以下、本発明に係る運動状態報知システム、運動状態報知方法および運動状態報知プログラムについて、実施形態を示して詳しく説明する。なお、以下の説明では、運動の一例として、ユーザがマラソン大会に参加する場合や、ランニング等のトレーニングを行う場合について説明する。
<第1の実施形態>
(運動状態報知システム)
図1は、本発明に係る運動状態報知システムの第1の実施形態を示す概略構成図である。図2は、本実施形態に係る運動状態報知システムに適用されるインターフェース機器の一構成例を示すブロック図であり、図3は、本実施形態に係る運動状態報知システムに適用されるセンサ機器の一構成例を示すブロック図である。
第1の実施形態に係る運動状態報知システムは、例えば図1(a)に示すように、概略、ユーザUSが手首等に装着するインターフェース機器100と、胸部に装着するセンサ機器200と、を有している。インターフェース機器100は、例えば図1(b)に示すように、リストウォッチ型(または腕時計型)の外観を有し、大別して、ユーザに所定の情報を提供するための表示部131を備えた機器本体101と、ユーザUSの手首に巻き付けることにより機器本体101を手首に装着するためのベルト部102と、を備えている。また、センサ機器200は、例えば図1(c)に示すように、チェストセンサ型の外観を有し、大別して、センサ部を備えた機器本体201と、ユーザUSの胸部に巻き付けることにより機器本体201を胸部に装着するためのベルト部202と、を備えている。
インターフェース機器100は、具体的には、図2に示すように、大別して、センサ部110と、入力インターフェース部120と、出力インターフェース部130と、通信機能部141と、中央演算回路(以下、「CPU」と略記する)151と、メモリ152と、動作電源153と、を備えている。
センサ部110は、例えば図2に示すように、加速度センサ111と、GPS受信回路(位置センサ)112と、を有している。加速度センサ111は、ユーザUSの走行中の動作速度の変化の割合(加速度)、および、走行中の腕振りの周期を検出する。この加速度センサ111により検出された加速度データに基づいて、走行時のペース(速度)や走行距離が算出される。これらのペースや走行距離は、後述するCPU151が所定の制御プログラムを実行することにより算出される。そして、これらのペースや走行距離は、走行時間ごとに、該走行時間と相互に関連付けられて、メモリ152の所定の記憶領域に保存される。
また、GPS受信回路112は、複数のGPS衛星からの電波を受信することにより、緯度経度からなる(地理的な)位置データを検出する。このGPS受信回路112により検出された位置データに基づいて、移動距離が算出される。また、GPS受信回路112は、GPS衛星からの電波のドップラーシフト効果を利用して、ユーザUSの移動速度を検出する。ここで、GPS受信回路112により検出される位置データに基づいて取得される移動距離および移動速度は、上述した加速度センサ111により検出されたセンサデータに基づいて取得される走行距離やペースと併用することにより、または、相互補完することにより、ユーザUSの走行距離やペースの精度を高めるために利用される。
入力インターフェース部120は、例えば図2に示すように、操作スイッチ121と、タッチパネル122と、を有している。操作スイッチ121は、例えば図1(b)に示すように、ボタンスイッチを有し、上述したセンサ部110における各種のデータの検出や測定の開始や終了、一時停止等の動作(センシング動作)、表示部131に表示する項目の設定、後述する運動状態報知方法において用いられる閾値範囲の入力設定等の操作に用いられる。
また、タッチパネル122は、表示部131の前面に配置、または、表示部131の前面に一体的に形成され、表示部131に表示された情報に応じた領域をタッチ操作することにより、当該情報に対応する機能が選択的に実行される。タッチパネル122により実現される機能は、上記の操作スイッチ121により実現される機能と同等であってもよいし、タッチパネル122による操作特有の機能を有していてもよい。なお、入力インターフェース部120は、操作スイッチ121とタッチパネル122の双方を備えているものであってもよいし、実現される機能が同一である場合には、いずれか一方のみを備えているものであってもよい。
出力インターフェース部130は、例えば図2に示すように、表示部131と、音響部132と、振動部133と、を有している。表示部131は、カラーやモノクロ表示が可能な液晶表示パネルや有機EL表示パネル等の表示装置を有し、少なくともユーザの走行中に、上述したセンサ部110および後述するセンサ機器200により検出されたセンサデータや、当該センサデータに基づいて取得された各種の情報をリアルタイムに表示する。表示部131には、例えば図1(b)に示すように、鉛直方向の加速度「V-Acceleration」や走行時間「TIME」、ペース「PASE」、走行距離、心拍数等の数値情報が表示される。これらの情報は、表示部131に複数の情報が同時に表示されるものであってもよいし、上述した操作スイッチ121やタッチパネル122を操作することにより、1乃至複数の情報が順次表示されるものであってもよい。また、表示部131は、後述する運動状態報知方法に基づいて分析、判定されたユーザUSの運動フォームの状態に応じて、所定の表示方法で運動支援情報(注意や警告等)を表示することにより、当該運動支援情報を視覚を通してユーザUSに報知する。ここで、表示部131における運動支援情報の表示方法としては、例えば数値情報を強調表示する方法や、特定のメッセージ(文字情報)を表示する方法、表示部131の全域や一部領域における表示色を変化させたり、点滅表示させたりする発光状態を変化させる方法を、単独でまたは任意に組み合わせて適用することができる。具体例については後述する。
また、音響部132は、ブザーやスピーカ等の音響機器を有し、後述する運動状態報知方法に基づいて分析、判定されたユーザUSの運動フォームの状態に応じた運動支援情報(注意や警告等)を、所定の音色や音パターン、音声メッセージ等の音情報により、聴覚を通してユーザUSに報知する。振動部133は、振動モータや振動子等の振動機器を有し、ユーザUSの運動フォームの状態に応じた運動支援情報(注意や警告等)を、所定の振動パターンやその強弱等の振動情報により、触覚を通してユーザUSに報知する。なお、出力インターフェース部130は、少なくとも判定された運動フォームを具体的な数値情報や文字情報等により、ユーザUSに報知することができるものであることが好ましい。したがって、出力インターフェース部130は、少なくとも表示部131または音響部132のいずれか一方を備えた構成を有していることが好ましく、これらに加えて、振動部133を備えているものであってもよい。ここで、表示部131に加え、音響部132や振動部133等の複数の報知手段を備えている場合には、ユーザUSに対して運動支援情報(注意や警告等)を、まず音情報や振動情報により報知することにより、表示部131に表示された数値情報や文字情報を確認させるように喚起することができ、運動支援情報をより確実にユーザUSに報知することができる。
通信機能部141は、センサ機器200との間で所定の通信方式により種々のデータの伝送を行う。ここで、インターフェース機器100とセンサ機器200との間のデータの伝送方法については、無線通信による方式として、例えばデジタル機器用の近距離無線通信規格であるブルートゥース(Bluetooth(登録商標))や、この通信規格において低消費電力型の規格として策定されたブルートゥースローエナジー(Bluetooth(登録商標) low energy)を良好に適用することができる。また、本実施形態に適用可能な他の伝送方法としては、例えば通信ケーブルを介して、インターフェース機器100とセンサ機器200とを直接接続する有線による通信方式を適用することもできる。
メモリ152は、不揮発性メモリを有し、上述したセンサ部110により検出された加速度データや位置データ、これらのセンサデータに基づいて算出された走行時のペースや走行距離、および、後述するセンサ機器200により検出され、伝送された各種センサデータの数値情報を、走行時間ごとに、該走行時間と相互に関連付けて保存する。また、メモリ152の不揮発性メモリ部分には、本実施形態に係るインターフェース機器100において実行される運動状態報知方法(詳しくは後述する)により生成される、または、参照される各種のデータや情報が保存される。ここで、メモリ152は、センサ部110や入力インターフェース部120、出力インターフェース部130、通信機能部141、メモリ152における所定の機能を実現するための制御プログラム(ソフトウェア)が記憶された読み出し専用メモリ(ROM)を含むものであってもよい。CPU151は、計時機能を備え、これらの制御プログラムに従って処理を行うことにより、センサ部110や入力インターフェース部120、出力インターフェース部130、メモリ152における動作を制御して所定の機能を実現する。なお、これらの制御プログラムは予めCPU151に組み込まれているものであってもよい。また、メモリ152を構成する不揮発性メモリ部分は、メモリカード等のリムーバブル記憶媒体を有し、インターフェース機器100に対して着脱可能に構成されているものであってもよい。
動作電源153は、インターフェース機器100内部の各構成に駆動電力を供給する。動作電源153は、市販のコイン型電池やボタン型電池等の一次電池、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池のほか、振動や光、熱、電磁波等のエネルギーにより発電する環境発電(エナジーハーベスト)技術による電源等を適用することができる。
センサ機器200は、具体的には、図3に示すように、大別して、センサ部210と、操作スイッチ221と、通信機能部241と、CPU251と、メモリ252と、動作電源253と、を備えている。センサ部210は、例えば図3に示すように、加速度センサ211と、ジャイロセンサ(角速度センサ)212と、心拍センサ213と、を有している。加速度センサ211は、ユーザUSの走行中の加速度を検出する。また、ジャイロセンサ212は、ユーザUSの走行中の動作方向の変化(角速度)を検出する。この加速度センサ211により検出された加速度データ、および、ジャイロセンサ212により検出された角速度データに基づいて、走行時の鉛直方向(地面に対して垂直方向)下向きの加速度が算出される。この鉛直方向の加速度は、後述するCPU251が所定の制御プログラムを実行することにより算出される。そして、この鉛直方向の加速度は、走行時間ごとに、該走行時間と相互に関連付けられて、メモリ252の所定の記憶領域に保存される。
心拍センサ213は、センサ機器200のベルト部202の内面側に設けられ、ユーザUSの胸部に直接密着するように配置された一対の電極(図示を省略)に接続され、当該電極から出力される心電位信号の変化から心拍を検出する。検出された心拍データは、走行時間ごとに、該走行時間と相互に関連付けられて、メモリ252の所定の記憶領域に保存される。
操作スイッチ221は、例えばボタンスイッチやスライドスイッチを有し、操作スイッチ221を操作することにより、動作電源253からセンサ機器200内部の各構成への駆動電力の供給(電源オン)や遮断(電源オフ)、センサ部210におけるセンシング動作等の制御に用いられる。通信機能部241は、上述したインターフェース機器100との間で、無線や有線等の所定の通信方式により種々のデータの伝送を行う。ここで、インターフェース機器100とセンサ機器200との間のデータ伝送は、例えばセンサ部21の各センサにおける検出タイミングや、後述するCPU251により運動フォームに関連する情報(鉛直方向の加速度)を算出するタイミング等に同期して一定の時間間隔で実行されるものであってもよいし、常時実行されるものであってもよい。
