JP5893614B2 - アルツハイマー病および家族性認知症の治療のための化合物および方法 - Google Patents

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Description

本発明は、医学の分野に関する。より具体的には、本発明は、ヒトなどの哺乳動物のアルツハイマー病、家族性デンマーク型認知症および家族性英国型認知症の治療のための医薬品および治療法に関する。
アルツハイマー病および家族性英国型またはデンマーク型認知症などの神経変性状態の数の増加は、タンパク質の誤った折り畳みおよび凝集に関連している。これらの疾患は、脳実質および大脳動脈におけるタンパク質の沈着を特徴としており、遺伝型または散発型で起こる。これらの疾患は、種々の臨床症状を有するにもかかわらず、それらは、ニューロン欠損、タンパク質凝集体、およびタウのもつれの存在などのいくつかの共通する病理学的特徴を共有する。生化学的観点から、関与するタンパク質は、β−シート構造を形成する傾向があり、アミロイドフィブリル中に凝集しやすい。アルツハイマー病および家族性英国型またはデンマーク型認知症は、いくつかの類似の神経病理学的特徴を示す。アミロイドプラーク、神経原線維のもつれ、コンゴアミロイド好染血管障害および神経変性が認められる。
アルツハイマー病は、ヒトにおける認知症の最もよく見られる原因の1つである。それは、アミロイドβ−ペプチド(Aβ−ペプチド)の細胞外沈着からなるアミロイドプラークの存在を特徴とする、罹患した患者の脳の神経細胞変性を伴う慢性的で致死性の疾患である。Aβ凝集により引き起こされる神経細胞萎縮は、アセチルコリンおよび他のシグナル伝達物質の欠乏をもたらす。40〜42個のアミノ酸残基を有するAβ−ペプチドは、中枢神経系のニューロンにより通常発現されるI型膜タンパク質であるアミロイド前駆体タンパク質(APP、695〜770アミノ酸残基)のプロセシングによって産生されることは公知であるが、このプロセシングの理由は完全に理解されているとは限らない。放出されたAβペプチドは、APP(Aβ残基29〜40/42)の膜貫通領域の一部を含み、不一致なヘリックス、すなわち、β−ストランドを形成する高い性向をもつアミノ酸から構成されるヘリックスを含む。Aβは、その安定化している膜環境から外れると、誤った折り畳みおよび凝集を起こしやすい。
Bri2(配列番号1、膜内在性タンパク質2B、ITM2Bとも呼ばれる)は、その機能および折り畳み構造が未知である、偏在発現による266−残基II型膜タンパク質(図1)である。Bri2は、3箇所でタンパク質分解によって切断され;C−末端領域におけるフーリンによる切断は、23−残基ペプチド(ABri23)を生成し、ADAM10によるエクトドメインのプロセシングは、膜結合N−末端部分からBrichosドメインの放出をもたらし、SPPL2a/2bによる膜間切断は、細胞内ドメインを遊離させる。家族性英国型およびデンマーク型認知症は、Bri2遺伝子における突然変異に起因し、これは、終始コドンの消失をもたらし、そして次にC−末端部分の2つの異なる11−残基延長、およびフーリン切断後に、正常に放出されるABri23に代わって34−残基ペプチド(それぞれ、ABriおよびADan)の生成をもたらす。ペプチドが長ければ長いほど、同時に起こるニューロン損失および認知症とともに、アミロイドフィブリル中へ凝集し、および脳組織または大脳血管で沈着する傾向がある。
最近の研究では、Bri2およびAβは、脳実質および脳血管におけるアミロイドプラークに共局在することが示されており、タンパク質が、誤った折り畳みおよび凝集の間のある段階で相互作用することを示唆する。トランスフェクトされた細胞系を用いる場合、Bri2は、APPと相互作用し、β−セクレターゼによって生成される断片の増加によってAPPプロセシングを調節することが見出された。Bri2およびAβ40を含む融合タンパク質の生成は、Briタンパク質がAβ凝集性に影響を与え得ることを示し、トランスジェニックマウスモデルを用いる場合、ABri23が、Aβ42と相互作用し、その凝集を妨げると提示されている(Kimら、J.Neurosci.28:6030〜6036頁(2008年);国際公開第2009/009396号パンフレット)。Aβ産生を、Bri2の最初の102アミノ酸残基を含むタンパク質によって減少または防止させ得ることも提示されている(国際公開第2006/138355号パンフレット)。
アルツハイマー病の治療への現行の治療手法は、その症状の治療に主に向けられており、コリン代償療法、例えば、アセチルコリンエステラーゼの阻害、可溶性Aβオリゴマーと相互作用する低分子量阻害剤、およびすでに形成されたβ−シート構造の伸長を妨げるいわゆるβ−シートブレーカーを含む。
凝集を妨げるために提案された別の戦略は、シャペロンと機能的に定義される分子を用いることであった。シャペロンは、複雑な細胞内環境においてタンパク質の正確な折り畳みを助けることによって重要な役割を果たす。多くの分子シャペロン、例えば、ヒートショックタンパク質(Hsp)は、折り畳み過程で重要であることが知られており、広範に研究されてきた。これらのシャペロンのいくつかは明らかに、ある種のポリペプチドのアミロイドフィブリル形成と関係を持ち、それに影響を与えることができる。Aβ1-42の凝集は、Hsp90または組合せHsp70/Hsp40により阻害される(CG Evansら、J Biol Chem 281:33182〜33191頁、2006年)。さらに、細胞外シャペロンクラスタリン(アポリポタンパク質J)は、Aβを含む多くのポリペプチド(E Matsubaraら、Biochem J 316(Pt2):671〜679頁、1996年)およびプリオンタンパク質の断片(S McHattieおよびN Edington、Biochem Biophys Res Commun 259:336〜340頁、1999年)のフィブリル形成を阻害することが示されている。構造的に多様なシャペロンのアミロイド疾患の予防における役割は、確立されておらず、いくつかの報告は、タンパク質シャペロンがアミロイドフィブリル形成を促進することを示しさえしている(例えば、SK DebBurmanら、Proc Nat Acad Sci USA 94:13938〜13943頁、1997年を参照)。分子シャペロンに加えて、化学的および薬理学的シャペロンの作用がミスフォールディング疾患(誤った折り畳みによる疾患)との関連で研究されてきた。シャペロンまたは他の手段を使用する有効な療法は、いずれのアミロイド疾患についてもこれまで見出されてこなかった。
Aβペプチドに対するモノクローナル抗体は、神経毒性フィブリル中への凝集を防止し、すでに形成されたアミロイドを溶解する。しかし、抗体療法は、非常に高価であり、多様に重篤な副作用を伴う。アルツハイマー病のトランスジェニックマウスモデルにおけるβ−アミロイドによるワクチン接種は、アミロイドプラークの数および全体的なアミロイド負荷の有意な減少、ならびに認知能力のある程度の改善さえも示した。
本発明の目的は、アミロイドフィブリルへのAβ−ペプチドの凝集を減少させることである。
また本発明の目的は、哺乳動物の脳におけるAβ−ペプチドの細胞外沈着からなるアミロイドプラークの形成を減少させることである。
本発明の別の目的は、ヒトを含む哺乳動物におけるアルツハイマー病の治療のための新規な治療選択肢を提供することである。
また、本発明の目的は、ヒトを含む哺乳動物における家族性デンマーク型認知症および/または家族性英国型認知症の治療のための新規な治療選択肢を提供することである。
以下の説明から明らかとなるこれらおよび他の目的に関して、本発明は、第1の態様によって、ヒト由来のBri2の残基90〜236(配列番号2)およびヒト(配列番号5)、チンパンジー(配列番号6)、ウシ(配列番号7)、ブタ(配列番号8)、マウス(配列番号9)およびラット(配列番号10)由来のBri2のBrichosドメインからなるタンパク質の群から選択される単離されたタンパク質を提供する。
驚くべきことに、この単離されたタンパク質は、アミロイドフィブリル形成を減少させ、および/またはAβ−ペプチドの凝集を減少させる能力を有することが見出された。これは、標的ABri23(配列番号4)とAβペプチド(配列番号11〜12)との間の構造的不同性を考慮すると、特に驚くべきことである。本発明は、本明細書で開示される、Bri2のBrichosドメインを含むが、ABri23配列を含まないこの単離されたタンパク質の以前には知られていない基質特異性についての驚くべき洞察に基づいている。
一実施形態において、単離されたタンパク質は、ヒト由来のBri2の残基90〜236(配列番号2);およびヒト由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号5)からなるタンパク質の群から選択される。特定の実施形態において、単離されたタンパク質は、ヒト由来のBri2の残基90〜236(配列番号2)またはヒト由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号5)からなる。
本発明による単離されたタンパク質は、特に、ヒトを含む哺乳動物における、アルツハイマー病、家族性デンマーク型認知症および家族性英国型認知症からなる群から選択される状態の治療において、医薬品として有用である。好ましい実施形態において、本発明による単離されたタンパク質は、アルツハイマー病の治療に有用である。
本発明は、別の態様によって、ヒトを含む哺乳動物における、アルツハイマー病、家族性デンマーク型認知症および家族性英国型認知症からなる群から選択される状態の治療において使用するための、ヒト由来のBri2の残基90〜236(配列番号2)に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質;ならびにヒト(配列番号5)、チンパンジー(配列番号6)、ウシ(配列番号7)、ブタ(配列番号8)、マウス(配列番号9)およびラット(配列番号10)由来のBri2のBrichosドメインのいずれか1つに対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質からなる群から選択される単離されたタンパク質(但し、前記タンパク質は、ヒト由来のBri2の残基1〜89に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでおらず;および前記タンパク質は、ヒトABri23(配列番号4)に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでいないことを条件とする)を提供する。好ましい実施形態において、本発明による単離されたタンパク質は、アルツハイマー病の治療に有用である。
