JP5881460B2 - 新規アミド化合物及びその用途 - Google Patents

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Description

本発明は、ヒストン脱アセチル化酵素3(HDAC3)の選択的阻害活性を有する新規アミド化合物、及びその化合物を用いた医薬(特に、HDAC3阻害剤)に関する。
ヒストン脱アセチル化酵素(以下、「HDAC」とも表記する)は、アセチル化されたヒストンのリシン残基を脱アセチル化する反応を触媒し、多くの遺伝子発現を制御している。ヒストンのリシン残基ε−アミノ基がアセチル化されると、ヒストンの正電荷が中和されてヌクレオソーム構造が弛緩し、そのプロモータ領域に転写調節因子がアクセスしやすくなり、結果的に転写が活性化される。逆に、ヒストンの脱アセチル化が亢進するとヌクレオソーム構造が凝縮し、転写が抑制される。
最近のHDACアイソザイムの同定、機能解析により、HDACの機能はヒストンのアセチル化修飾だけでなく、その他多くのタンパク質がアセチル化修飾を受けることが分かってきている。HDACの標的となる非ヒストンタンパク質として、例えば、構造タンパク質、シャペロンタンパク質、DNA結合核内受容体、DNA結合転写因子、転写制御因子、クロマチンリモデリング因子、シグナルメディエーター、DNA修復酵素、核移行因子などが挙げられる。これらの非ヒストンタンパク質は、HDACによりアセチル化修飾を受けることでタンパク質の機能や安定性が変動し、またタンパク質−タンパク質相互作用に変化を生じる。
そして、これらのHDACの基質となるタンパク質は、遺伝子発現、細胞の増殖、分化、さらには細胞死に至る多くの生物学的プロセスに直接的に又は間接的に関与している。
これまでに、HDACのアイソフォームであるヒストン脱アセチル化酵素3(以下、「HDAC3」とも表記する)に関する研究が報告されている。例えば、非特許文献1には、HDAC3がフリードライヒ失調症(Friedreich's ataxia)における遺伝子抑制において役割を果たしていることが報告されている。非特許文献2には、HDAC3の阻害が、HIV−1の潜伏感染細胞の再活性化と関連していることが報告されている。非特許文献3には、HDAC3がNF−κBのp65サブユニットと相互作用して、当該p65を脱アセチル化し得ることが記載されている。非特許文献4には、HDAC3が結腸腫瘍でアップレギュレートされたタンパクであること、結腸癌細胞の増殖及び分化のレギュレーターであることが報告されている。
そのため、HDAC3を選択的に阻害する物質は、新規の抗癌剤、神経変性疾患治療剤、抗炎症剤、抗ウイルス剤、生物試験用試薬などとなり得ることが期待される。
これまでに、HDAC3の阻害活性を有する化合物として、SAHA(ボリノスタット)(非特許文献5)、(N-(4-メチルベンゾイル)グリシル−N−(2−アミノフェニル)−β−アラニンアミド(以下、「3P」とも表記する)を含む種々のベンズアミド化合物(非特許文献6)等が報告されている。
しかし、SAHAは、HDAC3に対して高い阻害活性を有するものの、他のHDAC(例えばHDAC4、6、8等)に対しても高い阻害活性を示してしまうため、HDAC3の選択的阻害という観点から満足できるものではなかった。
また、3Pについては、HDAC3に対する選択的な阻害活性はあるものの、HDAC3の阻害活性度は低いものであった。
Chemistry & Biology 16, 980-989, September 25, 2009 The Journal of Biological Chemistry Vol. 286, No.25, pp. 22211-22218, June 24, 2011 The Journal of Biological Chemistry Vol.278, No.4, pp. 2758-2766, January 24, 2003 The Journal of Biological Chemistry Vol.281, No.19, pp. 13548-13558, May 12, 2006 Nature Chemical Biology 6 (2010) 238-243 Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 19 (2009) 3928-3931
本発明は、上述した既存のSAHAや3Pの問題点を改善すべく、ヒストン脱アセチル化酵素3(HDAC3)に対し高い阻害活性を有し、かつ、HDAC3を選択的に阻害する新規アミド化合物、及びその化合物を含む医薬(特に、HDAC3阻害剤)を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、後記一般式(I)で表されるアミド化合物が、選択的にHDAC3を阻害することを見出した。かかる知見に基づきさらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
本発明は、下記のアミド化合物及び医薬(特に、HDAC3阻害剤)を提供する。
項1.一般式(I):
Figure 0005881460
(式中、環Aは炭化水素環又はヘテロ環であり、Rは低級アルキル、低級アルコキシ、ハロ低級アルキル、ハロ低級アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、ハロゲン、ニトロ、アミノ、オキソ、モノ−又はジ−低級アルキルアミノ、ヒドロキシ、カルボキシル、低級アルコキシカルボニル又はカルバモイルであり、nは0〜5の整数であり、Tは単結合、低級アルキレン、低級アルケニレン、−O−低級アルキレン、−CO−低級アルキレン、−N(R)CO−低級アルキレン又は−S(O)−低級アルキレンであり、Rは水素原子又は低級アルキルであり、mは0、1又は2であり、Uは単結合、低級アルキレン、低級アルケニレン、アリーレン又はヘテロアリーレンである。)
で表される化合物又はその塩。
項2.前記項1に記載の化合物又はその塩を含有する医薬。
項3.前記医薬が、抗癌剤、神経変性疾患治療剤、抗炎症剤又は抗ウイルス剤である項2に記載の医薬。
項4.前記項1に記載の化合物又はその塩を含有するHDAC3阻害剤。
項5.医薬(特に、抗癌剤、神経変性疾患治療剤、抗炎症剤、抗ウイルス剤等)を製造するための前記項1に記載の化合物又はその塩の使用。
項6.前記項1に記載の化合物又はその塩を含有する生物試験用試薬。
項7.一般式(I):
Figure 0005881460
(式中、環Aは炭化水素環又はヘテロ環であり、Rは低級アルキル、低級アルコキシ、ハロ低級アルキル、ハロ低級アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、ハロゲン、ニトロ、アミノ、オキソ、モノ−又はジ−低級アルキルアミノ、ヒドロキシ、カルボキシル、低級アルコキシカルボニル又はカルバモイルであり、nは0〜5の整数であり、Tは単結合、低級アルキレン、低級アルケニレン、−O−低級アルキレン、−CO−低級アルキレン、−N(R)CO−低級アルキレン又は−S(O)−低級アルキレンであり、Rは水素原子又は低級アルキルであり、mは0、1又は2であり、Uは単結合、低級アルキレン、低級アルケニレン、アリーレン又はヘテロアリーレンである。)
で表される化合物又はその塩の製造方法であって、一般式(3):
Figure 0005881460
(式中、環A、R、n及びTは前記に同じ。)
で表される化合物と、一般式(8):
Figure 0005881460
(式中、Uは前記に同じ。)
で表される化合物を反応させ、必要に応じ塩を形成することを特徴とする、製造方法。
本発明において、一般式(1)で表されるアミド化合物又はその塩は、高いHDAC3阻害作用を有し、かつ、HDAC3を選択的に阻害する作用を有している。そのため、選択的なHDAC3の阻害作用に基づく医薬、特に、抗癌剤、神経変性疾患治療剤、抗炎症剤、抗ウイルス剤、生物試験用試薬等として有用である。
試験例2における、ウエスタンブロッティングによるHDAC3の選択的阻害活性評価の結果を示す。 試験例3における、HCT-116細胞の増殖抑制試験の結果を示す。
本明細書中において、本発明化合物における環A、R、T及びUで表される基等、その合成中間体及び試薬における基、原子等の定義は、以下の説明に従う。
「少なくとも1個」という用語は、一般に1〜6個、好ましくは1〜3個である。
「炭化水素環」の例としては、単環式又は二環式の炭化水素環が挙げられ、例えばシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の3〜7員単環式炭化水素環;ナフタレン、テトラリン、インデン等の9〜10員二環式炭化水素環が挙げられる。
