以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「側」、「端」を含む用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。また、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。
(1.全体構成)図1は、本実施形態に係る薬剤鑑査支援装置1を示す。この薬剤鑑査支援装置1は薬剤撮像部2を備える。薬剤撮像部2は、薬剤支持部3と、撮像手段であるカメラ4とを有する。
(1−1.薬剤支持部3)薬剤支持部3では、ベースプレート5上に第1補助プレート6が取り付けられている。第1補助プレート6の上面には開口部が形成され、その上面には開口部を囲むようにして第2補助プレート7が取り付けられている。図3に示すように、第2補助プレート7の両側壁の内面にそれぞれ取り付けた支持プレート8には、第1回転ローラ9と第2回転ローラ10とが回転可能に支持されている。
第1回転ローラ9は、回転軸の周囲にゴム製のローラ部を一体化したもので、軸心方向に対して両端側から中央部分に向かって徐々に外径側に膨らんだ断面円弧状の外周面を有する。第1回転ローラ9の回転軸は、一方の支持プレート8を貫通し、その先端部分には従動ギア11が一体化されている。
従動ギア11には、駆動ギア12と中間ギア13とが噛合している。図5に示すように、駆動ギア12は駆動軸14の一端部に固定されている。図4に示すように、駆動軸14は第2補助プレート7の一方の側壁に回転可能に支持されている。駆動軸14の他端部には従動磁石15が固定されている。従動磁石15は円筒状で、その外周面での磁極が周方向に向かって交互に相違し、かつ、各磁極面が駆動軸14の軸心方向に対して45°傾斜するように着磁されている。
従動磁石15には、第1モータ16の回転軸に固定した駆動磁石17が対向して配置されている。従動磁石15の回転中心と駆動磁石17の回転中心とは直交している。駆動磁石17は、従動磁石15と同様に、円筒状で、その外周面での磁極が周方向に向かって交互に相違している。但し、各磁極面は駆動軸14の軸心方向に対して−45°(従動磁石15とは反対側に)傾斜するように着磁されている。これにより、駆動磁石17が回転すると、その外周面のうち従動磁石15に対向する部分の磁極面が順次極性の異なるものに変化する。この結果、従動磁石15は駆動磁石17とは非接触で、対応する逆極性の磁極面が位置するように磁気結合を形成しながら回転する。なお、従動磁石15と駆動磁石17には、例えば、マグトラン(登録商標:株式会社エフ・イー・シー社製)等を使用することができる。
第2回転ローラ10は、前記第1回転ローラ9と同様に回転軸の周囲にゴム製のローラ部を一体化したもので、図3に示すように、回転軸の両端部を第1回動アーム18と第2回動アーム19にそれぞれ回転可能に支持されている。第2回転ローラ10は、軸心方向に対して両端側から中央部分に向かって徐々に内径側に窪み、第1回転ローラ9の外周面に沿う断面円弧状の外周面を有する。第2回転ローラ10の回転軸の一端部は第1回動アーム18を貫通し、その先端部分には従動ギア20が固定されている。第2回転ローラ10は、第1回転ローラ9の従動ギア11が駆動ギア12によって回転することにより、中間ギア13および従動ギア20を介して第1回転ローラ9と同一方向に回転する。また第2回転ローラ10の回転軸の他端部は、第2回動アーム19を貫通し、その先端部分には従動磁石21が一体化されている。
図4に示すように、第1回動アーム18は、第2補助プレート7に対して上方に掛け渡すように固定した第3補助プレート22の一方の側面に、支軸を中心として回動可能に支持されている。第1回動アーム18の一端部は第2回転ローラ10の回転軸に回転可能に連結されている。第1回動アーム18の他端部には転動ローラ23が回転可能に取り付けられている。
図3に示すように、第2回動アーム19は第3補助プレート22の他方の側面に、支軸を中心として回動可能に支持されている。第2回動アーム19には、中間部分から直角に延在する連結部24(図4参照)が形成されている。連結部24が第1回動アーム18に連結されることにより、第1回動アーム18と第2回動アーム19とは一体的に回動可能となっている。連結部24と第2補助プレート7の中間部との間には、スプリング(図示せず)が配置されている。これにより、第1回動アーム18と第2回動アーム19が付勢され、第2回転ローラ10が第1回転ローラ9に最も接近した最接近位置(図7参照。ここでは、0.5mmの隙間を形成している。)に位置決めされる。
転動ローラ23の外周面には、第2モータ25の回転軸に一体化した偏心カム26の外周面が当接可能となっている。第2モータ25を駆動すると偏心カム26が回転し、その外周面による転動ローラ23との摺接位置を変位させる。これにより、図示しないスプリングの付勢力に抗して第2回転ローラ10が第1回転ローラ9から離間する開放位置へと移動する。
図5に示すように、第2回転ローラ10が開放位置に移動した状態で、その回転軸に一体化した従動磁石21には、第3モータ27の回転軸に一体化した駆動磁石28が対向している。従動磁石21と駆動磁石28の着磁状態は、前記第1回転ローラ側と同様である。
図7に示すように、第2回転ローラ10が第1回転ローラ9に最も接近した最接近位置に位置するとき、第2回転ローラ10の回転中心は第1回転ローラ9の回転中心に比べて上方側に位置する。また第1回転ローラ9と第2回転ローラ10とは同一方向に回転する。すなわち、図7中、矢印で示すように、定形剤29が載置される側で、第2回転ローラ10は、その外周面が第1回転ローラ側からその反対側へと移動するように回転し、第1回転ローラ9は、その外周面が第2回転ローラ10とは反対側から第2回転ローラ側へと移動するように回転する。換言すれば、第2回転ローラ10が第1回転ローラ9よりも左側に位置する場合は、第1回転ローラ9および第2回転ローラ10は左回りに回転する。図7に示すように、第2回転ローラ10が第1回転ローラ9よりも右側に位置する場合は、第1回転ローラ9および第2回転ローラ10は右回りに回転する。この状態で、供給された定形剤29は第1回転ローラ9と第2回転ローラ10とに接触する。なおここで、定形剤29とは、錠剤のほか、カプセル剤、座薬等も含まれ、一定の剤型を保持可能な薬剤を意味する。
第2回転ローラ10の回転中心O2は、前述の通り、第1回転ローラ9の回転中心O1の位置に比べて上方側となっており、第1回転ローラ9の回転中心O1と高さが同じ場合に比べて、定形剤29との接触位置T1が定形剤29の重心位置Cよりも水平方向に於いて回転中心O1側となりやすい。したがって、第2回転ローラ10が回転しても、定形剤29が第2回転ローラ10を乗り越えて移動することがない。尚、第2回転ローラ10の上方にガイド壁を設けてもよい。これにより定形剤29が第2回転ローラ10を乗り越えることを確実に防止できる。また、第1回転ローラ9と第2回転ローラ10の同方向への回転により、定形剤29はその場で回転し、定形剤29が錠剤であれば、錠剤の表面に刻印や印刷により形成された定形剤識別子(定形剤の種類を特定するためのもの)が周期的に表出し、定形剤29がカプセル剤であればカプセル剤の表面に印刷により形成された定形剤識別子が周期的に表出する。さらに第1回転ローラ9は、図6に示すように、軸心方向に対して両端側から中央部分に向かって徐々に外形寸法が大きくなる。このため、第1回転ローラ9の回転により、定形剤29が第1回転ローラ9と第2回転ローラ10の軸心方向において第1回転ローラ9と第2回転ローラ10との中央部分へと集まるように力が作用し、常に、定形剤29に形成した定形剤識別子を後述するカメラ4の撮像範囲へと位置させることができる。尚、カメラ4の撮像範囲は、第1回転ローラ9と第2回転ローラ10の上面における第1回転ローラ9と第2回転ローラ10の軸心方向中央部分である。
図2に示すように、第1回転ローラ9と第2回転ローラ10の上方には導光部材30と、その外周側に配置される反射部材31とが配置されている。導光部材30は、アクリル樹脂等の透光性を有する材料(無色透明が好ましい)を略円筒状に形成したものである。導光部材30の下端には一部が外径側に延在する延在部32が形成されている。延在部32は、両側に位置する各支持プレート8の上端面にネジ止め固定される。導光部材30は、第1回転ローラ9および第2回転ローラ10の上方に、供給された定形剤29の収容空間33を形成する。導光部材30を第1回転ローラ9および第2回転ローラ10の上方に配置することにより、たとえ定形剤29が第2回転ローラ10を乗り越えようとしても、導光部材30の内周面に当接し、それ以上移動して第1回転ローラ9又は第2回転ローラ10から落下することを防止できる。この結果、第1回転ローラ9および第2回転ローラ10の外径寸法を必要最小限の値に抑えることが可能となる。この場合、導光部材30がガイド壁として機能する。また導光部材30は、後述するLED42から出力されて反射部材31で反射した光を、第1回転ローラ9および第2回転ローラ10によって回転している定形剤29に対して斜め上方又は側方から照射可能とする。