一実施形態において、本発明による使用のための単離されたタンパク質は、ヒト由来のBri2の残基90〜236(配列番号2)に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質;およびヒト由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号5)に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質からなる群から選択される。
ある実施形態において、本発明による使用のための単離されたタンパク質は、ヒト(配列番号5)、チンパンジー(配列番号6)、ウシ(配列番号7)、ブタ(配列番号8)、マウス(配列番号9)およびラット(配列番号10)由来のBri2のBrichosドメインのいずれか1つに対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質からなる群から選択される。特定の実施形態において、本発明による使用のための単離されたタンパク質は、ヒト(配列番号5)、チンパンジー(配列番号6)、ウシ(配列番号7)、ブタ(配列番号8)、マウス(配列番号9)およびラット(配列番号10)由来のBri2のBrichosドメインのいずれか1つを含むタンパク質からなる群から選択される。
ある種の実施形態において、本発明による使用のための単離されたタンパク質は、200未満またはそれに等しいアミノ酸残基、例えば、150未満またはそれに等しいアミノ酸残基からなる。ある種の実施形態において、本発明による使用のための単離されたタンパク質は、90を超えるまたはそれに等しいアミノ酸残基からなる。
関連した態様によれば、本発明は、ヒトを含む哺乳動物における、アルツハイマー病、家族性デンマーク型認知症および家族性英国型認知症からなる群から選択される状態の治療のための医薬品を製造するための本発明による単離されたタンパク質の使用を提供する。好ましい実施形態において、状態はアルツハイバー病である。
関連した態様によれば、本発明は、治療的有効量の本発明による単離されたタンパク質およびそれらのための適切な薬学的担体を含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は、特に、ヒトを含む哺乳動物における、アルツハイマー病、家族性デンマーク型認知症および家族性英国型認知症からなる群から選択される状態の治療において、医薬品として有用である。好ましい実施形態において、本発明による医薬組成物は、アルツハイマー病の治療に有用である。
別の態様によれば、本発明は、それを必要としているヒトを含む哺乳動物における、アルツハイマー病、家族性デンマーク型認知症および家族性英国型認知症からなる群から選択される状態を治療する方法であって、治療的有効量の本発明による単離されたタンパク質または本発明による医薬組成物を前記哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。好ましい実施形態において、状態はアルツハイマー病である。
一実施形態において、治療は、予防的、緩和的および治癒的治療からなる群から選択される。
[添付配列の一覧]
配列番号1 ヒトBri2
配列番号2 ヒトBri2(90〜236)
配列番号3 ヒトBri2(1〜89)
配列番号4 ヒトABri23[Bri2(244〜266)]
配列番号5 ヒトBri2Brichos[Bri2(137〜231)]
配列番号6 チンパンジーBri2Brichos
配列番号7 ウシBri2Briochos
配列番号8 ブタBri2Briochos
配列番号9 マウスBri2Briochos
配列番号10 ラットBri2Briochos
配列番号11 ヒトAβ1-40ペプチド
配列番号12 ヒトAβ1-42ペプチド
配列番号13 フォワードPCRプライマー
配列番号14 リバースPCRプライマー
配列番号15 合成ペプチド
発明の詳細な説明
Bri2(配列番号1)(内在性膜タンパク質2B(ITM2B)とも呼ばれる)は、残基137〜231(配列番号5)にわたる進化的に保存されたBrichosドメインを含む。Brichosドメインは、機能的に無関係でありかつ異なる組織で発現される10を超える異なるタンパク質ファミリーで見出されている。Brichosという名称は、Bri、軟骨肉腫に関連したコンドロモジュリン−1、および呼吸器疾患に関与する肺サーファクタントタンパク質C前駆体(proSP−C)におけるドメインの同定を指す。これまで同定されたBrichos含有タンパク質のすべては、II型膜タンパク質であり、Brichosドメインは、C末端、ER管腔領域に位置する。
驚くべきことに、哺乳動物のBri2(ITM2B)のBrichosドメインを含むタンパク質および構造的に類似のタンパク質は、アミロイドフィブリル形成ならびにAβ−ペプチドおよびABri/ADanペプチドの凝集を減少させる能力を有することが見出された。
本発明は、医薬品として有用である単離されたタンパク質を提供する。単離されたタンパク質は、ヒトを含む哺乳動物における、アルツハイマー病、家族性デンマーク型認知症および家族性英国型認知症からなる群から選択される状態の治療に有用である。好ましい実施形態において、単離されたタンパク質は、アルツハイマー病の治療に有用である。治療は、予防的、緩和的または治癒的治療であってもよい。
第1の態様によれば、本発明は、ヒト由来のBri2の残基90〜236(配列番号2);およびヒト(配列番号5)、チンパンジー(配列番号6)、ウシ(配列番号7)、ブタ(配列番号8)、マウス(配列番号9)およびラット(配列番号10)由来のBri2のBrichosドメインからなるタンパク質の群から選択される単離されたタンパク質を提供する。ある種の実施形態において、単離されたタンパク質は、ヒト由来のBri2の残基90〜236(配列番号2);およびヒト由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号5)からなるタンパク質の群から選択される。特定の実施形態において、単離されたタンパク質は、ヒト由来のBri2の残基90〜236(配列番号2)またはヒト由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号5)からなる。
本発明は、別の態様によって、ヒト由来のBri2の残基90〜236(配列番号2)に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質;ならびにヒト(配列番号5)、チンパンジー(配列番号6)、ウシ(配列番号7)、ブタ(配列番号8)、マウス(配列番号9)およびラット(配列番号10)由来のBri2のBrichosドメインのいずれか1つに対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質からなる群から選択される単離されたタンパク質を提供する。
本明細書および特許請求の範囲を通して使用される場合、「%同一性」という用語は、以下のとおりに計算される。クエリー配列を、CLUSTAL Wアルゴリズム(Thompson,J.D.、Higgins,D.G.およびGibson,T.J.、Nucleic Acid Research、22:4673〜4680頁(1994年))を用いて標的配列に対して整列させる。整列した配列の最短に対応するウィンドウにわたって、比較を行う。それぞれの位置におけるアミノ酸残基を比較し、標的配列において同一の対応を有するクエリー配列における場所のパーセンテージが、%同一性として報告される。
本明細書および特許請求の範囲を通して使用される場合、「%類似性」という用語は、疎水性残基Ala、Val、Phe、Pro、Leu、IIe、Trp、MetおよびCysが類似しており;塩基性残基Lys、ArgおよびHisが類似しており;酸性残基GluおよびAspが類似しており;親水性の無電荷残基Gln、Asn、Ser、ThrおよびTyrが類似していることを除いて、「%同一性」について記載されたとおりに計算される。残りの天然のアミノ酸Glyは、この文脈においていずれの他のアミノ酸とも類似しない。
本説明を通して、本発明による代替の実施形態は、同一性の特定のパーセンテージの代わりに、対応する類似性のパーセンテージを満たす。他の代替の実施形態は、同一性の特定のパーセンテージ、およびそれぞれの配列について同一性の好ましいパーセンテージの群から選択される、別のより高い類似性のパーセンテージを満たす。例えば、単離されたタンパク質配列は、別のタンパク質配列に対して70%類似であってもよく;またはそれは、別の配列に対して70%同一であってもよく;またはそれは、別の配列に対して70%同一およびさらに90%類似であってもよい。
疑いを避けるために、ヒト由来のBri2の残基90〜236またはBri2のBrichosドメインのいずれか1つに対して少なくとも所与の同一性を有するアミノ酸配列は、70を超えるかそれに等しい、例えば、80を超えるかそれに等しい、例えば、90を超えるかまたはそれに等しいアミノ酸残基からなる。好ましい大きさの範囲は、70〜100アミノ酸残基、例えば、80〜100アミノ酸残基、例として、90〜100アミノ酸残基である。
ヒト(配列番号5)、チンパンジー(配列番号6)、ウシ(配列番号7)、ブタ(配列番号8)、マウス(配列番号9)およびラット(配列番号10)由来のBri2のBrichosドメインは、高度に保存されていることが留意され、図2におけるアライメントを参照されたい。いずれの特定の理論にも拘束されることも望まないが、Brichosドメインは、AβおよびABri/ADanペプチドに関して所望の活性を持っていると考えられる。本発明による単離されたタンパク質は、ヒト(配列番号5)、チンパンジー(配列番号6)、ウシ(配列番号7)、ブタ(配列番号8)、マウス(配列番号9)およびラット(配列番号10)由来のBri2のBrichosドメインのいずれか1つに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、例えば、少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質からなる群から選択されることが好ましい。好ましい実施形態において、本発明による単離されたタンパク質は、ヒト(配列番号5)、チンパンジー(配列番号6)、ウシ(配列番号7)、ブタ(配列番号8)、マウス(配列番号9)およびラット(配列番号10)由来のBri2のBrichosドメインに保存されているアミノ酸残基のすべて、すなわち、残基42、76および82(完全長Bri2、配列番号1の残基178、212および218に対応する)を除いて、配列番号5のアミノ酸残基のすべてを含む。特定の実施形態において、本発明による単離されたタンパク質は、ヒト(配列番号5)、チンパンジー(配列番号6)、ウシ(配列番号7)、ブタ(配列番号8)、マウス(配列番号9)およびラット(配列番号10)由来のBri2のBrichosドメインのいずれか1つを含むタンパク質からなる群から選択され、すなわち、それは、これらのBrichosドメイン、好ましくはヒトBrichosドメイン(配列番号5)の1つを含む。
