化グルタチオンを反応混合物に添加し、次に、これをさらに2時間静置する。この混合物をCMローディング緩衝液(150mM NaCl、20mM NaAc、pH4.5)を用いて1:20に希釈し、酢酸でpH4.5に滴定する。この溶液を、CMローディング緩衝液で予め平衡化した1mL Hi−Trap CM−FFカラム(AMERSHAM(登録商標))に充填する。試料を充填した後、カラムをCMローディング緩衝液でベースラインまで洗浄し、続いて、15mLの0.25M NaCl、20mM NaAc、pH4.5で洗浄する。PEG化産物を20mLの0.5M NaCl、20mM NaAc、pH4.5で溶出させる。DNL構築物を2mLに濃縮し、0.4M PBS、pH7.4中に透析濾過する。最終的なPEG化hPAM4 Fab2構築物は、SDS−PAGEで測定した場合、約90%純度である。
30kDa PEGに結合した2コピーのhPAM4 Fabを有するDNL構築物を、IMP362の代わりにIMP413を用いて、すぐ上で記載したように調製する。PEG化hPAM4 Fab2 DNL構築物を上記のように精製し、約90%純度で得る。PEG化DNL構築物は、PEG化されていない形態のhPAM4について上で記載したように、治療方法に使用してもよい。
実施例26.インターフェロン(IFN)−α2bをベースにしたDDDモジュールの作製
IFN−α2bのcDNA配列をPCRで増幅し、以下の特徴、すなわち、XbaI−−−シグナルペプチド−−−IFNα2b−−−6 His−−−BamHI(6 Hisは配列番号59として開示されている)を含む配列(配列中、XbaIおよびBamHIは制限部位であり、シグナルペプチドはIFN−α2b由来のものであり、6 Hisはヘキサヒスチジンタグ(配列番号59)である)が得られた。結果として生じる分泌タンパク質は、そのC末端で配列番号44からなるポリペプチドに融合したIFN−α2bからなる。
KSHHHHHHGSGGGGSGGGCGHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号44)
全長ヒトIFNα2b cDNAクローン(INVITROGEN(登録商標)Ultimate ORFヒトクローン カタログ番号HORF01 クローン番号IOH35221)を鋳型とし、以下のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いてPCR増幅を行なった。
IFNA2 XbaI 左
5'−TCTAGACACAGGACCTCATCATGGCCTTGACCTTTGCTTTACTGG−3'(配列番号45)
IFNA2 BamHI 右
5'−GGATCCATGATGGTGATGATGGTGTGACTTTTCCTTACTTCTTAAACTTTCTTGC−3'(配列番号46)
PCR増幅物をPGEMT(登録商標)ベクター(PROMEGA(登録商標))にクローニングした。IFN−α2bとのライゲーションのために、XbaIおよびBamHI制限エンドヌクレアーゼで消化することによって、DDD2−pdHL2哺乳動物発現ベクターを調製した。IFN−α2b増幅物を、XbaIおよびBamHIを用いてpGEMTから切り出し、DDD2−pdHL2ベクターに連結して、発現ベクターIFN−α2b−DDD2−pdHL2を作製した。
SalI酵素で消化することによって、IFN−α2b−DDD2−pdHL2を線状化し、エレクトロポレーションでSp/EEE骨髄腫細胞に安定的にトランスフェクトした(例えば、米国特許第7,537,930号参照)。2つのクローンが検出可能なレベルのIFN−α2bを有することがELISAで分かった。2つのクローンのうちの1つ(95と表す)を、生産性を大幅に減少させることなく、無血清培地中での増殖に適合させた。次に、このクローンを、0.1〜0.8μMの増加するメトトレキサート(MTX)濃度で5週間にわたって増幅させた。この段階で、クローンを限界希釈によりサブクローニングし、最も生産性の高いサブクローン(95−5)を拡大した。市販のrIFN−α2b(CHEMICON(登録商標)IF007、ロット06008039084)を標準品として用いて、振盪フラスコで増殖させた95−5の生産性が、2.5mg/Lであると推定した。