反射部材31は、薄板を下方に向かうに従って徐々に開口面積が小さくなるような円錐内面を有する形状に形成したものである。少なくとも円錐内面は鏡面で構成され、その水平面からの傾斜角度が45°よりも大きくなるように形成されている(ここでは約60°)。そして、LED42から鉛直下方に向かう光を反射させて中心位置へと向かわせ、導光部材30を介して第1回転ローラ9および第2回転ローラ10に支持された定形剤29に対して斜め上方又は側方から照射可能とする。これにより、定形剤29が錠剤であってその表面に刻印により定形剤識別子が形成されている場合、その刻印を浮き立たせて、撮像により得られた撮像画像を刻印が鮮明に表示されるものとすることができる。なお、反射部材31は、上端外周面の一部に一体化された連結部材34によって第3補助プレート22の上面にネジ止め固定される。
図3および図5に示すように、第1回転ローラ9と第2回転ローラ10の両端部にはガイド部材35がそれぞれ配置されている。ガイド部材35は薄板状で、支持プレート8に支軸を中心として回動可能に支持されている。ガイド部材35には、外周縁から内側に向かって一定幅で切欠部35aが形成されている。各ガイド部材35の切欠部35aには第2回転ローラ10の回転軸の両端部がそれぞれ摺動可能に配置される。そして、第2モータ25の駆動により、偏心カム26、転動ローラ23、第1回動アーム18および第2回動アーム19を介して第2回転ローラ10が回動すると、その回転軸がガイド部材35の切欠部35aを摺動し、ガイド部材35を回動させる。これにより、第1回転ローラ9から第2回転ローラ10が離間するように移動し、両者の間に下方側だけでなく両端側にも隙間が発生しようとするが、ガイド部材35によって定形剤29が落下してほしくない両端側の隙間を閉鎖することができる。
(1−2.カメラ4)図1に示すように、カメラ4は、ベースプレート5から上方に向かって延びる断面矩形枠状をした支持体5aの上端部に固定されている。カメラ4は支持体5aから水平方向に突出し、図8に示すように、その先端部分で撮像素子40の受光平面を下方に向かわせている。
支持体5aの側面には上下に第1プレート36と第2プレート37が固定されている。第1プレート36には矩形状の開口部が形成され、そこには第3プレート38が固定されている。第3プレート38には円形状の開口部が形成され、そこには筒状体39が挿通している。筒状体39は、その上端に形成した鍔部39aを第3プレート38の上面側から固定され、撮像素子40による撮像範囲を制限する。また第3プレート38の4隅には第2プレート37に固定される脚部(図示せず)が形成されている。脚部により第1プレート36と第2プレート37の間に隙間が形成される。
第2プレート37には円形状の開口部が形成され、そこにはリング部材41が固定されている。リング部材41の内側には照明手段が配置されている。ここでは、照明手段には環状に配置した複数のLED42を使用している。LED42は第1照明群と第2照明群とからなる。第1照明群は、反射部材31に向けて光を出し、反射部材31で光を反射させて第1回転ローラ9と第2回転ローラ10に支持される定形剤29を斜め上方又は側方から照射する。尚、反射部材31で反射した光は、導光部材30の中を通過して第1回転ローラ9と第2回転ローラ10に支持される定形剤29当たる。第2照明群は、導光部材30の内側に位置し、第1回転ローラ9と第2回転ローラ10に支持される定形剤29を直接照射する。
(2.動作)次に、前記構成からなる薬剤鑑査支援装置1の動作について説明する。鑑査対象となる定形剤29が薬剤支持部3に供給されれば、第1モータ16を駆動し、駆動磁石17、従動磁石15を介して駆動ギア12を回転させる。これにより、駆動ギア12に噛合する従動ギア11が回転し、第1回転ローラ9が回転する。また中間ギア13を介在させることにより、第2回転ローラ10が第1回転ローラ9と同一方向に回転する。
まず、供給する定形剤29が錠剤(その表面に、刻印によって定形剤識別子が形成されているもの、以下、刻印錠剤と記載する。)の場合について説明する。前述のように、第1回転ローラ9は軸心方向の中央部分で最も膨らんだ外周面を有する。したがって、第1回転ローラ9の回転により刻印錠剤は中央部へと移動する。また第2回転ローラ10は、第1回転ローラ9の回転中心よりも回転中心が上方に配置されている。そして、第1回転ローラ9は軸心方向の中央部分で最も膨らんだ外周面を有する。このため、刻印錠剤は外周面を第1回転ローラ9と第2回転ローラ10に当接させた状態で傾斜する。そして、第1回転ローラ9と第2回転ローラ10の同方向への回転動作により、刻印錠剤はその場で回転し、その表裏面をカメラ4の撮像素子40の受光平面に対して交互に対向させる。また、第1照明群のLED42から光を出し、反射部材31で光を反射させ、導光部材30を介して刻印錠剤を斜め上方又は側方から照明する。
ここで、カメラ4による撮像を開始する。この撮像では連写により錠剤の一連の回転動作を記録し、その中から刻印錠剤の表裏面のいずれかに形成された刻印が撮像されているもののみを抽出する。抽出する画像は、画像上における、第1回転ローラ9または第2回転ローラ10の回転中心線と直交する方向の刻印錠剤29の寸法が最大となるものが考えられる。これにより、刻印錠剤の片面を平面視したものに最も近い状態の刻印が撮像された画像を抽出することができ、刻印を容易に特定することが可能となる。また、薬剤鑑査支援装置1は、各定形剤29と各定形剤29に形成された定形剤識別子を紐づけた情報を予め記憶している。そして、抽出した画像と、処方データで指定された刻印錠剤と紐づけて記憶されている定形剤識別子とに基づいて、撮影された刻印錠剤が処方データで指定された定形剤29であるか否かを判断する。この判断は、抽出した画像に現れる刻印と、定形剤識別子との一致率に基づいて行うことができる。また、撮影された刻印錠剤の刻印が、処方データで指定された刻印錠剤の定形剤識別子と合致しているか否かを、例えば、画面に並べて表示することによりユーザが判断できるようにする。この場合、薬剤名、写真等の薬剤データを表示することにより比較しやすくするのが好ましい。また、一致率の低い場合、その旨を表示色の変更等により報知するのがより好ましい。
次に、供給する定形剤29がカプセル剤や錠剤(その表面に印刷によって定形剤識別子が形成されているもの、以下、印刷錠剤と記載する)の場合について説明する。第1回転ローラ9、第2回転ローラ10および導光部材30によって形成される収容空間33にカプセル剤や印刷錠剤が供給されると、第1回転ローラ9および第2回転ローラ10の回転が開始される。カプセル剤は、中央部が第1回転ローラ9に接触し、両端部が第2回転ローラ10に接触する。そして、第1回転ローラ9の回転により、カプセル剤は中央部に位置決めされる。印刷錠剤については刻印錠剤と同様である。また、第1回転ローラ9および第2回転ローラ10の回転により、カプセル剤、印刷錠剤自身も回転し、その表面の印刷がカメラ4の撮像素子40の受光平面に対向する状態が得られる。
この場合、第2照明群のLED42から光が照射され、カプセル剤や印刷錠剤の表面が直接照明される。これにより、カメラ4によってカプセル剤の表面に形成された印刷を良好な状態で撮像することができる。撮像結果は、前記錠剤の場合と同様に、抽出した印刷が、処方データで指定されたカプセル剤や印刷錠剤の定形剤識別子と合致しているか否かを、例えば、画面に並べて表示することによりユーザが判断できるようにする。合致している否かは、ユーザに代えて薬剤鑑査支援装置1が判断しても良い。
このようにして定形剤29の撮像が済めば、第2モータ25を駆動して第1回転ローラ9から第2回転ローラ10を離間させて隙間を形成し、この隙間を介して定形剤29を下方側へと排出する。このとき、第3モータ27によって第2回転ローラ10を第1回転ローラ9とは逆方向に回転させる。つまり、第1回転ローラ9および第2回転ローラ10の双方を、形成された隙間からの排出方向へと回転させることで、定形剤29の排出動作をスムーズに行うことができる。また、第2回転ローラ10の回動動作に追従してガイド部材35も回動し、形成される隙間の両側部分が覆われる。したがって、落下する定形剤29が側方へとこぼれ落ちることがない。
なお、前記実施形態では、LED42を第1回転ローラ9と第2回転ローラ10の上方に配置するようにしたが、側方(斜め上方)にLED42を設け、反射部材31を不要としてもよい。
また、前記実施形態では、第1回転ローラ9と第2回転ローラ10を互いの軸心が平行となるように配置する例について説明したが、例えば、互いの軸心方向が一端側から他端側に向かうに従って徐々に広がるように配置することも可能である。この場合、第1回転ローラ9と第2回転ローラ10の外周面を円錐状とすることで、回転させる定形剤29を外径寸法が小さくなる一端側へと移動させることができる。したがって、この一端側にガイド面を形成し、その位置をカメラ4により撮像すればよい。
