JP5873632B2 - 懸濁液の1以上の特性を測定するデバイス、方法及びシステム - Google Patents

懸濁液の1以上の特性を測定するデバイス、方法及びシステム Download PDF

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Description

本発明は一般に、懸濁液の1以上の特性を測定するデバイス、方法及びシステムに関する。
スラリー濃度はクロマトグラフィーのカラム充填プロセスにおける多くの重要なパラメータの1つである。樹脂沈降及び手動読み取りによる現在の濃度測定は時間がかかり、精度に欠け(約±5%)、又、大量の貴重な樹脂材料が無駄になる。
カラム充填プロセスでは、アガロースビーズ等の樹脂ビーズが溶液の緩衝液と混合されて、スラリー懸濁液が生成される。撹拌によって、ビーズが確実に緩衝液と十分に混和され、スラリー中に均一に配分され易くなる。次いでスラリーがカラム内にポンプで送り込まれる。カラム全体にスラリーが充填されると、ビーズは次第に底に沈降し、上方に累積して固体床を形成する。既知のカラム直径に基づいて沈降容積の重力(Vgs)を計算するために、ビーズが完全に沈降した場合の床の高さが記録される。次いで、可動板を用いてカラムが圧縮され、緩衝液がフィルタを通してカラムから押し出され、一方、ビーズはカラム内に充填されたまま残される。ビーズが圧縮された後、カラム容積(Vc)を計算するために床の高さが再び記録される。VgsとVcとの比率は圧縮率として定義され、これは一般にカラム充填プロセスにおける最も重要なパラメータであると見なされている。圧縮率は、分離能、容量及び処理能力等のカラムの性能を示す。
現在のカラム充填方法では、事前に決定されるある床高さ(Vc)まで媒体が充填される。スラリー容積は流量計を用いて測定される。圧縮率(CF)はスラリー容積濃度(スラリー中の固体ビーズの容積濃度)によって定まる。これらのカラムを充填する際のスラリー濃度(%)を誤ると、媒体の圧縮率は最適ではなくなる。
スラリーの容積%測定は現在、沈降法を用いて判定されるが、これは手動的なものであり、遅く、誤差を生じやすい。一般に、ユーザーがスラリーを均一状態に混合し、サンプルを採取する。このサンプルは一晩以上メスシリンダ内で沈降されなければならない。スラリーの沈降後にVgsレベルが読み取られ、スラリー濃度が以下のように計算される。
スラリー%=サンプル中のVgs/スラリーの総容積
最良の場合でも、現在の方法ではスラリー%の測定には約±2%の誤差が生じるが、誤差率は一般にそれ以上である。スラリー%の測定を質量%で行い、次いで容積%に変換することも可能である。質量測定は正確であるが、ビーズ容積は緩衝液が異なると大幅に変化する。それによって、質量%を容積%に変換する際に大きな誤差が生ずる。本明細書で実施形態の説明に用いる場合、限定する意図はなく説明目的で、スラリーという用語は容積%に基づいて用いられる。
国際公開第2003/102550号
現在の方法の限界は、スラリー濃度センサが必要であることである。理想的なセンサは迅速かつ頑強で、製造プロセスでのカラムの再充填を避けるためにスラリー濃度判定の信頼性がなければならない。インライン(リアルタイム)のスラリー濃度センサは更に、産業上の業務の流れを大幅に簡略化し、人による誤差を少なくし、反復的かつ費用効率が良くなるように大量生産を改善するようにカラムの自動充填が可能でなければならないであろう。
様々な産業上の用途でのスラリー濃度測定用に、この20年来、多くの超音波測定機器が開発されてきた。それらの機器には、オフライン測定が必要なものもあり、スラリーのサンプルを元の容器から採取し、特殊に設計された容器内で測定する。その他のシステムにはインライン測定を用いるが、十分な精度が得られないものもある。
スラリー濃度の測定には、超音波法の他にも光学的方法が検討されてきた。しかし、これらの光学的方法のほとんどは低濃度で(通常は10%未満)、比較的透明なスラリーしか測定できない。光学的方法は、高濃度で不透明なスラリーサンプル向けには不十分である。
