ヒートポンプ式冷暖房システムとしては、圧縮機、凝縮器、蒸発器、膨張弁及び冷媒流路切換(反転)用の四方弁を備えたものが知られている。
一方、車両用(例えば電気自動車用)のヒートポンプ式冷暖房システムとして、例えば特許文献1の図1に見られるように、冷媒の流れを反転させず、また冷房用膨張弁及び暖房用膨張弁を個別に備えたシステムが提案されている。
このようなシステムでは冷媒の流れを反転させないので、例えば同文献の図1に示される暖房用膨張弁(符号24)に着目すると、この暖房用膨張弁に対して並列に冷房用電磁弁(符号26)が設けられ、暖房時には冷房用電磁弁を閉じて暖房用膨張弁により冷媒を絞り、冷房時には冷房用電磁弁を開として暖房用膨張弁の入出口をバイパスさせ、該膨張弁に冷媒の絞りを行わせない構成となっている。
ところで、これらの膨張弁及びバイパス用の電磁弁を冷房用及び暖房用にそれぞれ設けると、システムが大型化するとともに、配管組付コスト等が高くなり、さらに消費電力も大きくなる等のおそれがある。
そこで、これらの機能を一つの電動弁で達成することが考えられる。すなわち、例えば暖房時には電動弁により冷媒を絞り、冷房時には電動弁を全開とすればよいことになる。
ここで、図11を用いて従来の電動弁の一例を説明する。
図示例の電動弁1’は、下側軸部25aと上側小径軸部25bを有する弁軸25と、弁室41を有する弁本体40と、この弁本体40にその下端部が密封接合されたキャン60と、このキャン60の内周に所定の間隙αをあけて配在されたロータ30(回転軸線O)と、このロータ30を回転駆動すべく前記キャン60に外嵌されたステータ50Aと、を備えている。
前記弁軸25は、その下側軸部25aの下端部に特定形状(それぞれ所定の中心角を持つ二段の逆円錐台状)の弁体部44が一体に設けられており、本電動弁1’では、この弁体部44のリフト量を変化させることにより冷媒の通過流量を制御するようになっている。
前記弁本体40の弁室41には、その下部に前記弁体部44が接離する弁口(オリフィス)43付き弁座42が設けられるとともに、その側部に第1入出口5’が開口せしめられ、また、弁本体40の下部には、前記弁口43に連なって第2入出口6’が設けられている。
前記ステータ50Aは、ヨーク51、ボビン52、ステータコイル53、及び樹脂モールドカバー56等で構成され、前記ロータ30やステータ50A等でステッピングモータ50が構成され、該ステッピングモータ50や後述する送りねじ(雌ねじ部38、雄ねじ部48)等で前記弁口43に対する弁体部44のリフト量(=開度)を調整するための昇降駆動機構が構成される。
前記ロータ30には、支持リング36が一体的に結合されるとともに、この支持リング36に、ガイドブッシュ46の外周に配在された下方開口で筒状の弁軸ホルダ32の上部突部が例えばかしめ固定され、これにより、ロータ30、支持リング36及び弁軸ホルダ32が一体的に連結されている。
また、弁本体40の上部に設けられた嵌合穴49には、筒状のガイドブッシュ46の下端部46aが圧入固定され、このガイドブッシュ46には弁軸25(の下側軸部25a)が摺動自在に内挿されている。また、前記ロータ30の回転を利用して前記弁軸25(弁体部44)を昇降させるべく、前記ガイドブッシュ46の外周に雄ねじ部48が形成され、前記弁軸ホルダ32の内周には雌ねじ部38が形成されており、それら雄ねじ部48と雌ねじ部38とで送りねじが構成されている。
また、前記ガイドブッシュ46の上部小径部46bが弁軸ホルダ32の上部に内挿されるとともに、弁軸ホルダ32の天井部中央(に形成された通し穴)に弁軸25の上側小径軸部25bが挿通せしめられている。弁軸25の上側小径軸部25bの上端部にはプッシュナット33が圧入固定されている。
また、前記弁軸25は、該弁軸25の上側小径軸部25bに外挿され、かつ、弁軸ホルダ32の天井部と弁軸25における下側軸部25aの上端段丘面との間に縮装された圧縮コイルばねからなる閉弁ばね34によって、常時下方(閉弁方向)に付勢されている。弁軸ホルダ32の天井部上でプッシュナット33の外周には、弁軸25が開弁方向に移動して雌ねじ部38及び雄ねじ部48の螺合が外れた場合にこれを復帰させるためのコイルばねからなる復帰ばね35が設けられている。
前記ガイドブッシュ46には、前記ロータ30が所定の閉弁位置まで回転下降せしめられた際、それ以上の回転下降を阻止するための回転下降ストッパ機構の一方を構成する下ストッパ体(固定ストッパ)47が固着され、弁軸ホルダ32には前記ストッパ機構の他方を構成する上ストッパ体(移動ストッパ)37が固着されている。
なお、前記閉弁ばね34は、弁体部44が弁口43に着座する閉弁状態において所要のシール圧を得るため(漏れ防止)、及び、弁体部44が弁口43に衝接した際の衝撃を緩和するために配備されている。
このような構成とされた電動弁1’にあっては、モータ50(ステータ50A)に第1態様で通電励磁パルスを供給することにより、弁本体40に固定されたガイドブッシュ46に対し、ロータ30及び弁軸ホルダ32が一方向に回転せしめられ、ねじ部48、38のねじ送りにより、例えば弁軸ホルダ32が下方に移動して弁体部44が弁座42に押し付けられて弁口43が閉じられる。
