本発明の実施例1に係るEGRクーラ10について説明する。本実施例に係るEGRクーラ10は、車両100に搭載された内燃機関110に配備されて使用されるEGRクーラである。すなわち本実施例に係るEGRクーラ10は、内燃機関のEGRクーラである。まず、EGRクーラ10が搭載された車両100の全体構成について説明し、次いでEGRクーラ10の詳細について説明する。
図1は車両100を示す模式図である。車両100は、内燃機関110と、吸気通路120と、排気通路121と、EGR通路122と、EGRクーラ10と、冷媒供給通路130と、冷媒排出通路131と、スロットル140と、冷媒バルブ150と、EGRバルブ160と、クランクポジションセンサ170等の各種検出装置と、制御装置180とを備えている。
内燃機関110は、気筒を有するシリンダブロック、シリンダブロックの上部に配置されたシリンダヘッド、気筒に配置されたピストン、燃料噴射弁等を備えている。内燃機関110の種類は、特に限定されるものではなく、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン等の種々の内燃機関を用いることができる。本実施例においては、内燃機関110の一例としてガソリンエンジンを用いる。吸気通路120は、内燃機関110の気筒に吸入されるガスである吸気が通過する通路である。本実施例において吸気通路120の吸気流動方向上流側の端部に流入する吸気は、新気(空気)である。排気通路121は、内燃機関110の気筒から排出されたガスである排気が通過する通路である。
EGR通路122は、気筒から排出された排気の一部を気筒に再循環させる通路である。このように排気の一部を気筒に再循環させることで、気筒内の燃焼温度を低下させることができ、以ってNOx等の排気エミッションの低減を図ることができる。本実施例に係るEGR通路122は、吸気通路120の通路途中と排気通路121の通路途中とを接続している。この場合、内燃機関110の気筒から排気されて排気通路121に流入した排気の一部は、EGR通路122に流入し、EGR通路122を通過後に吸気通路120に流入して内燃機関110の気筒に流入する。但し、EGR通路122の具体的な接続箇所は、気筒から排出される排気の一部を気筒に再循環させることが可能な箇所であれば、本実施例のような吸気通路120の通路途中および排気通路121の通路途中に限定されるものではない。
EGRクーラ10は、内燃機関110の気筒に再循環する排気(以下、EGRガスと称する)を冷却する装置である。車両100がEGRクーラ10を備えていることで、EGRガスの温度が高温になり過ぎることを抑制することができる。本実施例に係るEGRクーラ10は、EGR通路122の通路途中に配置されている。またEGRクーラ10は、ステー101によって、内燃機関110に固定されている。すなわち、ステー101は、EGRクーラ10を内燃機関110に固定するEGRクーラ固定部材としての機能を有している。なお図1においてステー101と内燃機関110とは離れているように図示されているが、実際にはステー101は内燃機関110に接続している。
本実施例に係るEGRクーラ10は、冷媒とEGRガスとの間で熱交換をさせることで、EGRガスを冷却している。本実施例においては、EGRクーラ10用の冷媒として、内燃機関110を冷却する冷媒を用いている。すなわち、本実施例においては、内燃機関110を冷却する冷媒をEGRクーラ10用の冷媒としても利用している。但し、EGRクーラ10用の冷媒は、このような内燃機関110用の冷媒に限定されるものではなく、例えば、内燃機関110を冷却する冷媒とは別の冷媒をEGRクーラ10に用いてもよい。また、冷媒の種類は特に限定されるものではなく、例えば、水、不凍液等を用いることができる。本実施例においては、冷媒として水を用いる。EGRクーラ10の詳細は後述する。
冷媒供給通路130は、冷媒がEGRクーラ10に供給されるまでの間に通過する通路である。冷媒排出通路131は、EGRクーラ10から排出された冷媒が通過する通路である。本実施例に係る冷媒供給通路130は、内燃機関110に形成された冷媒通路である内部冷媒通路(例えばウォータジャケット)と、EGRクーラ10の冷媒供給口24(後述する図2(a)において図示されている)と、を接続している。冷媒排出通路131は、EGRクーラ10の冷媒排出口25(後述する図2(a)に図示されている)と、内燃機関110の内部冷媒通路と、を接続している。
冷媒は、ウォータポンプによって内燃機関110の内部冷媒通路に圧送され、内部冷媒通路を通過しながら内燃機関110を冷却する。内燃機関110を冷却した冷媒は、冷媒供給通路130を通過してEGRクーラ10に流入する。EGRクーラ10を通過した後の冷媒は、冷媒排出通路131を通過して内燃機関110の内部冷媒通路に戻り、その後、ラジエータ等を経由してウォータポンプに戻る。なお冷媒が通過する通路の具体的な経路は、これに限定されるものではない。
スロットル140は、吸気の流量(m3/s)を調整するバルブである。スロットル140は、吸気通路120に配置されている。冷媒バルブ150は、EGRクーラ10に供給される冷媒の流量(m3/s)を調整するバルブである。冷媒バルブ150がEGRクーラ10に供給される冷媒の流量を調整することで、EGRクーラ10におけるEGRガスの冷却度合いを調整することができる。本実施例に係る冷媒バルブ150は、冷媒供給通路130に配置されており、冷媒供給通路130を通過する冷媒の流量を調整している。但し、冷媒バルブ150の配置箇所は、冷媒供給通路130に限定されるものではなく、例えば冷媒排出通路131であってもよい。