メモリ252は、不揮発性メモリを有し、上述したセンサ部210により検出された加速度データや角速度データ、心拍データ、これらのセンサデータに基づいて算出された鉛直方向の加速度の数値情報を、走行時間ごとに、該走行時間と相互に関連付けて保存する。また、メモリ252の不揮発性メモリ部分には、本実施形態に係るセンサ機器200において実行される運動状態報知方法(詳しくは後述する)により生成される、または、参照される各種のデータや情報が保存される。ここで、メモリ252は、センサ部210や通信機能部241、メモリ252における所定の機能を実現するための制御プログラムが記憶された読み出し専用メモリ(ROM)を含むものであってもよい。CPU251は、計時機能を備え、これらの制御プログラムに従って処理を行うことにより、センサ部210や通信機能部241、メモリ252における動作を制御して所定の機能を実現する。なお、これらの制御プログラムは予めCPU251に組み込まれているものであってもよい。また、メモリ252を構成する不揮発性メモリ部分は、メモリカード等のリムーバブル記憶媒体を有し、センサ機器200に対して着脱可能に構成されているものであってもよい。動作電源253は、上述したインターフェース機器100と同等の構成を有し、センサ機器200内部の各構成に駆動電力を供給する。
(運動状態報知方法;運動フォームの分析判定方法とその報知方法)
次に、本実施形態に係る運動状態報知システムにおける運動状態報知方法について説明する。
まず、本実施形態に係る運動状態報知方法に適用される運動フォームの分析判定方法と、その報知方法について説明する。
図4は、本実施形態に係る運動フォームの分析判定方法に適用されるパラメータを説明するための概念図である。
マラソンやランニング等の走行時の力の作用、反作用は、概略、図4により説明される。すなわち、一般に、走行時には、図4に示すように、足を着地したときに地面に対して下方向(図面下方向)に加重が加わる。このとき、加重がかかった足裏は、力の作用、反作用の法則により地面から上方向(図面上方向)の反力を受ける。マラソンやランニング等の走行時には、この上方向の反力(地面反力ともいう)を利用して、走行方向である前方(図面左方向)への推進力が得られていることが近年の研究で判明している。つまり、上方向の反力と推進力は、密接に関連しており、この反力が大きいほど速く走ることができ、換言すると、この反力に基づいて、より速く走るためのフォーム(運動フォーム)を判定することができる。
ここで、地面からの上方向の反力は、運動エネルギー保存の法則より、反力を受ける前に足を踏み込んだ時に体の重心から発生する下方向の加重に比例する。したがって、走行時の推進力を測定する手法として、地面反力の大きさを規定する下方向の加重を計測することが有効である。この下方向の加重を計測する手法としては、体幹(人体の頭部、腕部、脚部を除く部位。例えば胸部や腰部、頸部、丹田等)に装着した加速度センサの上下方向成分を観測することにより計測することができる。
本実施形態に示した運動状態報知システム(図1〜図3)においては、胸部に装着されたチェストセンサ型のセンサ機器200に設けられた加速度センサ211およびジャイロセンサ212を用いて、走行時の下方向の加重に対応する、鉛直方向下向きの加速度が算出される。具体的には、体幹に装着された加速度センサ211により検出された加速度データを、水平方向を規定するx、y2方向の加速度成分と、この水平面に直交する垂直方向を規定するz方向の加速度成分との、3方向の加速度成分に分割する。そして、胸部に装着されたセンサ機器200に設けられたジャイロセンサ212により検出された角速度データに基づいて、走行時の身体の傾きによる上記z方向と、地面に対して垂直方向となる鉛直方向とのズレを補正する処理を行うことにより、図4に示した鉛直方向下向きの加速度成分を算出することができる。
このようにして算出された、ユーザの走行中の鉛直方向下向きの加速度成分を、現在の運動フォームを規定するパラメータとして用いて、リストウォッチ型のインターフェース機器100のCPU151において、当該運動の標準モデルの運動フォームを規定する上限値または下限値となる閾値、あるいは、上限値および下限値により数値範囲が設定された閾値範囲と比較することにより、標準モデルと同等または近似する運動フォームか否か、また、標準モデルの運動フォームからの逸脱の程度が判定される。ここで、標準モデルの運動フォームとは、当該運動(例えばマラソンやランニング等)に関する指導者やコーチ等の専門家が認定し、適正な運動効果の実現や記録の向上を図ることができる理想的なフォームである。また、上記の閾値や閾値範囲は、当該運動を理想的なフォームで行った場合に、実測により、あるいは、理論的に得られる鉛直方向下向きの加速度の数値または数値範囲である。このような閾値や閾値範囲は、予めインターフェース機器100のメモリ152の所定の記憶領域に、運動の種類毎に標準値がデータベースとして保存されているものであってもよいし、例えば入力インターフェース部120の操作スイッチ121やタッチパネル122を用いて、ユーザUSが標準モデルを規定する数値や数値範囲を、任意に入力設定するものであってもよい。
上述した分析判定方法により得られた結果、および、その結果に基づく運動支援情報を、次に示すような報知方法を用いてユーザUSに報知することにより、ユーザUSは、走行中の自己の運動フォームを的確に把握することができる。
図5は、本実施形態に係る運動状態報知方法に適用される報知動作の一例を示す図である。ここでは、本実施形態に係る報知方法の特徴である表示動作の例を示す。なお、図5(c)、(d)においては、図示の都合上、注意表示状態および警告表示状態を、便宜的にハッチングを用いて示した。
まず、インターフェース機器100の表示部131には、運動支援情報の表示項目として、例えば図5(a)、(b)に示すように、図面上段に鉛直方向下向きの加速度「V-Acceleration」、図面中段に走行時間「TIME」、図面下段にペース「PASE」の各数値情報が表示される。ここでは、上述したセンサ部110により検出されたセンサデータに基づいて取得される、現時点の数値情報が表示される。なお、表示部131における表示項目は、これらに限定されるものではなく、他の数値情報や特定の文字情報等、任意の情報が表示されるものであってもよく、また、1乃至複数の情報が任意の表示形態で表示されるものであってもよい。
そして、CPU151において上述した分析判定方法を実行し、ユーザUSの走行中(運動中)に、センサ部110により検出されたセンサデータに基づいて取得した鉛直方向の加速度について、予め設定された閾値の範囲内にあるか否かを判定する。鉛直方向の加速度が閾値の範囲を逸脱していると判定されたときには、現時点の運動フォームに問題があると判定して、その数値情報を表示部131に表示するとともに、その逸脱の程度に応じて、ユーザUSに運動フォームの改善を促すように注意表示や警告表示を行う。ここで、表示部131における注意表示や警告表示の具体例としては、例えば図5(c)、(d)に示すように、表示部131の全域を例えば黄色等の注意色で発光動作させる表示方法(注意表示状態)、または、赤色等の警告色で発光動作させる表示方法(警告表示状態)や、数値情報を強調表示する表示方法等を、単独でまたは任意に組み合わせて適用することができる。なお、鉛直方向の加速度が閾値の範囲内にあると判定されたときには、ユーザUSの運動フォームが標準モデルの運動フォームと同等または近似する適正な運動フォームであると判定して、図5(b)に示すように、表示部131を標準表示状態で表示(すなわち、通常表示)させる。この標準表示状態においては、表示部131の全域を特定色で発光させる動作や、数値情報の強調表示は行われない。
ユーザUSは、表示部131における各表示状態を見て、自己の運動フォームを把握し、問題があると判定された運動フォームを改善または矯正するように意識して運動することにより、適正な運動効果の実現や記録の向上を図ることができる。
なお、上述した報知動作においては、センサデータに基づいて取得した鉛直方向の加速度が閾値の範囲を逸脱している場合に、現時点の運動フォームに問題があると判定して、その逸脱の程度に応じて、注意表示または警告表示を行う場合について説明した。本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、鉛直方向の加速度が閾値の範囲を上回っている(上限値を超えて逸脱している)場合と、閾値の範囲を下回っている(下限値に満たないで逸脱している)場合とで、異なる表示形態で注意表示または警告表示を行うものであってもよい。
また、上述した報知動作においては、鉛直方向の加速度が閾値の範囲を逸脱している場合に、現時点の運動フォームに問題があると判定して、注意表示または警告表示を行う場合について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、鉛直方向の加速度が閾値の範囲内にある場合、すなわち、現時点の運動フォームが適正である場合に、表示部131の全域を緑色等の特定色で発光させる動作や、数値情報を強調表示する動作等を、単独でまたは任意に組み合わせて実行するものであってもよい。
また、上述した表示部131における報知動作において、運動支援情報として、鉛直方向の加速度の具体的な数値情報に替えて、または、数値情報と併用して、例えば「標準モデルの範囲を外れました」、「標準モデルに近づくようにフォームを改善してください」、「踏み込みをもっと強く!」等の文字情報を表示するものであってもよい。
さらに、上述した表示部131を介して視覚により運動支援情報を表示する報知動作に加えて、出力インターフェース部130の音響部132から所定の音色や音パターン、音声メッセージ等の音情報を発生させたり、振動部133から所定の振動パターンやその強弱等の振動情報を発生させて、ユーザUSに運動フォームの変化を確実に気づかせるようにしてもよい。このような報知動作の設定は、例えば入力インターフェース部120の操作スイッチ121やタッチパネル122を用いて行われる。
(運動状態報知方法;全体動作1)
次に、上述した分析判定方法および報知方法を適用した運動状態報知方法の全体動作について説明する。ここでは、上述した分析判定方法および報知方法の説明で用いた図4、図5を適宜参照しながら説明する。
図6は、本実施形態に係る運動状態報知システムにおける運動状態報知方法の概略動作を示すフローチャートである。
本実施形態に係る運動状態報知システムにおける運動状態報知方法は、図6に示すように、大別して、測定算出動作S110と、分析判定動作S120と、報知動作S130と、を有している。
以下、運動状態報知方法の各動作について具体的に説明する。
図7は、本実施形態に係る運動状態報知方法における測定算出動作の一例を示すフローチャートである。図8は、本実施形態に係る運動状態報知方法における分析判定動作および報知動作の一例を示すフローチャートである。
(測定算出動作S110)
測定算出動作S110においては、図7のフローチャートに示すように、まず、インターフェース機器100およびセンサ機器200を起動して、センサ部110およびセンサ部210によりユーザUSの運動状態に関わる各種のセンサデータを検出するセンシングを開始する(S111)。具体的には、図1、図2に示したように、ユーザUSが手首に装着したインターフェース機器100の入力インターフェース部120を操作することにより、CPU151はセンサ部110を制御して、加速度センサ111やGPS受信回路112によりユーザUSの走行中の加速度データ、GPSデータ(位置データ、移動速度)を検出する動作を開始する。また、ユーザUSが胸部に装着したセンサ機器200の操作スイッチ221を操作することにより、CPU251はセンサ部210を制御して、加速度センサ211やジャイロセンサ212、心拍センサ213によりユーザUSの走行中の加速度データ、角速度データ、心拍データを検出する動作を開始する。
