JP5889283B2 - シート状の膵島の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、低酸素条件に耐性のあるシート状の膵島の製造方法、膵島培養物、及びシート状の膵島を製造するためのキットに関する。
膵島を利用した細胞ベースの療法が、インスリン依存型糖尿病(DM)を治療するための有望な新たなアプローチとして開発されてきている。膵臓の全臓器移植と比較して、膵島細胞ベースの治療は、侵襲が最小限であり、治療に引き続く病院での滞在期間が短くて済む点で有利である。最近の国際的な臨床試験において、膵島細胞を移植されて1年後のDM患者の44%が、成功裏にインスリン産生を回復し、血糖プロファイルを安定に維持したことが報告されている。しかしながら、移植から2年後において、移植した膵島細胞の生存率が14%にまで大幅に低下してしまった。従って、DMのための膵島ベースの療法を前進させるためには、移植した細胞系の寿命延長を最大化させる条件を最適化する必要があることは明らかである。そこで、移植に供する膵島の機能や生存率を上げるための様々な培養方法が検討されている。
従来の一般的な膵島のインビトロ培養法においては、生体より採取した膵島内の細胞は、生体内で行われていた酸素供給システムを喪失し、凝集塊の形態のまま維持されることで、十分な酸素供給を受けられずに、膵島機能の消失を招く。
上記課題を解決するために、膵島細胞のシートを皮下に移植する技術が開発されている(非特許文献1)。この技術においては、単離した膵島をトリプシン−EDTAで処理することにより、膵島細胞をシングルセルの状態にまで分散させ、得られた膵島細胞をラミニン−5でコートしたプレート上に播く。そして、細胞がコンフルエントに達した後で、培養温度を20℃に20分間下げることにより、膵島細胞を、均一に広がった組織シートとして回収することができる。
一方、E−カドヘリン(E−cad)は、Ca2+依存的な細胞−細胞接着分子であり(非特許文献2、3)、マウス胚性幹細胞(ES細胞)の細胞間接着や、コロニー形成に必須である(非特許文献4、5)。
E−カドヘリンの細胞外ドメイン及びIgG Fcドメインからなる融合タンパク質(非特許文献6)でコートしたディッシュ上で、マウスやヒトのES細胞を成功裏に維持できることが報告されている(特許文献1、非特許文献7、8、9)。E−cad−Fc融合タンパク質でコートした培養皿上では、マウスES細胞はコロニーを形成しないが、多能性を維持し、生殖系列有能キメラマウスを創生することができる(非特許文献7、8)。これらのES細胞の通常の培養法では、シングルセル化したES細胞を添加すると培養皿上で細胞同士が接着し、凝集塊を形成する一方で、E−cad−Fc融合タンパク質でコートした培養皿上では、シングルセル化したES細胞のまま培養することが可能となる。また、マウスE−cad−Fc融合タンパク質でコートした培養皿上でマウスES細胞を肝臓の細胞へ分化させたことが報告されている(非特許文献10)。
国際公開第2005/090557号
Biomaterials, vol.30, pp.5943-5949, 2009 Curr Opin Cell Biol, vol.7, pp.619-627, 1995 The Journal of Cell Biology, vol.148, p.399-404, 2000 Development, vol.122, pp.3185-3194, 1996 Stem Cells, vol.22, pp.275-282, 2004 Protein Engineering, vol.6, no.4, pp.243-245, 2003 PLos ONE, issue 1, e15, 2006 The Journal of Biological Chemistry, vol.283, no.39, pp.26468-26476, 2008 BMC Developmental Biology, vol.10, 60, 2010 Biomaterials, vol.32, no.8, pp.2032-2042, 2011 Cell Transplant., vol.18, no.5, pp.541-547, 2009
従来、膵島を平面化し、シート状の膵島を調製する場合には、物理的な要請から、膵島をトリプシン−EDTAによりシングルセルにまで酵素処理することが必須であった。しかしながら、膵島はトリプシンの影響によってグルコース応答性が顕著に低下してしまうという問題点があることが報告されており(非特許文献11)、この方法では得られたシート状の膵島の糖応答性が低下してしまうことが考えられる。
