JP5904665B2 - 位相計測装置、位相計測プログラム及び位相計測方法 - Google Patents

位相計測装置、位相計測プログラム及び位相計測方法 Download PDF

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本発明は、可干渉ビームを干渉させ計測対象物で生じる位相変化を計測することで、屈折率分布など計測対象物の物性値を測定する位相計測装置並びに方法、そして、コンピューターで実行可能な位相計測プログラムに関する。
本発明は異なる媒質内を透過することで可干渉ビームの位相が変化することを利用して、媒質の特性を計測するものである。ここでは、まず位相計測の原理について、可干渉ビームとして光を利用した場合を例に取って説明を行う。
光は波の性質を有しており、その性質を決定する要因として、振幅、波長および位相という3つの要素がある。波の表記法はいろいろあるが、最も簡単な形式は三角関数を用いて、
y =A sin [2π(t/T-z/λ)] ・・・(1)
というように表される。ここで、y は今取り扱おうとしている物理量で、光の場合一般には電場である。Aは振幅、Tは振動の周期、λは波長、tとzはそれぞれ変数としての時間と波の進行方向の座標で、sin関数の中が位相と呼ばれる。光の場合、位相の中の振動の周期と時間は、計測の時間スケールと比べて遙かに短いので、平均化されて意味を持たないので、通常省略される。
光が物体を透過する場合、もし半透明の物質であれば厚い部分ほど光が吸収されて振幅が小さくなるため、濃淡の画像を観察することができる。しかし光学素子分野や生物分野の試料では、多くの場合ほとんど透明で、従って振幅がほとんど変化しないため、通常の顕微鏡では観察することができない。それに対して位相の部分は、振幅の変化に比べて遙かに大きく変化する。光の真空中の波長をλ0とすると、屈折率nの物体の中における光
の波長は、
λ = λ0/n ・・・(2)
と表される。空気の屈折率はほぼ1であるので、空気中の波長もλ0と見なすことができ
る。屈折率は水が1.33程度、ガラスや光学樹脂は1.5〜1.6程度である。
いま、屈折率がn1の母材の中に、より屈折率の大きな屈折率n2の物体が埋め込まれている試料を考え、これを光が透過するときの様子を図1に示す。光は波であるため、山、谷が交互に進んでくる。この図では、図の上方から来る光を水平またはそれに近い線群で表しているが、これは空間的に対応する山(あるいは谷)を仮想的に結んだ線(実際には立体であるので面)で、波面と呼ばれるものである。平行な光の波面は、その間隔が波長λ0であるような平面群で表される。この波が屈折率n1の部分に入ると、上式に従って波長が空気中より短いλ1となる。埋め込み部分を透過する光Aと、母材だけを通る光Bを
考えると、母材に入った直後は光Aも光Bも同じように母材中に進むので、波面の間隔はλ1に変わるが波面形状は平面のままである。しかし光が埋め込み部に達すると、埋め込
み部の厚さtの部分では波長がλ2に変わって波長が短くなるので、波面の形状は上に凸
に変わる。
光路Aの埋め込み部の厚さtの距離の中に入る波の数N2は、
N2=t/λ2 ・・・(3)
光路Bのそれに対応する厚さtの部分に入る波の数N1は、
N1=t/λ1 ・・・(4)
であるので、埋め込み部を通り抜けた直後の光路Aと光路Bの波面のずれ量Δφは、波の
数、すなわち波長単位で表すと
Δφ= N2-N1
=(1/λ2 - 1/λ1)t
=(n2- n1)t/λ0 ・・・(5)
と表される。この波面のずれ量は一般にはラジアン単位で表され、位相ずれ、位相変化あるいは単に位相などと呼ばれる。
たとえば、厚さが均一な薄片試料の内部、一例として光ファイバのコア断面の屈折率分布を計測する場合、(5)式のレーザーの波長は既知、厚さtは均一で既知、母材の屈折率n1も均一で既知、埋め込み部の屈折率n2は二次元的に変化していて未知であるので、透過光の位相ずれΔφも二次元的に分布することになり、波長を単位として、
Δφ(x,y)=[n2(x,y) - n1]t/λ0 ・・・(6)
と表すことができる。
位相変化の測定方法
(6)式から、母材の屈折率n1と埋め込み部の厚さtが前もって解っていれば、試料
を透過した光の位相ずれの分布Δφ(x,y)を計測することによって、埋め込み部分の屈
折率分布n2(x,y)を求めることができる。
ガラス製品の平面や球面の検査に、昔から干渉法が用いられてきた。その代表例が、ニュートンリング法である。この方法は、精度の高い参照平面の上に、検査対象の平面あるいは球面を置いてほぼ真上から見ると、参照平面からの反射光とそれと接する被検面からの反射光が干渉して、両面の間の間隔に対応した干渉縞が現れるため、理想的な平面あるいは球面からのずれを可視化して良否を判定するというものである。このときの2本の反射光から干渉縞が生じる原理は以下の通りである。
簡単のため、計測の基準となる参照波を乱されていない均一な平面波、被検平面から来る物体波は場所によって平面波からわずかにずれた波であるとする。一般にz方向に進む平面波ψは、振幅をA、波長をλ、波数をk=2π/λとすると、参照波(reference wave)を表す添え字rを付して、
ψr(x,y) = Ar(x,y)exp[ikz] ・・・(7)
と表される。ここでx、yは、z軸と直交する平面上の直交する2方向の座標である。いま参照波は場所によらず一定と考えれば、右辺Ar(x,y)も場所によらず一定である。
一方、物体波も物体波(object wave)であることを表す添え字oを付して同様に、
ψo(x,y) =Ao(x,y)exp[i[kz+φ(x,y)]] ・・・(8)
と表される。物体波には、物体による振幅と位相の変化が (x,y)面内に生じる。
この2つの波が同方向から重なる場合、重なった部分は波の重ね合わせの原理に従って単純な足し算になり
ψo r ・・・(9)
と表される。2つの波が重なった部分を観察すると、計測される物理量は強度I(x,y)で
あるので、
I(x,y) = (ψo r)2 ・・・(10)
この式に(7)式および(8)式を代入すると、複素共役を * で表して、
I(x,y) = |ψo r ||ψo r |*
= |Ao(x,y)|2+|Ar|2 + |Ao(x,y)||Ar|exp[i[kz+φ(x,y)-kz]]
+ |Ao(x,y)||Ar|exp[i[-kz-φ(x,y)+kz]]
= |Ao(x,y)|2+|Ar|2+2|Ao(x,y)||Ar|cos[φ(x,y)] ・・・(11)
となる。第1項と第2項の |Ao(x,y)|2 と |Ar|2 は物体波と参照波の強度分布であ
る。一方、第3項は干渉項で、物体波に加えられた位相の変化に従った濃淡を生じる。ニュートンリングのように物体による強度の変化が無視できる場合には、第1項と第2項は一定で、第3項の干渉縞のみが観察される。
次に、物体波と参照波が角度θ傾いて重なった場合を考える。いま例えば参照波がy軸を回転軸としてθ傾斜したとすると、図2に示すように傾斜後のx、z座標をそれぞれX、Zとして、
X = xcosθ+zsinθ ・・・(12)
Z = -xsinθ+zcosθ ・・・(13)
となり、傾斜角が小さければ
X = x+zsinθ ・・・(14)
Z = -xsinθ+z ・・・(15)
となる。従って参照波は、x座標の変化による振幅の変化は十分小さいと見なして、
ψr(X,y) = Ar(x,y)exp[ikZ]
= Ar(x,y)exp[i[kz-kxsinθ]]・・・(16)
と表すことができる。
この(16)式の波と(8)式の物体波の干渉縞画像の強度分布は、
