JP5875070B2 - セルロース系バイオマス原料の酵素糖化方法 - Google Patents

セルロース系バイオマス原料の酵素糖化方法 Download PDF

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Description

本発明は、セルロース系バイオマス原料の酵素糖化方法において、酵素糖化効率を顕著に向上させることを可能とする前処理技術に関する。
また、本発明は、セルロース系バイオマス原料の酵素糖化方法において、廃液となる上清や洗浄液等の液分から、抗酸化作用等の機能性を有する有用化合物を、大量に回収する技術に関する。
・セルロース系バイオマス原料の需要
バイオ燃料への世界的ニーズの高まりに対応して、糖質系バイオマス由来のバイオエタノール製造技術開発競争が世界的規模で繰り広げられている。
特に、食料資源と競合しないセルロース系バイオマスの利用技術開発が、欧米のみならず我が国においても最も重要なブレイクスルーとなりうると期待されている。
セルロース系バイオマスの糖化技術開発は、長い歴史を有しているが、現在、再び活発化している。
特に、酸糖化を中心に展開した糖化技術に代わり、現在は、セルラーゼを中心とした酵素糖化技術が高い期待を集めている。
また、バイオエタノールのみならず、発酵原料または化学合成原料としての単糖, 二糖等の低分子糖質を用いて、種々の化成品を製造するというバイオリファイナリーの概念においても、セルロース系バイオマスの糖化技術が重要な鍵となる。
・原料の前処理技術
セルロース系バイオマス原料中の糖質は、複雑な構造をとる細胞壁中に埋め込まれており、酵素糖化に先立ち、苛酷な条件による前処理によって糖質とその他の物質との結合状態を改変する必要がある。
当該バイオマス原料を糖化する際の前処理技術として、これまでに、希硫酸爆砕処理、水熱処理、苛性ソーダ処理、アンモニア水処理、アルカリ処理などが検討されている。
この中でも、水酸化カルシウム(酸化カルシウムは、水存在下で水酸化カルシウムとなることから、前処理試薬として事実上、同じ物質と見なされる。)は、水酸化ナトリウムやアンモニア水と比較しても安価な試薬であり、有害性も低いと認識されている。
このため、本試薬を用いたセルロース系バイオマス原料に対する前処理の可能性が検討されてきた。
特に、木化度の低い草本系バイオマスに対する水酸化カルシウム前処理の有効性については、複数の論文で報告されている(非特許文献1〜3 参照)。
なお、水酸化カルシウムは、水溶液中での電離度は高いが、その溶解度が低いことから、木質系バイオマスに対する単独使用での前処理効果はさほど大きくない(非特許文献4 参照)。
そのため、木質系バイオマスに対してアルカリ処理を行う際には、酸化剤の使用が有効であることが明らかとなっている。
・前処理技術での課題
ここで、アルカリ処理後に酵素糖化を効率的に行うためには、少ない酵素量で効果的に糖化を行うことが望ましい。
そのため、中性〜弱酸性条件下で働くセルラーゼ等の酵素による糖化工程に先立ち、溶液を中和する工程が必要となる。
しかしながら、従来の中和処理である塩酸や硫酸での中和方法(非特許文献4等 参照)では、(i) 中和後の固相からの酵素糖化効率が不十分であるとの課題があった。
また、(ii) 十分なpHの低下効果を得るためには、大量の酸が必要でありコストがかかるという課題や、(iii) 中和による塩の形成のため、処理が困難な塩化カルシウムや石膏が大量に沈殿するという課題があった。
さらには、(iv) イオン濃度を低下させるために、大量の水を添加する必要があり、易分解性の糖や機能性成分を含む多くの有用化合物が回収できない、という課題も指摘されていた。
このように、従来のセルロース系バイオマス原料からの糖化システムでは、中和処理を含めて、アルカリ処理後の処理工程の最適化がまだ不十分な技術であり、特に、酵素糖化効率の点での効率向上の必要性が求められていた。
さらに、従来のシステムでは、原料のアルカリ処理物に含まれていた有用化合物が、実質的に全く利用できていない、という課題もあった。
特開2011-004730号公報
Vincent S. Chang, Barry Burr, and Mark T. Holtzapple, Applied Biochemistry and Biotechnology, 1997, 63-65, 3 Vincent S. Chang, Murlidhar Nagwani, and Mark T. Holtzapple, Applied Biochemistry and Biotechnology, 1998, 74, 135 Sarita C. Rabelo, Rubens M. Filho, and Aline C. Costa, Applied Biochemistry and Biotechnology, 2008, 153(1-3), 139 Vincent S. Chang, Murlidhar Nagwani, Chul-Ho Kim, and Mark T. Holtzapple, Applied Biochemistry and Biotechnology, 2001, 94, 1 R. Shiroma, et al., RT-CaCCO process: An improved CaCCO process for rice straw by its incorporation with a step of lime pretreatment at room temperature, Bioresour. Technol., 102, 2943-2949, 2011. J-Y. Park, et al., A novel lime pretreatment for subsequent bioethanol production from rice straw - Calcium capturing by carbonation (CaCCO) process , Bioresour. Technol., 101, 6805-6811, 2010.
本発明は、上記課題を解決し、セルロース系バイオマス原料を酵素糖化方法において、アルカリ処理後の酵素糖化の効率を顕著に向上させ、且つ、中和廃液を大幅に減少させる前処理技術を開発することを目的とする。
また、本発明は、アルカリ処理後に固液分離した廃液から、有用化合物の回収技術を開発することを目的とする。
本発明に先駆けて、本発明者らは、アルカリ処理の中和手段として、二酸化炭素を用いることにより、回収・利用が困難な水溶性の塩の形成を抑えることができ、廃液を減少できることを見出した(特許文献1, 非特許文献5,6 参照)。
そこで、さらに本発明者らは、鋭意努力した結果、セルロース系バイオマス原料を酵素糖化する前処理として、水酸化カルシウムを用いたアルカリ処理後に、(i) 固液分離を行い、(ii) 得られた固形物に対して水洗浄を行うことで、酵素糖化効率が向上されることを見出した。
また、(iii) 水酸化カルシウムを含有する前記固形物に対して、加熱処理を行うことにより、繊維の性質が大きく改善され、その後の酵素糖化の効率を大きく向上できることを見出した。
さらには、本発明者らは、廃液である前記固液分離後の液分から、(i) 疎水性樹脂, 陰イオン交換樹脂等での精製を行うこと、又は、(ii) 揮発性有機溶媒で抽出を行うことにより、抗酸化作用を有する有用化合物を、大量に回収できることを見出した。
本発明は、これらの知見に基づいてなされたものである。
・〔請求項1〕に係る本発明は、裁断, 粉砕, 磨砕, 擂潰, 又は粉末化したセルロース系バイオマス原料, 水酸化カルシウム, 及び水を含むスラリーを調製して当該原料に対するアルカリ処理を行い、;その後固液分離を行い、;当該固液分離によって得られた固形物, 又は,当該固形物と水とを含む混合物に対して、二酸化炭素を用いて中和することによりpHを5〜8に調整し、;酵素糖化反応を行う、;ことを特徴とする、セルロース系バイオマス原料の酵素糖化方法、に関するものである。
・〔請求項2〕に係る本発明は、前記セルロース系バイオマス原料が、稲, 小麦, 大麦, 燕麦, トウモロコシ, サトウキビ, ソルガム, エリアンサス, ミスカンサス, スイッチグラス, ユーカリ, ポプラ, ヤナギ, 及びネピアグラスからなる群から選ばれる1以上の植物の植物体である、請求項1に記載の酵素糖化方法、に関するものである。
・〔請求項3〕に係る本発明は、前記固液分離後に得られた固形物に対して、水, 又は, 実質的に水からなる溶液を用いて洗浄し、固液分離を行って再度固形物を得ることを特徴とする、請求項1又は2に記載の酵素糖化方法、に関するものである。
・〔請求項4〕に係る本発明は、前記固液分離後に得られた固形物に対して、必要に応じて水酸化カルシウム及び/又は水を混合した後、前記固形物に対するアルカリ処理を行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の酵素糖化方法、に関するものである。
・〔請求項5〕に係る本発明は、前記アルカリ処理における前記バイオマス原料と水酸化カルシウムの混合割合が、前記バイオマス原料の乾燥重量100重量部に対して、水酸化カルシウムを2〜40重量部を混合する割合である、請求項1〜4のいずれかに記載の酵素糖化方法、に関するものである。
・〔請求項6〕に係る本発明は、前記二酸化炭素を用いた中和を行う前に、前記アルカリ処理において80〜180℃で10〜180分間の加熱を行う、及び/又は、前記アルカリ処理後に得られた前記固形物に対して80〜180℃で10〜180分間の加熱を行う、ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の酵素糖化方法、に関するものである。
・〔請求項7〕に係る本発明は、請求項1〜6に記載の固液分離によって固形物と分離された液分に対して、抽出及び/又は精製工程を行うことを特徴とする、セルロース系バイオマス原料からの有用化合物の回収方法、に関するものである。
・〔請求項8〕に係る本発明は、請求項1〜6に記載の固液分離によって固形物と分離された液分に対して、疎水性樹脂, 又は, 陰イオン交換樹脂による精製を行うことを特徴とする、セルロース系バイオマス原料からのフェルラ酸, p-クマル酸, バニリン酸, p-ヒドロキシ安息香酸, シリンガ酸, 没食子酸, 及びジフェルラ酸から選ばれる1以上の化合物の回収方法、に関するものである。
・〔請求項9〕に係る本発明は、請求項1〜6に記載の固液分離によって固形物と分離された液分に対して、揮発性有機溶媒を用いた液-液抽出を行うことを特徴とする、セルロース系バイオマス原料からのフェルラ酸, p-クマル酸, バニリン酸, p-ヒドロキシ安息香酸, シリンガ酸, 没食子酸, 及びジフェルラ酸から選ばれる1以上の化合物の回収方法、に関するものである。
本発明は、セルロース系バイオマス原料の酵素糖化方法において、酵素糖化の効率を顕著に向上可能な前処理技術を提供する。
また、本発明の酵素糖化の前処理では、中和工程に二酸化炭素中和を採用することにより、従来法ではアルカリ処理後の中和により形成されていた塩化カルシウムや石膏などの形成を回避することを可能とする。即ち、本発明は、廃棄処理が困難な塩の生成が起こらない方法である。
