以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係る画像形成装置10について、図面に基づき詳細に説明する。本実施形態では、画像形成装置の一例として、タンデム方式のカラープリンタを例示する。画像形成装置は、例えば、複写機、ファクシミリ装置、及びこれらの複合機等であってもよい。
図1は、画像形成装置10の内部構造を示す断面図である。また、図2は、画像形成装置10の内部の中間転写ユニット14の周辺を示した模式的な断面図である。この画像形成装置10は、箱形の筐体構造を備える装置本体11を備える。この装置本体11内には、シートPを給紙する給紙部12、給紙部12から給紙されたシートPに転写するトナー像を形成する画像形成部13、前記トナー像が一次転写される中間転写ユニット14(転写装置)、画像形成部13にトナーを補給するトナー補給部15、及び、シートP上に形成された未定着トナー像をシートPに定着する処理を施す定着部16が内装されている。さらに、装置本体11の上部には、定着部16で定着処理の施されたシートPが排紙される排紙部17が備えられている。
装置本体11の上面の適所には、シートPに対する出力条件等を入力操作するための図略の操作パネルが設けられている。この操作パネルには、電源キーや出力条件を入力するためのタッチパネルや各種の操作キーが設けられている。
装置本体11内には、さらに、画像形成部13より右側位置に、上下方向に延びるシート搬送路111が形成されている。シート搬送路111には、適所にシートを搬送する搬送ローラー対112が設けられている。また、シートのスキュー矯正を行うと共に、後述する二次転写のニップ部に所定のタイミングでシートを送り込むレジストローラー対113も、シート搬送路111における前記ニップ部の上流側に設けられている。シート搬送路111は、シートPを給紙部12から排紙部17まで、画像形成部13及び定着部16を経由して搬送させる搬送路である。
給紙部12は、給紙トレイ121、ピックアップローラー122、及び給紙ローラー対123を備える。給紙トレイ121は、装置本体11の下方位置に挿脱可能に装着され、複数枚のシートPが積層されたシート束P1を貯留する。ピックアップローラー122は、給紙トレイ121に貯留されたシート束P1の最上面のシートPを1枚ずつ繰り出す。給紙ローラー対123は、ピックアップローラー122によって繰り出されたシートPをシート搬送路111に送り出す。
給紙部12は、装置本体11の、図1に示す左側側面に取り付けられる手差し給紙部を備える。手差し給紙部は、手差しトレイ124、ピックアップローラー125、及び給紙ローラー対126を備える。手差しトレイ124は、手差しされるシートPが載置されるトレイであり、手差しでシートPを給紙する際、図1に示すように、装置本体11の側面から開放される。ピックアップローラー125は、手差しトレイ124に載置されたシートPを繰り出す。給紙ローラー対126は、ピックアップローラー125によって繰り出されたシートPをシート搬送路111に送り出す。
画像形成部13は、シートPに転写するトナー像を形成するものであって、異なる色のトナー像を形成する複数の画像形成ユニットを備える。この画像形成ユニットとして、本実施形態では、後述する中間転写ベルト141の回転方向上流側から下流側へ(図1に示す左側から右側へ)向けて順次配設された、マゼンタ(M)色の現像剤を用いるマゼンタ用ユニット13M、シアン(C)色の現像剤を用いるシアン用ユニット13C、イエロー(Y)色の現像剤を用いるイエロー用ユニット13Y、及びブラック(Bk)色の現像剤を用いるブラック用ユニット13Bkが備えられている。各ユニット13M、13C、13Y、13Bkは、それぞれ感光体ドラム20(像担持体)と、感光体ドラム20の周囲に配置された帯電装置21、現像装置23、一次転写ローラー24(転写部材)及びクリーニング装置25とを備える。また、各ユニット13M、13C、13Y、13Bk共通の露光装置22が、画像形成ユニットの下方に配置されている。