本発明は、グルコース応答性の低下という問題点を解消し、低酸素条件に耐性をもつシート状の膵島を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するべく、まず、膵島をトリプシン処理せずに、塊のまま非処理プレート上で培養した。しかしながら、膵島は、凝集塊の形態のまま、シート状の構造をとらなかった。更に、この培養方法では、生体内では存在した膵島内細胞への酸素供給システムを喪失していることから、低酸素条件で細胞死が誘導されやすいと考えられた。そこで低酸素条件に耐性があるシート状の構造が好ましい。しかし通常のトリプシン−EDTA処理を行いシングルセル化してシート状の膵島を作成すると、グルコース応答性の機能を制御している細胞−細胞間接着を喪失するためにグルコース応答機能が著しく低下してしまうと考えられる。そこで培養条件を鋭意検討したところ、膵島をE−カドヘリンのEC1ドメインを含み、且つ当該E−カドヘリンへの結合能を有するポリペプチドを固相表面に固定又はコーティングした培養皿上で培養すると、膵島をトリプシン処理によりシングルセルにまで分解しなくても、膵島がシート状の構造を呈し、更に、シート状という組織形態を呈する膵島が凝集塊を形成する膵島よりも高いグルコース応答性が見られること及び低酸素条件に耐性をもつことを見出し、更に検討を重ねた結果、本発明を完成した。
即ち、本発明は以下に関する。
[1]単離された膵島を、E−カドヘリンのEC1ドメインを含み、且つ当該E−カドヘリンへの結合能を有するポリペプチドを固相表面に固定又はコーティングした培養容器中、該固相表面に接着した状態で、当該膵島がシート状の形態を呈するのに十分な期間培養することを含む、シート状の膵島の製造方法。
[2]当該ポリペプチドがE−カドヘリンの細胞外ドメインを含む、[1]記載の製造方法。
[3]当該ポリペプチドがE−カドヘリンの細胞外ドメイン及びイムノグロブリンのFc領域を含む融合ポリペプチドである、[1]記載の製造方法。
[4]E−カドヘリンのEC1ドメインを含み、且つ当該E−カドヘリンへの結合能を有するポリペプチドを固相表面に固定又はコーティングした培養容器、及びシート状の膵島を含み、該シート状の膵島が該固相表面に接着した状態で培養可能となる、膵島培養物。
[5]E−カドヘリンのEC1ドメインを含み、且つ当該E−カドヘリンへの結合能を有するポリペプチドを固相表面に固定又はコーティングした培養容器、及び単離された膵島を含む、シート状の膵島の製造用キット。
本発明の方法を用いれば、トリプシン処理を行うことなく、従来の培養法と比較してグルコース応答機能の低下を抑制しながら、低酸素条件に耐性のあるシート状の膵島を製造することが可能である。
通常、体内であれば膵島組織内への血管誘導が生じるため、膵島が酸素不足に陥ることはない。しかしながら、移植した膵島の場合、移植部位における低酸素条件環境下では、酸素不足によって膵島の細胞死が誘導される懸念がある。本発明の方法により得られるシート状の膵島を用いれば、低酸素状態でも効率的にそれぞれの細胞へ酸素供給が可能となり、低酸素条件でも膵島の細胞死が抑制され、かつ膵島の形態をシート状にすることによってグルコース応答機能が増加することが考えられるので、移植医療に有利である。
E−cad−Fcコートディッシュ及び非処理ディッシュ上で培養した、トリプシン処理又は未処理の各培養日数における膵島の形態を示す。 非処理ディッシュ上又はE−cad−Fcコートディッシュ上における各培養日数における膵島のstimulation indexを示す。 培養11日後の各培養条件における(A)膵島の細胞形態および(B)Stimulation Index(n=3,mean±S.D.,*p<0.05)を示す。 各酸素濃度における膵島の位相差像及び細胞死をPI染色、細胞全体数をDAPI染色によって観察した結果を示す。 E−cad−Fcコートディッシュ及び非処理ディッシュ上で培養した膵島の細胞死率を示す。
本発明は、単離された膵島を、E−カドヘリンのEC1ドメインを含み、且つ当該E−カドヘリンへの結合能を有するポリペプチドを固相表面に固定又はコーティングした培養容器中、該固相表面に接着した状態で、当該膵島がシート状の形態を呈するのに十分な期間培養することを含む、シート状の膵島の製造方法を提供するものである。
膵島とは、グルカゴンを分泌するα細胞(A細胞)、インスリンを分泌するβ細胞(B細胞)、及びソマトスタチンを分泌するδ細胞(D細胞)を含む、膵臓の実質内に散在する細胞塊である。
本発明において使用される膵島は、哺乳動物から単離されたものである。哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類やウサギ等の実験動物、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ミンク等の家畜、イヌ、ネコ等のペット、ヒト、サル、カニクイザル、アカゲザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類等を挙げることが出来るが、これらに限定されない。哺乳動物は、好ましくはげっ歯類(マウス等)又は霊長類(ヒト等)である。
哺乳動物の膵臓からの膵島の単離は、コラゲナーゼ消化を用いた自体公知の方法に従い行うことが出来る。例えば、静的なコラゲナーゼ消化と、それに引続くFicoll−Conrayグラディエント中での遠心分離により単離することができる(Sutton, R., 1986, Transplantation, 42:689-691/Ohtsuka, K., et. al., 1997, Transplantation, 64: 633-639)。