そして、ユーザUSがマラソンやランニング等の運動を開始することにより(S112)、インターフェース機器100に設けられた上記の各センサにより検出された加速度データ、GPSデータは、走行時間ごとに、該走行時間と相互に関連付けてメモリ152の所定の記憶領域に保存される。また、センサ機器200に設けられた上記の各センサにより検出された加速度データ、角速度データ、心拍データは、走行時間ごとに、該走行時間と相互に関連付けてメモリ252の所定の記憶領域に保存される(S113)。ここで、これらのセンサデータは、上記の各センサにより常時検出されるものであってもよいし、一定の時間間隔で検出されるものであってもよい。
次いで、センサ機器200において、CPU251が、検出した加速度データ、角速度データに基づいて、現時点の運動における鉛直方向下向きの加速度を算出する(S114)。具体的には、上述したように、加速度データを水平方向を規定するx、y2方向の加速度成分と垂直方向を規定するz方向の加速度成分とに分割し、さらに角速度データに基づいて、z方向の加速度成分を補正する処理を行うことにより、鉛直方向の加速度となる数値データ(算出値Mz)を算出する。算出された鉛直方向の加速度は、走行時間ごとに、該走行時間と関連付けてメモリ252の所定の記憶領域に保存されるとともに、通信機能部241を介して無線通信によりインターフェース機器100に伝送される。インターフェース機器100において、センサ機器200から通信機能部141を介して伝送された鉛直方向の加速度(算出値Mz)は、走行時間ごとに、該走行時間と関連付けてメモリ152の所定の記憶領域に保存される。
(分析判定動作S120、報知動作S130)
分析判定動作S120においては、図8のフローチャートに示すように、まず、予めメモリ152に保存された標準モデルの運動フォームを規定する閾値nを抽出し、当該閾値nと、上述した測定算出動作S110において算出された鉛直方向の加速度(算出値Mz)との大小関係を比較する(S121)。これにより、現時点における運動フォームが標準モデルを規定する範囲内にある否かが判定される。すなわち、運動フォームが適正なフォームか、問題のあるフォームかが判定される。また、報知動作S130においては、図8のフローチャートに示すように、分析判定動作S120において判定された運動フォームの適否に応じて、インターフェース機器100を介して、ユーザUSに運動支援情報を報知する。
具体的には、センサ機器200において、CPU151は、まず、メモリ152に予め保存されたデータベースを参照して、現在実行中の運動に対応した標準モデルの運動フォームを規定する閾値nを抽出する。次いで、CPU151は、センサ機器200から伝送された鉛直方向の加速度の算出値Mzが、当該閾値nよりも大きいか否かを判別する(S122)。算出値Mzが閾値n以下の場合には、CPU151は、現時点の運動フォームは標準モデルの運動フォームと同等または近似しており、適正なフォーム(適正レベル)であると判定して(S123)、当該判定結果(すなわち、適正レベル判定)をメモリ152の所定の記憶領域に保存する。そして、CPU151は、この判定結果に基づいて、出力インターフェース部130に適正レベルを示す報知動作を実行させる。ここで、本実施形態においては、適正レベルを示す報知動作として、通常動作が実行される。(S124)。すなわち、上述した報知方法において標準表示状態として説明したように、例えば図5(b)に示すように、インターフェース機器100の表示部131に、鉛直方向の加速度や走行時間、ペース等の数値情報が標準(通常)の表示形態で表示される。すなわち、後述する注意表示状態や警告表示状態のように、表示部131の全域を特定の注意色や警告色で発光させたり、点滅させる表示や、数値情報を強調表示させる動作は行われない。また、音響部132や振動部133による注意動作や警告動作も行われない。
一方、上記算出値Mzが閾値nよりも大きい場合には、CPU151は、現時点の運動フォームが標準モデルの運動フォームに近似しない不適正なフォームであると判定して、現時点の運動フォームと標準モデルの運動フォームとの乖離の程度を判定する処理を実行する(S125)。これにより、現時点における運動フォームが標準モデルからどの程度かけ離れているか、そのレベルが判定される。すなわち、運動フォームに存在する問題の、不適正の程度が判定される。
具体的には、CPU151は、まず、上記の鉛直方向の加速度の算出値Mzと標準モデルを規定する閾値nとの差分に相当する乖離度数(Mz−n)を算出する。次いで、現在実行中の運動に対応して予め設定されて、メモリ152に保存された判定値aを抽出し、上記の乖離度数(Mz−n)が、当該判定値aよりも大きいか否かを判別する(S126)。ここで、予め設定される判定値aは、当該運動における目標となる記録や、ユーザUSの体力、体調等に基づいて、自己の運動フォームをどの程度まで標準モデルに近づけたいかに応じて設定される数値である。この判定値aは、例えば入力インターフェース部120の操作スイッチ121やタッチパネル122を用いて、ユーザUSが任意に入力設定するものであってもよいし、予め標準値となる数値がメモリ152に保存されているものであってもよい。
乖離度数(Mz−n)が判定値aよりも大きい場合には、CPU151は、現時点の運動フォームが標準モデルの運動フォームから大きくかけ離れた不適正な運動フォーム(警告レベル)であると判定して(S127)、当該判定結果(すなわち、警告レベル判定)をメモリ152の所定の記憶領域に保存する。そして、CPU151は、この判定結果に基づいて、出力インターフェース部130に警告レベルを示す報知動作を実行させる(S128)。ここで、本実施形態においては、警告レベルを示す報知動作として、上述した報知方法において警告表示状態として説明したように、例えば図5(d)に示すように、インターフェース機器100の表示部131の全域を赤色等の警告色で発光させたり、速く点滅させる手法や、鉛直方向の加速度の数値情報を強調表示させる手法、特定の警告メッセージ(文字情報)を表示する方法を、単独でまたは任意に組み合わせて適用することができる。さらに、これらの警告動作に加え、音響部132から警告音を発生させたり、警告メッセージを再生させたりする手法や、振動部133を連続的に振動させたりする手法を、単独でまたは任意に組み合わせて適用するものであってもよい。これらの警告動作は、CPU151により実行される制御プログラムに基づいて、所定の時間継続して実行される。
一方、上記乖離度数(Mz−n)が判定値a以下の場合には、CPU151は、現時点の運動フォームが標準モデルの運動フォームからかけ離れているものの、比較的標準モデルに近いフォーム(注意レベル)であると判定して(S129)、当該判定結果(すなわち、注意レベル判定)をメモリ152の所定の記憶領域に保存する。そして、CPU151は、この判定結果に基づいて、出力インターフェース部130に、注意レベルを示す報知動作を実行させる(S130)。ここで、本実施形態においては、注意レベルを示す報知動作として、上述した報知方法において注意表示状態として説明したように、例えば図5(c)に示すように、インターフェース機器100の表示部131の全域を黄色等の注意色で発光させたり、遅く点滅させる手法や、鉛直方向の加速度の数値情報を強調表示させる手法、特定の注意メッセージ(文字情報)を表示する方法を、単独でまたは任意に組み合わせて適用することができる。さらに、これらの注意動作に加え、音響部132から注意音を発生させたり、注意メッセージを再生させたりする手法や、振動部133を断続的に振動させたりする手法を、単独でまたは任意に組み合わせて適用するものであってもよい。これらの注意動作は、CPU151により実行される制御プログラムに基づいて、所定の時間継続して実行される。
以上説明した一連の運動状態報知方法は、測定算出動作S110において、センサ部110、210の各種センサがセンシングを実行している間、常時、または、一定の時間間隔で繰り返し実行される。
このように、本実施形態に係る運動状態報知システムによれば、インターフェース機器100およびセンサ機器200に設けられた各種のセンサにより、ユーザUSの運動状態に関わる種々のデータが検出され、少なくとも運動フォームに関連する情報として鉛直方向の加速度が取得される。そして、鉛直方向の加速度を示す数値データが、予め設定した標準モデルの閾値の範囲内にあるか否か、また、当該標準モデルからどの程度逸脱しているかを判定する分析判定動作を行うことによって、ユーザUSの現時点の運動フォームが適正であるか不適正であるかが判定される。そして、この判定結果に基づいて、出力インターフェース部130(表示部131、音響部132、振動部133)を介して、当該運動フォームの状態に応じた運動支援情報が報知されることにより、ユーザUSは、現時点の自己の運動フォームをリアルタイムで的確に把握することができる。したがって、例えばマラソンやランニング等の運動において、現時点における自己の運動フォームが不適正であると報知(注意喚起または警告)された場合には、ユーザUSは例えば鉛直方向の加速度が大きくなるように地面を強く踏み込んで、運動フォームを改善するように意識して動作(自己修正)することにより、適正な運動効果を実現したり、競技やトレーニングにおける記録の向上を図ることができる。
また、本実施形態においては、運動支援情報を報知する出力インターフェース部130を備えるインターフェース機器100と、加速度センサ211およびジャイロセンサ212を備えるセンサ機器200と、が別体の機器として構成されている。これにより、センサ機器200をユーザUSの運動フォームを適切に検出することができる任意の部位に装着することができるとともに、インターフェース機器100から報知される運動支援情報を、ユーザUSが走行中(運動中)に容易に認識できる任意の部位に装着することができる。したがって、センサ機器200により検出される各種のセンサデータの精度を高めることができ、ユーザUSに対して、より適切な運動支援情報を確実に報知することができる。
なお、上述した運動状態報知方法(図6〜図8参照)においては、標準モデルの運動フォームを規定する閾値として特定の数値nを用い、走行中に取得された鉛直方向の加速度が閾値n以下の場合に、現時点の運動フォームが標準モデルの運動フォームと同等または近似しており、適正なフォーム(適正レベル)であると判定する手法について説明した。本発明はこの判定方法に限定されるものではなく、走行中に取得された鉛直方向の加速度が閾値n以上の場合に、現時点の運動フォームが標準モデルの運動フォームと同等または近似しており、適正なフォーム(適正レベル)であると判定する手法を適用するものであってもよい。また、他の分析判定方法として、標準モデルにおける運動フォームを規定する閾値が、上限値および下限値により設定される数値範囲を有し、走行中に取得された鉛直方向の加速度が閾値範囲内にある場合に、現時点の運動フォームが標準モデルの運動フォームと同等または近似しており、適正なフォーム(適正レベル)であると判定する手法を適用するものであってもよい。以下に、この閾値範囲を用いた分析判定方法について詳しく説明する。
(運動状態報知方法;全体動作2)
次に、本実施形態に係る運動状態報知方法の他の例について説明する。
