以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1〜図19は本発明の一実施の形態を示す図である。
<微細貫通孔成形装置>
まず、図1により微細貫通孔成形品を成形する微細貫通孔成形装置の全体構成について説明する。
図1に示すように、微細貫通孔成形装置10は、固定された受台11と、受台11上に保持され、耐熱性を有するとともに合成樹脂からなるプリフォーム20を支持するバックシート12とを備えている。
受台11は、温度制御装置16により、その上面を所望の温度に加熱できるようになっており、バックシート12を介してプリフォーム20を加熱できるようになっている。
バックシート12は、耐熱性を有する(望ましくは溶融温度が250℃以上である)とともに弾性変形により振動を吸収する振動吸収性及び貫入圧に抗して接触圧を発生するスプリングバック性を有することが好ましい。またバックシート12は、プリフォーム20に対して剥離性に優れているものであることが好ましい。例えば、本実施の形態においては、バックシート12の上面に、プリフォーム20に対して剥離性を有するバックシート剥離層12aが形成されている。このようなバックシート12としては、例えばポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のシート、フッ素コーティングされた層やシリコン樹脂コーティングされた層(バックシート剥離層)12aを有する耐熱プラスチックのシート等、またはこれらを積層して組合せたもの等を用いることができる。
一方、プリフォーム20は、微細貫通孔成形品40を製造するための予備成形品としての役割を果たす。このプリフォーム20は、図2および図3に示すように、平板部21と、平板部21外周に設けられ、平板部21より厚肉となる周縁フランジ22とを有している。このうち平板部21は平面円形状を有し、その厚みは任意であるが、後述する超音波成形型30の振動幅および超音波成形型30の上下方向の位置精度から考えて、10μm〜1mm程度とすることが好ましい。一方、周縁フランジ22は、平面円環形状を有し、平板部21の表面側および裏面側の両方に突出している。周縁フランジ22の厚みは任意であるが、100μm〜10mm程度とすることが好ましい。なお、平板部21の形状は平面円形状に限られるものではなく、矩形などの多角形状や楕円形状等であっても良い。また、周縁フランジ22についても平面円環形状に限られるものではなく、矩形などの多角環形状、楕円環形状、またはC字形状、または固定用の凹凸溝形状等を有するような複雑形状等であっても良い。
また、プリフォーム20は、超音波により溶融する性質を有する熱溶融性プラスチックからなっているが、ある程度の剛性および耐熱性を有することが好ましい。この場合、プリフォーム20の溶融温度は、バックシート12の溶融温度より50℃以上低いことが好ましい。仮にプリフォーム20の溶融温度とバックシート12の溶融温度とが近い場合、プリフォーム20の成形時に、バックシート12が熱変形してしまうからである。このようなプリフォーム20の材料としては、例えばポリカーボネート(PC)、非晶質ポリエチレンテレフタレート(A−PET)、結晶性ポリエチレンテレフタレート、延伸性ポリエチレンテレフタレート、メタクリル酸エステル重合体(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ABS等を用いることができる。その他、ポリサルフォン(PSU)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリメチルペンテン(PMP)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、液晶ポリマー(LCP)、ポリアリレート(PAR)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の熱可塑性プラスチックを適用することもできる。なお、プリフォーム20の平板部21と周縁フランジ22とが互いに同一の材料からなっていても良く、あるいは互いに異なる材料からなっていても良い。
再度図1を参照すると、微細貫通孔成形装置には、バックシート12内を貫通する吸引部13が設けられている。この吸引部13を介して真空吸引することにより、プリフォーム20をバックシート12上に固定保持できるようになっている。
