JP5888832B2 - タンパク質干渉を媒介する手段および方法 - Google Patents

タンパク質干渉を媒介する手段および方法 Download PDF

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Description

本発明は、機能的プロテオミクスの分野、特にはタンパク質凝集の分野に属する。本発明は、標的タンパク質の機能を阻害するための方法を開示し、インターフェラー(interferor)と呼ばれる非天然の、使用者により設計された分子を使用しており、この分子は標的タンパク質に特異的であり、前記標的タンパク質と接触すると凝集を引き起こす。本発明はまた、該インターフェラー分子およびその治療への応用における使用を開示する。
背景技術
ゲノム規模での情報が増加し、生物学は活気に満ちた時代を迎えている。ゲノムシークエンシングおよびハイスループット機能的ゲノミクスのアプローチが日々生み出されている中、研究者らは生体関連情報を引き出す新たな術を必要としている。機能的ゲノムは特に、生物学的意義をゲノムデータに割り当てることに関して急速に進歩している。ゲノム中にコードされた情報は、そのタンパク質生成物が生体の機能の大部分を媒介し、要素を制御する遺伝子から成る。近年、非コードRNAもまた調節過程において重要な役割を担うことが確認されているが、タンパク質は細胞中、最も重要なエフェクターであると考えられていた。
いくつかの重要な生物学的疑問は、継続中のゲノムプロジェクトの中核となっており、細菌からヒトまで、あらゆる細胞生物に関連している。1つ課題は、ゲノムにコードされた遺伝子がいかに機能し、相互作用して複合的生物系を産生するかを理解することである。関連した課題としては、ゲノム内の配列要素すべての機能を決定することである。機能的ゲノムのツールボックスによって、いつ遺伝子が発現するか、その生成物はどこに局在するか、どんな他の遺伝子産物とそれは相互作用するか、および、遺伝子が突然変異するとどのような表現型が生じるか、などのゲノム内の大多数の遺伝子に対するいくつかの基本的な疑問に回答することができる数種の体系的なアプローチが可能になっている。突然変異体の表現型分析は、遺伝子機能を判定する強力なアプローチである。遺伝子機能は、遺伝子欠失、挿入突然変異およびRNA干渉(RNAi)を介して改変可能である。RNAiは比較的近年の、遺伝子発現を減少させるための開発である。それは植物および他のモデル生体中の遺伝子サイレンシングの報告に従っており、二重鎖RNA(dsRNA)を細胞に付加すると、配列特異的な方法で遺伝子機能が阻害されることがよくあるというC.エレガンス(C. elegans)の観察に基づいている。多くの場合、機能性の低下のレベルは適度に制御することができず、不完全であり、特異性のレベルは完全には予想できず、数種の生物ではRNAiは機能しない(例えば酵母カンジダ・アルビカンス(Candida albicans))。
機能的ゲノミクスは生物学を行う方法を変えてきており、なおかつ該分野は、遺伝子調節の複合体ネットワーク、タンパク質相互作用および細胞を形成する生化学反応などの生物系の根底にある複雑性を詳述することに関して、まだ初期段階にあるということは明らかである。発見を促進し、機能的ゲノミクスの補足法が与える可能性を最大にするため、特に機能的プロテオミクスの分野で革新的な技術の開発が明らかに必要とされている。タンパク質を翻訳するmRNAを標的にし、あるいはそれをコードする遺伝子を操作する代わりに、特定の細胞外または細胞内タンパク質の生物学的機能を直接標的にすることが可能な柔軟な技術を持つことが望ましいであろう。
通常は可溶なタンパク質を立体構造的に改変した不溶なタンパク質に変換することは、例えばアルツハイマー病および脳アミロイド血管症におけるアミロイドベータペプチド、パーキンソン病のレビー小体におけるアルファシヌクレイン沈着、クロイツフェルトヤコブ病におけるプリオン、筋萎縮性側索硬化症におけるスーパーオキシドジスムターゼ、ならびに前頭側頭型痴呆およびピック病の神経原線維変化におけるタウの発生など、多様な疾患の原因となる過程と考えられる。これまでタンパク質凝集は望ましくない病因現象として主に研究されてきており、クロスベータ媒介凝集は最も頻繁に発生する生物学的に関連する凝集メカニズムであることは広く受け入れられている。クロスベータ凝集は、各凝集分子が少なくとも3つの隣接するアミノ酸を通常含む同一鎖を与える分子内ベータシートの形成を介して、凝集が核形成されることを示すために使用する用語である。個々の鎖が相互に作用し分子内ベータシートを形成すること、およびこの構造が凝集体の骨格を形成することを示すデータは現在豊富にある3,4。標的タンパク質の自己会合領域は、ペプチドやタンパク質の凝集性向を予測するために開発されたTANGOなどのコンピュータープログラムにより決定することが可能である。凝集の1つの特定の形態、すなわち高度に整列したアミロイド線維は材料科学において可能性がある使用のための技術分野ですでに探求中である。また、国際公開第03102187号(Scegen, Pty Ltd)は、前記分子を、膜転位配列と融合させることにより分子の活性を促進し、それにより得られたキメラ分子が高分子量凝集体へと自己凝集する方法を開示している。米国特許第20050026165号(Arete Associates)は、プリオンなどの不溶タンパク質のベータシートコンフォメーションと相互作用することが可能なコンフォメーションペプチドの使用を、プリオン病の診断ツールとして開示している。
発明の概要
本発明は、特異性標的タンパク質の、制御された誘発可能タンパク質凝集のための技術に関する。本発明はまた、デノボで設計された分子を提供し、該分子は本明細書ではインターフェラー分子に指定されており、少なくとも1つの凝集領域を含んでおり、前記凝集領域は標的タンパク質由来である。好ましい実施態様では、インターフェラー分子は、前記自己凝集領域の凝集を防止する部分と融合する少なくとも1つの自己凝集領域を含む。選択された標的タンパク質と特異的に設計されたインターフェラー分子との間で接触が起こると、標的とインターフェラーとの間に特異的な共凝集が生じ、その結果、前記標的タンパク質に対する生物学的機能の機能的ノックアウトまたは下方制御が起こる。このタンパク質ノックダウンは、インターフェラー分子の存在により誘発される凝集体の存在を条件としている。さらに利点として、タンパク質干渉の強度はインターフェラー分子内の凝集領域の数を変化させることで実験的に制御可能である。本発明は、特定の細胞内外のタンパク質の生物学的機能を下方制御する効率的なツールを提供するだけでなく、重要な治療上の、農業への、診断上の応用をも有する。
発明の目的および詳細な説明
本発明において、本発明者らは、標的タンパク質に特異的なインターフェラー分子を使用して、タンパク質の生物学的機能を下方制御するプロセスを開発した。標的タンパク質と接触すると、インターフェラー分子と標的間に共凝集が起こる。凝集によりその可溶環境から標的が引き出され、標的タンパク質の機能的ノックダウンが生じる。
よって一実施態様では、本発明は、前記タンパク質に前記タンパク質から単離した少なくとも1つの自己会合領域を含む非天然分子を接触させることを含む、タンパク質の生物学的機能を下方制御する方法を提供する。
別の実施態様では、本発明は、前記タンパク質に前記タンパク質から単離した少なくとも1つの自己会合領域からなる非天然分子を接触させることを含む、タンパク質の生物学的機能を下方制御する方法を提供する。
さらに別の実施態様では、本発明は、前記タンパク質に前記タンパク質から単離した少なくとも1つの自己会合領域を含む非天然分子を接触させることを含む、タンパク質の生物学的機能を下方制御する方法を提供しており、ここでは前記自己会合ドメインが前記自己会合領域の凝集を防止する部分に融合している。
さらに別の実施態様では、本発明は、前記タンパク質に前記タンパク質から単離した少なくとも1つの自己会合領域からなる非天然分子を接触させることを含む、タンパク質の生物学的機能を下方制御する方法を提供しており、ここでは前記自己会合ドメインが前記自己会合領域の凝集を防止する部分に融合している。
さらに別の実施態様では、本発明は、前記タンパク質にA部およびB部を含む非天然分子を接触させることを含む、タンパク質の生物学的機能を下方制御する方法を提供しており、ここでは、i)A部がペプチド、もしくはB部の凝集を防止するタンパク質ドメインまたはアガロースビーズであり、ii)B部は少なくとも3つの隣接するアミノ酸からなる少なくとも1つの自己会合領域を含み、また、前記領域は機能を下方制御させる前記タンパク質から単離し、リンカーは場合によりA部およびB部との間に存在する。
また別の実施態様では、本発明は、前記タンパク質にA部およびB部を含む非天然分子を接触させることを含む、タンパク質の機能を下方制御する方法を提供しており、ここでは、i)A部がペプチドまたはB部の凝集を防止するタンパク質ドメインまたはアガロースビーズであり、それにより前記分子および前記タンパク質が存在する溶媒にB部が直接接触しており、ii)B部は少なくとも3つの隣接するアミノ酸からなる少なくとも1つの自己会合領域を含み、また、前記領域は機能を下方制御させる前記タンパク質から単離し、リンカーは場合によりA部およびB部との間に存在する。
別の実施態様では、非天然分子のB部は少なくとも2つの自己会合領域を含み、前記領域の少なくとも1つは機能が阻害される前記タンパク質に由来する。
用語「非天然分子」は該インターフェラー分子が人工であることを意味する。例えば、インターフェラー分子がポリペプチド(すなわちA部もB部もペプチド)である場合、該ポリペプチドは、標的タンパク質(すなわち自己会合領域)からB部を単離し、(i)別のタンパク質から、または(ii)前記A部がB部に直接は隣接していない場合の同じ標的タンパク質から、誘導可能であるA部に前記B部をカップリングさせて設計する。さらに言い換えれば、自己会合領域の凝集を防止する部分(インターフェラーがポリペプチドである場合、前記部分もポリペプチドである)に融合した標的由来の自己会合領域は、少なくとも1つの天然アミノ酸により自然に発生するA部とB部との間の融合とは異なる。通常、該インターフェラー分子は、非組み換えゲノムにおける遺伝子にコードされたタンパク質内の隣接するポリペプチドとしては存在しないだろう。
明らかであるべきは、反復を誘導し、A部およびB部の順を変えることでインターフェラー分子はモジュール方式で設計できることである。以下は非限定的な、組み合わせのリストである:A−B構造を有するインターフェラー、B−A構造を有するインターフェラー、A−B−A構造を有するインターフェラー、B−A−B構造を有するインターフェラー、A’−B−A”構造を有するインターフェラーおよびB’−A−B”構造を有すインターフェラー:ここではリンカー(スペーサー)は場合によりA、A’、A”部およびB、B’、B”部との間に存在する。A、A’およびA”は異なる、または類似した部分である(例えば異なるペプチド配列)。B、B’およびB”は異なる、または類似した自己会合配列である(例えばBは標的タンパク質由来の自己会合配列、B’は合成自己会合配列)。
さらに言い換えれば、本発明は、前記タンパク質に前記タンパク質から単離した少なくとも1つの自己会合領域を含む分子を接触させることを含む、タンパク質の生物学的機能を下方制御する方法を提供しており、ここでは前記自己会合領域が前記自己会合領域の凝集を防止する部分に融合しており、それにより前記自己会合領域は、前記分子およびタンパク質が存在する溶媒と直接接触している。上記から、明らかであるべきは、前記「部分」は用語A部と等しく、B部は「少なくとも1つの自己会合領域」という表現と等しいことである。
表現「タンパク質の機能を下方制御する」は、タンパク質の正常な生物学的活性を低減させること(阻害、下方制御、低減および妨害は本明細書では同義である)、またはタンパク質を正常な生物学的環境から抜き出すこと(例えば小胞体に常在しているタンパク質はその機能を下方制御すると欠失する)を意味する。したがって、本発明の方法を応用することで、タンパク質の機能は、前記タンパク質に本発明の非天然分子を接触させて前記タンパク質を凝集させ、妨害する。前記非天然分子は本明細書では「インターフェラー」または「インターフェラー分子」と呼ばれる。凝集とは、正常に可溶なタンパク質が正常な生物学的環境でインターフェラーとの直接的な接触または結合を経て不溶タンパク質または凝集タンパク質に変化することを意味する。表現「タンパク質機能を下方制御する」は表現「タンパク質機能をノックダウンさせる」または「タンパク質機能を負に干渉する」でも置き換えることが可能である。タンパク質機能の下方制御はまた、タンパク質が細胞中で可溶形態ではもはや存在しないこと、あるいはタンパク質がその正常な生物学的環境で可溶形態ではもはや存在しないことを意味し得る(例えば細胞(内)または細胞外局在)。またそれは、凝集したタンパク質が細胞の天然のクリアランス機構を経て分解され、可溶または不溶形態でもはや検出不能であることも意味し得る。またそれは、膜貫通受容体タンパク質が、インターフェラーにより誘導された前記膜貫通タンパク質の凝集を経てその正常リガンドとはもはや結合できないことも意味し得る。したがって、タンパク質機能の下方制御は、例えばミトコンドリアに常在するタンパク質がタンパク質干渉の方法によってもはや存在しないことも意味し得る。特定の実施態様では、「タンパク質機能の下方制御」または「タンパク質機能の負の阻害」または「タンパク質機能のノックダウン」は、正常(100%)なタンパク質機能と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%さらには100%機能が損失していることである。
タンパク質が機能していること、あるいは正常な生物学的環境(局在化)でタンパク質が存在していないことは、当技術分野で周知の方法で好都合に判定することが可能である。例えば、対象の標的タンパク質にしたがって、機能は酵素活性の低下を測定することで判定可能である。正常な生物学的局在化におけるタンパク質減少は、例えば、複合体の形成不足、細胞内区画内での標的タンパク質の生成不足、可溶状態の標的タンパク質の存在、凝集状態(本明細書では不溶と同義)の標的タンパク質の存在によって測定可能である。あるいは、標的タンパク質の下方制御の効果は細胞アッセイで測定可能である(例えば増殖の増減、浸潤の増減、タンパク質分解活性の増減)。
特定の一実施態様では、タンパク質の該正常な生物活性(もしくは正常な機能または正常な局在)は細胞内または細胞外で阻害され得る。「細胞内で」は、生物または宿主細胞(例えば細胞質、ミトコンドリア、リソソーム、空胞、核、葉緑体、細胞質内細網(ER)、細胞膜、ミトコンドリア膜、葉緑体膜...)内のタンパク質の局在化を意味する。「細胞外で」は、細胞の細胞外培地におけるタンパク質の局在化だけでなく、膜固定タンパク質、膜貫通タンパク質等の細胞外培地と接触しているタンパク質をも意味する。細胞外タンパク質の非限定的例としては、分泌タンパク質(例えば血液または血漿に存在するプロテアーゼ、抗体およびサイトカイン)または細胞外マトリックスに存在するタンパク質(例えばマトリックス金属タンパク質および膜貫通タンパク質、例えば成長因子受容体))が挙げられる。
本発明の方法で標的にされ得る細胞または宿主は原核細胞および真核細胞を含む。非限定的例として、ウイルス、細菌、酵母、真菌、原生動物、植物およびヒトを含む哺乳動物が挙げられる。
明らかであるべきは、タンパク質の生物学的機能を下方制御する方法を使用して、1、2、3、4、5またはそれ以上のタンパク質でさえも同時に生物学的機能を阻害できることである。特に、B部は少なくとも1つの自己会合領域を含むことから、例えばB部は異なるタンパク質に各々特異的である異なる自己会合領域を含む。少なくとも1つの標的タンパク質の生物学的機能を阻害するために使用されるインターフェラーは本来、天然に存在し、化学合成または組み換えタンパク質発現もしくは後者の組み合わせによって作製できる。
したがってインターフェラー分子は少なくとも1つの自己会合領域を含む(したがってB部は少なくとも1つの自己会合領域を含む)。本明細書では「自己会合領域」は、同一または非常に密接に関連した配列で分子を密に結集させる傾向が高いアミノ酸の隣接配列として定義されている。表現「分子を密に結集させる傾向が高い」は「高親和性である」とも解釈され得る。親和性は通常、解離の値(Kd値)に変換する。インターフェラーと標的タンパク質間のKd値は通常マイクロモルからナノモル範囲にあるが、ナノモル以下またはマイクロモル以上であることも可能である。自己会合領域の例として、分子間ベータシート領域、アルファヘリックス要素、ヘアピンループ、膜貫通配列およびシグナル配列が挙げられる。特定の一実施態様では、少なくとも1つの自己会合領域がB部に存在する。別の特定の実施態様では、少なくとも2つの自己会合領域がB部に存在する。別の特定の実施態様では、3、4、5、6またはそれ以上の自己会合領域がB部に存在する。前記自己会合領域はリンカー領域(例えば約2〜約4個のアミノ酸)により相互接続が可能である。B部に存在する1つの(または少なくとも1つの)自己会合領域は標的タンパク質から誘導される。特定の実施態様では、B部の2、3、4、5、6またはそれ以上の自己会合領域は標的タンパク質から誘導される。別の特定の実施態様では、B部の2、3、4、5、6またはそれ以上の自己会合領域は1個を超える標的タンパク質から誘導される。別の特定の実施態様では、B部の少なくとも2つの自己会合領域は同じ標的タンパク質から誘導される。本明細書では標的タンパク質はその機能を阻害したいタンパク質と定義されている。したがって、少なくとも1つのタンパク質に特異的なB部を作製するため、B部の少なくとも1つの自己会合領域は標的タンパク質「に由来」することが好ましく、あるいは少なくとも1つの自己会合領域は前記標的タンパク質に存在することが好ましい。「に由来」は、少なくとも1つの隣接自己会合性領域が前記標的タンパク質の隣接領域と同一またはアミノ酸配列が相同であることが好ましいことを意味する。好ましい実施態様では、前記少なくとも1つの自己会合性領域は、前記標的タンパク質領域に存在する自己会合領域と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%、一致している。