弁口43が閉じられた時点では、上ストッパ体37は未だ下ストッパ体47に衝接しておらず、弁体部44が弁口43を閉じたままロータ30及び弁軸ホルダ32はさらに回転下降する。この場合、弁軸25(弁体部44)は下降しないが、弁軸ホルダ32は下降するため、閉弁ばね34が所定量圧縮せしめられ、その結果、弁体部44が弁座43に強く押し付けられるとともに、弁軸ホルダ32の回転下降により、上ストッパ体37が下ストッパ体47に衝接し、その後ステータ50Aに対するパルス供給が続行されても弁軸ホルダ32の回転下降は強制的に停止される(全閉状態)。
一方、この全閉状態からステータ50Aに第2態様で通電励磁パルスを供給すると、弁本体40に固定されたガイドブッシュ46に対し、ロータ30及び弁軸ホルダ32が前記と逆方向に回転せしめられ、ねじ部48、38のねじ送りにより、今度は弁軸ホルダ32が上方に移動する。この場合、弁軸ホルダ32の回転上昇開始時点(パルス供給開始時点)では、閉弁ばね34が前記のように所定量圧縮せしめられているので、閉弁ばね34が前記所定量分伸長するまでは、前記弁体部44が弁座42からは離れず閉弁状態(リフト量=0)のままである。そして、閉弁ばね34が前記所定量分伸長した後、弁軸ホルダ32がさらに回転上昇せしめられると、前記弁体部24が弁座42から離れて弁口43が開かれ、冷媒が弁口43を通過する。
この場合、ロータ30の回転量により弁体部44のリフト量、言い換えれば、弁口43の実効開口面積(=開度)を任意にきめ細かく調整することができ、ロータ30の回転量は供給パルス数により制御されるため、冷媒流量を高精度に制御することができる。
したがって、かかる構成の電動弁1’を、前述した特許文献1に示される膨張弁及びバイパス用電磁弁の両機能を有する電動弁として採用する場合には、例えば、冷房運転時には、バイパス用電磁弁として機能させるべく圧力損失を可及的に低減するように最大開度(最大リフト量)とし、暖房運転時には、膨張弁として機能させるべくその開度(リフト量)を調整し、弁開度すなわち冷媒流量をきめ細かく制御するようにされる。
ところが、当該電動弁1’では、小流量領域における流量制御精度の向上と制御可能流量の増大化とは二律背反するものとなる。すなわち、当該電動弁1’を膨張弁として機能させるには、小流量領域において高い流量制御精度を確保する必要があり、それには、流量制御の分解能を高くすることが要求されるので、弁口径(実効開口面積)をなるべく小さくすることが必要となる。それに対し、バイパス用電磁弁として機能させるには、圧力損失を可及的に抑えることが要求されるので、弁口径をさほど小さくする(配管系の実効通路断面積より小さくする)ことはできない。言い換えれば、弁口径を小さくすると、小流量領域における流量制御精度は高くできるが、システム中に流す冷媒の流量(制御可能流量)を増大させようとすると、弁開度を最大にしても弁口部分が抵抗となって圧力損失が大きくなり、逆に、弁口径を大きくすると、制御可能流量の増大化(圧力損失の低減化)は図れるものの、小流量領域での流量制御精度が低下し、加えて、弁口径に合わせて弁体等を大きくしなければならず、弁体の駆動に大きなトルクが必要となり、大型化、消費電力の増大等を招くおそれがある。
さらに、小流量領域における流量制御精度の向上を図るべく分解能を高く(例えばロータ1回転あたりの弁体リフト量を小さく)すると、小流量制御状態から全開(流路バイパス状態)に至るまでに長時間を要し、また、小流量制御時の開口隙間(弁体部と弁口壁面との間の隙間)が非常に狭くなって、その隙間に異物等が噛み込まれて詰まるおそれがある。
そこで、小流量領域における流量制御精度の向上と制御可能流量の増大化(圧力損失の低減化)との両立、小流量制御状態から全開状態に至るまでの所要時間の短縮化、及び消費電力の低減化等を図るべく、下記特許文献2には、パイロット式の大流量用第1制御弁(第1弁体、第1弁口)と小流量用第2制御弁(第2弁体、第2弁口)を設けること、より詳細には、ピストン型の第1弁体により大口径の第1弁口を開閉し、該第1弁体とは別体の、前記弁軸(25)の下部に設けられたニードル型の第2弁体により小口径の第2弁口を開閉するようになし、かつ、前記小流量用第2制御弁を大流量用第1制御弁のパイロット弁としても働かせるようにした複合弁が開示されている。
この複合弁では、前記弁軸(第2弁体)のリフト量が所定量以下のとき(第2制御弁開度が所定値以下のとき)は、第1弁体が第1弁口を閉じ、第2弁体により小流量用第2制御弁開度が制御される小流量制御状態となる。このときは、第2弁体のリフト量(第2制御弁開度)に応じた量の冷媒が、流入口→第1弁室→第1弁体外周面と第1弁室壁面との間に形成される摺動面間隙→背圧室→パイロット通路→第2弁室→第2弁口→流出通路→流出口へと流れる。そして、前記弁軸(第2弁体)のリフト量が前記所定量を超えると、背圧室から第2弁口を介して流出する冷媒量が小流量制御時より増加し、背圧室の圧力が下がり、やがて第1弁体に作用する閉弁力より開弁力の方が大きくなって第1弁体が第1弁口を開き、冷媒が流入口→第1弁室→第1弁口→流出口へと流れる大流量制御状態となる。