従来の教示とは対照的に、本発明による単離されたタンパク質は、ヒト由来のBri2の残基1〜89(配列番号3)に対する少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含まない。ある種の実施形態において、本発明による単離されたタンパク質は、ヒト由来のBri2の残基1〜89に対して少なくとも50%の同一性を有するアミノ酸配列を含まない。これは、本発明による単離されたタンパク質が、ヒト由来のBri2の残基90〜236(配列番号2)に対して高い類似性もしくは同一性を示すコアアミノ酸配列および/または(配列番号5〜10)からの哺乳動物のBri2のBrichosドメインならびに場合によって1種以上の他のアミノ酸配列(この他のアミノ酸配列は、ヒト由来のBri2の残基1〜89(配列番号3)に対して高い類似性または同一性を示さなくてもよい)を含むことを意味する。
疑いを避けるために、10アミノ酸残基より短いアミノ酸配列は、本発明による単離されたタンパク質から排除されるので、関連性がないと考えられる。したがって、本発明による単離されたタンパク質は、ヒト由来のBri2の残基1〜89(配列番号3)に対して少なくとも所与の同一性を有する10を超えるまたはそれに等しいアミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含まない。
さらに、本発明による単離されたタンパク質は、ヒト由来のBri2の残基244〜266、すなわち、ヒトABri23(配列番号4)に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含まない。ある種の実施形態において、本発明による単離されたタンパク質は、残基ヒトABri23(配列番号4)に対して少なくとも50%の同一性を有するアミノ酸配列を含まない。上に示されたように、これは、本発明による単離されたタンパク質が、ヒト由来のBri2の残基90〜236(配列番号2)に対して高い類似性もしくは同一性を示すコアアミノ酸配列および/または(配列番号5〜10)からのBri2の哺乳動物のBrichosドメインならびに場合によって1種以上の他のアミノ酸配列(この他のアミノ酸配列は、ヒトABri23(配列番号4)に対して高い類似性または同一性を示さなくてもよい)を含むことを意味する。
疑いを避けるために、10アミノ酸残基より短いアミノ酸配列は、本発明による単離されたタンパク質から排除されるので、関連性がないと考えられる。したがって、本発明による単離されたタンパク質は、ヒトABri23(配列番号4)に対して少なくとも所与の同一性を有する10を超えるまたはそれに等しいアミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含まない。
好ましい実施形態において、本発明による使用のための単離されたタンパク質は、ヒト由来のBri2の残基90〜236(配列番号2)に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質;およびヒト由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号5)に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質からなる群から選択される。
上に示されたとおりにBri2標的配列との1つ以上の同一性を有するコアアミノ酸配列を含むタンパク質は、コアアミノ酸配列の機能、すなわち、AβおよびABri/ADanタンパク質との相互作用に干渉しない追加のアミノ酸配列をさらに含んでもよい。追加のアミノ酸配列は、コアアミノ酸配列のN−末端に、コアアミノ酸配列のC−末端に、または両方に連結されていてもよい。それは、アミノ酸側鎖を介して、例えば、ジスルフィド結合を介して連結されていてもよい。追加のアミノ酸配列は、本質的に非機能性であっても、得られるタンパク質に追加の機能性、例えば、溶解性、安定性または所望の親和性を与えてもよい。コアアミノ酸配列および任意の追加のアミノ酸配列の両方は、翻訳後化学修飾を含めて、化学修飾されていてもよい。
一実施形態において、本発明による単離されたタンパク質は、上に示された同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質の群から選択される。すなわち、単離されたタンパク質は、上に示されたとおりのBri2標的配列と1つ以上の同一性を有する所望のコアアミノ酸配列からなる。コアアミノ酸配列は、翻訳後化学修飾を含めて、化学修飾されていてもよい。
ある種の実施形態において、本発明による単離されたタンパク質は、500未満もしくはそれに等しい、例えば、250未満もしくはそれに等しい、例えば、200未満もしくはそれに等しい、例えば、150未満もしくはそれに等しい、またはさらには100アミノ酸残基からなる。ある種の実施形態において、本発明による単離されたタンパク質は、80を超えるもしくはそれに等しい、例えば、90を超えるもしくはそれに等しい、例えば、100を超えるもしくはそれに等しいアミノ酸残基からなる。好ましい大きさの範囲は、80〜200アミノ酸残基、例えば、90〜150アミノ酸残基、例として、90〜100アミノ酸残基である。
組み換えヒトBri2(90〜236)はABri23に結合することが、本明細書で実験的に示される。ABri23ペプチドに結合するBri2(90〜236)の領域のどれかは知られていない。いずれの特定の理論に拘束されることも望まないが、ABri23への結合を仲介するのは、Bri2におけるBrichosドメイン(これは、Bri2(90〜236)よって包含される)であると考えられる。ABri23が、高いβ−ストランド性向を有することに留意することは興味深い。既知のBrichosドメインの1つだけ除いてすべての後に、高いβ−ストランド性向を有するC−末端ペプチドセグメントが続くので、Brichosドメインは、高いβ−ストランド性向を有するペプチドセグメントに結合し得る。完全長Bri2におけるBrichosドメインへのABri23に対応する非切断領域の結合は、遊離のABri23におけるジスルフィドの形成に比較して、ABri23における2つのCys間のジスルフィド架橋の形成を容易にする可能性が高い。そうであれば、Bri2のBrichosドメインは、同じプロタンパク質の別の部分の正確な折り畳みを促進するシャペロンとして機能する。Bri2(90〜236)の基質特異性は、気相条件下で疎水性残基から専ら構成されるトリペプチドのいずれにも結合しない点で独特である。Bri2(90〜136)が結合する3つの長いペプチドは、共通のある特定のモチーフを有する(表1を参照)。ABri23およびAβ1-40の両方は、疎水性残基を荷電残基で隣接させることによって、KFFEYNGKKFFE(配列番号15)セグメントに類似する内部セグメントを含む。
Figure 0005893614
Aβ1-40に結合するBri2(90〜236)の能力は、Bri2が、Aβへの結合およびAPPプロセシングに関与していたので、興味深い。Aβへの結合に関して、ABri23は、そのようなものとしてAβに結合し、その凝集を妨げることができることが示唆された(Kimら、J.Neurosci.28:6030〜6036頁(2008年))。エレクトロスプレー質量分析を用いる場合、ABri23とAβとの間の結合は検出できなかったが、Bri2(90〜236)は、Aβ1-40に結合することが明確に見出された。さらに、Bri2(90〜236)は、準化学量論的量でさえもAβ1-40の凝集およびフィブリル形成を減少させる。Bri2およびAβの両方は、神経組織で発現され、それらがインビボで相互作用することが可能であることが留意される。
最近、Bri2は、AβへのAPPのタンパク質分解プロセシングに影響を与えるが、Bri2は、それがAPPプロセシングに干渉し得る前に、それ自体タンパク質分解処理される必要があることがわかつた(Matsudaら、Neurobiol Aging.(2009年)、doi:10.1016/j.neurobiolaging.2009.08.005)。現行の結果は、これらの知見に対して可能な説明を与える。ABri23およびAβ1-40の両方は、Bri2(90〜236)に結合するが、明らかにABri23は、より強く結合する。いずれの特定の科学的理論にも拘束されることを望まないが、本発明者らは、Bri2において、ABri23領域がBrichosドメインに結合し、これが、Bri2とAPPとの間の相互作用を阻止することを提言する。ABri23ペプチドのタンパク質分解による放出は、APPのAβ領域への結合のために空いているBri2結合ポケットを作る。APPのAβ領域へのBri2の結合は、セクレターゼによるそのプロセシングを減少させる可能性が高い。
別の態様によれば、本発明は、治療的有効量の本発明による単離されたタンパク質およびそれらのための適切な薬学的担体を含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は、医薬品として有用である。医薬組成物は、ヒトを含む哺乳動物における、アルツハイマー病、家族性デンマーク型認知症および家族性英国型認知症からなる群から選択される状態の治療に有用である。特に、医薬組成物は、ヒトを含む哺乳動物におけるアルツハイマー病の治療に有用である。
関連した態様によれば、本発明は、ヒトを含む哺乳動物における、アルツハイマー病、家族性デンマーク型認知症および家族性英国型認知症からなる群から選択される状態の治療のための医薬品を製造するための本発明による単離されたタンパク質の使用を提供する。好ましい実施形態において、状態はアルツハイマー病である。
本発明による単離されたタンパク質は、医薬組成物中に取り入れることができる。このような組成物は、典型的には、本発明による単離されたタンパク質および適切な薬学的に許容される担体を含む。本明細書で使用される場合、「適切な薬学的担体」には、医薬投与と適合する、溶媒、分散媒、コーティング剤、等張剤および吸収遅延剤が含まれる。補助的活性化合物も組成物中に取り入れることができる。
医薬組成物は、その意図される投与経路と適合するように製剤化される。投与経路の例には、非経口(例えば、静脈内、皮内、皮下)、経口、鼻腔内(例えば、吸入)、経皮、経粘膜、くも膜下腔内、脳室内(例えば、その大槽空間中に外科的に置かれているインラインフィルター付きOmaya貯留槽シャントを用いる)、および直腸投与が含まれる。