自己会合領域は少なくとも3個の隣接アミノ酸からなる長さであることが好ましい。好ましい実施態様では、前記領域は約3〜約30アミノ酸からなる。別の好ましい実施態様では、前記領域は約3〜約25アミノ酸からなる。特に好ましい実施態様では、前記領域は約5〜約20アミノ酸からなる。
インターフェラー分子のB部に存在する自己会合領域は、判別して標的タンパク質以外のタンパク質から単離することも可能であり、前記自己会合領域は標的タンパク質由来の少なくとも1つの自己会合領域と、場合により前記自己会合領域間のスペーサー(またはリンカー)とカップリングさせる。例えば、使用可能な自己会合領域は、標的タンパク質の生物学的機能が下方制御される宿主では通常発生しないタンパク質の自己会合領域から誘導可能である(従って、B部の自己会合領域には関連しない生物から得られるものもある)。自己会合領域の性質は、誘導された凝集を介して標的タンパク質の阻害レベル(すなわち阻害強度)を決定する。2つ以上の自己会合領域はインターフェラー分子内の標的タンパク質から使用可能であり、また、合成自己会合領域または異なる標的タンパク質由来の自己会合領域は標的タンパク質から得た1つ以上の自己会合領域と併用することが可能である。
特定の実施態様では、該自己会合領域は、現存のタンパク質由来ではないため天然には存在しない合成配列からなる。該合成自己会合領域の例は、Lopez de la Paz Mら(2002) PNAS 99, 25, p. 16053, 表1に記述しており、これは参照により本明細書に援用される。
少なくとも1つの自己会合領域(すなわちインターフェラー分子のB部)が(凝集誘発特性のために)疎水性であれば、前記自己会合領域の凝集を防止し、インターフェラーが存在する溶媒と直接接触している前記自己会合領域を暴露する部分(すなわちインターフェラー分子のA部)に融合(もしくは同義の用語、連結またはカップリング)していることが好ましい。そのように、特定な実施態様では、A部は溶液中にB部を維持する可溶化機能を有する。該実施態様では、前記A部は例えば、ペプチド、タンパク質ドメイン、タンパク質(好ましくは標的タンパク質とは異なっている、実施例2を参照)、グリコシル化構造、(親水性)化学基またはシクロデキストリンもしくはこれらの誘導体である。他の特定な実施態様では、前記A部はアガロースビーズ、ラテックスビーズ、セルロースビーズ、磁気ビーズ、シリカビーズ、ポリアクリルアミドビーズ、ミクロスフェア、ガラスビーズまたは任意の固体支持体(例えばポリスチレン、プラスチック、ニトロセルロース膜、ガラス)である。
インターフェラー分子内では、B部およびA部は場合により、リンカー領域(スペーサーと同義)により連結(またはカップリング)してもよい。前記リンカー領域は、例えば化学合成で作製した非天然リンカーであることが可能であり(例えばヒドロキシ置換アルカン鎖、デキストラン、ポリエチレングリコールなどのフレキシブルなリンカーまたはリンカーはアミノ酸相同体からなることも可能である)、あるいは、前記リンカーはポリ(スレオニン)またはポリ(セリン)などの天然アミノ酸からなることが可能である。好ましくは、リンカーがアミノ酸を含む場合、前記リンカー領域の長さは約3〜約15アミノ酸であり、より好ましくは約5〜約10アミノ酸である。フレキシブルなリンカーが高頻度に選択されるが、堅いリンカーも作用することが想定される。フレキシブルなリンカー配列は自然界から得ることが可能で、大抵該領域は、SH2およびSH3ドメインsrcチロシンキナーゼ間のリンカーまたはBRCA1のBRCTドメイン間リンカーなどの天然タンパク質中のドメインを接続する。
用語「接触する」は、インターフェラーと標的タンパク質が相互作用する過程を意味する。1つの形態では、インターフェラーを、標的タンパク質を含む試料に添加する(例えばインターフェラーは溶液中特定の濃度で存在する)。別の形態では、インターフェラー分子を、標的タンパク質を有する生物に注入する。例えば接触はまた、標的タンパク質を含む細胞、例えば細胞培養液の単離細胞、単細胞生物もしくは多細胞生物内の単数または複数の細胞の形質転換プロセスを経て実施できる。形質転換は、インターフェラー分子が公知のトランスフェクションまたは形質転換方法(例えば、リン酸カルシウム、DEAE−デキストラン、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、ウイルス法、カチオン性リポソームの使用(例えばFeigner, P. L.ら、(1987), Proc. Natl. Acad. Sci USA 84, 7413を参照)、市販のカチオン性脂質製剤、例えばTfx 50(Promega)またはLipofectamin 2000(Life Technologies)、微粒子銃等を含む遺伝子導入技術による)を経て宿主(例えば細胞)に導入されることを意味する。インターフェラー分子は組み換えベクター(例えばプラスミド、コスミド、ウイルスベクター)にコードされてよく、宿主内で合成することが可能である。代替的実施態様では、例えばリポソーム担体またはナノ粒子もしくは注射による担体を媒介した送達を介してインターフェラー分子は細胞に導入することが可能である。さらに別の代替的実施態様では、インターフェラー分子は細胞貫通(または転座)を媒介する配列を経て細胞に進入することが可能である。後者の場合インターフェラー分子はさらに、細胞透過配列の組み換えまたは合成的付着を介して修飾する。したがって(例えばポリペプチドのような)インターフェラー分子はさらに、原核または真核細胞への融合タンパク質または化学的にカップリングしたタンパク質の形質導入を促進する配列に、融合または化学的にカップリングしてもよい。タンパク質形質導入を促進する配列は当業者に周知であり、タンパク質形質導入ドメインが挙げられるが、これに限定されない。好ましくは、前記配列はHIV TATタンパク質、ポリアルギニン配列、ペネトラチンおよびpep−1から成る群より選択される。さらに他の一般的な細胞透過ペプチド(天然および人工ペプチド)はJoliot A.およびProchiantz A. (2004) Nature Cell Biol. 6 (3) 189-193に開示されている。
特定の一実施態様では、インターフェラーは本質的にアミノ酸からなる。いくつかの実施態様では、インターフェラー分子から得たA部およびB部の配列は同じ標的タンパク質に由来する。他の実施態様では、インターフェラーはキメラ分子であり、このことはA部およびB部から得た配列は異なるタンパク質に由来していることを意味し、例えばA部は1つのタンパク質に由来し、B部の少なくとも1つの凝集領域は標的タンパク質に由来する。「ポリペプチド」は、モノマーがアミノ酸であり、アミド結合を介して結合しているポリマーを意味し、またペプチドと称されている。アミノ酸がアルファ−アミノ酸である場合、L−光学異性体またはD−光学異性体のいずれかが使用可能となる。また、非天然アミノ酸、例えばベータ−アラニン、フェニルグリシンおよびホモアルギニンも含まれる。一般に、遺伝子によってコードされていない、一般的に見られるアミノ酸も本発明で使用してよい。インターフェラーで使用されたアミノ酸のすべてまたは一部はD−またはL−異性体のいずれかであってよい。また、他のペプチド模倣薬も本発明で有用である。本発明者らは具体的に、Sillerud LOおよびLarson RS (2005) Curr Protein Pept Sci. 6 (2): 151-69からタンパク質−タンパク質相互作用のアンタゴニストとしてのペプチド模倣薬の開発および使用の調査を参照し、本明細書に援用している。さらに、D−アミノ酸をペプチド配列に付加し、ターン特性(特にグリシンの場合)を安定化させる。別のアプローチでは、アルファ、ベータ、ガンマまたはデルタターン模倣体(アルファ、ベータ、ガンマまたはデルタジペプチドを使用し、ペプチドの構造モチーフおよびターン特性を模倣すると同時にタンパク質分解に対する安定性を与え、例えばコンフォメーション安定性および可溶性などの他の特性を向上させることが可能である。
標的タンパク質からの自己会合領域の単離
自己会合配列は疎水性であることが多いが、通常かならずしもそうであるとはかぎらない。例えば、酵母プリオンの自己会合性領域はむしろ極性である。実際、ポリペプチドまたはタンパク質由来のアミノ酸領域のクロスベータ凝集は(1)疎水性が高い、(2)β−シート性向が良好である、(3)実行電荷が低い、(4)溶媒暴露されている場合に、開始が可能である。したがって、自己会合タンパク質領域(「セグメント」は「領域」と同義)は折り畳み状態でほとんどの場合、埋まり込んでおり、溶媒に暴露されていない。後者は、リフォールディング中、もしくは変性または部分的に折り畳まれた状態が著しく密になっている、すなわち高濃度で、または不安定化条件または突然変異の結果としての条件下で、多くの球状タンパク質中で凝集が起こることを実験的に見出すことで確認する。
これらの調査結果に基づいて、タンパク質中の自己会合領域(「β−凝集性ストレッチまたはセグメント」と同義)を予測し得るコンピュータアルゴリズムを開発した。1つの該アルゴリズム、TANGOは統計力学アルゴリズムに基づいており、これは上述の3つの物理化学的パラメーターを考え、ならびに異なる構造的立体構造:ベータターン、アルファヘリックス、ベータシート凝集構造および折り畳み構造間の競合も考えるものである(Fernandez-Escamilla, AMら、(2004) Nat. Biotechnol. 22, 1302-1306, 特に1305および1306ページの方法の項を参照により本明細書に援用する。また、方法でさらに詳述した同じ項の補足注記1および2ならびにTANGOアルゴリズムの較正および試験に使用のデータセット)。したがって、標的タンパク質にある自己会合領域はTANGOなどのコンピュータアルゴリズムにより得られる。自己会合領域は多くの場合標的タンパク質のコア内に埋まっており10、これは標的タンパク質の安定性に対応するエネルギーバリアにより分子内会合からペプチドを効果的に保護するものである11。その正常環境下(例えば細胞質、細胞外マトリックス)では、標的タンパク質は、機能的な単量体形態を維持する際にタンパク質を助ける分子シャペロンから援助される12。TANGOアルゴリズムにより使用されたモデルは、ペプチドやタンパク質中のベータ凝集を予測するように設計されており、ランダムコイルおよび元のコンフォメーションならびに他の主要な立体構造状態、すなわちベータターン、アルファヘリックスおよびベータ凝集構造を包含する位相空間からなる。ペプチドのすべてのセグメントはボルツマン分布にしたがってこれらの状態をそれぞれ集合させることが可能である。したがって、ペプチドの自己会合領域を予測するため、TANGOは位相空間の分配関数を簡単に計算する。特定のアミノ酸配列の凝集傾向を見積もるため、以下の仮説を立てる:(i)整列したベータシート凝集構造において、主な二次構造はベータ鎖である。(ii)凝集プロセスに関与している領域は完全に埋まっており、したがって完全な溶媒和の収支、完全なエントロピーを効果的に使い、H結合ポテンシャルを最適化することができる(すなわち、凝集構造内で起こるH結合の数は受容器で補われる供与体群の数と関連している。供与体または受容器が過剰量でも満足のいかないものである)。(iii)選択されたウィンドウの相補的変化は好ましい静電相互作用を構築し、ウィンドウの内外のペプチドの全体的な実効電荷は凝集を嫌う。TANGOはWorld Wide Web、http://tango.embl.de/でアクセス可能である。ジグリゲーター(zyggregator)アルゴリズムは別の例である(Pawar APら、(2005) J. Mol. Biol. 350, 379-392)。これらのアルゴリズムは、類似した長さの配列の1セットから算出した平均的性向で所与のアミノ酸配列の凝集性向スコアを比較することで凝集傾向配列を同定する。
本発明において、標的タンパク質内で同定された自己会合領域のTANGOスコアは5%であり、これはインビトロでの凝集リスクの95%に相当すると、本発明者らは評価する。疾患とは無関連のヒトプロテオームから得たタンパク質の85%が、TANGOスコアが実験的に決定した閾値5%を上回っている領域を少なくとも1つ有していると、本発明者らは計算している。このことから、85%を超えるヒトタンパク質が少なくとも1つの単一自己会合領域を有してはいるが、タンパク質の正常な安定性およびシャペロン機構からの援助により凝集が防止されていることが分かる。本発明は、タンパク質凝集の特異的誘発に使用されるインターフェラー分子を調製するため、標的タンパク質からこれらの自己会合領域を単離する。インターフェラー分子のB部は少なくとも1つの凝集領域を含み、少なくとも1つの凝集領域は標的タンパク質に由来される。インターフェラー分子のB部にある標的タンパク質の複数の凝集領域を組み込むことで、タンパク質干渉の強度(タンパク質干渉の強度は例えば、前記タンパク質または前記タンパク質を含む細胞が特異性インターフェラー分子と接触したときの、標的タンパク質の生物学的機能の損失を%で表している)は制御可能となる。実際、低いTANGOスコア(通常は5%〜約20%)の標的タンパク質由来の凝集領域は2、3、4またはそれ以上の凝集領域に対するインターフェラーのB部で反復可能である。代替的実施態様として、同じタンパク質由来の低いTANGOスコアの1、2または3または4またはそれ以上の異なる凝集領域はインターフェラーのB部に組み込むことが可能である。別の代替的実施態様として、1、2、3、4またはそれ以上の合成凝集領域(したがって標的タンパク質由来ではない)は、標的タンパク質由来の1、2、3、4またはそれ以上の凝集領域とB部内で結合し、低いTANGOスコアの標的タンパク質の下方制御を促進することが可能である。
したがって、別の実施態様では、本発明は標的タンパク質の凝集能がある非天然分子を提供する。特定の一実施態様では、前記非天然分子は本来タンパク質性である。タンパク質性というのは、分子がL−アミノ酸またはD−アミノ酸またはL−およびD−アミノ酸の混合物もしくは天然アミノ酸およびペプチド模倣薬の組み合わせを含むことを意味する。
さらに別の実施態様では、本発明は水溶性タンパク質ドメインから単離した少なくとも1つの自己会合領域を含む非天然分子を提供し、前記自己会合領域は前記自己会合領域の凝集を防止する部分と融合している。
さらに別の実施態様では、本発明は水溶性タンパク質ドメインから単離した少なくとも1つの自己会合領域を含む非天然分子を提供し、前記自己会合領域は、前記自己会合領域の凝集を防止する部分と融合しており、そのため前記自己会合領域はそれが存在する溶媒と直接接触している。
さらに別の実施態様では、本発明は水溶性タンパク質ドメインから単離した少なくとも1つの自己会合領域からなる非天然分子を提供し、前記自己会合領域は前記自己会合領域の凝集を防止する部分と融合している。
さらに別の実施態様では、本発明は水溶性タンパク質ドメインから単離した少なくとも1つの自己会合領域からなる非天然分子を提供し、前記自己会合領域は、前記自己会合領域の凝集を防止する部分と融合しており、そのため前記自己会合領域はそれが存在する溶媒と直接接触している。
特定の実施態様では、該部分は例えば、ペプチド、アガロースビーズ、タンパク質ドメインまたはタンパク質である。別の特定の実施態様では、前記非天然分子は、その少なくとも1つの自己会合領域が標的タンパク質から誘導される少なくとも2つの自己会合領域を含む。
言い換えれば、本発明はA部およびB部を含む非天然分子を提供しており、ここでi)A部はB部の凝集を防止するペプチド、タンパク質ドメイン、タンパク質またはアガロースビーズなどの領域を含み、ii)B部は少なくとも1つの自己会合領域を含み、ここで前記領域は少なくとも3つの隣接したアミノ酸からなり、また機能が阻害される前記タンパク質から単離されており、リンカーは場合によってA部とB部との間に存在している。