感光体ドラム20は、その軸回りに回転駆動され、その周面に静電潜像及びトナー像が形成される。この感光体ドラム20としては、アモルファスシリコン(a−Si)系材料を用いた感光体ドラムを用いることができる。なお、図2に示されるように、各色の画像形成ユニットに対応して、感光体ドラム20M、20C、20Y、20Bkがそれぞれ配置される。帯電装置21は、感光体ドラム20の表面を均一に帯電する。帯電装置21としては、帯電ローラーと、前記帯電ローラーに付着したトナーを除去するための帯電クリーニングブラシとを備える、接触帯電方式による帯電装置を採用することができる。露光装置22は、光源やポリゴンミラー、反射ミラー、偏向ミラーなどの各種の光学系機器を有し、均一に帯電された感光体ドラム20の周面に、画像データに基づき変調された光を照射して、静電潜像を形成する。
現像装置23は、感光体ドラム20上に形成された静電潜像を現像するために、感光体ドラム20の周面にトナーを供給する。現像装置23は、トナーとキャリアとからなる2成分現像剤用のものであり、二本の攪拌ローラー23A、磁気ローラー23B、及び現像ローラー23Cを含む。攪拌ローラー23Aは、2成分現像剤を攪拌しながら循環搬送することで、トナーを帯電させる。磁気ローラー23Bの周面には2成分現像剤層が担持され、現像ローラー23Cの周面には、磁気ローラー23Bと現像ローラー23Cとの間の電位差によってトナーが受け渡されることにより形成されたトナー層が担持される。現像ローラー23C上のトナーは、感光体ドラム20の周面に供給され、前記静電潜像が現像される。なお、本実施形態では、前記トナーはプラスの極性に帯電する特性を備える。
一次転写ローラー24は、中間転写ユニット14に備えられている中間転写ベルト141を挟んで感光体ドラム20と一次転写ニップ部Nを形成し、感光体ドラム20上のトナー像を中間転写ベルト141上に一次転写する。図2に示されるように、各色の感光体ドラム20に対向して、それぞれ、一次転写ローラー24M、24C、24Y、24Bkが配置される。各感光体ドラム20および一次転写ローラー24の間に、一次転写ニップ部NM、NC、NY、NBkが形成される。本実施形態では、一次転写ローラー24は、エピクロルヒドリンから構成される。また、一次転写ローラー24の外径は15mmであり、抵抗値は1000Vの電圧が印加された状態で1E+6Ωである。本実施形態では、後記のバイアス印加部95およびバイアス制御部96によって、転写動作時には、定電流制御をもってトナーの極性とは逆極性の転写バイアスが各色の一次転写ローラー24に印加される。また、転写動作時とは異なる非転写動作時の一部において、定電圧制御をもってトナーの極性と同極性の転写バイアスが各色の一次転写ローラー24に印加される。また、クリーニング装置25は、トナー像転写後の感光体ドラム20の周面を清掃する。
中間転写ユニット14は、画像形成部13とトナー補給部15との間に設けられた空間に配置され、中間転写ベルト141と、図略のユニットフレームにて回転可能に支持された駆動ローラー142及び従動ローラー143とを備える。中間転写ベルト141は、無端状のベルト状回転体であって、その周面側が各感光体ドラム20の周面にそれぞれ当接するように、駆動ローラー142及び従動ローラー143に架け渡されている。駆動ローラー142には回転駆動力が与えられ、中間転写ベルト141は駆動ローラー142の回転により周回駆動される。本実施形態では、駆動ローラー142は、アルミ製の三ツ矢管から構成される。詳しくは、表層には絶縁性のアルマイト処理が施されている。前記表層の厚さは7μmであり、抵抗値は12.0LogΩ・cmに設定される。従動ローラー143の近傍には、中間転写ベルト141の周面上に残存したトナーを除去するベルトクリーニング装置138が配置されている。また、図1には示されていないが、図2に示されるように、周回される中間転写ベルト141の上面部には、更に、従動ローラー146、147が配置される。従動ローラー146、147は、中間転写ベルト141を張架する。本実施形態では、中間転写ベルト141は、イオン導電性の材料から構成される層を含む。詳しくは、Pvdf(ポリフッ化ビニリデン)およびCRゴム(クロロプレンゴム)のイオン導電性材料から構成される層を含む。高分子鎖間をイオンが伝播することによって、電気導電性が得られるイオン導電性の中間転写ベルト141によって、ベルト1本あたりの抵抗ムラが抑制される。