本発明の超音波デバイス、方法及びシステムは従来の方法よりも正確且つ迅速で効率良く、自動化及び携帯化に、又、多様な産業上のプロセス及びバイオメディカルのプロセスでの使用に容易に適応できる。例えば、これらのデバイス、方法及びシステムによってカラム充填品質が高まり、必要な樹脂材料の量が低減される。
デバイス、方法及びシステムの1以上の実施形態は、二段階のリフレクタシステムを有する浸漬可能なデバイスを備え、これはある実施形態では、緩衝液のみに基づいて、及び/又は均一なスラリー測定に基づいて、速度と減衰の一方又は双方を較正するように構成されている。方法及びシステムの1以上の実施形態は更に、デュアルデバイスと、デュアルデバイスシステムを組み込むように構成されたデータ分析プロセッサとを使用しても良い。これらのデバイス、方法及びシステムは、インライン又はオフラインでの使用に適応でき、濃度、粒子密度、及び沈降速度を含むがそれに限定されない多様な懸濁液パラメータを測定するために使用できる。これらのデバイス、方法及びシステムはインライン又はオフラインでの使用に適応でき、フロースルーシステム及び/又は超音波デバイスが懸濁液処理システムに組み込まれたシステムに適応できる。
本発明の上記及びその他の態様、側面及び利点は、添付図面を参照して以下の詳細な説明を読むことによってより明解に理解されよう。図面全体を通して、同じ符号は同じ部品を表している。
本発明の浸漬可能デバイスの実施形態の概略図である。 本発明のシステムの実施形態の概略図である。 少なくとも2つの反射面を有する浸漬可能デバイスの実施形態の概略図である。 少なくとも2つの反射面を有する浸漬可能デバイスの実施形態の概略図である。 2面設計のリフレクタを使用して形成される波形の実施形態のグラフである。 撹拌棒を使用する場合の変動性レベルの例を示すグラフである。 1組のQFFサンプルでの懸濁速度対懸濁%を示すグラフである。 液体キャリア間の潜在的速度差の例を示すグラフである。 液体キャリア間の潜在的速度差の例を示すグラフである。 異なる4つのビーズ材料での修正された懸濁速度対懸濁%を示すグラフである。 速度測定に対する温度変動の影響を示すグラフである。 速度対濃度及び温度の3D回帰プロットである。 本発明の携帯デバイスの実施形態の概略図である。 本発明の携帯デバイスの実施形態の斜視図である。 本発明のフロースルー超音波測定システムの実施形態の概略図である。 本発明の組み込み型超音波測定システムの実施形態の概略図である。
システムの一実施形態は、2つの超音波プローブと、2つのリフレクタブロックと、プローブ及びリフレクタを相対位置に固定するためのハウジングと、携帯データ分析器とを備える。プローブ/リフレクタの対(本明細書では浸漬可能デバイスとも呼ばれる)のうちの一方は、スラリーに直接浸漬され、プローブ/リフレクタの対のうちの他方はフィルタを備え、このフィルタは緩衝液等の液体キャリアだけがプローブの表面と反射面との間を流れることを可能にし、スラリーに浸漬した場合に樹脂ビーズが入ることを阻む。スラリー中の超音波速度、減衰及び反射/透過率を測定することによって、スラリー中の粒子濃度を±1%の精度で判定できる。浸漬可能なデュアルデバイスシステムを使用すれば、緩衝液の変動をデータ分析アルゴリズムから排除できる。浸漬可能デバイスは更に、2つ又はそれ以上の交互配置された反射面を備えていても良く、それによってプローブとリフレクタとの距離変動が縮小されて超音波測定の精度が高まる。
システム及び方法で用いられるデータ分析アルゴリズムは、緩衝液のみに基づいて、及び均一なスラリー測定に基づいて、較正された超音波パラメータを計算するように構成される。パラメータを較正するこのプロセスは、緩衝液の変化が測定精度に及ぼす影響を大幅に低減する。デュアルプローブの設計によって、時間がかかる沈降ステップを必要とせずに一回の測定で緩衝液のみ、及びスラリーの超音波パラメータの双方を得ることに役立つ。TOFを正確に計算するために、データ分析ステップにデータ補間及び相関を組み込むこともできる。