このように、第1弁体により大口径の第1弁口を開閉し、第2弁体により小口径の第2弁口を開閉するようになし、かつ、第2弁体を大流量用第1制御弁のパイロット弁としても働かせるようにすることにより、一応は小流量領域の流量制御精度の向上と制御可能流量の増大化(圧力損失の低減化)との両立や消費電力の低減化等を図ることができる。
しかしながら、前記特許文献2に所載の複合弁では、単一の小流量用第2制御弁に小流量領域用の制御弁と大流量用第1制御弁に対するパイロット弁の役目を担わせているため、次のような問題を生じるおそれがある。すなわち、小流量制御から大流量制御に切り換えるには、小流量用第2制御弁を通過する冷媒流量を小流量制御時より大幅に増大させる必要があるため、第2弁口の口径(実効開口面積)等を、小流量制御に必要とされる口径等よりも相当大きく設定する必要がある。そのため、動作負荷の増大、駆動部(モータ部分)や弁本体の大型化を招きやすくなり、また、小流量用第2制御弁の寸法形状等を小流量制御に最適なものに設定できず、小流量制御時の流量制御精度をさほど高くすることができない等の問題があった。
さらに、大流量用第1制御弁の開閉が、微妙に変化する第2弁体のリフト量に依存しているため、大流量用第1制御弁の開閉が所望のタイミングで行われないことが少なからずあり、また、小流量制御時においては、冷媒が第1弁体の摺動面間隙→背圧室→パイロット通路を介して流されるので、冷媒中に混入した微小異物による作動不良(例えば前記摺動面間隙に微小異物を噛み込んで第1弁体がロックしてしまうこと等)を引き起こやすいといった問題もある。
そこで、本願の発明者等は、上記問題を解消すべく、先に、特許文献3に所載の如くの複合弁を提案している。この複合弁は、ピストン型の第1弁体と、ニードル型の第2弁体が設けられた弁軸と、該弁軸を昇降させるための昇降駆動手段と、前記弁軸の昇降動作を利用して開閉駆動されるパイロット弁体と、流入口及び流出口が設けられた弁本体と、を備え、前記弁本体における前記流入口と流出口との間に、前記第1弁体が摺動自在に嵌挿されるとともに、該第1弁体により背圧室と第1弁室とに仕切られた嵌挿室と、前記第1弁室に開口する第1弁口と、前記パイロット弁体及び第2弁体が昇降可能に配在された第2弁室と、前記流入口ないし第1弁室と前記第2弁室とを連通する第2弁口と、前記背圧室と前記第2弁室とを連通するパイロット通路と、が設けられ、前記第2弁体のリフト量が所定量以下のときは、前記パイロット弁体により前記パイロット通路が閉じられるとともに、前記第1弁体により前記第1弁口が閉じられ、前記第2弁体のリフト量に応じて流量が制御される小流量制御状態をとり、前記第2弁体のリフト量が前記所定量を超えると、前記弁軸の上昇に伴って前記パイロット弁体が上昇せしめられて前記パイロット通路を開き、これに伴い前記第1弁体が前記第1弁口を開く大流量制御状態をとるように構成されている。
かかる提案の複合弁では、小流量用の第2弁体は、大流量用の第1弁体を開閉駆動するためのパイロット弁体とは別体とされており、この第2弁体が所定量リフトするまでは該第2弁体により小流量制御が行われ、第2弁体が所定量以上リフトせしめられると、パイロット弁体が引き上げられてパイロット通路が開通し、これによって第1弁体が開動するようにされているので、小流量用第2制御弁の寸法形状等を小流量制御に最適なものに設定することができるとともに、大流量用第1制御弁の開閉を所望のタイミングで確実に行うことができ、さらに、作動不良を引き起こし難くできる等の優れた効果を奏する。
しかしながら、前記先提案の複合弁においては、次のような改善すべき課題があった。
まず、かかる複合弁の主要部の具体的な構成例を図9(A)に示す。図示のように、弁軸125における第2弁体124より上側には、平らな円環状下端面127sを持つ大径円筒部127bと小径円筒部127aとを備えた断面凸字状外形のパイロット弁体127の上辺部127c(の中央挿通穴127d)が摺動自在に外挿されている。
パイロット弁体127は、弁本体110に形成された第2弁室121の内壁を摺動するように設けられており、また図11に示された弁本体40の上部に相当するブッシュ保持体128が前記第2弁室121を覆うように、弁本体40に螺合固定されている。ブッシュ保持体128は、ガイドブッシュ46の下端部46aを保持している。
このパイロット弁体127は、図には現れていない第1弁体を開閉動させるべく、その円環状下端面127sを第2弁室121の底面121b(パイロット通路119の上端開口縁部)に離接させることにより、第1弁体の背後に形成された背圧室116と第2弁室121とを連通するパイロット通路119(の上端開口)を開閉するもので、凹穴107内に大径円筒部127bが摺動自在に嵌挿されるとともに、圧縮コイルばねからなるパイロット閉弁ばね126により下方に付勢されている。該パイロット弁体127は、図9(A)、図10(A)を参照すればよくわかるように、図示されていないステッピングモータによって回転しながら昇降せしめられる弁軸125のリフト量が所定量Tcに達すると、弁軸125に設けられた鍔状引っ掛け部125gが上辺部127cに接当し、弁軸125のリフト量が所定量Tcを越えると、図10(B)に示される如くに、パイロット弁体127は弁軸125の鍔状引っ掛け部125gによりパイロット閉弁ばね126の付勢力に抗して引き上げられてパイロット通路119を開くようにされている。