駆動ローラー142に対向して、二次転写ローラー145(シート転写部材)が配置されている。二次転写ローラー145は、中間転写ベルト141の周面に圧接されて二次転写ニップ部を形成している。中間転写ベルト141上に一次転写されたトナー像は、給紙部12から供給されるシートPに、前記二次転写ニップ部において二次転写される。本実施形態では、二次転写ローラー145は、エピクロルヒドリンから構成される。また、二次転写ローラー145の外径は20mmであり、抵抗値は1000Vの電圧が印加された状態で1E+7Ωである。
トナー補給部15は、画像形成に用いられるトナーを貯留するものであり、本実施形態ではマゼンタ用トナーコンテナ15M、シアン用トナーコンテナ15C、イエロー用トナーコンテナ15Y及びブラック用トナーコンテナ15Bkを備える。これらトナーコンテナ15M、15C、15Y、15Bkは、それぞれMCYBk各色の補給用トナーを貯留するものであり、コンテナ底面に形成されたトナー排出口15Hから、MCYBk各色に対応する画像形成ユニット13M、13C、13Y、13Bkの現像装置23に、後記で詳述するトナー搬送部30を通して各色のトナーを補給する。
定着部16は、内部に加熱源を備えた加熱ローラー161と、加熱ローラー161と配向配置された定着ローラー162と、定着ローラー162と加熱ローラー161とに張架された定着ベルト163と、定着ベルト163を介して定着ローラー162と対向配置され定着ニップ部を形成する加圧ローラー164とを備えている。定着部16へ供給されたシートPは、前記定着ニップ部を通過することで、加熱加圧される。これにより、前記二次転写ニップ部でシートPに転写されたトナー像は、シートPに定着される。
排紙部17は、装置本体11の頂部が凹没されることによって形成され、この凹部の底部に排紙されたシートPを受ける排紙トレイ171が形成されている。定着処理が施されたシートPは、定着部16の上部から延設されたシート搬送路111を経由して、排紙トレイ151へ向けて排紙される。
次に、本実施形態に係る中間転写ユニット14と比較される中間転写ユニット14A、14Bのバイアス制御と、その不具合について説明する。図3および図4は、中間転写ユニット14A、14Bにおいて、各色の感光体ドラム20から中間転写ベルト141上にトナー像が転写される際のタイミングチャートである。いずれも、各色の一次転写ローラー24に、転写電圧が印加されるタイミングが示されている。図3を参照して、中間転写ユニット14Aでは、感光体ドラム20から中間転写ベルト141にトナー像が転写される転写動作時には、一次転写ローラー24にトナーの極性とは逆極性の転写バイアスが印加される。すなわち、定電流制御をもって−10μAの転写電流が、一次転写ローラーに流入される。一方、複数のシートに対応して、中間転写ベルト141にトナー像が形成される際の紙間では、一次転写ローラー24にトナーの極性と同極性の転写バイアスが印加される。すなわち、定電圧制御をもって+500Vの転写電圧が、一次転写ローラーに印加される。そして、図3に示されるように、中間転写ベルト141の周回に対応して、各色の一次転写ニップ部において、順番に転写動作が実行される。この結果、中間転写ベルト141上に各色のトナー像が重なるように転写される。このように、図3に示される中間転写ユニット14Aでは、転写動作時と紙間時とを比較すると、中間転写ベルト141の厚さ方向において異なる方向に電界が形成される。このため、中間転写ベルト141内において、厚さ方向の一方にイオンが滞留しにくく、中間転写ベルト141の抵抗上昇が抑制される。