クローン95−5を、0.8μM MTXを含む計20Lの無血清Hybridoma SFMを含む34個のローラーボトルに拡大し、最終培養物に到達させた。この上清液を遠心分離で清澄化し、濾過(0.2μM)した。この濾過物を1×結合緩衝液(10mMイミダゾール、0.5M NaCl、50mM NaH2PO4、pH7.5)中に透析濾過し、固定化金属親和性クロマトグラフィー(IMAC)による精製に備えて310mLに濃縮した。この濃縮物を30mL Ni−NTAカラムに充填し、これを500mLの1×結合緩衝液中の0.02%Tween 20で洗浄し、その後、290mLの30mMイミダゾール、0.02%Tween 20、0.5M NaCl、50mM NaH2PO4、pH7.5で洗浄した。この産物を110mLの250mMイミダゾール、0.02%Tween20、150mM NaCl、50mM NaH2PO4、pH7.5で溶出させた。約6mgのIFNα2b−DDD2が精製された。
IFN−α2b−DDD2の純度を還元条件下のSDS−PAGEで評価した(図示せず)。IFN−α2b−DDD2は最も強く染色されたバンドであり、総タンパク質の約50%を占めた(図示せず)。この産物は、分子量約26kDaのダブレットとして分離したが、これは、IFN−α2b−DDD2−SPの計算分子量(26kDa)と一致している。分子量34kDaの1つの主要な汚染物質と多くの微かな汚染バンドがあった(図示せず)。
実施例27.DNLによるhPAM4 Fab−(IFN−α2b)2の作製
C−H−AD2−IgG−pdHL2発現ベクターの作製
pdHL2哺乳動物発現ベクターは、多くの組換えIgGの発現を仲介するために使用されている。任意のIgG−pdHL2ベクターをC−H−AD2−IgG−pdHL2ベクターに変換しやすくするために、プラスミドシャトルベクターを産生した。Fc(CH2ドメインおよびCH3ドメイン)の遺伝子を、pdHL2ベクターを鋳型とし、オリゴヌクレオチドFc BglII左およびFc Bam−EcoRI右をプライマーとして用いて増幅した。
Fc BglII 左
5'−AGATCTGGCGCACCTGAACTCCTG−3'(配列番号47)
Fc Bam−EcoRI 右
5'−GAATTCGGATCCTTTACCCGGAGACAGGGAGAG−3'(配列番号48)
この増幅物をPGEMT(登録商標)PCRクローニングベクターにクローニングした。Fcインサート断片をPGEMT(登録商標)から切り出し、AD2−pdHL2ベクターと連結して、シャトルベクターFc−AD2−pdHL2を作製した。
hPAM4 IgG−AD2の作製
任意のIgG−pdHL2発現ベクターをC−H−AD2−IgG−pdHL2発現ベクターに変換するために、861bpのBsrGI/NdeI制限断片を前者から切り出し、Fc−AD2−pdHL2ベクターから切り出される952bpのBsrGI/NdeI制限断片と置き換える。BsrGIはCH3ドメイン中で切断し、NdeIは発現カセットの下流(3’)で切断する。この方法を用いて、hPAM4 IgG−AD2タンパク質を作製する。
hPAM4 IgG−(IFN−α2b)2構築物の作製