「ヘテロ環」の例としては、単環式又は二環式のヘテロ環が挙げられ、例えば、チオフェン、フラン、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、ピリジン、ピリミジン、トリアゾール、テトラゾール、ピロール、テトラヒドロフラン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン等の酸素原子、窒素原子及び硫黄原子から選択される1〜4個のヘテロ原子を含む5〜6員単環式ヘテロ環;ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、イミダゾピリジン、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、テトラヒドロキノリン、テトラヒドロイソキノリン等の酸素原子、窒素原子及び硫黄原子から選択される1〜4個のヘテロ原子を含む9〜10員二環式ヘテロ環が挙げられる。
「低級アルキル」の例としては、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル基が挙げられ、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、3−メチルペンチル等が挙げられる。
「低級アルコキシ」の例としては、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルコキシ基が挙げられ、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、tert−ブトキシ、sec−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ、イソヘキシルオキシ、3−メチルペンチルオキシ等が挙げられる。
「ハロ低級アルキル」の例としては、上記「低級アルキル」の少なくとも1個(例えば、1〜13個、さらに1〜9個、特に1〜3個)の水素がハロゲンに置換された基であり、例えばトリハロメチル(例えば、−CF等)、トリハロエチル(例えば、−CHCF等)、ペンタハロエチル(例えば、−CFCF等)、ノナハロブチル(例えば、−CFCFCFCF)等が挙げられる。
「ハロ低級アルコキシ」の例としては、上記「低級アルコキシ」の少なくとも1個(例えば、1〜13個、さらに1〜9個、特に1〜3個)の水素がハロゲンに置換された基であり、例えばトリハロメトキシ(例えば、−OCF等)、ペンタハロエトキシ(例えば、−OCFCF等)、ノナハロブトキシ(例えば、−OCFCFCFCF)等が挙げられる。
「アリール」の例としては、単環式又は二環式のアリール基が挙げられ、例えば、フェニル、トルイル、キシリル、ナフチル等が挙げられる。
「ヘテロアリール」の例としては、単環式又は二環式のヘテロアリール基が挙げられ、例えば、例えば、チエニル、フリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピロリル等の酸素原子、窒素原子及び硫黄原子から選択される1〜4個のヘテロ原子を含む5〜6員単環式ヘテロアリール;ベンゾフリル、ベンゾチエニル、インドリル、イソインドリル、イミダゾピリジル、キノリル、イソキノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル等の酸素原子、窒素原子及び硫黄原子から選択される1〜4個のヘテロ原子を含む9〜10員二環式ヘテロアリールが挙げられる。
「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素である。
「モノ−又はジ−低級アルキルアミノ」は、アミノ基(−NH)の1又は2個の水素原子が上記「低級アルキル」で置換された基である。
「低級アルコキシカルボニル」の例としては、(1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルコキシ)カルボニルが挙げられ、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル等が挙げられる。
「低級アルキレン」の例としては、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキレン基が挙げられ、例えばメチレン、エチレン、トリメチレン、2−メチルトリメチレン、2,2−ジメチルトリメチレン、1−メチルトリメチレン、メチルメチレン、エチルメチレン、ジメチルメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン等が挙げられる。
「低級アルケニレン」の例としては、2〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルケニレン基が挙げられ、例えばエテニレン、プロペニレン、ブテニレン、ペンテニレン、ヘキセニレン等が挙げられる。
「アリーレン」の例としては、上記「アリール」の1個の水素が除かれて得られる2価の基であり、例えば、単環式又は二環式のアリーレン基が挙げられ、例えば、フェニレン、トルイルジイル、キシリルジイル、ナフチルジイル等が挙げられる。
「ヘテロアリーレン」の例としては、上記「ヘテロアリール」の1個の水素が除かれて得られる2価の基であり、例えば、チオフェンジイル、フランジイル、ピラゾールジイル、イミダゾールジイル、オキサゾールジイル、イソオキサゾールジイル、チアゾールジイル、ピリジンジイル、ピリミジンジイル、トリアゾールジイル、テトラゾールジイル、ピロールジイル等の酸素原子、窒素原子及び硫黄原子から選択される1〜4個のヘテロ原子を含む5〜6員単環式ヘテロアリーレン;ベンゾフランジイル、ベンゾチオフェンジイル、インドールジイル、イソインドールジイル、イミダゾピリジンジイル、キノリンジイル、イソキノリンジイル、フタラジンジイル、ナフチリジンジイル、キノキサリンジイル、キナゾリンジイル、シンノリンジイル等の酸素原子、窒素原子及び硫黄原子から選択される1〜4個のヘテロ原子を含む9〜10員二環式ヘテロアリーレンが挙げられる。
環Aとして好ましくは、ベンゼン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ナフタレン、ピリジン(Tに対し、2−、3−又は4−ピリジル)、インドール(Tに対し、例えば、3−インドリル等)、チアゾール(Tに対し、例えば、5−チアゾリル等)、モルホリン(Tに対し、例えば、4−モルホリノ等)であり、より好ましくは、フェニル又は3−チエニルである。
Rとして好ましくは、C1〜3アルキル(例えば、メチル等)、C1〜3アルコキシ(例えば、メトキシ等)、フェニル、フッ素、塩素、ニトロ、アミノ等であり、より好ましくは、メトキシ、ニトロ、メチルである。
nとして好ましくは、0、1、2又は3であり、より好ましくは0、1又は2である。nが2以上の場合、Rは同一又は異なっていてもよい。
Tとして好ましくは、単結合、C1〜3アルキレン、−CO−C1〜3アルキレン、−NHCO−C1〜3アルキレン又は−S(O)−C1〜3アルキレンであり、より好ましくは、C1〜3アルキレン、−CO−C1〜3アルキレンである。
として水素又はC1〜3アルキルである。
mとして好ましくは0又は1である。
Uとして好ましくは、C1〜6アルキレン、フェニレン(例えば、1,4−フェニレン、1,3−フェニレン等)、チオフェンジイル(例えば、2,5−チオフェンジイル等)である。
本発明化合物のうち好ましくは、一般式(Ia):
Figure 0005881460
(式中、Aは、ベンゼン環、チオフェン環、ナフタレン環又はシクロヘキサン環であり、Tは、−CO−C1〜3アルキレン又はC1〜3アルキレンであり、Rは、C1〜3アルキル(例えば、メチル等)、C1〜3アルコキシ(例えば、メトキシ等)、フェニル、フッ素、塩素、ニトロ又はアミノ等であり、n1は0〜2の整数であり、Uは、C1〜4アルキレン、フェニレン(例えば、1,4−フェニレン、1,3−フェニレン等)又はチオフェンジイル(例えば、2,5−チオフェンジイル等)である。)
で表される化合物が挙げられる。
本発明化合物のうち特に好ましくは、実施例に記載された化合物I−1〜化合物I−12、又はそれらの塩が挙げられる。
本発明化合物は、例えば次のようにして製造することができる。
Figure 0005881460
(式中、環A、R、n、T及びUは前記に同じ。)
一般式(I)で表される化合物は、一般式(3)で表される化合物と一般式(8)で表される化合物を1,3−双極子付加環化反応(Huisgen反応)させることにより製造することができる。この反応は、公知の反応条件、例えば、Angew. Chem. Int. Ed. 2001, 40, 2004-2021、Angew. Chem. Int. Ed. 2002, 41, 2596-2599、国際公開第2011/089995号パンフレット等に記載の反応条件に従い実施することができる。
具体的には、一般式(3)で表される化合物と一般式(8)で表される化合物を、通常、エタノール等のアルコール溶媒の存在下に、硫酸銅(II)五水和物等の銅化合物及びアスコルビン酸ナトリウム等の還元剤の存在下に反応させることができる。
