JP5875009B2 - 哺乳類生物における選択的スプライシングの発現プロファイルおよび制御機構を明らかにするトランスジェニックレポーターシステム - Google Patents
哺乳類生物における選択的スプライシングの発現プロファイルおよび制御機構を明らかにするトランスジェニックレポーターシステム Download PDFInfo
- Publication number
- JP5875009B2 JP5875009B2 JP2012554135A JP2012554135A JP5875009B2 JP 5875009 B2 JP5875009 B2 JP 5875009B2 JP 2012554135 A JP2012554135 A JP 2012554135A JP 2012554135 A JP2012554135 A JP 2012554135A JP 5875009 B2 JP5875009 B2 JP 5875009B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- gene
- reporter
- exon
- splicing
- alternative splicing
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Classifications
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12Q—MEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
- C12Q1/00—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions
- C12Q1/68—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving nucleic acids
- C12Q1/6897—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving nucleic acids involving reporter genes operably linked to promoters
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12N—MICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
- C12N15/00—Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
- C12N15/09—Recombinant DNA-technology
- C12N15/10—Processes for the isolation, preparation or purification of DNA or RNA
- C12N15/1034—Isolating an individual clone by screening libraries
- C12N15/1086—Preparation or screening of expression libraries, e.g. reporter assays
Landscapes
- Chemical & Material Sciences (AREA)
- Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
- Health & Medical Sciences (AREA)
- Organic Chemistry (AREA)
- Genetics & Genomics (AREA)
- Engineering & Computer Science (AREA)
- Zoology (AREA)
- Wood Science & Technology (AREA)
- General Engineering & Computer Science (AREA)
- Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
- Biotechnology (AREA)
- Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
- Biophysics (AREA)
- General Health & Medical Sciences (AREA)
- Microbiology (AREA)
- Molecular Biology (AREA)
- Biochemistry (AREA)
- Physics & Mathematics (AREA)
- Biomedical Technology (AREA)
- Analytical Chemistry (AREA)
- Immunology (AREA)
- Bioinformatics & Computational Biology (AREA)
- Crystallography & Structural Chemistry (AREA)
- Plant Pathology (AREA)
- Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
- Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
Description
本発明は、2010年6月1日に提出された米国特許出願第61/350,420号の恩典を主張し、その内容はすべて、参照により本明細書に組み入れられる。
本発明の1つの目的は、哺乳類生物における新たな選択的スプライシング・レポーターシステムを開発すること、ならびに、該選択的スプライシング・レポーターシステムを利用して、哺乳類多細胞生物における選択的スプライシングパターンをより正確に検出するための方法、ならびに哺乳類多細胞生物における選択的スプライシングに影響を及ぼす物質および遺伝子領域を効率的に同定するための方法などを提供することである。
プロテオームの組織特異的多様性を生み出すにはmRNA前駆体(pre-mRNA)の選択的スプライシングが必須であるため、発生過程または組織特異的機能を理解するにはその制御機構を解明することが不可欠である。本発明者らは線虫において、選択的エクソンの相互排他的選択の組織特異的制御についてトランスジェニックスプライシング・レポーターを用いて詳細に調べたが、その理由は、これが選択的スプライシングの典型的な分子機構に当たると仮説を立てたためである。これまで、相互排他的スプライシングの制御は、選択的エクソンのいずれかを個別に増強または抑制する複数の制御因子の均衡の結果として説明されてきた。しかし、この「均衡」モデルには、いくつかの候補からの唯一の適切なエクソンの選択をどのように確実に行うのか、およびそれらをどのように切り替えるのかという点に関して疑問が残っている。これらの疑問を解明するために、本発明者らは、線維芽細胞増殖因子受容体2(FGFR2)遺伝子をモデルとして用いる、哺乳動物用の独自の2色蛍光スプライシング・レポーターシステムを作製した。このスプライシング・レポーターを用いることにより、本発明者らは、重要な制御因子が2つの相互排他的エクソンの順序づけられたスプライス部位認識を変更し、最終的に単一エクソン選択およびそれらの明確な切り替えを確実にする「スイッチ様」機構によってFGFR2遺伝子が制御されることを実証した。また、この知見により、組織特異的に発現されるRNA結合タンパク質と広範囲に発現されるRNA結合タンパク質との組み合わせによって特定の遺伝子の選択的スプライシングが組織特異的な様式で制御される、進化的に保存されている「スプライス暗号」も解明された。これらの知見は、スプライシングを受けた多数の遺伝子が限られた数の制御因子によってさまざまな組織特異的様式でどのように制御されるのかを理解するための、最終的には発生過程または組織特異的な機能を理解するための、重大な手がかりを与える。
哺乳類多細胞生物における特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出するための本発明の第一の方法は、
(a)選択的スプライシングを受ける該特定の遺伝子に少なくとも2種類の異なるレポーター遺伝子が挿入されるように、該哺乳類多細胞生物にDNA構築物を導入する段階であって、該異なるレポーター遺伝子の転写物それぞれが選択的スプライシングによって生じる少なくとも2種類の異なる成熟mRNAのそれぞれと融合するように、該レポーター遺伝子が挿入される、段階;および
(b)該レポーター遺伝子の発現によって、該哺乳類多細胞生物における該特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出する段階
を含む。
(a)選択的スプライシングを受ける該特定の遺伝子に少なくとも2種類の異なるレポーター遺伝子が挿入されるように、哺乳類多細胞生物にDNA構築物を導入する段階であって、該異なるレポーター遺伝子の転写物それぞれが選択的スプライシングによって生じる少なくとも2種類の異なる成熟mRNAのそれぞれと融合するように、該レポーター遺伝子が挿入される、段階;
(b)該哺乳類多細胞生物を該被験化合物と接触させる段階;
(c)該レポーター遺伝子の発現によって、該哺乳類多細胞生物における該特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出する段階;および
(d)該被験化合物と接触させていない対照における該レポーター遺伝子の発現と比べ、(c)で検出された該レポーター遺伝子の発現が変化したか否かを判定する段階
を含む。
(a)選択的スプライシングを受ける該特定の遺伝子に少なくとも2種類の異なるレポーター遺伝子が挿入されるように、哺乳類多細胞生物にDNA構築物を導入する段階であって、該異なるレポーター遺伝子の転写物それぞれが選択的スプライシングによって生じる少なくとも2種類の異なる成熟mRNAのそれぞれと融合するように、該レポーター遺伝子が挿入される、段階;
(b)該哺乳類多細胞生物を変異原で処理する段階;
(c)該レポーター遺伝子の発現によって、該哺乳類多細胞生物における該特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出する段階;
(d)該変異原処理に供されていない対照における該レポーター遺伝子の発現と比べ、(c)で検出された該レポーター遺伝子の発現が変化した個体を選択する段階;および
(e)該個体における突然変異した遺伝子領域を同定する段階
を含む。
(a)突然変異が導入されておりかつ選択的スプライシングを受ける該特定の遺伝子に、少なくとも2種類の異なるレポーター遺伝子が挿入されるように、哺乳類多細胞生物にDNA構築物を導入する段階であって、該異なるレポーター遺伝子の転写物それぞれが選択的スプライシングによって生じる少なくとも2種類の成熟mRNAのそれぞれと融合するように、該レポーター遺伝子が挿入される、段階;
(b)該レポーター遺伝子の発現によって、該哺乳類多細胞生物における該特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出する段階;および
(c)該特定の遺伝子に突然変異が導入されていない対照における該レポーター遺伝子の発現と比べ、(b)で検出された該レポーター遺伝子の発現が変化したか否かを判定する段階
を含む。
(a)該哺乳類多細胞生物にDNA構築物の組み合わせを導入する段階であって、該DNA構築物中で、選択的スプライシングを受ける該特定の遺伝子にレポーター遺伝子が挿入され、かつ、該DNA構築物の組み合わせが、以下の条件(i)〜(iv):
(i)各DNA構築物に挿入されるレポーター遺伝子は互いに異なり、
(ii)各DNA構築物中で、該レポーター遺伝子の転写物が選択的スプライシングによって生じる複数の成熟mRNAと融合するように、該レポーター遺伝子は該特定の遺伝子に挿入され、
(iii)各DNA構築物から選択的スプライシングによって生じる該複数の成熟mRNAのうちただ1つの成熟mRNAのみにおいて、該レポーター遺伝子の転写物部分が正しい読み枠で翻訳され、かつ
(iv)選択的スプライシングパターンの中から特定のスプライシングが選択された場合にのみ各DNA構築物において正しい読み枠での翻訳が誘導され、かつ、該正しい読み枠での翻訳を誘導する特定のスプライシングが各DNA構築物によって異なる
のすべてを満たす、段階;ならびに
(b)該レポーター遺伝子の発現によって、該哺乳類多細胞生物における該特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出する段階
を含む。
(a)哺乳類多細胞生物にDNA構築物の組み合わせを導入する段階であって、該DNA構築物中で、選択的スプライシングを受ける該特定の遺伝子にレポーター遺伝子が挿入され、かつ、該DNA構築物の組み合わせが以下の条件(i)〜(iv):