EGRバルブ160は、EGR通路122を通過するEGRガスの流量(m3/s)を調整するバルブである。EGRバルブ160がEGRガスの流量を調整することで、内燃機関110に再循環する排気の流量を調整することができる。本実施例に係るEGRバルブ160は、EGR通路122のEGRクーラ10よりもEGRガス流動方向下流側に配置されている。但し、EGRバルブ160の配置箇所はこれに限定されるものではなく、例えばEGR通路122のEGRクーラ10よりもEGRガス流動方向上流側に配置されていてもよい。
クランクポジションセンサ170等の各種検出装置は、内燃機関110の運転状態を示す指標を検出する装置である。図1においては検出装置の一例として、クランクポジションセンサ170の他に、エアフロメータ171、温度センサ172aおよび温度センサ172bが図示されている。クランクポジションセンサ170は、内燃機関110のクランクシャフトの位置を検出し、検出結果を制御装置180に伝える。エアフロメータ171は、吸気の流量を検出し、検出結果を制御装置180に伝える。温度センサ172aは、排気の温度(℃)を検出し、検出結果を制御装置180に伝える。温度センサ172bは、冷媒の温度(℃)を検出し、検出結果を制御装置180に伝える。
制御装置180は、車両100全体を統合的に制御する制御部と、制御部の動作に必要な情報を記憶する記憶部とを有している。本実施例においては、制御装置180の一例として、CPU(Central Processing Unit)180、ROM(Read Only Memory)182およびRAM(Random Access Memory)183を備える電子制御装置(Electronic Control Unit)を用いる。制御部の機能は、CPU181によって実現される。記憶部の機能は、ROM182およびRAM183によって実現される。
制御部は、上述した各種検出装置の検出結果を受けて、記憶部に記憶されている各種情報を参照しつつ、内燃機関110の燃料噴射量および燃料噴射時期、スロットル140、EGRバルブ160および冷媒バルブ150を制御することで、内燃機関110およびEGRクーラ10の運転状態を適切な状態に制御している。
EGRクーラ10が搭載されている車両100の全体構成は以上のとおりである。なお図1に示す車両100はEGRクーラ10が搭載された車両の一例を示したものに過ぎず、車両100の構成は図1の構成に限定されるものではない。
続いてEGRクーラ10の詳細について説明する。図2(a)はEGRクーラ10を示す模式図である。図2(b)は図2(a)のA−A線断面を模式的に示した図である。図2(c)は図2(a)のX部分を拡大した断面図である。図2(a)に示すように、EGRクーラ10は、アウターパイプ20と、アウターパイプ20の内側に配置され、アウターパイプ20との間に冷媒通路40を形成するインナーパイプ30とを備えている。またEGRクーラ10は、冷媒通路40の端部に配置された第1シール部材50および第2シール部材51と、インナーパイプ30の内側に配置された熱交換体60と、アウターパイプ20とインナーパイプ30との間に配置された支持部材70とを備えている。以下、EGRクーラ10を構成するこれら各構成部材について説明する。
アウターパイプ20は、内部が空洞の筒部材(すなわちパイプ)である。アウターパイプ20の内部には、インナーパイプ30、熱交換体60、支持部材70等が収容されている。すなわち、アウターパイプ20は、インナーパイプ30、熱交換体60、支持部材70等を収容するケーシングとしての機能を有している。アウターパイプ20は、EGR通路122の通路途中に配置されている。それによりアウターパイプ20の内部には、EGRガスが通過する。なお、図2(a)においてEGRガスの流動方向は、左から右に向かう方向である。
アウターパイプ20の具体的な構造は、内部にEGRガスが通過することができ且つインナーパイプ30、熱交換体60、支持部材70等を収容することができるものであれば、特に限定されるものではない。本実施例に係るアウターパイプ20は、一例として次のような構造を有している。
本実施例に係るアウターパイプ20は、第1円錐部21と円筒部22と第2円錐部23とが接続された構造を有している。第1円錐部21は、EGRガス流動方向で上流側から下流側に向かって拡径した円錐形状を有している。第1円錐部21のEGRガス流動方向上流側の端部には、EGR通路122が接続している。円筒部22は、第1円錐部21のEGRガス流動方向下流側の端部に接続している。円筒部22は、EGRガス流動方向で上流側から下流側に向かって内径が一定の円筒形状を有している。第2円錐部23は、円筒部22のEGRガス流動方向下流側の端部に接続している。第2円錐部23は、EGRガス流動方向で上流側から下流側に向かって縮径した円錐形状を有している。第2円錐部23のEGRガス流動方向下流側の端部には、EGR通路122が接続している。
なお、本実施例において第1円錐部21、円筒部22および第2円錐部23は、互いに溶接によって接続されている。但し第1円錐部21、円筒部22および第2円錐部23の接続手法は、溶接に限定されるものではなく、種々の接続手法を用いることができる。
また図2(a)に示すように、アウターパイプ20の円筒部22には、冷媒供給口24および冷媒排出口25が設けられている。冷媒供給口24には冷媒供給通路130が接続され、冷媒排出口25には冷媒排出通路131が接続されている。なお、本実施例に係る冷媒供給口24および冷媒排出口25は、両方ともアウターパイプ20の中心軸を挟んで同じ側(図2(a)においては上方の側)に配置されているが、アウターパイプ20における冷媒供給口24および冷媒排出口25の配置箇所は、これに限定されるものではない。また本実施例に係るステー101は、アウターパイプ20の円筒部22の外周面26(外周面26の符号は図2(c)に図示されている)に接続されている。但し、ステー101の接続箇所は、EGRクーラ10を内燃機関110に固定できる箇所であれば、これに限定されるものではない。