I(x,y) = |ψo r ||ψo r |*
= |Ao(x,y)|2+|Ar(x,y)|2+|Ao(x,y)||Ar(x,y)|exp[i[kz+φ(x,y)-kz+kxsinθ]]
+|Ao(x,y)||Ar(x,y)|exp[i[-kz-φ(x,y)+kz-kxsinθ]]
= |Ao(x,y)|2+|Ar(x,y)|2+2|Ao(x,y)||Ar(x,y)|cos[φ(x,y)+kxsinθ]
・・・(17)
と表される。つまり、2本のビームの重なる角度に応じた間隔の干渉縞画像となり、物体波による位相変化はその干渉縞間隔の局所的な変化として重畳する形となる。
(11)式あるいは(17)式から、干渉縞の濃淡を判断して物体波による位相変化を読み取ることは可能である。しかし、厳密には照明光には強度の分布があるため参照波・物体波の振幅分布Ar(x,y)・Ao(x,y) は一定と見なすことができず、また物体によっ
て引き起こされる強度の変化Ao(x,y) も無視することができない。すなわち(17)式の第3項で、位相を含んだcos(余弦)の項と物体波、参照波の振幅分布が不可分の状態で含まれているため、この方法では高い計測精度を期待することができない。
この欠点を克服するために考案され、実用化された干渉計測法の代表例がフーリエ変換法と位相シフト法である。フーリエ変換法は、(17)式のように意図的に2本のビームがなす角度に応じた干渉縞(キャリア干渉縞と呼ばれる)を発生させ、この画像をフーリエ変換する方法である。
図3は、中央部に楕円形の計測対象部分があり、周囲は屈折率が均一な物質もしくは何も無い空間からなるような被計測試料についての干渉縞画像をシミュレーションで作成した例である。計測対象物周囲の領域では、(17)式第3項のcosの内 φ(x,y) + kxsinθ のうち φ(x,y) が一定であるため、横方向(x方向)に kxsinθ の項による
間隔と方向が一定の干渉縞が生じている。これは前述したように2本のビームが傾いて重なったことによる干渉縞である。
一方、計測対象部分内部では、この位相がさらに計測対象部分自体によって変化するので、その厚さもしくは屈折率に応じて、干渉縞の間隔と方向が変化することとなる。物体波の位相分布はキャリア干渉縞の間隔と方向の局所的な変化として現れているので、図4に示すようにフーリエ変換するとキャリア干渉縞間隔に対応したスペクトルのまわりに分布する。そこで左右どちらかのスペクトル部分を選んでフーリエ逆変換すると、位相部分
と振幅とが分離されているため、物体波の位相を抽出することができる。
フーリエ変換法の欠点として、空間分解能と位相計測精度がトレードオフの関係にあること、スペクトルから円状の領域を選ぶときの境界の影響が原理的に不可避で精度に悪影響を及ぼすこと、などがあり、広く一般に用いられるには至っていない。
一方、位相シフト法は、参照波と物体波の相対的な位相を既知量ずつずらした3枚以上の干渉縞画像から、物体波の位相分布を求める方法である。この方法では、位相のずれ量を1波長の正数分の1に設定すると、計算処理をきわめて簡潔にすることが可能である。この前提を用いて以下に原理を説明する。干渉縞画像内のある点(x0,y0)の位相を求めることを考える。記述の簡略化のため、I(x0,y0)をI、φ(x0,y0) + kx0sinθを改めてφ'と置いて(17)式を以下のように
I = B+A cos(φ') ・・・(18)
書き換える。
測定される量は干渉縞画像内のある点(x0,y0)における干渉縞の強度Iであるが、未知数はその場所の濃淡B、干渉縞の強度の振幅A、および位相部分φ'であるから、この
点の測定に少なくとも3つの独立な強度の値が必要である。そこで、位相を1/4波長ずつずらした4枚の干渉縞画像を考えると、各干渉縞画像内の点(x0,y0)における強度Iは、
1 = B+Acos(φ') ・・・(19)
2 = B+Acos(φ'+π/2) ・・・(20)
3 = B+Acos(φ'+π) ・・・(21)
4 = B+Acos(φ'+3π/2) ・・・(22)
と表される。
(20)〜(22)式は、三角関数の加法定理を用いて、それぞれ(23)〜(25)式のように書き換えられる。
2 = B+Asin(φ') ・・・(23)
3 = B-Acos(φ') ・・・(24)
4 = B-Asin(φ') ・・・(25)
(19)式と(24)式からまずBを消去して、
1 - I3 = 2Acos(φ') ・・・(26)
(23)式と(25)式からやはりBを消去して、
2 - I4 = 2Asin(φ') ・・・(27)
求める値は位相φ'であるから、(26)式と(27)式からAを消去して、
Figure 0005904665
とすれば、
Figure 0005904665
のように、位相項φ'のみを分離して求めることができる。干渉縞画像内の全ての点に
ついてこの計算を行えば、視野内の透過波の位相分布を求めることができる。この1/4波長ずつずらした4枚の干渉縞画像を用いる方法が最も計算が簡潔・容易で、4点法など
と呼ばれている。
干渉縞画像の枚数を多くして最小自乗法を用いると、より高精度に位相を求めることが可能となる。干渉縞画像を、1/M波長ずつ位相をずらしたM枚とすると、各干渉縞画像の点(x0,y0)における干渉縞の強度強度分布は、
1 = B+Acos(φ') ・・・(30)
2 = B+Acos(φ'+2π/M) ・・・(31)
M = B+Acos[φ'+2π(M-1)/M] ・・・(32)
となる。
これらを1つの式で表現すれば、
m = B+Acos[φ'+2π(m-1)/M] ・・・(33)
となる。ただし、m=1〜Mである。(33)式を加法定理を用いて変換すると、
m = B+A[cos(φ')cos[2π(m-1)/M]-sin(φ')sin[2π(m-1)/M]] ・・・(34)
ここで、この点(x0,y0)においては、位相をずらしたことによる変数は、[2π(m-1)/M]であり、B、Aおよびφ'は定数である。したがって定数の部分を、
A1 = Acos(φ') ・・・(35)
A2 = -Asin(φ') ・・・(36)
変数の部分を
Xm = cos[2π(m-1)/M] ・・・(37)
Ym = sin[2π(m-1)/M] ・・・(38)
とおけば、(34)式は
Im = B + A1Xm + A2Ym ・・・(39)
と表すことができる。
(39)式と(35)、(36)式を見れば、A1とA2を求めればこの点における位相φ'を決定できることが判る。最小自乗法によれば、この点のビーム強度の測定値Imと(39)式で計算される右辺値の差の二乗の和が最小になるように係数B、A1、およびA2の値を決めれば、それが統計的に最も誤差が小さい係数であるということになる。すなわち、
Figure 0005904665
が最小となるようなB、A1、およびA2の値を求めればよい。係数B、A1、およびA2はいずれも、大きすぎても小さすぎても誤差が大きくなることは明らかであるので、求める最小値は極小値でもある。従って、係数Bを変化させたときの極小値は、(40)式をBで偏微分して0になる条件を求めればよい。
Figure 0005904665
従って、
Figure 0005904665
また、係数A1を変化させたときは、
Figure 0005904665
となり、
Figure 0005904665
係数A2を変化させた場合も同様に、
Figure 0005904665
という式が得られる。
(42)式、(44)および(45)式は行列で表すことができ、
Figure 0005904665
となるが、離散的三角関数の性質により、
Figure 0005904665