図9、図10は、本実施形態に係る運動状態報知方法における分析判定動作および報知動作の他の例を示すフローチャートである。ここで、上述した運動状態報知方法(図6〜図8参照)と同等の動作については、その説明を簡略化する。
本実施形態に係る運動状態報知方法の他の例は、まず、上述した運動状態報知方法(図6、図7参照)と同様に、測定算出動作S110において、センサ機器200のセンサ部210により、少なくともユーザUSの走行中の加速度データおよび角速度データを検出する。そして、CPU251により、当該加速度データおよび角速度データに基づいて、現時点の運動における鉛直方向下向きの加速度(算出値Mz)が算出される。算出された鉛直方向の加速度は、メモリ252に保存されるとともに、無線通信によりインターフェース機器100に伝送される。
次いで、分析判定動作S120においては、図9のフローチャートに示すように、まず、予めメモリ152に保存された標準モデルの運動フォームを規定する閾値範囲を抽出する。ここでは、当該閾値範囲を規定する上限値(閾値上限値n)および下限値(閾値下限値n′)を抽出する。そして、閾値上限値nと、上述した測定算出動作S110において算出された鉛直方向の加速度(算出値Mz)との大小関係を比較する(S121、S122)。算出値Mzが閾値上限値n以下の場合には、図10のフローチャートに示すように、閾値下限値n′と、上述した鉛直方向の加速度(算出値Mz)との大小関係をさらに比較する(S131、S132)。算出値Mzが閾値下限値n′以上の場合には、図10のフローチャートに示すように、CPU151は、上記の鉛直方向の加速度の算出値Mzが、閾値上限値nと閾値下限値n′により規定される閾値範囲内にあって、現時点の運動フォームが標準モデルの運動フォームと同等または近似する適正な運動フォーム(適正レベル)であると判定して(S133)、当該判定結果(適正レベル判定)をメモリ152の所定の記憶領域に保存する。
そして、上述した運動状態報知方法(図8参照)と同様に、報知動作S130において、CPU151は、上記の判定結果に基づいて、出力インターフェース部130に適正レベルを示す報知動作(通常動作)を実行させる。(S134)。
一方、上記算出値Mzが閾値上限値nよりも大きい場合(S122)、または、算出値Mzが閾値下限値n′よりも小さい場合(S132)には、CPU151は、現時点の運動フォームが標準モデルの運動フォームに近似しない不適正なフォームであると判定して、現時点の運動フォームと標準モデルの運動フォームとの乖離の程度を判定する処理を実行する(S125、S135)。
具体的には、算出値Mzが閾値上限値nよりも大きい場合には、CPU151は、まず、算出値Mzと閾値上限値nとの差分に相当する乖離度数(Mz−n)を算出し、当該乖離度数(Mz−n)が、メモリ152から抽出された判定値aよりも大きいか否かを判別する(S126)。また、算出値Mzが閾値下限値n′よりも小さい場合には、CPU151は、まず、閾値下限値nと算出値Mzとの差分に相当する乖離度数(n′−Mz)を算出し、当該乖離度数(n′−Mz)が、メモリ152から抽出された判定値a′よりも大きいか否かを判別する(S136)。ここで、予めメモリ152に保存される判定値a、a′は、上述した運動状態報知方法(図8参照)と同様に、当該運動における目標となる記録や、ユーザUSの体力、体調等に基づいて、自己の運動フォームをどの程度まで標準モデルに近づけたいかに応じて設定される数値である。この判定値a、a′は、例えば入力インターフェース部120の操作スイッチ121やタッチパネル122を用いて、ユーザUSが任意に入力設定するものであってもよいし、予め標準値となる数値がメモリ152に保存されているものであってもよい。
乖離度数(Mz−n)が判定値aよりも大きい場合(S126)、または、乖離度数(n′−Mz)が判定値a′よりも大きい場合(S136)には、CPU151は、現時点の運動フォームが標準モデルの運動フォームから大きくかけ離れており、不適正なフォーム(警告レベル)であると判定して(S127、S137)、当該判定結果(警告レベル判定)をメモリ152の所定の記憶領域に保存する。
そして、上述した運動状態報知方法(図8参照)と同様に、報知動作S130において、CPU151は、上記の判定結果に基づいて、出力インターフェース部130に警告レベルを示す報知動作(警告動作)を実行させる。(S128、S138)。
一方、上記乖離度数(Mz−n)が判定値a以下の場合(S126)、または、乖離度数(n′−Mz)が判定値a′以下の場合(S136)には、CPU151は、現時点の運動フォームが標準モデルの運動フォームからかけ離れているものの、比較的標準モデルに近いフォーム(注意レベル)であると判定して(S129、S139)、当該判定結果(注意レベル判定)をメモリ152の所定の記憶領域に保存する。
そして、上述した運動状態報知方法(図8参照)と同様に、報知動作S130において、CPU151は、上記の判定結果に基づいて、出力インターフェース部130に注意レベルを示す報知動作(注意動作)を実行させる。(S130、S140)。
以上説明した一連の運動状態報知方法は、上述した運動状態報知方法(図6〜図8参照)と同様に、測定算出動作S110において、センサ部110、210の各種センサがセンシングを実行している間、常時、または、一定の時間間隔で繰り返し実行される。
このような運動状態報知方法を適用した運動状態報知システムにおいても、上述した実施形態と同様に、ユーザUSの運動フォームに関連する情報として、少なくとも鉛直方向の加速度が取得され、当該加速度と標準モデルの閾値範囲との比較により、ユーザUSの現時点の運動フォームが適正であるか不適正であるかが判定される。そして、この判定結果に基づいて、出力インターフェース部130を介して、当該運動フォームの状態に応じた運動支援情報が報知されることにより、ユーザUSは、自己の運動フォームをリアルタイムで的確に把握することができるとともに、運動フォームを改善するように意識して動作(自己修正)することにより、適正な運動効果を実現したり、記録の向上を図ることができる。
なお、上述した実施形態においては、センサ機器200として、ユーザUSの胸部に装着するチェストセンサ型の構成を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、センサ機器は、少なくとも加速度センサとジャイロセンサを含むセンサ部が、上述した運動フォームの分析判定方法において説明したように、体幹(例えば、胸部、腰部、頸部等)に装着されているものであれば、任意の部位に任意の形態で装着されているものであってもよい。
また、上述した実施形態においては、インターフェース機器100として、ユーザUSの手首に装着するリストウォッチ型の構成を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、インターフェース機器に報知手段として備えられた出力インターフェース部(表示部、音響部、振動部)により報知される運動支援情報を、ユーザが認識しやすい位置に装着するものであれば、他の構成を有するものであってもよいし、身体の他の部位に装着するものであってもよい。例えば、表示部に表示された数値情報や文字情報等を、ユーザが視認しやすい、または、視認できる位置に装着するものであれば、携帯電話機やスマートフォン等の表示装置を備えた電子機器を適用して、手首や上腕等に装着するものであってもよいし、後述する変形例に示すように、表示部の機能を備えた眼鏡型の表示機器(ディスプレイグラス)を装着したり、音響部の機能を備えた音声機器(イヤーメッセンジャー)を装着するものであってもよい。
(運動状態報知システムの他の構成例)
次に、本実施形態に係る運動状態報知システムの他の構成例について説明する。
(変形例1)
図11は、本実施形態に係る運動状態報知システムの他の構成例(変形例1)を示す概略構成図であり、図12は、本構成例に係る運動状態報知方法における制御動作を模式的に示した概念図である。ここで、上述した第1の実施形態(図1〜図10参照)と同等の構成および手法については、その説明を簡略化する。
上述した第1の実施形態においては、運動状態報知システムとして、リストウォッチ型のインターフェース機器100とチェストセンサ型のセンサ機器200とを備えた構成について説明した。本実施形態は、図11(a)に示すように、運動支援情報を報知する構成として、リストウォッチ型のインターフェース機器100に加え、眼鏡型の表示機器(以下、「ディスプレイグラス」と記す)300、および、音声機器(以下、「イヤーメッセンジャー」と記す)400を備えた構成を有しているものであってもよい。
すなわち、本構成例(変形例1)において、インターフェース機器100およびセンサ機器200は、上述した実施形態(図1〜図3参照)と同等の構成を有している。ディスプレイグラス300は、例えば図11(b)に示すように、眼鏡型の外観を有し、大別して、ユーザUSの視界前方に透過面を有するとともに、頭部に装着するためのテンプル(つる)を備えた本体301と、本体301の透過面に、例えば図11(c)に示すように、各種の情報を透過表示または投影表示させて、視覚を通してユーザUSに提供するための表示制御部302と、を備えている。このディスプレイグラス300の表示制御部302は、概略、上述したインターフェース機器100に示した構成(図2参照)のうち、入力インターフェース部と、出力インターフェース部の表示部と、通信機能部と、CPUと、メモリと、動作電源と、を備えた構成を有している。
また、イヤーメッセンジャー400は、例えば図11(d)に示すように、音楽プレーヤ等のメディアプレーヤ401の音声出力端子(イヤホン端子)に接続され、各種の情報を音声メッセージにより聴覚を通してユーザUSに提供するためのメッセンジャー本体402と、メディアプレーヤ401からの音楽や音声、メッセンジャー本体402からの音声メッセージや報知音を、聴覚を通してユーザUSに提供するためのイヤホン403と、を備えている。このイヤーメッセンジャー400は、概略、上述したインターフェース機器100に示した構成(図2参照)のうち、入力インターフェース部と、出力インターフェース部の音響部と、通信機能部と、CPUと、メモリと、動作電源と、を備えた構成を有している。
本構成例における運動状態報知方法は、上述した実施形態(図6〜図10参照)と同様に、図12に示すように、まず、胸部に装着されたセンサ機器200において、センサ部210により検出されたセンサデータに基づいて、少なくともユーザUSの運動フォームに関連する情報として鉛直方向の加速度が算出され、無線通信によりインターフェース機器100に伝送される。
次いで、インターフェース機器100において、鉛直方向の加速度が標準モデルの閾値の範囲内にあるか否か、また、当該標準モデルからどの程度逸脱しているかを判定する分析判定動作を行うことによって、ユーザUSの現時点の運動フォームの適否(または良否)が判定される。そして、この判定結果に基づいて、出力インターフェース部130(表示部131、音響部132、振動部133)を介して、例えば図5(a)〜(d)に示したように、当該運動フォームの状態に応じた運動支援情報が表示や音声、振動等により報知される。
加えて、この判定結果は、無線通信によりディスプレイグラス300やイヤーメッセンジャー400にも伝送される。ディスプレイグラス300においては、この判定結果に基づいて、上述したインターフェース機器100の表示部131における表示方法(図5参照)と同様の表示方法で、運動支援情報がユーザUSの視界に透過表示または投影表示される。例えば図11(c)に示すように、図面上段に走行時間「TIME」、図面中段に走行速度「SPEED」またはペース、図面下段に走行距離「DISTANCE」の各数値情報が表示される。すなわち、ディスプレイグラス300は、インターフェース機器100の表示部131と同等の報知動作を実行する機能を有している。
