JP5888644B2 - エレクトロクロミック表示素子及びエレクトロクロミック表示素子の製造方法 - Google Patents

エレクトロクロミック表示素子及びエレクトロクロミック表示素子の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5888644B2
JP5888644B2 JP2011266341A JP2011266341A JP5888644B2 JP 5888644 B2 JP5888644 B2 JP 5888644B2 JP 2011266341 A JP2011266341 A JP 2011266341A JP 2011266341 A JP2011266341 A JP 2011266341A JP 5888644 B2 JP5888644 B2 JP 5888644B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
display element
electrode
ito
viologen
electrochromic display
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2011266341A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2013117704A (ja
Inventor
星野 勝義
勝義 星野
良太 中島
良太 中島
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Chiba University NUC
Original Assignee
Chiba University NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Chiba University NUC filed Critical Chiba University NUC
Priority to JP2011266341A priority Critical patent/JP5888644B2/ja
Publication of JP2013117704A publication Critical patent/JP2013117704A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5888644B2 publication Critical patent/JP5888644B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Electrochromic Elements, Electrophoresis, Or Variable Reflection Or Absorption Elements (AREA)

Description

本発明は、エレクトロクロミック表示素子及びエレクトロクロミック表示素子の製造方法に関する。
パーソナルコンピュータ等情報処理装置の普及に伴い、情報処理装置による処理結果を表示するための表示素子(例えば、液晶表示素子など)が非常に重要となっている。現在、新たな表示素子として、いわゆるエレクトロクロミック特性を利用した表示素子(エレクトロクロミック表示素子)が提案されている。エレクトロクロミック特性とは、電圧の印加により電気化学的酸化還元反応が起こり、物質の色が可逆的に変化する特性をいう。この特性を利用したディスプレイは、(1)視野性に優れる、(2)大型化が可能である、(3)視野角依存性が少ない、(4)鮮明な表示が可能である、といった利点があり、特に、いわゆる電子ペーパーといった極薄型のディスプレイへの応用が期待されている。
エレクトロクロミック特性を利用した表示素子としては、例えば非特許文献1に記載のものがある。非特許文献1には、ビオロゲン化合物を化学修飾した酸化チタン電極と非水溶媒を組み合わせたエレクトロクロミック表示素子が記載されている。
H.K.Jheong,Y.J.Kim,J.H.Pan,T.−Y. Won,W.I.Lee、J Electroceram、17、2006年、929−932.
しかしながら、上記非特許文献1に記載の技術では、電極にn型半導体である酸化チタンを用いており、導電性において課題がある。また、ビオロゲン化合物を酸化チタンナノ粒子表面に化学吸着させるためには、リン酸基やカルボキシル基といった置換基を導入する等の工程も必要であり、作製が容易でないといった課題がある。
そこで、本発明は、上記課題を解決し、より導電性が高く、作製が容易なエレクトロクロミック表示素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の一観点に係るエレクトロクロミック表示素子は、一対の基板と、基板の間に配置された媒体と、基板上に形成された一対の電極とを有し、電極の少なくとも一つは、ITO粒子及びビオロゲン化合物を含む膜であるものである。
また、上記課題を解決する本発明の他の一観点に係るエレクトロクロミック表示素子の製造方法は、基板にITO粒子及びビオロゲン化合物を含む分散液を塗布する塗布工程と、塗布工程の後に基板を乾燥する乾燥工程とを有するものである。
