JP5907521B2 - 原水の産出地判定方法および原水の産出地判定システム - Google Patents
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Description
地下水の起源である降雨は、浸み込む場所や標高、海岸からの距離によって同位体比が異なる。そして降雨は地中に浸み込む時の同位体比を保持しながら地下水となり地中を移動し湧出する。(例えば、特許文献1参照)。
請求項1に記載の発明は、醸造酒、混成酒の生産に用いられた原水の産出地判定方法であって、特定した産出地の原水のδ18Oと、前記特定した産出地の原水で生産された醸造酒、混成酒のδ18Oとを測定し、前記測定した原水のδ18Oと前記測定した醸造酒、混成酒のδ18Oに基づいて、前記原水から醸造酒、混成酒を生産した場合のδ18Oの変化量を算出し、検定対象の醸造酒、混成酒のδ18Oを測定し、前記原水から醸造酒、混成酒を生産した場合のδ18Oの変化量に基づいて、前記測定された検定対象の醸造酒、混成酒のδ18Oを前記検定対象の醸造酒、混成酒の生産に用いた原水のδ18Oに補正し、前記検定対象の醸造酒、混成酒の補正後のδ 18 Oと、予め設定された複数の産出地の原水のδ 18 Oとを対比することにより、前記検定対象の醸造酒、混成酒の原水の産出地を判定することを特徴とする。
ここで、δ18Oを用いるのは、地下水の起源である降雨が浸み込む場所や標高、海岸からの距離によってδ18Oが異なる性質や地下へ浸み込む時のδ18Oを湧出するまで保持する性質があるので、原水の産出地特定がしやすいためである。
図1は、本発明の第1の実施形態の概略構成を示す図であり、符号1は清酒(醸造酒)のδ18Oから原水の産出地を判定する原水判定システム(以下、原水産出地判定システムという)を示している。
出力部16は、例えば、液晶ディスプレー等の表示部19と接続され、演算部13から出力された結果を表示部19に出力するようになっている。
(1)まず、δ18O補正係数を設定する(S1)。
(2)次に、入力部14に検定対象の清酒のδ18Oを入力する(S2)。
(3)次いで、演算部13は、入力部14を介して入力された検定対象の清酒のδ18Oを、δ18O補正係数に基づいて補正する(S3)。
(4)次に、演算部13は、検定対象の清酒のδ18Oの補正値と、データベース15に格納された複数の設定産出地の原水のδ18Oとを対比する(S4)。
(5)次いで、例えば、設定産出地のなかから、検定対象のδ18Oの補正値に最も近似するものを特定することにより、清酒に用いた原水の産出地を判定する(S5)。
なお、図3に示した清酒の製造工程は、一般的な工程を概念的に示したものであり、原材料と産物の固有の関係を特定するものではない。
図3は、清酒の製造工程を示す図である。
(2)玄米を、精米して白米とする。
(3)白米を、洗米、水に浸漬、蒸きょうして蒸米とする。
(4)蒸米は、もろみ、こうじ(製麹)、酒母の製造に用いられる。
(5)蒸米に、こうじ、酵母、水(原水)を付加して酒母を製造する。
(6)次に、蒸米に、こうじ、酒母、水(原水)を付加するとともに発酵させて、もろみを製造する。
(7)もろみを上槽することにより、原酒と清酒かすに分離する。
(8)上槽することにより得られた原酒を加熱する(火入)。
(9)火入れした原酒を貯蔵し、ろ過するとともに、原水で割水することで、清酒とする。
清酒の製造工程におけるδ18Oは、図4に示すように、例えば、本醸造酒では、原料水(原水)段階で−8.3‰、もろみ段階(仕込み直後)で−7.1‰、原酒段階で−8.5‰、清酒段階で−8.5‰と推移し、もろみ段階(仕込み直後)でδ18Oが約1.2‰増加し、清酒のδ18O、もろみ(仕込み直後)のδ18Oは、原水のδ18Oと異なった数値を示す。これは、大吟醸酒、純米酒等、他の清酒も同様である。
(1)まず、原水のδ18Oと、清酒のδ18Oを測定(S11)。
(2)例えば、原水のδ18Oと清酒のδ18Oの差を算出して、原水から清酒を生産した場合のδ18Oの変化量を算出する(S12)。
