JP5906179B2 - 線量分布測定装置 - Google Patents
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この線量分布の検証のための測定には、一般的に水が充填された密閉水槽内に小型の放射線計測器を内部に搭載した水ファントム型線量分布測定装置(以下、水ファントムと表す)が用いられている(特許文献1参照)。
また、特許文献2では、深部方向の線量分布の測定に、複数の電離箱を積層した構造を持った積層型検出器が開示されている。
しかしながら、上述の特許文献2の積層型検出器では、積層型検出器をカウチ上に固定して深部方向の線量分布を測定する必要があるため、任意の照射角度における深部方向の線量分布を測定する場合、ビーム軸が正確に積層型検出器の中心を通るよう積層型検出器を傾けた状態でカウチ上に固定する必要がある。その固定のための作業に時間がかかるため、特許文献2に記載の積層型検出器でも測定角度の変更に対応することが非常に難しいとの問題があった。
本発明の線量分布測定装置101は、陽子線照射装置102から任意の回転角度で照射されたビームが水中に形成するブラッグカーブを計測する。以下の実施例ではスキャニング照射法を例として説明するが、散乱体照射法を用いた場合にも実施可能である。
陽子線発生装置103では、まず、イオン源106から発生した陽子イオンを前段加速器107で加速する。前段加速器107から出射した陽子線(以下、ビーム)は、シンクロトロン108で所定のエネルギーまで加速された後、出射デフレクタ109から陽子線輸送装置104に出射され、回転式照射装置105を経て線量分布測定装置101に照射される。
まず、スポットスキャニング照射法では、照射範囲を微少領域(スポット)に分割し、スポット毎にビームを照射する。スポットに既定線量が付与されると、照射を停止して次の既定スポットに向けてビームを走査する。照射スポットを横方向に変更する場合は照射野形成装置110に搭載した2対の走査電磁石(図示せず)を用いてビームの照射位置を変更する。ある深さについてすべてのスポットに既定線量が付与されると、ビームのエネルギーをシンクロトロン108もしくは照射野形成装置110等に搭載した複数枚のレンジシフタ209からなるレンジシフタ部204(図2,図3参照)で変更して照射スポットを深部方向に変更する。このような手順を繰り返して最終的に全てのスポットに一様な線量が付与される。
また、ラスタースキャニング照射法では、照射範囲を複数の層に分割し、各層に設定した照射ラインに沿って、2対の走査電磁石を用いてビームを走査しながら連続照射し、照射範囲に線量を付与する。ある層の照射範囲に対して所定の線量の付与を完了すると、スポットスキャニング照射法と同様の手法を用いて、ビームのエネルギーを変更して深部方向に照射層を変更する。このような手順を繰り返すことにより、照射範囲に一様な線量を付与する。
取り付け用冶具401は、ねじ部401aを有し、ねじ部401aはX軸位置調整機構201の移動面に固定されている。X軸位置調整機構201の移動面は2本の送りねじ201bによりX軸位置調整機構201の筐体201aに対してX軸方向に移動可能である。X軸位置調整機構201の移動面はボルト等により所望の位置に固定可能である。
なお、放射線測定装置の取り付け部の構成は着脱可能な取付け手段であれば、本機構によらない。
回転リング501は、Y軸位置調整機構202の筐体202aにボルト等により固定される内径部501aと、この内径部501aに対して回転可能に取り付けられた外径部501bとを有している。外径部501bはボルト等により内径部501aに対して所望の回転角度で固定可能である。ヒンジ機構503は、回転リング501の外径部501bに固定用冶具502を介して固定される支持部A503aと、筐体A206がボルト等により固定される支持部B503bと、支持部A503aに対する支持部B503bの角度を変更可能とする回転支持部503cとで構成される。支持部B503bは、ボルト等により支持部A503aに対して所望の角度で固定可能である。