スラリー濃度に関する超音波パラメータには一般に、速度、減衰、反射率及び共振周波数が含まれるが、後者はインライン測定システムには用いられない。速度はスラリー濃度の変化(1%未満)に極めて敏感である。速度は、位相速度と群速度とに分けることができる。位相速度は音波伝搬経路に沿った位相変化の速度であり、一方、群速度は音波の波形移動速度であり、エネルギ速度とも呼ばれる。伝搬媒体が非分散媒体である場合は、位相速度と群速度は同じである。媒体が分散媒体である場合は、位相速度と群速度は周波数が異なれば異なる。媒体の分散はスラリービーズのサイズ分布に関連する。ほとんどのスラリー濃度測定は単一の周波数(例えば1Mhz)で行われ、次いで群速度が測定される。説明目的のためだけに、又、本発明の範囲を限定する意図ではなく、実施形態の例を説明する際に用いられる速度とは群速度のことである。
音波伝搬距離が判明していれば、時間差測定に基づいて速度を計算できる。広範に採用されている時間測定方法は、ゼロ交差、ピーク振幅、及び相互相関の3つである。ゼロ交差は音波が正又は負から、又はその逆から最初にゼロに交差する時間を探知する。ゼロ交差は、波形補間及び求根アルゴリズムによって効果的に実施できる。2つのゼロ交差ポイントが時間差を与え、そこから速度を計算できる。ピーク振幅法は時間に対する少なくとも2つのピークを測定して時間差を計算し、そこから速度を測定できる。相互相関法は少なくとも2つの波形の1つをシフトし、次いで2つの波形間の類似性を比較する。相関が最大に達すると、それが2つの波形間の時間差である。ゼロ交差は、精度が高く波形歪みがある場合に強靭であるため、1以上の実施形態で部分的に用いられる。
超音波プローブから放射される音場は近距離音場と遠距離音場とに分けられる。近距離音場では、音波の振幅は劇的に変化し、一方、位相は比較的正確である(0.005%未満の誤差)。遠距離音場では、振幅はなだらかな単調減衰を伴って次第に変化し、波の回折により位相誤差が増大する。時間又は速度測定に最適な位置は近距離音場で、減衰測定に最適な位置は遠距離音場である。
通常はdB/m又はネーパー/m(1Np/m=8.686dB/m)で測定される波形減衰率に基づいて減衰を測定できる。スラリーの濃度が異なると波形減衰は異なる。測定された減衰は減衰全体を表し、それにはプローブ(及び導波棒がプローブに取り付けられている場合は導波棒)、プローブとスラリーとの境界面、スラリー、及びリフレクタが使用される場合は遠距離音場回折及びプレート反射に関連する減衰が含まれる。超音波減衰測定を含む方法及びシステムを最適化するため、一回の反射ではなく複数回の反射が記録されることが好ましい。そのために、プローブの表面とリフレクタとの距離を厳密に制御する必要がある。
反射率は入射波と、音響インピーダンスが異なる2つの材料の境界面で反射した音波との振幅比である。音響インピーダンスは、密度と、音波がそれを通って伝搬する材料内での超音波速度との乗算として定義される。スラリーの濃度が変化すると、それに応じてスラリー濃度と超音波速度の双方が変化する。
共振周波数法は、振動管内の容積が判明している場合の液体重量の変化による振動周波数の変化を測定する。そして密度を既知の温度で濃度に変換できる。これはオフライン測定技術であるため、一般にインラインのスラリー濃度測定には適さない。速度は感度と精度が高いので1以上の実施形態で用いられる。
速度測定ではパルス波又は連続波を用いても良い。パルス波を用いる方法では、単一の超音波トランスデューサが送信機並びに受信機として機能するパルス−エコー法、及び/又は一方が送信機であり、他方が受信機である2つの超音波トランスデューサが使用される透過法を利用しても良い。連続波を用いる方法は、サンプルからの複数の反射による固定波の干渉又は生成を利用しても良く、サンプルは2つのトランスデューサの間に配置され、又はトランスデューサとリフレクタとの間に配置される。高い速度精度を達成するため、1以上の実施形態ではパルス−エコー法はゼロ交差と組み合わされる。
本発明の浸漬可能デバイスの一実施形態は、全体をデバイス10として図1に示され、記載されている。デバイス10は基本的に、空間24を有するハウジング12と、プローブ面16を有するプローブ14と、反射面20を有するリフレクタ18と、円錐部22とを備える。ハウジング12は、クロマトグラフィーカラム・スラリー等の懸濁液がプローブ面16と反射面20との間の空間24内に流れて、プローブ14を通って放射される超音波が空間24内の懸濁液を通過し、反射面20から反射してプローブ面16に戻ることができるようにするため、ハウジング内の、又はハウジングを貫く1以上の開口部26を設ける。この音波経路は、全体を音波伝搬経路Aとして図1に示されている。浸漬可能デバイスの設計と構造は、浸漬可能デバイスの必要な要素を備えていれば、当業者の必要性に応じて、特定の用途に適応するように修正しても良い。