さらに言い換えれば、本発明はA部およびB部を含む非天然分子を提供しており、ここでi)A部はB部の凝集を防止するペプチド、タンパク質ドメインまたはアガロースビーズなどの領域を含み、ii)B部は少なくとも3つの隣接したアミノ酸からなる少なくとも1つの自己会合領域を含み、少なくとも1つの自己会合領域は機能が阻害されるタンパク質から単離されており、前記領域は水溶性の前記タンパク質から得たドメインから単離されており、リンカーは場合によってA部とB部との間に存在しており、B部は前記分子と前記タンパク質が存在する環境に直接接触している。
さらに言い換えれば、本発明はA部およびB部を含む非天然分子を提供しており、ここでi)A部はB部の凝集を防止するペプチド、タンパク質ドメインまたはアガロースビーズなどの領域を含み、ii)B部は少なくとも3つの隣接したアミノ酸からなる少なくとも1つの自己会合領域からなり、前記少なくとも1つの自己会合領域は機能が阻害されるタンパク質から単離されており、前記領域は水溶性の前記タンパク質から得たドメインに由来しており、リンカーは場合によってA部とB部との間に存在しており、B部は前記分子と前記タンパク質が存在する環境に直接接触している。
表現「水溶性の前記タンパク質から得たドメインから単離した(またはに由来する)」は、自己会合領域がタンパク質の可溶ドメインから単離した隣接アミノ酸配列であることを意味する。後者は、膜貫通領域由来の自己会合領域またはシグナル配列由来の自己会合領域が、該実施態様では、これらのインターフェラー分子生成物ついての本特許請求の範囲で明確に除外されていることをも意味している。
本発明では、インターフェラー分子の少なくとも1つの自己会合領域(すなわちインターフェラー分子のB部)は、前記インターフェラー分子が存在する環境(例えば溶媒、サイトゾル)と「直接接触」している。この重要性をさらに明確にする。球状タンパク質において、自己会合配列(「凝集核形成領域」にも指定されている)は概して球状タンパク質の疎水性芯部に埋め込まれており、そのように、元の状態を安定化させる協力的相互作用の緊密なネットワークにより溶媒から保護されている。従って、正常な状況下では、前記自己会合領域と環境(例えば溶媒)との間には「直接的な接触」は存在しない。タンパク質が折り畳まれていない場合のみ、例えばそれがリボソーム上で合成されるか、突然変異、温度変化、pHまたは特異性シャペロンの損失によって不安定化され、それゆえ折り畳まれていない状態を可とする場合は、その自己会合領域が環境に暴露されることにつながる。自己会合領域は(凝集を防止するため)タンパク質の内側に通常埋め込まれており、非天然インターフェラー分子内では、前記自己会合領域は単離し、凝集を防止する部分(すなわちインターフェラー分子のA部)に前記領域を連結させることで環境に暴露させている。さらに言い換えれば、非天然インターフェラー分子は球状構造へと折り畳まれることはなく、したがって、非天然インターフェラー分子内の少なくとも1つの自己会合領域(すなわちB部)は、前記インターフェラー分子が存在する溶媒と直接接触している。ゆえに「直接接触している」は「埋め込まれていて〜から保護されている」ことの対義語を意味する。
具体的な一実施態様では、可溶タンパク質ドメイン由来の少なくとも1つの自己会合領域を含むインターフェラー分子はポリペプチドである。
別の具体的な実施態様では、本発明は、該インターフェラー分子をコードするポリヌクレオチドを含む組み換えベクターを提供する。
別の具体的な実施態様では、本発明のインターフェラー分子は薬剤として使用する。
インターフェラー分子の治療への応用
タンパク質は多数の酵素反応から、シグナル伝達を経て、構造の提供に至る生物活性に関与している。タンパク質の構造、存在量または活性の変化が多くの疾患の根本的原因となっている。多くの薬剤は、1つまたは限定された数のタンパク質の特異的干渉を介して作用する。本発明は選択される標的タンパク質を特異的に阻害することが可能な新規な種類の化合物を開発する方法を提供する。これらの新規な種類の化合物はインターフェラーと呼ばれる。
よって、さらに別の実施態様では、本発明は、水溶性タンパク質ドメイン由来の少なくとも1つの自己会合領域を含む非天然分子の薬剤としての使用を提供しており、前記自己会合領域は前記自己会合領域の凝集を防止する部分に融合している。
さらに別の実施態様では、本発明は、水溶性タンパク質ドメイン由来の少なくとも1つの自己会合領域を含む非天然分子の薬剤としての使用を提供しており、前記自己会合領域は、前記自己会合領域の凝集を防止する部分と融合しており、そのため前記自己会合領域は前記分子が存在する溶媒と直接接触している。
さらに言い換えれば、本発明はA部およびB部を含む非天然インターフェラー分子の薬剤としての使用を提供しており、i)A部はB部の凝集を防止するペプチドまたはタンパク質ドメインなどの領域を含み、ii)B部は少なくとも1つの自己会合領域を含み、前記領域が標的タンパク質由来の少なくとも3つの隣接したアミノ酸を含み、リンカーは場合によってA部とB部との間に存在している。
さらに言い換えれば、本発明はA部およびB部を含む非天然インターフェラー分子の薬剤としての使用を提供しており、i)A部はB部の凝集を防止するペプチドまたはタンパク質ドメインなどの領域を含み、ii)B部は少なくとも1つの自己会合領域を含み、前記領域が標的タンパク質由来の少なくとも3つの隣接したアミノ酸を含み、リンカーは場合によってA部とB部との間に存在しており、B部は前記インターフェラー分子が存在する溶媒に直接接触している。
前記インターフェラー分子は疾患の治療に、および/または発癌性タンパク質などの少なくとも1つの標的タンパク質の異常発現に関連した癌などの疾患を治療する薬剤の製造に使用できる。用語「異常発現」は例えば、癌の場合における発癌性タンパク質の(過剰)発現を意味し、それにはまたドミナントネガティブタンパク質の発現、特定タンパク質の望ましからざる局在化または特定のタンパク質のスプライス変異体、特定タンパク質の特定のスプライス変異体の望ましくない発現、突然変異タンパク質の高度な活性または特定タンパク質の高度な活性が含まれる。
特定の実施態様では、「異常発現」は、翻訳後修飾タンパク質の不要な存在または非翻訳後修飾タンパク質の望ましくない存在を意味する。翻訳後修飾は修飾アミノ酸の物理化学的性質を改変し、そのようにそれらは、凝集傾向が最大の形態を特異的に標的にするために活用され得る所与のポリペプチドセグメントの凝集傾向を改変できる可能性がある。よって、翻訳後修飾が自己会合領域の凝集傾向を著しく減少させれば、非修飾タンパク質で干渉は最も効率的なものとなる。対照的に、翻訳後修飾が自己会合領域の凝集傾向を増加させる場合、修飾タンパク質で干渉は最も効率的なものとなる。疎水性のみに基づいて、リン酸化およびグリコシル化などの修飾が凝集傾向を減少させ、一方、脂質付着が凝集傾向を増加させることが推測される。
本発明のインターフェラー分子が矛先を向ける標的タンパク質は病態と関連している可能性がある。例えばタンパク質は、ウイルスタンパク質、腫瘍関連タンパク質または自己免疫疾患関連タンパク質などの病原関連タンパク質である可能性がある。1つの態様では、本発明は不要な細胞増殖、例えば悪性または非悪性細胞増殖のリスクを持つか、もしくはそれに罹患している被験体を治療する方法を特徴としている。該方法には:インターフェラー分子、例えば本明細書に記載の構造を有するインターフェラーを提供することが含まれ、この方法では前記インターフェラー分子は、不要な細胞増殖を促進したタンパク質の機能および/または存在を妨げ(阻害し)、被験体、好ましくはヒト検体に前記インターフェラーを投与し、それにより被験体を治療することが可能である。
好ましい一実施態様では、タンパク質は成長因子または成長因子受容体、キナーゼ(例えばタンパク質チロシン、セリンまたはスレオニンキナーゼ)、アダプタータンパク質、Gタンパク質とカップリングした受容体スーパーファミリーから得たタンパク質もしくは転写因子である。好ましい一実施態様では、インターフェラー分子はPDGF−ベータタンパク質の生物学的機能を阻害し、したがって不要なPDGF−ベータ発現、例えば精巣および肺癌が特徴である疾患を有するか、またはそのリスクを持つ被験体を治療するために使用できる。別の好ましい実施態様では、インターフェラーはErb−Bタンパク質の機能および/または存在を阻害(ノックダウン)し、よって不要なErb−B発現が特徴である疾患、例えば乳癌を有するか、またはそのリスクを持つ被験体を治療することに使用できる。別の好ましい実施態様では、インターフェラーはSrcタンパク質の機能を阻害(または「機能を妨げる」と同義)(またはその存在を妨げ)、よって不要なSrc発現が特徴である疾患、例えば結腸癌であるか、またはそのリスクを持つ被験体を治療することに使用できる。別の好ましい実施態様では、インターフェラーはCRKタンパク質の機能および/または存在を阻害し、よって不要なCRK発現が特徴である疾患、例えば結腸癌および肺癌を有するか、またはそのリスクを持つ被験体を治療することに使用できる。別の好ましい実施態様では、インターフェラーはGRB2タンパク質の機能および/または存在を阻害し、よって不要なGRB2発現が特徴である疾患、例えば扁平上皮癌を有するか、またはそのリスクを持つ被験体を治療することに使用できる。別の好ましい実施態様では、インターフェラー分子はRAS遺伝子の機能および/または存在を阻害し、よって不要なRAS発現が特徴である疾患、例えば膵臓癌、結腸癌および肺癌ならびに慢性白血病を有するか、またはそのリスクを持つ被験体を治療することに使用できる。別の好ましい実施態様では、インターフェラー分子はMEKKタンパク質の機能および/または存在を阻害し、よって不要なMEKK発現が特徴である疾患、例えば扁平上皮癌、メラノーマまたは白血病を有するか、またはそのリスクを持つ被験体を治療することに使用できる。別の好ましい実施態様では、インターフェラー分子はJNKタンパク質の機能および/または存在を阻害し、よって不要なJNK発現が特徴である疾患、例えば臓癌または乳癌であるか、またはそのリスクを持つ被験体を治療することに使用できる。別の好ましい実施態様では、インターフェラー分子はRAFタンパク質の機能および/または存在を阻害し、よって不要なRAP発現が特徴である疾患、例えば肺癌または白血病を有するか、またはそのリスクを持つ被験体を治療することに使用できる。別の好ましい実施態様では、インターフェラー分子はErk1/2タンパク質の機能および/または存在を阻害し、よって不要なErk1/2発現が特徴である疾患、例えば肺癌を有するか、またはそのリスクを持つ被験体を治療することに使用できる。別の好ましい実施態様では、インターフェラー分子はPCNA(p21)タンパク質の機能および/または存在を阻害し、よって不要なPCNA発現が特徴である疾患、例えば肺癌を有するか、またはそのリスクを持つ被験体を治療することに使用できる。別の好ましい実施態様では、インターフェラー分子はMYBタンパク質の機能および/または存在を阻害し、よって不要なMYB発現が特徴である疾患、例えば直腸癌または慢性骨髄性白血病を有するか、またはそのリスクを持つ被験体を治療することに使用できる。好ましい実施態様では、インターフェラー分子はc−MYCタンパク質の機能および/または存在を阻害し、よって不要なc−MYC発現が特徴である疾患、例えばバーキットリンパ腫または神経芽細胞腫を有するか、またはそのリスクを持つ被験体を治療することに使用できる。別の好ましい実施態様では、インターフェラー分子はJUNタンパク質の機能および/または存在を阻害し、よって不要なJUN発現が特徴である疾患、例えば卵巣癌、精巣癌または乳癌を有するか、またはそのリスクを持つ被験体を治療することに使用できる。別の好ましい実施態様では、インターフェラー分子はFOSタンパク質の機能および/または存在を阻害し、よって不要なFOS発現が特徴である疾患、例えば皮膚癌または精巣癌を有するか、またはそのリスクを持つ被験体を治療することに使用できる。別の好ましい実施態様では、インターフェラー分子はBCL−2タンパク質の機能および/または存在を阻害し、よって不要なBCL−2発現が特徴である疾患、例えば肺癌または精巣癌もしくは非ホジキンリンパ腫を有するか、またはそのリスクを持つ被験体を治療することに使用できる。別の好ましい実施態様では、インターフェラー分子はサイクリンDタンパク質の機能および/または存在を阻害し、よって不要なサイクリンD発現が特徴である疾患、例えば食道癌および直腸癌を有するか、またはそのリスクを持つ被験体を治療することに使用できる。別の好ましい実施態様では、インターフェラー分子はVEGFタンパク質の機能および/または存在を阻害し、よって不要なVEGF発現が特徴である疾患、例えば食道癌、直腸癌もしくは病的血管新生を有するか、またはそのリスクを持つ被験体を治療することに使用できる。好ましい実施態様では、インターフェラー分子はEGFRタンパク質の機能および/または存在を阻害し、よって不要なEGFR発現が特徴である疾患、例えば乳癌を有するか、またはそのリスクを持つ被験体を治療することに使用できる。別の好ましい実施態様では、インターフェラー分子はサイクリンAタンパク質の機能および/または存在を阻害し、よって不要なサイクリンA発現が特徴である疾患、例えば肺癌および子宮頚癌を有するか、またはそのリスクを持つ被験体を治療することに使用できる。別の好ましい実施態様では、インターフェラー分子はサイクリンEタンパク質の機能および/または存在を阻害し、よって不要なサイクリンE発現が特徴である疾患、例えば肺癌および乳癌を有するか、またはそのリスクを持つ被験体を治療することに使用できる。別の好ましい実施態様では、インターフェラー分子はWNT−1タンパク質の機能および/または存在を阻害し、よって不要なWNT−1発現が特徴である疾患、例えば基底細胞癌を有するか、またはそのリスクを持つ被験体を治療することに使用できる。別の好ましい実施態様では、インターフェラー分子はベータ−カテニンタンパク質の機能および/または存在を阻害し、よって不要なベータ−カテニン発現が特徴である疾患、例えば腺癌または肝細胞癌を有するか、またはそのリスクを持つ被験体を治療することに使用できる。別の好ましい実施態様では、インターフェラー分子はc−METタンパク質の機能および/または存在を阻害し、よって不要なc−MET発現が特徴である疾患、例えば肝細胞癌を有するか、またはそのリスクを持つ被験体を治療することに使用できる。別の好ましい実施態様では、インターフェラー分子はタンパク質キナーゼC(PKC)タンパク質の機能および/または存在を阻害し、よって不要なPKC発現が特徴である疾患、例えば乳癌を有するか、またはそのリスクを持つ被験体を治療することに使用できる。別の好ましい実施態様では、インターフェラー分子はNFカッパー−Bタンパク質の機能および/または存在を阻害し、よって不要なNFカッパー−B発現が特徴である疾患、例えば乳癌を有するか、またはそのリスクを持つ被験体を治療することに使用できる。
別の好ましい実施態様では、インターフェラー分子はSTAT3タンパク質の機能および/または存在を阻害し、よって不要なSTAT3発現が特徴である疾患、例えば精巣癌を有するか、またはそのリスクを持つ被験体を治療することに使用できる。別の好ましい実施態様では、インターフェラー分子はサバイビンタンパク質の機能および/または存在を阻害し、よって不要なサバイビン発現が特徴である疾患、例えば子宮頚癌または膵臓癌を有するか、またはそのリスクを持つ被験体を治療することに使用できる。別の好ましい実施態様では、インターフェラー分子はHer2/Neuタンパク質の機能および/または存在を阻害し、よって不要なHer2/Neu発現が特徴である疾患、例えば乳癌を有するか、またはそのリスクを持つ被験体を治療することに使用できる。別の好ましい実施態様では、インターフェラー分子はトポイソメラーゼIタンパク質の機能および/または存在を阻害し、よって不要なトポイソメラーゼI発現が特徴である疾患、例えば卵巣癌および直腸癌を有するか、またはそのリスクを持つ被験体を治療することに使用できる。別の好ましい実施態様では、インターフェラー分子はトポイソメラーゼIIアルファタンパク質の機能および/または存在を阻害し、よって不要なトポイソメラーゼII発現が特徴である疾患、例えば乳癌および直腸癌を有するか、またはそのリスクを持つ被験体を治療することに使用できる。
別の態様では、本発明は、血管形成阻害により寛解する可能性がある病気または疾患、例えば癌のリスクを持つか、またはそれに罹患している被験体、例えばヒトを治療する方法を提供する。方法は:インターフェラー分子、例えば本明細書に記載の構造を有するインターフェラー分子を提供することを含み、この方法ではインターフェラー分子は血管形成を媒介するタンパク質を阻害する(または機能を妨げる)ことが可能であり、被験体にインターフェラー分子を投与し、それにより被験体を治療する。好ましい実施態様では、インターフェラー分子はアルファv−インテグリンタンパク質の機能および/または存在を阻害し、よって不要なアルファv−インテグリンが特徴である疾患、例えば脳腫瘍または上皮由来腫瘍を有するか、またはそのリスクを持つ被験体を治療することに使用できる。別の好ましい実施態様では、インターフェラー分子はFlt−1受容体タンパク質の機能および/または存在を阻害し、よって不要なFlt−1受容体が特徴である疾患、例えば癌および関節リウマチを有するか、またはそのリスクを持つ被験体を治療することに使用できる。別の好ましい実施態様では、インターフェラー分子はチューブリンタンパク質の機能および/または存在を阻害し、よって不要なチューブリンが特徴である疾患、例えば癌および網膜血管新生を有するか、またはそのリスクを持つ被験体を治療することに使用できる。