一方、図3に示される中間転写ユニット14Aでは、隣接する一次転写ニップ部同士での転写電流の干渉が生じやすい。図5は、図3の一部を拡大し、上記転写電流の干渉について説明するための図である。図5では、シアン色の一次転写ニップ部において、中間転写ベルト141上に転写されたトナー像が、中間転写ベルト141のベルト面と直交する方向から見た図としてタイミングチャートの下方に模式的に示されている。前述のように、中間転写ユニット14Aの各色の一次転写ニップ部では、紙間において、一次転写ローラー24にトナーの極性と同極性の転写バイアスが印加される。すなわち、図5において、シアン色のトナー像の先端部C1が転写される際、隣接するイエロー色の一次転写ローラー24Yには、トナーの極性と同極性の転写バイアスが印加されている(図5のYS1)。このため、前記先端部C1の形成のために、シアン色の一次転写ローラー24Cに流入される−10μAの転写電流の一部が、相対的に高い電位に設定されているイエロー色の一次転写ローラー24Yに向かって漏れ電流として流入される(図5の矢印D51)。この結果、前記先端部C1のトナー像の転写が十分行われず、中間転写ベルト141上においてトナー像の濃度低下が生じる。
同様に、シアン色のトナー像の後端部C2が転写される際、隣接するマゼンタ色の一次転写ローラー24Mには、トナーの極性と同極性の転写バイアスが印加されている(図5のMS2)。このため、前記後端部C2の形成のために、シアン色の一次転写ローラー24Cに流入される−10μAの転写電流の一部が、相対的に高い電位に設定されているマゼンタ色の一次転写ローラー24Mに向かって漏れ電流として流入される(図5の矢印D52)。この結果、前記後端部C2のトナー像の転写が十分行われず、中間転写ベルト141上においてトナー像の濃度低下が生じる。このように、中間転写ユニット14Aにおいて採用されるバイアス制御では、隣接する2つの一次転写ニップ部において、転写動作と紙間とが同時に存在する場合、転写電流の干渉(漏れ電流)が生じやすい。
次に、図4を参照して、本実施形態に係る中間転写ユニット14と比較される中間転写ユニット14Bのバイアス制御について説明する。中間転写ユニット14Bでは、先の中間転写ユニット14Aと比較して、紙間においても、転写動作時と同様に、各色の一次転写ローラー24にトナーの極性とは逆極性の転写バイアスが印加される点で相違する。すなわち、複数のシートに連続して画像が形成される場合、各色の一次転写ローラー24には、トナーの極性とは逆極性の転写バイアスが印加され続ける。この場合、上記のような転写電流の干渉が生じることはない。しかしながら、中間転写ベルト141の長期間に使用に伴って、前記転写バイアスによって中間転写ベルト141の厚さ方向の一方にイオンが滞留しやすい。この結果、中間転写ベルト141の抵抗値が上昇し、中間転写ベルト141のチャージアップや、ベルト上に担持されるトナー像の帯電が上昇することによって、二次転写不良などの画質欠陥が生じてしまう。
上記のような中間転写ユニット14Aおよび14Bにおける課題を解決するために、本実施形態では、バイアス制御部96が各色の一次転写ローラー24に印加される転写バイアスを好適に制御する。図6は、本実施形態に係る中間転写ユニット14において、バイアス制御部96が各色の一次転写ローラー24に印加する転写バイアスのタイミングチャートである。また、図7は、中間転写ユニット14のうち、シアン色およびイエロー色の一次転写ローラー24Cおよび24Yの周辺を拡大した模式図および電気的なブロック図である。また、図8は、本実施形態に係るバイアス制御のフローチャートである。