リフレクタ18は一端に研磨された平坦面を、他端には円錐部22を有する。平坦面は超音波を反射するために利用され、円錐の形状は他端からの反射を低減する役割を果たす。プローブとリフレクタの双方は、ハウジング12によって所定位置に固定される。デバイスは懸濁液に直に浸漬できる。超音波はプローブ面から放射され、懸濁液を通って伝搬し、反射面によってプローブへと反射される。
本発明のシステムの実施形態は全体を図2でシステム50と称し、図示されている。システム50は基本的に、超音波を浸漬可能デバイスに送信し、又、浸漬可能デバイスから受信するために浸漬可能デバイス54と通信する超音波発生器/受信器52(例えば、Panametricのパルサ・レシーバ モデル5072PR)と、超音波発生器/受信器からの超音波を受信し、処理するために超音波発生器と通信する信号処理デバイス56とを備える。システム50は更に、波形信号を表示するためのオシロスコープ58を備えていても良い。
本発明のシステムの別の実施形態は全体を図13でシステム140と称し、図示されている。システム140は基本的に、液体キャリア中に分散する粒子を含む懸濁液の1以上の超音波パラメータを測定するフロースルー装置142を備え、これは基本的に、懸濁液が流れることができる入口146と出口148とを有する容器144と、懸濁液が容器を通って流れる際に懸濁液を通る超音波を送受信するように構成された1以上の超音波プローブ150と、懸濁液を通る超音波をプローブ面に反射させるようにプローブ面から交互の距離を隔てた位置に配置された少なくとも2つの反射面152と154とを有する1以上のリフレクタと、懸濁液がプローブ面と反射面との間を流れることができるようにプローブ面と反射面との間の位置に空間を置いてプローブとリフレクタとを固定する1以上の固定具又はハウジング(例えば容器144)とを備える。システム140は更に、スイッチ158と160とを備えていても良い。システム140によって、カラム等のスラリー容器からのスラリーが測定システムに流入することが可能になる。システム140は更に、超音波をプローブ150に送信し、又、プローブ150から受信する超音波発生器/受信器162と、超音波発生器/受信器からの超音波を受信し、処理するために超音波発生器と通信する信号処理デバイス164と、オシロスコープ166と、超音波信号を処理し、分析するプロセッサ168とを備える。
本発明のシステムの別の実施形態は全体を図14でシステム180と称し、図示されている。システム180は、処理ユニット182に組み込まれた超音波懸濁液測定システムを備える。システム180は基本的に、ユニット182内の懸濁液がデバイス186を流れることができるように、処理ユニット182内に1以上の超音波デバイス186を保持し、支持するアーム184を備える。デバイス186は、図14には縮尺通りには示されておらず、デバイス186の構成部品を示すために拡大されている。デバイス186は、タンク(ユニット182)内の懸濁液を通る超音波を送受信するためのプローブ188と、懸濁液を通る超音波をプローブ面に反射させるようにプローブ面から交互の距離を隔てて配置された少なくとも2つの反射面190と192とを有する1以上のリフレクタと、懸濁液がプローブ面と反射面との間を流れることができるようにプローブ面と反射面との間に空間を有する、プローブとリフレクタとを所定位置に支持し、固定するハウジング194とを備える。
システム180は更に、超音波をプローブ180に送信し、又、プローブ180から受信する超音波発生器/受信器193と、超音波発生器/受信器からの超音波を受信し、処理するために超音波発生器と通信する信号処理デバイス195と、オシロスコープと、超音波を処理し、分析するプロセッサとを備える。デバイス186はケーブルを通して、又はワイヤレスでデバイス192と通信できる。