膵島をトリプシン等のタンパク質分解酵素処理によりシングルセルの状態にまで分散させると、結果として得られるシート状の膵島のグルコース応答性が低下してしまう可能性がある。従って、本発明の製造方法においては、タンパク質分解酵素によってシングルセルの状態にまで分散させることなく、膵島が、細胞塊の状態のまま、E−カドヘリンのEC1ドメインを含み、且つ当該E−カドヘリンへの結合能を有するポリペプチドを固相表面に固定又はコーティングした培養容器中での培養に付される。細胞塊とは、複数個の細胞が相互に接着等することにより一つの塊をなしている状態を意味する。哺乳動物種にもよるが、1つの膵島あたり、通常10個〜10000個程度の膵島細胞が含まれる。従って、上記培養に付される膵島(細胞塊)に含まれる、膵島細胞の数も、通常10個〜10000個の範囲内である。
本発明においては、単離された膵島が、E−カドヘリンのEC1ドメインを含み、且つ当該E−カドヘリンへの結合能を有するポリペプチドを固相表面に固定又はコーティングした培養容器中で培養される。これにより、膵島を構成する細胞の表面に発現したE−カドヘリンが当該ポリペプチドに結合し、結果として、膵島が当該固相表面に接着する。
E−カドヘリンは、接着結合又はアドヘレンス・ジャンクション(adherens junction)と呼ばれるCa2+依存性の細胞間接着・結合に関与する公知の接着分子である。E−カドヘリンは、肝臓や腎臓、肺等の内臓臓器の実質細胞やケラチノサイト等の上皮細胞に広く発現し、その細胞間接着を担う重要な接着分子であることが知られている(Mareel et al.,Int.J.Dev.Biol.37:227,1993; Mays et al.,Cord Spring Harb.Symp.Quant.Biol.60:763,1995; El-Bahrawy & Pignatelli,Microsc.Res.Tech.43:224,1998; Nollet et al.,Mol.Cell.Biol.Res.Commun.2:77,1999)。
本発明の方法において用いられるE−カドヘリンは、通常哺乳動物由来である。哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類やウサギ等の実験動物、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ミンク等の家畜、イヌ、ネコ等のペット、ヒト、サル、カニクイザル、アカゲザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類等を挙げることが出来るが、これらに限定されない。哺乳動物は、好ましくはげっ歯類(マウス等)又は霊長類(ヒト等)である。
尚、本発明に用いられる各ポリペプチド又はポリヌクレオチドについて、「生物X由来」とは、該ポリペプチド又はポリヌクレオチドのアミノ酸配列又は核酸配列が、生物Xにおいて天然に発現している該ポリペプチド又はポリヌクレオチドのアミノ酸配列又は核酸配列と同一又は実質的に同一のアミノ酸配列又は核酸配列を有することを意味する。「実質的に同一」とは、着目したアミノ酸配列又は核酸配列が、生物Xにおいて天然に発現している因子のアミノ酸配列又は核酸配列と70%以上(好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上)の同一性を有しており、且つ当該因子の機能が維持されていることを意味する。
本発明において使用するE−カドヘリンとしては、培養対象である膵島が由来する種と同種の動物由来のものが好ましい。例えば、マウスから単離された膵島を用いて本発明を実施する場合、マウスのE−カドヘリンの使用が望ましい。また、ヒトから単離された膵島を用いて本発明を実施する場合、ヒトのE−カドヘリンの使用が望ましい。しかしながら、本発明の製造方法によってシート状の膵島を製造可能である限り、異種動物由来のE−カドヘリンを使用することもできる。
多くの哺乳動物由来のE−カドヘリンのアミノ酸配列やcDNA配列が公知である。ヒトE−カドヘリンの代表的なcDNA配列及びアミノ酸を配列番号1及び2に、マウスE−カドヘリンの代表的なcDNA配列及びアミノ酸を配列番号3及び4に、それぞれ示す。
E−カドヘリンは、細胞外領域を介してホモフィリックに(即ち、同一分子同士で)結合することが知られている。E−カドヘリンの細胞外領域には、約110アミノ酸残基からなる繰り返し構造、いわゆるExtracellular Cadherin(EC)ドメインと呼ばれる領域が5個存在する。例えば、ヒトE−カドヘリン(配列番号2)の場合、EC1、EC2、EC3、EC4、EC5の各ドメインは、それぞれ157〜262、265〜375、378〜486、487〜595、596〜700に相当する(数値は配列番号2に示すアミノ酸配列内の残基の番号である)。また、マウスE−カドヘリン(配列番号4)の場合、EC1、EC2、EC3、EC4、EC5の各ドメインは、それぞれ159〜264、267〜377、380〜488、489〜597、598〜702に相当する(数値は配列番号4に示すアミノ酸配列内の残基の番号である)。