(i)各DNA構築物に挿入されるレポーター遺伝子は互いに異なり、
(ii)各DNA構築物中で、該レポーター遺伝子の転写物が選択的スプライシングによって生じる複数の成熟mRNAと融合するように、該レポーター遺伝子は該特定の遺伝子に挿入され、
(iii)各DNA構築物から選択的スプライシングによって生じる該複数の成熟mRNAのうちただ1つの成熟mRNAのみにおいて、該レポーター遺伝子の転写物部分が正しい読み枠で翻訳され、かつ
(iv)選択的スプライシングパターンの中から特定のスプライシングが選択された場合にのみ各DNA構築物において正しい読み枠での翻訳が誘導され、かつ、該正しい読み枠での翻訳を誘導する特定のスプライシングが各DNA構築物によって異なる
のすべてを満たす、段階;
(b)該哺乳類多細胞生物を該被験化合物と接触させる段階;
(c)該レポーター遺伝子の発現によって、該哺乳類多細胞生物における該特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出する段階;ならびに
(d)該被験化合物と接触させていない対照における該レポーター遺伝子の発現と比べ、(c)で検出された該レポーター遺伝子の発現が変化したか否かを判定する段階
を含む。
(a)哺乳類多細胞生物にDNA構築物の組み合わせを導入する段階であって、該DNA構築物中で、選択的スプライシングを受ける該特定の遺伝子にレポーター遺伝子が挿入され、かつ、該DNA構築物の組み合わせが以下の条件(i)〜(iv):
(i)各DNA構築物に挿入されるレポーター遺伝子は互いに異なり、
(ii)各DNA構築物中で、該レポーター遺伝子の転写物が選択的スプライシングによって生じる複数の成熟mRNAと融合するように、該レポーター遺伝子は該特定の遺伝子に挿入され、
(iii)各DNA構築物から選択的スプライシングによって生じる該複数の成熟mRNAのうちただ1つの成熟mRNAのみにおいて、該レポーター遺伝子の転写物部分が正しい読み枠で翻訳され、かつ
(iv)選択的スプライシングパターンの中から特定のスプライシングが選択された場合にのみ各DNA構築物において正しい読み枠での翻訳が誘導され、かつ、該正しい読み枠での翻訳を誘導する特定のスプライシングが各DNA構築物によって異なる
のすべてを満たす、段階;
(b)該哺乳類多細胞生物を変異原で処理する段階;
(c)該レポーター遺伝子の発現によって、該哺乳類多細胞生物における該特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出する段階;
(d)該変異原処理に供されていない対照における該レポーター遺伝子の発現と比べ、(c)で検出された該レポーター遺伝子の発現が変化した個体を選択する段階;ならびに
(e)該個体における突然変異した遺伝子領域を同定する段階
を含む。
(a)哺乳類多細胞生物にDNA構築物の組み合わせを導入する段階であって、該DNA構築物中で、突然変異が導入されておりかつ選択的スプライシングを受ける該特定の遺伝子にレポーター遺伝子が挿入され、該DNA構築物の組み合わせが以下の条件(i)〜(iv):
(i)各DNA構築物に挿入されるレポーター遺伝子は互いに異なり、
(ii)各DNA構築物中で、該レポーター遺伝子の転写物が選択的スプライシングによって生じる複数の成熟mRNAと融合するように、該レポーター遺伝子は該特定の遺伝子に挿入され、
(iii)各DNA構築物から選択的スプライシングによって生じる該複数の成熟mRNAのうちただ1つの成熟mRNAのみにおいて、該レポーター遺伝子の転写物部分が正しい読み枠で翻訳され、かつ
(iv)選択的スプライシングパターンの中から特定のスプライシングが選択された場合に各DNA構築物において正しい読み枠での翻訳が誘導され、かつ、該正しい読み枠での翻訳を誘導する特定のスプライシングが各DNA構築物によって異なる
のすべてを満たす、段階;
(b)該レポーター遺伝子の発現によって、該哺乳類多細胞生物における該特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出する段階;ならびに
(c)該特定の遺伝子に突然変異が導入されていない対照における該レポーター遺伝子の発現と比べ、(b)で検出された該レポーター遺伝子の発現が変化したか否かを判定する段階
を含む。
第1の局面において、本発明は、選択的スプライシングを受ける特定の遺伝子に少なくとも2種類の異なるレポーター遺伝子が挿入されているDNA構築物(例えば、図2Cおよび2Dを参照)を用いる、哺乳類多細胞生物における選択的スプライシング・レポーターシステムに関する。第2の局面において、本発明は、選択的スプライシングを受ける特定の遺伝子に1つのレポーター遺伝子が挿入されているDNA構築物の組み合わせ(少なくとも2種類の異なるDNA構築物の組み合わせ)(例えば、図2Aおよび2Bを参照)を用いる、哺乳類多細胞生物における選択的スプライシング・レポーターシステムに関する。
第1および第2のシステムにおいて、「哺乳類多細胞生物」は特に限定されず、それが多くの細胞からなりかつ選択的スプライシングの機構を有する限り、用途に応じて適切に選択されることができ、例えばマウスおよびラットを含む。すなわち、本発明に用いられる哺乳動物は、好ましくは非ヒト動物、例えば齧歯類動物(すなわち、マウス、ラットなど)である。本発明の「哺乳類多細胞生物」は、哺乳類動物に由来する細胞を含む。すなわち、本発明は、哺乳類動物に由来する細胞を用いる方法を包含する。
第1および第2のシステムにおける「選択的スプライシングを受ける特定の遺伝子」(以下、本明細書では、単に「特定の遺伝子」と称することもある)は特に限定されず、それが哺乳類多細胞生物の遺伝子でありかつ、選択的スプライシングの結果としてエクソンの種々の組み合わせからなる成熟mRNAの複数のアイソフォームを産生しうる限り、用途に応じて適切に選択されることができる。
第1および第2のシステムにおいて、「レポーター遺伝子」は特に限定されず、用途に応じて適切に選択することができる。レポーター遺伝子の例には、緑色蛍光タンパク質(GFP)および赤色蛍光タンパク質(RFP)などの蛍光タンパク質遺伝子、色素生成反応または発色反応または発光反応を触媒する酵素遺伝子などが含まれる。第1および第2のシステムでは、合計で少なくとも2種類の異なるレポーター遺伝子を用いる。それらの発現を蛍光または発色の違いに基づいて互いと区別することができる限り、それらの組み合わせは特に限定されず、用途に応じて適切に選択することができる。例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)と赤色蛍光タンパク質(RFP)との組み合わせなどを好適に用いることができる。
‐第1のシステムのDNA構築物‐
第1のシステムにおけるDNA構築物は、選択的スプライシングを受ける特定の遺伝子に少なくとも2種類の異なるレポーター遺伝子が挿入されているものである。この少なくとも2種類の異なるレポーター遺伝子は、該少なくとも2種類の異なるレポーター遺伝子の転写物それぞれが特定の遺伝子の選択的スプライシングによって生じる少なくとも2種類の異なる成熟mRNAのそれぞれと融合するように、該特定の遺伝子に挿入される。
一方、第2のシステムにおけるDNA構築物は、選択的スプライシングを受ける特定の遺伝子1つに1つのレポーター遺伝子が挿入されているものである。第2のシステムは、そのようなDNA構築物の組み合わせ(少なくとも2種類の異なるDNA構築物の組み合わせ)を用いることを特徴とする。ここで、DNA構築物の組み合わせは、以下(i)〜(iv)のすべての条件を満たす:
(i)各DNA構築物に挿入されるレポーター遺伝子は互いに異なり;
(ii)各DNA構築物中で、レポーター遺伝子の転写物が選択的スプライシングによって生じる複数の成熟mRNAと融合するように、該レポーター遺伝子が特定の遺伝子に挿入され;
(iii)各DNA構築物から選択的スプライシングによって生じた複数の成熟mRNAのうち1つの成熟mRNAのみにおいて、レポーター遺伝子の転写物部分は正しい読み枠で翻訳され;かつ
(iv)選択的スプライシングパターンの中で特定のスプライシングが選択された場合にのみ、各DNA構築物において正しい読み枠での翻訳が誘導され、かつ、正しい読み枠での翻訳を誘導する特定のスプライシングは各DNA構築物によって異なる。
本発明の、哺乳類多細胞生物における特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出するための方法は、
(a)哺乳類多細胞生物に、第1のシステムにおけるDNA構築物または第2のシステムにおけるDNA構築物の組み合わせ(それぞれが該特定の遺伝子およびレポーター遺伝子を含む)を導入する段階、および
(b)該レポーター遺伝子の発現を検出することによって、哺乳類多細胞生物における特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出する段階
を含む。
段階(a)では、第1のシステムにおけるDNA構築物または第2のシステムにおけるDNA構築物の組み合わせを哺乳類多細胞生物に導入して、トランスジェニック哺乳類多細胞生物を作製する。DNA構築物またはDNA構築物の組み合わせは、限定されない任意の方法によって、哺乳類多細胞生物に導入することができる。例えば、マイクロインジェクションなどの従来より公知である遺伝子移入技術を適切に利用することができる。
段階(b)では、哺乳類多細胞生物における特定の遺伝子の選択的スプライシングを、レポーター遺伝子の発現を検出することによって検出する。レポーター遺伝子の発現は、限定されない任意の方法によって検出することができ、レポーター遺伝子の種類に応じて公知の検出方法を適切に利用することができる。例えば、蛍光タンパク質をレポーターとして用いる場合には、蛍光顕微鏡または蛍光利用ソーター(fluorescence-assisted sorter)を用いて発現を検出することができる。
本発明の、被験化合物が特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼすか否かを試験するための方法は、
(a)哺乳類多細胞生物に、第1のシステムにおけるDNA構築物または第2のシステムにおけるDNA構築物の組み合わせ(それぞれが該特定の遺伝子およびレポーター遺伝子を含む)を導入する段階、
(b)哺乳類多細胞生物を被験化合物と接触させる段階、
(c)レポーター遺伝子の発現を検出することによって、哺乳類多細胞生物における特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出する段階;および
(d)該被験化合物と接触させていない対照における該レポーター遺伝子の発現と比べ、(c)で検出された該レポーター遺伝子の発現が変化したか否かを判定する段階
を含む。
段階(a)および段階(c)は、上述の「哺乳類多細胞生物における特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出するための方法」における段階(a)および段階(b)と、それぞれ同じ様式で行うことができる。
段階(b)では、段階(a)でDNA構築物またはDNA構築物の組み合わせが導入された哺乳類多細胞生物を、被験化合物と接触させる。「被験化合物」は特に限定されず、特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼすか否かについて試験したい物質から、用途に応じて適切に選択することができる。その例には、精製タンパク質、部分精製タンパク質、ペプチド、非ペプチド性化合物、人工的に合成された化合物、天然の化合物などが含まれる。加えて、哺乳類多細胞生物を「被験化合物」と接触させるための方法も特に限定されない;その例には、「被験化合物」をマイクロインジェクションによって注入する方法、「被験化合物」を飼料中に混合することによって哺乳類多細胞生物に供給する方法などが含まれる。
段階(d)では、被験化合物と接触させていない対照におけるレポーター遺伝子の発現と比べ、(c)で検出された該レポーター遺伝子の発現が変化したか否かを判定する。レポーター遺伝子の発現の変化は特に限定されない;その例には、一方のレポーター遺伝子の発現が他方のレポーター遺伝子の発現に置き換わること、1つのレポーター遺伝子の発現レベルが低下または上昇することなどが含まれる。段階(d)において、被験化合物と接触させていない対照におけるレポーター遺伝子の発現と比べ、段階(c)で検出された該レポーター遺伝子の発現が変化したと判定されたならば、該被験化合物は該特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼすと評価することができる。
本発明の、特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼす遺伝子領域を同定するための方法は、