Figure 0005904665
となるため、(46)式の右辺3×3行列の中は対角成分以外全て0となり、この行列の値をDとすれば、
Figure 0005904665
となる。
係数B、A1、およびA2は、クラーメルの公式、すなわち係数Bを求めるときには行列Dの係数Bに対応する列を(46)式の左辺で置き換えた行列を行列Dで除することによって求めることができる。この結果、係数Bは、
Figure 0005904665
係数A1は、
Figure 0005904665
係数A2
Figure 0005904665
となる。
求めるφ'と係数B、A1、およびA2の関係は、(28)式における議論と同様に、
Figure 0005904665
であるから、
Figure 0005904665
となる。さらに、三角関数の倍角の公式から、
Xm 2 - Ym 2 = cos2[2π(m-1)/M] - sin2[2π(m-1)/M]2 = cos[4π(m-1)/M]
・・・(55)
となるため、
Figure 0005904665
すなわち、
Figure 0005904665
であるので、(54)式は
Figure 0005904665
となる。
以上位相シフト法の計測原理をまとめると、
1.参照波と物体波の相対的な位相差を1/M(M:3以上の正数)ずつシフトしたM枚
の干渉縞画像を取得し、
2.干渉縞画像各点について、(58)式の計算を行うことによって、物体波の被計測試料による位相変化の分布を求めることができる。
これを模式的に示したのが図5である。この例では、干渉縞画像を4枚、参照波もしくは物体波の光路長を1/4波長ずつ変化させてから計算機に取り込んでいる。すなわち、干渉縞画像の初めの1枚目は1/4波長シフトしたものとなっているが、上述した式の展開では、初めの1枚目の位相シフト量を0とした。これは、説明のために意図的に変えたものであって、初めの画像を1枚目と数えるか、0枚目と数えるか、の違いで、(58)式において分子・分母の求められる位相の分布が全体に1/4波長分ずれるだけで、全く等価である。
ここで求められた位相分布は、
φ(x,y) + kxsinθ ・・・(59)
であり、第2項に2本のビームの重なる角度に応じた位相の傾斜成分が含まれているため、2本のビームの角度が正確に分かっている場合には数値的に補正し、そうでない場合には画像から傾斜成分を求めて補正すればよい。
J. E. Greivenkamp and J. H. Bruning, "Phase Shifting Interferometry", Optical Shop Testing pp.501-598, 2nd ed., Edited by Daniel Malacara, John Wiley & Sons (1992) Joanna Schmit and Katherine Creath, "Extended averaging technique for derivation of error-compensating algorithms in phase-shifting interferometry", Applied Optics Vol.34, No.19 (1995) P. Carre, Metrologia, Vol.2, No.1, pp.13-23(1966) K. Yamamoto, I. Kawajiri, T. tanji, M. Hibino, and T. Hirayama, "High precision phase-shifting electron holography", Journal of Electron Microscopy 49(1), pp. 31-39 (2000)
上述した基本的な位相シフト法では、参照波と物体波の相対的な位相差を1波長の整数数分の1ずつシフトするのが望ましい。XmおよびYmの三角関数の中の角度すなわち位相シフト量の項が 2π(m-1)/M であることは、(30)式から(46)式までの議論では不要であるが、(47)式から(49)式で、離散的な三角関数の和がゼロになる性質を利用できるので、通常1波長の整数数分の1ずつシフトする方法が用いられている。位相シフト量が整数分の1ではない場合でも、(46)式をそのまま解くことができる。この場合には、(37)および(38)式は、それぞれ、
Xm = cos(δm) ・・・(60)
Ym = sin (δm) ・・・(61)
となる。δmはm枚目の干渉縞画像の位相シフト量である。このように、位相シフト量が
整数分の1波長である必要は必ずしもなく、計算精度が得られにくいとか、計算量が増えるといったことはありうるが、大きな問題はない。
しかしこの方法では、各干渉縞画像の位相シフト量が正確に解っていることが決定的に重要である。干渉計測は、きわめて高感度・高精度であるが、これは裏返せばごくわずかな条件の変化で計測結果が影響される可能性が高いということでもある。このため、光学系では一般に、干渉計を除振台に搭載して安定性を高め、干渉計を構成する反射鏡の1つをピエゾ素子で駆動して、光路の変化を精度良く制御している。さらに、ピエゾ素子にも、高精度な位置センサ、例えば静電容量型の位置センサを一体的に組み込んだものが用いられている。ピエゾ素子による微動量と位相シフト量の関係は、干渉計の構成によって変わってくるのは当然であるが、干渉計のごくわずかな位置関係の変化、計測時の気温などにも影響されるため、計測に先立って校正用のデータを取得するのが一般的である。また、位相シフトの誤差を極力小さくするような解析アルゴリズムも考案されており、5点法(非特許文献1)、それを拡張して平均する方法(非特許文献2)、Carre法(非特許文献3)などが知られている。
しかしながらこれらの方法は、既知の位相シフト量に含まれている誤差の影響を軽減するには有効であるが、位相シフト量が不明の場合には対応することができない。しかし現実の問題として、例えば計測中に複数枚の干渉縞画像のいくつかに、外部からの音や振動によって予期しない位相シフトが加わることも少なくない。また、電子ビームを用いた干渉計測(以後、電子線干渉法と称す)においては、さらに深刻な問題に直面する。
電子線装置では、電子の波長は光の波長のおよそ20万倍の1であるので、きわめて分解能、精度の高い計測が可能である反面、装置の機械的、電気的な不安定要因は大きく、全く同一の条件で観察・計測できる時間は1分程度に限られる。通常電子顕微鏡で写真を撮影するときの露光時間が10秒程度であるのは、装置の安定性と撮像装置の感度と電子線が運ぶ情報量の兼ね合いで決められている。また、電子ビームは、わずかながらも常に揺動しており、さらに外部、例えば周囲の装置から生じる交流磁界や電源電圧の変動などの擾乱により、ビームの照射方向が容易に変動する。
電子線干渉においては、干渉素子として電子線バイプリズムが用いられることが多く、参照波と物体波の相対的な位相差を制御する方法としては、被計測試料を照明する電子ビームの傾きを制御する方法、電子線バイプリズムを電子ビームと光軸の両者に直交する方向にシフトする方法などが知られている。いずれの方法においても、干渉縞の間隔は2つに分けられた後重ねられた2本の電子ビームの傾きと、被計測試料を結像する際の焦点位置によって決定され、干渉縞と試料の像の面内における位置関係は電子ビームの照射方向によって決定される。
従って、計測時の像の明るさの調整や焦点合わせによって、干渉縞の間隔や方向、および干渉縞と試料の位置関係が容易に変わってしまう。このように、電子線干渉の場合は、レーザなど一般の光学干渉に比べて、位相シフト量を精度良く制御することが困難である。
