JP5913982B2 - 抗腫瘍活性を有するノナペプチド - Google Patents

抗腫瘍活性を有するノナペプチド Download PDF

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Description

本発明は、特に抗腫瘍剤としての、そしてまた、腫瘍ワクチンを含むワクチンのアジュバントとしての、ペプチドまたはペプチド様分子および治療におけるその使用に関する。
ペプチドおよびその誘導体は、治療上興味深い分子として長い間認識されてきた。多種多様な有機体は、自身の宿主防衛メカニズムの一部としてペプチドを用いている。抗微生物ペプチドは、細菌から哺乳動物までの多様な種から単離されている。一般的に、これらペプチドは、正味の正電荷を有し、かつ、細菌の細胞膜におけるリン脂質二重層の外側と相互作用する両親媒性のα−へリックス構造またはβ−シート構造を形成する傾向がある。多くの場合、抗菌性の詳細な分子メカニズムは不明であるが、L(溶解性)ペプチドのクラスに分類されるいくつかのペプチドは細菌の細胞膜と相互作用し、その膜を不安定にすることができるイオンチャンネル,細孔や他の構造を形成すると考えられている。
溶解性の抗菌性ペプチドの一般的なクラスの中のあるものは、抗腫瘍活性も有することがわかっている。腫瘍細胞の真核細胞膜は原核生物の細胞膜に類似する特性を発現させ、そして、これによって、腫瘍細胞に対してこれら溶解性ペプチドのインビボにおけるある程度の選択性が提供され得ることは、自明なこととして仮定されていた。両親媒性という特徴および正味の正電荷を有するペプチドのある抗腫瘍活性は、国際公開第00/12542号公報,国際公開第01/66147号公報,国際公開第01/19852号公報およびヤンら,Journal of Peptide Science [2004年],10巻,37〜46頁(PMID:14959890)に記載されている。一般的に、抗腫瘍活性は、抗菌用途に設計できるペプチドより大きいペプチドを必要とする。標的細胞の良好な細胞毒性とインビボの選択性との要求のバランスは、有益な抗腫瘍ペプチドの生成において特有の問題を提起する。それは、腫瘍細胞の細胞膜と非形質転換細胞の細胞膜との間に高度な類似性があることがその理由の一つである。
国際公開第00/12542号公報 国際公開第01/66147号公報 国際公開第01/19852号公報
ヤンら,Journal of Peptide Science [2004年],10巻,37〜46頁
それにもかかわらず、ヒト個体群および動物個体群における癌の罹患率および死亡率におけるその役割は、腫瘍に対して有効な新規薬剤への継続的必要性を意味する。腫瘍の排除またはその大きさの縮小または血中もしくはリンパ系を循環している癌細胞数の減少は、痛みや不快感の軽減,転移の阻止,手術的介入の容易さ,延命など、様々な面で都合の良いことがある。
ペプチドの生物学的活性に対する本発明者らの研究中に、彼らは、癌の広範囲なタイプに対する特定な良好な活性および正常細胞に対する癌性細胞の良好な選択性を示す分子の小さなグループを同定した。
下記に詳述するように、一つの分子(LTX-315)が特に好ましく、従って、本発明の第一の態様によると、配列番号23の式を有する化合物,またはその塩,そのエステルもしくはそのアミドが提供される。
以下、本発明は、図を参照しつつ、下記実施例においてさらに説明されるだろう:
図1は、LTX-315ペプチドを様々な濃度で試験するための一連の実験における赤血球死の百分率を示すグラフである。X軸はペプチド濃度(μg/mL)を示す。Y軸は細胞死%を示す。 図2は、初期研究の対照動物における成長と比較した、マウスA20 B細胞リンパ腫細胞を再播種したマウスにおける腫瘍の成長を示す。ひし形は初期研究の対照を示す。中空でない四角形は再播種したマウスを示す。 図3は、LTX-315を最初に処理した、マウスA20 B細胞リンパ腫細胞を再播種した個々のマウスにおける腫瘍の成長を示す。四角形はマウス1を示す。三角形(底辺が下の)はマウス2を示す。三角形(底辺が上の)はマウス3を示す。ひし形はマウス4を示す。 図4は、対照動物における成長と比較した、マウスCT26WT大腸上皮性悪性腫瘍細胞を再播種したマウスにおける腫瘍の成長を示す。ひし形は初期研究の対照を示す。中空でない四角形は再播種したマウスを示す。 図5は、LTX-315を最初に処理した、マウスCT26WT大腸上皮性悪性腫瘍細胞を再播種した個々のマウスにおける腫瘍の成長を示す。小さい四角形はマウス1を示す。小さい三角形(底辺が下の)はマウス2を示す。小さい三角形(底辺が上の)はマウス3を示す。小さいひし形はマウス4を示し;丸はマウス5を示す。大きな四角形はマウス6を示す。大きな三角形(底辺が下の)はマウス7を示す。大きな三角形(底辺が上の)はマウス8を示す。大きなひし形はマウス9を示す。 図6は、LTX-315処理を受けて、完全な腫瘍退行を示すドナーマウスの脾細胞を移植された放射線照射マウス(グループ1)、または、ナイーブなドナーマウスの脾細胞を移植された対照マウス(グループ2)における、A20 B細胞リンパ腫の成長を示す。四角形はグループ1(完全な退行を示すドナーの脾細胞を移植されたマウス)を示す。ひし形はグループ2(ナイーブなドナーの脾細胞を移植されたマウス)を示す。 図7は、未処理の対照(グループ3)と比較した、マウスA20の固形腫瘍(グループ1および2)の2つの異なる処理計画による抗癌効果を示す。反転した中空でない三角形(底辺が上の)グループ1(処理)を示す。中空の四角形はグループ2(処理+アジュバント)を示す。中空の三角形(底辺が下の)グループ3(対照)を示す。21日目の腫瘍サイズは順に(大きいものから小さいものへ):グループ3,グループ1,グループ2である。
本発明の一つの態様は、下記特徴を有する化合物、好ましくはペプチドを提供する:
a) 直線状に配置された9個のアミノ酸からなる;
b) これら9アミノ酸のうち、5個がカチオン性であり、かつ、4個が脂溶性R基を有する;
c) 該9アミノ酸の少なくとも1個が、遺伝コードされていないアミノ酸または遺伝コードされたアミノ酸の修飾誘導体である;および、任意に、
d) 互いに隣接するいずれかのタイプの残基が2つ以下であるように、脂溶性残基およびカチオン性残基が配置されている;ならびに、さらに任意に、
e) この分子が、隣接するカチオン性アミノ酸の2個の対および隣接する脂溶性残基の1個または2個の対を含む。
これらのカチオン性アミノ酸(同じであっても異なっていてもよい)は、好ましくはリジンまたはアルギニンであるが、ヒスチジンであっても、pH7.0で正電荷を帯びている、遺伝コードされていないか修飾された任意のアミノ酸であってもよい。
好適な、遺伝コードされていないカチオン性アミノ酸および修飾されたカチオン性アミノ酸としては、トリメチルリジンおよびトリメチルオルニチン,4-アミノピペリジン-4-カルボン酸,4-アミノ-1-カルバムイミドイルピペリジン-4-カルボン酸ならびに4-グアニジノフェニルアラニンと同様、ホモリジン,オルニチン,ジアミノ酪酸,ジアミノピメリン酸,ジアミノプロピオン酸およびホモアルギニンなどのような、リジン類似体,アルギニン類似体およびヒスチジン類似体が挙げられる。
脂溶性アミノ酸(すなわち、脂溶性R基を有するアミノ酸)はすべて、同じであっても異なっていてもよく、少なくとも7個、好ましくは少なくとも8個または9個、より好ましくは少なくとも10個の非水素原子を有するR基を有する。脂溶性R基を有するアミノ酸は、本明細書中、脂溶性アミノ酸と称する。典型的には、この脂溶性R基は少なくとも1個、好ましくは2個の環状基[cyclic group]を有し、これらは融合または接続していてもよい。
脂溶性R基は、O,NまたはSなどのような複素原子を含んでいてもよいが、典型的には複素原子は1個までしかなく、好ましくはそれは窒素である。このR基は、好ましくは極性基が2個までしかなく、より好ましくは0個または1個であり、最も好ましくは0個である。
トリプトファンは好ましい脂溶性アミノ酸であり、当該分子は好ましくは1〜3個、より好ましくは2または3個、最も好ましくは3個のトリプトファン残基を含む。さらに、含まれてもよい遺伝コードされた脂溶性アミノ酸はフェニルアラニンおよびチロシンである。
好ましくは、脂溶性アミノ酸のうち1個が遺伝コードされていないアミノ酸である。最も好ましくは、当該分子は、3個の遺伝コードされた脂溶性アミノ酸,5個の遺伝コードされたカチオン性アミノ酸および1個の遺伝コードされていない脂溶性アミノ酸からなる。これに関連して、Dアミノ酸は、厳密には遺伝コードされていないが、「遺伝コードされていないアミノ酸」とはみなさず、20個の遺伝コードされたLアミノ酸と単に立体特異的にではなく構造的に異なるはずである本発明の分子は、D体で存在するアミノ酸のいくつかまたはすべてを有していてもよいが、好ましくはすべてのアミノ酸がL体である。