別の態様では、本発明はウイルスに感染しているか、もしくはウイルス感染と関連している疾患または病気のリスクを持つかあるいはそれに罹患している被験体を治療する方法を提供する。方法は:インターフェラー分子、例えば本明細書に記載の構造を有するインターフェラー分子を提供することを含み、この方法ではインターフェラー分子はウイルスタンパク質またはウイルス機能、例えば進入または成長を媒介する細胞タンパク質と相同であり、そしてそれをサイレンシングすることが可能であり;被験体、好ましくはヒト検体に前記インターフェラー分子を投与し、それにより被験体を治療する。そのように本発明は、ヒトパピローマウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、A型肝炎ウイルス(HAV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、ライノウイルス、ウエストナイルウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、麻疹ウイルス(MV)またはポリオウイルスなどのウイルスに感染した患者を治療する薬剤の製造のためのインターフェラーを使用する方法を提供する。
別の態様では、本発明は病原体、例えば細菌、アメーバ、寄生生物または真菌の病原体に感染した被験体を治療する方法を特徴とする。方法には:インターフェラー分子、例えば本明細書に記載の構造を有するインターフェラー分子を提供することが含まれ、この方法では前記インターフェラー分子は前記病原体由来の病原タンパク質の機能を阻害し、被験体、好ましくはヒト検体にインターフェラー分子を投与し、それにより被験体を治療することが可能である。病原体から得た標的タンパク質は、成長、細胞壁合成、タンパク質合成、転写、エネルギー代謝(例えばクレブスサイクル)または毒素生成に関与しているものとなり得る。したがって、本発明は例えば、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、マイコバクテリウム・ウルセランス(Mycobacterium ulcerans)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、ライ菌(Mycobacterium leprae)、ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎クラミジア(Chlamydia pneumoniae)または肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)に感染した患者を治療する方法を提供する。
別の態様では、本発明は、不要な免疫応答に特徴づけられる病気または疾患、例えば炎症性の病気または疾患もしくは自己免疫の病気または疾患のリスクを持つか、またはそれに罹患している被験体、例えばヒトを治療する方法を提供する。方法は:インターフェラー分子、例えば本明細書に記載の構造を有するインターフェラー分子を提供することを含み、この方法ではインターフェラー分子は不要な免疫応答を媒介するタンパク質の機能および/または存在を阻害(または下方制御)し、被験体に前記インターフェラー分子を投与し、それにより被験体を治療することが可能である。好ましい実施態様では、病気または疾患は虚血または再灌流傷害、例えば急性心筋梗塞、不安定狭心症、心肺バイパス術、外科的介入(例えば経皮的冠動脈形成術などの血管形成術)、移植臓器または組織に対する応答(例えば移植心臓または血管組織)もしくは血栓溶解に関連した虚血再灌流または疾患である。別の好ましい実施態様では、病気または疾患は再狭窄、例えば外科的介入(例えば経皮的冠動脈形成術などの血管形成術)に関連した再狭窄である。別の好ましい実施態様では、病気または疾患は炎症性腸疾患、例えばクローン病または潰瘍性大腸炎である。別の好ましい実施態様では、病気または疾患は感染または損傷に伴う炎症である。別の好ましい実施態様では、病気または疾患は喘息、狼瘡、多発性硬化症、糖尿病、例えば2型糖尿病、関節炎、例えばリウマチ性または乾癬性リウマチである。別の好ましい実施態様では、インターフェラー分子はインテグリンまたはそのコリガンド、例えばVLA4、VCAM、ICAMの機能を阻害する。別の好ましい実施態様では、インターフェラー分子はセレクチンまたはそのコリガンド、例えばP−セレクチン、E−セレクチン(ELAM)、L−セレクチンまたはP−セレクチン糖タンパク質(PSGL1)の機能を阻害する。別の好ましい実施態様では、インターフェラー分子は相補系成分、例えばC3、C5、C3aR、C5aR、C3転換酵素、C5転換酵素の機能を阻害する。別の好ましい実施態様では、インターフェラー分子はケモカインまたはその受容体、例えばTNF−α、IL−1α、IL−1、IL−2、IL−2R、IL−4、IL−4R、IL−5、IL−6、IL−8、TNFR I、TNFR II、IgE、SCYA11またはCCR3の機能を阻害する。
別の態様では、本発明は、急性疼痛または慢性疼痛のリスクを持つか、またはそれに罹患している被験体、例えばヒト、を治療する方法を提供する。方法は、インターフェラー分子、例えば本明細書に記載の構造を有するインターフェラー分子を提供することを含み、この方法ではインターフェラー分子は疼痛のプロセスを媒介するタンパク質を阻害し、被験体に前記インターフェラー分子を投与し、それにより被験体を治療することが可能である。別の好ましい実施態様では、インターフェラー分子はイオンチャネルの成分の機能を阻害する。別の特定の好ましい実施態様では、インターフェラー分子は神経伝達物質受容体またはリガンドの機能を阻害する。
別の態様では、本発明は、神経系の病気または疾患のリスクを持つか、またはそれに罹患している被験体、例えばヒト、を治療する方法を提供する。方法は、インターフェラー分子、例えば本明細書に記載の構造を有するインターフェラー分子を提供することを含み、この方法ではインターフェラー分子は神経系病気または疾患を媒介するタンパク質を阻害し、被験体に前記インターフェラー分子を投与し、それにより被験体を治療することが可能である。特定の実施態様では、治療可能な前記病気(または疾患)にはアルツハイマー病が挙げられる(この場合、インターフェラー分子は、APP、例えばガンマ−セクレターゼ複合体(例えばプレセニリンタンパク質1または2、Aph1タンパク質、ニカストリン、BACE1またはBACE2)に関与しているタンパク質を処理することになるセクレターゼの機能を阻害する。インターフェラーはAPPの処理を阻害し、不溶アミロイドベータの形成を防止する。同様の戦略を利用し、ハンチントン病、脊髄小脳失調症(例えばSCA1、SCA2、SCA3(マシャドジョセフ病)、SCA7またはSCA8)などの他の神経変性疾患を予防および/または治療することが可能である。
したがって、1つの態様では、本発明は少なくとも1つのインターフェラー分子を含む薬剤または医薬組成物を生成または製造、および前記インターフェラー分子と医薬的に許容される担体とを混合させる方法を提供する。好ましい実施態様では、インターフェラー分子はポリペプチドであり、合成的に、あるいは組み換えタンパク質として作製可能である。組み換えタンパク質は細菌細胞、酵母細胞、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞またはトランスジェニック動物または植物などの組み換え発現系を用いて製造してもよい。組み換えタンパク質は、従来のほぼ均一のタンパク質精製手段で精製および/または添加物と混合してもよい。
インターフェラー分子を含む医薬組成物の投与は経口、吸入、経皮または非経口(静脈内、腫瘍内、腹腔内、筋肉内、腔内および皮下など)投与でよい。活性化合物は単独で投与しても、あるいは好ましくは医薬組成物として処方してもよい。1単位は通常、0.01〜500mg、例えば0.01〜50mg、または0.01〜10mg、または0.05〜2mgの化合物もしくはその医薬的に許容される塩を含有するとされている。単位用量は通常、1日に1回またはそれ以上、例えば1日に2、3または4回、より一般的には1日に1〜3回投与するとされており、したがって総1日量は通常0.0001〜10mg/kgの範囲であり;よって70kgの成人に対する好適な総1日量は0.01〜700mg、例えば0.01〜100mg、または0.01〜10mgまたは、より一般的には0.05〜10mgである。
該化合物またはその医薬的に許容される塩は単位用量の経口、非経口、経皮または吸入組成物などの単位用量組成物の形態で投与されることが好ましい。該組成物は混合によって調製し、経口、吸入、経皮または非経口投与に好ましくは適しており、そのようなものとしてタブレット、カプセル、経口液体製剤、粉末、顆粒、トローチ剤、再構成粉末、注射用および注入用の溶液または懸濁液もしくは座薬あるいはエアロゾルの形態であってもよい。
経口投与用のタブレットおよびカプセルは通常、単位用量で提供され、結合剤、充填剤、希釈剤、錠剤化剤、潤滑剤、崩壊剤、着色料、香料および湿潤剤などの通常の賦形剤を含有する。タブレットは当技術分野で周知の方法にしたがってコーティングしてよい。使用に好適な充填剤にはセルロース、マンニトール、ラクトースおよび他の同様な薬剤が挙げられる。好適な崩壊剤にはデンプン、ポリビニルピロリドンおよびデンプングリコール酸ナトリウムなどのデンプン誘導体が挙げられる。好適な崩壊剤には、例えばステアリン酸マグネシウムが挙げられる。好適な医薬的に許容される湿潤剤には、ラリウル硫酸ナトリウムが挙げられる。これらの固体経口組成物は混合、充填、錠剤化等の従来法により調製してよい。混合作業を反復し、大量の充填剤を用いるこれらの組成物の至る所に活性薬剤を分布させてよい。該作業は当然、当該技術分野では慣行となっている。
経口液体製剤は、例えば水性または油性懸濁液、溶液、乳濁液、シロップもしくはエリキシル剤の形態でもよく、あるいは使用前に水または他の好適なビヒクルと再構成するための乾燥生成物として提供してもよい。該液体製剤は、懸濁剤、例えばソルビトール、シロップ、メチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲルまたは水素化食用脂、乳化剤、例えばレシチン、ソルビタンモノオレエートまたはアカシア;非水性ビヒクル(食用油を含んでよい)、例えば落花生油、ヤシ油、グリセリンのエステルなどの油性エステル、プロピレングリコールまたはエチルアルコール;保存料、例えばp−ヒドロキシ安息香酸メチルまたはプロピルもしくはソルビン酸といった通常の添加物、ならびに必要に応じて通常の香料または着色料を含んでよい。経口製剤にはまた、腸溶コーティングを施したタブレットまたは顆粒などの通常の徐放製剤が挙げられる。
好ましくは、吸引用組成物は、嗅剤もしくはネブライザー用のエアロゾルまたは溶液として、あるいは吹送用の超微粒粉末として、単独でまたはラクトースなどの不活性担体と組み合わせて気道へ投与するために提供する。該場合、活性化合物の粒子の直径は50ミクロン未満、好ましくは10ミクロン未満、例えば2〜5ミクロンなど1〜5ミクロンが適している。あるいは、粒径が30〜500nmであるコーティングしたナノ粒子を使用することが可能である。好ましい吸引用量は0.05〜2mg、例えば0.05〜0.5mg、0.1〜1mgまたは0.5〜2mgの範囲内であるとされている。
非経口投与には、流体単位用量の形態は本発明の化合物および滅菌ビヒクルを含有して調製する。ビヒクルおよび濃度に依存して、活性化合物は懸濁または溶解のいずれかが可能である。非経口溶液は通常、化合物をビヒクルに溶解し、ろ過滅菌し、その後好適なバイアルまたはアンプルに充填し、密封することによって調製する。好都合にも、局所麻酔薬、保存料および緩衝剤などのアジュバントもビヒクルに溶解させる。安定性を促進するため、組成物はバイアルに充填した後凍結させ、水分を真空下で除去した。非経口懸濁液は実質的に同じ方法で調製するが、化合物は溶解する代わりにビヒクルに懸濁させること、また滅菌ビヒクルに懸濁する前に酸化エチレンに暴露して滅菌することは例外である。好都合にも、界面活性剤または湿潤剤が活性化合物の均一な分布を促進する組成物に含まれている。必要に応じて、少量の気管支拡張剤、例えばイソプレナリン、イソエタリン、サルブタモール、フェニレフリンおよびエフェドリンなどの交感神経刺激アミン;テオフィリンおよびアミノフィリンなどのキサンチン誘導体ならびにプレドニゾロンなどの副腎皮質ステロイドならびにACTHなどの副腎刺激物質が含まれてもよい。
慣行として、組成物には通常、関連する医療処置における使用のための記述された、または印刷された指示書が添付されている。
好ましい実施態様では、インターフェラー分子はさらにタンパク質形質導入ドメインをさらに含む。タンパク質形質導入ドメイン(PTD)と称する一連の小さいタンパク質ドメインは効率的に、輸送体または特異的受容体とは無関係に生体膜を通過し、ペプチドおよびタンパク質の細胞内への送達を促進することは分かっている。例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV−1)から得たTATタンパク質はインビボで生物学的に活性なタンパク質を送達することが可能である。同様に、アンテナペディアホメオドメインの第3アルファヘリックスおよび単純ヘルペスウイルス由来VP22タンパク質は共有結合ペプチドまたはタンパク質の細胞への送達を促進する(Ford KGら、(2001) Gene Ther. 8, 1-4を参照)。短い両親媒性ペプチド担体Prp−1に基づくタンパク質送達は、完全に生物学的に活性的な形態で、多様なペプチドおよびタンパク質の数種の細胞系への送達に効率的であり、事前の化学的共有結合が不要である(Morris MCら、(2001) Nat. Biotechnol. 19, 1173-1176)。第一の形質導入細胞から周囲の細胞へと広がるVP22キメラタンパク質の能力は遺伝子治療アプローチを改善することが可能である(Zender Lら、(2002) Cancer Gene Ther. 9, 489-496)。タンパク質導入を促進する配列は当業者に周知であり、タンパク質形質導入ドメイン(Protein Transduction Domain)が挙げられるが、これに限定されない。好ましくは、前記配列は、HIV TATタンパク質、ポリアルギニン配列、ペネトラチン(penetratin)およびpep−1から成る群より選択される。さらに他の一般に使用される細胞透過ペプチド(天然および人工ペプチド)は、Joliot A.およびProchiantz A. (2004) Nature Cell Biol. 6 (3) 189-193に開示している。
医薬組成物の第二の態様は、インターフェラー分子をコードするヌクレオチド配列の使用である。インターフェラー分子をコードする核酸配列を使用する場合、前記薬剤は遺伝子治療処置において前記核酸を細胞内へ送達することを好ましくは目的としている。多数の送達法が当業者で周知である。好ましくは、核酸はインビボまたはエクスビボの遺伝子治療に使用するために投与する。非ウイルスベクター送達系には、DNAプラスミド、裸核酸およびリポソームなどの送達ビヒクルと複合した核酸が挙げられる。ウイルスベクター送達系にはDNAおよびRNAウイルスが挙げられ、これらは細胞へ送達された後に、エピソームまたは組み込みゲノムのいずれかを有する。核酸の非ウイルス送達法には、リポフェクション、マイクロインジェクション、遺伝子銃、ビロソーム、リポソーム、免疫リポソーム、ポリカチオンまたは脂質:核酸共役、裸DNA、人工ビリオン、および薬剤に促進されたDNAの取り込みが挙げられる。リポフェクションは例えば、米国特許第 5,049,386号、米国特許第4,946,787号;および米国特許第4,897,355号に記載されており、リポフェクション試薬は市販されている(例えばTransfectam(商標)およびLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに適した陽イオン性および中性脂質には、Flegner, 国際公開第 91/17424号, 国際公開第 91/16024号のものが挙げられる。送達は細胞(エクスビボ投与)または標的組織(インビボ投与)に対して可能である。免疫脂質複合体などの標的リポソームを含む脂質:核酸複合体の調製は当業者に周知である(例えばCrystal, 1995; Blaeseら、1995; Behr, 1994; Remyら、1994; GaoおよびHuang, 1995; 米国特許第4,186,183号, 第4,217,344号, 第4,235,871号, 第4,261,975号, 第4,485,054号, 第4,501,728号, 第4,774,085号, 第4,837,028号および第4,946,787号を参照)。