本実施例に係るアウターパイプ20(第1円錐部21、円筒部22および第2円錐部23)の材質は、ステンレスである。但しアウターパイプ20の材質は、これに限定されるものではなく、例えばステンレス以外の金属、あるいはセラミックスを用いることもできる。但し、ステンレスは、水に対する十分な耐食性を有しつつセラミックスよりも製造コストが安価であるため、アウターパイプ20の材質として好ましい。
EGRクーラ10によれば、アウターパイプ20が第1円錐部21と円筒部22と第2円錐部23とが接続された構造を有していることから、例えばEGRクーラ10の製造手法として、円筒部22の内部にインナーパイプ30、熱交換体60等の各種部材を配置した後に第1円錐部21および第2円錐部23を円筒部22に接続する手法を用いることができる。このような製造手法を用いることにより、アウターパイプ20の内部にインナーパイプ30、熱交換体60等の各種部材を容易に配置することができる。但し、EGRクーラ10の製造手法はこれに限定されるものではない。
インナーパイプ30は、内部が空洞の筒部材(すなわちパイプ)である。インナーパイプ30は、インナーパイプ30の内側に熱交換体60を収容している。具体的には本実施例に係るインナーパイプ30は、熱交換体60の外周面全体を覆うように熱交換体60の外側に配置されている。本実施例においてインナーパイプ30の軸方向(図2(a)において横方向)は、アウターパイプ20の軸方向と一致しており、また熱交換体60の軸方向とも一致している。これ以降、インナーパイプ30の軸方向の両端部のうち、一方の端部を第1端部31と称し、他方の端部を第2端部32と称する。本実施例において第1端部31は、EGRガス流動方向で上流側の端部(図2(a)においては左側の端部である)であり、第2端部32は、EGRガス流動方向で下流側の端部(図2(b)においては右側の端部)である。
インナーパイプ30は、熱交換体60のEGRガスの流動方向で上流側にある端面(以下、第1端面61と称する)よりもさらに上流側に延出し、熱交換体60のEGRガスの流動方向で下流側にある端面(以下、第2端面62と称する)よりもさらに下流側に延出している。これ以降、インナーパイプ30のうち、熱交換体60に接触した領域を領域Zと称する。またインナーパイプ30のうち、熱交換体60よりもインナーパイプ30の軸方向で外側に延出した部分を延出部33と称する。
インナーパイプ30とアウターパイプ20との配置関係を詳細に説明すると、次のようになる。インナーパイプ30は、インナーパイプ30の外周面34(外周面34の符号は図2(c)に図示されている)がアウターパイプ20の内周面27に対向するように、アウターパイプ20よりも内側に配置されている。具体的にはインナーパイプ30は、その外周面34がアウターパイプ20の円筒部22の内周面27に対向し、且つ内周面27との間に冷媒が通過する空間を有するようにして、アウターパイプ20よりも内側に配置されている。
より具体的にはアウターパイプ20の円筒部22の内周面27とインナーパイプ30の外周面34との間には、後述する支持部材70が配置されている。この支持部材70によって、アウターパイプ20の円筒部22の内周面27との間に冷媒が通過する空間が確保されている。インナーパイプ30とアウターパイプ20との間に形成されたこの空間は、冷媒が通過する通路である冷媒通路40になっている。冷媒供給通路130を通過した冷媒は、アウターパイプ20の冷媒供給口24から冷媒通路40に流入し、冷媒通路40を通過した後に、アウターパイプ20の冷媒排出口25から冷媒排出通路131に排出される。
本実施例において、インナーパイプ30の材質はステンレスである。但しインナーパイプ30の材質は、これに限定されるものではなく、例えばステンレス以外の金属を用いることもでき、あるいはセラミックスを用いることもできる。但し、ステンレスは、水に対する十分な耐食性を有しつつセラミックスよりも製造コストが安価であるため、インナーパイプ30の材質として好ましい。
第1シール部材50および第2シール部材51は、冷媒通路40から冷媒が漏洩することを抑制する部材である。第1シール部材50は、インナーパイプ30の第1端部31とアウターパイプ20の円筒部22との間をシールするように配置されている。第2シール部材51は、インナーパイプ30の第2端部32とアウターパイプ20の円筒部22との間をシールするように配置されている。
具体的には本実施例に係る第1シール部材50は、リング形状の部材によって構成されている。第1シール部材50は、インナーパイプ30の第1端部31とアウターパイプ20の円筒部22との間の隙間を埋めるように、インナーパイプ30の第1端部31(より具体的には、第1端部31の外周面34)とアウターパイプ20の円筒部22の内周面27との間に配置されている(図2(c))。第2シール部材51も、リング形状の部材によって構成されている。第2シール部材51は、インナーパイプ30の第2端部32とアウターパイプ20の円筒部22との間の隙間を埋めるように、インナーパイプ30の第2端部32(より具体的には、第2端部32の外周面34)とアウターパイプ20の円筒部22の内周面27との間に配置されている。
第1シール部材50および第2シール部材51の具体的な材質は、冷媒通路40をシールする機能を有するものであれば、特に限定されるものではない。本実施例においては、第1シール部材50および第2シール部材51の材質の一例として、金属を用いる。金属としては、冷媒に対する耐食性の良好なものが好ましい。本実施例においては、金属の一例として、ステンレスを用いる。すなわち、本実施例に係る第1シール部材50および第2シール部材51は、ステンレス製である。