また、イヤーメッセンジャー400においては、この判定結果に基づいて、メッセンジャー本体402がメディアプレーヤ401からの音楽や音声を中断させるか、又は音楽や音声の音量を下げて、予め設定された音声メッセージや報知音からなる運動支援情報を再生して、イヤホン403を介してユーザUSに報知する。すなわち、イヤーメッセンジャー400は、インターフェース機器100の音響部132と同等の報知動作を実行する機能を有している。
このように、報知手段(すなわち、上述した実施形態に示したインターフェース機器100の出力インターフェース部130(表示部、音響部、振動部)と同等の機能を実現する構成)として複数の機器を装着することにより、ユーザUSは、視覚や聴覚、触覚を通して、現時点の自己の運動フォームをリアルタイムで確実に把握することができる。したがって、現時点における自己の運動フォームが不適正であると報知(注意喚起または警告)された場合には、ユーザUSは運動フォームを改善するように意識して動作することにより、適正な運動効果を実現したり、記録の向上を図ることができる。
なお、本構成例においては、リストウォッチ型のインターフェース機器100が運動フォームの分析判定動作と、出力インターフェース部130における報知動作の双方を実行する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、インターフェース機器100が運動フォームの分析判定動作のみを実行し、出力インターフェース部130における報知動作に替えて(すなわち、出力インターフェース部130における報知動作を実行することなく)、ディスプレイグラス300とイヤーメッセンジャー400とにおいてのみ報知動作が実行されるものであってもよい。この場合、インターフェース機器100の出力インターフェース部130は、例えば音響部132や振動部133を省略した構成を有していてもよい。
また、本構成例においては、イヤーメッセンジャー400として、メディアプレーヤ401の音声出力端子にメッセンジャー本体402を接続する構成を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、メディアプレーヤ401とメッセンジャー本体402が一体化された構成を有するものであってもよい。また、イヤーメッセンジャー400として、再生された音声メッセージや報知音を、イヤホン403を介してユーザUSに報知する構成を示したが、イヤホンに替えてヘッドホンであってもよいし、イヤホンを使用することなく、例えばメッセンジャー本体402に設けられたスピーカを介して報知するものであってもよい。
(変形例2)
図13は、本実施形態に係る運動状態報知システムの他の構成例(変形例2)を示す概略図である。ここで、図13(a)は、本構成例に係る運動状態報知システムの概略構成図であり、図13(b)は、本構成例に係る運動状態報知方法における制御動作を模式的に示した概念図である。ここで、第1の実施形態(図1〜図10参照)または上述した変形例1(図11、図12参照)と同等の構成および手法については、その説明を簡略化する。
上述した第1の実施形態およびその変形例1においては、リストウォッチ型のインターフェース機器100が運動フォームの分析判定動作を実行する場合について説明した。本実施形態は、図13(a)、(b)に示すように、インターフェース機器100に替えて、チェストセンサ型のセンサ機器200が運動フォームの分析判定動作を実行する機能を有しているものであってもよい。
すなわち、本構成例(変形例2)において、ディスプレイグラス300およびイヤーメッセンジャー400は、上述した変形例1(図11参照)と同等の構成を有している。インターフェース機器100は、上述した実施形態に示したインターフェース機器100の構成(図2参照)において、CPU151が運動フォームの分析判定動作を実行する機能を有していない。また、センサ機器200は、上述した実施形態に示したセンサ機器200の構成(図3参照)において、CPU251がセンサ部210により検出されたセンサデータに基づいて、少なくとも鉛直方向の加速度を算出し、標準モデルとの比較により運動フォームを判定する分析判定動作を実行する機能を有している。
本構成例における運動状態報知方法は、図13(b)に示すように、まず、胸部に装着されたセンサ機器200において、センサ部210により検出されたセンサデータに基づいて、少なくともユーザUSの運動フォームに関連する情報として鉛直方向の加速度が算出される。そして、鉛直方向の加速度が標準モデルの閾値の範囲内にあるか否か、また、当該標準モデルからどの程度逸脱しているかを判定する分析判定動作を行うことによって、ユーザUSの現時点の運動フォームの適否(または良否)が判定される。その判定結果は、無線通信によりインターフェース機器100やディスプレイグラス300、イヤーメッセンジャー400に伝送される。
次いで、インターフェース機器100において、この判定結果に基づいて、出力インターフェース部130(表示部131、音響部132、振動部133)を介して、当該運動フォームの状態に応じた運動支援情報が表示や音声、振動等により報知される。加えて、ディスプレイグラス300において、この判定結果に基づいて、運動支援情報が所定の表示方法で、ユーザUSの視界に透過表示または投影表示される。また、イヤーメッセンジャー400において、この判定結果に基づいて、メッセンジャー本体402が予め設定された音声メッセージや報知音からなる運動支援情報を再生して、イヤホン403を介してユーザUSに報知する。すなわち、センサ機器200は、上述した第1の実施形態に示したインターフェース機器100のCPU151と同等の分析判定動作を実行する機能を有している。
したがって、本構成例においても、報知手段として複数の機器を装着することにより、ユーザUSは、視覚や聴覚、触覚を通して、現時点の自己の運動フォームをリアルタイムで確実に把握することができ、報知された運動支援情報に基づいて運動フォームを改善するように動作することにより、適正な運動効果を実現したり、記録の向上を図ることができる。
なお、本構成例においては、インターフェース機器100の出力インターフェース部130やディスプレイグラス300、イヤーメッセンジャー400を介して、分析判定動作の判定結果に応じた運動支援情報をユーザUSに報知する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、報知手段である複数の機器のうち、少なくともいずれか1つに報知動作を実行させるものであってもよい。
(変形例3)
図14は、本実施形態に係る運動状態報知システムの他の構成例(変形例3)を示す概略図である。ここで、図14(a)は、本構成例に係る運動状態報知システムの概略構成図であり、図14(b)は、本構成例に係る運動状態報知方法における制御動作を模式的に示した概念図である。ここで、第1の実施形態(図1〜図10参照)または上述した各変形例1、2(図11〜図13参照)と同等の構成および手法については、その説明を簡略化する。
上述した変形例2においては、チェストセンサ型のセンサ機器200が、運動フォームの分析判定動作を実行する機能を有し、その判定結果を無線通信により伝送して、インターフェース機器100やディスプレイグラス300、イヤーメッセンジャー400から、ユーザUSに運動支援情報を報知する構成について説明した。本実施形態は、図14(a)、(b)に示すように、チェストセンサ型のセンサ機器200が、運動フォームの分析判定動作を実行する機能を有するとともに、通信機能(無線、有線を含む)を用いることなく、ユーザUSに運動支援情報を直接報知する構成を有しているものであってもよい。
すなわち、本構成例(変形例3)において、運動状態報知システムは、チェストセンサ型のセンサ機器200と、ディスプレイグラス300と、イヤホン403と、を有している。センサ機器200は、上述した変形例2の構成と同様に、実施形態に示したセンサ機器200の構成(図3参照)において、CPU251がセンサ部210により検出されたセンサデータに基づいて、少なくとも鉛直方向の加速度を算出し、標準モデルとの比較により運動フォームを判定する分析判定動作を実行する機能を有しているとともに、ディスプレイグラス300への表示出力機能と、イヤホン403への音声出力機能と、を有している。ディスプレイグラス300は、センサ機器200から出力される映像信号に基づいて、運動支援情報をユーザUSの視界に透過表示または投影表示する機能のみを有している。また、イヤホン403は、センサ機器200から出力される音声メッセージや報知音により、運動支援情報をユーザUSに報知する。
本構成例における運動状態報知方法は、図14(b)に示すように、まず、胸部に装着されたセンサ機器200において、センサ部210により検出されたセンサデータに基づいて、少なくともユーザUSの運動フォームに関連する情報として鉛直方向の加速度が算出される。そして、鉛直方向の加速度が標準モデルの閾値の範囲内にあるか否か、また、当該標準モデルからどの程度逸脱しているかを判定する分析判定動作を行うことによって、ユーザUSの現時点の運動フォームの適否(または良否)が判定される。
次いで、この判定結果に基づいて、当該運動フォームの状態に応じた運動支援情報を、データケーブルを介してディスプレイグラス300に映像信号として直接出力することにより、当該運動支援情報がユーザUSの視界に所定の表示方法で透過表示または投影表示される。また、この判定結果に基づいて、当該運動フォームの状態に応じた運動支援情報が、予め設定された音声メッセージや報知音により再生されて、イヤホン403を介してユーザUSに報知される。すなわち、センサ機器200は、上述した実施形態に示したインターフェース機器100のCPU151と同等の分析判定動作を実行する機能に加え、出力インターフェース部130と同等の表示出力機能や音声出力機能を有している。
したがって、本構成例においては、センサ機器200が分析判定動作を実行する機能に加え、運動支援情報の報知機能(表示出力機能や音声出力機能等)を有しているので、センサ機器が通信機能部を備える必要がなく、運動状態報知システムの構成を簡略化することができるとともに、電力の消耗を抑制して、長時間利用可能な運動状態報知システムを実現することができる。
なお、本構成例においては、センサ機器200において、分析判定された運動フォームの判定結果に基づく運動支援情報を、ディスプレイグラス300やイヤホン403を介してユーザUSに報知する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、イヤホンを使用することなく、センサ機器200に設けられたスピーカを介して報知するものであってもよい。また、上述した実施形態に示したインターフェース機器100の出力インターフェース部130に設けられた振動部133と同等の構成を用いて、運動支援情報に応じた振動方法によりユーザUSに報知するものであってもよい。
<第2実施形態>
次に、本発明に係る運動状態報知システムの第2の実施形態について説明する。
上述した第1の実施形態においては、運動フォームを規定するパラメータとして走行中(運動中)の鉛直方向の加速度を適用し、標準モデルの運動フォームを規定する閾値と比較することにより、運動フォームの適否(または良否)を判定する分析判定方法について説明した。第2の実施形態においては、運動フォームを規定するパラメータとして、走行時のペース、ピッチ、ストライドを適用し、標準モデルの運動フォームを規定する閾値と比較することにより、運動フォームの適否(または良否)を判定する分析判定方法を有している。