本発明によれば、より導電性が高く、より容易に作製することのできるエレクトロクロミック表示素子を提供することができる。
本発明の実施形態1に係る表示素子の概略を示す図である。 実施例1で用いた電解セルの構成を示す図である。 ITO/DDVコンポジット膜電極のサイクリックボルタンモグラムを示す図である。 ITO/DDVコンポジット膜の電位と吸光度の関係を示す図である。 着色状態及び消色状態のITO/DDVコンポジット膜電極のUV−vis吸収スペクトルを示す図である。 ITO/DDVコンポジット膜電極を用いて着消色を繰り返し行ったときの吸光度と繰り返し回数の関係を示す図である。 図6の一部拡大を示す図である。 ITO/DDVコンポジット膜電極のIpとvの関係を示す図である。 ITO/DDVコンポジット膜電極のnの値と膜厚の関係を示す図である。 2,5,9及び13μmの厚さを持つITO/DDVコンポジット膜電極に対する吸光度と電気量の関係を示す図である。 応答時間tr並びに及び着色効率CEの膜厚依存性を示す図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に占める実施形態、実施例に記載された例にのみ限定されるわけではない。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るエレクトロクロミック表示素子(以下「本表示素子」という。)1の概略を示す図である。一対の基板2a、2bの間に液体からなる媒体4が挟持され、基板2a、2bの上には電極3a、3bがそれぞれ形成されている。
本実施形態において、一対の基板2a、2bは、画素電極3a、3b及び媒体4を保持する機能を有するものである。一対の基板2a、2bそれぞれの材質は同一であっても異なっていてもよいが、ビオロゲン化合物による発色及び消色が外部から確認できるように少なくとも一方が透明な部材で構成されていることが好ましい。基板の材質としては、限定されるわけではないが、透過性を有する材質であれば例えばガラスやプラスチック等を例示することができ、不透明な材質でもよい場合は、金属等を採用することができる。なおプラスチック等の場合は、限定されるわけではないがポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等が好ましく、金属等の場合はアルミニウムやステンレス等を採用することができる。
本実施形態において画素電極3a、3bは、一対の基板2a、2bの対向する面にそれぞれ形成されるものであって、この間に所定の電圧を印加することでビオロゲン化合物の発色及び消色を制御することができる。
本表示素子において、画素電極の占める領域が一画素領域となり、画素電極を複数設けることで、文字等の複雑な画像表示を実現することができる。画素領域の形状は予め表示したい形状となっているセグメントであってもよいし、マトリクス状に並べやすい多角形(例えば四角形)であってもよい。なお複数の画素領域をマトリクス状に配置し、画像表示をより細かく表示する場合、一対の基板の対向する画素領域毎に独立した複数の画素電極を設けておくことが好ましいが、製造を容易にする等の観点から、一方の画素電極を全画素共通のいわゆる共通電極とすることも好ましい一形態である。
ここで、独立した複数の画素電極が一対の基板の一方に配置されている場合の一例について説明する。基板2aには、複数の画素電極3aが配置されており、各画素電極3aは、略平行に配置される複数の走査電極と、これら複数の走査電極と交差して配置される複数の信号電極とにより形成される空間に配置されており、各画素電極は例えば走査電極にゲートが接続されたスイッチング素子を介して信号電極と接続される。
また本実施形態において、一対の基板の間の距離としては、媒体に用いる材料、画素電極の厚さ、印加する電圧の範囲等に依存し適宜調整可能であるが、概ね10μm以上1cm以下であることが好ましく、より好ましくは100μm以上5mm以下である。
さらに、本実施形態に係るエレクトロクロミック表示素子は、画素電極の間に所望の電圧を印加するために、信号電極、走査電極(間接的に画素電極)と接続される外部電源を有することも好ましい。このようにすることで、媒体におけるビオロゲン化合物等と電子の授受を可能とし、画像表示が可能となる。なお画像表示が可能となる限りにおいて限定されるわけではないが、一対の電極の間には、0.01V/cm以上2000V/cm以下の電界が印加されるように電圧を印加することが好ましく、より好ましくは0.1V/cm以上、200V/cm以下である。
本表示素子において、電極の少なくとも一方は、ITOナノ粒子及びビオロゲン化合物を含む、より具体的にはITOナノ粒子とビオロゲン化合物が混合された電極となっており、いわゆるITOナノ粒子−ビオロゲンコンポジット電極となっている。本表示素子において、一対の電極の双方がITOナノ粒子及びビオロゲン化合物を含む電極であってもよいが、一方は通常の透明電極であることは、消色状態を作り出す点において好ましい。