当該分子が遺伝コードされていない脂溶性アミノ酸(またはアミノ酸誘導体)を含む場合、そのアミノ酸のR基は、好ましくは35個まで、より好ましくは30個まで、最も好ましくは25個までの非水素原子しか含まない。
好ましい遺伝コードされていないアミノ酸としては、2-アミノ-3-(ビフェニル-4-イル)プロパン酸(ビフェニルアラニン)、2-アミノ-3,3-ジフェニルプロパン酸(ジフェニルアラニン)、2-アミノ-3-(アントラセン-9-イル)プロパン酸、2-アミノ-3-(ナフタレン-2-イル)プロパン酸、2-アミノ-3-(ナフタレン-1-イル)プロパン酸、2-アミノ-3-[1,1':4',1"-テルフェニル-4-イル]-プロピオン酸、2-アミノ-3-(2,5,7-トリ-tert-ブチル-1H-インドール-3-イル)プロパン酸、2-アミノ-3-[1,1':3',1"-テルフェニル-4-イル]-プロピオン酸、2-アミノ-3-[1,1':2',1"-テルフェニル-4-イル]-プロピオン酸、2-アミノ-3-(4-ナフタレン-2-イル-フェニル)-プロピオン酸、2-アミノ-3-(4'-ブチルビフェニル-4-イル)プロパン酸、2-アミノ-3-[1,1':3',1"-テルフェニル-5'-イル]-プロピオン酸、および、2-アミノ-3-(4-(2,2-ジフェニルエチル)フェニル)プロパン酸が挙げられる。
好ましい態様において、本発明の化合物は下表に示す式I〜Vの一つを有し、式中Cは上記で定義したカチオン性アミノ酸を表し、Lは上記で定義した脂溶性アミノ酸を表す。当該アミノ酸は共有結合で連結し、好ましくは、本物のペプチドをもたらすペプチド結合であるか、または、ペプチド模倣薬[peptidomimetic]をもたらす他の連結である。これら分子の遊離のアミノ末端またはカルボキシ末端は修飾されていてもよく、好ましくはカルボキシ末端から負電荷を取り去る修飾を受け、最も好ましくはカルボキシ末端がアミド化され、このアミド基は置換されていてもよい。
CCLLCCLLC (I) (配列番号1)
LCCLLCCLC (II) (配列番号2)
CLLCCLLCC (III) (配列番号3)
CCLLCLLCC (IV) (配列番号4)
CLCCLLCCL (V) (配列番号5)
ペプチド模倣薬は典型的には、そのペプチドと同等の極性,三次元サイズおよび機能性(生物活性)を保持することによって特徴付けられるが、そのペプチド結合は、たいていより安定な連結によって、置換されている。「安定」とは、加水分解酵素による酵素的分解に対してより抵抗性を有することを意味する。一般的に、アミド結合を置換した結合(アミド結合の代わり)は、例えば、配座,立体的嵩高さ,静電特性,水素結合の可能性など、多くのアミド結合の特性を保存している。「Drug Design and Development」,クログスガード,ラーセン,リリエフォッシュおよびマドセン(編集)1996年, Horwood Acadの14章。パブ[Pub]によって、ペプチド模倣薬の設計および合成にかかる技術に対する一般的な考察が提供されている。本発明のケースにおいて、当該分子が酵素の特異的な活性部位よりむしろ膜と反応する場合、親和性および有効性または基質機能の正確な模倣について記載された問題のいくつかとは関連がなく、ペプチド模倣薬は、所定のペプチド構造または必須の官能基のモチーフに基づき容易に調製することができる。
好適なアミド結合の代わりとして以下の基:N−アルキル化(シュミッツ, R. ら, Int. J. Peptide Protein Res., 1995年, 46巻, 47頁),レトロ−インバース[retro-inverse]アミド(ホレフ, Mおよびグッドマン, M., Acc. Chem. Res., 1993年, 26巻, 266頁),チオアミド(シャーマン, D.B.およびスパートラ, A.F., J. Am. Chem. Soc., 1990年, 112巻, 433頁),チオエステル,ホスホネート,ケトメチレン(ホフマン, R.V.およびキム, H.O., J. Org. Chem., 1995年, 60巻, 5107頁),ヒドロキシメチレン,フルオロビニル(アルメンディンガー, T. ら, Tetrahydron Lett., 1990年, 31巻, 7297頁),ビニル,メチレンアミノ(ササキ, Yおよびアベ, J. Chem.Pharm. Bull., 1997年, 45巻, 13頁),メチレンチオ(スパートラ, A.F., Methods Neurosci, 1993年, 13巻, 19頁),アルカン(ラヴィーユ, S. ら, Int. J. Peptide Protein Res., 1993年, 42巻, 270頁)およびスルホンアミド(ルイージ, G. ら, Tetrahedron Lett., 1993年, 34巻, 2391頁)が挙げられる。
本発明のペプチド模倣化合物は、9個のカチオン性アミノ酸および脂溶性アミノ酸と大きさおよび機能の点でほぼ等価な9個の同定可能なサブユニットを有していてもよい。このように、「アミノ酸」という用語は、本明細書において、ペプチド模倣化合物の等価なサブユニットに言及するのに都合良く用いてもよい。さらに、ペプチド模倣薬はアミノ酸のR基と等価な基を有してもいてもよく、本明細書において、好適なR基について、ならびに、N末端およびC末端の修飾基についての考察は、変更すべきところは変更して、ペプチド模倣化合物に適用する。
アミド結合の置換と同様、「Drug Design and Development」(クログスガードら, 1996年)において考察されているように、ペプチド模倣薬は、より大きな構造部分をジペプチド模倣構造体またはトリペプチド模倣構造体に置換することを含んでもよく、この場合、アゾール由来模倣薬などのようなペプチド結合を含む模倣部分がジペプチド置換として用いられてもよい。しかしながら、上記考察にあるように単にアミド結合が置換されただけのペプチド模倣薬ひいてはペプチド模倣薬の骨格が好ましい。
好適なペプチド模倣薬として、例えばボランや水素化アルミニウムリチウムなどような水素化試薬などの還元剤により処理することによってアミド結合をメチレンアミンに還元した還元ペプチドが挙げられる。このような還元によって、当該分子の全般的なカチオン性を向上するという利点が追加される。
他のペプチド模倣薬としては、例えばアミド官能化ポリグリシンの段階的合成などによって形成されたペプトイドが挙げられる。ペプチド模倣薬の骨格は、完全メチル化されたペプチドなどのような、それらペプチド前駆体から容易に利用可能であり、好適な方法は、オストレッシュ, J.M. らのProc.Natl.Acad.Sci.USA(1994年)91巻, 11138〜11142頁に記載されている。強塩基条件は、O−メチル化よりN−メチル化の方を好むだろう。そして、強塩基条件は、ペプチド結合の窒素原子のいくつかまたはすべておよびN−末端窒素のメチル化をもたらすだろう。
好ましいペプチド模倣薬の骨格として、置換されたアルカンおよびアルケンと同様に、ポリエステル,ポリアミンおよびその誘導体が挙げられる。ペプチド模倣薬は好ましくは、本明細書で考察したような修飾がなされてもよいN末端およびC末端を有するだろう。
αアミノ酸と同様、βアミノ酸およびγアミノ酸は「アミノ酸」という用語に包含され、N−置換グリシンもそうである。本発明の化合物としては、βペプチドおよびデプシペプチドが挙げられる。
上述したように、本発明の化合物は、少なくとも1個、好ましくは1個の遺伝コードされていないアミノ酸を取り込んでいる。この残基がL'と称される場合、好ましい化合物は下記式で表される:
CCL'LCCLLC (I') (配列番号6)
CCLLCCLL'C (I'') (配列番号7)
CCLL'CCLLC (I’’’) (配列番号8)
LCCLL'CCLC (II') (配列番号9)
式IおよびIIのペプチドがとりわけ好ましく、これらのうち、式I''のペプチドが特に好ましい。
好ましくは、そのペプチドはLTX-302(配列番号11)(下記)ではない。
表1に示されるような下記ペプチド(LTX-302を除く)が最も好ましい。
Figure 0005913982
表中:
・標準的な一文字コードは遺伝コードされたアミノ酸に用いられる。
・小文字はDアミノ酸を示す。
・Dipはジフェニルアラニンである。
・Bipはビフェニルアラニンである。
・Ornはオルニチンである。
・Dapは2,3-ジアミノプロピオン酸である。
・Dabは2,4-ジアミノブタン酸である。
・1-Nalは1-ナフチルアラニンである。
・2-Nalは2-ナフチルアラニンである。
・Athは2-アミノ-3-(アントラセン-9-イル)プロパン酸である。
・Phe(4,4'Bip)は2-アミノ-3-[1,1':4',1''-テルフェニル-4-イル]プロピオン酸である。
本明細書に記載の分子すべてが、塩,エステルまたはアミドの形態であってもよい。