さらに、本発明では、アルカリ処理後の液分(上清, 水洗浄液)から、抗酸化作用等の機能性を有する有用化合物を、大量に回収することを可能とする。
即ち、廃液から経済的価値を有する有価物を回収することを可能とし、バイオマス原料糖化処理の全体としてのプロセスコスト低減を可能とする。
これらにより、本発明は、バイオマス原料からバイオエタノールを製造する上で、効率良く且つ低コストで行う技術の一つとなることが期待される。
実施例1(1)において、各種セルロース系バイオマス原料のアルカリ処理物から抽出されたフェルラ酸量を定量した結果である。 実施例1(1)において、各種セルロース系バイオマス原料のアルカリ処理物から抽出されたp-クマル酸量を定量した結果である。 実施例1(2)において、0.5mMフェルラ酸-水酸化カルシウム飽和溶液を加熱処理した後、フェルラ酸の残存量を定量した結果である。 実施例1(2)において、0.5mM p-クマル酸-水酸化カルシウム飽和溶液を加熱処理した後、フェルラ酸の残存量を定量した結果である。 実施例1(3)において、0.5mMフェルラ酸-水酸化カルシウム飽和溶液を、遮光条件で加熱処理した後、フェルラ酸の残存量を定量した結果である。 実施例1(3)において、0.5mM p-クマル酸-水酸化カルシウム飽和溶液を、遮光条件で加熱処理した後、フェルラ酸の残存量を定量した結果である。 実施例1(4)に記載の稲わら粉末のアルカリ処理において、室温静置時間の経過に伴うフェルラ酸及びp-クマル酸の抽出量の経時変化を定量した結果である。 実施例1(5)に記載の稲わら粉末のアルカリ処理において、アルカリ濃度の増加に伴うフェルラ酸及びp-クマル酸の抽出量を定量した結果である。 実施例2(1)に記載の稲わら粉末のアルカリ処理物の水洗浄において、各洗浄液に抽出されたフェルラ酸及びp-クマル酸の量、並びに固形物中へのカルシウムイオンの残存率を定量した結果である。 実施例3(1)に記載のサトウキビ粉末のアルカリ処理物の水洗浄において、各洗浄液に抽出されたフェルラ酸及びp-クマル酸の量を定量した結果である。 実施例4に記載の稲わら粉末のアルカリ処理物の水洗浄において、各洗浄液に抽出されたフェルラ酸及びp-クマル酸の量を定量した結果である。
本発明は、セルロース系バイオマス原料の酵素糖化方法において、酵素糖化効率を顕著に向上させることを可能とする前処理技術に関する。
また、本発明は、セルロース系バイオマス原料の酵素糖化方法において、廃液となる上清や洗浄液等の液分から、抗酸化作用等の機能性を有する有用化合物を、大量に回収する技術に関する。
〔バイオマス原料〕
・原料の種類
本発明で対象となる「セルロース系バイオマス原料」としては、主としては植物体の茎葉を指すものであるが、根、幹、穂、花、果実等の植物に由来する全ての組織や器官を挙げることもできる。
本発明におけるセルロース系バイオマス原料としては、大きく木質系原料と草本系原料に分けられる。
‘木質系バイオマス原料’としては、針葉樹、広葉樹、裸子植物等の幹、枝、葉、実などを挙げることができる。特には、ユーカリ、ポプラ、ヤナギなどの広葉樹の木材が好適である。
しかし、一般に、木質系バイオマス原料と比較して、草本系バイオマス原料の方が木化の程度が低く、前処理条件を穏和に設定できるため、本発明のバイオマス原料としては、草本を用いることが好ましい。
‘草本系バイオマス原料’としては、稲、小麦、大麦、燕麦、トウモロコシ、サトウキビ、ソルガム、エリアンサス、ミスカンサス、ネピアグラス、ススキ、スイッチグラス等を用いることが好適である。また、牧草、単子葉類の雑草や双子葉植物の茎葉などを用いることができる。
また、上記の他に、水草(例えばホテイアオイ、カナダモ、スイレン、浮草等)や海草(例えばアマモ等)などの水棲被子植物も、セルロース系バイオマス原料として本発明の対象原料となる。
さらに、これらの植物に対して、遺伝子組換え操作等による育種を行い、本来、その植物が有していない有用化合物やその前駆体を体内に蓄積するよう、高機能化した植物も本発明の原料となる。
本発明のセルロース系バイオマス原料としては、食物生産との競合を避けるために、非可食部分を用いることが望ましい。特に上記草本系バイオマス原料植物の地上部(茎葉)が望ましい。
具体的には、コーンエタノール製造時に圃場に蓄積するトウモロコシ茎葉(コーンストーバー)、サトウキビの搾汁後に得られるバガス、主要穀物生産時に副生される稲わら、小麦の麦わら、大麦の麦わら、燕麦の麦わら、もみ殻、ソルガム茎葉(ソルガムバガス)、そしていわゆる資源作物としてのエリアンサス、ミスカンサス、ネピアグラスなどの茎葉、が挙げられる。
また、種々の食品廃棄物、食品製造時の副産物、廃菌床や焼酎粕などの植物性の主成分を含む加工残渣、製材残渣、古紙・古布なども、対象原料とすることができる。
これらの原料は、必要に応じて、分画を行い、バイオマス原料として使うべき部分のみを回収して本発明の工程における原料として用いることができる。
例えば、稲わらを茎と葉で分離して、茎に富む部分を原料としたり、サトウキビバガスを分画して、外皮に富む画分や柔組織に富む画分を分離して原料として用いることもできる。
これらセルロース系バイオマス原料は、澱粉やショ糖(シュークロース)などの易分解性糖質を含有するものを含むものである。
これらのうち、特に稲わらやサトウキビバガスでは、易分解性糖質を回収しつつ、セルロースやヘミセルロースの糖化性を向上するような前処理技術の開発が求められているところであり、本発明はこの問題を解決するものでもある。
・粉砕等処理
本発明における前記バイオマス原料は、裁断, 粉砕, 磨砕, 擂潰, 粉末化等した状態で用いるものである。
なお、当該粉砕等の操作は、後述するアルカリ処理の前に行うことが常法であるが、アルカリ処理を行いながら行う態様も採用可能である。また、アルカリ処理前とアルカリ処理の最中に両方行う態様も可能である。
例えば、アルカリ処理において、石臼などで磨り潰すグラインダー等を用いて、粉砕原料を磨砕しながらアルカリ液を浸透させる方法により、アルカリ処理の効率の向上が期待される。
また、アルカリ処理によってバイオマスが軟化するとともに機械的強度が減少し、後段の粉砕等処理のエネルギー効率が高まることが期待できる。
当該バイオマス原料の粉砕等の度合いについては、原料の形状、含水率、粉砕特性等に応じて異なる。
例えば、稲わらを試料としてスラリーを調製した場合、アルカリ処理の効果は、脱穀後の長いものや数センチメートル程度に裁断されたものでも見出されるが、数ミリメートルから数百マイクロメートル程度の平均粒径またはそれ以下まで粉砕や粉末化された試料では、薬液の浸透性や基質の表面積が向上し、前処理後の糖化効率が上昇する。
前記バイオマス原料が乾燥試料の場合、例えば、カッターミルやハンマーミルなどの乾式粉砕等技術の適用が可能となる。
また、前記バイオマス原料が湿潤状態の場合、湿式粉砕技術を適用して粉砕等の処理を行うことが望ましい。
当該粉砕等の処理では、粉砕等の際の熱による原料の損耗や基質の被覆が起こらない限り、細かく粉砕する程反応効率は向上すると考えられるが、原料に応じて、糖化効率、粉砕コストとハンドリング性を考慮した最適化を行う必要がある。
また、後述の固液分離工程を、フィルター濾過によって行う場合、微小繊維のロスを防ぐため、粉砕サイズは、濾過方法に応じて最適化を行うことが望ましい。
この場合、固液分離後に得られる液分(上清, 洗浄液)を、回収するシステムを構築する等、微粉化した繊維質のロスを最小限とすることが望ましい。
〔水酸化カルシウムによるアルカリ処理〕
本発明では、前記粉砕等を行ったバイオマス原料, 水酸化カルシウム, および水を含むスラリーを調製して、原料に対するアルカリ処理を行う。
アルカリ処理を行う際には、まず、バイオマス原料に対して水を加えて、(又は水に対してバイオマス原料を加えて)、その後に水酸化カルシウムまたはその水懸濁物を混合する方法を挙げることができる。
また、逆に、水酸化カルシウムの粉末を加えた後に水や水蒸気を加える方法、水酸化カルシウムの添加を数段階に分けて行う方法、バイオマス中の水分を利用して、水酸化カルシウムのみを添加して混合する方法など、様々な反応混合物の調整方法が存在する。
また、粉砕等を行う前のバイオマス原料に対して、水酸化カルシウムまたはその水懸濁物を混合し、粉砕と同時にアルカリの練込みを行うような混合方法も存在する。
また、バイオマス原料への水や試薬の浸透性を向上させるため、界面活性剤を添加する方法や、減圧下において気泡を除く方法、加圧下において気泡を縮小させて液の浸透を促す方法、などが考えられる。
当該アルカリ処理により、ヘミセルロースのアセチル基やフェルロイル基などのエステルやリグニン分子内のエステルが加水分解されることにより、酵素糖化性が向上するとともに、リグニンやシリカの一部が可溶化すると考えられている。
その際に、ヘミセルロースの一部も遊離・可溶化するが、セルロースやヘミセルロースの大部分は固形物としてバイオマス中に残存し、酵素糖化の基質となると考えられる。
・水酸化カルシウム
本発明においては、アルカリ処理を‘水酸化カルシウム(又は酸化カルシウム)’を用いて行うものである。
なお、酸化カルシウムは、水存在下で水酸化カルシウムとなることから、本工程では、事実上同じ物質と見なされる物質である。
一方、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、アンモニア水等の他のアルカリを用いて行った場合、(i) アルカリ処理後のpH低下効率が悪く試薬のコストがかかる、(ii) 後述する二酸化炭素を用いた中和を行った際に、酵素反応や発酵を阻害する要因となる塩の沈殿が生じ易い、(iii) 有用化合物の回収に不向きである、等の観点で、適さない。
なお、原料に対する水酸化カルシウムの添加混合は、最初に一括して混合する態様に加えて、当該アルカリ処理の途中(即ち、中和工程の前迄に)に、固液分離後の固形物に対して1回以上(特には1〜3回)に分けて添加する態様も可能である。
例えば、乾燥させたバイオマス原料に対して、後述する温度条件である室温や外気温にて30分〜48時間処理した後、さらに水酸化カルシウムを添加し混合する態様を挙げることができる。
当該アルカリ処理に用いる水酸化カルシウムの混合割合としては、前記バイオマス原料や固液分離後の固形物の乾燥重量100重量部に対して、2重量部(2%w/w-dw)以上、好ましくは3重量部(3%w/w-dw)以上、さらには5重量部(5%w/w-dw)以上、さらには7.5重量部(7.5%w/w-dw)以上、さらには10重量部(10%w/w-dw)以上、さらには12.5重量部(12.5%w/w-dw)以上、とすることが好適である。
また、上限値としては、80重量部(80%w/w-dw)以下、好ましくは60重量部(60%w/w-dw)以下、さらには40重量部(40%w/w-dw)以下、さらには30重量部(30%w/w-dw)以下、さらには20重量部(20%w/w-dw)以下、さらには15重量部(15%w/w-dw)以下を挙げることができる。
当該アルカリ処理での反応系の水分含量は、前記バイオマス原料に対して1〜40倍での調整が可能である。