(運動状態報知システム)
図15は、本発明に係る運動状態報知システムの第2の実施形態を示す概略構成図である。図16は、本実施形態に係る運動状態報知システムに適用されるインターフェース機器の一構成例を示すブロック図である。ここで、上述した第1の実施形態と同等の構成については、同一の符号を付して説明を簡略化する。
第2の実施形態に係る運動状態報知システムは、図15(a)、(b)に示すように、ユーザUSが手首に装着するリストウォッチ型のインターフェース機器100を有している。インターフェース機器100は、例えば図16に示すように、上述した第1の実施形態に示したインターフェース機器において、センサ部110に、加速度センサ111およびGPS受信回路112に加え、ジャイロセンサ(角速度センサ)113を備え、また、通信機能部141を省略した構成を有している。
センサ部110に設けられたジャイロセンサ113は、ユーザUSの走行中の動作方向の変化(角速度)を検出する。本実施形態においては、加速度センサ111により検出された加速度データ、および、ジャイロセンサ113により検出された角速度データの変化傾向や波形のピーク周波数に基づいて、走行時のピッチ(1秒間の歩数)とペース(速度)が測定または算出される。また、算出されたペースと経過時間に基づいて走行距離がさらに算出される。これらのピッチやペース、走行距離は、CPU151が所定の制御プログラムを実行することにより測定または算出される。
メモリ152は、不揮発性メモリを有し、センサ部110により検出された加速度データや位置データ、角速度データ、これらのセンサデータに基づいて算出された走行時のピッチやペース、走行距離等の数値情報を、走行時間ごとに、該走行時間と相互に関連付けて所定の記憶領域に保存する。また、メモリ152の不揮発性メモリ部分には、本実施形態に係るインターフェース機器100において実行される運動状態報知方法(詳しくは後述する)により生成される、または、参照される各種のデータや情報が保存される。CPU151は、計時機能を備え、例えばメモリ152に記憶された制御プログラムに従って処理を行うことにより、センサ部110や入力インターフェース部120、出力インターフェース部130、メモリ152における動作を制御して所定の機能を実現する。
(運動状態報知方法;運動フォームの分析判定方法とその報知方法)
次に、本実施形態に係る運動状態報知システムにおける運動状態報知方法について説明する。
まず、本実施形態に係る運動状態報知方法に適用される運動フォームの分析判定方法と、その報知方法について説明する。
図17は、本実施形態に係る運動フォームの分析判定方法に適用されるパラメータを説明するための概念図である。図17(a)は、一般的なランニングウォッチにおいて適用される分析方法の一例を示すグラフであり、図17(b)は、本実施形態に係る分析判定方法の一例を示すグラフである。なお、図17(a)においては、後述する報知方法の説明を簡明にするために、注意表示領域、警告表示領域を、便宜的にハッチングを用いて示した。
上述した背景技術において説明したように、一般に、マラソンやランニング等の運動状態の分析方法は、例えば図17(a)のグラフに示すように、走行距離(横軸)に対するペースまたはスプリットタイム(縦軸)が随時算出されて、その数値情報を表示することにより、ユーザに運動状態に関する情報を提供していた。なお、図17(a)においては、42.195kmのフルマラソンにおけるスプリットタイム(1kmを走るのに必要な時間であって、走行速度を示す一般的なランニング指標)の変化の一例を示す。
ここで、図17(a)に示されたグラフにおいては、マラソンスタート後、走行距離が15kmを過ぎた付近からスプリットタイムが徐々に長くなり(すなわち、ペースが遅くなり)、さらに、走行距離が25km以降でスプリットタイムが顕著に長くなって、競技後半で失速している状態を示している。しかしながら、一般的な運動状態の分析方法においては、ペースやスプリットタイム等の時間に関連する情報のみが提供されていたため、ユーザは自己の運動フォームの問題点を的確に把握することができず、その結果、記録の向上や適正な運動効果の実現に十分寄与させることができなかった。
本実施形態に示した運動状態報知システム(図15、図16)においては、センサ部110に設けられた加速度センサ211およびジャイロセンサ212を用いて、走行時のピッチとペースが測定または算出される。具体的には、加速度センサ111により検出された加速度データ、および、ジャイロセンサ113により検出された角速度データの変化傾向や波形のピーク周波数に基づいて、走行時のピッチが測定されるとともに、ペースが算出される。
そして、「ペース=ピッチ×ストライド」の関係に基づいて、算出されたペースを、ピッチとストライド(歩幅)の各成分に分解する。このピッチとストライドの関係は、例えば図17(b)のグラフのように示される。なお、図17(b)においては、42.195kmのフルマラソンにおける区間距離5kmごとのピッチ(横軸)とストライド(縦軸)の変化の一例を示す。ここで、ペースが一定のときには図中破線で示すように、図面右下がりの直線La、Lbとして表わされる。直線Laは、区間距離5kmを19分のペースで走行した場合のピッチとストライドの関係を示すペース基準線であり、また、直線Lbは、区間距離5kmを20分のペースで走行した場合のピッチとストライドの関係を示すペース基準線である。また、太矢印は、区間距離5kmごとのピッチとストライドの変化を、走行距離に対応させて順次示したものである。
このようにして測定または算出された、ユーザUSの走行中のペース、ピッチ、ストライドを、運動フォームを規定するパラメータとして用いて、CPU151において、当該運動の標準モデルの運動フォームを規定する閾値範囲と比較することにより、標準モデルと同等または近似する運動フォームか否かが判定される。ここで、上記の閾値範囲、または、当該閾値範囲を規定する上限値および下限値は、当該運動を理想的なフォームで行った場合に、走行距離に応じて(例えば区間距離5kmごとに)実測により、あるいは、理論的に得られるペース、ピッチ、ストライドの数値範囲または数値である。このような閾値範囲は、予めインターフェース機器100のメモリ152の所定の記憶領域に、走行距離(区間距離)ごとに、標準値となる数値範囲がデータベースとして保存されているものであってもよいし、例えば入力インターフェース部120の操作スイッチ121やタッチパネル122を用いて、ユーザUSが任意の数値範囲や数値を入力設定するものであってもよい。
具体的には、図17(b)に示したグラフにおいて、ユーザUSのピッチとストライドの関係は、スタートからの走行距離が20〜25km付近で直線Laよりも図面左下方向に変化し、ペースが急激に落ちてきたということが判別できる。加えて、図17(b)においては、上記の20〜25km付近でのペース変化だけでなく、それ以前に、走行距離が10km付近からピッチが低下して一定の状態を保持できなくなり、ストライドを伸ばすことでペースを維持してきたことが判別できる。そして、このような走り方が、競技後半の失速を招いたものと推測される。つまり、競技後半の失速の要因は、走行距離が10km付近からすでに発生し、上記のペースまたはストライドが標準モデルの運動フォームを規定する閾値範囲から逸脱した不適正な運動フォームを続けたことに原因があるものと分析、判定することができる。
上述した分析判定方法により得られた結果、および、その判定結果に基づく運動支援情報を、上述した第1の実施形態と同様の報知方法を用いてユーザUSに報知することにより、ユーザUSは、走行中の自己の運動フォームを的確に把握することができる。
図18は、本実施形態に係る運動状態報知方法に適用される報知動作の一例を示す図である。ここでは、本実施形態に係る報知方法の特徴である表示動作の例を示し、図17に示した運動状態と関連付けて説明する。なお、図18(c)、(d)においては、図示の都合上、注意表示状態、警告表示状態を、便宜的にハッチングを用いて示した。
まず、インターフェース機器100の表示部131には、運動支援情報の表示項目として、例えば図18(a)、(b)に示すように、図面上段にスプリットタイム「Split」またはペース、図面中段に走行距離「Dist」、図面下段にピッチ「Pitch」またはストライドの各数値情報が表示される。なお、表示部131における表示項目は、これらに限定されるものではなく、任意に設定変更が可能なものである。
そして、CPU151において上述した分析判定方法を実行し、ユーザUSの運動中(走行中)に、センサ部110により検出されたセンサデータに基づいて取得したペース、ピッチ、ストライドのおのおのについて、予め設定された閾値範囲内にあるか否かを判定する。ペース、ピッチ、ストライドのいずれかが閾値範囲から逸脱していると判定されたときには、現時点の運動フォームに問題があると判断して、その数値情報を表示部131に表示するとともに、ユーザUSに運動フォームの改善を促すように注意表示や警告表示を行う。ここで、表示部131における注意表示や警告表示の具体例としては、上述した第1の実施形態と同様に、例えば図18(c)、(d)に示すように、閾値範囲から逸脱した項目の数値情報を強調表示する表示方法や、表示部131の全域を例えば黄色等の注意色や赤色等の警告色で発光動作させる表示方法等を、単独でまたは任意に組み合わせて適用することができる。なお、ペース、ピッチ、ストライドのいずれの項目も閾値範囲内にあると判定されたときには、ユーザUSの運動フォームが標準モデルの運動フォームと同等または近似する適正な運動フォームであると判定して、上述した第1の実施形態と同様に、図18(b)に示すように、表示部131を標準表示状態で表示(すなわち、通常表示)させる。
ここで、ユーザUSの走り方が、例えば上述した図17のグラフに示したような状態であった場合について、報知動作の具体例を説明する。図17(a)、(b)に示したような走り方の場合、上述したように、スタートから走行距離が10km程度までは、ペース(スプリットタイム)、ピッチ、ストライドのいずれもが、当該走行距離に対応して予め設定された閾値範囲内に維持されているものとする。このとき、CPU151は、現時点のユーザUSの運動フォームは標準モデルと同等または近似する適正な運動フォームであると判定する。ここで、この判定結果を、図17(a)、(b)中では便宜的に標準表示領域「Zs」と表記する。この判定結果に基づいて、CPU151は、図18(b)に示すように、出力インターフェース部130の表示部131に、各項目を標準表示状態で表示させる。
次いで、走行距離が10km以降においては、ペースはペース基準線である直線Laに沿って変化してほぼ維持されているが、ピッチは低下を補うためにストライドが伸びる傾向にあって、ストライドが予め設定された閾値範囲から逸脱しているものとする。このとき、CPU151は、現時点のユーザUSの運動フォームはピッチに問題があり、標準モデルの運動フォームからかけ離れた不適正な運動フォームであると判定する。ここで、この判定結果を、図17(a)、(b)中では便宜的に注意表示領域「Za」と表記する。この判定結果に基づいて、CPU151は、図18(c)に示すように、例えば、表示部131のピッチ「Pitch」の数値情報を強調表示させるとともに、表示部131全域を黄色等の注意色で発光動作させる注意表示状態で表示させる。なお、ここでは、ペースはほぼ維持されているが、ピッチが低下した場合に、図18(c)に示すような注意表示を行う例を示したが、これに限定されるものではなく、ピッチは維持されているがペースが閾値範囲を逸脱した場合や、ペース、ピッチ、ストライドのいずれかが閾値範囲を超過した場合等に、注意表示を行うものであってもよい。