(3.適用例)図9は、本実施形態に係る薬剤鑑査支援装置1を採用した薬剤包装装置43を示す。この薬剤包装装置43は、大略、装置本体44内に、薬剤供給ユニット45、薬剤鑑査支援ユニット46、印刷ユニット47、包装ユニット(分包ユニット)48、および、制御ユニット49(図11参照)を備える。尚、薬剤鑑査支援ユニット46が備える薬剤鑑査支援装置1において、薬剤支持部3、カメラ4、および、第1回転ローラ9と第2回転ローラ10を離反させて薬剤支持部3から錠剤を包装ユニット48に供給する供給手段、検知手段であるセンサ103は薬剤包装装置43に内蔵されている。後述する第1カメラ64と第2カメラ66が撮像した定形剤の撮像画像から定形剤識別子を特定する特定手段は、薬剤包装装置43に内蔵されていても、されていなくても良い。特定手段が薬剤包装装置43に内蔵されていない場合は、特定手段は撮像手段とネットワークを介して撮像画像を通信可能に接続されたコンピュータなどに実装されてもよい。このようなコンピュータとして、モニタを備え、最終鑑査者が使用するものが挙げられる。最終鑑査者はモニタで特定手段が特定した定形剤識別子を確認できる。
(3−1.装置本体44)装置本体44は、上方部に観音開きの扉50が設けられ、内部に配置される薬剤供給ユニット45に薬剤カセット58を着脱できるようになっている。一方の扉50(図9中、右側)には、タッチパネル51、バーコードリーダ52、および、ジャーナルプリンタ53が設けられている。また、装置本体44には、扉50の下方に、後述する手撒き薬剤供給部56と、補充テーブル54とが設けられている。
(3−2.薬剤供給ユニット45)薬剤供給ユニット45は、自動薬剤供給部55と、手撒き薬剤供給部56とを備える。
自動薬剤供給部55は、略円筒状のシリンダに上下および周方向にモータベース57を設け、各モータベース57に薬剤カセット58を着脱可能としたものである。モータベース57の詳細については図示しないが、モータを内蔵し、ギアを介して薬剤カセット58のロータへと動力を伝達するように構成されている。また、自動薬剤供給部55には、上下方向に配置された薬剤カセット58の各列に対して薬剤通路(図示せず)がそれぞれ設けられている。これら薬剤通路により、薬剤カセット58から払い出された定形剤29がスムーズに下方側へと案内される。なお、薬剤通路には、カセット排出口に連通する部分に、払出定形剤の錠数を検出するための計数センサ(図示せず)が設けられている。
各薬剤カセット58は、略直方体の箱状で、ロット番号で管理される同一種類の定形剤29がそれぞれ収容されている。薬剤カセット58内には図示しないロータが設けられ、その外周部にはポケット部が複数形成されている。各ポケット部には、薬剤カセット58内に収容した定形剤29が1つずつ保持される。ロータは、モータベース57に設けたモータの駆動力がギアを介して伝達されて回転する。そして、ロータが回転すると、ポケット部に保持した定形剤29が、順次、薬剤通路へと払い出される。薬剤通路に払い出された定形剤29は、重力に従ってこの薬剤通路を下方へと移動し、第1ホッパー59(図12参照)を介して薬剤鑑査支援ユニット46の1つの薬剤支持部3へと供給される。
図11に示すように、各薬剤カセット58にはRFID60(RadioFrequencyIDentification)が設けられ、収容する定形剤29に関する情報(定形剤29の名称、収容数、定形剤識別子等の薬剤情報)が記憶されている。各モータベース57には、アンテナ61が設けられ、薬剤カセット58のRFID60との通信を行えるようになっている。そして、アンテナ61を介してRFID60から定形剤29の払出情報(払い出した定形剤29の数量、薬剤カセット58内に残存する定形剤29の在庫数量、薬剤カセット58を装着した棚の識別番号等)を読み込み、後述する制御ユニット49のバッファ94に格納する。
図9に示すように、手撒き薬剤供給部56は格子状に形成された各枡に、自動払出できない定形剤29(例えば、半錠等)を一包単位で手作業にて用意し(手撒き作業)、順次、各枡の底面を開放することにより薬剤鑑査支援ユニット46の第2ホッパー62に払い出す。なお、どの定形剤29をどの位置に手撒きするのかは、処方データに基づいてジャーナルプリンタ53からその指示内容が印刷されるようになっている。
(3−3.薬剤鑑査支援ユニット46)図10に示すように、薬剤鑑査支援ユニット46は枠体44aに引き出し可能に設けた棚部材46aに薬剤鑑査支援装置1を設けた構成である。薬剤鑑査支援装置1は、前記図3等と同様な構成の薬剤支持部3を6箇所に設けた薬剤撮像部2を備える。薬剤支持部3は、例えば、図13および図14に示すように、中心軸の周囲6箇所に等分で配置されている。なお、以下の説明では、薬剤支持部3の構成については、前記図3等に示すものとほぼ同様であるので、対応する部分に対応する符号を付してその説明を省略する。
6箇所の薬剤支持部3は円板状の回転プレート67に支持されている。回転プレート67の回転は、図示しないが、例えば、回転プレート67の外周縁に当接させたローラをモータ等の駆動により回転させて行うようにすればよい。ここでは、回転プレート67を間欠的に60°ずつ回転させるようにしている。各薬剤支持部3が順次回転して位置決めされるのは、第1薬剤供給位置、第2薬剤供給位置、第1薬剤撮像位置、第2薬剤撮像位置、薬剤排出位置および予備位置である。
(3−3−1.第1薬剤供給位置P1)図12に示すように、第1薬剤供給位置P1では、薬剤支持部3の上方側に第1ホッパー59が配置されている。第1ホッパー59には、自動薬剤供給部55の各薬剤カセット58から供給された定形剤29が回収され、第1薬剤供給位置P1に配置された薬剤支持部3に1つずつ供給されるようになっている。また薬剤支持部3の下方側には、棚部材46aに取り付けられる第1モータ16が配置されている。そして、第1モータ16の駆動により、第1回転ローラ9および第2回転ローラ10が回転し、供給された定形剤29を回転させることができるようになっている。特に、この位置での第1回転ローラ9および第2回転ローラ10の回転は、定形剤29の鑑査が不要で、薬剤支持部3に一度に複数個の定形剤29を供給する場合に、第1回転ローラ9および第2回転ローラ10の上で複数個の定形剤29が積み重なって、薬剤支持部3の上方に位置する薬剤包装装置43の部材と接触すること等を解消することができる点で有効である。
(3−3−2.第2薬剤供給位置P2)第2薬剤供給位置P2では、薬剤支持部3の上方側に第2ホッパー62が配置されている。第2ホッパー62は、下端の排出口に向かって徐々に開口断面積が徐々に小さくなるように形成されている。第2ホッパー62には、手撒き薬剤供給部56から供給された定形剤29が回収され、一旦、薬剤分離部68に供給された後、第2薬剤供給位置P2に配置された薬剤支持部3に1つずつ供給されるようになっている。但し、1包分が複数個の定形剤29からなる場合、定形剤29を1つずつ供給するのは、最初の1包分のみとし、以降は全て同じ定形剤29であり鑑査は不要であると判断して、1包分まとめて供給するようにしてもよい。
図17に示すように、薬剤分離部68は支持体69上に定形剤29の受け皿部材70を配置したものである。
受け皿部材70は、外周部71と、その内周側に配置される回転板72と、その内周側に配置される円筒部73と、その内周側に配置される回転体74とで構成されている。回転板72および円筒部73は、それぞれ支持体69に設けた図示しない駆動機構により独立して正逆回転駆動可能となっている。回転板72および回転体74は、間欠的に回転できるようになっている。
外周部71は、内周面の一部が内径側に迫り出して、回転体74の外周面の一部に沿う扇状部75となっている。また、少なくとも外周部71の内周面の他の部分には、ウレタン等の弾性材料が貼着され、さらにその内面側には摩擦係数の小さい材料からなるフィルム等が貼着されている。これにより、供給される定形剤29が衝突しても損傷することが防止され、回転板72の回転によって定形剤29摩擦抵抗を受けることもない。さらに、外周部71の一部には開口部(図示せず)が形成され、この開口部はシャッター(図示せず)により開閉可能となっている。開口部の近傍には、後述するように回転板72によって搬送される定形剤29を開口部に導くための案内部76が形成されている。シャッターを開放することにより、案内部76を介して導かれた定形剤29(錠剤、カプセル剤等、定型で、外表面に識別子(刻印や印刷)を有するもの)を開口部を介して薬剤支持部3へと排出可能となっている。なお、開口部を介して排出される定形剤29は、図示しないセンサによって検出されて、その排出数をカウントできるようになっている。
回転板72はドーナツ状で、その上面が外径に向かうに従って徐々に下方側へと傾斜する円錐状に形成されている。回転板72は、外周部71とで定形剤29を周方向へと搬送する搬送空間を構成している。また回転板72の上面には、径方向に延びる複数の突条77が周方向に等間隔で形成されている。各突条77は、外径側に向かうに従って徐々に幅寸法が大きくなり、各突条77間に形成される溝部が同一幅寸法となっている。