さらにバックシート12の上方には、超音波ホーン型からなる超音波成形型30が配置されている。超音波成形型30は、ベース部33と、ベース部33に取り付けられ、下方部に多数の突状部31が形成されたホーンヘッド32とを有している。さらに超音波成形型30に温調装置14が接続されており、温調装置14により超音波成形型30の多数の突状部31を補助的に加熱できるようになっている。超音波成形型30が超音波振動することによる加熱に加え、このような温調装置14を補助的に用いることにより、超音波成形型30の突状部31を効率よく速やかに成形に適する温度にすることができる。
また、超音波成形型30に成形型制御装置15が接続されている。超音波成形型30は、この成形型制御装置15により制御され、上下方向に昇降移動するとともに、上下方向に超音波振動する。この成形型制御装置15による超音波成形型30の昇降位置精度および超音波振動の振幅精度は、いずれも1μmオーダーであることが好ましい。
超音波成形型30は、成形型制御装置15により制御され、その先端に設けられた突状部31が上下方向に超音波振動しながら下降し、プリフォーム20に当接してプリフォーム20を振動加熱する。この振動加熱のみによって、プリフォーム20を軟化ないし溶融させて超音波成形型30によりプリフォーム20を賦型するのには時間を要する。超音波振動のエネルギーを増加させると、振動の振幅も大きくなるため、形成しようとする貫通孔の位置精度が低下してしまう。本発明においては、上記したように、受台11が昇温してプリフォーム20をガラス転移温度ないし軟化温度付近まで加熱できるため、位置精度を保てるような超音波振動エネルギーをプリフォーム20に付与すれば、容易にプリフォーム20を賦型できる状態(即ち、プリフォーム20が軟化ないし溶融した状態)にすることができる。その結果、簡易かつ短時間に、合成樹脂のプリフォーム20に多数の微細な貫通孔を容易に形成することができる。
受台11は、プリフォーム20の温度がガラス転移温度ないし軟化温度付近となるように温度制御されるが、好ましくは、合成樹脂の軟化温度よりも少し低い温度となるように制御される。プリフォーム20の温度が、合成樹脂の軟化温度以上の温度となると、プリフォーム20の加熱されている部分全体が軟化し始める。プリフォーム20の超音波成形型30の突状部31が当接する部分以外の部分が軟化すると、精度の高い貫通孔が形成できなくなる場合がある。プリフォーム20の温度は、軟化温度よりも1〜50℃、より好ましくは約5〜30℃低い温度が好適である。
本実施の形態においては、図4に示すように、超音波成形型30の突状部31は、特定の突状部形成領域34内に配置されている。突状部形成領域34は、後述する微細貫通孔領域43(図12)に対応させ、例えば円形形状を有していても良い。他方、受台11のうち突状部形成領域34に対応する位置であって、超音波成形型30の突状部31がプリフォーム20と当接する領域に突出領域11aが設けられている。この突出領域11aは、超音波成形型30の突状部形成領域34との間でプリフォーム20の平板部21およびバックシート12を挟持する領域となっている。
このような構成とすることにより、超音波成形型30の突状部形成領域34と受台11の突出領域11aとの間で、プリフォーム20の平板部21を挟持し、突状部31によってプリフォーム20の平板部21に確実に微細貫通孔41を形成することができる。また、受台11からの熱が、プリフォーム20のうち微細貫通孔41が形成される領域(即ち、突出領域11aの部分に対応する部分)以外の領域に伝達されないようになる。そのため、プリフォーム20の熱による変形等を最小限に抑えることができる。
受台11のうち突出領域11aの周囲には凹状領域26が設けられ、プリフォーム20の周縁フランジ22は、この凹状領域26に嵌合するようになっている。凹状領域26の形状は、周縁フランジ22の下部を完全に収容できる形状であれば良く、例えば周縁フランジ22が平面円環形状を有している場合、凹状領域26も平面円環形状を有していても良い。
さらに、図4に示すように、超音波成形型30のうち突状部形成領域34の周囲に凹状領域35が設けられている。この凹状領域35は、超音波成形型30が下方に降下して突状部形成領域34と突出領域11aとの間でプリフォーム20の平板部21が挟持されたとき、プリフォーム20の周縁フランジ22が嵌合するようになっている。凹状領域35の形状は、超音波成形型30が下方に降下したとき周縁フランジ22の上部を完全に収容できる形状であれば良く、例えば凹状領域26と同様に平面円環形状を有していても良い。