一般式(3)で表される化合物は、例えば次のようにして製造することができる。
Figure 0005881460
(式中、Xは脱離基であり、環A、R、n及びTは前記に同じ。)
Xで示される脱離基としては、例えば、ハロゲン(例えば、塩素、臭素、ヨウ素等)、低級アルキルスルホニルオキシ(例えば、メタンスルホニルオキシ等)、ハロ低級アルキルスルホニルオキシ(例えば、トリフルオロメタンスルホニルオキシ等)、アリールスルホニルオキシ(例えば、p−トルエンスルホニルオキシ等)等が挙げられる。
一般式(2)で表される化合物は、一般式(1)で表される化合物の水酸基を脱離基Xに変換することにより製造することができる。この反応は、公知の反応条件に従い又は準じて実施することができる。
例えば、Xがハロゲンの場合、一般式(1)で表される化合物にハロゲン化試薬(例えば、塩化チオニル、三塩化リン、三臭化リン等)を反応させて、一般式(2)で表される化合物を製造することができる。
また、Xが低級アルキルスルホニルオキシ、ハロ低級アルキルスルホニルオキシ又はアリールスルホニルオキシの場合、一般式(1)で表される化合物に、塩基性化合物(例えば、ピリジン、トリエチルアミン等)の存在下に、低級アルキルスルホニルハライド、ハロ低級アルキルスルホニルハライド又はアリールスルホニルハライドを反応させて、一般式(2)で表される化合物を製造することができる。ここでハライドとしては、塩素、臭素等が挙げられる。
一般式(3)で表される化合物は、例えば、一般式(2)で表される化合物に、DMF等の溶媒の存在下、ナトリウムアジド等のアジド化試薬を反応させて製造することができる。この反応は、公知の反応条件に従い又は準じて実施することができる。
一般式(8)で表される化合物は、例えば次のようにして製造することができる。
Figure 0005881460
(式中、Rは低級アルキルであり、X及びUは前記に同じ。)
で示される低級アルキルとしては、C1〜3アルキル(例えば、メチル)が挙げられる。
一般式(6)で表される化合物は、例えば、一般式(4)で表される化合物と一般式(5)で表される化合物を、溶媒(例えば、THF、ジオキサン等)の存在下又は非存在下、パラジウム触媒(例えば、PdCl2(PPh3)2、Pd(OAc)2等)及び塩基性化合物(例えば、トリエチルアミン等)の存在下で反応させることにより製造することができる。この反応は、公知の反応条件に従い又は準じて実施することができる。
一般式(7)で表される化合物は、例えば、一般式(6)で表される化合物を、アルカリ水溶液(例えば、水酸化ナトリウム水溶液等)で処理することにより製造することができる。この反応は、公知の反応条件に従い又は準じて実施することができる。
一般式(8)で表される化合物は、例えば、一般式(7)で表される化合物とo−フェニレンジアミンを、溶媒(例えば、DMF等)の存在下、縮合剤(例えば、DCC、EDCI/HOBt等)の存在下で反応させることにより製造することができる。この反応は、公知の反応条件に従い又は準じて実施することができる。
上記の反応式で製造される化合物は、必要に応じ、公知の単離工程(濾過、濃縮、抽出等)及び精製工程(カラムクロマトグラフィ、再結晶化等)を経て目的化合物を得ることができる。
本発明の化合物は、一般式(I)で表される化合物、その塩、その溶媒和物、結晶多形、光学異性体等のいずれをも包含する。
本発明の化合物が、塩基性基を有する場合、薬学的に許容可能な酸と塩を形成することができる。当該酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸及び他の無機酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、乳酸及び他の有機酸等が挙げられる。
本発明の化合物が、酸性基を有する化合物の場合、薬学的に許容可能な塩基性化合物と塩を形成することができる。当該塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。
本発明は、本発明の化合物を含む医薬製剤(医薬組成物)をも提供する。かかる医薬製剤は、薬学的に許容される添加物、例えば、充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤等の通常用いられる希釈剤又は賦形剤を使用して、本発明の化合物を一般的な医薬製剤に配合することにより得られる。
本発明による医薬製剤の投与経路は限定されず、この製剤は、製剤の形態、患者の年齢及び性別、疾患の状態並びにその他の条件に応じた方法で投与することができる。例えば、錠剤、丸剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤及びカプセル剤を経口で投与する。注射剤は静脈内、筋肉内、皮内、皮下若しくは腹腔内に投与する。坐剤は直腸内に投与する。
本発明の医薬の投与量は、薬効を発現する有効量であれば特に限定されないが、通常は、有効成分である一般式(I)で表される化合物の重量として、一般に経口投与の場合には一日あたり0.1〜1000mg/kg体重、好ましくは一日あたり0.5〜50mg/kg体重であり、非経口投与の場合には一日あたり0.01〜100mg/kg体重、好ましくは0.1〜10mg/kg体重である。上記投与量は1日1回又は2〜3回に分けて投与するのが好ましく、年齢、病態、症状により適宜増減してもよい。
本発明の一般式(I)で表される化合物又はその塩は、高いHDAC3阻害作用を有し、かつ、HDAC3を選択的に阻害する作用を有しているため、選択的なHDAC3の阻害作用に基づく医薬として有用である。特に、癌の予防及び/又は治療剤、神経変性疾患(ハンチントン病等)の予防及び/又は治療剤、炎症の予防及び/又は治療剤、ウイルス性疾患の予防及び/又は治療剤等として有用である。
次に、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1
N-(2-アミノフェニル)-4-[1-(2-チオフェン-3-イルエチル)-1H-[1,2,3]トリアゾール-4-イル]ベンズアミド (I−1) の製造
Figure 0005881460
工程1:3-(2-アジドエチル)チオフェン (2) の製造
3-チオフェンエタノール (1) (1.08 g) をCH2Cl2(4 mL) に溶解し、氷冷下でトリエチルアミン (1.02 g)、MsCl (1.16 g)を加えた。反応液を室温で2時間撹拌後、飽和炭酸水素ナトリウムにより反応を止めた。反応液をCHCl3で抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、ろ液を減圧濃縮し、対応するメシル体を得た。次いでメシル体に0.5M アジ化ナトリウムDMSO溶液(20.2 mL)を加え、80 ℃で1時間撹拌した。反応液に水を加え、反応液を酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー (展開溶媒 n−ヘキサン)で精製し、表題化合物 (1.08, 収率84%, 2 steps)を無色オイルとして得た。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz, δ; ppm) 7.29 (1H, m), 7.06 (1H, d, J = 1.8 Hz), 6.98 (1H, d, J= 4.3 Hz), 3.51 (2H, t, J =7.0 Hz), 2.93 (2H, t, J = 7.0 Hz)
13C NMR (CDCl3, 150 MHz, δ; ppm) 138.26, 127.97, 125.95, 121.79, 51.79, 29.81
FTIR (neat, cm-1) 2086
MS (EI) m/z 125 (M+−28)。
工程2:4-ヨード安息香酸メチルエステル (4) の製造
4-ヨード安息香酸 (3) (3.00 g) をメタノール (60 mL) に溶解し、濃硫酸 (2 mL) を加え、21時間還流した。反応液を濃縮し、残渣を酢酸エチル (100 mL) に溶解させ、有機層を水 (100 mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液 (100 mL)、飽和食塩水 (100 mL) で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、表題化合物 (3.14 g, 収率99%) を白色固体として得た。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz, δ; ppm) 7.81 (2H, d, J =8.5 Hz), 7.75 (2H, d, J = 8.8 Hz), 3.91 (3H, s)。
工程3:4-(トリメチルシリルエチニル)安息香酸メチルエステル (5) の製造