(a)哺乳類多細胞生物に、第1のシステムにおけるDNA構築物または第2のシステムにおけるDNA構築物の組み合わせ(それぞれが該特定の遺伝子およびレポーター遺伝子を含む)を導入する段階、
(b)哺乳類多細胞生物を変異原で処理する段階、
(c)レポーター遺伝子の発現を検出することによって、哺乳類多細胞生物における特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出する段階、
(d)該変異原処理に供されていない対照における該レポーター遺伝子の発現と比べ、段階(c)で検出された該レポーター遺伝子の発現が変化した個体を選択する段階、および
(e)該個体における突然変異した遺伝子領域を同定する段階
を含む。この方法は、特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼすトランス作用因子の同定を可能にする。
段階(a)および段階(c)は、上述の「哺乳類多細胞生物における特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出するための方法」における段階(a)および段階(b)と、それぞれ同じ様式で行うことができる。
段階(b)では、段階(a)においてDNA構築物またはDNA構築物の組み合わせが導入された哺乳類多細胞生物を、変異原で処理する。哺乳類多細胞生物の変異原処理は特に限定されず、公知の方法によって行うことができる。その例には、エチルメタンスルホネート(EMS)による処理、UVによる処理などが含まれる。
段階(d)では、変異原処理に供されていない対照におけるレポーター遺伝子の発現と比べ、段階(c)で検出された該レポーター遺伝子の発現が変化した個体を選択する。レポーター遺伝子の発現の変化は特に限定されない;その例には、一方のレポーター遺伝子の発現が他方のレポーター遺伝子の発現に置き換わること、レポーター遺伝子の発現レベルが低下または上昇することなどが含まれる。
段階(e)では、レポーター遺伝子の発現が変化した個体における、突然変異した遺伝子領域を同定する。遺伝子領域を同定するための方法は特に限定されず、従来より公知の染色体マッピングなどを適切に利用することができる。
本発明の、特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼす該特定の遺伝子内の領域を同定するための方法は、
(a)哺乳類多細胞生物に、第1のシステムにおけるDNA構築物または第2のシステムにおけるDNA構築物の組み合わせ(それぞれが該特定の遺伝子およびレポーター遺伝子を含む)を導入する段階であって、該DNA構築物またはDNA構築物の組み合わせにおいて、該特定の遺伝子に突然変異が導入されている、段階
(b)該レポーター遺伝子の発現を検出することによって、哺乳類多細胞生物における特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出する段階、および
(c)該特定の遺伝子に突然変異が導入されていない対照における該レポーター遺伝子の発現と比べ、(b)で検出された該レポーター遺伝子の発現が変化したか否かを判定する段階
を含む。この方法は、特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼすシス作用性DNA配列の同定を可能にする。
段階(a)では、第1のシステムにおけるDNA構築物または第2のシステムにおけるDNA構築物の組み合わせ(それぞれが該特定の遺伝子およびレポーター遺伝子を含む)を哺乳類多細胞生物に導入し、ここで該DNA構築物またはDNA構築物の組み合わせにおいて、特定の遺伝子には突然変異が導入されている。特定の遺伝子に突然変異を導入するための方法は特に限定されず、従来より公知の手法を利用することによって、欠失、挿入、置換などを特定の遺伝子内で適切に誘導することができる。加えて、突然変異が導入される特定の遺伝子中の領域は特に限定されず、該特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼすか否かを評価したい領域を適切に選択することができる。
段階(b)は、上述の「哺乳類多細胞生物における特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出するための方法」における段階(b)と同じ様式で行うことができる。
段階(c)では、特定の遺伝子に突然変異が導入されていない対照におけるレポーター遺伝子の発現と比べ、(b)で検出された該レポーター遺伝子の発現が変化したか否かを判定する。レポーター遺伝子の発現の変化は特に限定されない;その例には、一方のレポーター遺伝子の発現が他方のレポーター遺伝子の発現に置き換わること、レポーター遺伝子の発現レベルが低下または上昇することなどが含まれる。特定の遺伝子に突然変異が導入されていない対照におけるレポーター遺伝子の発現と比べ、(b)で検出された該レポーター遺伝子の発現が変化したと判定されたならば、突然変異が導入された該特定の遺伝子内の領域を、該特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼす領域として同定することができる。
本発明者らによって開発された第1および第2の選択的スプライシング・レポーターシステムを利用する、「(1)哺乳類多細胞生物における特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出するための方法」、「(2)被験化合物が特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼすか否かを試験するための方法」、「(3)特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼす遺伝子領域を同定するための方法」、および「(4)特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼす該特定の遺伝子内の領域を同定するための方法」は、哺乳類多細胞生物における選択的スプライシングの制御機構の網羅的研究のための非常に有用な方策となりうる。
(1)関心対象の遺伝子に含まれるエクソンaおよびbを有する増幅されたDNA領域のDNA構築物を調製する段階;
(2)該DNA構築物の両端にattBを付加する段階;
(3)上記(2)のDNA構築物と、選択用遺伝子およびタンデムに配置されたattPを有するドナーベクターとの組換え体を得る段階;
(4)上記(3)のDNA構築物上のエクソンaにフレームシフト突然変異を導入する段階;
(5)下記(i)〜(iii)の組み換え体:
(i)上記(4)のDNA構築物
(ii)選択用遺伝子と、2種類のレポーター遺伝子が連結された構造を有するDNAの両端に互いに対抗する向きに配置されたattLを有するDNAとを含む、DNAベクター
(iii)3'カセットDNAと、プロモーターと、選択用遺伝子を有するDNAの両端に互いに対抗する向きに配置されたattRを有するDNAとを含む、DNAベクター
を得る段階
を含む、方法を提示する。
2.1.複数の蛍光タンパク質による選択的スプライシングパターンの可視化
生細胞における選択的スプライシングの制御機構を明らかにするために、複数のエクソンおよびイントロンを含むレポーターミニ遺伝子構築物が用いられることが多い。ミニ遺伝子由来のmRNAのスプライシングパターンは通常、トランスフェクト細胞から全RNAを抽出した後の逆転写(RT)-ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)産物の比率を用いて定量的に解析される。スプライシングパターンの解析における手間を要する多数の工程によって、しばしば結果の偏りが引き起こされ、かつ選択的スプライシングのハイスループット解析が妨げられてきた。
ここで本発明者らは、本発明者らが実施例に記載した通りに構築した多色選択的スプライシング・レポーターミニ遺伝子の典型的な構造(図2)を示し、各蛍光タンパク質の発現が特定の選択的スプライシングイベントをどのように知らせるのかを説明する。本明細書に記載されたレポーターミニ遺伝子は、可能な選択的スプライシング・レポーターの数例に過ぎないことに留意されたい。可視化しようとする関心対象の選択的スプライシングイベントに応じて、各レポーターを柔軟に設計することができる。理想的なミニ遺伝子は、特定の蛍光タンパク質の発現が、特定のmRNAアイソフォームまたは特定の選択的スプライシングイベントを明白に示すように設計されるべきである(Kuroyanagi, H. et al.,(in press). Visualization and genetic analysis of alternative splicing regulation in vivo using fluorescence reporters in transgenic Caenorhabditis elegans. Nat Protoc.)。
本発明者らは、MultiSite Gatewayシステム(Invitrogen)を利用する部位特異的組換えによって、蛍光選択的スプライシング・レポーターミニ遺伝子を構築する。ミニ遺伝子構築における相同組換えの主な利点は、「エントリー」ベクターおよび「デスティネーション」ベクターの中にクローニングされたモジュール式DNA断片を組み立てることによって、上記のような種々の構造を有する「発現」ベクターを容易かつ迅速に構築できることである。このセクションで、本発明者らは、MultiSite Gatewayシステムの実際の利用、および蛍光レポーターミニ遺伝子の設計において考慮すべき他の局面に焦点を当てる。
MultiSite Gatewayシステムは、部位特異的組換えクローニングを用いて、関心対象の別個のDNA断片2つ、3つまたは4つを規定の順序および向きで同時クローニングさせる。図3は、「2断片」組換え反応を行うことによる「発現」クローンの構築を模式的に説明している。関心対象のゲノムDNA断片を「エントリー」ベクター中にクローニングして(図3A)、「デスティネーション」ベクターの相同組換え部位との間で断片を組み立てる(図3B)。MultiSite Gatewayシステムの重要な特徴とは、5組の改変att部位が一方向を向いており、標準的なGatewayシステムにおけるような相同組換えの特異性を示すことである:例えば、「BP」反応ではattB1部位はattP1部位のみと反応して他のattP部位とは反応せず、attL1部位およびattR1部位を生じ(図3A)、「LR」反応ではattL5部位はattR5部位のみと反応して他のattR部位とは反応せず、attB5部位およびattP5部位が生じる(図3B)。MultiSite Gatewayシステム、ならびに「3断片」および「4断片」組換え反応のそれ以上の詳細については、供給元のウェブサイト(www.invitrogen.com)を参照されたい。
早期終止(ナンセンス)コドン(PTC)を有するmRNAは、ナンセンス変異依存mRNA分解(NMD)と呼ばれる品質管理機構によって選択的に分解される。哺乳動物では、RNAスプライシング後にエクソン-エクソン境界部の上流に集積するタンパク質複合体であるエクソン接合部複合体(EJC)が1回目の翻訳の際に終止コドンの下流に存在する場合に、NMDが誘導されると考えられている(Chang, Y.F. et al., (2007). Annu Rev Biochem 76, 51-74., Isken, O. and Maquat, L.E. (2007). Genes Dev 21, 1833-1856.)。蛍光タンパク質をコードするmRNAアイソフォームがNMDを回避するように蛍光レポーターミニ遺伝子を設計することが、極めて重要である。GFP cDNAおよびRFP cDNAが、図2に示されたミニ遺伝子中の最終エクソン中に存在する場合には、これらのミニ遺伝子由来の産生型アイソフォーム(productive isoform)は、哺乳動物におけるNMDを回避すると考えられる。C.エレガンス(Kuroyanagi, H. et al., (2007). Mol Cell Biol 27, 8612-8621., Pulak, R. and Anderson, P. (1993). Genes Dev 7, 1885-1897.)および酵母(Kebaara, B.W. and Atkin, A.L. (2009). Nucleic Acids Res 37, 2771-2778., Amrani, N. et al., (2004). Nature 432, 112-118.)では、長い3'非翻訳領域(UTR)によってエクソン-エクソン境界部とは無関係にNMDが誘発されるため、したがって、これらの生物では、図2Cおよび2DにおいてRFPタンパク質をコードするmRNAアイソフォームはNMDによって分解されると考えられる。