このような構成とすることにより、超音波成形型30の突状部形成領域34と、受台11の突出領域11aとによりプリフォーム20の平板部21を挟持し、平板部21を効率的に溶融ないし軟化させることができる。このことにより、多数の微細貫通孔41を含む微細貫通孔領域43を有する平板部21と、平板部21外周に設けられ、平板部21より厚肉となる周縁フランジ22とを有する微細貫通孔成形品40(図12および図13参照)を容易に製造することができる。また、プリフォーム20の周縁フランジ22が、受台11の凹状領域26と超音波成形型30の凹状領域35とに嵌合するので、周縁フランジ22が超音波成形型30や受台11に干渉することがなく、成形時にプリフォーム20に変形が生じるおそれもない。
他方、比較例として、超音波成形型30の突状部31を用いてシート状の平板部21に多数の微細貫通孔41を形成し、その後、微細貫通孔41が形成された平板部21に周縁フランジ22を取り付けることも考えられる。しかしながら、とりわけ平板部21の厚みが薄い場合、平板部21の取り扱いが難しく、微細貫通孔41が形成された平板部21に対して周縁フランジ22を正確に取り付けることは困難となる。これに対して、本実施の形態においては、上述した構成により、予め平板部21と周縁フランジ22とを有するプリフォーム20を作製しておき、このプリフォーム20に正確に対して多数の微細貫通孔41を形成する。このことにより、多数の微細貫通孔41を有する平板部21と、平板部21周囲に設けられた周縁フランジ22とを有する微細貫通孔成形品40を容易に製造することができる。
図1において、成形型制御装置15により超音波成形型30を下降させ、超音波振動する突状部31をプリフォーム20に当接させて、プリフォーム20を振動加熱する。これにより突状部31が当接した部分のプリフォーム20が軟化ないし溶融する。プリフォーム20が軟化ないし溶融すると、成形型制御装置15により、超音波成形型30がさらに下降して、超音波成形型30の突状部形成領域34と受台11の突出領域11aとの間でプリフォーム20およびバックシート12を挟持する。この状態で、超音波成形型30の突状部31を超音波振動させてプリフォーム20を振動加熱し、超音波成形型30の先端に設けられた突状部31がプリフォーム20に貫入する。突状部31の先端が、バックシート12に達すると、成形型制御装置15により、超音波成形型30の超音波振動が停止するとともに、振動エネルギーの付加による加熱も停止し、プリフォーム20の上面および下面からの熱伝導による冷却に移行する。プリフォーム20の上面では、ガラス転移点ないし軟化温度以下に温調された突状部31によりプリフォーム20が冷却される。また一方プリフォーム20の下面は、温度制御装置16により、受台11を降温してプリフォーム20を冷却するか、あるいは、温度制御装置16により受台11の温度を合成樹脂のガラス転移温度ないし軟化温度以下の温度となるように制御し、プリフォーム20から受台11への熱伝導により、プリフォーム20を所望の温度に冷却する。
上記のようにして冷却されたプリフォーム20の、超音波成形型30が接している部分(突状部31が貫入している部分)の合成樹脂が固化した後、成形型制御装置15により、超音波成形型30を上方に移動させて、突状部31を抜出する。この時、突状部31がプリフォーム20に形成された貫通孔から剥離しない場合もあり、超音波成形型30が上方に移動するのに伴って、超音波成形型30のホーンヘッド32下端にある突状部31とともにプリフォーム20も上方に持ち上がり、微細な貫通孔を変形させてしまうことがある。本発明においては、超音波成形型30を再度、超音波振動させることにより、突状部31の抜出が容易にすることができる。その結果、プリフォーム20に、より精度の高い貫通孔を形成することができる。
<超音波成形型>
次に、図5〜図7により、上述した超音波成形型30の構成について更に説明する。
図5に示すように、超音波成形型30は、上方から下方に向けて先細となる形状を有するベース部33と、ねじ部32bによりこのベース部33下端に螺着されたホーンヘッド32とを有している。このうちホーンヘッド32下端には、円筒形の先端凸部32aが形成されている。さらにこの先端凸部32aから下方に向けて多数の突状部31が突設されている。なおホーンヘッド32は、例えばチタン、アルミニウム、鋼鉄、ステンレス鋼等の金属からなっている。また、突状部31をこれらの金属上に設けたNiメッキ層、Crメッキ層により構成することもできる。ベース部33は、上方から下方に向けて徐々に直径が小さくなる円形の水平断面を有している。なお図5において、凹状領域35については図示を省略している。