回転板72の回転により搬送される定形剤29は、第1センサ78、第2センサ79および第3センサ80によって検出され、その検出結果に基づいて回転板72の回転が制御される。第1センサ78はエリアセンサからなり、回転板72上の所定領域に定形剤29が位置しているか否かを検出する。第2センサ79および第3センサ80は、回転板72の回転によってその上に載置された定形剤29が通過したか否かを検出する。第3センサ80は開口部の直前の定形剤29を検出できるように配置されている。第2センサ79は、第3センサ80での検出位置よりも上流側で定形剤29を検出する。
円筒部73は、上端部が回転板72の上面に沿って円錐面の一部を構成するように傾斜している。円筒部73は、回転板72および回転体74の軸受として機能し、これらの回転状態を安定させる。また、円筒部73は、回転体74の昇降動作をガイドする。
回転体74は、その上面の略半部が上方に突出する第1段部81で構成され、残り略半部は第1段部81よりも低く、円錐台形状の一部で構成される第2段部82で構成されている。第1段部81と第2段部82の境界部分は、第1段部81の上面から第2段部82の上面に向かうに従って徐々に突出する傾斜面83となっている。回転体74は昇降可能である。上昇位置の回転体74は、その外周部分が回転板72および円筒部73と共に円錐面を構成する。また降下位置の回転体74は、その第2段部82の上面が円筒部73の内周面とで定形剤29を一時的に貯留する貯留空間を形成する。貯留空間には、手撒き薬剤供給部56からの定形剤29が第2ホッパー62を介して供給される。この状態で、回転体74を正逆回転させることにより、貯留空間に供給された定形剤29が周方向に分散する。そこで、回転体74を上昇位置に移動させると、周方向に分散した定形剤29がさらに外径方向に移動して周方向の距離を広げながら、回転板72上へと移動する。第1段部81の外周からはストッパ84が突出している。回転体74は、前述の通り、図示しない駆動機構によって正逆回転する。ストッパ84は、回転体74が回転した際、外周部71の扇状部75と案内部76とにそれぞれ当接し、回転範囲を制限する。但し、このストッパ84に代えてセンサを設け、このセンサでの検出信号に基づいて回転体74の回転を制御するようにしても構わない。
前記構成の薬剤分離部68では、手撒き薬剤供給部56から1服用分(1マス)の定形剤29が払い出されると、第2ホッパー62を介して薬剤分離部68へと導かれる。薬剤分離部68では、回転体74が降下位置に移動することにより、第2段部82の上面と円筒部73の内周面とで形成される貯留空間で、定形剤29が一時的に貯留される。ここで、回転体74を正逆回転させ、貯留された定形剤29を第2段部82から回転板72上へと移動させる。定形剤29は周長が長くなる外径側へと移動されるため、回転板72上では、定形剤29が周方向に十分な距離を確保されやすくなる。この状態で、回転板72aを回転させると、定形剤29は周方向に搬送される。その後、シャッターを開放すると、定形剤29は順次1つずつ開口部を介して薬剤支持部3へと移送される。なお、薬剤分離部68での定形剤29の搬送方法については、後に詳述する。
第2薬剤供給位置P2の薬剤支持部3では、前記第1薬剤供給位置P1の場合と同様に、下方側に第1モータ16が配置され、第1回転ローラ9および第2回転ローラ10が回転するようになっている。したがって、第2薬剤供給位置P2でも、薬剤支持部3で定形剤29を回転させることができる。
(3−3−3.第1薬剤撮像位置P3)図14に示すように、第1薬剤撮像位置の薬剤支持部3の上方側には撮像用の第1薬剤照明部63および第1カメラ64が配置されている。
(3−3−4.第2薬剤撮像位置P4)第2薬剤撮像位置の薬剤支持部3の上方側には第2薬剤照明部65および第2カメラ66が配置されている。
第1薬剤照明部63および第2薬剤照明部65は、前述の照明手段と同様な構成で、上方部分に配置される複数のLED42を備える。第1薬剤照明部63の各LED42から出力された光は、薬剤支持部3で支持される定形剤29に直接照射される。これにより、定形剤29が印刷錠剤やカプセル剤である場合、その表面に形成された印刷を第1カメラ64によって鮮明に撮像可能な状態とすることができる。一方、第2薬剤照明部65の各LED42から出力された光は反射部材31で反射した後、導光部材31を通過して、薬剤支持部3が支持する定形剤29を斜め上方又は側方から照射する。これにより、定形剤29が刻印錠剤である場合、その表面に形成された刻印を第2カメラ66によって鮮明に撮像可能な状態とすることができる。
図15に示すように、第1薬剤撮像位置P3、第2薬剤撮像位置P4にはそれぞれ第1モータ16が設けられ、薬剤支持部3の第1回転ローラ9に回転力を付与し、第2回転ローラ10を同期して同一方向に回転させる。これにより、薬剤支持部3に支持された定形剤29が回転し、刻印や印刷等の定形剤識別子を確実に上方から視認可能な状態とすることができる。
第1カメラ64および第2カメラ66は、薬剤支持部3で回転する定形剤29を上方より撮像する。第1薬剤照明部63では、上方から照射されたLED42からの光が、定形剤29に対して上方から直接照射されている。第2薬剤照明部65では、LED42からの光が反射部材31および導光部材30に導かれ、定形剤29に対して側方から照明されている。したがって、表面に印刷を施されたカプセル剤や印刷錠剤であれば第1カメラ64によって、表面に刻印を施された刻印錠剤であれば第2カメラ66によって鮮明に撮像することが可能となる。
このように、回動する6箇所の薬剤支持部3に対して2箇所に設けた第1薬剤照明部63および第2薬剤照明部65によって定形剤29の種類に応じて適切に光を照射して撮像することができる。このため、LED42やカメラ4を多数設ける必要がなく、安価に製作することができる。また導光部材30および反射部材31によってLED42からの光を確実に導くことができるので、定形剤29の照明状態を撮像に適した良好なものとすることができる。さらに撮像時間を短縮して効率的な鑑査支援を行うことができる。撮影方法が互いに異なるカメラを2箇所に設けることで、撮影方法が異なる撮影を同時に実行できる。
(3−3−5.薬剤排出位置P5)薬剤排出位置では、薬剤支持部3の下方側に、薬剤排出部(図示せず)、第1モータ16および第2モータ25が配置され、側方に第3モータ27が配置されている。第2モータ25の駆動により、第2回転ローラ10が第1回転ローラ9から離間するように回動し、両者の間に隙間を形成する。これによって、定形剤29が薬剤支持部3から落下し、第3ホッパー100側(包装ユニット48側)に供給される。本実施形態では、第2モータ25が供給手段を構成する。好ましくは、このとき、第1モータ16の駆動により第1回転ローラ9を回転させ、第3モータ27の駆動により第2回転ローラ10を第1回転ローラ9とは逆方向に回転させる。具体的には、第1回転ローラ9が第2回転ローラ10の右側にある場合は、第1回転ローラは右回転、第2回転ローラ10は左回転する。第1回転ローラ9が第2回転ローラ10の左側にある場合は、第1回転ローラは左回転、第2回転ローラ10は右回転する。これにより、定形剤29は形成された隙間から排出される方向へと力を付与される。また薬剤排出位置では、薬剤支持部3の下方側に第3ホッパー100(図13参照)が配置されている。第3ホッパー100の入口部分には、両側にスリット(図示せず)がそれぞれ形成されている。図15に示すように、これらスリットを介してその両側に配置した発光素子101と受光素子102からなるセンサ103によって通過する定形剤29を検知できる。検知回数に基づいて第3ホッパー100側に供給された定形剤29が計数できる。また、センサ103の検知に基づいて、撮影された定形剤29が薬剤支持部3の下方に位置する第3ホッパー100に入ったか否かを検知してもよい。また、その結果をユーザに提示してもよい。
(3−3−6.予備位置P6)予備位置は、例えば、薬剤カセット58を増設した場合に利用することができる。したがって、増設する薬剤カセット58がさらに多くなる場合には、薬剤支持部3の停止位置を6箇所よりも多く設定することも可能である。また、鑑査の結果、不適切と判断された定形剤29を排出する場所とする場合等にも利用することができる。この場合、第3モータ27等を設けて第2回転ローラ10を回動可能とする必要がある。
(3−4.印刷ユニット47)印刷ユニット47は、図9に示すように、2つ折りにされた包装紙85が巻回されたロール86と、入力された処方データに基づいて、ロール86から巻き戻された包装紙85の表面に、定形剤29の名称、服用方法等を印刷するプリンタ87と、を備える。ロール86に巻回された包装紙85の残量は、残量検出センサ88によって検出され、制御ユニット49に残量信号が送信されるようになっている。また、ロール86から巻き戻される包装紙85の搬送路の途中には、紙切れセンサ89が設けられ、包装紙85が欠品となったことが検出され、制御ユニット49に欠品信号が送信されるようになっている。
(3−5.包装ユニット48)包装ユニット48は、斜め上方から斜め下方に向かって搬送される包装紙85の両側に配置されるヒータローラ90を備える。ヒータローラ90は回転して包装紙85を搬送しながら1包分ずつ包装(分包)する。包装紙85の搬送方向に対してヒータローラ90の上流側で、搬送途中の2つ折りの包装紙85の間に、第3ホッパー100の下端開口部が配置されている。また、包装紙85の搬送方向に対してヒータローラ90の下流側にはカッター91が設けられ、包装紙85を所望の包数で切断できるようになっている。さらに、包装紙85の搬送方向に対してカッター91の下流側にはコンベア92が設けられ、切断された包装紙85を取出位置に搬送できるようになっている。
