JP5901230B2 - 屋根構造 - Google Patents

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Description

本発明は、住宅建物等の屋根構造に関する。
従来、平坦な陸屋根に排水勾配を形成すべく、平板状の樹脂板の一方の面に傾斜面を形成し、当該樹脂板を陸屋根上に敷設することで陸屋根に水勾配を設けることが行われている。当該樹脂板は、容易に傾斜面をつける加工を施せる点や軽重量である点に鑑み、従来から発泡スチロール板や押出法ポリスチレンフォーム保温版等が用いられている。また、この種の水勾配を設ける構成は、建物のベランダやバルコニの床部分にも設けられている。
ところで、近年の都市のヒートアイランド現象や太陽からの強烈な直射日光に晒されること等により、建物の屋根面やベランダ等の床部分の温度が従来の予測よりも大きく上昇する現象が発生してきている。また、上述の如きベランダやバルコニへの出入口となる掃出し窓に反射率の高い高性能な遮熱ガラスなどを用いると、太陽からの直射日光に加えて当該遮熱ガラスからの反射光により、屋根面に直接及び間接に太陽光が集光され、屋根面の温度が大幅に上昇することとなり、これらの条件が重なると、場合によっては屋根面(以下、屋根面のみならずベランダやバルコニの床部分も含んで屋根面と称する)の表面温度が90℃近くになる場合がある。
これに対し、当該屋根面の水勾配を従来の押出法ポリスチレンフォーム保温版により形成する場合、当該押出法ポリスチレンフォーム保温版の内部温度が82〜83℃程度の高温に維持されると、該保温版の内部ガス圧力の上昇と材料の軟化が同時に進行する。これにより、高温部分が二次的な発泡を起こし、当該部分のみが膨張して本来平滑である屋根面(床部分)が部分的に隆起してしまう。その結果、屋根面の平滑性が著しく損なわれることが問題となる。
このような問題を解決すべく、例えば特許文献1の屋根構造は、当該水勾配を形成する樹脂層の軟化温度(ガラス転移点)を高め、これによって、二次発泡を防止している。
特願2010−133177号公報
しかしながら、上記特許文献1に開示の構成において、ガラス転移点の上昇は高々10℃程度ある。従って、集光や温室効果など温度上昇の条件が重なれば、この範囲を超えることが十分に考えられる。そのため、二次発泡をより確実に防止できる構造が、従来より求められていた。
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、日射熱等に起因して屋根面の平滑性が損なわれてしまうことを防止することができる屋根構造を提供することを目的とする。
本発明に係る屋根構造は、少なくとも屋根下地層と該屋根下地層を覆う防水層とを備え、屋根下地層と防水層の間には、発泡性の樹脂により形成されて屋根下地層と防水層間の間隔を調整する中間調整層が設けられている屋根構造において、中間調整層の上方には、該中間調整層の上面の温度を最大でも当該中間調整層のガラス転移点よりも低い温度に抑える保護層が設けられ、保護層の上方に防水層が設けられ、中間調整層は、上面に傾斜状の水勾配を付与した複数の板状パネルの傾斜上部同士を連結してなる棟部を備え、保護層は、面外方向への曲げを許容する平板状パネルとして形成され、棟部を跨いで複数の板状パネルに亘った状態で敷設され、該棟部を形成する板状パネルの傾斜状の上面に沿って山状に傾斜していることを特徴とする。
これによれば、中間調整層の上方に保護層を設けているので、中間調整層の表面近傍温度がガラス転移点に達することやガラス転移点に到達しないまでも高温となっている温度状態が長期に亘ることを著しく抑制できるものとなる。従って、中間調整層が高温になることによって生じる二次的な発泡を防止することができ、日射熱等に起因して屋根面の平滑性が損なわれてしまうことを防止することができる。また、棟部を跨いで平板状パネルを敷設することにより、棟部を形成するために中間調整層の板状パネルの割付が複雑になるとしても、当該板状パネルの割付とは別々に、保護層の平板状パネルの割付を設定できる。すなわち、中間調整層の棟部の存在とは無関係に保護層の平板状パネルの割付を行うことができ、当該割付の単純化が図られることとなる。これにより、部品数の削減、作業性の向上を図ることができる。
また、本発明に係る屋根構造は、保護層が、熱硬化性の樹脂からなる断熱材により形成されていることが好ましい。これによれば、当該保護層が熱硬化性樹脂により形成されているため、当該保護層表面の温度が想定以上に上昇することとなっても、当該熱効果樹脂は硬化することは考えられるものの、軟化することはなく、これによって、当該保護層の発泡を防止することができ、中間調整層の発泡防止も合わせて、屋根構造の発泡を防止することができるものとなる。
また、本発明に係る屋根構造は、熱硬化性の樹脂がフェノールフォームであることが好ましい。これによれば、フェノールフォームは単位厚さでの断熱性が高いので、当該保護層自体の厚さを抑制した上で当該保護層下方の断熱性を確保することができる。また、当該フェノールフォームからなる保護層の厚さを厚く設定することより、屋根下地層下まで断熱することができ、建物全体の断熱性向上を図ることができる。
本発明に係る屋根構造は、少なくとも屋根下地層と該屋根下地層を覆う防水層とを備え、屋根下地層と防水層の間には、発泡性の樹脂により形成されて屋根下地層と防水層間の間隔を調整する中間調整層が設けられている屋根構造において、中間調整層の上方には、該中間調整層の上面の温度を最大でも当該中間調整層のガラス転移点よりも低い温度に抑える保護層が設けられ、保護層の上方に防水層が設けられ、中間調整層は、上面に傾斜状の水勾配を付与した複数の板状パネルの傾斜下部同士を連結してなる谷部を備え、保護層は、面外方向への曲げを許容する平板状パネルとして形成され、谷部を跨いで複数の板状パネルに亘った状態で敷設され、該谷部を形成する板状パネルの傾斜状の上面に沿って谷状に傾斜していることを特徴とする。