(3)原水から清酒を生産した場合のδ18Oの変化量を、δ18O補正係数とする(S13)。
なお、ここでは、原水のδ18Oと清酒のδ18Oの差をδ18O補正係数としたが、原水のδ18Oと清酒のδ18Oの差に清酒のδ18Oに応じた係数を乗じ、又は原水のδ18Oと清酒のδ18Oの差に関数(f(δ18O))を乗じる構成により、δ18O補正係数としてもよい。
原水産出地判定システム1Aは、検定対象の清酒が特定の産出地の原水を用いて生産されたかどうかを判定する点で原水産出地判定システム1と相違しており、データベース15Aには、設定許容値(例えば、原水産出地ごとの許容値)が格納されている。その他は原水産出地判定システム1と同様であるので説明を省略する。
(2)次に、入力部14に検定対象の清酒のδ18Oを入力する(S22)。
(3)次いで、演算部13は、入力部14から入力された検定対象の清酒のδ18Oを、δ18O補正係数に基づいて補正する(S23)。
(4)次に、演算部13は、例えば、((検定対象の清酒のδ18O補正値)−(特定された産出地の原水のδ18O))を算出することにより、検定対象の清酒と特定産出地の原水のδ18Oの差Xを求める(S24)。
(5)次いで、演算部13は、δ18Oの差Xと、データベース15に格納された設定許容値とを比較し、δ18Oの差X≦設定許容値、である場合は、S26に移行し、δ18Oの差X≦設定許容値、でない場合は、S27に移行する。
(6)演算部13は、清酒が特定産出地の原水で生産されたものと判定する(S26)。
(7)演算部13は、清酒が特定産出地の原水で生産されたものではないと判定する(S27)。
原水産出地判定システム1Bは、検定対象の清酒の原水の産出地を、複数の設定産出地のなかから特定する際に、δ18Oとともに、重水素(D)の同位体比δDを用いて原水の産出地を判定する点で原水産出地判定システム1と相違する。データベース15Bには、例えば、δ18Oの設定許容値、δD補正係数、δDの設定許容値(それぞれ、必要に応じて特定産出地ごとでもよい)が格納されている。その他は原水産出地判定システム1と同様であるので説明を省略する。
(2)次に、演算部13は、入力部14から入力された検定対象の清酒のδ18Oをδ18O補正係数に基づいて補正し、例えば、検定対象の清酒の補正後のδ18Oと設定産出地の原水のδ18Oの差Y(=検定対象の清酒のδ18O補正値)−(設定産出地の原水のδ18O))を、すべての設定産出地について算出して、δ18Oの差Yが最小となる設定産出地を特定する(S32)。ここで、δDは、必要に応じて入力する。
(3)次に、演算部13は、δ18Oの差Yが最小となる原水の産出地が複数箇所かどうかを判定する(S33)。産出地が複数箇所である場合はS34に移行し、1箇所である場合はS36に移行する。
(4)演算部13は、S33において選択された複数の設定産出地について、S32で入力されたδDの側定値に基づいて、産出地を判定する(S34)。なお、S34における判定は、S32と同様の手順を実行することにより行なうことができる。
(5)演算部13は、清酒を生産した原水の産出地を特定する(S35)。
例えば、上記実施の形態においては、検定対象が清酒である場合について説明したが、例えば、清酒以外の醸造酒に適用してもよいし、混成酒に適用してもよい。
11 入力部
13 演算部
Claims (8)
- 醸造酒、混成酒の生産に用いられた原水の産出地判定方法であって、
特定した産出地の原水のδ18Oと、前記特定した産出地の原水で生産された醸造酒、混成酒のδ18Oとを測定し、
前記測定した原水のδ18Oと前記測定した醸造酒、混成酒のδ18Oに基づいて、前記原水から醸造酒、混成酒を生産した場合のδ18Oの変化量を算出し、
検定対象の醸造酒、混成酒のδ18Oを測定し、
前記原水から醸造酒、混成酒を生産した場合のδ18Oの変化量に基づいて、前記測定された検定対象の醸造酒、混成酒のδ18Oを前記検定対象の醸造酒、混成酒の生産に用いた原水のδ18Oに補正し、