電子線干渉計測においても、計測に先立って校正データを取得する必要があるが、その校正データを用いて位相シフトしながら複数枚の干渉縞画像を取得しても、上述の理由で各干渉縞画像の位相シフト量はレーザー干渉に比べて遙かに不正確であることになる。
従来の補正法
電子線干渉において、位相シフト量が未知である場合の対策は従来においても行われている(非特許文献4)。この方法では、まず100枚程度あるいはそれ以上の干渉縞画像を取得し、それらをフーリエ変換法を用いて位相の情報に変換する。これにより、干渉縞画像内各点の位相項の実数部分と虚数部分が求められる。この実数部分と虚数部分は、それぞれ(44)式右辺括弧内の分母と分子に対応している。
次に全ての干渉縞画像に共通する画像内の一点を選んで実数部分と虚数部分の値を複素平面上にプロットする、あるいはある領域を選んでその中の実数部分と虚数部分の値の平均値を複素平面上にプロットすると、円状に分布する。求めた実数部分と虚数部分は当然誤差を含んでいるので、円の上にばらつきを持って分布することになる。そこで、例えば最小自乗法を用いて、最も誤差が少ないであろう円を決める。この円上にプロットされた各干渉縞画像の位置を円のx軸方向から図った回転角が、その干渉縞画像の初期位相、すなわち干渉縞画像を取得したときの位相シフト量である。こうして決められた各干渉縞画像の初期位相を(46)式のXm、Ymの位相項に用いて、位相シフト法で視野内の位相分布を求めることができる。
しかしこの方法は、計測精度的に不利なフーリエ変換法を用いて各干渉縞画像の初期位相を決め、その初期位相を位相シフト法に用いてより高精度な位相分布を求める、という論理的な矛盾の上に成り立っている。円を精度良く決めるために、多くの干渉縞画像をフーリエ変換する必要があるが、フーリエ変換で求めた各干渉縞画像の初期位相の誤差は、基本的な位相シフト法において、各干渉縞画像を取得するときの位相シフト量の誤差に対応している。この位相シフト誤差が位相シフト法の位相計測結果に及ぼす影響を一概に評価することは難しいが、一例として発明者らのシミュレーションでは、位相シフトに±1
/50波長のばらつきがあると、計測された位相はおよそ±1/100波長程度の不確かさを有する結果が得られている。この結果で評価する限りは、この方法は非常に多くの干渉縞画像と膨大な計算を必要とするにもかかわらず、誤差は半分程度にしか軽減されないということになる。
また、各干渉縞画像をフーリエ変換することにより、全画面の位相分布を求めているにもかかわらず、このデータのうち1点あるいは位相が一定と見なせる一部の領域のみのデータを用いて、残りの大半のデータは利用しないことになるので、データ利用の効率は高いとは言えない方法である。
上記課題を解決するため、本発明に係る位相計測装置は、
計測対象部分を透過した第1の可干渉ビームと、前記計測対象部分以外を通った第2の可干渉ビームを重畳させて干渉縞を形成する干渉素子と、
前記干渉素子によって形成された干渉縞を撮像素子の撮像面に結像せしめる光学系と、
前記第1の可干渉ビームと前記第2の可干渉ビーム間の相対的な位相差を可変する位相制御機構と、
前記計測対象部分を透過した可干渉ビームの位相を算出する算出部と、を備え、
前記算出部は、
前記撮像素子によって撮像された相対的な位相差が異なる複数の干渉縞画像において2次元的な位置が共通するように、前記被計測試料内の屈折率および厚さが均一とみなせる所定領域内を横切る直線と、当該直線上の選択点を選択し、
各干渉縞画像について、前記直線上の干渉縞の強度分布曲線を決定するとともに、前記強度分布曲線の特徴点から前記選択点までの位相差である初期位相を決定し、
前記初期位相に基づいて前記計測対象部分の位相を算出することを特徴とする。
さらに本発明に係る位相計測装置において、
前記可干渉ビームは、レーザー光であり、
前記干渉素子は、反射鏡と半透過鏡の組み合わせであり、
前記位相制御機構は、反射鏡もしくは半透過鏡の少なくとも一つを機械的に微動させることを特徴とする。
さらに本発明に係る位相計測装置において、
前記可干渉ビームは、レーザー光であり、
前記干渉素子は、フレネルバイプリズムであり、
前記位相制御機構は、前記フレネルバイプリズムを機械的に微動させることを特徴とする。
さらに本発明に係る位相計測装置において、
前記可干渉ビームは、電子線であり、
前記干渉素子は、電子線バイプリズムであり、
前記位相制御機構は、前記電子線バイバイプリズムを機械的に微動させることを特徴とする。
また本発明に係る位相計測プログラムは、
計測対象部分を透過した第1の可干渉ビームと、前記計測対象部分以外を通った第2の可干渉ビームを重畳させ、前記第1の可干渉ビームと前記第2の可干渉ビーム間の相対的な位相差を可変して撮像した複数の干渉縞画像に基づいて、前記計測対象部分を透過した可干渉ビームの位相を算出するコンピューターにて実行可能な位相計測プログラムにおいて、
撮像された相対的な位相差が異なる複数の前記干渉縞画像において2次元的な位置が共通するように、前記被計測試料内の屈折率および厚さが均一とみなせる所定領域内を横切る直線と、当該直線上の選択点を選択する処理と、
各干渉縞画像について、前記直線上の干渉縞の強度分布曲線を決定するとともに、前記選択点から前記強度分布曲線の特徴点までの位相差である初期位相を決定する処理と、
前記初期位相に基づいて前記計測対象部分の位相を算出する処理とを実行することを特徴とする。
また本発明に係る位相計測方法は、
計測対象部分を透過した第1の可干渉ビームと、前記計測対象部分以外を通った第2の可干渉ビームを重畳させ、前記第1の可干渉ビームと前記第2の可干渉ビーム間の相対的な位相差を可変して撮像した複数の干渉縞画像に基づいて、前記計測対象部分を透過した可干渉ビームの位相を算出する位相計測方法において、
撮像された相対的な位相差が異なる複数の前記干渉縞画像において2次元的な位置が共通するように、前記被計測試料内の屈折率および厚さが均一とみなせる所定領域内を横切る直線と、当該直線上の選択点を選択し、
各干渉縞画像について、前記直線上の干渉縞の強度分布曲線を決定するとともに、前記強度分布曲線の特徴点から前記選択点までの位相差である初期位相を決定し、
前記初期位相に基づいて前記計測対象部分の位相を算出することを特徴とする。
以上、本発明によれば、被計測試料内の屈折率および厚さが均一とみなせる所定領域を利用して初期位相(強度分布曲線の特徴点から直線上の選択点までの位相差)を決定することで、計測時において初期位相を取得する必要が無く、初期位相を取得する際の計測誤差が発生することがない。
また、従来のフーリエ変換によって初期位相を決定することも考えられるが、フーリエ変換を利用する場合、膨大な計算量が必要とされるとともに、精度の向上を図る上では、多数の干渉縞画像が必要とされることとなる。これに対して本発明では、1枚の干渉縞画像の所定領域の強度分布曲線の特徴点から選択点までの位相差を初期位相として決定するため、所定領域内のデータ数を十分多くとることが可能であるため、1点の初期位相を決定するときの最小自乗法の精度が得られやすい。したがって干渉縞画像の取得枚数を少なくすることが可能となる。
さらに従来の方法では、多数の画像を取得している間、干渉縞画像の明るさが変化するなど外部環境の影響を受けやすく、十分な精度を得ることが困難である。しかしながら、本発明の方法では、そもそも干渉縞画像数が遙かに少なくて済むため、干渉縞画像の取得時間を少なくし、外部環境の変動による影響を抑えることが可能となる。また、所定領域内の強度分布曲線の特徴点から選択点までを初期位相として決めるため、各干渉縞画像ごとに明るさが変化した場合であっても初期位相決定の精度には影響することがない。また、照明ムラによる所定領域内の振幅分布がある場合、強度分布曲線の決定には影響するが、その影響の仕方は各干渉縞画像で一定であるため、初期位相に及ぼす影響はきわめて小さい。