これによれば、中間調整層の上方に保護層を設けているので、中間調整層の表面近傍温度がガラス転移点に達することやガラス転移点に到達しないまでも高温となっている温度状態が長期に亘ることを著しく抑制できるものとなる。従って、中間調整層が高温になることによって生じる二次的な発泡を防止することができ、日射熱等に起因して屋根面の平滑性が損なわれてしまうことを防止することができる。また、谷部を跨いで平板状パネルを敷設することにより、谷部を形成するために中間調整層の板状パネルの割付が複雑になるとしても、当該板状パネルの割付とは別々に、保護層の平板状パネルの割付を設定できる。すなわち、中間調整層の谷部の存在とは無関係に保護層の平板状パネルの割付を行うことができ、当該割付の単純化が図られることとなる。これにより、部品数の削減、作業性の向上を図ることができる。
本発明によれば、日射熱等に起因して屋根面の平滑性が損なわれてしまうことを防止することができる。
図1は、本発明の実施形態に係る屋根構造の層構成を示す断面図である。 従来の屋根構造の層構成を示す断面図である。 実施例1、実施例2及び比較例1に係る屋根構造の設定条件及び計算結果を示す表である。 実施例3、実施例4及び比較例2に係る屋根構造の設定条件及び計算結果を示す表である。 実施例5、実施例6及び比較例3に係る屋根構造の設定条件及び計算結果を示す表である。 中間調整層と、保護層の寸法関係を説明するためのモデル図である。 本発明の実施形態に係る屋根構造の中間調整層と、保護層の寸法関係を示すモデル図である。 本発明の実施形態に係る屋根構造の中間調整層と、保護層の寸法関係を示すモデル図である。 中間調整層及び保護層の割付の一例を示す図である。
図1は、本発明の実施形態に係る屋根構造1の層構成を示す断面図である。屋根構造1は、屋根下地層2と該屋根下地層2を覆う防水層3とを備え、屋根下地層2と防水層3の間には、発泡性の樹脂により形成されて屋根下地層2と防水層3間の間隔を調整する中間調整層4が設けられている。中間調整層4の上方には、該中間調整層4の上面の温度を最大でもガラス転移点よりも低い温度に抑える保護層6が設けられ、保護層6の上方に防水層3が設けられている。また、防水層3と保護層6との間には、調湿層7が設けられている。
屋根下地層2は、例えば、平板状の軽量気泡コンクリート(ALC)パネルを敷設して形成される。当該ALCパネルは、軽量で且つ高い断熱性能を有するため外壁材として好ましく用いることが可能である。屋根下地層2の上方が室外側であり、下方が室内側である。また、屋根下地層2の下方には、所定の間隔を有して石膏ボードなどからなる天井板8が設置されている。屋根下地層2と天井板8との間には、空気層9が形成される。空気層9には、グラスウールなどの断熱材が配置されていてもよい。
防水層3は、調湿層7の上面に張設して形成され、該防水層3の下面は調湿層7の上面に当接している。防水層3を形成可能な材料は、好ましくは塩化ビニル系樹脂シートが用いられるが、その他、平型屋根スレート、合成樹脂エマルジョン系複層仕上塗材、ガラス不織布入りポリエチレンシート、ガラスクロス入りポリエチレンシート、及びこれらのシートのいずれか同士を積層したシート等を採用することが可能である。
中間調整層4は、発泡性の樹脂を主材とするものを平板状に形成した板材を屋根下地層2の上面に敷設して形成されている。また、中間調整層4は、下面に対し上面が僅かに傾斜している状態に形成されており、当該傾斜により屋根構造1の最上面に水勾配が形成されるものとなる。中間調整層4として採用可能な材料としては、押出法ポリスチレンフォーム保温版を用いることができる。押出法ポリスチレンフォーム保温版は、加工容易性及びコストの観点から、屋根構造において水勾配を安価に形成できるというメリットがある。その他、中間調整層4として、ビーズ法ポリスチレンフォームなどを採用することができる。中間調整層4の厚さは25mm〜30mm以上に設定され、熱伝導率は0.034W/mK〜0.043W/mKに設定される。
保護層6は、所定厚さに形成された平板状の断熱板を中間調整層4の上面4aに敷設することによって形成される。保護層6は、中間調整層4の上面4aの温度を最大でもガラス転移点よりも低い温度に抑えるように設定される。ここで、ガラス転移点は中間調整層4の軟化温度であり、中間調整層4として押出法ポリスチレンフォーム保温版を用いる場合には、当該ガラス転移点は82℃〜83℃程度である。該保護層6は、中間調整層4の上面4aが当該温度以上となることを防止することによって、中間調整層4の二次発泡を防止する。保護層6の断熱材として、種々の素材を採用することができる。保護層6として、熱硬化性の樹脂からなる断熱材を用いることができる。また、熱硬化性の樹脂として、フェノール樹脂発泡体(フェノールフォーム)を採用することができる。かかるフェノール樹脂発泡体を主素材とする保護層6の断熱板として、例えばネオマ(登録商標。商標権者:旭化成建材株式会社。以下、ネオマ又はネオマフォームと称呼する)を使用することができる。なお、フェノール樹脂発泡体の表裏面には通常保護面材が設けられる。この保護面材を構成する材料としては、特に限定するものではないが、例えばポリエステル不織布を含む合成繊維からなる不織布を用いることが可能である。また、保護層6の断熱板の厚さは製造段階で設定され、所定の幅や長さを有する平板状に規格化されて切断される。即ち、断熱板の幅は住宅に設定されたモジュール寸法に対応させて設定することが可能となっている。また、保護層6は、上述の如く単一の素材により単層形成するもののみでなく、当該素材からなる断熱板を複数積層したものや、異なる素材の断熱板を適宜積層することにより形成されるものも含む。