図1及び図2に示した実施形態等の単一面リフレクタを使用して正確な測定を達成するため、プローブとリフレクタとの距離は構造的に厳密に制御されるか、又は同時測定値又は変数として信号分析に組み入れる必要がある。例えば、リフレクタとプローブ面との距離が振動やスリップにより変化した場合は、距離測定を行い、分析に組み入れる必要がある。
生じる可能性がある距離測定誤差を低減するため、2面リフレクタを浸漬可能デバイスに組み込んでも良い。少なくとも2つの反射面を有するこのようなデバイスの実施形態は、図3a及び3bにデバイス70として図示され、記載されている。図3に示された点線B及び点線Cは可能な2つの超音波経路を示す。この例示的実施形態によって、2つの往復エコーを比較する必要がなくなる。その代わりに、別個の反射面72、74からの2つのエコーを比較すれば良い。本実施形態の反射面間の距離は0.2±0.0001インチであり、反射面は互いに平行であることが必要である。プローブ76とリフレクタ78との距離が変化した場合でさえも、2つのエコー間の距離が固定しているので精度に悪影響はない。この構成は基本的に距離誤差に対して耐性がより強い。プローブ76とリフレクタ78との間に生じる可能性がある角度のずれを更に最小限にするためのハウジング80を使用しても良い。ハウジングの本実施形態の外径は約0.622〜0.624インチであり、内径は約0.624インチにすべりばめ分を加えたものである。ハウジングは特定の用途に適したどの材料で製造しても良い。ハウジングのこの例示的実施形態はステンレススチールである。本実施形態での開口部82及び84の長さは約1.0インチである。本実施形態のリフレクタの円錐部86は、内角45度を有する。本実施形態の反射面72と円錐部86の基部との距離は約0.5インチである。図4は2面設計のリフレクタで収集されたスラリー中の典型的な波形を示す。ゼロ交差は、時間差及び次いで速度を得るために別個のリフレクタ面形の2つの別個のエコーを処理する。
本発明のデバイス、方法及びシステムがオフラインの用途で用いられるか、又は懸濁液がより均一な状態に保たれる必要がある時点でインラインの用途に組み込まれるのかに応じて、正確な測定値を得るために、システムに撹拌棒を組み入れて懸濁液中の粒子の適切な分布を保つようにしても良い。このような撹拌棒の例は、可変速度制御と、固定的な縦位置に固締できる撹拌ヘッドとを有するCaframoのモデルRZR1等の機械的撹拌棒である。図5は、一定の撹拌棒がある適切な用途に用いられる場合の低レベルの変動性を示すグラフである。
撹拌を行わないと、スラリー中の粒子は下方に沈降し始める。粒子の沈降プロセス中に、超音波パラメータを複数回測定することができる。例えば、粒子が沈降する際に、超音波速度及び/又は減衰を30秒毎に複数回(例えば20回)測定しても良い。超音波のパラメータの変化対粒子沈降中の時間(沈降速度)を利用して、粒子サイズ、粒子の汚染状態、粒子の老化状態、及び粒子密度を含むがこれに限定されないその他の貴重な情報を判定できる。
図6に示すように、緩衝液などの液体キャリアもシステムに変動を引き起こすことがある。図6は線100を10%のエタノール緩衝液として示された1組のQFFサンプルでのスラリー速度対スラリー%として示しており、線102を同じ組のQFFサンプルでの緩衝液速度対スラリー%として示している。全ての緩衝液が10%のエタノールと示されてはいても、線102は明らかに緩衝液の変化を示している。線100と102の類似性は、緩衝液の変化がスラリー速度測定にかなりの影響を及ぼすことがあることを示している。このような変化を調整するため、緩衝液の速度に基づいてスラリー速度が修正される。この例では樹脂材料が緩衝液の特性によって修正される。これらの修正を補正するため、スラリー速度は樹脂%に依存して樹脂によって修正された緩衝液の速度であり、但しV(樹脂%)は下記のとおり補正された速度である。
V(樹脂%)=V_スラリー−V_緩衝液