(3−6.制御ユニット49)制御ユニット49は、図11に示すように、複数の処方データが記憶されているサーバ93との間で信号の送受信を行い、サーバ93からのコマンドをバッファ94に蓄積し、コマンドに従って自動薬剤供給部55(薬剤カセット58)や手撒き薬剤供給部56を駆動制御し、該当する定形剤29を払い出させる。また同時に、包装ユニット48を駆動制御し、払い出す定形剤29に関する服用情報等を包装紙85に印刷させ、包装ユニット48を駆動して1服用分ずつ定形剤29を包装させる。さらに、後述するようにして薬剤鑑査支援ユニット46での鑑査結果をタッチパネル51に表示させる。なお、サーバ93の記憶部には、処方データのほか、薬剤情報(定形剤識別子、薬剤名、薬剤コード、用法、効能、薬剤画像、定形剤29の表面に設けた定形剤識別子等)からなるデータテーブルが記憶されている。これらは、制御ユニット49の記憶部に記憶されてもよい。
(4.薬剤包装装置43の動作)次に、前記構成からなる薬剤包装装置43の動作について説明する。ここでは、主に、本発明の特徴部分である、定形剤29を包装前に行う薬剤鑑査処理についてのみ言及する。
処方データに基づいて薬剤供給ユニット45から供給された定形剤29は、図示しない通路を介して薬剤鑑査支援ユニット46に至る。自動薬剤供給部55の各薬剤カセット58から供給された定形剤29は1つずつ、薬剤通路から第1ホッパー59を通過して、直接、第1薬剤供給位置P1に位置する薬剤支持部3に供給される。薬剤支持部3に定形剤が1つ供給されるたびに、前記回転プレート67を60°回転させる。
また、処方データに基づいて手撒き薬剤供給部56から第2ホッパー62を介して供給された複数の定形剤29は、一旦、薬剤分離部68で分離され、第2薬剤供給位置P2に位置する薬剤支持部3に1つずつ供給される。薬剤支持部3に定形剤が1つ供給されるたびに、前記回転プレート67を60°回転させる。尚、薬剤支持部3には定形剤29が1つだけ供給されるように、第1薬剤供給位置P2において定形剤29が供給された薬剤支持部3には、第2薬剤供給位置P1において定形剤を供給しない。
ここで、薬剤分離部68での動作ついて、図18のフローチャートに従って説明する。まず、回転体74を降下位置へと移動させ、円筒部73とで貯留空間を形成する(ステップS1)。そして、手撒き薬剤供給部56から定形剤29が供給されれば(ステップS2)、回転体74を正逆回転させる(ステップS3)。これにより、貯留空間内に一時的に貯留された定形剤29が周方向に分散される。続いて、回転体74を上昇位置へと移動させ(ステップS4)、貯留空間の定形剤29を回転板72上へと移動させる。定形剤29は周方向に長くなる外径方向へと移動するため、回転板72上ではさらに周方向に分散される。回転板72上には複数の溝部が形成されているので、分散された定形剤29はいずれかの溝部を外径側へと移動する。
次に、回転板72を回転させ(ステップS5)、定形剤29を周方向に移動させる。第1センサ78から第3センサ80のいずれでも定形剤29が検出されていない限り、回転板72の回転速度は最も早い設定速度(第1速度)とする。このとき、第1センサ78によって検出領域に定形剤29が位置するか否かを検出する(ステップS6)。検出領域に定形剤29が位置すれば、定形剤29が排出位置に接近してきていると判断し、回転板72の回転速度を第1速度よりも遅い第2速度に変更する(ステップS7)。また、第2センサ79によって検出領域よりも下流側の第1検出位置を定形剤29が通過したか否かを検出する(ステップS8)。定形剤29が第1検出位置を通過すれば、回転板72の回転速度を第2速度よりもさらに遅い第3速度に変更する(ステップS9)。さらに、第3センサ80によって第1検出位置よりも下流側の第2検出位置を定形剤29が通過したか否かを検出する(ステップS10)。定形剤29が第2検出位置を通過すれば、回転板72の速度を第3速度よりもさらに遅い第4速度に変更する(ステップS11)。
このように、回転板72による定形剤29の搬送速度を段階的に遅くするようにしたので、一度に複数の定形剤29が排出されることを確実に防止することができる。そして、第3センサ80で定形剤29が検出されれば(ステップS12)、シャッター82を開放する(ステップS13)。これにより、定形剤29は切欠部35aを介して薬剤撮像部2へと移送される。切欠部81を通過したことは、図示しない第4センサによって検出する(ステップS14)。第4センサによって定形剤29が通過したことが検出されれば(ステップS15)、一旦、回転板72の回転を停止する(ステップS16)。これにより、定形剤29を1つずつ確実に排出することができる。
薬剤撮像部2では、薬剤支持部3に定形剤29が1つ供給される毎に所定ピッチずつ回転させる(ここでは、60°回転させる。)。薬剤支持部3が第1薬剤撮像位置P3(第1薬剤照明部63の照射位置)に至れば、薬剤支持部3側と第1モータ16側の駆動磁石17が接近し、第1モータ16の駆動力を第1回転ローラ9に非接触状態で伝達可能となる。そこで、第1回転ローラ9を回転させることにより、供給した定形剤29を回転させる。第1薬剤照明部63では、LED42からの光を、直接、定形剤29に照射できるようになっている。したがって、カプセル剤等の表面に印刷により形成された定形剤識別子であれば、第1カメラ64により撮像可能となる。
また薬剤支持部3が第2薬剤撮像位置P4(第2薬剤照明部65の照射位置)に至れば、第1薬剤照明部63と同様に、薬剤支持部3側と第1モータ16側の駆動磁石17が接近し、第1モータ16の駆動力を第1回転ローラ9に非接触状態で伝達可能となる。そこで、第1回転ローラ9を回転させることにより、供給した定形剤29を回転させる。第2薬剤照明部65では、LED42からの光が反射部材31で反射し、導光部材30を透過した後、斜め上方又は側方から定形剤29を照射するようになっている。定形剤29が刻印錠剤であれば、斜め上方又は側方から光を照射することで、形成された刻印を浮かび上がらせて第2カメラ66により鮮明に撮像可能となる。
なお、ここでは、第1薬剤照明部63と第2薬剤照明部65を設けるようにしたが、図8に示す照明手段と同様に、単一の薬剤照明部で構成するようにしてもよい。すなわち、LED42を第1照明群と第2照明群で構成し、第1照明群で定形剤29を側方から照射するか、あるいは、第2照明群で定形剤29を直接照射するかを切り替えるようにする。これにより、カプセル剤や印刷錠剤の印刷と刻印錠剤の刻印のいずれであっても、単一薬剤照明部で、単一のカメラ4によって撮像することが可能となる。第1薬剤撮像位置P3と第2薬剤撮像位置P4のそれぞれにおいて、第1カメラ64および第2カメラ66は、複数の異なる方向から定形剤29を撮像される。具体的には、第1薬剤撮像位置P3と第2薬剤撮像位置P4のそれぞれにおいて、第1カメラ64および第2カメラ66は、第1回転ローラ9と第2回転ローラ10とによって定形剤29を回転させながら複数回撮像する。或いは、第1カメラ64および第2カメラ66は、第1薬剤撮像位置P3と第2薬剤撮像位置P4のそれぞれにおいて、第1回転ローラ9と第2回転ローラ10とを回転させる前と、第1回転ローラ9と第2回転ローラ10とを回転させた後とに定形剤29を撮像する。
このようにして、第1カメラ64および第2カメラ66によって定形剤29が撮像されれば、この定形剤29に定形剤識別子が形成されているか否かに基づいて次のようにして薬剤鑑査支援処理を実行する。すなわち、鑑査対象となる定形剤29が定形剤識別子のあるものとして登録されている場合、定形剤識別子が撮像されている画像のうち、(第1回転ローラ9または第2回転ローラ10の)軸心方向と直交する水平方向での定形剤29の寸法(図6中、定形剤29の左右方向の寸法:縦寸法)が、前記軸心方向と平行な方向の定形剤29の寸法(図6中、上下方向の寸法:横寸法)よりも大きいか否かを判断する。そして、縦寸法が横寸法以下の条件を満足する画像のうち、最も縦寸法が長いものを鑑査用の画像として特定する。続いて、薬剤鑑査支援ユニット46が備える特定手段が、特定した画像から定形剤識別子を読み取り、読み取った定形剤識別子と、処方データにて指定されている定形剤29の定形剤識別子との一致率を算出し、その一致率に基づいて薬剤鑑査処理を実行する。なお、サーバ93の記憶手段には、各種定形剤の薬剤情報と定形剤に形成された定形剤識別子とが対応付けて記憶され、処方データにて指定された定形剤識別子が読み出し可能となっている。
鑑査対象となる定形剤29が定形剤識別子のないものとして登録されている場合、撮像された画像のうち、縦寸法が横寸法以下であって最も長いものを鑑査用の画像として特定する。定形剤識別子のない定形剤29については、外観形状、色彩が薬剤情報として登録されている。そこで、特定した画像に基づいて、サーバ等の記憶部に記憶させたデータテーブルから該当する薬剤情報を読み込み、定形剤識別子の一致率を用いずに、外観形状、色彩の少なくとも1つに基づいて、薬剤鑑査処理を実行する。但し、外観形状、色彩によって薬剤鑑査処理を実行する場合、鑑査結果にエラーがなくても「OK」ではなく、画面にマスタ画像と撮像画像とを表示させて、ユーザに確認を促すようにするのが好ましい。