組成物のための潜在的に有用な非経口送達系には、ゆっくり溶解するポリマー粒子、埋め込み型輸液系、およびリポソームが含まれる。非経口用途に用いられる溶液剤または懸濁液剤には、以下の成分:滅菌希釈液(注射用水など)、生食液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗菌剤(ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなど);酸化防止剤(アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなど);キレート剤(エチレンジアミン四酢酸など);緩衝剤(酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩など)および浸透圧の調整剤(塩化ナトリウムまたはデキストロースなど)が含まれる。pHは、酸または塩基、例えば、塩酸または水酸化ナトリウムによって調製され得る。非経口製剤は、ガラスもしくはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器、または複数回投与用バイアルに封入することができる。
アルツハイマー病、家族性デンマーク型認知症および家族性英国型認知症の状態の治療は、中枢神経系、優先的には脳への本発明による単離されたタンパク質の直接送達によって行うこともできる。
注射可能な使用に適した医薬組成物には、滅菌水性溶液剤(水溶性の場合)または分散液剤、および滅菌注射剤または分散液剤の即時調製のための滅菌粉末が含まれる。静脈内投与では、好適な担体には、生理学的食塩水、静菌性水、Cremophor EL(商標)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が含まれる。すべての場合に、組成物は、滅菌でなければならず、容易な注射可能性が存在する程度に流動的でなければならない。それは、製造および貯蔵の条件下で安定であるべきであり、細菌および菌類などの微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、ならびにこれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、本発明による単離されたタンパク質の粒子へのコーティング(例えば、レシチン)を用いて、分散の場合には必要な粒径の維持によっておよび界面活性剤を用いて維持され得る。微生物の作用の予防は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成され得る。多くの場合、組成物中に等張剤を含むことが好ましい。このような作用剤の例には、糖、多価アルコール(マンニトールおよびソルビトールなど)、および塩化ナトリウムが含まれる。注射可能組成物の遷延性吸収は、組成物中に吸収を遅延させる作用剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを含ませることによって生じさせ得る。
滅菌注射剤は、本発明による単離されたタンパク質を、必要に応じて上に列挙された成分の1つまたは組合せとともに適当な溶媒中必要量で取り入れ、続いてろ過滅菌することによって調製され得る。一般に、分散液剤は、本発明による単離されたタンパク質を、塩基性分散媒および上に列挙したものから必要とされる他の成分を含む滅菌ビヒクル中に取り入れることによって調製される。滅菌注射剤の調製のための滅菌粉末の場合、調製の好ましい方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、これらは、本発明による単離されたタンパク質に加えてその前もって滅菌ろ過された溶液からの追加の所望の成分からなる散剤を生成させる。
経口組成物は一般に、不活性希釈剤または食用担体を含む。経口治療投与のために、本発明による単離されたタンパク質は、賦形剤と一緒に取り込むことができ、錠剤、トローチ剤、またはカプセル剤、例えば、ゼラチンカプセル剤の形態で用いることができる。
薬学的に適合できる結合剤、および/または補助材料は、組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の成分のいずれか、または類似の性質の化合物、すなわち、結合剤(微結晶セルロース、ガムトラガカントまたはゼラチンなど);賦形剤(デンプンまたはラクトースなど);崩壊剤(アルギニン酸、Primogel、またはトウモロコシデンプンなど);滑沢剤(ステアリン酸マグネシウムまたはSterotesなど);流動促進剤(コロイド状二酸化ケイ素など);甘味剤(スクロースまたはサッカリンなど);または芳香剤(ペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ香料など)を含み得る。
吸入による投与では、化合物は、適当な噴射剤、例えば、二酸化炭素などを含む加圧容器もしくは分配器、または噴霧器からエアロゾルスプレー方式で送達される。
全身投与も、経粘膜または経皮手段によることができる。経粘膜または経皮投与では、浸透されるべきバリアに対して適切な浸透剤が製剤中に用いられる。このような浸透剤は一般に当技術分野で公知であり、例えば、経粘膜投与では、界面活性剤、胆汁塩、およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、鼻腔スプレーまたは坐薬を用いることによって行うことができる。経皮投与では、本発明による単離されたタンパク質は、当技術分野で一般に知られているように、軟膏剤、膏薬、ゲル剤、またはクリーム剤に製剤化される。
本発明による単離されたタンパク質はまた、直腸送達のために坐薬(例えば、従来の坐薬基材、例えば、ココアバターおよび他のグリセリドとともに)または保持浣腸の形態で調製され得る。
一実施形態において、本発明による単離されたタンパク質は、身体からの急速な除去に対して化合物を保護する担体、例えば、移植片およびマイクロカプセル化送達システムを含む、放出制御製剤とともに調製される。生分解性、生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルソエステル、およびポリ乳酸を用いることができる。このような製剤を調製する方法は、当業者に明らかであろう。リポソーム懸濁液(アルツハイマー病、家族性デンマーク型認知症または家族性英国型認知症に特異的に侵される細胞を、モノクローナル抗体によって標的とするリポソームを含む)も、薬学的に許容される担体として使用され得る。これらは、当業者に公知の方法によって調製され得る。
投与の容易さおよび投与量の均一性のために、経口または非経口組成物を投与単位形態として製剤化することが有利である。本明細書で使用される場合の投与単位形態は、治療される対象にとって単位投与量として好適な物理的に別個の単位を指し、各単位は、必要な薬学的担体と関連して所望の治療効果をもたらすように計算された、所定量の本発明による単離されたタンパク質を含む。
本発明による単離されたタンパク質の毒性および治療効果は、例えば、LD50(集団の50%に対して致命的な用量)およびED50(集団の50%で治療的に有効な用量)を決定するための、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定され得る。好適な動物モデル、例えば、Sturchler−Pierratら、Rev Neurosci、10:15〜24頁、1999年;Seabrookら、Neuropharmacol 38:1〜17頁、1999年;DeArmondら、Brain Pathology 5:77〜89頁、1995年;Telling、Neuropathol Appl Neurobiol 26:209〜220頁、2000年;およびPriceら、Science 282:1079〜1083頁、1998年においてアミロイドーシスについて記載されたものを使用することができる。
毒性効果と治療効果との間の用量比は、治療指数であり、LD50/ED50比として表され得る。高い治療指数を示す化合物が好ましい。毒性副作用を示す化合物が使用され得るが、侵されていない細胞への潜在的な損傷を最小にし、それによって副作用を減少させるために、侵された組織の部位にこのような化合物を標的化する送達系を設計するように注意が払われるべきである。
細胞培養アッセイおよび動物試験から得られるデータは、ヒトにおける使用のための一連の投与量を製剤化するのに使用され得る。化合物の投与量は好ましくは、ほとんどまたはまったく毒性を持たずに、ED50を含む循環濃度の範囲内にある。
投与量は、用いられる剤形および用いられる投与経路に依存してこの範囲内で変わり得る。本発明の方法で使用されるいずれの化合物についても、治療有効用量は、例えば、フィブリル形成率または細胞死率が観察される細胞培養アッセイから最初に見積もられ得る。用量は、細胞培養において決定したIC50(すなわち、症状の半最大阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環性血漿濃度範囲を得るように動物モデルで製剤化され得る。このような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用され得る。血漿中の濃度は、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定され得る。
本明細書で定義される場合、本発明による単離されたタンパク質の治療的有効量(すなわち、有効投与量)は、約0.1から100mg/kg体重、より好ましくは約1から100mg/kg体重、さらにより好ましくは約1から50mg/kg体重の範囲である。化合物は、対象に長期間にわたって、例えば、対象の生存期間にわたって投与され得る。1mg/kgから100mg/kgの投与量が通常適切であり、例えば、脳で作用するように指定される抗体の場合などである。
一部の場合では、化合物は、約1から10週間、好ましくは2から8週間、より好ましくは約3から7週間、さらにより好ましくは約4、5または6週間の間、1週間毎に1回投与され得る。化合物はまた、慢性的に投与され得る。疾患または障害の重症度、以前の治療、対象の一般的健康状態および/または年齢ならびに他の疾患の存在を含む(限定するものではない)特定の因子が、対象を有効に治療するために必要とされる投与量および時期に影響を与え得ることは、当業者にはわかる。さらに、治療的有効量の化合物による対象の治療は、単回治療を含み得る、または好ましくは一連の治療を含み得る。