還元および凍結乾燥したhPAM4 IgG−AD2を、250mM イミダゾール、0.02% Tween 20、150mM NaCl、1mM EDTA、50mM NaH2PO4、pH7.5中のIFN−α2b−DDD2に添加することにより、DNL反応を行なう。室温暗所で6時間後、反応混合物を、暗所4℃で、CMローディング緩衝液(150mM NaCl、20mM NaAc、pH4.5)に対して透析する。この溶液を、CMローディング緩衝液で予め平衡化した1mL Hi−Trap CM−FFカラム(AMERSHAM(登録商標))に充填する。試料を充填した後、カラムをCMローディング緩衝液でベースラインまで洗浄し、続いて、15mLの0.25M NaCl、20mM NaAc、pH4.5で洗浄する。産物を12.5mLの0.5M NaCl、20mM NaAc、pH4.5で溶出させる。このDNL反応によって、hPAM4 IgGとIFN−α2b二量体の部位特異的でかつ共有結合的なコンジュゲーションが生じる。IgG部分とIFN−α2b部分は両方とも、DNL構築物中でそれらのそれぞれの生理活性を保持している。膵癌またはPAM4抗原を発現する他の癌への標的送達のために、この技術を用いて、任意のサイトカインまたは他の生理活性タンパク質もしくはペプチドをhPAM4に付加し得る。
実施例28.AD配列変異体およびDDD配列変異体
特定の好ましい実施形態では、DNL複合体に組み込まれたAD配列とDDD配列は、上記のように、AD2(配列番号36)とDDD2(配列番号34)のアミノ酸配列を含む。しかしながら、代わりの実施形態では、AD部分および/またはDDD部分の配列変異体をサイトカイン−MAb DNL複合体の構築で利用してもよい。ADドメインとDDDドメインの構造−機能関係は研究の主題となっている(例えば、Burns−Hamuroら,2005,Protein Sci 14:2982−92;Carrら,2001,J Biol Chem 276:17332−38;Altoら,2003,Proc Natl Acad Sci USA 100:4445−50;Hundsruckerら,2006,Biochem J 396:297−306;Stokkaら,2006,Biochem J 400:493−99;Goldら,2006,Mol Cell 24:383−95;Kindermanら,2006,Mol Cell 24:397−408を参照されたい)。
例えば、Kindermanら(2006)は、AD−DDD結合相互作用の結晶構造を検討し、ヒトDDD配列は、以下の配列番号33中で下線が付された、二量体形成またはAKAP結合のいずれかに重要ないくつかの保存されたアミノ酸残基を含むと結論付けた(Kindermanら,2006の図1参照)。当業者であれば、DDD配列の配列変異体を設計する際に、望ましくは下線が付された残基をどれも変化させず、その一方で、二量体化とAKAP結合にあまり重要でない残基に保存的アミノ酸置換を行ない得ることを理解するであろう。
タンパク質キナーゼA由来のヒトDDD配列
SHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号33)
Altoら(2003)は、様々なAKAPタンパク質のAD配列のバイオインフォマティック解析を行ない、DDDに対する0.4nMという結合定数を有する、AKAP−IS(配列番号35)と呼ばれるRII選択的AD配列を設計した。AKAP−IS配列は、PKAに対するAKAP結合のペプチド拮抗薬として設計された。置換するとDDDに対する結合が低下する傾向にあるAKAP−IS配列中の残基に、以下の配列番号35中で下線を付す。
AKAP−IS配列
QIEYLAKQIVDNAIQQA(配列番号35)
同様に、Gold(2006)は、結晶学とペプチドスクリーニングを利用して、RIアイソフォームと比較してPKAのRIIアイソフォームの場合に5桁高い選択性を示す、スーパーAKAP−IS配列(配列番号49)を開発した。下線が付された残基は、RIIαのDDD部分に対する結合を増大させる、AKAP−IS配列と比べた、アミノ酸置換の位置を指す。この配列において、N末端のQ残基は残基番号4と付番され、C末端のA残基は残基番号20と付番されている。RIIαに対する親和性に影響を与えるために置換することができる残基は、残基8、11、15、16、18、19、および20であった(Goldら,2006)。特定の代わりの実施形態では、サイトカイン−MAb DNL構築物を調製するために、スーパーAKAP−IS配列をAKAP−IS AD部分配列と置き換え得ることが企図される。AKAP−IS AD配列と置き換え得る他の代わりの配列を配列番号50〜52に示す。AKAP−IS配列と比べた置換に下線を付す。配列番号49に示すAKAP−IS配列に関して、AD部分は、追加のN末端残基システインおよびグリシンならびにC末端残基グリシンおよびシステインも含み得ることが予想される。