複数回の撮像によって得た撮像画像の何れにおいても、撮像された定形剤29の縦寸法が横寸法以上である場合、エラー処理(エラーの報知など)をする。縦寸法が横寸法以上になる場合としては、例えば、図24A、図24Bに示すように、円板状の錠剤が、図24C、図24Dに示すように外周面を第1回転ローラ9と第2回転ローラ10に回転可能に支持される場合がある。円板状の錠剤においては、定形剤識別子(XXX)が錠剤の表面又は裏面に形成されていることが多く、図24C、図24Dに示すように、定形剤識別子がカメラ4を向いていない可能性が高く、カメラ4の撮像画像に定形剤識別子が写らない場合がある。また、縦寸法が横寸法以上になる場合としては、薬剤鑑査支援ユニット46が、第1回転ローラ9と第2回転ローラ10に付着した定形剤29の粉末を定形剤29として認識する場合がある。定形剤29の粉末は、第1回転ローラ9と第2回転ローラ10の周面に付着し、平面視において、図24Eに示すように、定形剤29の粉末が付着した部分はこれらの回転ローラ9、10の回転軸と直交する方向に長い(すなわち、縦寸法が横寸法以上である)。縦寸法が横寸法以上である場合、薬剤支持部3に振動を与えてもよい。例えば、回転プレート67を小刻みに正逆回転させる。これにより、薬剤支持部3に定形剤29が図24C、図24Dのように支持されていれば、定形剤29が横倒しされ、カメラ4の撮像画像に定形剤識別子が写る。
また、薬剤支持部3に振動を与えても、撮像された定形剤29の縦寸法が横寸法以上のままであれば、第1回転ローラ9または第2回転ローラ10、あるいはその双方に定形剤29の粉末が付着している可能性が高いと判断してもよい。この場合、エラーを報知し、ユーザに清掃作業を促すようにすればよい。
続いて、薬剤支持部3が薬剤排出位置P5に移動すると、第3ローラ27によって第1回転ローラ9と第2回転ローラ10を離間し、定形剤29を第3ホッパー100に落下させる。以上のようにして、1包分の定形剤29を1つずつ第3ホッパー100に落下させる。第3ホッパー100の下端部にはシャッターが設けられ、第3ホッパー100に1包分の定形剤29が溜められる。センサ103により、薬剤支持部3から落下した定形剤29が検知され、検知回数に基づいて落下した定形剤29の数が計数される。処方データで指定された定形剤の数と同一回数だけ、第3ローラ27によって第1回転ローラ9と第2回転ローラ10を離間させると、薬剤鑑査支援装置1は、第3ホッパー100のシャッターを開き、定形剤29を包装ユニット48へと排出し、1服用分ずつ包装する。そして、処方データで1包分として包装する定形剤29の数量と、センサ103の検知回数に基づいて計数される数量とが合致しているか否かを判断する計数鑑査を実行する。包装直前に、撮影された定形剤29の数量を検出することで、所定数量の定形剤29が確実に包装されていることを保証することができる。換言すれば、包装ユニット48直上であり、薬剤支持部3の下方の第3ホッパー100入口部分において、薬剤支持部3から落下した定形剤をセンサ103で検知することで、定形剤識別子が特定された定形剤が包装ユニット48において分包されたことを保証できる。尚、センサ103の検知回数に基づいて定形剤29の数を計数する機能は薬剤鑑査支援装置が備える計数手段によって実行される。なお、この計数鑑査は、薬剤排出位置P5に設けたセンサ103のみによって行うようにしたが、薬剤カセット58から定形剤29の排出を検出する排出センサ(図示せず)での計数結果とも併せて、両方での計数結果が合致しているか否かを判断する、いわゆるダブルチェックを行うようにすれば、より一層鑑査支援の信頼性を高めることができる。尚、薬剤包装装置43が薬包を連続して生成する場合において、最初に生成する薬包に包装される定形剤については、上記の通り、1つずつ薬剤支持部3に払い出され、第1カメラ64、第2カメラ66で撮像され、特定手段で定形剤識別子が特定され、センサ103で通過が検知されるが、他の薬包(2包目以降の薬包)に包装される定形剤29については、以下に示す例のように処理が行われても良い。1つ例としては、定形剤29は、1包単位で又は1つずつ薬剤支持部3に払い出され、第1カメラ64、第2カメラ66で撮像され、センサ103で通過が検知される。この例では、定形剤29は、特定手段で定形剤識別子が特定されない。他の例としては、定形剤29は、1包単位で又は1つずつ薬剤支持部3に払い出され、センサ103で通過が検知される。この例では、定形剤29は、第1カメラ64、第2カメラ66で撮像されず、特定手段で定形剤識別子が特定されない。他の例としては、定形剤29は、1包単位で又は1つずつ薬剤支持部3に払い出され、第1カメラ64、第2カメラ66で撮像される。この例では、定形剤29は、センサ103で通過が検知されず、特定手段で定形剤識別子が特定されない。また、第3ホッパー100から包装紙85へ移動(落下)している定形剤29を図示しないセンサで検知することができるように、例えば、第3ホッパー100よりも下側にセンサを設けてもよい。第3ホッパー100よりも下側に設けることで、撮影された定形剤が第3ホッパー100を通過したことを検知することができる。また、その結果をユーザに提示してもよい。また、第3ホッパー100にシャッタを設けず、1錠ずつ包装紙85に定形剤29を移動させてもよい。この場合、第3ホッパー100よりも下側にセンサを設けると、センサが定形剤29を検知した回数に基づいて包装紙85に移動した定形剤29の数を決定してもよい。
図19A、図20、図22A、図23Bに、鑑査の結果を画面表示した場合の例を示す。図19Aに示す画像は、包装する各定形剤29の表裏面の画像(マスタ画面)と、服用時期単位でまとめた服用日(1日目、2日目、…)とからなる一覧表で構成されている。ここでは、「1日目の朝」の薬包、「2日目の朝」の薬包、「3日目の朝」の薬包・・・「7日目の朝」の薬包、「2日目の昼」の薬包・・・の順で薬包が生成されているものとする。また、処方で指定されている服用パターンは、朝については、A薬剤1錠、B薬剤1錠、C薬剤2錠であり、昼については、B薬剤1錠、C薬剤2錠である。A薬剤1錠の有無について朝と昼とで服用パターンが異なっている。1包目の薬包である1日目の朝の薬包については、包装される各定形剤29の定形剤識別子を有する片面の画像(撮像画面)を抽出して表示する。この画像は第1カメラ64、第2カメラ66のそれぞれで撮像され、定形剤識別部の特定に用いられた画像である。2包目以降の薬包のうち、処方における服用パターンが1つ前の薬包と異なるものに包装される定形剤については、1包目の薬包と同じ処理が実行されている。具体的には、1つずつ薬剤支持部3に払い出され、第1カメラ64、第2カメラ66で撮像され、特定手段で定形剤識別子が特定され、センサ103で通過が検知されている。そして、2包目以降の薬包のうち、処方における服用パターンが1つ前の薬包と異なるものについては、1包目の薬包と画面上において同種の情報(各定形剤29の定形剤識別子を有する片面の画像)が表示されている。2包目以降の薬包のうち、処方における服用パターンが1つ前の薬包と同じものに包装される定形剤については、1包単位で薬剤支持部3に払い出され、第1カメラ64、第2カメラ66で撮像され、センサ103で通過が検知され、特定手段で定形剤識別子が特定されない。2包目以降の薬包のうち、処方における服用パターンが1つ前の薬包と同じものについては、第1カメラ64又は第2カメラ66で薬剤支持部3に支持された1包単位の薬包全部を撮像した画像が表示されている。図19Aの服用日をタッチ(またはクリック)することにより、図19Bに示すように、1包単位での確認画面を表示させる。確認画面では、各定形剤29について、マスタ画面、撮像画面および薬剤鑑査処理の結果(OKまたはNG)を表示させる。ここに、鑑査結果「OK」は、特定手段にて特定された定形剤識別子と処方データにて指定されている定形剤29の定形剤識別子との一致率が所定の閾値以上である場合を言う。尚、この閾値は、鑑査処理の対象の定形剤29が薬剤カセット58から払い出されたものである場合と、手撒き薬剤供給部56から払い出されたものである場合とで異ならせてもよい。例えば、鑑査処理の対象の定形剤29が薬剤カセット58から払い出されたものである場合の閾値を第1の閾値とすると、鑑査処理の対象の定形剤29が手撒き薬剤供給部56である場合の閾値は第1の閾値よりも高い第2の閾値としてもよい。これは、手撒き薬剤供給部56への定形剤の手撒き作業において、処方で指定されていない定形剤が薬剤包装装置43のユーザの勘違いなどによって撒かれることがあり、このような手撒き作業に置ける撒き間違いを確実に検知するためである。また、図19Bの確認画面では、確認対象の薬包の印字レイアウトを表示するようにしてもよい。これによれば、確認対象の薬包がどれであるのかが分かりやすくなる。