核酸送達のためのRNAまたはDNAウイルスがベースとなっている系の使用には、体内でウイルスを特定細胞に向け、ウイルス負荷を核に輸送するための高度に進化したプロセスが活かされている。ウイルスベクターは患者(インビボ)に直接投与するか、またはインビトロで細胞を処理するために使用することが可能であり、修飾細胞は患者(エクスビボ)に投与する。核酸の送達のためのウイルスをベースとする従来の系には、遺伝子導入のため、とりわけレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ関連性および単純ヘルペスウイルスベクターが挙げられる。ウイルスベクターは現在、標的細胞および組織内への遺伝子導入の最も高効率で万能な方法である。宿主ゲノム内への組込みはレトロウイルス、レンチウイルスおよびアデノ関連性ウイルス遺伝子導入法で可能であり、挿入した導入遺伝子の発現が長期的なものとなる。また、多くの異なる細胞型および標的組織で形質導入効率が高い。核酸の一過性発現が好ましい場合、複製欠損性アデノウイルスベクターを含むアデノウイルスをベースとする系を使用してもよい。アデノウイルスがベースとなっているベクターは、多くの細胞型で非常に高い効率の形質導入が可能となり細胞分裂を必要としない。該ベクターにより、高い力価および発現レベルが得られる。このベクターは比較的簡単な系で大量に産生することが可能である。組み換えアデノ関連ウイルスベクターを含むアデノ関連ウイルス(「AAV」)ベクターはまた、標的核酸を有する細胞を形質導入するために、例えば核酸およびペプチドのインビトロでの生成やインビボおよびエクスビボ遺伝子治療手段に使用する(例えば米国特許第 4,797,368号; 国際公開第 93/24641号; Kotin, 1994; 組み換えAVVベクターの構築は、U.S. Pat. No. 5,173,414; Hermonat&Muzyczka, 1984; Samulskiら、1989などの多数の出版物に記載されている)。
遺伝子治療ベクターは個々の患者への投与、通常は全身投与(例えば静脈内、腹腔内、筋肉内、気管内、真皮下または頭蓋内注入)または局所投与によりインビボで送達することが可能である。特定の実施態様では、本発明はまた、水力学的遺伝子治療法の使用を構想している。水力学的遺伝子治療はUS6627616(Mirus Corporation, Madison)に開示しており、インターフェラーをコードする非ウイルス核酸の血管内送達に関与しており、これにより血管の透過性は、例えば前記血管の内圧上昇の応用により、または例えばパパベリンなどの血管透過性増加化合物の同時投与により、上昇する。
あるいは、ベクターは個々の患者から移植した細胞(例えばリンパ球、骨髄穿刺液、組織生検)または万能供給者造血幹細胞などの細胞にエクスビボで送達可能であり、その後ベクターを組み込んだ細胞を選択した後に通常、細胞を患者に再移植する。診断、調査または遺伝子治療のためのエクスビボでの細胞トランスフェクション(例えば宿主生物にトランスフェクト細胞の再注入を介して)は当業者に周知である。好ましい実施態様では、細胞を被検生物から単離し、核酸(遺伝子またはcDNA)でトランスフェクトし、被検生物(例えば患者)に再注入して戻す。エクスビボのトランスフェクションに適した多様な細胞型が当業者に周知である(患者から得た細胞を単離し、培養する方法の考察に関しては、例えばFreshneyら、1994、ならびに本明細書に引用した参考文献を参照)。
さらに別の実施態様では、本発明のタンパク質干渉の方法は、タンパク質干渉を媒介可能な細胞または生物内のタンパク質の機能を判定するために使用してよい。細胞は原核細胞もしくは真核細胞、もしくは細胞系、例えば植物細胞または哺乳動物細胞、例えば胎児細胞、多能性幹細胞、腫瘍細胞、例えば奇形癌腫細胞またはウイルス感染細胞などの動物細胞とすることが可能である。生物は真核生物、例えば植物または哺乳動物、特にヒトなどの動物であることが好ましい。
本発明のインターフェラー分子が矛先を向ける標的タンパク質は病態と関連している可能性がある。例えばタンパク質は、ウイルスタンパク質、腫瘍関連タンパク質または自己免疫疾患関連タンパク質などの病原関連タンパク質である可能性がある。標的タンパク質は組み換え細胞または遺伝子改変生物に発現した異種遺伝子である可能性もある。該タンパク質の機能を阻害することで、農業分野もしくは医薬または獣医学分野における多様な情報および治療効果が得られる可能性がある。特に好ましい実施態様では、本発明の方法は、少なくとも1つの内因性標的タンパク質の少なくとも部分的に欠損した発現を含む標的タンパク質特異性ノックアウト表現型を示す真核細胞または真核非ヒト生物を用いて使用するものであり、ここでは前記細胞または生物は、少なくとも1つの内因性標的タンパク質の機能を阻害することが可能な少なくとも1つのインターフェラー分子か、または少なくとも1つの内因性タンパク質の機能および/または存在を阻害することが可能な少なくとも1つのインターフェラー分子をコードするベクターと接触している。留意すべきは、本発明はまた、インターフェラー分子の特異性によりいくつかの異なる内因性タンパク質の標的特異性ノックアウトを可能にすることである。
細胞または非ヒト生物、特にヒト細胞または非ヒト哺乳動物のタンパク質特異性ノックアウト表現型を分析手段に、例えばプロテオームの分析などの複合生理学的プロセスの機能的および/または表現型的な分析に使用してよい。例えば、代替的スプライシングプロセスの制御因子と予想される培養細胞内のヒトタンパク質のノックアウト表現型を調製してよい。これらのうち、タンパク質は特にSRスプライシング因子ファミリーのメンバー、例えばASF/SF2、SC35、SRp20、SRp40またはSRp55である。さらに、CD44などの既定した、あるいはスプライスした遺伝子のmRNAプロファイルに対するSRタンパク質の影響を分析してもよい。
本明細書に記載のタンパク質ベースのノックアウト技術を使用して、内因性標的タンパク質の発現は標的細胞または標的生物内で阻害される可能性がある。内因性タンパク質は、標的タンパク質または標的タンパク質の変異体または突然変異形態をコードする外因性核酸、例えば遺伝子またはcDNAにより相補対になる可能性があり、この外因性核酸は場合により、検出可能ペプチドまたはポリペプチド、例えば親和性タグ、特に多重親和性タグをコードするさらなる核酸配列に融合させる場合がある。標的タンパク質の変異体または突然変異形態は、単数または複数のアミノ酸のアミノ酸置換、挿入および/または欠失によって内因性タンパク質と異なっているという点で、内因性標的タンパク質と異なっている。変異体または突然変異形態は内因性標的タンパク質と同じ生物活性を有する場合がある。他方、変異体または突然変異標的タンパク質は、内因性標的タンパク質の生物活性とは異なる生物活性、例えば部分欠失活性、完全欠失活性、促進された活性等を有する場合もある。相補性は、外因性核酸によりコードされたポリペプチド、例えば標的タンパク質および親和性タグを含む融合タンパク質と、外因性タンパク質をノックアウトするインターフェラー分子とを、標的細胞内で共発現させることで達成してもよい。この共発現は、外因性核酸によりコードされたポリペプチド、例えばタグ修飾した標的タンパク質およびインターフェラー分子の両方を発現する好適な発現ベクターを使用して、もしくは発現ベクターの組み合わせを使用して達成してもよく、またあるいは、インターフェラー分子は細胞の外部から標的細胞に接触してもよい。標的細胞中でデノボ合成されるタンパク質およびタンパク質複合体は外因性タンパク質、例えば修飾融合タンパク質を含むだろう。インターフェラー分子による外因性タンパク質機能の抑制を避けるため、外因性タンパク質は、インターフェラー分子を設計するために選択される凝集領域で十分に異なったアミノ酸を有している必要がある。あるいは、外因性標的タンパク質は他の種から得た対応するタンパク質によって相補対になる可能性があり、または外因性標的タンパク質は前記標的タンパク質のスプライス形態によって相補対になる可能性がある。外因性タンパク質のノックアウトと、突然変異した、例えば部分欠失した外因性標的による救済との組み合わせには、ノックアウト細胞の使用と比較した場合、利点がある。さらにこの方法は標的タンパク質の機能的ドメインを同定することに特に適している。
さらに好ましい実施態様では、少なくとも2種の細胞または生物、例えば遺伝子発現プロファイルおよび/またはプロテオームおよび/または表現型の特徴、の比較を行う。これらの生物は、(i)標的タンパク質阻害のない対照細胞または対照生物、(ii)標的タンパク質阻害のある細胞または生物、および(iii)標的タンパク質阻害に加えて、前記標的タンパク質をコードする外因性標的核酸による標的タンパク質相補性を有する細胞または生物:から選択される。
本発明の方法はまた、薬剤を同定および/または特徴づける、例えば試験物質の集合から新たな薬剤を同定ならびに/もしくは既知の薬剤作用および/または副作用のメカニズムを特徴づける手段に適している。よって、本発明は以下を含む少なくとも1つの標的タンパク質に作用する薬剤を同定および/または特徴づける系にも関連している:(a)前記標的タンパク質をコードする少なくとも1つの外因性標的遺伝子を発現することが可能な真核細胞または真核非ヒト生物、(b)前記少なくとも1つの内因性標的遺伝子の発現を阻害することが可能な少なくとも1つのインターフェラー分子、および(c)薬学的性質が同定および/または特徴づけられるべき試験物質または試験物質の集合体。さらに、上述の系は好ましくは以下を含む:(d)標的タンパク質または標的タンパク質の変異体または突然変異形態またはスプライス形態をコードする少なくとも1つの外因性標的核酸であり、前記外因性標的タンパク質は、その機能が内因性タンパク質の発現よりもインターフェラー分子によって実質的に阻害されないように、凝集領域のアミノ酸レベルでは内因性標的タンパク質と異なる。
また、本発明はインターフェラー分子を含む細胞および生物をも含む。生物は例えば、インターフェラーをコードする遺伝子情報を担持するトランスジェニック植物であり得る。該トランスジェニック植物は、好ましい実施態様ではサイレンシングされた植物(すなわち特定の標的タンパク質が、細胞または生物のサブセット内にある、もしくは前記植物の細胞および器官すべてに存在する特異性インターフェラーの存在により下方制御されている植物)である。インターフェラーを含む細胞は、前記細胞を特定のインターフェラー分子に接触させることにより、または前記細胞を特定のインターフェラー分子で電気穿孔することで生成可能である。特定の実施態様では、インターフェラーを含む細胞は、インターフェラーがプラスミドまたはウイルスベクターなどの組み換え発現ベクターにコードされるトランスフェクション(または形質転換)を経て産生する。
単離:分離および検出
別の実施態様では、本発明は試料からタンパク質を単離する方法を提供しており、この方法は前記試料を前記タンパク質に存在する少なくとも1つの自己会合領域を含む非天然分子と接触させる工程、および得られた共凝集した分子−タンパク質複合体を前記試料から単離する工程を含む。
さらに別の実施態様では、本発明は試料からタンパク質を単離する方法を提供しており、この方法は、前記試料を前記タンパク質から単離した少なくとも1つの自己会合領域を含む非天然分子と接触させる工程(ここで前記自己会合領域は前記自己会合領域の凝集を防止する部分と融合しており)、および得られた共凝集した分子−タンパク質複合体を前記試料から単離する工程を含む。
さらに別の実施態様では、本発明は試料からタンパク質を単離する方法を提供しており、この方法は、前記試料を前記タンパク質から単離した少なくとも1つの自己会合領域を含む非天然分子と接触させる工程(ここで前記自己会合領域が前記自己会合領域の凝集を防止する部分と融合し、それにより前記部分と融合した前記自己会合領域および前記タンパク質が存在する溶媒に前記自己会合領域が直接接触しており)、および得られた共凝集した分子−タンパク質複合体を前記試料から単離する工程を含む。
言い換えれば、本発明は試料からタンパク質を単離する方法を提供しており、以下の工程を含む:
−前記タンパク質をA部およびB部を含む非天然分子に接触させる工程、ここでi)A部はB部の凝集を防止するペプチド、タンパク質ドメインまたはアガロースビーズを含み、ii)B部は少なくとも1つの自己会合領域を含み、ここで前記領域は少なくとも3つの隣接するアミノ酸からなり、また前記タンパク質から単離され、リンカーは場合によりA部およびB部との間に存在し、ならびに
−得られた共凝集分子−タンパク質複合体を前記試料から単離する工程。
さらに言い換えれば、本発明は試料からタンパク質を単離する方法を提供しており、以下の工程を含む:
−前記タンパク質をA部およびB部を含む非天然分子と接触させる工程、ここでi)A部はB部の凝集を防止するペプチド、タンパク質ドメインまたはアガロースビーズを含み、ii)B部は少なくとも1つの自己会合領域を含み、ここで前記領域は少なくとも3つの隣接するアミノ酸からなり、また前記タンパク質から単離され、リンカーは場合によりA部およびB部との間に存在し、B部は前記分子およびタンパク質が存在する環境に直接接触しており、ならびに
−得られた共凝集分子−タンパク質複合体を前記試料から単離する工程。
さらに言い換えれば、本発明は試料からタンパク質を単離する方法を提供しており、以下の工程を含む:
−前記タンパク質をA部およびB部を含む非天然分子と接触させる工程、ここでi)A部はB部の凝集を防止するペプチド、タンパク質ドメインまたはアガロースビーズを含み、ii)B部は少なくとも1つの自己会合領域からなり、ここで前記領域は少なくとも3つの隣接するアミノ酸からなり、また前記タンパク質から単離され、リンカーは場合によりA部およびB部との間に存在し、B部は前記分子およびタンパク質が存在する環境に直接接触しており、ならびに
−得られた共凝集分子−タンパク質複合体を前記試料から単離する工程。
さらに言い換えれば、本発明は試料からタンパク質を単離する方法を提供しており、以下の工程を含む:
−前記タンパク質をA部およびB部を含む非天然分子に接触させる工程、ここでi)A部はB部の凝集を防止するペプチド、タンパク質ドメインまたはアガロースビーズを含み、ii)B部は少なくとも1つの自己会合領域からなり、ここで前記領域は少なくとも3つの隣接するアミノ酸からなり、また前記タンパク質から単離され、リンカーは場合によりA部およびB部との間に存在し、ならびに
−得られた共凝集分子−タンパク質複合体を前記試料から単離する工程。
分離
さらなる実施態様では、少なくとも1つのタンパク質を単離する方法はさらに、少なくとも1つのタンパク質を試料から単離する工程を含む。
少なくとも1つのタンパク質を試料から分離する応用の1つとして、多量のタンパク質の試料からの除去(または欠乏)が挙げられる。実際、タンパク質標的の発見および確認における主な取り組みは、いかに複合タンパク質試料(例えば血漿、尿、脳脊髄液)を明確に分析し、微量標的を測定するかにある。豊富なタンパク質は低量のタンパク質より6〜10桁分、濃縮されていることがよくある。よって、医学的に重要な微量タンパク質を検出し、測定するために、豊富なタンパク質を除去しなければならない。アルブミン、IgG、抗トリプシン、IgA、トランスフェリンおよびハプトグロビンはヒト血清の総タンパク質含有量中、約90%を構成していることから、これらの不要な豊富なタンパク質を即時に欠乏させ、少量で低分子量のタンパク質バイオマーカーを露出させる診断ツールが差し迫って必要である。いくつかの方法が当技術分野ですでに使用する:1)豊富なタンパク質標的を捕らえ、分離する親和性試薬としての免疫グロブリンG(IgG)、2)免疫グロブリンヨーク(IgY)は免疫した鳥の卵黄から単離したIgG様抗体である、3)事前に分画を行い、タンパク質の混合物を異なる画分に分離し、元の混合物中のある種のタンパク質を除去する、および4)タンパク質Aおよびタンパク質GはIgG抗体に特異的な細菌細胞壁タンパク質であり、したがってタンパク質AおよびG親和性樹脂がIgGを除去する、および5)IgG−およびIgY−マイクロビーズをタンパク質検出に使用する。
検出
別の具体的な実施態様では、少なくとも1つのタンパク質の単離法はさらに、前記分子−タンパク質複合体中の少なくとも1つのタンパク質の検出を含む。
検出は例えば、電気泳動、カラムクロマトグラフィー、ろ過、静電気引力、磁性または常磁性引力、質量分析等によりインターフェラー分子−標的タンパク質複合体を分離することで行うことができる。
抗体の使用に基づいた生体検知技術が最も広く使用する。抗体はその形と物理化学的性質に基づいて他の分子を認識し、他の分子と結合する。抗体はタンパク質の複合体混合物の存在下で少量の標的タンパク質を検出することに非常に適している。本発明により、インターフェラー分子(B部は少なくとも1つの特異性タンパク質に特異的であり認識する)の使用は標的タンパク質の特異的捕捉のための抗体(認識要素)使用の代替法になることが分かる。実際、インターフェラー分子は、抗体を一般的に使用する膨大な数の応用に使用することができる。2〜3例を挙げると、診断、微量分析、法医学において、また病原体の特異的検出時に応用を想定している。