スーパーAKAP−IS
QIEYVAKQIVDYAIHQA(配列番号49)
代わりのAKAP配列
QIEYKAKQIVDHAIHQA(配列番号50)
QIEYHAKQIVDHAIHQA(配列番号51)
QIEYVAKQIVDHAIHQA(配列番号52)
Stokkaら(2006)は、配列番号53〜55に示す、PKAに対するAKAP結合のペプチド競合物も開発した。これらのペプチド拮抗薬をHt31(配列番号53)、RIAD(配列番号54)、およびPV−38(配列番号55)と表した。Ht−31ペプチドは、PKAのRIIアイソフォームに対するより大きい親和性を示したが、RIADとPV−38はRIに対するより高い親和性を示した。
Ht31
DLIEEAASRIVDAVIEQVKAAGAY(配列番号53)
RIAD
LEQYANQLADQIIKEATE(配列番号54)
PV−38
FEELAWKIAKMIWSDVFQQC(配列番号55)
Hundsruckerら(2006)は、RII形態のPKAのDDDに対する結合定数が0.4nM程度でしかない、PKAに対するAKAP結合のさらに他のペプチド競合物を開発した。様々なAKAP拮抗性ペプチドの配列は、(参照により本明細書に組み込まれる)Hundsruckerらの表1に示されている。AKAP IS配列(配列番号35)に関して下線を付すことにより、様々なAKAPタンパク質のADドメイン間で高度に保存されている残基を以下に示す。これらの残基はAltoら(2003)により観察されたものと同じであるが、C末端にアラニン残基が付加されている(参照により本明細書に組み込まれる、Hundsruckerら(2006)の図4を参照されたい)。RII DDD配列に特に高い親和性を有するペプチド拮抗薬の配列を配列番号56〜58に示す。
AKAP−IS
QIEYLAKQIVDNAIQQA(配列番号35)
AKAP7δ−wt−pep
PEDAELVRLSKRLVENAVLKAVQQY(配列番号56)
AKAP7δ−L304T−pep
PEDAELVRTSKRLVENAVLKAVQQY(配列番号57)
AKAP7δ−L308D−pep
PEDAELVRLSKRDVENAVLKAVQQY(配列番号58)
Carrら(2001)は、ヒトおよび非ヒトタンパク質由来の様々なAKAP結合DDD配列間の配列相同性の程度を検討し、様々なDDD部分の間で最も高度に保存されていると思われるDDD配列中の残基を同定した。配列番号33のヒトPKA RIIα DDD配列に関して下線を付すことにより、これらを以下に示す。特に保存されている残基をイタリック体でさらに示す。これらの残基は、Kindermanら(2006)によりAKAPタンパク質への結合に重要であると示唆された残基と重複するが、同一ではない。
SHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号33)
当業者であれば、様々なタンパク質由来のDDD配列とAD配列で高度に保存されているアミノ酸残基は、通常、アミノ酸置換を行なうときに変わらないままにしておくことが望ましい残基である可能性があるが、あまり高度に保存されていない残基は、本明細書に記載されるAD配列および/またはDDD配列の配列変異体を産生するためにより容易に変化させ得ることを理解するであろう。
当業者であれば、DNL構築物の抗体部分またはリンカー部分中のこれらのおよび他のアミノ酸置換を利用して、得られるDNL構築物の治療特性および/または薬物動態特性を強化し得ることを理解するであろう。
実施例29.ヒト血清中のPAM4抗原のインビトロ検出