従って、本発明によると、LTX-301,LTX-302〜LTX-310,LTX-312〜LTX-321,LTX-323〜LTX-327,LTX-329,LTX-331〜LTX-336およびLTX-338からなる群から選択される化合物,またはその塩,そのエステルもしくはそのアミドも提供される。よって、本発明は、配列番号10および12〜42からなる群から選択される式を有する化合物,またはその塩,そのエステルもしくはそのアミドを提供する。
当該分子は好ましくはペプチドであり、好ましくは修飾されたC末端、特にアミド化されたC末端を有する。アミド化されたペプチドはそれ自体が塩の形態であってもよく、酢酸塩の形態が好ましい。好適な生理学的に許容し得る塩は当該分野において周知であり、無機酸の塩または有機酸の塩が挙げられ、酢酸塩と同様、トリフルオロ酢酸塩およびHClで形成された塩が挙げられる。
本明細書に記載の分子は実際に両親媒性であり、α−へリックスを形成する傾向にあってもなくてもよいその2°構造は生理学的条件において両親媒性分子を提供する。
さらなる態様において、治療に用いるための、特に抗腫瘍剤または抗癌剤(これらの用語は本明細書において同義的に用いられる)として用いるための、本発明の化合物、とりわけ式I〜Vの化合物、特に表1のペプチドが提供される。
この化合物は抗腫瘍活性を示し;特に、これらは膜に直接作用する機構を介して細胞毒性効果を発揮する。これらの分子は細胞膜を溶解し,不安定化にし,または穿孔すらする。これは、標的細胞のタンパク質性成分(例えば細胞表面受容体など)に作用するかまたは相互作用する薬剤とは異なる治療上の利点を提供する。突然変異が化学療法薬耐性を引き起こす標的タンパク質の新規な形態をもたらす一方、細胞毒性効果を阻止するために脂質膜に激変する可能性があるだろうとは到底考えられない。
従って、さらなる態様において、腫瘍の細胞膜を不安定にする、および/または、透過性にするのに使用するために本発明の化合物が提供される。「不安定にする」とは、膜が薄くなり、水,イオンまたは代謝産物などに対する膜透過性(典型的にはチャンネルを含まない)が増大することには限定されないが、これを含む標準的な三次元脂質二重層の配置の摂動を意味する。
本発明は、本明細書に記載の様々な化合物を投与することによって、腫瘍(固形腫瘍および非固形腫瘍の両方)を治療する方法を提供する。投与量は、標的細胞の全部もしくは一部を死に至らしめる,またはそれらの増殖速度を止めるか抑える,または転移を阻害する,あるいはそれ以外に、対象に対する腫瘍の悪影響を低下させるのに有効であるべきである。臨床医または対象は、腫瘍に関連するパラメータまたは兆候の1以上において向上を観察するはずである。投与はまた、予防のためであってもよい。上記対象は典型的にはヒト患者であろうが、家畜[domestic animal]や獣蓄[livestock animal]などのようなヒト以外の動物も治療してもよい。
タンパク質を標的とする薬剤の大多数とは異なり、本発明の分子は、本実施例に示すように、広範囲な癌を標的とすることができる。好ましい標的の癌としては、リンパ腫,白血病,神経芽細胞腫およびグリア芽腫(例えば、脳の),上皮性悪性腫瘍および腺癌(特に、乳房,大腸,腎臓,肝臓,肺,卵巣,膵臓,前立腺および皮膚の)ならびに黒色腫が挙げられる。乳癌が特に好ましい標的である。
本発明のペプチドは、都合の良い任意の方法で合成してもよい。一般的に、存在する反応基(例えば、アミノ,チオールおよび/またはカルボキシ)は反応全般にわたって保護されるだろう。従って、この反応の最終段階は、本発明の保護された誘導体が脱保護されるだろう。
ペプチドを作製する際、原理上、C末端かN末端かのいずれかからも開始できるが、C末端の開始手順が好ましい。
ペプチド合成の方法は当該分野において周知であるが、本発明においては、固相支持体(このような支持体も当該分野において周知である)上で合成を実施するのが特に好都合であるかもしれない。
アミノ酸に対する保護基の幅広い選択肢は公知であり、好適なアミンの保護基としては、カルボベンジルオキシ(Zとも称する)t-ブトキシカルボニル(Bocとも称する),4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル(Mtr)および9-フルオレニルメトキシ-カルボニル(Fmocとも称する)を挙げてもよい。C末端からペプチドを作製する際、アミン保護基は付加された新規の残基それぞれのα−アミノ基に存在し、次のカップリング段階の前に選択的に除去される必要があることは充分理解されていることだろう。
カルボキシル保護基(例えば、採用された場合)としては、例えばポリスチレンに連結したRinkアミドなど、固相支持体上のカップリング基と同様に、ベンジル基(Bzl),p−ニトロベンジル基(ONb)やt−ブチル基(OtBu)などのような容易に開裂するエステル基が挙げられる。
チオール保護基としては、p-メトキシベンジル(Mob),トリチル(Trt)およびアセトアミドメチル(Acm)が挙げられる。
本発明の好ましいペプチドは、トリプトファン残基のインドールの窒素に対する保護と同様に、Lys,Orn,DabおよびDapのアミン側鎖に対するt−ブチルオキシカルボニル(Boc)保護基を用いて都合良く調製してもよい。Fmocはα−アミノ基の保護に用いることができる。Argを含むペプチドに対して、2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニルがグアニジン側鎖の保護に用いることができる。
アミン保護基およびカルボキシル保護基の除去について広範な手順が存在する。しかしながら、これらは採用した合成戦略と整合する必要がある。側鎖の保護基は、次のカップリング段階の前に、当座のα−アミノ保護基を除去するために用いる条件で安定でなければならない。
Bocなどのようなアミン保護基およびtBuなどのようなカルボキシル保護基を、例えばトリフルオロ酢酸などを用いて酸処理することによって同時に除去してもよい。Trtなどのようなチオール保護基は、ヨウ素などのような酸化剤を用いて選択的に除去してもよい。
本発明のペプチド模倣化合物および他の生物活性分子を合成するための参考文献および技術は本明細書に記載されており、ひいては当該分野において周知である。
好適な希釈剤,担体または賦形剤との混合物中1以上の本発明の化合物を含む製剤は本発明のさらなる態様を構成する。このような製剤は、とりわけ、製薬(獣医学的なものを含む)目的であってもよい。好適な希釈剤,賦形剤および担体は当業者に公知である。
本発明の化合物(またはその塩,そのエステルもしくはそのアミド)を、純粋な化合物として投与することが可能である場合、それらを医薬製剤として存在させることが好ましい。従って、本発明による製剤は、好ましくは、少なくとも1つの他の治療成分と組み合わせた、少なくとも1つの上記の化合物,塩,エステルまたはアミドを含む。よって、本発明は、本発明の化合物(またはその塩,そのエステルもしくはそのアミド)および少なくとも1つの治療成分を含む併用製品にまで拡張される。
ヒトまたは動物である対象に上記1以上の化合物を投与することを含む腫瘍を治療する方法は、本発明のさらなる態様を構成する。
本発明による化合物は、例えば、経口投与,外用投与,経鼻投与,腸管外投与,静脈内投与,腫瘍内投与,直腸投与または局部投与(例えば分離された四肢灌流)に好適な形態で存在してもよい。投与は、典型的には腸管外の経路で、好ましくは皮下注射,筋肉注射,関節包内注射,髄腔内注射,腫瘍内注射または静脈内注射である。
本明細書で定義される活性化合物は、錠剤,コーティングされた錠剤,鼻腔用スプレー,溶液,乳剤,リポソーム,粉末,カプセルまたは持続徐放性製剤などのような、投与にかかる従来の薬理学的形態で存在してもよい。通常の製造方法と同様、従来の医薬用賦形剤は、これらの形態の調製に採用してもよい。
臓器特異的輸送系も用いてもよい。
注射液は、例えば、p−ヒドロキシベンゾエート等のような保存料やEDTA等のような安定剤の添加などのような従来法で製造してもよい。この液はその後、注射用バイアルまたはアンプルに充填される。
好ましい製剤は、ペプチドが生理食塩水に溶解しているものである。このような製剤は、例えば注射や好ましく分離(部分分離も含む)された四肢,体内の領域または臓器の灌流/点滴によって、好ましい投与法、特に局所投与(すなわち腫瘍内)に好適に用いられる。
活性分子を含む単位用量は、好ましくは抗腫瘍剤を0.1〜10mg、例えば1〜5mgを含む。医薬組成物はさらに、他の抗腫瘍ペプチドなどのような他の細胞毒性薬を含む、さらなる活性成分を含んでもよい。他の活性成分としては、例えばIFN−γ,TNF,CSFおよび増殖因子などのサイトカイン,免疫刺激剤,例えばシスプラチンなどの化学療法剤または抗体または癌ワクチンを挙げてもよい。
このような組成物を全身的に用いる際、この活性分子は、生物活性分子の血清レベルが少なくとも約5μg/mLとなるための量で存在する。一般的に、この血清レベルは500μg/mLを超える必要はない。好ましい血清レベルは約100μg/mLである。このような血清レベルは、1〜約10mg/kgの用量で全身的に投与する場合の組成物中に生物活性分子を含むことによって達成してもよい。一般的に、この分子は100mg/kgを超える用量で投与する必要がない。