本発明の検出および分離応用では、インターフェラー分子のB部が本明細書でA部と指定されている担体に結合していることが好ましい。担体はプラスチックまたはニトロセルロースなどの平面もしくはクロマトグラフカラムとすることが可能であるが、微小球ビーズなどのビーズが好ましい。多様なタイプのビーズおよび微小球に関する一般的な考察はインターフェラー分子のA部の目的を果たすものであり、US6682940の9および10ページに記述しており、参照により本明細書に具体的に援用される。
特定の実施態様では、インターフェラー分子のA部は炭水化物型の担体、例えばセルロースまたはアガロースである。B部はグルタルアルデヒドなどの架橋剤により前記炭水化物担体に共有結合することが可能である。
別の特定の実施態様では、A部はセルロース、ガラスまたは合成ポリマーなどの支持体である。B部のアミノ酸残基およびA部にあるアジド、カルボジイミド、イソシアネートまたは他の化学誘導体を介してA部とB部との間で共有結合を行うことが可能である。
さらに別の特定の実施態様では、A部は多孔性のシラン修飾されたガラスマイクロビーズである。B部はそのペプチドアミノ基を介して(シッフ反応に続いて、水素化ホウ素ナトリウムによる還元)、シリカの原子に化学的に結合したグリシドキシプロピルシラン基の過ヨウ素酸塩酸化により形成されたアルデヒド基に向けてA部に共有結合することが可能である(このカップリングはSportsmanおよびWilson (1980) Anal. Chem. 52, 2013-2018に記載している)。
具体的な実施態様では、担体A部は、A部が架橋しているタンパク質性膜に被覆されている(US4478946の請求項1〜50および担体に関する実施例を参照)。
別の具体的な実施態様では、A部は蛍光ラテックス粒子などの蛍光ビーズである。特許US4550017の、特に4ページには、蛍光ビーズの製造に使用可能な蛍光化合物を記述している。
別の具体的な実施態様では、ビーズA部の大きさは可変であり、蛍光染料を含むか、それを含浸させてもよい。ビーズの変化する大きさおよび染料により、複数のタンパク質を1つの反応で検出および定量することが可能になる。該ビーズを開発するための手段はUS6159748に記述している。
さらに別の特定の実施態様では、A部(ビーズ)とB部との間のカップリングはポリ(スレオニン)、ポリ(セリン)、デキストランまたはポリ(エチレングリコール)を介している。US6399317の実施例6、7、8および9には、このカップリングをどのように行うかを説明している。
さらに別の特定の実施態様では、A部は磁性ビーズである。磁性ビーズ、磁性ビーズとタンパク質薬剤間のカップリングおよびそれらの使用については出願US6489092の8ページに記述されている。
定義
別段、定義されていなければ、本明細書で使用する技術用語および科学用語は、本発明が属している当業者が通常理解しているものと同じ意味を有する。本明細書に記述しているものと類似または同等の任意の方法および材料が本発明の実施または試験において使用できるとはいえ、好ましい方法および材料を記述している。本発明の目的のために、以下の用語を以下に定義する。
本明細書で使用している冠詞「a」および「an」は、冠詞の文法目的上、1つまたは複数(すなわち少なくとも1つ)を意味する。一例として、「a target protein」は1つ以上の標的タンパク質を意味する。
本明細書で使用するとおり、用語「約」は、参照の分量、レベル、値、寸法、大きさまたは量に対して30%ほど、好ましくは20%ほど、より好ましくは10%ほど可変な分量、レベル、値、寸法、大きさまたは量を意味する。
「二官能性架橋試薬」は2つの反応基を含む試薬を意味し、よって該試薬はインターフェラー分子のA部およびB部などの2つの要素に共有結合する能力を有する。架橋試薬中の反応基は通常、スクシンイミジルエステル、マレイミドおよびヨードアセトアミドなどのハロアセトアミドを含む官能基の部類に属している。本明細書全体にわたって、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、用語「含む」および「含んでいる」は、当然のことながら、定まった工程または要素もしくは工程または要素の群を包含していることを暗示しているが、他の工程または要素もしくは工程または要素の群を排除することは暗示していない。
「発現ベクター」または「組み換えベクター」とは、ベクターによりコードされたインターフェラー分子の合成を目的とすることが可能なあらゆる自己遺伝因子を意味する。該発現ベクターは当業者に周知である。
「誘導体」とは修飾、例えば他の化学部分と共役または複合することにより(例えばペグ化)、もしくは当技術分野で理解されているものとする翻訳後修飾技術により塩基配列から誘導されたインターフェラー分子を意味する。
活性を調節する、もしくはある症状を治療または予防するという関連で、「有効量」とは、該調節、治療または予防が必要な個体にその用量のインターフェラー分子を、その効果の調節もしくはその状態の治療または予防に有効である単独投与または連続投与の一部として投与することを意味する。有効量は、治療される個体の健康状態および体調、治療される個体の分類群、組成物の処方、医学的状況の評価、ならびに他の関連する因子に依存して変化するであろう。量は、日常的な試用を通して決定可能である比較的広い範囲にあることが予想される。
「単離した」とは、物質が、元の状態で通常その物質に伴う成分を実質的にまたは本質的に有さないことを意味する。例えば、本明細書で使用した「単離したポリペプチド」は天然の状態でそのポリペプチドに隣接した配列、例えば前記配列に通常隣接した配列から除去した自己会合配列から精製したポリペプチドを意味する。自己会合配列(場合により凝集を防止する部分にカップリングしている)はアミノ酸化学合成により生成するか、または組み換え産生で生成できる。
本明細書で使用する用語「オリゴヌクレオチド」は、ホスホジエステル結合を介して連結した多数のヌクレオチド単位(デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、もしくは関連したその構造的変異体または合成類似体)から構成されるポリマー(もしくは関連したその構造的変異体または合成類似体)を意味する。用語「ポリヌクレオチド」または「核酸」が通常大きいオリゴヌクレオチドに使用しているが、オリゴヌクレオチドは通常、概して約10〜30ヌクレオチドの長さで短めであり、しかしこの用語は任意の長さの分子を意味することが可能である。本明細書で使用する用語「ポリヌクレオチド」または「核酸」はmRNA、RNA、cRNA、cDNAまたはDNAを表す。この用語は通常、30ヌクレオチドより長いオリゴヌクレオチドを意味する。
本明細書で使用する用語「組み換えポリヌクレオチド」は、天然に通常存在しない形態で核酸を操作することによりインビトロで形成されるポリヌクレオチドを意味する。例えば、組み換えポリヌクレオチドは発現ベクターの形態であってよい。概して、該発現ベクターはヌクレオチド配列に操作可能に連結した転写調節核酸および翻訳調節核酸を含む。
「操作可能に連結した」とは、ポリヌクレオチドが転写され、ポリペプチドが翻訳されるような方式で、転写調節核酸および翻訳調節核酸がポリペプチドコードポリヌクレオチドに対して位置していることを意味する。
本明細書で同じ意味で使用する用語「被験体」または「個体」または「患者」は、治療または予防が必要な任意の被験体、詳しくは脊椎動物検体、よりもっと詳しくは哺乳動物検体を意味する。本発明の範囲内にある好適な脊椎動物には霊長類、鳥類、魚類、爬虫類、家畜(例えばヒツジ、ウシ、ウマ、ロバ、ブタ)、実験用動物(例えばウサギ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター)、愛玩動物(例えばネコ、イヌ)および捕獲野生動物(例えばキツネ、シカ、ディンゴ)が挙げられるがこれらに限定されない。しかし、当然のことながら、前述の用語は症状の存在を示唆するものでない。
「医薬的に許容される担体」とは、患者への局所または全身投与に安全に使用できる固体または液体充填剤、希釈剤または封入物質を意味する。
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は本明細書では同じ意味で使用されており、アミノ酸残基のポリマーならびにその変異体および合成類似体を意味する。よってこれらの用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の化学的類似体などの合成非天然アミノ酸であるアミノ酸ポリマーに、ならびに天然アミノ酸ポリマーに適用する。
「組み換えポリペプチド」とは、組み換え技術を使用して、すなわち組み換えまたは合成ポリヌクレオチドの発現によって作製したポリペプチドを意味する。キメラポリペプチドまたはその生物活性的な部分を組み換え技術で産生する場合、それはまた実質的に無培地であることが好ましく、すなわち培地がタンパク質調製物体積の約20%未満、より好ましくは約10%未満、最も好ましくは約5%未満であることを意味する。
本明細書で使用する用語「配列同一性」は、比較の枠全体にわたってヌクレオチドごとに、またはアミノ酸ごとに配列が同一である範囲を意味する。よって、「配列同一性のパーセンテージ」は、2つの最適に整列した配列を比較の枠全体にわたって比較し、同一の核酸塩基(例えばA、T、C、G、I)または同一のアミノ酸残基(例えばAla、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、CysおよびMet)が両配列で発生する位置の数を測定して対応位置の数を求め、比較の枠内(すなわちウインドウサイズ)の位置の総数で対応位置の数を割り、その結果に100を乗じて配列同一性のパーセンテージを求めることで算出する。本発明の目的のため、「配列同一性」はDNASISコンピュータープログラム(ウインドウズ対応バージョン2.5;Hitachi Software engineering Co., Ltd., South San Francisco, Calif., USAより購入)により、ソフトウエアに添付されている参考マニュアルで使用する標準デフォルトを用いて算出した「対応パーセンテージ」を当然のことながら、意味している。「類似性」は、同一であるか、または同類置換を構成しているアミノ酸のパーセンテージ数値を意味する。類似性は、GAP(Deverauxら、1984, Nucleic Acids Research 12, 387-395)などの配列比較プログラムを使用して判定してもよい。この方法では、本明細書に引用している配列と類似の、または実質的に異なる長さの配列は、例えばGAPが使用する比較アルゴリズムにより決定されるギヤップを整列内へ挿入することにより比較してもよい。
用語「形質転換」は、外来または内因性核酸の導入による、生物、例えば細菌、酵母または植物の遺伝子型の改変を意味する。形質転換用ベクターには、プラスミド、レトロウイルスおよび他の動物ウイルス、YAC(酵母人工染色体)、BAC(細菌人工染色体)等が挙げられる。「ベクター」とは、ポリヌクレオチド分子、好ましくは、例えばポリヌクレオチドを挿入またはクローン化できるプラスミド、バクテリオファージ、酵母またはウイルス由来のDNA分子を意味する。好ましくは、ベクターは1つ以上の特有の制限部位を含み、標的細胞または組織もしくはその前駆細胞または組織を含む規定の宿主細胞内で自己複製が可能であり、あるいはクローン化配列が再生成可能なように規定の宿主のゲノムと組み込み可能である。したがって、ベクターは自己複製型ベクター、すなわち染色体外構成要素として存在し、その複製が染色体複製から独立しているベクターであり、例えば直鎖または閉環プラスミド、染色体外要素、ミニ染色体もしくは人工染色体とすることが可能である。ベクターは自己複製を確実にする任意の手段を含むことが可能である。あるいは、ベクターは、宿主細胞に導入された場合、ゲノムに組み込まれ、それが組み込まれている染色体(単数または複数)と共に複製されるベクターであることが可能である。ベクター系は単一のベクターまたはプラスミド、2つ以上のベクターまたはプラスミドを含むことが可能であり、これらは共に、宿主細胞のゲノムまたはトランスポゾンに導入される総DNAを含んでいる。ベクターの選択は通常、ベクターが導入される宿主細胞とのベクターの適合性に依存しているとされている。好ましい実施態様では、ベクターは、動物、好ましくは哺乳動物細胞内で操作可能に機能的なウイルスまたはウイルス由来ベクターであることが好ましい。ベクターは好適な形質転換体の選択に使用され得る抗生物質耐性遺伝子などの選択マーカーも含むことも可能である。該耐性遺伝子の例は当業者に周知であり、抗生物質のカナマイシンおよびG418(Geneticin(登録商標))に対する耐性を付与するnptII遺伝子ならびに抗生物質のハイグロマイシンBに対する耐性を付与するhph遺伝子が挙げられる。
別段定義がなければ、本明細書で使用する技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料は本発明の実施または試験に使用できるが、以下に記述する方法および材料が有用である。その材料、方法および例は実例にすぎず、限定するものではない。本発明の他の特性および利点は詳細な説明と請求項から明らかであろう。
実施例
1.合成ペプチドインターフェラー分子の設計
本発明者らは、自己会合領域を相互接続させる2つのアミノ酸(STLIVL−QN−STVIFE−QN−STVIFE)の短いリンカーを有する3つの合成自己会合領域のみからB部が構成されているインターフェラー分子を構築した。前記3つの自己会合領域は、強力な凝集傾向を有するヘキサペプチドであり、インターフェラー分子の設計については図1を参照されたい。注記:本発明の本文では、全アミノ酸配列はアミノ末端部から始まっているように表現し、カルボキシ末端部の方向へ読み取っていく―したがって「STLIVL」は「NH2−STLIVL−COOH」として読む)。合成インターフェラー分子のB部を、凝集を防止して自己会合領域を環境(ここでは大腸菌のサイトゾル)に直接接触させる部分(A部)にN末端で融合させた(図1は合成インターフェラーの設計の構造を表す)。前記部分は、組み換えタンパク質生成における可溶化タグとして高頻度に使用するNusAタンパク質である13。得られた合成インターフェラー分子(A−B構造)は大腸菌内での組み換え法で作製および精製可能であった。
本発明者らは、(特定の大腸菌タンパク質に特異的な特異性自己会合配列を全く持たない)合成インターフェラー分子の過剰発現が細菌増殖を妨げないことを示してきた。したがって、BL21大腸菌細胞はpETM60プラスミド(G. Stier, EMBLから譲渡)に存在する合成インターフェラー構築物で形質転換した。後者のプラスミドでは、インターフェラーはキメラT7プロモーターの制御下にある(材料と方法の項を参照)。組み換え体は0.6ODの密度まで増殖させ、インターフェラーは、0.5μMのIPTGを添加して37℃で3時間かけて発現させ、細菌懸濁液を寒天プレート上で平板培養した。37℃での12時間のインキュベーションの後、プレートを検査し、細菌が多量に増殖していることが分かった。
次の工程では、柔軟リンカー配列(「KPGAAKG」−図1に「リンカー」として表されている)を合成インターフェラー構築物のCOOH末端にカップリングさせ、標的タンパク質由来の自己会合配列の融合を可能にした。
2.原核生物内のタンパク質干渉
本実施例では、機能的タンパク質干渉が形質を選択可能にしている大腸菌タンパク質を選択し、下方制御した。大腸菌プロテオームから、標的タンパク質をサイトゾル局在および好適な高TANGOスコアの凝集領域の存在で選択した。単一アミノ酸に対する条件付き栄養素要求性は、組成物が制限されている増殖培地を使用して都合よく試験することが可能であることから、本発明者らは、イソロイシン(UniProt15登録記号:ILVI_ECOLI)、メチオニン(UniProt15登録記号:METE_ECOLIおよびMETK_ECOLI)およびロイシン(UniProt15登録記号:LEU1_ECOLI)の合成に関与する4つの候補酵素を選択した。4つの標的タンパク質のTANGO予測スコアに基づく自己会合配列は、ILVI_ECOLIでは:「GVVLVTSG」、TANGOスコア:44、METE_ECOLIでは:「LLLTTYF」、TANGOスコア:32、METK_ECOLI:「LTLLV」、TANGOスコア:20、およびLEU1_ECOLI:「LAFIG」、TANGOスコア:15である。実施例1の合成インターフェラー分子に関する遺伝情報を4つの特異性インターフェラー分子をもたらす4つの生合成酵素の個々の自己会合領域をコードするDNA配列に融合した。インビボでのタンパク質干渉(本質的に(生合成酵素に対して)特異的なインターフェラーとその生合成酵素間の共凝集である)を示すため、本発明者らは以下のように進行した。大腸菌は個々のインターフェラー構築物を含むプラスミドで形質転換し、指数増殖期が開始するまで富栄養培地で培養した。このときインターフェラータンパク質発現をIPTG(イソプロピル−ベータ−D−チオガラクトピラノシド)で誘発した。タンパク質発現を37℃で進行させ、細胞を回収し、食塩で洗浄し、過剰なIPTGおよび富栄養培地を除去し、20個の天然アミノ酸を完備した最小M9倍地含有寒天プレート(M9完全培地と称する)および栄養素要求性が試験されるアミノ酸以外の全アミノ酸を含む最小M9倍地(M9選択と称する)上で平板培養した。4つの標的酵素のうち3つで、機能が完全にノックアウト可能となったことが分かり、すなわち、細菌はM9完全培地ではコロニーを形成するがM9選択寒天プレートでは形成しないと状態が見出された。細胞溶解物の不溶相におけるインターフェラー構築物の発現およびその独占的存在をウエスタンブロットにより確認した。ここで試験した4つの酵素では、共凝集アプローチに対する感受性と、TANGOアルゴリズムにしたがった予測凝集性向との間に明確な関連性が見られ、これはさらにTANGO予測の品質と共に機能的細胞の前後関係を裏付けている。TANGOスコアが最高であるILVIタンパク質は、IPTGすべてが存在しない状況でのT7プロモーターからの漏出発現のためにほぼ完全にノックアウトされ、過剰発現を1時間誘発すると完全に機能がノックアウトされる。METEおよびMETK酵素は中等度のTANGOスコアを示し、インターフェラーを1時間過剰発現しても影響を受けない。しかしIPTG誘発の3時間後には、機能は完全に失活し、コロニー形成は検出できなかった。LEU1酵素で凝集スコアが最も低く、この場合に過剰発現すると活性は中程度に下方制御されるだけであった。顕著に標的酵素の機能的ノックアウトは可逆的である。高レベルの過剰発現インターフェラー物質を負荷した細胞をLB寒天に平板培養した場合、コロニーが正常に増殖していることが示された。これらのコロニーをM9選択へコピーした場合、正常な増殖が再度見られた。このことから、コロニーが成長している間、凝集は起こらず細胞ネットワークが正常に回復していることが示唆される。