特定の実施形態では、血液、血漿、または血清試料などの、非侵襲的な技術によって得ることができる試料のインビトロ解析により、対象のPAM4抗原の存在を検出することおよび/または対象の膵癌の存在を診断することが好ましい。このようなエクスビボ解析は、例えば、ある個人が特定の場所に膵腫瘍を有すると考えるアプリオリな理由がないスクリーニング法において好ましいものであり得る。
研究は当初、解析前に何年間も凍結して保存されていた患者血清試料を用いて行なわれた(Goldら,J.Clin Oncol 2006,24:252−58)。インビトロ酵素免疫アッセイは、モノクローナル抗体PAM4をキャプチャー試薬として、およびポリクローナル抗ムチン抗体をプローブとして用いて確立された。患者血清を、急性膵炎および慢性膵炎の健常成人患者と、膵癌およびその他の形態の癌を有する患者とから入手し、PAM4抗原について測定した。
方法
試薬−無胸腺ヌードマウスの異種移植片として増殖したヒト膵癌である、CaPan1からヒト膵臓ムチン調製物を単離した。簡潔に述べると、組織1gを0.5M塩化ナトリウムを含む0.1M重炭酸アンモニウム10mL中でホモジナイズした。次に、試料を遠心分離して上清を得、これをSEPHAROSE(登録商標)−4B−CLカラムで分画し、ボイド容量物質をハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーにかけた。非吸着画分を脱イオン水に対して大規模に透析した後、凍結乾燥させた。1mg/mL溶液を、0.15M塩化ナトリウムを含む0.01Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)(リン酸緩衝化生理食塩水[PBS])中に調製し、免疫アッセイ標準のストック溶液として用いた。ポリクローナル抗ムチン抗血清を、以前に記載されたように、ウサギの免疫化により調製した(Goldら,Cancer Res 43:235−38,1983)。IgG画分を精製し、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)と分子ふるい高速液体クロマトグラフィーとで純度について評価した。CA19−9の定量用のキットは、PANOMICS(登録商標)Inc(Redwood City,CA)から購入した。
酵素免疫アッセイ−血清は、ガーデンステート癌センター(Belleville,NJ)により実施される、施設内治験審査委員会が承認した治験に登録された患者から、およびコーポレイティブ・ヒューマン・ティシュー・ネットワーク(Cooperative Human Tissue Network)(米国国立癌研究所[NCI],米国国立衛生研究所,Bethesda,MD)の東部部門(Eastern Division)から得た。免疫アッセイを行なうために、96ウェルポリビニルプレートをPBS中20μg/mLのPAM4抗体100μLでコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。翌朝、キャプチャー抗体をプレートから除去した。次に、カゼイン−ナトリウム塩の1%(重量/容量[w/v])PBS溶液200μLを添加することによってウェルをブロッキングし、4℃で一晩インキュベートした。カゼインをウェルから除去し、プレートを、0.05%(容量/容量[v/v])Tween−20を含むPBS 250μLで5回洗浄した。標準、または未知標本を、1%(w/v)カゼインを含むPBSに1:2で希釈し、100μLを適当なウェルに添加し、プレートを37℃で1.5時間インキュベートした。この時点で、プレートを、既に述べたように、PBS−Tween−20で5回洗浄した。0.1%(w/v)カゼインを含むPBS中で5μg/mLに希釈した、ポリクローナルウサギ抗ムチン抗体を各ウェルに添加し、プレートを37℃で1時間インキュベートした。次に、ポリクローナル抗体を、本明細書に記載のウェルから洗浄し、0.1%(w/v)カゼインを含むPBS中で1:1000希釈したペルオキシダーゼ標識ロバ抗ウサギIgGをウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。