関心対象の遺伝子に由来するアミノ酸配列は、蛍光性融合タンパク質のフォールディング、安定性および/または細胞内局在に大きな影響を及ぼす可能性がある。このため、ミニ遺伝子の設計においては、融合タンパク質の特性を予想することが重要である。GST(図2D)などのさまざまなN末端タグは、融合タンパク質の発現を安定化して、結果を改善する可能性がある。また、設計した開始コドンでの翻訳開始を強制的に行わせることも極めて重要である。エクソン領域におけるおよびN末端タグにおけるATGコドンは、異常翻訳開始の原因となり得、蛍光タンパク質の産生を減少させ得る。
1.「エントリー」ベクター中のゲノムDNA断片カセットの構築
本発明者らは、「BP」反応を行って、MultiSite Gatewayシステムの「エントリー」ベクター中に関心対象のゲノム断片をクローニングした。attBに隣接するゲノム断片を増幅するために、本発明者らは通常、2段階PCR手法を行う。1回目のPCRは、遺伝子特異的でありかつattB配列の一部を自身の5'末端に含むプライマーを用いて行う。続いて1回目のPCR産物を、attBアダプタープライマーとともに、2回目のPCRのためのテンプレートとして用いる。2段階PCR手法の利点は、合成すべき遺伝子特異的プライマー(GSP)がより短くなると考えられること、およびattBアダプタープライマーを、異なるミニ遺伝子プロジェクトで他のDNA断片をクローニングするために繰り返して使用可能であることである。ここで本発明者らは、図3Aに図式的に示したように、「2断片」組換え反応のための「エントリー」クローンをどのように構築するのかを示す。ゲノムDNA断片を、構築しようとするミニ遺伝子の設計に応じた「エントリー」ベクターのいずれかにクローニングする(セクション2.2参照)。「3断片」および「4断片」組換え反応をミニ遺伝子構築に利用することもできるが、これらは効率が低いため、本発明者らはほとんど用いたことがない。
GSPは、5'末端に12塩基のattB部位、その後に18〜25塩基のテンプレート特異的または遺伝子特異的な配列(表1;「エントリー」クローンを構築するために用いるプライマーの配列)を有するものとする。表1に示すように、コザックコンセンサス配列をattB1配列と遺伝子特異的配列との間に挿入して、翻訳開始を強制的に行わせることができる。終止コドンは、レポーターミニ遺伝子の設計に応じて、逆方向GSP内に含めるか、またはそこから除くものとする。DNA断片をN末端および/またはC末端タグと融合するように設計している場合には、表1に表示したようなattB配列中の正しい読み枠が維持されるようにGSPを注意深く設計しなければならない。
PCRは、PrimeSTAR HS DNAポリメラーゼ(TaKaRa)などのプルーフリーディングポリメラーゼを用いて行うべきである。アニーリング配列がわずか12塩基対であるため、2回目のPCRのアニーリング温度は45℃であるべきである。
1.各0.2μMのGSPとともに標準的な試薬を含む25マイクロリットル(μL)の混合物中で1回目のPCRを行う。PCRの条件は、テンプレートの量および増幅しようとする断片のサイズに応じて最適化すべきである。PCR産物を標準的なアガロースゲル電気泳動によって確認する。
2.標準的な試薬および各0.3μMのattBアダプタープライマーを含む2回目のPCR混合物50マイクロリットル(μL)を調製する。混合物を1回目のPCR反応混合物10マイクロリットル(μL)に添加して、アニーリング温度を45℃とした5サイクルのPCRを行う。PCR産物の量が2回目のPCRで増加したことをアガロースゲル電気泳動によって確認する。
3.任意で、1マイクロリットル(μL)のDpn I*(New England Biolabs)を添加し、37℃で1時間インキュベートして、テンプレートDNAを破壊する。*PCRテンプレートがカナマイシン耐性遺伝子を含むプラスミドである場合には、attB-PCR産物を精製する前にPCR混合物をDpn Iで処理すべきである。Dpn Iは細菌由来DNA中のメチル化GATC部位を認識する。Dpn I処理は、「BP」組換え反応におけるテンプレート混入に伴うバックグラウンドを大きく減少させる。
4.標準的なDNA精製カラムを用いてattB-PCR産物を精製する。
attBに隣接する各DNA断片と適切なattP含有「ドナー」ベクターとの間の「BP」組換え反応(表2:「BP」反応によって「エントリー」クローンを構築するための「ドナー」ベクターの選択)を行って、「エントリー」クローンを作製する。
1.以下の構成成分を1.5ml微量遠心管に添加して混合する:attB-PCR産物(15〜150ng)、pDONRベクター(スーパーコイル、75ng)、最終容量4マイクロリットル(μL)の脱イオン蒸留水(DDW)またはTE。1マイクロリットル(μL)のBPクロナーゼII酵素ミックス(Invitrogen)を上記の構成成分に添加して、短時間のボルテックス処理またはタッピングによって十分に混合する。
2.「BP」反応混合物を室温または25℃で1時間または一晩インキュベートする。本発明者らは通常、プロテイナーゼK消化を省略している。
3.大腸菌株DH5αまたは他の菌株*を、1〜3マイクロリットル(μL)の反応混合物によって形質転換させて、カナマイシン耐性「エントリー」クローンを選択する。挿入物の配列を確認する。*F'エピソームを有する大腸菌株(例えば、TOP10F')は、「エントリー」クローンを選択するための形質転換に用いることができない。これらの菌株はccdA遺伝子を含み、pDONRベクター中のccdB遺伝子による陰性選択を妨げると考えられる。
ミニ遺伝子の設計に応じて、終止コドンまたはフレームシフトをエクソンに導入し、かつ/または「エントリー」クローンの推定シスエレメントを改変もしくは欠損させる。ゲノム断片の配列は、推定シス制御エレメントの欠失を避けるように注意深く改変すべきである。本発明者らは、近縁種の間であまり保存されていない区間中に終止コドンまたはフレームシフトを導入している。本発明者らはQuickchange IIまたはQuickchange II XL(Stratagene)を部位指定突然変異誘発に利用している。本発明者らは通常、突然変異誘発後に挿入物全体のシーケンシングを行う。
通常、Gateway「デスティネーション」ベクターにより、プロモーターおよび3'カセットが与えられる(図2)。培養細胞における発現用の種々の「デスティネーション」ベクターが市販されている。また、「デスティネーション」ベクターを、アンピシリン耐性遺伝子を含む既存のベクター中への連結に基づくデスティネーションベクターカセット(Invitrogen)挿入によって構築することもできる。本発明者らは、既存の発現ベクターを、本発明者らの以前の研究で用いた「デスティネーション」ベクターに変換するために、「BP」反応を行った[Ohno, G., et al., (2008) Genes Dev 22, 360-374., Kuroyanagi, H. et al., (2006) Nat Methods 3, 909-915., Kuroyanagi, H. et al., (2007) Mol Cell Biol 27, 8612-8621.]。本発明者らは、アンピシリン耐性遺伝子を含むあらゆる既存のベクターを、「デスティネーション」ベクターに、所望の位置で、所望のフレームを有するように変換することができる。変換方法の詳細は他所に記載されるであろう[Kuroyanagi, H. et al., (in press) Nat Protoc.]。C.エレガンスにおける発現のために本発明者らが構築した「デスティネーション」ベクターのヌクレオチド配列は、C.エレガンスのPromoter/Marker Database(http://www.shigen.nig.ac.jp/c.elegans/promoter/index.jsp)で入手可能である。
1.以下の構成成分を1.5ml微量遠心管に添加して混合する:「デスティネーション」ベクター(75ng)、「エントリー」クローン(各15〜100ng)、最終容量4マイクロリットル(μL)のDDWまたはTE。1マイクロリットル(μL)のLRクロナーゼII Plus酵素ミックス(Invitrogen)を上記の構成成分に添加して、短時間のボルテックス処理またはタッピングによって十分に混合する。
2.「LR」反応混合物を25℃または室温で一晩インキュベートする。本発明者らは通常、プロテイナーゼK消化を省略している。
3.大腸菌株DH5αまたは他の菌株*を、1〜3マイクロリットル(μL)の反応混合物によって形質転換させて、アンピシリン/カルベニシリン耐性「発現」クローンを選択する。本発明者らは、アンピシリン/カルベニシリン耐性コロニーのアンピシリン/カルベニシリン、クロラムフェニコール、およびカナマイシンに対する耐性を日常的に確認している。*F'エピソームを有する大腸菌株は、「発現」クローンを選択するために用いることができない。
4.アンピシリン/カルベニシリンのみに対して耐性のあるクローンを選択し、mini-prepプラスミドDNAの制限酵素消化パターンを確認し、DNA断片の境界部のシーケンシングを行う。
蛍光レポーターミニ遺伝子による培養細胞の一過性トランスフェクションを、標準的なトランスフェクション試薬を用いて行う。蛍光タンパク質の発現は、標準的な複合顕微鏡、フローサイトメトリーおよび他の装置を利用することによって解析可能である。
本発明者らは、レポーターミニ遺伝子が発現され正しくスプライシングされていること、および、選択的スプライシングパターンが内因性遺伝子のスプライシングパターンから予想された通りでありかつ発現された蛍光タンパク質の比率とも一致していることを確認するために、ミニ遺伝子由来mRNAのスプライシングパターンを解析することを強く推奨する。
1.RNeasy Mini(QIAGEN)または同等物、およびDNase Iを製造元の指示に従って利用することによって、全RNAを細胞、組織または生物から抽出する。
2.PrimeScript(TaKaRa)またはSuperscript II(Invitrogen)、およびプライマーとしてのオリゴ(dT)を製造元の指示に従って用いて、RTで、1〜2マイクログラムの全RNAを逆転写させる。
3.PCRに関して、本発明者らは通常、Ex Taq(TaKaRa)およびBIOTAQ(BIOLINE)などの非プルーフリーディングポリメラーゼ、ならびにミニ遺伝子特異的プライマーセットを用いている。GFP特異的リバースプライマーとして、本発明者らは
5'-TGTGGCCGTTTACGTCG-3'(SEQ ID NO:10)または
5'-TTTACTTGTACAGCTCGT-3'(SEQ ID NO:11)
を用いている。mRFP特異的リバースプライマーとして、本発明者らは
5'-GGAGCCGTACTGGAACTGAG-3'(SEQ ID NO:12)または
5'-TTAGGCGCCGGTGGAGTG-3'(SEQ ID NO:13)
を用いている。attBアダプタープライマーを用いることもできる。
4.RT-PCR産物を解析するために、精製産物を直接シーケンシングするか、または産物をpGEM-T Easy(Promega)などのTA-ベクター中にクローニングしてそれらをシーケンシングする。
図4Aおよび4Bは、C.エレガンスにおける相互排他的エクソンの組織特異的選択的スプライシングの可視化の一例を示す。図4Cおよび4Dは、HeLa細胞におけるウイルス感染誘導性イントロン保持の可視化の一例を示す[Nojima, T. et al., (2009) Nucleic Acids Res 37, 6515-6527.]。図4Eおよび4Fは、マウスにおける相互排他的選択的スプライシングの可視化の一例を示す。
略号
EJC、エクソン接合部複合体;
GFP、緑色蛍光タンパク質;
GSP、遺伝子特異的プライマー;
GST、グルタチオンS-トランスフェラーゼ;
mRNA、メッセンジャーRNA;
NMD、ナンセンス変異依存mRNA分解;
PCR、ポリメラーゼ連鎖反応;
PTC、早期終止コドン;
RFP、赤色蛍光タンパク質;
RT、逆転写;
UTR、非翻訳領域。
プラスミドの構築