下限値として、好ましくは2倍以上、さらには3倍以上を挙げることができる。また、上限値としては、好ましくは30倍以下、さらには20倍以下を挙げることができる。
なお、ここで、水としては、実質的に水からなる溶液をも含むものである。
例えば、低濃度の塩やpH緩衝剤、不溶性の懸濁物等を含むものであっても、実質的に水と同様の水溶液であれば用いることが可能である。
また、当然であるが、純水でなくても、水道水、工業用水、井戸水などを用いることも可能である。また、後述する洗浄工程での廃液, 有用化合物回収後の廃液, 等を用いることも可能である。
また、バイオマス原料が有する水分を利用し、前記水分含量とすることも可能である。
なお、当該アルカリ処理においては、リグニンの分解を促し、適宜、β-脱離による糖収率の低下を防ぐため、アントラキノンや分子状酸素等の酸化剤を添加することも可能である。
また、上記のように、バイオマス原料への水や試薬の浸透性を向上させるため、界面活性剤を配合してもよい。
また、リグニンの酸化分解を積極的に行うため、酸素, 過酸化水素, 過酸化カルシウムなどの酸化剤を加える態様も可能である。
酸素は、精製酸素ガスの他、空気中に含まれる酸素を用いることができる。脱炭酸した空気をアルカリ処理中に連続的に流し込むことも可能である。
・温度条件
アルカリ処理の処理温度としては、高温条件で行う場合と、外気温や室温程度の条件(一般的には、0℃より高い温度〜50℃未満程度)で行う場合を挙げることができる。
また、高温条件と低温条件を組み合わせて、両方の条件で行うことも可能である。
なお、廃液から後述する抗酸化作用等を有する機能成分の回収を行う場合、これらの分解を抑制するために、100℃以下、好ましくは80℃以下の条件であり、さらには遮光条件で行うことが好適である。
(a) 高温条件でのアルカリ処理
高温条件でアルカリ処理を行う場合、50℃以上、特には80℃以上、好ましくは100℃程度またはそれ以上の温度で数時間処理することが有効である。
なお、180℃を越えると、熱処理コストが増大し、糖の回収率が下がる現象が見出されることから、本発明では、80〜180℃、さらには80℃〜160℃、さらには80〜140℃、さらには90〜140℃、さらには100〜140℃の条件とすることが望ましい。
高温条件の場合、処理時間は、熱伝達に必要な10分程度の時間以上が求められ、10分〜180分、好ましくは30〜120分程度の範囲で行うことが望ましい。
また、水蒸気を用いてスラリーを調製する場合、加水処理と加熱処理を同時に行うこともできる。
(b) 外気温や室温条件でのアルカリ処理
外気温や室温条件でアルカリ処理を行う場合、0℃より高い温度〜50℃未満、好ましくは室温程度である4〜40℃で、さらには8〜35℃で、さらには15〜30℃程度が好ましい。
処理時間としては、30分以上、好ましくは1時間以上、さらには3時間以上、さらには24時間以上(1日以上)、さらには48時間以上(2日以上)、72時間以上(3日以上)、さらには96時間以上(4日以上)、を挙げることができる。
特に、低温で行う場合、さらに長時間で行うことが望ましい場合もあり、例えば、6日以上を挙げることができる。
なお、当該温度条件でのアルカリ処理の後で、加熱処理を行う場合には、処理時間の短縮が可能となる。例えば、30分〜48時間、好ましくは1〜48時間、さらには3〜24時間を挙げることができる。
また、外気温や室温条件の場合、アルカリ処理の効果と共に、バイオマス原料の保存効果を期待することもできる。
そのため、最大で数百日以上の保存を行うことも可能となり、収穫物の長期間貯蔵・利用を可能とする。
特に、含水率が高い稲わら、サトウキビ粉砕物等の原料を乾燥することなく貯蔵できることから、乾燥コストの低減や乾燥によるバイオマス原料の特性変化の抑制などに繋がる技術として重要となるとともに、製造プラントの長期安定稼働にも貢献する。
これまで、稲わら等の原料を乾燥させずに保存する方法としては、乳酸菌の接種、アンモニア接種、尿素接種などが知られているが、乳酸発酵時には、一部の糖質が消費されることや乳酸がバイオエタノール製造の際にエタノール発酵を阻害すること、そして乳酸菌によるエタノール発酵槽の汚染などが問題となっていた。
また、アンモニアは比較的高価であり、臭気や毒性により作業効率が低下する欠点を有する。尿素は、サイレージ作製上の実用性が期待されているが、エタノール発酵基質として用途を限定した場合には有害物質の生成が懸念されていた。
このような観点から、水酸化カルシウム混合物として、バイオマス原料を保存する方法は、非乾燥の保存法として極めて有効性や実用性が高い技術である。本発明の有効性を一層発揮するものとなる。
特に、稲わら、サトウキビ粉砕物等の原料中に含まれる、澱粉やショ糖は、アルカリ中でほぼ安定的に存在することから、微生物汚染や植物代謝による変質を避けつつ、これらを維持することが可能となる。
さらに、高温での前処理と比較して、前処理時における加熱コストを大幅に減じることが可能となる。
・再度のアルカリ処理
また、本発明では、後述する固液分離及び洗浄処理を行った後の固形物に対して、再度のアルカリ処理(特には、高温条件でのアルカリ処理)を行うことで、さらに糖化効率を向上させることが可能となる。
即ち、本発明では、総数で2回以上(特に2〜3回)のアルカリ処理を行う態様の採用が可能となる。
当該2回目以降のアルカリ処理は、キシロース回収量の向上の点で特に有効な処理である。
具体的には、(i) 当該固形物に対して、必要に応じて水を混合して、スラリーを調製することで、当該2回目以降のアルカリ処理を行うことが可能となる。当該態様は、当該固形物に残存する水酸化カルシウムを利用して、再度のアルカリ処理を行う態様である。
また、(ii) 必要に応じて、当該固形物に対して、必要に応じて水を混合して、水酸化カルシウムを混合して、スラリーを調製することで、当該2回目以降のアルカリ処理を行うことも可能となる。
なお、これら複数の成分の混合方法や混合の順番については、工程の特徴により多様な方法が考えられる。
〔固液分離及び洗浄〕
本発明では、前記アルカリ処理を行った後、固液分離により固形物(アルカリ処理したバイオマス原料)を回収する。
ここで固液分離方法としては、遠心分離、濾過、フィルター、加圧や減圧によるフィルトレーション等、如何なる方法も挙げることができる。
本発明では、回収した当該固形物に対して洗浄を行うため、必要に応じて、新たに水を添加して(又は、水に当該固形物を投入して)、当該固形物が水に混合, 浸漬, 又は懸濁されている状態とする。
なお、ここで、水としては、実質的に水からなる溶液をも含むものである。
例えば、低濃度の塩やpH緩衝剤等を含むものであっても、実質的に水と同様の水溶液であれば用いることが可能である。
また、当然であるが、純水でなくても、水道水、工業用水、井戸水などを用いることも可能である。また、後述する洗浄後の廃液, 有用化合物回収後の廃液, 等を用いることも可能である。
なお、当該浸漬等した後の液分は、固形物に含まれる水酸化カルシウムの影響で、アルカリ性を呈する。
当該固形物と水の混合割合としては、乾燥物重量換算の固形物に対して重量比で1〜40倍での最終濃度になるように水を混合し調整することが望ましい。
なお、当該洗浄の後に生じる洗浄液(液分)から、有用化合物を回収する場合には、水の量が少ないほど、高濃度での回収が可能となり好適である。即ち、水使用量の抑制が推奨される。
なお、工業上の生産性等の観点から、求められる到達度設定に応じて、最適な水量、固液分離条件や回数を設定することが望ましい。
また、当該水の水温としては、0〜100℃を挙げることができるが、特に、20℃以上、好ましくは30℃以上で行うことにより、少量の水で効果的に洗浄(及び有用化合物の回収)を行うことが可能となり、好適である。
例えば、回収対象である有用化合物の溶解性が温度依存的である場合には、高温水での抽出を行うことが望ましい。
また、品温の低下が望ましくない態様の場合にも、必要に応じて洗浄時に用いる水の温度を上げることが望ましい。
なお、固形物中に沈着した水酸化カルシウムについては、水酸化カルシウムの水への溶解度が低いため、温度を上げた場合でもほとんど液中に回収されない。
即ち、当該固液分離及び洗浄操作後にも、当該固形物には、アルカリの大部分が結合した形で残存したものとなる。
本発明では、上記固形物と水の混合物に対して、さらに固液分離を行い、固形物の洗浄操作を行うことが望ましい。
なお、当該操作では、向流抽出操作のような連続的な固液分離及び洗浄操作を採用することも可能である。
当該洗浄操作は、固形物の繊維の性質改善に極めて有効である。具体的な回数としては、合計1〜6回(アルカリ処理液からの固液分離回数の通算で2〜7回)、特には1〜4回(同通算で2〜5回)で行うことができる。
なお、後述する廃棄からの有用化合物の回収を行う場合には、1〜2回(同通算で2〜3回)、で行うことが望ましい。
本発明では、当該固液分離及び洗浄を行うことで、固形物中の水酸化カルシウム量を大幅に減らすことなく、酵素糖化やエタノール発酵の阻害物質を系外に除去することができ、水酸化カルシウムの流亡を抑える点のみならず、糖化効率や発酵効率の向上の点で有効となる。
例えば、酵素の触媒部位は疎水領域が含まれており、フェノール系化合物は糖化時における酵素の活性阻害や凝集を促す危険性を有する。また、アルコール発酵酵母はバニリン等による発酵阻害が起こすため、発酵時に系内に残存していると好ましくない。
また、当該固液分離及び洗浄により、後述する機能性をもつ有用化合物の大量回収が可能となる。
また、繰り返し固液分離及び洗浄を行う場合において、(N+1)回目に得た洗浄液を、別の試料に対する前段階(N回目)の洗浄時の添加水として用いるなど、洗浄水の使い廻しを行うことにより、水使用を抑制しつつ、回収されるべき成分の濃度低下を最低限に抑えることができる。
また、当該固形物に対して、後述する中和を行う前に、石臼などで磨り潰すグラインダー等を用いてさらに磨砕を行うことにより、表面積が増大する効果が得られる。これにより、中和後の糖化効率の向上が期待される。
〔加熱処理〕
本発明では、バイオマス原料中に水酸化カルシウムが多く残存した状態にて、加熱処理を行うことで、繊維特性を大きく改善し、後述する酵素糖化効率を大幅に向上させることができる。
当該加熱処理は、後述の二酸化炭素を用いた中和を行う前であればどのタイミングで行っても良い。
例えば、(i) アルカリ処理を行いながら、または、(ii) アルカリ処理後に固液分離した固形物(洗浄後の固形物を含む)に対して、行うことが可能である。
なお、前記アルカリ処理を高温条件で行った場合、当該(i)に記載の加熱処理に該当する処理となる。
また、本発明では、異なるタイミングで2回以上の加熱処理を行うことを妨げるものではない。
本発明では、これらの時期のうち、特には固液分離後の固形物に対して加熱処理を行うことが好適である。当該固形物に対して加熱処理を行う場合には、十分に水分を絞り出されているため、加熱時のエネルギーを最少とできるからである。
また、中和の直前において加熱処理を行うことで、固形物の微生物汚染のリスクを低減することが可能となる。
・加熱条件