3.自己会合スコアが低い自己会合領域を含む標的のタンパク質干渉
自己会合領域はR、K、DおよびEなどの荷電残基と高頻度に隣り合うか、またはそれらを含有し、PおよびG(いわゆるゲートキーパーアミノ酸残基)をも含有する(Rousseau, Serrano&Schymkowiz (2006) How Evolutionary Pressure Against Protein Aggregation Shaped Chaperone Specificity, J Mol Biol, doi: 10. 1016/j. jmb. 2005. 11. 035を参照)。これらのゲートキーパー残基は、これらが会合する配列の自己会合性向を低下させる。所与の標的タンパク質と共凝集するインターフェラー分子のB部の感受性を最適化するために、インターフェラーのB部に含まれる標的タンパク質の自己会合領域は突然変異させることが可能であり、よって上述の残基がL、V、I、F、W、Yなどの凝集促進残基と置換され、また、自己会合領域の自己会合性向を上昇させ得る他の残基も含まれるようになる。インターフェラー分子のB部に含まれる(標的タンパク質由来)突然変異自己会合領域は、標的タンパク質の自己会合領域との、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%および最も好ましくは少なくとも90%の配列相同性を有する。また、凝集に関して中立であるアミノ酸もあり、前記アミノ酸と凝集を好むアミノ酸を置換するとまた、ある領域(例えばS、T、CならびにQ、N、H、MはL、V、I、F、W、Yなどの凝集傾向残基で置換することが可能である の自己会合傾向が上昇するとされている。これらの最適化されたインテグレーター分子は、凝集スコアが低いと予測されている標的のタンパク質干渉を増加させる。実施例2では大腸菌のLEU1酵素のタンパク質干渉があまり効率的ではないことが示されている。この実施例では、LEU1酵素に特異的なインターフェラー分子が最適化されている。LEU1内の同定された自己会合配列は「LAFIG」である。後者の配列にはゲートキーパー残基

が隣り合って配置しており、したがって標的配列の突然変異を促進するために、以下のように縮重pcrに基づいた戦略をとる:相補性プライマーは、突然変異するとされるコドンの各部位に20〜25bpが重複しテンプレートにプライマーが効率的にアニールするように設計される。縮重コドンは、プライマー合成中に等モル比の4つの塩基を組み込むことで導入される(いわゆるNNSコドン)。この縮重プライマーによるQuickchange PCRのプロトコールを使用して、隣り合った位置の20個の点突然変異を含むライブラリーが得られる。このライブラリーをTop 10細胞(Invitrogen)内で増幅し、プラスミドDNAをminiPrepキット(Qiagen)で精製する。試験するにあたって、ノックアウト効率が上昇すれば、LEU1標的に対する突然変異インターフェラー(設計は実施例2のとおり)をBL21細胞(Invitrogen)中に形質転換し、LB寒天プレート上で平板培養する。1ウェル当たり0.2mLのLB+抗生物質を含有する96ウェルプレート中で、個々のコロニーを採取して各ウェルに播種した。ODが0.6になるまでプレートを37℃でインキュベートする。このとき0.5μMのIPTGを添加して37℃で3時間かけて突然変異インターフェラーの発現を誘発する。1μLを除く各ウェルの内容物すべてを、ロイシン以外の全アミノ酸を含有する選択的最小培地で平板培養する。選択的プレート上での増殖損傷に様々な程度があるクローンでは、TempliPhi試薬(GE Health Science)をDNA増幅のために添加し、プレートをシーケンス装置に移す。配列情報は、全範囲にわたる最適化されたLEU1により突然変異したインターフェラー分子を提供する。
4.血清からの免疫グロブリンGの欠乏のためのインターフェラー分子の使用
この欠乏実験において、標的タンパク質由来の自己会合領域がアミノ反応性化学的架橋を介して融合する部分(A部)として、アガロースビーズを選択する。該アガロース材料は市販されており、GE healthcareのNHS-activated Sepharose(商標)4 Fast Flowなどが挙げられる。ヒト免疫グロブリンGは、自己会合領域として使用可能な2つの強力なtango領域

を有する。ペプチド消費はアミノ酸の長さに比例することから、ペプチドは最初の標的領域から10アミノ酸分の画分を含むように設計する。標的配列(自己会合領域)の前にリンカー配列ADPRGAAEGAがあり、非保護の末端で合成し、反応性N末端アミノ基を維持する。設計された配列は、

であり(a)、b)およびc)は強力なtango領域I由来デカペプチドを含む)、

はtango領域IIを含む)。欠乏を調査するため、10mlの血清を1mgの固定化ペプチドと共に25、30、37および45℃で1時間インキュベートする。アガロースビーズを遠心分離により回収し、血清を除去し、アガロースビーズをPBSバッファーで洗浄し、残留不純物を除去する。次いでビーズをSDSバッファーに移し、95℃で10分間インキュベートし、広範にボルテックスする。IgGの存在についてSDS−PAGEを使用して調査する。質量分析により標的の同一性を確認する。
5.検出のためのインターフェラー分子の使用
3つの市販の組み換えタンパク質(ブタ心臓由来クエン酸シンターゼ(Roche)、大腸菌由来ベータ−ガラクトシダーゼ(Sigma)およびロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)由来グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(Sigma)の特異的検出のためにインターフェラー分子を設計した。そこに、最初の工程では、TANGOアルゴリズムにより、以下の標的タンパク質から自己会合領域を判定した:
a)クエン酸シンターゼ(CISY_PIG):「ALFWLLVT」(TANGOスコア60)、
b)ベータ−ガラクトシダーゼ(BGAL_ECOLI):「AVIIWSLGN」(TANGOスコア30)および「ALAVVLQ」(TANGOスコア42)、および、
c)グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD_LEUME):「AFVDAISAVYTA」(TANGOスコア41)。
次の工程では、ビオチンは4つの異なる自己会合領域にアミノ末端でカップリングさせ、以下の4つの異なるインターフェラー分子が生成された:i)クエン酸シンターゼに特異的なビオチン−ALFWLLVT、ii)ベータ−ガラクトシダーゼに特異的なビオチン−AVIIWSLGNおよびビオチン−ALAVVLQ、およびiii)グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼに特異的なビオチン−AFVDAISAVYTA。ビオチン化ペプチドをJerine Peptide Technologiesから入手した。インターフェラーの設計:ビオチン−自己会合領域は、ビオチン(A部)が自己会合領域(B部)の凝集を防止するA−B構造と一致し、自己会合領域を前記ビオチン−自己会合領域が存在する溶媒(PBST)に直接接触させるということに留意されたい。
0.3mgの各標的タンパク質をニトロセルロース膜上にスポットして個々のドットブロットを調製し、次いで風乾し、1%BSA−PBST(0.1%のTween20含有PBS)中で一晩インキュベートし、非特異的結合部位をブロックした。膜をビオチン化検出ペプチドの10mM溶液中に浸漬し、攪拌しながら室温で3時間インキュベートした。バッファーによる洗浄を繰り返した後、ストレプトアビジン−HRP(Horse Radish Peroxidase, Pierce)を用いたビオチン部分の可視化、およびCCDカメラシステムを用いた化学発光検出によりタンパク質へのペプチドの結合を確認した。
6.病的網膜血管新生の治療のためのマウスVEGFに対するインターフェラー分子の使用
網膜新生血管は世界中で盲目の主要な原因であり、病的網膜血管新生は未熟児網膜症(ROP)、糖尿病性網膜症および加齢黄斑変性などの疾患における失明をまねく最終共通路である。血管内皮増殖因子(VEGF)は病的血管新生の発症において重要な役割を担っていることが分かっている。2つのマウス誘発網膜症モデルにおいて、VEGFに対するインターフェラー分子の効果を研究する。第一のモデルにおいて、(網膜血管系が未成熟である)新生仔マウスを過酸素状態にし、網膜に酸素を供給する血管形成を閉塞させる。マウスがその後正常酸素圧に戻るときに、閉塞した血管より遠位にある網膜は虚血に陥り、VEGF生成が誘発され、最終的に再現可能かつ定量化可能な増殖性網膜新生血管が生じる(モデルはPierce EAら、(1995) Proc. Natl. Acad. Sci. 92 (3) 905-9に詳述されている。905ページの−mouse modelの実験手順を参照)。すなわち、授乳する雌親と7日間(P7)一緒になっていた仔マウスを、特別に設計した酸素チャンバー内で5日間、ケージを開けずに過酸素状態(75%酸素)にする。P12で、動物を室内空気に戻し、P17まで維持し、P17に、最大新生血管応答について網膜を評価する。P12に、半数の動物にVEGFに対するインターフェラー分子を投与し、半数を未投与のままにする。投与マウスの半数に硝子体内注射でVEGFインターフェラーを投与し、一方、投与群の他の半数に眼周囲注射でVEGFインターフェラーを投与する(眼周囲または硝子体内注射は、Shen Jら、(2006) Gene Therapy、9月29日先行オンライン発表、に記載のとおりに行った)。マウスVEGF165アイソフォームに対する3つの異なるインターフェラー分子を1〜100μg/mlの濃度範囲で使用した。
a)

このインターフェラー分子はインターフェラー分子のA−B−A’構造を有している。マウスVEGF165(下線)由来の自己会合領域には可溶化領域A(REAGおよびGGEERAG)が隣接しており、すなわち、領域AおよびA’は自己会合領域(インターフェラー分子のB部)の凝集を防止する。
b)

このインターフェラー分子はインターフェラー分子のB−A構造を有している。可溶化A部(GERAG)はイタリック体で示す。B部は以下の構造を有する:STVIIE(=合成自己会合領域)−GGAG(=リンカー)−NHVTLS(=合成自己会合領域)−GGAGQ(=リンカー)−FLLSWVHWTLALLLYLHHG(=マウスVEGF165由来自己会合領域)。
c)

このインターフェラー分子はインターフェラー分子のB−A構造を有している。可溶化A部(GERAG)はイタリック体で示す。B部は以下の構造を有する:STVIIE(=合成自己会合領域)−GGAG(=自己会合領域間のリンカー)−FLLSWVHWTLALLLYLHH(=マウスVEGF165由来自己会合領域)。
P17で、麻酔したマウスに、2x10分子量のフルオレセイン−デキストランを50mg含むリン酸緩衝生理食塩水1mlを、左心室を介して灌流させる。眼を取り出し、4%パラホルムアルデヒド中で3時間(右眼)または24時間(左目)、固定する。右眼からレンズを取り出し、周辺網膜を切断して、グリセロール−ゼラチンでフラットに標本にする。フラットに標本にされた網膜を蛍光顕微鏡で分析する。左眼をパラフィンに包埋し、連続的な6μmの切片を、角膜に至るまで、視神経に平行に矢状に切断し、ヘマトキシリン−エオシンで染色する。網膜の内境界膜から染色した横断面上の硝子体内まで延長している新血管の数(=房)および内皮細胞の数を計数して、増殖性新生血管応答を定量する。蛍光デキストラン灌流による血管造影技術を、網膜の高速スクリーニング用のこの計数法と併用して、あるいは定量評価用の代替的評点方式として行う。第二のモデルでは、レーザーで誘発した網膜静脈血栓により網膜血管新生を実験的に模倣する。該モデルは、Saito Yら、(1997) Curr. Eye Res. 16 (1): 26-33. Chi-Chun Laiら、(2005) Acta Ophtalmologica Scandinavica 83: 590-594の、モデルが定量され得る591〜592ページの材料と方法項に記載されている。VEGFインターフェラー分子は、本明細書で先に記述したように応用する。
7.ヒト細胞系におけるタンパク質干渉
アポトーシスの調節(誘発または抑制)は細胞系で簡単にモニターできる。スタウロスポリンはp53依存的方式でアポトーシスを誘発することが知られている。よってp53を下方制御、またはp53の機能を促進するタンパク質(例えばASPP1)を下方制御すると、動物の(例えばヒト)細胞系においてスタウロスポリン誘発性アポトーシスが抑制される。インターフェラー分子をコードする組み換え発現ベクターは実施例1に記載の合成インターフェラー分子の設計に基づいて構築されているが、例外として、A部、NusAタンパク質は緑色蛍光タンパク質(GFP)に変化し、プロモーターはアクチンまたはCMVプロモーターなどの構成的哺乳動物プロモーターである。p53に対する自己会合配列はILTIITLE(tangoスコアは72)であり、この配列は合成インターフェラーのB部内に付加され、p53に特異的なインターフェラー分子が生成される。ASPP1に対する自己会合配列はMILTVFLSN(tangoスコアは63)であり、この配列は合成インターフェラーのB部内に付加され、ASPP1に特異的なインターフェラー分子が生成される。HeLa細胞を培養し、組み換えベクターでトランスフェクトする。GFP(A部)は過剰発現したインターフェラー分子を可視化する。トランスフェクト細胞および非トランスフェクト対照細胞に1μMのスタウロスポリンを添加すると、異なるアポトーシス応答が誘発される。
8.ゼブラフィッシュにおける内皮増殖因子(VEGF)のタンパク質干渉
ゼブラフィッシュVEGFに矛先を向けたインターフェラー分子を開発した。分泌したVEGFの(凝集を介した)特異的不活化の後、ゼブラフィッシュ胚において血管発生を妨害することができる。
第一の工程では、ゼブラフィッシュVEGFタンパク質に存在する自己会合領域はTANGOアルゴリズムで判定した。TANGOスコアが最高である凝集領域はNH−FLAALLHLSA−COOHである。この自己会合配列に基づいて、以下の4つの合成インターフェラー分子を開発した:

インターフェラーEは対照配列として働き、この高TANGO領域外の配列由来である。
インターフェラーA、BおよびDは全TANGO領域を含み、一方インターフェラーCはTANGO領域の一部しか含んでいないことを留意されたい。TANGO領域由来の配列は下線部である。
これらのインターフェラー分子をトランスジェニックTg(fli1:EGFP)y1ゼブラフィッシュ胚の培地に、異なる濃度で添加した。トランスジェニックTg(fli1:EGFP)y1ゼブラフィッシュはその内皮細胞内で促進された緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現し、前記魚はLawson NDおよびWeinstein BM (2002) Dev. Biol. 248, 307-318)に記載しており、Zebrafish International Resource Center (University of Oregon)から提供されており、ゼブラフィッシュ(Danio rerio)の実験のためのガイドであるゼブラフィッシュブック、Univ. Oregon Press, Eugene, 1994)に記述しているとおりに維持する。