本発明者らは、本質的には本文中に記載した通りにレポーターベクターを構築した。マウスゲノムDNAのエクソン7からエクソン10までの範囲にわたるFGFR2ゲノム領域をPCRによって増幅し、CAGGSプロモーターの調節下にあるEGFP(Clontech)およびmRFP[Campbell RE, et al. (2002) Proc Natl Acad Sci U S A 99: 7877-7882.]の両方を異なる読み枠で保有するGatewayデスティネーションベクター(Invitrogen)中に、クローニングした。レポータータンパク質発現の安定化および増強のために、改変グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)遺伝子(QIAGEN)の人工配列をFGFR2ゲノム断片の前方に導入し、エクソン7とインフレームで連結させた。FGFR2のイントロン9の中心部の1kbp断片は、mRNA発現を顕著に低下させる効果を有するので、除去した。シスエレメントの突然変異はQuikChange XL II(Stratagene)を用いることによって導入した。マウスのFox1 cDNAおよびFox2 cDNAは、Dr. Kawamotoに寄贈いただき[Nakahata S, Kawamoto S (2005) Nucleic Acids Res 33: 2078-2089.]、CAGGSプロモーターによって作動するGatewayデスティネーションベクター中にクローニングした。FGFR2を増幅するため、イントロン9の中央部の1kbpを欠失させるため、および突然変異を導入するためのプライマー配列を、以下に示した。
FGFR2 amplify-F:ggctgccctacctcaaggtcctg(SEQ ID NO: 14)
FGFR2 amplify-R:ctctctcacaggcgctgggttgcag(SEQ ID NO: 15)
intron 9 partial deletion-F:gcatgccttgatagagtggcctctc-ctgttgaaccttcccctggag(SEQ ID NO: 16)
intron 9 partial deletion-R:ctccaggggaaggttcaacag-gagaggccactctatcaaggcatgc(SEQ ID NO: 17)
exon 9 mutation for deleting PTC-F:gaggttctctatattcggaatgtTacttttgaggatgctggg(SEQ ID NO: 18)
exon 9 mutation for deleting PTC-R:cccagcatcctcaaaagtAacattccgaatatagagaacctc(SEQ ID NO: 19)
exon 9 3' splice site mutation-F:gcttcgtttgttttctctgccgccggtgttaacaccacggac(SEQ ID NO: 20)
exon 9 3' splice site mutation-R:gtccgtggtgttaacaccggcggcagagaaaacaaacgaagc(SEQ ID NO: 21)
exon 9 5' splice site mutation-F:ctgcatggttgacagttctgccaccaacatactgctctttctctc(SEQ ID NO: 22)
exon 9 5' splice site mutation-R:gagagaaagagcagtatgttggtggcagaactgtcaaccatgcag(SEQ ID NO: 23)
TGCATG mutation-F:gggccaatttttccatgtgttcaatttacgtacgttctaggtggtgacg(SEQ ID NO: 24)
TGCATG mutation-R:cgtcaccacctagaacgtacgtaaattgaacacatggaaaaattggccc(SEQ ID NO: 25)
ISE/ISS-3 mutation-F:taggtggtgacgccgaatctcctgatggcc(SEQ ID NO: 26)
ISE/ISS-3 mutation-R:ggccatcaggagattcggcgtcaccaccta(SEQ ID NO: 27)
構築したFGFR2スプライシング・レポーターベクターを直鎖化して、C57BL/6卵母細胞の前核に注入した。出生後および後期胚の尾部、またはより初期の胚の卵黄嚢由来のゲノムDNAを用い、EGFPに対するプライマーを用いるPCRによってマウスの遺伝子型を判定した。実験はすべて、東京医科歯科大学の動物実験委員会によって認証されたプロトコール(承認番号#0070220、#0080179および#0090084)に従って行った。
ラットのAT-3およびDT-3前立腺癌細胞株は、Dr. Garcia-BlancoおよびDr. Carsteinに寄贈いただいた。10%ウシ胎仔血清(FCS)を加えたDulbecco改変イーグル培地(D-MEM)中で細胞を維持し、TransFectin(BioRad)を用いてベクターをトランスフェクトした。内因性Fox2に対するノックダウン実験にはステルスsiRNAを用い、これは、Lipofectamine RNAiMAX(Invitrogen)を用いてトランスフェクトした。
レポータートランスジェニックマウスの胚全体の蛍光画像を、電荷結合素子(CCD)カメラ(DP71、Olympus)を備えた蛍光顕微鏡(MZ16FA、Lecia)下で取り込んだ。本発明者らはまた、切片化したトランスジェニック胚の蛍光画像を取り込むために共焦点顕微鏡(Fluoview FV1000、Olympus)も用い、取り込んだ画像はMetamorph(Molecular Devices)によって加工処理した。培養細胞の蛍光画像、およびインサイチューハイブリダイゼーションを示す明視野画像は、CCDカメラ(DP71、Olympus)を備えたNikon Eclipse E600顕微鏡を用いることによって取り込んだ。
全RNAおよびRT-PCRは以前に記載された通りに行った[Kuroyanagi H, et al., (2006) Nat Methods 3: 909-915., Takeuchi A, et al. (1998) Eur J Neurosci 10: 1613-1620.]。すべてのスプライシングバリアントの正体をシーケンシングによって確認した。2100 BioAnalyzerをAgilent DNA1000キット(Agilent Technology)とともに用いてPCR産物の量を測定し、定量解析は3回を上回る独立した実験にて行った。
RT-PCRアッセイに用いたプライマー配列は以下である。
レポーターFGFR2-F 5'-GGCCTTTGCAGGGCTGGC-3'(SEQ ID NO: 28)
レポーターFGFR2-R 5'-GGAGCCGTACTGGAACTGAGG-3'(SEQ ID NO: 29)
Fox1-F 5'-GGCACCGCCACACAGACAGATGA-3'(SEQ ID NO: 30)
Fox1-R 5'-TCCTGGTTGGCCTGGCACAACAG-3'(SEQ ID NO: 31)
Fox2-F 5'-CAACAACTCCTGACGCAATGGTTCAGC-3'(SEQ ID NO: 32)
Fox2-R 5'-GATTTTACGGCCCTCTACCACGGTG-3'(SEQ ID NO: 33)
ESRP1-F 5'-CAGGAGATGCCTTTATCCAGATGAAGTC-3'(SEQ ID NO: 34)
ESRP1-R 5'-CAGTATTGTAGGCCAGGCCCTG-3'(SEQ ID NO: 35)
ESRP2-F 5'-CCTACACAGCCACCATTGAAGACATTC-3'(SEQ ID NO: 36)
ESRP2-R 5'-GGTGAGGTAGCCCACAGTAGTG-3'(SEQ ID NO: 37)
T7-ex 9 wt(マウスFGFR2のイントロン8、200nt;エクソン9、145nt;およびイントロン9、105nt)、イントロン8中にUGCAUGおよびISE/ISS-3を含むT7-ex 9(イントロン8、237nt;エクソン9、145nt;およびイントロン9、74nt)およびT7-ex 8 wt(イントロン8、200nt;エクソン8、149nt;およびイントロン9、100nt)のPCR産物を、T7転写のためのDNAテンプレートとして用いた。図3Aに示したように、イントロン8中の3'ssおよびイントロン9中の5'ssの突然変異DNAテンプレートを突然変異レポーターベクターから調製した。RNA基質をインビトロでのT7転写によって32Pで標識した。インビトロでのスプライシング反応およびUV架橋は、Sawaによって記載された条件下で行った[Sawa H, Shimura Y (1992) Genes Dev 6: 244-254.]。UV架橋によってシフトしたバンドを同定するために、U1(5'-CGGAGTGCAATG-3'/SEQ ID NO:38)またはU2(5'-CAGATACTACACTTG-3'/SEQ ID NO:39)に対する予熱cDNAオリゴ(10マイクログラム/mL)をUV架橋後のRNAに添加し、U1またはU2 cDNAオリゴ/RNA混合物を30℃で10分間、50U/mLのRNアーゼHで消化した。図5Cでは、高精製Flag-Fox2およびFlag-ESRP1をRNAに添加して、室温で5分間インキュベートした後にスプライシング反応を行い、それらがU1 snRNAまたはU2 snRNAのエクソン認識に与える阻害効果または活性化効果を検討した。これらの反応後に、RNAを変性PAGE解析およびオートラジオグラフィーに供した。
インサイチューハイブリダイゼーションは、以前に記載されたもの[Takeuchi A, et al. (2003) Nat Genet 33: 172-176., Takeuchi A, O'Leary DD (2006) J Neurosci 26: 4460-4464.]に修正を加えて行った。手短に述べると、胚を4%パラホルムアルデヒドで固定し、30%スクロースで凍結保護処理し、最適切削温度(OCT)化合物中に包埋し、20μm厚の切片として切り出した。ジゴキシゲニンで標識したアンチセンスRNAプローブを、アルカリホスファターゼを結合させたジゴキシゲニン抗体(Roche)由来のFab断片および5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルリン酸(BCIP)/ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)溶液によって可視化した。メチルグリーンで切片を対比染色した。以下のcDNAをリボプローブとして用いた:Fox1(マウスcDNA由来の131〜865bp)、Fox2(マウスcDNA由来の2261〜2991bp)、ESRP1(マウスcDNA由来の1168〜1708bp)およびESRP2(マウスcDNA由来の208〜807bp)。
本発明者らは、上流および下流エクソン(エクソン7および10)に隣接した2つの選択的エクソン(エクソン8および9)と、それらの間のイントロンとを含む、FGFR2遺伝子の3.7kbゲノム断片を用いた(図6A)。選択的エクソン周辺のゲノム領域のほとんどすべてを用いることにより、このレポーターシステムは、組織特異的制御に必須な制御性シスエレメントのすべてを含みかつどのスプライス部位配列およびシスエレメントが制御のために真に重要であるかを伝えることが、予想された。RFPおよびEGFPを異なる読み枠でタンデムに含むベクター中に、このゲノム断片をクローニングした[Orengo, J.P. et al., (2006). Nucleic Acids Res 34, e148.]。このレポーターシステムにより、エクソン8が選択された場合にはEGFPを発現し、エクソン9が選択された場合にはRFPを発現する単一のレポーターベクターから、スプライシング制御がモニターできたと考えられる(図6A)。
本発明者らは次に、このレポーターからトランスジェニックマウスを作製することによって、本レポーターシステムがインビボでのFGFR2スプライシングの組織特異的制御を示しうるか否かを確認した。E14.5からE16.5までの発生段階にあるマウスにおいて、FGFR2スプライシングアイソフォームに変化が起こることは周知である。これらの段階では、未来の上皮細胞の分化が誘導され、それらはFGFR2のエクソン8アイソフォームを発現して、間葉細胞からFGF-10などのモルフォゲンシグナルを受け取り始める[Finch PW, et al., (1995) Dev Dyn 203: 223-240.]。トランスジェニック胚全体をE14.5時点で調べたところ、広範なRFPシグナルが全体にわたって検出され、特異的EGFPシグナルはひげのパターンとして、および肢端または身体の端でも検出された(図6C)。本発明者らはさらに、後期発生段階E16.5のトランスジェニック胚の一連の切片を検討することにより、詳細な発現プロファイルを評価した(図6D)。EGFPシグナルは皮膚および毛包球の表面上の細胞において特異的に検出され、ここに分化した上皮細胞が位置していた(図6D、矢印で示す)。また、EGFPシグナルは肺胞内、食道内および結腸内の上皮細胞において、胸腺上皮において、ならびに唾液腺管細胞でも検出された(図6D、上方および中央のパネル内の矢印)。発生中の脳(海馬)および末梢神経系(三叉神経節)では強いRFPシグナルが検出された(図6D、下方パネル内の矢印)。EGFPの発現パターンは、報告されたFGFR2のエクソン8の発現パターンに合致し[Finch PW, et al., (1995) Dev Dyn 203: 223-240., Orr-Urtreger A, et al. (1993) Dev Biol 158: 475-486.]、これにより、本発明者らのレポーターシステムがインビボでのFGFR2の内因性スプライシング制御を反映し、かつベクター中に用いたゲノム断片が相互排他的エクソンの組織特異的切り替えのために必要な制御エレメントを含むことが示された。