図7を参照して、中間転写ユニット14は、バイアス印加部95C、95Yおよび制御部90、濃度センサー98を備える。バイアス印加部95Cおよび95Yは、それぞれ一次転写ローラー24Cおよび24Yに電気的に接続される。バイアス印加部95Cおよび95Yは、それぞれ、一次転写ローラー24Cおよび24Yに転写バイアスを印加する。なお、他の色の一次転写ローラーにおいても、同様のバイアス印加部が接続される。前記転写バイアスによって、一次転写ローラー24と感光体ドラム20との間に転写電界が形成され、感光体ドラム20の周面から、中間転写ベルト141の表面にトナー像が転写される。
濃度センサー98は、中間転写ベルト141上に転写されたトナー像の濃度を検出する。濃度センサー98は、光反射式の濃度センサーである。
制御部90は、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)等から構成されている。また、制御部90には、前述のバイアス印加部95C、95Yに加え、濃度センサー98が電気的に接続されている。制御部90は、前記CPUがROMに記憶された制御プログラムを実行することにより、バイアス制御部96、漏出電流検出部97を備えるように機能する。
バイアス制御部96は、トナー像が感光体ドラム20から中間転写ベルト141に転写される転写動作時に、一次転写ローラー24にトナーの極性とは逆極性の転写バイアスを印加させる。また、バイアス制御部96は、前記転写動作が実行されていない非転写動作時に、一次転写ローラー24にトナーの極性と同極性の転写バイアスを印加させる。また、前記バイアス制御部96は、漏出電流検出部97の検出結果に応じて、隣接非転写動作時の第1の転写電流を設定する。
漏出電流検出部97は、感光体ドラム20上に形成された所定の濃度のトナー像が、隣接転写動作時に、中間転写ベルト141に転写された第1の転写像と、前記所定の濃度のトナー像が、隣接非転写動作時に、中間転写ベルト141に転写された第2の転写像との間の濃度センサー98の検出結果の差に応じて、転写電流の漏出を検出する。
本実施形態では、転写動作時において、異なる値の転写電流が一次転写ローラー24に流入される。バイアス制御部96は、複数の一次転写ニップ部Nのうちの第1の転写ニップにおける転写動作時であって、かつ、第1の転写ニップに隣接する第2の転写ニップにおける非転写動作時である隣接非転写動作時T1に、第1の転写ニップを形成する第1の一次転写ローラー24に第1の転写電流Low1を流入させる。また、バイアス制御部96は、前記第1の転写ニップにおける転写動作時であって、かつ、前記第2の転写ニップにおける転写動作時である隣接転写動作時T2に、前記第1の一次転写ローラー24に第2の転写電流Low2を流入させる。
より詳しくは、図6を参照して、1枚目のシートに対するマゼンタ色(M)の転写動作時T(M)であって、隣接するシアン色(C)の非転写動作時(NT1(C))である隣接非転写動作時(T1(M))では、マゼンタ色の一次転写ローラー24Mに第1の転写電流Low1が流入される。一方、マゼンタ色(M)の転写動作時T(M)であって、隣接するシアン色(C)の転写動作時(T1(C)、T2(C))である隣接転写動作時(T2(M))では、マゼンタ色の一次転写ローラー24Mに第2の転写電流Low2が流入される。そして、本実施形態では、第1の転写電流Low1は、第2の転写電流Low2よりも絶対値が大きく設定される。このため、隣接非転写動作時(T1(M))において、マゼンタ色の一次転写ローラー24Mから中間転写ベルト141を介してシアン色の転写ニップNCに、第1の転写電流Low1の一部が漏出した場合であっても、マゼンタ色の転写動作に必要な転写電流を確保することができる。この結果、マゼンタ色の隣接非転写動作時(T1(M))および隣接転写動作時(T2(M))を通して、感光体ドラム20Mから中間転写ベルト141にトナー像の一次転写が安定して実行される。