屈折率の異なる媒質中を進行する光を説明するための図 物体波と参照波の干渉を説明するための座標系を示す図 計測対象部分を含む被計測試料の干渉縞画像を示す図 位相シフト法の計測原理を示す模式図 フーリエ変換されたキャリア干渉縞を示す模式図 本発明の実施形態に係る位相計測方法を説明するための模式図 本発明の実施形態に係る位相計測方法を説明するための模式図 本発明の実施形態に係る位相計測装置(振幅分割分割式)を示す模式図 本発明の実施形態に係る位相計測装置(波面分割方式)を示す模式図 本発明の実施形態に係るメインフローを示す図 本発明の実施形態に係る撮像処理を示すフロー図 本発明の実施形態に係る初期位相決定処理を示すフロー図 本発明の実施形態に係る再決定処理を示すフロー図 本発明の実施形態に係る試料による位相変化算出処理を示すフロー図 本発明の実施形態に係るビーム傾斜補正処理を示すフロー図
本発明では、視野内に物体波の位相が、干渉縞一周期分程度一定であるような所定領域を有する被計測試料を使用することが前提となる。図6は、このような被計測試料を計測した際の干渉縞画像を示す図である。この場合は、干渉縞画像内には、計測対象部分による楕円形の干渉縞が中央に形成されている。本実施形態では、この計測対象部分の周囲は空間もしくは屈折率が均一な母材である。この母材中、右下四角で囲んだ部分は物体波の位相が一定であると見なせる部分(所定領域)となる。なお、本実施形態では干渉縞画像中、計測対象部分以外の領域を屈折率および厚さが一様とみなせる所定領域に設定しているが、例えば、光ファイバーのコアやクラッドのように計測対象部分自体の物性値が均一とみなせる場合には、計測対象部分内に所定領域を設定してもよい。
このような所定領域を複数枚の干渉縞画像について位置が共通するように選択し、各干渉縞画像の初期位相の決定に供する。図6の右下には、この所定領域を取り出して拡大したものである。図中、丸で示した点(x0,y0)は、各干渉縞画像の所定領域中、全てに共通に選ばれた選択点であり、この選択点の位置で各干渉縞画像の初期位相を決定する。
そのためにまずこの選択点を通る直線Lを任意に選び、その直線Lに沿って画像の明るさをプロットする。なお、直線Lは、必ずしも1本の直線上である必要はなく、所定領域内の平行する複数の直線群あるいはそれらを平均した直線Lとしてもよい。簡単のために直線をx軸に沿って取ると、m枚目の干渉縞画像にδmの位相シフトを与えたときの点(x0,y0)を通る直線上の明るさは(17)式で与えられ、
Im(x,y0) = |Ao(x,y0)|2+|Ar(x,y0)|2
+2|Ao(x,y0)||Ar(x,y0)|cos[φ(x,y0)+kxsinθ+δm] ・・・(62)
となる。ちなみに、ビームの波長λと傾斜角θおよびそれによって生じる干渉縞の間隔dの間の関係は、
dsinθ=λ ・・・(63)
で与えられるので、kxsinθ は 2πx/d と書くこともできる。
いまこの所定領域内では、被計測試料による位相分布φ(x,y)は一定であるから、そ
の値をφ0とし、(18)式に倣ってこの直線上のビームの強度分布を簡略化して表すと

Im(x,y0) = B(x,y0)+A(x,y0)cos[φ0+2πx/d+δm] ・・・(64)
と表すことができる。B(x,y0)およびA(x,y0)は、理想的には一定の量であるが、実際にはビーム源に起因する強度分布や撮像素子の信号ノイズなどがあるため、得られる曲線は多少のばらつきを持って正弦曲線的に変化する曲線となる。そこで、例えば最小自乗法などを用いて横軸の位置xに対する強度Im(x,y0)の変化に基づいて、干渉縞分布曲
線を決定することで、B(x,y0)、A(x,y0)、dおよび φ0+δmを決めることができる。本実施形態では、この干渉縞分布曲線にcos(余弦)カーブを用いてフィッティングを行っている。
こうして得られたパラメータを(62)式に用いて、いま注目している選択点(x0
0)が、干渉縞分布曲線の特徴点(本実施形態では、cos(余弦)カーブの位相ゼロ
の点(カーブのピークに相当))を基準とし、そこから測って何ラジアンの位置に相当するか、すなわち図に示したδ1を求めることによって、このm枚目の干渉縞画像の初期位
相を決定することができる。一般にこうして求めた初期位相は、実際に干渉縞画像を取得したときに与えた初期位相とは絶対値が異なる。しかし位相は、基準の場所から測った角度であり、基準自体はどこにとってもかまわない量であるから、全ての干渉縞画像に共通の基準からそれぞれの干渉縞画像の初期位相を測定していれば何ら差し支えない。すなわち重要な量は、各干渉縞画像間の位相のずれ量であるので、この方法で決定した初期位相を計測対象部分における初期位相としてよいことになる。
干渉計の2本のビームの一方の光路を変化させると干渉縞もビームの進行方向に移動するが、ビームの進行方向に垂直な面で観察すると、試料の像に対して干渉縞が横方向に移動する。これは、例えば(62)式右辺第2項のcos内部の位相部分で、φ0はもとも
とビーム進行方向であるz方向に関する位相の遅れ、δmも同じくz方向に関する位相の
進み・遅れであるが、この式ではxにもyにも関わらない形で含まれているので、x方向に対する進み・遅れと見なしても全く等価であることに対応している。複数枚の干渉縞画像から、それぞれの初期位相を求めるときの様子を示したのが図7である。
このように、注目している選択点(x0,y0)に対して、干渉縞が図の右側方向にいくにしたがって右方向にシフトしている。したがって、干渉縞画像の1枚目、2枚目と進むに従って、この点の位相は図示したようにδ1、δ2、・・・と変化している。この1点の位相を決定する方法自体は、位相シフト法の原理を変形したものであるが、論理的に全く等価である。
1枚目の干渉縞画像の初期位相δ1は任意性があり、計測上意味があるのはδ1に対してδ2、δ3・・・がどれだけシフトしたかという、初期位相値間の差である。したがって、領域とその中の1点が全ての干渉縞画像に共通して選択されるのであれば、そして、試料内部の物性値が均一な領域であれば、その干渉縞画像内に占める位置自体は全く任意である。
本実施形態に係る位相計測方法を、従来のフーリエ変換法によって決定した初期位相を用いた位相シフト法と比較すると以下のような長所・短所がある。
まず短所として、屈折率および厚さといった物性値が均一な所定領域が必要であることが挙げられる。しかし一般にこれは重大な欠点とはならない。例えば光学分野で光学素子を計測する場合、光ファイバーや光導波路などは均一な母材の中に屈折率の高い部分を形成し、光がこの部分を通ることで機能が実現される。また単独の光学素子なら、その周囲は空間である。いずれも、計測対象部分周辺の母材や空間は屈折率が均一であることが多い。フィルム状のものでは均一な部分を選択できない場合もあろうが、たとえば周辺部を選ぶとか、一部に穴を空けて視野内に空間を透過するような領域を設けることも可能である。また、可干渉ビームに電子線を用いた電子線干渉の場合も、きわめて小さい粒子状の試料、薄膜の試料等、周囲にフリーな空間のある試料の方がむしろ多いくらいであり、物性値の均一な場所を選ぶのに問題がないことが多い。
一方長所として、まず第1に必要とする干渉縞画像の数が少なくてすむという点が挙げられる。フーリエ変換によって初期位相を決める従来の方法では、まず各干渉縞画像から位相分布を求め、一点もしくは位相が同じ領域の平均値から各干渉縞画像の初期位相を求める。すなわち、フーリエ変換という膨大な計算量を必要とする方法で位相を求めておき