また、2包目以降の薬包のうち、処方における服用パターンが1つ前の薬包と同じものに包装される定形剤について、1つずつ薬剤支持部3に払い出され、センサ103で通過が検知され、第1カメラ64、第2カメラ66で撮像されず、特定手段で定形剤識別子が特定されない場合の画面表示例が図20である。図20に示すように、2包目以降の薬包のうち、処方における服用パターンが1つ前の薬包と同じ薬包については、包装される定形剤の数として、センサ103が検知する定形剤29の通過の検知回数に基づいて計数された数が表示される。尚、その他の薬包についても、包装される定形剤の数としてセンサ103が検知する定形剤29の通過の検知回数に基づいて計数された数を表示しても良い。また、数が処方で指定された数と一致していれば「OK」を表示し、一致していなければ「NG」を表示しても良い。
なお、表示する内容は自由に設定を変更できるようにするのが好ましい。前記例では、画面上における薬包の並び順序が、薬包の生成順序と一致しているが、画面上における薬包の並び順序はユーザが設定画面(ソート等により)で自由に設定できるようにすればよい。
また、2包目以降薬包のうち特定の薬包に包装される定形剤については特定手段による定形剤識別子の特定を行わないようにしたが、次のような定形剤29を包装する薬包であれば、強制的に特定手段による定形剤識別子の特定を行ってもよい。このような定形剤の例としては、前述の薬剤鑑査処理で鑑査「NG」が頻発する薬剤、劇薬、向精神薬等の取扱いに注意を要する薬剤、高価な薬剤、外観形状が似ており誤って服用すると危険な薬剤等である。このような薬剤は、他の薬剤と識別可能にサーバ93等に記憶し、このような薬剤が包装対象となっている場合は、自動的に特定手段による定形剤識別子の特定を行うようにしてもよい。
以上のようにして定形剤29は、順次、第3ホッパー100内に排出されて貯留されている。そして、1包分(1服用単位)の定形剤29が貯留され、包装ユニット48に排出され、包装紙に包装され薬包が形成される。尚、鑑査の結果、問題がなければ(鑑査NGでなければ)、印刷ユニット47で該当する服薬情報(定形剤29の名称、服用方法等)が印刷された包装紙85の該当する1包に第3ホッパー100内の定形剤29を包装する。この包装は自動的に行ってもよいし、一旦、確認のボタンを表示させて、そのボタンが操作されることにより行うようにしてもよい。これにより、ホッパー100に貯留した状態で、対応する印刷を行った1包に確実に供給して包装することができる。一方、鑑査の結果、問題が発生すれば、例えば、該当する1包にエラーが発生した旨を印刷してもよいし、既に印刷が完了しているのであれば、その印刷はこれに続く包装紙85に行うようにしてもよい。
印刷が施され定形剤29が包装された薬包などの一例を図21に示す。尚、ここでは、薬包とは定形剤が包装されているものをいう。1包目の薬包の前に、いずれの装置でいつ包装されたものか、患者ID、患者名、定形剤名、服用時期等の処方する定形剤に関する情報が印刷されている。1包目の薬包以降は、服用順に、何包目であるか(ここでは、1/9包目のみ図示)、患者名、服用時期、定形剤名等が印刷される。最終の薬包の次の包にはバーコードが印刷され、このバーコードをバーコードリーダ52で読み取ることにより、図19A、図20、図22A、図23Bに示す当該バーコードが印刷された包装紙に包装された定形剤についての薬剤鑑査処理の結果を画面表示できるようになっている。なお、薬剤鑑査処理の結果、比較した薬剤情報が合致していなければエラーであり、包装紙85にはエラーのあった箇所に他と識別可能な印刷が施される。
包装紙85のバーコードをバーコードリーダ52で読み取ると、その包装紙85に包装されている定形剤29に関する薬剤鑑査処理の結果がタッチパネル51に表示される。
図22Aに、表示される出力画像の例を示す。この出力画像には、薬品名、薬剤鑑査処理の結果、本来包装されるべき定形剤(正規定形剤)の正画像(表裏面)、1包目から順に包装前に撮像された画像、等が含まれる。図22Aの例では、1、2、4および6包目に正規定形剤以外の定形剤が包装され、エラー表示されたことを示している。これらエラー表示された各包の画像には周囲に識別可能な色彩(例えば、赤色)の縁取りが施される。また、右上欄には鑑査結果として「NG」の文字が表示される。これにより、ユーザ(薬剤師)は何包目にエラーが発生しているのかを一目で簡単に把握することができる。
また、出力画像では、表示された各包を指でタッチ(またはマウスをクリック)することにより、図22Bに示す拡大画面をポップアップ表示させることができるようになっている。拡大画面には第1画面と第2画面とが表示される。第1画面には正規定形剤の表裏面の画像と、正規定形剤の直径および厚さを示す数値とが表示される。第2画面には選択した包装部分での定形剤の(定形剤識別子側の)撮像画面が表示される。
このように、画面に鑑査結果を表示し、エラーであれば識別可能な状態とすることにより、ユーザにとってエラー箇所が何包目であるのかの特定を容易なものとすることができる。また画面上で、エラーのあったのが何包目であるのかを特定することができるだけでなく、包装紙85の該当包にも識別可能な印刷を施すことで、より一層エラー箇所の特定が容易とでき、使い勝手を向上させることが可能となる。また、図22Aにおいては、各定形剤29が、センサ103によって通過が検知されたか否かを表示してもよい。これにより、薬剤カセット58又は手撒き薬剤供給部56から払い出された定形剤29が処方データで指定されたものか否かだけでなく、特定手段にて定形剤識別子が特定された薬剤が確実に包装紙85に包装されていることも画面から確認できる。センサ103によって通過が検知された定形剤については、その画像の周囲にその旨を示す表示がされる。
なお、各包に包装する定形剤29が連続して本来包装すべき定形剤29とは相違している場合、薬剤カセット58に誤って他の定形剤29が収容されていると判断し、その旨をエラー報知するようにすればよい。
また、撮像部による撮像は、1つの定形剤29に対して複数枚として、その画像を鑑査結果として出力するようにしてもよい。例えば、1つの定形剤29に対してその表裏面それぞれの画像を撮像結果として出力してもよい。
また、タッチパネル51への画像鑑査結果の表示では、定形剤29の画像データを包装紙85に包装する包装(服用時期)単位で識別可能に表示する。また、各包装単位で表示した定形剤29の画像データは予め決定した定形剤29の種類順に並び替える。薬形剤師は、表示された画像データに基づいて、簡単に鑑査結果を確認することができる。鑑査した結果、適切な定形剤29の払出が行われていなければ、タッチパネル51にその定形剤29の画像の色彩を変更したり、点滅状態で表示させたりする等、エラーである旨の表示を行うようにするのが好ましい。
例えば、図23Aに示す処方データについて、薬剤鑑査処理を行った結果、表示された鑑査結果画面の例を図23Bに示す。この例では、エラー箇所は該当欄に斜線を施した表示としているが、実際には表示記号が赤色となる。例えば、昼の服用分は、定形剤29A(○)2錠、定形剤29B(△)1錠、定形剤29C(□)1錠であり、その表示内容は、予め決められた順序である○、○、△、□となる。6日目の昼では、定形剤29A(○)が1錠のみとなっており、本来○、○、△、□と表示されるべきところが、○、−、△、□(エラー(−)を赤色で表示)となる。また、7日目の昼では、6日目の昼に包装されるべき定形剤29A(○)が紛れ込んでおり、表示内容は○、○、△、□、○(赤色)となっている。
なお、図23Bでは、定形剤29を○等の簡略化した図形で表示しているが、実際には定形剤29の画像データが表示される。例えば、錠剤であれば、表裏面の画像データを表示するのが好ましい。鑑査結果は、別欄を設けて分かりやすく、適正な場合の「○」と、エラーの場合の「×」とを表示するようにしてもよい。また、エラーが発生した箇所は、赤色等の識別容易な色彩等で表示するようにしてもよい。さらに、画面上で、該当する定形剤29の画像データをクリックする等により拡大画像をポップアップ表示させるようにしてもよい。これにより、定形剤29、特にそこに形成された刻印等の定形剤識別子の確認をより確実に行うことが可能となる。
このように、薬剤鑑査結果を、包装紙85への包装(服用)単位で、しかも予め決められた定形剤29の種類順に表示させているので、ユーザは非常に見やすく、その判断が容易となる。しかも、エラーが発生した箇所は、他と識別容易な表示形態としているので、見間違えることがない。尚、薬剤鑑査支援装置1は、特定手段により特定された定形剤識別子に対応する薬剤情報と処方データで指定された定形剤の薬剤情報が一致しているか否かまでを判定せず、定形剤識別子を特定するだけでもよい。この場合、特定された定形剤識別子に基づいてユーザが鑑査を行うことになる。定形剤識別子が特定される分だけユーザの鑑査業務の負担を少なくできる。
(5.他の実施形態)なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