保護層6の厚さは10mm〜80mm程度が好ましく、より好ましくは15mm〜65mmである。また、保護層6の熱伝導率は0.023W/mK〜0.045W/mKが好ましく、より好ましくは0.026W/mK〜0.040W/mKに設定される。なお、その他保護層6を形成可能な素材として、高性能フェノールフォームはもちろん、硬質ウレタンフォーム保温板やALCなども採用可能である。
調湿層7は、保護層6の上面に平板状の調湿板を敷設することにより形成されている。調湿層7は、下方に存在する各層を透過して上昇してきた水分を吸収する機能を有している。調湿層7として、インシュレーションボード、けい酸カルシウム板、その他硬質木片セメント板、シージングボード、などを採用することができる。調湿層7の厚さは5mm〜10mmに設定され、熱伝導率は0.05W/mK〜0.17W/mK程度が好ましい。あるいは、屋根構造1に調湿層7が設けられていなくともよい。
図2に示す従来の屋根構造100と比較することによって、本発明の実施形態に係る屋根構造1の作用・効果について説明する。
図2に示す従来の屋根構造100は、屋根下地層2の上面に保護層6に対応する断熱材が配置され、当該保護層6の上面に中間調整層4が配置される。中間調整層4の上方には、調湿層7と防水層3が形成されている。このような従来の屋根構造100では、様々な条件が重なることによって屋根面の温度が急激に上昇した場合、中間調整層4の温度が高くなる。これによって、中間調整層4の温度がガラス転移点の82〜83℃程度の高温に保持されると、内部ガス圧力の上昇と材料の軟化が同時に進行する。これにより、高温部分が二次的な発泡を起こし、当該部分のみが膨張して本来平滑である屋根面(床部分)が部分的に隆起してしまう。その結果、屋根面の平滑性が著しく損なわれるという問題が生じる。
図2に示すような従来の屋根構造100は、室内温度に対する断熱性確保という観点から、屋根下地層2の上面に断熱材を配置するのに対し、高さや傾斜の調整のために屋根側に中間調整層を設けるという構造が採用されており、これら断熱材と中間調整層とはまったく異なる目的で用いられていた。より具体的には、これら断熱材と中間調整層とは同じ屋根構造を構成するといえども、当該屋根構造において、断熱材はあくまで建物居室の断熱性能に寄与するものである一方、中間調整層から上方は屋根面の排水性能に寄与するものであって、断熱材とその上方に設けられる中間調整層とのところでそれぞれ別個の技術が適用されており、断熱材と中間調整層にあっては、一方が他方に影響を及ぼすことを期待されるものではなかった。
そして、中間調整層の二次発泡という問題に対しては、当該中間調整層の材質自体を改良するという観点からの解決策が見出されているだけであり、コストの増加を伴うと共に、二次発泡の根本的な解決に至っていない状態であった。
ここで、本発明者らは、層構成自体の見直しを図るという観点から、鋭意研究を重ねた。その結果、断熱材と中間調整層の位置を入れ替えるという層構造を採用する、即ち、断熱材による温度低減の影響下に中間調整層を置くことによって、断熱性能の低下やコストの増加を伴うことなく、中間調整層の二次発泡防止性能を著しく向上できることを見出すに至った。このような見地から、本発明に係る屋根構造を見出した。
また、次の理由によっても、屋根下地層2の上面に断熱材を配置するのに対し、高さや傾斜の調整のために屋根側に中間調整層を設けるという構造を採用することが通常であると考えられていた。図6に示すようなモデルを例にして考えた場合、通常、陸屋根とされた屋根構成に水勾配を設けるための部材に関しては、水平な屋根下地層の上面に設置することが最も効率が良い。また、屋根の断熱性を確保するための部材に関しては、屋根の位置によって断熱性能を発揮する部分の高さ位置が居室から離間する等によって変動することは好ましくない。かかる観点から、陸屋根のとされた屋根下地層の水平面上にまず断熱性能を発揮する部材を設置し、その上に、水勾配を設けるための部材を配置することが一般的になされていた。また、図6(b)に示すように、僅かであっても勾配がある部材の上に断熱性を確保するための部材を積層した場合、各部材の寸法のとり方や(例えば、図中Bで示す寸法は、図中Aで示される水平方向の寸法ではなく、図中Cで示されるような勾配面UFに沿った寸法となる)、棟部及び谷部における処理(例えば、棟部においては図中SLで示すような部材HM間の隙間が形成され、谷部においては図中DPで示すような部材HMが部材GMの縁部より迫り出す部分が形成されるため、加工等を施す必要性がある)という観点から、手間がかかると考えられていた。このような理由により、従来は図6(a)に示すような構成、すなわち、屋根下地層2の上面に断熱材として機能する部材HMを配置し、その上に中間調整層として機能する部材GMを配置する構成が通常であると考えられていた。
これに対し、本実施形態では、図7に示す構成を採用することとしている。すなわち、中間調整層4は、上面4aに傾斜状の水勾配を付与した板状パネルPNとして形成されており、保護層6は、中間調整層4の平面寸法Aと同様の平面寸法Bを有する平板状パネルFPNとして形成されて中間調整層4に重ね置きされている。すなわち、A=B≠Cの関係が成り立つ。中間調整層6を形成する板状パネルPNの上面の如き勾配面UFの上に保護層6の如き平板状パネルFPNを設置する際、平板状パネルFPNの平面寸法Bと板状パネルPNの平面寸法Aを一致させると、傾斜状に形成された板状パネルPNの勾配面UFの平面寸法Cは平板状パネルFPNの平面寸法Bよりも僅かに大きくなってしまうことや、勾配面UFに平板状パネルFPNを載置することで中間調整層4を形成する板状パネルPNの勾配面UFの傾斜上部たる棟部に隙間SLが発生してしまうことや、傾斜下部たる谷部における競り合う部分DPが形成さてしまう。これらに対して、施工や性能などに対する影響という観点から、断面形態や寸法の調整の必要性が考慮され得る。