以上のように、本実施例に係るEGRクーラ10の内部に形成された冷媒通路40には、インナーパイプ30のEGRガス流動方向にある両端部のうち一方の端部(第1端部31)とアウターパイプ20との間をシールする第1シール部材50と、他方の端部(第2端部32)とアウターパイプ20との間をシールする第2シール部材51とが配置されている。また、冷媒通路40は、アウターパイプ20と、アウターパイプ20よりも内側に配置されたインナーパイプ30とによって区画された二重管構造を有している。
なお本実施例において、冷媒通路40における冷媒の流動方向は、EGRガスの流動方向と同じ方向(左から右に向かう方向)であるが、これに限定されるものではない。例えば冷媒通路40における冷媒の流動方向は、EGRガスの流動方向とは反対方向であってもよい。例えば、冷媒供給口24および冷媒排出口25の位置を、図2(a)に図示されている位置とは反対の位置にすれば、冷媒通路40における冷媒の流動方向を、EGRガスの流動方向とは反対方向にすることができる。
熱交換体60は、EGRガスと冷媒通路40の冷媒との間で熱交換させる媒体である。図2(a)および図2(b)に示すように、熱交換体60は、インナーパイプ30の内側に配置されている。また熱交換体60は、インナーパイプ30の内周面35に接触している。すなわち熱交換体60は、インナーパイプ30の内周面35に接触させて配置されている。
具体的には本実施例に係る熱交換体60の外径は、インナーパイプ30の内径と同じ値または同じ値よりも若干大きな値に設定されている。それにより、本実施例に係る熱交換体60は、インナーパイプ30の内周面35に嵌合するようにインナーパイプ30の内側に配置されている。このように熱交換体60がインナーパイプ30の内周面35に嵌合していることによって、熱交換体60のインナーパイプ30に対する軸方向への相対移動が効果的に抑制されている。
図2(b)に示すように、本実施例に係る熱交換体60の断面形状は円形である。インナーパイプ30は熱交換体60の外周面を覆っているため、インナーパイプ30も円筒形状になっている。なお熱交換体60の断面形状は、円形に限定されるものではない。なお、インナーパイプ30の断面形状は熱交換体60の断面形状と同じであるため、熱交換体60の断面形状が円形でない場合(例えば矩形の場合)、インナーパイプ30の断面形状も熱交換体60と同じ円形でない形状(すなわち矩形)になる。なお、インナーパイプ30の断面形状が仮に矩形であったとしても、アウターパイプ20の断面形状が矩形である必要はない。
図2(b)に示すように、熱交換体60は、EGRガスが通過するガス通路63を有している。本実施例に係る熱交換体60は、ガス通路63を複数有している。ガス通路63の具体的な構成は、EGRガスが通過できるものであれば特に限定されるものではないが、本実施例においては一例として、次のようになっている。
図2(b)において右下に図示されているガス通路63の拡大図が示すように、熱交換体60は第1隔壁64および第2隔壁65を有している。第1隔壁64は、図2(b)において横方向に延伸した隔壁である。第2隔壁65は、第1隔壁64に対して所定角度(本実施例では一例として90度である)のなす角を有する隔壁である。さらに第1隔壁64は、隣接する第1隔壁64との間に間隔を設けて複数配置されており、第2隔壁65も隣接する第2隔壁65との間に間隔を設けて複数配置されている。各々のガス通路63は、第1隔壁64と第2隔壁65とによって区画されている。その結果、本実施例に係る各ガス通路63の断面は矩形(具体的には4角形)になっている。但し各ガス通路63の断面形状は、図2(b)の形状に限定されるものではなく、例えば3角形、5角形、6角形、8角形その他の多角形、円形、扇形等、種々の断面形状であってもよい。
また、第1隔壁64および第2隔壁65の両端部(径方向の両端部)は、インナーパイプ30の内周面35に接触している。それにより、前述したように、熱交換体60はインナーパイプ30の内周面35に接触している。また第1隔壁64および第2隔壁65は、第1隔壁64および第2隔壁65によって区画されたガス通路63が熱交換体60の第1端面61から第2端面62に至るまで貫通するように(すなわち、熱交換体60の軸方向に貫通するように)構成されている。
熱交換体60のガス通路63に流入したEGRガスの熱は、第1隔壁64および第2隔壁65をそれぞれ伝導してインナーパイプ30に伝導し、その後、冷媒通路40の冷媒に奪われる。このようにして熱交換体60は、EGRガスと冷媒との間で熱交換を行っている。
熱交換体60の材質は、熱伝導物質であれば特に限定されるものではなく、金属、セラミックス等、種々の材質を用いることができる。本実施例においては、一例としてセラミックスを用いる。セラミックスとして、SiC(炭化珪素)を主成分とするセラミックスを用いる。すなわち、本実施例に係る熱交換体60の材質の主成分はSiCである。具体的には熱交換体60の第1隔壁64および第2隔壁65の材質の主成分がSiCである。
上述した熱交換体60の材質の具体例としては、SiC(つまりSiCの他に添加物が添加されていないもの)、Si含浸SiC、(Si+Al)含浸SiC、金属複合SiC等、SiCを主成分とする種々の材質を用いることができる。本実施例においては、一例として、Si含浸SiCを用いることとする。なお、主成分とは、成分割合が最も多いものであることを意味している。
続いて支持部材70について説明する。支持部材70は、インナーパイプ30を支持する機能を有する部材である。本実施例に係る支持部材70は、アウターパイプ20とインナーパイプ30との間に配置されて、インナーパイプ30を支持している。なお、支持部材70はインナーパイプ30を支持しているが、支持部材70自体は、アウターパイプ20によって支持されている。