このように、電極の各領域は、導線704,705,706とそれぞれ独立に接続する。小電極701に接続する導線704と大電極702に接続する導線705のもう一端は、基板の内層を通って信号処理装置303の入力側に接続する。つまり、導線704が小電極701と信号処理装置303を接続し、導線705が大電極702と信号処理装置303を接続する。
信号処理装置303は、既定時間中に基板A601の小電極701で発生した電荷と、大電極702で発生した電荷を、導線704,705を介して入力し、それぞれ独立に積算し、積算値を主制御装置304に送信する。
ガード電極703に接続する導線706の一端は接地する。ガード電極703は、基板B603から小電極701及び大電極702へのリーク電流を防止する。
高電圧印加電極801は導線803に接続し、ガード電極802は導線804に接続する。このように、電極の各領域は導線803,804とそれぞれ独立に接続する。導線803は高電圧印加電極801と高電圧電源302を接続し、高電圧電源302からの高電圧(数千V以下)を高電圧印加電極801に印加する。
高電圧電源302は、この導線803を介して、センサー部205内の基板Bの高電圧印加電極801に高電圧を印可する。
ガード電極802と接続する導線804の一端は接地する。ガード電極802は基板B603から基板A601の小電極701及び大電極702へのリーク電流を防止する。
基板B603の電極は両面対称構造であり、表面と同様に裏面の高電圧印加電極801にも高電圧が印加される。基板Aの小電極701及び大電極702はほぼ0Vであり、電圧印可電極801に高電圧が印可されている間は、小電極701,大電極702と高電圧印可電極801との間に電離層が形成され、この電離層には電場が生じる。
具体的には、X軸位置調整機構201の送りねじ201bを緩めるもしくは締めることで、照射野形成装置110の先端が取り付けられているX軸位置調整機構201の移動面を動かし、照射ノズル110に対してX軸位置調整機構201の筐体201aをX軸方向に相対移動させる。
同様に、Y軸位置調整機構202の送りねじ202bを緩めるもしくは締めることで、X軸位置調整機構201の筐体201aが固定されているY軸位置調整機構202の移動面を動かし、照射野形成装置110に対してY軸位置調整機構202の筐体202aをY軸方向に相対移動させる。
このようにX軸位置調整機構201およびY軸位置調整機構202を用いることで、センサー部205を所定の位置に設定することが可能となる。
センサー部205の照射野形成装置110に対する設置角度を所定の角度へ調整するときは、まず、角度調整機構203は回転リング501を用いてセンサー部205の傾斜方向を設定する。また、ヒンジ機構503により傾斜角度を調整することで、センサー部205の設置角度を調整する。
操作者は、放射線感応フィルムの取り付け後は、任意のエネルギーのビームを出射し、フィルムを用いてビーム軸を測定するために、照射室から制御室(図示せず)に移動する。その後、操作者は、主制御装置304を設定してビーム開始信号を指示することで、陽子線照射装置102から、任意のエネルギーを有するビームを出射させる。
次に、操作者は、アイソセンタ208上に金属球を設置し、線量分布測定装置101の下流中央部にレーザーマーカを固定する。レーザーマーカからのレーザーがアイソセンタ208上に設置した金属球に当たるよう、角度調整機構203を調整してセンサー部205の設置角度を調整し、位置決めする。
次に、操作者は、放射線感応フィルムをセンサー部205の上流に取り付ける。その後、再度ビーム軸を測定するために、操作者は、照射室から制御室(図示せず)に移動し、主制御装置304を設定してビーム開始信号を指示することで、陽子線照射装置102から、任意のエネルギーを有するビームを出射させる。
なお、ビームが小電極701の中心を垂直に入射するようにセンサー部205を位置決めすることが可能な手順は上述の手順に限定されない。