ながら、その大半を利用していないことになる。さらに、各干渉縞画像の位相を限られた情報から決定するため、それをプロットした位相分布の円を統計的に精度良く決めるために多くの干渉縞画像を必要とする。
これに対して本方法では、1枚の干渉縞画像の所定領域の強度分布曲線の特徴点から選択点までの位相差を初期位相として決定するため、所定領域内のデータ数を十分多くとることが可能であるので、1点の初期位相を決定するときの最小自乗法の精度が得られやすい。これはすなわち干渉縞画像の枚数を少なくすることができることを意味している。
さらに従来方法では、多数の画像を取得している間、干渉縞画像の明るさが変化すると、明るさは複素平面上にプロットされる円の半径であるからデータのばらつきが生じ、精度が得られにくい。特に電子線干渉では、明るさや間隔が一定な干渉縞画像を数分以上維持することは困難である。しかし本発明の方法では、そもそも干渉縞画像数が遙かに少なくて済み、かつ所定領域内の強度分布曲線の特徴点から選択点までを初期位相として決めるため、各干渉縞画像ごとに明るさが変化していても、すなわち強度分布曲線の振幅が変わっても初期位相決定の精度には影響しない。また、照明ムラによる所定領域内の振幅分布がある場合、強度分布曲線の決定には影響するが、その影響の仕方は各干渉縞画像で一定であるので、初期位相に及ぼす影響影響はきわめて小さい。
さらに本発明による方法では、計測時において、計測装置から各干渉縞画像の初期位相を取得する必要がない。初期位相は、干渉縞画像の撮像タイミング時に、計測装置内において位相を可変させる手段の制御状態から取得されることが可能であるが、本発明では、初期位相を取得する必要が無いため、初期位相取得の際の計測誤差が発生することがない。
本発明は、取得した干渉縞画像に対する処理方法に特徴を有するものであるため、干渉縞画像を取得する様々な位相計測装置に適用可能である。図8は、マハ・ツェンダ干渉計を使用した実施形態である。
可干渉ビーム源1から出た可干渉ビームは第1のビームスプリッタ31で2経路に分割され、一方は第1の反射鏡32を経て被計測試料Sを照射して第2のビームスプリッタ34に至る。一方、他方のビームは第2の反射鏡33を経て第2のビームスプリッタ34に至る。一般に、前者は物体波、後者は参照波と呼ばれる。物体波は、計測対象部分を含んだ被計測試料Sを透過した第1の可干渉ビームに、また、参照波は、被計測試料Sは計測対象部分以外を通った第2の可干渉ビームに相当するものである。第2のビームスプリッタ34においては、物体波は一部が反射、一部が透過し、参照波も一部が反射、一部が透過する。図においては、第2のビームスプリッタ34を透過した物体波と、第2のビームスプリッタ34で反射した参照波のみが描かれている。
結像レンズ4は、被計測試料Sの透過像を撮像装置5の撮像面上に結像する働きをする。したがって、撮像装置5の撮像面上では、被計測試料Sによって位相が変化した物体波と参照波とが干渉し、位相変化に対応して間隔や方向が変化した干渉縞群からなる干渉縞画像が形成される。この形式の干渉計は、可干渉ビームを強度的に2分割するので、「振幅分割」方式と呼ばれる。
本発明をこの形式の干渉計に適用する場合は、図8に示すように第2の反射鏡33(第1の反射鏡32でもよい)を、計算機で制御可能な微動部6(本発明における「位相制御機構」)上に搭載する。撮像装置5から第1の干渉縞画像を図示していない計算機(本発明における「算出部」)に取り込み、続いて微動部6を制御して参照波の光路長をわずかに変化させて第2の干渉縞画像を取り込む。第2の干渉縞画像は、物体波には変化がない
が、参照波は光路長が変化したことにより、物体波と干渉するときの位相の状態すなわち波動の山・谷の進行方向の位置が変化しているので、干渉縞の明暗の位置が第1の干渉縞画像とは異なっている。同様にして3枚以上の干渉縞画像を次々に取り込めば、原理の項で説明した方法で各干渉縞画像の初期位相を決定することができ、したがって位相シフト法を適用して干渉縞画像内の位相分布、すなわち被計測試料S内の計測対象部分によって変化した照射ビームの位相分布を求めることができる。
ここで、可干渉ビームにはレーザー、X線等の電磁波でも、電子ビームなどのいわゆる粒子線でも良い。またビームスプリッタ31、34は、光の場合は半透鏡がもっぱら用いられるが、電子線、X線には回折格子、結晶などが用いられ、分割も互いに直交する方向である必要はない。干渉条件によっては、第2のビームスプリッタ34を省略することも可能である。
図9には本発明の他の実施形態に係る位相計測装置が示されている。この実施形態では、可干渉ビームを領域で2分割するため「波面分割」方式と呼ばれている。可干渉ビーム源1から出た可干渉ビームは、第1のレンズ81で一旦焦点を結び、あるいは仮想焦点から発散するビームを形成し、その焦点位置に前側焦点を有する第2のレンズ82によって径の大きなビームに変換される。被計測試料Sは可干渉ビームの経路の片側に置かれ、被計測試料Sを透過した可干渉ビーム(物体波)は結像レンズ4によって撮像装置5の撮像面上に像を結ぶ。
結像レンズ4と撮像装置5の間には、微動部6上に搭載されたビームスプリッタ3が置かれている。ビームスプリッタ3は、光の干渉計では図示したような断面を有する三角柱状のガラス製のプリズム(フレネルバイプリズムと呼ばれる)が用いられ、電子線干渉においては同様の働きをする電子線バイプリズムと呼ばれる干渉素子が用いられる。被計測試料Sを透過した物体波(灰色で示す光)はビームスプリッタ3の左側を通り、屈折の法則により光軸側に偏向される。
一方、被計測試料Sのない側を通った参照波はビームスプリッタ3の右側を通り、屈折の法則に従って光軸側に偏向される。この結果、物体波と参照波はある角度を持って重畳することになり、物体波内の位相分布に従った間隔と方向の干渉縞からなる画像を形成する。この位相計測装置では、微動部6でビームスプリッタ3を図の左右方向に微動すると、物体波と参照波の光路長が変化する。例えば図で右に微動すると、参照波はバイプリズムのより厚い部分を通るようになるため位相が遅れ、物体波はバイプリズムのより薄い部分を通るようになるため位相が進む。
一方、プリズム角が一定であるため像を形成するビームの偏向角も一定で被計測試料Sの像は移動しない。すなわち被計測試料の像は変化しないが、物体波と参照波の山・谷の位置が変わっているので、干渉縞の明暗の位置も変化する。従って、ビームスプリッタ3を微動する毎に干渉縞画像を撮像装置5を介して図示していない計算機(本発明における「算出部」)に取り込む、という操作の繰り返しにより、干渉条件の異なる複数枚の干渉縞画像を得ることができる。こうして、原理の項で説明した方法で各干渉縞画像の初期位相を決定し、被計測試料S内の計測対象部分によって変化した照射ビームの位相分布を求めることができる。
本図では説明のため簡潔に表現してあるが、結像レンズ4が複数個のレンズで構成される場合には、ビームスプリッタ3と撮像装置5の間にも拡大レンズが挿入されることもある。また、この干渉計形式をX線、電子線で実現することも可能である。
以上、2つの実施形態を使用して本発明に係る位相計測装置の具体例を説明したが、こ
のような位相計測装置の撮像素子5で撮像された干渉縞画像は、計算機(コンピューター)に取り込まれ、各干渉縞画像について、図6、図7で説明したように強度分布曲線を決定することで初期位相が決定される。各干渉縞画像について決定された初期位相は、各干渉縞画像内の計測対象部分の位相を算出するために使用される。なお、このような演算処理は、計算機(コンピューター)に格納するプログラムにて実行されることとなるが、この計測対象部分の位相を算出するプログラム(本発明における「位相計測プログラム」)、あるいは、計測対象部分の位相を算出するプログラムを記憶した記憶媒体についても本発明の範疇となる。