これに対し、本実施形態では、当該勾配面UFは陸屋根における水勾配であって、1/90〜1/100程度の勾配であり、例えば910mm幅(Aに対応する寸法)に対して勾配辺長さ(Cに対応する寸法)はそれに加えて0.05mm程度長くなるに過ぎない。約20m程度の建物であっても、この差の積算値は1mm程度に過ぎない。断熱材の加工精度を考慮すると、この程度の寸法差は十分に無視できる値である。また、このように極めて僅かな寸法差であるので、棟部の隙間SLや谷部の競り合い部分DPも極めて僅かなものであり、施工や性能に影響を及ぼすものではない。特に、本実施形態は保護層6としてフェノールフォーム(ネオマフォーム)を採用しているので、競り合い部分DPについては当該フェノールフォームの弾性力によって十分に吸収できるものであり、また、フェノールフォームが空気中の湿気を吸収することで僅かにではあるが膨張する点に鑑みれば、隙間SLも当該膨張によって埋められる。即ち、フェノールフォームによって形成された平板状パネルFPNを中間調整層4を形成する板状パネルPNに積層する構成にあっては、これらパネル間の競り合いや隙間は吸収されるものとなる。一方で、保護層6を形成する平板状パネルFPNを中間調整層4の平面寸法Aで切り出すことができるため、その部材の切り出しや設置が著しく容易となるのである。
また、本実施形態では、図8(a)に示す構成を採用してもよい。すなわち、中間調整層4は、上面4aに傾斜状の水勾配を付与した板状パネルPNとして形成されており、保護層6は、面外方向への曲げを許容する平板状パネルFPNとして形成されている。中間調整層4は、水勾配を有する複数の板状パネルPNの傾斜上部同士を連結してなる棟部RPを備えている。平板状パネルFPNとして形成された保護層6は、中間調整層4の棟部RPを跨いで、複数の板状パネルPNに亘った状態で敷設されている。保護層6は、棟部RPを形成する板状パネルPNの傾斜状の上面である勾配面UFに沿って傾斜している。
ここで、一般的な建物の陸屋根における水勾配は1/90〜1/100程度とされている。また、中間調整層4は、屋根の高さを調整するとともに当該水勾配を形成する。このため、中間調整層4の板状パネルPNの上面の勾配面UFが1/90〜1/100程度とされ、緩斜面として形成されている。そして、当該板状パネルPNの端部上部側の小口面を連結することにより、棟部RPが形成されている。
保護層6の平板状パネルFPNは、フェノールフォーム(ネオマフォーム)が用いられており、当該フェノールフォームによる保護層6は、所定の断熱性能を発揮する厚さを備えるとともに、平面方向は、当該厚さに対し面外方向へのある程度の弾性的な曲げを許容する大きさに設定されている。好ましくは、基本モジュールである910mm×910mmの平面寸法を備えている。
従って、中間調整層4を形成する板状パネルPNにより形成される棟部RPを跨いで保護層6を形成する平板状パネルFPNを敷設すると、当該平板状パネルFPNは、板状パネルPNの傾斜状の上面である勾配面UFに沿って僅かに山状に屈曲した状態で棟部RPに重ね置きされることとなる。これによって、保護層6の上面に中間調整層4による棟部RPと同様の水勾配が形成されるものとなる。なお、平板状パネルFPNが棟部RPで曲がるため、平板状パネルFPNの端部の上面側が引っ張られることにより、競り合い部分DPが吸収されて小さくなる。
また、保護層6を形成する平板状パネルFPNは、上面に円盤状のディスクが設置されるとともに、当該ディスクの上面からビスが屋根下地層に向けて鋲着されている。これによって、保護層6の曲げは維持され、弾性復帰は抑制されるものとなる。また、平板状パネルFPNは当該曲げの状態が長期に亘って維持されることにより、弾性復帰力も経年で低減され、曲げの状態に留まることとなる。
かかる構成は中間調整層4により形成される谷部でも採用可能である。すなわち、中間調整層4は、複数の板状パネルPNの傾斜下部同士を連結してなる谷部VPを備え、保護層6は、谷部VPを跨いで複数の板状パネルPNに亘った状態で敷設され、該谷部VPを形成する板状パネルPNの傾斜状の上面である勾配面UFに沿って傾斜している。図8(b)を参照して詳述すると、中間調整層4を形成する板状パネルPNの斜面下部側の小口面同士を連結して谷部VPが形成されており、当該谷部VPを跨いで保護層6を形成する平板状パネルFPNを敷設すると、当該平板状パネルFPNは、谷部VPを形成する板状パネルPNの上面である勾配面UFに沿って僅かに谷状に曲がった状態で谷部VPに重ね置きされることとなる。これによって、保護層6の上面に中間調整層4による谷部VPと同様の水勾配が形成されるものとなる。なお、平板状パネルFPNが谷部VPで曲がるため、平板状パネルFPNの端部の上面側が押し出されることにより、隙間SLが小さくなる。
かかる構成によれば、中間調整層4と保護層6の割付を別々に設定することができるものとなる。陸屋根の水勾配は、当該陸屋根の大きさや形状、建屋の有無によって棟部と谷部が入り混じった複雑な構成となる場合が少なくなく、この場合、かかる水勾配を効率的に実現すべく、中間調整層4を形成する板状パネルPNの割付が極めて複雑となる(例えば、以下で説明する図9(a)参照)。当該中間調整層4の板状パネルPNの割付に合わせて保護層6を割り付けていくこととなると、部品点数が著しく増加するのみならず、現場施工にて混乱を招きかねない。そこで、上記構成を採用することにより、中間調整層4と保護層6の割付をそれぞれ独立して行うことができるものとなり、中間調整層4が複雑な割付となるにも関わらず、当該割付を無視して保護層6は例えばグリッドなりに割付を行うことができ(以下で説明する図9(b)参照)、保護層6の割付の単純化を図ることができるものとなる。この結果、部品点数の著しい削減及び現場施工の作業性を向上させることができるものとなるのである。