上記のように先提案の複合弁では、パイロット弁体127の平らな円環状下端面127sを第2弁室121の平らな底面121b(パイロット通路119の上端開口縁部)に離接させることにより、パイロット通路119(の上端開口)を開閉するようにされている。このため、閉弁状態においては、大流量用制御弁の背圧室の圧力がパイロット通路119を通じてパイロット弁体127の円環状下端面127sの一部に集中して作用することになり、パイロット弁体127が傾きやすく、パイロット弁体127が傾くと、図9(B)に示される如くに、パイロット弁体127の円環状下端面127sと第2弁室121の底面121bとの間に隙間βが生じ、パイロット通路119を通じて背圧室の圧力が第2弁室121側に抜け、第1弁体が不所望に開動してしまう等の不具合が発生しやすくなる。
また、パイロット弁体127の円環状下端面127sを第2弁室121の底面121b(パイロット通路119の上端開口縁部)に面接触させるより、パイロット通路119(の上端開口)を閉じる構成であるので、シール面(円環状下端面127sと底面121b)の接触圧が弱く、所要のシール性が得られ難い。この場合、シール性を高めるには、パイロット閉弁ばね126のばね荷重を大きくする、シール面の加工精度を高くする等の方策が考えられるが、いずれの場合もコスト面等で問題がある(パイロット閉弁ばね126のばね荷重を大きくすると、パイロット弁体127を上下動させるためには駆動トルクの大きなモータを採用する必要があり、また、シール面の加工精度を高くするにはそれなりのコストがかかる)。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、小流量領域における流量制御精度の向上と制御可能流量の増大化(圧力損失の低減化)との両立を図るべく、パイロット式の大流量用第1制御弁と、小流量用第2制御弁と、大流量用第1制御弁に対するパイロット弁とを備え、小流量用第2制御弁の寸法形状等を小流量制御に最適なものに設定することができるとともに、大流量用第1制御弁の開閉を所望のタイミングで確実に行うことができ、かつ、パイロット弁におけるシール性を高めることができるとともに、パイロット通路が不所望に開かれることを確実に防止でき、もって、信頼性を高めることができるとともに、コストアップ、大型化、消費電力の増大等を可及的に抑えることのできる複合弁を提供することにある。
前記の目的を達成すべく、本発明に係る一つの複合弁は、基本的には、ピストン型の第1弁体と、ニードル型の第2弁体が設けられた弁軸と、該弁軸を昇降させるための昇降駆動手段と、前記弁軸の昇降動作を利用して開閉駆動されるパイロット弁体と、流入口及び流出口が設けられた弁本体と、を備え、前記弁本体における前記流入口と流出口との間に、前記第1弁体が摺動自在に嵌挿されるとともに、該第1弁体により背圧室と第1弁室とに仕切られた嵌挿室と、前記第1弁室に開口する第1弁口と、前記パイロット弁体及び第2弁体が昇降可能に配在された第2弁室と、前記流入口ないし第1弁室と前記第2弁室とを連通する第2弁口と、前記背圧室と前記第2弁室とを連通すべく、その上端が前記第2弁室の底面に開口するパイロット通路と、が設けられ、前記第2弁体のリフト量が所定量以下のときは、前記パイロット弁体により前記パイロット通路が閉じられるとともに、前記第1弁体により前記第1弁口が閉じられ、前記第2弁体のリフト量に応じて流量が制御される小流量制御状態をとり、前記第2弁体のリフト量が前記所定量を超えると、前記弁軸の上昇に伴って前記パイロット弁体が上昇せしめられて前記パイロット通路を開き、これに伴い前記第1弁体が前記第1弁口を開く大流量制御状態をとるように構成された複合弁であって、前記パイロット弁体は、弁体部材と、該弁体部材を前記パイロット通路の開口縁部に接離させるべく、ばね部材により下方に付勢され、かつ、前記第2弁体のリフト量が前記所定量からさらに増大せしめられると、前記弁軸に設けられた引っ掛け部により前記ばね部材の付勢力に抗して引き上げられるようにされた弁体押さえ部材と、を備えていることを特徴としている。
本発明に係る他の一つの複合弁は、基本的には、ピストン型の第1弁体と、ニードル型の第2弁体が設けられた弁軸と、該弁軸を昇降させるための昇降駆動手段と、前記弁軸の昇降動作を利用して開閉駆動されるパイロット弁体と、流入口及び流出口が設けられた弁本体と、を備え、前記弁本体における前記流入口と流出口との間に、前記第1弁体が摺動自在に嵌挿されるとともに、該第1弁体により背圧室と第1弁室とに仕切られた嵌挿室と、前記第1弁室に開口する第1弁口と、前記パイロット弁体及び第2弁体が昇降可能に配在された第2弁室と、前記流入口ないし第1弁室と前記第2弁室とを連通する連通路と、前記第2弁室と前記流出口とを連通する第2弁口と、前記背圧室と前記流出口とを連通するパイロット通路と、が設けられ、前記第2弁体のリフト量が所定量以下のときは、前記パイロット弁体により前記パイロット通路が閉じられるとともに、前記第1弁体により前記第1弁口が閉じられ、前記第2弁体のリフト量に応じて流量が制御される小流量制御状態をとり、前記第2弁体のリフト量が前記所定量を超えると、前記弁軸の上昇に伴って前記パイロット弁体が上昇せしめられて前記パイロット通路を開き、これに伴い前記第1弁体が前記第1弁口を開く大流量制御状態をとるように構成された複合弁であって、前記パイロット弁体は、弁体部材と、該弁体部材を前記パイロット通路の開口縁部に接離させるべく、ばね部材により下方に付勢され、かつ、前記第2弁体のリフト量が前記所定量からさらに増大せしめられると、前記弁軸に設けられた引っ掛け部により前記ばね部材の付勢力に抗して引き上げられるようにされた弁体押さえ部材と、を備えていることを特徴としている。