前記検定対象の醸造酒、混成酒の補正後のδ 18 Oと、予め設定された複数の産出地の原水のδ 18 Oとを対比することにより、前記検定対象の醸造酒、混成酒の原水の産出地を判定することを特徴とする原水の産出地判定方法。 - 醸造酒、混成酒の生産に用いられた原水の産出地判定方法であって、
特定した産出地の原水のδ 18 Oと、前記特定した産出地の原水で生産された醸造酒、混成酒のδ 18 Oとを測定し、
前記測定した原水のδ 18 Oと前記測定した醸造酒、混成酒のδ 18 Oに基づいて、前記原水から醸造酒、混成酒を生産した場合のδ 18 Oの変化量を算出し、
検定対象の醸造酒、混成酒のδ 18 Oを測定し、
前記原水から醸造酒、混成酒を生産した場合のδ 18 Oの変化量に基づいて、前記測定された検定対象の醸造酒、混成酒のδ 18 Oを前記検定対象の醸造酒、混成酒の生産に用いた原水のδ 18 Oに補正し、
前記検定対象の醸造酒、混成酒の補正後のδ18Oと、前記特定した産出地の原水のδ18Oとを対比することにより、前記検定対象の醸造酒、混成酒が前記特定された産出地の水で生産されたかどうかを判定することを特徴とする原水の産出地判定方法。 - 請求項1又は2に記載の原水の産出地判定方法であって、
前記δ18Oとともに、δDを用いて判定することを特徴とする原水の産出地判定方法。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の原水の産出地判定方法であって、
前記検定対象が清酒であることを特徴とする原水の産出地判定方法。 - 醸造酒、混成酒の生産に用いられた原水の産出地判定システムであって、
検定対象の醸造酒、混成酒のδ18Oが入力される入力部と、
前記入力された検定対象の醸造酒、混成酒のδ18Oを、前記検定対象の醸造酒、混成酒の生産に用いた原水のδ18Oに補正する演算部と、を備え、
前記演算部は、
特定された産出地の原水のδ18Oと前記特定された産出地の原水で生産された醸造酒、混成酒のδ18Oとから算出された、前記特定の産出地の原水により醸造酒、混成酒を生産した場合のδ18Oの変化量に基づいて、前記検定対象の醸造酒、混成酒のδ18Oを前記検定対象の醸造酒、混成酒の生産に用いた原水のδ18Oに補正し、前記検定対象の醸造酒、混成酒の補正されたδ 18 Oと、予め設定された複数の産出地の原水のδ 18 Oとを比較することにより、前記醸造酒、混成酒を生産した原水の産出地を判定するように構成されていることを特徴とする原水の産出地判定システム。 - 醸造酒、混成酒の生産に用いられた原水の産出地判定システムであって、
検定対象の醸造酒、混成酒のδ 18 Oが入力される入力部と、
前記入力された検定対象の醸造酒、混成酒のδ 18 Oを、前記検定対象の醸造酒、混成酒の生産に用いた原水のδ 18 Oに補正する演算部と、を備え、
前記演算部は、
特定された産出地の原水のδ 18 Oと前記特定された産出地の原水で生産された醸造酒、混成酒のδ 18 Oとから算出された、前記特定の産出地の原水により醸造酒、混成酒を生産した場合のδ 18 Oの変化量に基づいて、前記検定対象の醸造酒、混成酒のδ 18 Oを前記検定対象の醸造酒、混成酒の生産に用いた原水のδ 18 Oに補正し、前記検定対象の醸造酒、混成酒の補正されたδ18Oと、前記特定された産出地の原水のδ18Oとを比較することにより、前記検定対象の醸造酒、混成酒が前記特定された産出地の原水で生産されたかどうかを判定するように構成されていることを特徴とする原水の産出地判定システム。 - 請求項5又は6に記載の原水の産出地判定システムであって、
前記δ18Oとともに、δDを用いて判定することを特徴とする原水の産出地判定システム。 - 請求項5〜7のいずれか1項に記載の原水の産出地判定システムであって、
前記検定対象が清酒であることを特徴とする原水の産出地判定システム。
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