一般的にカドヘリン分子は、最もN末端側に位置するドメイン(EC1)が、当該分子の結合特異性、すなわち、ホモフィリックな結合を規定している(Nose et al., Cell 61: 147, 1990)ため、本発明に用いられるポリペプチドは、少なくともE−カドヘリンのEC1ドメインを含み、且つ当該E−カドヘリンへの結合能を有する。好ましい態様において、本発明に用いられるポリペプチドは、EC1ドメインに加えて、EC2〜5から選択される1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つ、更に好ましくは4つのドメインを含む。より好ましい態様において、本発明に用いられるポリペプチドは、E−カドヘリンの細胞外領域を含む。ヒトE−カドヘリンの場合、細胞外領域は、配列番号2で表されるアミノ酸配列における、第1〜第697アミノ酸に相当する。また、マウスE−カドヘリンの場合、細胞外領域は、配列番号4で表されるアミノ酸配列における、第1〜第699アミノ酸に相当する。
本発明に用いられるポリペプチドは、E−カドヘリンに由来する配列と他のタンパク質やペプチド由来の配列を含む融合ポリペプチドであってもよい。例えば、当該ポリペプチドを、イムノグロブリンのFc領域やGST(Glutathione−S−Transferase)タンパク質、MBP(Mannnose−Binding Protein)タンパク質、アビジン・タンパク質、His(オリゴ・ヒスチジン)タグ、HA(HemAgglutinin)タグ、Mycタグ、VSV−G(Vesicular Stromatitis Virus Glycoprotein)タグ等との融合ポリペプチドとして作製し、プロテインA/Gカラムや特異的抗体カラム等を用いることにより、ポリペプチドの精製を容易に、しかも効率よく行なうことができる。特にFc融合ポリペプチドは、ポリスチレン等を材料とした培養基材に吸着する能力が高まるため、本発明の実施において好適である。
イムノグロブリンのFc領域をコードする遺伝子は、既にヒトをはじめとする哺乳動物で、多数、単離・同定されている。その塩基配列も数多く報告されており、例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4のFc領域を含む塩基配列の配列情報は、NCBI等の公的なDNAデータベースにおいて利用可能であり、それぞれ、アクセス番号:AJ294730、AJ294731、AJ294732、及びAJ294733として登録されている。したがって、当業者であれば、Fc領域に特異的なプライマー又はプローブを設計し、一般的な分子生物学的手法を用いることにより、Fc領域部分をコードするcDNAを取得・使用することが可能である。この場合、使用するFc領域をコードする遺伝子としては、動物種やサブタイプは特にこれを限定しないが、プロテインA/Gとの結合性が強いヒトIgG1やIgG2、又はマウスIgG2aやIgG2b等のFc領域をコードする遺伝子が好ましい。また、Fc領域に変異を導入することによりプロテインAとの結合性を高める方法も知られており(Nagaoka et al., Protein Eng. 16: 243, 2003)、当該法により遺伝子改変を加えたFcタンパク質も使用することもできる。
なお、本発明において好適に用いられるポリペプチドの例として、Nagaoka et al., Biotechnol. Lett. 24: 1857, 2002及びProtein Eng. 16: 243, 2003に開示されたE−カドヘリンの細胞外領域を含むポリペプチドを挙げることが出来る。
また、マウス又はヒトのE−カドヘリンの細胞外領域をコードするcDNAに、ヒトIgGのFc領域部分をコードする配列及びHisタグ配列のcDNAを連結させた融合遺伝子をマウス細胞に導入し、これを発現させて作製した精製リコンビナント・タンパク質(Recombinant Human/Mouse E−cadherin−Fc Chimera;R&D systems社、Genzyme Techne社)が市販されており、これらを本発明に適用することもできる。また、E−cadherin−Fcを底面にコートした培養ディッシュも住友ベークライト株式会社等より市販されており、これを本発明に適用することが出来る。
上記ポリペプチドは好ましくは単離又は精製されている。「単離または精製」とは、天然に存在する状態とは異なる状態に人為的に置かれること、例えば、天然に存在する状態から、目的とする成分以外の成分を除去する操作が施されていることを意味する。単離または精製された上記ポリペプチドの純度(全ポリペプチド重量に対する、上記ポリペプチド重量の割合)は、通常30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは90%以上(例えば100%)である。
上記ポリペプチドは、該ポリペプチドを発現し得る発現ベクターを導入したCOS細胞や293細胞、CHO細胞等の哺乳動物細胞を培養し、培養物から、自体公知の生化学的手法により該ポリペプチドを単離又は精製することにより製造することが出来る。該発現ベクターにおいては、該ポリペプチドをコードする核酸(DNA等)が、広範な哺乳動物細胞における遺伝子の転写および発現を可能にする核酸配列、いわゆるプロモーター配列と、当該プロモーターの制御下に転写及び発現が可能になる様な形で連結される。転写及び発現される遺伝子は、さらにポリA付加シグナルと連結されることが望ましい。好適なプロモーターとしては、SV(Simian Virus)40ウイルスやサイトメガロウイルス(Cytomegaro Virus;CMV)、ラウス肉腫ウイルス(Rous sarcoma virus)等のウイルスに由来するプロモーターや、β−アクチン・プロモーター、EF(Elongation Factor)1αプロモーター等が挙げられる。