では、本発明の実施形態に係る位相計測装置(位相計測プログラム)にて実行される処理について説明する。図10は、メインフローを示す図である。本実施形態のメインフローは、干渉縞画像の撮像から被計測試料の厚さあるいは屈折率などの対象物理量を算出するまでの一連の処理として説明しているが、これらは個々の処理として独立に行うこととしてもよい。具体的には、各処理を担当する複数のプログラムで実行することなどが考えられる。
このメインフローは、図8、図9で説明したような位相計測装置を用いて干渉縞画像を取得する撮像処理(S100)、初期位相を決定する初期位相決定処理(S200)、取得した干渉縞画像(試料)中の位相変化を算出する位相変化算出処理(S300)、位相連続化処理(S400)、干渉させたビームの傾斜を補正するビーム傾斜補正処理(S500)、試料の厚さあるいは屈折率などの対象物量を求める対象物理量算出処理(S600)を含んでいる。これらの処理について順を追って説明する。
図11には、本発明の実施形態に係る撮像処理を示すフロー図が示されている。撮像処理は、図8、9の撮像素子5などによって撮像された試料を透過したビームと試料を透過していないビームによる干渉縞画像を取得する処理である。位相計測装置における光学的な条件が大幅に変更される場合、撮像処理の実行前に位相制御機構(図8、図9の「微動部6」がこれに相当)の動作に対する干渉縞画像上の干渉縞の微動量の概略の関係を調べておくことが好ましい。具体的には、干渉縞が1間隔移動するに要する位相制御機構の動作量、たとえば位相制御機構に付与する電圧や電流など、の関係を概略把握しておく。
計測条件が整った位相計測装置において、m=1〜MまでM枚の干渉縞画像Pmの撮像
を実行する(S102)。各干渉縞画像は、位相制御機構により干渉条件、すなわち、初期位相が変化される(S103)。図8、図9の場合には、微動部6によって光学素子を振動させることで撮像毎の干渉条件が変化される。干渉縞画像の取得は、その撮像枚数m=Mとなるまで繰り返し実行される。撮像枚数Mは、位相制御機構の動作量の異なる3枚以上とすることが必要となるが、取得した各干渉縞画像に対する位相制御機構の数値的な動作量は分かっている必要はなく、また各干渉縞画像間における位相制御機構の数値的な動作量は等間隔である必要もない。ただ、より高精度な計測のためには、おおよそ等間隔で、干渉縞画像の枚数も多い方が有利となる。
図12には本発明の実施形態に係る初期位相決定処理を示すフロー図が示されている。初期位相決定処理においては、まず、干渉縞画像中、位相変化が均一とみなせる所定領域が決定される(S201)。光ファイバーなどの被計測試料においては、クラッド、あるいは、コア部分といったように同一の材料で満たされた領域を所定領域として選択することが可能である。あるいは、干渉縞画像中、計測対象部分の存在しない領域をこの所定領域としてもよい。なお、この所定領域は、取得した複数の干渉縞画像中、どの干渉縞画像においても座標が一致するように選択される。すなわち、所定領域は、被計測試料において常に同じ位置となる。
この所定領域は広い方が精度の面で有利となるが計算量が増大するという欠点を有する。最も簡潔には、縦1ピクセル、横干渉縞の1波長分程度の範囲で所定領域を選ぶことで初期位相を決定することが可能である。所定領域は、縦横に複数ピクセルを有する矩形領域としてもよいが、一般に縦方向には位相がずれている(干渉縞が矩形領域の左右辺に必ずしも平行ではない)ので、計算処理が少し複雑ものとなる。
S203〜S206においては、各干渉縞画像Pmに対し、S201において決定した
所定領域中の所定点(選択点)を通る直線について、強度分布曲線(サインカーブもしくはコサインカーブ)を用いたフィッティング(S205)が実行される。サインカーブを使用した場合、(65)式(コサインカーブの場合には(66)式)にフィッティングすることでBm、Am、λm、φmを決定する。
y=Bm+Amsin (2πx/λmm) ・・・(65)
y=Bm+Amcos (2πx/λmm) ・・・(66)
ここで、Bmは干渉縞のベースとなる明るさ、Amは干渉縞の振幅、λmは干渉縞の周期
の波長、φmは干渉縞の初期位相、xは選択点を通る直線上の位置である。
この所定領域中の所定点である選択点は、各干渉縞画像において共通する位置であれば、任意の位置に選ぶことが可能である。例えば、選択領域における左右どちらかの端点とすることや、選択領域内の中点とすることが可能である。あるいは、1枚目の干渉縞画像に対して行われたフィッティングカーブの式y=B1+A1sin(2πx/λ11)で第2項がゼロ
となるxでもよい。
また、本実施形態における初期位相φmは、選択点におけるサインカーブ(もしくはコ
サインカーブ)の位相がゼロである位置(本発明における「特徴点」)からの位相となっている。この強度分布曲線における特徴点は、強度分布曲線における所定の位相の位置(山や谷でのピークなど)であれば任意に選択することが可能である。
S203〜S206の処理を全ての干渉縞画像P1〜Pmについて繰り返し実行することで、各干渉縞画像P1〜Pmについて、Bm、Am、λm、φmが算出される。算出したBm
m、λmが各干渉縞画像間でばらつきが小さい場合(S209:Yes)には、S206で算出された各干渉縞画像に対する初期位相φmを、各干渉縞画像に対して使用するもの
として確定する(S210)。一方、算出したBm、Am、λmが各干渉縞画像間でばらつ
きが大きい場合(S209:No)には、再決定処理S220を実行し、もっともらしいBm、Am、λmが算出される。
サインカーブなど強度分布曲線に対するフィッティングでは、屈折率と厚さが均一とみなせる所定領域を選んでいるため、強度分布曲線中のBm、Am、λmは共通であり、φmのみ異なることが予想される。しかしながら、光源(可干渉ビーム源1)の強度のゆらぎや、振動などの外乱要素によってBm、Am、λmが変動する場合、すなわち、Bm、Am、λmにばらつきが生じてしまう。再決定処理S220は、このような場合に、各干渉縞画像の強度分布曲線のBm、Am、λmを平均化することでもっともらしいBAV、AAV、およびλAV
を求めている。平均化としては、単純に平均をとることや最小自乗法を利用した手法などを採用することができる。
この再決定処理では、まず、S206で算出した各干渉縞画像のBm、Am、λmを平均
し、平均値BAV、AAV、およびλAVが求められる(S221)。S223では、求めた平均値BAV、AAV、およびλAVを使用して、(67)式を満たす初期位相φmを各干渉縞画像に
ついて算出する。すなわち、Bm、Am、λmを有する波形を移動させ、干渉縞に最もフィ
ットする位置の初期位相φmとして採用される。
y=BAV+AAV sin (2πx/λAVm) ・・・(67)
S220で算出された初期位相φmは、図12の初期位相決定処理において各干渉縞画
像に対して使用するものとして確定される(S210)。
図14は、本発明の実施形態に係る試料による位相変化算出処理を示すフロー図である。
この処理は、図12の初期位相決定処理で確定された各干渉縞画像毎の初期位相φmを使
用して、各干渉縞画像を構成する各ピクセル(画素)に対する位相値が算出される(S303)。具体的には、各干渉縞画像Pmに対応する(添え字mが共通する)初期位相φmを(46)〜(48)式の(2πm/M)の代わりに適用して、干渉縞画像内の各ピクセルにおける位相値が計算される。