本発明によると、少なくとも1つのワクチンと組み合わせる本発明に係る化合物,塩,エステルまたはアミドが提供される。
下記で詳述するように、LTX-315で溶解した腫瘍細胞による予防接種が腫瘍増殖を阻害するという結果をもたらし、本発明の化合物がワクチンアジュバントとして極めて有効であることが実験によって示され、従って、本発明は、少なくとも1つのワクチンと組み合わせる化合物(またはその塩、そのエステルもしくはそのアミド)の使用にまで拡張される。好ましいワクチンとしては、腫瘍関連抗原(TAA)の免疫原性配列と一致するアミノ酸配列を有する少なくとも1つのタンパク質および/またはペプチドを含む抗癌ワクチンが挙げられるが、これに限定されない。好ましいTAAは、テロメラーゼ,スルビビン発癌性p21,ras,abl,gip,gsp,ret,terk,およびウイルスタンパク質の免疫原性配列と一致するアミノ酸配列を有する少なくとも1つのタンパク質および/またはペプチドを含む抗ウイルスワクチンであるが、これに限定されない。さらに腫瘍溶解物も用いることができる。好ましいワクチンの例としては、国際公開第92/14756号公報,国際公開第00/66153号公報(NO 309798),国際公開第00/02581号公報,国際公開第02/051994号公報,国際公開第02/070679号公報,国際公開第02/094312号公報,国際公開第99/58552号公報,および国際公開第99/58564号公報に教示されているワクチン,ペプチド,ペプチド断片および免疫原が挙げられる。
本発明によると、薬剤の製造、特に癌の治療のための薬剤の製造および/またはワクチンの製造における本発明の化合物,塩,エステルもしくはアミドまたは組み合わせの使用も提供される。
好ましくは、当該薬剤は多剤耐性(MDR)腫瘍の治療のためである。
本発明によると、
(i) 少なくとも1つのワクチン;および
(ii) 本発明の化合物,塩,エステルまたはアミド
を含む医薬パック[pharmaceutical pack]も提供される。
医薬パックに、少なくとも1つのワクチンおよび化合物,塩,エステルまたはアミドを、別個に(例えば、約,少なくとも,またはわずか1,2,3,4,5,10,15,20,25,30,45,60,90または120分間遅れて)投与するために封入する。当該医薬パックはもちろん、投与のための取扱説明書も含むことができる。
本発明によると、本発明の化合物,塩,エステルもしくはアミドまたは組み合わせの薬学的な有効量を、それを必要とする対象に投与する段階を含む、腫瘍を治療する方法も提供される。
本発明によると、本発明の化合物,塩,エステルもしくはアミドまたは組み合わせの薬学的な有効量を対象に投与する段階を含む、ワクチン接種の方法も提供される。
本発明によると、配列番号23(LTX-315)の式を有する化合物またはその塩,そのエステルもしくはそのアミドを、薬学的に許容し得る担体,希釈剤または賦形剤と混合することを含む、薬剤の製造方法も提供される。
本発明によると、配列番号23(LTX-315)の式を有する化合物またはその塩,そのエステルもしくはそのアミドを、腫瘍細胞と混合することを含む、薬剤の製造方法も提供される。
本実施例を要約したものを以下に示す:
実施例1−LTX-315は、37種のヒト癌細胞株に対するインビトロ細胞毒性活性研究において、5つの試験化合物のうち最も強力なものである。
実施例2−LTX-315は、10種のリンパ腫細胞株に対するインビトロ細胞毒性活性研究において、5つの試験化合物のうち最も強力なものである。
実施例3−LTX-315は、ヒト赤血球に対して平均EC50値が1200μg/mL(833μM)以上を有する。
実施例4−マウスにおいて、マウスA20 B細胞リンパ腫に対する種々の用量レベルでのLTX-315の効果を調べた際、LTX-315の抗腫瘍活性は、適量を投与されたグループ(グループ1)において、治療した7匹のマウスのうち3匹で完全な腫瘍反応をもたらした。
実施例5−4つの異なるLTX-315治療計画は、マウスCT26WT(多剤耐性)腫瘍に対して強い抗腫瘍効果を示した。
実施例6−LTX-315は、様々な多剤耐性癌細胞株に対して広範囲の活性を有し、そして正常ヒト細胞に対する細胞毒性効果は有意に極めて弱かった。
実施例7−マウスの固形腫瘍をLTX-315で最初に治療した後の完全腫瘍退行によって、再播種後の同じ腫瘍の成長に対して、長期にわたる内在性の防御が形成された。
実施例8−LTX-315を用いる治療によって免疫反応が惹起され、特定の腫瘍に対して長期にわたる防御が与えられる。
実施例9−抗A20細胞免疫反応は、LTX-315と溶解したA20細胞とのカクテルを注入することによって誘導される。
実施例1
37種のヒト癌細胞株に対する5つの試験化合物のインビトロ細胞毒性活性研究
1.研究目的
・37種のヒト癌細胞株に対して、50%の増殖阻害(IC50)が得られる5つの新規化合物の濃度を決定すること。
2.材料および方法
2.1. 試験物質
2.1.1. 試験物質
・試験物質として、LTX-302,LTX-313,LTX-315,LTX-320およびLTX-329(表1参照)を粉末形態で供した。
2.1.2. 陽性対照
・シグマ社(サンカンタン ファラヴィエ,フランス)からOncodesign社(ディジョン,フランス)によって提供されたトリトンX-100を陽性対照として用いた。
2.1.3. 薬物媒体および保存条件
・化合物を4℃で保存した。粉末を最初に無血清培地(RPMI 1640,ロンザ社(ヴェルヴィエ,ベルギー))に溶解し、適切な希釈率になるように無血清在地を用いてさらに希釈した。貯蔵溶液は保存せずに、実験するその日に新しく調製した。
・培地を用いて希釈することによって1%(最終濃度)トリトンX-100が得られた。
2.2. 腫瘍細胞株および培養条件
2.2.1. 腫瘍細胞株
Oncodesign社が提供する腫瘍細胞株および培地を購入した。
(表A-1)
Figure 0005913982
(表A−2)
Figure 0005913982
加湿雰囲気(5%CO2,95%空気)中37℃で、付着単層として、または、懸濁液として、腫瘍細胞を成長させた。培地は2mMのL−グルタミンを含むRPMI 1640(ロンザ社,ベルギー)であり、10%ウシ胎仔血清(FBS,ロンザ社)を補充した。実験に用いるため、付着細胞を、トリプシン−ヴェルセン(ロンザ社)で5分間処理することによって培養フラスコから剥がし、カルシウムまたはマグネシウムがないハンクス培地(ロンザ社)で希釈し、完全培地を添加することで中和した。血球計で細胞を数え、0.25%トリパンブルー除外によってそれらの生死を評価した。
MycoAlert(RTM)マイコプラズマ検出キット(ロンザ社)を用い、製造会社の取扱説明書に従って、マイコプラズマ検出を実施した。試験した細胞はすべて、マイコプラズマ汚染に陰性であることがわかった。
3.実験計画および処理
3.1. 細胞株の増幅および播種
腫瘍細胞を96穴平底ミクロタイトレーションプレート(ヌンク社(Dutscher,ブリュマト,フランス))に播種し、37℃で24時間インキュベートした後、付着または懸濁液成長細胞株それぞれに対して10%FBSを補充したまたは補充しなかった無薬物培地190μL中で処理した。
各細胞株の着床密度を以下の表2に集約する:
Figure 0005913982
3.2. IC50の決定
処理前に付着細胞株を200μLのFBS無添加培地で一度洗浄した。一番高い量が400μMであり1/4段階希釈した10通りの濃度(4×10-4〜4×10-10Mの範囲)の化合物と、陽性対照として1%(最終濃度)トリトンX-100と、陰性対照としてFBS無添加培地とを、それぞれ腫瘍細胞と4時間インキュベーションした。試験物質を含むFBS無添加培地の最終量200μL中5%CO2の下37℃でこの細胞(190μL)をインキュベートした。
実験は独立して3回実施し、各濃度で4通り試験した。対照細胞は媒体のみで処理した。処理終了時に細胞毒性活性をMTSアッセイで評価した(§3.3.を参照)。
細胞を含むプレートへの分配とともに、試験化合物の希釈を、Sciclone ALH3000液体処理系(キャリパーライフサイエンスS.A.社)を用いて実施した。自動化で用いて、試験される細胞株が何であろうと、ある濃度範囲1通りだけを試験した。その範囲は、各細胞株については適応されなかった。
3.3. MTSアッセイ
この試験物質のインビトロ細胞毒性活性を、新規なテトラゾリウム化合物(MTS,3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホニル)-2H-テトラゾリウム)とPMS(フェナジンメソスルフェート)という名の電子結合試薬とを用いるMTSアッセイ(バルトロップ J.A.ら, Bioorg. Med. Chem. Lett. 1991年, 1巻:611〜614頁)によって明らかにした。MTTのように、MTSは細胞によってホルマザン産物に生体内還元されるが、MTTとは異なり、ホルマザン産物は処理なしで培地中に直接溶解する。