次に。図6および図7により、超音波成形型30の突状部31の構成について更に説明する。図6および図7に示すように、ホーンヘッド32の先端凸部32a上に、互いに同一形状を有する多数の突状部31が形成されている。各突状部31は、それぞれ山形形状を有している。すなわち各突状部31は、平面円形状の頂部31aと、頂部31aから周囲に延びる裾部31bとを有している。このうち裾部31bは、頂部31a側からホーンヘッド32の先端凸部32a側に向けて徐々に直径が大きくなる円形の水平断面を有している。なお、超音波成形型30の振幅を小さく設定したい場合には、超音波振動子に合わせて、逆に上方から下方に向けて徐々に直径が小さくなるようにしても良く、あるいは、同径としても良い。さらに、隣接する頂部31aの間には谷部31cが形成されている。なお各突状部31は、抜きテーパーを有する任意の形状であれば良いが、とりわけ各突状部31先端を鋭角的に形成することが好ましい。各突状部31先端を鋭角にすることにより、成形の際、プリフォーム20に最初に接触する部分の面積を小さくすることができる。このことにより、振動エネルギーをプリフォーム20に伝えやすくし、プリフォーム20の溶融を開始させやすくすることができる。
図7において、各突状部31の頂部31aの直径d1は、微細貫通孔成形品40の形状によって任意に定めることができるが、例えば1μm〜10μm程度とすることが好ましい。隣接する頂部31a同士間の距離L1は、同様に微細貫通孔成形品40の形状によって任意に定めることができるが、例えば20μm〜100μm程度とすることが好ましい。各突状部31の高さh1も同様に任意に定めることができるが、例えば10μm〜100μm程度とすることが好ましい。
次に、図8および図9により、このような超音波成形型30を作製する方法、とりわけ超音波成形型30の複数の突状部31を形成する方法について説明する。
まず、例えばチタン等からなる未加工のホーンヘッド32を準備する。次に、この未加工のホーンヘッド32を超精密切削加工機36に装着する。ここで超精密切削加工機36は、図7および図8に示すように、先端にダイヤモンド刃先38が設けられた切削工具37を有している。このような超精密切削加工機36としては、1nm程度の制御精度を有し、かつ加工後の金型の表面粗さRaが数nmとすることができるものが好ましい。
次に、超精密切削加工機36の切削工具37は、軸A1を中心に時計回りに回転(自転)しながらホーンヘッド32の先端凸部32aに当接する。続いて切削工具37は、ホーンヘッド32の先端凸部32aのうち、各突状部31の頂部31aとなる部分を中心に時計回りに回転(公転)しながら、ホーンヘッド32の先端凸部32aを切削加工する。この結果、ホーンヘッド32の先端凸部32aに、頂部31aと裾部31bとを有する山形形状の突状部31が形成される。その後、このような作業を突状部31の個数分繰り返すことにより、ホーンヘッド32の先端凸部32a上に多数の突状部31が形成される。
<微細貫通孔成形品の製造方法>
次に、図10(a)〜(f)および図11を参照しながら、上記した微細貫通孔成形装置10を用いて微細貫通孔成形品40を製造する方法について説明する。
まず、製造しようとする微細貫通孔成形品40の3次元形状データに基づき、超精密切削加工機36を用いてホーンヘッド32を切削加工し、上記したような方法によって超音波成形型30を作製する。
続いて、超音波成形型30を微細貫通孔成形装置10に装着するとともに、温調装置14により超音波成形型30を、通常の室温(20℃)からプリフォーム20を構成する合成樹脂のガラス転移点温度ないし軟化温度の付近の温度でかつプリフォーム20が成形後に硬化して変形しない温度となるように加熱する。
次に、平板部21と、平板部21外周に設けられ、平板部21より厚肉となる周縁フランジ22とを有する合成樹脂製のプリフォーム20(図2および図3)を作製する。プリフォーム20を作製する方法としては、フィルムフープ成形法、射出コンプレッション成形法、超音波溶着法、熱溶着法、および接着材を使用した接着法を挙げることができる。なお、プリフォーム20を作製する方法については後述する。