ヒトAPPを発現するマウスまたはヒトへの投与のための、ヒトBri2(90〜236)およびBri2のBrichosドメインを含む、本発明による組み換え単離されたタンパク質は、いくつかの仕方で調製され得る。組み換えタンパク質は、例1で記載されるとおりに精製され得る。タンパク質が血管脳関門(BBB)を通過する可能性を増加させるために、いくつかの方法が想定される。
いくつかの主たる戦略は、BBBを経る薬物通過について明らかになってきている。それらは、受容体媒介性トランスサイトーシスによって、または例えば、グルコース、アミノ酸もしくはペプチドに対する特異的受容体を用いて内因性輸送系を使用する。ペプチドは、BBBを越えて多様な積荷を運ぶためのベクターとして特に魅力的である。多くの異なるペプチドは、エンドサイトーシスを引き起こすこと(典型的にはLDL−受容体によって)、およびBBBを越えて積荷を送達することができることが示された。これらのペプチドのいくつかは、両媒性の正に荷電した細胞浸透性ペプチド(CPP、例えば、ペネトラチン、ApoE誘導ペプチドなど)であるが、これらはまた、高用量で高毒性であり得る。SynBファミリーのような他のものも、正に荷電しているが、疎水性部分はもたない。エンドサイトーシストリガー性ペプチドの多くについての欠点は、それらが、効率的であるために、安定なα−ヘリックスを形成するために比較的大きいことを必要とし、これは、効率的な取り込みと相関するように思われることである。トランスサイトーシスによる送達の利点は、積荷が、極めて実質的かつ極めて可変であることである。飽和輸送系によってBBBを越えることが示されている特異的内因性ペプチドが、薬物送達のためのベクターとして作用する経路も、実行可能な代替案である。MIF−1(Pro−Leu−Gly、オキシトシンに由来)およびペプチドT(8残基、HIVエンベロープに由来)のような、いくつかのこの種の比較的短いペプチドは、BBBを越えて効率的に輸送されることが示されている。BBBを越える送達のための方法の説明については、de Boer AGおよびGaillard PJ、Clin Pharmacokinet.46:553〜76頁、2007年;de Boer AGおよびGaillard PJ、Annu Rev Pharmacol Toxicol.47:323〜55頁、2007年;Pardridge WM、Drug Discov Today.12:54〜61頁、2007年を参照されたい。現行の場合において、前記ペプチドまたはタンパク質は、ヒトBri2(90〜236)またはBri2のBrichosドメインと混合され得るか、または代替としてそれらは、ヒトBri2(90〜236)もしくはBri2のBrichosドメインに共有結合されて発現され得ることが想定される。
他の製剤では、ヒトBri2(90〜236)またはBri2のBrichosドメインは、BBBを越える送達のためにナノ粒子に連結され得る(Lockman PRら、Drug Dev Ind Pharm.28:1〜13頁、2002年;Tosi Gら、Expert Opin Drug Deliv.5:155〜74頁、2008年)。
脂質付加などの修飾も、タンパク質を安定化し、取り込みおよび組織浸透(例えば、脳の中へ)を高めるために用いることができる。抗体の脂質付加の方法は、Cruikshankら、J Acquired Immune Deficiency Syndromes Hum Retrovirol 14:193頁、1997年に記載されている。
本発明による単離されたタンパク質が、アルツハイマー病、家族性デンマーク型認知症または家族性英国型認知症を治療するために動物(例えば、ヒト)に投与される場合、医師、獣医師、または研究者は、例えば、最初に比較的低い用量を処方し、その後に適当な応答が得られるまで用量を増加させる。さらに、任意の特定の動物対象のための特定の用量レベルは、用いられる特定の化合物の活性、対象の年齢、体重、一般的健康状態、性別、および食事、投与時間、投与経路、排泄率、任意の薬物組合せ、ならびに調節されるべき発現または活性の程度を含む様々な因子に依存することが理解される。
本発明の医薬組成物は、投与のための説明書とともに、容器、パック、またはディスペンサー内に含めることができる。例えば、説明書は、アルツハイマー病、家族性デンマーク型認知症または家族性英国型認知症を有するまたはこれらの危険がある個体を治療する組成物の使用法を含むことができる。
別の態様によれば、本発明は、それを必要としているヒトを含む哺乳動物のアルツハイマー病、家族性デンマーク型認知症または家族性英国型認知症を治療する方法であって、治療的有効量の本発明による単離されたタンパク質または本発明による医薬組成物を前記哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。
特定の実施形態において、治療は、予防的治療であってもよい。他の特定の実施形態において、治療は、緩和的治療であってもよい。ある特定の実施形態において、治療は治癒的治療であってもよい。
本発明は、アルツハイマー病、家族性デンマーク型認知症または家族性英国型認知症の危険がある(またはこれらに影響を受けている)対象を治療する予防および治療方法の両方を提供する。本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、本発明による単離されたタンパク質の患者への適用もしくは投与、あるいはアルツハイマー病、家族性デンマーク型認知症もしくは家族性英国型認知症、疾患の症状または疾患にかかりやすい素因を有する患者由来の単離組織または細胞系への本発明による単離されたタンパク質の適用または投与と定義され、その疾患、疾患の症状または疾患にかかりやすい素因を治療し(cure)、治癒し(heal)、緩和し(alleviate)、軽減し(relieve)、変化させ(alter)、治療し(remedy)、改善し(ameliorate)、改善し(improve)、またはそれらに影響を与える(affect)目的を有する。
一態様において、本発明は、ポリペプチドの凝集を減少させる本発明による単離されたタンパク質を対象に投与することによって、Aβペプチドおよび/またはABri/ADanペプチドによって生じるフィブリル形成に関連する疾患または状態を予防する(すなわち、疾患もしくは状態にかかるリスクを低下させる、またはそれに関連している症状が現れる率を低下させる)方法を提供する。アルツハイマー病、家族性デンマーク型認知症または家族性英国型認知症の危険がある対象は、例えば、当技術分野で公知の適当な診断または予後アッセイのいずれかまたは組合せによって同定され得る。予防薬の投与は、疾患が予防される、または代替として、その進行を遅延させるように、疾患の特徴を示す症状の顕在化の前に行われ得る。
本発明による単離されたタンパク質は、アルツハイマー病、家族性デンマーク型認知症または家族性英国型認知症に関連するフィブリル形成を含む障害を予防、治療または改善するために、治療有効用量で患者に投与され得る。治療有効用量は、障害の症状の改善をもたらすのに十分な化合物のその量を指す。このような化合物の毒性および治療効力は、上記のとおりの標準的な薬学的手順により決定され得る。
本発明によるタンパク質は、遺伝子治療によって、例えば、神経系、好ましくは脳における細胞を、単離されたタンパク質が中枢神経系におけるこれらの細胞により発現されるように、トランスフェクトするために発現ベクター、プラスミドまたはウイルスを用いることによって投与され得ることも企図される。これは、アルツハイマー病、家族性デンマーク型認知症または家族性英国型認知症の治療に有用である。
本発明は、これから以下の非限定的な例によってさらに例証される。
例1-組み換えBri2(90〜236)の発現および精製
ヒトBri2残基90〜236(配列番号2)に対応するcDNAを、フォワードプライマー5’−GGTGCCATGGGAATA−3’(配列番号13)およびリバースプライマー5’−CTCTAGAGGATCCCT−3’(配列番号14)(両方ともDNA technology AIS、Aarhus、Danmark製)を用いて、PCR ready human brain cDNA library(Ambion)から増幅した。BamH1およびNco1による消化後、増幅したcDNAを、溶解性の増加およびアフィニティークロマトグラフィーによる精製の容易化のために、挿入物の上流にHis6−、チオレドキシン−、およびS−タグをコードするpET−32cベクター(Novagen、Madison、WI)中にサブクローンした。大腸菌(E.coli)株Origami(DE3)pLysS(Novagen、Madison、WI)に形質転換後、選択した細菌コロニーを、100μg/mlのアンピシリンを含むLuria−Bertani(LB)培地中30℃で、OD600が0.8に達するまで16時間培養した。次いで、0.25mMのイソプロピルチオガラクトシド(IPTG)を加えることによって、タンパク質発現を誘導し、細胞を25℃で6時間放置した。次いで、細胞を、5000〜6000gで20分間遠心分離にかけることにより採取し、5mMのイミダゾールを含有する20mMのリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.0に再懸濁させ、使用まで−80℃で保存した。
細菌ペレットを超音波で分解し、次いで、6000gで30分間遠心分離にかけた。上清を0.2μmのフィルターを通してろ過し、5mMのイミダゾールを含む20mMのリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.0中で平衡化させた3mlのニッケル−ニトロ三酢酸−アガロース(Qiagen Ltd.、West Sussex、英国)カラムに適用した。溶出液の280nmでのODがほとんどゼロになるまで、カラムを5〜50mMのイミダゾールで洗浄した。次いで、融合タンパク質を同じ緩衝液中100mMのイミダゾールで溶出させ、収集し、20mMのリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.0に対して透析した。His6−およびチオレドキシンのタグを、酵素/タンパク質の重量比0.002で、トロンビン(ウシ血漿由来、Merck、独国)による切断によって除去し、20℃で2時間インキュベートし、Ni−カラム上をもう一度通過させることによって除去した。溶出した標的タンパク質を、SDS−PAGE、天然ゲル電気泳動、および円偏光二色性(CD)分光法により分析した。J−820分光測光器(Jasco、日本国)、2mMのリン酸緩衝液(pH7.0)中25μMのタンパク質濃度および0.1cmの光路長を用いて、遠紫外CD分光法を行った。