次に、操作者は、主制御装置304を通じて、陽子線照射装置102の照射条件(ビームエネルギー,照射スポット位置,照射スポット数等)を設定する。ブラッグカーブ計測ではビーム軸上のスポットに対してビーム照射するため、走査電磁石は励磁されない。その後、操作者がビーム照射開始の指示を行うと、陽子線照射装置102は主制御装置304に対して照射開始信号を送信する。照射開始信号を受信すると、主制御装置304は信号処理装置303へ計測開始信号を送信する。計測開始信号を受信すると、信号処理装置303は入力電荷の積算を開始する。直後、シンクロトロン108で加速されたビームは、陽子線輸送装置104を経て回転式照射装置105に出射される。最終的に、操作者が主制御装置304に設定した条件に従って線量分布測定装置101にビームが照射される。
具体的には、挿入したレンジシフタ209の厚みがrのとき、センサー部205の表面から数えてi番目の電離層(以下、電離層i)に面する小電極701で得られた積算電荷をQs(i,r)、大電極702で得られた積算電荷をQl(i,r)とする。レンジシフタ209の厚みを変更した全計測が完了すると、主制御装置304は、Qs(i,r)とQl(i,r)を加算してQ(i,r)を得る。事前に計測されている基板A601,基板、電離層及びレンジシフタ部204の水等価厚に基づいて、主制御装置304は、得られたQ(i,r)を深さ方向の積算電荷Q(z)に変換する。zは水面からの深さである。さらに、主制御装置304は、較正係数を乗じてQ(z)を単位深さあたりの水中でのエネルギー付与量D(z)へ変換する。主制御装置304は、先に得られたzについてのD(z)の分布、即ちブラッグカーブをディスプレイ(図示せず)に表示する。ディスプレイに表示されたブラッグカーブを確認して、操作者は、陽子線照射装置102の調整結果及び性能を評価する。操作者は、主制御装置304内のユーザーインターフェース(図示せず)を用いて、主制御装置304内の記憶装置(図示せず)に測定結果を保存し、次の角度の測定に移る。
アイソセンタ208付近における線量分布の測定方法には、水ファントムの水面やブラッグピーク位置をアイソセンタ208位置に合わせた測定方法など様々な測定方法がある。ここでは、水ファントムの水面をアイソセンタ208とした場合に水ファントムで測定されるブラッグカーブ(以下、アイソセンタ位置での分布)と同等のブラッグカーブを本実施例の線量分布測定装置101を用いて導出する方法について説明する。
主制御装置304は、主制御装置304内の記憶装置(図示せず)に記憶されている参照用飛程データテーブルを用いて、入射ビームのエネルギー減衰量ΔEに伴う水中での飛程変動量Δlを計算する。主制御装置304は、測定結果をz軸(ビーム入射方向)負の向きに飛程変動量Δlだけずらすことにより、アイソセンタ位置での分布を得る。補正後の結果を図10に示すように、アイソセンタ位置での分布と、本実施例の線量分布測定装置101で測定した線量分布のブラッグカーブの位置を一致させることができる。
本実施例では、空気層厚さ、空気中の阻止能、空気の密度を用いた簡易計算によりエネルギーの減衰量を計算し、飛程変動量を計算したが、モンテカルロ計算コードから得た計算結果を用いて飛程変動量を補正してもよい。
この体積照射時の深部線量分布を本実施例の線量分布測定装置101によって計測する方法について、以下説明する。
図11に示すように、照射野形成装置110に搭載されている2対の走査電磁石の中点を仮想線源位置901とし、仮想線源位置901からセンサー部205表面までの距離をLf、図12に示すように、仮想線源位置901とセンサー部205の表面がアイソセンタ208にあると仮定した場合のセンサー部の位置903との間の距離をLi、センサー部の表面から数えてj番目の電離層902までの距離をL(j)とすると、電離層jに関する立体角の補正係数は(Lf+L(j))2/(Li+L(j))2で表わされる。
そこで、主制御装置304を用いて、電離層jに面する小電極701で得られる積算電荷Qs(j,r)に、この補正係数(Lf+L(j))2/(Li+L(j))2を乗じた後、水中線量Ds(z)に変換することにより立体角の補正を行うことができる。