以上のように、棟RP部を跨いで平板状パネルFPNを敷設することにより、棟部RPを形成するために中間調整層4の板状パネルPNの割付が複雑になるとしても、当該板状パネルPNの割付とは別々に、保護層6の平板状パネルFPNの割付を設定できる。すなわち、中間調整層6の棟部RPの存在とは無関係に保護層6の平板状パネルFPNの割付を行うことができ、当該割付の単純化が図られることとなる。これにより、部品数の削減、作業性の向上を図ることができる。同様に、谷部VPを跨いで平板状パネルFPNを敷設することにより、谷部VPを形成するために中間調整層4の板状パネルPNの割付が複雑になるとしても、当該板状パネルPNの割付とは別々に、保護層6の平板状パネルFPNの割付を設定できる。すなわち、中間調整層6の谷部VPの存在とは無関係に保護層6の平板状パネルFPNの割付を行うことができ、当該割付の単純化が図られることとなる。これにより、部品数の削減、作業性の向上を図ることができる。
例えば、建物STの屋根を上方から見た図9(a)に示す例では、建物STの屋根のうち外周縁部のパラペットに取り囲まれる部分に、中間調整層4を形成する板状パネルPNを敷設している。板状パネルPNは、複数枚のピースに分かれており、各ピースの組み合わせによって所望の勾配パターンが形成されている。図9(a)の例ではラインL1,L2,L3,L4,L5の部分が上方へ山を形成する棟部RPとなっている。これにより、ラインL1,L2で囲まれる部分が、(左辺側の)外周縁部へ向かって下り傾斜となるような同一平面を形成する。ラインL3,L4で囲まれる部分が、(右辺側の)外周縁部へ向かって下り傾斜となるような同一平面を形成する。ラインL1,L3,L5で囲まれる部分が、(上辺側の)外周縁部へ向かって下り傾斜となるような同一平面を形成する。ラインL2,L4,L5で囲まれる部分が、(下辺側の)外周縁部へ向かって下り傾斜となるような同一平面を形成する。
このような中間調整層4に対して、図9(b)のように保護層6を敷設することができる。図9(b)では、保護層6を形成する平板状パネルFPNをグリッドなりに割付を行っている。このとき、ラインL1,L2,L3,L4では、当該ラインに沿って平板状パネルFPNが加工されているのではなく、一枚あたりの平板状パネルFPNが棟部RPを跨ぐように敷設されている。このように、中間調整層4の割付とは無関係に、保護層6の平板状パネルFPNをグリッドなりに割付できる。これにより、保護層6の割付の単純化を図ることができるものとなる。
また、水勾配を形成した中間調整層4上に保護層6を形成すべく平板状パネルFPNを敷設していくと、厳密には隣り合う平板状パネルFPNの小口面間に隙間や押圧部が形成されることとなるが、中間調整層4による水勾配は、1/90〜1/100程度であるので、その隙間は0.005mm程度であるし、押圧部としても両小口面が0.005mm程度の出っ張りで押圧し合うのみである。保護層6を形成する平板状パネルFPNの加工精度を考慮すると、この程度の寸法差は十分に無視できる値である。特に、本実施形態では保護層6としてフェノールフォーム(ネオマフォーム)を採用しているので、競り合い部分DPについては当該フェノールフォームの弾性力によって十分に吸収できるものであり、また、フェノールフォームが空気中の湿気を吸収することで僅かにではあるが膨張する点に鑑みれば、隙間SLも当該膨張によって埋められる。即ち、フェノールフォームによって形成された平板状パネルFPNを中間調整層4を形成する板状パネルPNに積層する構成にあっては、これらパネル間の競り合いや隙間は吸収されるものとなる。
また、保護層6は、最終的には防水層3によって覆われることとなり、当該隙間や重合部が水の流れ等を妨げる虞もない。また、中間調整層3と保護層6の継ぎ目が芋目地状となり、通気の遮断、断熱性の部分欠損の回避等も実現される。
図1に示す本実施形態に係る屋根構造1においては、中間調整層4の上方に保護層6が設けられている。この保護層6は、中間調整層4の上面4aの温度を最大でもガラス転移点よりも低い温度に抑えることができる。よって、中間調整層4の表面近傍温度がガラス転移点に達すること、及び温度状態の保持時間が長くなることを著しく抑制することができる。従って、中間調整層4が高温になることによって生じる二次的な発泡を防止することができ、日射熱等に起因して屋根面の平滑性が損なわれてしまうことを防止することができる。
また、このような構造としても、屋根下地層下の建物居室に対する断熱性能は低下することなく、各層の材質や厚さ等の条件が同じであれば従来の屋根構造100と同等の断熱性能を得ることができる。更に、材質自体は従来の屋根構造100と同じものを用いても中間調整層4の二次発泡を防止できる。すなわち、コストを上げることなく性能を向上させることができる。以上のように、屋根構造1によれば、従来の屋根構造100に比して、断熱性能の低下やコストの増加を伴うことなく、中間調整層4の二次発泡を防止することができる。
また、屋根構造1において、保護層6は、熱硬化性の樹脂からなる断熱材により形成されている。これによれば、当該保護層6が熱硬化性樹脂により形成されているため、当該保護層6表面の温度が想定以上に上昇することとなっても、当該熱硬化樹脂は硬化することは考えられるものの、軟化することはなく、これによって、当該保護層6の発泡を防止することができ、中間調整層4の発泡防止も合わせて、屋根構造1の発泡を防止することができるものとなる。
また、屋根構造1において、熱硬化性の樹脂がフェノールフォームである。これによれば、フェノールフォームは単位厚さでの断熱性が高いので、当該保護層6自体の厚さを抑制した上で当該保護層6下方の断熱性を確保することができる。また、当該フェノールフォームからなる保護層6の厚さを厚く設定することより、屋根下地層2下まで断熱することができ、建物全体の断熱性向上を図ることができる。