Bri2位置90〜236(配列番号2)に対応する断片は、大腸菌中ヘキサヒスチジン、チオレドキシンおよびS−タグと一緒に可溶性融合タンパク質として発現させ、固定化金属アフィニティークロマトグラフィーにより精製した。トロンビンによる切断およびアフィニティーおよび溶解性タグの除去後、SDSおよび天然ゲル電気泳動により分析して、1リットルの細菌培養物当たり、>90%の純度の約30mgのSタグ付きBri2(90〜236)を得た(図3)。
図3は、組み換え発現されたBri2(90〜236)のジチオトレイトール(DTT)による還元有り(+)および還元なし(−)のSDS−PAGE(A)ならびに天然ゲル電気泳動を示す。図3に示すように、非還元Bri2(90〜236)の分析は、タンパク質の主要分画が、モノマーであり、マルチポリマー型は、還元(+)により除去できることを示す。これは、Bri2(90〜236)の2個のCys残基が、分子内ジスルフィド結合を優先的に形成することを示唆する。Bri2(90〜236)のCDスペクトル(図4)は、タンパク質が、主にα−ヘリックス/無秩序構造に折り畳まれていることを示す。これは、同じ領域の予期された二次構造と十分に一致しており、このことは、主に不規則な構造ならびにα−ヘリックスおよびβ−シートのほぼ等しい含有量を示唆する。図4では、平均モル残留軸比(residual ellipticity)(θ)は、kdeg×cm2/dmolと表される。
例2-ESI−MSにより調べたBri2(90〜236)へのペプチドの結合
エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)の前に、3kDaカットオフ限界を有するスピンカラム(Nanosep,Pall Corp.、East Hills、NY、米国)を用いて、精製Bri2(90〜236)(配列番号2)を10mMの酢酸アンモニウム、pH7.0中に再緩衝させた。タンパク質およびペプチドを、最終タンパク質濃度20μmおよび最終ペプチド濃度50μMで、分析前に22℃で直接混合した。正イオンモードで動作させるZ−スプレー発生源を備えたQTOF Ultima API質量分析計(Waters、Milford、MA、米国)を用いて、データを取得した。ナノエレクトロスプレーによって金属めっきホウケイ酸ガラスキャピラリー針(Proxeon、Denmark)を用いて試料を導入した。発生源温度は80℃、キャピラリー電圧は1.7kV、コーンおよびRFレンズ1電位は、それぞれ、100および38Vであった。質量分析計を、10000解像度(半値全幅解像度)で、シングルリフレクターモードで動作させ、質量スケールを、ミオグロビンを用いて較正した。スキャンは、500と4000m/zの間で2秒当たり1スキャンの速度で得た。衝突気体は、5.2×10-5ミリバールのアルゴンであった。質量スペクトルは、Waters MassLynxソフトウェアを用いて平滑化した。
ペプチドのすべては、KFFEYNGKKFFE(配列番号15)、ABri23(配列番号4)およびAβ1-40(配列番号11)を除いて、Thermo Electron(Darmstadt、独国)から購入した。KFFEYNGKKFFEは、Interactiva(Ulm、独国)から購入し、Aβ1-40およびジスルフィド連結ABri23は、Bachem(Bubendorf、スイス国)から購入した。
ペプチドは、KFFEYNGKKFFE、ABri23およびAβ1-40を除いて、N−末端でアセチル化し、C−末端でアミド化した。ペプチドのすべての組成物は、ESI−MSおよびアミノ酸分析により検証した。ペプチドYYYは、30%アセトニトリル中10mMの最終濃度に溶解させた。VVV、FFFおよびLLLは、最終濃度10mMに50%イソプロパノール中に溶解させた。KKK、GGGおよびAAAは、最終濃度10mMに水中に溶解させたが、KFFEYNGKKFFEおよびABri23は、それぞれ、水中5.6mMおよび1mMの最終濃度に溶解させた。ペプチド試料のすべては、分析前に直接水中1mMの最終濃度に溶解させたAβ1-40を除いて、−20℃で保存した。
ESI−MS結合実験を行って、Bri2(90〜236)が、ペプチドABri23およびAβ1-40に結合し得るかどうか調べた。このために、Bri2(90〜236)を、20μMのBri2(90〜236)および50μMの各ペプチドの最終濃度に、ABri23、Aβ1-40、またはABri23とAβ1-40との等モル混合物と混合し、ESI−MSにより分析した。気相中のタンパク質−ペプチド複合体の存在および化学量論を調べるために、質量スペクトルを記録した。
ペプチドなしの20μMの組み換えBri2(90〜236)のESI−MSスペクトルは、m/z2040.6、2267.3、および2550.6で一連のピークを示し、20397±2Daの分子質量を有するタンパク質からのモノマー型の荷電状態[M+10H]10+、[M+9H]9+および[M+8H]8+を示した(図5A)。
Bri2(90〜236)タンパク質(20μM)への酸化ABri23(50μM;理論質量:2627.9Da)の2.5倍モル過剰の添加は、[M+10H]10+および[M+9H]9+Bri2(90〜236)ピークのm/z2303.4およびm/z2559.4へのほぼ完全なシフトをもたらし、それぞれ、10または9の電荷で除した、23028.4Daの計算モノアイソトピック質量を有する、1:1Bri2(90〜236)/ABri23複合体の質量に対応する(図5B)。組み換えBri2(90〜236)およびABri23のヘテロマーは、10、9および8の電荷で認められた。少量の遊離の組み換えBri2(90〜236)のみが、対応する[M+10H]10+、[M+9H]9+および[M+8H]8+荷電状態について認められ、ESI−MS条件下で組み換えBri2(90〜236)のABri23によるほぼ完全な飽和を示した。Bri2(90〜236)/ABri23複合体の正確な帰属は、m/z2303.4イオンの衝突誘導解離によって検証され、40eVを超える衝突電圧で、8、9および10の電荷を有するBri2(90〜236)と1または2の電荷を有するABri23に解離することがわかった。
同様に、Bri2(90〜236)タンパク質(20μM)への新たに溶解したAβ1-40(50μM;理論質量4328.8Da)の2.5倍過剰の添加は、それぞれ、9および10の電荷を有するBri2(90〜236)およびAβ1-40の1:1の複合体に対応する、m/z2750.0およびm/z2475.0でのピークの出現をもたらした(図5C)。少量の組み換えBri2(90〜236)/Aβ1-40複合体のみが、[M+10H]10+および[M+9H]9+の電荷状態について認められた。Bri2(90〜236)/ABri23複合体では、m/z2475.0イオンの衝突誘導解離は、9および10の電荷を有するBri2(90〜236)、ならびに3の電荷を有するAβ1-40への複合体の解離をもたらした(データを示さず)。
ABri23の添加は、Bri2(90〜236)のABri23によるほぼ完全な飽和をもたらしたが、同じタンパク質/ペプチド比でのAβ1-40の添加は、Aβ1-40との複合体中、単に少数のBri2(90〜236)の形成をもたらしただけであった(図5BおよびC)。等モル量で存在する両方のペプチドによる競合実験はこの観察結果を支持し、Bri2(90〜236)/ABri23複合体の目に見える形成があったが、Bri2(90〜236)/Aβ1-40複合体に対応するシグナルは単に微小なものであった(図5D)。図5Dは、50μMのAβ1-40およびABri23の存在下での20μMの組み換えBri2(90〜236)のESI−MSスペクトルを示す。ほとんどすべての検出可能な組み換えBri2(90〜236)は、ABri23と複合体化されているにもかかわらず、Aβ1-40との複合体中組み換えBri2(90〜236)に対応する小ピークを、[M+10H]10+電荷状態について認めることができる。これは、Bri2(90〜236)が、ABri23に優先的に結合すること、またはBri2(90〜236)/ABri23複合体が、質量分光法に使用された条件下でより安定であることを示唆する。
Bri2(90〜236)の基質特異性をさらに調べるために、芳香族(YYY、FFF)、疎水性(VVV、LLL)、荷電(KKK)または小さい非荷電(AAA、GGG)の側鎖を有するホモトリペプチドを用いて、水溶解性の維持下で、結合を試験した。図6は、50μMの種々のペプチドの存在下での20μMの組み換えBri2(90〜236)のESI−MSスペクトルを示す。ペプチド配列は、それぞれのスペクトルにおいて示す。記号*および**は、それぞれ、1つまたは2つのペプチドリガンドを有する組み換えBri2(90〜236)に対応するピークを示す。ペプチド/タンパク質比2.5でFFF、VVV、LLL、KKK、AAA、またはGGGについて相互作用は認められなかった。YYYおよびKFFEYNGKKFFEのみが、ESI−MS条件下で組み換えBri2(90〜236)と複合体を形成することがわかった。YYYの場合、Bri2(90〜236)と1つまたは2つのYYY分子との複合体に対応するピークが認められ(図6)、Bri2(90〜236)が、気相中このトリペプチドと相互作用することができることを示す。Bri2(90〜236)は、ペプチドKFFENYGKKFFEにも結合する(図6)。
例3-Aβ 1-40 の凝集およびフィブリル形成に対するBri2(90〜233)の効果
25μMのAβ1-40(配列番号11)を、1:1、2:1、または10:1のAβ/Bri2(90〜236)モル比で、200rpmの撹拌とともに、20mMのリン酸塩緩衝液、pH7.0中組み換えBri2(90〜236)(配列番号2)と一緒にまたはそれなしで37℃で48時間インキュベートした。Aβ1-40を250μMの原液に100%DMSOで溶解させ、これを、作業濃度に希釈した。チオフラビン(ThT)蛍光測定では、10μlのアリコートを異なる時点で取り出し、10μMのThT(Aldrich)を加え、FarCyte蛍光プレートリーダー(GE Healthcare)(発光波長は、480nm、励起波長は440nmである)によって測定した。ThTの測定は、二通りで行った。
可溶性Aβ1-40およびAβ凝集体の超構造の分析では、アリコートを取り出し、3300gで9分間遠心分離にかけた。上清をSDS−PAGEにより分析し、ペレットを200μlの蒸留水に再懸濁させ、2μlの懸濁液を200メッシュ銅製電子顕微鏡グリッド上に加え、2%酢酸ウラニルで30秒間染色し、次いで、放置して、20℃で乾燥させた。75kVで動作させたHitachi H7100顕微鏡を、検査および写真撮影に用いた。