図7aは、2組のサンプルでのQFF速度対スラリー濃度を示す。より具体的には、図7aは2組のQFFサンプル間の、すなわち10%のエタノール中のQFFと20%のエタノール中のQFFの間のスラリー速度の大きな差を示す。図7bは2組のQFFサンプルでの補正された速度対濃度%を示す。図7aと図7bとを比較すると、速度補正によって速度変化は〜100m/sから3m/sへと大幅に低減することが示されている。図8は異なる4つのビーズ材料での補正された速度対スラリー%を示す。全ての速度は2つの独立した測定、すなわち1つはスラリー速度の測定、もう1つは緩衝液のみの測定に基づいて補正済みである。図8は更に、スラリー濃度の測定では、各々のビーズ材料は独自の速度対%曲線を有しており、ビーズの識別及び品質監視(老化、サイズ変化など)のために独自の曲線分布を用いても良く、ビーズの密度、サイズ及び老化を含むがそれに限定されない懸濁液中の粒子に関する追加情報を得るためにビーズ沈降プロセスの記録を利用しても良いことを示している。
緩衝液の変化は、以下のようなオフライン較正方法を用いて低減することができる。
・5Lのスラリーボトルを均一状態になるように振る。
・〜0.5Lを新たな容器A(例えば2Lのナルゲンボトル)に移す。
・2Lのマークまで10%のエタノールを充填する。
・それを一晩沈降させる。
・ビーズ床を乱さないように上澄み(〜1.5L)を除去し、上澄みの緩衝溶液を別の容器Bに貯蔵する。
・スラリーを容器Aから測定シリンダ(1L)に移す。
・一晩待機する。
・固体ビーズ(x)、液体(y)の高さを測定する。そこで、スラリー濃度はx/y=z%である。
・スラリーを測定シリンダから再び容器Aに移す。容器B内の小量の緩衝溶液で濯ぎ、必要なら新たなスラリー濃度を計算する。
・撹拌し、容器A内での最初の速度測定を行う。
・容器B内の緩衝溶液をAに加えて濃度%がより低いサンプルを作る。
・速度測定を行う。
・容器B内の緩衝溶液が空になるまでステップ11と12を繰り返す。
このサンプル準備方法によって、全てのスラリーサンプルについて同じ緩衝液%の使用が確保されるが、インラインの用途では通常はインライン較正方法が必要である。従って、インラインシステムでの緩衝液の変化を低減するため、方法及びシステムの1以上の実施形態は、二重又は複数の浸漬可能デバイスを組み込んでも良い。2つの超音波デバイス又はプローブが併用される。一方はスラリー速度を測定するためであり、他方は緩衝液速度だけを測定するためであり、これはビーズの流入を防ぎ、緩衝溶液だけがフィルタを通過できるようにするため、プローブの周囲にフィルタを有している。フィルタの細孔のサイズに応じて、緩衝液が流入し、超音波経路を完全に塞ぐ時間は変化する。非限定的な例として、12μmのフィルタを使用したQサファイアの大ビーズスラリーサンプルでは数秒で十分であろう。超音波経路内に気泡がある場合は、限定されないが、デバイス又は流れ空間内の液体を軽く撹拌すること等の多様な方法で除去することが好ましい。
懸濁液の1以上の超音波パラメータを判定する際には、温度も重要な役割を果たし得る。例えば、温度変化は、図9に示すように速度測定に大きく影響し得る。図9は、各スラリー濃度で範囲内の異なるスラリー温度[9℃、30℃]でのQFF速度を示す。円110は測定された速度であり、点112は温度回帰後に補償された速度である。点線Dは、±2%の濃度変化における速度境界である。
速度対濃度及び温度の3D回帰プロットを図10に示す。この場合、温度と濃度の影響は別個である。3D回帰プロットの傾向は、以下のような回帰方程式として要約される。
速度(m/s)=1624.753672+0.307557×濃度−0.581831×温度
回帰方程式は、スラリーが異なればビーズと緩衝液との組み合わせに応じて異なる。温度変化を正確に補償するため、スラリー中の温度を正確に、好ましくは±0.05℃の精度で測定する必要がある。超音波測定中にスラリーの温度定数を保つようにチャンバの温度を制御する必要があるが、この構成は産業上の製造環境には適さないかもしれない。懸濁液の温度を制御することが適さないか望ましくない用途では、懸濁液測定の温度変化を低減するために温度の記録及び補償を用いても良い。これらの温度測定から、速度測定に適用可能な温度補償曲線が作成される。温度補償曲線は、複数の温度ポイントからの測定によって作成しても良い。