次いで、走行距離が20km以降においては、ペース(スプリットタイム)、ピッチの双方とも低下が顕著になり、また、ストライドも狭くなる傾向にあって、いずれの項目も予め設定された閾値範囲から逸脱しているものとする。このとき、CPU151は、現時点のユーザUSの運動フォームはペースおよびピッチの双方に問題があり、標準モデルの運動フォームから大きくかけ離れた不適正な運動フォームであると判定する。ここで、この判定結果を、図17(a)、(b)中では便宜的に警告表示領域「Zb」と表記する。この判定結果に基づいて、CPU151は、図18(d)に示すように、例えば、表示部131のスプリットタイム「Split」およびピッチ「Pitch」の数値情報を強調表示させるとともに、表示部131全域を赤色等の警告色で発光動作させる警告表示状態で表示させる。
なお、上述した表示部131における報知動作において、上述した第1の実施形態と同様に、運動支援情報として、ペース、ピッチ、ストライド等の具体的な数値情報に替えて、または、数値情報と併用して、例えば「標準モデルの範囲を外れました」、「ピッチを上げてください」、「ストライドを伸ばしてください」等の文字情報を表示するものであってもよい。また、この場合においても、音や振動を発生させる報知方法を併用して、運動支援情報を確実にユーザに報知するようにしてもよい。
(運動状態報知方法;全体動作)
次に、上述した分析判定方法および報知方法を適用した運動状態報知方法の全体動作について説明する。ここでは、上述した分析判定方法および報知方法の説明で用いた図17、図18を適宜参照しながら説明する。
図19は、本実施形態に係る運動状態報知システムにおける運動状態報知方法の概略動作を示すフローチャートである。
本実施形態に係る運動状態報知システム(インターフェース機器100)における運動状態報知方法は、図19に示すように、大別して、測定算出動作S210と、ペース判別動作S220と、ピッチ判別動作S230と、分析判定動作S240と、報知動作S250と、を有している。
以下、運動状態報知方法の各動作について具体的に説明する。
図20は、本実施形態に係る運動状態報知方法における測定算出動作の一例を示すフローチャートであり、図21は、本実施形態に係る運動状態報知方法におけるペース判別動作の一例を示すフローチャートであり、図22は、本実施形態に係る運動状態報知方法におけるピッチ判別動作の一例を示すフローチャートであり、図23は、本実施形態に係る運動状態報知方法における分析判定動作および報知動作の一例を示すフローチャートである。
(測定算出動作S210)
測定算出動作S110においては、図20のフローチャートに示すように、まず、インターフェース機器100を起動して、上述したセンサ部110によりユーザUSの運動状態に関わる各種のセンサデータを検出するセンシングを開始する(S211)。具体的には、図1、図2に示したように、ユーザUSが手首に装着したインターフェース機器100の入力インターフェース部120を操作することにより、CPU151はセンサ部110を制御して、加速度センサ111やGPS受信回路112、ジャイロセンサ113によりユーザUSの走行中の加速度データ、GPSデータ(位置データ、移動速度)、角速度データを検出する動作を開始する。
そして、ユーザUSがマラソンやランニング等の運動を開始することにより(S212)、上記の各センサにより検出された加速度データ、GPSデータ、角速度データは、走行時間ごとに、該走行時間と相互に関連付けてメモリ152の所定の記憶領域に保存される。ここで、これらのセンサデータは、上記の各センサにより常時検出されるものであってもよいし、一定の時間間隔で取検出されるものであってもよい。
次いで、CPU151は、検出した加速度データ、GPSデータ、角速度データに基づいて、現時点の走行距離、ペース、ピッチを測定または算出する(S213〜S215)。具体的には、上述したように、加速度データおよび角速度データの変化傾向や波形のピーク周波数に基づいて、ピッチおよびペースが測定または算出される。また、算出されたペースと走行時間(経過時間)に基づいて走行距離がさらに算出される。なお、GPSデータは、上記の走行距離やペースの精度を高めるために利用される。これらの走行距離やペース、ピッチは、走行時間ごとに、該走行時間と相互に関連付けてメモリ152の所定の記憶領域に保存される。
(ペース判別動作S220)
ペース判別動作S220においては、図21のフローチャートに示すように、予め閾値範囲が設定されたデータベースを参照して(S221)、上述した測定算出動作S210において算出されたペースと、データベースに設定された閾値範囲とを比較することにより、ペースについて問題が発生していないか否かを判別する。
具体的には、CPU151は、まず、メモリ152に格納されたデータベースを参照して、現在の走行距離に対応する閾値範囲に設定された上限値と下限値を抽出する。次いで、CPU151は、上記算出されたペースが当該閾値範囲の上限値よりも大きいか否かを判別する(S222)。ペースが閾値範囲の上限値よりも大きい場合には、ペースフラグに「1」を設定して(S224)、当該ペースフラグをメモリ152の所定の記憶領域に保存する。一方、上記ペースが閾値範囲の上限値以下の場合には、当該ペースが閾値範囲の下限値よりも小さいか否かをさらに判別する(S223)。ペースが閾値範囲の下限値よりも小さい場合には、ペースフラグに「−1」を設定して(S225)、当該ペースフラグをメモリ152の所定の記憶領域に保存する。すなわち、現時点のペースが予め設定された閾値範囲から逸脱している場合には、その逸脱の状況(上限値を超過、または、下限値に満たない)に応じて、ペースフラグを立てる。
一方、上記ペースが閾値範囲の下限値以上の場合には、当該ペースが閾値範囲内にあると判断して、ペースフラグに「0」を設定して(S226)、当該ペースフラグをメモリ152の所定の記憶領域に保存する。ここで、ペースフラグは、走行時間に関連付けてメモリ152に保存される。
(ピッチ判別動作S230)
ピッチ判別動作S230においては、図22のフローチャートに示すように、予め閾値範囲が設定されたピッチデータベースを参照して(S231)、上述した測定算出動作S210において測定されたピッチと、データベースに設定された閾値範囲とを比較することにより、ピッチについて問題が発生していないか否かを判別する。
具体的には、CPU151は、まず、メモリ152に格納されたデータベースを参照して、現在の走行距離に対応する閾値範囲に設定された上限値と下限値を抽出する。次いで、CPU151は、上記測定されたピッチが当該閾値範囲の上限値よりも大きいか否かを判別する(S232)。ピッチが閾値範囲の上限値よりも大きい場合には、ピッチフラグに「1」を設定して(S234)、当該ピッチフラグをメモリ152の所定の記憶領域に保存する。一方、上記ピッチが閾値範囲の上限値以下の場合には、当該ピッチが閾値範囲の下限値よりも小さいか否かをさらに判別する(S233)。ピッチが閾値範囲の下限値よりも小さい場合には、ピッチフラグに「−1」を設定して(S235)、当該ピッチフラグをメモリ152の所定の記憶領域に保存する。すなわち、現時点のピッチが予め設定された閾値範囲から逸脱している場合には、その逸脱の状況(上限値を超過、または、下限値に満たない)に応じて、ピッチフラグを立てる。
一方、上記ピッチが閾値範囲の下限値以上の場合には、当該ピッチが閾値範囲内にあると判断して、ピッチフラグに「0」を設定して(S236)、当該ピッチフラグをメモリ152の所定の記憶領域に保存する。ここで、ピッチフラグは、走行時間に関連付けてメモリ152に保存される。
(分析判定動作S240、報知動作S250)
分析判定動作S240においては、図23のフローチャートに示すように、上述したペース判別動作S220およびピッチ判別動作S230において設定されたペースフラグおよびピッチフラグに基づいて、ユーザUSの運動フォームを判定する。また、報知動作S250においては、図23のフローチャートに示すように、分析判定動作S240において判定された運動フォームおよびその問題箇所に応じて、インターフェース機器100を介して、ユーザUSに運動支援情報を報知する。
具体的には、CPU151は、まず、メモリ152に保存されたペースフラグおよびピッチフラグを走行時間に基づいて読み出す。次いで、CPU151は、読み出したピッチフラグが「−1」であり、かつ、ペースフラグが「−1」であるという条件を満たすか否かを判別する(S251)。ピッチフラグおよびペースフラグがこの判別処理(S251)の条件を満たす場合には、CPU151は、ピッチおよびペースの双方が閾値範囲を下回り(下限値に満たず)、低下しており、現時点のユーザUSの運動フォームが標準モデルから大きくかけ離れた不適正な状態にあると判定する。CPU151は、この判定結果に基づいて、出力インターフェース部130に所定の警告動作を実行させる(S156)。ここで実行される警告動作は、上述した分析判定方法および報知方法において警告表示状態として説明したように、例えば図18(d)に示すように、インターフェース機器100の表示部131に表示されたスプリットやピッチの数値情報を強調表示する手法や、当該表示部131全域を赤色に発光する手法、表示部131を早く点滅発光する手法等を、単独でまたは任意に組み合わせて適用することができる。さらに、これらの警告動作に加え、音響部132から警告音を発生させたり、警告メッセージを再生させる手法や、振動部133を連続的に振動させる手法を、単独でまたは任意に組み合わせて適用するものであってもよい。これらの警告動作は、CPU151により実行される制御プログラムに基づいて、所定の時間継続して実行される。
一方、ペースフラグおよびピッチフラグがこの判別処理(S251)の条件を満たさない場合には、CPU151は、読み出したピッチフラグが「−1」であり、かつ、ペースフラグが「−1」でないという条件を満たすか否かをさらに判別する(S252)。ピッチフラグおよびペースフラグがこの判別処理(S252)の条件を満たす場合には、CPU151は、ピッチが閾値範囲を下回り(下限値に満たず)、低下しており、現時点のユーザUSの運動フォームが標準モデルからかけ離れた不適正な状態にあると判定する。CPU151は、この判定結果に基づいて、出力インターフェース部130に所定の注意(ワーニング)動作を実行させる(S257)。ここで実行される注意動作は、上述した分析方法および報知方法において注意表示状態として説明したように、例えば図18(c)に示すように、インターフェース機器100の表示部131に表示されたピッチの数値情報を強調表示する手法や、当該表示部131全域を黄色に発光する手法、表示部131を遅く点滅発光する手法等を、単独でまたは任意に組み合わせて適用することができる。さらに、これらの注意動作に加え、音響部132から注意音を発生させたり、注意メッセージを再生させる手法や、振動部133を断続的に振動させる手法を、単独でまたは任意に組み合わせて適用するものであってもよい。これらの注意動作は、CPU151により実行される制御プログラムに基づいて、所定の時間継続して実行される。
一方、ペースフラグおよびピッチフラグがこの判別処理(S252)の条件を満たさない場合には、CPU151は、読み出したピッチフラグが「1」であり、かつ、ペースフラグが「1」であるという条件を満たすか否かをさらに判別する(S253)。ピッチフラグおよびペースフラグがこの判別処理(S253)の条件を満たす場合には、CPU151は、ピッチおよびペースの双方が閾値範囲を上回り(上限値を超過し)、オーバーピッチかつオーバーペースになっており、現時点のユーザUSの運動フォームが標準モデルからかけ離れた不適正な状態にあると判定する。CPU151は、この判定結果に基づいて、上述した注意動作(S257)と同様に、出力インターフェース部130に所定の注意動作を実行させる(S258)。