既に記載したようにプレートを洗浄した後、オルト−フェニレンジアミン(0.8mg/mL)と過酸化水素(0.1M Tris−HCl[pH8.0]中0.3%v/v)からなる溶液100μLをウェルに添加し、プレートを室温暗所で30分間インキュベートした。4.0N硫酸25μLを添加して反応を停止させ、SPECTRA−MAX(登録商標)250分光光度計を用いて490nmの波長で光学密度を読み取った。CA19−9測定は、製造元の手順に従って行なった。標準曲線を作成し、未知試料の濃度を決定するために、回帰分析を行なった。MED−CALC(登録商標)統計ソフトウェアパッケージ(バージョン7.5;MED−CALC(登録商標),Mariakerke Belgium)を用いて受信者操作特性(ROC)曲線を作成した。
結果
PAM4ベースの免疫アッセイの開発および特徴解析−本発明者らは、異種移植したCaPan1ヒト膵腫瘍から精製したムチンの初期参照標準に基づく任意ユニット/mLで結果を報告することを選んだ。免疫アッセイの検出下限は1.0ユニット/mLであり、100ユニット/mLを上回るムチン濃度で飽和が生じた。線形範囲は、抗原1.5ユニット/mL〜25ユニット/mLであると決定された(図示せず)。アッセイ(n=5)間の変動係数(CV)を、20ユニット/mL(CV=8.0%)と8ユニット/mL(CV=3.8%)の参照標準について算出した。平均回収は、20ユニット/mL標準と8ユニット/mL標準について、それぞれ17.5±2.8と7.1±1.9であった。
患者標本中のPAM4反応性ムチンのレベル−膵癌患者53人を含む計283人の患者由来の血清をPAM4抗原の存在について検討した。様々な疾患群についての血清ムチン濃度の頻度分布を測定した(図16)。受信者操作特性(ROC)曲線を計算し(図示せず)、曲線下面積(AUC)が0.88±0.03(95%CI、0.84〜0.92)、P<0.0001(膵癌と非膵癌標本の識別についての非常に有意な差)であると決定した(実施例23参照)。カットオフ値10.2ユニット/mLでは、感度および特異性は、それぞれ77%および95%と算出され(実施例23)、健常群、良性群、および非膵癌群と比較した場合、陽性診断尤度比(DLR)は13.7であった。
表13に示すデータにより、非膵癌症例の圧倒的大部分が後期疾患であるにもかかわらず、膵癌群の中央値と平均値は、他の全ての群よりも10倍を超えて大きいことが示された。膵癌患者53人のうち、41人(77%)が、カットオフ値10.2ユニット/mLで陽性であった。この同じカットオフ値で、健常標本が陽性であることはなく、膵炎患者87人のうちの4人(5%)しか陽性でなかった。ROC曲線解析から、膵癌と正常患者群および膵炎患者群の識別に有意差のある高い特異性が示された(図示せず)。
PAM4免疫アッセイとCA19.9免疫アッセイの比較−特定の試料の容量が足りなかったので、53個の膵癌標本のうち、PAM4反応性ムチンとCA19−9の両方についてアッセイできたものは41個しかなかった。これらのうち、24個(59%)は(カットオフ35ユニット/mLで)CA19−9陽性とみなされた。PAM4免疫アッセイの場合と同様に、健常標本がCA19−9陽性であることはなかった。しかしながら、87個の膵炎試料のうち、CA19−9は37%で陽性であった(図示せず)。膵癌血清標本と膵炎血清標本の識別についてのROC解析から、CA19−9検査について、AUC 0.67±0.05(95%CI、0.58〜0.75)、特異性63%、+DLR 1.6であることが示された(図示せず)。この同じ膵癌血清と膵炎血清のサブセット中のPAM4反応性ムチンの統計解析は、先に論じた群解析とあまり変わらず、このサブセットの感度はわずかに低下した(71%)が、+DLR(15.4)と同様に、特異性は高い(96%)ままであった(図示せず)。PAM4値とCA19−9値の間に相関はなかった。4つのPAM4陽性膵炎標本のうちの2つもCA19−9陽性であった。直接的なROC曲線の一対比較から統計的に有意な差(P<0.003)が得られ、PAM4免疫アッセイにより、膵癌患者と膵炎患者の識別に対する優れた感度と特異性が示された(図示せず)。