細胞処理の終了時に、0.22μmで濾過した、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS,Ref 17-513Q,Batch 6MB0152,キャンブレックス社)中のMTS(2mg/mLで20mL,Ref G1111,Batch 235897,Exp 03/2009,プロメガ社,シャルボニエール,フランス)とPMS(0.92mg/mLで1mL,Ref P9625,Batch 065K0961,シグマ社)とを新しく混合した溶液40μLを各穴に添加した。培養プレートを37℃で2時間インキュベートした。各穴の吸光度(OD)を、VICTOR3TM1420多標識計数器(Wallac,パーキンエルマー社,クルタブフ,フランス)を用いて490nmで測定した。
4.データの提示
4.1. IC50の決定
○増殖の用量反応阻害(IC)は下式で表される:
Figure 0005913982
OD値は4回の実験的測定の平均である。
○IC50:50%の細胞の増殖を阻害する薬物濃度。
用量反応曲線を、XLFit3(IDBS社,イギリス)を用いてプロットした。IC50決定値を、片対数曲線からXLFit3ソフトウェアを用いて計算した。平均値およびSD値とともに、個々のIC50決定値が得られた。
4.2. 抵抗指数(RI)
抵抗指数を、下記式を用いて算出した:
Figure 0005913982
各化合物につき、感受性細胞株および抵抗性細胞株の一対ごとの抵抗指数を算出した。感受性細胞株と対応する抵抗性細胞株との両方のIC50値が同じ実験で決定された場合に、個々の抵抗指数を算出した。さらに、抵抗指数は、独立した実験3回を通して得られた平均IC50値から算出された比でもあった。
5.結果
5.1. LTX-302
試験したヒト腫瘍細胞株37種すべてにおいて、LTX-302化合物に感受性を有し、T-47D細胞株およびHepG2細胞株それぞれでIC50値が4.83±0.96μM〜20.09±4.07μMの範囲であった。
37種の腫瘍細胞株で得られたLTX-302化合物の平均IC50値は12.05±4.27μMであり、中央値が11.70μMであった。正常細胞株(HUV−EC−C)で得られた平均IC50値は、どの腫瘍細胞株より高かった。
血液癌細胞株および肺癌細胞株がLTX-302化合物に対して最も感受性を有し(血液癌細胞株および肺癌細胞株それぞれのIC50中央値は7.96μM(n=7)および9.02μM(n=3))、一方、肝癌細胞株が最も抵抗性であった(IC50中央値は17.84μM(n=2))。
LTX-302化合物の活性は、HL-60/ADR細胞株およびMCF-7/mdr細胞株の両方のRI値(HL-60/ADR細胞株およびMCF-7/mdr細胞株それぞれについて1.31および1.23)によって示されるように、ドキソルビシンに対する抵抗性を獲得することによって少しずつ減少するように見えた。反対に、LTX-302化合物の活性は、IGROV-1/CDDP細胞株のRI値が0.33を示すように、シスプラチンに対する抵抗性を獲得することによって上昇するように見えた。
5.2. LTX-313
試験したヒト腫瘍細胞株37種すべてにおいて、LTX-313化合物に感受性を有し、RPMI8226細胞株およびU-87MG細胞株それぞれでIC50値が4.01±0.39μM〜18.49±4.86μMの範囲であった。
37種の腫瘍細胞株で得られたLTX-313化合物の平均IC50値は9.60±3.73μMであり、中央値が8.83μMであった。正常細胞株(HUV−EC−C)で得られた平均IC50値は、どの腫瘍細胞株より高かった。
血液癌細胞株がLTX-313化合物に対して最も感受性を有し(IC50中央値は7.04μM(n=7))、一方、肝癌細胞株が最も抵抗性であった(IC50中央値は13.71μM(n=2))。
LTX-313化合物の活性は、CCRF−CEM/VLB細胞株,HL-60/ADR細胞株およびMCF-7/mdr細胞株のRI値(CCRF−CEM/VLB細胞株,HL-60/ADR細胞株およびMCF-7/mdr細胞株それぞれ0.76,1.16および1.24)によって示されるように、ドキソルビシンに対する抵抗性を獲得することによって加減されていないように見えた。反対に、LTX-313化合物の活性は、IGROV-1/CDDP細胞株のRI値が0.49を示すように、シスプラチンに対する抵抗性を獲得することによって上昇するように見えた。
5.3. LTX-315
試験したヒト腫瘍細胞株37種すべてにおいて、LTX-315化合物に感受性を有し、T-47D細胞株およびSK−OV-3細胞株それぞれでIC50値が1.18±0.25μM〜7.16±0.99μMの範囲であった。
37種の腫瘍細胞株で得られたLTX-315化合物の平均IC50値は3.63±1.45μMであり、中央値が3.27μMであった。正常細胞株(HUV−EC−C)で得られた平均IC50値は、どの腫瘍細胞株より高かった。
乳癌細胞株,血液癌細胞株および肺癌細胞株がLTX-315化合物に対して最も感受性を有し(乳癌細胞株,血液癌細胞株および肺癌細胞株それぞれのIC50中央値は2.45μM(n=5),2.60μM(n=7)および2.83μM(n=3))、一方、肝癌細胞株が最も抵抗性であった(IC50中央値は5.86μM(n=2))。
LTX-315化合物の活性は、HL-60/ADR細胞株およびMCF-7/mdr細胞株の両方のRI値(HL-60/ADR細胞株およびMCF-7/mdr細胞株それぞれについて1.45および1.12)によって示されるように、ドキソルビシンに対する抵抗性を獲得することによって少しずつ減少するように見えた。反対に、LTX-315化合物の活性は、IGROV-1/CDDP細胞株のRI値が0.50を示すように、シスプラチンに対する抵抗性を獲得することによって上昇するように見えた。
5.4. LTX-320
試験したヒト腫瘍細胞株37種すべてにおいて、LTX-320化合物に感受性を有し、T-47D細胞株およびHepG2細胞株それぞれでIC50値が3.46±0.22μM〜16.64±3.15μMの範囲であった。
37種の腫瘍細胞株で得られたLTX-320化合物の平均IC50値は7.58±2.79μMであり、中央値が6.92μMであった。正常細胞株(HUV−EC−C)で得られた平均IC50値は、どの腫瘍細胞株より高かった。
血液癌細胞株,乳癌細胞株,腎癌細胞株および脳癌細胞株がLTX-320化合物に対して最も感受性を有し(血液癌細胞株,乳癌細胞株,腎癌細胞株および脳癌細胞株それぞれのIC50中央値は6.04μM(n=7),6.60μM(n=5),6.60μM(n=2)および6.92μM(n=3))、一方、肝癌細胞株が最も抵抗性であった(IC50中央値は11.46μM(n=2))。
LTX-320化合物の活性は、HL-60/ADR細胞株およびMCF-7/mdr細胞株の両方のRI値(HL-60/ADR細胞株およびMCF-7/mdr細胞株それぞれについて0.90および1.19)によって示されるように、ドキソルビシンに対する抵抗性を獲得することによって加減されないように見えた。反対に、LTX-320化合物の活性は、IGROV-1/CDDP細胞株のRI値が0.49を示すように、シスプラチンに対する抵抗性を獲得することによって上昇するように見えた。
5.5. LTX-329
試験したヒト腫瘍細胞株37種すべてにおいて、LTX-329化合物に感受性を有し、T-47D細胞株およびU-87MG細胞株それぞれでIC50値が2.43±0.34μM〜16.90±1.18μMの範囲であった。
37種の腫瘍細胞株で得られたLTX-329化合物の平均IC50値は8.17±3.20μMであり、中央値が7.89μMであった。正常細胞株(HUV−EC−C)で得られた平均IC50値は、どの腫瘍細胞株より高かった。
乳癌細胞株および血液癌細胞株がLTX-329化合物に対して最も感受性を有し(乳癌細胞株および血液癌細胞株それぞれのIC50中央値は4.92μM(n=5)および5.26μM(n=7))、一方、卵巣癌細胞株が最も抵抗性であった(IC50中央値は13.37μM(n=4))。
LTX-329化合物の活性は、CCRF−CEM/VLB細胞株,HL-60/ADR細胞株およびMCF-7/mdr細胞株のRI値(CCRF−CEM/VLB細胞株,HL-60/ADR細胞株およびMCF-7/mdr細胞株それぞれ0.76,0.80および1.07)によって示されるように、ドキソルビシンに対する抵抗性を獲得することによって加減されないように見えた。反対に、LTX-329化合物の活性は、IGROV-1/CDDP細胞株のRI値が0.46を示すように、シスプラチンに対する抵抗性を獲得することによって上昇するように見えた。
5.6. 総合的なコメント
T-47D乳癌細胞株は、試験したどのLTX化合物でも最も感受性を有する細胞株である。
血液癌細胞株は5つすべての試験化合物の中で最も感受性を有する組織型であり、肝癌細胞株および卵巣癌細胞株が最も抵抗性を有する細胞株の1つである。