同様に、図6に示されるように、マゼンタ色以外の一次転写ローラー24においても、隣接非転写動作時(T1(C)、T1(Y)、T1(Bk))では、隣接転写動作時(T2(C)、T2(Y)、T2(Bk))よりも絶対値が大きな転写電流Low1が各一次転写ローラー24に流入される。なお、中間転写ベルト141の回転方向において、上流側および下流側に他の一次転写ローラー24が隣接するシアン色(C)およびイエロー色(Y)の一次転写ローラー24では、転写動作の開始時および終了時に、隣接非転写動作(T1(C)、T1(Y))が存在する。
次に、本実施形態において、漏出電流検出部97が、一次転写ローラー24から隣接する一次転写ニップ部Nへの転写電流の漏出を検出する態様について説明する。図7および図8を参照して、ここでは、バイアス印加部95Cからシアン色の一次転写ローラー24Cに流入された転写電流の一部が、イエロー色の一次転写ニップ部NY側に漏出する態様にて説明する。
図8を参照して、漏出電流検出部97は、画像形成装置10の画像形成動作に先立ち、漏出電流検出動作を実行する(ステップS001)。まず、漏出電流検出部97は、濃度センサー98(図7)を制御して、隣接非転写動作時T1における転写像濃度DT1を検出させる(ステップS002)。より詳しくは、漏出電流検出部97は、不図示の駆動手段を制御して、各色の感光体ドラム20および中間転写ベルト141を回転駆動させる。そして、予め定められた濃度のトナー像が、感光体ドラム20C上に形成される。この際、バイアス制御部96によって、シアン色の一次転写ローラー24Cには、トナーの極性とは逆極性の転写バイアスが印加される(この際の一次転写ローラー24Cに流入される転写電流がI1と定義される)。一方、バイアス制御部96によって、イエロー色の一次転写ローラー24Yには、トナーの極性と同極性の転写バイアスが印加される。そして、一次転写ローラー24Cに印加された転写バイアスによって、感光体ドラム20Cから中間転写ベルト141に前記トナー像が転写される。濃度センサー98は、該転写されたトナー像の濃度DT1を検出する。
次に、漏出電流検出部97は、濃度センサー98を制御して、隣接転写動作時T2における転写像濃度DT2を検出させる(ステップS003)。より詳しくは、同様に、漏出電流検出部97は、不図示の駆動手段を制御して、各色の感光体ドラム20および中間転写ベルト141を回転駆動させる。そして、前記予め定められた濃度のトナー像が、感光体ドラム20C上に形成される。この際、バイアス制御部96によって、シアン色の一次転写ローラー24Cには、トナーの極性とは逆極性の転写バイアスが印加される。一方、バイアス制御部96によって、イエロー色の一次転写ローラー24Yにも、トナーの極性とは逆極性の転写バイアスが印加される。一次転写ローラー24Cに印加された転写バイアスによって、感光体ドラム20Cから中間転写ベルト141に前記トナー像が転写される。濃度センサー98は、該転写されたトナー像の濃度DT2を検出する。
漏出電流検出部97は、上記の濃度DT1およびDT2から、濃度差ΔDT(=DT2−DT1)を算出する(ステップS004)。ここで、ステップS002において、イエロー色の一次転写ローラー24Yにトナーの極性と同極性の転写バイアスが印加されたことによって、転写電流I1の一部が、イエロー色の一次転写ニップ部NY側に漏出した場合、濃度DT2と比較して濃度DT1は小さくなる。換言すれば、上記の濃度差ΔDTが正の値を示す。
その後、バイアス制御部96は、漏出電流検出部97によって算出された濃度差ΔDTに応じて、以後の画像形成動作における隣接非転写動作時T1において、一次転写ローラー24Cに流入させる転写電流Low1を決定する(ステップS005)。詳しくは、バイアス制御部96は、濃度差ΔDTが大きいほど、隣接転写動作時T2の転写電流Low2に対して、隣接非転写動作時T1の転写電流Low1を、より大きく設定する。このように、本実施形態では、漏出電流検出部97が、濃度センサー98の検出結果の差に応じて、転写電流の漏出を検出する。そして、バイアス制御部96は、漏出電流検出部97の検出結果に応じて、第1の転写電流Low1を設定する。この結果、中間転写ベルト141を介して転写電流の一部が隣接する一次転写ニップ部Nに漏出しやすい場合であっても、転写動作のための転写電流を確保することが可能となる。