ここで、加熱処理の具体的な条件としては、50℃以上、特には80℃以上、好ましくは100℃程度またはそれ以上の温度で数時間処理することが有効である。
なお、180℃を越えると、熱処理コストが増大し、糖の回収率が下がる現象が見出されることから、本発明では、80〜180℃、さらには80℃〜160℃、さらには80〜140℃、さらには90〜140℃、さらには100〜140℃の条件とすることが望ましい。
高温条件の場合、処理時間は、熱伝達に必要な10分程度の時間以上が求められ、10分〜180分、好ましくは30〜120分程度の範囲で行うことが望ましい。
〔二酸化炭素による中和〕
前記固液分離後の固形物に対する中和は、必要に応じて水を混合(加水)して湿潤固形物の状態又はスラリーの状態にし(即ち、当該固形物と水との混合物の状態にし)、二酸化炭素を用いて行うことが好適である。
具体的には、二酸化炭素を通気すること及び/又は加圧することによって、中和しpHを低下させる。
中和後のpHは5〜8、好ましくはpH5〜7、さらには糖化酵素多くが高い活性を有する6.5以下の弱酸性に調整することが望ましい。具体的にはpH5〜6.5に調整することが望ましい。
二酸化炭素による中和の具体的な方法は、固液分離後の固形物に対して、必要に応じて水を混合(加水)した後に、(i) スラリーの状態にて二酸化炭素を直接通気(例えば、バブリング、炭酸水の添加、上部からの吹きつけ等)する方法、(ii) 固形物の状態のまま, 又は, スラリーの状態にて密閉容器を用いて二酸化炭素で加圧する(陽圧にする)方法、を挙げることができる。
また、さらに攪拌、振盪、低温・高圧処理などを行うことにより、二酸化炭素の溶解をより効率的にすることもできる。また、これらの方法を組み合わせて行うこともできる。
本発明では、非密閉容器を用いて、下方置換等の方法により反応系外に出る二酸化炭素を回収することもできるが、密閉容器を用いることが経済的に望ましい。
また、二酸化炭素で加圧にすることによって、緩やかなpH上昇が抑えられ、pHを前記所定の範囲で一定とすることができる。
また、圧力計スイッチ等を利用することで、陽圧容器中の二酸化炭素の消費が進むと容器内の圧力が徐々に低下した際に、新たな二酸化炭素を自動的に導入することもできる。
本発明で使用する二酸化炭素ガスの給源は、市販炭酸ガスのほか、ボイラー燃焼後のガス、発酵時のガス、空気中の二酸化炭素(空気中の二酸化炭素を用いて緩慢な中和)等が考えられる。
一般的には、ガスの精製を行う必要性は高くないと考えられるが、微生物汚染が問題とならないよう注意が必要となる。
また、セルロース系バイオマス原料からのエタノール製造工程では、リグニン等の糖化・発酵残渣の燃焼工程やエタノール発酵工程が含まれることから、変換工場内での入手が可能となる。
また、ショ糖や澱粉などからの大規模なバイオエタノール製造工場やボイラー燃焼工程を伴う工場が隣接する場合、炭酸ガスの供給はより効率的に行われるものと期待される。水酸化カルシウム−二酸化炭素による中和系は、いわゆるオーバーライミング効果により、遊離リグニン等の物質の沈殿を促し、廃液処理コストを低減することができる。
なお、さらには、後記した工程であるエタノール発酵の際に、反応溶液中から二酸化炭素が発生するが、この反応溶液外に放出された二酸化炭素を貯蔵して利用することもできる。
・中和後の状態
当該二酸化炭素中和後は、糖化酵素の活性に適したpH値を示し、カルシウムも炭酸カルシウムの塩として沈殿する。ここで、炭酸カルシウムの殆どは結晶となり、溶質としては殆ど存在していないことから、酵素活性に対する影響は極めて少ない。
なお、未反応の水酸化カルシウムが存在している場合でも、炭酸ガス雰囲気下で迅速に中和することにより、酵素安定性に対する影響を最低限に抑えることが可能となる。
ここで、中和後に生じた炭酸カルシウム結晶の多くは、固形物と接触して存在している。
そのため、酵素糖化反応に先立ち(又は酵素添加後から酵素糖化時において)、当該スラリーの固形物を湿式粉砕処理に供して磨砕することにより、炭酸カルシウム結晶が研磨剤としての役割を果たし、糖化効率をさらに上昇させることが可能となる。
〔酵素糖化反応〕
本発明におけるセルロース系バイオマス原料(特に草本系バイオマス原料)中には、主要な多糖として、澱粉、β-(1→3), (1→4)-グルカン、セルロース、キシランが存在する。
本発明では、これらの多糖あるいはその部分分解物の少なくとも1種類を糖化する活性をもつ酵素(さらには、糖化を促進する活性を有する酵素)を用いて、酵素糖化を行うものである。
本発明では、上記中和後の固形物又はスラリーに対して、酵素糖化反応を行う。
本発明では、中和後のスラリーに対しては、酵素を‘直接’入れて、糖化反応を行うことが可能である。
なお、中和後のスラリーの液分割合が少ない場合や、湿潤固形物の状態の場合は、水等を添加して糖化反応を行うことが好適である。
また、必要に応じて、酵素糖化反応を促進する因子(界面活性剤等), pH調製剤, プロテアーゼインヒビター等, を加えることも可能である。
なお、好ましくは、これらの多糖あるいはその部分分解物の全てを糖化できるように、複数種類の酵素を組み合わせて添加することが望ましい。
当該糖化酵素としては、セルラーゼ製剤、ヘミセルラーゼ製剤、β-グルコシダーゼ製剤を用いることができるが、
具体的には、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼ、イソアミラーゼ、α-グルコシダーゼ、リケナーゼ、セロビオハイドロラーゼ、エンドグルカナーゼ、β-グルコシダーゼ、セロビオースデヒドロゲナーゼ、キシラナーゼ、α-L-アラビノフラノシダーゼ、β-D-キシロシダーゼ、α-グルクロニダーゼ、β-グルクロニダーゼ、アセチルキシランエステラーゼ、フェルロイルエステラーゼ、β-マンナナーゼ、β-D-マンノシダーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、キシログルカナーゼ、ガラクタナーゼ、アラビナナーゼ、ペクチナーゼ、ペクチンメチルエステラーゼ、ペクチンアセチルエステラーゼ等が挙げられる。
また、Clostridium属細菌を直接作用させて、当該細菌から外分泌された酵素によって酵素糖化を行わせることも可能である。
また、食品廃棄物等の原料を用いる場合には、セルロースの酵素糖化に影響する多様な成分が混入していると考えられる。そのため、セルロースの酵素糖化を促すために、混入成分の分解除去に関わる酵素を臨機応変に用いることが好適である。
前記糖化酵素であるセルラーゼ、ヘミセルラーゼ等の細胞壁成分加水分解酵素の多くは、pH4.5〜5.5付近で高い活性を有しているが、その多くはpH6.5付近でも高い活性が維持される。
本発明では、糖化反応の際に、二酸化炭素を必要に応じて用いることで、pHの上昇が起こらないようにして(pHを維持した条件下で)糖化反応を行うことが可能である。
また、pH6.5付近で活性が低下する糖化酵素については、十分な触媒活性が期待できるように、用量等を含めて酵素活性を最適化することが望ましい。
なお、低pHで高い活性を示す酵素を使用する場合には、糖化反応槽内を加圧することにより、溶存二酸化炭素の濃度を向上しpHを低下することが望ましい。
加圧条件は、酵素の至適pHや溶存二酸化炭素濃度の上昇に伴う炭酸水素カルシウムの溶解による塩濃度上昇などの影響を考慮して決定することが望ましい。
また、前記のように、バイオマス糖化用の酵素製剤の多くは、pH6.5付近での使用が可能であるが、pH6.5付近で活性の‘特に高い活性を有する糖化用酵素’を自然界からスクリーニングしたり、タンパク質構造を改変して触媒特性や安定性を改良した変異酵素等を用いたりして、これらを糖化工程で用いることも可能である。
例えば、pH6.5付近で高い活性を示すβ-グルコシダーゼとして、Humicola属糸状菌、特にHumicola insolens由来の酵素を用いることができる。
糖化反応は、前記糖化酵素の活性に合わせた温度で行うことができるが、前記加熱処理により固形物の品温が高く維持されている場合、品温低下に合わせて耐熱性の高い酵素を順次加えていくことで、糖化工程を効率化することも可能となる。
例えば、澱粉糊化が起こりやすい70〜110℃程度の温度に低下した時に、耐熱性アミラーゼを加えて糖化反応を行うことにより、澱粉の液化が効率化する。
また、市販酵素製剤中のセルラーゼ製剤やヘミセルラーゼ製剤の多くは、50℃前後で安定に作用することから、固形物の品温が50℃程度に低下した際に酵素を添加することが望ましい。
当該酵素糖化反応後に得られる糖化物としては、グルコース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マンノース、ラムノース、フラクトース、グルクロン酸、ガラクツロン酸などを挙げることができる。
特に、主なエタノール発酵の基質として、グルコース、キシロース、ガラクトース、フラクトースを挙げることができる。
〔エタノール発酵〕
本発明では、前記酵素糖化反応後に得られる糖化物を含むスラリーに、エタノール発酵微生物を添加した後、二酸化炭素を必要に応じて用いることで、pHの上昇が起こらないようにして(pHを維持した条件下で)エタノール発酵を行うことができる。
本発明における前記のスラリーは、前記酵素反応と同様に、通常のエタノール発酵においても阻害を殆ど起こさないため、当該スラリーに対してエタノール発酵微生物を‘直接’入れて、エタノール発酵を行うことが可能である。
即ち、本発明では、効率良く‘バイオエタノール’を製造することが可能となる。
また、当該スラリーは、必要に応じて加圧を行うことによってエタノール発酵に適したpH値での発酵が可能となる。また、カルシウムの殆どが炭酸カルシウムの塩として沈殿し、エタノール発酵に対する塩の影響は極めて少ないと考えられる。
また本発明によれば、酵素糖化反応前の二酸化炭素中和後のスラリーに対して、前記糖化酵素と共に、さらにエタノール発酵微生物を添加することで、酵素糖化反応とエタノール発酵とを‘並行複発酵’で行うことも可能である。
糖化と発酵を同時に行う並行複発酵を行うことにより、発酵生成物であるエタノールを得るまでの時間や設備コストを低く抑えることが可能である。
さらに、並行複発酵工程を高度化したConsolidated Bioprocessにおいても、本発明における中和スラリーを基質とすることができる。
さらに、エタノール発酵時に副産物として生産される有機酸による発酵槽のpHの低下は、エタノール発酵阻害または菌の生育阻害を起こす原因になるが、当該発明におけるエタノール発酵では、二酸化炭素による中和過程で生じた炭酸カルシウムにより発酵中発生される有機酸が自然に中和されるため、発酵槽のpH制御のための更なる試薬コスト削減が可能である。
本発明に用いるエタノール発酵微生物としては、Saccharomyces cerevisiae、Pichia stipitis、Candida shehatae、Candida glabrata, Kluyveromyces marxianusなどの酵母、;エタノール発酵性担子菌類や子嚢菌類、;Zymomonas mobilis などの細菌、;のような発酵性微生物を用いることができる。