工程2で得られた4-ヨード安息香酸メチルエステル (9) (2.03 g) をTHF (16 mL) に溶解し、PdCl2(PPh3)2(267 mg)、CuI (145 mg)、トリエチルアミン(4 mL)、トリメチルシリルアセチレン (1.49 g) を加え、アルゴン雰囲気下、80 ℃で18時間攪拌した。反応液をろ過し、ろ液を減圧濃縮後、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー (展開溶媒 n−ヘキサン:酢酸エチル=10:1) で精製し、表題化合物 (1.89 g, 収率64%) を黄色固体として得た。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz, δ; ppm) 7.97 (2H, d, J =8.5 Hz), 7.52 (2H, d, J = 8.5 Hz), 3.92 (3H, s), 0.261 (9H, S)。
工程4:4-エチニル安息香酸 (6) の製造
工程3で得られた4-(トリメチルシリルエチニル)安息香酸メチルエステル (5) (1.89 g) をメタノール (30 mL) に溶解し、氷冷下2N水酸化ナトリウム水溶液 (10.4 mL) を加え、7時間室温で攪拌した。反応液を2N 塩酸で酸性 (pH 3〜4) とし、減圧下で濃縮した。残渣に水 (100 mL) を加え、酢酸エチル (100 mL) で抽出した。有機層を飽和食塩水 (100 mL) で洗浄して、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、表題化合物 (1.10 g, 収率92%) を茶色固体として得た。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz, δ; ppm) 8.07 (2H, d, J =8.8 Hz), 7.59 (2H, d, J = 8.5 Hz), 3.27 (1H, s)。
工程5:N-(2-アミノフェニル) 4-エチニルベンズアミド (B-p-P-1) の製造
工程4で得られた4-エチニル安息香酸 (6) (402 mg)、EDCI (633 g)、 HOBt・H2O (446 g)、o-フェニレンジアミン (2.97 g) をDMF (10 mL) に溶解し、室温で24時間攪拌した。反応液に水 (100 mL) を加え、酢酸エチル (100 mL) で抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム (100 mL)、飽和食塩水 (100 mL) で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー (展開溶媒 n−ヘキサン:酢酸エチル=2:1) で精製し、粗結晶 (556 mg, 収率86%) を得た。粗結晶をMeOH-CHCl3から再結晶し、表題化合物 (245 mg, 収率58%)を白色固体として得た。
mp 181-183 ℃: 1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz, δ; ppm) 9.73 (1H, br), 7.99 (2H, d, J = 7.9 Hz), 7.61 (2H, d, J =8.5 Hz), 7.15 (1H, d, J = 7.3 Hz), 6.99-6.96 (1H, m), 6.78-6.77 (1H, m), 6.61-6.58 (1H, m), 4.92 (2H, s), 4.41 (1H, s); 13C NMR (DMSO-d6, 500 MHz, δ; ppm) 164.41, 143.13, 134.62, 131.47, 127.96, 126.67, 126.52, 124.45, 122.90, 116.06, 115.95, 82.82, 82.79 ; MS (EI) m/z 236 (M+); Anal. Calcd. for C15H12N2O・1/5H2O: C, 75.11; H, 5.21; N, 11.68. Found: C, 75.08; H, 5.09; N, 11.67。
工程6:N-(2-アミノフェニル)-4-[1-(2-チオフェン-3-イルエチル)-1H-[1,2,3]トリアゾール-4-イル]ベンズアミド (I−1) の製造
工程1で得られた3-(2-アジドエチル)チオフェン (2) (78 mg)、 工程5で得られたN-(2-アミノフェニル) 4-エチニルベンズアミド (B-p-P-1) (65 mg)をエタノールに溶解し、水に溶解させた硫酸銅(II)五水和物 (13.7 mg)、アスコルビン酸ナトリウム (21.8 mg) を加え、室温で15時間攪拌した。水を加える事で反応を止め、水層を酢酸エチル (200 mL) で抽出し、有機層を水 (50 mL) 、飽和EDTA水溶液 (50 mL) で洗浄し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー (展開溶媒 n−ヘキサン:酢酸エチル=1:2) で精製し、粗結晶 (70 mg, 収率70%) を得た。粗結晶をH2O-MeOHから再結晶し、表題化合物 (58 mg, 収率58%)を白色固体として得た。
mp 194−195 ℃; 1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz, δ; ppm) 9.70 (1H, s), 8.66 (1H, s) 8.06 (2H, d, J =8.0 Hz), 7.94 (2H, d, J = 8.5 Hz), 7.48 (1H, t, J = 3.0 Hz), 7.25 (1H, s), 7.17 (1H, d, J =8.0 Hz), 7.02-6.95 (2H, m), 6.78 (1H, d, J= 8.0 Hz), 6.60 (1H, t, J = 8.0 Hz), 4.91 (2H, s), 4.68 (2H, t, J = 7.5 Hz), 3.25 (2H, d, J = 7.5 Hz); 13C NMR (DMSO-d6, 125 MHz, δ; ppm) 164.87, 145.42, 143.19, 137.76, 133.65, 128.53, 128.24, 127.00, 126.74, 126.53, 126.26, 125.49, 124.73, 122.19, 122.15, 116.27, 116.14, 50.09, 30.19; MS (FAB) m/z 390 (MH+); Anal. Calcd. for C21H19N5OS: C, 64.76; H, 4.92; N, 17.98. Found: C, 65.02; H, 5.24; N, 17.88。
実施例2
5-{1-[2-(3-ニトロフェニル)エチル]-1H-[1,2,3]トリアゾール-4-イル}チオフェン-2-カルボン酸(2-アミノフェニル)アミド (I−2) の製造
Figure 0005881460
工程1:3-ニトロフェネチルアジド (8) の製造
3-ニトロフェネチルブロマイド (7) (1.14 g) に0.5 Mアジ化ナトリウムDMSO溶液 (11.9 mL)を加え、室温で5時間撹拌した。氷冷下で水 (30 mL) を加え、反応液を酢酸エチル (100 mL) で抽出した。有機層を水 (100 mL)、飽和食塩水 (100 mL) で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー (展開溶媒 n−ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製し、表題化合物 (589 mg, 収率 62%)を黄色オイルとして得た。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz, δ; ppm) 8.13−8.11 (2H, m), 7.58 (1H, d, J = 7.6 Hz), 7.51 (1H, t, J= 7.8 Hz), 3.60 (2H, t, J =6.9 Hz), 3.00 (2H, t, J = 6.9 Hz)
13C NMR (CDCl3, 125 MHz, δ; ppm) 148.47, 140.15, 135.09, 129.58, 123.70, 122.01, 51.86, 34.98
FTIR (neat, cm-1) 2090, 1523, 1346
MS (EI) m/z 164 (M+−28)。
工程2:5-ブロモ-2-チオフェンカルボン酸メチルエステル (10) の製造