本実施形態において、ITOナノ粒子とは、ITO(Indium Tin Oxide)がナノレベルの粒子となっているものである。ITOナノ粒子を用いることで、高速イオン輸送が可能となり実表面積が増加するため、正味の電極反応速度の増加や正味の反応量の増加が可能となり、より導電性が高く、消え残り(ゴーストイメージ)を十分に防止することができる。粒子の径については、限定されるわけではないが、平均粒径が5nm以上800nm以下であることが好ましく、より好ましくは10nm以上100nm以下の範囲である。800nm以下とすることでITOナノ粒子が集合することによって形成される空隙がナノサイズとなり、この空隙においてイオン等の物質の移動が活発になる等の特殊な状況を実現することができるようになり、100nm以下とすることでこの効果がより顕著となる。一方で、5nm以上とすることで、この空隙が狭くなりすぎてイオン等の物質の移動を阻害してしまうことを防止することができ、10nm以上とすることでこの効果が顕著となる。
また、本表示素子において、ビオロゲン化合物は、下記式(1)で表される化合物である。本表示素子において、ビオロゲン化合物は、水に不溶であり、疎水性を有していることが好ましい。疎水性を有することで、媒体を水性とした場合にこのビオロゲン化合物が溶媒に溶け出すことを防止し、着消色の繰り返しに対して安定した動作を実現することができるといった効果がある。特に、疎水性を有するビオロゲン化合物ということであれば、材料選択の幅が大きく広がることとなる。特に本実施形態によれば、リン酸基あるいはカルボキシル基といった置換基を導入する必要もないため、ビオロゲンを、4,4−ビピリジンの四級化反応による簡便なプロセスで合成できる。したがって、効率的にエレクトロクロミック表示素子を生産することができ、エレクトロクロミック表示素子の生産性を大幅に向上することができる。
なお上記式(1)において、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数2〜20アルキル、炭素数3〜20のシクロアルキル、炭素数6〜20のアリール又は炭素数7〜20のアリールアルキルを表す。アルキルの場合、CnH2n+1(n=2〜20)で示される鎖状または分岐状のアルキルであることが好ましく、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、又はオクタデシルであることが特に好ましい。アリールの場合、フェニル、ナフチル、エテニルフェニルであることが好ましく、エテニルフェニルであることがより好ましい。すなわち、ビオロゲン化合物の具体例としては、限定されるわけではないが、1,1’−ジヘプチル、1,1’−ジオクチル、1,1’−ジノニル、1,1’−ジデシル、1,1’−ジドデシル、1,1’−ジテトラデシル、1,1’−ジヘキサデシル、1,1’−ジオクタデシルが挙げられ、中でも、1,1’−ジデシル、1,1’−ジドデシル、1,1’−ジヘキサデシルが好ましい。
また本実施形態において、ITOナノ粒子とビオロゲン化合物の重量比率としては、本発明の機能を奏することができる限りにおいて限定されるわけではないが、ビオロゲン化合物の重量を1とした場合、ITOナノ粒子の重量は、1以上100以下の範囲となっていることが好ましく、より好ましくは5以上50以下の範囲である。ITOナノ粒子の重量を1以上とすることで、十分な伝導性を確保することができるとともに、5以上とすることでこの効果がより顕著となる。一方、100以下とすることで、電極中のビオロゲン化合物が凝集せず、消え残りである凝集体の形成を防ぐことができるようになり、50以下とすることでこの効果がより顕著となる。
また本表示素子において、媒体4は、一対の電極間を充填し、ビオロゲンの反応に寄与する電解質を保持するためのものである。媒体4は、上記機能を有し、ビオロゲン化合物を溶出させない程度の高い親水性あるいはその逆の高い疎水性を有するものであり、この限りにおいて限定されるわけではないが、例えば水、クロロホルム、ジクロロメタン等を例示することがであることが好ましい。また、本実施形態において、電解質としては、特に限定されるわけではないが、例えば硫酸塩であることは好ましい一例であり、更に具体的にはLiSO、NaSO、KSO、CaSO、HSO、(CHNSO、(C)NSO、(CNSO等を例示することができる。なおこの電解質の濃度としては、特に限定されるものではないが、10mmol/L以上10mol/L以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは50mmol/L以上500mmol/L以下の範囲である。
以上、本表示素子によれば、電極に疎水性のビオロゲンとITOナノ粒子とを混合したものを使用しており、ビオロゲンがITOナノ粒子に固定化され、ビオロゲン又は反応に関与するイオンの拡散の影響を小さくすることができる。そして、本表示素子は、電極酸化を行うと紫膜がほぼ完全に消色し、ゴーストイメージ(消え残り)が殆ど生じない。また、着色及び消色に対する応答速度が極めて高速であり、高速の書き込み、消去が可能となる。また、本実施形態のエレクトロクロミック表示素子は、優れた繰り返し特性を有し、多数回の繰り返しを行っても劣化がほとんどない。さらに、本表示素子は、高い着色効率を示し、極低消費電力で作動できる。