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、各層同士の間に、更に別の層が形成されていてもよい。
本発明の有効性を確認すべく、本発明者らは、複数の実施例と比較例を用いて解析を行った。図3、図4、図5は、各実施例及び比較例に係る屋根構造の設定条件及び計算結果を示す表である。図3は、調湿層7としてインシュレーションボードを採用した場合の屋根構造についての計算結果を示している。図4は、調湿層7として、けい酸カルシウム板を採用した場合の屋根構造についての計算結果を示している。図5は、調湿層7が設けられていない場合の屋根構造についての計算結果を示している。なお、防水層3については他の層に比して極めて薄く、外気と屋根構造の間での伝熱や屋根構造内の層間での伝熱にはほとんど影響を及ぼさないため、各実施例及び比較例においては省略されている。
[実施例1]
図3(a)の表に示すように、実施例1に係る屋根構造は、室外側から順に、調湿層7としてA級インシュレーションボード、保護層6として高性能フェノールフォーム、中間調整層4として押出法ポリスチレンフォーム保温版、屋根下地層2としてALCを採用した。屋根下地層2の下方には空気層9、天井板8を配置した。各層における熱伝導率λ(W/mK)、厚さ(mm)、は図3の表に示す値に設定した。実施例1では、保護層6に該当する高性能フェノールフォームの厚さが65.00mmに設定されている。このような屋根構造において、日射等により屋根表面温度が90℃に上昇した状態を想定した。また、室内温度を25℃に設定した。
このような屋根構造について、定常計算を行った。屋根構造の各部における熱抵抗値R(mK/W)、温度(℃)は図3(a)に示す結果となった。各層における温度は、当該層の一段下の層の上面の温度に対応する。すなわち、中間調整層4に該当する押出法ポリスチレンフォーム保温版の上面4aの温度は、保護層6に該当する高性能フェノールフォームの温度である45.91℃となる。また、屋根構造全体としての熱抵抗値(すなわち、「A級インシュレーションボード」から「室内」までの熱抵抗値Rの総和)は4.74mK/W、熱貫流率は0.21W/mKとなった。
[実施例2]
実施例1について屋根断熱を使わない構成を実施例2とした。実施例2においては、保護層6に該当する高性能フェノールフォームの厚さを15.00mmに設定した点、天井板の上側に100.00mmの厚さの高性能グラスウールを配置した点以外の条件は、実施例1と同様とした。このような屋根構造について、定常計算を行った。屋根構造の各部における熱抵抗値R(mK/W)、温度(℃)は図3(b)に示す結果となった。中間調整層4に該当する押出法ポリスチレンフォーム保温版の上面4aの温度は、保護層6に該当する高性能フェノールフォームの温度である79.11℃となった。また、屋根構造全体としての熱抵抗値は4.99mK/W、熱貫流率は0.36W/mKとなった。
[比較例1]
実施例1について保護層6に該当する高性能フェノールフォームと中間調整層4に該当する押出法ポリスチレンフォーム保温版との位置を入れ替えた構成を、比較例1とした。比較例1においては、中間調整層4に該当する押出法ポリスチレンフォーム保温版を調湿層7に該当するA級インシュレーションボードの下側に配置し、その下側に保護層6に該当する高性能フェノールフォームを配置した点以外の条件は、実施例1と同様とした。このような屋根構造について、定常計算を行った。屋根構造の各部における熱抵抗値R(mK/W)、温度(℃)は図3(c)に示す結果となった。中間調整層4に該当する押出法ポリスチレンフォーム保温版の上面4aの温度は、調湿層7に該当するA級インシュレーションボードの温度である88.32℃となった。また、屋根構造全体としての熱抵抗値は4.74mK/W、熱貫流率は0.21W/mKとなった。
(調湿層としてインシュレーションボードを用いた場合の評価)
比較例1では、中間調整層4に該当する押出法ポリスチレンフォーム保温版の上面4aの温度が88.32℃となる。これは、ガラス転移点(82〜83℃程度)を上回る温度である。従って、比較例1に係る屋根構造では、中間調整層4の上面4aが二次的な発泡を起こす温度条件を満たす条件となることが理解される。一方、実施例1では、中間調整層4に該当する押出法ポリスチレンフォーム保温版の上面4aの温度は、45.91℃となる。これは、ガラス転移点を大きく下回る温度である。従って、実施例1に係る屋根構造では、中間調整層4の二次的な発泡が確実に防止される条件となることが理解される。一方、実施例2では、中間調整層4に該当する押出法ポリスチレンフォーム保温版の上面4aの温度は、79.11℃となる。これは、ガラス転移点を下回る温度である。従って、実施例1に比して保護層6を薄くした実施例2においても、中間調整層4の二次的な発泡を防止できる条件となることが理解される。
断熱性能について、実施例1では、熱抵抗値が4.74mK/Wであり熱貫流率が0.21W/mKとなる。これは従来構造に係る比較例1と同等の値である。この結果より、本発明に係る構造を採用しても、断熱性能は低下することなく、従来構造と同等の断熱性能を実現できることが理解される。平成18年国土交通省告示第378号(「3 躯体の断熱性能等に関する基準」における「(1)躯体の設計に関する基準」の「イ 熱貫流率の基準」に示す表)に示す熱貫流率の基準によれば、鉄骨住宅の屋根構造であって、地域を本州とする場合、熱貫流率が0.24W/mK以下であれば、躯体の断熱性能として最上位であることが示されている。実施例1は、当該基準を満たしている。実施例2では、熱貫流率が0.36W/mKであり基準が満たされていない。ただし、断熱材を薄くしたことにより断熱性能に影響がある場合であっても、二次発泡防止性能は十分に満たされていることが理解される。なお、断熱性能を示す基準の一例として、「熱貫流率0.24W/mK以下」という基準を示しているが、平成18年国土交通省告示第378号に示す同表から理解されるように、地域、構法により、熱貫流率の基準値は異なる。従って、実施例2(及び後述の実施例4,6)の構造も、他の地域、構法であれば基準を満たすことができる。