好ましい態様では、前記弁体部材を上方に付勢するばね部材が設けられる。
他の好ましい態様では、前記弁体部材は、前記パイロット通路の開口縁部に接離するシール面が球面、楕球面、又は円錐面の前記開口縁部に対して線接触する曲面で構成される。
他の好ましい態様では、前記弁体部材は、前記パイロット通路の開口縁部に接離せしめられるボールと該ボールを抱持する保持体とで構成される。
他の好ましい態様では、前記第1弁体に、前記第1弁室と前記背圧室とを連通する均圧孔が設けられる。
他の好ましい態様では、前記第1弁体は横向き、前記第2弁体は縦向きに配在される。
別の好ましい態様では、前記第1弁体と前記第2弁体とは共に縦向きに配在されるとともに、相互に所定距離だけ横方向に離隔せしめられる。
前記昇降駆動手段は、好ましくは、前記弁軸を回転させながら昇降させるようにされる。
本発明に係る複合弁では、大流量用第1制御弁(第1弁体、第1弁口)と小流量用第2制御弁(第2弁体、第2弁口)とに加えて、第2弁体とは別体のパイロット弁体を備え、このパイロット弁体を弁軸の昇降動作を利用して開閉駆動するようにされているので、小流量用第2制御弁(第2弁体、第2弁口)の寸法形状等を小流量制御に最適なものに設定することができるとともに、大流量用第1制御弁の開閉を所望のタイミングで確実に行うことができ、さらに、小流量制御時には、冷媒を従来のもののように摺動面間隙等の狭小部分を通すことなく流すようにされているので作動不良を引き起こし難くでき、その結果、動作負荷の増大、駆動部(モータ部分)や弁本体の大型化を招くことなく、小流量領域の流量制御精度の向上と制御可能流量の増大化(圧力損失の低減化)との両立を図ることができる。
それに加えて、本発明の複合弁では、パイロット弁体を、弁体部材と該弁体部材とは別体の弁体押さえ部材とに分割して、それらをばね部材で付勢することによって一体的に上下動させるように構成しているので、たとえ弁体押さえ部材が傾いてもその傾きが弁体部材には伝わり難く、弁体部材に悪影響を及ぼし難くなる。しかも、パイロット通路の開口縁部に接離する部分(シール部)を球面等で構成すれば、弁体部材が傾いても、従前のもののように不所望な隙間が発生することはなく、また、シール部か従前のもののように面接触ではなく線接触となるため、その接触圧が高くなり、それらによってシール性が格段に向上し、閉弁ばねのばね荷重をさほど大きくせずとも、また、シール部の加工精度をさほど高くせずとも、漏れを確実に抑えることができる。
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1、図5、図7は、本発明に係る複合弁の一実施例を示す切欠縦断面図であり、各図は異なる動作状態を示している。また、図2(A)は、図1(大流量用第1制御弁:閉状態)のX−X矢視断面図、図2(B)は、図7(大流量用第1制御弁:開状態)のY−Y矢視断面図である。図示実施例の複合弁1のステッピングモータ50部分の内部構成は、図11に示される従来の電動弁1’のものとほぼ同じであるので、該部分は外形のみを表わしている。また各図において、図9〜図11と同一の符号は、同一又は同等部分を示している。
図示第1実施例の複合弁1は、小流量時の流量制御精度の向上と制御可能流量の増大化(圧力損失の低減化)との両立を図るべく、従来例の電動弁1’の弁本体40より大きな直方体状の弁本体10とパイロット式の大流量用第1制御弁4A(第1弁体15、第1弁口13)と、小流量用第2制御弁4B(第2弁体24、第2弁口23)と、大流量用第1制御弁4Aを開閉するためのパイロット弁4C(パイロット弁体60、パイロット通路19)を備え、大流量用第1制御弁4Aは横向きに配在され、小流量用第2制御弁4Bは縦向きに配在されている。
詳細には、弁本体10は、前面(手前)側の左右方向中央部付近で上下方向やや下部寄りに流入口5(図1において仮想線、図2において断面(実線)で示されている)が設けられるとともに、左右方向で見て右側の下部に下面開口の流出口(継手部)6が設けられ、上部やや左寄りには上面開口のめねじ部を有する段付き凹穴7が設けられ、該凹穴7の下側には、横向きで左面が開口しためねじ部8a及び円環状段丘部8bを有する段付き横穴8が設けられている。この横穴8の右端側底部には、該横穴8(後述する第1弁室11)と後述する流出通路29及び流出口6を連通するように、横向きに第1弁座12付き第1弁口13が設けられている。