ここで、本表示素子の製造方法(以下「本製造方法」という。)について説明する。本製造方法は、(1)基板にITOナノ粒子及びビオロゲン化合物を含む分散液を塗布する塗布工程と、(2)塗布工程の後に基板を乾燥する乾燥工程と、を有することを特徴とする。
本製造方法における(1)基板にITOナノ粒子及びビオロゲン化合物を含む分散液を塗布する塗布工程における上記分散液は、ITOナノ粒子とビオロゲン化合物、及び、これらを分散させるための溶媒を含む。
ここで溶媒としては、上記ビオロゲン化合物及びITOナノ粒子を分散させることができるものであることが好ましく、より好ましくはビオロゲン化合物を溶解させることができる有機溶媒であることは好まし一例である。有機溶媒の場合、特に限定されるわけではないが、アルコールであることは好ましく、例えばメタノール、エタノール、及びブタノール等を例示することができる。なおこの溶媒に対するITOナノ粒子とビオロゲン化合物の量は、十分に分散できる程度であればよく、特に限定されるものではない。
また、本実施形態において、基板上に分散液を塗布する方法としては、特に限定されるものではなく、様々な方法を用いることができる。例えばディッピング、スピンコーティング、バーコーティング等を採用することができる。
本製造方法における(2)塗布工程の後に基板を乾燥する乾燥工程は、分散液に含まれる溶媒を蒸発させる工程であり、選択する溶媒によって適宜調整が可能であるが、ビオロゲン化合物が分解してしまわない程度の温度範囲に抑えることが好ましい。乾燥させる方法としては、特に限定されるわけではないが、加熱による溶媒の蒸発等が好ましく、時間も適宜調整可能である。
また、本実施形態に係る工程は、分散液の塗布工程と乾燥工程を一度だけ行うことで実現可能であるが、上記(1)、(2)の工程を複数回繰り返し行うことも好ましい。このようにしておくことで、より厚い膜を容易に形成することができるといった利点がある。
以上の結果、本実施形態に係るエレクトロクロミック表示素子は、ITOを用いることができるため透明電極及びその導電性を十分に確保することができ、更に、その内部にビオロゲン化合物を保持させるだけで効果を発揮し、ナノ粒子表面に化学吸着させるためのリン酸基やカルボキシル基といった置換基を導入する等の工程も不必要となり、作製が容易となる。
加えて本実施形態によると、溶媒に不溶なビオロゲン化合物を採用する、具体的には溶媒に水性溶媒を用い、ビオロゲン化合物としてこの溶媒に溶けにくい、疎水性のあるビオロゲン化合物を採用することで、ビオロゲン化合物が溶出してしまうことなく長期に安定的なエレクトロクロミック表示素子を得ることができる。
さらに本実施形態によると、着色と消色は非常な小さな範囲で生じ、消え残り(ゴーストイメージ)が極めて生じにくくなる。そして、この特性は極めて優れた繰り返し特性をもち、少なくとも1000回の繰り返しで劣化は見られない。
以上、本実施形態によると、より導電性が高く、より容易に作製することのできるエレクトロクロミック表示素子を提供することができる。
以下、上記実施形態の効果を確認するため実際に実験を行った。以下具体的に説明する。
(実施例1)
まず、ITOナノ粒子(C.I.Kasei社製、Nanotek(登録商標) Powder ITO−R、平均粒子サイズ:30nm)と、ビオロゲン化合物1,1’−ジドデシル−4,4’−ビピリジニウム(以下「DDV2+」という。)ジブロマイドを用いた。DDV2+の合成は、“M.−P.Pileni,A.M.Braun,M.Gratzel,Photochem.Photobiol.31(1980)423−427.”、“M.Suzuki,M.Kimura,K.Hanabusa,H.Shirai,Macromol.Chem.Phys.199(1998)945−948.”、及び、“T.Abe,T.Fujita,K.Sekimoto,A.Tajiri,M.Kaneko,J.Mol.Catal.A:Chem.201(2003)55−62.”に従って合成した。なお、このDDV2+は有機溶媒に可溶であり、ほぼ無色透明だが、1電子還元反応によって青色のカチオンラジカルとなり、逆の酸化反応で元の無色透明の状態へと戻る。またDDV2+は疎水性が高く、水に不溶である。
そして上記ITOナノ粒子(1g)とDDV2+・2Br(0.05g)を1−ブタノール(9g)に添加し、バス型超音波分散機(AS ONE社製model USK−2R)中で30分以上超音波処理を施し、スラリーを調整した。この結果、ITOナノ粒子とビオロゲン化合物が分散した分散液を作成した。
その後、ガラス基板を用い、このガラス基板に上記分散液をディップコーティング法によって塗布し、その後室温で乾燥させた。なおこの分散液の塗布と乾燥を複数回繰り返し、膜圧を町整し、透明導電膜(以下「ITO/DDVコンポジット膜電極」という。)を形成した。なおこのITO/DDVコンポジット膜電極の厚さは2μmであった。
(エレクトロクロミック特性の検討)