[実施例3]
図4(a)の表に示すように、実施例3においては、調湿層7をA級インシュレーションボードからけい酸カルシウム板に変更した点以外の条件は、実施例1と同様とした。このような屋根構造について、定常計算を行った。屋根構造の各部における熱抵抗値RmK/W、温度(℃)は図4(a)に示す結果となった。中間調整層4に該当する押出法ポリスチレンフォーム保温版の上面4aの温度は、保護層6に該当する高性能フェノールフォームの温度である46.35℃となった。また、屋根構造全体としての熱抵抗値は4.65mK/W、熱貫流率は0.21W/mKとなった。
[実施例4]
実施例3について屋根断熱を使わない構成を実施例4とした。実施例4においては、保護層6に該当する高性能フェノールフォームの厚さを15.00mmに設定した点、天井板の上側に100.00mmの厚さの高性能グラスウールを配置した点以外の条件は、実施例3と同様とした。このような屋根構造について、定常計算を行った。屋根構造の各部における熱抵抗値R(mK/W)、温度(℃)は図4(b)に示す結果となった。中間調整層4に該当する押出法ポリスチレンフォーム保温版の上面4aの温度は、保護層6に該当する高性能フェノールフォームの温度である80.19℃となった。また、屋根構造全体としての熱抵抗値は4.90mK/W、熱貫流率は0.36W/mKとなった。
[比較例2]
実施例3について保護層6に該当する高性能フェノールフォームと中間調整層4に該当する押出法ポリスチレンフォーム保温版との位置を交換した構成を、比較例2とした。比較例2においては、中間調整層4に該当する押出法ポリスチレンフォーム保温版を調湿層7に該当するA級インシュレーションボードの下側に配置し、その下側に保護層6に該当する高性能フェノールフォームを配置した点以外の条件は、実施例3と同様とした。このような屋根構造について、定常計算を行った。屋根構造の各部における熱抵抗値R(mK/W)、温度(℃)は図4(c)に示す結果となった。中間調整層4に該当する押出法ポリスチレンフォーム保温版の上面4aの温度は、調湿層7に該当するけい酸カルシウム板の温度である89.65℃となった。また、屋根構造全体としての熱抵抗値は4.65mK/W、熱貫流率は0.21W/mKとなった。
(調湿層としてけい酸カルシウム板を用いた場合の評価)
比較例2では、中間調整層4に該当する押出法ポリスチレンフォーム保温版の上面4aの温度が89.65℃となる。これは、ガラス転移点(82〜83℃程度)を上回る温度である。従って、比較例2に係る屋根構造では、中間調整層4の上面4aが二次的な発泡を起こす温度条件を満たす条件となることが理解される。一方、実施例3では、中間調整層4に該当する押出法ポリスチレンフォーム保温版の上面4aの温度は、46.35℃となる。これは、ガラス転移点を大きく下回る温度である。従って、実施例3に係る屋根構造では、中間調整層4の二次的な発泡が確実に防止される条件となることが理解される。一方、実施例4では、中間調整層4に該当する押出法ポリスチレンフォーム保温版の上面4aの温度は、80.19℃となる。これは、ガラス転移点を下回る温度である。従って、実施例3に比して保護層6を薄くした実施例4においても、中間調整層4の二次的な発泡を防止できる条件となることが理解される。
断熱性能について、実施例3では、熱抵抗値が4.65mK/Wであり熱貫流率が0.21W/mKとなる。これは従来構造に係る比較例2と同等の値である。この結果より、本発明に係る構造を採用しても、断熱性能は低下することなく、従来構造と同等の断熱性能を実現できることが理解される。実施例3は、熱貫流率が0.24W/mK以下であるという基準を満たしている。実施例4では、熱貫流率が0.36W/mKであり基準が満たされていない。ただし、断熱材を薄くしたことにより断熱性能に影響がある場合であっても、二次発泡防止性能は十分に満たされていることが理解される。
[実施例5]
図5(a)の表に示すように、実施例5においては、調湿層7を設けていない点以外の条件は、実施例1と同様とした。このような屋根構造について、定常計算を行った。屋根構造の各部における熱抵抗値RmK/W、温度(℃)は図5(a)に示す結果となった。中間調整層4に該当する押出法ポリスチレンフォーム保温版の上面4aの温度は、保護層6に該当する高性能フェノールフォームの温度である46.47℃となった。また、屋根構造全体としての熱抵抗値は4.62mK/W、熱貫流率は0.21W/mKとなった。
[実施例6]
実施例3について屋根断熱を使わない構成を実施例6とした。実施例6においては、保護層6に該当する高性能フェノールフォームの厚さを15.00mmに設定した点、天井板の上側に100.00mmの厚さの高性能グラスウールを配置した点以外の条件は、実施例5と同様とした。このような屋根構造について、定常計算を行った。屋根構造の各部における熱抵抗値R(mK/W)、温度(℃)は図5(b)に示す結果となった。中間調整層4に該当する押出法ポリスチレンフォーム保温版の上面4aの温度は、保護層6に該当する高性能フェノールフォームの温度である80.47℃となった。また、屋根構造全体としての熱抵抗値は4.87mK/W、熱貫流率は0.36W/mKとなった。
[比較例3]