S300で算出された干渉縞画像内の位相値は、隣接するピクセル間で位相飛びを生じている可能性がある。S400ではこのような干渉縞の位相値を連続化するように補正する位相連続化処理が実行される。各干渉縞画像内の横方向および縦方向に分布するピクセルについて、その位相値は−π〜+πに離散化された状態で分布にする。しかしながら、上述したような位相飛びが生じた場合、隣接する位相値間には不連続となる。そのため、位相連続化処理(S400)では、たとえば横方向のときは、画面の横方向に逐次、次の値と比較して、差が一定量以上の時は2πの位相飛びと判断して、下に飛んでいるなら2πを足し、上に飛んでいるなら2πをひいて連続化する。縦方向についても同様に、下の値と比較して連続化する。なお、干渉縞画像内の干渉縞が画面の縦方向にほぼ平行(具体的には画面の左右端において、干渉縞が横切らない)なら、縦方向の連続化が不要となる。干渉縞が画面の横方向にほぼ平行な場合も同様に、横方向の連続化が不要となる。
本実施形態では、さらに連続化した位相分布から、ビームの傾斜分を補正するビーム傾斜補正処理(S500)を実行している。計算された計算された各ピクセルにおける位相値は、2本のビームが傾いていることによる位相成分を含んでいるので、傾斜分を除去する。実際に得られるデータは、画面の縦方向と横方向に傾いた位相の斜面の上に、試料の被計測領域の位相成分が重畳している。そのためこのビーム傾斜補正処理では、使用する2本のビーム(物体波と参照波)の傾きによる位相成分を除去することとしている。この補正の方法としては、実験条件から正確に傾斜分が計算できる場合にはそれを用いればよいが、一般には計測結果から縦方向、横方向の傾きを求めて補正する。具体的には、S501、S502において、それぞれx方向、y方向のビーム傾斜が計算され、これらを用いて試料による位相変化の傾斜補正が実行される(S503)。
以上、本発明の実施形態に係る位相算出、すなわち、計測対象部分における位相分布の算出について説明した。このように算出された計測対象部分の位相分布を使用することで、位相計測対象部分の物理量(対象物理量)を求めることが可能となる。対象物理量を算出する対象物理量算出処理(S600)では、傾斜補正した位相分布を求める物理量に換算する。使用した試料の厚さが一定あるいは略一定とみなせる場合には、計測対象部分における屈折率分布を対象物理量として算出することが可能である。この場合、各ピクセルにおける位相値と、試料の厚さと基準となる部分の屈折率から、(6)式をラジアン単位で表した(68)式を用いて求めることができる。
φ(x, y) =2π ( n (x, y) - n0) t / λ0 ・・・(
68)
一方、使用した試料の屈折率が均一あるいは略均一とみなせる場合には、(68)式を変形した(69)式を用いて、計測対象部分における厚さ分布を求めることができる。
φ(x, y) =2π ( t (x, y) - t0) n / λ0 ・・・(
69)
以上、本発明の実施形態に係る撮像処理(S100)から対象物理量算出処理(S60
0)まで説明したが、本発明(位相計測装置、位相計測方法あるいは位相計測プログラム)においては、これら処理中の初期位相決定処理(S200)と試料による位相変化算出処理(S300)(再決定処理を除く)を少なくとも実行することが必要となる。
なお、本発明はこれらの実施形態のみに限られるものではなく、それぞれの実施形態の構成を適宜組み合わせて構成した実施形態も本発明の範疇となるものである。
1…可干渉ビーム源、3…ビームスプリッター、31…第1のビームスプリッタ、32…第1の反射鏡、33…第2の反射鏡、34…第2のビームスプリッタ、4…結像レンズ、5…撮像素子、6…微動部、81…第1のレンズ、82…第2のレンズ、S…被計測試料

Claims (6)

  1. 計測対象部分を透過した第1の可干渉ビームと、前記計測対象部分以外を通った第2の可干渉ビームを重畳させて干渉縞を形成する干渉素子と、
    前記干渉素子によって形成された干渉縞を撮像素子の撮像面に結像せしめる光学系と、
    前記第1の可干渉ビームと前記第2の可干渉ビーム間の相対的な位相差を可変する位相制御機構と、
    前記計測対象部分を透過した可干渉ビームの位相を算出する算出部と、を備え、
    前記算出部は、
    前記撮像素子によって撮像された相対的な位相差が異なる複数の干渉縞画像において2次元的な位置が共通するように、前記被計測試料内の屈折率および厚さが均一とみなせる所定領域内を横切る直線と、当該直線上の選択点を選択し、
    各干渉縞画像について、前記直線上の干渉縞の強度分布曲線を決定するとともに、前記強度分布曲線の特徴点から前記選択点までの位相差である初期位相を決定し、
    前記初期位相に基づいて前記計測対象部分の位相を算出することを特徴とする
    位相計測装置。
  2. 前記可干渉ビームは、レーザー光であり、
    前記干渉素子は、反射鏡と半透過鏡の組み合わせであり、
    前記位相制御機構は、反射鏡もしくは半透過鏡の少なくとも一つを機械的に微動させることを特徴とする
    請求項1に記載の位相計測装置。
  3. 前記可干渉ビームは、レーザー光であり、
    前記干渉素子は、フレネルバイプリズムであり、
    前記位相制御機構は、前記フレネルバイプリズムを機械的に微動させることを特徴とする
    請求項1に記載の位相計測装置。
  4. 前記可干渉ビームは、電子線であり、
    前記干渉素子は、電子線バイプリズムであり、
    前記位相制御機構は、前記電子線バイバイプリズムを機械的に微動させることを特徴とする
    請求項1に記載の位相計測装置。
  5. 計測対象部分を透過した第1の可干渉ビームと、前記計測対象部分以外を通った第2の可干渉ビームを重畳させ、前記第1の可干渉ビームと前記第2の可干渉ビーム間の相対的な位相差を可変して撮像した複数の干渉縞画像に基づいて、前記計測対象部分を透過した可干渉ビームの位相を算出するコンピューターにて実行可能な位相計測プログラムにおいて、
    撮像された相対的な位相差が異なる複数の前記干渉縞画像において2次元的な位置が共通するように、前記被計測試料内の屈折率および厚さが均一とみなせる所定領域内を横切る直線と、当該直線上の選択点を選択する処理と、
    各干渉縞画像について、前記直線上の干渉縞の強度分布曲線を決定するとともに、前記強度分布曲線の特徴点から前記選択点までの位相差である初期位相を決定する処理と、
    前記初期位相に基づいて前記計測対象部分の位相を算出する処理とを実行することを特徴とする
    位相計測プログラム。
  6. 計測対象部分を透過した第1の可干渉ビームと、前記計測対象部分以外を通った第2の
    可干渉ビームを重畳させ、前記第1の可干渉ビームと前記第2の可干渉ビーム間の相対的な位相差を可変して撮像した複数の干渉縞画像に基づいて、前記計測対象部分を透過した可干渉ビームの位相を算出する位相計測方法において、
    撮像された相対的な位相差が異なる複数の前記干渉縞画像において2次元的な位置が共通するように、前記被計測試料内の屈折率および厚さが均一とみなせる所定領域内を横切る直線と、当該直線上の選択点を選択し、
    各干渉縞画像について、前記直線上の干渉縞の強度分布曲線を決定するとともに、前記強度分布曲線の特徴点から前記選択点までの位相差である初期位相を決定し、
    前記初期位相に基づいて前記計測対象部分の位相を算出することを特徴とする
    位相計測方法。
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