エレクトロクロミック特性の検討は、0.1Mの硫酸リチウム(LiSO・HO,Wako Pure Chemicals,>99%)水溶液中で行った。図2は、本特性の検討において用いた電解セルの構成を示す図である。本検討において用いた電解セルは、直方体の主室5と、円柱形の副室6からなり、G4ガラスフィルター10で隔てられている。主室5には動作電極(ITO/DDVコンポジット膜電極)9と対向電極(リング状のPt電極)8が浸漬されている。一方、副室6には参照電極(飽和カロメル電極,SCE)13へとつながる塩化カリウム塩橋14が浸漬されている。またDDV2+の電気化学的挙動は、エレクトロケミカルアナライザー(BAS Co.,model 750A)を用い、サイクリックボルタンメトリーにより検討した。また、サイクリックボルタンメトリーと同時に、紫外可視分光光度計(Ocean optics Inc.,USB4000−UV−vis spectrometerとDH−2000 deuterium tungsten halogen light source)と光ファイバーシステムを用い、UV−visスペクトルを測定した。図中7は参照光を、11はKCl水溶液を、15は窒素ガス入り口をそれぞれ示している。
(サイクリックボルタンメトリー)
図3に、ITO/DDVコンポジット膜電極に対するサイクリックボルタンメトリーの結果であるサイクリックボルタンモグラムを、図4にこのサイクリックボルタンメトリーと同時に測定した電位−吸光度(着色膜の吸収極大である512nmでの吸光度)のプロットを示す。
図3の結果によると、−0.35V近傍から流れ始める還元電流及び−0.45V近傍から流れ始める酸化電流の形状は電位の繰り返し掃引に対して極めて安定であり、ITO/DDVコンポジット膜電極が極めて安定な電子ペーパー媒体となることが示された。DDV2+・2Brは、ITOナノ粒子が形成するナノ空間内に保持されていると予想される。そのナノ空間内では、電解液が疎水性のDDV2+・2Brに排除されることなく十分に浸透しているため、イオンの出入りが自由に行われ、DDV2+・2Brの電極酸化還元が可能となっているものと思われる。このとき、水の侵入を可能としているのは、ITO粒子表面の親水性であると推測される。
一方、図4の結果も同様であり、−0.35V付近から増加する吸光度及び−0.45 V付近から減少する吸光度の挙動は、掃引を繰り返しても、極めて安定である。さらに、消色状態も常に吸光度ゼロに戻っており、消え残り(ゴーストイメージ形成)が生じないことがわかる。
水溶液中において、平滑状の電極上でビオロゲン化合物の1電子還元を行うと、水に不溶性のビオロゲンカチオンラジカルが生じる。そして、ビオロゲンの二量化反応が生じ、紫に呈色することが知られている。一般にビオロゲンダイマーは、結晶化を起こすので、容易に酸化されない。従って、大きな酸化電位が必要になるか、あるいは完全に酸化されずに消え残りが生じてしまう(ゴーストイメージ形成)こととなる。しかしながら、上記ITO/DDVコンポジット膜電極の場合、極めて狭い電位範囲内で着消色が行われており、2電極式のセルを形成した場合、着消色の駆動電圧が非常に小さいことが期待できる。また、消え残りが生じないため、高い繰り返し安定性が期待できる。消え残りが生じない理由は、ITOナノ粒子が形成するナノ空間内では、DDV2+・2Brが局所的に凝集することがなく、結晶化が生じないためと考えられる。
また図5に、着色状態(A)及び消色状態(B)のITO/DDVコンポジット膜電極のUV−vis吸収スペクトルを示す。なお各スペクトルの近傍にはそれぞれの状態の写真を示しておく。また本図においてスペクトルCは、スペクトルAとBの差スペクトルである。なおコンポジット膜の膜厚は2μmである。また、ここにおいて着色状態及び消色状態はそれぞれ、−0.60V及び0Vの電位を5秒間印加することによって形成した。ビオロゲンカチオンラジカルダイマーは、それぞれ360nmと520nmに吸収ピークをもち、ビオロゲンカチオンラジカルモノマーは396nmと602nmに吸収ピークをもつことが知られている。スペクトルCは、360nmと520nmにピークを示すことから、DDV2+はダイマーとして存在することがわかる。これは推測ではあるが、ジドデシル基によるファスナー効果によって二量化が促進されるので、カチオンラジカルモノマーは存在しにくい状況となっていると考えられる。また、消色状態のスペクトルは、光散乱が生じる場合の白色を示しており、エレクトロクロミック素子や電子ペーパーの背景として望ましいことを示している。
また図6に、ITO/DDVコンポジット膜電極を用いて着消色を繰り返し行ったときの、512nmにおける吸光度−繰り返し回数の関係を、図7に、図6のうちの着消色繰り返し時の一部を拡大した吸光度と時間の−繰り返し回数の関係図を示す。なお図7の横軸は、繰り返し回数ではなく、時間で表示している。なお着色電位及び消色電位はそれぞれ、−0.6V及び0Vである。また、それぞれの電位の印加時間は1sである。
これらの結果によると、到達する着色の吸光度および消色の吸光度とも繰り返しに対してほぼ同じ値をとり、ゴーストイメージ生成や膜の劣化は見られないことがわかる。図6では、繰り返し回数300回までが表示されているが、1000回の繰り返しを行っても劣化はみられなかった。