具体的には支持部材70は、インナーパイプ30のうち、熱交換体60に接触している領域Zの外周面34と、アウターパイプ20の内周面27との間に配置されている。より具体的には支持部材70は、インナーパイプ30の領域Zの外周面34と、アウターパイプ20の円筒部22のうち冷媒供給口24と冷媒排出口25との間の部分の内周面27と、の間に配置されている。
また本実施例に係る支持部材70は、インナーパイプ30の軸方向(これはEGRガスの流動方向と同じ方向でもある)における複数の箇所において、インナーパイプ30に接触することで、複数の箇所においてインナーパイプ30を支持している。
具体的には支持部材70は、インナーパイプ30の軸方向に、隣接する支持部材70との間に間隔を設けて複数配置されている。より具体的には支持部材70は、図2(a)に図示されている第1の位置、第2の位置および第3の位置にそれぞれ配置されている。本実施例において第2の位置は、インナーパイプ30の軸方向における略中央の位置である。また第2の位置は、冷媒供給口24と冷媒排出口25との略中間の位置でもある。第1の位置は、第2の位置よりも冷媒供給口24に近い側に位置している。第3の位置は、第2の位置よりも冷媒排出口25に近い側に位置している。
図3(a)〜図3(d)は、第1の位置、第2の位置および第3の位置における支持部材70の配置態様を説明するための模式図である。具体的には図3(a)は、第1の位置におけるEGRクーラ10の切断面をEGRガス流動方向上流側から見た状態を模式的に示している。図3(b)は、第2の位置におけるEGRクーラ10の切断面をEGRガス流動方向上流側から見た状態を模式的に示している。図3(c)は、第3の位置におけるEGRクーラ10の切断面をEGRガス流動方向上流側から見た状態を模式的に示している。図3(d)は、第1の位置、第2の位置および第3の位置にそれぞれ配置された支持部材70のうち後述する#1の支持部材70を、上側から見た状態を模式的に示している。なお、図3(d)において、後述する#2および#4の支持部材70の図示は省略されている。
図3(a)〜図3(d)に示すように、本実施例に係る支持部材70は、第1の位置および第2の位置および第3の位置のそれぞれの位置において、インナーパイプ30の円周方向に点在するように複数配置されている。具体的には本実施例において、第1の位置、第2の位置および第3の位置には、それぞれ4つの支持部材70が配置されている。図3(a)〜図3(c)にそれぞれ示されている4つの支持部材70を、#1の支持部材70、#2の支持部材70、#3の支持部材70および#4の支持部材70と称する。
図3(a)〜図3(c)において、#1〜#4の支持部材70のうち、#1の支持部材70が最も上方に位置し、#2の支持部材70は#1の支持部材70よりも時計方向に90度回転した位置にある。また#3の支持部材70は、#2の支持部材70よりも時計方向に90度回転した位置にあり、#4の支持部材70は#3の支持部材70よりも時計方向に90度回転した位置にある。すなわち、#1〜#4の支持部材70は隣接する支持部材70のなす角が90度になっている。但し、隣接する支持部材70のなす角は90度に限定されるものではない。
このように本実施例に係る支持部材70は、インナーパイプ30の軸方向において、隣接する支持部材70との間に所定の間隔を設けて複数配置されているとともに(第1の位置、第2の位置および第3の位置の支持部材70)、軸線方向の各位置においては、インナーパイプ30の周方向(外周方向)においても、隣接する支持部材70との間に所定の間隔を設けて複数配置されている(#1〜#4の支持部材70)。
また図3(a)〜図3(d)に示すように、第1の位置に配置されている支持部材70と、第2の位置に配置されている支持部材70と、第3の位置に配置されている支持部材70とは、周方向の位置が互いに異なっている。具体的には、第1の位置の#1の支持部材70、第2の位置の#1の支持部材70および第3の位置の#1の支持部材70は、図3(d)に示すように、互いに周方向の位置がずれている。同様に、第1の位置の#2の支持部材70、第2の位置の#2の支持部材70および第3の位置の#2の支持部材70は、互いに周方向の位置がずれている。また第1の位置の#3の支持部材70、第2の位置の#3の支持部材70および第3の位置の#3の支持部材70は、互いに周方向の位置がずれている。また第1の位置の#4の支持部材70、第2の位置の#4の支持部材70および第3の位置の#4の支持部材70は、互いに周方向の位置がずれている。
第1の位置、第2の位置および第3の位置における#1〜#4の支持部材70は、それぞれ一端がアウターパイプ20の内周面27に接続し、他端がインナーパイプ30の外周面34に接続している。このようにして本実施例に係る支持部材70は、アウターパイプ20とインナーパイプ30との間に冷媒が通過可能な空間を確保しつつ、インナーパイプ30を支持している。
なお、本実施例において、第1の位置の支持部材70、第2の位置の支持部材70および第3の位置の支持部材70の厚みは、互いに等しく設定されている。それにより、アウターパイプ20の円筒部22の内周面27とインナーパイプ30の外周面34との距離は、冷媒通路40の冷媒の流動方向で上流側から下流側にかけて一様である。但し、第1の位置の支持部材70、第2の位置の支持部材70および第3の位置の支持部材70の厚みは、これに限定されるものではない。例えば、アウターパイプ20の円筒部22の内周面27とインナーパイプ30の外周面34との距離が、冷媒通路40の冷媒の流動方向で上流側から下流側に向かうほど小さくなるように、または大きくなるように、第1の位置の支持部材70、第2の位置の支持部材70および第3の位置の支持部材70の厚みが設定されていてもよい。