−80℃で凍結されていた血清試料および解析前に何年も凍結されていた血清試料で得られた結果は、当初、より新鮮な血清試料で再現性がなかった。膵癌と分かっている個人から得られた新鮮な血清試料、または膵癌ムチンを添加した新鮮な血清試料に対して行なわれた、PAM4抗体を用いる免疫アッセイによって、偽陰性の結果が決まって得られた。解凍後、凍結試料または保存試料は、通常、脂質成分と水性成分に分離することが観察された。脂質成分を遠心分離で除去した後、残りの水性成分に対してPAM4免疫アッセイを行なった。より新鮮な血清試料を用いた初期の研究では、血清が分離することはなく、免疫アッセイを全血清に対して行なった。
凍結と長期保存の効果を再現するために、より新鮮な血清試料を有機相抽出に供して、血清脂質や他の疎水性成分を除去した。相抽出はブタノールを用いて行なわれたが、当業者であれば、この技術はそのように限定されるものではなく、当該技術分野で公知の代わりの有機溶媒を用いて行ない得ることを理解するであろう。当該技術分野で公知の例示的な有機溶媒としては、水と混ざらない他のアルコール、クロロホルム、ヘキサン、ベンゼン、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、およびエーテルが挙げられる。
血清試料の有機相抽出行なうために、300μLの血清を1.5mL微小遠心チューブに入れ、次に、300μLのn−ブタノールを添加し、チューブをしっかりと閉じて、5分の抽出期間中、数回激しく撹拌した。抽出の最後に、チューブを開け、300μLのクロロホルムを添加した。チューブをしっかりと閉じ、チューブを激しく撹拌した後、卓上遠心分離機で、高速で5分間回転させた。チューブを開け、200μLの上部の水相をきれいなチューブに移した。等量の免疫アッセイ希釈液(2%カゼイン)を添加し(未知血清の1:2希釈)、上記の免疫アッセイプロトコルでの抗原として用いた。有機相抽出を用いて、上記の長期凍結や長期保存に供した試料で見られた結果に相当するPAM4抗原検出と膵癌診断の結果を得た(図示せず)。
新鮮な血清試料で見られたPAM4ベースの免疫アッセイへの有機成分の妨害は、免疫アッセイの前に通常は有機溶媒抽出で処理される、ホルマリン固定パラフィン包埋組織切片に対するPAM4免疫組織学では観察されなかった。妨害成分は、血清への分布に限定されているようであり、固形膵癌内腫瘍に対するPAM4抗体結合を妨害することは観察されていない。
実施例30.PAM4に対する交差遮断抗体の調製およびアッセイ
異種移植されたRIP1 ヒト膵癌の腫瘍をヌードマウスで増殖させ、摘出する。ヒト膵癌ムチンをGoldら(Int J Cancer 1994,15:204−10)に従って抽出し、標準的なプロトコル(Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,第5章,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY.)に従ってマウスを免疫化するのに用いる。抗体産生ハイブリドーマ細胞を免疫化マウスから調製し、ヒト膵癌ムチン抽出物に対する結合についてスクリーニングする。陽性クローンを拡大し、モノクローナル抗体を、実施例1に記載したような競合的結合アッセイを用いて、cPAM4に対する交差遮断活性について試験する。cPAM4に対する交差遮断抗体をヒト膵癌ムチンに対する結合の競合によって同定する。
本発明の生成物、組成物、方法、およびプロセスに対して様々な修正や変更を行なうことができることが当業者には明白であろう。したがって、そのような修正や変更が、添付の特許請求の範囲やその等価物の範囲内に収まるならば、本発明はそれらを含むことが意図される。