上記と同様の転写バイアスにおける制御が、各一次転写ローラー24(24M、24C、24Y、24Bk)に対して実行される。なお、バイアス制御部96は、上記の制御を特定の環境に対して実行してもよい。前述のように、本実施形態では、中間転写ベルト141はイオン導電性材料から構成される。このような材料においては、高温高湿環境において、その抵抗値が1桁低下する場合がある。この場合、前述のような転写電流の干渉(漏れ電流)が顕著となりやすい。したがって、不図示の環境センサーによって、一例として、温度28度、相対湿度80%以上の環境が検出された場合に、漏出電流検出部97が、漏出電流検出動作を実行してもよい。また、いずれかの一次転写ローラー24において、転写電流の漏出が検出された後、他の一次転写ローラー24の転写電流(第1の転写電流Low1)が設定されてもよい。この場合、漏出電流検出動作が短時間で終了される。
以上、上記の実施形態によれば、バイアス制御部96は、シアン色に代表される第1の一次転写ニップ部NCにおける転写動作時であって、かつ、イエロー色に代表される第2の一次転写ニップ部NYにおける非転写動作時である隣接非転写動作時T1(C)に、シアン色の一次転写ローラー24Cに第1の転写電流Low1を流入させる。また、バイアス制御部96は、シアン色の一次転写ニップ部NCにおける転写動作時であって、かつ、イエロー色の一次転写ニップ部NYにおける転写動作時である隣接転写動作時T2(C)に、シアン色の一次転写ローラー24Cに第2の転写電流Low2を流入させる。そして、第1の転写電流Low1は、第2の転写電流Low2よりも大きく設定される。このため、隣接非転写動作時T1(C)に、シアン色の一次転写ローラー24Cに流入された第1の転写電流Low1の一部が、中間転写ベルト141を介してイエロー色の一次転写ニップ部NYに向かって漏出した場合であっても、シアン色の一次転写ニップ部NCにおける転写動作のための転写電流を確保することができる。したがって、シアン色の一次転写ニップ部NCにおける転写電流の不足に伴う濃度低下が好適に抑止される。また、非転写動作時に、トナーの極性と同極性の転写バイアスが印加されることによって、中間転写ベルト141の厚さ方向において転写動作時とは逆方向の電界が形成される。このため、中間転写ベルト141の長期的な使用に伴う、抵抗値の上昇が可及的に抑止される。
また、上記の実施形態によれば、漏出電流検出部97は、隣接非転写動作時T1に第1の一次転写ローラー24に所定の転写電流が流入された場合の第1の一次転写ローラー24から第2の一次転写ニップ部Nへの転写電流の漏出を検出する。そして、漏出電流検出部97によって検出された前記転写電流の漏出が大きいほど、バイアス制御部96が、第1の転写電流Low1を大きく設定する。このため、転写電流の漏出に応じて、第1の転写電流Low1を大きく設定し、転写動作のための転写電流を確保することが可能となる。
また、上記の実施形態によれば、第1の一次転写ニップ部Nにおける転写動作時に、第1の一次転写ローラー24から第2の一次転写ニップ部Nに向かって転写電流が漏出した場合、第1の一次転写ニップ部Nにおける転写効率が低下される。この結果、隣接転写動作時T2の転写像と比較して、隣接非転写動作時T1の転写像のトナー濃度が低くなる。したがって、漏出電流検出部97が、第1の転写像と第2の転写像との間の濃度センサー98の検出結果に応じて、転写電流の漏出を検出することが可能となる。この結果、転写電流の漏出に応じて、第1の転写電流Low1を好適に設定することが可能となる。