なお、支持部材70は、アウターパイプ20とインナーパイプ30との間に配置されてインナーパイプ30を支持できるのであれば、上述した構成に限定されるものではない。また支持部材70の材質は、支持部材70の機能を発揮できるものであれば、特に限定されるものではない。本実施例に係る支持部材70は、バネ、ゴム等に代表されるような弾性体からなる部材(弾性部材)ではなく、非弾性体からなる部材(非弾性部材)によって構成されている。具体的には本実施例に係る#1〜#4の各支持部材70は、略直方体形状を有した金属部材(すなわち非弾性部材)によって構成されている。この支持部材70の材質である金属の具体的種類は特に限定されるものではないが、本実施例においては一例としてステンレスを用いる。
続いてEGRクーラ10の作用効果について説明する。まず、図2(a)等において説明したように、本実施例に係るEGRクーラ10は、アウターパイプ20と、アウターパイプ20の内側に配置され、アウターパイプ20との間に冷媒通路40を形成するインナーパイプ30と、インナーパイプ30の内周面35に接触させて配置され、EGRガスが通過する熱交換体60と、アウターパイプ20とインナーパイプ30の熱交換体60に接触した領域との間に配置され、インナーパイプ30を支持する支持部材70とを備えている。
ここで本実施例のように、EGRクーラ10が、インナーパイプ30の外周側に冷媒通路40が形成され、インナーパイプ30の内周側に熱交換体60が配置された構造を有する場合、インナーパイプ30の厚みが薄いほどEGRクーラ10の冷却性能は高くなる傾向がある。この点、本実施例に係るEGRクーラ10によれば、支持部材70によってインナーパイプ30を支持することができることから、インナーパイプ30の厚みを薄くすることができる。その結果、EGRクーラ10の冷却性能を向上させることができる。
このEGRクーラ10に係る作用効果を、支持部材70を備えていないEGRクーラ(これを比較例に係るEGRクーラと称する)と比較することで、より詳細に説明すると次のようになる。まず、比較例に係るEGRクーラとして、インナーパイプ30の延出部33をアウターパイプ20に当接するまで延出させて、この延出部33がアウターパイプ20によって直接支持される構造を備えたものが考えられる。また、比較例に係るEGRクーラとして、第1シール部材50および第2シール部材51のみによってインナーパイプ30を支持する構造を有するものも考えられる(これは、図2(a)において、EGRクーラ10が支持部材70を備えていないものに相当する)。
これら比較例に係るEGRクーラの場合、インナーパイプ30の厚みを薄くした場合、熱交換体60の自重によってインナーパイプ30が変形するおそれがある。特にインナーパイプ30の延出部33が変形するおそれがある。したがって、比較例に係るEGRクーラの場合、インナーパイプ30の厚みを薄くすることは困難である。
これに対して本実施例に係るEGRクーラ10は、インナーパイプ30を支持する支持部材70をアウターパイプ20とインナーパイプ30の熱交換体60に接触した領域Zとの間に備えている。その結果、EGRクーラ10は、熱交換体60をインナーパイプ30が支持し、このインナーパイプ30を支持部材70が支持し、この支持部材70をアウターパイプ20が支持する構造になっている。それにより、EGRクーラ10によれば、支持部材70を備えていない比較例に係るEGRクーラに比較して、インナーパイプ30の厚みを薄くしても、インナーパイプ30が変形することが抑制されている。すなわち、EGRクーラ10は、インナーパイプ30の厚みの自由度が高くなっている。EGRクーラ10によれば、比較例に係るEGRクーラに比較して、インナーパイプ30の厚みをより薄くすることができることから、EGRクーラ10の冷却性能を向上させることができる。
なお支持部材70は、インナーパイプ30を支持するに当たり、インナーパイプ30の外周面34とアウターパイプ20の内周面27とが接触して冷媒通路40が閉塞することを少なくとも抑制できる程度にインナーパイプ30を支持していればよい。支持部材70は、インナーパイプ30がアウターパイプ20に対して全く変位しないようにインナーパイプ30を支持している必要はない。この点、本実施例に係る支持部材70は、弾性部材によって構成されておらず、非弾性部材によって構成されているため、支持部材70が弾性部材によって構成されている場合に比較して、インナーパイプ30のアウターパイプ20に対する相対的な変位量は小さく抑えられている。
またEGRクーラ10によれば、次のような作用効果を発揮することもできる。まず、図2(a)等において説明したように、冷媒通路40を形成するインナーパイプ30は、延出部33(熱交換体60のEGRガスの流動方向で上流側にある第1端面61よりもさらに上流側に延出し、且つ熱交換体60のEGRガスの流動方向で下流側にある第2端面62よりもさらに下流側に延出した部分)を有している。それにより、EGRクーラ10によれば、熱交換体60の第1端面61から第2端面62の部分に至る熱交換体60の軸方向全体に亘って、熱交換体60と冷媒との間で熱交換させることができる。その結果、EGRクーラ10によれば、EGRクーラ10が延出部33を有していない場合に比較して、EGRクーラ10の冷却性能をさらに向上させることができる。
またEGRクーラ10によれば、支持部材70がアウターパイプ20とインナーパイプ30の熱交換体60に接触した領域Zとの間に配置されていることから、支持部材70がアウターパイプ20とインナーパイプ30の熱交換体60に接触した領域Zとの間に配置されておらず、アウターパイプ20とインナーパイプ30の延出部33との間にのみ配置されている場合に比較して、インナーパイプ30の厚みをより薄くすることができる。それにより、EGRクーラ10の冷却性能をより向上させることができる。