浸漬可能デバイス及び方法及びシステムは、例えばフィールドデバイスなどの携帯デバイス用に適応できる。例えば、図11は携帯デバイスを使用できる状況での概略図である。図12に示すように、本実施形態はパルサ・レシーバ、オシロスコープ及びプロセッサ/コンピュータを1つのユニット120として格納する。浸漬可能デバイス122はケーブル124を介してユニット120と通信する。ユニット120は更に、限定されないがソフトウエアやデータなどの情報を、限定されないがラップトップ、パーソナルコンピュータ、及び携帯デバイスなどのデジタルデバイスからアップロードし、又、デジタルデバイスへダウンロードして、更に転送し、データ処理し、プロットを作成することができるように通信ポートを備えていても良い。ユニット120は、ハードライン又はワイヤレスでこれらのデバイスと通信する。
本明細書には本発明のある特定の特徴だけを図示し、記載したが、当業者には多くの修正及び変更がなされよう。従って、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨に含まれるこれらの修正及び変更を全て包含することを意図するものである。

Claims (8)

  1. 液体キャリア中に分散する粒子を含む懸濁液の1以上の超音波パラメータを測定するシステムであって、当該システムが、
    (i)液体キャリア中に分散する粒子を含む懸濁液の1以上の超音波パラメータを測定するための2以上の浸漬可能デバイスであって、
    (ia)超音波を送受信するように構成され、プローブ面を有する1以上の超音波プローブと、
    (ib)前記超音波を前記プローブ面に反射するように、前記プローブ面から異なる距離に配置された少なくとも2つの反射面を有する1以上のリフレクタと、
    (ic)前記プローブ面と前記反射面との間に空間が形成されるように前記プローブと前記リフレクタを固定するハウジングであって、前記懸濁液が前記プローブ面と前記反射面との間の空間に流入できる十分なサイズの開口部を含むハウジングと
    を備える浸漬可能デバイスと、
    (ii)前記浸漬可能デバイスと通信して、前記浸漬可能デバイスとの間で超音波に対応する信号を送受信する超音波発生器/受信器と、
    (iii)前記超音波発生器/受信器と通信して、前記超音波発生器/受信器から超音波に対応する信号を受信し、処理する信号処理デバイスと
    を含んでおり、前記2以上の浸漬可能デバイスの少なくとも1つは、そのデバイスの前記空間に前記液体キャリアは流入できるが、前記粒子は流入させないように構成されたフィルタを更に備えていることによって、前記液体キャリアを較正するように構成されており、当該システムが、1以上の超音波パラメータを測定して、液体キャリア中に分散する複数の粒子を含むスラリー懸濁液の1以上の特性を判定するためのインラインのクロマトグラフィーカラム充填システムであって、前記信号処理デバイスが、前記スラリー懸濁液の1以上の超音波パラメータを判定するように構成されており、前記スラリー懸濁液の特性の少なくとも1つが超音波速度に基づく前記懸濁液中の粒子の濃度測定値である、システム。
  2. 前記懸濁液を処理するための懸濁液処理ユニットを更に備え、前記懸濁液処理ユニットは、前記懸濁液が前記プローブ面と前記反射面との間の前記空間に流入できるように、1以上のデバイスを前記処理ユニット内部に支持する1以上の固定具を備える、請求項1記載のシステム。
  3. 前記スラリー懸濁液の実質的な同時温度を判定するためのインラインセンサを更に備えており、前記超音波パラメータの少なくとも1つは、前記スラリー懸濁液の温度、及び前記液体キャリアを較正するように構成された浸漬可能デバイスから得られた較正パラメータを用いて部分的に測定される、請求項1又は請求項2記載のシステム。
  4. 前記超音波パラメータの少なくとも1つは超音波速度である、請求項1又は請求項2記載のシステム。
  5. 1以上の前記超音波パラメータは、速度、減衰、及び反射率からなる群から選択される、請求項1又は請求項2記載のシステム。
  6. 前記超音波発生器/受信器はパルス超音波を発生する、請求項1又は請求項2記載のシステム。
  7. 前記信号処理デバイスは、少なくとも1つがゼロ交差である1以上の時間差測定値を用いて、前記スラリー懸濁液の1以上の超音波パラメータを判定する、請求項6記載のシステム。
  8. 判定される前記超音波パラメータの少なくとも1つが超音波速度である、請求項7記載のシステム。
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