培養容器内の固相を構成する部材は、本発明の製造方法において用いられた際に、シート状の膵島の製造を達成し得る範囲において特に限定されず、通常、細胞毒性がなく、滅菌可能で、タンパク質に親和性を有する部材を用いることができる。一般的にプラスチック系、ガラス系の部材が好ましい。しかし、該部材は、金属やセラミックでもよく、一定の素材に限定されるものではない。
プラスチック系部材とは、成形性に優れた熱硬化性、熱可塑性ポリマーであって、例えば、ポリスチレン、メタクリル樹脂、ポリメチルペンテン、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン、セルロース、ポリエチレン、ポリスルホン、ポリアクリロニトリルなどを使用することができるが、これらには限定されない。
ガラス系の部材とは、ケイ酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩などが、結晶化することなく、ガラス化したものを意味する。ガラス化傾向が強いという理由で、ケイ酸塩ガラスが好ましい。また、成形性に富み、対衝撃性が高いという理由で、ケイ酸塩ガラスを熱処理することによりつくる複合素材の一種である結晶化ガラスがより好ましい。
培養容器としては、シャーレ、プレート、フラスコ、ボトル等を挙げることができるが、これらに限定されない。培養容器の形態は、本発明の方法に供せられた際に、固相表面へ膵島が接着し、シート状の膵島の製造が達成可能であれば特に限定されない。
固相表面とは、培養容器中で固相に接着した状態で膵島を培養するとき、培養される膵島の固相への接着を可能にする部分をいい、例えば、培地を加えたときに培地と接する部位をいう。
ポリペプチドを固相表面に固定又はコーティングする方法としては、一般的に、非共有結合(水素結合、イオン結合、疎水結合等)、共有結合等を使用した方法を用いることができる。
ポリペプチドを非共有結合により固相表面に固定又はコーティングする方法としては、例えば、ポリペプチドを含む適当な緩衝液(例えばリン酸緩衝液等)中に固相表面を静置する方法が挙げられる。該方法の条件(緩衝液の種類、緩衝液中のポリペプチドの濃度、静置時間等)は、本発明の製造方法において用いられた際に、シート状の膵島の製造を達成できる範囲において、適宜設定することが可能である。例えばポリペプチドがマウス又はヒトのE−カドヘリンの細胞外領域及び、マウス又はヒトIgGのFc領域部分を含む融合ポリペプチドであり、固相を構成する部材がプラスチック(例、ポリスチレン)である場合、通常0.01〜1000μg/mL(好ましくは、0.1〜200μg/mL、より好ましくは1〜50μg/mL)の濃度でポリペプチドを含む中性リン酸緩衝生理食塩水中に固相を0.5〜24時間程度静置することによって、該ポリペプチドが該固相の表面に固定又はコーティングされる。
共有結合によるポリペプチドの固定又はコーティング方法としては、例えば固相表面を、官能基を有するシランカップリング剤で処理することにより、該固相表面に官能基を導入し、架橋剤を用いて当該官能基にポリペプチドを結合させる方法を挙げることが出来る(例えば特開2003−189843号公報参照)。導入し得る官能基の例としては、アミノ基、アルデヒド基、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、チオール基等を挙げることができる。シランカップリング剤の例としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等を挙げることが出来る。架橋剤の例としては、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド、N,N’−カルボジイミダゾール、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、無水フタル酸、ヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることが出来る。
このように、E−カドヘリンのEC1ドメインを含み、且つ当該E−カドヘリンへの結合能を有するポリペプチドを固相表面に固定又はコーティングした培養容器中で、単離した膵島を培養することにより、膵島を構成する細胞の表面に発現したE−カドヘリンが当該ポリペプチドに結合し、結果として、膵島が当該固相表面に接着する。
膵島の固相表面への接着の強度は、本発明の製造方法により、シート状の膵島の製造を達成し得る限り特に限定されないが、通常、物理的及び/又は化学的処理を施さなければ解離しない程度の強度である。該物理的処理としては、ピペッティングやタッピングによる処理等が挙げられる。該化学的処理としてはEDTA、EGTA等のキレート剤による処理や、トリプシン等のタンパク質分解酵素による処理等が挙げられる。
本発明の製造方法において、膵島の培養に用いられる培地の基礎培地としては、膵島のインビトロ培養に使用可能な自体公知のものを用いることができ、本発明の製造方法により、シート状の膵島の製造を達成し得る限り特に限定されないが、例えばDMEM、EMEM、RPMI−1640、α−MEM、F−12、F−10、M−199、HAM等が挙げられる。また、膵島培養用等に改変された培地を用いてもよく、上記基礎培地の混合物を用いてもよい。