前記段付き凹穴7の上半部には、前記従来の電動弁1’(図11参照)における弁本体40の上部に相当するブッシュ保持体28が螺合固定され、凹穴7におけるブッシュ保持体28の下半部に設けられた天井面28a付き円筒部28bより下側には第2弁室21が画成され、また、凹穴7の底部中央には、前記モータ50によって昇降駆動される弁軸25の下部に設けられた第2弁体24により開閉される小口径の第2弁口23が設けられている。第2弁口23の上端部には、第2弁体24が接離する弁座22aが形成された弁座部材22が例えばかしめにより固定されている。また、第2弁口23は、縦方向に延設され、その下部が後述する第1弁室11に連通している。
前記ブッシュ保持体28には、図11に関して前述した嵌合穴49が設けられ、該嵌合穴49には、筒状のガイドブッシュ46の下端部46aが圧入固定されている。
ガイドブッシュ46の外周には雄ねじ部が形成され、弁軸ホルダ(図11の符号32)の内周には雌ねじ部が形成されており、それら雄ねじ部と雌ねじ部とで弁軸25を上下動させる送りねじ機構が構成されている。
また、凹穴7の底部右角部には、第2弁室21と流出口6とを連通する流出通路29の上端が開口せしめられ、凹穴7の底部における第2弁口23の左側には、後述する分割構成のパイロット弁体60における弁体部材61が摺動自在に嵌挿される弁体案内穴19Dが設けられている。
前記段付き横穴8における第1弁室11の右側には、大口径の第1弁口13付き第1弁座12が設けられ、さらに、前記流出通路29及びそれに連なる流出口6が形成されている。
前記段付き横穴8のめねじ部8aには、天井面9a付き円筒状案内部9cを有する蓋状装着体9が螺合固定されている。前記円筒状案内部9cには、前記段付き横穴8の円環状段丘部8bに当接する円環状段丘部9bが設けられており、円筒状案内部9cの段丘部9b周りと段付き横穴8の段丘部8b周りとはOリング81でシールされている。また、横穴8における底部(第1弁座12側)より左側で蓋状装着体9における天井面9aより右側は、嵌挿室14とされ、この嵌挿室14における前記円筒状案内部9cには、ピストン型の第1弁体15(の大径部15a)が摺動自在に嵌挿されており、該嵌挿室14における第1弁体15(の大径部15a)より左側に背圧室16が画成されるとともに、第1弁体15(の大径部15a)より右側に第1弁室11が画成されている。
第1弁体15は、左側から順次、大径部15a、小径部15b、及び中径部15cを有するボビン形とされ、その右端部に第1弁座12に離接して第1弁口13を開閉する、ゴムあるいはテフロン(登録商標)等からなる円環状のシール材15dが例えばかしめ等の適宜の手法により固定され、その左端面部には、嵌挿室14の天井面9aに接当して第1弁体15の左方移動限界を定める短円筒状の横孔15i付きストッパ15gが突設され、また、大径部15aの外周にはシール材(ピストンリング)15fが装着されている。
また、第1弁体15を右方(閉弁方向)に付勢すべく、第1弁体15の左端側中央に設けられたばね受け穴15hの底面と嵌挿室14の天井面9aとの間には、圧縮コイルばねからなる第1閉弁ばね18が縮装されている。
さらに、第1弁体15の大径部15aには、第1弁室11と背圧室16とを連通するための貫通路からなる均圧孔17が設けられている。
上記構成に加えて、前記背圧室16と前記第2弁室21とを連通すべく、その上端が前記第2弁室21の底面21bに開口するパイロット通路19が設けられている。このパイロット通路19は、蓋状装着体9の円筒状案内部9cにおける天井面9a近くにそこを厚み方向に貫くように例えば90°間隔で放射状に設けられた4つの貫通孔19aと、円筒状案内部9cの外周側で段付き横穴8の内周側に気密的に画成された円環状空所19bと、該空所19bに一端が開口し、他端が前記した弁体案内穴19Dの底部に開口する縦孔19cと、前記弁体案内穴19Dとで構成され、前記縦孔19cの上端開口縁部19eに後述するパイロット弁体60のボール65が接離することにより、当該パイロット通路19が開閉されるようになっている。
一方、前記パイロット弁4Cのパイロット弁体60は、前記弁体案内穴19Dに摺動自在に嵌挿された弁体部材61と、該弁体部材61を前記パイロット通路19eの開口縁部19eに接離させるべく、前記弁軸25の下側軸部25aに外挿されて、弁軸25のリフト量が所定量Tcを超えると、該弁軸25により引き上げられるようにされた弁体押さえ部材62とで構成されている。
弁軸25が所定量Tcを超えてリフトせしめられるとき、該弁軸25により弁体押さえ部材62が引き上げられるようにすべく、弁軸25には鍔状係止部25gが形成されるとともに、該鍔状係止部25g上には、円環状係止板71とE型止め輪72とにその内周部が挟持された状態でスラストベアリング(玉軸受)70が外挿保持されている。
弁体押さえ部材62は、図3を参照すればよくわかるように、前記弁軸25の下側軸部25aに外挿される挿通穴62bがその中央部に設けられた天井部62aと、前記ブッシュ保持体28の下半部に設けられた天井面28a付き円筒部28bに摺動自在に嵌挿された円筒部62cとからなり、円筒部62cには上面開口の円環状ばね受け穴62dが設けられ、このばね受け穴62dの底面と前記天井面28aとの間には弁体押さえ部材62を下方(パイロット通路19を閉じる方向)に付勢する圧縮コイルばね26が縮装されている。なお、前記挿通穴62bの穴径は、前記E型止め輪72の外径より大きく設定されており、弁軸25が所定量Tcを超えてリフトせしめられるときには、前記スラストベアリング70の上面外周部が前記天井部62a下面に接当するようになっている。