また、上記の実施形態によれば、高分子鎖間をイオンが伝播することによって電気導電性が得られるイオン導電性の材料からなる中間転写ベルト141においても、イオンが中間転写ベルトの厚さ方向の一方に滞留し、抵抗値の上昇が引き起こされることが好適に抑止される。
また、上記の実施形態によれば、第1の一次転写ニップ部Nにおける転写電流の不足に伴う濃度低下が好適に抑止される。また、中間転写ベルト141の長期的な使用に伴う、抵抗値の上昇が可及的に抑止される。このため、中間転写ベルト141のチャージアップやトナー像の帯電上昇による画質欠陥が防止される。
また、上記の実施形態によれば、複数のシートに連続して画像が形成される際に、第2の一次転写ニップ部が紙間に相当する時であっても、転写電流の漏れを抑制しながら、第1の一次転写ニップ部において転写動作を実行することができる。このため、隣接する転写ニップ同士において、転写動作および非転写動作が同期して実行される場合と比較して、紙間を狭く設定することができる。
以上、本発明の一実施形態につき詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、例えば以下のような変形実施形態を取ることができる。
上記実施形態では、トナーがプラスの極性に帯電する態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。トナーがマイナスの極性に帯電する場合であっても、隣接非転写動作時にトナーの極性とは逆極性の転写バイアスが印加されるとともに、隣接転写動作時よりも絶対値が大きな転写電流が一次転写ローラー24に流入されることによって、転写電流の不足に伴う画質欠陥が抑止される。
また、上記の実施形態では、濃度センサー98の検出結果によって、漏出電流検出部97が、転写電流の漏出を検出する態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。図9は、本発明の変形実施形態における電気的なブロック図である。本変形実施形態では、先の実施形態と比較して、電圧変動検出部99を備える点で相違する。電圧変動検出部99は、イエロー色の一次転写ローラー24Yに印加される転写電圧の変動量を検出する。バイアス制御部96Aは、バイアス印加部95C、95Yを制御して、シアン色の一次転写ローラー24Cに、トナーの極性とは逆極性の転写バイアスを印加するとともに、イエロー色の一次転写ローラー24Yには、トナーの極性と同極性の転写バイアスを印加する。一例として、シアン色の一次転写ローラー24Cには、定電流制御をもって−10μAの転写電流が流入される。一方、イエロー色の一次転写ローラー24Yには、定電圧制御をもって+500Vの転写バイアスが印加される。この際、シアン色の一次転写ローラー24Cに流入された転写電流の一部が、中間転写ベルト141を解して、イエロー色の一次転写ニップ部NYに漏出した場合(図9の矢印D9)、一次転写ローラー24Yに印加される転写バイアスに変動が生じる。該変動が電圧変動検出部99によって検出されることに応じて、漏出電流検出部97Aが一次転写ローラー24Cからの転写電流の漏出を検出する。そして、バイアス制御部96Aは、該転写電流の漏出に応じて、隣接非転写動作時における第1の転写電流Low1を設定する。なお、非転写動作時に一次転写ローラー24に印加される転写バイアスが定電流制御による場合、電圧変動検出部99に変わって、電流変動検出部が配置されてもよい。
上記の変形実施形態によれば、隣接非転写動作時T1に、第1の一次転写ローラー24から転写電流の一部が第2の一次転写ニップ部Nに向かって漏出した場合、第2の一次転写ローラー24に流入される転写電流、または第2の一次転写ローラー24に印加される転写電圧に変動が生じる。したがって、電圧変動検出部99または上記の電流変動検出部が検出した転写電流または転写電圧の変動量に応じて、漏出電流検出部97Aが第1の一次転写ローラー24からの転写電流の漏出を検出することが可能となる。この結果、転写電流の漏出に応じて、第1の転写電流Low1を好適に設定することが可能となる。