本発明の製造方法において膵島の培養に用いられる培地は、通常の膵島の組織培養で用いられる自体公知の添加物を含むことができる。添加物としては、本発明の製造方法により、シート状の膵島の製造を達成し得る限り特に限定されないが、例えば成長因子(例えばインスリン等)、鉄源(例えばトランスフェリン等)、ポリアミン類(例えばプトレシン等)、ミネラル(例えばセレン酸ナトリウム等)、糖類(例えばグルコース等)、有機酸(例えばピルビン酸、乳酸等)、血清蛋白質(例えばアルブミン等)、アミノ酸(例えばL−グルタミン等)、還元剤(例えば2−メルカプトエタノール等)、ビタミン類(例えばアスコルビン酸、d−ビオチン等)、抗生物質(例えばストレプトマイシン、ペニシリン、ゲンタマイシン等)、緩衝剤(例えばHEPES等)等が挙げられる。当該添加物は、それぞれ自体公知の濃度範囲内で培地に含まれることが好ましい。
また、本発明の製造方法において膵島の培養に用いられる培地は、血清を含んでいてもよい。血清の濃度は、本発明の製造方法により、シート状の膵島の製造を達成し得る限り特に限定されないが、通常、0.1〜30(v/v)%の範囲である。
本発明の製造方法における膵島のその他の培養条件は、膵島の組織培養技術において通常用いられている培養条件を用いることができる。例えば、培養温度は通常約30〜40℃の範囲であり、好ましくは約37℃が例示される。CO濃度は通常約1〜10%の範囲であり、好ましくは約5%が例示される。湿度は通常約70〜100%の範囲であり、好ましくは約95〜100%が例示される。
本発明の製造方法においては、単離された膵島が、上記ポリペプチドを固相表面に固定又はコーティングした培養容器中、該固相表面に接着した状態で、当該膵島がシート状の形態を呈するのに十分な期間培養される。単離された膵島を、上記ポリペプチドを固相表面に固定又はコーティングした培養容器中で培養すると、膵島は該固相表面上に接着し、やがて該固相表面上に伸展し、シート状の形態を呈するようになる。「シート状」とは、膵島の厚さに対して、長さ又は幅(好ましくは、これらの両方)が十分に大きな形状をいう。例えばシート状の膵島の長さ又は幅(好ましくは、これらの両方)は、厚さの、通常3倍以上、好ましくは、10倍以上である。膵島の「厚さ」とは、培養容器の固相表面に対して垂直方向に最も厚い部分の厚さを意味する。膵島の「長さ」とは、前記膵島の厚さ方向と直交する方向の長さのうちの最大の値を意味する。膵島の「幅」とは、前記膵島の厚さ方向及び長さ方向の双方と直行する方向の長さのうちの最大の値を意味する。一態様において、シート状の膵島は、膵島細胞の単層を含む。シート状の形態を呈するまでに要する時間は、膵島の由来する動物種や、上記ポリペプチドの構成、培養条件により異なるので、一般化することは難しいが、マウスの膵島を、マウスE−カドヘリンの細胞外領域及びIgGのFc領域部分を含むポリペプチドを固相表面に固定又はコーティングした培養容器中で培養する場合には、培養開始後3日程度で、膵島の伸展が始まり、約6日から10日程度でシート状の形態を呈するようになる。他の動物種の膵島や、他の構成のポリペプチドを用いた場合であっても、この培養期間を参考に、当業者であれば膵島がシート状の形態を呈するのに十分な期間を適宜設定することができる。
培養期間の上限は、得られるシート状の膵島が、グルコース応答性を維持する限り特に限定されないが、培養期間が長期に及ぶとインスリン分泌能が低下してくる場合があるため、培養期間は、通常8週間以内で好ましくは4週間以内、より好ましくは1週間以内である。
本発明の製造方法により得られるシート状の膵島は、良好なグルコース応答性を有する。グルコース応答性とは、グルコース濃度の上昇を感知して、インスリンを分泌する能力を意味する。例えば、本発明の製造方法により得られるシート状の膵島を、4500mg/lのグルコースを含むDMEM中で、37℃、5%COにて1時間培養後の培養液中のインスリン濃度が、1000mg/lのグルコースを含むDMEM中で、37℃、5%COにて1時間培養後の培養液中のインスリン濃度の、通常1.5倍以上、好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上である。
また、本発明は、E−カドヘリンのEC1ドメインを含み、且つ当該E−カドヘリンへの結合能を有するポリペプチドを固相表面に固定又はコーティングした培養容器、及びシート状の膵島を含み、該シート状の膵島が該固相表面に接着した状態で培養可能となる、膵島培養物を提供するものである。
一態様において、該培養物においては、該シート状の膵島が該固相表面に接着した状態で生存して機能している。
一態様において、該培養物においては、該シート状の膵島が該固相表面に接着した状態で生存している。また、別の態様において、該培養物においては、該シート状の膵島が該固相表面に接着した状態で増殖している。
培養物とは、組織や細胞を培養することにより得られる結果物をいう。
本発明の培養物に関連する各用語の定義及び態様は、上記本発明の製造方法について記載したものと同一である。
本発明の培養物は、上記培養容器、及びシート状の膵島に加えて、上述の本発明の方法において用いる培地、膵島が分泌したインスリン等を含み得る。
本発明の膵島培養物は、シート状の膵島を利用した再生医療の実施に有用である。