次いで、受台11上にバックシート12を保持し、このバックシート12上にプリフォーム20を載置する。このとき、プリフォーム20の平板部21を受台11の突出領域11aに載置し、プリフォーム20の周縁フランジ22を凹状領域26に嵌合させる。また、吸引部13により真空吸引することにより、プリフォーム20をバックシート12上で動かないように固定支持する(図10(a))。
続いて、温度制御装置16により受台11を加温して、プリフォーム20を合成樹脂のガラス転移温度ないし軟化温度付近まで加熱する。
次に、成形型制御装置15により、バックシート12上方に予め配置された超音波成形型30を上下方向に超音波振動させ、さらにこのように超音波振動させた状態で超音波成形型30をプリフォーム20に向けて下降させる。なお、この場合、超音波成形型30の振動数は任意に設定することができるが、20kHz〜40kHz程度に設定することが好ましい。
超音波成形型30の下降により、各突状部31がプリフォーム20の平板部21に当接する。この際、プリフォーム20のうち各突状部31が接触した箇所が超音波振動の振動エネルギーにより振動加熱される。この振動エネルギーによる振動加熱と、受台11から加えられる熱エネルギーにより、プリフォーム20を構成する合成樹脂が軟化ないし溶融温度まで達し、その結果、プリフォーム20のうち突状部31が当接している部分のみが先行して局所的に軟化ないし溶融する(図10(b))。
続いて、超音波成形型30を更に下降させる。この間、超音波成形型30の各突状部31は、超音波振動によりプリフォーム20の平板部21を加熱しながら、プリフォーム20中を貫入していく。このとき、超音波成形型30の突状部形成領域34と受台11の突出領域11aとの間で、軟化ないし溶融したプリフォーム20と、バックシート12が挟持されている。また、超音波成形型30が下降している間、突状部31がプリフォーム20に貫入する際に負荷重がかかるようにしておく。この状態で、超音波成形型30の突状部31は超音波振動されて、プリフォーム20が振動加熱され、突状部31によりプリフォーム20の平板部21が貫通する。このようにして、超音波成形型30の各突状部31先端がバックシート12(バックシート剥離層12a)に当接する。(図10(c))。なお、プリフォーム20の平板部21が貫通したとき、プリフォーム20の周縁フランジ22は超音波成形型30の凹状領域35に嵌合する。
各突状部31の先端がバックシート12に当接したとき、超音波成形型30の下降を停止させる。この時、負荷重をモニターしておくことにより、バックシート12に突状部31が当接したことがわかるため、負荷重のモニタリングにより、超音波成形型30の下降移動を制御してもよい。その後、各突状部31先端の振動下端がバックシート12の表面上に位置するように維持したまま、超音波成形型30の超音波振動の振幅を徐々に減衰させていき、最終的に停止させる。
このように超音波成形型30が下降する間、超音波成形型30は、成形型制御装置15により制御され、成形時の前段において大きな振幅をもち、成形時の後段において小さな振幅をもつように振動することが好ましい。
具体的には、図11に示すように、超音波成形型30は、突状部31先端がバックシート12に当接するまで相対的に大きな振幅で振動しながら下降する(図11の時間T1)。これに対して、突状部31先端がバックシート12に当接した後、超音波成形型30は、徐々に振幅が小さくなるように減衰振動し、その後停止する(図11の時間T2)。なお、超音波成形型30が減衰振動している間、突状部31先端の振動下端は、バックシート12の表面上にくるように維持される(図11参照)。このように超音波成形型30の振動を制御することにより、微細貫通孔成形品40の微細貫通孔41を高精度で賦形することが可能となる。また、突状部31の貫入時に超音波成形型30の振幅を変動させることなく、同一の低振幅(2μm〜5μm)でプリフォーム20に貫入し、そのまま先端位置(バックシート12表面)に到達させ、負荷重をかけ押圧した状態で停止する方法もある。
次に、振動が停止するのと同時に、予め設定温調した超音波成形型30および受台11の温度でプリフォーム20が冷却され、硬化される。更に硬化を確実にするためには温調装置14が停止し、超音波成形型30を冷却すると同時に、温度制御装置16により受台11を降温してプリフォーム20が合成樹脂のガラス温度ないし軟化温度以下の温度となるまで冷却する。これにより、局部的に軟化ないし溶融していたプリフォーム20が固化し、プリフォーム20の平板部21に多数の微細貫通孔41が形成され、プリフォーム20から多数の微細貫通孔41を有する微細貫通孔成形品40が成形される。この場合、図示しない冷却装置を用いることにより、超音波成形型30およびプリフォーム20を積極的に冷却しても良い。