5つすべての試験化合物は、親であるIGROV-1卵巣癌細胞株よりIGROV-1/CDDP細胞株(シスプラチン抵抗性)の方が、活性が高いことを示した。ドキソルビシン抵抗性はLTX化合物の活性を少しずつ減少させるように見えた。
LTX-315化合物が、5つの試験化合物の中で最も強い化合物である。
6.結論
⇒ 5つすべての試験化合物(すなわち、LTX-302,LTX-313,LTX-315,LTX-320およびLTX-329)は、試験した37種のヒト癌細胞株に対して細胞毒性活性を示し、IC50値がマイクロモラーから10マイクロモラーの範囲であった。
⇒ LTX-315化合物が最も強い試験化合物であり、試験した37種すべてのヒト癌細胞株でIC50値が1〜5マイクロモラーである。
実施例2
10種のリンパ腫細胞株に対する5つの試験化合物のインビトロ細胞毒性活性
1.研究目的
・10種のリンパ腫細胞株に対する50%の増殖阻害(IC50)が得られる5つの新規化合物の濃度を決定すること。
2.材料および方法
2.1. 試験物質
2.1.1. 試験物質
・試験物質として、LTX-302,LTX-313,LTX-315,LTX-320およびLTX-329(表1参照)を粉末形態で供した。
2.1.2. 陽性対照
・シグマ社(サンカンタン ファラヴィエ,フランス)からOncodesign社(ディジョン,フランス)によって提供されたトリトンX-100を陽性対照として用いた。
2.1.3. 薬物媒体および保存条件
・化合物を4℃で保存した。粉末を最初に無血清培地(RPMI 1640,ロンザ社(ヴェルヴィエ,ベルギー))に溶解し、適切な希釈率になるように無血清在地を用いてさらに希釈した。貯蔵溶液は保存せずに、実験するその日に新しく調製した。
・培地を用いて希釈することによって1%(最終濃度)トリトンX-100が得られた。
2.2. 腫瘍細胞株および培養条件
2.2.1. 腫瘍細胞株
Oncodesign社が提供する腫瘍細胞株および培地を購入した。
(表B)
Figure 0005913982
2.2.2. 培養条件
加湿雰囲気(5%CO2,95%空気)中37℃で、懸濁液として、腫瘍細胞を成長させた。各細胞株のための培地を下記表3に記載する。実験に用いるため、血球計で細胞を数え、0.25%トリパンブルー除外によってそれらの生死を評価した。
Figure 0005913982
MycoAlert(RTM)マイコプラズマ検出キット(ロンザ社)を用い、製造会社の取扱説明書に従って、マイコプラズマ検出を実施した。試験した細胞はすべて、マイコプラズマ汚染に陰性であることがわかった。
3.実験計画および処理
3.1. 細胞株の増幅および播種
腫瘍細胞を96穴平底ミクロタイトレーションプレート(ヌンク社(Dutscher,ブリュマト,フランス))に播種し、37℃で24時間インキュベートした後、薬物無添加かつFBS無添加培地190μL中で処理した。
各細胞株の着床密度を以下の表4に集約する:
Figure 0005913982
一番高い量が400μMであり1/4段階希釈した10通りの濃度(4×10-4 〜4×10-10 Mの範囲)の化合物と、陽性対照として1%(最終濃度)トリトンX-100と、陰性対照としてFBS無添加培地とを、それぞれ腫瘍細胞と4時間インキュベーションした。試験物質を含むFBS無添加培地の最終量200μL中5%CO2の下37℃でこの細胞(190μL)をインキュベートした。
実験は独立して3回実施し、各濃度で4通り試験した。対照細胞は媒体のみで処理した。処理終了時に細胞毒性活性をMTSアッセイで評価した(下記§3.3を参照)。
細胞を含むプレートへの分配とともに、試験化合物の希釈を、Sciclone ALH3000液体処理系(キャリパーライフサイエンスS.A.社)を用いて実施した。自動化で用いて、試験される細胞株が何であろうと、ある濃度範囲1通りだけを試験した。その範囲は、各細胞株にについては適応されなかった。
3.3. MTSアッセイ
この試験物質のインビトロ細胞毒性活性を、新規なテトラゾリウム化合物(MTS,3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホニル)-2H-テトラゾリウム)とPMS(フェナジンメソスルフェート)という名の電子結合試薬とを用いるMTSアッセイ(バルトロップら)によって明らかにした。MTTのように、MTSは細胞によってホルマザン産物に生体内還元されるが、MTTとは異なり、ホルマザン産物は処理なしで培地中に直接溶解する。
細胞処理の終了時に、0.22μmで濾過した、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS,Ref 17-513Q,Batch 6MB0152,キャンブレックス社)中のMTS(2mg/mLで20mL,Ref G1111,Batch 235897,Exp 03/2009,プロメガ社,シャルボニエール,フランス)とPMS(0.92mg/mLで1mL,Ref P9625,Batch 065K0961,シグマ社)とを新しく混合した溶液40μLを各穴に添加した。培養プレートを37℃で2時間インキュベートした。各穴の吸光度(OD)を、VICTOR3TM1420多標識計数器(Wallac,パーキンエルマー社,クルタブフ,フランス)を用いて490nmで測定した。
4.データの提示
4.1. IC50のデータを実施例1のようにして決定した。
5.結果
5.1. LTX-302
試験したヒト腫瘍細胞株10種すべてにおいて、LTX-302化合物に感受性を有し、U-937細胞株およびRaji細胞株それぞれでIC50値が5.30±2.02μM〜12.54±3.52μMの範囲であった。
10種の感受性を有する細胞株で得られたLTX-302化合物の平均IC50値は8.11±2.44μMであり、中央値が7.53μMであった。
5.2. LTX-313
試験したヒト腫瘍細胞株10種すべてにおいて、LTX-313化合物に感受性を有し、Ramos細胞株およびRaji細胞株それぞれでIC50値が3.21±2.81μM〜16.08±4.86μMの範囲であった。
10種の感受性を有する細胞株で得られたLTX-313化合物の平均IC50値は7.05±3.91μMであり、中央値が5.89μMであった。
5.3. LTX-315
試験したヒト腫瘍細胞株10種すべてにおいて、LTX-315化合物に感受性を有し、U-937細胞株およびRaji細胞株それぞれでIC50値が1.15±0.42μM〜4.93±1.03μMの範囲であった。
10種の感受性を有する細胞株で得られたLTX-315化合物の平均IC50値は3.01±1.36μMであり、中央値が2.93μMであった。
5.4. LTX-320
試験したヒト腫瘍細胞株10種すべてにおいて、LTX-320化合物に感受性を有し、Hs445細胞株およびRaji細胞株それぞれでIC50値が2.22±NAμM〜11.26±3.42μMの範囲であった。
10種の感受性を有する細胞株で得られたLTX-320化合物の平均IC50値は5.03±2.82μMであり、中央値が4.84μMであった。
5.5. LTX-329
試験したヒト腫瘍細胞株10種すべてにおいて、LTX-329化合物に感受性を有し、Hs445細胞株およびRaji細胞株それぞれでIC50値が2.46±NAμM〜8.70±1.70μMの範囲であった。
10種の腫瘍細胞株で得られたLTX-329化合物の平均IC50値は5.76±2.27μMであり、中央値が5.72μMであった。
5.6. 総合的なコメント
KARPAS-299細胞株およびRaji細胞株は、試験したどのLTX化合物でも最も抵抗性を有する細胞株である。
Hs445細胞株,Ramos細胞株およびU-937細胞株は、試験したどのLTX化合物でも最も感受性を有する細胞株である。
LTX-315化合物が、5つの試験化合物の中で最も強い化合物である。
6.結論
⇒ 5つすべての試験化合物(すなわち、LTX-302,LTX-313,LTX-315,LTX-320およびLTX-329)は、試験した10種のヒト癌細胞株に対して細胞毒性活性を示し、IC50値がマイクロモラーの範囲であった。
⇒ LTX-315化合物が最も強い試験化合物であり、試験した10種すべてのヒト癌細胞株でIC50値が1〜5マイクロモラーである。
実施例3
インビトロの溶血作用
試験の原理
ヒト赤血球に対するLTX-315ペプチドの溶血作用を測定した。
材料および方法
赤血球を単離するために、新たに回収したヒト血液を1500rpmで10分間遠心分離した。1500rpmで10分間の遠心分離によってPBS[150mMのNaClを有する35mMのリン酸緩衝液,pH7.4]で赤血球(RBC)を3回洗浄し、PBSでヘマトクリット値を10%に調整した。このペプチドの最終濃度範囲が1200μg/mL〜1μg/mL、RBC濃度が1%になるようにLTX-315溶液を添加した。その結果得られた懸濁液を撹拌しながら37℃で1時間インキュベートした。インキュベート後、この懸濁液を4000rpmで5分間遠心分離し、上清の405nmの吸光度を測定しながら、放出されたヘモグロビンを観察した。PBSを陰性対照として用い、溶血は引き起こさないものとして想定された。0.1%のトリトンを陽性対照として用い、完全な溶血を引き起こすものとして想定された。