実施例5について保護層6に該当する高性能フェノールフォームと中間調整層4に該当する押出法ポリスチレンフォーム保温版との位置を交換した構成を、比較例3とした。比較例3においては、中間調整層4に該当する押出法ポリスチレンフォーム保温版を調湿層7に該当するA級インシュレーションボードの下側に配置し、その下側に保護層6に該当する高性能フェノールフォームを配置した点以外の条件は、実施例5と同様とした。このような屋根構造について、定常計算を行った。屋根構造の各部における熱抵抗値R(mK/W)、温度(℃)は図5(c)に示す結果となった。中間調整層4に該当する押出法ポリスチレンフォーム保温版の上面4aの温度は、調湿層7に該当するけい酸カルシウム板の温度である90.00℃となった。また、屋根構造全体としての熱抵抗値は4.62mK/W、熱貫流率は0.21W/mKとなった。
(調湿層がない場合の評価)
比較例3では、中間調整層4に該当する押出法ポリスチレンフォーム保温版の上面4aの温度が90.00℃となる。これは、ガラス転移点(82〜83℃程度)を上回る温度である。従って、比較例3に係る屋根構造では、中間調整層4の上面4aが二次的な発泡を起こす温度条件を満たす条件となることが理解される。一方、実施例5では、中間調整層4に該当する押出法ポリスチレンフォーム保温版の上面4aの温度は、46.47℃となる。これは、ガラス転移点を大きく下回る温度である。従って、実施例5に係る屋根構造では、中間調整層4の二次的な発泡が確実に防止される条件となることが理解される。一方、実施例6では、中間調整層4に該当する押出法ポリスチレンフォーム保温版の上面4aの温度は、80.47℃となる。これは、ガラス転移点を下回る温度である。従って、実施例5に比して保護層6を薄くした実施例6においても、中間調整層4の二次的な発泡を防止できる条件となることが理解される。
断熱性能について、実施例5では、熱抵抗値が4.62mK/Wであり熱貫流率が0.21W/mKとなる。これは従来構造に係る比較例3と同等の値である。この結果より、本発明に係る構造を採用しても、断熱性能は低下することなく、従来構造と同等の断熱性能を実現できることが理解される。実施例5は、熱貫流率が0.24W/mK以下であるという基準を満たしている。実施例6では、熱貫流率が0.36W/mKであり基準が満たされていない。ただし、断熱材を薄くしたことにより断熱性能に影響がある場合であっても、二次発泡防止性能は十分に満たされていることが理解される。
(総合評価)
実施例1〜6と比較例1〜3を評価した結果から、調湿層7の有無、及び材質の相違に関わらず、本発明に係る構成を採用することによって、中間調整層4の二次発泡が確実に防止できることが理解される。また、従来構造に係る比較例1〜3に対して中間調整層4と保護層6の位置のみを入れ替えた実施例1,3,5の結果から、従来構造に比して断熱性能の低下もコスト増加も伴うことなく、二次発泡防止性能だけが飛躍的に向上していることが理解される。また、保護層6を薄くした場合であっても、二次発泡が確実に防止できることが理解される。更に、実施例2,4,6の結果より、保護層6が薄く、断熱性能が所定の基準を満たしていない場合であっても、二次発泡防止性能は確保されている。このことから、保護層6の厚さを調整する際に、二次発泡防止性能を考慮しなくとも、要求される断熱性能のみに応じて保護層6の厚さを調整するだけで、結果として断熱性能と同時に二次発泡防止性能も確保されることが理解される。
1…屋根構造、2…屋根下地層、3…防水層、4…中間調整層、6…保護層、7…調湿層、8…天井板、9…空気層。

Claims (6)

  1. 少なくとも屋根下地層と該屋根下地層を覆う防水層とを備え、前記屋根下地層と前記防水層の間には、発泡性の樹脂により形成されて前記屋根下地層と前記防水層間の間隔を調整する中間調整層が設けられている屋根構造において、
    前記中間調整層の上方には、該中間調整層の上面の温度を最大でも当該中間調整層のガラス転移点よりも低い温度に抑える保護層が設けられ、
    前記保護層の上方に前記防水層が設けられ
    前記中間調整層は、上面に傾斜状の水勾配を付与した複数の板状パネルの傾斜上部同士を連結してなる棟部を備え、
    前記保護層は、面外方向への曲げを許容する平板状パネルとして形成され、前記棟部を跨いで複数の前記板状パネルに亘った状態で敷設され、該棟部を形成する前記板状パネルの傾斜状の上面に沿って山状に傾斜していることを特徴とする屋根構造。
  2. 前記保護層が、熱硬化性の樹脂からなる断熱材により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の屋根構造。
  3. 前記熱硬化性の樹脂がフェノールフォームであることを特徴とする請求項2に記載の屋根構造。
  4. 少なくとも屋根下地層と該屋根下地層を覆う防水層とを備え、前記屋根下地層と前記防水層の間には、発泡性の樹脂により形成されて前記屋根下地層と前記防水層間の間隔を調整する中間調整層が設けられている屋根構造において、
    前記中間調整層の上方には、該中間調整層の上面の温度を最大でも当該中間調整層のガラス転移点よりも低い温度に抑える保護層が設けられ、
    前記保護層の上方に前記防水層が設けられ
    前記中間調整層は、上面に傾斜状の水勾配を付与した複数の板状パネルの傾斜下部同士を連結してなる谷部を備え、
    前記保護層は、面外方向への曲げを許容する平板状パネルとして形成され、前記谷部を跨いで複数の前記板状パネルに亘った状態で敷設され、該谷部を形成する前記板状パネルの傾斜状の上面に沿って谷状に傾斜していることを特徴とする屋根構造。
  5. 前記保護層が、熱硬化性の樹脂からなる断熱材により形成されていることを特徴とする請求項4に記載の屋根構造。
  6. 前記熱硬化性の樹脂がフェノールフォームであることを特徴とする請求項5に記載の屋根構造。
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