次に、成形型制御装置15により超音波成形型30を上昇させる。この場合、超音波成形型30および微細貫通孔成形品40(プリフォーム20)は冷却されて寸法がわずかに縮んでいる。この状態で、微細貫通孔成形品40を超音波成形型30から離型することができる(図10(d))。また、微細貫通孔成形品40(プリフォーム20)が超音波成形型30に付着する場合には、まず超音波成形型30をわずかに上昇させ、そこで再度極短時間超音波成形型30を振動させることで、微細貫通孔成形品40を超音波成形型30から容易に離型することができる。
続いて、吸引部13による真空吸引を停止し、受台11からバックシート12および微細貫通孔成形品40を取外す(図10(e))。最後に、バックシート12から微細貫通孔成形品40を剥離することにより、微細貫通孔成形品40が得られる(図10(f))。なお、受台11上に保持された状態のバックシート12から直接微細貫通孔成形品40を剥離しても良い。このようにして得られた微細貫通孔成形品40は、以下に説明するように、多数の微細貫通孔41を含む微細貫通孔領域43を有する平板部21と、平板部21外周に設けられ、平板部21より厚肉となる周縁フランジ22とを備えている。
<微細貫通孔成形品>
次に、図12〜図15により、上記した微細貫通孔成形装置10により成形された微細貫通孔成形品40の構成について説明する。図12は、微細貫通孔成形品を示す平面図であり、図13は、図12のXIII−XIII線断面図である。図14は、微細貫通孔成形品を示す拡大平面図であり、図15は、図14のXV−XV線断面図である。
図12〜図15に示す微細貫通孔成形品40は、微細貫通孔成形装置10を用いてプリフォーム20(図2および図3)を成形することにより製造されたものである。このような微細貫通孔成形品40は、例えばフィルター部材、通気性部材、ネブライザーで使用される微粒液滴生成用のメッシュ等、様々な機能を発揮する部材として用いられる。このような微細貫通孔成形品40を構成する材料としては、上述したような各種の熱溶融性樹脂、例えばポリカーボネート(PC)、非晶質ポリエチレンテレフタレート(A−PET)、結晶性ポリエチレンテレフタレート、延伸性ポリエチレンテレフタレート、メタクリル酸エステル重合体(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ABS等が挙げられる。その他、ポリサルフォン(PSU)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリメチルペンテン(PMP)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、液晶ポリマー(LCP)、ポリアリレート(PAR)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の熱可塑性プラスチックを適用することもできる。なお、微細貫通孔成形品40の平板部21と周縁フランジ22とが互いに同一の材料からなっていても良く、あるいは互いに異なる材料からなっていても良い。
図12および図13に示すように、微細貫通孔成形品40は、多数の微細貫通孔41を含む微細貫通孔領域43を有する平板部21と、平板部21外周に設けられ、平板部21より厚肉となる周縁フランジ22とを備えている。平板部21は上述したプリフォーム20の平板部21に対応しており、平面円形状を有している。また、周縁フランジ22は上述したプリフォーム20の周縁フランジ22に対応しており、平面円環形状を有している。なお、平板部21および周縁フランジ22の形状がこれに限られないことは、上述したとおりである。
また、微細貫通孔領域43は、平板部21より小さい平面円形状を有し、この微細貫通孔領域43内に多数の微細貫通孔41が等間隔に形成されている。なお、図12において、一点鎖線で囲まれた領域が微細貫通孔領域43に対応する。また、平板部21のうち微細貫通孔領域43の外側には、微細貫通孔41が形成されていない平坦領域44が設けられている。