前記ブッシュ保持体28は、第2弁室21の上部内側に嵌るようにして該第2弁室21を覆う。そして、前記弁体押さえ部材62は、このブッシュ保持体28の内壁を摺動するように設けられている。
前記弁体部材61は、図3に加えて図4を参照すればよくわかるように、パイロット通路19の開口縁部19eに接離せしめられるボール65と、該ボール65を保持する保持体64とで構成されている。より詳細には、保持体64は、上から順に、例えば球面からなるその頂面部64sが前記弁体押さえ部材62の円筒部62c下面に当接する上部小径部64a、中間大径部64b、下部小径部64c、及び前記ボール65を回転可能な状態で抱持するかしめ部64dからなっており、前記中間大径部64bは、図4(B)に示される如くに、平行面取部67、67を有し、この平行面取部67、67と弁体案内穴19Dの内周面との間は流通路19f(バイパス通路19の一部)となっている。また、前記下部小径部64c内には前記かしめ部64d内と外部とを連通する横倒L形状の孔64fが形成されている。図4においては、本体部材61が弁体案内穴19Dの中心軸に対して傾斜しているが、このような状態においても、ボール65の作用により開口縁部19eは良好にシールされることができる。
なお、前記かしめ部64dは、ボール65を回転可能に状態で抱持するものであっても良い。
また、前記中間大径部64b下面と弁体案内穴19D底面との間には、弁体部材61を上方(パイロット通路19を開く方向)に付勢する圧縮コイルばね66が縮装されている。このコイルばね66により、弁体部材61の頂面部64sが常時弁体押さえ部材62の円筒部62c下面に当接せしめられる。
ここで、本実施例の複合弁1において、第1弁室11の圧力をP1、背圧室16の圧力をP2、第1弁口13の圧力をP3、背圧室16の水平断面積(第1弁体15の受圧面積)をAp、第1弁口13の水平断面積をAv、主開弁ばね18の付勢力をPfとし、第1弁体15を押し上げる力を開弁力、第1弁体15を押し下げる力を閉弁力とすれば、大流量用第1制御弁の開弁条件は、
閉弁力=P2×Ap+Pf<開弁力=P1×(Ap−Av)+P3×Av
となる。
なお、本実施例では、接触部、摺動部の摩耗を低減してシール性、耐久性を向上させるべく、弁軸25(弁体24)はステンレス製、弁座22a(弁座部材22)を弁軸25(弁体24)と同じステンレス製としている。また、蓋状装着体9もステンレス製となっている。一方、弁本体10はアルミ製とすることができる。
このような構成とされた複合弁1においては、図1に示される如くに、第1弁体15、第2弁体24及びパイロット弁体27が共に閉状態にあるときには、流入口5から第1弁室11に導入された高圧の冷媒は、均圧孔17を介して背圧室16に導入され、背圧室16の圧力が高圧となるので、第1弁体15が第1弁座12に強く押し付けられる。
この状態から、モータ50にパルス供給を行って弁軸25・第2弁体24を回転させながら上昇させると、図5に示される如くに、第2弁体24が第2弁座22aから離れ、第2弁口23が開かれる。この場合、弁軸25・第2弁体24のリフト量が所定量Tc(図1、図3参照)未満のときは、前記スラストベアリング70の上面外周部が前記天井部62a下面に達しておらず、したがって、パイロット弁体60を構成する弁体押さえ部材62及び弁体部材61は、図1に示される状態のままであり、このときは、パイロット弁体60のボール65によりパイロット通路19が閉じられるとともに、第1弁体15により第1弁口13が閉じられており、第2弁体24のリフト量に応じて冷媒流量(第2制御弁開度)が制御される小流量制御状態となる。この小流量制御状態では、第2弁体24のリフト量に応じた量の冷媒が、流入口5→第1弁室11→第2弁口23→第2弁室21→流出通路29→流出口6へと流れる。
そして、前記弁軸25・第2弁体24のリフト量が前記所定量Tcに達すると、図6に示される如くに、前記スラストベアリング70の上面外周部が前記天井部62a下面に接当し、続いて、弁軸25・第2弁体24が回転しながらさらに上昇せしめられて、そのリフト量が前記所定量Tcを超えると、図7及び図8に示される如くに、弁体押さえ部材62が前記スラストベアリング70の上面外周部に引っ掛けられて、閉弁ばね26の付勢力に抗して引き上げられ、これに伴い、弁体部材61がコイルばね66の付勢力により、その頂面部64sを弁体押さえ部材62の円筒部62c下面に当接させたまま、上方に移動せしめられ、これによって、ボール65が縦孔19cの上端開口縁部19eから離れてパイロット通路19が開かれ、背圧室16から冷媒がパイロット通路19を介して第2弁室21に導入され、ここから流出通路29を介して流出口6に導かれる。これにより、背圧室16の圧力が下がり、やがて第1弁体15に作用する閉弁力より開弁力の方が大きくなって第1弁体15が第1弁口13を開き、冷媒が流入口5→第1弁室11→第1弁口13→流出口6へと流れる大流量制御状態となる。