またEGRクーラ10によれば、図3において説明したように、支持部材70がインナーパイプ30の軸方向において隣接する支持部材70との間に間隔を設けて複数配置されていることから、隣接する支持部材70との間に空間を設けることができ、この空間を冷媒が通過することができる。その結果、冷媒と熱交換体60との熱交換性能を向上させることができる。それにより、EGRクーラ10の冷却性能を向上させることができる。
これを詳細に説明すると次のようになる。例えば図3(d)に示すように支持部材70がインナーパイプ30の軸方向において隣接する支持部材70との間に間隔を設けて複数配置されている場合と、第1の位置、第2の位置および第3の位置に配置されている支持部材70の間に間隔が設けられていない場合(例えば図3(d)において第1の位置、第2の位置および第3の位置に配置されている支持部材70が繋がっている場合)と、を比較してみる。この場合、前者の方が、隣接する支持部材70の間の空間を冷媒が通過できる点で、冷媒と熱交換体60との熱交換性能が高いことが分る。その結果、前者の方がEGRクーラ10の冷却性能が高いといえる。なお、隣接する支持部材70との間に設けられている間隔(具体的には第1の位置と第2の位置との間隔、第2の位置と第3の位置との間隔)の具体的数値は特に限定されるものではない。隣接する支持部材70との間に設けられている間隔は、熱交換体60の軸方向の長さ、支持部材70の個数、支持部材70の配置箇所等を考慮して適切な間隔を適宜設定すればよい。
また、図2(b)等において説明したように、本実施例において熱交換体60の材質の主成分はSiCである。ここで、SiCはステンレス等の金属に比較して、熱伝導率が高く且つEGRガスに対する耐食性も良好である。したがって、EGRクーラ10によれば、熱交換体60の材質がステンレス等の金属である場合に比較して、EGRクーラ10の冷却性能をより向上させることができるとともに、耐食性も向上させることができる。また本実施例のように、インナーパイプ30が金属製(具体的にはステンレス製)であり、熱交換体60の主成分がSiCの場合、金属の熱伝導率はSiCの熱伝導率よりも低いため、金属の厚み、すなわちインナーパイプ30の厚みを薄くすることが、EGRクーラ10全体の冷却性能向上にとって有効である。この点においても、熱交換体60の材質の主成分はSiCが好ましいといえる。
なお図3において説明したように、本実施例において、第1の位置に配置されている支持部材70と、第2の位置に配置されている支持部材70と、第3の位置に配置されている支持部材70とは、周方向の位置が互いに異なっているが、これに限定されるものではない。例えば、第1の位置に配置されている支持部材70と、第2の位置に配置されている支持部材70と、第3の位置に配置されている支持部材70とは、周方向の位置が互いに一致していてもよい。この場合、図3(d)において第1の位置の#1の支持部材70と、第2の位置の#1の支持部材70と、第3の位置の#1の支持部材70とは、インナーパイプ30の軸方向(横方向)に直線状に並ぶようになる。
また本実施例においてEGRクーラ10は、1個の熱交換体60を備えているが、これに限定されるものではない。EGRクーラ10は、複数の熱交換体60を備えていてもよい。この具体例を挙げると、例えばEGRクーラ10は、図2(a)に図示されている熱交換体60が複数の熱交換体60に分割され、分割された各々の熱交換体60同士の間に空間(すなわち隙間)が形成された構造を有していてもよい。すなわち、このEGRクーラ10は、複数の熱交換体60が隣接する熱交換体60との間に空間を有するように配置された構造を有していることになる。このEGRクーラ10において、インナーパイプ30のうち各々の熱交換体60に接触した部分が領域Zに相当し、隣接する熱交換体60と熱交換体60との間に形成された空間に対応する部分は延出部33に相当する。このEGRクーラ10においても、支持部材70は、インナーパイプ30の熱交換体60に接触した領域Zの外周面34とアウターパイプ20の内周面27との間に配置されていることが好ましい。
続いて本発明の実施例4に係るEGRクーラ10cについて説明する。本実施例の説明において、実施例1と同一の部材には同一の符号を付すことで重複する説明を省略し、実施例1と異なる部分を中心に説明する。図6(a)は、本実施例に係るEGRクーラ10cを示す模式図である。図6(b)は、図6(a)のX部分を拡大した断面図である。EGRクーラ10cは、第1シール部材50に代えて第1シール部材50cを備えている点と、第2シール部材51に代えて第2シール部材51cを備えている点とにおいて、実施例1に係るEGRクーラ10と異なっている。EGRクーラ10cのその他の構成は、実施例1と同様である。
第1シール部材50cおよび第2シール部材51cは、弾性部材によって構成されている点において、実施例1に係る第1シール部材50および第2シール部材51と異なっている。具体的には本実施例に係る第1シール部材50cおよび第2シール部材51cは、断面が蛇腹形状に構成された金属製部材からなる弾性部材によって構成されている。この構成によれば、第1シール部材50cおよび第2シール部材51cは、冷媒通路40の冷媒の漏洩を抑制しつつ、アウターパイプ20およびインナーパイプ30の軸方向に所定距離変形することができるとともにアウターパイプ20およびインナーパイプ30の径方向にも所定距離変形することができる。
なお、第1シール部材50cおよび第2シール部材51cの具体的構造は、弾性部材によって構成されているのであれば、上述した蛇腹形状の構造に限定されるものではない。図6(c)は、第1シール部材50cの他の例を示す模式的断面図である。図6(c)に示す第1シール部材50cは、リング状の金属製部材が弓状に湾曲した弾性部材によって構成されている。なお図6(c)の第1シール部材50cは、冷媒通路40の内部に突出するような湾曲形状になっている。但し、第1シール部材50cの湾曲形状は、これに限定されるものではなく、例えば冷媒通路40の内部側が凹部になり、冷媒通路40の外部側が凸部になるような湾曲形状であってもよい。また、第2シール部材51cも、第1シール部材50cと同様に、リング状の金属製部材が弓状に湾曲した弾性部材によって構成されていてもよい。