E−カドヘリンのEC1ドメインを含み、且つ当該E−カドヘリンへの結合能を有するポリペプチドを固相表面に固定又はコーティングした培養容器、及び単離された膵島を含む、シート状の膵島の製造用キットを提供するものである。本発明のキットを用いると、上記本発明の製造方法により、容易にシート状の膵島を製造することができる。
本発明のキットに関連する各用語の定義及び態様は、上記本発明の製造方法について記載したものと同一である。
本発明のキットは、上記本発明の製造方法において用いられる試薬を更に含んでいてもよい。該試薬としては、例えば、膵島の単離に用いられるコラゲナーゼ等のタンパク質分解酵素、培地、血清等を挙げることが出来る。
本明細書中で挙げられた特許及び特許出願明細書を含む全ての刊行物に記載された内容は、本明細書での引用により、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。
[実施例1]
膵島培養
体重20〜25g(9〜10週齢)の雄性マウス(C57BL/6J;日本チャールスリバー)から、collagenase from clostridium histdyticum Type V(GIBCO)を用いた消化法により膵島を分離した。この膵島に対してBiocoll Separating Solution(Biocheom AG)を用いた密度勾配法およびピペットマンを用いたハンドピックアップを行って、膵島を分離した。分離した膵島を3.5cm E−cad−Fcコートディッシュ(住友ベークライト株式会社)及び非処理ディッシュ(IWAKI)上で、10(v/v)% FBS(GIBCO)、抗生剤として1(v/v)% Anti−Anti(GIBCO)を添加したDulbecco’s Modified Eagle’s Medium(DMEM;SIGMA)中で培養した(37℃/CO;5%)。膵島を培養器上に播種して7日後に培地交換を行い、以後3日毎に培地交換を行った。
[実施例2]
膵島の形態観察
分離した膵島を3.5cm E−cad−Fcコートディッシュ(住友ベークライト)及び非処理ディッシュ(IWAKI)上に播種した。さらに、シングル化する膵島をトリプシン−EDTA(GIBCO)にて5分間、37℃にて処理することにより、シングルセルの状態に分散した膵島細胞を同様に播種した。膵島及びトリプシン-EDTA処理にてシングル化した膵島細胞は10% FBS(GIBCO)、抗生剤として1% Anti−Anti(GIBCO)を添加したDulbecco’s Modified Eagle’s Medium(DMEM; SIGMA)を用いて培養した(37℃ CO;5%)。膵島を培養器上に播種して7日後に培地交換を行い、以後3日毎に培地交換を行った。
その後、隔日毎に膵島の形態を倒立型位相差顕微鏡(Olympus IX−70)にて観察した。結果を図1に示す。膵島をE−cad−Fcコートディッシュ上に播種すると、培養開始3日後には、膵島がディッシュ上に伸展し、培養開始6日後には、シート状の形態を呈した。一方、非処理ディッシュ(IWAKI)上に播種しても、組織の形態は変化せずに凝集塊の形態のままであり、18日間培養しても、シート状の形態を呈することはなかった。シングルセル状態の膵島細胞をE−cad−Fcコートディッシュ上に播種すると、該細胞のディッシュへの接着が観察された。一方、シングルセル状態の膵島細胞を非処理ディッシュ(IWAKI)上に播種しても、該細胞は壊死してしまった。
[実施例3]
グルコース応答機能のStimulation Indexによる評価
実施例1と同一の培養条件下で、マウスより分離した膵島(40ピース)を、3.5cm E−cad−Fcコートディッシュ又は非処理ディッシュ上に播種し、培養した。培養開始後に培養液中のグルコース濃度によって膵島のインスリン分泌量を制御できるかを検討した。E−cad−Fcコートディッシュ又は非処理ディッシュ上で培養した膵島を低グルコース培地(1,000 mg/l DMEM)にて2回洗浄し、その後低グルコース培地(1,000 mg/l DMEM)中にて1時間培養し、上清中に分泌されたインスリン量を低濃度グルコースにおけるインスリン分泌量とした。その後、高グルコース培地(4,500 mg/l DMEM)にて2回洗浄し、その後高グルコース培地(4,500 mg/l DMEM)中にて1時間培養し、上清中に分泌されたインスリン量を高濃度グルコースにおけるインスリン分泌量とした。回収した上清を、ELISA(Enzyme−Linked ImmunoSorbent Assay)キットであるレビス インスリン−マウス((株)シバヤキ)を用いて非処理ディッシュ上およびE−cad−Fcコートディッシュ上における膵島のインスリン分泌量を測定し、膵島の機能を評価するためにStimulation Index (SI; 低濃度グルコース環境下でのインスリン分泌量に対する、高濃度グルコース環境下でのインスリン分泌量の比)を算出した(図2)。
各培養日において、膵島は非処理ディッシュ上とE−cad−Fcコートディッシュ上でグルコース応答性を示し、インスリン分泌能が確認された。Stimulation indexを算出した結果、E−cad−Fcコート培養器上で培養した膵島は非処理ディッシュ上で培養された膵島と同等もしくはそれ以上の膵島機能を示した(図2)。