前記実施形態では、薬剤支持部3には1つの定形剤29のみを供給するようにしたが、複数の定形剤29を供給することも可能である。この場合、第1回転ロータおよび第2回転ロータを回転させる際、各定形剤29が互いに重ならないのであれば、定形剤29の数は自由であり、錠剤同士、カプセル剤同士、錠剤とカプセル剤等、定形剤29の組み合わせも自由である。
前記実施形態では、第2回転ローラ10のみを回動させて第1回転ローラ9との間に隙間を形成するようにしたが、この隙間は第1回転ローラ9を回動させたり、双方を回動させたりすることにより得るようにしてもよい。
前記実施形態では、既にサーバ等の記憶部にデータテーブルとして記憶させた薬剤情報を利用する場合について説明したが、新薬を新たに登録する場合であっても、前記薬剤鑑査支援装置1を利用することができる。すなわち、画像データから抽出した定形剤識別子がデータテーブルにない場合、画面上にその旨を表示し、ユーザに確認を促す。確認した結果、鑑査対象の定形剤29が登録されていないと判断すれば、読み取った定形剤識別子と、その定形剤29に関する情報(定形剤29の名称、識別コード等)とを紐付けて記憶させる。これにより、次回の鑑査からは新たに登録したデータを使用することができる。
前記実施形態では、薬剤支持部3にて定形剤29を連続的に回転させながらカメラ4によって連続的に撮像し、定形剤識別子が明瞭である画像を抽出して鑑査を行うようにしたが、定形剤29は少なくとも1回転するのが好ましい(例えば、1回転半)。
前記実施形態では、定形剤29の撮像画像から定形剤識別子を特定できない場合、次のようにしてもよい。
すなわち、サーバ等の記憶部に薬剤情報として、予め定形剤の形状、サイズ、色等の外観情報を登録しておく。ここでは、薬剤カセット58内に充填された定形剤29を撮像し、撮像画像と薬剤カセット58のRFID60に記憶した薬剤カセット58の識別番号とを互いに紐付けて記憶されている。そして、定形剤29から定形剤識別子を検出できない場合、撮像で得られた定形剤の外観情報に基づいてデータテーブルを検索する。検索した結果、合致する外観情報が得られなければエラーを報知し、得られれば次のように処理する。
(1)ユーザの判断を仰ぐことなく、自動的に適正な定形剤が供給されていると判断する。(2)定形剤識別子以外の情報については合致している旨を報知し、ユーザ(薬剤師)に最終判断を仰ぐ。(1)の場合、定形剤識別子による照合ができた場合と同様に扱い、そのままその定形剤を、該当する薬剤情報(定形剤の名称、服用情報(服用日、服用時間(朝、昼等)等)を印刷した包装紙に包装する。(2)の場合、鑑査対象の定形剤の画像を画面に表示させる。定形剤の画像としては、例えば、薬剤カセット58内に充填した定形剤29を撮像したものが挙げられる。また過去に撮像された画像のほか、今回撮像した画像をも併せて表示するようにしてもよい。ユーザは、表示された画像に基づいて、薬剤カセット58に定形剤29を充填した際、その定形剤29に間違い(異なる定形剤の充填、異なる定形剤の混入等)がなかったかどうかを確認することができる。また(2)の場合、画面上にそのことを示す表示をし(例えば、△)、ユーザに報知するだけとしてもよい。
また、手撒き薬剤供給部56から供給される定形剤29については、前記(1)のように適正な定形剤29を自動判断することができない。そこで、前記(2)のように定形剤29の画像を表示させることで、定形剤29を包装紙に包装する前に鑑査することができる。なお、手撒き薬剤供給部56から供給された定形剤29の画像としては、定形剤29自身の写真、服用時期、薬剤の名称(○月○日朝○○錠)とすることができる。さらに、手撒き薬剤供給部56から供給される定形剤29については、薬剤カセット58から払い出される場合に比べて鑑査支援をより厳しく行うようにするのが好ましい。例えば、供給された定形剤29を1つずつ全てについて薬剤鑑査支援処理を施すようにするのが好ましい。
前記実施形態では、薬剤鑑査支援処理の結果は、「OK」または「NG」の2段階で行うようにしたが、画像の一致率に応じて「要確認」を加えた3段階で行うようにしてもよい。例えば、適正な定形剤であっても、定形剤識別子の一部が薄くなっているため照合できなかったり、刻印に粉末が入り込み、一部が判別不可能な状態となっていて照合できなかったりすることがある。この場合、その旨を「OK」や「NG」とは別の方法でユーザに報知することができると、使い勝手を向上させることができる。
前記実施形態では、薬剤鑑査支援処理でエラーが発生した定形剤29については全てその旨を表示するようにしたが、そのエラーが同一薬剤カセット58から払い出された複数個の定形剤29のうちの所定数(例えば、1つ)である場合、次のように処理することも可能である。すなわち、同一薬剤カセット58から払い出される定形剤29に他の定形剤29が混入していることは、通常考えられないので、エラーを報知することなく、そのまま定形剤29の包装を続行する。これにより、エラーが頻出することがなく、スムーズな運用が期待できる。但し、ユーザに確認を促す表示等を行わせるようにしてもよいし、エラーが発生した定形剤29を再度、薬剤鑑査支援処理し直すようにしてもよい。
前記実施形態では、定形剤29を撮像するタイミングが一定である場合、定形剤29のサイズに応じて第1回転ローラ9および第2回転ローラ10の回転速度を変更するのが好ましい。具体的には、長軸回りの周長が小さい定形剤29であれば、前記回転速度を遅くし、定形剤識別子の撮像を確実に行えるようにする。一方、長軸回りの周長が大きい定形剤29であれば、前記回転速度を速くし、迅速な処理を可能とする。つまり、定形剤29の周長に基づいて第1回転ローラ9と第2回転ローラ10の回転速度を決定し、且つ、定形剤29の周長が大きい場合ほど回転速度を速くする。
前記実施形態では、表示させた画面上、定形剤29の払出元については特に明示しなかったが、いずれから払い出されたのかを、例えば、図19Aの左端欄に(カセット、手撒き等と)表示するようにすればよい。
前記実施形態では、第1回転ローラ9および第2回転ローラ10の双方を回転させるようにしたが、いずれか一方のみを回転させ、残る他方を回転可能なフリーローラとすることも可能である。また、センサ103が定形剤29を検知する位置は、第3ホッパーの入口部分に限定されない。例えば、第3ホッパー100の出口部分、中央部分に設けても良い。センサ103は、定形剤29の数を検知できるものであっても良い。例えば、センサ103は、センサの検知領域を定形剤29が通過する時間と、定形剤の幅と、定形剤1つ当たりの体積とに基づいて通過した定形剤29の数を算出して数を検知するセンサである。また、センサ103は、包装紙85(分包材)に定形剤が入ったことを検知するセンサであってもよい。例えば、センサ103は、カメラと、カメラが生成した撮像画像に基づいて定形剤29が包装紙85に入ったことを検知する手段とから構成される。カメラは、2つ折りされた状態の包装紙85の内側が撮像範囲となるように包装紙85の上方に設けられる。撮像画像には、第3ホッパー100から落下して包装紙85に入った定形剤29が写る。センサ103は、この撮像画像から定形剤が抽出できた場合、それをもって、包装紙85に定形剤29が入ったと認識する。また、薬剤鑑査支援装置1は、処方における服用パターンが1つ前の薬包とその次の薬包とで同じ場合、これらの2つの薬包に分包される定形剤が同一の薬剤カセットから払い出されたことを検知するようにしてもよい。同一の薬剤カセットから払い出されたか否かは、各薬剤カセット58の近傍に設けられ、各薬剤カセット58からの定形剤の排出を検知する排出センサの結果に基づいて判断する。また、定形剤識別子が定形剤に形成されているか否かが定形剤識別子に対応付けてサーバ93が記憶し、撮像手段に撮像された定形剤に定形剤識別子が形成されているか否かを撮像手段が撮像した定形剤の撮像画像に基づいて判定し、定形剤に定形剤識別子が形成されていないと判定し、且つ、サーバ93において処方データで指定された処方定形剤に定形剤識別子が形成されていないことが登録されている場合、薬剤鑑査支援装置1は撮像された定形剤に定形剤識別子が形成されておらず、処方定形剤には定形剤識別子が形成されていない旨がサーバ93に登録されていることをユーザに報知してもよい。これにより、定形剤識別子が形成されていない定形剤が処方データにて指定されて場合、定形剤識別子が形成されていない定形剤が払い出されたことをユーザに報知することで、ユーザから定形剤識別子の有無の確認の手間を省き、ユーザは定形剤の外観などを確認するだけで済む。撮像手段に撮像された定形剤に定形剤識別子が形成されているか否かを撮像手段が撮像した定形剤の撮像画像に基づいて判定する処理は、薬剤鑑査支援装置1の判定手段によって行われる。判定手段は、特定手段が定形剤識別子を特定できた場合は、撮像手段に撮像された定形剤に定形剤識別子が形成されていると判定し、特定手段が定形剤識別子を特定できない場合は、撮像手段に撮像された定形剤に定形剤識別子が形成されていないと判定する。尚、定形剤の払出元に応じて、薬剤鑑査処理を実行するか否かを設定できるようにしてもよい。例えば、払出元が手撒き薬剤供給部56である定形剤と、払出元が薬剤カセット58である定形剤とについて、それぞれ個別に薬剤鑑査処理を実行するか否かを設定できるようにすることなどが挙げられる。