試験物質:LTX-315
基準物質:PBS(陰性対照)およびトリトンX-100(陽性対照)
反応混合物の成分:LTX-315,10%トリトンX-100,PBSおよびRBC(10%ヘマトクリット)
(表C)
Figure 0005913982
評価方法:
放出されたヘモグロビンを、405nmでの上清の吸光度を測定することによって観測し、溶血した割合を下記式により算出した:
溶血(%)=[(A405 LTX-315−A405 PBS)/(A405 0.1%トリトンX-100−A405 PBS)]×100
溶血50%に相当するLTX-315の濃度(EC50)を用量反応曲線から決定した。
結果
5つの異なった実験の平均値および標準偏差を以下に示す。このデータは図1にも示す。図1から、LTX-315のEC50の平均値が1200μg/mL(833μM)より高いことがわかる。
(表D)
Figure 0005913982
実施例4
マウスにおけるマウスA20 B細胞リンパ腫腫瘍に対する薬力学的効果
試験の原理
この研究の目的は、マウスにおけるマウスA20 B細胞リンパ腫に対する種々の用量レベルでのLTX-315の効果を調査することであった。
材料および方法
無菌食塩水に溶解しているLTX-315を腫瘍内注入することによって投与を行った。
マウスA20細胞(ATCC,LGCプロモケムAB社,ミドルセックス,イギリス)5百万個を50μLの量でメスのマウスの腹部に皮下播種した。これらマウスを4グループに別けた(詳細は下記表5を参照)。この腫瘍が直径約5mm(最小で20mm2)の所望するサイズに達したときに腫瘍内処理を開始した。
注入につき1mg(グループ1),0.5mg(グループ2)および0.25mg(グループ3)のLTX-315の3つの用量レベルを調査した。すべての注入において量は50μLであった。LTX-315を0.9%NaClの無菌水溶液に溶解した。この媒体を対照として用いた(グループ4)。4つすべてのグループは3回注入された。
定期的に腫瘍を測定し、マウスの体重を量ることによって、この研究を通して、この動物を監視した。最大腫瘍組織量が125mm2に達するまで、または、重篤な有害事象が発生する(すなわち、追跡調査中に処理の繰り返しによって傷が形成される)まで、このマウスを追跡調査し、その後このマウスを犠死させた。腫瘍サイズの測定にキャリパーを用い、健康管理として重量測定および身体検査を行った。
動物:6〜8週齢の特定病原体未感染メスBalb/cマウスがハーラン(イングランド,UK)から供給された。
動物の状態調節:標準的な研究用飼料および水で動物を飼育した。
平均体重,用量,経路および処理スケジュールを下記表5に示す。
Figure 0005913982
結果:
様々な処理における抗腫瘍効果を、平均腫瘍サイズとして下記表6に示す。
Figure 0005913982
種々の処理グループにおける腫瘍反応の程度を下記表7にまとめる。
Figure 0005913982
考察/結論
グループ3は、最も少ない用量のLTX-315(0.25mg/用量)を投与され、初めの数日間は阻害効果が小さいことがわかった。グループ1およびグループ2は、それぞれ1.0mg/用量および0.5mg/用量のLTX-315用量を投与され、すべての動物が部分的なまたは完全な腫瘍反応を示した。最適化された用量を投与されたグループ(グループ1)の処理マウス7匹のうち3匹で、抗腫瘍活性が完全な腫瘍反応をもたらしたことがわかった。
概して、グループ1は他の2グループより壊死が酷くかつ傷の形成が多いことがわかった。傷の形成以外、他の有害事象や毒性効果は、いずれの動物グループにおいても見られなかった。
LTX-315の1mgと0.5mgとの両方とも、この研究の最初の期間においては、抗腫瘍効果が強くかつ早いことを示した。しかしながら、研究が進むにつれ、グループ1よりグループ2の方が再発する動物が多くなる。
実施例5
マウスにおけるマウスCT26WT大腸癌腫瘍に対するLTX-315の効果
材料および方法
無菌生理食塩水(滅菌水中0.9%NaCl)に溶解しているLTX-315を腫瘍内注入することによって投与を行った。
マウスCT26WT細胞(ATCC,LGCプロモケムAB社(ブロース,スウェーデン))5百万個を50μLの量でメスのマウス全40匹それぞれの腹部表面に皮下播種した。これらマウスを5グループに別けた。各グループにつきマウスは8匹であった。この腫瘍が所望のサイズである20mm2に達したときに腫瘍内注入による処理を開始した。グループ1は1日目だけ処理し、グループ2は1日目および2日目に、グループ3は1日目と3日目に、グループ4は1日目,2日目および3日目に処理した。毎日の処理はすべて、50μLに溶解した1mgのLTX-315(20mg/mL)を1回の注入で行った。グループ5は、LTX-315の媒体50μLで処理した(グループ5)。
定期的に腫瘍を測定(デジタルキャリパー)し、マウスの体重を量ることによって、この研究を通して動物を監視した。最大腫瘍組織量が125mm2に達するまで、または、重篤な有害事象が発生する(すなわち、観察期間中、処理の繰り返しによって傷が形成される)まで、このマウスを追跡調査し、その後、このマウスを犠死させた。健康管理として重量測定および身体検査を行った。
動物:6〜8週齢の特定病原体未感染メスBalb/cマウスがハーラン(イングランド,UK)から供給された。
動物の状態調節:標準的な動物の設備条件。
平均体重,用量,経路および処理スケジュールを下記表8に示す。
Figure 0005913982
結果
様々な処理の抗腫瘍効果を、平均腫瘍サイズとして下記表9に示す。
Figure 0005913982
LTX-315で処理したすべての動物のうち圧倒的多数で完全な腫瘍反応が見られた。種々の処理グループにおける腫瘍反応の程度を下記表10にまとめる。
Figure 0005913982
考察/結論
腫瘍が所望のサイズである最小で20mm2に達したとき処理を開始し、そして最大腫瘍組織量が125mm2に達したときに動物を犠死させた。
対照動物(グループ5)の8匹うち6匹を犠死させた17日目を研究終了と規定した。
LTX-315処理計画すべてで、抗CT26WT腫瘍効果が強いという結果となった。
全体的に、処理した動物32匹のうち27匹で、完全な腫瘍反応が見られ、4匹が部分的な反応を示した。たった1匹の動物(グループ3)だけが処理に対する反応を示さなかった。提示した結果から、処理した4グループすべてで、全般的な腫瘍反応が極めて類似していることがわかり、このデータは、腫瘍の再発の程度がグループ1,3および4よりグループ2の方が高いことも示している。さらに、追跡調査終了時にグループ2では腫瘍がないことを示す動物がより少なかった(図2)。
処理したグループすべてで壊死および完全な腫瘍反応が見られた。グループ1で8匹の動物のうち4匹が、グループ2で8匹の動物のうち2匹が、グループ3で8匹の動物のうち5匹が、グループ4で8匹の動物のうち5匹が、完全な腫瘍反応を示した。この段階で、腫瘍は完全に壊死し、腫瘍の位置で傷のかさぶたが形成された。
処理グループすべての腫瘍部位で壊死が見られた。概して、壊死ならびに傷およびかさぶたの形成は、LTX-315をたった1回の注入しか行わなかったグループ1よりグループ2,3および4の方が多いことがわかった。3回の注入を行ったグループ4の動物は、壊死ならびに傷およびかさぶたの形成が最も多いことがわかった。グループ1とグループ4との壊死の差異は極めて大きいが、処理数が最大の動物は上手く対応しているように見えた。局所的に壊死した組織および傷の形成を除いて、毒性効果や他の副作用は処理したグループの動物のいずれにも見られなかった。
試験したLTX-315の4つの処理計画すべてで、マウスCT26WT腫瘍に対する抗腫瘍効果が強いことが示された。
壊死ならびに傷およびかさぶたの形成の量は、行ったLTX-315の処理数に比例した。
実施例6
感受性を有する多剤耐性癌細胞と正常ヒト細胞とに対するLTX-315活性
(表E)
Figure 0005913982
上記データから、様々な癌細胞株に対してLTX-315は広範囲な活性を有し、正常ヒト細胞に対して細胞毒性効果が有意に極めて弱いことがわかる。
実施例7
マウスA20 B細胞リンパ腫およびマウスCT26WT大腸上皮性悪性腫瘍細胞をマウスに再免疫試験し、完全に腫瘍が退行した。
この研究は、以前LTX-315の処理を受け完全に腫瘍が退行したことを示す動物における腫瘍成長の効果を調査しようとするものである。
方法:以前1mgのLTX-315で処理(n=4)または以前0.5mgもしくは1mgのLTX-315で処理(n=9)したメスBalb−cマウスに、マウスA20 B細胞リンパ腫細胞またはCT26WT大腸上皮性悪性腫瘍細胞(5百万個)のいずれかをそれぞれ再播種(腹部領域に皮下注射)し、6週間後にLTX-315で最初の処理を行った。再播種後36日まで腫瘍成長を監視した。