Bri2(90〜236)の不存在下で、ThT蛍光により判断して、Aβ1-40は、7時間後β−シート豊富の凝集体を形成し始める。しかし、Bri2(90〜236)と一緒にインキュベートした場合、Aβ1-40/Bri2(90〜236)比と無関係に、試験した24時間内で、ThTの正の凝集体は見られなかった。図7は、単独(実線)でのならびに組み換えBri(90〜236)と1:1、2:1、および10:1の比で混合した(点線および破線)Aβ1-40のThT蛍光を示す。
同様に、Bri2(90〜236)と一緒の共インキュベーションは、3300gでの遠心分離により得た上清のSDS−PAGEにより判断して、インキュベーション3週間後でさえも、溶液中に留まっているAβ1-40をもたらした。図8は、時間ゼロ(左側ゲル)で、ならびに単独での(レーン1)、または1:1、2:1、および10:1の比で組み換えBri2(90〜236)と混合した(レーン2〜4)25μMのAβ1-40の37℃でインキュベーション5日後(右側ゲル)に得た上清のSDS−PAGEを示す。
5日後に形成されたペレットの電子顕微鏡検査は、Aβ1-40がアミロイド様フィブリルを形成したこと、およびBri2(90〜236)と一緒の共インキュベーションが、より低い量のフィブリルを生じることを示した。図9は、単独で(A)または組み換えBri2(90〜236)と1:1モル比で5日間(B)インキュベートしたAβ1-40の出現を示す。単独でインキュベートした組み換えBri2(90〜236)も示す(C)。スケールバーは、Aにおいて100μm、BおよびCにおいて50μmを表す。
例4-Aβ 1-40 およびAβ 1-42 のフィブリル形成に対するBri2(90〜236)の効果
Aβ1-40(配列番号11)およびAβ1-42(配列番号12)を、合成遺伝子から大腸菌中で発現させ、非常に純粋なモノマーペプチドをもたらす、Walshら、FEBS J.2009年、276、1266〜1281頁に記載されたとおりにイオン交換工程およびサイズ排除工程を用いてバッチ形式で精製した。精製したペプチドを20〜30の同一のアリコートに分割し、凍結した。次いで、凍結および解凍の間に形成される微量の凝集体を除去し、緩衝液をそれぞれの実験で用いるものに交換するために以下に記載されるそれぞれの実験を始める直前に、モノマーを精製ペプチドのアリコートのゲルろ過により単離した。モノマーを、氷上で低結合Epチューブ(Axygene)に収集し、濃度を吸光度または酸加水分解後のアミノ酸分析により決定した。モノマーは、そのままで、またはそれぞれの実験のための所望の濃度に希釈して用いた。Bri2(90〜236)(配列番号2)は、例1に記載したとおりに発現させ、精製した。
凝集動態は、プレートリーダー(BMG Labtech、Offenberg、独国製FluoStar Omega)で時間の関数としてチオフラビンT(ThT)の蛍光強度を記録することによって試験した。蛍光は、440nm励起フィルターおよび480nm発光フィルターを用いて透明底を備えた96ウェルハーフエリアPEGコート黒色ポリスチレンプレート(Corning3881)において底部光学(bottom optics)を用いて記録した。Aβモノマーは、20mMのNa−リン酸塩、200μMのEDTA、0.02%のNaN3(Aβ1-40の場合はpH7.4およびAβ1-42の場合はpH8.0で)、ならびに同じ緩衝液中Aβ1-40の場合は6または8μM、およびAβ1-42の場合は3μMに希釈して、2mMの原液から20μMのThTを補充して、上記のとおりにゲルろ過により単離した。
96ウェルプレート中それぞれのウェルに、緩衝液(20mMのTris/HCl pH7.4)10μlまたは20mMのTris/HCl pH7.4中所望の最終濃度の10倍の濃度のBri2(90〜236)タンパク質もしくは対照タンパク質10μlのいずれかを加えた。次いで、それぞれのウェルに、90μlの氷冷Aβモノマー溶液を加え、プレートを37℃でプレートリーダー中に直ちに置き、読み取りの間に100rpmで連続的に振とうしながら、6分毎に蛍光を読み取った。
Aβ1-40は、単独で、または60nMから6μMの範囲の濃度でBri2(90〜236)と一緒に試験した。Aβ1-42は、単独でまたは20nMから6μMの範囲の濃度でBri2(90〜236)と一緒に試験した。
ThTは、Aβ単独または異なる濃度のBri2(90〜236)タンパク質と一緒のAβについて時間の関数としてThT蛍光をモニターする動態実験においてフィブリル形成に対するレポータとして用いた。単独でのおよび0.01または0.03モル当量のBri2(90〜236)と一緒のAβ1-40についての凝集動態の例は、それぞれ、図10A〜Cに示す。明らかに、Aβ1-40凝集についてのラグタイムは、Bri2(90〜236)の存在下で広範囲に増加するが、伸長速度は、大きくは影響を受けていない。ラグタイムに対する非常に大きな効果が、Aβ1-40に対してBri2(90〜236)の等モル濃度よりはるかに低い濃度で認められる。凝集過程の中間時点、t1/2は、データにシグモイド関数を適合させることによってそれぞれの動態追跡から得た。ハーフタイムは、6μMのAβ1-40単独について9.0±0.6時間から、60nMのBri2(90〜236)と一緒の6μMのAβについて14.2±0.2に増加した。170nMのBri2(90〜236)の存在下で、ハーフタイムは、40.5±2.0時間に約4.5倍延長した。遅延効果は、Bri2−Brichos濃度が増加するとともに、増加し、0.1のモル比(10のAβ1-40分子当たり1のBri2(90〜236))を超えると、ラグタイムは、1週間を超え、実際に定量するのが困難になる。
単独でのならびに0.05および0.1モル当量のBri2(90〜236)と一緒のAβ1-42についてのThT蛍光による動態追跡の例は、それぞれ、図10D〜Fに示す。Bri2(90〜236)は、Bri2(90〜236)タンパク質の等モル量未満の量でAβ1-42の凝集を遅延させる。モル比0.1(10のAβ1-42当たり1のBri2(90〜236))で、ラグタイムおよびハーフタイムは、不かく乱の場合(undisturbed case)と比較して倍加するが、伸長速度は、すべての場合で同様である。強い効果がAβ1-42凝集動態について見られるが、Aβ1-40の凝集に対するのと同じ効果を発揮するために、より高い濃度のBri2(90〜236)タンパク質が必要とされることは明らかである。
3つのタンパク質(抗トロンビン、シスタチンおよび単鎖モネリン変異体)の存在下で
Aβ1-40およびAβ1-42の凝集動態を試験するために、対照実験を準備した。それぞれの対照タンパク質を、Aβ1-40およびAβ1-42に対して0.1および1モル当量で加え、凝集の後にThTアッセイを続けた。すべての場合に、Aβ凝集について認められた効果は、Bri2(90〜236)の同量について見られるものに比較して、小さかった(データを示さず)。
8μMのAβ1-40の凝集は、100rpmの振とうとともに37℃、20mMのNa−リン酸塩、200μMのEDTA、20μMのThT、0.02%のNaN3中時間の関数としてThT蛍光強度を記録することによってモニターした。実験の開始前または実験の開始後0.3から11.2時間の範囲の異なる時点で、濃縮原液から800nMのBri2(90〜236)を加えた。明らかに、ラグタイムの間のどこかで加える場合も、Bri2(90〜236)タンパク質によって凝集過程は遅延させることができる。Bri2(90〜236)がシグモイド遷移の早期部分の間に加えられる場合、その過程は、ThTの正の凝集がさらに成長することなく停止するように見える。遷移の中間点に近く加えられる場合、Bri2(90〜236)タンパク質は、その過程がその速度を減少し、より低い率で進行するようにさせる。遷移の終了時に加える場合、効果は見られない。
以下に、本願の出願当初の請求項を実施の態様として付記する。
[1] ヒト由来のBri2の残基90〜236(配列番号2)、および、ヒト由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号5)、チンパンジー由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号6)、ウシ由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号7)、ブタ由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号8)、マウス由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号9)およびラット由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号10)からなるタンパク質の群から選択される単離されたタンパク質。
[2] ヒト由来のBri2の残基90〜236(配列番号2)およびヒト由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号5)からなるタンパク質の群から選択される、[1]に記載の単離されたタンパク質。
[3] ヒト由来のBri2の残基90〜236(配列番号2)からなる、[2]に記載の単離されたタンパク質。
[4] ヒト由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号5)からなる、[2]に記載の単離されたタンパク質。
[5] 医薬品として使用するための、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の単離されたタンパク質。
[6] ヒトを含む哺乳動物における、アルツハイマー病、家族性デンマーク型認知症および家族性英国型認知症からなる群から選択される状態の治療において使用するための、[5]に記載の単離されたタンパク質。
[7] 前記状態がアルツハイマー病である、[6]に記載の単離されたタンパク質。
[8] ヒトを含む哺乳動物における、アルツハイマー病、家族性デンマーク型認知症および家族性英国型認知症からなる群から選択される状態の治療のための医薬品を製造するための、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の単離されたタンパク質の使用。
[9] 前記状態がアルツハイマー病である、[8]に記載の使用。
[10] 治療的有効量の[1]〜[4]のいずれか一項に記載の単離されたタンパク質およびそれらのための適切な薬学的担体を含む医薬組成物。
[11] 医薬品として使用するための、[10]に記載の医薬組成物。
[12] ヒトを含む哺乳動物における、アルツハイマー病、家族性デンマーク型認知症および家族性英国型認知症からなる群から選択される状態の治療において使用するための、[11]に記載の医薬組成物。