次に、図14および図15により、微細貫通孔成形品40のうち微細貫通孔領域43内部の構成について更に説明する。図14および図15に示すように、微細貫通孔成形品40は、成形品本体部42と、微細貫通孔領域43の全体にわたって形成された複数の微細貫通孔41を有している。各微細貫通孔41は、それぞれ超音波成形型30の各突状部31によって賦形されたものであり、したがって、各突状部31の形状に対応する形状を有している。各微細貫通孔41は、成形品本体部42の一面42aに設けられた円形開口41aと、円形開口41aから成形品本体部42の他面の円形開口42b側に向けて延びる斜面部41bとを有している。斜面部41bは、直線や曲線としてよいが、特に、後記するようなミスト形成用フィルターとして微細貫通孔成形品40を使用する場合には、斜面部41bが放物線となるようなコニーデ形状の貫通孔とすることが好ましい。また、符号40aは、円形開口41a周縁に形成された孔周縁部であり、符号40bは、互いに隣接する微細貫通孔41同士の間に形成された接続部であり、符号40cは、微細貫通孔41の周囲に形成された肉厚部である。
斜面部41bが放物線となるようなコニーデ形状の貫通孔では、図15に示すように、微細貫通孔成形品40の表裏において貫通孔の直径が異なる。例えば、各微細貫通孔41の円形開口41aの直径d2は、例えば1μm〜10μm程度とすることが好ましい。また、円形開口42bの直径d3は、例えば20μm〜80μm程度とすることが好ましい。貫通孔41の数は、微細貫通孔成形品40の単位面積あたり、200〜1000個/mm2程度であることが好ましく、各貫通孔41が上記のような数となるには、隣接する円形開口41a同士間の距離L2は、例えば32μm〜70μm程度とすることが好ましい。さらに微細貫通孔成形品40の厚さt2は、例えば10μm〜100μm程度とすることが好ましい。
上記したような微細貫通孔成形品40は、ネブライザー等のミスト発生装置のミスト形成用フィルターとして好適に使用できる。例えば、図16に示すように、ミスト発生装置50の超音波振動子51とミスト発生口52との間に、微細貫通孔成形品40(ミスト形成用フィルター54)を配置する。超音波振動子51上に供給された液体53は、超音波振動子51からの振動エネルギーにより粒状の液滴53aが形成されるが、ミスト形成用フィルター54の貫通孔を液滴が通過してミスト発生口52へ放出されることにより、所望の粒径を有する液滴53aを形成することができる。上記のような表裏で直径の異なる貫通孔が設けられた微細貫通孔成形品40の貫通孔の直径の大きい側が超音波振動子51側となるように微細貫通孔成形品40を配置することにより、液滴53aの粒径が1〜10μm程度のミストを形成することができる。
<プリフォームの製造方法>
次に、上述したプリフォーム20の製造方法について、図17〜図19を用いて説明する。図17〜図19は、それぞれフィルムフープ成形法、射出コンプレッション成形法、ならびに、超音波溶着法、熱溶着法または接着材を使用した接着法によりプリフォーム20を製造する方法を示す図である。
図17(a)〜(c)は、フィルムフープ成形法によりプリフォーム20を製造する方法を示す図である。図17(a)に示すように、まず平板部21に対応するフィルム21aを準備する。この場合、フィルム21aは、1枚のフィルム21aから複数のプリフォーム20を作製できるよう長尺状のものが用いられる。次に、図17(b)に示すように、図示しない金型を用いてフィルム21aに周縁フランジ22を形成する。この際、フィルム21aのうち各平板部21に対応する部分の周囲を取り囲むように、それぞれ周縁フランジ22を設ける。その後、図17(c)に示すように、フィルム21aを周縁フランジ22毎に切断することにより、プリフォーム20が得られる。
図18は、射出コンプレッション成形法によりプリフォーム20を製造する方法を示す図である。図18に示すように、まず一対の金型76、77内にプリフォーム20の材料となる樹脂を高速射出成形し、冷却固化する前にこの樹脂を金型76、77内で加圧することにより、薄い平板部21を有するプリフォーム20を得ることができる。
図19(a)〜(b)は、超音波溶着法、熱溶着法または接着材を使用した接着法によりプリフォーム20を製造する方法を示す図である。図19(a)に示すように、まず例えば射出成形法などの方法により円環状の周縁フランジ22を作製するとともに、樹脂フィルムから円形の平板部21を作製する。次に、図19(b)に示すように、周縁フランジ22内に平板部21を嵌め込んで平板部21の周縁を熱溶着または超音波溶着し、平板部21を周縁フランジ22に取り付けることにより、プリフォーム20を得る。