その後、主制御装置304は、主制御装置304内の記憶装置(図示せず)に記憶されている参照用飛程データテーブルを用いて、エネルギー減衰量ΔEに伴う水中での飛程変動量Δlを計算し、立体角補正を行った深部線量分布Ds(z)をz軸(ビーム入射方向)負の向きに飛程変動量Δlだけずらすことにより、アイソセンタ位置での分布を得る。
更に、本発明の線量分布測定装置であれば、照射装置の線種が光子線,電子線,ミュオン線,パイ中間子線であっても、深部線量分布を計測することができ、上記実施例と同様の効果が得られる。
102…陽子線照射装置、
103…陽子線発生装置、
104…陽子線輸送装置、
105…回転式照射装置、
106…イオン源、
107…前段加速器、
108…シンクロトロン、
109…出射デフレクタ、
110…照射野形成装置、
201…X軸位置調整機構、
202…Y軸位置調整機構、
203…角度調整機構、
204…レンジシフタ部、
205…センサー部、
206…筐体A、
207…筐体B、
208…アイソセンタ、
209…レンジシフタ、
300…制御部、
301…レンジシフタ駆動制御装置、
302…高電圧電源、
303…信号処理装置、
304…主制御装置、
401…取り付け用冶具、
402…取り付け用ねじ、
403…ボルトA、
404…ナット、
501…回転リング、
502…固定用冶具、
503…ヒンジ機構、
601…電荷収集用プリント基板(基板A)、
602…スペーサ、
603…高電圧印加用プリント基板(基板B)、
604…ボルト、
701…小電極(第1電極)、
702…大電極(第2電極)、
703…ガード電極(第3電極)、
704,705,706,803,804…導線、
801…高電圧印加電極、
802…ガード電極、
901…仮想線源位置、
902…センサー部の表面から数えてj番目の電離層、
903…センサー部の表面がアイソセンタにあると仮定した場合のセンサー部。
Claims (5)
- 荷電粒子ビームの深部方向線量分布を測定する線量分布測定装置であって、
前記荷電粒子ビームの進行方向に対して積層配置され、前記荷電粒子ビームに反応する複数のセンサー要素を有するセンサー部と、
前記センサー部を前記照射野形成装置に対して着脱可能にした取り付け機構と、
前記荷電粒子ビームを照射する回転ガントリーに搭載された照射野形成装置に対する前記センサー部の取り付け角度を調整する角度調整機構と、
前記照射野形成装置に対する前記センサー部の水平方向位置を調整する水平方向位置調整機構とを備えた
ことを特徴とする線量分布測定装置。 - 請求項1に記載の線量分布測定装置において、
前記複数のセンサー要素のそれぞれが検出した積算電荷に基づいて得られた深部方向の線量分布に対して、前記複数のセンサー要素とアイソセンタとの間の空気量による前記荷電粒子ビームの減衰の補正を行い、前記アイソセンタ位置での深部方向の線量分布を導出する制御装置を更に備える
ことを特徴とする線量分布測定装置。 - 請求項2に記載の線量分布測定装置において、
前記制御装置は、更に、前記センサー要素と前記アイソセンタ位置との間の距離に応じた立体角の補正を行い、前記アイソセンタ位置での深部方向の線量分布を導出する
ことを特徴とする線量分布測定装置。 - 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の線量分布測定装置において、
前記センサー要素は、このセンサー要素の中心部に位置する中心領域と、この中心領域を取り囲む他の領域とに分割され、前記中心領域および前記他の領域からの出力を独立して計測するよう構成された
ことを特徴とする線量分布測定装置。 - 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の線量分布測定装置において、
前記センサー要素は、電離箱、放射線照射によって電流を発生させる半導体検出器、シンチレーションカウンタのうちいずれかである
ことを特徴とする線量分布測定装置。
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