以上の説明から理解されるように、本実施例の複合弁1では、大流量用第1制御弁4A(第1弁体15、第1弁口13)と小流量用第2制御弁4B(第2弁体24、第2弁口23)とに加えて、第2弁体24とは別体のパイロット弁体60を備え、このパイロット弁体60を弁軸25の昇降動作を利用して開閉駆動するようにされているので、小流量用第2制御弁4B(第2弁体24、第2弁口23)の寸法形状等を小流量制御に最適なものに設定することができるとともに、大流量用第1制御弁4Aの開閉を所望のタイミングで確実に行うことができ、さらに、小流量制御時には、冷媒を従来のもののように摺動面間隙等の狭小部分を通すことなく流すようにされているので作動不良を引き起こし難くでき、その結果、動作負荷の増大、駆動部(モータ部分)や弁本体の大型化を招くことなく、小流量領域における流量制御精度の向上と制御可能流量の増大化(圧力損失の低減化)との両立を図ることができる。
また、パイロット弁体60を、シール面がボール65の弁体部材61と該弁体部材61とは別体の弁体押さえ部材62とに分割して、それらをばね部材26、66で付勢することによって一体的に上下動させるように構成しているので、たとえ弁体押さえ部材62が傾いてもその傾きが弁体部材61には伝わり難く、弁体部材61によるパイロット通路のシール性に悪影響を及ぼし難くなり、しかも、パイロット通路19の開口縁部19eに接離する部分(シール部)は球面(ボール65)で構成されているため、弁体部材61が傾いても、従前のもののように不所望な隙間β(図9(B)参照)が発生することはなく、また、シール部が従前のもののように面接触ではなく線接触となるため、その接触圧が高くなり、それらによってシール性が格段に向上し、閉弁ばね26のばね荷重をさほど大きくせずとも、また、シール部の加工精度をさほど高くせずとも、漏れを確実に抑えることができる。
また、弁軸25に鍔状引っ掛け部としてのスラストベアリング70が配備されているので、弁軸25・第2弁体24が前記所定量Tcを超えてさらに回転しながらさらにリフトせしめられときにおいては、弁体押さえ部材62が前記スラストベアリング70の上面外周部により引っ掛けられて、閉弁ばね26の付勢力に抗して引き上げられるが、この場合、スラストベアリング70の下面側は弁軸25と一体に回転するものの、スラストベアリング70の上面側とそれが接触する弁体押さえ部材62は回転しないので、弁軸25とパイロット弁体60との間には、従前のもののような回転摺動摩擦抵抗はほとんど発生せず、したがって、弁軸25の回転昇降が阻害されることはなく、作動不良を確実に防止できる。
なお、本発明に係る複合弁は、上記した第1実施例の複合弁1の構成に限られないことは勿論であり、様々な変更を加えることができる。
例えば、上記実施例の複合弁1では、第2弁口23は第1弁室11と第2弁21室とを連通するようにされているが、それとは多少異なる次のような構成としてもよい。すなわち、第2弁口を流出口に連通させるとともに、第1弁室と第2弁室とを連通する連通路を別途に設け、この連通路を介して第1弁室の高圧を第2弁室に導入するようにして、閉弁状態の第2弁体に高圧を作用させないようになす。これにより、第2弁体(弁軸)を閉弁方向に付勢する閉弁ばね(図11の符号34)のばね荷重を大きくせずとも、第2弁体が不所望に開弁してしまうことを確実に防止でき、第2弁口の口径等に対する制約を緩くでき、その結果、コスト低減、小型化、消費電力の低減等を図ることができる(本発明の出願人による特願2011−273975号参照)。
また、上記実施例では、弁体部材61は、パイロット通路19の開口縁部19eに接離する部分がボール65とされているが、必ずしもボールを使用する必要はなく、シール面が球面、楕球面、円錐面等の開口縁部19eに対して実質的に線接触する曲面で構成されているものであればよい。
また、上記実施例では、第1弁体は横向き、前記第2弁体は縦向きに配在されているが、第1弁体と第2弁体を共に縦向きに配在する等、他の形態であってもよいことは勿論である。
また、上記実施例では、弁体押さえ部材62を引き上げる弁軸25が回転しながら上昇するため、鍔状係止部25gと弁体押さえ部材62との間にスラストベアリング70を介すものとして説明したが、弁軸が回転しないで上昇する場合には、このベアリング70は不要とすることができる。
また、上記実施例では、弁体押さえ部材62は、第2弁室21の内側に嵌りこれを覆うブッシュ保持体28の内壁に摺動自在に設けられるものとして説明したが、本発明はこれのみに限定されることはなく、第2弁室21の内側に嵌りこれを覆う部材であれば、ガイドブッシュ46を保持しない部材の内壁に弁体押さえ部材62が摺動自在に設けられても良いことは当然である。
さらに、上記実施例では、弁軸を昇降させるための昇降駆動手段として電動式のもの(ステッピングモータ50)が用いられているが、電磁式(磁力による吸引式)のものを用いたものでも、本発明を同様に適用できる。
また、本発明の複合弁は、ヒートポンプ式冷暖房システムに適用されるだけではなく、他のシステムにも適用できることは言うまでもない。