対照動物と比較したR315-03の研究において、以前LTX-315(1mg)で処理した4匹のマウスすべてで腫瘍成長の有意な阻害(P<0.006)が見られ(図2)、3週間後、1匹の動物で再発が見られたが、他の3匹のマウスで完全な腫瘍の退行が見られた(図3)。
以前LTX-315(0.5または1mg)で処理した9匹のマウスにおいて、対照動物と比較して、腫瘍成長の阻害(P<0.01)が見られた(図3)。図20において18日後に腫瘍サイズが突然小さくなったことは、大きな腫瘍を有する6匹のマウスが死んだことによって説明される。7匹のマウスで阻害が見られ、2匹の動物で完全な退行が見られた(図5)。
総合すれば、これらデータから、LTX-315によりマウス固形腫瘍(マウスA20 B細胞リンパ腫またはCT26WT大腸上皮性悪性腫瘍)の最初の処理の受けた完全な腫瘍の退行が、再播種された同腫瘍の成長に対して内在性の長期的防御の一種をもたらすことが示唆される。CT26WT大腸腫瘍を有する動物と比較すると、A20 B細胞リンパ腫腫瘍を有する動物の方が、腫瘍成長の阻害がより顕著であった。
実施例8
マウスA20 B細胞リンパ腫モデルにおけるLTX-315の免疫学的効果。インビボの脾臓細胞適合移植の予備的研究。
この研究は、R315-33の研究で見られた動物への再播種後、同腫瘍の成長に対する長期的防御を、LTX-315で処理されたドナー動物から得られた膵臓細胞を介して、ナイーブな移植対象に受動的に移すことができるか調査するために始められた。
10匹のメスBalb/cマウスそれぞれの腹部表面にA20細胞を播種(50μL中5百万個を皮下注射)した(n=32)。腫瘍が20mm2に達した時点で、腫瘍内注入されるLTX-315(1mg)を50μLの量で3日間毎日一度、腫瘍に注射した。腫瘍サイズ(mm2)および体重をその後監視し、いかなる腫瘍の再成長が発見された場合、さらにLTX-315を注射した。続いて、完全な腫瘍退行を示すマウスを犠死させ、脾細胞を移植するためのドナーとして用い、一方、ナイーブなドナーマウスを対照として用いた。ドナーマウスの脾臓を切除し、細胞を単離した。ナイーブな移植されるマウスを放射線照射し2グループに別けた。グループ1は治癒したマウスから単離した脾細胞を移植され、一方、グループ2はナイーブなマウスから単離した脾細胞を移植された。新しく調製された細胞を、尾静脈から注射した(100μLあたり20×106)。24時間後、上記のようにして、移植マウスの腹部表面に5百万個のマウスA20 B細胞リンパ腫細胞を播種した。最大腫瘍組織量が〜125mm2に達するまで腫瘍サイズおよび体重を監視し、または、重篤な有害事象が発生(すなわち、腫瘍組織壊死による傷の形成)した時点でマウスを犠死させた。
ナイーブなドナーからの脾細胞を移植された対照動物と比較したとき、LTX-315の処理を受けて完全な腫瘍退行を示す動物から単離した脾細胞を移植された、放射線照射されたマウスで、腫瘍成長の阻害が見られた(図6)。即時型炎症反応を示唆するLTX-315処理マウスの脾細胞の移植対象における腫瘍の色および質感に差異があることにも留意した。
これらの所見に基づき、このデータは、LTX-315の処理を受けてA20−Bリンパ腫腫瘍の完全な退行を以前示した動物の脾細胞を移植した動物の適合免疫反応の証拠を提供する。このデータは、LTX-315の処理が、免疫反応を惹起することによって特定の腫瘍に対する長期的防御を与える可能性を示唆する。
実施例9
この研究の目的は、10mg/mLのLTX-315:
(i)単独;および
(ii)ワクチン接種前のワクチン接種部位に注入した20mg/mLのLTX-315との組み合わせ
で溶解されたA20リンパ腫細胞による予防接種の抗癌効果を調査するためであった。
全部で、2つの異なった処理計画を用いた。
A20リンパ腫細胞を含有する成長培地に溶解したLTX-315を皮下注射することによって投与を行った。癌細胞の完全な溶解を確実にするために、注射する前、細胞−LTX-315の「カクテル」を30分間放置した。
グループ1(「ワクチン」)マウスの腹部表面に、1千万個のマウスA20細胞(ATCC,LGCプロモケムAB社(ブロース,スウェーデン))と10mg/mLのLTX-315(「A20溶解物」)との50μLの「カクテル」を皮下注射した。グループ2(「ワクチン+アジュバント」)マウスをグループ1のように処理したが、さらに、A20溶解物注入の5分前に20mg/mLのLTX-315を25μLワクチン接種部位に皮下注射した。グループ3(「対照」)マウスは処理しなかった。
処理後6週間目に、すべてのマウスの腹部表面に、5百万個のA20 B細胞リンパ腫生細胞を50μLの量で皮下に播種した。
定期的に腫瘍サイズを測定し、マウスの体重を計測することによって、この研究を通して動物を監視した。最大腫瘍組織量が〜130mm2に達するまでこのマウスを追跡調査し、その時点でこのマウスを犠死させた。
材料および方法
動物:6〜8週齢の特定病原体未感染メスBalb/cマウスがハーラン研究所(イングランド,UK;www.harlan.com)から供給された。
動物の状態調節:トロムセ大学の標準的な動物の設備条件。
試験物質:LTX-315(Lot 1013687)で溶解したマウスA20細胞およびLTX-315(Lot1013687)単独。
試験物質の調製:10×106個のA20細胞を10mg/mLのLTX-315/媒体50μLに添加した(「A20溶解物」)。この試験物質を混合して30分後に使用できる状態にした。LTX-315単独を、滅菌したH2O中0.9%NaClに溶解した。
媒体:2mMのL−グルタミン入りRPMI-1640または滅菌したH2O中0.9%NaCl。
参照物質:該当なし。
対照の処理:該当なし。
評価方法:腫瘍サイズの測定ならびに体重測定および検査による健康管理。
方法に関する追加データ:デジタルキャリパーを腫瘍サイズ測定に用い、体重測定および身体検査を健康管理に用いた。
平均体重,用量、経路および処理スケジュールを表11(下記)に示す。
Figure 0005913982
結果:
様々な処理の抗癌効果を下記表12に平均腫瘍サイズとして提示し、このデータをグラフ表示したものを図7に提供する。表12中、1日目を、ワクチン接種後6週間目にA20生細胞を播種した日とした。
Figure 0005913982
考察/結論:
処理を行ったとき(1日目)から6週間後に、A20 B細胞リンパ腫生細胞を播種し終え、腫瘍が最大許容腫瘍組織量〜130mm2に達した時点でこの動物を犠死させた。
対照グループと比較してLTX-315/A20溶解物の両方で処理したグループでは腫瘍の成長がより遅かったことがこの結果からわかる。グループ1の平均生存期間は28日間、グループ2では33日間、対照グループ(グループ3)では25日間であった。対照グループ(グループ3)と比較した平均生存期間の増加は、グループ1が12%、グループ2が35%であった。
このデータは、非処理の対照グループと比較して処理グループの生存を引き延ばすことを示している。34日目に、対照グループの最後の動物を犠死させた際、グループ2の動物の50%がまた生存し、一方、グループ1では37.5%の動物が生存していた。研究終了を60日目と規定した。この時点で、16匹の処理動物のうち全3匹は、最初から成長している腫瘍が完全に退行し、腫瘍がなくなった。研究終了時に、グループ1の動物の25%、グループ2の動物の12.5%は、腫瘍を発見しなかった。
肉眼的に、非処理の対照グループ(グループ3)と比較して処理グループ(グループ1および2)の間で形態学的差異があった。2つの処理グループの成長している腫瘍は、対照グループで見られた腫瘍より白く、固かった。腫瘍の遅い成長速度とともにこの知見は、抗A20細胞の免疫反応が、LTX-315と溶解したA20細胞とのカクテルによるワクチン接種によって誘導されたことを示す。
従って、LTX-315は腫瘍細胞を溶解し、そして注入部位で正常細胞からの危険シグナルの放出を誘導することによって二重の用途を有する可能性がある。
本発明は上記特定の態様のみに限定する意図はなく、添付の請求の範囲から逸脱せずに、多くの態様,修飾および改良が容易であることが当業者とって明らかであると理解されるだろう。

Claims (5)

  1. 配列番号23式を有する化合物(LTX-315)
    または,
    その塩,そのエステル,もしくは,そのアミド
  2. 薬学的に許容し得る担体,希釈剤または賦形剤と組み合わせた、請求項に記載の化合物を含む組成物。
  3. 少なくとも1つの他の治療成分と組み合わせた、請求項に記載の化合物を含む組成物。
  4. ヒトの身体または動物の身体を治療するのに使用するための、請求項に記載の化合物。
  5. 抗腫瘍剤として使用するための、請求項に記載の化合物。
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