スプライシングレポータートランスジェニックマウスの胚において、RFPはほぼ全身にわたって発現され、EGFPは上皮細胞内で特異的に発現されていた。この発現パターンは、レポータートランスジェニックマウスにおいてエクソン9が「デフォルト」として優位に選択され、上皮特異的制御因子によってエクソン8の包含が促進されうるという制御機構の可能性を示唆する。この仮説を検証するために、本発明者らはまず、その3'および5'スプライス部位を含む選択的エクソンの配列を比較した。これらの2つのエクソン間で同定された主な違いとは、エクソン8は、弱い3'スプライス部位と、コンセンサス配列に対するいくつかのミスマッチを含むポリピリミジン部分とを有する(図7A、TGTTCTAG ca/SEQ ID NO:40)一方、エクソン9は、保存的コンセンサス配列を有する強い3'スプライス部位を有する(図7A、TTTTCTAG gc/SEQ ID NO:41)という点である。それらの5'スプライス部位には明らかな違いはない(データは示さず)。不均衡な3'スプライス部位が非上皮細胞におけるエクソン9の「デフォルト」選択のために必須であるか否かを検討するために、本発明者らはそれらの3'スプライス部位に突然変異を導入して、スプライシング制御の変化について観察した。本発明者らは2つの型の突然変異ベクターを調製した。一方は、同一の強い方の3'スプライス部位をエクソン8および9の両方に有し(図7A、E8-Sベクター)、もう一方は、同一の弱い方の3'スプライス部位をエクソン8および9の両方に有する(図7A、E9-Wベクター)。これらのベクターをAT-3およびDT-3細胞にトランスフェクトして、スプライシング制御の変化をRT-PCRによって検討した。WTベクターをAT-3細胞に導入した場合にはそのほぼ100%がエクソン9形態をとったが、DT-3細胞では単一包含産物のうち45%前後{34.5/(34.5+42.7)%}がエクソン8形態をとり(図7B、レーン1、4)、これは、図6Bにおける蛍光の発現パターンと一致した。ナンセンス変異依存分解(NMD)反応を回避するため、本発明者らのスプライシング・レポーターは、二重包含形態において初期早期終止コドンが生じないように設計された[Chang YF, et al., (2007) Annu Rev Biochem 76: 51-74.]。したがって本発明者らは、二重包含形態および二重スキップ形態を含むすべてのスプライシング産物をモニターすることができた。注目に値することとして、E8-SベクターをトランスフェクトしたらAT-3細胞のほとんどが二重包含形態を発現し、これは、2つの選択的エクソンが構成的エクソンとしてプロセシングを受けたことを意味する(図7B、レーン2)。この結果は、非上皮性AT-3細胞において2つの相互排他的エクソンからエクソン9を単一エクソン選択するためには、エクソン8の弱い方の3'スプライス部位が極めて重要であることを示している(図7B、レーン2)。また、これらのベクター内で、エクソン8周辺の報告されているエクソン性およびイントロン性のスプライシングサイレンサー配列は突然変異していないことから、この結果により、AT-3細胞におけるエクソン8は仮定のリプレッサーによって完全にサイレンシングされるのではなく、その弱い3'スプライス部位のためにWTベクター中で非エクソン配列として単に無視されているに過ぎないことも示された[Carstens RP, et al., (2000) Mol Cell Biol 20: 7388-7400., Del Gatto F, Breathnach R (1995) Mol Cell Biol 15: 4825-4834., Wagner EJ, et al. (2005) J Biol Chem 280: 14017-14027.]。エクソン9の3'スプライス部位を弱くすると(E9-Wベクター)、DT-3細胞における選択はほぼ完全にエクソン8に切り替わり(図7B、レーン4および6)、このことは、エクソン9の完全な抑制が上皮性DT-3細胞におけるエクソン8包含のために重要である可能性を示している。したがって、相互排他的エクソンからの単一エクソン選択およびそれらの切り替えのためには不均衡な3'スプライス部位が必須である。
図7における結果から、非上皮性AT-3細胞におけるエクソン9の単一エクソン選択のためには、エクソン8の弱い方の3'スプライス部位が必須であることが示された。さらに、エクソン9の3'スプライス部位を弱い方にすると、上皮性DT-3細胞はエクソン8形態を効率的に選択した。これらの所見は、エクソン9の抑制によってエクソン8への切り替えが引き起こされている可能性を示唆する。この仮説を検討するために、本発明者らは、エクソン9の3'および5'スプライス部位の一方または両方に、抑制を模してそのスプライス部位コンセンサス配列を破壊するための突然変異を導入し、これらをAT-3細胞にトランスフェクトした(図8A)。エクソン9の両方のスプライス部位を突然変異させた場合(図8A、3'&5'ss Mut)、AT-3細胞はエクソン8形態(22.9%)および二重スキップ形態(77.1%)を発現した(図8B、レーン4)。これらの結果から、AT-3細胞におけるエクソン9の遮断は、少なくとも部分的にエクソン8への切り替えを促進することが示された。興味深いことに、この切り替えを引き起こすためには3'スプライス部位の突然変異(図8A、3'ss Mut)だけで十分であった(図8B、レーン2)が、5'スプライス部位の突然変異(図8A、5'ss Mut)は、エクソン9中のggGTにおける潜在的5'スプライス部位を用いたエクソン9の異常スプライシング産物を生じさせた(図8B、レーン3に矢尻で示し、模式図を右側に図示している)。これらの結果により、エクソン9選択のために3'スプライス部位の認識が必須であることが示され、このことは、エクソン9の認識がその3'スプライス部位に依存している可能性を示唆する。この仮説を検証するために、本発明者らは、U2およびU1 snRNA/snRNPの結合によるスプライス部位認識を直接モニターするためのインビトロスプライシングアッセイを行った(図8C)。フランキングイントロンを含む野生型および突然変異型のエクソン9に対する32P標識RNAプローブ(図8Cの上方パネル)を、HeLa核抽出物とのインキュベーション後にUV照射によって架橋させ、電気泳動によって分離した。図10Aに示したように、HeLa細胞は非上皮性細胞の特徴を有することが確認された。U2またはU1結合の特異性は、U2またはU1に相補的なオリゴヌクレオチドの添加、およびRNアーゼH消化によって確認された[Konarska MM, Sharp PA (1986) Cell 46: 845-855., Sawa H, Shimura Y (1992) Genes Dev 6: 244-254.](図8C)。スプライシング条件下で、WT RNAプローブを用いてU1およびU2 snRNAの結合およびシフトが観察され、U1およびU2のバンドは一致した(図8C、レーン1〜4、矢印で示す)。注目に値することとして、3'スプライス部位の突然変異を保有するプローブは、U1およびU2の両方で、シフトしたバンドの完全消失をもたらした(図8C、レーン5〜8)。これらの結果から、エクソン9の認識はU2 snRNAの3'スプライス部位への結合に全面的に依存することが示された。それとは反対に、5'スプライス部位の突然変異(5'ss突然変異)を保有するプローブではU1およびU2両方の結合が保たれ(図8C、レーン9〜12)、これは図8B、レーン3に示されたRT-PCRの結果によく一致した。これらの結果は、U2 snRNAの結合がU1 snRNAの結合を支持し、その結果、エクソン9中のはるかに弱い潜在的5'スプライス部位がその5'ss突然変異の際に用いられたことを示唆する(図8B、レーン3および図8C、レーン12、星印を付した矢尻で示す)。これらの所見は、非上皮性細胞におけるエクソン9の選択的使用がなぜその3'スプライス部位の相対的強度に依存しているかを説明することができる。図12A、非上皮性制御または間葉性制御に示されたモデルを提唱しうるであろう。
図12A、非上皮性制御または間葉性制御に示されているように、非上皮性細胞におけるエクソン9の単一エクソン選択のためには不均衡な3'スプライス部位が必須であり、エクソン9の認識はその3'スプライス部位に依存的である。また、このエクソン9の3'スプライス部位の欠失は、エクソン8への切り替えも部分的に引き起こした。これらの結果は、上皮細胞においてエクソン8への切り替えを引き起こす、エクソン9に対するサイレンサーの存在を示唆している。この仮説を検証するために、本発明者らはまず、エクソン9の3'スプライス部位の近傍に位置する抑制性シスエレメントのスクリーニングを行い、高度に保存されている2つの配列、すなわちイントロン8中のUGCAUG配列およびISE/ISS-3(イントロン性スプライシングエンハンサー/サイレンサー-3)を取り出したが、これらはいずれもエクソン9に対するサイレンシング性シスエレメントであることが報告されている[Baraniak AP, et al., (2006) Mol Cell Biol 26: 1209-1222., Hovhannisyan RH, Carstens RP (2005) Mol Cell Biol 25: 250-263.](図9A)。これらの2つのシスエレメントがエクソン9のサイレンシングに必須であるか否かを検討するために、本発明者らはUGCAUGおよびISE/ISS-3の一方または両方のそれらのレポーターに突然変異を導入し、上皮性DT-3細胞にトランスフェクトした。本発明者らはまず、エクソン9のリプレッサーであることが報告されているFoxのRNA結合タンパク質への結合を妨害するために、UACGUACGUG(SEQ ID NO:43)をUGCAUGCAUG(SEQ ID NO:42)で置換した[Baraniak AP, et al.,(2006) Mol Cell Biol 26: 1209-1222.]。すると、DT-3細胞におけるエクソン8選択の比率は2分の1に低下した(44.7%から21.9%、図9B、レーン2)。次に本発明者らは、いくつかのジヌクレオチドGU配列を含む85bp配列である、ISE/ISS-3を欠失させた。ISE/ISS-3の欠失により、エクソン8包含の比率は4分の1まで低下した(44.7%から12.4%、図9B、レーン3)。これらのエレメントの両方を突然変異させると、DT-3細胞はもはやエクソン8を選択することができず、すべてのスプライシング産物がエクソン9形態になった(図9B、レーン4)。これらの結果は、おそらくその3'スプライス部位を介してエクソン9をサイレンシングすることによってエクソン8を選択するために、DT-3細胞がこれらのシスエレメントの両方を用いることを示している。