また、図7の結果から、着色が開始されてから終了するまでにかかる時間(応答時間tr)は500ms、消色開始から終了までの時間は380msであることがわかった。これらの応答速度は、TiOナノ粒子/化学修飾ビオロゲン膜電極の着色時間(6ms−3s)及び消色時間(14.4ms−3s)とほぼ同等である。こうした高速応答の実現は、ビオロゲンを反応場であるITOナノ粒子膜の中に混ぜ込んだだけでビオロゲンが固定化され、ビオロゲンあるいは反応に関与するイオンの拡散の影響を小さくすることができたためと考えることができ、特に、ビオロゲン化合物とITOナノ粒子とを分散させただけで製造することができる点は非常に重要である。なお、窒素雰囲気下では、着色状態のメモリー寿命は少なくとも24h以上であった。
(膜厚の影響についての検討)
これまでの検討で、2μmという比較的薄い膜を用いた場合には、物質の拡散の影響を小さくすることができ、高速応答が可能であることがわかった。しかしながら、着色状態の呈色を濃くし、画像のコントラストを上げようとする場合にはより厚い膜の利用が必要となる。そこで次に、膜厚を変えて物質の拡散の影響を検討した。
上記した製造方法と同様の製造方法を用い、膜厚2μm、5μm、9μm及び13μmのITO/DDVコンポジット膜電極を作製し、掃引速度vを変えて上記と同様のサイクリックボルタンメトリーを行った。一般に、電極上に固定化された物質のサイクリックボルタンメトリーを行った場合、流れるピーク電流Ip(今回の場合には、コンポジット膜中に固定化されたDDV2+の還元電流に相当する)と掃引速度vのn乗(v)が比例することが知られている。そしてそのnの値が1のときに物質の拡散の影響は無視することができ、n=0.5の時には反応が物質の拡散によって律速される。図8に、ITO/DDVコンポジット膜電極のIpとvの関係を示す。なおピーク電流Ipと掃引速度vのn乗vの関係は、比例関係が成立するようにnの値が調整されている。
そして、このようにして算出したnの値と膜厚の関係を図9に示しておく。この結果、膜厚が増大するにつれて、nの値は次第に0.5に近づいており、徐々に反応が物質の拡散によって律速されることがわかる。この結果は、おそらく、DDVの酸化還元に伴って膜に出入りする対イオン(Br及びSO 2−の少なくともいずれか)の拡散による律速と思われる。
以上の結果から、膜厚を厚くすればするほど、コンポジット膜内に出入りするイオンの拡散の影響が顕著になることが判明した。このことは応答速度が膜厚と共に低下することを予想させる。
そこで次に膜厚を変えたときの応答時間trと着色効率CE(単位電荷注入量当たりの吸光度増加量)の検討を行った。この検討は、まず、上記と同様膜厚2μm、5μm、9μm及び13μmのITO/DDVコンポジット膜電極を作製し、各膜厚のコンポジット膜に着色電位(−0.6V)を印加し、時間と共に変化する吸光度と注入電気量を計測することで行った。図10に吸光度と注入電気量の関係を示す。
次に、吸光度の時間依存性からtrを算出し、吸光度の時間依存性と通電電気量の時間依存性から吸光度と通電電気量の関係を導き、その傾きからCEを算出した。この結果を図11に示しておく。本図の横軸は膜厚(μm)を表し、縦軸は着色効率CE又は応答時間trを表す。なお図中Aは、応答時間trを、Bは着色効率CEである。
この結果、膜厚5μm以下では1秒以内に着色が完了し、高速な応答を示すことがわかる。しかし、それ以上の膜厚になると1秒以上の応答時間が必要になった。したがって、1秒以内の応答を考慮すると膜厚は5μm以下が望ましいといえる。これは上述したような対イオンの拡散の影響によると考えている。具体的には、着色効率CEの値は、膜厚2 μmでは、300cm/Cとなり、TiOナノ粒子/化学修飾ビオロゲン膜電極を用いた場合のCEの値(34−270cm/C)とほぼ同等であった。また着色効率CEの値は、膜厚とともに低下していることが確認された。これは、半透明白色のITOナノ粒子による光散乱のため、一部のDDV2+が遮蔽されてしまったためと考えることができる。
以上、本実施例において、水溶液中でその電極のエレクトロクロミック特性について検討を行った結果、電極は半透明白色と紫色の間で変化するエレクトロクロミズムを示していることを確認した。また、着色と消色は非常に小さな電位範囲で生じ、消え残り(ゴーストイメージ形成)はほとんど生じなかった。またこの電極は、極めて優れた着消色繰り返し耐久性をもち、少なくとも1000回の繰り返し着消色操作で劣化は見られなかった。更に、本実施例の電極は高速応答を示し、着色及び消色に対する応答時間がそれぞれ500ms及び380ms程度であった。
以上、本発明によると、ITOナノ粒子と疎水性ビオロゲン(DDV)を単に混合し、塗布することだけで極めて高性能なITO/ビオロゲン化合物のナノコンポジット膜電極を作製することができることを確認した。
本発明は、エレクトロクロミック表示素子及びエレクトロクロミック表示素子の製造方法として産業上の利用可能性がある。

Claims (3)

  1. 電極が形成された一対の基板と、前記一対の基板の間に挟持された親水性の媒体と、を有するエレクトロクロミック表示素子であって、
    前記電極の少なくとも一つは、ITOナノ粒子及び疎水性のビオロゲン化合物を混合した膜であるエレクトロクロミック表示素子。
  2. 前記膜の膜厚が20μm以下である請求項1記載のエレクトロクロミック表示素子。
  3. 基板にITOナノ粒子及び疎水性のビオロゲン化合物を混合した分散液を塗布する塗布工程と、
    前記塗布工程の後に前記基板を乾燥する乾燥工程と、
    親水性の溶媒を、前記基板を少なくとも一方に含む一対の基板の間に保持させる工程と、を有するエレクトロクロミック表示素子の製造方法。
JP2011266341A 2011-12-05 2011-12-05 エレクトロクロミック表示素子及びエレクトロクロミック表示素子の製造方法 Active JP5888644B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011266341A JP5888644B2 (ja) 2011-12-05 2011-12-05 エレクトロクロミック表示素子及びエレクトロクロミック表示素子の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011266341A JP5888644B2 (ja) 2011-12-05 2011-12-05 エレクトロクロミック表示素子及びエレクトロクロミック表示素子の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2013117704A JP2013117704A (ja) 2013-06-13
JP5888644B2 true JP5888644B2 (ja) 2016-03-22

Family

ID=48712284

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2011266341A Active JP5888644B2 (ja) 2011-12-05 2011-12-05 エレクトロクロミック表示素子及びエレクトロクロミック表示素子の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5888644B2 (ja)

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5838931A (ja) * 1981-09-01 1983-03-07 Japan Electronic Ind Dev Assoc<Jeida> エレクトロクロミツク表示素子

Also Published As

Publication number Publication date
JP2013117704A (ja) 2013-06-13

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Ishiguro et al. Gradient doping of conducting polymer films by means of bipolar electrochemistry
US9377662B2 (en) Electrochromic device including carbon-based material and viologen-based compound, and method for producing the same
Fan et al. A high contrast solid-state electrochromic device based on nano-structural Prussian blue and poly (butyl viologen) thin films
Lee et al. Accelerated coloration of electrochromic device with the counter electrode of nanoparticulate Prussian blue-type complexes
Wang et al. Electrochromic films with a stacked structure of WO3 nanosheets
US20140146381A1 (en) Optically variable thin film with electrochemical capacitance property and use thereof
Kharade et al. Hybrid physicochemical synthesis and electrochromic performance of WO3/MoO3 thin films
Dulgerbaki et al. Electrochromic device based on electrospun WO3 nanofibers
Nakashima et al. Bismuth electrochromic device with high paper-like quality and high performances
Pham et al. Implementation of high-performance electrochromic device based on all-solution-fabricated Prussian blue and tungsten trioxide thin film
Liao et al. Molybdate hexacyanoferrate (MoOHCF) thin film: A brownish red Prussian blue analog for electrochromic window application
US7907323B2 (en) Display method, display medium, and display device
Lin et al. Synthesis and electrochromic properties of benzonitriles with various chemical structures
Shiozaki et al. Electrochromic thin film fabricated using a water-dispersible ink of Prussian blue nanoparticles
Nakajima et al. Electrochromic properties of ITO nanoparticles/viologen composite film electrodes
Baray-Calderón et al. Enhanced performance of poly (3-hexylthiophene)-based electrochromic devices by adding a mesoporous TiO2 layer
Deng et al. Electrochromic properties of WO3 thin film onto gold nanoparticles modified indium tin oxide electrodes
Hu et al. Roll-to-roll production of Prussian blue/Pt nanocomposite films for flexible gasochromic applications
Vidotti et al. Nanochromics: old materials, new structures and architectures for high performance devices
Dong et al. Colorimetric properties and structural evolution of cathodic electrochromic WO3 thin films
JP5888644B2 (ja) エレクトロクロミック表示素子及びエレクトロクロミック表示素子の製造方法
JP2008281710A (ja) 表示媒体、表示装置および表示方法
Hu et al. Poly (3, 4-alkylenedioxythiophenes): PXDOTs electrochromic polymers as gasochromic materials
Gu et al. Electrochromic device containing heptyl viologen, PEDOT, TiO2 and TEMPO
JP2009020270A (ja) 表示媒体、表示装置および表示方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20141114

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20150624

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20150715

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20150818

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20160203

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20160205

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5888644

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250