受精から20時間後のコリオン除去した胚を24ウェルプレートに配列し(10胚/ウェル)、いくつかの濃度の選択したインターフェラー分子(50μMで開始)に24時間暴露した。Zeissレーザースキャニング顕微鏡LSM510を使用する共焦点イメージングにより、生胚を28および48hpf(受精後時間)で分析した。
様々な血管構造の成長をモニターしてはいるが、本発明者らは、(i)背側大動脈(DA)、後主静脈(PCV)の構造、(ii)体幹後方部の体節間血管(ISV)の新芽形成および血管網(PV)形成に特に注意を払った。用量依存実験の概要は表1に示す。インターフェラーAおよびCはゼブラフィッシュ幼生の生育中、明確な血管障害を誘発していることが明らかである。驚くべきことに、インターフェラー分子は皮膚を経てゼブラフィッシュ幼生に取り込まれ、インターフェラーの注射は必要ではない。特定の血管障害をモニター可能にするため、インターフェラーBおよびDはさらに低い濃度で投与する必要がある。
9.出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)におけるタンパク質干渉
Ura3タンパク質の(凝集を介した)標的の不活化は簡単に読み出しができることから、タンパク質干渉は真核生物で作用することを示すために酵母Ura3酵素のノックダウンを使用した。出芽酵母Ura3酵素はウラシル生合成経路に関与する基本的な酵素である。したがって、URA3遺伝子が欠損した出芽酵母突然変異体はウラシルを含有しない培地では成長できないが、培地にウラシルを添加すれば、成長は回復可能となる。第一工程で、Ura3タンパク質に存在する自己会合領域をTANGOアルゴリズムで判定した。TANGOスコアが最高の自己会合領域(または凝集領域)はNH−VIGFIAQ−COOH(TANGOスコア:74)である。このペプチド配列を使用し、インターフェラー発現構築物を生成した。このペプチドをコードする自己会合配列をフレーム内に合成インターフェラー構築物でクローン化するために(実施例1を参照)、以下の2つのオリゴヌクレオチドを使用した:
XbaIおよびSalI制限部位は下線部である。NusAタンパク質の開始コドンは太字で強調してある。終止コドンはイタリック体で表し、7つのUra3アミノ酸をコードする配列は太字で表してある。
PCR用のテンプレートとして、合成インターフェラー/リンカー構築物にカップリングしたNusAタンパク質を含むpETM60プラスミド(G. Stier, EMBLから譲渡)を使用している(実施例1を参照)。このベクターはT7プロモーターを含有し、カナマイシン耐性を付与し、6つのヒスチジンのN末端発現タグをもたらす。XbaIおよびSalI制限部位を使用して、得られたPCR産物をpBEVY/GTベクター(Miller CA 3rd, Martinat MAおよびHyman LE (1988) Nucleic Acids Res. 26: 3577-3583)内にサブクローン化した。このベクター内では、「NusA−合成インターフェラー−リンカー−Ura3自己会合配列」発現カセットは出芽酵母GAL1/10プロモーターの制御下にあった。このベクターの選択マーカーはTRP1遺伝子である。
(自己会合領域由来の)7つのUra3アミノ酸をコードするDNAを含有する、および含有しない配列認証構築物を形質転換により出芽酵母株PVD2に導入し、形質転換の選択はtrp1相補性を基本とした。PVD2株はW303−1A株(Thomas BJおよびRothstein R. (1989) Cell 56, 619-630)から誘導するが、HIS3およびURA3の両方の野生型対立遺伝子で形質転換する。それでもPVD2株はロイシン(LEU2)、トリプトファン(TRP1)およびアデニン(ADE2)への栄養要求性を有している。形質転換体をSDglu−Trp培地(2%グルコースを含有するがトリプトファンを含有しない最小酵母培地)で選択した。単一コロニー用の新たなSDglu−Trpプレート上でコロニーを再度画線した。液体SDglu−Trp培地中で一晩、2つの独立したコロニーを培養した。その後培養物のOD600が1になるように調整し、10倍に段階希釈した希釈物を5マイクロリットル、SDglu−Ura−Trp(2%グルコースを含有するがウラシルおよびトリプトファンを含有しないSD培地)またはSDgal−Ura−Trp(2%ガラクトースを含有するがウラシルおよびトリプトファンを含有しないSD培地)プレート上にスポットした。この実験の結果は図2に示す。この実験は3回繰り返し、同様の結果が得られた。中身のないpBEVY/GTベクターまたはNusA−合成インターフェラー構築物のみを発現する(ura3由来自己会合配列を持たない)ベクターを発現させると、無ウラシル培地では増殖阻害はまったく見られない。しかしながらNusA−合成インターフェラー−Ura3会合領域構築物を発現させると、(増殖欠陥がない成長培地にウラシルが加わると)無ウラシル培地で増殖が強く阻害され、内因性Ura3タンパク質がタンパク質干渉により特異的に不活化されることが分かる。
10.酵母カンジダ・アルビカンスにおけるタンパク質干渉
ヒト真菌感染症の40%がカンジダ・アルビカンスに起因している。この共生生物は多数の毒性因子を有している。プラスチック全種に対する付着能(集中治療室の主要な問題となっている)またはリパーゼおよびプロテイナーゼの生成以外に、多様な形態をとる能力があり、これは主要な毒性因子の1つであることから最も広範に研究されてきた。多くの転写因子が酵母様細胞から菌糸または仮性菌糸への移行を誘発することが可能である。他の転写因子は細胞を酵母様形態で維持することに必要とされている。菌糸形成の該リプレッサーの1つの例として、Tup1が挙げられる。カンジダ・アルビカンスにおけるタンパク質干渉の例として、本発明者らは標的をTup1タンパク質にした。Tup1の生物学的機能を下方制御すると菌糸形成が誘発されることが好ましい。第一の工程では、Tup1タンパク質に存在する自己会合領域をTANGOアルゴリズムにより判定した。TANGOスコアが最高(TANGOスコア:30)である自己会合領域(または凝集領域)はNH−VISVAVSL−COOHである。このペプチドを使用し、インターフェラー発現構築物を生成した。このペプチドをコードする自己会合配列をフレーム内に実施例1の合成インターフェラー構築物でクローン化するために、以下の2つのオリゴヌクレオチドを使用した:
BsrGIおよびNheI部位は下線部である。終止コドンはイタリック体で表し、標的ペプチドをコードする逆配列は太字で表してある。
PCR用のテンプレートとして、(実施例1の)Nus−合成インターフェラー構築物を含むpETM60プラスミドを使用した。BsrGIおよびNheI制限部位を使用して、得られたPCR産物をpPCK1−GFPプラスミド(Barelle CJ, Manson CL, MacCallum DM, Odds F, Gow NAR, Brown AJP. Yeast 21: 333-340, 2004)内にサブクローン化した。このベクターでは、インターフェラー構築物をフレーム内に、ベクターに存在するGFP遺伝子でクローン化し、得られたインターフェラー発現カセット「GFP−合成インターフェラー−リンカー−「Tup1自己会合領域」)はPCK1プロモーターの制御下にある。後者の構築物では、緑色蛍光タンパク質(GFP)はNusAで置換されており、GFPはインターフェラー分子のA部として働く。PCK1プロモーターはカザミノ酸含有培地中では強く誘発され、グルコース含有培地では抑制される(Leuker CE, Sonneborn A, Delbruck S, Ernst JF. Gene 192: 235-240, 1997)。配列認証プラスミドはその後C.アルビカンス株CA14に形質転換した(Fonzi WA, Irwin MY. Genetics 134: 717-728, 1993)。形質転換体をSDglu−ura(2%グルコースを含有するがウラシルを含有しない酵母最小培地)上で選択した。形質転換体をグルコース含有最小培地中で一晩培養し、細胞を希釈して約20細胞/100マイクロリットルにし、この量をSDglu−uraまたはSDカザミノ酸−ura寒天プレート上で平板培養した。培養から4および6日後にコロニー形態をスコア化した(図3参照)。図3で分かるように、カザミノ酸を有する培地ではTup1は下方制御され、コロニーの縁には菌糸形成が明確に見られる。菌糸形成は対照形質転換体((インターフェラー発現カセットを持たないpPCK1−GFPプラスミド))では見られず、グルコース含有培地でも見られない。実施例から、内因性Tup1はタンパク質干渉に特異的に不活化されることが分かる。
11.植物におけるタンパク質干渉の応用
本発明者らは、いくつかのGFP融合遺伝子(前記遺伝子は表2に表す)を有する、すでに形質転換したBY2細胞を使用してタバコBY2細胞におけるタンパク質干渉を説明する。前記シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)遺伝子、ならびにその対応する同定した自己会合領域およびtangoスコアを表2に一覧にしている。
表2の各標的に対する特異性インターフェラー分子を、実施例1に記述された合成インターフェラー分子に基づいて設計するが、例外として、NusAタンパク質は赤色蛍光タンパク質(RFP)に変化し、B部には表2にある標的の特異性自己会合領域が付加されている。
前記特異性インターフェラー分子をコードする構築物を、Gateway(商標)の技術を使用して過剰発現に適したベクター(In Vitrogen Life Technologies)に導入する。この目的のため、植物形質転換用のGateway適合バイナリーベクターのセットを開発した。発現には、遺伝子がp35Sプロモーターの制御下に置かれるpK7WGD2ベクターを使用する。植物細胞形質転換には、ターナリーベクター系を応用する。プラスミドpBBR1MCS−5.virGN54Dをターナリーベクターとして使用する。電気的形質転換によりすでにターナリープラスミドを有しているアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)株LBA4404にバイナリープラスミドを導入する。特定の構築物による形質転換に先だって、新たなBY−2培養液を構築する。5日間培養BY−2を1:10で播種し、3日間培養する(28℃、130rpm、遮光)。BY−2形質転換の2日前に、pK7WGD2−GUS(対照ベクター)、pK7WGD2−インターフェラー1(例えばオーロラ1に特異的である、pK7WGD2−インターフェラー2(例えばオーロラ2に特異的である)等で形質転換したアグロバクテリウム・ツメファシエンス等の液体培養液を構築する。固体培地から得た1ループフルの細菌を、5mlの抗生物質(リファンピシン、ゲンタマイシン、ストレプトマイシンおよびスペクチノマイシン)含有液体LB培地に播種する。培養液を2日間培養する(28℃、130rpm)。共培養法により、BY−2を空のペトリ皿(φ4,6cm)中で形質転換する。3日間培養BY−2(3ml)をピペッティングによりプレートに取り、50または200μlいずれかの細菌懸濁液を添加した。プレートを穏和に混合し、遮光して3日間、層状ベンチに静置する。共培養の後、精選品(過剰細菌を死滅させるための50μg/mlのカナマイシン、500μg/mlのバンコマイシンおよび500μg/mlのカルベニシリン)を含む固体BY−2倍地で細胞を平板培養する。プレートをMilliporeテープで密閉し、28℃で約2週間、遮光してインキュベートし、その後カルスが見えてくる。タンパク質干渉の効率(ここではGFP構築物とRFP構築物間の凝集)を、蛍光顕微鏡下でGFP、RFPの発現ならびにGFPおよびRFP局在を調べて可視化する。
実施例1および2に関する材料と方法
構築物、細胞および培地
インターフェラー分子をベクターpETM60(G. Stier, EMBLから譲渡)にクローン化した。このベクターはRNAポリメラーゼT7(T7RNAポリメラーゼは大腸菌lacオペロンからの調節要素の制御下にある)制御下にあり、カナマイシン耐性を付与し、NusAが付随する6つのヒスチジンのN末端発現タグをもたらす。インターフェラーB部の配列をコードする一連の重複オリゴを使用し、PCRにより「合成遺伝子」を作製した。この遺伝子は、Nco1およびBamH1制限部位を介してpETM60内にライゲーションした。長い抗コーディングオリゴを使用して、インターフェラーB部のPCRによりインターフェラー遺伝子を作製し、C末端に柔軟リンカーに対する配列およびタンパク質特異性自己会合領域(ベイト)を含むようにした。これらをNco1およびBamH1制限部位を介してpETM60にライゲーションした。オリゴはすべてSigma-Genosysから購入し、制限酵素はすべてFermentasから購入したものであり、RocheのQuick Ligation Kitを使用してライゲーションを行った。
標準的プロトコールにしたがって、化学的にコンピテントなBL21(DE3)細胞を自家生成し、形質転換した。標準LB寒天プレートを調製し、全寒天プレートはカナマイシンを50μg/mL含有していた。標準M9培地を、全20種のアミノ酸(50μg/mL)およびヌクレオチド類、アデニン、グアニン、ウラシルおよびキサンチン(20μg/mL)で補って、M9完全プレートを調製した。M9選択プレートは1つのアミノ酸を除いてすべてM9完全プレートと同一であった。保存の際アミノ酸分解の可能性を制御するため、使用の1日前にプレートを調製した。標準プロトコールにしたがってLBを調製し、カナマイシンを50μg/mLで添加した。アミノ酸はすべてSigmaから購入し、カナマイシンおよびIPTGはDuchefaから購入した。
プロトコール
BL21(DE3)細胞を発現構築物で形質転換し、カナマイシンを加えたLB寒天で平板培養し、37℃で一晩インキュベートした。単一コロニーを使用し、カナマイシンを加えた10mLのLBに播種し、これを37℃で一晩振盪培養した。翌日、この培養液を使用し、カナマイシン1:100を加えた10mLのLBに播種し、これをOD600が0.6になるまで培養した。その後培養液を2つに分け;一方の培養液にIPTG(50μM)を添加してインターフェラー発現を誘発し、両培養液をさらに37℃で望ましい発現時間、インキュベートした。その後細胞を遠心分離で回収し、(再懸濁および遠心分離により)食塩水(0.85% w/v NaCl)で2回洗浄した。その後細胞を食塩水に再懸濁し、最終的にOD600が0.05になり、この細胞懸濁液を200μL、寒天プレート上で平板培養した。寒天プレートを37℃で一晩インキュベートし、翌日、コロニーの成長に注視した。必要に応じて、滅菌した爪楊枝でコロニーを新たな寒天プレート上に採取した。


アミノ酸生合成に関与している標的特異性酵素を標的にする4種のインターフェラー構築物の組み換え発現を使用した大腸菌(E. coli)内タンパク質干渉である。各インターフェラー分子のB部は、2つのアミノ酸のリンカーおよび酵素由来の1つの特異性自己会合領域により分割された3つの合成自己会合配列からなる。自己会合領域(合成かつ特異的)は自己会合領域の凝集を防止する部分(すなわちインターフェラー分子のA部)として働くタンパク質NusAとカップリングする。 URA3の内因性野生型コピーを有する出芽酵母(S. cerevisiae)細胞を中身のないプラスミド、アグリゲーター配列のみを有するプラスミドまたはアグリゲーター−Ura3融合構築物を有するプラスミドで形質転換した。細胞をグルコース含有培地中で一晩培養し、洗浄し、その後グルコース(左)またはガラクトース(右)のいずれかを含有する培地で平板培養した。10倍希釈し、そのうち5μlを平板培養した(最高濃度としてOD600=1)。 TUP1の2つの内因性野生型コピーを有するカンジダ・アルビカンス(C. albicans)細胞を中身のないプラスミドおよびインターフェラー−Tup1融合構築物を有するプラスミドで形質転換した。細胞をグルコース含有培地中で一晩培養し、洗浄し、その後、20コロニーをグルコース(左)またはカザミノ酸(右)のいずれかを含有する培地で平板培養した。上のパネルは中身のないプラスミドを示し、下のパネルはインターフェラー構築物(「+aggreg.−TUP1」はインターフェラー−Tup1構築物を意味する)を示す。写真は培養の4日後に撮影した。

Claims (1)

  1. タンパク質の生物学的機能を下方制御する方法であって、前記タンパク質と、環境に暴露され、そして前記タンパク質に存在する少なくとも1つのβ凝集領域を含む非天然分子とを接触させる工程を含み、
    ここで、前記β凝集領域が、前記タンパク質に存在する少なくとも5つの隣接するアミノ酸からなり、そして前記β凝集領域の凝集を防止する部分に融合し、
    前記部分が、ペプチド、タンパク質ドメインまたはアガロースビーズであり、
    ヒトでは実施しない、
    方法。
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