第1シール部材50cおよび第2シール部材51cが上述したような弓状に湾曲した形状を有する場合であっても、第1シール部材50cおよび第2シール部材51cは冷媒通路40の冷媒の漏洩を抑制しつつ、アウターパイプ20およびインナーパイプ30の軸方向および径方向に所定距離変形することができる。
続いてEGRクーラ10cの作用効果について説明する。まず、EGRクーラ10cにおいても、支持部材70によって、インナーパイプ30を支持することができる。それにより、インナーパイプ30の厚みを薄くすることができることから、EGRクーラ10cの冷却性能を向上させることができる。
またEGRクーラ10cによれば、第1シール部材50cおよび第2シール部材51cが弾性部材によって構成されていることから、次に説明する効果を発揮することができる。まず、インナーパイプ30の内側には相対的に高温のEGRガスが通過し、インナーパイプ30の外側とアウターパイプ20の内側との間には相対的に低温の冷媒が通過している。したがって、仮に第1シール部材50cおよび第2シール部材51cが弾性部材によって構成されていない場合、インナーパイプ30とアウターパイプ20との熱膨張差に起因してインナーパイプ30に歪みが発生する可能性がある。この場合、インナーパイプ30が変形する可能性がある。インナーパイプ30が変形すると、インナーパイプ30に割れ等の不具合が発生するおそれがある。
これに対して本実施例に係るEGRクーラ10cによれば、第1シール部材50cおよび第2シール部材51cが弾性部材によって構成されていることから、上述したインナーパイプ30とアウターパイプ20との熱膨張差に起因して発生するインナーパイプ30の歪みを第1シール部材50cおよび第2シール部材51cが吸収することができる。それにより、インナーパイプ30の変形を抑制することができる。インナーパイプ30の変形を抑制できることで、インナーパイプ30の厚みをより薄くすることができる。その結果、EGRクーラ10cの冷却性能をより向上させることができる。
なお、第1シール部材50cおよび第2シール部材51cの弾性は、インナーパイプ30とアウターパイプ20との熱膨張差に起因して発生するインナーパイプ30の歪みを吸収できる程度に変形可能な弾性であればよい。
また本実施例において、第1シール部材50cおよび第2シール部材51cの両方が弾性部材によって構成されているが、これに限定されるものではない。第1シール部材50cおよび第2シール部材51cのいずれか一方が弾性部材によって構成されていれば、インナーパイプ30の歪みを、弾性部材によって構成されている方のシール部材によって吸収することができる。したがって、第1シール部材50cおよび第2シール部材51cの少なくとも一方が弾性部材によって構成されていればよい。但し、本実施例のように第1シール部材50cおよび第2シール部材51cの両方が弾性部材によって構成されている場合の方が、インナーパイプ30の歪みをより効果的に吸収できる点で好ましい。
また第1シール部材50cおよび第2シール部材51cの少なくとも一方が弾性部材によって構成されていることによって、インナーパイプ30、アウターパイプ20、第1シール部材50cおよび第2シール部材51cの加工精度のバラツキによる寸法バラツキを吸収することができるという効果も発揮することができる。
なお、EGRクーラ10cは、第1シール部材50および第2シール部材51に代えて第1シール部材50cおよび第2シール部材51cを備えている点以外、実施例1と同様の構成を有しているため、以下に説明するような実施例1と同様の効果を発揮することができる。
具体的にはEGRクーラ10cは、冷媒通路40を形成するインナーパイプ30が延出部33を有していることから、熱交換体60の第1端面61から第2端面62の部分に至る熱交換体60の軸方向全体に亘って、熱交換体60と冷媒との間で熱交換させることができる。それにより、冷却性能を向上させることができる。また、支持部材70がアウターパイプ20とインナーパイプ30の熱交換体60に接触した領域Zとの間に配置されていることから、インナーパイプ30の厚みをより薄くすることができ、以って、EGRクーラ10cの冷却性能を向上させることができる。また支持部材70がインナーパイプ30の軸方向において、隣接する支持部材70との間に間隔を設けて複数配置されていることから、冷媒と熱交換体60との熱交換性能を向上させて、EGRクーラ10cの冷却性能を向上させることができる。また、熱交換体60の材質の主成分がSiCであることから、熱交換体60の材質がステンレス等の金属の場合に比較して、EGRクーラ10cの冷却性能をより向上させることができるとともに、耐食性も向上させることができる。
また本実施例に係る第1シール部材50cおよび第2シール部材51cは、実施例2に係るEGRクーラ10aまたは実施例3に係るEGRクーラ10bに適用されてもよい。すなわち、実施例2に係るEGRクーラ10aまたは実施例3に係るEGRクーラ10bが、本実施例に係る第1シール部材50cおよび第2シール部材51cの少なくとも一方を備えていてもよい。この場合、本実施例に係るEGRクーラ10cの作用効果に加えて、実施例2に係るEGRクーラ10aまたは実施例3に係るEGRクーラ10bの作用効果も発揮することができる。
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。