[実施例4]
グルコース応答機能に対するトリプシン処理の影響
マウス由来膵島(40個)を3.5cm E−cad−Fcコートディッシュもしくは非処理ディッシュ上に播種した。さらに、マウス由来膵島をトリプシン−EDTA(GIBCO)にて37℃、5分間インキュベートすることによりシングルセルの状態の膵島細胞を調製し、これを膵島と同様に播種した。培養開始日から11日後に、膵島及び膵島細胞のグルコース応答機能をSIによって検討した。ELISAによる評価は実施例3と同様の方法により行った。また、各培養日におけるSIを算出した。
トリプシン−EDTA処理により分散した膵島細胞のインスリン分泌量は、該処理をしていない膵島と比較して、非処理ディッシュ上およびE−cad−Fcコートディッシュ上のいずれにおいても、低下していた。また、E−cad−Fcコートディッシュ上において、トリプシン−EDTA処理により分散した膵島細胞のstimulation indexも、該処理をしていない膵島と比較して低下していた(図3)。従って、トリプシン−EDTA処理により、グルコース応答機能が低下することが示唆された。
[実施例5]
低酸素条件における膵島内での細胞死誘導率の測定
実施例1と同一の培養条件下で、マウスより分離した膵島を、3.5cm E−cad−Fcコートディッシュ又は非処理ディッシュ上に播種し、1週間培養した。E−cad−Fcコートディッシュ上の膵島は1mM EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を含むPBS(GIBCO)にて回収し、非処理ディッシュ上の膵島と同様に浮遊状態にて、低酸素条件(O;5%)および高酸素条件(O;20%)で1時間インキュベート(37℃)した。その後、DAPI Nucleic Acid Stain(DAPI;Lonza) 5μg/mlおよびPropidium iodide(PI;Roche) 0.5μg/mlを含むDMEM中で膵島を30分インキュベート(37℃)することで染色し、顕微鏡にて観察した(図4)。
膵島の細胞数を定量化するために、指標としてDAPI染色した細胞数をImageJにて算出した。また死細胞数を定量化するために指標としてPI染色した細胞数をImageJにて算出した。以下の式により、細胞死率を算出した:
細胞死率(%)=(PIで染色された細胞数/DAPIで染色された細胞数)×100
結果を図4及び5に示す。酸素濃度が20%の場合は、非処理ディッシュ上およびE−cad−Fcコートディッシュ上において細胞死誘導率がほぼ同程度であった。しかしながら、酸素濃度が5%の場合は、非処理ディッシュ上の膵島は中心部からPI染色にて陽性であることから細胞が壊死しており(図4)、E−cad−Fcコートディッシュ上の膵島と比較して高い細胞死誘導率が確認された(図5)。以上より、E−cad−Fcコートディッシュ上で培養することにより、低酸素条件下で誘導される膵島細胞の細胞死が抑制されることが示唆された。
本発明の方法を用いれば、トリプシン処理を行うことなく、グルコース応答性機能低下を抑制しながら、低酸素条件に耐性のあるシート状の膵島を製造することが可能である。
通常、体内であれば膵島組織内への血管誘導が生じるため、膵島が酸素不足に陥ることはない。しかしながら、移植した膵島の場合、移植部位における低酸素条件環境下では、酸素不足によって膵島の細胞死が誘導される懸念がある。本発明の方法により得られるシート状の膵島を用いれば、低酸素状態でも効率的にそれぞれの細胞へ酸素供給が可能となり、低酸素条件でも膵島の細胞死が抑制されるので、移植医療に有利である。
本出願は日本で出願された特願2011−086336(出願日:2011年4月8日)を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。

Claims (6)

  1. 単離された膵島を、E−カドヘリンの細胞外ドメインを含み、且つ当該E−カドヘリンへの結合能を有するポリペプチドを固相表面に固定又はコーティングした培養容器中、該固相表面に接着した状態で、当該膵島がシート状の形態を呈するのに十分な期間培養することを含む、シート状の膵島の製造方法。
  2. 当該ポリペプチドがE−カドヘリンの細胞外ドメイン及びイムノグロブリンのFc領域を含む融合ポリペプチドである、請求項1記載の製造方法。
  3. E−カドヘリンの細胞外ドメインを含み、且つ当該E−カドヘリンへの結合能を有するポリペプチドを固相表面に固定又はコーティングした培養容器、及びシート状の膵島を含み、該シート状の膵島が該ポリペプチドに接着した状態で培養可能となる、膵島培養物。
  4. 当該ポリペプチドがE−カドヘリンの細胞外ドメイン及びイムノグロブリンのFc領域を含む融合ポリペプチドである、請求項3記載の膵島培養物。
  5. E−カドヘリンの細胞外ドメインを含み、且つ当該E−カドヘリンへの結合能を有するポリペプチドを固相表面に固定又はコーティングした培養容器、及び単離された膵島を含む、シート状の膵島の製造用キット。
  6. 当該ポリペプチドがE−カドヘリンの細胞外ドメイン及びイムノグロブリンのFc領域を含む融合ポリペプチドである、請求項5記載のキット。
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