一方、ペースフラグおよびピッチフラグがこの判別処理(S253)の条件を満たさない場合には、CPU151は、読み出したペースフラグが「1」であるという条件を満たすか否かをさらに判別する(S254)。ペースフラグがこの判別処理(S254)の条件を満たす場合には、CPU151は、ペースが閾値範囲を上回り、オーバーペースになっており、現時点のユーザUSの運動フォームが標準モデルからかけ離れた不適正な状態にあると判定する。CPU151は、この判定結果に基づいて、上述した注意動作(S257)と同様に、出力インターフェース部130に所定の注意動作を実行させる(S259)。
一方、ペースフラグがこの判別処理(S254)の条件を満たさない場合には、CPU151は、読み出したペースフラグが「−1」であるという条件を満たすか否かをさらに判別する(S255)。ペースフラグがこの判別処理(S255)の条件を満たす場合には、CPU151は、現時点のユーザUSのペースが閾値範囲を下回り、低下しており、現時点のユーザUSの運動フォームが標準モデルからかけ離れた不適正な状態にあると判定する。CPU151は、この判定結果に基づいて、上述した注意動作(S257)と同様に、出力インターフェース部130に所定の注意動作を実行させる(S260)。
一方、ペースフラグがこの判別処理(S255)の条件を満たさない場合には、CPU151は、ピッチおよびペースの双方が閾値範囲内にあって、現時点のユーザUSの運動フォームが標準モデルと同等または近似する適正な運動フォームであると判定する。CPU151は、この判定結果に基づいて、出力インターフェース部130に通常動作を実行させる(S261)。ここで実行される通常動作は、上述した分析判定方法および報知方法において標準表示状態として説明したように、例えば図18(b)に示すように、インターフェース機器100の表示部131に、スプリットや走行距離、ピッチ等の数値情報のみが標準(通常)の表示形態で表示される。
以上説明した一連の運動状態報知方法は、測定算出動作S110において、センサ部110の各種センサがセンシングを実行している間、常時、または、一定の時間間隔で繰り返し実行される。
このように、本実施形態に係る運動状態報知システムによれば、インターフェース機器100に設けられた各種のセンサにより、ユーザUSの運動状態に関わる種々のデータが検出され、少なくとも運動フォームに関連する情報としてペース、ピッチ、ストライドが取得される。そして、これらの情報が予め設定した標準モデルの閾値範囲を維持しているか否かを判定する分析判定処理を行うことによって、ユーザUSの現時点の運動フォームが適正であるか不適正であるかが判定される。そして、上述した第1の実施形態と同様に、この判定結果に基づいて、出力インターフェース部130(表示部131、音響部132、振動部133)を介して、当該運動フォームの状態に応じた運動支援情報が報知されることにより、ユーザUSは、現時点の自己の運動フォームをリアルタイムで的確に把握することができる。そして、ユーザUSは、報知された運動支援情報に基づいて、運動フォームを改善するように意識して動作(自己修正)することにより、適正な運動効果を実現したり、競技やトレーニングにおける記録の向上を図ることができる。
また、本実施形態においては、運動支援情報を報知する出力インターフェース部130と、加速度センサ111およびジャイロセンサ113を備えるセンサ部110と、が単一のインターフェース機器100に組み込まれた構成を有している。これにより、ユーザUSは、運動状態報知システムを構成する単一の機器(リストウォッチ型のインターフェース機器100)を装着することにより、簡易な構成で、視覚や聴覚、触覚を通して、現時点の自己の運動フォームをリアルタイムで確実に把握することができる。
なお、本実施形態においては、単一の機器(インターフェース機器100)のみからなる運動状態報知システムを示したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、上述した第1の実施形態およびその変形例に示したように、インターフェース機器100に加えて、あるいは、インターフェース機器100に替えて、チェストセンサ型等のセンサ機器や、ディスプレイグラス、イヤーメッセンジャー等の任意の機器を、単独でまたは任意に組み合わせて適用するものであってもよい。ここで、センサ機器は、センサにより検出するセンサデータや、当該センサデータに基づいて取得される情報に応じて、体幹や四肢等の適切な部位に個別に装着されるものであってもよい。
また、本実施形態においては、運動フォームを分析判定する手法として、ペース、ピッチ、ストライドの異なる項目について、予め設定された閾値範囲内にあるか否かを判定し、それらの判定結果に基づいて、注意動作や警告動作を行う場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、上述した第1の実施形態と同様に、各項目について閾値範囲内にあるか否か、また、閾値範囲からどの程度逸脱しているかを判定する分析判定動作を行い、それらの判定結果に基づいて、注意動作や警告動作を行うものであってもよい。
また、本実施形態においては、運動フォームを規定するパラメータとして、ペース、ピッチ、ストライドを適用する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、運動フォームを規定するパラメータとして、ペース、ピッチ、ストライドに加えて、上述した第1の実施形態に示した鉛直方向の加速度を含めるものであってもよい。このように、複数のパラメータを適用して、上述したような分析判定動作を行うことにより、現時点の運動フォームをより的確に把握することができ、ユーザに適切な運動支援情報を提供することができる。
なお、上述した各実施形態に示した運動状態報知システムにおいて、インターフェース機器100のメモリ152や、センサ機器200のメモリ252等に保存された各種のセンサデータや情報は、運動の終了後、無線や有線等の通信方式により、あるいは、メモリカード等を介して、パーソナルコンピュータや携帯電話機、スマートフォン、タブレット端末等の外部電子機器に伝送することができるものであってもよい。これによれば、例えば、上述した分析判定方法において、一連の処理に適用された、運動フォームに関連する情報や分析結果を、外部電子機器に備えられた表示装置に表示、閲覧することができるので、競技やトレーニングにおける運動フォームやその問題箇所を再確認したり、詳細に分析して、次回以降の競技やトレーニングの際に有効に活用することができる。
また、上述した各実施形態においては、本発明に係る運動状態報知システムや運動状態報知方法が適用される運動の一例として、ユーザがマラソン大会に参加する場合や、ランニング等のトレーニングを行う場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えばウォーキングやサイクリング等の各種の競技に参加する場合や、そのトレーニング等の運動を行う場合にも、いずれかの実施形態を良好に適用することができる。
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記)
[1]
運動中のユーザの動作状態に関連するデータを検出する検出部と、
前記検出部により検出された前記データに基づいて、少なくとも、前記ユーザの運動フォームに関連する第1運動情報の値を算出し、前記第1運動情報の値を、予め設定された標準モデルの前記運動フォームを規定する第2運動情報の閾値範囲と比較して、前記第1運動情報の値が前記第2運動情報の閾値範囲内にあるか否かを判定する分析判定部と、
前記分析判定部が、前記第1運動情報の値が前記第2運動情報の閾値範囲内にないと判定した場合に、前記第1運動情報の値が前記第2運動情報の閾値範囲内にないことを、当該運動中の前記ユーザに対してリアルタイムに報知して、及び、前記第1運動情報の値が前記第2運動情報の閾値範囲内にあると判定した場合に、前記第1運動情報の値が前記第2運動情報の閾値範囲内にあることを、当該運動中の前記ユーザに対してリアルタイムに報知する、出力部と、
を備えることを特徴とする運動状態報知システムである。
[2]
前記分析判定部が、前記第1運動情報の値が前記第2運動情報の閾値範囲内にないと判定した場合に、前記出力部は、前記運動フォームを適正化するための運動支援情報を、当該運動中の前記ユーザに対してリアルタイムに報知することを特徴とする[1]に記載の運動状態報知システムである。
[3]
前記出力部は、表示によって前記報知を行う表示部、音声によって前記報知を行う音響部、又は振動によって前記報知を行う振動部のいずれかを有することを特徴とする[1]または[2]に記載の運動状態報知システムである。
[4]
前記検出部は、前記ユーザの移動速度の変化の割合を検出する加速度センサと、前記ユーザの移動方向の変化を検出するジャイロセンサと、を有することを特徴とする[1]乃至[3]のいずれかに記載の運動状態報知システムである。
[5]
前記分析判定部は、前記検出部により検出された前記データに基づいて、前記ユーザの運動中の鉛直方向の加速度を、前記運動情報として算出することを特徴とする[4]に記載の運動状態報知システムである。
[6]
前記分析判定部は、前記検出部により検出された前記データに基づいて、前記ユーザの運動中の前記移動速度と単位時間当たりの歩数を、前記運動情報として算出することを特徴とする[4]または[5]に記載の運動状態報知システムである。
[7]
前記分析判定部および前記出力部は、有線又は無線の通信手段を介して互いに接続されていることを特徴とする[1]乃至[6]のいずれかに記載の運動状態報知システムである。
[8]
運動中のユーザの動作状態に関連するデータを検出し、
前記検出された前記データに基づいて、前記ユーザの運動フォームに関連する第1運動情報の値を算出し、
前記第1運動情報の値を、予め設定された標準モデルの前記運動フォームを規定する第2運動情報の閾値範囲と比較して、前記第1運動情報の値が前記第2運動情報の閾値範囲内にあるか否かを判定し、
前記第1運動情報の値が前記第2運動情報の閾値範囲内にないと判定した場合に、前記第1運動情報の値が前記第2運動情報の閾値範囲内にないことを、当該運動中の前記ユーザに対してリアルタイムに報知して、及び、前記第1運動情報の値が前記第2運動情報の閾値範囲内にあると判定した場合に、前記第1運動情報の値が前記第2運動情報の閾値範囲内にあることを、当該運動中の前記ユーザに対してリアルタイムに報知することを特徴とする運動状態報知方法である。
[9]
コンピュータに、
運動中のユーザの動作状態に関連するデータを検出させ、
前記検出された前記データに基づいて、前記ユーザの運動フォームに関連する第1運動情報の値を算出させ、
前記第1運動情報の値を、予め設定された標準モデルの前記運動フォームを規定する第2運動情報の閾値範囲と比較させて、前記第1運動情報の値が前記第2運動情報の閾値範囲内にあるか否かを判定させ、
前記第1運動情報の値が前記第2運動情報の閾値範囲内にないと判定した場合に、前記第1運動情報の値が前記第2運動情報の閾値範囲内にないことを、当該運動中の前記ユーザに対してリアルタイムに報知させて、及び、前記第1運動情報の値が前記第2運動情報の閾値範囲内にあると判定した場合に、前記第1運動情報の値が前記第2運動情報の閾値範囲内にあることを、当該運動中の前記ユーザに対してリアルタイムに報知させることを特徴とする運動状態報知プログラムである。