なお、発酵時には、発生する二酸化炭素やpH維持のために吹き込む二酸化炭素等により、反応液中のpHは6.5付近またはそれ以下となる。
pH6.5付近は、酵母、細菌、糸状菌の多くが生育可能なpH範囲内にあり、種々の遺伝子組換え発酵菌、例えば、Escherichia coli、Saccharomyces cerevisiae、Corynebacterium属菌等を用いることが可能である。
また、複数の微生物(例えば、グルコースやショ糖に対する発酵性を有する微生物と、キシロースに対する発酵性を有する微生物)を、同時にもしくは1種類ずつ経時的に添加して発酵させることで、バイオマス原料からのエタノール変換率を向上させることができる。
なお、当該技術は、エタノール発酵以外においても、発酵菌の種類や培養条件を変更することにより、種々のバイオリファイナリー工程において適用することも可能である。
〔有用化合物の回収〕
本発明では、上記固液分離及び洗浄によって回収された液分(上清, 洗浄液等)から、対象原料に含まれる種々の有用化合物を回収することが可能となる。
ここで、回収対象となる有用化合物とは、(i)水に容易に溶解する水溶性化合物, (ii)アルカリ条件下で可溶化する化合物を指す。
また、当該有用化合物の中には、化学工業原料や薬理作用等の機能性を有する物質, 及びその前駆体物質が含まれる。
これらの中には、本来、天然の原料や加工残渣等の中に含まれる成分の他、植物に対して、遺伝子組換え操作等による育種を行い、蓄積性を賦与した、本来、その植物が有していない有用化合物も広く対象となる。
また、エネルギー作物や資源作物などの高バイオマス植物に対して、有用化合物を体内に蓄積するよう代謝経路の設計と生産技術の開発を行い、必要に応じて、公知の遺伝子組換え技術を用いて物質生産用の植物体を創り出すことによって、その糖化工程と密接にリンクさせる形で有用物質の抽出生産が可能となることを示し、土地当たりの物質生産能力の飛躍的向上に繋がることも期待される。
(i) 水溶性化合物
当該有用化合物のうち水溶性物質については、粉砕等によって原料のサイズを減じたものから、水で容易に抽出が可能である。
また、水への溶解性が低い化合物でも、固液分離工程によって、懸濁またはコロイド化状態などの状態で液分側に回収できるものも対象と考えられる。
固液分離する際に、添加水を加温したり、界面活性剤を添加したりして抽出を促したり、液分として回収した後に、必要に応じてpH・温度条件を変化させて抽出条件を改良したりすることにより、目的物質の回収を効率化することができる。
当該水溶性化合物としては、植物由来の二次代謝成分を中心として、多くのものが含まれるが、
例えば、ヘミテルペン、モノテルペン、セスキテルペン等の低分子テルペノイド類、植物ステロール類、フラバン-3-オール、アントシアニジン、イソフラボン等のフラボノイド類やそれらの配糖体、リグナン類、スチルベン類、ガロタンニンやエラグタンニンなどの加水分解型タンニン類またはその部分構造、カフェイン、ソラニン、エフェドリン、トマチン等のアルカロイド類等を挙げることができる。
当該水溶性化合物は、微生物、酵素等による直接・間接的影響を受けて直ちに変質する危険性がある。
また、腐敗・変質により抽出液から悪臭が発生し、作業性が低下するほか、周辺環境や残渣処理コストにも影響を及ぼすこととなる。
本発明においては、アルカリ処理において水酸化カルシウムの水溶液での抽出操作が行われることとなるため、このような微生物や酵素の作用を抑制することができる。
また、本発明においては、水抽出後の固形物に、再度アルカリまたはその水溶液を混合することにより、バイオマス原料の腐敗を抑制することができる。
なお、通常の水抽出を行った場合には、残渣として得られるバイオマス原料の固形物は、直ちに腐敗が開始し、品質低下のみならず、悪臭発生や微生物胞子の飛散などにより作業安全性の低下などをもたらすことになる。
特に、残渣に含まれるセルロースやヘミセルロースなどを糖化する際には、その貯蔵性や変換効率などに影響を及ぼすこととなる。
(ii) アルカリ条件下で可溶化する化合物
本発明では、上記水に容易に可溶化する化合物の他、アルカリ条件下で可溶化する化合物の回収が可能となる。
このような化合物としては、アルカリ性条件下に置かれることによる分子構造や荷電状態、共有結合の切断や会合状態などの変化により、溶解性や遊離性が向上したような化合物が挙げられる。
・フェルラ酸及びその類似物質
このような化合物として具体的には、カルボン酸とフェノール基を有する化合物である「フェルラ酸及びその類似物質」を挙げることができる。
当該化合物として具体的には、フェルラ酸、p-クマル酸、バニリン酸、p-ヒドロキシ安息香酸、シリンガ酸、没食子酸等、を挙げることができる。
これら一群の化合物は、高いラジカル消去能を有する抗酸化作用を有する有用化合物である。
また、当該化合物は、フェノール基とカルボキシル基を持っており、脱炭酸によりスチレン骨格をもつ化合物への誘導化が可能となる。これにより、多様な用途開発を促し、市場活性化と新産業創出に繋がるものと期待できる。
また、この脱炭酸処理を、公知の方法で化学的又は酵素的に行うことにより、化合物の疎水性を向上させ、溶媒抽出や疎水相互作用による回収を効率化させることができる。
また、当該化合物(特にフェルラ酸とp-クマル酸)は、新規生分解性ポリマー原料として注目されるPDC(2-ピロン-4,6-ジカルボン酸)の発酵原料となることから、これらをお互いに分離精製しなくても、基質として工業生産に用いることができるものと期待される。
特に、フェルラ酸は、抗鬱作用、高血圧予防作用、乳癌や肝臓癌に対する抗腫瘍活性、抗アルツハイマー作用等の具体的な薬理機能が期待される。また、抗菌剤、耐光性プラスチック原料などの用途の開発も期待されている。
現在、フェルラ酸の供給原料は、主に米ぬか油の抽出残渣であるため、その供給量が十分でないことから、高い市場価値が見出されている。
また、p-クマル酸は、p-クマル酸自体での市場はまだ開拓されていないが、類似化合物であるp-エチルフェノールでは、1,500円/kg程度(生産規模550トン)、p-ヒドロキシフェニル酢酸は15,000円/kg程度(生産規模20トン)とされており、高い経済価値を有することが期待される(化学工業日報社「15509の化学商品」)。
p-エチルフェノールは、機能高分子(ポリパラエチルフェノール)の原料、酸化防止剤、医薬品・農薬・染料などの原料としての需要がある。
またp-ヒドロキシフェニル酢酸は、抗生物質・消炎剤や農薬等のための素材としての市場がある。
なお、これらの有用化合物は、石油化学製品と異なり、カーボンニュートラルの観点から有用な製品原料となることが期待される。
また、環境負荷を軽減しえる持続的技術として、社会から受容性の高い工業製品の原料となることが期待される。
・回収方法
これらの化合物の多くは、前記アルカリ処理により、エステル結合が切断されて生じるものと考えられる。また、フェノール基の性質により疎水性の性質を有する物質である。
これらの化合物では、その官能基の性質により、アルカリ条件で陰イオンとして水溶液中の遊離性が増し、液分(上清, 洗浄液として得られる液相)に大量に遊離される性質を有する。
これらの有用化合物を回収した液分が、アルカリ処理後の上清を固液分離した後に得た液相である場合、そのpHは10から12付近の高い値になる。そのため、これらの有用化合物を回収する際には、必要に応じて液相のpHを低下させることが望ましい。
pHの低下・中和法としては、酸のコストを抑えつつ、且つ、カルシウムを炭酸カルシウム沈殿として回収可能なことから、炭酸ガスを用いる中和法が好適である。
また、炭酸カルシウムは沈殿を形成することから、遠心分離やフィルター濾過等の公知の固液分離技術を用いて分離することが可能となる。また、分離後は、燃焼して炭酸ガスと酸化カルシウムに戻すことが可能である。
なお、本発明において、当該中和においては、塩酸、硫酸や有機酸等の酸性薬剤を用いる方法を排除するものではない。
当該有用化合物は、バイオマス原料の粉砕条件やアルカリ処理の条件によっては、凝集, 重合, 分解等によって回収量が十分でない場合がある。
そこで、(i) 前記アルカリ処理を、上記外気温や室温条件(0℃より高い温度〜50℃未満)にて長時間かけて行うことや、(ii) 光安定性の低い物質に対しては、一連の工程を暗所や遮光条件で行うことにより、回収効率を向上させることが可能となる。
また、逆に、処理速度を向上するために、50〜80℃の温度で数十分から数時間でのアルカリ処理を行う態様も可能である。
当該有用化合物は、疎水性のフェノール基を有するので、公知の分離精製技術により‘疎水性樹脂’に吸着させて、好適に回収することが可能である。
また、当該有用化合物は、アルカリ条件にて陰イオンとして溶液中に存在するため、‘公知の分離精製技術により陰イオン交換樹脂’に吸着させて、回収することも可能である。特には、強塩基性陰イオン交換樹脂を用いることが好適である。
これらの樹脂を用いたカラムを用いることで、前記液分(上清, 洗浄液として得られる液相)から、当該有用化合物を効率良く回収することが可能となる。
また、本発明では、前記液分(上清, 洗浄液として得られる液相)に対して、揮発性の有機溶媒を用いて、液-液抽出を行うことによって、有機溶媒中に当該有用化合物を回収することができる。
当該有用化合物は、疎水性のフェノール基を有するため、有機溶媒に対して親和性が高いためである。
その後、有機溶媒を揮発させることによって、当該有用化合物を含む組成物を乾燥物として回収することが可能となる。乾燥前または乾燥後に、複数の有用化合物をクロマトグラフィーや再結晶などの公知技術で分離精製することができる。
ここで、当該液-液抽出に用いることができる揮発性有機溶媒としては、回収すべき有用化合物の化学的特性に依存するが、例えば、酢酸エチル等を挙げることができる。
ここで、酢酸エチルは、アルカリ性条件での安定性が高くないことから、中和後に当該抽出操作を行うことが望ましい。
また、炭酸ガス中和後に固液分離を行い、液分に対して、酸を添加してpHを4以下(より好ましくはpH3以下)としてから、酢酸エチル等での抽出を行うことができる。
・残液の有用性
上記特定の有用化合物を回収した後に生成する廃液は、まだ、無機塩類などの栄養源や遊離糖質などが残存している可能性がある。
そこで、完全に廃液とする前に、その特性を考慮した再利用工程を供することが有効である。
特に、アルカリ処理後に遊離した、澱粉やショ糖(シュークロース)などの易分解性糖質を、回収する処理を行うことが好適である。
そのため、前記洗浄処理の水(洗浄に用いる液)の使用量を極力減らし、易分解性糖質の濃度を高く保ち、回収しやすい状態とすることが望ましい。
〔無機物回収〕
本発明では、前記酵素糖化反応を行った後やエタノール発酵を行った後、目的物質回収後の残存物を、膜濾過または遠心分離することによって固液分離を行い、得られた固形物(炭酸カルシウム、リグニン、発酵菌等を含む固形物)を燃焼することにより、カルシウム塩を含む無機物(灰分)を回収することが可能となる。また、同時にリグニン由来の熱を回収することも可能である。
一度の固形物燃焼工程で、リグニンの燃焼とカルシウム塩を含む無機物の回収が可能となることも本発明のメリットである。
その際には、本発明において固液分離・洗浄後の液分や洗浄液に含まれる水酸化カルシウムを、二酸化炭素ガスを吹き付けて中和した後に得られる固形物として回収したものを混合し、燃焼することができる。
回収されたカルシウム塩を含む無機物(灰分)は、酸化カルシウムとして利用可能であり、本発明における水酸化カルシウム前処理工程において再利用できる。
また、この灰分は、原料由来の無機成分、例えば、稲わらから得られるシリカ分が含まれており、稲栽培用の資材として用いる場合等にはシリカを含有している点が肥料としての付加価値となる。
バイオマス変換工程における無機栄養分の回収および再利用は極めて重要である。バイオマス原料や発酵微生物等の生体成分等に由来する、または酵素製剤等の試薬に含まれているリン分を回収し、植物栄養源として再利用するための技術開発が求められているところである。
本発明では、リン酸とカルシウムイオンが結合し、種々の難溶性塩類を形成する現象に注目し、カルシウムを含む蒸留残渣を燃焼することにより、灰分としてリン酸分を回収する方法を発明した。
このように、燃焼後の灰分には、付加価値をもつカルシウムやその他の無機金属が含まれ、原料や変換工程に対応した特徴を有する無機塩素材を与えることが期待される。燃焼温度の違いにより、灰分の成分は変化する。
特に、炭酸カルシウムは、820℃以上、特に1000℃〜1100℃程度で効率的に酸化カルシウムに変化する。副産物として、炭酸カルシウムを残し、アルカリ分を調整することが重要な場合、温度条件を変化させて成分変化を制御することができる。
そして得られた灰分は、肥料や土壌改質剤等の農業関連資材の他に、舗装資材、金属回収資材、オーバーライミング等における水酸化カルシウム給源等の資材等として用いることができる。
以下、本発明を実施例等によって詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらにより何ら限定されるものではない。
〔調製例1〕『セルロース系バイオマス原料の調製』
セルロース系バイオマス原料として、表1に示す植物体地上部を用い、65℃で乾燥させ水分含量5%以下の状態で粒子サイズ1mm以下に粉砕し、乾燥粉末とした(原料1〜13)。
〔測定例1〕『各種物質含量の定量』
(1)「フェルラ酸及びp-クマル酸の定量」
以下の実施例において、フェルラ酸及びp-クマル酸の定量を次のように行った。
対象溶液1mLをイオン交換水で10倍希釈し、フィルター濾過(0.2μm)の後、UPLC(Acquity UPLC system, Waters Ltd., Missisauga, ON)分析により、フェルラ酸及びp-クマル酸の定量を行った。なお、UPLC分析の条件は以下の通りである。
・分析カラム:Acquity UPLC BEH C18 (2.1×100mm, 1.7μm)
・カラム温度:40℃
・移動相:〔移動相A〕 3.6 mM H2SO4含有50% アセトニトリル
〔移動相B〕 0.08mM NaOH水溶液
・流速:0.45 mL/min
・グラジエント条件:A:B=10:90→A:B=80:20(5分間)→A:B=80:20(1分間)→A:B=10:90(1分間)
・注入量:5μL
・測定波長:280〜400nm
(2)「カルシウムイオンの定量」
以下の実施例において、カルシウムイオンの定量を次のように行った。
対象溶液1mLに塩酸を加えて中和し、希釈後にイオンクロマトグラフィー(IC-2001, 東ソー, 東京)分析により、カルシウムイオンの定量を行った。
なお、イオンクロマトグラフィー分析の条件は以下の通りである。
・分析カラム:TSKgel SuperIC-A/C(4.6×20mm, SUS)
・カラム温度:40℃
・移動相:6mM 18-クラウン6-エーテル, 0.45mM 5-スルホサリチル酸, 5mM L-酒石酸, 5% アセトニトリル
・流速:0.6 mL/min
・注入量:30μL
・検出:電気伝導度
〔測定例2〕『各種糖質含量の定量及び糖化率の算出』
(1)「グルコースおよびキシロースの定量」
以下の実施例において、グルコースおよびキシロースの定量を次のように行った。
各種対象の粉末を量り取り、2段階硫酸処理(72%(w/w)硫酸, 1mL/20mg原料粉末、30℃で1時間処理後、水で8倍希釈し、100℃、2時間処理)を行った。
そして、一部をサンプリングして10%(w/w)CaCO3懸濁液で中和した後、グルコースC-IIテストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いて、乾重当たりのグルコース含量を測定した。また、D-キシロースキット(メガザイム社)を用いて乾重当たりのキシロース含量を測定した。
(2)「グルカン含量およびキシラン含量の定量」
各種対象(サンプル)の乾重量当たりのグルカン含量とキシラン含量を以下の式1,2により計算した。
〔式1〕
グルカン含量(%)=(グルコース量×162/180)/(サンプル乾重量)×100
〔式2〕
キシラン含量(%)=(キシロース量×132/150)/(サンプル乾重量)×100
(3)「糖化反応における糖化率の算出」
各糖化反応におけるグルカン糖化率, キシラン糖化率, 総糖化率を、以下の式3, 4, 5で計算した。
〔式3〕
グルカン糖化率(%)=(酵素糖化により生成したグルコース量)/(酵素糖化に供したサンプルのグルカン含量×180/162)×100
〔式4〕
キシラン糖化率(%)=(酵素糖化により生成したキシロース量)/(酵素糖化に供したサンプルのキシラン含量×150/132)×100
〔式5〕
総糖化率(%)=〔(酵素糖化により生成したグルコース量+酵素糖化により生成したキシロース量)〕/〔(酵素糖化に供したサンプルのグルカン含量×180/162)+(酵素糖化に供した前処理物のキシラン含量×150/132)〕×100
(4)「バイオマス原料に対する単糖回収率の算出」
糖化反応において、バイオマス原料に対するグルコース回収率, キシロース回収率, 単糖回収率を、以下の式6, 7, 8で計算した。
〔式6〕
グルコース回収率(%)=(酵素糖化により生成したグルコース量)/(バイオマス原料のグルカン含量×180/162)×100
〔式7〕
キシロース回収率(%)=(酵素糖化により生成したキシロース量)/(原料バイオマスのキシラン含量×150/132)×100
〔式8〕
単糖回収率(%)=〔(酵素糖化により生成したグルコース量+酵素糖化により生成したキシロース量)〕/〔(バイオマス原料のグルカン含量×180/162)+(バイオマス原料のキシラン含量×150/132)〕×100
〔実施例1〕『アルカリ処理物からのフェルラ酸及びp-クマル酸の抽出』
バイオマス原料の酵素糖化法において、酵素糖化の前処理であるアルカリ処理を行った上清(廃液)から、フェルラ酸及びp-クマル酸の抽出が可能かを検討した。
(1)「アルカリ処理物からのフェルラ酸及びp-クマル酸の抽出」
・アルカリ処理
調製例1で調製した各原料の乾燥粉末200mgを、10mL容バイアル瓶(No.3, マルエム, 大阪)に量り取り、水酸化カルシウム粉末20mg(10%(w/w原料乾重))と純水4mLを加え(水酸化カルシウム濃度0.5%(w/v))、ブチルゴム栓及びアルミニウムキャップで密栓した。
次いで、スラリーが均一になるように充分に撹拌及び混合した。
その後、高温高圧滅菌機による120℃, 1時間の加熱処理を行うか、又は、室温で1週間静置によるアルカリ処理を行った。
・定量
上記アルカリ処理後のスラリーの一部(1mL)をサンプリングし、遠心分離(25,000×g, 3分間)を行い、上清を回収した。
そして、各上清に含まれるフェルラ酸及びp-クマル酸の定量を行った。フェルラ酸の測定結果を図1に、p-クマル酸の測定結果を図2に示した。
・結果
その結果、上記アルカリ処理後のスラリー上清の全てにおいて、フェルラ酸, p-クマル酸がそれぞれ最低でも1mg/g(原料乾重)以上抽出できることが示された。特に、p-クマル酸の抽出量は全体的に高かった。
また、アルカリ処理において、加熱工程を加えずに、長期間(1週間)の室温静置を行った試料の方が、各成分が安定に残存し、原料1g(乾重)に対する抽出効率が向上することが示された。この効果は、特にフェルラ酸において顕著であった。
なお、特に抽出量が多かった原料として、原料9のソルガムバガス(N6)では6.1mg/g(原料)のフェルラ酸が、原料6のサトウキビバガス(NiF8)では21.4mg/g(原料)のp-クマル酸が、抽出できた。
(2)「フェルラ酸及びp-クマル酸の熱安定性の検討」
フェルラ酸及びp-クマル酸の水酸化カルシウム水溶液中の熱安定性を調べた。
・熱安定性試験
フェルラ酸及びp-クマル酸の標品を用いて、0.5mMフェルラ酸-水酸化カルシウム飽和溶液, 及び, 0.5mMp-クマル酸-水酸化カルシウム飽和溶液を調製し、それぞれ2.0mL容ネジ口チューブに0.5mLを量り取り密栓した。
その後、蛍光灯照明の下、ヒートブロックを用いて、40℃, 60℃, 80℃, 100℃のそれぞれの温度条件について、20, 40, 60分間ずつ加熱処理行い、冷却後にフェルラ酸及びp-クマル酸の定量を行った。
また、対照として、室温(加温なし)でも同様の試験を行った。フェルラ酸の測定結果を図3に、p-クマル酸の測定結果を図4に示した。
・結果
その結果、‘フェルラ酸’については、室温〜60℃の加熱処理では、60分間行った場合でも減少傾向は確認されなかった。
しかし、80℃の加熱処理では、40分間はほぼ安定に存在したが、60分間経過後にはやや減少した(残存率91.4%)。また、100℃の加熱処理では、20分間の処理で残存率は75.6%まで減少し、60分間経過後には残存率は22.0%まで減少した。
一方、‘p-クマル酸’においては、100℃で60分間の加熱処理を行った場合でも、全く減少傾向が確認されなかった。即ち、100℃でも安定的に存在する事が明らかとなった。
(3)「フェルラ酸及びp-クマル酸の光安定性の検討」
フェルラ酸及びp-クマル酸の水酸化カルシウム水溶液中の光安定性を検討した。
・光安定性試験
ヒートブロック全体をアルミ箔で覆ったことを除いては、上記(2)と全く同様の試験を行い、フェルラ酸及びp-クマル酸の定量を行った。
フェルラ酸の測定結果を図5に、p-クマル酸の測定結果を図6に示した。
・結果
その結果、‘フェルラ酸’については、ヒートブロック全体をアルミ箔で覆った場合、80℃で60分間の加熱処理を行った場合でも、ほぼ安定的に存在することが示された。
また、100℃の加熱処理の場合でも、20分間処理の残存率が91.8%、60分間処理の残存率は46.2%と、フェルラ酸の残存率が改善された。
上記(2)の結果と併せて判断すると、フェルラ酸は光安定性が低い物質であることが示された。このことから、フェルラ酸の抽出操作の際には、遮光により抽出率が改善できることが示された。
一方、‘p-クマル酸’においては、100℃で60分間の加熱処理を行った場合でも、全く減少傾向が確認されなかった。
上記(2)の結果から判断すると、p-クマル酸は比較的光安定性が高い物質であることが示された。
(4)「アルカリ処理時間と抽出量の関係」
アルカリ処理における室温(約25℃)静置において、時間の経過に伴う抽出量の経時変化を調べた。
・アルカリ処理
稲わら(原料1:品種コシヒカリ)乾燥粉末200mgを、10mL容バイアル瓶(No.3, マルエム, 大阪)に量り取り、上記(1)に記載の方法と同様にしてアルカリと水とを混合した。
その後、室温で静置し、図7でプロットした各時間(0〜168時間)の際に経時的にフェルラ酸及びp-クマル酸の定量を行った。結果を図7に示した。
・結果
その結果、フェルラ酸の抽出量は、アルカリ処理における室温での静置時間が長くなるにつれ上昇し、96時間でほぼ最大となることが示された。
また、p-クマル酸の抽出量についても、アルカリ処理における室温での静置時間が長くなるにつれ上昇し、72時間でほぼ最大となることが示された。
なお、フェルラ酸及びp-クマル酸の両方とも、上記より処理時間を長くしても、それ以上の抽出量の増加は見られなかった。
(5)「アルカリ濃度と抽出量の関係」
・アルカリ処理
稲わら(原料1:品種コシヒカリ)乾燥粉末200mgを、10mL容バイアル瓶(No.3, マルエム, 大阪)に量り取り、水酸化カルシウム粉末0〜30mg(0〜15%(w/w原料乾重))と純水4mLを加え、ブチルゴム栓及びアルミニウムキャップで密栓した。
次いで、スラリーが均一になるように充分に撹拌及び混合を行った。
その後、ウォーターバスによる80℃, 1時間の加熱処理を行うか、又は、室温で1時間静置によるアルカリ処理を行った。
・定量
上記アルカリ処理後のスラリーの一部(0.1mL)をサンプリングし、遠心分離(25,000×g, 3分間)を行い、上清を回収した。
そして、各上清に含まれるフェルラ酸及びp-クマル酸の定量を行い、その結果を図8に示した。
・結果
その結果、フェルラ酸の抽出量は、10%(w/w原料乾重)以上のアルカリ濃度で80℃, 1時間加熱処理でほぼ最大となることが示された。また、室温、1時間処理では抽出量は少ない結果となった。
また、p-クマル酸の抽出量については、12.5%(w/w原料乾重)以上のアルカリ濃度で80℃、1時間加熱処理でほぼ最大となることが示された。10%(w/w原料乾重)でも最大値の76.5%が抽出されることが示された。また、室温、1時間処理では抽出量は少ない結果となった。
〔実施例2〕『アルカリ処理物(稲わら粉末)に対する水洗浄の効果』
稲わら粉末のアルカリ処理物に対して水洗浄を複数回行い、水洗浄液(液分)中から抽出回収できるフェルラ酸及びp-クマル酸の量を調べた。また、水洗浄後の固形物からの酵素糖化効率を調べた。
(1)「洗浄液からのフェルラ酸及びp-クマル酸の抽出回収」
・アルカリ処理
稲わら(原料1:品種コシヒカリ)乾燥粉末5gに対して10%(w/w原料乾重)の水酸化カルシウム粉末を混合した後、稲わら粉末乾重に対して2.3倍となるように純水を添加し充分に混合した。そして、室温(約25℃)で7日間静置し、アルカリ処理物を得た(試料2-1)。
・水洗浄及び固液分離
アルカリ処理後、原料(乾重)に対して5倍量の純水を添加混合し、遠心分離(20,000×g, 10分間)により、固形物と洗浄液(液分)を分離して回収した。
また、固形物に対しては、同様に純水添加混合と遠心分離を行う操作を行った。当該操作は、初回の固液分離を含めて合計で5回行った。
得られた、1〜5回目に回収した各洗浄液について、フェルラ酸及びp-クマル酸の定量を行い、抽出効率を調べた。
また、各洗浄液(液分)についてカルシウムイオンの定量を行い、固形物に含まれているカルシウムイオン残存率を差し引き法により算出した。これらの結果を、図9に示した
・結果
その結果、稲わら粉末のアルカリ処理物に対する水洗浄液から、大量のフェルラ酸及びp-クマル酸が抽出回収できることが示された。
特に、1回目の水洗浄液に、原料に含まれるフェルラ酸及びp-クマル酸の多くが抽出回収できることが示された。
また、3回目までの水洗浄液に、ほとんど全てのフェルラ酸及びp-クマル酸が抽出回収できることが示された。
また、アルカリ処理により固形物に付与されたカルシウムイオンは、水洗浄後でも約80%が固形物中に保持され、水洗浄液中にほとんど溶出しないことが示された。
(2)「水洗浄後の固形物に対する糖化処理」
・酵素糖化
上記アルカリ処理物(試料2-1)と、アルカリ処理後に水洗浄を5回行った後の固形物(水洗浄後の固形物:試料2-2)を、10mL容バイアル瓶に原料換算で200mgになるように量り取り、体積が3mLとなるように純水を添加し、二酸化炭素で中和を行った。
中和後の懸濁液に対し、1mLの酵素液を添加した。なお、酵素液としては、12FPU(濾紙崩壊活性;pH5, 50℃での力価)相当のトリコデルマ・リーセイ培養液及び43CbU(セロビアーゼ活性;pH5, 50℃での力価)相当のβ-グルコシダーゼ製剤(Novozyme 188, シグマ社)との混合液を用いた。
酵素液添加後、直ちに二酸化炭素で1.5気圧に加圧し、インキュベーター(BR-23FP, タイテック)中にて50℃、150rpmで回転させながら72時間の糖化反応を行った。
糖化反応後、反応液の一部分をサンプリングして水で希釈し、グルコース量とキシロース量を定量した。また、糖化反応によるグルカン糖化率, キシラン糖化率, 総糖化率を算出した。これらの結果を表2に示した。
・結果
その結果、稲わら粉末のアルカリ処理物を水洗浄した固形物(試料2-2)に対して酵素糖化を行うことによって、グルコースとキシロースを大量に糖化回収できることが示された。
当該固形物に含まれる糖質に対するグルカン糖化率, キシランの糖化率, 総糖化率は、それぞれ62.4%, 70.9%, 65.0%であった。
これらの値は、水洗浄前のアルカリ処理物(試料2-1)に対して同様の処理を行った場合と比べて、約10%程度高い値であった。
この結果は、バイオマス原料のアルカリ処理物に対して、さらに水洗浄を行うことによって、酵素糖化効率が大きく向上することを示している。
(3)「フェルラ酸及びp-クマル酸の精製方法の検討」
疎水性樹脂又は陰イオン樹脂を用いて、稲わら粉末アルカリ処理物の水洗浄液から、フェルラ酸及びp-クマル酸の精製回収が可能かを検討した。
・カラム精製
上記水洗浄における1回目の洗浄液(試料2-3)1mLを、疎水性樹脂(InertSep C18 500mg/6mL, GL サイエンス, 東京)又は陰イオン交換樹脂(InertSep SAX 500mg/6mL, GLサイエンス, 東京)を充填したカラムに供した。
なお、この時の通過液をUPLC分析したところ、フェルラ酸及びp-クマル酸が検出されないことから、フェルラ酸及びp-クマル酸が樹脂に吸着されたことを確認した。
その後、疎水性樹脂カラムに対して50%アセトニトリルを通液し、吸着物を溶出させた(試料2-4)。また、陰イオン交換樹脂カラムに対しては1M NaCl溶液を通液し、吸着物を溶出させた(試料2-5)。
そして、カラム通過前の水洗浄液(試料2-3), 疎水性樹脂カラム溶出液(試料2-4), 陰イオン交換樹脂カラム溶出液(試料2-5)、に含まれるフェルラ酸及びp-クマル酸量を定量し、カラム精製による回収率を算出した。結果を表3に示した。
・結果
その結果、‘疎水性樹脂カラム’で精製を行うことにより、精製に供したフェルラ酸の96.4%, p-クマル酸の90.9%が精製回収できることが示された(試料2-4)。
また、‘陰イオン交換樹脂カラム’で精製を行うことにより、精製に供したフェルラ酸の74.4%, p-クマル酸の78.5%が精製回収できることが示された(試料2-5)。
これらの結果から、水洗浄液に抽出されたフェルラ酸及びp-クマル酸は、疎水性樹脂又は陰イオン交換樹脂を用いて精製回収可能であることが示された。特に、疎水性樹脂を用いた精製が好適であることが示された。
〔実施例3〕『アルカリ処理物(サトウキビ粉末)に対する水洗浄の効果』
サトウキビバガス粉末のアルカリ処理物に対して水洗浄を複数回行い、水洗浄液(廃液)中から抽出回収できるフェルラ酸及びp-クマル酸の量を調べた。また、水洗浄後の固形物からの酵素糖化効率を調べた。
(1)「フェルラ酸及びp-クマル酸の抽出」
・アルカリ処理
サトウキビバガス(原料6:品種NiF8)乾燥粉末1kgに対して10%(w/w原料乾重)の水酸化カルシウム粉末を混合した後、サトウキビバガス粉末乾重に対して2.3倍となるように純水を添加し充分に混合した。そして、室温(約25℃)で7日間静置した。
・水洗浄及び固液分離
アルカリ処理後、原料(乾重)に対して5倍量の純水を添加混合し、ポリプロピレン製不織布(CN-207, アズワン, 大阪)を用いて、固形物と洗浄液を分離して回収した。当該操作は、合計で5回行った。
得られた、1〜5回目に回収した各洗浄液(液分)について、フェルラ酸及びp-クマル酸の定量を行い、抽出効率を調べた。これらの結果を、図10に示した
・結果
その結果、サトウキビバガス粉末のアルカリ処理物に対する水洗浄液から、大量のフェルラ酸及びp-クマル酸が抽出回収できることが示された。
特に、1回目の水洗浄液に、原料に含まれるフェルラ酸及びp-クマル酸の多くが抽出回収できることが示された。
また、3回目までの水洗浄液に、ほとんど全てのフェルラ酸及びp-クマル酸が抽出回収できることが示された。
なお、サトウキビバガスからは、p-クマル酸が特に多く抽出できることが示された。
(2)「水洗浄後の固形物に対する糖化処理」
・加熱処理
上記アルカリ処理後に水洗浄を5回行った後の固形物(水洗浄後の固形物:試料3-1)を、10mL容バイアル瓶にアルカリ処理前のバイオマス原料換算で200mgになるように量り取り、高温高圧滅菌機により120℃, 1時間の加熱処理を行った(水処理後の固形物の加熱処理物:試料3-2)。
・酵素糖化
その後、水洗浄後の固形物(試料3-1)と、水洗浄後の固形物の加熱処理物(試料3-2)に対して、実施例2(2)に記載の方法と同様にして酵素糖化反応を行った。
そして、反応液の一部分をサンプリングして水で希釈し、グルコース量とキシロース量を定量した。また、原料に対するグルコース回収率, キシロース回収率を算出した。これらの結果を表4に示した。
・結果
その結果、サトウキビバガス粉末のアルカリ処理物を水洗浄した固形物(試料3-1)に対して酵素糖化を行うことによって、グルコースとキシロースを大量に糖化回収できることが示された。
当該固形物に含まれる糖質について、グルコース回収率, キシロース回収率は、それぞれ64.7%, 64.9%であった。
また、当該固形物の加熱処理物(試料3-2)では、グルコース回収率, キシロース回収率は、それぞれ74.2%, 75.9%であった。
これらの値は、水洗浄後の固形物(試料3-1)をそのまま糖化した場合と比べて、約20%程度高い値であった。
この結果は、バイオマス原料のアルカリ処理物の水洗浄物に対して、さらに加熱処理を行うことによって、酵素糖化効率が大きく向上することを示している。
(3)「フェルラ酸及びp-クマル酸の精製方法の検討」
強塩基性陰イオン交換樹脂を用いて、サトウキビバガス粉末アルカリ処理物の水洗浄液からのフェルラ酸及びp-クマル酸の精製回収が可能かを検討した。
・カラム精製
上記水洗浄における1回目の洗浄液(試料3-3)1mLを、強塩基性陰イオン交換樹脂(Toyopearl SuperQ-650(メタクリルポリマー), 東ソー, 東京)を充填したカラムに供した。
なお、この時の通過液をUPLC分析したところ、フェルラ酸及びp-クマル酸が検出されないことから、フェルラ酸及びp-クマル酸が樹脂に吸着されたことを確認した。
その後、水2.0mlを通過させてカラムを洗浄した後、0.5M NaCl水溶液(2.5mL)又は1M NaClを含む50%EtOH(2.5mL)を通液し、溶出液をそれぞれ回収した(試料3-4, 試料3-5)。
そして、カラム通過前の水洗浄液(試料3-3), 強塩基性陰イオン交換樹脂の溶出液(試料3-4, 試料3-5)、に含まれるフェルラ酸及びp-クマル酸量を定量し、カラム精製による回収率を算出した。結果を表5に示した
・結果
その結果、‘強塩基性陰イオン交換樹脂カラム’を用いて、0.5M NaCl水溶液で溶出することにより、精製に供したフェルラ酸及びp-クマル酸の60%以上回収できることが示された(試料3-4)。
また、1M NaClを含む50%EtOH(2.5mL)を溶出液として使うことにより、精製に供したフェルラ酸の74.5%, p-クマル酸の83.9%が精製回収できることが示された(試料3-5)。
この結果から、水洗浄液に抽出されたフェルラ酸及びp-クマル酸は、強塩基性陰イオン交換樹脂を用いて精製回収できることが示された。
〔実施例4〕『篩メッシュを用いた簡易分離法』
篩メッシュを用いて固形物と水洗浄液を分ける簡易分離法により、フェルラ酸及びp-クマル酸の分離回収が可能かを検討した。
・アルカリ処理
稲わら(原料1:品種コシヒカリ)乾燥粉末5gに対して、実施例2(1)に記載の方法と同様にして、アルカリ処理を行った。
・水洗浄及び固液分離
その後、以下に記載の所定量の純水を添加混合し、篩メッシュ(PBS-05, 200メッシュ, アズワン, 大阪)内に移し、当該篩メッシュを遠心チューブ(250ml)に装填し、100×g, 3分間遠心分離を行い、固形物と洗浄液を分離して回収した。
また、固形物に対しては、同様に純水添加混合と遠心分離を行う操作を行った。当該操作は、合計で5回行った。
なお、純水の添加量については、1回目:5ml、2回目:4ml、3回目:4ml、4回目:3ml、5回目:3mlを添加した。
得られた、1〜5回目に回収した各洗浄液について、フェルラ酸及びp-クマル酸の定量を行い、抽出効率を調べた。結果を図11に示した
その結果、篩メッシュを用いて低速遠心を行う簡易な分離法でも、フェルラ酸及びp-クマル酸を分離回収できることが示された。当該分離法は、大量の固液分離が可能な態様である。
〔実施例5〕『フェルラ酸の簡易分離法の検討』
水洗浄液に含まれる有用化合物であるフェルラ酸が、揮発性の高い酢酸エチルへの回収が可能かを検討した。
・水洗浄及び固液分離
実施例3(1)に記載の方法と同様にして調製したアルカリ処理物(サトウキビバガス)に対して、原料(乾重)に対して5倍量の純水を添加混合した。
当該溶液0.5mLにCOガスの吹き付けによる中和処理を行ったところ、吹き付け後の洗浄液のpHは6.2となった。
その後、遠心分離(25,000×g, 3分間)を行い、固形物と洗浄液を分離した。
・酢酸エチル抽出
当該水洗浄液(試料5-1)0.5mLに酢酸エチル0.5mLを加え、遠心分離(25,000×g, 3分間)を行い、酢酸エチル層と水層に分別した。
また、当該水洗浄液(試料5-1)0.5mLに、5M 塩酸15μLを加えよく撹拌及び混合し(混合液のpH 2.8)、酢酸エチル0.5mLを加え、遠心分離(25,000×g, 3分間)を行い、酢酸エチル層と水層に分別した。
それぞれの酢酸エチル層0.1mLを取り、N2ガスの吹き付けにより酢酸エチルを揮発除去した。析出物をメタノール1mLに溶解させてフェルラ酸の定量を行い、酢酸エチルによる回収率を算出した。また、当該水洗浄液(試料5-1)については、直接、フェルラ酸の定量を行った。それらの結果を表6に示した
・結果
その結果、酢酸エチルによる液-液抽出を行うことにより、当該処理に供したフェルラ酸の89.5%が分離回収できることが示された(試料5-2)。
また、当該水洗浄液(試料5-1)を酸性側にすることで、フェルラ酸の回収率は99.3%に上昇した(試料5-3)。
この結果から、水洗浄液に抽出されたフェルラ酸は、酢酸エチル中に分離回収が可能であることが示された。また、酢酸エチルは、揮発性が高いことから、フェルラ酸の濃縮乾固を容易に可能となることが示された。
〔実施例6〕『加熱処理が糖化効率に与える影響』
水洗浄後のをアルカリ処理を高温で行った場合においても、フェルラ酸及びp-クマル酸が回収できるかを調べた。また、水洗浄後の固形物からの酵素糖化効率を調べた。
(1) 「加熱処理後の固形物に対する糖化処理」
・1回目のアルカリ処理
稲わら(原料1:品種コシヒカリ)乾燥粉末1gに対して10%(w/w原料乾重)の水酸化カルシウム粉末を混合した後、稲わら粉末に対して19倍となるように純水を添加し充分に混合した。そして、ウォーターバス中で80℃, 1時間加熱処理した。
・水洗浄及び固液分離
前記アルカリ処理後、原料(乾重)に対して5倍量の純水を添加混合し、遠心分離(12,000×g, 10分間)により、固形物と洗浄液(液分)を分離して回収した。
また、固形物に対しては、同様に純水添加混合と遠心分離を行う操作を行った。当該操作は、初回の固液分離を含めて合計で5回行った。
・再度の加熱処理
上記アルカリ処理物と、アルカリ処理後に水洗浄を5回行った後の固形物(水洗浄後の固形物)を、10mL容バイアル瓶に原料換算で200mgになるように量り取り、体積が4mLとなるように純水を添加したもの(試料6-1)、そして、試料6-1を高温高圧滅菌機により120℃, 1時間の加熱処理を行ったもの(試料6-2)を調製した。
また、前記水洗浄後の固形物を、10mL容バイアル瓶に原料換算で200mgになるように量り取り、水酸化カルシウムをさらに10mg添加した後に、体積が4mLとなるように純水を添加したものを調製し、高温高圧滅菌機により120℃, 1時間の加熱処理を行った(試料6-3)。
・酵素糖化
その後、洗浄後に加熱処理を行っていない固形物(試料6-1)と、水洗浄後の固形物の加熱処理物(試料6-2)、水洗浄後の固形物に水酸化カルシウムを添加した加熱処理物(試料6-3)に対して、実施例2(2)に記載の方法と同様にして中和と酵素糖化反応を行った。
なお、酵素液としては、24FPU(濾紙崩壊活性;pH5, 50℃での力価)相当のトリコデルマ・リーセイ培養液及び287CbU(セロビアーゼ活性;pH5, 50℃での力価)相当のβ-グルコシダーゼ製剤(Novozyme 188, シグマ社)との混合液を用い、50℃, 150rpmで回転させながら24時間の糖化反応を行った。
反応後、反応液の一部分をサンプリングして水で希釈し、グルコース量とキシロース量を定量した。また、糖化反応によるグルコース回収率及びキシロース回収率を算出し、これらの結果を表7に示した。
・結果
その結果、水洗浄した固形物の加熱処理物(試料6-2)のグルコース回収率, キシロース回収率は、それぞれ78.4%, 76.0%であった。
この結果から、バイオマス原料のアルカリ処理物の水洗浄物に対して、さらに加熱処理を行うことによって(試料6-2)、加熱処理をしない場合(試料6-1)に比べて、酵素糖化効率が約7〜10%と大きく向上することが示された。
また、当該固形物にアルカリを再添加した加熱処理物(試料6-3)では、グルコース回収率, キシロース回収率は、それぞれ78.2%, 78.6%であった。
この結果から、アルカリの追加添加後の加熱処理は(試料6-3)、キシロースの酵素糖化効率が改善に有効であることが示された。
本発明は、セルロース系バイオマス原料の糖化工程の経済性を飛躍的に向上することができるものであり、バイオエタノールなどの主製品の製造工程を動かしつつ、付加価値の高い副産物を効率的に回収するための複合的プロセスを提供する。
本発明によれば、バイオマスの総合利用を通じて多様な価値を創造し、環境負荷の少ない持続的社会の構築を助ける技術を提供することが可能となり、新産業創出を強く後押しする。

Claims (9)

  1. 裁断, 粉砕, 磨砕, 擂潰, 又は粉末化したセルロース系バイオマス原料, 水酸化カルシウム, 及び水を含むスラリーを調製して当該原料に対するアルカリ処理を行い、;その後固液分離を行い、;当該固液分離によって得られた固形物, 又は, 当該固形物と水との混合物に対して、二酸化炭素を用いて中和することによりpHを5〜8に調整し、;酵素糖化反応を行う、;ことを特徴とする、セルロース系バイオマス原料の酵素糖化方法。
  2. 前記セルロース系バイオマス原料が、稲, 小麦, 大麦, 燕麦, トウモロコシ, サトウキビ, ソルガム, エリアンサス, ミスカンサス, スイッチグラス, ユーカリ, ポプラ, ヤナギ, 及びネピアグラスからなる群から選ばれる1以上の植物の植物体である、請求項1に記載の酵素糖化方法。
  3. 前記固液分離後に得られた固形物に対して、水, 又は, 実質的に水からなる溶液を用いて洗浄し、固液分離を行って再度固形物を得ることを特徴とする、請求項1又は2に記載の酵素糖化方法。
  4. 前記固液分離後に得られた固形物に対して、必要に応じて水酸化カルシウム及び/又は水を混合した後、前記固形物に対するアルカリ処理を行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の酵素糖化方法。
  5. 前記アルカリ処理における前記バイオマス原料と水酸化カルシウムの混合割合が、前記バイオマス原料の乾燥重量100重量部に対して、水酸化カルシウムを2〜40重量部を混合する割合である、請求項1〜4のいずれかに記載の酵素糖化方法。
  6. 前記二酸化炭素を用いた中和を行う前に、前記アルカリ処理において80〜180℃で10〜180分間の加熱を行う、及び/又は、前記アルカリ処理後に得られた前記固形物に対して80〜180℃で10〜180分間の加熱を行う、ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の酵素糖化方法。
  7. 請求項1〜6に記載の固液分離によって固形物と分離された液分に対して、抽出及び/又は精製工程を行うことを特徴とする、セルロース系バイオマス原料からの有用化合物の回収方法。
  8. 請求項1〜6に記載の固液分離によって固形物と分離された液分に対して、疎水性樹脂, 又は, 陰イオン交換樹脂による精製を行うことを特徴とする、セルロース系バイオマス原料からのフェルラ酸, p-クマル酸, バニリン酸, p-ヒドロキシ安息香酸, シリンガ酸, 没食子酸, 及びジフェルラ酸から選ばれる1以上の化合物の回収方法。
  9. 請求項1〜6に記載の固液分離によって固形物と分離された液分に対して、揮発性有機溶媒を用いた液-液抽出を行うことを特徴とする、セルロース系バイオマス原料からのフェルラ酸, p-クマル酸, バニリン酸, p-ヒドロキシ安息香酸, シリンガ酸, 没食子酸, 及びジフェルラ酸から選ばれる1以上の化合物の回収方法。
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