図9からの結果により、エクソン8の選択のためにはUGCAUGおよびISE/ISS-3の両方が必要かつ十分であることが示唆される。以前の研究により、Fox2はイントロン8中のUGCAUGを通してエクソン8包含を促進することが示されている[Baraniak AP, et al.,(2006) Mol Cell Biol 26: 1209-1222.]。また、cDNAライブラリースクリーニングによる最近の研究により、ISE/ISS-3への結合を通してエクソン8包含を媒介する上皮性スプライシング制御タンパク質ESRP1およびESRP2も同定されている[Warzecha CC, et al., (2009) Mol Cell 33: 591-601.]。このため、本発明者らは、Fox1、Fox2、ESRP1およびESRP2がエクソン9からエクソン8への切り替えを促進するか否かを検討した。本発明者らはまず、AT-3細胞とDT-3細胞との間でこれらのRNA結合タンパク質の発現レベルをRT-PCRによって検討して比較した。Fox2は両方の細胞株で同程度のレベルで発現されたが、上皮型DT-3細胞ではFox1の発現は検出不能であり(図9C)、ESRP1およびESRP2の両方が特異的に発現された(図9C)。UGCAUGおよびISE/ISS-3の両方がエクソン8の選択のために必須なシスエレメントであるという所見を考慮すると(図9B)、広く発現されるFox2はエクソン8包含に関して上皮特異的ESRP1およびESRP2と協働する可能性がある。この仮説を検証するために、本発明者らは、それらのFGFR2スプライシング・レポーターを、Fox1、Fox2、ESRP1もしくはESRP2またはこれらの組み合わせとともに、非上皮性細胞の特徴を有するHeLa細胞にトランスフェクトした(図10A、レーン1)。Fox1またはFox2をHeLa細胞に導入したところ、エクソン8の選択が用量依存的な様式で増加し、それぞれ10%(図10A、レーン2〜4)または40%(図10A、レーン5〜7)に達した。ESRP1またはESRP2を導入した場合にもエクソン8の選択は用量依存的な様式で増加し、90%超に達した(図10A、それぞれレーン8〜10および15〜17)。HeLa細胞は内因性Fox2をAT-3細胞と類似した様式で発現するため(図10A、レーン1)、本発明者らはESRP1またはESRP2をFox2ノックダウン条件下で導入し、ESRP1またはESRP2と内因性Fox2との協調効果について評価した。Fox2のノックダウン効率はmRNAレベルでは80%を上回った(平均81.2%)。内因性Fox2のノックダウンはESRP1またはESRP2によって促進されるエクソン8選択の比率を低下させ、最大低下率はそれぞれ24%(35.1〜11.0% 図10A、レーン8対レーン11)または23%(55.9〜32.6%、レーン15対レーン18)であった。Fox2およびESRP1の両方をトランスフェクトした場合、エクソン8包含の比率は、ESRP1の単独トランスフェクションで得られたものと同程度であった(図10A、レーン21〜24)。これらの結果は、導入されたESRPが内因性Fox2とともにエクソン8包含を促進することを示し、これは、Fox2およびESRPがエクソン8包含のために共に協調して作用することを示唆する。これらの結果は、Fox1、Fox2、ESRP1もしくはESRP2、またはFox2およびESRP1の両方をコトランスフェクトしたスプライシング・レポーターからの蛍光によっても確認された(図10B)。ESRP1またはESRP2の過剰発現は色を赤色から緑色に変化させたが、Fox1またはFox2のみが色変化に与える影響はそれより小さかった。Fox2およびESRP1のコトランスフェクションは、相互排他的エクソンによってコードされるタンパク質の切り替えを反映した色の切り替えに対して最大の影響を及ぼした。本発明者らは続いて、Fox2およびESRP1によるエクソン切り替えがイントロン8中のUGCAUGおよびISE/ISS-3に依存するか否かを検証した。本発明者らは、UGCAUG、ISE/ISS-3、またはこの両方を突然変異させたレポーターベクターにおけるFox2および/またはESRP1の過剰発現試験を行って、FoxおよびESRPによって引き起こされるエクソン切り替えがそれぞれUGCAUGおよびISE/ISS-3に左右されることを確認した(図13)。これらの結果から、FoxおよびESRPは、エクソン9の近傍に位置するUGCAUGおよびISE/ISS-3というシスエレメントを通して、エクソン8から9への切り替えを協調的に促進することが示された。
UGCAUGおよびISE/ISS-3を介したFoxおよびESRPによるエクソン9のその3'スプライス部位からの認識の妨害により、エクソン8への切り替えが促進されることが、インビトロ試験によって示された。残る疑問は、FoxおよびESRPの発現が、インビボでの発生の際の組織特異的な様式におけるエクソン8形態の発現と一致するか否かである。本発明者らは、Fox1、Fox2、ESRP1およびESRP2の発現プロファイルを、E16.5でのそれらのレポータートランスジェニックマウス胚からの連続切片を用いるインサイチューハイブリダイゼーションによって検討した(図11)。本発明者らが図6Dで既に示したように、エクソン8-EGFPの発現は左のパネルにある(白の矢印で示す)。隣接切片を用いて行ったインサイチューハイブリダイゼーションにおいて、Fox1 mRNAはこの段階の胚全体にわたって広範に検出され、その発現は上皮組織に局在するエクソン8-EGFPシグナルと一致した(黒の矢印で示す)。しかし、EGFPシグナルが観察された組織ではFox2が検出されなかった一方、同じ切片中の神経組織および筋肉ではFox2の強いシグナルが検出された(データは示さず)。ESRP1およびESRP2の発現は上皮組織で特異的に検出され(黒の矢印で示す)、これらの発現は発生段階の際のエクソン8-EGFPシグナルとほぼ完全に重なり合った。インビボでのこれらの所見は、組織特異的因子ESRPが全身的に発現されるFoxファミリーと共に作用してエクソン8包含を促進するという、図12Aにおける上皮性制御モデルを裏づけるものである。
被験化合物が哺乳類多細胞生物において特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼすか否かを試験するための方法の戦略は、図14に示されている。
多色蛍光レポーターは、培養細胞および生きている生物における選択的スプライシングのパターンを単一細胞分解能で可視化するために有用なツールである。多色レポーターは、選択的スプライシングの制御に関与するシスエレメントおよびトランス作用因子の探索のため、ならびにスプライシングパターンに影響を及ぼす化学物質のスクリーニングのために利用されている。本発明において、本発明者らは、線虫セノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)、培養細胞およびマウス用の蛍光選択的スプライシング・レポーターミニ遺伝子をどのように構築するのかを記載している。ミニ遺伝子の構築は部位指定組換えに基づいており、別々のベクター中にあるプロモーター、タグタンパク質cDNA、関心対象のゲノム断片、蛍光タンパク質cDNA、および3'カセットなどのモジュール式DNA断片を組み立てることによって、さまざまなミニ遺伝子を容易に構築することができる。本発明者らはまた、蛍光選択的スプライシング・レポーターの設計において考慮すべき点も記載している。このスプライシング・レポーターシステムは、理論的にはあらゆる他の生物に対して適用可能である。
Claims (12)
- 哺乳類多細胞生物における特定の遺伝子の相互排他的選択的スプライシングを検出するための方法であって、
(a)相互排他的選択的スプライシングを受ける該特定の遺伝子の3'側に少なくとも2種類の異なるレポーター遺伝子が異なる読み枠でタンデムに挿入され、かつ、該特定の遺伝子の5'側にN末端タグをコードするDNAが挿入されるように、該多細胞生物にDNA構築物を導入する段階であって、該異なるレポーター遺伝子の転写物それぞれが相互排他的選択的スプライシングによって生じる少なくとも2種類の異なる成熟mRNAにおけるエクソンのそれぞれとインフレームで融合するように、該レポーター遺伝子が挿入される、段階;および
(b)該レポーター遺伝子の発現によって、該多細胞生物における該特定の遺伝子の相互排他的選択的スプライシングを検出する段階
を含む、方法。 - 被験化合物が特定の遺伝子の相互排他的選択的スプライシングに影響を及ぼすか否かを試験するための方法であって、
(a)相互排他的選択的スプライシングを受ける該特定の遺伝子の3'側に少なくとも2種類の異なるレポーター遺伝子が異なる読み枠でタンデムに挿入され、かつ、該特定の遺伝子の5'側にN末端タグをコードするDNAが挿入されるように、哺乳類多細胞生物にDNA構築物を導入する段階であって、該異なるレポーター遺伝子の転写物それぞれが相互排他的選択的スプライシングによって生じる少なくとも2種類の異なる成熟mRNAにおけるエクソンのそれぞれとインフレームで融合するように、該レポーター遺伝子が挿入される、段階;
(b)該多細胞生物を該被験化合物と接触させる段階;
(c)該レポーター遺伝子の発現によって、該多細胞生物における該特定の遺伝子の相互排他的選択的スプライシングを検出する段階;および
(d)該被験化合物と接触させていない対照における該レポーター遺伝子の発現と比べ、(c)で検出された該レポーター遺伝子の発現が変化したか否かを判定する段階
を含む、方法。 - 特定の遺伝子の相互排他的選択的スプライシングに影響を及ぼす遺伝子領域を同定するための方法であって、
(a)相互排他的選択的スプライシングを受ける該特定の遺伝子の3'側に少なくとも2種類の異なるレポーター遺伝子が異なる読み枠でタンデムに挿入され、かつ、該特定の遺伝子の5'側にN末端タグをコードするDNAが挿入されるように、哺乳類多細胞生物にDNA構築物を導入する段階であって、該異なるレポーター遺伝子の転写物それぞれが相互排他的選択的スプライシングによって生じる少なくとも2種類の異なる成熟mRNAにおけるエクソンのそれぞれとインフレームで融合するように、該レポーター遺伝子が挿入される、段階;
(b)該多細胞生物を変異原で処理する段階;
(c)該レポーター遺伝子の発現によって、該多細胞生物における該特定の遺伝子の相互排他的選択的スプライシングを検出する段階;
(d)該変異原処理に供されていない対照における該レポーター遺伝子の発現と比べ、(c)で検出された該レポーター遺伝子の発現が変化した個体を選択する段階;および
(e)該個体における突然変異した遺伝子領域を同定する段階
を含む、方法。 - 特定の遺伝子の相互排他的選択的スプライシングに影響を及ぼす該特定の遺伝子内の領域を同定するための方法であって、
(a)突然変異が導入されておりかつ相互排他的選択的スプライシングを受ける該特定の遺伝子の3'側に、少なくとも2種類の異なるレポーター遺伝子が異なる読み枠でタンデムに挿入され、かつ、該特定の遺伝子の5'側にN末端タグをコードするDNAが挿入されるように、哺乳類多細胞生物にDNA構築物を導入する段階であって、該異なるレポーター遺伝子の転写物それぞれが相互排他的選択的スプライシングによって生じる少なくとも2種類の成熟mRNAにおけるエクソンのそれぞれとインフレームで融合するように、該レポーター遺伝子が挿入される、段階;
(b)該レポーター遺伝子の発現によって、該多細胞生物における該特定の遺伝子の相互排他的選択的スプライシングを検出する段階;および
(c)該特定の遺伝子に突然変異が導入されていない対照における該レポーター遺伝子の発現と比べ、(b)で検出された該レポーター遺伝子の発現が変化したか否かを判定する段階
を含む、方法。 - 特定の遺伝子が1つのプロモーターの調節下で機能するように該特定の遺伝子が該プロモーターと連結されており、該プロモーターが組織特異的プロモーターおよび発生段階特異的プロモーターのいずれかである、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
- 多細胞生物がマウスに由来する、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
- 特定の遺伝子がFGFR2である、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
- レポーター遺伝子が蛍光タンパク質をコードする遺伝子である、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
- 選択的スプライシングパターンを可視化するためのDNAベクターを調製するために、
(1)関心対象の遺伝子に含まれるエクソンaおよびbを有する増幅されたDNA領域のDNA構築物を調製する段階;
(2)該DNA構築物の両端にattBを付加する段階;
(3)上記(2)のDNA構築物と、選択用遺伝子およびタンデムに配置されたattPを有するドナーベクターとの組換え体を得る段階;
(4)上記(3)のDNA構築物上のエクソンaにフレームシフト突然変異を導入する段階;
(5)下記(i)〜(iii)の組み換え体:
(i)上記(4)のDNA構築物
(ii)選択用遺伝子と、2種類のレポーター遺伝子が連結された構造を有するDNAの両端に互いに対抗する向きに配置されたattLを有するDNAとを含む、DNAベクター
(iii)3'カセットDNAと、プロモーターと、選択用遺伝子を有するDNAの両端に互いに対抗する向きに配置されたattRを有するDNAとを含む、DNAベクター
を得る段階
をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。 - 関心対象の遺伝子がFGFR2遺伝子である、請求項9記載の方法。
- エクソンaおよびbがFGFR2遺伝子のエクソン8および9である、請求項10記載の方法。
- レポーター遺伝子が蛍光タンパク質をコードする遺伝子である、請求項9〜11のいずれか一項記載の方法。
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
US35042010P | 2010-06-01 | 2010-06-01 | |
US61/350,420 | 2010-06-01 | ||