[13] 前記状態がアルツハイマー病である、[12]に記載の使用のための医薬組成物。
[14] ヒトを含む哺乳動物における、アルツハイマー病、家族性デンマーク型認知症および家族性英国型認知症からなる群から選択される状態の治療において使用するための、ヒト由来のBri2の残基90〜236(配列番号2)に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質;および、ヒト由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号5)、チンパンジー由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号6)、ウシ由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号7)、ブタ由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号8)、マウス由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号9)およびラット由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号10)のいずれか1つに対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質(但し、前記タンパク質は、ヒト由来のBri2の残基1〜89(配列番号3)に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでおらず、前記タンパク質は、ヒトABri23(配列番号4)に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでいない)からなる群から選択される単離されたタンパク質。
[15] ヒト由来のBri2の残基90〜236(配列番号2)に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質;およびヒト由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号5)に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質からなる群から選択される、[14]に記載の使用のための単離されたタンパク質。
[16] ヒト由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号5)、チンパンジー由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号6)、ウシ由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号7)、ブタ由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号8)、マウス由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号9)およびラット由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号10)のいずれか1つに対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質からなる群から選択される、[14]〜[15]の何れか一項に記載の使用のための単離されたタンパク質。
[17] ヒト由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号5)、チンパンジー由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号6)、ウシ由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号7)、ブタ由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号8)、マウス由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号9)およびラット由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号10)のいずれか1つを含むタンパク質からなる群から選択される、[16]に記載の使用のための単離されたタンパク質。
[18] 200個以下のアミノ酸残基からなる、[14]〜[17]のいずれか一項に記載の使用のための単離されたタンパク質。
[19] 150個以下のアミノ酸残基からなる、[18]に記載の使用のための単離されたタンパク質。
[20] 90以上のアミノ酸残基からなる、[14]〜[19]のいずれか一項に記載の使用のための単離されたタンパク質。
[21] 前記状態がアルツハイマー病である、[14]〜[20]のいずれか一項に記載の使用のための単離されたタンパク質。
[22] ヒトを含む哺乳動物における、アルツハイマー病、家族性デンマーク型認知症および家族性英国型認知症からなる群から選択される状態の治療のための医薬品を製造するための、[14]〜[20]のいずれか一項に記載の単離されたタンパク質の使用。
[23] 前記状態がアルツハイマー病である、[22]に記載の使用。
[24] ヒトを含む哺乳動物における、アルツハイマー病、家族性デンマーク型認知症および家族性英国型認知症からなる群から選択される状態の治療において使用するための、治療的有効量の[14]〜[20]のいずれか一項に記載の単離されたタンパク質およびそれらのための適切な薬学的担体を含む医薬組成物。
[25] 前記状態がアルツハイマー病である、[24]に記載の医薬組成物。
[26] 治療を必要としている、ヒトを含む哺乳動物における、アルツハイマー病、家族性デンマーク型認知症および家族性英国型認知症からなる群から選択される状態を治療する方法であって、治療的有効量の[1]〜[4]および[14]〜[20]のいずれか一項に記載の単離されたタンパク質または[10]および[24]のいずれか一項に記載の医薬組成物を、前記哺乳動物に投与することを含む方法。
[27] 前記状態がアルツハイマー病である、[26]に記載の方法。
[28] 前記治療が、予防的、緩和的および治癒的治療からなる群から選択される、[26]および[27]の何れか一項に記載の方法。
Bri2(配列番号1)プロセシングの概略図を示す図。 一部の哺乳動物のBri2−Brichosアミノ酸配列(配列番号5〜10)のアライメントを示す図。 ジチオトレイトール(DTT)による還元を伴った(+)および伴わない(−)SDS−PAGE(A)ならびに組み換え発現されたBri2(90〜236)(配列番号2)の天然ゲル電気泳動(B)を示す図。 組み換えBri2(90〜236)(配列番号2)のCDスペクトルを示す図。 単独(A)およびABri23(配列番号4)の存在下(B)での組み換えBri2(90〜236)(配列番号2)、Aβ1-40(配列番号11)(C)、ならびにABri23およびAβ1-40の両方(D)のESI−MSスペクトルを示す図。 配列番号15を含む、様々なペプチドの存在下での組み換えBri2(90〜236)(配列番号2)のESI−MSスペクトルを示す図。 単独(実線)でのおよび異なる比で組み換えBri2(90〜236)(配列番号2)と混合した(点線および破線)Aβ1-40(配列番号11)のチオフラビンT(ThT)蛍光を示す図。 単独(レーン1)および異なる比で組み換えBri2(90〜236)(配列番号2)と混合した(レーン2〜4)Aβ1-40(配列番号11)の異なる時点で得られた上清のSDS−PAGEを示す図。 Aβ1-40(配列番号11)、組み換えBri2(90〜236)(配列番号2)(C)、またはモル比1:1で5日間のAβ1-40とBri2(90〜236)との組合せ(B)の電子顕微鏡的外観を示す図。 チオフラビンT(ThT)蛍光アッセイにおけるAβ1-40(配列番号11)(A〜C)およびAβ1-42(配列番号12)(D〜F)のフィブリル形成に対するBri2(90〜236)(配列番号2)の効果を示す図。

Claims (10)

  1. ヒト由来のBri2の残基90〜236(配列番号2)、および、ヒト由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号5)、チンパンジー由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号6)、ウシ由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号7)、ブタ由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号8)、マウス由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号9)およびラット由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号10)からなるタンパク質の群から選択される単離されたタンパク質。
  2. ヒト由来のBri2の残基90〜236(配列番号2)およびヒト由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号5)からなるタンパク質の群から選択される、請求項1に記載の単離されたタンパク質。
  3. ヒト由来のBri2の残基90〜236(配列番号2)からなる、請求項2に記載の単離されたタンパク質。
  4. ヒト由来のBri2のBrichosドメイン(配列番号5)からなる、請求項2に記載の単離されたタンパク質。
  5. ヒトを含む哺乳動物における、アルツハイマー病、家族性デンマーク型認知症および家族性英国型認知症からなる群から選択される状態の治療のための医薬品を製造するための、請求項1〜4のいずれか一項に記載の単離されたタンパク質の使用。
  6. 前記状態がアルツハイマー病である、請求項5に記載の使用。
  7. 治療的有効量の請求項1〜4のいずれか一項に記載の単離されたタンパク質およびそれらのための適切な薬学的担体を含む医薬組成物。
  8. 医薬品として使用するための、請求項7に記載の医薬組成物。
  9. ヒトを含む哺乳動物における、アルツハイマー病、家族性デンマーク型認知症および家族性英国型認知症からなる群から選択される状態の治療において使用するための、請求項8に記載の医薬組成物。
  10. 前記状態がアルツハイマー病である、請求項9に記載の使用のための医薬組成物。
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