5-ブロモ-2-チオフェンカルボン酸(9) (1.00 g) をメタノール (30 mL) に溶解し、濃硫酸 (1 mL) を加え、30時間還流した。反応液を濃縮し、残渣を酢酸エチル (100 mL) に溶解させ、有機層を水 (100 mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液 (100 mL)、飽和食塩水 (100 mL) で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、表題化合物 (1.03 g, 収率96%) を白色固体として得た。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz, δ; ppm) 7.55 (1H, d, J =4.3 Hz), 7.07 (1H, d, J = 4.0 Hz), 3.88 (3H, s)。
工程3:5-(トリメチルシリルエチニル)チオフェン-2-カルボン酸メチルエステル (11) の製造
工程2で得られた5-ブロモ-2-チオフェンカルボン酸メチルエステル (10) (1.03 g) をジエチルアミン (16 mL) に溶解し、PdCl2(PPh3)2 (32.7 mg)、CuI (13.3 mg)、トリメチルシリルアセチレン (687 mg) を加え、アルゴン雰囲気下、室温で18時間攪拌した。反応液を減圧下で濃縮後、残渣にEt2O (50 mL) を加え、有機層を1N 塩酸水溶液 (50 mL)、飽和炭酸水素ナトリウム (50 mL)、飽和食塩水 (50 mL) で洗浄して、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー (展開溶媒 n−ヘキサン:酢酸エチル=20:1) で精製し、表題化合物 (895 mg, 収率81%) を黄色固体として得た。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz, δ; ppm) 7.63 (1H, d, J =4.0 Hz), 7.16 (1H, d, J = 4.0 Hz), 3.88 (3H, s), 0.257 (9H, S)。
工程4:5-エチニルチオフェン-2-カルボン酸(12) の製造
工程3で得られた5-(トリメチルシリルエチニル)チオフェン-2-カルボン酸メチルエステル (11) (895 mg)をメタノール (10 mL) に溶解し、氷冷下2N水酸化ナトリウム水溶液 (3.75 mL) を加え、5時間室温で攪拌した。反応液を2N 塩酸で酸性 (pH 3〜4) とし、減圧下で濃縮した。残渣に水 (100 mL) を加え、酢酸エチル (100 mL) で抽出した。有機層を飽和食塩水 (100 mL) で洗浄して、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、表題化合物 (552 mg, 収率97%) を茶色固体として得た。
1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz, δ; ppm) 7.64 (1H, d, J =4.0 Hz), 7.40 (1H, d, J = 3.7 Hz), 4.80 (1H, s)。
工程5:5-エチニルチオフェン-2-カルボン酸 (2アミノフェニル) アミド (B-S-1) の製造
工程4で得られた5-エチニルチオフェン-2-カルボン酸(12) (100 mg)、EDCI (151 mg)、 HOBt・H2O (106 mg)、 o-フェニレンジアミン (710 mg) をDMF (3 mL) に溶解し、室温で21時間攪拌した。反応液に水 (100 mL) を加え、酢酸エチル (100 mL) で抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム (100 mL)、飽和食塩水 (100 mL) で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー (展開溶媒 n−ヘキサン:酢酸エチル=2:1) で精製し、粗結晶 (125 mg, 収率76%) を得た。粗結晶をAcOEt-n-Hexaneから再結晶し、表題化合物 (49 mg, 収率31%)を茶色固体として得た。
mp 143 ℃; 1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz, δ; ppm) 9.88 (1H, br), 7.98 (1H, d, J = 3.0 Hz), 7.51 (1H, d, J = 4.0 Hz), 7.17 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.07-7.04 (1H, m), 6.85 (1H, dd, J = 1.2, 8.2 Hz), 6.66 (1H, dt, J = 1.2, 7.9 Hz), 5.01 (2H, s), 4.83 (1H, s); 13C NMR (CDCl3, 500 MHz, δ; ppm) 159.04, 143.46, 141.22, 133.93, 128.97, 127.03, 126.98, 125.45, 122.13, 116.17, 116.01, 87.04, 76.42 ; MS (EI) m/z 242 (M+); ; Anal. Calcd. for C7H5NO2S・1/4H2O : C, 63.27; H, 4.29; N, 11.35. Found: C, 63.17; H, 4.30; N, 11.29。
工程6:5-{1-[2-(3-ニトロフェニル)エチル]-1H-[1,2,3]トリアゾール-4-イル}チオフェン-2-カルボン酸(2-アミノフェニル)アミド (I−2) の製造
工程1で得られた3-ニトロフェネチルアジド(8) (82 mg)、 工程5で得られた5-エチニルチオフェン-2-カルボン酸 (2アミノフェニル) アミド (B-S-1) (59 mg)をエタノールに溶解し、水に溶解させた硫酸銅(II)五水和物 (17.7 mg)、アスコルビン酸ナトリウム (28 mg) を加え、室温で22時間攪拌した。水を加える事で反応を止め、水層を酢酸エチル (200 mL) で抽出し、有機層を水 (50 mL) 、飽和EDTA水溶液 (50 mL) で洗浄し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー (展開溶媒 n−ヘキサン:酢酸エチル=1:3) で精製し、粗結晶 (100 mg, 収率97%) を得た。粗結晶をH2O-MeOHから再結晶し、表題化合物 (57 mg, 収率 55%)を黄色固体として得た。
mp 180−181 ℃; 1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz, δ; ppm) 9.74 (1H, s), 8.56 (1H, s) 8.17 (1H, s), 8.10 (1H, d, J = 8.0 Hz), 7.96 (1H, m), 7.68 (1H, d, J = 7.0 Hz), 7.59 (1H, t, J =8.0 Hz), 7.45 (1H, d, J = 4.0 Hz), 7.14 (1H, d, J = 7.5 Hz), 6.99 (1H, t, J = 7.8 Hz), 6.79 (1H, d, J =8.0 Hz), 6.60 (1H, t, J = 7.5 Hz), 4.49 (2H,s), 4.76 (2H, t, J = 7.0 Hz); 13C NMR (DMSO-d6, 125 MHz, δ; ppm) 159.81, 147.83, 143.36, 141.02, 139.91, 138.41, 137.56, 135.73, 129.90, 129.74, 126.92, 126.77, 124.43, 123.55, 122.54, 121.75, 121.73, 116.25, 116.07, 50.28, 34.84; MS (FAB) m/z435 (MH+); Anal. Calcd. for C21H18N6O3S: C, 58.05; H, 4.18; N, 19.34. Found: C, 58.23; H, 4.32; N, 19.20。
実施例3
5-[1-(4-メトキシベンジル)-1H-[1,2,3]トリアゾール-4-イル]ペンタン酸(2-アミノフェニル)アミド (I−3) の製造
Figure 0005881460
工程1:4-メトキシベンジルアジド (14) の製造
4-メトキシベンジルブロマイド (13) (1.00 g) に0.5M アジ化ナトリウムDMSO溶液 (11 mL) を加え、室温で6時間攪拌した。氷冷下で水 (34.0 mL) を加え、反応液を酢酸エチル (100 mL) で抽出した。有機層を水 (100 mL)、飽和食塩水 (100 mL) で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー (展開溶媒 n−ヘキサン:酢酸エチル=50:1) で精製し、表題化合物 (485 mg, 収率60%) を淡黄色オイルとして得た。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz, δ; ppm) 7.24 (2H, d, J =8.8 Hz), 6.91 (2H, d, J = 8.5 Hz), 4.26 (2H,s), 3.81(3H, s); 13C NMR (CDCl3, 600 MHz, δ; ppm) 159.60, 129.72, 127.36, 114.16, 55.26, 54.36; HRMS (EI) Calcd. for C8H9ON3 163.075, Found 163.076。
工程2:6-ヘプチン酸(2-アミノフェニル) アミド (B-4-1) の製造
6-ヘプチン酸 (15) (501 μL)、EDCI (766 mg)、 HOBt・H2O (560 mg)、 o-フェニレンジアミン (431 mg) をDMF (10 mL) に溶解し、室温で44時間攪拌した。反応液に水 (100 mL) を加え、酢酸エチル (100 mL) で抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム (100 mL)、飽和食塩水 (100 mL) で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー (展開溶媒 n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1) で精製し、表題化合物 (533 mg, 収率62%)を白色固体として得た。
mp 108 ℃; 1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz, δ; ppm) 9.11 (1H, s), 7.14 (1H, d, J = 8.0 Hz), 6.89 (1H, d, J =8.0 Hz), 6.71 (1H, d, J = 8.0 Hz), 6.53 (1H, d, J = 8.0 Hz), 4.81 (2H, s), 2.78 (1H, t, J = 2.5 Hz), 2.32 (2H, t, J = 7.5 Hz), 2.20 (2H, t, J = 7.0 Hz), 1.67 (2H, quin, J = 7.5 Hz), 1.50 (2H, quin, J = 7.5 Hz); HRMS (EI) Calcd. for C13H16N2O 216.126, Found 216.127。
工程3:5-[1-(4-メトキシベンジル)-1H-[1,2,3]トリアゾール-4-イル]ペンタン酸(2-アミノフェニル)アミド (I−3) の製造
工程1で得られた4-メトキシベンジルアジド (14) (266 mg)、 工程5で得られた6-ヘプチン酸(2-アミノフェニル) アミド (B-4-1) (95.6 mg)をエタノールに溶解し、水に溶解させた硫酸銅(II)五水和物 (39.1 mg)、アスコルビン酸ナトリウム (56.9 mg) を加え、室温で22時間攪拌した。水を加える事で反応を止め、水層を酢酸エチル (300 mL) で抽出し、有機層を水 (50 mL) 、飽和EDTA水溶液(50 mL) で洗浄し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー (展開溶媒 酢酸エチル:メタノール=30:1) で精製し、粗結晶 (160 mg, 収率95%) を得た。粗結晶をMeOH-AcOEt-CHCl3から再結晶し、表題化合物 (108 mg, 収率 64%)を茶色固体として得た。
mp 144−145 ℃; 1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz, δ; ppm) 9.09 (1H, s), 7.84 (1H, s) 7.26 (2H, d, J = 8.5 Hz), 7.13 (1H, d, J =8.0 Hz), 6.91 (2H, d, J = 9.0 Hz), 6.88 (1H, t, J =7.0 Hz), 6.70 (1H, d, J = 8.0 Hz), 6.52 (1H, d, J = 8.0 Hz), 5.44 (2H, s), 4.78 (2H, s), 3.72 (3H, s), 2.61 (2H, s), 2.33 (2H, s), 1.61 (4H, s); 13C NMR (DMSO-d6, 125 MHz, δ; ppm) 171.02, 159.03, 147.00, 141.84, 129.42, 128.17, 125.66, 125.24, 123.53, 121.61, 116.15, 115.88, 114.07, 55.11, 52.18, 35.45, 28.58, 24.88, 24.78; MS (FAB) m/z 380 (MH+); Anal. Calcd. for C21H25N5O2 : C, 66.47; H, 6.64; N, 18.46. Found: C, 66.10; H, 6.69; N, 18.15。
試験例1(HDACs(HDAC1/2)、HDAC3、HDAC4、HDAC6、HDAC8の阻害活性試験)
実施例1〜3で単離及び精製した化合物I−1〜化合物I−3、SAHA(ボリノスタット)及び3P[(N-(4-メチルベンゾイル)グリシル-N-(2-アミノフェニル)-β-アラニンアミド)]について、HDACs、HDAC3、HDAC4、HDAC6及びHDAC8の阻害活性試験を行った。(1)HDAC3, HDAC6阻害活性の測定
HDAC3, HDAC6阻害活性の測定は、BIOMOL社のHDAC3/NCOR1, HDAC6蛍光アッセイキットを用いて以下の通りに行った。5倍阻害薬(最終濃度100〜0.01 μM)10 μL、HDAC3(最終濃度0.36 ng/μL)15 μLあるいはHDAC6(最終濃度10 ng/μL)15 μLと2倍基質25 μL(最終濃度10 μM)とを混合し、室温で45分反応させた。この反応液にディベロッパーとトリコスタチンAの混合溶液50 μLを添加し、45分反応させた後、プレートリーダーを用いて蛍光強度(蛍光測定波長:460 nm)を測定し、IC50値(酵素活性を50%阻害する阻害薬濃度)を算出した。
(2)HDAC4阻害活性の測定
HDAC4阻害活性の測定は、BPS社のHDAC class 2a蛍光アッセイキットを用いて次の方法により行った。5倍阻害薬(最終濃度100〜0.01 μM)10 μL、HDAC4(最終濃度160 ng/μL)5 μLと2倍基質5 μL(最終濃度10 μM)を混合し、室温で30分反応させた。この反応液にディベロッパーとトリコスタチンAの混合溶液50 μLを添加し、15分反応させた後、プレートリーダーを用いて蛍光強度(蛍光測定波長:460 nm)を測定し、IC50値(酵素活性を50%阻害する阻害薬濃度)を算出した。
(3)HDACs(HDAC1/2), HDAC8阻害活性の測定
HDACs(HDAC1/2), HDAC8阻害活性の測定は、Cyclex社のHDACs, HDAC8蛍光アッセイキットを用いて以下のように行った。5−10倍阻害薬(最終濃度100〜0.001 μM)5 μL、10倍HDACs(Hela細胞核抽出物)10 μLあるいは5倍HDAC8(最終濃度10 ng/μL)10 μLとワンステップアッセイバッファー溶液35 μLあるいはHDAC8アッセイバファー溶液35 μLとを混合し、室温で1時間反応させた。この反応液に、5倍トリコスタチンA 12 μLあるいは2倍ストップ溶液50 μLを添加し、蛍光プレートリーダーを用いて蛍光強度(蛍光測定波長:460 nm)を測定し、IC50値(酵素活性を50%阻害する阻害薬濃度)を算出した。
比較のため、SAHA(ボリノスタット)及び3Pについても同様に試験を行った。
試験結果を表1に示す。
Figure 0005881460
表1より、化合物I−1〜I−3は、3Pよりも高いHDAC3阻害活性を有し、SAHAと同等の高いHDAC3阻害活性を有することが示された。しかも、SAHAがHDAC3だけでなく他のHDACに対しても阻害活性を有するのに対し、化合物I−1〜I−3は高選択的にHDAC3を阻害することが示された。
試験例2(ウエスタンブロッティングによるHDAC3選択性の評価)
HCT-116細胞をMcCoy’5A培地に1.0 x 105 cells/mLの濃度で播種し、CO2インキュベーターで24時間培養した後、SAHA(10, 1 μM)、3P(100, 10 μM)及び化合物I−1(10, 1, 0.1 μM)、化合物I−2(10, 1, 0.1 μM)及び化合物I−3(10, 1, 0.1 μM)を添加し、CO2インキュベーターで8時間処理した。培地を吸引除去し、1 x PBSで細胞を洗浄後、再度上澄みを吸引除去した。1 x SDSバッファーを加え細胞を溶解しさらにすり潰したものを99 ℃で加熱変性処理した。ブラッドフォードプロテインアッセイキット(Bio-Rad Laboratories)を用いて溶解物の蛋白質量を測定し、SDS-サンプルバッファーにより希釈し同一蛋白質量を含む電気泳動サンプルを調製した。続いて、市販のAny kD SDS-ポリアクリルアミドゲル(Bio-Rad Laboratories)にサンプル15 μLをアプライし、電気泳動し、ニトロセルロース膜(Bio-Rad Laboratories)に転写した。ブロッキングバッファー(TBS-Tバッファー、3% スキムミルク)を用いて転写膜を室温で30分処理した後、一次抗体(Acety-NF-kB 一次抗体:CST、1:1000希釈)入りTBSバッファー(3% スキムミルク)中で、4 ℃で一晩インキュベーションした。TBSバッファーで洗浄したのち、2次抗体(sheep anti-rabbit IgG-horseradish peroxidase conjugates:1:1000希釈)入りTBSバッファー(3% スキムミルク)中で振盪しながら室温で1時間半インキュベーションした。TBSバッファー、TBS-Tバッファーで洗浄したのち、化学発光法により観察した。p53とα-Tubulinのアセチル化も同様の方法で行った。
その結果を、図1に示す。これより、HDAC3の基質に相当するNF−κBについては、化合物I−1〜化合物I−3は、濃度1μM及び10μMにおいて強い阻害活性が確認された。一方、HDAC6の基質に相当するα−TubulinやHDAC1/2の基質に相当するp53に対しては、いずれの濃度でも阻害活性を示さないことが確認された。よって、この評価結果より、化合物I−1〜化合物I−3は、細胞内で選択的なHDAC3阻害活性を有することが示された。
NF−κBは免疫反応において中心的な役割を示す転写因子であり、炎症反応やアポトーシス等の様々な生理現象に関与している。そのため、化合物I−1〜化合物I−3は、HDAC3を阻害してNF−κBをアセチル化して、NF−κBの活性を調節することにより、抗炎症効果が発揮される。
また、NF−κBはHIV−1 LTRに結合することができHIV−1の転写制御に関与することが報告されている(EMBO Journal 25 (2006) 139-149)。そのため、化合物I−1〜化合物I−3は、NF−κBをアセチル化することでNF−κBの活性を調節することにより、抗HIV薬として用いることもできる。
試験例3(MTTアッセイ試験)
実施例1〜3で単離及び精製した化合物I−1〜化合物I−3、SAHA(ボリノスタット)及び3Pについて、MTTアッセイ試験を行った。
MTTアッセイとは、MTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウム ブロミド)をホルマザン色素に還元する、細胞ミトコンドリア内脱水素酵素活性を測定する方法であり、570nmでの吸光度を測定することで、ホルマザンの生成量から培養細胞の存在率を測定した。
Figure 0005881460
HCT−116細胞を、McCOY's 5A培地の96ウェルプレートに、5000細胞/ウェル(50μL/well)の初期濃度で固定し、終夜にて付着させた。その細胞に、SAHA(30, 10, 3, 1, 0.3 μM)、3P(100, 30, 10, 3, 1 μM)、化合物I−1(100, 30, 10, 3, 1 μM)、化合物I−2(100, 30, 10, 3, 1 μM)又は化合物I−3(100, 30, 10, 3, 1 μM)を加え、さらに5% CO2インキュベーターにて37℃で48時間インキュベートした。MTTの5 mg/mL溶液を加えて(10μL/well)、3時間細胞とともにインキュベートし、可溶化バッファー(0.04 mol/L HCl-イソプロパノール)を、培養細胞に加えた(100μL/well)。色差計(波長570nm)により570nmを読み取って、可溶化色素(ホルマザン)を定量した。コントロールwellと試験wellの吸光度を測定した。その結果を図2に示す。
更に、上記の結果を下記数1の式に当てはめて、各wellの吸光度を百分率で算出した。算出された3つの値の平均とその標準偏差を算出し、増殖曲線グラフを作成し、さらに増殖曲線グラブよりGI50値を読み取った。その結果を、表2に示す。
Figure 0005881460
Figure 0005881460
表2より、化合物I−1〜化合物I−3は、3Pに比べてより高いHCT-116細胞の増殖抑制作用を有することが確認された。また、化合物I−1及び化合物I−2は、SAHAと同等以上の高いHCT-116細胞増殖抑制作用を有することが確認された。
HDAC3は、結腸癌細胞で過剰発現していることが報告されている(Molecular Carcinogenesis 47 (2008) 137-147.)。HCT-116細胞も結腸癌細胞の1つであり、HDAC3の発現レベルが高いことが知られている(The Journal of Biological Chemistry 281 (2006) 13548-13558)。そのため、上記の結果より、化合物I−1〜化合物I−3が結腸癌細胞の増殖抑制効果があることが示された。特に、化合物I−1及び化合物I−2は、SAHAと同等以上の高い活性を有することが示された。
試験例4(HDACs及びHDAC3の阻害活性試験)
表3に示す化合物I−1〜化合物I−12、SAHA(ボリノスタット)及び3Pについて、HDACs及びHDAC3の阻害活性試験(10μM)を行った。試験は、試験例1に記載した方法と同様にして実施した。なお、阻害活性(%)は数2に従って算出した値である。その結果を、表3に示す。
Figure 0005881460
化合物I−1〜化合物I−3は実施例1〜3で製造したものを用いて阻害活性試験に供した。化合物I−4〜化合物I−12は次に示すように96ウェルプレート上で調製し単離精製せずに阻害活性試験に供した。
[化合物I−4〜化合物I−12の製法]
96ウェルプレート上で25 mMアルキン化合物のDMSO溶液20 μL (最終濃度5 mM)、35 mMアジド化合物のDMSO溶液20 μL (最終濃度7 mM)、10 mMトリス[(1-ベンジル-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)メチル]アミン(TBTA) DMSO溶液 10 μL (最終濃度20 mol%)、4 mM硫酸銅(II)五水和物水溶液25 μL (最終濃度20 mol%) を混合し、最後に20 mMアスコルビン酸ナトリウム水溶液25 μL (最終濃度100 mol%) を加え、室温で3日攪拌し、薄層クロマトグラフィーによりアルキンの消失及びプロダクトの生成を確認し、化合物I−4〜化合物I−12の合成を完了した。
上記製法の原料であるアルキン化合物及びアジド化合物は、以下の様にして製造した。
2-アジドアセトフェノンの製造:
3-ニトロフェネチルブロマイド (7)の代わりに2-ブロモアセトフェノン(1.06 g) を用い、実施例2と同様の方法により表題化合物 (452 mg、収率53%)を黄色オイルとして得た。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz, δ; ppm) 7.93-7.90 (2H, m), 7.65-7.61 (1H,m), 7.52- 7.49 (2H, m), 4.57 (2H, s); 13C NMR (CDCl3, 125 MHz, δ; ppm) 193.19, 134.41, 134.15, 129.00, 127.95, 54.90; MS (EI) m/z 133 (M+-28)。
1-アジドメチルナフタレンの製造:
3-ニトロフェネチルブロマイド (7)の代わりに1-クロロメチルナフタレン(1.00 g) を用い、実施例2と同様の方法により表題化合物 (948 mg、収率91%)を淡黄色オイルとして得た。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz, δ; ppm) 8.01 (1H, d, J =8.2 Hz), 7.88-7.83 (2H,m), 7.58- 7.50 (2H, m), 7.46-7.42 (2H, m), 4.74 (2H, s); 13C NMR (CDCl3, 500 MHz, δ; ppm) 133.87, 131.32, 130.93, 129.39, 128.77, 127.23, 126.69, 126.12, 125.17, 123.442, 52.97; HRMS (EI) Calcd. for C11H9N3183.080, Found 183.080。
(2-アジドエチル)シクロヘキサンの製造:
2-シクロヘキサンエタノール(1.18 g)をピリジン(10 mL)に溶解し、氷冷下、TsCl(2.69 g)を加え、反応液を室温で7時間撹拌した。溶媒を減圧下で濃縮後、残渣に酢酸エチル(50mL)を加え、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)、1N塩酸水溶液(50mL)、飽和食塩水(50 mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、減圧濃縮し、対応するトシル体を得た。次いでトシル体に0.5Mアジ化ナトリウムDMSO溶液(22.4 mL)を加え、80℃で22時間撹拌した。氷冷下で水(50 mL)を加え、反応液を酢酸エチル(100mL)で抽出した。有機層を水(100mL)、飽和食塩水(100mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(展開溶媒n-ヘキサン:酢酸エチル=30:1)で精製し、表題化合物(779mg, 収率55%, 2steps)を淡黄色オイルとして得た。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz, δ; ppm) 3.29 (2H, t, J =7.2 Hz), 1.72-1.61 (5H,m), 1.50 (2H, q, J= 7.1 Hz), 1.38-1.37 (1H, m), 1.28-1.11 (3H, m), 0.951 (2H, m); 13C NMR (CDCl3, 125 MHz, δ; ppm) 49.20, 36.05, 35.00, 33.02, 26.44, 26.14; FTIR (neat, cm-1) 2090。
3-フルオロフェネチルアジドの製造:
3-ニトロフェネチルブロマイド (7)の代わりに3-フルオロフェネチルブロマイド(1.13 g) を用い、実施例2と同様の方法により表題化合物 (872 mg、収率95%)を無色オイルとして得た。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz, δ; ppm) 7.31-7.26 (1H,m), 7.01- 6.93 (3H, m), 3.52 (2H, t, J = 7.3 Hz), 2.89 (2H, t, J = 7.3 Hz); 13C NMR (CDCl3, 125 MHz, δ; ppm) 162.96, 140.54, 130.12, 124.42, 115.69, 113.75, 52.13, 35.09; FTIR (neat, cm-1) 2090; MS (EI) m/z 137 (M+-28)。
2-メチルフェネチルアジドの製造:
3-ニトロフェネチルブロマイド (7)の代わりに2-メチルフェネチルブロマイド(1.10 g) を用い、実施例2と同様の方法により表題化合物 (847 mg、収率95%)を無色オイルとして得た。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz, δ; ppm) 7.16 (4H, s), 3.47 (2H, t, J = 7.6 Hz), 2.91 (2H, t, J = 7.6 Hz), 2.34 (3H, s); 13C NMR (CDCl3, 125 MHz, δ; ppm) 136.20, 136.07, 130.48, 129.34, 126.96, 51.44, 32.62, 19.31; FTIR (neat, cm-1) 2090; MS (EI) m/z 133 (M+-28)。
4-フルオロフェネチルアジドの製造:
3-ニトロフェネチルブロマイド (7)の代わりに4-フルオロフェネチルブロマイド(1.09 g) を用い、実施例2と同様の方法により表題化合物 (839 mg、収率95%)を無色オイルとして得た。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz, δ; ppm) 7.19-7.17 (2H,m), 7.01 (2H, t, J = 8.7 Hz), 3.49 (2H, t, J = 7.3 Hz), 2.86 (2H, t, J = 7.3 Hz); 13C NMR (CDCl3, 125 MHz, δ; ppm) 161.83, 133.72, 130.22, 115.49, 52.51, 34.58; FTIR (neat, cm-1) 2090; HRMS (EI) Calcd. for C8H8N3F 165.070, Found 165.070。
2-メトキシフェネチルアジドの製造:
3-ニトロフェネチルブロマイド (7)の代わりに2-メトキシフェネチルブロマイド(1.00 g) を用い、実施例2と同様の方法により表題化合物 (590 mg、収率72%)を淡黄色オイルとして得た。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz, δ; ppm) 7.24 (1H, dt, J = 1.8, 5.9 Hz), 7.16 (2H, dd, J = 1.5, 5.8 Hz), 6.91 (1H, dt, J = 1.2, 6.2 Hz), 6.86 (1H, d, J =8.2 Hz), 3.83 (3H, s), 3.47 (2H, t, J = 7.6 Hz), 2.92 (2H, t, J = 7.6 Hz); 13C NMR (CDCl3, 125 MHz, δ; ppm) 157.57, 130.61, 128.17, 126.23, 120.56, 110.35, 55.24, 50.97, 30.34; FTIR (neat, cm-1) 2090; HRMS (EI) Calcd. for C9H11ON3177.090, Found 177.090。
3-メトキシフェネチルアジドの製造:
3-ニトロフェネチルブロマイド (7)の代わりに3-メトキシフェネチルブロマイド(796 mg) を用い、実施例2と同様の方法により表題化合物 (581 mg、収率89%)を無色オイルとして得た。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz, δ; ppm) 7.24 (1H, t, J = 7.9 Hz), 6.82-6.76 (3H, m), 3.81 (3H, s), 3.50 (2H, t, J = 7.3 Hz), 2.87 (2H, t, J = 7.3 Hz); 13C NMR (CDCl3, 125 MHz, δ; ppm) 159.83, 139.61, 129.66, 121.07, 114.62, 112.05, 55.20, 52.38, 35.40); FTIR (neat, cm-1) 2090; HRMS (EI) Calcd. for C9H11ON3177.090, Found 177.091。
3-フェニルベンジルアジドの製造:
3-ニトロフェネチルブロマイド (7)の代わりに3-フェニルベンジルブロマイド (1.00 g) を用い、実施例2の工程1と同様の方法により表題化合物 (662 mg、収率78 %)を白色固体として得た。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz, δ; ppm) 7.59-7.52 (4H, m), 7.46-7.42 (3H, m), 7.37-7.34(1H, m), 7.29 (1H, d, J = 7.6 Hz), 4.39 (2H,s); 13C NMR (CDCl3, 500 MHz, δ; ppm) 141.95, 140.66, 135.94, 129.28, 128.84, 127.56, 127.20, 127.14, 127.00, 126.98, 54.87; HRMS (EI) Calcd. for C13H11N3209.095, Found 209.096。
4-ペンチン酸(2-アミノフェニル) アミド (B-2-1) の製造:
6-ヘプチン酸 (15)の代わりに4-ペンチン酸(437 mg) を用い、実施例3の工程2と同様の方法により表題化合物 (400 mg、収率56 %)を白色固体として得た。
1H NMR (CD3OD, 500 MHz, δ; ppm) 7.07 (1H, d, J = 8.0 Hz), 7.02 (1H, t, J = 7.5 Hz), 6.83 (1H, d, J = 7.8 Hz), 6.70 (1H, t, J = 7.5 Hz), 2.63-2.57 (4H, m), 2.34- 2.33 (1H, m); HRMS (EI) Calcd. for C11H12N2O 188.095, Found 188.095。
Figure 0005881460
表3より、化合物I−1〜化合物I−12は、10μMにおいて、3Pと比較して高いHDAC3阻害活性を有し、かつ、SAHAと比較して高選択的にHDAC3を阻害することが確認された。

Claims (3)

  1. 式I−1又はI−2で表される化合物又はその塩。
    Figure 0005881460
  2. 前記請求項1に記載の化合物又はその塩を含有する医薬。
  3. 前記請求項1に記載の化合物又はその塩を含有するHDAC3阻害剤。
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