PCT/JP2011/003059 WO2011152043A1 (en) | 2010-06-01 | 2011-05-31 | Transgenic reporter system that reveals expression profiles and regulation mechanisms of alternative splicing in mammalian organisms |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2013529889A JP2013529889A (ja) | 2013-07-25 |
JP5875009B2 true JP5875009B2 (ja) | 2016-03-02 |
Family
ID=45066434
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2012554135A Expired - Fee Related JP5875009B2 (ja) | 2010-06-01 | 2011-05-31 | 哺乳類生物における選択的スプライシングの発現プロファイルおよび制御機構を明らかにするトランスジェニックレポーターシステム |
Country Status (4)
Country | Link |
---|---|
US (1) | US9273364B2 (ja) |
EP (1) | EP2576778B1 (ja) |
JP (1) | JP5875009B2 (ja) |
WO (1) | WO2011152043A1 (ja) |
Families Citing this family (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPWO2015005491A1 (ja) * | 2013-07-12 | 2017-03-02 | 国立大学法人京都大学 | 疾病の発症又は進行の一因となる異常スプライシングを抑制できる物質のスクリーニング方法 |
AU2014304570B2 (en) * | 2013-08-06 | 2019-07-25 | Ichnos Sciences SA | Expression constructs and methods for expressing polypeptides in eukaryotic cells |
JP7129095B2 (ja) | 2017-02-20 | 2022-09-01 | 国立大学法人京都大学 | スプライシング異常に起因する遺伝性疾病のための医薬組成物及び治療方法 |
WO2021077017A1 (en) * | 2019-10-17 | 2021-04-22 | The Johns Hopkins University | Compositions and methods for using alternative splicing to control specificity of gene therapy |
Family Cites Families (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2007149870A2 (en) * | 2006-06-19 | 2007-12-27 | The Regents Of The University Of California | Two-color fluorescent reporter for alternative pre-mrna splicing |
US7928283B2 (en) * | 2006-09-27 | 2011-04-19 | Kinopharma, Inc. | Transgenic reporter system that reveals expression profiles and regulation mechanisms of alternative splicing in nematodes |
WO2009137631A2 (en) * | 2008-05-07 | 2009-11-12 | Wintherix Llc | Methods for identifying compounds that affect expression of cancer-related protein isoforms |
-
2011
- 2011-05-31 JP JP2012554135A patent/JP5875009B2/ja not_active Expired - Fee Related
- 2011-05-31 EP EP11789456.8A patent/EP2576778B1/en active Active
- 2011-05-31 WO PCT/JP2011/003059 patent/WO2011152043A1/en active Application Filing
- 2011-05-31 US US13/700,890 patent/US9273364B2/en active Active
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
EP2576778A4 (en) | 2013-12-04 |
JP2013529889A (ja) | 2013-07-25 |
US20130137099A1 (en) | 2013-05-30 |
WO2011152043A1 (en) | 2011-12-08 |
EP2576778B1 (en) | 2017-08-09 |
US9273364B2 (en) | 2016-03-01 |
EP2576778A1 (en) | 2013-04-10 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Tan-Wong et al. | R-loops promote antisense transcription across the mammalian genome | |
Tripathi et al. | The nuclear-retained noncoding RNA MALAT1 regulates alternative splicing by modulating SR splicing factor phosphorylation | |
KR20190134673A (ko) | 게놈 편집에 의한 엑손 스키핑 유도 방법 | |
CN109072257B (zh) | 增强的睡美人转座子、试剂盒和转座方法 | |
Takeuchi et al. | Splicing reporter mice revealed the evolutionally conserved switching mechanism of tissue-specific alternative exon selection | |
JP5875009B2 (ja) | 哺乳類生物における選択的スプライシングの発現プロファイルおよび制御機構を明らかにするトランスジェニックレポーターシステム | |
Hang et al. | Different modes of enhancer-specific regulation by Runt and Even-skipped during Drosophila segmentation | |
Newman et al. | Identification of RNA-binding proteins that regulate FGFR2 splicing through the use of sensitive and specific dual color fluorescence minigene assays | |
Parhad et al. | Adaptive evolution targets a piRNA precursor transcription network | |
US8907073B2 (en) | Nucleic acids encoding FOXD3 promoter and methods to isolate FOXD3 expressing cells | |
US20070196917A1 (en) | Methods of constructing a gene mutation library and compounds and compositions thereof | |
Singh et al. | Evolution of transcriptional regulatory elements within the promoter of a mammalian gene. | |
Chen et al. | 5′-UTR mediated translational control of splicing assembly factor RNP-4F expression during development of the Drosophila central nervous system | |
Gresakova et al. | RETRACTED: Fam208a orchestrates interaction protein network essential for early embryonic development and cell division | |
Lee et al. | Cloning and characterization of the rat Hsf2 promoter: a critical role of proximal E-box element and USF protein in Hsf2 regulation in different compartments of the brain | |
Chang et al. | Structural characterization of the mouse Foxf1a gene | |
Manuylov et al. | Cardiac Expression of Tnnt1 Requires the GATA4‐FOG2 Transcription Complex | |
Lepage et al. | Expression of exogenous mRNAs to study gene function in the sea urchin embryo | |
US20050153302A1 (en) | Method for comprehensive identification of cell lineage specific genes | |
EP2307562B1 (en) | Expression vectors based on modified ribosomal protein promoters and uses thereof in post-transcriptional assessment | |
EP3904513A1 (en) | Unblending of transcriptional condensates in human repeat expansion disease | |
Fujioka et al. | The homie insulator has sub-elements with different insulating and long-range pairing properties | |
Kong | Profiling Transcription and Retrotransposition of Mouse L1 Subfamilies | |
Peterson | Regulation and Function of the Dscam1 Extended 3’UTR mRNA | |
Larson | Molecular Mechanisms of LINE-1 Retrotransposition Inhibition |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20140428 |
|
RD04 | Notification of resignation of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424 Effective date: 20150316 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20150629 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20150825 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20151224 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20160108 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 5875009 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |